特許異議申立
2022-701000
ベントキャップ
- 審判番号
- 2022-701000
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2021-106859
- 登録番号
- 7052125
- 請求日
- 2022年10月11日
- 審決日
- 2024年08月30日
- 公報発行日
- 2024年12月27日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】株式会社ユニックス
- 【権利者代理人】大竹 正悟
- 【異議申立人】株式会社 シルファー
- 【異議申立人代理人】吉井 剛
- 審判長/審判官
- 審判長 水野 治彦
- 審判官 間中 耕治
- 審判官 村山 美保
- 分類
- P1651.121-YAA(F24F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7052125号発明「ベントキャップ」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7052125号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項[1~9]について訂正することを認める。
特許第7052125号の請求項1~9に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7052125号の請求項1~9に係る特許は、令和3年6月28日の出願であって、令和4年4月1日にその特許権の設定登録がされ、同年4月11日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和4年10月11日 :特許異議申立人 株式会社シルファー(以下「申立人」という。)による請求項1~9に係る特許に対する特許異議の申立て
令和5年 2月14日 :申立人による上申書の提出
同年 5月18日 :検証及び証人尋問
同年 6月29日付け:取消理由通知
同年 9月 1日 :特許権者による意見書の提出
同年10月 2日付け:申立人に対する審尋
同年10月17日 :申立人による回答書の提出
同年12月18日付け:取消理由通知(決定の予告)
令和6年 2月16日 :特許権者による意見書の提出及び訂正の請求
同年 2月29日 :手続補正指令(方式)
同年 3月18日 :特許権者による手続補正
同年 5月 7日 :申立人による意見書の提出
第2 本件訂正の適否
1.訂正の内容
令和6年3月18日にした手続補正で補正された令和6年2月16日の訂正の請求(以下、「本件訂正」という。)の内容は、訂正箇所に下線を付して示すと、以下のとおりである。
特許請求の範囲の請求項1に「前記差込筒から前記カバーに吹き込む前記気流を、前記前面部の前方側に吹き出すように整流するものである」とあるのを、「前記差込筒から前記カバーに吹き込む前記気流を、前記前面部の前方側に吹き出すように整流するものであり、前記ベントキャップは、前記側面開口部から前記気流を前記壁面に対して50°以上の角度で前記前方側に吹き出すものである」に訂正する(以下、「訂正事項」という。)。
2.訂正の適否
(1)訂正の目的
訂正事項は、訂正前の請求項1における「ベントキャップ」の「前記差込筒から前記カバーに吹き込む前記気流を、前記前面部の前方側に吹き出すように整流」する作用について、その角度を「前記側面開口部から前記気流を前記壁面に対して50°以上の角度で前記前方側に吹き出す」ことに限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(2)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてする訂正であること
願書に添付した明細書の段落【0056】に「図4で示した例では、最も壁寄りに吹き出す気流は、壁面Wから50°の位置にある。」と記載されているから、訂正事項は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてする訂正である。
(3)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項は、気流を前方側に吹き出す角度を直列的に追加するものであって、カテゴリーや対象を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(4)一群の請求項
訂正前の請求項1~9について、請求項2~9は、請求項1を直接的又は間接的に引用しているものであって、訂正事項によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項1~9に対応する訂正後の請求項1~9は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
3.まとめ
したがって、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項、第6項に適合するから、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項[1~9]について訂正することを認める。
第3 訂正後の本件発明
本件訂正により訂正された請求項1~9に係る発明(以下「本件発明1」~「本件発明9」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~9に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
【請求項1】
建物の壁面に形成された換気口に差し込まれる差込筒を有するベースと、
前記ベースに組み付けるカバーとを備えるベントキャップにおいて、
前記カバーは、
前記差込筒の前方を覆う前面部と、
前記ベースと前記前面部との間にある側面部と、
前記カバーの上部を覆う天面部と、
前記カバーの下部を覆う底面部とを有し、
前記側面部は、
前記ベースの側から前記前面部の側に向かって前記差込筒の軸心に近づく方向に傾斜する側面傾斜部を有しており、
前記側面傾斜部には、前記差込筒からの気流を吹き出す側面開口部が形成されており、
前記側面開口部には、上下方向に伸長し、前記側面傾斜部に沿って互いに間隔を空けて配置される複数の桟が設けられており、
前記複数の桟は、前記差込筒の筒内に向けて伸長する整流翼片をそれぞれ有し、
複数の前記整流翼片は、いずれも前記差込筒の軸方向に対して45°以下の傾斜角度を有し、前記差込筒から前記カバーに吹き込む前記気流を、前記前面部の前方側に吹き出すように整流するものであり、
前記ベントキャップは、前記側面開口部から前記気流を前記壁面に対して50°以上の角度で前記前方側に吹き出すものであることを特徴とする
ベントキャップ。
【請求項2】
前記前面部には、前記気流を前記前面部の前方に吹き出す整流用前面通気部が設けられており、
前記整流用前面通気部は、前記側面開口部に隣接した領域から吹き出す前記気流が、前記側面開口部から吹き出す前記気流を引き寄せて前記前面部の前方側に吹き出すように誘導するものである
請求項1記載のベントキャップ。
【請求項3】
前記整流用前面通気部は、前記前面部の左右方向における全幅に対し、前記前面部の左右における端部から30%未満の位置に設けられている
請求項2記載のベントキャップ。
【請求項4】
前記前面部は、前記差込筒からの前記気流を前記側面開口部に受け流す傾斜面を有する
請求項1~請求項3いずれか1項記載のベントキャップ。
【請求項5】
前記傾斜面は、前記差込筒の軸方向の直交方向に対して15°以下の傾斜角度を有する
請求項4記載のベントキャップ。
【請求項6】
前記側面開口部は、前記側面傾斜部の前記壁面の側における端に接して形成されている
請求項1~請求項5いずれか1項記載のベントキャップ。
【請求項7】
前記側面部は、前記壁面の側における前記側面部を塞ぐ壁面側閉塞部を有する
請求項1~請求項6いずれか1項記載のベントキャップ。
【請求項8】
前記側面部は、前記側面部の上部を塞ぐ上部閉塞部を有しており、
前記ベースは、前方に向かって次第に開口面積が大きくなるベルマウスを有する
請求項1~請求項7いずれか1項記載のベントキャップ。
【請求項9】
前記側面開口部は、前記差込筒の前方への延長線上に位置する
請求項1~請求項8いずれか1項記載のベントキャップ。
第4 取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由について
当審が令和5年12月18日付けの取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由の概要は、次のとおりである。
理由1(進歩性)
本件特許の請求項1~9に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において公然と実施された発明、若しくは、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された以下の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて利用可能になった発明に基いて、本件特許の出願前にその発明の属する技術分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。
請求項1に係る発明に対して:検甲第1号証又は甲第9号証、甲第13~16号証
請求項2、3に係る発明に対して:検甲第1号証又は甲第9号証、甲第13~16号証、甲第18号証
請求項4~9に係る発明に対して:検甲第1号証又は甲第9号証、甲第13~16号証、甲第18号証、甲第19号証
<証拠方法>
1.検証物
検甲第1号証:株式会社シルファーが2009年(平成21年)7月1日から現在まで製造販売している「左右吹出し型フード(WB-150)」
2.人証
証人 安達隆広(株式会社シルファー 開発部長)
証人 渡辺憲治(北英工機有限会社 取締役社長)
3.書証
甲第2号証:証人 安達隆広「陳述書」、2022年10月3日
甲第3号証:「換気口総合カタログ Ventilation Caps & Parts 2014-2015」(抜粋)、株式会社シルファー、2014年10月28日
甲第4号証:「2018Ventilation Caps & Parts Catalog」(抜粋)、株式会社シルファー、2017年12月8日
甲第5号証:「2019Ventilation Caps & Parts Catalog」(抜粋)、株式会社シルファー、2019年3月20日
甲第6号証:「2019→2020Ventilation Caps & Parts Catalog」(抜粋)、株式会社シルファー、2019年9月6日
甲第8号証:証人 渡辺憲治「陳述書」、2022年10月3日
甲第9号証:意匠登録第1585810号公報
甲第13号証:特開2017-44353号公報
甲第14号証:意匠登録第1430536号公報
甲第15号証:意匠登録第1430744号公報
甲第16号証:意匠登録第1538653号公報
甲第17号証:弁理士 吉井剛「甲第9号証乃至甲第16号証に関する報告書」、2022年9月1日
甲第18号証:特開2020-3101号公報
甲第19号証:意匠登録第1273347号公報
第5 当審の判断
1.事実認定
1-1 検甲第1号証について
検甲第1号証については、令和5年5月18日の検証の結果、特に以下の点が明らかとなり、検証調書に記載されている。
(1)構造、形状について
ア 検甲第1号証は、六面で構成される箱状のカバーを有し、このカバーの後面に差込筒が突出した構成からなる。カバーの六面は、前面、天面、底面、後面及び両(右又は左)側面である。
イ 両(左右)側面は、前面側に向かって差込筒の軸心に近づく方向に傾斜する傾斜面であり、傾斜面には、それぞれ6個の開口部が形成されている。
ウ 6個の開口部の間には、上下方向に延びる5本の桟が設けられている。
エ 5本の桟には、カバー内に突出する整流翼片が設けられている。
オ 5本の桟の後面側が折り曲げられて、それぞれ整流翼片が形成されている。
カ 両(左右)側面の天面側と後面側には、それぞれ開口部がない上部閉塞部と壁面側閉塞部が設けられている。
キ 差込筒は、ベースを貫通する態様でベースに固定されており、カバーは、ベースにM4ねじで固定されている。
ク ベースからカバー内部に突出した差込筒の先端には、水返しリングが設けられている。
(2)寸法について
ア カバーの後面側における左右側面の間の長さ(添付設計図の寸法A)を定規で計測した。定規の目盛りは、239mmであった。
イ カバーの後面側における底面から天面までの長さ(添付設計図の寸法B)を定規で計測した。定規の目盛りは、189mmであった。
ウ 差込筒の直径(添付設計図の寸法D)を定規で計測した。定規の目盛りは、147mmであった。
エ カバーの前面から後面側までの長さ(添付設計図の寸法E)を計測するため、机の上面にカバーの前面を置き、机の上面に定規の末端を押し当てて、カバーの後面側までの長さを定規で計測した。定規の目盛りは、103mmであった。
オ カバーの後面側端部から差込筒の後面側端部までの長さ(添付設計図の寸法L)を計測するため、カバーの後面側端部に定規の端部を押し当てて、差込筒の後面側端部までの長さを定規で計測した。定規の目盛りは、49mmであった。
カ カバーの後面側における差込筒から天面までの長さ(添付設計図の寸法Hから寸法Dの1/2を差し引いた寸法)を計測するために、差込筒の外面に定規の端部を押し当てて、天面までの長さを定規で計測した。定規の目盛りは、11mmであった。
キ 定規の端部から「0目盛り」までの長さを定規で計測した。定規の目盛りは、4mmであった。
ク カバーにおける差込筒の軸方向に平行な面と、整流翼片を形成する面と、それぞれに1枚ずつ定規を押し当て、2枚の定規がなす角に指示説明者が用意した型紙をあてて、その角度を計測した。型紙の角度を分度器で計測し、75°であることを確認した。
ケ ベース内面から水返しリングの端部までの長さを計測するため、定規の端部をベース内面に押し当てて、水返しリングの端部までの長さを定規で計測した。定規の目盛りは、22mmであった。
(3)認定事項
検甲第1号証において、最もベースに近い開口は、カバー側面の傾斜面のベース側における端に接して形成されていることが看取できる。
[図:0001417587000001.jpg]
(4)引用発明1
検甲第1号証から、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が認定できる。
<引用発明1>
「ベースを貫通する態様でベースに固定された差込筒と、
ベースにM4ねじで固定されたカバーとを備える角防風型フードにおいて、
カバーは、
差込筒の前方を覆う前面と、
ベースと前面との間にある側面と、
カバーの上部を覆う天面と、
カバーの下部を覆う底面とを有し、
側面は、
前面側に向かって差込筒の軸心に近づく方向に傾斜する傾斜面であり、
傾斜面には、6個の開口部が形成されており、
6個の開口部の間には、上下方向に延びる5本の桟が設けられており
5本の桟には、カバー内に突出する整流翼片がそれぞれに設けられており、
整流翼片は、差込筒の軸方向に対して75°の傾斜角度を有している、
角防風型フード。」
1-2 甲第2号証及び証人 安達隆広の証言について
(1)甲第2号証に記載された事項
甲第2号証には、添付設計図及び添付資料1~14を付して、以下の事項が陳述されている。
ア 「2 排気流を壁から離すことができる当社製品「左右吹出し型フード(WB)」は、私が2008年6月頃開発に着手し、添付設計図で示すように平成21年(2009年)2月27日に開発したセ品で、2009年7月1日に販売開始しました。
上記のとおり、この当社製品は、排気流を壁から離すことができ、壁が汚れるのを抑制することができる製品です。」
イ 「3 また、当社製品「左右吹出し型フード(WB)」には、いずれも基本構造は同一ですが、複数の品番(WB-150(甲1),WB-150D,WB-150N,WB-150DN,WB-100,WB-100D,WB-100N,WB-125,WB-125D,WB-1200N)があります。なお、品番の数字は差込筒の径寸法、Dはダンパーが付設されているタイプ、Nは網が付設されているタイプ、DNはダンパー及び網が付設されているタイプという意味です。」
ウ 「○6(当審注:丸囲みに「6」) 2013年5月21日
北英工機有限会社に当社製品(WB-200N,WB-100N/左吹き,WB-100N,WB-150N,WB-150DN)を販売しました。添付資料8は納品書データのコピー、添付資料9は請求書データのコピーです。なお、上記品番中に記載の「左吹き」は、右側の側面開口部を閉塞して左一方向に吹き出す構造としたという意味で特注製品です。」
エ 「○7(当審注:丸囲みに「7」) 2013年5月23日
北英工機有限会社(東京都大田区大森西6丁目2番13号所在)に当社製品(WB-150N/左吹き)を販売しました。添付資料10は納品書データのコピー、添付資料9は請求書データのコピーです。」
オ 「添付設計図
[図:0001417587000002.jpg]
」
カ 「添付資料8
[図:0001417587000003.jpg]
」
キ 「添付資料9
[図:0001417587000004.jpg]
」
(2)令和5年5月18日に行われた証人尋問
証人 安達隆広は、令和5年5月18日に特許庁審判廷において宣誓の上、以下のとおり述べた。なお、段落番号は、反訳書面による。
ア「
[図:0001417587000005.jpg]
[図:0001417587000006.jpg]
[図:0001417587000007.jpg]
[図:0001417587000008.jpg]
[図:0001417587000009.jpg]
[図:0001417587000010.jpg]
[図:0001417587000011.jpg]
[図:0001417587000012.jpg]
[図:0001417587000013.jpg]
[図:0001417587000014.jpg]
[図:0001417587000015.jpg]
[図:0001417587000016.jpg]
[図:0001417587000017.jpg]
[図:0001417587000018.jpg]
」
イ 「
[図:0001417587000019.jpg]
[図:0001417587000020.jpg]
[図:0001417587000021.jpg]
[図:0001417587000022.jpg]
[図:0001417587000023.jpg]
[図:0001417587000024.jpg]
[図:0001417587000025.jpg]
」
1-3 甲第8号証及び証人 渡辺憲治の証言について
(1)甲第8号証に記載された事項
甲第8号証には、以下の事項が陳述されている。
「当社は、2008年の夏頃、当社が換気口の取り付けを行うことになった現場監督から、取付場所に合った換気口の機種選定を行うよう換気口メーカーである株式会社シルファー様をご紹介頂いたのをきっかけとして株式会社シルファー様との取り引きが始まり、それ以来、現在も換気口が必要になった際には、相談させてもらっています。
上記から、当社は、株式会社シルファー様から、2013年5月21日に「左右吹出し型フード(WB-200N,WB-100N/左吹き,WB-100N,WB-150N,WB-150DN)を149個、2013年5月23日に「左右吹出し型フード(WB-150N/左吹き)」を1個購入しました。」
(2)令和5年5月18日に行われた証人尋問
証人 渡辺憲治は、令和5年5月18日に特許庁審判廷において宣誓の上、以下のとおり述べた。なお、段落番号は、反訳書面による。
ア 「
[図:0001417587000026.jpg]
[図:0001417587000027.jpg]
[図:0001417587000028.jpg]
[図:0001417587000029.jpg]
」
イ「
[図:0001417587000030.jpg]
」
1-4 甲第9号証について
(1)甲第9号証に記載された事項
甲第9号証には、以下の事項が記載されている。
ア 「【意匠に係る物品】換気口」
イ 「【意匠の説明】左側面図は右側面図とそれぞれ対称であるため省略する。」
ウ 「【斜視図】
[図:0001417587000031.jpg]
」
エ 「【正面図】
[図:0001417587000032.jpg]
」
オ 「【背面図】
[図:0001417587000033.jpg]
」
カ 「【右側側面図】
[図:0001417587000034.jpg]
」
キ 「【平面図】
[図:0001417587000035.jpg]
」
ク 「【底面図】
[図:0001417587000036.jpg]
」
ケ 「【A-A断面図】
[図:0001417587000037.jpg]
」
(2)認定事項
甲第17号証から、甲第9号証の整流翼片の傾斜角度が差込筒の軸方向に対して73°であると認められる。
(3)引用発明2
甲第9号証には、次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されているといえる。
なお、甲第9号証が意匠公報であることから、引用発明2の用語は、特許異議申立書における用語を用いた。
<引用発明2>
「差込筒を有するベースと、
ベースに固定されたカバーとを備えるベントキャップであって、
カバーは、
差込筒の前方を覆う前面部と、
ベースと前面部との間にある側面部と、
カバーの上部を覆う天面部と、
カバーの下部を覆う底面部とを有し、
側面部は、
ベースの側から前面部の側に向かって差込筒の軸心に近づく方向に傾斜する側面傾斜部を有し、
側面傾斜部には、3個の開口が形成され、
3個の開口には、上下方向に伸長し、側面傾斜部に沿って互いに間隔を空けて配置される2本の桟が設けられ、
2本の桟及び最もベースに近い開口のベース側は、整流翼片を有し、
整流翼片は、差込筒の軸方向に対して73°の傾斜角度を有している、
ベントキャップ。」
1-5 甲第3号証~甲第6号証について
甲第3号証には、次の事項が記載されている。
ア「
[図:0001417587000038.jpg]
」
イ「
[図:0001417587000039.jpg]
」
(2)甲第4号証には、次の事項が記載されている。
「
[図:0001417587000040.jpg]
」
(3)甲第5号証には、次の事項が記載されている。
「
[図:0001417587000041.jpg]
」
(4)甲第6号証には、次の事項が記載されている。
「
[図:0001417587000042.jpg]
」
1-6 甲第13号証について
甲第13号証には、次の事項が記載されている。
(1)「【技術分野】
【0001】
本発明は、排気フードに関するものであり、より詳細には、室内換気システムの排気路外端に設置されるフードで、外部気流により、室内からのスムーズな排気が阻害されたり逆流を起こしたりすることがなく、また、排気により設置部周辺の壁面が汚れることがない排気フードに関するものである。
【背景技術】
【0002】
高気密、高断熱化が進む昨今の住宅においては、室内汚染空気の排出のために、所謂24時間換気システムが採用されることが多くなってきている。このシステムにおいては、排気ファンの作用で、室内の汚染空気が排出されるに伴い、外気が緩やかに導入される。排気ファンは、壁面の貫通孔に嵌入される、通例塩化ビニル製の配管に接続され、その配管の外端部に、室外側から設置される排気フードの筒状嵌合部が装入される。
・・・
【0004】
このような遮蔽板の取り付けに複数の支脚を用いる構成の場合は、風の影響を受けやすく、強風に晒されることを考えると強度上の問題があるだけでなく、雨雪等が浸入するおそれがあり、また、排出空気の一部が壁面に当たり続けることで、次第に壁面が汚れてくるという問題がある。」
(2)「【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記従来技術における問題点に鑑みてなされたもので、排出空気及び配管と筒状本体との間の隙間からの漏出空気によって排気フード設置部周囲の外壁面が汚されるおそれがなく、風の影響を受けにくくて室内空気のスムーズな排出が阻害されない排気フードを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための請求項1に記載の発明は、配管内に嵌合される嵌合筒と、前記嵌合筒の端部に設置される深皿状の受け枠と、前記受け枠内に設置される通気筒と、前記通気筒を閉塞する遮蔽板とから成り、前記受け枠の開口縁は外方に拡開するテーパ面とされ、前記通気筒は、その外周面全体に小さな通気口を縦横に多数開設し、その通気口のそれぞれに、前記受け枠のテーパ面の傾斜に対応する角度に傾斜するガイド片を付設して構成され、前記遮蔽板は内方に凹む球面状に形成されることを特徴とする排気フードである。」
1-7 甲第14号証~甲第16号証について
(1)甲第14号証には、次の事項が記載されている。
ア「【意匠に係る物品】換気口」
イ「【正面図】
[図:0001417587000043.jpg]
」
ウ「【右側面図】
[図:0001417587000044.jpg]
」
エ「【A-A断面図】
[図:0001417587000045.jpg]
」
オ 甲第17号証から、甲第14号証に記載された整流翼片は、傾斜角が差込筒の軸方向に対して43°であると認められる。
(2)甲第15号証には、次の事項が記載されている。
ア「【意匠に係る物品】換気口」
イ「【正面図】
[図:0001417587000046.jpg]
」
ウ「【右側面図】
[図:0001417587000047.jpg]
」
エ「【A-A断面図】
[図:0001417587000048.jpg]
」
オ 甲第17号証から、甲第15号証に記載された整流翼片は、傾斜角が差込筒の軸方向に対して43°であると認められる。
(3)甲第16号証には、次の事項が記載されている。
ア「【意匠に係る物品】建物用換気口」
イ「【正面図】
[図:0001417587000049.jpg]
」
ウ「【A-A断面図】
[図:0001417587000050.jpg]
」
エ 甲第17号証から、甲第16号証に記載の整流翼片は、差込筒に向けて伸長し、傾斜角が差込筒の軸方向に対して22°であると認められる。
1-8 甲第18号証について
(1)甲第18号証に記載された事項
甲第18号証には、次の事項が記載されている。
ア「【技術分野】
【0001】
本発明は換気口カバーに関し、特に建物の壁面に開口する通気孔に取り付けられる換気口カバーに関する。
【背景技術】
【0002】
建物の内外を貫通するように壁に形成されており、建物の内部空間を換気するための通気孔の開口端には、風雨等の異物の侵入を阻止する換気口カバーが取り付けられている(一例として特許文献1参照)。しかしながら、外壁は、換気口カバーから吹き出す気流に曝されて汚れてしまうことがある。これに対し、特許文献1の換気口カバーは、通気孔に向けて突出する錐形状となっており下端側に通気孔と屋外とを連通する通気開口を有するドーム部と、ドーム部の斜面に沿って通気開口に向かう通気路の上側を閉塞する整流部とを備えている。これによって、換気口カバーは、通気路の上側に生じる乱流を抑え、通気開口から出される気流を外壁から離間するように流して壁面汚れを防止するようにしている。」
イ「【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の換気口カバーでは錐形状のドーム部によって構造が大型化してしまい、小型の換気口カバーが求められる建物については適さないことがある。
【0005】
以上のような従来技術を背景になされたのが本発明である。本発明の目的は、従来の換気口カバーと同様に壁面汚れの防止機能を備えながらも小型化できる換気口カバーを提供することにある。」
ウ「【0030】
角型グリル1
【0031】
角型グリル1は、建物の壁等に形成された通気孔H(図4及び図5参照)に取り付けられるものである。角型グリル1は、例えば屋外の空気を取り入れて建物の内部空間の換気を行うために屋内に設けられる。角型グリル1は、図1等で示すように、ベース部10と、フェイス部20とを備えている。」
エ「【0039】
フェイス部20は、図1等で示すように、Y方向における後方が開放した箱状に形成されている。「前面部」を形成する前壁部22は、角型グリル1のY方向における前端に位置している。前壁部22は、ベース部10の背面板11と同様に、XZ平面に沿って伸長し、正面視で長方形状の板面を有する平板状に形成されている。すなわち、前壁部22は、外周に入隅部23を有している(図6参照)。前壁部22は、開口部13の全面を覆う広がりを有している。前壁部22は
、通気孔Hと対向するようにベース部10のY方向における前方に位置している。そして、前壁部22は、正面視で背面板11よりも一回り小さな寸法で形成されている。
【0040】
前壁部22と交差する「側面部」には、上壁部24と、側壁部25、25と、下壁部26とが形成されている。上壁部24及び下壁部26は、前壁部22の上下端からそれぞれXY平面に沿って伸長し、平(底)面視でY方向に比べてX方向により長い長方形状の板面を有する平板状に形成されている。側壁部25、25は、前壁部22の左右端からそれぞれYZ平面に沿って伸長し、側面視でY方向に比べてZ方向により長い長方形状の板面を有する平板状に形成されている。そして、フェイス部20は、上壁部24、側壁部25、25及び下壁部26のY方向における後端と背面板11の外辺とが連結するようにしてベース部10と嵌合するように構成されている。
【0041】
上壁部24、側壁部25、25及び下壁部26には、それぞれ通気開口21、21、21、21が形成されている。通気開口21、21、21、21は、通気孔Hとフェイス部20の外部とを連通している。通気開口21、21、21、21は、前壁部22と交差する「側面部」としての上壁部24、側壁部25、25及び下壁部26に形成されることで、差込筒12の内部を通過した気流の進行方向を変えることができる。より具体的には、通気開口21、21、21、21は、通気孔H及び差込筒12を介してY方向における前方に向かってフェイス部20に進行してきた気流をX方向における左右(図5参照)及びZ方向における上下(図4参照)に向かうように変えることができる。したがって、角型グリル1は、差込筒12を通過した空気が角型グリル1の上下左右に抜けるようにして屋内に導入されるように構成されている。」
オ「【0059】
フェイス部20は、「スリット」としての上下スリット51、51及び左右スリット52、52を有している。上下スリット51、51及び左右スリット52、52は、通気孔Hとフェイス部20の外部とを連通する機能を有している。言い換えると、上下スリット51、51及び左右スリット52、52は、整流フィン30と前壁部22の内面との間を流れる気流を外部に吹き出す機能を有している。上下スリット51、51は、前壁部22に開口する孔であるのに対し、左右スリット52、52は、整流フィン30と前壁部22の内面との間に設けられた開口である。上下スリット51、51及び左右スリット52、52は、図1等で示すように、長方形状の前壁部22の4辺にそれぞれ沿うようにして形成されている。
【0060】
前壁部22のZ方向における上及び下に形成されている上下スリット51、51は、前壁部22の上辺及び下辺の近くで前壁部22をY方向に貫通するようにしてX方向に細長く伸長するように形成されている。上下スリット51、51をなす孔は、前壁部22に開口しているので、フェイス部20の前壁部22から気流を吹き出すことができる。よって、角型グリル1は、前壁部22に上下スリット51、51を有することで、建物の壁面Wから遠ざけるように気流を吹き出すことができる。
【0061】
前壁部22のX方向における左及び右に形成されている左右スリット52、52は、前壁部22と整流フィン30との左端及び右端において前壁部22と整流フィン30との間を抜けるようにしてZ方向に伸長するように形成されている。左右スリット52、52は、整流フィン30と前壁部22の内面との間における開口として設けられているので、特に整流フィン30の外縁31において渦や乱流等を生じさせる角部や段差等が存在しない構成とすることが容易にできる。したがって、左右スリット52、52から吹き出す気流を傾斜面34に沿った揃った流れとすることができる。左右スリット52、52は、上下スリット51、51よりも幅広く形成されている。
・・・
【0063】
しかしながら、フェイス部20では、通気孔Hからの流路の行き止まりとなっている整流フィン30と前壁部22の内面との間が上下スリット51、51及び左右スリット52、52によってフェイス部20の外部に開口している。したがって、整流フィン30と前壁部22の内面との間に流れ込む気流をなるべく乱流が起きないように速やかにフェイス部20の外部に排出できる。このように、フェイス部20では、通気開口21に加えて上下スリット51、51及び左右スリット52、52からも気流がフェイス部20の外部に排出されるため、圧力損失を低減させることができ、換気性能を向上させることができる(図4及び図5参照)。」
カ「【図1】
[図:0001417587000051.jpg]
」
キ「【図5】
[図:0001417587000052.jpg]
」
(2)甲18記載事項
甲第18号証には、「排気口カバーである角型グリル1は、ベース部10とフェイス部20とを備え、角型グリル1のY方向における前端に位置している前壁部22、前壁部22と交差する上壁部24と、側壁部25、25と、下壁部26とが形成され、上壁部24、側壁部25、25及び下壁部26には、それぞれ通気開口21、21、21、21が形成され、通気孔H及び差込筒12を介してY方向における前方に向かってフェイス部20に進行してきた気流をX方向における左右及び上に向かうように変えることができ、
前壁部22のZ方向における上及び下に形成されている上下スリット51、51は、前壁部22の上辺及び下辺の近くで前壁部22をY方向に貫通するようにしてX方向に細長く伸長するように形成され、
前壁部22のX方向における左及び右に形成されている左右スリット52、52は、前壁部22と整流フィン30との左端及び右端において前壁部22と整流フィン30との間を抜けるようにしてZ方向に伸長するように形成され、
通気開口21に加えて上下スリット51、51及び左右スリット52、52からも気流がフェイス部20の外部に排出されるため、圧力損失を低減させることができ、換気性能を向上させることができる」
ことが記載されている(以下、「甲18記載事項」という。)。
1-9 甲第19号証について
(1)甲第19号証には、次の事項が記載されている。
ア「【意匠に係る物品】換気口」
イ「【斜視図】
[図:0001417587000053.jpg]
」
ウ「【正面図】
[図:0001417587000054.jpg]
」
エ「【平面図】
[図:0001417587000055.jpg]
」
オ「【底面図】
[図:0001417587000056.jpg]
」
カ「【A-A断面図】
[図:0001417587000057.jpg]
」
(2)甲第19号証に記載された換気口の前面には、差込筒からの気流を側面の開口に受け流す傾斜面が設けられているものと認められる。
2. 当審の判断
2-1 検甲第1号証が株式会社シルファーの製造販売する「左右吹出し型フード(WB-150)」であることについて
(1)検証調書に記載された検甲第1号証の各部寸法は、以下のとおりである。
ア カバーの後面側における左右側面の間の長さ(寸法A):239mm
イ カバーの後面側における底面から天面までの長さ(寸法B):189mm
ウ 差込筒の直径(寸法D):147mm
エ カバーの前面から後面側までの長さ(寸法E):103+4=107mm
オ カバーの後面側における差込筒中心から天面までの長さ(寸法H)11+4+147/2=88.5mm
カ カバーの後面側端部から差込筒の後面側端部までの長さ(寸法L):49+4=53mm
(2)甲第2号証添付設計図、甲第3号証~甲第6号証に記載の「WB-150」の寸法(A、B、D、E、H、L)と、(1)の各部寸法から、検甲第1号証は、株式会社シルファーが製造販売する「左右吹出し型フード(WB-150)」と認められる。
2-2 株式会社シルファーが製造販売する「左右吹出し型フード(WB―150)」が本件特許の出願前に実施されたことについて
(1)証人 安達隆広の陳述書(甲第2号証)及び証言、証人 渡辺憲治の陳述書(甲第8号証)及び証言を総合すると、本件特許の出願前である2013年5月頃、株式会社シルファーが製造販売する「WB-150N」は、北英工機有限会社に販売されるとともに「プリオール葉山の杜」に取り付けられたものと認められる。
(2)「WB-150N」は、「WB-150」と基本構造が共通であって、側面開口の裏に網を張ったものであることから、株式会社シルファーが製造販売する「左右吹出し型フード(WB-150)」と同じ基本構造を備える「WB-150N」が、本件特許の出願前に公然と実施されたということができる。
(3)してみると、上記第5の1.1-1(4)の引用発明1は、本件特許の出願前に公然と実施された発明ということができる。
2-3.対比・判断
(1)本件発明1について
ア 引用発明1を主引用発明とした場合
(ア)対比
本件発明1と引用発明1とを対比する。
引用発明1の「ベース」、「差込筒」は、本件発明1の「ベース」、「差込筒」に相当する。
引用発明1の「カバー」、「角防風型フード」は、本件発明1の「カバー」、「ベントキャップ」に相当し、引用発明1の「M4ねじで固定され」ることは、本件発明1の「組み付けられる」ことに相当する。
してみると、引用発明1の「ベースを貫通する態様でベースに固定された差込筒と、ベースにM4ねじで固定されたカバーとを備える角防風型フード」は、本件発明1の「差込筒を有するベースと、前記ベースに組み付けられるカバーとを備えるベントキャップ」に相当する。
引用発明1の「前方」、「前面」、「側面」、「上部」、「天面」、「下部」、「底面」は、本件発明1の「前方、「前面部」、「側面部」、「上部」、「天面部」、「下部」、「底面部」に相当する。
してみると、引用発明1の「カバーは、差込筒の前方を覆う前面と、ベースと前面との間にある側面と、カバーの上部を覆う天面と、カバーの下部を覆う底面とを有」することは、本件発明1の「前記カバーは、前記差込筒の前方を覆う前面部と、前記ベースと前記前面部との間にある側面部と、前記カバーの上部を覆う天面部と、前記カバーの下部を覆う底面部とを有」することに相当する。
引用発明1の「傾斜面」、「差込筒の軸心」は、本件発明1の「側面傾斜部」、「差込筒の軸心」に相当する。
してみると、引用発明1の「側面は、前面側に向かって差込筒の軸心に近づく方向に傾斜する傾斜面であ」ることは、本件発明1の「前記側面部は、前記ベースの側から前記前面部の側に向かって前記差込筒の軸心に近づく方向に傾斜する側面傾斜部を有して」いることに相当する。
引用発明1の「開口部」、「上下方向」、「5本の桟」、「整流翼片」は、本件発明1の「側面開口部」、「上下方向」、「複数の桟」、「整流翼片」に相当する。
引用発明1の「5本の桟」は、「6個の開口部の間」に設けられているものであって、当該「開口部」は、「傾斜面」に沿って設けられているものであるから、傾斜面に沿って互いに間隔を空けて配置されているものといえる。
してみると、引用発明1の「傾斜面には、6個の開口部が形成されており、6個の開口部の間には、上下方向に延びる5本の桟が設けられており、5本の桟には、カバー内に突出する整流翼片がそれぞれに設けられて」いることと、本件発明1の「前記側面傾斜部には、前記差込筒からの気流を吹き出す側面開口部が形成されており、前記側面開口部には、上下方向に伸長し、前記側面傾斜部に沿って互いに間隔を空けて配置される複数の桟が設けられており、前記複数の桟は、前記差込筒の筒内に向けて伸長する整流翼片をそれぞれ有」することとは、「前記側面傾斜部には、側面開口部が形成されており、前記側面開口部には、上下方向に伸長し、前記側面傾斜部に沿って互いに間隔を空けて配置される複数の桟が設けられており、前記複数の桟は、整流翼片をそれぞれ有」することの限りにおいて一致する。
以上から、本件発明1と引用発明1とは、次の一致点で一致し、相違点で相違する。
(一致点1)
差込筒を有するベースと、
前記ベースに組み付けるカバーとを備えるベントキャップにおいて、
前記カバーは、
前記差込筒の前方を覆う前面部と、
前記ベースと前記前面部との間にある側面部と、
前記カバーの上部を覆う天面部と、
前記カバーの下部を覆う底面部とを有し、
前記側面部は、
前記ベースの側から前記前面部の側に向かって前記差込筒の軸心に近づく方向に傾斜する側面傾斜部を有しており、
前記側面傾斜部には、側面開口部が形成されており、
前記側面開口部には、上下方向に伸長し、前記側面傾斜部に沿って互いに間隔を空けて配置される複数の桟が設けられており、
前記複数の桟は、整流翼片をそれぞれ有する、
ベントキャップ。」
(相違点1)
本件発明1は、差込筒が「建物の壁面に形成された換気口に差し込まれる」ものであるのに対して、引用発明1は、検証物自体から不明である点。
(相違点2)
側面開口部に関して、本件発明1は、「前記差込筒からの気流を吹き出す」ものであるのに対して、引用発明1は、検証物自体から不明である点。
(相違点3)
整流翼片に関して、本件発明1は、「前記差込筒の筒内に向けて伸長する」のに対して、引用発明1は、「カバー内に突出する」点。
(相違点4)
本件発明1は、「複数の前記整流翼片は、いずれも前記差込筒の軸方向に対して45°以下の傾斜角度を有し、前記差込筒から前記カバーに吹き込む前記気流を、前記前面部の前方側に吹き出すように整流するものであり、前記ベントキャップは、前記側面開口部から前記気流を前記壁面に対して50°以上の角度で前記前方側に吹き出すものである」のに対して、引用発明1は、「整流翼片は、差込筒の軸方向に対して75°の傾斜角度を有している」点。
(イ)判断
事案に鑑みて、まず相違点4について検討する。
甲第16号証には、「差込筒に向けて伸長し、傾斜角が差込筒の軸方向に対して22°」の整流翼片を備えた「建物用換気口」が記載されている。
また、甲第14号証及び甲第15号証には、換気口の整流翼片の傾斜角を「差込筒の軸方向に対して43°」とすることが記載されていることを勘案すると、差込筒に向けて伸長する整流翼片の傾斜角を差込筒の軸方向に対して45°以下とすることは、本件特許の出願前において周知の技術(以下、「周知技術」という。)ということができる。
また、甲第13号証の「排出空気・・・によって排気フード設置部周囲の外壁面が汚されるおそれがなく、風の影響を受けにくくて室内空気のスムーズな排出が阻害されない・・・」(甲第13号証の【0006】)との記載から、建物の換気口に設けられる防風フードについて、排出空気によって排気フード設置部周囲の外壁面の汚れを防止しつつ室内空気をスムーズに排気することは、当該ベントキャップに係る技術分野に共通する周知の課題といえる。
しかしながら、証人である株式会社シルファー開発部長の安達隆広氏に対して行った反対尋問では、引用発明1の風向制御に関して、特許権者代理による「前方に吹き出すというようなことはカタログ上ないということで考えてよろしいですか。」との問いに対して、証人安達隆広氏は「はい。」と回答しているから、側面開口部から吹き出される気流を方向をより前方に向けるという風向制御に関する課題は、引用発明1の開発に携わった証人の認識としても存在しないといわざるを得ない。
また、特許権者が令和5年9月1日に提出した意見書に添付した乙第1号証によれば、検甲第1号証の整流翼片について、「それぞれ傾斜角度が75度、45度、22度である3種類の検証用整流翼片(ナイロン11製)を3Dプリンターで製作し、それらを順にカバーに取り付けて検証を行った。」結果として、「検証3:検証用整流翼片角度45度の気流」は、壁に対して約32度、「検証4:検証用整流翼片角度22度の気流」は、壁に対して約35度の角度で側面開口部から吹き出すこと看取できる。
乙第1号証:株式会社ユニックス 執行役員 浦井克典、「整流翼片角度と気流角度の検証報告書」、2023年8月24日
「検証3
[図:0001417587000058.jpg]
」
「検証4
[図:0001417587000059.jpg]
」
乙第1号証の検証3及び検証4から、引用発明1では、整流翼片の傾斜角度を45°又は22°に変化させた場合であっても、気流の吹き出す角度は、それぞれ約32°又は約35°に留まるから、整流翼片の角度を小さくするだけで気流の吹き出す角度が大きくなり、「側面開口部から前記気流が前記壁面に対して50°以上の角度で前記前方に吹き出す」という作用を奏するものではないことが理解できる。
してみると、排出空気によって排気フード設置部周囲の外壁面の汚れを防止しつつ室内空気をスムーズに排気することが技術分野に共通する周知の課題であって、差込筒に向けて伸長する整流翼片の傾斜角を差込筒の軸方向に対して45°以下とすることが技術分野における周知技術であったとしても、側面開口部から吹き出される気流を方向をより前方に向けるという風向制御に関する課題が引用発明1の開発に携わった証人の認識として存在せず、乙第1号証の検証3及び検証4から、整流翼片の角度を小さくするだけで気流の吹き出す角度が大きくなり「側面開口部から前記気流が前記壁面に対して50°以上の角度で前記前方に吹き出す」ものとはならない以上、引用発明1に周知技術を適用し、相違点4に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たということはできない。
そして、技術常識を参酌しても、当業者が、引用発明1に周知技術を適用することで直ちに「側面開口部から前記気流が前記壁面に対して50°以上の角度で前記前方に吹き出す」という顕著な効果を得られることを予測し得たとは認められない。
よって、相違点1~3について論じるまでもなく、本件発明1は、引用発明1及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(ウ)申立人の意見について
申立人は、令和6年5月7日に提出した意見書において、「技術常識からして、整流翼片の傾斜角度により吹き出す気流の壁面からの角度は決まるものであり」、「技術常識として、整流翼片の傾斜角度と吹き出す気流の壁面からの角度は、吹き出す気流の速度、測定時気温や湿度に左右されるものであり、また、複数の整流翼片のどの片(壁面に近い方の片か先端側の片か)の測定か、更に吹き出す気流のどの位置を測定するのか、により異なるものです。」、特許権者の主張に対して「この主張は、技術常識から無理があり、また、実施例にはその理論的根拠が記されていない」と主張する。
しかしながら、上記(2)で論じたとおり、乙第1号証の検証3及び検証4は、引用発明1では、整流翼片の傾斜角度を45°又は22°に変化させた場合であっても、気流の吹き出す角度は、それぞれ約32°又は約35°に留まり、整流翼片の角度を小さくするだけで気流の吹き出す角度が大きくなって「側面開口部から前記気流が前記壁面に対して50°以上の角度で前記前方に吹き出す」という作用を奏するものではないことを示している。
そして、申立人は、特許権者による検証3及び検証4に基いた主張を覆すに足る証拠をなんら提出していない。したがって、申立人の主張を採用することはできない。
また、申立人は、「『吹き出す気流が壁面から50°以上』という事項が付加された特許権は、その技術的範囲の外延が不明確となることは明らかです。」と主張する。
しかしながら、本件特許の願書に添付した明細書の段落【0056】には、「図4で示した例では、最も壁寄りに吹き出す気流は、壁面Wから50°の位置にある。」と記載されているから、本件発明1における「吹き出す気流が壁面から50°以上」との発明特定事項は、ベントキャップの側面開口部から吹き出す気流のうち、最も壁面寄りの位置から吹き出す気流のベクトルが、約50°以上であることを意味し、本件特許の願書に添付した図面の【図3】、【図4】、【図6】~【図8】、【図11】~【図12】に示す実験方法により第三者が確認することも可能である以上、第三者が不測の不利益を被るおそれがある程度に不明確ということはできない。
よって、申立人の主張を採用することはできない。
イ 引用発明2を主引用発明とした場合
(ア)対比
本件発明1と引用発明2とを対比する。
引用発明2の「ベース」、「差込筒」は、本件発明1の「ベース」、「差込筒」に相当する。
引用発明2の「カバー」、「ベントキャップ」は、本件発明1の「カバー」、「ベントキャップ」に相当し、引用発明2の「固定され」ることは、本件発明1の「組み付けられる」ことに相当する。
してみると、引用発明2の「差込筒を有するベースと、ベースに固定されたカバーとを備えるベントキャップ」は、本件発明1の「差込筒を有するベースと、前記ベースに組み付けられるカバーとを備えるベントキャップ」に相当する。
引用発明2の「前方」、「前面部」、「側面部」、「上部」、「天面部」、「下部」、「底面部」は、本件発明1の「前方、「前面部」、「側面部」、「上部」、「天面部」、「下部」、「底面部」に相当する。
してみると、引用発明2の「カバーは、差込筒の前方を覆う前面部と、ベースと前面部との間にある側面部と、カバーの上部を覆う天面部と、カバーの下部を覆う底面部とを有」することは、本件発明1の「前記カバーは、前記差込筒の前方を覆う前面部と、前記ベースと前記前面部との間にある側面部と、前記カバーの上部を覆う天面部と、前記カバーの下部を覆う底面部とを有」することに相当する。
引用発明2の「側面傾斜部」、「差込筒の軸心」は、本件発明1の「側面傾斜部」、「差込筒の軸心」に相当する。
してみると、引用発明2の「側面部は、ベースの側から前面部の側に向かって差込筒の軸心に近づく方向に傾斜する側面傾斜部を有し」ていることは、本件発明1の「前記側面部は、前記ベースの側から前記前面部の側に向かって前記差込筒の軸心に近づく方向に傾斜する側面傾斜部を有して」いることに相当する。
引用発明2の「開口」、「上下方向」、「2本の桟」、「整流翼片」は、本件発明1の「側面開口部」、「上下方向」、「複数の桟」、「整流翼片」に相当する。
してみると、引用発明2の「側面傾斜部には、3個の開口が形成され、3個の開口には、上下方向に伸長し、側面傾斜部に沿って互いに間隔を空けて配置される2本の桟が設けられ、2本の桟及び最もベースに近い開口のベース側は、整流翼片を有し」ていることと、本件発明1の「前記側面傾斜部には、前記差込筒からの気流を吹き出す側面開口部が形成されており、前記側面開口部には、上下方向に伸長し、前記側面傾斜部に沿って互いに間隔を空けて配置される複数の桟が設けられており、前記複数の桟は、前記差込筒の筒内に向けて伸長する整流翼片をそれぞれ有」することとは、「前記側面傾斜部には、側面開口部が形成されており、前記側面開口部には、上下方向に伸長し、前記側面傾斜部に沿って互いに間隔を空けて配置される複数の桟が設けられており、前記複数の桟は、整流翼片をそれぞれ有」することの限りにおいて一致する。
以上から、本件発明1と引用発明2とは、次の一致点で一致し、相違点で相違する。
(一致点2)
差込筒を有するベースと、
前記ベースに組み付けるカバーとを備えるベントキャップにおいて、
前記カバーは、
前記差込筒の前方を覆う前面部と、
前記ベースと前記前面部との間にある側面部と、
前記カバーの上部を覆う天面部と、
前記カバーの下部を覆う底面部とを有し、
前記側面部は、
前記ベースの側から前記前面部の側に向かって前記差込筒の軸心に近づく方向に傾斜する側面傾斜部を有しており、
前記側面傾斜部には、側面開口部が形成されており、
前記側面開口部には、上下方向に伸長し、前記側面傾斜部に沿って互いに間隔を空けて配置される複数の桟が設けられており、
前記複数の桟は、整流翼片をそれぞれ有する、
ベントキャップ。」
(相違点5)
本件発明1は、差込筒が「建物の壁面に形成された換気口に差し込まれる」ものであるのに対して、引用発明2は、そのような構成を備えるか不明な点。
(相違点6)
側面開口部に関して、本件発明1は、「前記差込筒からの気流を吹き出す」ものであるのに対して、引用発明2は、そのような構成を備えるか不明な点。
(相違点7)
整流翼片に関して、本件発明1は、「前記差込筒の筒内に向けて伸長する」のに対して、引用発明2は、そのような構成を備えない点。
(相違点8)
本件発明1は、「複数の前記整流翼片は、いずれも前記差込筒の軸方向に対して45°以下の傾斜角度を有し、前記差込筒から前記カバーに吹き込む前記気流を、前記前面部の前方側に吹き出すように整流するものであり、前記ベントキャップは、前記側面開口部から前記気流を前記壁面に対して50°以上の角度で吹き出すものである」のに対して、引用発明2は、「整流翼片は、差込筒の軸方向に対して73°の傾斜角度を有している」点。
(イ)判断
事案に鑑みて、まず相違点8について検討する。
甲第16号証には、「差込筒に向けて伸長し、傾斜角が差込筒の軸方向に対して22°」の整流翼片を備えた「建物用換気口」が記載されている。
また、甲第14号証及び甲第15号証には、換気口の整流翼片の傾斜角を「差込筒の軸方向に対して43°」とすることが記載されていることを勘案すると、差込筒に向けて伸長する整流翼片の傾斜角を差込筒の軸方向に対して45°以下とすることは、本件特許の出願前において周知の技術(以下、「周知技術」という。)ということができる。
また、甲第13号証の「排出空気・・・によって排気フード設置部周囲の外壁面が汚されるおそれがなく、風の影響を受けにくくて室内空気のスムーズな排出が阻害されない・・・」(甲第13号証の【0006】)との記載から、建物の換気口に設けられる防風フードについて、排出空気によって排気フード設置部周囲の外壁面の汚れを防止しつつ室内空気をスムーズに排気することは、当該ベントキャップに係る技術分野に共通する周知の課題といえる。
しかしながら、上記ア(イ)でも論じたとおり、排出空気によって排気フード設置部周囲の外壁面の汚れを防止しつつ室内空気をスムーズに排気することが技術分野に共通する周知の課題であって、差込筒に向けて伸長する整流翼片の傾斜角を差込筒の軸方向に対して45°以下とすることが技術分野における周知技術であったとしても、乙第1号証の検証3及び検証4から、整流翼片の角度を小さくするだけで気流の吹き出す角度が大きくなり「側面開口部から前記気流が前記壁面に対して50°以上の角度で前記前方に吹き出す」ものとはならない以上、引用発明2に周知技術を適用し、相違点8に係る本件発明1の構成とすることは、当業者にとって容易に想到し得たということはできない。
ウ 小括
以上のとおりであるから、本件発明1は、引用発明1又は引用発明2と周知技術とに基いて当業者が容易に発明をすることができた発明ではない。
(2)本件発明2~9について
本件発明2~9も、本件発明1の「複数の前記整流翼片は、いずれも前記差込筒の軸方向に対して45°以下の傾斜角度を有し、前記差込筒から前記カバーに吹き込む前記気流を、前記前面部の前方側に吹き出すように整流するものであり、前記ベントキャップは、前記側面開口部から前記気流を前記壁面に対して50°以上の角度で吹き出すものである」ことと同一の構成を備えるものであるから、本件発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明1又は引用発明2と周知技術とに基いて容易に発明できたものとはいえない。
3.小括
以上のとおりであるから、本件発明1~本件発明9は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものではない。
第6 むすび
したがって、請求項1~9に係る特許は、取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、取り消すことができない。また、他に請求項1~9に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって結論のとおり決定する。
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2022-701000