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特許異議申立

2020-700928

空調機の通信システム及び空調機

審判番号
2020-700928
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2018-132034
登録番号
6721008
請求日
2020年11月30日
審決日
2022年03月31日
公報発行日
2022年07月29日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】ダイキン工業株式会社
  • 【権利者代理人】特許業務法人サンクレスト国際特許事務所
  • 【異議申立人】星野 裕司
  • 【異議申立人】前田 正夫
審判長/審判官
  • 審判長 林 茂樹
  • 審判官 平城 俊雅
  • 審判官 田村 佳孝
分類
P1651.121-YAA(F24F)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法120条の8第1項特許法135条
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第126条第6項、特許法第120条の5第4項、特許法第29条第2項、特許法第120条の8第1項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第6721008号発明「空調機の通信システム及び空調機」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第6721008号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-7〕、8について訂正することを認める。 特許第6721008号の請求項1ないし5、8に係る特許を維持する。 特許第6721008号の請求項6及び7に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。

理由

理 由 1 手続の経緯 特許第6721008号の請求項1~8に係る特許についての出願は、平成30年7月12日に出願され、令和2年6月22日にその特許権の設定登録がされ、令和2年7月8日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。 令和2年11月30日 : 特許異議申立人星野裕司(以下、「異議申立人1」という。)による請求項1~8に係る特許に対する特許異議の申立て 令和2年12月8日 : 特許異議申立人前田正夫(以下、「異議申立人2」という。)による請求項1~8に係る特許に対する特許異議の申立て 令和3年4月2日付け : 取消理由通知書 令和3年7月2日 : 特許権者による意見書及び訂正請求書の提出 令和3年8月18日 : 異議申立人1による意見書の提出 令和3年8月18日 : 異議申立人2による意見書の提出 令和3年9月30日 : 取消理由通知書(決定の予告) 令和3年12月3日 : 特許権者による意見書及び訂正請求書の提出 令和4年2月1日 : 異議申立人1による意見書の提出 令和4年2月2日 : 異議申立人2による意見書の提出 2 訂正の適否 (1)訂正の内容 令和3年12月3日の訂正の請求による訂正(以下、「本件訂正」という。)は、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~8について訂正することを求めるものであって、その内容は以下のとおりである(下線は、訂正箇所を示すために当審で付したものである。)。 ア 訂正事項1 (訂正事項1-1) 特許請求の範囲の請求項1の「前記空調機(1)の外枠を成す筐体(11)の内部に設けられた制御基板(12)と」を、 「前記空調機(1)の室外機の外枠を成す筐体(11)の内部に設けられた制御基板(12)と」に訂正する。 (訂正事項1-2) 特許請求の範囲の請求項1の「一端が、前記第1の通信変換部(13)に接続され、前記筐体(11)の内部から前記筐体(11)の外部へ引き出されたケーブル(2)と」を、 「一端が、前記第1の通信変換部(13)に接続され、前記筐体(11)の内部から前記筐体(11)の外部へ引き出され、かつ、他端が基地局(4)との無線通信に適した任意の場所まで延ばされた、2芯のビニルキャブタイヤケーブル(2)と」に訂正する。 (訂正事項1-3) 特許請求の範囲の請求項1の「前記筐体(11)の外部での前記ケーブル(2)の他端に接続され、前記ディジタル信号を無線通信用の信号に変換する第2の通信変換部(33)を含み、基地局(4)との無線通信が可能なアンテナユニット(3)と」を、 「設置場所が予め定まっていないものであって、前記ビニルキャブタイヤケーブル(2)の前記他端と接続される基板(31)上に、前記ディジタル信号を前記無線通信用の信号に変換する第2の通信変換部(33)及びアンテナ(35)が搭載され、前記基地局(4)との無線通信が可能であり、磁気吸着用のマグネット(36)を用いて前記任意の場所に設置されるアンテナユニット(3)と」に訂正する。 (請求項1の記載を直接又は間接的に引用する請求項2~5も同様に訂正する。) イ 訂正事項2 特許請求の範囲の請求項2の「前記アンテナユニット(3)と前記基地局(4)との通信はLPWAの通信方式で行われ、前記ケーブル(2)での通信は、他のディジタル通信で行われる請求項1に記載の空調機の通信システム。」と記載されているのを、 「前記アンテナユニット(3)と前記基地局(4)との通信はLPWAの通信方式で行われ、前記ビニルキャブタイヤケーブル(2)での通信は、他のディジタル通信で行われる請求項1に記載の空調機の通信システム。」に訂正する。 ウ 訂正事項3 特許請求の範囲の請求項6及び請求項7は削除する。 エ 訂正事項4 (訂正事項4-1) 特許請求の範囲の請求項8の「外枠を成す筐体(11)を有する空調機(1)であって」を、 「室外機の外枠を成す筐体(11)を有する空調機(1)であって」に訂正する。 (訂正事項4-2) 特許請求の範囲の請求項8の「一端が、前記第1の通信変換部(13)に接続され、前記筐体(11)の内部から前記筐体(11)の外部へ引き出されたケーブル(2)と」を、 「一端が、前記第1の通信変換部(13)に接続され、前記筐体(11)の内部から前記筐体(11)の外部へ引き出され、かつ、他端が基地局(4)との無線通信に適した任意の場所まで延ばされた、2芯のビニルキャブタイヤケーブル(2)と」に訂正する。 (訂正事項4-3) 特許請求の範囲の請求項8の「前記筐体(11)の外部での前記ケーブル(2)の他端に接続され、前記ディジタル信号を無線通信用の信号に変換する第2の通信変換部(33)を含み、基地局(4)との無線通信が可能なアンテナユニット(3)と」を、 「設置場所が予め定まっていないものであって、前記ビニルキャブタイヤケーブル(2)の前記他端と接続される基板(31)上に、前記ディジタル信号を前記無線通信用の信号に変換する第2の通信変換部(33)及びアンテナ(35)が搭載され、前記基地局(4)との無線通信が可能であり、磁気吸着用のマグネット(36)を用いて前記任意の場所に設置されるアンテナユニット(3)と」に訂正する。 (2)訂正要件についての判断 ア 訂正事項1 (ア)訂正の目的について 訂正事項1-1は、訂正前の請求項1に係る発明の「外枠」の構成について、訂正後の請求項1に係る発明では、「室外機の外枠」に限定するものである。 また、訂正事項1-2は、訂正前の請求項1に係る発明の「ケーブル(2)」の構成について、訂正後の請求項1に係る発明では、「かつ、他端が基地局(4)との無線通信に適した任意の場所まで延ばされた、2芯のビニルキャブタイヤケーブル(2)」に限定するものである。 そして、訂正事項1-3は、訂正前の請求項1に係る発明の「アンテナユニット(3)」の構成について、訂正後の請求項1に係る発明では、「設置場所が予め定まっていないものであって、前記ビニルキャブタイヤケーブル(2)の前記他端と接続される基板(31)上に、前記ディジタル信号を前記無線通信用の信号に変換する第2の通信変換部(33)及びアンテナ(35)が搭載され、前記基地局(4)との無線通信が可能であり、磁気吸着用のマグネット(36)を用いて前記任意の場所に設置されるアンテナユニット(3)」に限定するものである。 よって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 (イ)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であることについて 訂正事項1-1に関して、筐体が、室外機の外枠を成す筐体であることは、本件特許明細書の段落【0019】に「空調機(これは室外機)1は、鉄系金属により形成された筐体11を有している。」と記載されている。 訂正事項1-2に関して、ケーブルの他端が、基地局(4)との無線通信に適した任意の場所まで延ばされていることは、段落【0020】に「ケーブル2の他端(図1の右上端)はアンテナユニット3に接続されている。」と記載されていること、段落【0021】に「ケーブル2は、空調機1やアンテナユニット3の付属品ではなく、いわば工事業者の現地調達品である。従って、決まった長さはない。空調機1の近辺で、基地局4との通信に適した場所にアンテナユニット3を設置し、かつ、必要な長さのケーブル2を用意して通信変換部13とアンテナユニット3とを互いに接続すればよい。ケーブル2は、例えば最長30mぐらいまでの長さとすることができる。」と記載されていることから明らかである。 また、ケーブルが、2芯のビニルキャブタイヤケーブルであることは、段落【0013】に記載されている。 訂正事項1-3に関して、ケーブル(2)の他端と接続される基板(31)上に、ディジタル信号を無線通信用の信号に変換する第2の通信変換部(33)及びアンテナ(35)が搭載されていることは、段落【0028】に「基板31には端子台32、通信変換部33、通信部34及びアンテナ35が実装されている。」と記載されている。 アンテナユニット(3)が、磁気吸着用のマグネット(36)を用いることは、段落【0014】に記載されている。 よって、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。 (ウ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないことについて 訂正事項1は、特許請求の範囲を減縮するものであり、実質的な内容の変更を伴うものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合する。 イ 訂正事項2 (ア)訂正の目的について 訂正事項2は、請求項1の訂正に関連して、「ケーブル」を、「ビニルキャブタイヤケーブル」に限定するので、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 (イ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 訂正事項2は、特許請求の範囲を減縮するものであり、実質的な内容の変更を伴うものでないから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。 (ウ)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること ケーブルが、ビニルキャブタイヤケーブルであることは、上記ア(イ)で検討したとおり、本件特許明細書の段落【0013】に記載されている。 よって、訂正事項2は、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。 ウ 訂正事項3 (ア)訂正の目的について 訂正事項3は、訂正前の特許請求の範囲の請求項6及び請求項7を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 (イ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 訂正事項3は、訂正前の特許請求の範囲の請求項6及び請求項7を削除するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正には該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。 (ウ)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項3は、訂正前の特許請求の範囲の請求項6及び請求項7を削除するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。 エ 訂正事項4 (ア)訂正の目的について 訂正事項4-1、訂正事項4-2、訂正事項4-3は、訂正事項1-1、訂正事項1-2、訂正事項1-3と同様のものであるから、訂正事項4は、上記ア(ア)で検討したとおり、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 (イ)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であることについて 訂正事項4は、上記ア(イ)で検討したとおり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。 (ウ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないことについて 訂正事項4は、上記ア(ウ)で検討したとおり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合する。 オ 一群の請求項について 訂正前の請求項1~7について、請求項2~7は、請求項1を直接又は間接的に引用しているのであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。 したがって、訂正前の請求項1~7に対応する訂正後の請求項1~7は、特許法120条の5第4項に規定する一群の請求項である。 (3)小活 上記のとおり、訂正事項1~4に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~7〕、8について訂正することを認める。 3 本件発明 本件特許の請求項1~8に係る発明は、本件訂正により訂正された特許請求の範囲に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「【請求項1】 空調機(1)についての、通信システムであって、 前記空調機(1)の室外機の外枠を成す筐体(11)の内部に設けられた制御基板(12)と、 前記筐体(11)の内部に設けられ、前記制御基板(12)から必要な電気信号を取り出し、有線伝送用のディジタル信号に変換する第1の通信変換部(13)と、 一端が、前記第1の通信変換部(13)に接続され、前記筐体(11)の内部から前記筐体(11)の外部へ引き出され、かつ、他端が基地局(4)との無線通信に適した任意の場所まで延ばされた、2芯のビニルキャブタイヤケーブル(2)と、 設置場所が予め定まっていないものであって、前記ビニルキャブタイヤケーブル(2)の前記他端と接続される基板(31)上に、前記ディジタル信号を前記無線通信用の信号に変換する第2の通信変換部(33)及びアンテナ(35)が搭載され、前記基地局(4)との無線通信が可能であり、磁気吸着用のマグネット(36)を用いて前記任意の場所に設置されるアンテナユニット(3)と、 を備えている空調機の通信システム。 【請求項2】 前記アンテナユニット(3)と前記基地局(4)との通信はLPWAの通信方式で行われ、前記ビニルキャブタイヤケーブル(2)での通信は、他のディジタル通信で行われる請求項1に記載の空調機の通信システム。 【請求項3】 前記第1の通信変換部(13)は、前記筐体(11)内で、前記制御基板(12)に近接して設けられる請求項1又は請求項2に記載の空調機の通信システム。 【請求項4】 前記第2の通信変換部(33)は、前記ディジタル信号を前記LPWAの通信信号に変換する請求項2に記載の空調機の通信システム。 【請求項5】 前記ディジタル信号は、前記アンテナユニット(3)に必要な電源電圧に信号が重畳されている請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の空調機の通信システム。 【請求項6】 (削除) 【請求項7】 (削除) 【請求項8】 室外機の外枠を成す筐体(11)を有する空調機(1)であって、 前記筐体(11)の内部に設けられた制御基板(12)と、 前記筐体(11)の内部に設けられ、前記制御基板(12)から必要な電気信号を取り出し、有線伝送用のディジタル信号に変換する第1の通信変換部(13)と、 一端が、前記第1の通信変換部(13)に接続され、前記筐体(11)の内部から前記筐体(11)の外部へ引き出され、かつ、他端が基地局(4)との無線通信に適した任意の場所まで延ばされた、2芯のビニルキャブタイヤケーブル(2)と、 設置場所が予め定まっていないものであって、前記ビニルキャブタイヤケーブル(2)の前記他端と接続される基板(31)上に、前記ディジタル信号を前記無線通信用の信号に変換する第2の通信変換部(33)及びアンテナ(35)が搭載され、前記基地局(4)との無線通信が可能であり、磁気吸着用のマグネット(36)を用いて前記任意の場所に設置されるアンテナユニット(3)と、 を備えている空調機。」 4 取消理由(決定の予告)の概要 訂正前の請求項1~8に係る特許に対して、当審が令和3年4月2日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。なお、当審が通知した取消理由は、異議申立人1、2が特許異議申立書に記載した特許異議申立理由を含むものである。 本件特許の請求項1~8に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許の請求項1~8に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 <異議申立人1の特許異議申立における証拠方法> 甲第1号証:特開2014-127014号公報 甲第2号証:特開2017-156080号公報 甲第3号証:特開2017-192021号公報 甲第4号証:国際公開第2018/056436号 甲第5号証: 特開2018-106067号公報 甲第6号証:国際公開第2017/038904号 甲第7号証:特開2004-028384号公報 甲第8号証:特開2016-220151号公報 甲第9号証:実開昭48-079300号公報 甲第10号証:特開平7-031048公報 甲第11号証:特開2005-277987号公報 甲第12号証:特開2015-124939号公報 (以下、異議申立人1の甲第1号証ないし甲第12号証を「甲1-1」ないし「甲1-12」という。) <異議申立人2の特許異議申立における証拠方法> 甲第1号証:三菱重工 空調総合管理システム カタログ 2018年2月発行 甲第2号証:特許第5708517号公報 甲第3号証:特開2010-139158号公報 甲第4号証:特許第6378997号公報 甲第5号証:国際公開第2016/117371号 甲第6号証:特開2018-59706号公報 甲第7号証:「LPWAを生かした空気にまつわる新たな価値づくりの取り組みについて」 https://www.ntt-west.co.jp/news/1611/161115a.html 甲第8号証:特開2011-180668号公報 甲第9号証:実願昭52-146382号(実開昭54-72678号)のマイクロフイルム 甲第10号証:中国実用新案第207338278号明細書 甲第11号証:Panasonic 業務用空調機器遠隔監視システム サンエスネット カタログ 2015年4月発行 甲第12号証:特許第3903345号公報 甲第13号証:中国実用新案第204693661号明細書 甲第14号証:国際公開第2016/208223号 甲第15号証:「三菱重工 空調機器をIoTで一括管理するサービス「M-ACCESS (エムーアクセス)」の提供を開始」 https://www.mhi.com/jp/news/1711215902.html 甲第16号証:「保守・メンテナンス|パナソニック産機システムズ株式会社 Panasonic」https://panasonic.co.jp/ap/pces/service/ (以下、異議申立人2の甲第1号証ないし甲第16号証を「甲2-1」ないし「甲2-16」という。) (1)異議申立人1の甲1-1を主引例とした場合 請求項1~8に係る発明は、甲1-1、甲1-2及び周知の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。 (2)異議申立人2の甲2-1を主引例とした場合 請求項1~8に係る発明は、甲2-1及び周知の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。 (3)異議申立人2の甲2-11を主引例とした場合 請求項1~8に係る発明は、甲2-11及び周知の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。 5 当審の判断 5-1 甲各号証に記載された事項について A 異議申立人1が提出したもの (1)甲1-1 甲1-1には、以下の事項が記載されている(下線は当審にて付したものである。また、「・・・」は記載の省略を意味する。)。 ア 「【背景技術】 【0002】 機器(例えば、空調機)の保守作業を効果的に遂行するために、当該機器のログ情報を当該機器の筐体内に備え付けられた記憶装置に保存することが知られている。そして、保守作業時にはログ情報の解析結果が活用される。反面、保守作業員は、記憶装置に保存されたログ情報にアクセスする度に、機器の筐体を開閉したり、当該筐体内に備え付けられた記憶装置を脱着したりする必要がある。筐体の開閉及び記憶装置の脱着に伴う負荷は、保守作業の効率を損なう。更に、機器の設置場所次第では、筐体の開閉及び記憶装置の脱着に危険を伴うことさえある。 ・・・ 【発明が解決しようとする課題】 【0005】 実施形態は、機器の保守作業における負荷を軽減することを目的とする。」 イ 「【0011】 メモリデバイス100は、ホストデバイス200からのアクセスに応じた処理(例えば、データの読み書き)を行う。尚、メモリデバイス100は、ホストデバイス200との間でデータをやり取りするだけでなく、ホストデバイス200から電力供給されてもよい。メモリデバイス100及びホストデバイス200は、本実施形態に係るメモリシステムを形成する。 【0012】 メモリデバイス100は、ホストデバイス200に取り付けられている間に当該ホストデバイス200のログ情報を適時に保存する。尚、以降の説明において、ホストデバイス200は、業務用空調機(より詳細には、その室外機)であると仮定されるが、これ以外の機器(例えば、車両)であってもよい。ホストデバイス200が業務用空調機の室外機であるならば、ログ情報は当該業務用空調機の例えば運転履歴、障害履歴、保守履歴などに相当する。ログ情報は、センサによって測定された測定値(例えば、温度値、湿度値など)の情報を含んでもよいし、ホストデバイス200の状態を示す情報を含んでもよいし、ホストデバイス200に接続される他の機器の情報を含んでもよい。」 ウ 「【0017】 本実施形態に係るメモリシステムが図2に例示される。図2のメモリデバイス100は、メモリデバイス制御部101と、記憶部102と、無線通信部103とを備える。図2のホストデバイス200は、ホストデバイス制御部201と、測定部202とを備える。 【0018】 メモリデバイス制御部101は、記憶部102に対してデータの読み書きを行ったり、無線通信部103との間でデータをやり取りしたりする。また、メモリデバイス制御部101は、外部装置とのインターフェースを備えている。メモリデバイス制御部101は、このインターフェースを利用して、ホストデバイス200との間でデータをやり取りする。このインターフェースは、SD(登録商標)カード向けのものであってもよいし、USB(Universal Serial Bus)、Ethernet(登録商標)のような汎用のものであってもよいし、ホストデバイス200に専用のものであってもよい。 【0019】 メモリデバイス制御部101は、上記機能を実現するために、例えばホストインターフェース(I/F)、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read only Memory)、RAM(Random Access Memory)、バッファ、無線通信インターフェース(I/F)、メモリインターフェース(I/F)などのハードウェア要素を含んでよい。これらのハードウェア要素は、バスによって接続される。 ・・・ 【0021】 無線通信インターフェースは、無線通信部103との間でインターフェース処理を行う。」 エ 「【0026】 無線通信部103は、メモリデバイス制御部101の無線通信インターフェースを介して制御され、図示されない他の無線通信装置との間で無線通信(即ち、所定の無線通信方式に従う信号処理)を行う。無線通信部103は、高周波信号を送受信するためのアンテナを内蔵してもよいし、当該アンテナを外付けしてもよい。 【0027】 無線通信部103は、少なくとも、保守端末300と共通の無線通信方式をサポートし、これを利用して例えばログ情報をやり取りする。ここで、無線通信部103は、1つに限られず2つ以上設けられてもよい。例えば、第1の無線通信部103aは無線LANに従って無線通信を行い、第2の無線通信部103bはTransferJETに従って無線通信を行ってもよい。尚、無線通信部103は、無線LAN、TransferJETに限られず、例えばBluetooth、ZigBee、LTE、WiMAX、PHSなどに従って無線通信を行ってもよい。 【0028】 前述の通り、メモリデバイス100は無線通信機能を備えているが、ホストデバイス200の筐体がメモリデバイス100と他の無線通信装置(例えば、保守端末300)との無線通信を阻害するおそれがある。例えば、ホストデバイス200が業務用空調機であって、メモリデバイス100を当該業務用空調機の室外機の制御基板に取り付けることが想定される。一般に、室外機の制御基板は保護のために筐体によって物理的に覆われているので、当該筐体によって電波の減衰及び遮断が生じることになる。係る場合に、メモリデバイス100をホストデバイス200に単純に備え付けたとしても、劣悪な無線伝搬環境下で無線通信が行われることになるので通信の切断が生じやすくなる。 【0029】 従って、係る状況の改善措置が必要に応じて講じられてもよい。例えば、メモリデバイス100とホストデバイス200との間のインターフェースを物理的に延長して、メモリデバイス100をホストデバイス200の筐体外に設置してもよい。或いは、ホストデバイス200の筐体に電波の通り道のための穴を空けてもよいし、メモリデバイス100のアンテナを露出させると共に外部の金属に接触させることによってアンテナ利得を向上させてもよい。」 オ 「【0042】 測定部202は、ホストデバイス制御部201に備えられるマイクロコントローラからの制御に従って、ホストデバイス200の状態(例えば、温度、湿度など)を測定する。測定部202は、温度センサであってもよいし、湿度センサであってもよいし、これらの組み合わせであってもよい。測定部202は、アナログ表現である測定値をデジタル表現に変換することによって、測定値情報を生成する。測定部202は、測定値情報をホストデバイス制御部201へと出力する。」 上記ア~オの記載事項を総合すると、甲1-1には、以下の発明(以下、「甲1-1発明」という。)が記載されていると認められる。 「ホストデバイス200である業務用空調機の室外機と、メモリデバイス100とからなるメモリシステムであって、 ホストデバイス200は、ホストデバイス制御部201と測定部202とを備え、メモリデバイス100は、メモリデバイス制御部101と、記憶部102と、無線通信部103とを備え、 測定部202は、測定値をデジタル表現に変換することにより測定値情報を生成し、 メモリデバイス制御部101は、インターフェースを利用してホストデバイス200との間でデータをやり取りし、インターフェースはUSB、Ethernet(登録商標)のようなものでもよく、 室外機の制御基板は筐体によって物理的に覆われているので、当該筐体によって電波の減衰及び遮断が生じることになるが、係る状況の改善のため、前記インターフェースを物理的に延長してメモリデバイス100を筐体外に設置し、 メモリデバイス制御部101は、無線通信部103との間でインターフェース処理を行う無線通信インターフェース(I/F)を含み、 無線通信部103は、アンテナを内蔵して他の無線通信装置との間で無線通信を行い、例えば、LTE、PHSなどの無線通信を行う、 メモリシステム。」 また、甲1-1には、以下の発明(以下、「甲1-1a発明」という。)も記載されていると認められる。 「ホストデバイス200である業務用空調機の室外機と、メモリデバイス100とを有し、 ホストデバイス200は、ホストデバイス制御部201と測定部202とを備え、メモリデバイス100は、メモリデバイス制御部101と、記憶部102と、無線通信部103とを備え、 測定部202は、測定値をデジタル表現に変換することにより測定値情報を生成し、 メモリデバイス制御部101は、インターフェースを利用してホストデバイス200との間でデータをやり取りし、インターフェースはUSB、Ethernet (登録商標)のようなものでもよく、 室外機の制御基板は筐体によって物理的に覆われているので、当該筐体によって電波の減衰及び遮断が生じることになるが、係る状況の改善のため、前記インターフェースを物理的に延長してメモリデバイス100を筐体外に設置し、 メモリデバイス制御部101は、無線通信部103との間でインターフェース処理を行う無線通信インターフェース(I/F)を含み、 無線通信部103は、アンテナを内蔵して他の無線通信装置との間で無線通信を行い、例えば、LTE、PHSなどの無線通信を行う、 業務用空調機。」 (2)甲1-2 甲1-2には、以下の事項が記載されている。 「【0037】 室外機22は、冷媒回路の熱源として機能する機器である。室外機22には、無線通信機器23と情報仲介機器24が内蔵されている。無線通信機器23は、電気通信事業者が所有する通信基地局40と無線通信をすることによって、モバイルブロードバンド回線への接続をすることができる。情報仲介機器24は、無線通信機器23に接続されている。これによって、情報仲介機器24は、無線通信機器23と各種コマンドおよび各種データの授受を行うことができる。さらに情報仲介機器24は、自身の属する空調機20Aの制御回路に接続されている。これによって、情報仲介機器24は、室外機22および複数の室内機21を操作する制御を行うことができるとともに、室外機22および複数の室内機21から空調機情報を取得することができる。この空調機情報には、例えば、空調機20Aに属する電動弁、モータ、その他のアクチュエータの制御情報、空調機20Aに属するセンサの出力信号、空調機20Aの異状警報、コマンドで指示された動作の終了報告などが含まれる。」 上記の記載事項を総合すると、甲1-2には、以下の発明(以下、「甲1-2発明」という。)が記載されていると認められる。 「室外機22に内蔵された無線通信機23が、電気通信事業者が所有する通信基地局40と無線通信することによって、モバイルブロードバンド回線への接続をする空調機。」 (3)甲1-3 甲1-3には、以下の事項が記載されている。 「【0021】 ・・・RAT1は、例えばセルラシステム(2G~4G)である。RAT1は、LTE-MTC(LTEマシン型通信:LTE-Machine Type Communications)、SigFox(登録商標、以下同様)及びLoRa(登録商標、以下同様)等のM2M向けのLPWAN(Low-Power Wide-Area Network)などであってもよい。」 (4)甲1-4 甲1-4には、以下の事項が記載されている。 「【0121】 ・・・また、その通信方式(通信規格)の一例としては、LPWA(Low Power Wide Area)や、LPWAN(Low Power Wide Area Network)などが挙げられる。以下では、省電力(低電力)かつ広域(遠距離)の無線通信技術として、LPWAを利用したガス供給管理システム10を例に説明する。」 (5)甲1-5 甲1-5には、以下の事項が記載されている。 「【0086】 ・・・このように支持部416に駆動素子を設けることにより、バックプレーン10やフロントプレーン20に対して近接した位置に駆動素子を配置することが可能になる。このため、配線長を最小限に抑えることができ、信号の遅延やノイズの影響を抑制することが可能になる。」 (6)甲1-6 甲1-6には、以下の事項が記載されている。 「【0035】 ・・・従って、半導体素子51の中においては、同一の機能(類似の機能)を有する信号処理部や、当該信号処理部へ電源を供給する電源部(電源供給部)が近接していると好適である。」 (7)甲1-7 甲1-7には、以下の事項が記載されている。 「【0009】 ・・・図1は空気調和機の構成図であり、圧縮機を搭載した室外機1と接続される電力線3と、室内機2と接続される電力線4と、電力線重畳信号から無線信号へ信号変換を行う変換装置6A、6Bと、空気調和機の運転を制御する集中制御装置9を有し、室外機1と室内機2が配管で接続され冷凍サイクルを構成する。 室外機1は200V3相で室外電力線3より電力が供給され、電力線重畳信号の室外送受信装置5Aを搭載する。この電力線重畳信号の室外送受信装置5Aを介して室外電力線3へ基本フォーマットとして定められたデータ(伝送情報)を送信する。・・・電力重畳されたデータは電力線重畳信号と無線信号の室外変換装置6Aにより無線信号に変換される。」 (8)甲1-8 甲1-8には、以下の事項が記載されている。 「【0003】 この電源線通信システムでは、例えば親機から子機に情報を送信する場合、親機が情報に対応する電圧信号を電源電圧に重畳させて子機に供給する。そして、子機は、親機より供給された電源電圧から電圧信号を分離し、分離した電圧信号(アナログ信号)をデジタル信号に変換した後、このデジタル信号から情報を取得する。」 (9)甲1-9 甲1-9には、以下の事項が記載されている。 「・・・屋外設置型空気調和機における貫通電線の保持具に関するものである。・・・屋外設置型空気調和機における電気部品箱や仕切板などに電線を貫通させる場合・・・しかして従来、・・・複数本の電線を一本にまとめた所謂キャブタイヤケ─ブルなどの多芯電線を用いる方法が採用されているのである。」(明細書第1頁最終行~第2頁第17行) (10)甲1-10 甲1-10には、以下の事項が記載されている。 「【0010】 ・・・導体2、3は、図2に示すように、例えば、銅線2a、3aと、絶縁被覆2b、3bからなるビニルキャブタイヤケーブルで構成され、その一端が高周波加熱装置5の出力端子6、7に接続され、その他端が加熱コイル8の端子9、10に接続されている。」 (11)甲1-11 甲1-11には、以下の事項が記載されている。 「【0020】 ・・・GPSアンテナ21には磁石が設けられており、これによりGPSアンテナ21は単車上の任意の磁性体部分に対して、磁力により取り付けることができるようになっている。」 「【0024】 ・・・GPSアンテナ21を収納部32から引き出し、単車上のGPS電波の受信に好ましい位置の磁性体部分に吸着させることにより固定する。(以下省略)」 (12)甲1-12 甲1-12には、以下の事項が記載されている。 「【0072】 排気遮蔽部材420の先端には、マグネット428が設けられる。排気遮蔽部材420は、マグネット428によって、例えば、空調室外機200の筐体202に固定される。排気遮蔽部材420がマグネット428によって筐体202に固定されることにより、固定する位置を自由に調整することができる。」 B 異議申立人2が提出したもの (1)甲2-1 甲2-1には、表紙の右上に「2018 2 February」と記載及び最終頁の右下に「三菱重工サーマルシステムズ株式会社」「このカタログは、平成30年2月現在のものです。」と記載されている。また、2017年(平成29年)11月21日発行の三菱重工のニュースリリース(甲2-15より、当該カタログ記載のシステムに関して、三菱重工サーマルシステムズ株式会社がインターネットを介して遠隔で空調機器の状態を監視し省エネ制御を可能にするサービス「M-ACCESS(エム-アクセス)」の提供を2018年(平成30年)1月から開始する旨発表している。上記より、甲第1号証は、本件特許出願日(平成30年7月12日)前の平成30年2月に三菱重工サーマルシステムズ株式会社より発行されたものと認められ、頒布された刊行物に該当する。 そして、甲2-1には、以下の事項が記載されている。 ア 「空調機IoT遠隔監視システム」(第10頁) イ 「通信プロトコルインターチェンジ機能搭載」(第8頁) 「三菱重工のゲートウエイ製品は、それ単独で、矛盾した制御コマンドを排除。小規模で効率的な通信環境を構築します。」(第8頁) ウ 「配線仕様 1)スーパーリンク用信号線 0.75mm2~1.25mm2のシールド線(MVVS2芯)」(第26頁) エ 「 [図:0001386095000001.jpg] 」 オ 上記エから、マルチエアコン(空調機)の外枠を成す筐体、及びマルチエアコン(空調機)と接続された信号線が把握できる。また、マルチエアコン(空調機)の筐体の外部で信号線の他端に接続されたゲートウェイ及びゲートウェイに接続されWi-Fiルータとの無線通信が可能なLANコンバータが把握できる。 上記ア~オの記載事項を総合すると、甲2-1には、以下の発明(以下、「甲2-1発明」という。)が記載されていると認められる。 「空調機についての、遠隔監視システムであって、 空調機の外枠を成す筐体と、 前記空調機と接続されたシールド線である信号線と、 前記筐体の外部で前記信号線の他端に接続されたゲートウェイ及びゲートウェイに接続されWi-Fiルータとの無線通信が可能なLANコンバータと、 を備えている空調機の遠隔監視システム。」 また、甲2-1には、以下の発明(以下、「甲2-1a発明」という。)も記載されていると認められる。 「空調機の外枠を成す筐体を有する空調機であって、 前記空調機と接続されたシールド線である信号線と、 前記筐体の外部で前記信号線の他端に接続されたゲートウェイ及びゲートウェイに接続されWi-Fiルータとの無線通信が可能なLANコンバータと、 を備えている空調機。」 (2)甲2-2 甲2-2には、以下の事項が記載されている。 「【0034】 (1-3)室外ユニット 室外ユニット20は、主に、第1圧縮機21,第2圧縮機22、四路切換弁23、室外熱交換器24、膨張弁26、室外ファン25、第1および第2圧縮機21,22の吐出口21a,22aに設けられた第1および第2温度センサ51,52、第1および第2圧縮機用制御基板61,62および制御基板30を有する。」 (3)甲2-3 甲2-3には、以下の事項が記載されている。 「【0028】 ・・・室外機10には、制御ユニット40が搭載されている。この制御ユニット40は、電源基板41と、該電源基板41を通じて個別に電源供給される主制御基板42及び通信基板43とを備えて構成される。なお、主制御基板42及び通信基板43間で信号としてのデジタル信号が伝送(送受)されるようになっている。」 (4)甲2-4 甲2-4には、以下の事項が記載されている。 「【0032】 ・・・室外機ユニット14は、図1に示すように、筐体20と、熱交換器21と、ファンモータ22と、圧縮機23と、コントローラ24と、温度センサ26と、を有する。」 「【0036】 コントローラ24は、室外機ユニット14の各部の動作を制御する。コントローラ24は、パワーデバイス40と、制御基板42と、を有する。」 (5)甲2-5 甲2-5には、以下の事項が記載されている。 「[0030] 図3は本発明に係る室外機1の機能ブロック図を示す。室外機1が備える室外機制御部106は、圧縮機101、四方弁102、室外送風機104、室外膨張弁105、室外機通信部107、記憶部108を制御する。」 「[0031] ・・・室外機通信部107は、空調機通信用伝送線6を介して、室内機2、集中制御機器3、無線アダプタ4と通信を行う。」 (6)甲2-6 甲2-6には、以下の事項が記載されている。 「【0216】 具体的には、通信条件調整部34K,64Kが、通信条件の調整による通信量の変化に応じて最適な通信経路に変更する。例えば、通信条件調整部34 K,64Kは、通信条件の調整による通信量の変化に応じて、第3世代移動通信システム(3G)、第4世代移動通信システム(4G)、第5世代移動通信システム(5G)、及び、ローパワーワイドエリア(LPWA)の少なくともいずれかを含む遠距離無線通信の通信方式に変更する。」 (7)甲2-7 甲2-7には、以下の事項が記載されている。 「本トライアルでは、ダイキン工業の技術開発コア拠点であるテクノロジー・イノベーションセンターなど西日本エリアに設置されている空調機を、NTT西日本のLPWAに接続し、それぞれの空調機の稼働状態、および、屋内外の空間情報を常時監視します。」(2.トライアルの概要 (1)概要) (8)甲2-8 甲2-8には、以下の事項が記載されている。 「【0007】 フィールドバス20上の信号の一例を図6を用いて説明する。図6(a)は、電源部2から供給される電源電圧に重畳される前の通信に用いられる信号を示しており、この場合、信号の振幅は1Vとなっている。 【0008】 一方、図6(b)は、電源部2から供給される電源電圧に重畳された後の信号を示しており、フィールド機器1と通信モジュール3との間では、このようなレベルで信号の授受が行われる。すなわち、フィールドバス20上の通信に用いられる信号は、電源部2から出力された電源電圧に通信信号が重畳された信号となる。具体的には、図6(b)に示すように、電源部2から出力された電源電圧+24Vに振幅1Vの信号が重畳される形となる。」 (9)甲2-9 甲2-9には、以下の事項が記載されている。 「・・・また、後者は第1図に示す2芯キャブタイヤケーブルの場合、」(明細書第1頁第19-20行) (10)甲2-10 甲2-10には、以下の事項が記載されている。 「 [図:0001386095000002.jpg] [図:0001386095000003.jpg] 」 (受信アンテナ8はマグネットベース8a、マグネットベース8a上に設けられる伸縮アンテナと接続受信回路の板のバネリード線8bを含み、バネリード線8bの一端は伸縮アンテナを接続し、他端はPLCの信号受信端を接続する。外付の受信アンテナ8は干渉能力を防いで比較的に強く、同時にマグネットベース8aで受信アンテナ8を適正位置に吸着することができる)(訳文第6頁28行~31行) (11)甲2-11 甲2-11には、最終頁(第4頁)の右下に「パナソニック産機システムズ株式会社」「このカタログの記載内容は、2015年4月現在のものです。」と記載されている。当該カタログは、パナソニック産機システムズ株式会社のサイト(甲2-16において、「2015年4月発行」と表示され、ダウンロードが可能とされている。上記より、甲2-11は、本件特許出願日(平成30年7月12日)前の2015年(平成27)年4月にパナソニック産機システムズ株式会社より発行されたものと認められ、頒布された刊行物に該当する。 そして、甲2-11には、以下の事項が記載されている。 ア 「業務用空調機器遠隔監視システム サンエスネット」(第1頁) イ 「サンエスネットは、NTTドコモFOMA網を利用した遠隔監視システムです。無線通信の採用により、従来より簡単な設置が可能になりました。」(第2頁最下欄) ウ 「遠隔監視アダプター 空調機 PAC・GHP:室内外操作線 (HBS/0.5~2.0mm22芯ケーブル)」(第3頁) エ 「 [図:0001386095000004.jpg] 」 オ 上記エから、空調機の外枠を成す筐体と、空調機と接続された室外操作線が把握できる。また、筐体の外部で室外操作線の他端に遠隔監視アダプタが接続されていることが把握できる。 そして、上記イから、この遠隔監視システムはNTTドコモFOMA網を利用したものであるから、基地局との無線通信が可能であるといえる。 上記ア~オの記載事項を総合すると、甲2-11には、以下の発明(以下、「甲2-11発明」という。)が記載されていると認められる。 「空調機についての、無線通信による遠隔監視システムであって、 空調機の外枠を成す筐体と、 前記空調機と接続された室外操作線である2芯ケーブルと、 前記筐体の外部で前記室外操作線の他端に接続され、基地局との無線通信が可能な遠隔監視アダプタと、 を備えている空調機の無線通信による遠隔監視システム。」 また、甲2-11には、以下の発明(以下、「甲2-11a発明」という。)も記載されていると認められる。 「空調機の外枠を成す筐体を有する空調機であって、 前記空調機と接続された室外操作線である2芯ケーブルと、 前記筐体の外部で前記室外操作線の他端に接続され、基地局との無線通信が可能な遠隔監視アダプタと、 を備えている空調機。」 (12)甲2-12 甲2-12には、以下の事項が記載されている。 「【0014】 ・・・図1は、空気調和機のサービスシステムの全体を示すシステム構成図であり、2は空気調和機の室外ユニットである。室外ユニット2は、通信線6によって空気調和機の構成ユニットである室内ユニット3、リモコン4、その他コントロールタイマー5に接続されている。空気調和機又はその集中制御装置1は、インターネット100を介してWebサーバとなる監視センタ8(基地局)へ接続される。」 「【0016】 集中制御装置1には、GPS衛星9から発信する電波を受信するアンテナモジュールなどを有するGPS受信手段22、受信した情報から経度/緯度の計算、記憶、データ変換、編集などを行う制御手段25、室外ユニット2、室内ユニット3と運転データ、設定データ、製造番号などの含まれる機種データなどの通信を行う対空気調和機通信手段24、監視センタ8とデータのやりとりを行う通信手段24、が設けられている。通信手段24は、インターネット100と接続され、無線通信であることが望ましい。」 (13)甲2-13 甲2-13には、以下の記載がある。 「 [図:0001386095000005.jpg] 」 (図1~図3を参照して、本実用新案実施例のエアコン室外機300は、GPRSの通信設備を含み、GPRSの通信設備は信号処理システム100と空中線装置200を含み、信号処理システム100はエアコン室外機300の電装ボックスアセンブリ301に設置し、空中線装置200はエアコン室外機300の遮風板アセンブリ302に設置し、信号処理システム100と空中線装置200は通信接続する。好ましくは、エアコン室外機300は多連プラントの室外機とする。信号処理システム100はまたエアコン室外機300のマザーボードと通信接続する。)(訳文第5頁18行~23行) (14)甲2-14 甲2-14には、以下の事項が記載されている。 「[0015] このように、本実施形態においては、通信ユニット20が通気口4aを通じて筐体2の外部に露出している。但し、通信ユニット20の配置態様はこの例に限定されない。例えば、通信ユニット20は、筐体2に設けられた、通気口とは異なる開口部を通じて外部に露出しても良い。また、通信ユニット20は、筐体2の外面に配置されることで外部に露出しても良い。 [0016] 通信ユニット20は、例えば1cm~10cm程度のごく短い距離の範囲に近接する情報端末100との間で非接触のデータ通信を行う。」 「[0036]・・・各回路部品31bは、例えば、アンテナ31aを介した電波の送受を制御する送受信回路、室外機1のメイン制御部との間の有線通信を制御する通信回路、データやプログラムを記憶のためのメモリなどを含む。」 (15)参考資料3 令和4年2月2日に提出された意見書に添付された参考資料3(Panasonic 遠隔監視アダプターCZ-01AP60B仕様書)には、以下の事項が記載されている。 「 電源 単相AC100~240V50/60Hz 消費電力 約10W(FOMA端末含む) 動作温度・湿度 -20℃ ~ +50℃ ・ 25%~ 85%(結露ないこと) 設置場所 屋外または屋内の垂直面 取り付け方法 壁面取り付け(ビス止め) 寸法 縦225mm× 横300mm× 奥行93mm(突起部除く) 重量 約1.5kg(FOMA端末、アンテナ含まず) 」 (16)参考資料4 令和4年2月2日に提出された意見書に添付された参考資料4(特開平10-185649号公報)には、以下の事項が記載されている。 「【0011】 【発明の実施の形態】以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は第1の実施形態を示し、図3に示す従来と同一構成部分は同一番号を付して説明を省略する。水道メータボックス1の内部に設置される無線ユニット21は水道メータ7の積算値を検針センター等に送信するアンテナ22を持っており、このアンテナ22は無線ユニット21を構成するケース本体23の上部に設けられている。 【0012】さらに、前記ケース本体23の上面の取付け面24には複数個の永久磁石25が埋設されており、この永久磁石25によって前記無線ユニット21が金属製の蓋体5の裏面に磁気吸着されている。 【0013】したがって、無線ユニット21を蓋体5の裏面の任意の位置に取付けることができ、従来のように、鋼鉄製の蓋体5にねじ穴を加工する手間が省け、また無線ユニット21の保守点検時に蓋体5を開けることにより、蓋体5から無線ユニット21を簡単に取り外すことができる。」 (17)参考資料5 令和4年2月2日に提出された意見書に添付された参考資料5(特許第6325103号公報)には、以下の事項が記載されている。 「【0026】 [0045] 本開示のワイヤレスの温度および/または湿度センサーアセンブリ10は、データセンターまたはサーバルームのための空調(climate)制御システムの一部として利用され得る。センサーアセンブリ10は、小型形状(small form-factor)を有し、図8に最もよく示されるように、コンピュータ収納ラック100上に、簡単に、素早く設置され得る。」 「【0041】 [0060] 図6A、6B、および7Bを参照して理解されるように、ハウジング22のトップおよびボトムカバー46、58の各々は、切抜き部72を含む。トップおよびボトムのカバー46、48が合わさったとき、切抜き部72は、外殻の側壁70にスロット74を形成する。図3B、4A、および4Cに示されたように据付け部材26がスロット74を占め、側壁の据付け面18と大体において同一平面である。この点で、据付け部材26は、例えば、テーパフィットまたはスナップフィットを用いて等、ハウジング22に形成されたスロット74に固定にまたは取り外し可能に受けられる挿入部を備え得る。図3B、4C、10、11、および12において示されるように、据付け部材26は、据付け用腕木78(図10)、1つまたは複数の磁石80(図3B)、面ファスナー(hook and loop fastener)(例えば、Velcro(登録商標))82(図11)、および/または、粘着剤84(図12)等々を含むことができる。結果的に、据付け部材26は、モニタリングされる環境の中の設置位置において、センサーアセンブリ10を固定するために、様々な設置状態の任意のものに適合するよう容易に構成され得る。据付け部材26は、センサーアセンブリ10が、コンピュータラック100のドアまたはフレーム上に素早く、楽に設置されることを可能にする。」 5-2 対比・判断 A 異議申立人1の甲1-1を主引例とした場合 (1)本件発明1について 本件特許の請求項1に係る発明(以下、「本件発明1」という。同様に本件特許の請求項2~8に係る発明を「本件発明2」~「本件発明8」という。)と甲1-1発明とを対比する。 ア 甲1-1発明の「メモリデバイス100」は、メモリデバイス制御部101と、記憶部102と、無線通信部103とを備え、「無線通信部103」は、アンテナを内蔵して他の無線通信装置との間で無線通信を行うものである。 よって、甲1-1発明の「ホストデバイス200である業務用空調機の室外機と、メモリデバイス100とからなるメモリシステム」は、本件発明1の「空調機(1)についての、通信システム」に相当する。 イ 甲1-1発明において、室外機(ホストデバイス200)の制御基板は、ホストデバイス制御部201を含むものであり、筐体の内部に設けられたものであるといえる。 よって、甲1-1発明の「筐体によって物理的に覆われている」「室外機の制御基板」は、本件発明1の「空調機(1)の室外機の外枠を成す筐体(11)の内部に設けられた制御基板(12)」に相当する。 ウ 甲1-1発明におけるホストデバイス200の測定部202では、測定値をデジタル表現に変換しているから、メモリデバイス制御部101とホストデバイス200との間のデータをやり取りもインターフェースを利用して、ディジタル信号で行われているといえる。 また、インターフェースがUSB、Ethernet(登録商標)であれば、有線(ケーブル)を用いるとともに、インターフェースが有線伝送用のディジタル信号に変換する通信変換部を有していることは自明な事項である。 さらに、室外機の制御基板が筐体によって物理的に覆われているから、インターフェースの有線伝送用のディジタル信号に変換する通信変換部も筐体の内部に設けられているといえる。 よって、甲1-1発明は、本件発明1の「筐体(11)の内部に設けられ、制御基板(12)から必要な電気信号を取り出し、有線伝送用のディジタル信号に変換する第1の通信変換部(13)」に相当する構成を有している。 エ 甲1-1発明は、インターフェースを物理的に延長してメモリデバイス100を筐体外に設置しているから、インターフェースの有線(ケーブル)は筐体の内部から外部に引き出されているといえる。 また、インターフェースの有線(ケーブル)は、有線伝送用のディジタル信号に変換する通信変換部に接続されていることは明らかである。 したがって、甲1-1発明は、本件発明1の「一端が、前記第1の通信変換部(13)に接続され、前記筐体(11)の内部から前記筐体(11)の外部へ引き出され」た「ケーブル」に相当する構成を有している。 オ 甲1-1発明において「メモリデバイス100」は、「メモリデバイス制御部101」と、「無線通信部103」とを備えるものであり、「メモリデバイス制御部101」は、無線通信部103との間でインターフェース処理を行う無線通信インターフェース(I/F)を含み、「無線通信部103」は、アンテナを内蔵して他の無線通信装置との間で無線通信を行うものである。 そして、甲1-1発明の「無線通信インターフェース(I/F)」は、ディジタル信号を無線通信用の信号に変換するものであるから、甲1-1発明の「無線通信インターフェース(I/F)」、「アンテナ」は、それぞれ、本件発明1の「第2の通信変換部(33)」、「アンテナ(35)」に相当する。 また、甲1-1発明の「インターフェース」と、「無線通信インターフェース(I/F)」を含む「メモリデバイス100」とが有線(ケーブル)で接続されていることは明らかである。 したがって、甲1-1発明は、本件発明1の「ケーブル(2)の他端と接続され」「ディジタル信号を無線通信用の信号に変換する第2の通信変換部(33)及びアンテナ(35)が搭載され」「無線通信が可能なアンテナユニット(3)」に相当する構成を有している。 そうすると、本件発明1と甲1-1発明とは、 「空調機(1)についての、通信システムであって、 前記空調機(1)の外枠を成す筐体(11)の内部に設けられた制御基板(12)と、 前記筐体(11)の内部に設けられ、前記制御基板(12)から必要な電気信号を取り出し、有線伝送用のディジタル信号に変換する第1の通信変換部(13)と、 一端が、前記第1の通信変換部(13)に接続され、前記筐体(11)の内部から前記筐体(11)の外部へ引き出されたケーブルと、 前記ケーブルの前記他端と接続され、前記ディジタル信号を前記無線通信用の信号に変換する第2の通信変換部(33)及びアンテナ(35)を有するアンテナユニット(3)と、 を備えている空調機の通信システム。」 である点で一致し、以下の点で相違する。 [相違点1] ケーブルに関して、本件発明1では、「他端が基地局(4)との無線通信に適した任意の場所まで延ばされた、2芯のビニルキャブタイヤケーブル(2)」であるのに対し、甲1-1発明では、筐体によって電波の減衰及び遮断が生じることになる状況の改善のため、USB、Ethernetのようなインターフェースを物理的に延長したものである点。 [相違点2] アンテナユニット(3)に関して、本件発明1では、「設置場所が予め定まっていないものであって」、「前記基地局(4)との無線通信が可能であり、磁気吸着用のマグネット(36)を用いて前記任意の場所に設置される」のに対し、甲1-1発明では、そのように特定されていない点。 [相違点3] 第2の通信変換部(33)及びアンテナ(35)に関して、本件発明1では、「ビニルキャブタイヤケーブル(2)の前記他端と接続される基板(31)上に」「搭載され」ているのに対し、甲1-1発明では、そのような基板を有するのか不明である点。 上記相違点1について検討する。 甲1-1発明は、筐体によって電波の減衰及び遮断が生じることになる状況の改善のため、USB、Ethernetのようなインターフェースの有線(ケーブル)を物理的に延長し、メモリデバイス100を筐体外に設置したものである。 したがって、甲1-1発明における、有線(ケーブル)の延長は、筐体によって電波の減衰及び遮断が生じることになる状況の改善のためであり、本件発明1のように、基地局(4)との無線通信に適した任意の場所まで延ばし、基地局との通信環境が良くない状況を改善するものとは異なるものである。 そして、甲1-1発明のようにメモリデバイス100を筐体外に設置しただけでは、基地局との無線環境が良くない状況を改善することはできず、甲1-1発明は、本件発明1のように無線通信用のケーブルを筐体外に引っ張り出したうえで基地局との無線通信に適した任意の場所まで延ばすことを示唆するものではない。 そうすると、甲1-1発明において、無線(ケーブル)を基地局(4)との無線通信に適した任意の場所まで延ばすことは、当業者が容易になし得たこととは言えない。 また、甲1-2発明には、室外機22に内蔵された無線通信機23が通信基地局40と無線通信することが開示されており、また、2芯のビニルキャブタイヤケーブルを用いることは周知の技術である(例えば、甲1-9の明細書第2頁第13~17行、甲1-10の段落【0010】参照。)が、いずれにも、基地局(4)との無線通信に適した任意の場所までケーブルを延ばす点は開示されていない。 よって、本件発明1の「他端が基地局(4)との無線通信に適した任意の場所まで延ばされた、2芯のビニルキャブタイヤケーブル(2)」を備える点は、甲1-1発明、甲1-2発明及び周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 上記相違点2について検討する。 甲1-1発明のメモリデバイス100(アンテナユニット(3))は、筐体によって電波の減衰及び遮断が生じることになる状況の改善のために筐体外に設置するものであるから、通常は筐体外にねじ等で固定すれば十分であるといえる。 しかしながら、このような筐体外の位置への固定を、磁気吸着用のマグネットを用いて着脱可能に固定する場合には、ねじ等を用いて固定するよりも割高になるとともに、取り付けが不安定となりかねない。 したがって、甲1-1発明において、メモリデバイス100(アンテナユニット(3))を磁気吸着用のマグネットを用いて任意の場所に設置する動機付けはない。 そうすると、甲1-1発明において、メモリデバイス100(アンテナユニット(3))が「設置場所が予め定まっていないものであって」、「前記基地局(4)との無線通信が可能であり、磁気吸着用のマグネット(36)を用いて前記任意の場所に設置される」点は、当業者が容易になし得たこととは言えない。 また、固定したい物体にマグネットを付けることは周知の技術であるが(例えば、甲1-11の段落【0020】、甲1-12の段落【0072】参照。)、上記のとおり、甲1-1発明においてマグネットを用いて設置する動機付けはない。 しかも、甲1-1は、GPSアンテナ21に磁石を設けたものであり、また、甲1-12は、排気遮蔽部材420にマグネット428を設けたものであるので、甲1-1発明のような基地局との無線通信が可能なアンテナとは異なるものである。 よって、本件発明1の「アンテナユニット(3)」が、「設置場所が予め定まっていないものであって」、「前記基地局(4)との無線通信が可能であり、磁気吸着用のマグネット(36)を用いて前記任意の場所に設置される」点は、甲1-1発明及び周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 以上のことから、相違点3について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1-1発明、甲1-2発明及び周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 なお、異議申立人1は、令和4年2月1日提出の意見書において、「極超短波以上の周波数の電波は回折が少なく直進するため、通信距離には関係なく、金属板等の電波を遮るものが存在すれば、それがビルであろうと筐体であろうと影響を受ける。また、反射等によるマルチパスも通信距離の長短によらずに生じうる。したがって、通信先(基地局等)が、空調機のユーザの構内にあろうと、50km先にあろうと、技術的に本質的な差異はないと言ってよい。」(第7頁第2~7行)、 「甲1-1に記載の発明においても、メモリデバイス100をホストデバイス200の筐体外に設置すること、それに伴いインタフェース(ケーブル)を筐体の外へ引き出すことでメモリデバイス100の位置や向きを自由に変更でき、ホストデバイス200の配置や周辺環境に起因して保守端末300との通信環境が良くない場合の対応ができるようになる(本件発明1による改善点と同様である)。そして、上記gより、ビニルキャブタイヤケーブルは周知技術であり、上記hより、マグネットで任意の場所に設置できるようにすることも周知技術であり、上記jより、通信距離の差による技術的に本質的な差異はない。したがって、当業者であれば、甲1-1に記載の発明に周知技術を適用することによって、基地局と通信する際の通信環境を改善することは、容易に想到可能と考えられる。」(第8頁第7~16行)と主張する。 しかしながら、上記相違点1についての検討で述べたとおり、筐体によって電波の減衰及び遮断が生じることになる状況の改善をすること(甲1-1発明)と、基地局との通信環境が良くない状況を改善すること(本件発明1)とは技術的に異なるものである。 そして、甲1-1発明のようにメモリデバイス100を筐体外に設置しただけでは、基地局との無線環境が良くない状況を必ずしも改善することはできないことを踏まえると、両者を本質的に差異がないものとすることはできない。 さらに、ケーブルを基地局(4)との無線通信に適した任意の場所まで延ばす点や、アンテナユニットを、基地局(4)との無線通信が可能であり、磁気吸着用のマグネット(36)を用いて前記任意の場所(基地局(4)との無線通信に適した任意の場所)に設置する点を示す具体的な証拠もない。 したがって、ビニルキャブタイヤケーブルを用いることや、マグネットで任意の場所に設置できるようにすることが周知技術であったとしても、甲1-1発明及び周知の技術に基づいて本件発明1の構成とすることは当業者が容易になし得たこととはいえない。 よって、異議申立人1の主張は採用できない。 (2)本件発明2~5について 本件発明2~5は、本件発明1を直接又は間接的に引用するものであるから、同様に、甲1-1発明、甲1-2発明及び周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3)本件発明8について 本件発明8と甲1-1a発明とを対比すると、 「室外機の外枠を成す筐体(11)を有する空調機(1)であって、 前記空調機(1)の外枠を成す筐体(11)の内部に設けられた制御基板(12)と、 前記筐体(11)の内部に設けられ、前記制御基板(12)から必要な電気信号を取り出し、有線伝送用のディジタル信号に変換する第1の通信変換部(13)と、 一端が、前記第1の通信変換部(13)に接続され、前記筐体(11)の内部から前記筐体(11)の外部へ引き出されたケーブルと、 前記ケーブルの前記他端と接続され、前記ディジタル信号を前記無線通信用の信号に変換する第2の通信変換部(33)及びアンテナ(35)を有するアンテナユニット(3)と、 を備えている空調機。」 である点で一致し、以下の点で相違する。 [相違点1’] ケーブルに関して、本件発明8では、「他端が基地局(4)との無線通信に適した任意の場所まで延ばされた、2芯のビニルキャブタイヤケーブル(2)」であるのに対し、甲1-1a発明では、筐体によって電波の減衰及び遮断が生じることになる状況の改善のため、USB、Ethernetのようなインターフェースを物理的に延長したものである点。 [相違点2’] アンテナユニット(3)に関して、本件発明8では、「設置場所が予め定まっていないものであって」、「前記基地局(4)との無線通信が可能であり、磁気吸着用のマグネット(36)を用いて前記任意の場所に設置される」のに対し、甲1-1a発明では、そのように特定されていない点。 [相違点3’] 第2の通信変換部(33)及びアンテナ(35)に関して、本件発明8では、「ビニルキャブタイヤケーブル(2)の前記他端と接続される基板(31)上に」「搭載され」ているのに対し、甲1-1a発明では、そのような基板を有するのか不明である点。 上記相違点1’~3’は、上記A(1)で検討した相違点1~3と同様のものであるから、同様に本件発明8は、甲1-1a発明、甲1-2発明及び周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (4)まとめ したがって、本件発明1~5、8は、甲1-1発明(甲1-1a発明)、甲1-2発明及び周知の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 B 異議申立人2の甲2-1を主引例とした場合 (1)本件発明1について 本件発明1と甲2-1発明とを対比する。 ア 甲2-1発明の「空調機についての、遠隔監視システム」は、本件発明1の「空調機(1)についての、通信システム」に相当する。 イ 甲2-1発明は、「空調機の外枠を成す筐体と、前記空調機と接続されたシールド線である信号線と」を備えているから、本件発明1の「前記筐体(11)の外部へ引き出され」た「ケーブル」に相当する構成を有している。 ウ 甲2-1発明の「Wi-Fiルータ」はアクセスポイント機能を備えているから本件発明1の「基地局」に相当する。また、甲2-1発明の「ゲートウェイ及びゲートウェイに接続されWi-Fiルータとの無線通信が可能なLANコンバータ」は、ディジタル信号を無線通信用の信号に変換する通信変換部としての機能を有するとともに、Wi-Fiルータと無線通信をするアンテナを有するといえる。 よって、甲2-1発明は、本件発明1の「ケーブル(2)の他端と接続され」「前記ディジタル信号を前記無線通信用の信号に変換する第2の通信変換部(33)及びアンテナ(35)」を有し「基地局(4)との無線通信が可能なアンテナユニット(3)」に相当する構成を有している。 そうすると、本件発明1と甲2-1発明とは、 「空調機(1)についての、通信システムであって、 前記筐体(11)の外部へ引き出されたケーブルと、 前記ケーブルの前記他端と接続され、前記ディジタル信号を前記無線通信用の信号に変換する第2の通信変換部(33)及びアンテナ(35)を有し、前記基地局(4)との無線通信が可能なアンテナユニット(3)と、 を備えている空調機の通信システム。」 である点で一致し、以下の点で相違する。 [相違点4] 本件発明1は、「空調機(1)の室外機の外枠を成す筐体(11)の内部に設けられた制御基板(12)」を備えるのに対し、甲2-1発明は、そのような制御基板を備えるかどうか不明な点。 [相違点5] 本件発明1は、「筐体(11)の内部に設けられ、制御基板(12)から必要な電気信号を取り出し、有線伝送用のディジタル信号に変換する第1の通信変換部(13)」を備えるのに対し、甲2-1発明は、そのような第1の通信変換部を備えるのかどうか不明な点。 [相違点6] ケーブルに関して、本件発明1は、「一端が、前記第1の通信変換部(13)に接続され、前記筐体(11)の内部から前記筐体(11)の外部へ引き出され、かつ、他端が基地局(4)との無線通信に適した任意の場所まで延ばされた、2芯のビニルキャブタイヤケーブル(2)」であるのに対し、甲2-1発明は、空調機と接続されたシールド線である点。 [相違点7] 第2の通信変換部(33)及びアンテナ(35)に関して、本件発明1では、「ビニルキャブタイヤケーブル(2)の前記他端と接続される基板(31)上に」「搭載され」ているのに対し、甲2-1発明では、そのような基板を有するのか不明である点。 [相違点8] アンテナユニット(3)に関して、本件発明1では、「設置場所が予め定まっていないものであって」、「磁気吸着用のマグネット(36)を用いて前記任意の場所に設置される」のに対し、甲2-1発明では、そのように特定されていない点。 事案に鑑み、まず相違点8について検討する。 甲2-1発明のゲートウェイ及びLANコンバータは、Wi-Fiルータとの無線通信が可能な場所等にねじ等で固定するのが普通であり、そのように固定すれば十分なものであるといえる。 しかしながら、このようなゲートウェイ及びLANコンバータを、磁気吸着用のマグネットを用いて着脱可能に固定する場合には、ねじ等を用いて固定するよりも割高になるとともに、取り付けが不安定となりかねない。 したがって、甲2-1発明において、ゲートウェイ及びLANコンバータ(アンテナユニット(3))を磁気吸着用のマグネットを用いて任意の場所に設置する動機付けはない。 そうすると、甲2-1発明において、ゲートウェイ及びLANコンバータ(アンテナユニット(3))が「設置場所が予め定まっていないものであって」、「磁気吸着用のマグネット(36)を用いて前記任意の場所に設置される」点は、当業者が容易になし得たこととは言えない。 また、アンテナユニットを磁気吸着用のマグネットにより取り付けることは周知の技術であるが (例えば、参考資料4の段落[0011]~[0013]、参考資料5の段落[0026]、[0041]参照。)、上記のとおり、甲2-1発明においてマグネットを用いて設置する動機付けはない。 よって、本件発明1の「アンテナユニット(3)」が、「設置場所が予め定まっていないものであって」、「磁気吸着用のマグネット(36)を用いて前記任意の場所(基地局(4)との無線通信に適した任意の場所)に設置される」点は、甲2-1発明及び周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 以上のことから、相違点4~7について検討するまでもなく、本件発明1は、甲2-1発明及び周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 なお、異議申立人2は、令和4年2月2日提出の意見書において、「また、『磁気吸着用のマグネット(36)を用いて前記任意の場所に設置されるアンテナユニット(3)』に関し、参考資料4の段落[0011]~[0013]には、ケーブル10に接続され、アンテナ22を有する無線ユニット21のケース本体の上面の取付け面24に永久磁石25を埋設し、永久磁石25を用いて無線ユニット21を蓋体5の裏面の任意の位置に取り付ける構成が記載されている。 また、参考資料5の段落[0026]、[0041]には、空調制御システムの一部として利用されるワイヤレスの温度および/または湿度センサーアセンブリ10の据付け部材26に磁石80を含み、磁石80を用いて、センサーアセンブリ10をコンピュータラック100のドアまたはフレーム上の任意の場所に設置する構成が記載されている。このように、アンテナユニットを磁気吸着用のマグネットにより取り付けることは周知の技術である。 参考資料4はケーブルに接続された無線ユニットを備える点で甲2-1、甲2-11発明と共通する。また、参考資料5は空調機に関する技術であり、甲2-1、甲2-11発明と技術分野が共通する。したがって、上記の従来周知の技術事項を甲2-1あるいは甲2-11発明に適用することは当業者にとって適宜なし得ることにすぎない。」(第7頁第5~20行)と主張する。 しかしながら、上記のとおり、甲2-1発明において、ゲートウェイ及びLANコンバータ(アンテナユニット(3))を磁気吸着用のマグネットを用いて任意の場所に設置する動機付けはない。 しかも、参考資料4の永久磁石25は、蓋体5から無線ユニット21を簡単に取り外すことができるためのものであり([0013])、本件発明1のように基地局との無線通信に適した任意場所に設置するためのものではない。また、参考資料5の複数の磁石80は、センサーアセンブリ10をコンピュータラック100のドアまたはフレーム上に素早く、楽に設置されることを可能とするものであり([0041])、本件発明1のように基地局との無線通信に適した任意場所に設置するためのものではない。 したがって、本件発明1は、甲2-1発明及び周知の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 よって、異議申立人2の主張は採用できない。 (2)本件発明2~5について 本件発明2~5は、本件発明1を直接又は間接的に引用するものであるから、同様に、甲2-1発明及び周知の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3)本件発明8について 本件発明1と甲2-1a発明とを対比する。 上記B(1)のア~ウの検討を踏まえると、本件発明1と甲2-1a発明とは、 「外枠を成す筐体(11)を有する空調機(1)であって、 前記筐体(11)の外部へ引き出されたケーブルと、 前記ケーブルの前記他端と接続され、前記ディジタル信号を前記無線通信用の信号に変換する第2の通信変換部(33)及びアンテナ(35)を有し、前記基地局(4)との無線通信が可能なアンテナユニット(3)と、 を備えている空調機。」 である点で一致し、以下の点で相違する。 [相違点4’] 本件発明1は、「空調機(1)の室外機の外枠を成す」「筐体(11)の内部に設けられた制御基板(12)」を備えるのに対し、甲2-1a発明は、そのような制御基板を備えるかどうか不明な点。 [相違点5’] 本件発明1は、「筐体(11)の内部に設けられ、制御基板(12)から必要な電気信号を取り出し、有線伝送用のディジタル信号に変換する第1の通信変換部(13)」を備えるのに対し、甲2-1a発明は、そのような第1の通信変換部を備えるのかどうか不明な点。 [相違点6’] ケーブルに関して、本件発明1は、「一端が、前記第1の通信変換部(13)に接続され、前記筐体(11)の内部から前記筐体(11)の外部へ引き出され、かつ、他端が基地局(4)との無線通信に適した任意の場所まで延ばされた、2芯のビニルキャブタイヤケーブル(2)」であるのに対し、甲2-1a発明は、空調機と接続されたシールド線である点。 [相違点7’] 第2の通信変換部(33)及びアンテナ(35)に関して、本件発明1では、「ビニルキャブタイヤケーブル(2)の前記他端と接続される基板(31)上に」「搭載され」ているのに対し、甲1-1a発明では、そのような基板を有するのか不明である点。 [相違点8’] アンテナユニット(3)に関して、本件発明1では、「設置場所が予め定まっていないものであって」、「磁気吸着用のマグネット(36)を用いて前記任意の場所に設置される」のに対し、甲2-1a発明では、そのように特定されていない点。 上記相違点4’~8’は、上記B(1)で検討した相違点4~8と同様のものであるから、同様に本件発明8は、甲2-1a発明及び周知の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (4)まとめ したがって、本件発明1~5、8は、甲2-1発明(甲2-1a発明)及び周知の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 C 異議申立人2の甲2-11を主引例とした場合 (1)本件発明1について 本件発明1と甲2-11発明とを対比する。 ア 甲2-11発明の「空調機についての、無線通信による遠隔監視システム」は、本件発明1の「空調機(1)についての、通信システム」に相当する。 イ 甲2-11発明は、「空調機の外枠を成す筐体と、前記空調機と接続された室外操作線である2芯ケーブルと」を備えているから、本件発明1の「前記筐体(11)の外部へ引き出され」た「ケーブルに相当する構成を有している。 ウ 甲2-11発明の「筐体の外部で前記室外操作線の他端に接続され、基地局との無線通信が可能な遠隔監視アダプタ」は、本件発明1の「ケーブル(2)の他端と接続され」「基地局(4)との無線通信が可能なアンテナユニット(3)」に相当する構成を有している。 そうすると、本件発明1と甲2-11発明とは、 「空調機(1)についての、通信システムであって、 前記筐体(11)の外部へ引き出されたケーブル(2)と、 前記ケーブル(2)の前記他端と接続され、前記基地局(4)との無線通信が可能なアンテナユニット(3)と、 を備えている空調機の通信システム。」 である点で一致し、以下の点で相違する。 [相違点9] 本件発明1は、「空調機(1)の室外機の外枠を成す筐体(11)の内部に設けられた制御基板(12)」を備えるのに対し、甲2-11発明は、そのような制御基板を備えるかどうか不明な点。 [相違点10] 本件発明1は、「筐体(11)の内部に設けられ、制御基板(12)から必要な電気信号を取り出し、有線伝送用のディジタル信号に変換する第1の通信変換部(13)」を備えるのに対し、甲2-11発明は、そのような第1の通信変換部を備えるのかどうか不明な点。 [相違点11] ケーブルに関して、本件発明1は、「一端が、前記第1の通信変換部(13)に接続され、前記筐体(11)の内部から前記筐体(11)の外部へ引き出され、かつ、他端が基地局(4)との無線通信に適した任意の場所まで延ばされた、2芯のビニルキャブタイヤケーブル(2)」であるのに対し、甲2-11発明は、空調機と接続された室外操作線である2芯ケーブルである点。 [相違点12] 第2の通信変換部(33)及びアンテナ(35)に関して、本件発明1では、「ビニルキャブタイヤケーブル(2)の前記他端と接続される基板(31)上に」「搭載され」ているのに対し、甲2-11発明では、そのような基板を有するのか不明である点。 [相違点13] アンテナユニット(3)に関して、本件発明1では、「設置場所が予め定まっていないものであって」、「磁気吸着用のマグネット(36)を用いて前記任意の場所に設置される」のに対し、甲2-11発明では、そのように特定されていない点。 事案に鑑み、まず相違点13について検討する。 甲2-11には、以下のとおり、遠隔監視アダプターの取付金具が、室外機の外面に取り付けられた点が示されており、該取付金具には突起のような形状や、ビス穴のようなものがあることが示されている。このような固定金具を設けた遠隔監視アダプターは、突起やビス等により固定されると考えることが自然である。 [図:0001386095000006.jpg] しかしながら、遠隔監視アダプターを、磁気吸着用のマグネットを用いて着脱可能に固定する場合には、突起やビス等を用いて固定するよりも割高になるとともに、取り付けが不安定となりかねない。 したがって、甲2-11発明において、遠隔監視アダプター(アンテナユニット(3))を磁気吸着用のマグネットを用いて任意の場所に設置する動機付けはない。 また、上記B(1)で検討したとおり、アンテナユニットを磁気吸着用のマグネットにより取り付けることは周知の技術であっても、甲2-11発明において、周知の技術を適用する動機付けはない。 そうすると、甲2-11発明において、遠隔監視アダプター(アンテナユニット(3))が「設置場所が予め定まっていないものであって」、「磁気吸着用のマグネット(36)を用いて前記任意の場所に設置される」点は、当業者が容易になし得たこととは言えない。 以上のことから、相違点9~12について検討するまでもなく、本件発明1は、甲2-11発明及び周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 なお、異議申立人2は、令和4年2月2日提出の意見書において、「第3頁の配線接続図には、遠隔監視アダプタの設置の施行例の写真が示されている。当該写真において、遠隔監視アダプタは室外機の外面ではなく、壁に設けた盤上に取り付けられており、必ずしも室外機の外面に取り付ける必要はないことが示されている。 ・・・ さらに、遠隔監視アダプタの仕様を示す参考資料3において、設置場所は「屋外または屋内の垂直面」とされており、設置場所は限定されていない。加えて、甲2-11の第3頁の配線接続図を見ても、遠隔監視アダプタは室外機から離れた位置に記載されており、室外機の外面に設置されるものと限定することはできない。よって、遠隔監視アダプタは、「設置場所が予め定まっていないものであって」「前記基地局(4)との無線通信が可能であり」「前記任意の場所に設置される」ことに相当する構成を有している。」(第6頁第14行~第7頁第4行)と主張する。 しかしながら、遠隔監視アダプターを壁や、屋外または屋内の垂直面に設置する場合には、ビスなどにより強固に固定する必要があるから(参考資料3には「設置場所」の下の欄に「取付け方法」として「壁面取り付け(ビス止め)」との記載がある。)、なおさら、磁気吸着用のマグネットを用いて任意の場所に設置する動機付けはない。 したがって、甲2-11発明において、遠隔監視アダプターが「磁気吸着用のマグネット(36)を用いて前記任意の場所に設置される」点は、当業者が容易になし得たこととは言えない。 よって、異議申立人2の主張は採用できない。 (2)本件発明2~5について 本件発明2~5は、本件発明1を直接又は間接的に引用するものであるから、同様に、甲2-11a発明及び周知の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3)本件発明8について 本件発明1と甲2-11a発明とを対比する。 上記C(1)のア~ウの検討を踏まえると、本件発明1と甲2-11a発明とは、 「外枠を成す筐体(11)を有する空調機(1)であって、 前記筐体(11)の外部へ引き出されたケーブルと、 前記ケーブルの前記他端と接続され、前記ディジタル信号を前記無線通信用の信号に変換する第2の通信変換部(33)及びアンテナ(35)を有し、前記基地局(4)との無線通信が可能なアンテナユニット(3)と、 を備えている空調機。」 である点で一致し、以下の点で相違する。 [相違点9’] 本件発明1は、「空調機(1)の室外機の外枠を成す」「筐体(11)の内部に設けられた制御基板(12)」を備えるのに対し、甲2-11a発明は、そのような制御基板を備えるかどうか不明な点。 [相違点10’] 本件発明1は、「筐体(11)の内部に設けられ、制御基板(12)から必要な電気信号を取り出し、有線伝送用のディジタル信号に変換する第1の通信変換部(13)」を備えるのに対し、甲2-11a発明は、そのような第1の通信変換部を備えるのかどうか不明な点。 [相違点11’] ケーブルに関して、本件発明1は、「一端が、前記第1の通信変換部(13)に接続され、前記筐体(11)の内部から前記筐体(11)の外部へ引き出され、かつ、他端が基地局(4)との無線通信に適した任意の場所まで延ばされた、2芯のビニルキャブタイヤケーブル(2)」であるのに対し、甲2-11a発明は、空調機と接続された室外操作線である2芯ケーブルである点。 [相違点12’] 第2の通信変換部(33)及びアンテナ(35)に関して、本件発明1では、「ビニルキャブタイヤケーブル(2)の前記他端と接続される基板(31)上に」「搭載され」ているのに対し、甲2-11a発明では、そのような基板を有するのか不明である点。 [相違点13’] アンテナユニット(3)に関して、本件発明1では、「設置場所が予め定まっていないものであって」、「磁気吸着用のマグネット(36)を用いて前記任意の場所に設置される」のに対し、甲2-11a発明では、そのように特定されていない点。 上記相違点9’~13’は、上記C(1)で検討した相違点9~13と同様のものであるから、同様に本件発明8は、甲2-11a発明及び周知の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (4)まとめ したがって、本件発明1~5、8は、甲2-11発明(甲2-11a発明)及び周知の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 6 むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1~5、8に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に請求項1~5、8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 そして、請求項6及び7に係る特許は、上記のとおり、訂正により削除された。これにより、異議申立人1、2による特許異議の申立てについて、請求項6及び7に係る申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。 よって、結論のとおり決定する。

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2020-700928

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