特許異議申立
2022-701246
空気調和システム
- 審判番号
- 2022-701246
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2019-180603
- 登録番号
- 7085522
- 請求日
- 2022年12月15日
- 審決日
- 2023年03月24日
- 公報発行日
- 2023年04月28日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】ダイキン工業株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
- 【異議申立人】前田 正夫
- 審判長/審判官
- 審判長 間中 耕治
- 審判官 白土 博之
- 審判官 平城 俊雅
- 分類
- P1651.537-Y (F24F) / P1651.113-Y (F24F) / P1651.121-Y (F24F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7085522号発明「空気調和システム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7085522号の請求項1ないし9に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7085522号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~9に係る特許についての出願は、令和1年9月30日に出願され、令和4年6月8日にその特許権の設定登録がされ、同年6月16日に特許掲載公報が発行された。その後、その請求項1~9に係る特許に対し、同年12月15日に特許異議申立人 前田 正夫(以下、「申立人」という。)は、特許異議の申立てを行った。
第2 本件発明
本件特許の請求項1~9の特許に係る発明(以下、それぞれを「本件特許発明1」~「本件特許発明9」という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1~9に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
空気調和機(10a)と連動する第1機能及び第2機能を含む複数の機能を持つ機器(20a)と前記空気調和機との連動制御に関する情報(101a)をユーザーに提示する表示部(42)を有する情報提示装置(40)、と接続される空気調和システムであって、
前記第1機能が前記空気調和機と連動しているか否かを示す第1情報と、前記第2機能が前記空気調和機と連動しているか否かを示す第2情報と、を取得する取得部(12a)と、
前記第1情報及び前記第2情報を前記情報提示装置に送信する送信部(13a)と、
を備える、空気調和システム(101)。
【請求項2】
前記第1機能及び前記第2機能のそれぞれを前記空気調和機と連動させるか否かを選択させる選択部(43)をさらに備える、請求項1に記載の空気調和システム。
【請求項3】
空気調和機(10a)と、前記空気調和機と連動する第1機能及び第2機能を含む複数の機能を持つ機器(20a)と、の連動制御に関する情報をユーザーに提示する情報提示装置(40)を備える空気調和システムであって、
前記情報提示装置は、前記情報を示す表示部(42)を有し、
前記表示部は、前記情報として、前記第1機能が前記空気調和機と連動しているか否かを示す第1情報と、前記第2機能が前記空気調和機と連動しているか否かを示す第2情報と、を表示する、空気調和システム(1)。
【請求項4】
前記情報提示装置は、前記第1機能及び前記第2機能のそれぞれを前記空気調和機と連動させるか否かを選択させる選択部(43)をさらに有する、請求項3に記載の空気調和システム。
【請求項5】
前記第1機能は、温度または湿度を調整する機能である、請求項1~4のいずれか1項に記載の空気調和システム。
【請求項6】
前記第1機能は、温度を調整する機能であり、
前記第2機能は、湿度を調整する機能である、請求項5に記載の空気調和システム。
【請求項7】
前記表示部は、LEDにより前記情報を示す、請求項1~6のいずれか1項に記載の空気調和システム。
【請求項8】
前記表示部は、前記複数の機能を持つ機器の本体のディスプレイ(26c)、及びユーザーの端末装置(30)の少なくとも1つに設けられる、請求項1~7のいずれか1項に記載の空気調和システム。
【請求項9】
前記複数の機能を持つ機器は、加湿、除湿、及びサーキュレーションの少なくとも1つの機能を有する、請求項1~8のいずれか1項に記載の空気調和システム。」
第3 申立理由の概要
1 証拠方法
申立人は、証拠方法として、甲第1号証~甲第3号証(以下、それぞれ「甲1」~「甲3」という。)を提出した。
<甲号証一覧>
甲1:特開2018-191082号公報
甲2:特開2014-70883号公報
甲3:特開2015-25638号公報
2 申立理由の概要
申立人が申し立てた特許異議申立ての理由は、概略以下のとおりである。
(1)申立理由1(特許法第36条第6項第1号(同法第113条4号))
請求項1~9に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
(2)申立理由2(特許法第29条第1項第3号(同法第113条2号))
本件特許発明1~6、8は、甲1に記載された発明であるから、請求項1~6、8に係る特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものである。
(3)申立理由3(特許法第29条第2項(同法第113条2号))
本件特許発明1~4は、甲1に記載された発明に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、また、本件特許発明5、6、8、9は、甲1に記載された発明及び甲2、甲3に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~6、8、9に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
第4 各甲号証
1 甲1について
(1)甲1の記載(下線は、理解の一助のために当審が付与したものである。以下同様。)
ア「【0012】
まず、図1を参照しながら情報表示システム10の構成を説明する。情報表示システム10は情報表示制御装置1と端末4とを備え、情報表示制御装置1と端末4とが接続されている。また、情報表示制御装置1は宅内の電力計測装置2及び機器3と接続されている。
【0013】
端末4は画面表示部と操作部とを備える。画面表示部には液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイなどの画像表示器を用いることができる。操作部にはタッチパネル、操作ボタン、音声認識装置などの入力装置を用いることができる。端末4にはスマートフォン、タブレットなど汎用の携帯端末を用いてもよいし、情報表示制御装置1専用のリモコンを製造して用いてもよい。また、パソコンに画像表示器と入力装置を接続したもの、もしくはノートパソコンを端末4としてもよい。
【0014】
端末4は情報表示制御装置1から画面情報を取得し、取得した画面情報に基づいて画面表示部に画面を表示する。ユーザが操作部により操作を行ったとき、端末4はユーザの操作を操作情報として生成し、情報表示制御装置1に送信する。
【0015】
情報表示制御装置1は電力計測装置2及び機器3から、それらの状態を示す状態情報を取得し、取得した状態情報に基づいて通知すべきか否かを判断し、通知すべきと判断したときは通知画面である第1の画面を端末4に表示させるために第1の画面情報を端末4に送信する。ここで、状態情報は、機器の動作状態、環境状態、センサが取得した情報などを含む。また情報表示制御装置1は、ユーザが第1の画面に応答して端末4を操作したときに生成される第1の操作情報を端末4から取得する。さらに情報表示制御装置1は、第1の操作情報が詳細情報を表示する画面である第2の画面へ遷移するための操作に係る情報を含む場合、第2の画面情報を端末4に送信する。
【0016】
電力計測装置2は宅内に設置される各機器3の消費電力及び宅内全体の消費電力を測定し、測定情報を記憶すると共に状態情報として情報表示制御装置1に送信する。また、電力計測装置2は機器3の一種でもある。
【0017】
機器3のうち、空気調和機は温度センサを備える。また、温度センサ、湿度センサなどの各種センサを単独で機器3としてもよい。機器3は例えば、自己の主電源がオンかオフかの情報及び自己の設定情報を状態情報として情報表示制御装置1に送信する。また機器3は例えば、温度センサにより取得した室温情報を状態情報として情報表示制御装置1に送信する。」
イ「【0041】
図5で示される例では、機器3としての空気調和機や温度センサから取得した各室内のいずれかの室内の温度が通知すべき温度に達すると、端末4が第1の画面を表示する。以下、本明細書では、通知すべき温度を見守り温度として説明する。図5は、見守り温度が30℃として設定されている例を示している。」
ウ「【0088】
なお、図15及び図16において制御対象となる機器3は「リビングの床冷暖房」となっており、第2の画面における設定項目も「リビングのエアコン」と比べて少ないものとなっている。これは、「リビングのエアコン」よりも「リビングの床冷暖房」のほうを優先して制御すべきと判断できる場合には「リビングの床冷暖房」が制御対象として選択されることを示している。」
エ「【0130】
次に、図35及び実施の形態1に係るフローチャートである図3を参照しながら情報表示制御装置1の動作を説明する。
【0131】
ステップS6-1、S6-2及びステップS6-5~S6-7はそれぞれ実施の形態1のステップS1-1、S1-2及びステップS1-4~S1-6に対応するため説明を省略する。なお、第1の画面には通知条件を満たした旨の表示及び機器3を自動で制御した旨の表示が含まれ、第2の画面には通知条件に関連する情報の表示及び自動制御に関する内容の表示が含まれる。
【0132】
通知条件判定部104が通知すべきと判定した場合(ステップS6-2:はい)、通知条件判定部104は制御内容生成部114に制御内容情報の生成を要求する。制御内容生成部114は通知条件判定部104の要求に応じて、機器情報取得部102から状態情報を取得し、その状態情報に基づいて自動制御する機器3を決定する(ステップS6-3)。制御内容生成部114は自動制御する機器3に対する制御内容情報を生成して第2の画面情報生成部108と機器制御部111とに送信する。
【0133】
機器制御部111は制御内容生成部114から取得した制御内容情報に基づいて、自動制御の対象となる機器3を制御するための制御信号を生成して自動制御の対象となる機器3に送信する(ステップS6-4)。この制御信号の送信はステップS6-5における第1の画面情報の生成、送信より前に行われているため、端末4に第1の画面が表示される前に機器3は自動制御される。
【0134】
次に、図36及び図37を参照しながら端末4の画面の遷移例を説明する。
【0135】
実施の形態1と同様に、図36に示される例では電力計測装置2から取得した宅内全体の消費電力が契約電力の80%を超過したときを通知条件とし、図37に示される例では機器3としての空気調和機や温度センサから取得した各室内のいずれかの室内の温度が「見守り温度」以上になったときを通知条件としている。なお、通知条件を満たすと自動制御を行うため、通知条件は自動制御がなされる条件ともいえる。
【0136】
図36及び図37で示される左側の画面が、通知条件を満たした旨の表示及び機器3を自動で制御した旨の表示を含む第1の画面の例である。なお、ユーザは、具体的にどの機器3が自動で制御されたのかは第1の画面からは認識できない。第1の画面上の「起動」ボタンをタップすると第2の画面に遷移するが、第1の画面が表示された時点で既に機器3は自動制御されている。
【0137】
図36及び図37で示される右側の画面が通知条件に関連する情報の表示及び自動制御に関する内容の表示を含む第2の画面の例である。具体的には、図36で示される例では、通知条件を満たした原因となる機器3である「リビングのエアコン」の名称及び「リビングのエアコン」の設定を自動で「冷房」「28℃」にした旨の通知が表示されている。図37で示される例では、自動で設定された内容が「冷房」「26℃」である点以外は図36と同様である。なお、この例では通知を閉じたら背後に表示されている操作画面によりユーザが手動で機器3を制御できるが、必ずしもそのようにしなくてもよい。
【0138】
以上、実施の形態6について説明をした。実施の形態6によれば、ユーザは端末4に表示される第1の画面によって通知を受けることにより宅内の環境を認識でき、また機器3が自動制御されたことを認識できる。ユーザは実施の形態1と同様に、第1の画面に対して応答することにより端末4に表示される画面を第2の画面に遷移させることができる。ユーザは端末4に表示される第2の画面により、自動制御の具体的な内容を認識できる。」
オ「【図1】
[図:0001396322000001.jpg]
」
カ「【図15】
[図:0001396322000002.jpg]
」
キ「【図36】
[図:0001396322000003.jpg]
」
ク「【図37】
[図:0001396322000004.jpg]
」
ケ 段落【0012】、【0017】、【0088】、【0137】より、機器3はエアコン、床冷暖房システムなどの空気調和機を含み、また、機器3、電力計測装置2及び端末4は情報表示制御装置1に接続されて、エアコンや床冷暖房の制御を可能としているものであるから、機器3、電力計測装置2、端末4及び情報表示制御装置1は、全体としてみれば、空気調和システムを構成していると言える。
コ 段落【0017】、図15及び「床冷暖房」との名称からみて、機器3としての床冷暖房は、冷房機能及び暖房機能を有することが理解できる。
サ 段落【0017】、【0088】、及び図1より、情報表示制御装置1には、機器3としてエアコンや床冷暖房が接続され得る点が理解できる。
シ 段落【0135】より、機器3の状態情報から取得した消費電力又は室内温度が所定の閾値を超過したことを通知条件とすることが理解できる。
ス 段落【0132】~【0138】より、端末4では、通知条件を満たしたとき、第1の画面を表示し、その後、制御対象とする機器3及びその自動制御内容に関する第2の画面を表示する点が理解できる。
(2)引用発明
上記(1)から、甲1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「エアコンと、冷房機能及び暖房機能を持つ床冷暖房の、自動制御に関する第2の画面を表示する端末4を備える空気調和システムであって、
端末4は前記第2の画面を示す画面表示部を有し、
画面表示部は、前記第2の画面として、制御対象とする機器3及びその自動制御内容を表示する、空気調和システム。」
2 甲2について
(1)甲2の記載
ア「【0001】
本発明は、加湿機などの空調機器と連動して、空調運転を行う空気調和機および空調システムに関する。」
イ「【0023】
空気調和機1は、室内機と室外機とからなるセパレートタイプとされる。室内機と加湿機2とは同じ室内に設置される。室内機は天井近くに位置する。加湿機2は、床に置かれる。なお、複数の加湿機2が室内に設置されていてもよい。空気調和機1は、冷房運転、暖房運転などの空調運転を行う。加湿機2は、加湿運転、空気清浄運転などの空調運転を行う。空気調和機1は、リモコン3からの操作信号に応じて動作する。また、加湿機2もリモコン3によって動作する。なお、リモコン3は共用されるが、空気調和機1と加湿機2とは、それぞれ別々のリモコン3によって操作できるようにしてもよい。」
ウ「【0029】
空気調和機1の制御部14は、空調運転に応じて加湿機2の運転を制御する。すなわち、制御部14は、空調運転に応じて加湿機2に運転を指示する。指示に際して、制御部14は、加湿機2の空調運転を制御するためのオン信号、オフ信号などの制御信号を出力し、通信部15が制御信号を加湿機2に送信する」
エ「【0035】
なお、加湿機2は、空気調和機1の指示にしたがって運転を行ったり、運転を変更したとき、応答信号を空気調和機1に送信する。空気調和機1では、この応答信号により、加湿機2が連動して動作したことを確認することができる。」
オ「【図1】
[図:0001396322000005.jpg]
」
(2)甲2記載事項
上記(1)から、甲2には、次の事項(以下「甲2記載事項」という。)が記載されていると認められる。
「加湿運転や空気清浄運転を行う加湿器2が、空気調和機1と連動して運転すること。」
3 甲3について
(3)甲3の記載
ア「【0028】
除加湿空清機100は、空気清浄運転、除湿運転、加湿運転などの複数の運転モードを備えており、ユーザからの指示に応じてこれらの運転が個別に又は組み合わせて選択される。例えば、除加湿空清機100は、運転モードとして空気清浄運転が選択されると、室内空間の空気を取り込み、塵埃などを除去して室内空間に排出する空気清浄運転を行う。また、除加湿空清機100は、運転モードとして除湿運転が選択されると、室内空間の空気を取込んで除湿して室内空間に排出する除湿運転を行う。また、除加湿空清機100は、運転モードとして加湿運転が選択されると、室内空間の空気を取込んで加湿して室内空間に排出する加湿運転を行う。なお、除湿運転及び加湿運転では、除湿運転及び加湿運転と組み合わせて空気清浄運転が行われる。
【0029】
また、除加湿空清機100はサーキュレーション運転を実行可能であり、サーキュレーション運転はユーザからの指示に応じて他の運転と組み合わせて実行される。サーキュレーション運転は、除加湿空清機100の設置された室内の上部と下部とに生じる温度ムラを解消するための運転であって、ファン50の風量を変更することで実行される運転である。」
イ「【0076】
(2-10)操作パネル115
図7は、操作パネル115の外観図である。操作パネル115は、主として、入力キー116と、表示部117とを有している(図7参照)。除加湿空清機100には、ユーザによって入力キー116が押下されることにより所定の指令が入力される。」
ウ「【0079】
表示部117は、液晶パネルやLEDなどで構成されており、現在温度、温度設定、吹出口羽根151の姿勢、及び風量モードなどを表示する。」
エ「【図7】
[図:0001396322000006.jpg]
」
(2)甲3記載事項
上記(1)から、甲3には、次の事項(以下「甲3記載事項」という。)が記載されていると認められる。
「除加湿空清機100は空気清浄運転、除湿運転、加湿運転及びサーキュレーション運転などの複数の運転モードを備えており、液晶パネルやLEDなどで構成される表示部117では、現在温度、温度設定、吹出口羽根151の姿勢、及び風量モードなどを表示可能であること。」
第5 当審の判断
1 申立理由1(サポート要件)について
(1)申立人の主張する理由
申立人は、特許異議申立書において、申立理由1について以下の理由1~3を主張している。
(理由1)
「本件特許発明1では、空気調和システムは「前記第1機能が前記空気調和機と連動しているか否かを示す第1情報と、前記第2機能が前記空気調和機と連動しているか否かを示す第2情報と、を取得する取得部(12a)」(構成1C)と、「前記第1情報及び前記第2情報を前記情報提示装置に送信する送信部」(構成1D)とを備える。
一方、本件特許発明1には、送信された第1情報及び第2情報が表示されることは記載されていない。例えば、送信部が情報提示装置に第1情報及び第2情報を送信した後、情報提示装置が第1情報及び第2情報に関係しない他の表示だけを行い、第1情報及び第2情報について一切の表示を行わない空気調和システムも、本件特許発明1に含まれる。このような空気調和システムでは、第1機能が空気調和機と連動しているか否か、及び、第2機能が空気調和機と連動しているか否かを確認できないことは明らかである。すなわち、本件特許発明1の構成1A-1Eのみでは、第1機能が空気調和機と連動しているか否か、及び、第2機能が空気調和機と連動しているか否かを確認することができる空気調和システムを提供する、という課題を解決できない。したがって、本件特許発明1には、発明の課題を解決するための手段が反映されておらず、本件特許発明1は発明の詳細な説明に記載した範囲を超えている。
よって、本件特許発明1は、発明の詳細な説明に記載したものでなく、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
また、本件特許発明1を引用する本件特許発明2、5-9についても、本件特許発明1と同様の理由で特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。」
(理由2)
「本件特許発明3では、「前記表示部は、前記情報として、前記第1機能が前記空気調和機と連動しているか否かを示す第1情報と、前記第2機能が前記空気調和機と連動しているか否かを示す第2情報と、を表示する、」(構成3D)。
しかしながら、本件特許発明3では、表示部が第1情報と第2情報とをどのように表示するかは記載されていない。例えば、第1機能が空気調和機と連動している場合と第2情報が空気調和機と連動している場合のそれぞれにおいて、表示部が同じ表示を行う空気調和システムも、本件特許発明3に含まれる。より具体的には、第1機能が空気調和機と連動している場合に、表示部の所定の位置に所定の文字、記号等を表示し、第2機能が空気調和機と連動している場合に、第1機能が空気調和機と連動している場合と同じ位置に同じ文字、記号等を表示する空気調和システムも、本件特許発明3に含まれる。このような空気調和システムでは、表示部に文字、記号等が表示されていても、第1機能が連動していることによる文字、記号等の表示か、第2機能が連動していることによる文字、記号等の表示か区別できず、第1機能が空気調和機と連動しているか否か、及び、第2機能が空気調和機と連動しているか否かを確認できないことは明らかである。すなわち、本件特許発明3の構成3A-3Eのみでは、第1機能が空気調和機と連動しているか否か、及び、第2機能が空気調和機と連動しているか否かを確認することができる空気調和システムを提供する、という課題を解決できない。したがって、本件特許発明3には、発明の課題を解決するための手段が反映されておらず、本件特許発明3は発明の詳細な説明に記載した範囲を超えている。
よって、本件特許発明3は、発明の詳細な説明に記載したものでなく、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
また、本件特許発明3を引用する本件特許発明4-9についても、本件特許発明3と同様の理由で特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。」
(理由3)
「本件特許発明1では、空気調和システムは「空気調和機(10a)と連動する第1機能及び第2機能を含む複数の機能を持つ機器(20a)と前記空気調和機との連動制御に関する情報(101a)をユーザーに提示する表示部(42)を有する情報提示装置(40)、と接続される」(構成1A)。
一方、本件の特許発明が解決しようとする課題として、「上記特許文献1の制御システムでは、複数の機器が連動していることは確認できる。しかしながら、上記特許文献1には、複数の機器のどの機能が連動しているかを確認する手段は開示されていない。」(段落0003)と記載されている。ここで、発明が解決しようとする課題の前提として、第1機能と第2機能が同じ機能でない必要がある。仮に、第1機能と第2機能が同じ機能である場合は、空気調和機と機器が連動していることを確認するだけで、空気調和機と連動している機器の機能が確認できるので、課題に直面しないためである。
本件特許発明1では、第1機能と第2機能が同じ機能である空気調和システムも、本件特許発明1に含まれる。このような本件特許発明1は課題に直面せず、発明の課題を有していない構成を含むものである。そして、発明の課題を有していない構成では、発明の課題を解決するための手段が反映されていないことは明らかである。したがって、発明の課題を有していない構成を含む本件特許発明1は、発明の課題を解決するための手段が反映されておらず、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えている。
よって、本件特許発明1は、発明の詳細な説明に記載したものでなく、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
また、本件特許発明3は、本件特許発明1と同様に、第1機能と第2機能が同じ機能である空気調和システムを含む。よって、本件特許発明3も、本件特許発明1と同様の理由で特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
さらに、本件特許発明1を引用する本件特許発明2と、本件特許発明3を引用する本件特許発明4と、本件特許発明1、3を引用する本件特許発明5-9も、本件特許発明1と同様の理由で特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。」
(2)主張に対する検討
以下、上記理由1~3について検討する。
ア 発明が解決しようとする課題について
本件特許明細書の段落【0002】~【0003】の記載に照らして、本件特許発明1~3の発明が解決しようとする課題は、同一空間の空調を行う制御システムにおいて、複数の機器のどの機能が連動しているかを確認可能とすることであると認められる。
イ 理由1について
請求項1の、「前記第1機能が前記空気調和機と連動しているか否かを示す第1情報と、前記第2機能が前記空気調和機と連動しているか否かを示す第2情報と、を取得する取得部と、前記第1情報及び前記第2情報を前記情報提示装置に送信する送信部」との記載より、「情報提示装置」では、空気調和機との連動状態を示す「第1情報」及び「第2情報」が送信されることが理解できる。そのうえで、請求項1の「空気調和機と連動する第1機能及び第2機能を含む複数の機能を持つ機器と前記空気調和機との連動制御に関する情報をユーザーに提示する表示部を有する情報提示装置、と接続される空気調和システムであって、」という記載を合わせて参酌すれば、空気調和機との連動状態を示す「第1情報」及び「第2情報」が、「前記空気調和機との連動制御に関する情報」であることは、論理的に明らかである。
そうしてみると、「情報提供装置」は、空気調和機と連動する第1機能及び第2機能を表示するものであることが理解でき、そのような表示態様は、空調機と他の機器との連動において、第1機能及び第2機能のいずれが連動しているかを確認できるものであるから、本件特許発明1は、発明が解決しようとする課題を解決できるものと認められる。
よって、申立人の主張する理由1は、理由がない。
ウ 理由2について
本件特許の請求項3の「第1機能及び第2機能を含む複数の機能」との記載について、仮に、「複数の機能」が「第1機能」及び「第2機能」からなるものであって「第1機能」と「第2機能」とが同じ機能である場合、「複数の」機能とはならないので、「第1機能」と「第2機能」とは異なる機能であると理解できる。そして、請求項3では、「表示部」は、「前記情報として、前記第1機能が前記空気調和機と連動しているか否かを示す第1情報と、前記第2機能が前記空気調和機と連動しているか否かを示す第2情報と、を表示する」と記載されていることからみて、それぞれ異なる「第1情報」と「第2情報」とを表示するものであることが理解できる。
そうしてみると、本件特許発明3は、空調機と他の機器との連動において、第1機能及び第2機能のいずれが連動しているかを確認できるものであるから、発明が解決しようとする課題を解決できるものと認められる。
申立人の主張は、本件特許発明3は、表示部が第1情報と第2情報とをどのように表示するか特定されていないから、例えば、空気調和機との連動時に、第1機能及び第2機能とで同じ表示態様(表示位置、文字、記号等)とするものの場合、「第1機能が空気調和機と連動しているか否か、及び、第2機能が空気調和機と連動しているか否かを確認できない」と主張するものである。しかしながら、本件特許発明3は、上述のとおり、第1機能が空気調和機と連動しているか否かを示す第1情報及び第2機能が空気調和と連動しているか否かを示す第2情報の両者を表示するものであって、第1機能及び第2機能のいずれが連動しているかを確認できることが論理的に明らかなものと認められる。
よって、申立人の主張する理由2は、理由がない。
エ 理由3について
本件特許の請求項1、3の「第1機能及び第2機能を含む複数の機能」との記載について、上記ウに記載のように、「第1機能」と「第2機能」とは異なる機能であると理解できるものであるから、本件特許発明1、3は、発明が解決しようとする課題を解決できるものと認められる。
申立人の主張は、本件特許発明1、3は、「第1機能と第2機能が同じ機能である空気調和システムも」含まれるため、「課題に直面せず、発明の課題を有していない構成を含むものであ」って、「発明の課題を有していない構成では、発明の課題を解決するための手段が反映されていないことは明らかである。」と主張するものである。しかしながら、本件特許発明1、3の「第1機能」と「第2機能」が異なる機能であることは、上記ウにおいて記載したとおりである。
よって、申立人の主張する理由3は、理由がない。
オ 小括
申立人の主張する理由1~3は、いずれも理由がなく、本件特許発明1~9は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしている。
2 申立理由2、3(新規性、進歩性)について
事案に鑑みて、まず、本件特許発明3について検討する。
(1)本件特許発明3について
ア 対比
本件特許発明3と引用発明とを対比する。
引用発明の「エアコン」、「冷房機能」、「暖房機能」、「床冷暖房」、「端末4」、「空気調和システム」は、本件特許発明3の「空気調和機」、「第1機能」、「第2機能」、「機器」、「情報提示装置」、「空気調和システム」に相当する。
そして、引用発明において、「床冷暖房」が「冷房機能及び暖房機能を持つ」ことは、本件特許発明3において、「機器」が「第1機能及び第2機能を含む複数の機能を持つ」ことに相当する。
また、引用発明において、「エアコンと、冷房機能及び暖房機能を持つ床冷暖房の、自動制御に関する第2の画面を表示する」ことと、本件特許発明3において、「空気調和機と、前記空気調和機と連動する第1機能及び第2機能を含む複数の機能を持つ機器と、の連動制御に関する情報をユーザーに提示する」ことは、「空気調和機と、複数の機能を持つ機器、の制御に関する情報をユーザーに提示する」という限りにおいて一致する。
引用発明の「画面表示部」は、本件特許発明3の「表示部」に相当する。
そして、引用発明において、「画面表示部」が「前記第2の画面を示すこと」と、本件特許発明3において、「表示部」が「前記情報を示す」ことは、「表示部」が「空気調和機と、複数の機能を持つ機器、の制御に関する情報を示す」という限りにおいて一致する。
引用発明において、「画面表示部は、前記第2の画面として、制御対象とする機器3及びその自動制御内容を表示する」ことと、本件特許発明3において、「前記表示部は、前記情報として、前記第1機能が前記空気調和機と連動しているか否かを示す第1情報と、前記第2機能が前記空気調和機と連動しているか否かを示す第2情報と、を表示する」ことは、「表示部は、空気調和機及び機器の制御に関する情報を表示する」という限りにおいて一致する。
したがって、両者の一致点、相違点は以下のとおりである。
(一致点)
「空気調和機と、第1機能及び第2機能を含む複数の機能を持つ機器、の制御に関する情報をユーザーに提示する情報提示装置を備える空気調和システムであって、
情報提示装置は、空気調和機と、複数の機能を持つ機器、の制御に関する情報を示す表示部を有し、
表示部は、表示部は、空気調和機及び機器の制御に関する情報を表示する、空気調和システム。」
(相違点1)
「空気調和機と、複数の機能を持つ機器、の制御に関する情報をユーザーに提示する」ことに関して、本件特許発明3では、「空気調和機と、前記空気調和機と連動する第1機能及び第2機能を含む複数の機能を持つ機器と、の連動制御に関する情報をユーザーに提示する」のに対し、引用発明では、「エアコンと、冷房機能及び暖房機能を持つ床冷暖房の、自動制御に関する第2の画面を表示する」点。
(相違点2)
「表示部」が示す「空気調和機と、複数の機能を持つ機器、の制御に関する情報」に関して、本件特許発明3では、「前記情報」(※当審注:空気調和機、前記空気調和機と連動する第1機能及び第2機能を含む複数の機能を持つ機器と、の連動制御に関する情報)であるのに対し、引用発明では、「前記第2の画面」(※当審注:エアコンと、冷房機能及び暖房機能を持つ床冷暖房の、自動制御に関する第2の画面)である点。
(相違点3)
「表示部は、空気調和機及び機器の制御に関する情報を表示する」ことに関して、本件特許発明3では、「前記表示部は、前記情報として、前記第1機能が前記空気調和機と連動しているか否かを示す第1情報と、前記第2機能が前記空気調和機と連動しているか否かを示す第2情報と、を表示する」のに対し、引用発明では、「表示部は、空気調和機及び機器の制御に関する情報を表示する」点。
イ 判断
相違点1~3は、いずれも「空気調和機」と「機器」との「連動」という点で、技術的関連性を有するものであることに鑑みて、相違点1~3についてまとめて検討する。
引用発明は、エアコン及び床冷暖房のうち自動制御対象となる機器を決定し、自動制御対象となった機器及びその制御内容を表示するものに過ぎない。甲1には、エアコンと床冷暖房とを連動制御する点について記載も示唆もされておらず、そのため、床冷暖房の冷房機能及び暖房機能のいずれの機能がエアコンと連動しているかを表示することも、記載も示唆もされていない。
さらに、相違点1~3に係る事項は、甲2、甲3のいずれにも記載されていない。たとえ、引用発明に甲2記載事項を適用したとしても、エアコン及び床冷暖房を連動制御する構成に到達するに止まり、当業者といえども、床冷暖房の冷房機能及び暖房機能のいずれの機能がエアコンと連動しているかを表示する点を想到することは、容易とはいえない。
ウ 申立人の主張について
申立人は、特許異議申立書において、甲1では、「エアコンと床冷暖房システムが宅内の消費電力を連動して制御する連動」(連動(ア))、「エアコンと床冷暖房システムがリビングの室温を連動して制御する連動」(連動(イ))、又は、「エアコンの温度センサと床冷暖房システムがリビングの室温を連動して制御する連動」(連動(ウ))のように、床冷暖房システムは、自動制御されて、エアコン又はエアコンの温度センサと連動している旨主張し(第23~25ページ)、この連動(ア)~(ウ)を前提として、第2の画面に、床冷暖房システムの冷房機能又は暖房機能がエアコンに連動していることが示される旨主張する。
しかしながら、上記イに記載のとおり、甲1には、エアコンと床冷暖房とを連動制御する点について記載も示唆もされておらず、そのため、床冷暖房の冷房機能及び暖房機能のいずれの機能がエアコンと連動しているかを表示することも、記載も示唆もされていない。
よって、申立人の主張は、採用できない。
エ 小括
本件特許発明3は、引用発明と同一ではない。
また、本件特許発明3は、引用発明に基いて、又は引用発明及び甲2、3記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(2)本件特許発明1について
本件特許発明1と引用発明とを対比する。
本件特許発明1の「前記空気調和機と連動する第1機能及び第2機能を含む複数の機能を持つ機器と、の連動制御に関する情報をユーザーに提示する情報提示装置」との発明特定事項は、本件特許発明3の、「空気調和機と連動する第1機能及び第2機能を含む複数の機能を持つ機器と前記空気調和機との連動制御に関する情報をユーザーに提示する・・・情報提示装置」との発明特定事項と実質的に同一であるから、本件特許発明1は、本件特許発明3と同様に、少なくとも、上記(1)アの相違点1と同様の相違点が存在すると言える。
そうしてみると、上記(1)と同様の理由により、本件特許発明1は、引用発明と同一ではなく、また、本件特許発明1は、引用発明に基いて、又は引用発明及び甲2、3記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3)本件特許発明2、4~6、8、9について
本件特許の特許請求の範囲の請求項2は、請求項1を引用するものであって、本件特許発明2は、本件特許発明1の発明特定事項を全て含むものである。
また、本件特許の特許請求の範囲の請求項4は、請求項3を引用するものであって、本件特許発明4は、本件特許発明3の発明特定事項を全て含むものである。
さらに、本件特許の特許請求の範囲の請求項5、6、8、9は、請求項1又は3を直接的又は間接的に引用するものであって、本件特許発明5、6、8、9は、本件特許発明1又は3の発明特定事項を全て含むものである。
そうしてみると、上記(1)、(2)と同様に、本件特許発明2、4~6、8、9は、引用発明と同一ではない。また、上記(1)、(2)と同様に本件特許発明2、4~6、8、9は、引用発明に基いて、又は引用発明及び甲2、3記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1~9に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1~9に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2022-701246