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特許異議申立

2020-700924

高炭水化物含量の野菜を含む冷凍食品

審判番号
2020-700924
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2016-013578
登録番号
6705183
請求日
2020年11月30日
審決日
2021年11月30日
公報発行日
2022年04月28日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】味の素株式会社
  • 【権利者代理人】高島 一
  • 【権利者代理人】鎌田 光宜
  • 【権利者代理人】中 正道
  • 【異議申立人】井上 朝子
  • 【異議申立人】佐藤 武史
  • 【異議申立人】本間 裕美
審判長/審判官
  • 審判長 村上 騎見高
  • 審判官 齊藤 真由美
  • 審判官 冨永 保
分類
P1651.113-YAA(A23L) / P1651.121-YAA(A23L) / P1651.537-YAA(A23L) / P1651.536-YAA(A23L)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第2項、特許法第29条第1項、特許法第36条第4項第1号、特許法第120条の5第4項、特許法第36条第6項、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第2条第3項第1号、特許法第2条第3項第3号
データ出所
審決公報(XML)

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特許第6705183号発明「高炭水化物含量の野菜を含む冷凍食品」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第6705183号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-7〕、〔8-13〕について訂正することを認める。 特許第6705183号の請求項1ないし6、8ないし12に係る特許を維持する。 特許第6705183号の請求項7、13に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第6705183号の請求項1~13に係る特許についての出願は、平成28年1月27日(優先権主張 平成27年3月30日)の出願であって、令和2年5月18日にその特許権の設定登録がなされ、同年6月3日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許の全請求項について、令和2年11月30日に特許異議申立人 井上 朝子により、令和2年12月1日に特許異議申立人 佐藤 武史により、令和2年12月2日に特許異議申立人 本間 裕美により、それぞれ特許異議の申立てがなされたもの(以下、それぞれ「特許異議申立人A」、「特許異議申立人B」、「特許異議申立人C」といい、あわせて「特許異議申立人」ということがある。)である。その後の手続の経緯の概要は次のとおりである。 令和3年 2月26日付け 取消理由通知 同年 4月21日 意見書・訂正請求書の提出(特許権者) 同年 同月30日付け 訂正請求があった旨の通知 同年 6月 7日 意見書の提出(特許異議申立人A、特許異議申立人C) 同年 同月 9日 意見書の提出(特許異議申立人B) 同年 7月30日付け 取消理由通知(決定の予告) 同年10月 8日 意見書・訂正請求書の提出(特許権者) 第2 訂正の適否 令和3年10月8日付け訂正請求書の請求の趣旨は、「特許第6705183号の特許請求の範囲を本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~13について訂正することを求める。」というものである(以下当該訂正を「本件訂正」という。)。 なお、令和3年4月21日に提出された訂正請求書による訂正の請求は特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなさる。 1 訂正の内容 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に「冷凍された下記(A)~(C)を含有し、(C)の量が(A)及び(B)に対して1.5重量倍以下である冷凍食品。」とあるのを、「冷凍された下記(A)~(C)を含有し、(C)の量が(A)及び(B)に対して1.5重量倍以下である冷凍食品であって、 冷凍食品から製造される食品が、揚げ物料理である、冷凍食品。」に訂正する。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項3に「冷凍食品の乾燥条件下での加熱が、マイクロウェーブ加熱、オーブン加熱及びフライ加熱からなる群より選択される少なくとも一つである、請求項2記載の冷凍食品。」とあるのを、「冷凍食品の乾燥条件下での加熱が、フライ加熱を少なくとも含む、請求項2記載の冷凍食品。」に訂正する。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項7を削除する。 (4)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項8に「冷凍された下記(A)~(C)を含有し、(C)の量が(A)及び(B)に対して1.5重量倍以下である冷凍食品を、乾燥条件下で加熱することを含む、食品の製造方法。」とあるのを、「冷凍された下記(A)~(C)を含有し、(C)の量が(A)及び(B)に対して1.5重量倍以下である冷凍食品を、乾燥条件下で加熱することを含む、食品の製造方法であって、 食品が、揚げ物料理である、製造方法。」に訂正する。 (5)訂正事項5 特許請求の範囲の請求項9に「冷凍食品の乾燥条件下での加熱が、マイクロウェーブ加熱、オーブン加熱及びフライ加熱からなる群より選択される少なくとも一つである、請求項8記載の製造方法。」とあるのを、「冷凍食品の乾燥条件下での加熱が、フライ加熱を少なくとも含む、請求項8記載の製造方法。」に訂正する。 (6)訂正事項6 特許請求の範囲の請求項13を削除する。 2 本件訂正の適否 (1)一群の請求項について 本件訂正は、請求項1~13についてのものであるところ、訂正前の請求項2~7は請求項1を、請求項9~13は請求項8を、それぞれ直接的又は間接的に引用するものであり、訂正前の請求項1~7、請求項8~13は、それぞれ、特許法第120条の5第4項に規定される一群の請求項である。 そして、本件訂正請求は、全ての請求項である請求項1~13についてされているから、特許法第120条の5第4項の規定に適合する。 (2)訂正事項1について ア 訂正の目的 訂正事項1は、実質的に、請求項1に記載の「冷凍食品」について、冷凍食品から製造される食品が、揚げ物料理であることを特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当する。 イ 新規事項の追加の有無 願書に添付した特許請求の範囲の請求項7には、「冷凍食品から製造される食品が、煮物料理、サラダ、グラタン、汁物料理、焼き物料理及び揚げ物料理からなる群より選択される一種である」との記載が、願書に添付した明細書の【0043】には、「本発明の冷凍食品を乾燥条件下で加熱することにより製造される食品の種類としては、例えば、・・・揚げ物料理等が挙げられるが、これらに限定されない。」との記載があるから、訂正事項1は、本件の願書に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面の全ての記載を総合することにより導かれる事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。 ウ 実質上の特許請求の範囲の拡張・変更の有無 訂正事項1は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、カテゴリーを変更するものでもないから、当該訂正は実質上、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (3)訂正事項2について ア 訂正の目的 訂正事項2は、請求項3に記載の「冷凍食品の乾燥条件下での加熱」について、「マイクロウェーブ加熱、オーブン加熱及びフライ加熱からなる群より選択される少なくとも一つである」とあったのを、「フライ加熱を少なくとも含む」と訂正することにより、フライ加熱が必須であることを特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当する。 イ 新規事項の追加の有無 願書に添付した特許請求の範囲の請求項3には、「冷凍食品の乾燥条件下での加熱が、マイクロウェーブ加熱、オーブン加熱及びフライ加熱からなる群より選択される少なくとも一つである、請求項2記載の冷凍食品。」との記載があり、願書に添付した明細書の【0039】には、「冷凍食品を乾燥条件下で加熱する方法は、野菜(A)が吸水しない方法であれば特に制限されないが、例えば、マイクロウェーブ加熱、オーブン加熱等が挙げられ、また、フライパン等を用いて冷凍食品を炒めてもよく、フライ加熱を行うのもよい。食品を包材に密閉した状態でボイル加熱してもよい。」との記載があり、「冷凍食品の乾燥条件下での加熱」が「フライ加熱を少なくとも含む」加熱であることが記載されているといえるから、訂正事項2は、本件の願書に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面の全ての記載を総合することにより導かれる事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。 ウ 実質上の特許請求の範囲の拡張・変更の有無 訂正事項2は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、カテゴリーを変更するものでもないから、当該訂正は実質上、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (4)訂正事項3について ア 訂正の目的 訂正事項3は、請求項7を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当する。 イ 新規事項の追加の有無・実質上の特許請求の範囲の拡張・変更の有無 訂正事項3は、請求項を削除するに過ぎないから、本件の願書に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面の全ての記載を総合することにより導かれる事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではなく、実質上、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (5)訂正事項4について ア 訂正の目的 訂正事項4は、実質的に、請求項8に記載の「食品の製造方法」の「食品」について、揚げ物料理であることを特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当する。 イ 新規事項の追加の有無 願書に添付した特許請求の範囲の請求項13には、「食品が、煮物料理、サラダ、グラタン、汁物料理、焼き物料理及び揚げ物料理からなる群より選択される一種である」との記載が、願書に添付した明細書の【0043】には、「本発明の冷凍食品を乾燥条件下で加熱することにより製造される食品の種類としては、例えば、・・・揚げ物料理等が挙げられるが、これらに限定されない。」との記載があるから、訂正事項4は、本件の願書に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面の全ての記載を総合することにより導かれる事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。 ウ 実質上の特許請求の範囲の拡張・変更の有無 訂正事項4は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、カテゴリーを変更するものでもないから、当該訂正は実質上、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (6)訂正事項5について ア 訂正の目的 訂正事項5は、請求項9に記載の「冷凍食品の乾燥条件下での加熱」について、「マイクロウェーブ加熱、オーブン加熱及びフライ加熱からなる群より選択される少なくとも一つである」とあったのを、「フライ加熱を少なくとも含む」と訂正することにより、フライ加熱が必須であることを特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当する。 イ 新規事項の追加の有無 願書に添付した特許請求の範囲の請求項9には、「冷凍食品の乾燥条件下での加熱が、マイクロウェーブ加熱、オーブン加熱及びフライ加熱からなる群より選択される少なくとも一つである、請求項8記載の製造方法」との記載があり、願書に添付した明細書の【0039】には、「冷凍食品を乾燥条件下で加熱する方法は、野菜(A)が吸水しない方法であれば特に制限されないが、例えば、マイクロウェーブ加熱、オーブン加熱等が挙げられ、また、フライパン等を用いて冷凍食品を炒めてもよく、フライ加熱を行うのもよい。食品を包材に密閉した状態でボイル加熱してもよい。」との記載があり、「冷凍食品の乾燥条件下での加熱」は「フライ加熱を少なくとも含む」加熱であることが記載されているといえるから、訂正事項5は、本件の願書に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面の全ての記載を総合することにより導かれる事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。 ウ 実質上の特許請求の範囲の拡張・変更の有無 訂正事項5は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、カテゴリーを変更するものでもないから、当該訂正は実質上、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (7)訂正事項6について ア 訂正の目的 訂正事項6は、請求項13を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当する。 イ 新規事項の追加の有無・実質上の特許請求の範囲の拡張・変更の有無 訂正事項6は、請求項を削除するに過ぎないから、本件の願書に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面の全ての記載を総合することにより導かれる事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではなく、実質上、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 3 まとめ 以上のとおりであるから、本件訂正は特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり訂正後の請求項〔1~7〕、〔8~13〕について訂正することを認める。 第3 本件発明 上記第2で述べたとおり、本件訂正後の請求項〔1~7〕、〔8~13〕について訂正することを認めるので、本件特許の請求項1~6、8~12に係る発明は、令和3年10月8日に提出された訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲の請求項1~6、8~12に記載された事項により特定される次のとおりのもの(以下「本件発明1」などと、また、これらを合わせて「本件発明」ということがある。)である。 「【請求項1】 冷凍された下記(A)~(C)を含有し、(C)の量が(A)及び(B)に対して1.5重量倍以下である冷凍食品であって、 冷凍食品から製造される食品が、揚げ物料理である、冷凍食品。 (A)糊化度が15~70%となるように加工された、炭水化物含量10~30%の野菜 (B)可食状態の固形具材(但し、炭水化物含量10~30%の野菜を除く) (C)水性液体 【請求項2】 冷凍食品が、乾燥条件下で加熱するためのものである、請求項1記載の冷凍食品。 【請求項3】 冷凍食品の乾燥条件下での加熱が、フライ加熱を少なくとも含む、請求項2記載の冷凍食品。 【請求項4】 冷凍食品の乾燥条件下での加熱が、前記(A)の糊化度が90%以上となるまで行われる、請求項2又は3記載の冷凍食品。 【請求項5】 冷凍食品の乾燥条件下での加熱が、前記(A)の歩留りが70~95%となるまで行われる、請求項2~4のいずれか一項に記載の冷凍食品。 【請求項6】 炭水化物含量10~30%の野菜が、ジャガイモ、カボチャ、ソラマメ及びサトイモからなる群より選択される少なくとも一種である、請求項1~5のいずれか一項に記載の冷凍食品。 【請求項7】 (削除) 【請求項8】 冷凍された下記(A)~(C)を含有し、(C)の量が(A)及び(B)に対して1.5重量倍以下である冷凍食品を、乾燥条件下で加熱することを含む、食品の製造方法であって、 食品が、揚げ物料理である、製造方法。 (A)糊化度が15~70%となるように加工された、炭水化物含量10~30%の野菜 (B)可食状態の固形具材(但し、炭水化物含量10~30%の野菜を除く) (C)水性液体 【請求項9】 冷凍食品の乾燥条件下での加熱が、フライ加熱を少なくとも含む、請求項8記載の製造方法。 【請求項10】 冷凍食品の乾燥条件下での加熱が、前記(A)の糊化度が90%以上となるまで行われる、請求項8又は9記載の製造方法。 【請求項11】 冷凍食品の乾燥条件下での加熱が、前記(A)の歩留りが70~95%となるまで行われる、請求項8~10のいずれか一項に記載の製造方法。 【請求項12】 炭水化物含量10~30%の野菜が、ジャガイモ、カボチャ、ソラマメ及びサトイモからなる群より選択される少なくとも一種である、請求項8~11のいずれか一項に記載の製造方法。 【請求項13】 (削除)」 第4 当審が通知した令和3年7月30日付け取消理由(決定の予告)及び特許異議申立人が申し立てた理由の概要 1 特許異議申立人Aが申し立てた理由の概要 [申立理由A1]本件の特許された請求項1~13に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である、下記甲第1~3号証に係る発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~13に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。 [申立理由A2]本件の特許された請求項1~13に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である、下記甲第2~3号証に係る発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~13に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。 [申立理由A3]本件の特許された請求項1~13に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である、下記甲第2~4号証に係る発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~13に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。 記 甲第1号証:特開平3-22955号公報(以下「甲A1」という。) 甲第2号証:特開2007-181422号公報(〃「甲A2」〃) 甲第3号証:特開平10-57025号公報(〃「甲A3」〃) 甲第4号証:特開2001-112410号公報(〃「甲A4」〃) 2 特許異議申立人Bが申し立てた理由の概要 [申立理由B1-1]本件の特許された請求項1~13に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である、下記甲第1号証に係る発明であるから、請求項1~13に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。 [申立理由B2-1]本件の特許された請求項1~13に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である、下記甲第1、2、5号証に係る発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~13に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。 [申立理由B1-2]本件の特許された請求項1~13に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である、下記甲第3号証に係る発明であるから、請求項1~13に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。 [申立理由B2-2]本件の特許された請求項1~13に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である、下記甲第3、4号証に係る発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~13に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。 [申立理由B2-3]本件の特許された請求項1~5、7~11、13に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である、下記甲第5、6、8、9号証に係る発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~5、7~11、13に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。 [申立理由B3]本件の特許された請求項1~13に係る特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に適合しない。 よって、本件特許は、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであり、同法第113条第4号の規定により取り消されるべきものである。 [申立理由B4]本件の特許された請求項1~13に係る特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第4項第1号に適合しない。 よって、本件特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであり、同法第113条第4号の規定により取り消されるべきものである。 [申立理由B5]本件の特許された請求項1~13に係る特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に適合しない。 よって、本件特許は、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであり、同法第113条第4号の規定により取り消されるべきものである。 記 甲第1号証:特開2007-181422号公報(以下「甲B1」という。) 甲第2号証:特開平8-98669号公報(〃「甲B2」〃) 甲第3号証:特開平3-22955号公報(〃「甲B3」〃) 甲第4号証:各種澱粉の理化学的・構造的性質ならびに澱粉質食品の調理科学的性質、2012年、菊田千景、[Online]、2020年11月13日検索、インターネットURL:https://dlisv03.media.osaka-cu.ac.jp/contents/osakacu/kiyo/111TD0000215.pdf(〃「甲B4」〃) 甲第5号証:特開2013-132287号公報(〃「甲B5」〃) 甲第6号証:五訂増補日本食品標準成分表、平成17年1月24日、文部科学省 科学技術・学術審議会・資源調査分科会 報告書、第2章 五訂増補日本食品標準成分表(本表)、6 野菜類、[Online]、2020年11月22日検索、インターネットURL:https://warp.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/11513964/www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu3/toushin/05031802.htm、https://warp.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/11513964/www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu3/toushin/05031802/002.htm及びhttps://warp.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/11513964/www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu3/toushin/05031802/002/006.pdf(〃「甲B6」〃) 甲第7号証:日本食品標準成分表2015年版(七訂)、文部科学省、第2章 日本食品標準成分表 PDF(日本語版)、2 いも及びでん粉類、[Online]、2020年11月22日検索、インターネットURL:https://www.mext.go.jp/a_menu/syokuhinseibun/1365297.htm、https://www.mext.go.jp/a_menu/syokuhinseibun/1365419.htm及びhttps:// https://www.mext.go.jp/component/a_menu/science/detail/__icsFiles/afieldfile/2016/03/01/1365343_1-0202r.pdf(〃「甲B7」〃) 甲第8号証:Ameba、マーリーママのSan Jose生活、Californiaでの日々の生活を書いています。、Chicken Breasts with Balsamic Vinegar and Garlic、2013-08-17 02:21:52、[Online]、2020年11月14日検索、インターネットURL:https://ameblo.jp/marleymama/entry-11594067932.html(〃「甲B8」〃) 甲第9号証:Rakutenレシピ、きょうのお弁当たまご-その18-スタッフドエッグ風 レシピ・作り方、公開日:2010年10月28日、2020年11月14日検索、[Online]、インターネットURL:https://recipe.rakuten.co.jp/recipe/1370000113/(〃「甲B9」〃) 甲第10号証:ヤーコンネットワーク、ヤーコンネットとは? 成分と機能性、茨城大学農学部生物生産科学科、[Online]、2020年11月11日検索、インターネットURL:http://yacon.agr.ibaraki.ac.jp/network/yacon/seibun.html(〃「甲B10」〃) 甲第10号証の2:http://yacon.agr.ibaraki.ac.jp/network/yacon/seibun.htmlの最終更新日を調べた結果である「02/26/2010」が表示されたパソコン画面のスクリーンショット、[Online]、2020年11月22日検索(〃「甲B10-2」〃) 甲第10号証の3:ウェブページの最終更新日や投稿日を調べる方法-ネットショップ開業運営中ブログ、2020年7月30日更新、[Online]、2020年11月22日検索、インターネットURL:https://www.netshop7.com/blog2/koushinbi-shiraberu/(〃「甲B10-3」〃) 甲第11号証::山崎 民子、化学肥料並びに有機肥料の土壌で栽培したメークイン種の一般成分の比較、帯広大谷短期大学紀要、2006年3月、第43号、pp.1~13、[Online]、2020年11月27日検索、インターネットURL:https://www.jstage.jst.go.jp/article/oojc/43/0/43_KJ00004416688/_article/-char/ja/及びhttps://www.jstage.jst.go.jp/article/oojc/43/0/43_KJ00004416688/_pdf/-char/ja(〃「甲B11」〃) 甲第12号証:煮熟ジャガイモの老化に及ぼす本みりんの影響、日本調理科学会誌、(2007)、Vol.40、No.5、pp.305~313、[Online]、2020年11月22日検索、インターネットURL: https://www.jstage.jst.go.jp/article/cookerysciencel995/40/5/40_305/_article/-char/ja、https://www.jstage.jst.go.jp/article/cookeryscience1995/40/5/40_305/_pdf/-char/ja(〃「甲B12」〃) 甲第13号証:澱粉の糊化度・老化度の測定方法に関する研究-BAP法と他の糊化度測定法との比較-、茨城女子短期大学紀要、(1986)、No.13、pp.7-1~7-11(〃「甲B13」〃) 3 特許異議申立人Cが申し立てた理由の概要 [申立理由C1]本件の特許された請求項1~9、12、13に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である、下記第1号証に係る発明であるから、請求項1~9、12、13に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。 [申立理由C2]本件の特許された請求項1~13に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である、下記甲第1~4号証に係る発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~13に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。 記 甲第1号証:特開2007-181422号公報(以下「甲C1」という。) 甲第2号証:特開2002-218905号公報(〃「甲C2」〃) 甲第3号証:斉藤芳枝、でんぷん質食品のα化度について、東京家政大学研究紀要,(1982)、第22集(2),pp.77~79(〃「甲C3」〃) 甲第4号証:特開2013-132287号公報(〃「甲C4」〃) 4 当審が通知した令和3年7月30日付け取消理由(決定の予告)の概要 [理由1](新規性)令和3年4月21日付けの訂正請求書により訂正された本件の請求項1~3、6~9、12、13に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないから、上記請求項に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。 [理由2](進歩性)令和3年4月21日付けの訂正請求書により訂正された本件の請求項1~13に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物1~3に記載された発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、上記請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 記 刊行物1:特開2007-181422号公報(特許異議申立人A~Cが提示した、それぞれ、甲A2、甲B1、甲C1。) 刊行物2:特開2013-132287号公報(特許異議申立人B、Cが提示した、それぞれ、甲B5、甲C4。) 刊行物3:特開平8-98669号公報(特許異議申立人Bが提示した、甲B2。) 第5 当審の判断 当審は、本件発明1~6、8~12に係る特許は、当審が通知した取消理由及び特許異議申立人が申し立てた理由により取り消すべきものではないと判断する。 理由は以下のとおりである。 1 引用刊行物、甲各号証の記載事項 刊行物1: 1a)「【請求項1】 2.5kg以下の包装単位に小分け包装されている、調味料とまぜあわされた加熱前の具材を準備する工程と、 該具材を加熱により不完全調理する工程と、 不完全調理された該具材を、0~20℃の温度まで、20分以内に急冷する工程と、 急冷された該具材を、0℃から-5℃の温度域を25分以内に通過するように、急速冷凍する工程と、 を含む製造工程で製造され、 加熱解凍して調理が完了する冷凍惣菜。 ・・・ 【請求項3】 前記加熱前の具材がジャガイモを素材とする具材を含み、 前記不完全調理する工程において、該ジャガイモを素材とする具材がα化度20~70%になるように加熱される請求項1又は2に記載の冷凍惣菜。」 1b)「【0002】 従来の冷凍法による冷凍惣菜は、なまものであれ加熱したものであれ、根菜類については、解凍後のものにドリップが多量に発生している。そのためにテクスチャー、色、味、香りの劣化が著しく、食材、食品の減量も大きい。 【0003】 例えば、芋類ではジャガイモはとくに冷凍品では良い品質が得られない。ジャガイモはデンプン粒が大きいため、煮崩れが速やかに起こることから、ホクホク感のあるテクスチャーは得られない。 【0004】 また、ふき、ごぼう、れんこん、にんじん等のいわゆる繊維系の根菜類の食品の冷凍化においても、そのテクスチャー、風味や色調は大きく劣化する。」 1c)「【発明が解決しようとする課題】 【0010】 本発明は、冷凍・解凍により煮崩れ状態となったり風味が損なわれるという問題が解消された冷凍惣菜を提供することを目的とする。 ・・・ 【発明の効果】 【0016】 本発明によると、冷凍・解凍により煮崩れ状態となったり風味が損なわれるという問題が解消された冷凍惣菜が提供される。」 1d)「【0018】 惣菜は日常、家庭で「おかず」としてあるいは主食に添える「具」として食される加工調理した食品を言う。本発明における惣菜は、食材が単一とは限らず、性状も雑多で、本発明の目的にかなう調理食品であればよく、例えば、煮物、蒸し物等が挙げられ、中でも液汁を含む煮物が挙げられる。具体的には、好ましいものは惣菜中の固形物成分の比較的大きなものであり、例えば筑前煮、肉じゃが、酢豚、五目野菜煮、里芋煮、かぼちゃ煮、筍煮、おでん、シチュー、カレーやスパゲッテイの具などが挙げられるが、これらに限定されない。惣菜には魚介類、肉類、こんにゃく、揚げ物等の食物が含有されていてもよい。 【0019】 本発明に用いられる具材としては、ジャガイモ、さといも、さつまいも等の芋類、にんじん、ふき、れんこん、ごぼう等の繊維系の根菜類、小松菜、ほうれん草等の菜類、ねぎ、にら等の葉類、しめじ、しいたけ、きくらげ等のきのこ類、コンブ、ヒジキ等の海草類、かぼちゃ、たまねぎ、たけのこ等が挙げられる。 ・・・ 【0021】 具材を入れた包装袋あるいは包装箱の中には必要に応じて各種調味料が添加される。加えて、これら具材以外の、加熱調理済みあるいは場合によっては未調理の食物が添加されてもよい。」 1e)「【0027】 本発明においては、具材がジャガイモの場合、加熱によるジャガイモでんぷんのα化がある程度以上は進行しない加熱温度と時間が設定される。この加熱条件は具材のサイズにより異なるが、例えば、直径30mm、厚さ20mm程度のサイズのものでは75℃60分であることが好ましい。あるいは、20~22g/個のサイズのものでは85℃50分であることが好ましい。また、α化は20%~70%の範囲に抑えられることが好ましい。30%~50%の範囲に抑えられることがさらに好ましい」 1f)「【0038】 冷凍された具材は、加熱解凍して調理が完了する冷凍惣菜として市場に供せられ、この冷凍惣菜を加熱解凍することにより惣菜が得られる。この加熱は、具材が調理される加熱でもある。冷凍惣菜は包装されたまま加熱解凍がなされてもよい。この加熱は、レンジ、スチーム、湯煎等の方法で行うことができる。 【0039】 この冷凍惣菜は、自然解凍や流水解凍のような常温付近の温度まで徐々に解凍されると、良好な風味やテクスチャーが得られず、加熱よる解凍がなされることが煮崩れを起こさず良好な風味やテクスチャーを得るうえで必要である。即ち、できるだけ速やかに-5℃の温度時間帯を通過することが好ましい。特にジャガイモの場合は急速な加熱解凍がでんぷんの老化を防止するうえでも必要である。 【0040】 なお、加熱解凍は、加熱手段を用いて、常温の具材をその加熱手段で加熱するとその具材の温度が上昇するような加熱条件で、対象物を加熱することにより、対象物を解凍することである。 【0041】 加熱解凍の処理は、加熱により解凍が終了した時点で終了させることが良好な風味やテクスチャーを得るうえで好ましい。解凍が終了してから長時間加熱を継続すると良好な風味やテクスチャーが損なわれ煮崩れを起こすことが多い。加熱解凍時の加熱により冷凍前の加熱調理の不足が補われることが好ましい。また、冷凍前の加熱調理の不足が補われる程度を超えて加熱解凍時の加熱が過度になされると、良好な風味やテクスチャーが損なわれ煮崩れを起こすこととなるので、加熱解凍時の加熱が冷凍前の加熱調理を補完して加熱の過不足なく調理を完了させることが重要である。」 1g)「【0044】 実験例1 男爵ジャガイモを水洗いした後、肉厚20mmに輪切りにした。これを直径30mmのコルク栓用の打ち抜き具で円形に打ち抜いた。このサイズは食品に利用されるジャガイモのサイズを想定したものである。 【0045】 この円形状の生ジャガイモ2個(55g)に1%食塩水40ml加え、減圧包装して表1に示す各種条件で加熱した。加熱後直ちに5℃の冷水で冷却してα化度を測定した。α化度については、試料40gに水350mlを加えてミキサーにて60秒攪拌混合し、この混合液を200mlメスシリンダに入れ、3時間放置し、沈殿層の容積(ml)を、その試料の澱粉の膨張容積(S)とする。この際、未加熱のジャガイモ(A)のα化度を0%とし、98℃30分で煮たジャガイモ(B)のα化度を100%とする。 【0046】 ジャガイモ(A)につき同様にして得た沈殿層の容積(ml)をSA、ジャガイモ(B)につき同様にして得た沈殿層の容積(ml)をSBとしたとき、試料のα化度(簡易α化度)(D)は次式で表される。D=(S-SA)÷(SB-SA)×100(%)」 1h)「【0055】 【表3】 [図:0001383258000001.jpg] ・・・ 【0061】 [実施例、比較例] その1 皮むきした男爵ジャガイモを1個あたり20~23gの大きさに乱切りし、このジャガイモ90g、スライス玉ねぎ55g及び薄切り牛肉40gをポリプロピレン製の袋に入れ、表3に示す調味料100mlをさらに入れて30mmHgで減圧包装しシールして包装体とした。 【0062】 この包装体を12袋作り、表4に示す加熱条件(温度、時間)で各条件につき2袋加熱調理した。 【0063】 【表4】 [図:0001383258000002.jpg] 【0064】 加熱調理後直ちに5~10℃の冷却水にて冷やして、各条件ごとに1袋の計6袋を直ちに冷凍した。冷凍は、-35℃に冷却した55%濃度アルコールブラインに20KVの高電圧を付加した高電圧電場アルコールブライン(特許第3639499号)で行なった。このアルコールブライン法での冷凍における0℃から-5℃に至る温度帯を通過するに要した時間は、13分であった。また、各条件ごとの残りの1袋計6袋はジャガイモのα化度の測定に用いた。 【0065】 冷凍後の試料を-20℃、1ヶ月冷凍保存した包装体を85~95℃の温水にて10分間加熱解凍して、その品質評価を行なった結果を表5に示す。評価は8名のパネラーにより行い、各人が3点評価法(1点:悪い 2点:普通 3点:良い)で付けた点を合計した。 【0066】 【表5】 [図:0001383258000003.jpg] 【0067】 表5より、条件1、2は明らかに加熱不足であり、ジャガイモの外観は角(カド)が完全にのこっていて、テクスチャーIはかたく、半生の状態であった。条件3、4、5はテクスチャーI、IIともに肉じゃがの食感としてはほぼ満足できるものであったが、条件5は角がかなり崩れていて、ホクホク感はあるものの見端が劣っていた。条件6は明らかに加熱過剰であり、外観も悪く煮崩れがしていた。条件3、4は煮崩れも少なく、肉じゃが特有のかたさ、ホクホク感が認められた。 【0068】 表6に表4の加熱条件に対応するジャガイモのα化度を示す。 【0069】 【表6】 [図:0001383258000004.jpg] 【0070】 表6に示すように、ジャガイモのα化度は、品質評価の良い条件3、4についてはそれぞれ37%、67%であった。条件2では29%であり、やや加熱調理の度合いが不足していた。条件5では87%であり、ホクホク感はある煮崩れがあり、もう少し加熱条件を低くすれば品質良好と充分に評価できるものであった。 【0071】 その2 男爵ジャガイモを水洗いして1個あたり20~23gの大きさに乱切りしたものを1450g、スライス玉ねぎ880g及び油炒めした薄切り牛肉550gを8分割し、それぞれを実施例1で用いた調味料180mlとともにポリプロピレン製の袋に入れ、30mmHgで減圧包装しシールして包装体とした。この包装体を85~88℃、50分の加熱調理後、6~8℃の流水で急冷し、-35℃のエアブラスト冷凍法及び高電圧電場アルコールブライン冷凍で各4袋づつ冷凍した。このアルコールブライン法での冷凍における0℃から-5℃に至る温度帯を通過するに要した時間は、13分であった。このエアブラスト冷凍法は通常のエアブラスト冷凍法であり、0℃から-5℃の温度域を1時間で通過させた。冷凍後、-35℃、1ヶ月冷凍保存した各試料を表7に示す条件で加熱解凍し、品質評価した。表8に評価結果を示す。評価は8名のパネラーにより行い、各人が3点評価法(1点:悪い 2点:普通 3点:良い)で付けた点を合計した。 [図:0001383258000005.jpg] 【0073】 【表8】 [図:0001383258000006.jpg] 【0074】 表8に示すように、条件(4)、(6)の高電圧電場アルコールブライン冷凍されたものは、煮崩れも少なく、ホクホク感のある肉じゃがが得られ高い評価を得た。これに対して、条件(3)、(5)のエアブラスト冷凍されたものは、ホクホク感が条件(4)、(6)のものに比べて乏しくザラザラとしたテクスチャーが感じられる肉じゃがであった。 【0075】 また、条件(2)は、解凍時間が短く、この解凍条件ではジャガイモ澱粉の再α化現象が起こらないため、ホクホク感が乏しい結果となったと思われる。条件(1)はホクホク感が乏しくかつテクスチャーが総合的に不良であった。条件(8)はホクホク感は認められるが、ジャガイモの角が煮崩れして欠落しており、肉じゃがが丸くなっている。これは、解凍時間が長く、いわゆる調理過剰となっていることがわかる。条件(7)は煮崩れが激しく、テクスチャーが総合的に不良であった。 【0076】 このように、冷凍前の加熱調理の度合いを低くして、その調理度合いの不足分を冷凍後の加熱解凍時の加熱によりその不足分だけ補うことにより、テクスチャーの良い冷凍肉じゃがが得られる。・・・ 【0077】 その3 ジャガイモ(メークイン)を水洗いして1個あたり約25gの大きさに乱切りしたものを100g、スライス玉ねぎ20g、マッシュルーム20g、少し油炒めした牛バラ肉100gに調味料275gをポリプロピレン製の袋に入れ、30mmHgで減圧包装しシールして包装体とした。この包装体を90℃で加熱調理後、8℃の流水で急冷し、次いで冷凍した。冷凍後、-35℃、1ヶ月冷凍保存した各試料を85~88℃、15分加熱解凍し、クリームシチューを得て各試料の官能評価を行なった。なお、調味料は1袋あたり赤ワイン25ml(35mlを煮詰めたもの)、デミグラスソース(ハインツ製)200g、水65ml、塩1.5gを加熱して調整したものを用いた。 【0078】 表9に加熱調理条件及び冷凍方法を示す。表10に評価結果を示す。評価は6名の専門パネラーにより行い、各人が5点評価法(1点:非常に悪い 2点:悪い 3点:普通 4点:良い 5点:非常に良い)で付けた点を合計した。 【0079】 【表9】 [図:0001383258000007.jpg] 【0080】 【表10】 [図:0001383258000008.jpg] 【0081】 表9の条件c、dにおける加熱調理条件は、この包装された具材がこの条件により完全にシチューになるように調理される加熱調理条件である。表9の条件a、bにおける加熱調理条件は、この包装された具材が、完全にシチューになった状態の半分の度合いに調理される、加熱調理条件である。 【0082】 表10から、条件c、dでは加熱解凍によって調理が過剰になることや、冷凍及び解凍によりジャガイモの組織破壊が起こりテクスチャーが悪くなることがわかる。とくに、条件cの冷凍方法ではジャガイモはボロボロと形が崩れている。条件bでは、加熱調理による調理の度合いが通常の調理の場合の1/2程度であり、そのままシチューとしては調理不足ではあるが、加熱解凍時の加熱により調理不足を補い、風味、テクスチャーの良好なシチューが得られる。しかし、条件aでは、エアブラスト冷凍方法による組織破壊が生じやすく、加熱解凍時の加熱によっても充分良好な風味、テクスチャーのシチューは得られないことがわかる。表9におけるエアブラスト冷凍方法は通常のエアブラスト冷凍法であり、0℃から-5℃の温度域を1時間で通過させた。」 刊行物2: 2a)「【0010】 即ち、本発明は以下に関する。 〔1〕糊化度が45~85%である、冷凍枝豆。 〔2〕枝豆を糊化度45~85%の状態まで加熱した後、凍結してなる、〔1〕に記載の冷凍枝豆。」 2b)「【0016】 本発明において糊化度とは、枝豆中に含まれるデンプンがα化デンプンに変化した割合をいう。当該糊化度の測定は、βアミラーゼ・プルラナーゼ法(以下、「BAP法」と称する場合がある)を用いることができる。糊化度は、具体的には、既報(家政学雑誌32(9),653-659,1981)に準じて、以下の通り測定することができる。」 2c)「【0025】 以上のようにして製造された本発明の冷凍枝豆は、解凍しただけでは未だ枝豆自体に硬さが残っているため、加熱調理をしてから喫食することが好ましい。従って、本発明の冷凍枝豆は、好適には加熱調理用の冷凍枝豆である。 【0026】 本発明の冷凍枝豆は糊化度が45~85%であるため、これを解凍しても硬い食感が残ると考えられる。そのため、本発明の冷凍枝豆は、十分に糊化度を高めてから喫食することが好ましく、通常、枝豆の糊化度が90~100%の状態になるまで加熱調理される。 【0027】 本発明の冷凍枝豆の加熱調理は、特に限定されないが、例えば、ボイル、電子レンジ加熱、蒸し、オーブン加熱、焼き、過加熱蒸気等により行うことができる。本発明では、冷凍枝豆の加熱調理のしやすさから、ボイル又は電子レンジにより加熱調理することが好ましい。尚、本明細書において電子レンジとは、マイクロ波加熱により飲食品を加熱調理することのできる装置全般を意味し、オーブンレンジのような別の称呼が用いられる装置もこれに包含される。」 2d)「【実施例】 ・・・ 【0035】 (1)枝豆の凍結前加熱の検討 枝豆を凍結する前の加熱時間を30~210秒間として、凍結後の枝豆を評価した。具体的には図2に示したフローに従って枝豆(品種:「味緑」(群馬県産))を処理し、加熱は98±2℃の熱水を用いたボイルにより行い、凍結前後の加熱時間を合計で210秒間となるようにした。枝豆の評価は、凍結された枝豆を解凍した後(評価1)、解凍した枝豆を加熱した後(評価2)、及び評価2で加熱した枝豆をさらに凍結した後(評価3)に行った。 【0036】 評価1及び評価2では、枝豆の物性(歯切れ)及び糊化度を測定した。以下に、詳細な方法を示す。・・・ 【0037】 また、評価2及び評価3では、枝豆の官能評価を行った。その方法としては、一般的な冷凍枝豆製法をモデルとした検体VIIを基準(2点)とし、各テストで得られた枝豆を0.5刻みで1点(食感不良)~5点(食感良)の範囲で評価した。・・・ 【0038】 以上により評価した結果を表1及び図3に示す。 【0039】 【表1】 [図:0001383258000009.jpg] ・・・ 【0041】 (2)枝豆品種の検討 上記(1)で使用した枝豆品種の味緑に加えて、湯あがり娘(群馬県産)についても評価を行った。上記(1)と同様に図2に示したフローに従って枝豆を加熱処理し、評価1~3の3段階で評価を行った。 本試験では、評価1及び評価2で枝豆の糊化度を測定し、評価2及び評価3で枝豆の官能評価を行った。枝豆の糊化度の測定及び官能評価は、上記(1)に示した方法を用いて行った。但し、上記表1の官能評価において歯切れと食感総合との結果に相関関係が見られた為、ここでの官能評価は食感総合のみ行った。その結果を表2に示す。 【0042】 【表2】 [図:0001383258000010.jpg] 」 2e)「【図2】 [図:0001383258000011.jpg] 」 刊行物3: 3a)「【0011】本発明の一次調理について、その一例を上げると、以下のようになっている。あばら部位の牛肉を厚さ1.5mm程度にスライスして、それぞれの肉片を70度Cないし80度Cのたれの中で5分間程度調理する。この調理によって取り除くべき油脂分と灰汁の70%ないし80%をたれ内へ流出させる。これと同時に、たれによって牛肉に味付けをする。 ・・・ 【0013】前記の一次調理されて油脂分と灰汁を取り除かれた肉片は、所定の量だけ計量され、これに牛肉の一次調理時と一緒に、あるい別途に加熱調理されたスライス玉ねぎを加えて一次調理された牛丼の具として構成され、その後-20度Cに冷凍処理されて1食分の集合体にまとめられる。 ・・・ 【0016】集合体化された冷凍具の一例を図示して説明すると、図1のようになっている。すなわち、スライスされた牛肉の肉片Mの上にスライスされた玉ねぎ片Oが載せられ、これらが冷凍されているために硬い1つの集合体となっている。この実施例では、冷凍された具の形状が平たい略直方体となっており、その表面には一次調理時のたれが付着している。この形状は二次調理の際に熱が通りやすくしたものである。しかしながら、本発明の一次調理された冷凍具の構造は、上記実施例に限定されるものではなく、他の形状となっていても良いし、牛肉の内側に玉ネギを混入させても良い。玉ネギに加えて他の野菜を使用したものであっても良い。 【0017】冷凍保存された具は店内で1食ずつ90度Cないし95度C程度のたれの中で1分間程度浸漬加熱される。この二次調理中に、一次調理された牛丼の具から油脂分と灰汁とがたれの中に取り出され、タレが牛肉にしみ込んで行って最終の味付けが完了し、適温に加熱された具は牛丼の具として完成され、器に盛り付けられて食事客に販売される。」 甲A1: A1a)「1.じゃがいもを主原料として適宜の具、調味料、香辛料、油脂分等が混入され所定の形に成型されたじゃがいも冷凍調味食品において、じゃがいもを擂潰してなる基部と、該基部の中に混在するじゃがいもの粗粒とからなり、上記粗粒と基部との割合比は約2対3であり、上記粗粒及び基部とも完全にアルファ化されるには至らない程度に低温加熱されかつ所定厚に成型され、再加熱して食するべく冷凍されたことを特徴とするじゃがいも冷凍調味食品。」(特許請求の範囲、請求項1) A1b)「【従来の技術】 じゃがいもを主原料として適宜の具、調味料、香辛料、油脂分等が混入され所定の形に成型された従来のじゃがいも冷凍調味食品は、例えばコロッケの如く、じゃがいもを沸点以上の高温で過熱処理し擂潰する工程を経て製造されていた。 【発明が解決しようとする問題点】 ・・・ 本発明は上記欠点を解消し、歯ごたえがあり、かつ適度にやわらかい食感の良好なじゃがいも冷凍調味食品及びその製造方法を供することを目的とする。」(2頁左上欄1~15行) A1c)「【実施例】 次に、本発明にかかるじゃがいも冷凍調味食品及びその製造方法を図面に示す実施例に基ずいて説明する。 第1図はじゃがいも冷凍調味食品の製造方法の一例を示すブロックダイヤグラムである。 適宜品種の原料を重量に基ずいてサイズ分けをする。洗滌後、スチームピーラにより圧力4.2kg/cm2、25秒間にて剥皮する。芽、皮、キズ、日焼け、病虫害等の瑕疵部分を除くトリミングをした後、厚さ10mmにスライスする。次いで、常圧下、75℃乃至93℃で約14分乃至20分間ブランチングする。次いで、100℃、10分間熱風を送ってじゃがいも表面の水分を乾燥後、クラッシングを行なう。このクラッシングにより、過熱処理されたじゃがいもは約4割又は約5割が約5mm乃至25mm大に粗砕され、残余が擂潰される。次いで、常温で30℃以下に放冷された後、適宜の具、調味料、香辛料、油脂分等が混入される(ミキシング)。これは、玉葱、ベーコン、マーガリンを直火の中火で炒め、調味料、香辛料等で味を整える。次いで、仕上り重量が所定重、例えば150gになるよう軽量され、所定厚、例えば10.5φ、厚さ2cmに成型される。次いで、バターを溶かしたフライパンによりLPガスで最初強めに焼いた後、遠赤外線を照射し、きつね色に焼目を付ける。次いでフライパンのまま水冷コンベヤにて冷却される。次いで、エアブラスト方式を用いて-35℃で約40分間急速凍結する。 こうして出来上がったじゃがいも冷凍調味食品1の一例を示すのが第2図及び第3図である。じゃがいも冷凍調味食品1は、じゃがいもを擂潰してなる基部2と、該基部2の中に混在するじゃがいもの粗粒3とからなる。上記じゃがいも冷凍調味食品1の中に混在する適宜の具、調味料、香辛料、油脂分等の図示は省略する。上記粗粒3と基部2との割合比は、約2対3又は約1対1とされる。厚さは約2cmである。上記粗粒3及び基部2とも完全にアルファ化されるには至っていない。 【作用】 本発明にかかるじゃがいも冷凍調味食品及びその製造方法においては、常圧下、約75℃乃至93℃の湯中で約14分乃至20分間低温加熱され、じゃがいものでんぷんがアルファ化されるに至らない段階でクラッシングされる。このため、主原料であるじゃがいもの細胞が破壊されずに基部2と粗粒3が形成されるのである。 しかも主原料であるじゃがいもは従来のようにすべて擂潰されておらず、約4割乃至約5割程度が約5mm乃至25mm大の粗粒3に形成されている。 したがって、食前に再加熱されることにより、すべてのじゃがいも原料がアルファ化されても、従来のようにねばねばせず、適度な歯ごたえがあるのである。」(2頁左下欄4行~3頁左上欄最下行) 甲A2:刊行物1と同じ。 甲A3: A3a)「【0003】 【発明が解決しようとする課題】従来の技術で述べたものにあっては、下記のような問題点を有していた。各家庭において頻繁にメニューとなる肉ジャガは未だ包装食品として販売されてはいない。それはその重要な構成素材である馬鈴薯が非常に煮崩れしやすく、また冷凍し、店頭に並べられ家庭に持ち帰り温められた場合、形が崩れとけてとろとろになり汁粉状に変化し、その汁状の中に肉切れや玉葱の切片が混和しているという状態となるためで商品価値が失われる。その改良が今日まで成功しないため、包装食品として市販されてはいないものと考えられる。 【0004】包装食品として販売される肉ジャガが家庭その他の場所において惣菜として供される場合、包装のまま熱湯に浸漬し適当な温度に温め容器に移し食するか、包装のまま解凍し、解凍後これを鍋などに移し温めて食するか、あるいは電子レンジなどにより温めて食するかである。いずれの場合においても、構成素材のうちの主要材料である馬鈴薯が解凍し、とろとろのスープ状になり原形を留めない状態となり、肉や玉葱などの他の素材は原形を確認できるが、いわゆる肉ジャガと言える感じには及びもつかない製品となり、また食感もザラザラし冷凍障害が起きたように考えられ、食品の価値として著しい低下により、ほとんど商品としての販売対象にならない。 【0005】本発明は、従来の技術の有するこのような問題点に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、次のようなことのできるものを提供しようとするものである。家庭の手料理で作られる肉ジャガと同様に馬鈴薯の原形を損なうことなく、風味や食味上のザラ付きや不快感を防ぎ、簡単な加温により食卓に供し得るように加工することができ流通市場に供給することが可能となった。 【0006】 【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、本発明は下記のようになるものである。第1発明は、湯煮した馬鈴薯を、具材,調味液などとパウチに充填し真空包装されている肉ジャガを下記の冷凍初期,冷凍中期,冷凍後期での冷凍条件を経て凍結するよう構成した包装食品になっている肉ジャガの煮崩れ防止方法である。 A.冷凍初期では、冷凍室内温度が-3℃から-7℃で、製品入庫が3.5時間から4.5時間であること。 B.冷凍中期では、冷凍室内温度が-8℃から-12℃で、製品入庫が3.5時間から4.5時間であること。 C.冷凍後期では、冷凍室内温度が-23℃から-27℃で、製品入庫が5時間以上であること。 【0007】第2発明は、湯煮した馬鈴薯を、具材,調味液などとパウチに充填し真空包装されている肉ジャガを下記の冷凍初期,冷凍中期,冷凍後期での冷凍条件を経て凍結するよう構成した包装食品になっている肉ジャガの煮崩れ防止方法である。 A.冷凍初期では、冷凍室内温度が-5℃で、製品入庫が4時間であること。 B.冷凍中期では、冷凍室内温度が-10℃で、製品入庫が4時間であること。 C.冷凍後期では、冷凍室内温度が-25℃で、製品入庫が6時間以上であること。 【0008】 【発明の実施の形態】発明の実施の形態を説明する。本発明の包装食品になっている肉ジャガの煮崩れ防止方法は下記のように構成されている。 第1工程~馬鈴薯の処理 A.馬鈴薯を水洗いする。 B.ピラーにて皮むきする。 C.皮むきされた馬鈴薯を水洗いする。 D.定格に包丁などでカットする。 E.水洗いをし定量を煮かごに入れ湯煮する。 F.放冷する。 【0009】第2工程~肉ジャガの包装食品の製造工程 A.具材(玉葱、切肉、調味料)などを平煮釜で煮込みする。 B.具材と調味液とを区別し容器へ移入する。 C.第1工程を経た馬鈴薯、具材を定量にて袋詰する。 D.袋詰されたものに調味液を充填器で注入する。 E.真空包装をする。 F.金属探知機を通過させる。 【0010】第3工程~冷凍工程 第2工程で得た肉ジャガの包装食品を下記の冷凍方法で凍結する。 A.冷凍初期では、冷凍室内温度が-3℃から-7℃で、製品入庫が3.5時間から4.5時間であること。 B.冷凍中期では、冷凍室内温度が-8℃から-12℃で、製品入庫が3.5時間から4.5時間であること。 C.冷凍後期では、冷凍室内温度が-23℃から-27℃で、製品入庫が5時間以上であること。 ・・・ 【0012】先ず、肉ジャガの主原料は、肉類と馬鈴薯、玉葱であるが、肉類と玉葱は冷凍、加熱に対して食材として著しい変化はなく、目的である肉ジャガの製造に障害とならないので、これらの素材を除外して、溶融など肉ジャガ製造上の障害となる馬鈴薯の煮崩れを防止するため種々の実験を反復して行った。」 甲A4: A4a)「【請求項1】 カットしたさやか品種馬鈴薯を、褐変起因酵素を失活させるが澱粉が実質的に完全糊化しない条件でブランチングした後、凍結してなる冷凍馬鈴薯。 【請求項2】 ダイスカットしたさやか品種馬鈴薯を、中心温度が70~95℃に達温するようにブランチングした後、急速凍結してなる冷凍馬鈴薯。」 A4b)「【0003】 【発明が解決しようとする課題】本発明は、ブランチング乃至凍結後に食感(歯応え)及び風味が優れ、各種食品、特にはレトルト食品用の冷凍原料としての用途に適する冷凍馬鈴薯を提供することを目的とする。また、本発明は、前記冷凍馬鈴薯の製造方法を提供することを目的とする。また、本発明は、前記冷凍馬鈴薯を具材として含む食品を提供することを目的とする。 A4c)「【0006】・・・カットした馬鈴薯を、その後、特定の条件下で、即ち、褐変起因酵素(フェノールオキシダーゼ)を失活させるが澱粉が実質的に完全糊化しない条件でブランチングする。ここで、澱粉が実質的に完全糊化しない条件とは、カットした馬鈴薯の少なくとも表面部分以外の内側部分における澱粉が完全糊化しない条件を意味する。」 甲B1:刊行物1、甲A2と同じ。 甲B2:刊行物3と同じ。 甲B3:甲A1と同じ。 甲B4: B4a)「3)衛生ボーロの調製方法 衛生ボーロの配合割合は鈴木らの方法36)に準じ、澱粉100g、卵25g、上白糖30gで、まず、上白糖と卵を白っぽくなるまでかき混ぜ、これに澱粉を混ぜ合わせて全容をフードプロセッサー(COM-V2、株式会社東芝)に移して1分30秒間攪拌した。そのまま5分間放置して生地とし1gを量りとって手で丸め、約30個を天板に並べて霧を2回(約1.6ml)噴き、210℃で7分間焼成した。normal maize澱粉、high-amylose澱粉、waxy澱粉については、水分量が少なく丸めることが出来なかったので、全量に対してそれぞれ7.5%、15%、15%の水を加えた。」(「本論」に付与された82頁下から5行~83頁4行) B4b)「Fig. 2-9にBAP法により測定した衛生ボーロの糊化度を示す。焼成当日(0日目)の糊化度は、ジャガイモ澱粉26.9%、waxy澱粉5.5%、high-amylose澱粉3.3%、normal maize澱粉2.8%、ヤマノイモ澱粉2.7%の順で、ジャガイモ澱粉の糊化度は他の澱粉に比べて非常に高いことがわかった。」(「本論」に付与された96頁9~13行) B4c)「 [図:0001383258000012.jpg] 」(「本論」に付与された98頁) B4d)「Fig.2-10に生澱粉ならびに焼成当日、10日目(high-amylose澱粉は5日目)の衛生ボーロの粉末試料のX線回折図を示す。・・・しかし、ジャガイモ澱粉やhigh-amylose澱粉、ヤマノイモ澱粉では1環が消えていることから、一部分糊化していると考えられる。」(「本論」に付与された100頁3~11行) B4e)「 [図:0001383258000013.jpg] 」(「本論」に付与された101頁) 甲B5:刊行物2と同じ。 甲B6: B6a)「・・・ [図:0001383258000014.jpg] ・・・ [図:0001383258000015.jpg] ・・・ [図:0001383258000016.jpg] ・・・ [図:0001383258000017.jpg] ・・・ [図:0001383258000018.jpg] ・・・ [図:0001383258000019.jpg] ・・・ [図:0001383258000020.jpg] ・・・ [図:0001383258000021.jpg] ・・・ [図:0001383258000022.jpg] ・・・ [図:0001383258000023.jpg] ・・・ [図:0001383258000024.jpg] ・・・ [図:0001383258000025.jpg] ・・・ [図:0001383258000026.jpg] ・・・ [図:0001383258000027.jpg] ・・・ [図:0001383258000028.jpg] ・・・ [図:0001383258000029.jpg] ・・・ [図:0001383258000030.jpg] ・・・ [図:0001383258000031.jpg] ・・・ [図:0001383258000032.jpg] ・・・ [図:0001383258000033.jpg] ・・・ [図:0001383258000034.jpg] ・・・ [図:0001383258000035.jpg] ・・・」(なお、エネルギー、水分等の記載の上部の欄には、「可食部100g当たり」との記載がある。) 甲B7: B7a)「・・・ [図:0001383258000036.jpg] ・・・ [図:0001383258000037.jpg] ・・・ [図:0001383258000038.jpg] ・・・ [図:0001383258000039.jpg] ・・・」 甲B8: B8a)「・・・ 2013-08-17 02:21:52 ・・・ Costcoで買っているミックスベジタブル。枝豆入りです。 [図:0001383258000040.jpg] 」 甲B9: B9a)「・・・ 材料(2人分) ・・・ ミックスベジタブル(枝豆入りがベスト) ・・・ 作り方 [図:0001383258000041.jpg] きっかけ 枝豆入りのミックスベジタブルが手に入ったので、ゆでたまごのグラタンを少し進化させてみました。 ・・・公開日:2010.10.28」 甲B10: B10a)「 [図:0001383258000042.jpg] ・・・ [図:0001383258000043.jpg] ・・・ [図:0001383258000044.jpg] ・・・ [図:0001383258000045.jpg] 」 甲B11: B11a)「1-1. メークイン種の収穫直後並びに6ヵ月間低温貯蔵した後の一般成分値 ・・・ [図:0001383258000046.jpg] 」(本文の8頁下から3行~9頁Table 4) B11b)「1-2. メークイン種の、生及び調理別の可食部100g当たりの一般成分値 ・・・ [図:0001383258000047.jpg] 」(本文の10頁5行~Table 5) B11c)「表7に掲載したポテトの一般成分の数値は、数人の文献抄録者(KronerとVolksen 1950,LampittとGoldenberg 1940,BrautlechtとGetchell 1951,WattとMerrill 1963)2)により報告されている概数と、化学肥料及び有機肥料の土壌から収穫したメークイン種の一般成分の含量を比較して掲載した。 [図:0001383258000048.jpg] 」(本文の12頁7行~Table 7) B11d)「生、茄で及び焼いたメークイン種の一般成分 収穫直後の水分量は・・・炭水化物は化学肥料が20.0g%~24.2g%、有機肥料が16.lg%~23.0g%である。」(本文の13頁2~7行) 甲B12: B12a)「1. 煮熟ジャガイモの糊化度 1) 調味料溶液における保存時の糊化度変化 調味料溶液および保存方法の違いによる煮熟ジャガイモの糊化度測定の結果を図1に示した。」(本文10頁左欄下から3行~右欄1行) B12b)「 [図:0001383258000049.jpg] 」(本文の10頁右欄) B12c)「以上のように,・・・さらに本みりんに含まれる成分の影響について検討を行った。糖混合液,乳酸溶液,エタノール溶液,糖・乳酸・エタノール混合液の結果を図2に示した。」(本文の10頁右欄24~27行) B12d)「 [図:0001383258000050.jpg] 」(本文の11頁左欄) 甲B13: B13a)「 [図:0001383258000051.jpg] 」(7-4頁) 甲C1:刊行物1、甲A2、甲B1と同じ。 甲C2: C2a)「【0012】本発明においては、調理及び冷凍を行う前に、食品材料として用いる野菜類を予備加熱することを特徴とするが、これは水又は調味液中で野菜類をあらかじめ加熱することである。・・・ 【0013】予備加熱を行った野菜類は、単独又は他の食品材料と共に調理を行う。調理の方法としては、ゆでる、煮る、蒸す、加圧調理、炒める、揚げる、焼く、電子レンジのような高周波を用いた加熱、電磁調理器加熱及び前記の方法を組合せたものなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。調理の条件も任意に実施して問題はない。」 C2b)「【0015】かくして得られた冷凍食品は、解凍後、再加熱したときの食感及び外観が冷凍前のものと実質的に同等であり、従来の冷凍食品にはない品質を有する。」 C2c)「【0024】実施例3 1cm幅のくし形に切った玉ねぎ1/2個、及び乱切りにしたじゃがいも1個を水300mlの入っている鍋に入れ、電磁調理機〔(株)マルゼン MIHX-55B〕の温度を60℃に設定して60分予備加熱した。このようにして得られた玉ねぎ及びじゃがいもを牛肉50gと共に、醤油、本みりん、だし調味液から成る調味液100ml中で、弱火で20分間煮込むことにより肉じゃがを得た。この肉じゃがを室温まで放冷後、肉じゃが及び調味液を袋に入れて密封した。これをブラインに60%エチルアルコール溶液を使用し、その温度を-30℃に設定し、該温度に冷却されているブライン冷凍装置に15kVの高電位を与えながら、30分間浸漬して高電位電場ブライン冷凍による凍結を行い、-30℃に設定した冷凍庫で4週間保存した。保存した冷凍食品は流水解凍で完全に溶解した後電子レンジで加熱した。比較例として、表4に示す予備加熱工程及び冷凍方法の組合せで肉じゃがを調製した。比較例において行った各工程は実施例3と同様に実施した。これらのようにして得られたものについて、官能評価を行った。官能評価において、評価項目は外観及び食感について行い、評価方法は4点法(0点;よくない、1点;普通、2点;よい;3点;非常によい)で行った。この官能評価におけるパネラー11名の合計点を表5に示す。 ・・・ 【0044】 【発明の効果】本発明によれば、冷凍食品の製造において、調理する前に野菜類を予備加熱したものを使用し、高電位電場ブライン冷凍を行うことにより、該冷凍食品中の野菜類は、解凍後加熱して食する際の食感及び外観が実質的に冷凍前と同等であるものを提供することができる。」 甲C3: C3a)「1. 試料 菓子,パン,さつまいも(高系,埼玉県産),じゃがいも(男爵,埼玉県産)およびあずき(北海道産)などの試料はすべて市販品を用いた. 2. でんぶんα化度の測定 グルコアミラーゼ法1)により行った. 3. 試料の調製 i) 加熱器具 アルミ鍋(直 径15cm),ステンレス鍋(直径21cm),天火(ピース),ガスオーブン(コンベック RCK),電子レンジ(日立 MR 400 S),魔法瓶(ダイガー PHC 190)を用いた. ii) 加熱方法 上記の各器具による試料の加熱程度は試料が可食状態になることを目安とし,各試料を次のように加熱した. ○1(決定注:○の中に1。) さつまいもとじゃがいもは厚さ,1cm,直径3.4cm の円形に切り,各器具を用いて次のように加熱した. アルミ鍋とステンレス鍋では鍋に試料を並べ,水をひたひたになるまで加えて強火で6分間加熱した. 天火ではあらかじめ150℃まで加熱しておき,その中段にアルミホイルで包んだ試料を入れ,20分間加熱した. 電子レンジでは試料をラップフィルムに包んでいれ,さつまいもでは10分間,じゃがいもでは2分30秒間加熱した. ガスオーブンではあらかじめ150℃まで加熱しておき,その中段にアルミホイルに包んだ試料を入れ,さつまいもは15分間,じゃがいもは20分間加熱した.」(77頁左欄14行~右欄13行) C3b)「 [図:0001383258000052.jpg] 」(78頁) 甲C4:刊行物2、甲B5と同じ。 2 引用発明 (1)刊行物1(甲A2、甲B1、甲C1) 刊行物1には、冷凍惣菜についての記載があるところ(摘示1a~1h)、その比較例2、実施例1、2の記載からみて、刊行物1には、 「皮むきした男爵ジャガイモを1個あたり20~23gの大きさに乱切りし、このジャガイモ90g、スライス玉ねぎ55g及び薄切り牛肉40gをポリプロピレン製の袋に入れ、下記表3に示す調味料100mlをさらに入れて30mmHgで減圧包装しシールして包装体とし、加熱温度及び加熱時間が、それぞれ80℃及び50分、90℃及び25分、90℃及び50分である加熱条件で加熱調理し、加熱調理後のジャガイモのα化度が、それぞれ28%、37%、67%であり、その後直ちに5~10℃の冷却水にて冷やして、直ちに冷凍した、肉じゃが。 【表3】 [図:0001383258000053.jpg] 」の発明(以下「刊行物1発明1」という。)が、記載されていると認める(なお、以下では上記表3の調味料を「刊行物1調味料」という。)。 また、刊行物1には、「【0038】 冷凍された具材は、加熱解凍して調理が完了する冷凍惣菜として市場に供せられ、この冷凍惣菜を加熱解凍することにより惣菜が得られる。この加熱は、具材が調理される加熱でもある。冷凍惣菜は包装されたまま加熱解凍がなされてもよい。この加熱は、レンジ、スチーム、湯煎等の方法で行うことができる。」との記載がある(摘示1f)から、刊行物1には、 「皮むきした男爵ジャガイモを1個あたり20~23gの大きさに乱切りし、このジャガイモ90g、スライス玉ねぎ55g及び薄切り牛肉40gをポリプロピレン製の袋に入れ、刊行物1調味料100mlをさらに入れて30mmHgで減圧包装しシールして包装体とし、加熱温度及び加熱時間が、それぞれ80℃及び50分、90℃及び25分、90℃及び50分である加熱条件で加熱調理し、加熱調理後のジャガイモのα化度が、それぞれ28%、37%、67%であり、その後直ちに5~10℃の冷却水にて冷やして、直ちに冷凍した、肉じゃがをレンジ、スチーム又は湯煎する肉じゃがの製造方法。」の発明(以下「刊行物1発明2」という。)が記載されていると認める。 同様に刊行物1の実施例3及び4の記載からみて、刊行物1には、 「男爵ジャガイモを水洗いして1個あたり20~23gの大きさに乱切りしたものを1450g、スライス玉ねぎ880g及び油炒めした薄切り牛肉550gを8分割し、それぞれを刊行物1調味料180mlとともにポリプロピレン製の袋に入れ、30mmHgで減圧包装しシールして包装体とし、この包装体を85~88℃、50分の加熱調理後、6~8℃の流水で急冷し、-35℃の高電圧電場アルコールブライン冷凍で各4袋ずつ冷凍した、肉じゃが。」の発明(以下「刊行物1発明3」という。)及び 「男爵ジャガイモを水洗いして1個あたり20~23gの大きさに乱切りしたものを1450g、スライス玉ねぎ880g及び油炒めした薄切り牛肉550gを8分割し、それぞれを刊行物1調味料180mlとともにポリプロピレン製の袋に入れ、30mmHgで減圧包装しシールして包装体とし、この包装体を85~88℃、50分の加熱調理後、6~8℃の流水で急冷し、-35℃の高電圧電場アルコールブライン冷凍で各4袋ずつ冷凍した、肉じゃがをレンジ、スチーム又は湯煎する肉じゃがの製造方法。」の発明(以下「刊行物1発明4」という。)が記載されていると認める。 さらに、刊行物1の実施例5の記載からみて、刊行物1には、 「ジャガイモ(メークイン)を水洗いして1個あたり約25gの大きさに乱切りしたものを100g、スライス玉ねぎ20g、マッシュルーム20g、少し油炒めした牛バラ肉100gに調味料(赤ワイン25ml(35mlを煮詰めたもの)、デミグラスソース(ハインツ製)200g、水65ml、塩1.5gを加熱して調整したもの)275gをポリプロピレン製の袋に入れ、30mmHgで減圧包装しシールして包装体とし、この包装体を90℃で30分加熱調理後、8℃の流水で急冷し、次いで冷凍した、クリームシチュー。」の発明(以下「刊行物1発明5」という。)及び 「ジャガイモ(メークイン)を水洗いして1個あたり約25gの大きさに乱切りしたものを100g、スライス玉ねぎ20g、マッシュルーム20g、少し油炒めした牛バラ肉100gに調味料(赤ワイン25ml(35mlを煮詰めたもの)、デミグラスソース(ハインツ製)200g、水65ml、塩1.5gを加熱して調整したもの)275gをポリプロピレン製の袋に入れ、30mmHgで減圧包装しシールして包装体とし、この包装体を90℃で30分加熱調理後、8℃の流水で急冷し、次いで冷凍した、クリームシチューをレンジ、スチーム又は湯煎するクリームシチューの製造方法。」の発明(以下「刊行物1発明6」という。)が記載されていると認める。 (2)甲A1(甲B3) 甲A1には、じゃがいも冷凍調味食品についての記載があるところ(摘示甲A1a~A1c)、その実施例の記載からみて、甲A1には、 「適宜品種の原料を重量に基づいてサイズ分けをし、洗滌後、スチームピーラにより圧力4.2kg/cm2、25秒間にて剥皮し、芽、皮、キズ、日焼け、病虫害等の瑕疵部分を除くトリミングをした後、厚さ10mmにスライスし、次いで、常圧下、75℃乃至93℃で約14分乃至20分間ブランチングし、次いで、100℃、10分間熱風を送ってじゃがいも表面の水分を乾燥後、クラッシングを行ない、このクラッシングにより、加熱処理されたじゃがいもは約4割又は約5割が約5mm乃至25mm大に粗砕され、残余が擂潰され、次いで、常温で30℃以下に放冷された後、適宜の具、調味料、香辛料、油脂分等が混入され(ミキシング)、これは、玉葱、ベーコン、マーガリンを直火の中火で炒め、調味料、香辛料等で味を整え、次いで、仕上り重量が所定重、例えば150gになるよう計量され、所定厚、例えば10.5φ、厚さ2cmに成型され、次いで、バターを溶かしたフライパンによりLPガスで最初強めに焼いた後、遠赤外線を照射し、きつね色に焼目を付け、次いでフライパンのまま水冷コンベヤにて冷却され、次いで、エアブラスト方式を用いて-35℃で約40分間急速凍結することにより製造されたじゃがいも冷凍調味食品。」の発明(以下「甲A1発明1」という。)が記載されていると認める(なお、摘示A1cの「過熱処理」は「加熱処理」の、「軽量」は「計量」の誤記と認める。以下同様。)。 また、甲A1には、食するべく再加熱することが記載されているから(摘示A1a)、甲A1には、 「適宜品種の原料を重量に基づいてサイズ分けをし、洗滌後、スチームピーラにより圧力4.2kg/cm2、25秒間にて剥皮し、芽、皮、キズ、日焼け、病虫害等の瑕疵部分を除くトリミングをした後、厚さ10mmにスライスし、次いで、常圧下、75℃乃至93℃で約14分乃至20分間ブランチングし、次いで、100℃、10分間熱風を送ってじゃがいも表面の水分を乾燥後、クラッシングを行ない、このクラッシングにより、加熱処理されたじゃがいもは約4割又は約5割が約5mm乃至25mm大に粗砕され、残余が擂潰され、次いで、常温で30℃以下に放冷された後、適宜の具、調味料、香辛料、油脂分等が混入され(ミキシング)、これは、玉葱、ベーコン、マーガリンを直火の中火で炒め、調味料、香辛料等で味を整え、次いで、仕上り重量が所定重、例えば150gになるよう計量され、所定厚、例えば10.5φ、厚さ2cmに成型され、次いで、バターを溶かしたフライパンによりLPガスで最初強めに焼いた後、遠赤外線を照射し、きつね色に焼目を付け、次いでフライパンのまま水冷コンベヤにて冷却され、次いで、エアブラスト方式を用いて-35℃で約40分間急速凍結することにより製造されたじゃがいも冷凍調味食品を食するべく再加熱する方法。」の発明(以下「甲A1発明2」という。)が記載されていると認める。 (3)甲A3 甲A3には、肉ジャガの煮崩れ防止方法についての記載があるところ(摘示A3a)、その実施の形態の記載からみて、甲A3には、 「以下の第1工程~第3工程による肉ジャガの煮崩れ防止方法により製造される肉ジャガの冷凍包装食品。 第1工程~馬鈴薯の処理 A.馬鈴薯を水洗いする。 B.ピラーにて皮むきする。 C.皮むきされた馬鈴薯を水洗いする。 D.定格に包丁などでカットする。 E.水洗いをし定量を煮かごに入れ湯煮する。 F.放冷する。 第2工程~肉ジャガの包装食品の製造工程 A.具材(玉葱、切肉、調味料)などを平煮釜で煮込みする。 B.具材と調味液とを区別し容器へ移入する。 C.第1工程を経た馬鈴薯、具材を定量にて袋詰する。 D.袋詰されたものに調味液を充填器で注入する。 E.真空包装をする。 F.金属探知機を通過させる。 第3工程~冷凍工程 第2工程で得た肉ジャガの包装食品を下記の冷凍方法で凍結する。 A.冷凍初期では、冷凍室内温度が-3℃から-7℃で、製品入庫が3.5時間から4.5時間であること。 B.冷凍中期では、冷凍室内温度が-8℃から-12℃で、製品入庫が3.5時間から4.5時間であること。 C.冷凍後期では、冷凍室内温度が-23℃から-27℃で、製品入庫が5時間以上であること。」の発明(以下「甲A3発明1」という。)が記載されていると認める。 また、甲A3には、加温により食卓に供し得るように加工することが記載されているから(摘示A3a)、 「以下の第1工程~第3工程による肉ジャガの煮崩れ防止方法により製造された肉ジャガの冷凍包装食品を食卓に供し得るように加温する方法。 第1工程~馬鈴薯の処理 A.馬鈴薯を水洗いする。 B.ピラーにて皮むきする。 C.皮むきされた馬鈴薯を水洗いする。 D.定格に包丁などでカットする。 E.水洗いをし定量を煮かごに入れ湯煮する。 F.放冷する。 第2工程~肉ジャガの包装食品の製造工程 A.具材(玉葱、切肉、調味料)などを平煮釜で煮込みする。 B.具材と調味液とを区別し容器へ移入する。 C.第1工程を経た馬鈴薯、具材を定量にて袋詰する。 D.袋詰されたものに調味液を充填器で注入する。 E.真空包装をする。 F.金属探知機を通過させる。 第3工程~冷凍工程 第2工程で得た肉ジャガの包装食品を下記の冷凍方法で凍結する。 A.冷凍初期では、冷凍室内温度が-3℃から-7℃で、製品入庫が3.5時間から4.5時間であること。 B.冷凍中期では、冷凍室内温度が-8℃から-12℃で、製品入庫が3.5時間から4.5時間であること。 C.冷凍後期では、冷凍室内温度が-23℃から-27℃で、製品入庫が5時間以上であること。」の発明(以下「甲A3発明2」という。)が記載されていると認める。 (4)甲B5(刊行物2、甲C4) 甲B5には、冷凍枝豆及び枝豆についての記載があるところ(摘示2a~2e)、その実施例、図2の記載からみて、甲B5には、 「枝豆(品種:「味緑」(群馬県産)又は「湯上がり娘」(群馬県産))を洗浄し、加熱を98±2℃の熱水を用いて、30、60、90、120、150、180又は210秒のボイルにより行い、0~10℃、2分50秒で水冷し、フリーザー凍結することにより製造された冷凍枝豆。」の発明(以下「甲B5発明1」という。)及び 「枝豆(品種:「味緑」(群馬県産)又は「湯上がり娘」(群馬県産))を洗浄し、加熱を98±2℃の熱水を用いて、30、60、90、120、150、180又は210秒のボイルにより行い、0~10℃、2分50秒で水冷し、フリーザー凍結することにより製造された冷凍枝豆を、10分の流水解凍を行った後、加熱を98±2℃の熱水を用いて、凍結前後の加熱時間を合計で210秒間となるように、180、150、120、90、60、30秒のボイルにより行い、0~10℃、2分50秒の水冷を行う、枝豆の製造方法。」の発明(以下「甲B5発明2」という。)が記載されていると認める。 (5)甲C2 甲C2には、冷凍食品についての記載があるところ(摘示C2a~C2c)、その実施例3の記載からみて、甲C2には、 「1cm幅のくし形に切った玉ねぎ1/2個、及び乱切りにしたじゃがいも1個を水300mlの入っている鍋に入れ、電磁調理機〔(株)マルゼン MIHX-55B〕の温度を60℃に設定して60分予備加熱し、このようにして得られた玉ねぎ及びじゃがいもを牛肉50gと共に、醤油、本みりん、だし調味液から成る調味液100ml中で、弱火で20分間煮込むことにより肉じゃがを得、この肉じゃがを室温まで放冷後、肉じゃが及び調味液を袋に入れて密封し、これをブラインに60%エチルアルコール溶液を使用し、その温度を-30℃に設定し、該温度に冷却されているブライン冷凍装置に15kVの高電位を与えながら、30分間浸漬して高電位電場ブライン冷凍による凍結を行い、-30℃に設定した冷凍庫で4週間保存した冷凍した肉じゃが。」の発明(以下「甲C2発明1」という。)が記載されていると認める。 また、甲C2には、得られた冷凍食品は、解凍後、再加熱することが記載されており(摘示C2b)、再加熱により食品とすることは自明であるから、甲C2には、 「1cm幅のくし形に切った玉ねぎ1/2個、及び乱切りにしたじゃがいも1個を水300mlの入っている鍋に入れ、電磁調理機〔(株)マルゼン MIHX-55B〕の温度を60℃に設定して60分予備加熱し、このようにして得られた玉ねぎ及びじゃがいもを牛肉50gと共に、醤油、本みりん、だし調味液から成る調味液100ml中で、弱火で20分間煮込むことにより肉じゃがを得、この肉じゃがを室温まで放冷後、肉じゃが及び調味液を袋に入れて密封し、これをブラインに60%エチルアルコール溶液を使用し、その温度を-30℃に設定し、該温度に冷却されているブライン冷凍装置に15kVの高電位を与えながら、30分間浸漬して高電位電場ブライン冷凍による凍結を行い、-30℃に設定した冷凍庫で4週間保存した冷凍した肉じゃがを再加熱する肉じゃがの製造方法。」の発明(以下「甲C2発明2」という。)が記載されていると認める。 刊行物・甲各号証は甲B7を除き、いずれも本件特許の優先日前に日本国内又は外国において頒布されたもの又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となったものである(甲B7は、サポート要件、実施可能要件についての証拠であり、本件特許の出願日において公知である)。 3 当審が通知した令和3年7月30日付け取消理由について (1)理由1、2について ア 本件発明1について (ア)刊行物1発明1について 本件発明1と刊行物1発明1とを対比する。 刊行物1発明1の「冷凍した、肉じゃが」は、本件発明1の「冷凍食品」に相当する。 刊行物1発明1の「男爵ジャガイモ」について、本件明細書には、「【0019】 野菜(A)の種類は、炭水化物含量が10~30%である野菜であれば特に制限されないが、具体的には、ジャガイモ、カボチャ、ソラマメ及びサトイモ等が挙げられる。」との記載があることから、本件発明1の「炭水化物含量10~30%の野菜」であるといえる。 刊行物1発明1の男爵ジャガイモは、「加熱調理」されるものであるところ、「加熱調理」は本件発明1の「加工」に相当する。 刊行物1発明1の「スライス玉ネギ」は、炭水化物含量が10~30%であるとはいえず、同「薄切り牛肉」は野菜ではなく、これらはいずれも固形であるから、これらは、固形具材(但し、炭水化物含量10~30%の野菜を除く)である限りにおいて、本件発明1の「可食状態の固形具材(但し、炭水化物含量10~30%の野菜を除く)」に相当する。 刊行物1発明1の「調味料」は、だし液、みりん、しょう油、砂糖からなるものであるところ、本件明細書には、「【0032】[液体(C)] 本発明において用いられる液体(C)は解凍・調理時の加熱によって蒸気となり得るものが好ましく、例えば、水、醤油、食酢、アルコール、みりん、果汁等の水性成分、当該水性成分の二種以上の混合物、当該水性成分の一種又は二種以上を溶媒とする溶液、並びに当該水性成分の一種又は二種以上を分散媒とする分散液(ゾル)等が挙げられる。液体(C)は、ゲル状であってもよい。液体(C)には、例えば、牛乳、加熱凝固していない卵(全卵液、卵黄液、卵白液等の液卵を含む)等も包含される。また、液体(C)が、水、醤油、食酢、アルコール、みりん、果汁等の水性成分の一種又は二種以上を溶媒とする溶液である場合、その溶質としては、例えば、砂糖、食塩、顆粒だし、小麦粉、増粘多糖類等が挙げられる。」との記載があるから、本件発明1の「水性液体」に相当する。 刊行物1発明1の「男爵ジャガイモ」、「スライス玉ねぎ」、「薄切り牛肉」、「調味料」について、これらは、「冷凍した」ものであるから、本件発明1の「冷凍された」に相当する。 してみると、本件発明1と刊行物1発明1とは、 「冷凍された下記(A)~(C)を含有する冷凍食品。 (A)加工された、炭水化物含量10~30%の野菜 (B)固形具材(但し、炭水化物含量10~30%の野菜を除く) (C)水性液体」である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点1-11-1> 本件発明1は「(C)の量が(A)及び(B)に対して1.5重量倍以下である」と特定しているのに対し、刊行物1発明1はそのような特定をしていない点。 <相違点1-11-2> (A)について、本件発明1は「糊化度が15~70%となるように」加工されたものであるのに対し、刊行物1発明1は「加熱調理後のジャガイモのα化度が、それぞれ28%、37%、67%」である点。 <相違点1-11-3> (B)について、本件発明1は「可食状態」であるのに対し、刊行物1発明1は可食状態かどうかが明らかでない点。 <相違点1-11-4> 本件発明1は「冷凍食品から製造される食品が、揚げ物料理である」と特定しているのに対し、刊行物1発明1はそのような特定をしていない点。 上記相違点について検討する。 事案に鑑みて、相違点1-11-4について検討する。 刊行物1発明1は、冷凍した肉じゃがに関するものであるところ、当該冷凍した肉じゃがから、揚げ物料理を製造することは刊行物1に記載されておらず、記載されているに等しい事項ということもできない。 したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は刊行物1に記載された発明であるということはできない。 また、肉じゃがは煮物料理であるといえるところ、刊行物1~3の記載事項及び技術常識を考慮しても、冷凍した煮物料理である、冷凍した肉じゃがから、揚げ物料理を製造することが当業者が容易になし得た事項であるということはできない。 したがって、他の相違点及び本件発明1が奏する効果について検討するまでもなく、本件発明1は刊行物1~3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。 (イ)刊行物1発明3について 上記(ア)と同様にして、本件発明1と刊行物1発明3とを対比すると、両者が、 「冷凍された下記(A)~(C)を含有する冷凍食品。 (A)加工された炭水化物含量10~30%の野菜 (B)固形具材(但し、炭水化物含量10~30%の野菜を除く) (C)水性液体」である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点1-13-1> 本件発明1は「(C)の量が(A)及び(B)に対して1.5重量倍以下である」と特定しているのに対し、刊行物1発明3はそのような特定をしていない点。 <相違点1-13-2> (A)について、本件発明1は「糊化度が15~70%となるように」加工されたものであるのに対し、刊行物1発明3はそのような特定をしていない点。 <相違点1-13-3> (B)について、本件発明1は「可食状態」であるのに対し、刊行物1発明3は可食状態かどうかが明らかでない点。 <相違点1-13-4> 本件発明1は「冷凍食品から製造される食品が、揚げ物料理である」と特定しているのに対し、刊行物1発明3はそのような特定をしていない点。 上記相違点について検討する。 事案に鑑みて、相違点1-13-4について検討する。 刊行物1発明3は、冷凍した肉じゃがに関するものであるところ、当該冷凍した肉じゃがから、揚げ物料理を製造することは刊行物1に記載されておらず、記載されているに等しい事項ということもできない。 したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は刊行物1に記載された発明であるということはできない。 また、肉じゃがは煮物料理であるといえるところ、刊行物1~3の記載事項及び技術常識を考慮しても、冷凍した煮物料理である、冷凍した肉じゃがから、揚げ物料理を製造することが当業者が容易になし得た事項であるということはできない。 したがって、他の相違点及び本件発明1が奏する効果について検討するまでもなく、本件発明1は刊行物1~3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。 (ウ)刊行物1発明5について 本件発明1と刊行物1発明5とを対比する。 刊行物1発明5の「冷凍した、クリームシチュー」は、本件発明1の「冷凍食品」に相当する。 刊行物1発明5の「ジャガイモ(メークイン)」は、本件発明1の「炭水化物含量10~30%の野菜」であるといえる。 刊行物1発明5のジャガイモ(メークイン)は、「加熱調理」されるものであるところ、「加熱調理」は本件発明1の「加工」に相当する。 刊行物1発明5の「スライス玉ネギ」は、炭水化物含量が10~30%であるとはいえず、同「マッシュルーム」及び「油炒めした牛バラ肉」は野菜ではなく、これらはいずれも固形であるから、これらは、固形具材(但し、炭水化物含量10~30%の野菜を除く)である限りにおいて、本件発明1の「可食状態の固形具材(但し、炭水化物含量10~30%の野菜を除く)」に相当する。 刊行物1発明5の「調味料」は赤ワイン25ml(35mlを煮詰めたもの)、デミグラスソース(ハインツ製)200g、水65ml、塩1.5gを加熱して調整したものであるところ、本件明細書には、「【0032】[液体(C)] 本発明において用いられる液体(C)は解凍・調理時の加熱によって蒸気となり得るものが好ましく、例えば、水、醤油、食酢、アルコール、みりん、果汁等の水性成分、当該水性成分の二種以上の混合物、当該水性成分の一種又は二種以上を溶媒とする溶液、並びに当該水性成分の一種又は二種以上を分散媒とする分散液(ゾル)等が挙げられる。液体(C)は、ゲル状であってもよい。液体(C)には、例えば、牛乳、加熱凝固していない卵(全卵液、卵黄液、卵白液等の液卵を含む)等も包含される。また、液体(C)が、水、醤油、食酢、アルコール、みりん、果汁等の水性成分の一種又は二種以上を溶媒とする溶液である場合、その溶質としては、例えば、砂糖、食塩、顆粒だし、小麦粉、増粘多糖類等が挙げられる。」との記載があるから、本件発明1の「水性液体」に相当する。 刊行物1発明5の「ジャガイモ(メークイン)」、「スライス玉ねぎ」、「マッシュルーム」、「油炒めした牛バラ肉」、「調味料」について、これらは、「冷凍した」ものであるから、本件発明1の「冷凍された」に相当する。 してみると、本件発明1と刊行物1発明5とは、 「冷凍された下記(A)~(C)を含有する冷凍食品。 (A)加工された炭水化物含量10~30%の野菜 (B)固形具材(但し、炭水化物含量10~30%の野菜を除く) (C)水性液体」である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点1-15-1> 本件発明1は「(C)の量が(A)及び(B)に対して1.5重量倍以下である」と特定しているのに対し、刊行物1発明5はそのような特定をしていない点。 <相違点1-15-2> (A)について、本件発明1は「糊化度が15~70%となるように」加工されたものであるのに対し、刊行物1発明5はそのような特定をしていない点。 <相違点1-15-3> (B)について、本件発明1は「可食状態」であるのに対し、刊行物1発明5は可食状態かどうかが明らかでない点。 <相違点1-15-4> 本件発明1は「冷凍食品から製造される食品が、揚げ物料理である」と特定しているのに対し、刊行物1発明5はそのような特定をしていない点。 上記相違点について検討する。 事案に鑑みて、相違点1-15-4について検討する。 刊行物1発明5は、冷凍したクリームシチューに関するものであるところ、当該冷凍したクリームシチューから、揚げ物料理を製造することは刊行物1に記載されておらず、記載されているに等しい事項ということもできない。 したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は刊行物1に記載された発明であるということはできない。 また、クリームシチューは煮物料理であるといえるところ、刊行物1~3の記載事項及び技術常識を考慮しても、冷凍した煮物料理である、冷凍したクリームシチューから、揚げ物料理を製造することが当業者が容易になし得た事項であるということはできない。 したがって、他の相違点及び本件発明1が奏する効果について検討するまでもなく、本件発明1は刊行物1~3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。 イ 本件発明2~6について 本件発明2~6は、いずれも本件発明1を引用しさらに技術的に限定するものであるから、本件発明1と同様に、本件発明2、3、6は刊行物1に記載された発明であるということできず、本件発明2~6は刊行物1~3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。 ウ 本件発明8について (ア)刊行物1発明2について 本件発明8と刊行物1発明2とを対比する。 刊行物1発明2において、冷凍した肉じゃがは、刊行物1発明1と同様の肉じゃがである。 刊行物1発明2の「レンジ」することは、本件発明8の「乾燥条件下で加熱する」ことに相当する。 刊行物1発明2のレンジされた「肉じゃが」は、本件発明8の「食品」に相当する。 さらに、上記ア(ア)で述べたことを考慮すれば、本件発明8と刊行物1発明2とは、 「冷凍された下記(A)~(C)を含有する冷凍食品を、乾燥条件下で加熱することを含む、食品の製造方法。 (A)加工された炭水化物含量10~30%の野菜 (B)固形具材(但し、炭水化物含量10~30%の野菜を除く) (C)水性液体」である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点8-12-1> 本件発明8は「(C)の量が(A)及び(B)に対して1.5重量倍以下である」と特定しているのに対し、刊行物1発明2はそのような特定をしていない点。 <相違点8-12-2> (A)について、本件発明8は「糊化度が15~70%となるように」加工されたものであるのに対し、刊行物1発明2は「加熱調理後のジャガイモのα化度が、それぞれ28%、37%、67%」である点。 <相違点8-12-3> (B)について、本件発明8は「可食状態」であるのに対し、刊行物1発明2は可食状態かどうかが明らかでない点。 <相違点8-12-4> 食品について、本件発明8は「揚げ物料理である」と特定しているのに対し、刊行物1発明2はそのような特定をしていない点。 上記各相違点について検討する。 事案に鑑みて、相違点8-12-4について検討する。 刊行物1発明2は、肉じゃがに関するものであるところ、肉じゃがが煮物料理であることは技術常識であり、しかも、肉じゃがが揚げ物料理であるとは刊行物1に記載されておらず、記載されているに等しい事項ということもできない。 したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明8は刊行物1に記載された発明であるということはできない。 また、肉じゃがは煮物料理であるといえるところ、刊行物1~3の記載事項及び技術常識を考慮しても、煮物料理である肉じゃがを、揚げ物料理とすることが当業者が容易になし得た事項であるということはできない。 したがって、他の相違点及び本件発明8が奏する効果について検討するまでもなく、本件発明8は刊行物1~3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。 (イ)刊行物1発明4について 上記ア(イ)で述べたことを考慮して、上記(ア)と同様にして本件発明8と刊行物1発明4とを対比すると、両者は、 「冷凍された下記(A)~(C)を含有する冷凍食品を、乾燥条件下で加熱することを含む、食品の製造方法。 (A)加工された炭水化物含量10~30%の野菜 (B)固形具材(但し、炭水化物含量10~30%の野菜を除く) (C)水性液体」である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点8-14-1> 本件発明8は「(C)の量が(A)及び(B)に対して1.5重量倍以下である」と特定しているのに対し、刊行物1発明4はそのような特定をしていない点。 <相違点8-14-2> (A)について、本件発明8は「糊化度が15~70%となるように」加工されたものであるのに対し、刊行物1発明4はそのような特定をしていない点。 <相違点8-14-3> (B)について、本件発明8は「可食状態」であるのに対し、刊行物1発明4は可食状態かどうかが明らかでない点。 <相違点8-14-4> 食品について、本件発明8は「揚げ物料理である」と特定しているのに対し、刊行物1発明4はそのような特定をしていない点。 上記各相違点について検討する。 事案に鑑みて、相違点8-14-4について検討する。 刊行物1発明4は、肉じゃがに関するものであるところ、肉じゃがが煮物料理であることは技術常識であり、しかも、肉じゃがが揚げ物料理であるとは刊行物1に記載されておらず、記載されているに等しい事項ということもできない。 したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明8は刊行物1に記載された発明であるということはできない。 また、肉じゃがは煮物料理であるといえるところ、刊行物1~3の記載事項及び技術常識を考慮しても、煮物料理である肉じゃがを、揚げ物料理とすることが当業者が容易になし得た事項であるということはできない。 したがって、他の相違点及び本件発明8が奏する効果について検討するまでもなく、本件発明8は刊行物1~3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。 (ウ)刊行物1発明6について 上記ア(ウ)で述べたことを考慮して、上記(ア)と同様にして本件発明8と刊行物1発明6とを対比すると、両者は、 「冷凍された下記(A)~(C)を含有する冷凍食品を、乾燥条件下で加熱することを含む、食品の製造方法。 (A)加工された炭水化物含量10~30%の野菜 (B)固形具材(但し、炭水化物含量10~30%の野菜を除く) (C)水性液体」である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点8-16-1> 本件発明8は「(C)の量が(A)及び(B)に対して1.5重量倍以下である」と特定しているのに対し、刊行物1発明6はそのような特定をしていない点。 <相違点8-16-2> (A)について、本件発明8は「糊化度が15~70%となるように」加工されたものであるのに対し、刊行物1発明6はそのような特定をしていない点。 <相違点8-16-3> (B)について、本件発明8は「可食状態」であるのに対し、刊行物1発明6は可食状態かどうかが明らかでない点。 <相違点8-16-4> 食品について、本件発明8は「揚げ物料理である」と特定しているのに対し、刊行物1発明6はそのような特定をしていない点。 上記各相違点について検討する。 事案に鑑みて、相違点8-16-4について検討する。 刊行物1発明6は、クリームシチューに関するものであるところ、クリームシチューが煮物料理であることは技術常識であり、しかも、クリームシチューが揚げ物料理であるとは刊行物1に記載されておらず、記載されているに等しい事項ということもできない。 したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明8は刊行物1に記載された発明であるということはできない。 また、クリームシチューは煮物料理であるといえるところ、刊行物1~3の記載事項及び技術常識を考慮しても、煮物料理であるクリームシチューを、揚げ物料理とすることが当業者が容易になし得た事項であるということはできない。 したがって、他の相違点及び本件発明8が奏する効果について検討するまでもなく、本件発明8は刊行物1~3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。 エ 本件発明9~12について 本件発明9~12は、いずれも本件発明8を引用しさらに技術的に限定するものであるから、本件発明8と同様に、本件発明9、12は刊行物1に記載された発明であるとはいえず、本件発明9~12は刊行物1~3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいうことはできない。 (2)まとめ 以上のとおりであるから、理由1及び2は理由がない。 4 取消理由で採用しなかった特許異議申立理由について (1)申立理由A1について 申立理由A1は、甲A1(甲B3と同じ。)を主引用例とする理由である。 ア 本件発明1について 本件発明1と甲A1発明1とを対比する。 甲A1発明1の「じゃがいも冷凍調味食品」は、本件発明1の「冷凍食品」に該当する。 甲A1発明1の「じゃがいも」は、本件発明1の「炭水化物含量10~30%の野菜」であるといえる。 甲A1発明1のじゃがいもは「加熱処理」されるものであるところ、「加熱処理」は本件発明1の「加工」に相当する。 甲A1発明1の「玉葱」は、炭水化物含量が10~30%であるとはいえず、同「ベーコン」は野菜ではなく、これらはいずれも固形であるから、これらは、固形具材(但し、炭水化物含量10~30%の野菜を除く)である限りにおいて、本件発明1の「可食状態の固形具材(但し、炭水化物含量10~30%の野菜を除く)」に相当する。 甲A1発明1の「じゃがいも」、「玉葱」、「ベーコン」について、これらは、「冷凍した」ものであるから、本件発明1の「冷凍された」に相当する。 してみると、本件発明1と甲A1発明1とは、 「冷凍された下記(A)~(B)を含有する冷凍食品。 (A)加工された、炭水化物含量10~30%の野菜 (B)固形具材(但し、炭水化物含量10~30%の野菜を除く)」である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点1-A11-1> 本件発明1は、(A)及び(B)に加え、「冷凍された」、「(C)水性液体」を含有することが特定されているのに対し、甲A1発明1はそのような特定をしていない点。 <相違点1-A11-2> 冷凍食品について、本件発明1は「(C)の量が(A)及び(B)に対して1.5重量倍以下である」と特定しているのに対し、甲A1発明1はそのような特定をしていない点。 <相違点1-A11-3> (A)について、本件発明1は「糊化度が15~70%となるように」加工されたものであることが特定されているのに対し、甲A1発明1はそのような特定をしていない点。 <相違点1-A11-4> (B)について、本件発明1は「可食状態」であるのに対し、甲A1発明1は可食状態かどうかが明らかでない点。 <相違点1-A11-5> 本件発明1は「冷凍食品から製造される食品が、揚げ物料理である」と特定しているのに対し、甲A1発明1はそのような特定をしていない点。 相違点1-A11-1及び1-A11-2はいずれも(C)水性液体に関するものであるから、併せて検討する。 甲A1(甲B3)には、じゃがいも冷凍調味食品において、冷凍された水性液体を用い、かつ、当該水性液体の量を(A)及び(B)に対して1.5重量倍以下であるとすることについては記載も示唆もされていない。甲A1発明1が所定厚に成形されるものであるとしても、そのことにより、冷凍された水性液体を用い、かつ、当該水性液体の量を(A)及び(B)に対して1.5重量倍以下であるとすることが当業者が容易になし得た事項であるということはできない。 また、甲A2(刊行物1、甲B1、甲C1と同じ。)には、冷凍・解凍により煮崩れ状態となったり風味が損なわれるという問題が解消された冷凍惣菜を提供することを課題とし、具体的には、煮物、蒸し物等の惣菜に関する事項が記載されており(摘示1c、1d)、甲A3には、肉ジャガの煮崩れ防止方法に関する事項が記載されている(摘示A3a)に過ぎないから、これら各証拠の記載事項を参酌しても、上記の点を併せて当業者が容易になし得た事項であるということはできない。 したがって、他の相違点及び本件発明1が奏する効果を検討するまでもなく、本件発明1は甲A1~甲A3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。 イ 本件発明2~6について 本件発明2~6は、いずれも本件発明1を引用しさらに技術的に限定するものであるから、本件発明1と同様に、甲A1~甲A3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。 ウ 本件発明8について 本件発明8と甲A1発明2とを対比する。 甲A1発明2における「じゃがいも冷凍調味食品」は、甲A1発明1の「じゃがいも冷凍調味食品」と同様の物である。 甲A1発明2の「再加熱」は、本件発明8の「加熱」に相当する。 甲A1発明2の「じゃがいも冷凍調味食品」を再加熱する「方法」は、本件発明8の「食品の製造方法」に相当する。 さらに、上記アで述べたことを考慮すれば、本件発明8と甲A1発明2とは、 「冷凍された下記(A)~(B)を含有する冷凍食品を、加熱することを含む、食品の製造方法。 (A)加工された、炭水化物含量10~30%の野菜 (B)固形具材(但し、炭水化物含量10~30%の野菜を除く)」である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点8-A12-1> 冷凍食品について、本件発明8は、(A)及び(B)に加え、「冷凍された」、「(C)水性液体」を含有することが特定されているのに対し、甲A1発明2はそのような特定をしていない点。 <相違点8-A12-2> 本件発明8は「(C)の量が(A)及び(B)に対して1.5重量倍以下である」と特定しているのに対し、甲A1発明2はそのような特定をしていない点。 <相違点8-A12-3> 加熱について、本件発明8は「乾燥条件下で」加熱するのに対し、甲A1発明2はそのような特定をしていない点。 <相違点8-A12-4> (A)について、本件発明8は「糊化度が15~70%となるように」加工されたものであることが特定されているのに対し、甲A1発明2はそのような特定をしていない点。 <相違点8-A12-5> (B)について、本件発明8は「可食状態」であるのに対し、甲A1発明2は可食状態かどうかが明らかでない点。 <相違点8-A12-6> 食品について、本件発明8は「食品が、揚げ物料理である」と特定しているのに対し、甲A1発明2はそのような特定をしていない点。 相違点8-A12-1及び8-A12-2はいずれも(C)水性液体に関するものであるから、併せて検討するに、これらの相違点は、それぞれ相違点1-A11-1及び1-A11-2と同様の相違点であり、それら相違点についての判断は、上記アで述べたのと同様である。 したがって、他の相違点及び本件発明8が奏する効果を検討するまでもなく、本件発明8は甲A1~甲A3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいうことはできない。 エ 本件発明9~12について 本件発明9~12は、いずれも本件発明8を引用しさらに技術的に限定するものであるから、本件発明8と同様に、甲A1~甲A3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。 オ まとめ 以上のとおりであるから、申立理由A1は理由がない。 (2)申立理由A2について 申立理由A2は、甲A2を主引用例とする理由であるところ、甲A2は刊行物1と同じ文献(甲B1、甲C1とも同じ。)である。 ア 本件発明1について 本件発明1と甲A2に記載された発明との一致点・相違点は、上記3(1)ア(ア)、(イ)、(ウ)で示したとおりである。 相違点1-11-4、1-13-4、1-15-4について併せて検討するに、甲A2には、冷凍した肉じゃが、クリームシチューから揚げ物料理を製造することは記載も示唆もされておらず、甲A3には、肉ジャガの煮崩れ防止方法が記載されているところ(摘示A3a)、その記載事項をみても、冷凍した肉じゃが又はクリームシチューから、揚げ物料理を製造することが当業者が容易になし得た事項であるということはできないから、上記いずれの相違点についても、当該相違点に係る本件発明1の技術的事項を採用することは、当業者が容易になし得た事項であるということはできない。 よって、他の相違点及び本件発明1が奏する効果について検討するまでもなく、本件発明1は甲A2~甲A3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。 イ 本件発明2~6について 本件発明2~6は、いずれも本件発明1を引用しさらに技術的に限定するものであるから、本件発明1と同様に、甲A2~甲A3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。 ウ 本件発明8について 本件発明8と甲A2に記載された発明との一致点・相違点は、上記3(1)ウ(ア)、(イ)、(ウ)で示したとおりである。 相違点8-12-4、8-14-4、8-16-4について併せて検討するに、甲A2には、肉じゃが、クリームシチューを揚げ物料理とすることは記載も示唆もされておらず、甲A3には、肉ジャガの煮崩れ防止方法が記載されているところ(摘示A3a)、その記載事項をみても、肉じゃが又はクリームシチューを揚げ物料理とすることが当業者が容易になし得た事項であるということはできないから、上記いずれの相違点についても、当該相違点に係る本件発明8の技術的事項を採用することは、当業者が容易になし得た事項であるということはできない。 したがって、他の相違点及び本件発明8が奏する効果について検討するまでもなく、本件発明1は甲A2~甲A3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。 エ 本件発明9~12について 本件発明9~12は、いずれも本件発明8を引用しさらに技術的に限定するものであるから、本件発明8と同様に、甲A2~甲A3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。 オ まとめ 以上のとおりであるから、申立理由A2は理由がない。 (3)申立理由A3について 申立理由A3は、甲A3を主引用例とする理由である。 ア 本件発明1について 本件発明1と甲A3発明1とを対比する。 甲A3発明1の「肉ジャガの冷凍包装食品」は、本件発明1の「冷凍食品」に相当する。 甲A3発明1の「馬鈴薯」は、本件発明1の「炭水化物含量10~30%の野菜」であるといえる。 甲A3発明1の馬鈴薯は、湯煮されるものであるところ、「湯煮」は本件発明1の「加工」に相当する。 甲A3発明1の「玉葱」、「切肉」は平煮釜で煮込みされるところ、「玉葱」は炭水化物含量が10~30%であるとはいえず、同「切肉」は野菜ではなく、これらはいずれも固形である。そして、煮込みの程度は明らかではないから、これらは、固形具材(但し、炭水化物含量10~30%の野菜を除く)である限りにおいて、本件発明1の「可食状態の固形具材(但し、炭水化物含量10~30%の野菜を除く)」に相当する。 甲A3発明1の「調味液」は、液体である限りにおいて、本件発明1の「水性液体」に相当する。 甲A3発明1の「馬鈴薯」、「玉葱」、「切肉」、「調味液」について、これらは、所定の冷凍方法で「凍結」したものであるから、本件発明1の「冷凍された」に相当する。 してみると、本件発明1と甲A3発明1とは、 「冷凍された下記(A)~(C)を含有する冷凍食品。 (A)加工された、炭水化物含量10~30%の野菜 (B)固形具材(但し、炭水化物含量10~30%の野菜を除く) (C)液体」である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点1-A31-1> 本件発明1は「(C)の量が(A)及び(B)に対して1.5重量倍以下である」と特定しているのに対し、甲A3発明1はそのような特定をしていない点。 <相違点1-A31-2> (A)について、本件発明1は「糊化度が15~70%となるように」加工されたものであるのに対し、甲A3発明1はそのような特定をしていない点。 <相違点1-A31-3> (B)について、本件発明1は「可食状態」であるのに対し、甲A3発明1は可食状態かどうかが明らかでない点。 <相違点1-A31-4> (C)について、本件発明1は「水性液体」と特定しているのに対し、甲A3発明1の調味液は水性と特定されていない点。 <相違点1-A31-5> 本件発明1は「冷凍食品から製造される食品が、揚げ物料理である」と特定しているのに対し、甲A3発明1はそのような特定をしていない点。 事案に鑑みて、相違点1-A31-5について検討する。 甲A3発明1は肉ジャガの冷凍包装食品に関するものであり、肉ジャガは煮物料理であるといえるところ、甲A2~甲A4の記載事項及び技術常識を考慮しても、煮物料理である肉ジャガを、揚げ物料理とすることが当業者が容易になし得た事項であるということはできない。 したがって、他の相違点及び本件発明1が奏する効果について検討するまでもなく、本件発明1は甲A2~甲A4に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。 イ 本件発明2~6について 本件発明2~6は、いずれも本件発明1を引用しさらに技術的に限定するものであるから、本件発明1と同様に、甲A2~甲A4に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。 ウ 本件発明8について 本件発明8と甲A3発明2とを対比する。 甲A3発明2における「肉ジャガの冷凍包装食品」は、甲A3発明1の「肉ジャガの冷凍包装食品」と同様の物である。 甲A3発明2の「加温」は、本件発明8の「加熱」に相当する。 甲A3発明2の「肉ジャガの冷凍包装食品」を加温する「方法」は、本件発明8の「食品の製造方法」に相当する。 さらに、上記アで述べたことを考慮すれば、本件発明8と甲A3発明2とは、 「冷凍された下記(A)~(C)を含有する冷凍食品を、加熱することを含む、食品の製造方法。 (A)加工された、炭水化物含量10~30%の野菜 (B)固形具材(但し、炭水化物含量10~30%の野菜を除く) (C)液体」である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点8-A32-1> 本件発明8は「(C)の量が(A)及び(B)に対して1.5重量倍以下である」と特定しているのに対し、甲A3発明2はそのような特定をしていない点。 <相違点8-A32-2> (A)について、本件発明8は「糊化度が15~70%となるように」加工されたものであるのに対し、甲A3発明2はそのような特定をしていない点。 <相違点8-A32-3> (B)について、本件発明8は「可食状態」であるのに対し、甲A3発明2は可食状態かどうかが明らかでない点。 <相違点8-A32-4> (C)について、本件発明8は「水性液体」と特定しているのに対し、甲A3発明2の調味液は水性と特定されていない点。 <相違点8-A32-5> 本件発明8は「食品が、揚げ物料理である」と特定しているのに対し、甲A3発明2はそのような特定をしていない点。 事案に鑑みて、相違点8-A32-5について検討する。 甲A3発明2は肉ジャガの冷凍包装食品に関するものであり、肉ジャガは煮物料理であるといえるところ、甲A2~甲A4の記載事項及び技術常識を考慮しても、煮物料理である肉ジャガを、揚げ物料理とすることが当業者が容易になし得た事項であるということはできない。 したがって、他の相違点及び本件発明8が奏する効果について検討するまでもなく、本件発明8は甲A2~甲A4に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。 エ 本件発明9~12について 本件発明9~12は、いずれも本件発明8を引用しさらに技術的に限定するものであるから、本件発明8と同様に、甲A2~甲A4に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。 オ まとめ 以上のとおりであるから、申立理由A3は理由がない。 (4)申立理由B1-1について 申立理由B1-1のうち、請求項4、5、10、11についての申立てについては、当審が通知した取消理由で採用しなかった理由であるから、これら請求項について検討するに、上記3(1)ア及びウで述べたとおり、本件発明1及び8は刊行物1(甲B1と同じ。甲A2、甲C1とも同じ。)に記載された発明であるとはいえないところ、本件発明4、5は本件発明1を引用し技術的にさらに限定するものであり、本件発明10、11は本件発明8を引用し技術的にさらに限定するものであるから、本件発明4、5、10、11は刊行物1に記載された発明であるとはいえない。 したがって、申立理由B1-1は理由がない。 (5)申立理由B2-1について 申立理由B2-1は、請求項1~13を対象請求項とし、主引用例を甲B1(刊行物1と同じ。)とし、副引用例をB2、B5(それぞれ、刊行物3、2と同じ。)とする点において、当審が通知した取消理由の理由2と同じ理由である。 (6)申立理由B1-2について 申立理由B1-2は、甲B3(甲A1と同じ。)を引用例とするものであるところ、上記(1)で示したとおり、本件発明1及び8は、甲A1に記載された発明(甲A1発明1及び甲A1発明2)とは、少なくとも相違点1-A11-1及び1-A11-2並びに相違点8-A12-1及び8-A12-2を有し、それら相違点は実質的な相違点であるといえるから、本件発明1及び8は、甲B3に記載された発明であるとはいえない。 また、本件発明2~6は本件発明1を、本件発明9~12は本件発明8をそれぞれ引用しさらに技術的に限定するものであるから、同様に、甲B3に記載された発明であるとはいえない。 したがって、申立理由B1-2は理由がない。 (7)申立理由B2-2について 申立理由B2-2は、甲B3(甲A1と同じ。)を主引用例とするものである。 ア 本件発明1について 本件発明1と甲A1に記載された発明(甲A1発明1)との一致点・相違点は、上記(1)アで示したとおりである。 相違点1-A11-1及び1-A11-2について、甲B4には、衛生ボーロの調製方法等が記載されており(摘示B4a~B4c)、「normal maize澱粉、high-amylose澱粉、waxy澱粉については、水分量が少なく丸めることが出来なかったので、全量に対してそれぞれ7.5%、15%、15%の水を加えた」ことが記載されているが(摘示B4a)、「冷凍された」「水性液体」、「(C)の量が(A)及び(B)に対して1.5重量倍以下である」ことについては記載も示唆もされていない。 したがって、上記(1)アで述べたのと同様に、上記相違点に係る本件発明1の技術的事項を当業者が容易になし得た事項であるということはできない。 よって、その他の相違点及び本件発明1が奏する効果を検討するまでもなく、本件発明1は甲B3及び甲B4に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。 イ 本件発明2~6について 本件発明2~6は、いずれも本件発明1を引用しさらに技術的に限定するものであるから、本件発明1と同様に、甲B3及び甲B4に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。 ウ 本件発明8について 本件発明1と甲A1に記載された発明(甲A1発明2)との一致点・相違点は、上記(1)ウで示したとおりである。 そして、相違点8-A12-1及び8-A12-2は、それぞれ相違点1-A11-1及び1-A11-2と同様の相違点であり、それら相違点についての判断は、上記アで述べたのと同様である。 したがって、その他の相違点及び本件発明8が奏する効果を検討するまでもなく、本件発明8は甲B3及び甲B4に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいうことはできない。 エ 本件発明9~12について 本件発明9~12は、いずれも本件発明8を引用しさらに技術的に限定するものであるから、本件発明8と同様に、甲B3及び甲B4に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。 オ まとめ 以上のとおりであるから、申立理由B2-2は理由がない。 (8)申立理由B2-3について 申立理由B2-3は、甲B5(刊行物2、甲C4と同じ。)を主引用例とするものである。 ア 本件発明1について 本件発明1と甲B5発明1とを対比する。 甲B5発明1の「冷凍枝豆」は、本件発明1の「冷凍食品」に相当する。 甲B5発明1の「枝豆」は、「野菜」である限りにおいて、本件発明1の「炭水化物含量10~30%の野菜」に相当する。 甲B5発明1の「枝豆」は、「加熱」されるものであるところ、「加熱」は本件発明1の「加工」に相当する。 甲B5発明1の「枝豆」は「フリーザー凍結」されるものであるから、本件発明1の「冷凍された」ことに相当する。 してみると、本件発明1と甲B5発明1とは、 「冷凍された下記(A)を含有する冷凍食品。 (A)加工された、野菜」である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点1-B51-1> 本件発明1は、(A)に加え、「冷凍された」、「(B)可食状態の固形具材(但し、炭水化物含量10~30%の野菜を除く)」及び「(C)水性液体」を含有し、「(C)の量が(A)及び(B)に対して1.5重量倍以下」であると特定しているのに対し、甲B5発明1は(B)及び(C)を含有するものではない点。 <相違点1-B51-2> 本件発明1は「冷凍食品から製造される食品が、揚げ物料理である」と特定しているのに対し、甲B5発明1はそのような特定をしていない点。 <相違点1-B51-3> (A)について、本件発明1は「糊化度が15~70%となるように」加工されたものであり、「炭水化物含量10~30%」であることが特定されているのに対し、甲B5発明1はそのような特定をしていない点。 上記相違点について検討する。 相違点1-B51-1について、甲B5には、冷凍枝豆を他の冷凍された固形具材と混合すること、冷凍枝豆を冷凍された水性液体と混合することは記載も示唆もされてない。甲B6には各種野菜類の炭水化物量が(摘示B6a)、甲B8及び甲B9には枝豆入りのミックスベジタブルが(摘示B8a、B9a)が記載されているところ、これらの記載を参酌しても、他の冷凍された固形具材、水性液体と混合することが記載も示唆もされていない甲B5に記載された発明である、甲B5発明1において、さらに、「冷凍された」、「(B)可食状態の固形具材(但し、炭水化物含量10~30%の野菜を除く)」及び「(C)水性液体」を含有するものとし、それに加えて、「(C)の量が(A)及び(B)に対して1.5重量倍以下」であるとすることが、当業者が容易になし得た事項であるとはいえない。 なお、特許異議申立人Bは、冷凍野菜の表面には通常水分が氷として付着している旨主張するが(特許異議申立書31頁)、甲B5、B8、B9にはそのような記載はなく、仮にそのようなことがあるとしても、そのような氷が、本件発明1で特定される「水性液体」に該当するとはいえないし、そのことにより、水性液体を含有することは当業者が容易になし得た事項であるということもできない。 相違点1-B51-3について、本件明細書の【0028】には、「可食状態の炭水化物含量が10%未満又は30%を超える野菜(例、サツマイモ、エダマメ等)」との記載があり、また、甲B6には(摘示B6a)、「えだまめ」の炭水化物含量について、「なま」、「ゆで」は100g当たりそれぞれ、8.8g、8.9gであることが記載されており、いずれについても、炭水化物含量が10~30%の範囲にあるとはいえない。 なお、甲B6には、冷凍のえだまめについて、炭水化物含量が10.8gであることが記載されているが、本件発明1における炭水化物含量は、本件明細書の【0009】の、「炭水化物含量が特定の範囲である野菜を、その糊化度が特定の範囲となるように加工した上で冷凍した後」との記載からみて、冷凍前のものであるといえるから、甲B6の当該記載から、甲B5発明1の枝豆の炭水化物量が10~30%の範囲にあるということはできない。 そして、甲B5、甲B6、甲B8、甲B9の記載事項をみても、甲B5発明1の枝豆の炭水化物含量を10~30%の範囲のものとすることが当業者が容易になし得た事項であるということはできない。 したがって、相違点1-B51-3の糊化度の点、その他の相違点及び本件発明1が奏する効果を検討するまでもなく、本件発明1は甲B5、甲B6、甲B8、甲B9に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいうことはできない。 イ 本件発明2~5について 本件発明2~5は、いずれも本件発明1を引用しさらに技術的に限定するものであるから、本件発明1と同様に、甲B5、甲B6、甲B8、甲B9に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。 ウ 本件発明8について 本件発明8と甲B5発明2とを対比する。 甲B5発明2における「冷凍枝豆」は、甲B5発明1の「冷凍枝豆」と同様の物である。 甲B5発明2の流水解凍後の「加熱」は、本件発明8の「加熱」に相当する。 甲B5発明2の「枝豆の製造方法」は、本件発明8の「食品の製造方法」に相当する。 さらに、上記アで述べたことを考慮すれば、本件発明8と甲B5発明2とは、 「冷凍された下記(A)を含有する冷凍食品を、加熱することを含む、食品の製造方法。 (A)加工された、野菜」である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点8-B52-1> 冷凍食品について、本件発明8は、(A)に加え、「冷凍された」、「(B)可食状態の固形具材(但し、炭水化物含量10~30%の野菜を除く)」及び「(C)水性液体」を含有し、「(C)の量が(A)及び(B)に対して1.5重量倍以下」であると特定しているのに対し、甲B5発明2は(B)及び(C)を含有するものではない点。 <相違点8-B52-2> 加熱について、本件発明8は「乾燥条件下で」加熱すると特定しているのに対し、甲B5発明2は「熱水を用いて」、「ボイルにより行う」点。 <相違点8-B52-3> 本件発明8は「食品が、揚げ物料理である」と特定しているのに対して、甲B5発明2はそのような特定をしていない点。 <相違点8-B52-4> (A)について、本件発明8は「糊化度が15~70%となるように」加工されたものであり、「炭水化物含量10~30%」であることが特定されているのに対し、甲B5発明2はそのような特定をしていない点。 相違点8-B52-1、8-B52-4について検討するに、これらの相違点は、それぞれ相違点1-B51-1、1-B51-3と同様の相違点であり、それら相違点についての判断は、上記アで述べたのと同様である。 したがって、相違点8-B52-4の糊化度の点、その他の相違点及び本件発明8が奏する効果を検討するまでもなく、本件発明8は甲B5、甲B6、甲B8、甲B9に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいうことはできない。 エ 本件発明9~11について 本件発明9~11は、いずれも本件発明8を引用しさらに技術的に限定するものであるから、本件発明8と同様に、甲B5、甲B6、甲B8、甲B9に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。 オ まとめ 以上のとおりであるから、申立理由B2-3は理由がない。 (9)申立理由B3について ア 申立理由 申立理由B3についての特許異議申立人Bの主張の具体的な理由の概要は、以下のとおりである。 (ア)本件特許発明1、8において、冷凍食品は「炭水化物含量10~30%の野菜」を含むとされており、ここで文言通り解釈すれば、冷凍状態において「炭水化物含量10~30%の野菜」を指すものと解されるから、甲B6に説明されているとおり、冷凍状態で炭水化物含量10.6%の冷凍枝豆も該当すると解されるが、本件明細書の【0028】には「可食状態の炭水化物含量が10%未満の野菜(例・・・エダマメ)」と記載されている。このことからわかる通り、本件請求項1~13は、本件特許発明に該当するか非常に疑わしいものを包含しているから、本件特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号の規定を満たさない。 (イ)特許権者が本件特許発明1、8において「(A)糊化度が15~70%となるように加工された、炭水化物含量10~30%の野菜」とは例えば生の状態の炭水化物量を指し、冷凍状態の炭水化物含量を指すのではないと主張するのであれば、以下の点で本件特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号の規定を満たさない。 じゃがいも等の野菜は、同じ種類であっても、生の状態において幅広い炭水化物量を取りうることが知られている。 そうすると、仮に日本食品標準成分表において炭水化物量が10~30%と記載されていたとしても、実際の実験に供したサツマイモ、サトイモ、西洋カボチャ、ジャガイモの炭水化物量は不明であって、本件明細書には、そのように炭水化物量が不明なサツマイモ、サトイモ、西洋カボチャ、ジャガイモの官能評価結果が記載されているにすぎない。このため本件特許発明において「炭水化物量が10~30%」であることの技術的意義は不明と言わざるを得ない。 本件特許に係る発明が解決しようとする課題は、本件明細書に記載された「加熱して解凍・調理された際に、野菜の形状が崩れることなく、野菜のホクホク又はネットリとした食感が向上し、且つ固形具材が焦げたり、萎れたりすることがない冷凍食品を提供する」こと(【0011】)と認められる。 そして、当該課題との関係からすると、本件明細書に記載されたジャガイモのように、従来の加熱条件によって煮崩れしやすく、且つ“ホクホク又はネットリ”した食感を有する野菜に関するものであると認められる。そして本件特許発明1を満たす実施例において、炭水化物含量10~30%の野菜として用いられているのはジャガイモのみである。 これに対し、甲B6の日本標準食品成分表によれば、炭水化物含量10~30%の野菜とは、本件明細書の表4と同様に「生」の状態でのものだけでも、アーティチョーク(花らい)、グリンピース、くわい、ごぼう、とうがらし(果実)、スイートコーン、にんにく、茎にんにく、のびる、ふきのとう、ホースラディッシュ、むかご、ゆりね、よめな、らっかせい、らっきょう、れんこん、わさび等、多数が存在し、これらのほとんどは、「ホクホク又はネットリとした食感」とは関係がないことが明らかであるし、また食物繊維組成や構造もジャガイモとは異なることに起因して煮崩れやすさがじゃがいもとは全く異なることが明らかである。 そうすると、炭水化物含量10~30%の野菜であるからといって、じゃがいも以外の野菜を特定糊化度としたときに上記課題が解決できると当業者は理解できない。 以上の理由から、本件請求項1~13は、明らかに本件特許発明の課題を解決できないものを包含していることになるから、本件特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号の規定を満たさない。 (ウ)本件請求項1~13において「(A)糊化度が15~70%となるように加工された、炭水化物含量10~30%の野菜」と「(B)可食状態の固形具材(但し、炭水化物含量10~30%の野菜を除く)」との比率は一切記載されていない。 しかしながら、本件明細書の各実施例では(A):(B)の質量比が1:5~5:1の範囲内の例しか存在しない。そして、(A)成分が(B)成分に対して非常に少ない場合に、ホクホク又はねっとりした食感が得られるとは当業者は理解できない。従って本件請求項1~13に係る発明は、発明の課題を解決できない範囲を含んでいるから、本件特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号の規定を満たさない。 (エ)本件請求項1~13において、「(A)糊化度が15~70%となるように加工された、炭水化物含量10~30%の野菜」につき、野菜の形状については一切記載されていないが、本件明細書の各実施例では15~25mmダイスの例しか存在しない。そして、(A) 成分の形状次第では、ホクホク又はねっとりした食感が得られるとは当業者は理解できない。従って本件請求項1~13にかかる発明は、発明の課題を解決できない範囲を含んでいるから、本件特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号の規定を満たさない。 (オ)本件請求項1~13において、「固形具材」の種類は一切限定されていないが、本件明細書の実施例で用いられている固形具材は、牛かた肉又は牛ひき肉及びパン粉のみである。 これに対し、本件請求項1の「固形具材」は、本件明細書によれば「炭水化物含量10~30%の野菜」以外であって加熱調理によって蒸気になりえない可食状態の固形物であれば野菜であるか肉であるか、それとも澱粉質であるか繊維質であるかなど、一切問わず、どのような成分をも含むと解される。固形具材の組成、構造や水分量が実施例で用いた牛かた肉又は牛ひき肉及びパン粉と全く異なる場合、野菜の煮崩れが起こらずホクホク又はネットリした食感が得られるために必要な水性液体の量が異なることは明らかである。また水分量や組成、構造の異なるすべての固形具材について、1.5重量倍以下の水性液体を用いた全ての場合に、或いは固形具材が萎れたり焦げたりしないという効果が奏されないことも明らかである。 このため本件実施例の記載のみですべての「固形具材」について、本件発明の効果が奏されると当業者は理解できない。従って本件請求項1~13にかかる発明は、発明の課題を解決できない範囲を含んでいるから、本件特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号の規定を満たさない。 (カ)本件特許発明1~13は、「水性液体」「可食状態の固形具材(但し、炭水化物含量10~30%の野菜を除く)」「炭水化物含量10~30%の野菜」以外に任意の成分を含むことが可能なものである。 しかしながら、本件特許に係る出願の審査段階に提出した意見書において、特許権者は「本願発明は当該問題について、糊化度が特定の範囲となるように加工された上で冷凍された高炭水化物含量の野菜及び喫食し得る状態で冷凍された固形具材に、更に特定量の水性液体を加えて製造した冷凍食品は、加熱した際、水性液体が蒸気となって、固形具材が焦げたり、萎れたりすることを抑制できること等を見出したことを特徴とする・・・」と主張している。この主張によれば「非可食状態の固形具材」を含有した場合には、当然固形具材が焦げたり、萎れたりするために、本件特許発明の効果が奏されるとは理解できない。従って本件請求項1~13にかかる発明は、発明の課題を解決できない範囲を含んでいるから、本件特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号の規定を満たさない。 (キ)本件特許発明1~13の冷凍食品は(C)の水性液体を含有していても限りなく0質量%に近く、且つ(A)成分及び(B)成分の水分量が0質量%又は0質量%に限りなく近い場合を文言上包含する。しかしながら、本件明細書の実施例においてもそのような例は存在せず、最低でも(C)成分の量は(A)+(B)の0.25重量倍となっている。従って(C)の水性液体を含有していても限りなく0質量%に近く、且つ(A)成分及び(B)成分の水分量が0質量%又は0質量%に限りなく近い場合にまで本件特許発明の課題が解決されると当業者は理解できない。従って本件請求項1~13にかかる発明は、発明の課題を解決できない範囲を含んでいるから、本件特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号の規定を満たさない。 (ク)本件特許発明1~13では、(A)~(C)の存在状態は一切限定されておらず、(A)~(C)が一体化されて混合されている場合も、(A)~(C)がそれぞれ局在化して併存している場合のいずれもが含まれる。 一方、本件明細書の各実施例では(A)~(C)の各成分を個々に冷凍後に混合するか、或いは(C)がコロッケのバッター液である場合のように、(C)水性液体が(A)及び(B)とは不均一に存在する系のみが説明されている。これに対し、例えば、通常の肉じゃがの作り方のように(A)成分と(C)成分とが一つの鍋で加熱調理されて混合された後に冷凍される場合には冷凍前に野菜が液状の(C)と接触し吸水する可能性が高い。この点につき、未凍結状態の水分とともに加熱すると野菜の吸水を伴い、ホクホク又はネットリした食感が得られないことが本件明細書の【0004】に説明されている。このように同じ量の(C)を含有していても、冷凍工程前に(A)と(C)を混合した場合、冷凍工程後に(A)と(C)を混合する場合よりも(A)は(C)をより吸水し、それにより崩れやすさやホクホク、ねっとりした食感は異なると考えられる。このため(A)~(C)及びその量比を満たしても、冷凍工程前に(A)と(C)を混合したすべての場合にまで、崩れにくく、ホクホク、ねっとりしており、且つ固形具材が焦げたり、萎れたりしない、という課題が解決されるとは考えられない。従って本件請求項1~13にかかる発明は、発明の課題を解決できない範囲を含んでいるから、本件特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号の規定を満たさない。 (ケ)本件明細書の背景技術においては、特許文献1 (特開2001-112410号公報)につき、「ジャガイモの冷凍品の食感を生鮮品に近づけることを目的とし、生鮮品より優れる食感を冷凍食品に付与するものでない」と説明されている(【0004】)から、本件特許の目的は生鮮品より優れる食感の冷凍食品の提供にある。 しかしながら、本件明細書の表7~10には、本件特許発明の技術的範囲でも(A)野菜が評点4未満(冷凍していない野菜よりも劣る食感の評点。)であることが説明されている(例:表8の試験区27の野菜(A)、表10における試験区33の野菜(A))。このことは、本件特許発明の全体が本件特許発明の課題を解決しない範囲を包含することを示している。従って本件請求項1~13にかかる発明は、発明の課題を解決できない範囲を含んでいるから、本件特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号の規定を満たさない。 (コ)本件請求項1、8には「(A)糊化度が15~70%となるように加工された、炭水化物含量10~30%の野菜」と記載されている。ここで、甲B12には、煮熟じゃがいものBAP法による糊化度は、冷凍1週間で20%程度低下することが示されており(甲B12の図1)、甲B13には冷凍3週間のうちに澱粉の糊化が進むことが示されており(甲B13の表1-2)、甲B12には、冷蔵24時間で40%程度低下することが示されている(甲B12の図1、2)ことから判る通り、じゃがいもの糊化度は冷凍や冷蔵に伴い低下する。 ここで、本件の各請求項には「(A)糊化度が15~70%となるように加工された」という記載が冷凍食品中の野菜の糊化度を指すのか、それとも冷凍時点の糊化度を指すのか、一切規定されていない。 しかしながら前者である場合、例えば糊化度を70%超、例えば90%程度まで高めた後に冷凍に伴う老化により「(A)糊化度を15~70%」としたものが本件特許発明に含まれる。しかしながら、本件明細書の表2の評価結果から明らかな通り、当該構成により、本件特許発明の課題が解決するとは当業者は理解できない。 仮に後者である場合、本件請求項では「加工」の内容は何ら特定されていないから、例えば糊化度を70%超、例えば90%程度まで高めた後に冷蔵に伴う老化により「(A)糊化度を15~70%」としたものが本件特許発明に含まれる。しかしながら、当該構成は本件明細書には一切開示されておらず、本件特許発明の課題が解決するとは当業者は理解できない。 更に、仮に後者、つまり「(A)糊化度を15~70%」が冷凍時点の糊化度を示しているとすれば、例えば加熱により「(A)糊化度を15~70%」とした後にそのまま冷凍した後に、冷凍による老化に伴いジャガイモの糊化度が15%末満まで大きく低下した冷凍食品まで本件特許発明1~13は含むところ、当該製品まで本件特許発明による課題を解決できるとも当業者は到底理解できない。 そうすると、本件特許請求の範囲は、その課題を解決できないものを多く包含しており、特許法第36条第6項第1号の規定を満たさない。 (サ)本件請求項1~13には、冷凍期間について定めがないところ、上記(コ)の通りじゃがいもの糊化度は冷凍に伴い低下し、冷凍期間中にさらに低下する。 冷凍食品を数か月にわたり保存することは一般的に行われるが、本件明細書には「-30℃で30分冷凍」させた冷凍食品しか開示がないから、例えば数か月冷凍保存させた冷凍食品でもホクホク又はネットリとした食感などの本件特許発明による課題を解決できることを当業者は理解できない。そうすると、本件特許請求の範囲は、その課題を解決できないものを包含しており、特許法第36条第6項第1号の規定を満たさない。 イ 判断 以下の観点に立って判断する。 特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件(いわゆる「明細書のサポート要件」)に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。 (ア)本件明細書及び図面の記載 本件明細書及び図面には、以下の記載がある。 a)「【技術分野】 【0001】 本発明は、冷凍食品に関するものであり、より詳細には、高炭水化物含量の野菜を含有し、加熱して解凍・調理した際に、野菜の形状が崩れることなく、野菜のホクホク又はネットリとした食感が向上する冷凍食品に関するものである。 【背景技術】 【0002】 炭水化物含量が高い野菜(例えば、ジャガイモ、カボチャ等)は、一般にホクホク又はネットリとした食感が求められる。当該食感を向上させる方法として、従来、炭水化物含量の高い品種を選定して使用することが報告されているが、そのような炭水化物含量の高い品種は脆く、煮る等の加熱調理を行うと崩れる等の問題がある。 ・・・ 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0009】 本発明者らは、炭水化物含量が高い野菜の凍結物を含有し、加熱して解凍・調理した際に、野菜の形状が崩れることなく、野菜のホクホク又はネットリとした食感が向上する冷凍食品を提供すべく鋭意研究を行った結果、炭水化物含量が特定の範囲である野菜を、その糊化度が特定の範囲となるように加工した上で冷凍した後、乾燥条件下で加熱することによって、野菜の形状が崩れることや野菜の保存性を損なうことなく、ホクホク又はネットリとした食感を向上させ得ることを見出した。 【0010】 また本発明者らは更に研究を進めたところ、糊化度が特定の範囲となるように加工された上で冷凍された野菜(即ち、喫食に適さない半生状態で冷凍された野菜)は、喫食に適した状態とするために必要な加熱時間(解凍及び調理に要する時間)が、喫食に適した状態で冷凍された固形具材に比べて、長くなる傾向があり、これらの野菜及び固形具材の両方を含有する冷凍食品は、野菜が喫食に適した状態となるまで加熱し続けると、固形具材に焦げや萎れが発生し、冷凍食品全体として良品質にならないことがあるという新たな課題を発見した。 【0011】 従って本発明の目的は、糊化度が特定の範囲となるように加工された上で冷凍された高炭水化物含量の野菜及び喫食し得る状態で冷凍された固形具材を含有し、加熱して解凍・調理された際に、野菜の形状が崩れることなく、野菜のホクホク又はネットリとした食感が向上し、且つ固形具材が焦げたり、萎れたりすることがない冷凍食品を提供することである。 【課題を解決するための手段】 【0012】 本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、糊化度が特定の範囲となるように加工された上で冷凍された高炭水化物含量の野菜及び喫食し得る状態で冷凍された固形具材に、更に特定量の水性液体を加えて製造した冷凍食品は、加熱した際、水性液体が蒸気となって、固形具材が焦げたり、萎れたりすることを抑制できることを見出した。」 b)「【発明の効果】 【0015】 本発明によれば、糊化度が特定の範囲となるように加工された上で冷凍された高炭水化物含量の野菜及び喫食し得る状態で冷凍された固形具材を含有し、加熱して解凍・調理された際に、野菜の形状が崩れることなく、野菜のホクホク又はネットリとした食感が向上し、且つ保存性に優れ、更に、固形具材が焦げたり、萎れたりすることがない冷凍食品を提供できる。本発明によれば、冷凍された高炭水化物含量の野菜のみを含有する冷凍食品だけでなく、二種以上の具材を組み合わせてなる、所謂メニュー系の冷凍食品を良品質で提供し得る。」 c)「【図面の簡単な説明】 【0016】 【図1】野菜の糊化度を測定するβ-アミラーゼ・プルラナーゼ法のフローを示す図である。野菜の糊化度は、検体試料の分解率を完全糊化試料の分解率で割ることにより得られた値を百分率(%)で表したものである。 【図2】試験区19の重量を100%としたときの、試験区17~23の重量の割合(%)を示すグラフである。 【図3】試験区17~23の炭水化物含量(%)を示すグラフである。」 d)「【0017】 1.本発明の冷凍食品 本発明の冷凍食品は、冷凍された(A)糊化度が15~70%となるように加工された、炭水化物含量10~30%の野菜(以下において「野菜(A)」とも称する)、冷凍された(B)可食状態の固形具材(但し、炭水化物含量10~30%の野菜を除く)(以下において「固形具材(B)」とも称する)及び冷凍された(C)水性液体(以下において「液体(C)」とも称する)を含有する。 【0018】 [野菜(A)] 野菜(A)は、炭水化物含量10~30%の野菜を、糊化度が特定の範囲となるように加工したものである。 【0019】 野菜(A)の種類は、炭水化物含量が10~30%である野菜であれば特に制限されないが、具体的には、ジャガイモ、カボチャ、ソラマメ及びサトイモ等が挙げられる。該野菜(A)の炭水化物含量は、乾燥条件下での加熱により容易に糊化させることが出来ることから、好ましくは10~25%である。 【0020】 本発明において野菜の「炭水化物含量」は、差引法により測定することができる。具体的には常圧加熱乾燥法で測定した水分の重量、ケルダール法で測定したタンパク質の重量、ソックスレー抽出法で測定した脂質の重量、直接灰化法で測定した灰分の重量の合計を野菜の元重量から差し引いて算出する。 【0021】 本発明の野菜(A)は、糊化度が特定の範囲となるように加工されていることが好ましい。糊化度が特定の範囲に加工された野菜(A)は冷凍耐性が高く、そのような状態で冷凍されることにより食感不良とはならない。一方で、野菜(A)の細胞が冷凍により適度に損傷して、水分の移動が自由になり、加熱調理等の際に野菜自身の水分でも十分に糊化できるようになるため、外部からの吸水を必要とせず、これにより本発明は、後述するように、野菜(A)を糊化させながら乾燥させるという全く前例のない解凍調理工程を行うことが可能となる。 具体的には、本発明の野菜(A)は、糊化度が15~70%(より好ましくは30~65%、特に好ましくは45~65%)となるように加工されていることが好ましい。当該糊化度が15%未満であると、褐変酵素が残存し保存性に問題が生じる傾向や、本発明の固形具材(B)と組み合わせて調理した際に、固形具材の品質に問題が生じる傾向があり、逆に70%を超えると糊化中の乾燥が不足しホクホク又はネットリとした食感が得られなくなる傾向がある。 【0022】 本発明において野菜の「糊化度」とは、野菜に含まれるデンプンがα化デンプンに変化した割合をいい、βアミラーゼ・プルラナーゼ法(以下、「BAP法」と称する場合がある)により測定することができる。具体的には、野菜の糊化度は、既報(家政学雑誌32(9)、p653-659、1981)に準じて、以下の通り測定することができる。 ・・・ 【0024】 上記の通り測定された値を用いて次式により糊化度が算出される。尚、上記操作フローをまとめたものは図1に示される。 分解率(%)=(還元糖量/全糖量)×100 糊化度(%)=(検体試料の分解率/完全糊化試料の分解率)×100 【0025】 野菜(A)の糊化度を特定の範囲とするための加工方法は特に制限されないが、例えば、野菜を、焼く、炒める、煮る、茹でる、揚げる、蒸す、マイクロウェーブ加熱、過熱水蒸気加熱及びオーブン加熱のいずれか一種以上の加熱処理に供する等の方法が挙げられる。 【0026】 野菜(A)の形状は特に制限されないが、本発明の冷凍食品は、乾燥条件下で加熱することによって、野菜(A)が崩れることなく所望の形状を保持したまま、ホクホク又はネットリとした食感を向上させ得ることから、本発明は、野菜(A)がホール状で用いられる場合、及び所定の大きさにカットされている場合(例えば、野菜(A)としてジャガイモを用いる場合は10~30mmのダイス又は乱切り形状が好ましく、カボチャを用いる場合は10~30mmのダイス又は乱切り形状が好ましく、ソラマメを用いる場合はホール状で用いることが好ましく、サトイモを用いる場合はホール状で用いることが好ましい)に特に有用である。 【0027】 本発明の冷凍食品における野菜(A)の含有量は、冷凍食品の種類や野菜(A)の種類等に応じて適宜決定すればよく特に制限されないが、野菜(A)を嗜好的に喫食するためには、固形具材(B)及び液体(C)を一定量使用しメニューとして提供することが望ましく、野菜(A)の含有量は、冷凍食品に対して、好ましくは10~70重量%であり、より好ましくは20~50重量%である。 【0028】 [固形具材(B)] 本発明において用いられる固形具材(B)は、野菜(A)以外の、常温(例、15~25℃)において一定の形状を保持し得、過度に加熱されることにより焦げ及び/又は萎れが発生する食用具材であって、可食状態であるものであれば特に制限されないが、例えば、可食状態の畜肉(例、豚肉、牛肉等)、可食状態の家禽肉(例、鶏肉、鴨肉等)、可食状態の魚介類(例、魚、エビ、イカ等)、可食状態の炭水化物含量が10%未満又は30%を超える野菜(例、サツマイモ、エダマメ等)、可食状態の加工卵、可食状態の衣用材料(例、パン粉、シリアル、クラッカー粉等)等が挙げられる。尚、本発明において、水性のゲル等の解凍・調理時の加熱によって蒸気となり得る具材は、後述するように「(C)水性液体」に包含されるため、固形具材(B)には含まれない。 【0029】 本発明において「可食状態」とは、喫食に適した状態を意味し、具体的には、例えば、畜肉(例、豚肉、牛肉等)、家禽肉(例、鶏肉、鴨肉等)、魚介類(例、魚、エビ、イカ等)等の可食状態とは、生肉又は生魚等を喫食に適する微生物数(例えば、食品衛生法における「食品、添加物等の規格基準」の冷凍食品の項の「細菌数(生菌数)の測定法」に準拠して測定した細菌数が100000/g以下、且つその「大腸菌群試験法」に準拠して行った試験において、大腸菌群が陰性等)になるまで加熱調理等を施した状態をいい、また炭水化物含量が10%未満又は30%を超える野菜(例、サツマイモ、エダマメ、キャベツ、ニンジン、インゲン等)の可食状態とは、喫食に適する微生物数になるまで加熱調理等を施した状態をいう。固形具材を可食状態とするための方法は特に制限されないが、例えば、加熱処理(例、焼く、炒める、煮る、茹でる、揚げる、蒸す、マイクロウェーブ加熱、過熱水蒸気加熱及びオーブン加熱等)等の方法が挙げられる。これらの方法は単独で用いてよく、又は二種以上の方法を組み合わせて用いてもよい。尚、元から可食状態である固形具材(例えば、採取後に加熱処理等することなく、そのまま喫食し得る生野菜等)は、加熱処理等を施すことなく、本発明の固形具材(B)として用いることができる。 【0030】 本発明の冷凍食品における固形具材(B)の含有量は、冷凍食品の種類等に応じて適宜決定すればよく特に制限されないが、野菜(A)を嗜好的に喫食するためには、固形具材(B)及び液体(C)を一定量使用しメニューとして提供することが望ましく、固形具材(B)の含有量は、冷凍食品に対して、好ましくは10~70重量%であり、より好ましくは20~50重量%である。 【0031】 本発明の冷凍食品における野菜(A)と固形具材(B)との重量比は特に制限されないが、通常(A):(B)=1:10~10:1であり、好ましくは1:5~5:1である。 【0032】 [液体(C)] 本発明において用いられる液体(C)は解凍・調理時の加熱によって蒸気となり得るものが好ましく、例えば、水、醤油、食酢、アルコール、みりん、果汁等の水性成分、当該水性成分の二種以上の混合物、当該水性成分の一種又は二種以上を溶媒とする溶液、並びに当該水性成分の一種又は二種以上を分散媒とする分散液(ゾル)等が挙げられる。液体(C)は、ゲル状であってもよい。液体(C)には、例えば、牛乳、加熱凝固していない卵(全卵液、卵黄液、卵白液等の液卵を含む)等も包含される。また、液体(C)が、水、醤油、食酢、アルコール、みりん、果汁等の水性成分の一種又は二種以上を溶媒とする溶液である場合、その溶質としては、例えば、砂糖、食塩、顆粒だし、小麦粉、増粘多糖類等が挙げられる。 【0033】 本発明の冷凍食品における液体(C)の量は、野菜(A)及び固形具材(B)の合計量に対して、1.5重量倍以下であることが好ましく、0.2~1.0重量倍であることがより好ましく、0.25~1.0重量倍であることが特に好ましい。液体(C)の量が、野菜(A)及び固形具材(B)の合計量に対して、1.5重量倍を超えると、本発明の冷凍食品は、野菜(A)が解凍調理中に吸水し、乾燥による食感向上効果が得られない傾向がある。 【0034】 本発明の冷凍食品における液体(C)の含有量は、冷凍食品の種類等に応じて適宜決定すればよく特に制限されないが、野菜(A)を嗜好的に喫食するためには、固形具材(B)及び液体(C)を一定量使用しメニューとして提供することが望ましく、液体(C)の含有量は、冷凍食品に対して、好ましくは10~70重量%であり、より好ましくは20~60重量%である。 【0035】 本発明の冷凍食品は、野菜(A)、固形具材(B)及び液体(C)以外の食材を、冷凍食品の種類等に応じて適宜含有し得る。当該食材は、冷凍食品に通常用いられる食材であれば特に制限されないが、例えば、サラダ油、ゴマ油等の植物油及びラード、バター等の動物油、胡椒やハーブ等の香辛料等が挙げられる。」 e)「【0037】 本発明の冷凍食品の製造方法は特に制限されず、例えば、野菜(A)、固形具材(B)及び液体(C)をそれぞれ調製した後、これらを別個に冷凍し、得られた各凍結物を一つの包装体に収容する等して混合することにより製造してもよいし、あるいは、野菜(A)、固形具材(B)及び液体(C)をそれぞれ調製した後、これらを混合し、得られた混合物を冷凍することや、野菜(A)、固形具材(B)及び液体(C)を、所望によりその他の食材と併せて混合・調理してから冷凍すること等により製造してもよい。冷凍方法は特に制限されず、冷凍食品の分野において慣用の冷凍方法を適宜用いればよいが、例えば、個別急速冷凍装置、エアーブラスト及びブロック凍結装置等を用いて行い得る。冷凍温度は、野菜(A)及び固形具材(B)の種類等に応じて適宜設定すればよいが、通常-18℃以下である。 【0038】 本発明の冷凍食品は、乾燥条件下で加熱するためのものであることが好ましい。野菜(A)は、前述のとおり、加熱調理等の際に野菜自身の水分で糊化でき、外部から吸水する必要がないため、本発明の冷凍食品は、乾燥条件下で加熱することによって、野菜(A)を糊化させながら乾燥させることができ、その結果、野菜(A)の炭水化物含量が高まり、野菜(A)の形状が崩れることなく、ホクホク又はネットリした食感を向上させることができる。 ここで「乾燥条件下で加熱するためのものである」冷凍食品とは、冷凍食品を解凍及び調理する際の加熱方法が、乾燥条件下で加熱するように予め定められている冷凍食品をいい、そのような冷凍食品の一態様としては、例えば、冷凍食品の包装体に、解凍方法及び/又は調理方法について、乾燥条件下で加熱することによって行うことができる又は行うべきである旨が記載されている形態や、解凍方法及び/又は調理方法について乾燥条件下で加熱することによって行うことができる又は行うべきである旨が記載された当該冷凍食品に関する記載物が、冷凍食品に同封されている形態等が挙げられる。 【0039】 冷凍食品を乾燥条件下で加熱する方法は、野菜(A)が吸水しない方法であれば特に制限されないが、例えば、マイクロウェーブ加熱、オーブン加熱等が挙げられ、また、フライパン等を用いて冷凍食品を炒めてもよく、フライ加熱を行うのもよい。食品を包材に密閉した状態でボイル加熱してもよい。中でも、マイクロウェーブ加熱、オーブン加熱及びフライ加熱が好ましく、攪拌等の物理ストレスがなく、野菜が崩れにくいことから、マイクロウェーブ加熱及びオーブン加熱がより好ましく、マイクロウェーブ加熱が特に好ましい。 【0040】 本発明において冷凍食品を乾燥条件下で加熱する際、その加熱の程度は、冷凍食品が喫食に適した状態になりさえすれば特に制限されないが、野菜(A)の糊化度が90%以上(より好ましくは95%以上)になるまで加熱することが好ましい。 【0041】 本発明において冷凍食品を乾燥条件下で加熱する際、その加熱は、野菜(A)の歩留りが70~95%(より好ましくは80~90%)になるまで行われることが好ましい。 ここで野菜(A)の歩留りは、以下の式に基づいて算出し得る。 野菜(A)の歩留り(%)=P/Q×100 P:冷凍食品を解凍・調理して得られた食品に含まれる野菜(A)の重量 Q:冷凍された野菜(A)の重量 野菜(A)の歩留りが上記の範囲となるように冷凍食品が加熱されることによって、野菜(A)は適度に乾燥し、焦げや萎れが発生することなく、ホクホク又はネットリした食感をより向上させることができる。 【0042】 本発明の冷凍食品を乾燥条件下で加熱することにより、野菜の形状が崩れることなく、野菜のホクホク又はネットリとした食感が向上し、且つ、固形具材に焦げや萎れが発生していない食品を提供できる。従って、本発明によれば、食品の製造方法も提供される。 本明細書において「ホクホクとした食感」とは、十分に蒸かした芋等において顕著に感じられる、咀嚼するにつれて柔らかくほぐれ崩れる食感をいい、また「ネットリとした食感」とは、適度に粘りのある口当たりの良い食感をいう。これらの食感の有無や程度は、専門パネルによる官能評価によって評価できる。 【0043】 本発明の冷凍食品を乾燥条件下で加熱することにより製造される食品の種類としては、例えば、肉じゃが等の煮物料理、サラダ、グラタン、汁物料理、焼き物料理、コロッケ(例、ジャガイモを粒状又はブロック状で混合したコロッケ等)等の揚げ物料理等が挙げられるが、これらに限定されない。」 f)「【0044】 2.本発明の食品の製造方法 本発明の食品の製造方法は、本発明の冷凍食品を、乾燥条件下で加熱することを含む。 【0045】 本発明の食品の製造方法において、本発明の冷凍食品を乾燥条件下で加熱する方法は、本発明の冷凍食品についての説明の中で述べた方法と同様に行うことができ、その好適な態様も同様である。 【0046】 本発明の食品の製造方法によれば、野菜の形状が崩れることなく、野菜のホクホク又はネットリとした食感が向上し、且つ、固形具材に焦げや萎れが発生していない食品を提供できる。」 g)「【実施例】 【0047】 以下に実施例を挙げ、本発明をさらに詳しく説明する。本発明は、これらの実施例により何ら限定されない。 【0048】 1.野菜(A)の糊化度の範囲の検討 25mmダイス状にカットされたジャガイモ2品種(メークイン、男爵)を、表1及び表2に示す方法、温度、時間で加熱して、表1及び表2に示す糊化度に加工した。その後、各ジャガイモを冷凍(-30℃、30分間)した後、家庭用電子レンジを用いて、糊化度が90%以上となるまでジャガイモ100gを表1及び2に示す時間でマイクロウェーブ加熱(500W)し、その後、食感について官能評価を行った。 本明細書の実施例で、野菜(A)の糊化度は、図1に示したフローに従い、BAP法を用いて測定した。酵素は、β-アミラーゼ(シグマケミカル)、プルラナーゼ(林原生物化学研究所)を使用し、ソモギ銅液及びネルソン液は和光純薬工業社より購入したものを使用した。吸光度測定は、UV-VIS分光光度計(U-3900、日立ハイテクノロジーズ)を用いて行った。 官能評価は、4名の専門パネルが各サンプルを食し、25mmダイス状にカットされたジャガイモを冷凍することなくボイル調理(100℃、15分間)したものを4点とし、25mmダイス状にカットされたジャガイモを蒸し加熱(100℃、15分間)して糊化度を90%以上に加工してから、冷凍(-30℃、30分間)した後、その100gをマイクロウェーブ加熱(500W、2.5分間)して解凍したものを2点(一般的な冷凍野菜の品質)とする、1~5点の評点法により行った。 結果を表1及び表2に示す。 【0049】 【表1】 [図:0001383258000054.jpg] 【0050】 【表2】 [図:0001383258000055.jpg] 【0051】 表1及び表2に示される結果から明らかなように、糊化度を70%以下に加工して冷凍することによって、解凍、調理後にホクホク又はネットリとした良好な食感となった。 【0052】 糊化度が低い野菜は、褐変酵素が残存し、保存性に問題が生じると推測される。そこで、上記試験区1~8のマイクロウェーブ加熱前のペルオキシダーゼ(POD)活性を測定した。 【0053】 ペルオキシダーゼ(POD)活性の測定は、下記の通りに行った。 検体及び33.3mM Tris-HClバッファー(pH8.0)を重量比1:3で混合し、オステライザーで破砕し、14000rpmで5分遠心分離し、上清を酵素液とした。酵素液150μL、66mM グアヤコール150μL、33.3mM Tris-HClバッファー(pH8.0)2000μLを混合し、37℃で5分間プレインキュベートした。これに3.3mM 過酸化水素150μLを添加し、470nmで1分間の吸光度上昇を測定した。過酸化水素の濃度と470nm吸光度との関係を基に作成した検量線を用いて、POD活性を算出した。pH8.0、37℃の条件下で1分間に過酸化水素1μmolと反応する酵素量を1Uとした。 【0054】 結果を表3に示す。表3に示される「活性残存率」は、試験区1のペルオキシダーゼ活性を100%としたときの、各試験区のペルオキシダーゼ活性の割合(%)である。 【0055】 【表3】 [図:0001383258000056.jpg] 【0056】 野菜の食感が向上しても、外観不良となれば、消費者の満足にはつながらない。表3に示される結果から、本発明の野菜(A)の糊化度は、食感及び保存性の観点から15~70%が好ましいことが確認された。 【0057】 2.野菜(A)の炭水化物含量の範囲の検討 炭水化物含量の異なる野菜(サツマイモ、サトイモ及び西洋カボチャ)を、それぞれ25mmダイス状、25mmホール、25mmダイス状にカットして、75℃でそれぞれ9分間、5分間、9分間蒸して、糊化度が50~60%になるように加工するか、又は100℃でそれぞれ10分間、8分間、15分間蒸して、糊化度が90%以上になるように加工した後、それぞれ冷凍(-30℃、30分間)した。得られた各冷凍野菜を、家庭用電子レンジを用いてマイクロウェーブ加熱(糊化度を50~60%に加工した試料は100gを500Wで4分間加熱、糊化度を90%以上に加工した試料は100gを500Wで2.5分間加熱)するか、又はボイル調理(糊化度を50~60%に加工した試料は100℃で10分間加熱、糊化度を90%以上に加工した試料は100℃で4分間加熱)した後、品質(食感、味、外観)について官能評価を行った。 官能評価は、4名の専門パネルが各サンプルを食し、各野菜を冷凍することなくボイル調理(100℃でそれぞれ10分間、8分間、15分間)したものを4点とし、各野菜を蒸し加熱(100℃でそれぞれ10分間、8分間、15分間)して糊化度を90%以上に加工してから、冷凍(-30℃、30分間)した後、マイクロウェーブ加熱(100gを500Wで2.5分間加熱)して解凍したものを2点(一般的な冷凍野菜の品質)とする、1~5点の評点法により行った。 【0058】 サツマイモ、サトイモ及び西洋カボチャ等の炭水化物含量及び水分量(五訂増補日本食品標準成分表から抜粋)を表4に、また官能評価の結果を表5-1~表5-3に示す。 【0059】 【表4】 [図:0001383258000057.jpg] 【0060】 【表5-1】 [図:0001383258000058.jpg] 【0061】 【表5-2】 [図:0001383258000059.jpg] 【0062】 【表5-3】 [図:0001383258000060.jpg] 【0063】 表5-1~表5-3に示される結果から明らかなように、炭水化物含量が10~30%の野菜(サトイモ、カボチャ)は、糊化度を15~70%に加工した上で冷凍し、乾燥条件下で加熱して解凍・調理すると、ホクホクとした良好な食感となった。 【0064】 3.炭水化物含量向上効果の検討 25mmダイス状にカットされたジャガイモ(品種:メークイン)を表6に示す各工程に供した後、各試験区の重量を測定した。表6において「生」は、未加熱の状態であることを示し、「ボイル」は、100℃で15分間ボイルすることを示し、「完全糊化」は、100℃で15分間蒸すことを示し、「半糊化」は、75℃で8分10秒間蒸すことを示し、「凍結」は、-30℃で30分間冷凍することを示し、「ボイル解凍」は、100℃で10分間ボイルして解凍することを示し、「MW解凍」は、電子レンジ(500W)を用いて100gを4分間マイクロウェーブ加熱して解凍することを示す。 試験区19の重量を100%としたときの、試験区17~23の重量の割合(%)を図2に示す。 また、五訂増補日本食品標準成分表から生ジャガイモの炭水化物含量を17.6%とし、加熱及び凍結による損失がないと仮定して、測定した各試験区の重量から炭水化物含量(%)を算出した。結果を図3に示す。 【0065】 【表6】 [図:0001383258000061.jpg] 【0066】 図2に示される結果から明らかなように、ジャガイモの吸水を伴う加熱方法(ボイル解凍)で解凍調理した試験区21は、試験区19に比べて重量が増加した(即ち、歩留りが上昇した)。また図3に示されるように炭水化物含量が低下して、ホクホク又はネットリとした食感が低下することが確認された。 また解凍をマイクロウェーブ加熱により行った場合でも、完全糊化工程を経て冷凍された試験区22の重量は、試験区19と殆ど同程度であり、食感向上効果は得られなかった。一方、半糊化工程を経て冷凍された後、マイクロウェーブ加熱で解凍調理された試験区23は、試験区19に比べて重量が明らかに低下し、従って当該試験区23は低い歩留りで、喫食可能な高い糊化度にすることができた。これは冷凍により野菜の細胞が適度に損傷し、解凍調理の際に野菜自身が有する水分で十分に糊化し得るようになり、乾燥条件下での加熱(マイクロウェーブ加熱)によっても糊化し得たためと推測される。試験区23は、炭水化物含量が向上したため、食感も良好であった。 【0067】 4.液体(C)の量の検討 [野菜(A)の調製] 15~25mmダイス状にカットされたジャガイモ(品種:メークイン)を、75℃で4分間蒸し加熱又は8分間蒸し加熱して、糊化度を15%又は70%に調整し、野菜(A)を得た。 【0068】 [固形具材(B)の調製] 牛かた肉を約15×25×5mmにカットした後、フライパンで2分間炒め加熱して可食状態とし、固形具材(B)を得た。 【0069】 [液体(C)の調製] 水60g、しょうゆ15g、砂糖9g、顆粒だし1gを混合し、液体(C)を得た。 【0070】 [冷凍食品の製造] 得られた野菜(A)、固形具材(B)及び液体(C)をそれぞれ-30℃で30分間冷凍した後に表7に示す量で混合し、冷凍食品を製造した。 【0071】 [官能評価] 得られた冷凍食品を、家庭用の電子レンジ(500W)、フライパン又はオーブンを用いて表7に示す時間で加熱することにより解凍・調理して食品を得た後、4名の専門パネルが得られた食品を食し、各食品の野菜(A)及び固形具材(B)の品質について官能評価を行った。 野菜(A)の官能評価は、野菜(A)を冷凍することなくボイル調理(100℃、15分間)したものを4点とし、野菜(A)を蒸し加熱(100℃、15分間)して糊化度を90%以上に加工してから、冷凍(-30℃、30分間)した後、マイクロウェーブ加熱(100gを500W、2.5分間)して解凍したものを2点(一般的な冷凍野菜の品質)とする、1~5点の評点法により行った。 固形具材(B)の官能評価は、冷凍していない固形具材(B)を4点とし、それを上回ると5点、やや劣ると3点、劣ると2点、非常に劣ると1点とする、1~5点の評点法により行った。 また総合評価(総合点)は、メニュー全体として非常に良を5点、良を4点、やや良を3点、やや不良を2点、不良を1点とする、1~5点の評価法により行った。 【0072】 [歩留りの測定] 得られた食品の野菜(A)の歩留り(%)を、下記の式に基づいて算出した。 野菜(A)の歩留り(%)=P/Q×100 P:冷凍食品を解凍・調理して得られた食品に含まれる野菜(A)の重量 Q:冷凍された野菜(A)の重量 【0073】 【表7】 [図:0001383258000062.jpg] 【0074】 野菜(A)として、糊化度を70%に調整したジャガイモを使用し、冷凍食品の加熱を家庭用の電子レンジ(500W)を用いて行った試験区24~29の結果を表8に示す。 【0075】 【表8】 [図:0001383258000063.jpg] 【0076】 表8に示される結果から明らかなように、液体(C)の重量が、野菜(A)及び固形具材(B)の合計量に対して、1.85重量倍以下である場合、野菜(A)は乾燥しながら糊化が進行し、良食感となった。また固形具材(B)は、液体(C)の重量が、野菜(A)及び固形具材(B)の合計量に対して、0.67重量倍以上である場合、特に良好な食感となった。これは冷凍食品が少量の液体(C)を含むと、その解凍調理時に液体(C)が蒸気となり、固形具材(B)が焦げたり萎れたりすることを抑制したためと考えられた。 野菜(A)と固形具材(B)の両方の品質を踏まえた冷凍食品全体としての総合評価では、液体(C)の重量が、野菜(A)及び固形具材(B)の合計量に対して、1.85重量倍以下であることが好ましく、0.25~1.0重量倍であることが特に好ましいことが確認された。 【0077】 野菜(A)として、糊化度を15%に調整したジャガイモを使用し、冷凍食品の加熱を家庭用の電子レンジ(500W)を用いて行った試験区30~32の結果を表9に示す。 【0078】 【表9】 [図:0001383258000064.jpg] 【0079】 表9に示される結果から明らかなように、液体(C)の重量が、野菜(A)及び固形具材(B)の合計量に対して、1.85重量倍以下である場合、野菜(A)及び固形具材(B)の両方が良食感となった。この時、崩れ、焦げ、萎れ等の外観不良もなかった。 【0080】 野菜(A)として、糊化度を70%に調整したジャガイモを使用し、冷凍食品の加熱をフライパンを用いて行った試験区33~35の結果を表10に示す。 【0081】 【表10】 [図:0001383258000065.jpg] 【0082】 表10に示される結果から明らかなように、電子レンジを用いて加熱を行った場合に比べて品質は劣る傾向にあるものの、液体(C)の重量が、野菜(A)及び固形具材(B)の合計量に対して、1.85重量倍以下である場合、野菜(A)は良食感となった。 【0083】 野菜(A)として、糊化度を70%に調整したジャガイモを使用し、冷凍食品の加熱をオーブンを用いて行った試験区36~40の結果を表11に示す。 【0084】 【表11】 [図:0001383258000066.jpg] 【0085】 表11に示される結果から明らかなように、電子レンジを用いて加熱を行った場合と同等の品質となり、液体(C)の重量が、野菜(A)及び固形具材(B)の合計量に対して、1.5重量倍以下である場合、野菜(A)は煮崩れ等の外観不良なく、良食感となった。 【0086】 液体(C)の量が増えると、野菜(A)を特定の糊化度になるように加工してから冷凍しても、冷凍食品の解凍・調理(糊化)中に、野菜(A)に水分が供給され、野菜が脱水されない。液体(C)の好適な量は、加熱方法により若干異なるが、野菜(A)及び固形具材(B)の合計量に対して、1.5重量倍以下である場合、いずれの加熱方法であっても良好な品質が得られた。また冷凍食品が少量の液体(C)を含むと、その解凍調理時に液体(C)が蒸気となり、固形具材(B)が焦げたり萎れたりすることを抑制した。従って、液体(C)の量は、野菜(A)及び固形具材(B)の合計量に対して、好ましくは1.5重量倍以下であり、より好ましくは0.25~1.0重量倍である。 【0087】 5.フライ加熱の検討(1) [野菜(A)の調製] 15mmダイス状にカットされたジャガイモ(品種:男爵)を、75℃で4分間蒸し加熱又は8分間蒸し加熱して、糊化度を15%又は70%に調整し、野菜(A)を得た。 【0088】 [固形具材(B)の調製] 牛挽肉を、フライパンで3分間で炒めて可食状態とし、固形具材(B)を得た。 パン粉は、そのまま固形具材(B)として用いた。 【0089】 [液体(C)の調製] 卵を溶きほぐして全卵液とし、液体(C)を得た。 【0090】 [冷凍コロッケの製造] ダイス状のジャガイモ(野菜(A))、炒めた牛挽肉(固形具材(B))及びマッシュポテト(野菜(A)、固形具材(B)及び液体(C)以外の原料)を表12に示す量で混合した後、小判型に成形し、これに全卵液(液体(C))及びパン粉(固形具材(B))を順につけてから、-30℃で30分間冷凍し、冷凍コロッケを製造した。 【0091】 【表12】 [図:0001383258000067.jpg] 【0092】 [官能評価及び歩留りの測定] 得られた冷凍コロッケを、170℃に熱した油で8分間、11分間又は15分間フライ調理してコロッケを得た後、4名の専門パネルが得られたコロッケを食し、各コロッケ中の野菜(A)の食感について官能評価を行った。 野菜(A)の官能評価は、15mmダイス状にカットされたジャガイモを冷凍することなくボイル調理(100℃、8分間)したものを4点、15mmダイス状にカットされたジャガイモをボイル調理(100℃、8分間)して糊化度を90%以上に加工してから冷凍(-30℃、30分)した後、その100gをマイクロウェーブ加熱(500W、2.5分間)して解凍したものを2点とする、1~5点の評点法により行った。 また上記4.と同様にして野菜(A)の歩留り(%)を算出した。 【0093】 野菜(A)として、糊化度を15%に調整したジャガイモを使用した試験区41~43の結果を表13に示し、糊化度を70%に調整したジャガイモを使用した試験区44~46の結果を表14に示す。 【0094】 【表13】 [図:0001383258000068.jpg] 【0095】 【表14】 [図:0001383258000069.jpg] 【0096】 表13及び14に示される結果から明らかなように、フライ加熱で野菜(A)を糊化させながら乾燥させることによって、その食感は良好となった。 【0097】 6.フライ加熱の検討(2) [冷凍コロッケの製造] 15mmダイス状にカットした後、60~100℃で40秒~8分間ボイル加熱して、糊化度を15~100%に調整したジャガイモ又は15mmダイス状にカットした非加熱の生ジャガイモを野菜(A)として用いたこと以外は、上記5.と同様にして冷凍コロッケを製造した。 【0098】 [官能評価及び歩留りの測定] 得られた冷凍コロッケを、170℃に熱した油で11分間フライ調理してコロッケを得た後、4名の専門パネルが得られたコロッケを食し、各コロッケ中の野菜(A)の食感について、上記5.と同様の評点法で官能評価を行った。 また上記4.と同様にして野菜(A)の歩留り(%)を算出した。 結果を表15に示す。 【0099】 【表15】 [図:0001383258000070.jpg] 【0100】 表15に示される結果から明らかなように、糊化度を80%以上に調整したジャガイモを野菜(A)として用いた試験区51及び52では、良好な食感は得られなかった。特に糊化度を100%に調整したジャガイモを用いた試験区52では、食感が水っぽくなった。非加熱の生ジャガイモを用いた試験区47は、異臭が強く、製品の味・風味を著しく損なっていた。 一方、糊化度を15~70%に調整したジャガイモを野菜(A)として用いた試験区48~51では良好な食感が得られた。特に歩留りが86~95%であるものは、非常に良好な食感となった。 【0101】 7.(A)~(C)の重量比の検討 [野菜(A)の調製] 15~25mmダイス状にカットされたジャガイモ(品種:メークイン)を、75℃で8分間蒸し加熱して、糊化度を70%に調整し、野菜(A)を得た。 【0102】 [固形具材(B)の調製] 牛かた肉を約15×25×5mmにカットした後、フライパンで2分間炒め加熱して可食状態とし、固形具材(B)を得た。 【0103】 [液体(C)の調製] 水60g、しょうゆ15g、砂糖9g、顆粒だし1gを混合し、液体(C)を得た。 【0104】 [冷凍食品の製造] 得られた野菜(A)、固形具材(B)及び液体(C)をそれぞれ-30℃で30分間冷凍した後に表16に示す量で混合し、冷凍食品を製造した。 【0105】 【表16】 [図:0001383258000071.jpg] 【0106】 [官能評価] 得られた冷凍食品を、家庭用の電子レンジ(500W)を用いて表16に示す時間で加熱することにより解凍・調理して食品を得た後、4名の専門パネルが得られた食品を食し、各食品の野菜(A)及び固形具材(B)の品質について、上記4.と同様の評点法にて官能評価を行った。 【0107】 試験区53~55のいずれも、野菜(A)及び固形具材(B)に焦げや萎れ等の外観不良は発生しなかった。野菜(A)の食感は、ホクホクとしており、固形具材(B)は硬くなっておらず、食感品質に問題ないことが確認された。 【0108】 8.野菜(A)の歩留りの検討 上記7.と同様にして野菜(A)、固形具材(B)及び液体(C)を調製し、それぞれ -30℃で30分間冷凍した。その後、表17に示す量で混合し、冷凍食品を製造した。 【0109】 [官能評価及び歩留りの測定] 得られた冷凍食品を、家庭用の電子レンジ(500W)を用いて表17に示す時間で加熱することにより解凍・調理して食品を得た後、4名の専門パネルが得られた食品を食し、各食品の野菜(A)及び固形具材(B)の食感について、上記4.と同様の評点法で官能評価を行った。また上記4.と同様にして野菜(A)の歩留り(%)を算出した。 結果を表17に示す。 【0110】 【表17】 [図:0001383258000072.jpg] 【0111】 表17に示される結果から明らかなように、野菜(A)を糊化させながら乾燥させることで、その食感は良好となった。特に、野菜(A)の歩留りは70%以上が好ましいことが確認された。」 h)「【図1】 [図:0001383258000073.jpg] 【図2】 [図:0001383258000074.jpg] 【図3】 [図:0001383258000075.jpg] 」 (イ)判断 i 課題 本件明細書(特に【0011】の記載)、特許請求の範囲及び図面の全体の記載事項からみて、本件発明1~6の解決しようとする課題は、「糊化度が特定の範囲となるように加工された上で冷凍された高炭水化物含量の野菜及び喫食し得る状態で冷凍された固形具材を含有し、加熱して解凍・調理された際に、野菜の形状が崩れることなく、野菜のホクホク又はネットリとした食感が向上し、且つ固形具材が焦げたり、萎れたりすることがない冷凍食品を提供すること」であり、本件発明8~12の解決しようとする課題は、「糊化度が特定の範囲となるように加工された上で冷凍された高炭水化物含量の野菜及び喫食し得る状態で冷凍された固形具材を含有し、加熱して解凍・調理された際に、野菜の形状が崩れることなく、野菜のホクホク又はネットリとした食感が向上し、且つ固形具材が焦げたり、萎れたりすることがない冷凍食品を乾燥条件下で加熱することを含む食品の製造方法を提供すること」であると認める。 ii 判断 上記課題に関し、本件明細書の発明の詳細な説明及び図面には、糊化度が特定の範囲となるように加工された上で冷凍された高炭水化物含量の野菜及び喫食し得る状態で冷凍された固形具材に、更に特定量の水性液体を加えて製造した冷凍食品は、加熱した際、水性液体が蒸気となって、固形具材が焦げたり、萎れたりすることを抑制できることを見出したことが記載され(【0012】)、本発明によれば、糊化度が特定の範囲となるように加工された上で冷凍された高炭水化物含量の野菜及び喫食し得る状態で冷凍された固形具材を含有し、加熱して解凍・調理された際に、野菜の形状が崩れることなく、野菜のホクホク又はネットリとした食感が向上し、且つ保存性に優れ、更に、固形具材が焦げたり、萎れたりすることがない冷凍食品を提供できることが記載されている(【0015】)。 また、野菜(A)は、炭水化物含量10~30%の野菜を、糊化度が特定の範囲となるように加工したものであること、その種類は、炭水化物含量が10~30%である野菜であれば特に制限されず、ジャガイモ等が挙げられること、野菜の「炭水化物含量」は、差引法により測定することができること、糊化度が特定の範囲に加工された野菜(A)は冷凍耐性が高く、そのような状態で冷凍されることにより食感不良とはならない一方で、野菜(A)の細胞が冷凍により適度に損傷して、水分の移動が自由になり、加熱調理等の際に野菜自身の水分でも十分に糊化できるようになるため、外部からの吸水を必要とせず、これにより本発明は、野菜(A)を糊化させながら乾燥させるという全く前例のない解凍調理工程を行うことが可能となることが記載され(【0017】~【0021】)、さらに、糊化度が15%未満であると、褐変酵素が残存し保存性に問題が生じる傾向や、本発明の固形具材(B)と組み合わせて調理した際に、固形具材の品質に問題が生じる傾向があり、逆に70%を超えると糊化中の乾燥が不足しホクホク又はネットリとした食感が得られなくなる傾向があること、野菜の糊化度は、既報(家政学雑誌32(9)、p653-659、1981)に準じて測定することができること、野菜(A)の糊化度を特定の範囲とするための加工方法は特に制限されないこと、野菜(A)の形状は特に制限されないこと、野菜(A)の含有量は、冷凍食品の種類や野菜(A)の種類等に応じて適宜決定すればよく特に制限されないことが記載されている(【0021】~【0027】)。 固形具材(B)は、野菜(A)以外の、常温(例、15~25℃)において一定の形状を保持し得、過度に加熱されることにより焦げ及び/又は萎れが発生する食用具材であって、可食状態であるものであれば特に制限されないこと、固形具材(B)の含有量は、冷凍食品の種類等に応じて適宜決定すればよく特に制限されないこと、野菜(A)と固形具材(B)との重量比は特に制限されないことが記載されている(【0028】~【0031】)。 液体(C)は解凍・調理時の加熱によって蒸気となり得るものが好ましく、例えば、水、醤油等が挙げられること、液体(C)の量は、野菜(A)及び固形具材(B)の合計量に対して、1.5重量倍以下であることが好ましく、液体(C)の量が、野菜(A)及び固形具材(B)の合計量に対して、1.5重量倍を超えると、本発明の冷凍食品は、野菜(A)が解凍調理中に吸水し、乾燥による食感向上効果が得られない傾向があること、液体(C)の含有量は、冷凍食品の種類等に応じて適宜決定すればよく特に制限されないことが記載されている(【0032】~【0034】)。 冷凍食品は、野菜(A)、固形具材(B)及び液体(C)以外の食材を、冷凍食品の種類等に応じて適宜含有し得ることが記載されている(【0035】)。 冷凍食品の製造方法は特に制限されないが、乾燥条件下で加熱するためのものであることが好ましく、乾燥条件下で加熱することによって、野菜(A)を糊化させながら乾燥させることができ、その結果、野菜(A)の炭水化物含量が高まり、野菜(A)の形状が崩れることなく、ホクホク又はネットリした食感を向上させることができること、乾燥条件下で加熱する方法はとして、フライ加熱を行うのもよいこと、乾燥条件下で加熱することにより、野菜の形状が崩れることなく、野菜のホクホク又はネットリとした食感が向上し、且つ、固形具材に焦げや萎れが発生していない食品を提供できること、加熱の方法、加熱の際の糊化度、歩留まりについてが記載されている(【0037】~【0046】)。 そして、実施例として、野菜(A)の糊化度の範囲、野菜(A)の炭水化物含量の範囲、炭水化物含量向上効果、液体(C)の量、フライ加熱、(A)~(C)の重量比、野菜(A)の歩留りについて、それぞれ検討が行われており(【0047】)、ホクホク又はネットリとした食感があり、焦げ、萎れ等の外観不良がないこと、電子レンジ、フライパン、オーブンのいずれの加熱であっても、品質に相違はあるものの、良食感であるものが得られたこと、フライ加熱を行った場合にも食感が良好であったことが具体的に記載されている(【0047】~【0111】、図2、3)。 したがって、本件明細書の発明の詳細な説明及び図面には、本件発明における各成分、糊化度、炭水化物含量に関する技術的意義についての記載、揚げ物料理とすることの記載及び食品の製造方法の記載、並びにその具体的な裏付けの記載があるといえることから、本件発明は、発明の詳細な説明に記載されたものであり、当業者は、出願時の技術常識に照らし、本件発明が上記課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえる。 よって、本件発明は発明の詳細な説明に記載したものである。 理由(ア)について 請求項1の「(A)糊化度が15~70%となるように加工された、炭水化物含量10~30%の野菜」との記載からみて、「炭水化物含量」は加工される前、すなわち生の状態におけるものであるといえる。このことは、本件明細書に「野菜(A)は、炭水化物含量10~30%の野菜を、糊化度が特定の範囲となるように加工したものである。」(【0018】)と記載されていることとも符合する。 したがって、理由(ア)はその前提に誤りがあり、理由がない。 理由(イ)について 甲B10、甲B11の記載からみて、じゃがいも、ヤーコンの炭水化物含量が常に一定の比率でないといえるとしても、本件明細書の実施例で用いられているジャガイモ、サトイモ、西洋カボチャの炭水化物量(%)については、【0059】の表4に、それぞれ、17.6、13.1、20.6であることが記載されており、その量は本件発明の10~30%に該当するものであり、また、甲B11にポテトの炭水化物の上下限が、13.3-30.53%であることが記載されているとしても、その範囲はほぼ全てが本件発明の範囲内であるから、本件明細書の実施例に記載されたジャガイモの炭水化物含量は本件発明の範囲内にある蓋然性が非常に高いといえるところ、本件発明の範囲をはずれるごく僅かな範囲に該当するジャガイモが本件明細書の実施例に記載されているといえる合理的な理由もない。また、サトイモ、西洋カボチャについても、上記表4に記載された値が一般的な値であるといえるから、本件明細書の実施例に記載のサトイモ、西洋カボチャについてもその炭水化物含量は本件発明の範囲内にあるといえる。 したがって、この点を以て、炭水化物含量が10~30%であることの技術的意義が不明ということはできない。 本件明細書には、炭水化物含量が高い野菜(例えば、ジャガイモ、カボチャ等)は、一般にホクホク又はネットリとした食感が求められること(【0002】)、野菜(A)の種類は、炭水化物含量が10~30%である野菜であれば特に制限されないこと(【0019】)、「ホクホクとした食感」とは、十分に蒸かした芋等において顕著に感じられる、咀嚼するにつれて柔らかくほぐれ崩れる食感をいい、また「ネットリとした食感」とは、適度に粘りのある口当たりの良い食感をいうこと(【0042】)が記載されていることから、当業者は炭水化物含量が10~30%である野菜は、一般に、ホクホク又はネットリとした食感が求められると理解するといえ、アーティチョーク(花らい)、グリンピース、くわい、ごぼう、とうがらし(果実)、スイートコーン、にんにく、茎にんにく、のびる、ふきのとう、ホースラディッシュ、むかご、ゆりね、よめな、らっかせい、らっきょう、れんこん、わさび等は食物繊維組成や、構造がジャガイモと異なるとしても、「ホクホク又はネットリとした食感」、「煮崩れ」とは全く関係がないといえる技術的な根拠もなく、本件明細書の上記記載及び実施例の記載等からみて、当業者は、上記各野菜においても食感、煮崩れに関して程度の差こそあれ同様の効果が得られると理解できるといえ、本件発明は、当業者が上記課題が解決できると認識できる範囲であるといえる。 してみると、この理由は理由がない。 理由(ウ)について 本件発明において野菜(A)と固形具材(B)との相対比は特定されていないところ、本件明細書には、野菜(A)の含有量は、冷凍食品の種類や野菜(A)の種類等に応じて適宜決定すればよく特に制限されないこと(【0027】)、固形具材(B)の含有量は、冷凍食品の種類等に応じて適宜決定すればよく特に制限されないこと(【0030】)が記載されている。 しかし、ホクホク又はネットリした食感は野菜(A)について求められる性質であるといえるところ、(A)成分が(B)成分に対して非常に少ない場合に、野菜(A)が少ないからといって上記食感が得られないとする技術的根拠はなく、そのような場合に上記食感が得られないとする出願時の技術常識もないから、実施例等の本件明細書の記載からは、そのような場合であっても、本件発明は、ホクホク又はネットリした食感が得られるといえ、当業者が上記課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえる。 したがって、この理由は理由がない。 理由(エ)について 本件発明において野菜(A)の形状は特定されておらず、本件明細書には、野菜(A)の形状は特に制限されないこと、所望の形状を保持したまま、ホクホク又はネットリとした食感を向上させ得ることから、特定の形状が好ましいこと等が記載されている(【0026】)ところ、すりおろし状態、裏ごし状態等の野菜(A)の状態によってはホクホク又はネットリした食感が得られないという技術的根拠はなく、すりおろし状態、裏ごし状態であっても、上記食感が得られることがあると認められ、本件明細書の記載の実施例に記載されたものと同様に、本件発明は、当業者が上記課題が解決できると認識できる範囲であるといえる。 仮に、野菜(A)の状態によって上記の食感が得られない場合があったとしても、本件発明の課題に鑑みれば、本件発明は、そのような状態の野菜(A)を想定していないといえるから、そのような状態が存在することでサポート要件に違反するとはいえない。 したがって、この理由は理由がない。 理由(オ)について 本件発明において固形具材(B)について、可食状態であること、炭水化物含量10~30%の野菜を除くこと以外の特定はされておらず、本件明細書には、野菜(A)以外の、常温(例、15~25℃)において一定の形状を保持し得、過度に加熱されることにより焦げ及び/又は萎れが発生する食用具材であって、可食状態であるものであれば特に制限されないが、解凍・調理時の加熱によって蒸気となり得る具材は含まれないことが記載されている(【0028】)ところ、野菜(A)の煮崩れが起こらずホクホク又はネットリした食感が得られるかどうかに関して、野菜(A)とは異なる成分として配合される上記のとおりの固形具材(B)の種類が必要な水性液体の量に影響するという技術的根拠はない。また、固形具材(B)について、本件明細書には「固形具材(B)は、野菜(A)以外の、常温(例、15~25℃)において一定の形状を保持し得、過度に加熱されることにより焦げ及び/又は萎れが発生する食用具材であって、可食状態である」ものであることが記載されており(【0028】)、加熱の程度によっては焦げ、萎れが発生するとはいえるが、上記記載からみて、過度に加熱しない限り焦げ、萎れが発生するとはいえず、本件発明において過度に加熱することが想定されているとは認められない。したがって、本件明細書の記載の実施例に記載されたものと同様に、本件発明は、当業者が上記課題が解決できると認識できる範囲であるといえる。 したがって、この理由は理由がない。 理由(カ)について 本件発明では(A)~(C)以外の成分は特定されておらず、本件明細書には、野菜(A)、固形具材(B)及び液体(C)以外の食材を、冷凍食品の種類等に応じて適宜含有し得ることが記載されている(【0035】)。しかし、本件発明において、その存在によって上記課題が解決できないこととなるような(A)~(C)以外の成分を配合することが想定されているとはいえず、本件明細書の記載の実施例に記載されたものと同様に、本件発明は、当業者が上記課題が解決できると認識できる範囲であるといえる。 したがって、この理由は理由がない。 理由(キ)について 本件発明において液体(C)の量の下限値は特定されておらず、本件明細書には、その量は、野菜(A)及び固形具材(B)の合計量に対して、1.5重量倍以下であることが好ましいこと(【0033】)、その含有量は、冷凍食品の種類等に応じて適宜決定すればよく特に制限されないこと(【0034】)が記載されている。そして、本件発明は、(A)~(C)の成分を必須とすることによって、上記課題を解決しようとするものであるから、(C)が0重量%に限りなく近い場合が想定されているとはいえず、本件明細書の記載の実施例に記載されたものと同様に、本件発明は、当業者が上記課題が解決できると認識できる範囲であるといえる。 したがって、この理由は理由がない。 理由(ク)について 本件発明では(A)~(C)が冷凍されていること以外にそれらの存在状態については特定されておらず、本件明細書には、野菜(A)、固形具材(B)及び液体(C)をそれぞれ調製した後、これらを別個に冷凍し、得られた各凍結物を一つの包装体に収容する等して混合することにより製造してもよいし、野菜(A)、固形具材(B)及び液体(C)をそれぞれ調製した後、これらを混合し、得られた混合物を冷凍することや、野菜(A)、固形具材(B)及び液体(C)を、所望によりその他の食材と併せて混合・調理してから冷凍すること等により製造してもよいことが記載され(【0037】)、それに対応して、実施例には、(A)~(C)をそれぞれ冷凍した後に混合した例(【0070】、【0104】)、(A)~(C)を含むものを冷凍した例(【0090】、【0097】)が記載されており、いずれについても食感が良好であったこと等が記載されている。 してみると、(A)~(C)が一体化されて混合されている場合、それぞれ局在化して併存している場合のいずれであっても、本件明細書の記載の実施例に記載されたものと同様に、本件発明は、当業者が上記課題が解決できると認識できる範囲であるといえる。 したがって、この理由は理由がない。 理由(ケ)について 本件明細書【0004】の記載は、従来技術の説明に関する記載であり、その記載事項が直接本件発明の解決しようとする課題であるとはいえず、本件発明の解決しようとする課題は上記iに示したとおりであって、「生鮮品より優れる食感の冷凍食品の提供」であるとはいえない。 このことは、実施例として、冷凍していない野菜(評点4)よりも低い評点(評点3)のものが記載されている(【0094】の表13、【0095】の表14)こととも整合する。 したがって、理由(ケ)はその前提に誤りがあり、理由がない。 理由(コ)について 請求項1の「冷凍された下記(A)~(C)を含有し・・・(A)糊化度が15~70%となるように加工された、炭水化物含量10~30%の野菜」との記載からみて、「糊化度」は加工された後であって、冷凍される前のものであるといえる。このことは、本件明細書に「糊化度が特定の範囲となるように加工された上で冷凍された高炭水化物含量の野菜」(【0011】)、「野菜(A)は、炭水化物含量10~30%の野菜を、糊化度が特定の範囲となるように加工したものである。」(【0018】)、「本発明の冷凍食品の製造方法は特に制限されず、例えば、野菜(A)、固形具材(B)及び液体(C)をそれぞれ調製した後、これらを別個に冷凍し・・・」(【0037】)、「1.野菜(A)の糊化度の範囲の検討 25mmダイス状にカットされたジャガイモ2品種(メークイン、男爵)を、表1及び表2に示す方法、温度、時間で加熱して、表1及び表2に示す糊化度に加工した。その後、各ジャガイモを冷凍(-30℃、30分間)した後」(【0048】)との記載があることとも符合する。 したがって、冷凍食品中の野菜の糊化度を指すことを前提とする理由には、その前提に誤りがある。 また、「加工」の内容が特定されていなくても、冷凍前の「糊化度が15~70%」と特定されており、実施例において、かかる糊化度に加工された炭水化物含量10~30%の野菜を含有する冷凍食品について、ホクホク又はネットリした食感であり、崩れ、焦げ、萎れ等の外観不良もなかったことが記載されているのであるから、本件発明は、当業者が上記課題が解決できると認識できる範囲であるといえる。 さらに、甲B12、B13に記載のとおり、冷凍によって糊化度が低下すること、老化することは周知であるといえるから、冷凍期間によって食感等が低下することも周知であるといえ、冷凍食品に関するものである本件発明の解決しようとする課題は、自ずと冷凍期間によって一定程度食感等が低下することを含めて、「糊化度が特定の範囲となるように加工された上で冷凍された高炭水化物含量の野菜及び喫食し得る状態で冷凍された固形具材を含有し、加熱して解凍・調理された際に、野菜の形状が崩れることなく、野菜のホクホク又はネットリとした食感が向上し、且つ固形具材が焦げたり、萎れたりすることがない冷凍食品又は当該冷凍食品を乾燥条件下で加熱することを含む食品の製造方法を提供すること」であるといえる。したがって、冷凍によって糊化度が低下、食感等が低下することがあったとしても、本件発明は、当業者が上記課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえる。 したがって、この理由は理由がない。 理由(サ)について 上記「理由(コ)について」で述べたとおり、本件発明の解決しようとする課題は、冷凍期間によって一定程度食感等が低下することを含めたものであるといえるところ、仮に本件明細書に記載された「-30℃で30分冷凍」させた冷凍食品よりも、長期間冷凍した物について食感等が低下するといえるとしても、それは当業者が当然に理解するものであるといえるから、本件発明は、当業者が上記課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえる。 したがって、この理由は理由がない。 ウ まとめ 以上のとおりであるから、申立理由B3は理由がない。 (10)申立理由B4について ア 申立理由 申立理由B4についての特許異議申立人Bの主張の具体的な理由の概要は、上記(9)アで示した理由(ア)~(サ)と同様である。 イ 判断 以下の観点に立って、検討する。 物の発明における発明の「実施」とは、その物の生産、使用等をする行為をいう(特許法第2条第3項第1号)から、特許法第36条第4項第1号の「その実施をすることができる」(実施可能要件)とは、その物を生産することができ、かつ、その物を使用できることである。したがって、物の発明については、明細書の発明の詳細な説明の記載又はその示唆及び出願当時の技術常識に基づき、当業者がその物を生産することができ、かつ、その物を使用できるのであれば、上記の実施可能要件を満たすということができる。 また、物を生産する方法の発明における発明の「実施」とは、その方法の使用をする行為のほか、その方法により生産した物の使用等をする行為をいう(特許法第2条第3項第3号)から、特許法第36条第4項第1号の「その実施をすることができる」(実施可能要件)とは、その方法により物を生産することができ、かつ、その物を使用できることである。したがって、物を生産する方法の発明については、明細書の発明の詳細な説明の記載又はその示唆及び出願当時の技術常識に基づき、当業者がその方法により物を生産することができ、かつ、その物を使用できるのであれば、上記の実施可能要件を満たすということができる。 (ア)本件明細書及び図面の記載 本件明細書及び図面には、上記(9)イ(ア)で示した記載がある。 (イ)判断 本件発明1~6は物の発明であり、本件発明8~12は物を生産する方法の発明である。 本件明細書の発明の詳細な説明及び図面には、(A)の野菜の種類、その炭水化物含量、糊化度、糊化度の測定方法、加工方法、形状、含有量についての記載(【0018】~【0027】、【0031】)、固形具材(B)の種類、その可食状態の意味と可食状態とするための方法、含有量についての記載(【0028】~【0031】)、水性液体(C)、その含有量についての記載(【0032】~【0034】)、冷凍食品の製造方法、食品の製造方法等についての記載(【0037】~【0046】)があり、また、具体的な実施例が記載されている(【0048】~【0111】、図1~3)。 してみると、明細書の発明の詳細な説明の記載又はその示唆及び出願当時の技術常識に基づき、当業者が本件発明の物を生産することができ、また、本件発明の方法により物を生産することができ、かつ、その物を使用できるといえる。 したがって、発明の詳細な説明は、当業者が本件発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるということができる。 そして、申立理由B4についての特許異議申立人Bの主張の具体的な理由は、上記(9)アで示した理由(ア)~(サ)と同様であるから、上記(9)イ(イ)で述べたのと同様に、理由がない。 ウ まとめ したがって、申立理由B4は理由がない。 (11)申立理由B5について ア 申立理由 申立理由B5についての特許異議申立人Bの主張の具体的な理由の概要は、以下のとおりである。 (ア)本件請求項1及び8において「炭水化物含量10~30%の野菜」という記載の「10~30%」という炭水化物量は、どの時点の野菜の炭水化物量を指すものなのか、また食品標準成分表において生の状態における「10~30%」の炭水化物量である野菜の植物種に属することを意味するのか、それとも野菜個体として特定の炭水化物量を有することを意味するのかが不明である。また、同じ野菜であっても品種や気候条件などによって炭水化物含量は変動し「10~30%」の範囲内となったり範囲外となったりするから、本件特許に接した第三者は「炭水化物含量10~30%の野菜」に該当する野菜を理解することができない。請求項1、8を引用する本件請求項2~7、9~13も同様のことが該当する。このため、本件特許請求の範囲の記載は不明確である。 (イ)本件請求項1及び8において「糊化度15~75%」という記載は、どの時点で測定した糊化度を指すかが不明である。請求項1、8を引用する本件請求項2~7、9~13も同様のことが該当する。このため、本件特許請求の範囲の記載は不明確である。 (ウ)仮に、「10~30%」という炭水化物量、及び/又は「糊化度15~75%」という糊化度が冷凍中の時点ではなく、冷凍前の時点の値を指すというのであれば、それらは製造条件を規定するものであり、本件特許発明1~7は製造方法の発明を物クレームとして記載したものである一方で、本件明細書には製造方法により物を規定することに関し、不可能・非実際的事情は一切記載されていないから、本件請求項1~7の記載は明確ではない。 (エ)本件請求項7、13には「汁物料理」が含まれるところ、液体を含まないか極めて少ない「汁物料理」を当業者は理解できないから、本件請求項1~13の記載は明確でない。 (オ)本件明細書の【0009】には本件特許発明1~13の課題が「野菜のホクホク又はネットリした食感の向上」であると記載されている一方、甲B6に挙げた通り、本件請求項1及び8に記載の「炭水化物含量10~30%の野菜」として、本件明細書の表4と同様に「生」の状態でのものだけでも「アーティチョーク(花らい)、グリンピース、くわい、ごぼう、とうがらし(果実)、スイートコーン、にんにく、茎にんにく、のびる、ふきのとう、ホースラディッシュ、むかご、ゆりね、よめな、らっかせい、らっきょう、れんこん、わさび」等、多数が存在し、これらのほとんどは、「ホクホク又はネットリとした食感」とは関係がない。そうすると、本件請求項1及び8に記載の「炭水化物含量10~30%の野菜」とはどのような範囲を指すのか、当業者は理解できない。このため、本件特許請求の範囲の記載は不明確である。 (カ)本件明細書には具材(B)や野菜(A)の水分量は一切記載されていない。このため、本件の特許請求の範囲の記載は不明確となっている。例えば、一般に、野菜の煮物又は汁物の冷凍食品としては、生の状態から固形具材(B)及び野菜(A)を煮汁等の液体で煮て、煮汁ごと冷凍した食品が考えられるところ、その場合における水性液体の量は、固形具材(B)や野菜(A)の水分量を除く水分を含む水性液体の量に該当するから、固形具材(B)や野菜(A)の水分量によって異なってくる。すなわち、食品全体の水分量や野菜(A)の糊化度は同じであっても、固形具材(B)や野菜(A)の水分量をどのように設定するかによって水性液体の量が異なることになるが、そのような場合に水性液体の量をどのように規定するかという点について、本件明細書に一切記載がない。以上のことからすると、本件特許請求の範囲の記載は、不明確である。 イ 判断 以下の観点に立って判断する。 特許法第36条第6項第2号は、特許請求の範囲の記載に関し、特許を受けようとする発明が明確でなければならない旨規定する。この趣旨は、特許請求の範囲に記載された発明が明確でない場合には、特許の付与された発明の技術的範囲が不明確となり、第三者に不測の不利益を及ぼすことがあり得るため、そのような不都合な結果を防止することにある。そして、特許を受けようとする発明が明確であるか否かは、特許請求の範囲の記載のみならず、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきである。 理由(ア)について 上記(9)イ(イ)ii「理由(ア)について」で述べたとおりであり、、「炭水化物含量」は加工される前、すなわち生の状態におけるものであることは明らかである。 また、「炭水化物含量10~30%の野菜」とはその字句どおり、炭水化物含量が10~30%の野菜であることを意味することは明らかである。なお、本件明細書には、当該量についての測定方法についての記載もある(【0020】)。 したがって、この点において、特許請求の範囲の記載が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとはいえず、本件発明は明確である。 よって、この理由は理由がない。 理由(イ)について 上記(9)イ(イ)ii「理由(コ)について」で述べたとおりであり、「糊化度」が加工された後であって冷凍される前のものであることは明らかである。 したがって、この点において、特許請求の範囲の記載が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとはいえず、本件発明は明確である。 よって、この理由は理由がない。 理由(ウ)について 本件発明において「冷凍された」は物の状態を表す事項であり、「炭水化物含量10~30%」、「糊化度15~75%」はいずれも物をその性質又は特性により限定する事項であるから、製造条件を規定するものであるとはいえない。 したがって、この点において、特許請求の範囲の記載が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとはいえず、本件発明は明確である。 よって、この理由は理由がない。 理由(エ)について 本件訂正により請求項7及び13は削除されており、本件発明は汁物料理を対象としない。 したがって、この点において、特許請求の範囲の記載が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとはいえず、本件発明は明確である。 よって、この理由は理由がない。 理由(オ)について 本件発明における「炭水化物含量10~30%の野菜」はそれ自体で不明確な点はない。また、(9)イ(イ)ii「理由(イ)について」で述べたとおりであり、アーティチョーク(花らい)等が「ホクホク又はネットリとした食感」、「煮崩れ」とは全く関係がないという技術的根拠もない。 したがって、この点において、特許請求の範囲の記載が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとはいえず、本件発明は明確である。 よって、この理由は理由がない。 理由(カ)について 本件発明は「冷凍された下記(A)~(C)を含有し、(C)の量が(A)及び(B)に対して1.5重量倍以下である冷凍食品であって、・・・(A)・・・(B)・・・(C)・・・」と特定しているから、(A)、(B)及び(C)はそれぞれ別の成分であることは明らかであり、野菜(A)、固形具材(B)の水分と水性液体(C)は別のものであることも明らかである。 また、水性液体(C)の量は、本件発明において「(A)及び(B)に対して1.5重量倍以下である」と特定されているから、(A)及び(B)の量と関係するとはいえるものの、それらの水分量との関係は特定されていないから、それらの水分量に左右されることはないといえる。 したがって、この点において、特許請求の範囲の記載が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとはいえず、本件発明は明確である。 よって、この理由は理由がない。 ウ まとめ 以上のとおりであるから、申立理由B5は理由がない。 (12)申立理由C1について 申立理由C1のうち、請求項4、5についての申立てについては、当審が通知した取消理由で採用しなかった理由であるから、これら請求項について検討するに、上記3(1)アで述べたとおり、本件発明1は刊行物1(甲B1と同じ。甲A2、甲C1とも同じ。)に記載された発明であるとはいえないところ、本件発明4、5は本件発明1を引用し技術的にさらに限定するものであるから、本件発明4、5は刊行物1に記載された発明であるとはいえない。 したがって、申立理由C1は理由がない。 (13)申立理由C2について 申立理由C2には、甲C1を主引用例とする理由(申立理由C2-1。特許された特許請求の範囲の請求項1~9、11~13に対しては、甲C1単独での、同請求項10に対しては、甲C4と組み合わせての理由。)と甲C2を主引用例とする理由(申立理由C2-2。特許された特許請求の範囲の請求項1~9、11~13に対しては、甲C3と組み合わせての、同請求項10に対しては、甲C3及び甲C4と組み合わせての理由。)がある。 (13-1)申立理由C2-1について 申立理由C2-1は、請求項1~13を対象請求項とし、引用例として甲C1、C4(それぞれ、刊行物1、2と同じ。)を含む点において、当審が通知した取消理由の理由2と同じ理由である。 (13-2)申立理由C2-2について ア 本件発明1について 本件発明1と甲C2発明1とを対比する。 甲C2発明1の「冷凍した肉じゃが」は、本件発明1の「冷凍食品」に相当する。 甲C2発明1の「じゃがいも」は、本件発明1の「炭水化物含量10~30%の野菜」であるといえる。 甲C2発明1のじゃがいもは、弱火で20分間煮込まれるものであるところ、「煮込」むことは本件発明1の「加工」に相当する。 甲C2発明1の「玉ねぎ」、「牛肉」は、弱火で20分間煮込まれるものであるところ、「玉ねぎ」は炭水化物含量が10~30%であるとはいえず、同「牛肉」は野菜ではなく、これらはいずれも固形であり、弱火で20分間煮込まれれば、可食状態になっているといえる。したがって、弱火で20分間煮込まれた「玉ねぎ」、「牛肉」は、本件発明1の「可食状態の固形具材(但し、炭水化物含量10~30%の野菜を除く)」に相当する。 甲C2発明1の「醤油、本みりん、だし調味液から成る調味液」は、本件発明1の「水性液体」に相当する。 甲C2発明1の「じゃがいも」、「玉ねぎ」、「牛肉」、「調味液」について、これらは、所定の冷凍方法で「凍結」したものであるから、本件発明1の「冷凍された」に相当する。 してみると、本件発明1と甲C2発明1とは、 「冷凍された下記(A)~(C)を含有する冷凍食品。 (A)加工された、炭水化物含量10~30%の野菜 (B)可食状態の固形具材(但し、炭水化物含量10~30%の野菜を除く) (C)水性液体」である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点1-C21-1> 本件発明1は「(C)の量が(A)及び(B)に対して1.5重量倍以下である」と特定しているのに対し、甲C2発明1はそのような特定をしていない点。 <相違点1-C21-2> 本件発明1は「冷凍食品から製造される食品が、揚げ物料理である」と特定しているのに対し、甲C2発明1はそのような特定をしていない点。 <相違点1-C21-3> (A)について、本件発明1は「糊化度が15~70%となるように」加工されたものであるのに対し、甲C2発明1はそのような特定をしていない点。 事案に鑑みて、相違点1-C21-2及び1-C21-3について検討する。 相違点1-C21-2について、甲C2発明1は、冷凍した肉じゃがに関するものであるところ、当該肉じゃがから揚げ物料理を製造することは甲C2には記載も示唆もされていない。 甲C3には、さつまいも、じゃがいも等の試料、それらの加熱、でんぷんα化度等についての記載があるが(摘示C3a~C3b)、かかる記載事項及び技術常識を参酌しても、煮物料理といえる甲C2発明1の冷凍した肉じゃがを揚げ物料理とすることが当業者が容易になし得た事項であるということはできない。 なお、甲C2には、調理の方法として揚げることが記載されているが(摘示C2a)、当該記載は甲C2に記載された製造方法の調理方法についての一般的な方法を記載したに過ぎず、甲C2発明1の冷凍した肉じゃがを揚げ物料理とすることが当業者が容易になし得た事項であるといえないことは上述のとおりである。 したがって、相違点1-C21-2に係る本件発明1の技術的事項を採用することは当業者が容易になし得た事項であるとはいえない。 相違点1-C21-3について、甲C2には、特定の糊化度とすることについての記載・示唆はない。 甲C3には、可食状態となることを目安として、じゃがいもに所定の処理をし、アルミ鍋で6分、ステンレス鍋で6分、天火で20分、ガスオーブンで20分、電子レンジで10分加熱した場合に、α化度がそれぞれ、64、67、67、37、37%であったことが記載されているが(摘示C3b)、甲C2発明1は、概要、じゃがいもを60℃に設定して60分予備加熱し、弱火で20分間煮込む工程を経て製造されたものであり、その場合の糊化度がどの程度であるか不明であり、技術常識を考慮しても、糊化度が15~70%となるように当該工程を設定する動機付けもない。 したがって、相違点1-C21-3に係る本件発明1の技術的事項を採用することは当業者が容易になし得た事項であるとはいえない。 よって、他の相違点及び本件発明1が奏する効果について検討するまでもなく、本件発明1は甲C2及び甲C3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。 イ 本件発明2~6について 本件発明2~6は、いずれも本件発明1を引用しさらに技術的に限定するものであるから、本件発明1と同様に、甲C2及び甲C3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。 ウ 本件発明8について 本件発明8と甲C2発明2とを対比する。 甲C2発明2における「冷凍した肉じゃが」は、甲C2発明1の「冷凍した肉じゃが」と同様の物である。 甲C2発明2の「再加熱」は、本件発明8の「加熱」に相当する。 甲C2発明2の「冷凍した肉じゃがを再加熱する肉じゃがの製造方法」は、本件発明8の「食品の製造方法」に相当する。 さらに、上記アで述べたことを考慮すれば、本件発明8と甲C2発明2とは、 「冷凍された下記(A)~(C)を含有する冷凍食品を、加熱することを含む、食品の製造方法。 (A)加工された、炭水化物含量10~30%の野菜 (B)可食状態の固形具材(但し、炭水化物含量10~30%の野菜を除く) (C)水性液体」である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点8-C22-1> 本件発明8は「(C)の量が(A)及び(B)に対して1.5重量倍以下である」と特定しているのに対し、甲C2発明2はそのような特定をしていない点。 <相違点8-C22-2> 加熱について、本件発明8は「乾燥条件下で」加熱すると特定しているのに対し、甲C2発明2はそのような特定をしていない点。 <相違点8-C22-3> 本件発明8は「食品が、揚げ物料理である」と特定しているのに対し、甲C2発明2はそのような特定をしていない点。 <相違点8-C22-4> (A)について、本件発明8は「糊化度が15~70%となるように」加工されたものであるのに対し、甲C2発明2はそのような特定をしていない点。 相違点8-C22-3、8-C22-4について検討するに、これらの相違点は、それぞれ相違点1-C21-2及び1-C21-3と同様の相違点であり、それら相違点についての判断は、上記アで述べたのと同様である。 したがって、他の相違点及び本件発明8が奏する効果について検討するまでもなく、本件発明8は甲C2及び甲C3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。 エ 本件発明9、11、12について 本件発明9、11、12は、いずれも本件発明8を引用しさらに技術的に限定するものであるから、本件発明1と同様に、甲C2及び甲C3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。 オ 本件発明10について 甲C4(刊行物2、甲B5、甲C4と同じ。)には、冷凍枝豆についての記載、冷凍枝豆は糊化度が45~85%であること、枝豆の糊化度が90~100%の状態になるまで加熱調理されることについての記載があるところ(摘示2a~2e)、かかる記載事項を参酌しても、甲C2には、特定の糊化度とすることについての記載・示唆はないから、甲C2発明2において、相違点8-C22-4に係る特定の糊化度とする動機付けがあるとはいえず、また、冷凍枝豆についての技術的事項を冷凍した肉じゃがである甲C2発明2に適用する動機付けがあるともいえない。 また、冷凍枝豆に関する甲C4の記載事項及び技術常識を参酌しても、肉じゃがは煮物料理であるから、甲C2発明2の、冷凍した肉じゃがを再加熱して揚げ物料理を製造することが当業者が容易になし得た事項であるとはいえない。 したがって、他の相違点及び本件発明10が奏する効果について検討するまでもなく、本件発明8は甲C2~C4に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。 カ まとめ 以上のとおりであるから、申立理由C2は理由がない。 5 特許異議申立人の主張について (1)特許異議申立人Aについて 特許異議申立人Aは令和3年6月7日付けの意見書において、令和3年4月21日付けの訂正請求書によって訂正された請求項1~13に係る発明について、取消理由通知で通知された取消事由は解消しておらず、新規性・進歩性を有しない旨主張するが、上記3で述べたとおりであり、本件発明1~6、8~12について、取消理由通知で通知した新規性・進歩性の理由には、理由がないため、当該主張は採用できない。 (2)特許異議申立人Bについて 特許異議申立人Bは令和3年6月9日付け意見書において、参考資料1~12を提示し、令和3年4月21日付けの訂正請求書によって訂正された請求項1~13に係る発明について、i)刊行物1に記載された発明に基づいて新規性・進歩性を有しない旨、ii)「炭水化物含量10~30%の野菜」は、甲B6に記載されるとおり、スイートコーン、茎ニンニク、とうがらしなどの野菜を含むが、これらの食感はシャキシャキ又はパリパリであることが知られているから(参考資料9~11)、「炭水化物含量10~30%の野菜」のすべてにおいて「野菜のホクホク又はネットリした食感が向上」するといった作用効果を奏し得ず、また、水性液体の下限が規定されていないところ、参考資料5、6に記載されているとおり、冷凍食品の分野で水性液体の量が少ない場合、過加熱による焦げが生じることは技術常識であるから、「野菜のホクホク又はネットリした食感が向上し、且つ保存性に優れ、更に、固形具材が焦げたり、萎れたりすることがない」効果が奏されると理解できないから、サポート要件を満たさない旨主張する。 そこで検討するに、i)上記3で述べたとおりであり、本件発明1~6、8~12について刊行物1に記載された発明に基づいて新規性・進歩性を有しないということはできず、ii)スイートコーン、茎ニンニク、とうがらしの食感はシャキシャキ又はパリパリであることが参考資料9~11に記載されているとしても、通常食感は1種類に限定されるとはいえないと認められるから、そのことのみでこれらの野菜について、「加熱して解凍・調理された際に、野菜の形状が崩れることなく、野菜のホクホク又はネットリとした食感が向上し、且つ固形具材が焦げたり、萎れたりすることがない」という効果を奏し得ないということはできない。 したがって、上記主張を採用することはできない なお、特許異議申立人Bは意見書においてその他のサポート要件に関する事項について主張しているが、当該事項については、上記訂正請求書による請求に付随して生じた事項であるとは認められず、実質的に新たな内容を含むと認められるし、たとえ、その内容を検討したとしても、上記その他のサポート要件に関する事項に理由があるとは認められない。そして、本件発明がサポート要件を満たすことは、上記4(9)で述べたとおりである。 (3)特許異議申立人Cについて 特許異議申立人Cは令和3年6月7日付け意見書において、甲第5号証~甲第8号証を提示し、令和3年4月21日付けの訂正請求書によって訂正された請求項1~13に係る発明について、刊行物1~3に記載された発明に基づいて進歩性を有しない旨主張するが、上記3で述べたとおりであり、本件発明1~6、8~12について、刊行物1~3に記載された発明に基づいて進歩性を有しないということはできない。 なお、特許異議申立人Cは意見書においてその他のサポート要件に関する事項について主張しているが、当該事項については、上記訂正請求書による請求に付随して生じた事項であるとは認められず、実質的に新たな内容を含むと認められるし、たとえ、その内容を検討したとしても、上記その他のサポート要件に関する事項に理由があるとは認められない。そして、本件発明がサポート要件を満たすことは、上記4(9)で述べたとおりである。 第6 むすび 以上のとおりであるから、請求項1~6、8~12に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立人が提出した特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、取り消すことができない。 また、他に請求項1~6、8~12に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 特許異議の申立ての対象であった請求項7、13は、訂正請求により削除されたので、請求項7、13に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 よって、結論のとおり決定する。

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2020-700924

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