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特許異議申立

2020-700887

円盤状ガラス基板の製造方法、薄板ガラス基板の製造方法、導光板の製造方法及び円盤状ガラス基板

審判番号
2020-700887
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2017-251419
登録番号
6695318
請求日
2020年11月19日
審決日
2023年09月19日
公報発行日
2024年03月29日
結論
請求成立(取消)
当事者
  • 【権利者】HOYA株式会社
  • 【権利者代理人】池田 憲保
  • 【権利者代理人】佐々木 敬
  • 【異議申立人】籾井 孝文
審判長/審判官
  • 審判長 鈴木 貴雄
  • 審判官 刈間 宏信
  • 審判官 田々井 正吾
分類
P1651.16 -ZDA(B24B) / P1651.121-ZDA(B24B)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条の2、特許法第120条の5第4項、特許法第113条、特許法第29条、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の8第1項
データ出所
審決公報(XML)

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特許第6695318号発明「円盤状ガラス基板の製造方法、薄板ガラス基板の製造方法、導光板の製造方法及び円盤状ガラス基板」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第6695318号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~10〕、〔11~13〕、〔14~15〕、〔16~19〕について訂正することを認める。 特許第6695318号の請求項16~19に係る特許を取り消す。 同請求項1、6~8、10~12、14~15に係る特許を維持する。 同請求項2~5、9、13に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第6695318号の請求項1~19に係る特許についての出願は、平成29年12月27日に出願され、令和2年4月23日にその特許権の設定登録がされ、令和2年5月20日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。 令和2年11月19日 :特許異議申立人 籾井孝文(以下「申立人」 という。)による請求項1~19に係る 特許に対する特許異議の申立て 令和3年 4月 7日付け:取消理由通知書 同 年 6月14日 :特許権者 HOYA株式会社(以下 「特許権者」という。)による 意見書及び訂正請求書の提出 同 年 8月 3日 :申立人による意見書の提出 令和4年 6月30日付け:取消理由通知書(決定の予告) 同 年 9月 1日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出 同 年10月 4日 :申立人による意見書の提出 令和5年 3月 2日付け:取消理由通知書(決定の予告) 同 年 5月 1日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出 同 年 6月12日 :申立人による意見書の提出 なお、令和3年6月14日及び令和4年9月1日に提出された訂正請求書に係る訂正の請求は、特許法120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。 また、令和5年5月1日に提出の訂正請求書により請求された訂正を、以下「本件訂正」という。 第2 本件訂正の適否 1 一群の請求項1~10に係る訂正 (1)訂正の内容 ア 訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に 「1つ又は複数の薄板ガラス基板を切り出すための円盤状ガラス基板の製造方法であって、 円形の2つの主表面を有するガラス素板である円盤状ガラス素板を準備することと、 前記円盤状ガラス素板の前記2つの主表面の各々の外縁部を面取りすることと、 面取りされた前記円盤状ガラス素板の前記2つの主表面を両面研削装置で研削することと、 研削された前記円盤状ガラス素板の前記2つの主表面を両面研磨装置で研磨することとを含む ことを特徴とする円盤状ガラス基板の製造方法。」 と記載されているのを 「角部を有する複数の薄板ガラス基板を切り出すための円盤状ガラス基板の製造方法であって、 円形の2つの主表面を有するガラス素板である円盤状ガラス素板を準備することと、 前記円盤状ガラス素板の前記2つの主表面の各々の外縁部を面取りすることと、 面取りされた前記円盤状ガラス素板の前記2つの主表面を両面研削装置で研削することと、 研削された前記円盤状ガラス素板の前記2つの主表面を両面研磨装置で研磨することとを含み、 前記研磨することでは、取り代をDとしたときに、20μm≦D<150μmを満たすように段階的に、前記研削された円盤状ガラス素板の前記2つの主表面を研磨し、これによって、板厚が100~350μm、かつ、直径が70~210mm、かつ、2つの主表面の平行度が0.05~0.95μmの範囲内かつ2つの主表面の二乗平均平方根粗さRqが0.4nm以下である屈折率が1.60以上である円盤状ガラス基板を作製する ことを特徴とする円盤状ガラス基板の製造方法。」 に訂正する。 (請求項1を引用する請求項6及び8も同様に訂正する。なお、下線は、本件訂正による訂正箇所を示すために当審で付したものである。第2欄における下線については、以下同じ。) イ 訂正事項2 特許請求の範囲の請求項2を削除する。 ウ 訂正事項3 特許請求の範囲の請求項3を削除する。 エ 訂正事項4 特許請求の範囲の請求項4を削除する。 オ 訂正事項5 特許請求の範囲の請求項5を削除する。 カ 訂正事項6 特許請求の範囲の請求項6に 「前記研磨することでは、前記研削された円盤状ガラス素板の2つの主表面を研磨することによって、平行度が0.05~0.95μmの範囲内の円盤状ガラス基板を作製する ことを特徴とする請求項5に記載の円盤状ガラス基板の製造方法。」 と記載されているのを 「前記研磨することでは、前記研削された円盤状ガラス素板の2つの主表面を研磨することによって、平行度が0.05~0.5μmの範囲内の円盤状ガラス基板を作製する ことを特徴とする請求項1に記載の円盤状ガラス基板の製造方法。」 に訂正する。 (請求項6を引用する請求項8も同様に訂正する。) キ 訂正事項7 特許請求の範囲の請求項7に 「前記面取りされた円盤状ガラス素板の外周端面及び面取り面以外の板厚をt1ミリメートル、 前記面取りされた円盤状ガラス素板の外周端面の板厚をt2ミリメートル、 前記研磨することによって作製される円盤状ガラス基板の外周端面及び面取り面以外の板厚をt3ミリメートル、としたとき、 t1×0.15<t2<t1×0.4と、t3×0.5<t2とを満たす ことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の円盤状ガラス基板の製造方法。」 と記載されているのを 「角部を有する複数の薄板ガラス基板を切り出すための円盤状ガラス基板の製造方法であって、 円形の2つの主表面を有するガラス素板である円盤状ガラス素板を準備することと、 前記円盤状ガラス素板の前記2つの主表面の各々の外縁部を面取りすることと、 面取りされた前記円盤状ガラス素板の前記2つの主表面を両面研削装置で研削することと、 研削された前記円盤状ガラス素板の前記2つの主表面を両面研磨装置で研磨することとを含み、 前記面取りされた円盤状ガラス素板の外周端面及び面取り面以外の板厚をt1ミリメートル、 前記面取りされた円盤状ガラス素板の外周端面の板厚をt2ミリメートル、 前記研磨することによって作製される円盤状ガラス基板の外周端面及び面取り面以外の板厚をt3ミリメートル、としたとき、 t1×0.15<t2<t1×0.4と、t3×0.5<t2とを満たすとともに、板厚が100~350μmで、2つの主表面の平行度が0.05~0.95μmの範囲内かつ2つの主表面の二乗平均平方根粗さRqが0.4nm以下である屈折率が1.60以上の円盤状ガラス基板を得る ことを特徴とする円盤状ガラス基板の製造方法。」 に訂正する。 (請求項7を引用する請求項8も同様に訂正する。) ク 訂正事項8 特許請求の範囲の請求項8に 「前記面取りすることでは、機械的処理又は化学的処理を用いて前記外縁部を面取りすることによって面取り面を形成し、 前記研削すること及び前記研磨することでは、前記面取り面の少なくとも一部が残存する範囲の取り代で、前記円盤状ガラス素板の前記2つの主表面が研削されて研磨される ことを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の円盤状ガラス基板の製造方法。」 と記載されているのを 「前記面取りすることでは、機械的処理又は化学的処理を用いて前記外縁部を面取りすることによって面取り面を形成し、 前記研削すること及び前記研磨することでは、前記面取り面の少なくとも一部が残存する範囲の取り代で、前記円盤状ガラス素板の前記2つの主表面が研削されて研磨される ことを特徴とする請求項1、6、7のいずれか1項に記載の円盤状ガラス基板の製造方法。」 に訂正する。 ケ 訂正事項9 特許請求の範囲の請求項9を削除する。 コ 訂正事項10 特許請求の範囲の請求項10に 「前記研磨することは、 前記研削された円盤状ガラス素板の前記2つの主表面を前記両面研磨装置で研磨する第1研磨を施すことと、 前記第1研磨が施された円盤状ガラス素板の前記2つの主表面を前記両面研磨装置で研磨する第2研磨を施すこととを含み、 前記第1研磨と前記第2研磨とでは、前記両面研磨装置に適用される研磨パッドと研磨スラリとの組み合わせが互いに異なる ことを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の円盤状ガラス基板の製造方法。」 と記載されているのを 「角部を有する複数の薄板ガラス基板を切り出すための円盤状ガラス基板の製造方法であって、 円形の2つの主表面を有するガラス素板である円盤状ガラス素板を準備することと、 前記円盤状ガラス素板の前記2つの主表面の各々の外縁部を面取りすることと、 面取りされた前記円盤状ガラス素板の前記2つの主表面を両面研削装置で研削することと、 研削された前記円盤状ガラス素板の前記2つの主表面を両面研磨装置で研磨することとを含み、 前記研磨することは、 前記研削された円盤状ガラス素板の前記2つの主表面を前記両面研磨装置で研磨する第1研磨を施すことと、 前記第1研磨が施された円盤状ガラス素板の前記2つの主表面を前記両面研磨装置で研磨する第2研磨を施すこととを含み、 前記第1研磨と前記第2研磨とでは、前記両面研磨装置に適用される研磨パッドと研磨スラリとの組み合わせが互いに異なり、 これにより、板厚が100~350μmで、2つの主表面の平行度が0.05~0.95μmの範囲内かつ2つの主表面の二乗平均平方根粗さRqが0.4nm以下である屈折率が1.60以上の円盤状ガラス基板を得る ことを特徴とする円盤状ガラス基板の製造方法。」 に訂正する。 なお、本件訂正前の請求項1~10について、請求項2~10は、請求項1を直接的または間接的に引用しているものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。したがって、本件訂正前の請求項1~10は、特許法120条の5第4項に規定する一群の請求項であり、訂正事項1~10は、この一群の請求項について請求されたものである。 (2)訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否 ア 訂正事項1について (ア)「角部を有する複数の薄板ガラス基板」に係る訂正について 訂正事項1のうち、「角部を有する複数の薄板ガラス基板」に係る訂正は、本件訂正前に記載されていた「1つ又は複数の薄板ガラス基板」という事項の「1つ又は」という選択肢を削除し、さらに、「角部を有する」という限定を付加するものであるから、当該訂正の目的は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる特許請求の範囲の減縮に該当する。 そして、「角部を有する複数の薄板ガラス基板」という事項は、願書に添付した明細書の【0103】に「従って、高い表面品質かつ高精度の板厚を有し、角部を有する複数の薄板ガラス基板114を大量に安定して生産することが可能になる」として記載されており、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「願書に添付した明細書等」という。)に記載した事項の範囲内のものであると認められるから、上記訂正は、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項の規定に適合する。 また、上記訂正が、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは明らかであるから、特許法120条の5第9項で準用する同法126条6項の規定に適合する。 (イ)「前記研磨することでは、取り代をDとしたときに、・・・前記2つの主表面を研磨し」に係る訂正について 訂正事項1のうち、「前記研磨することでは、取り代をDとしたときに、20μm≦D<150μmを満たすように段階的に、前記研削された円盤状ガラス素板の前記2つの主表面を研磨し」に係る訂正は、本件訂正前に記載されていた「研削された前記円盤状ガラス素板の前記2つの主表面を両面研磨装置で研磨すること」について、「取り代をDとしたときに、20μm≦D<150μmを満たすように段階的に」という限定を付加するものであるから、当該訂正の目的は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる特許請求の範囲の減縮に該当する。 そして、「取り代をDとしたときに、20μm≦D<150μmを満たすように段階的に」という事項は、本件訂正前の請求項9に「前記研磨することでは、取り代をDとしたときに、20μm≦D<150μmを満たすように段階的に、前記研削された円盤状ガラス素板の前記2つの主表面を研磨し」として記載されており、願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内のものであると認められるから、上記訂正は、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項の規定に適合する。 また、上記訂正が、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは明らかであるから、特許法120条の5第9項で準用する同法126条6項の規定に適合する。 (ウ)「これによって、板厚が100~350μm・・・屈折率が1.60以上である円盤状ガラス基板を作製する」に係る訂正について 訂正事項1のうち、「これによって、板厚が100~350μm、かつ、直径が70~210mm、かつ、2つの主表面の平行度が0.05~0.95μmの範囲内かつ2つの主表面の二乗平均平方根粗さRqが0.4nm以下である屈折率が1.60以上である円盤状ガラス基板を作製する」に係る訂正は、本件訂正前に記載されていた「円盤状ガラス基板」について、板厚、直径、平行度、二乗平均平方根粗さR及び屈折率の各数値を限定して付加するものであるから、当該訂正の目的は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる特許請求の範囲の減縮に該当する。 そして、当該訂正のうちの板厚については、本件訂正前の請求項2に「前記研磨することでは、・・・板厚が100~350μmの円盤状ガラス基板を作製する」ことが記載されている。 また、当該訂正のうちの直径については、本件訂正前の請求項3に「前記研磨することでは・・・直径が70~210mmの円盤状ガラス基板を作製する」ことが記載されている。 また、当該訂正のうちの平行度については、本件訂正前の請求項5に「前記研磨することでは・・・平行度が1.0μm未満の円盤状ガラス基板を作製する」ことが記載され、さらに、願書に添付した明細書の【0024】に「2つの主表面101a,101bの平行度は、例えば、1.0[μm]未満であり、好ましくは0.95[μm]以下であり、より好ましくは0.5[μm]以下である。2つの主表面101a,101bの平行度は、0.05[μm]以上であってもよい。」として記載されている。 また、当該訂正のうちの二乗平均平方根粗さについては、本件訂正前の請求項4に「前記研磨することでは・・・二乗平均平方根粗さRqが0.4nm以下の円盤状ガラス基板を作製する」ことが記載されている。 また、当該訂正のうちの屈折率については、願書に添付した明細書の【0018】に「・・・円盤状ガラス基板100の屈折率は、好ましくは、1.60以上である」として記載されており、いずれも、願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内のものであると認められるから、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項の規定に適合する。 そして、上記訂正が、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは明らかであるから、特許法120条の5第9項で準用する同法126条6項の規定に適合する。 イ 訂正事項2~5について 訂正事項2~5に係る訂正は、本件訂正前の請求項2~5を削除するものであるから、その訂正の目的は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる特許請求の範囲の減縮に該当する。 そして、訂正事項2~5に係る訂正が、願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であることや、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは明らかであるから、当該各訂正は、いずれも、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項及び6項の規定に適合する。 ウ 訂正事項6について (ア)「平行度が0.05~0.5μm」に係る訂正について 訂正事項6のうち、「平行度が0.05~0.5μm」に係る訂正は、本件訂正前の請求項6に記載されていた「平行度が0.05~0.95μm」という数値範囲の上限値を「0.5μm」に限定するものであるから、当該訂正の目的は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる特許請求の範囲の減縮に該当する。 そして、平行度の数値範囲の上限値が「0.5μm」であることは、願書に添付した明細書の【0024】に「2つの主表面101a,101bの平行度は、・・・より好ましくは0.5[μm]以下である」として記載されており、願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内のものであると認められるから、上記訂正は、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項の規定に適合する。 また、上記訂正が、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは明らかであるから、特許法120条の5第9項で準用する同法126条6項の規定に適合する。 (イ)「請求項1に記載の円盤状ガラス基板の製造方法」に係る訂正について 訂正事項6のうち、「請求項1に記載の円盤状ガラス基板の製造方法」に係る訂正は、本件訂正前の請求項6が請求項5を引用していたところ、訂正事項5に係る訂正において、本件訂正前の請求項5が削除されたことに伴って、本件訂正前の請求項5が引用していた請求項のうち請求項1のみを引用するように訂正するものであるから、その訂正の目的は、特許法120条の5第2項ただし書3号に掲げる明瞭でない記載の釈明に該当する。 そして、訂正事項6に係る訂正が、願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であることや、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないこと(訂正事項6に係る訂正により、本件訂正前の請求項1を引用する本件訂正前の請求項5を更に引用する請求項6に係る発明を、本件訂正後の請求項1を直接引用する請求項6に係る発明とされたところ、本件訂正前の請求項5に係る事項(平行度が1.0μm未満)は、本件訂正後の請求項1に特定されている。)は明らかであるから、当該訂正は、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項及び6項の規定に適合する。 エ 訂正事項7について (ア)「角部を有する・・・研磨することとを含み」に係る訂正について 訂正事項7のうち、「角部を有する複数の薄板ガラス基板を切り出すための円盤状ガラス基板の製造方法であって、円形の2つの主表面を有するガラス素板である円盤状ガラス素板を準備することと、前記円盤状ガラス素板の前記2つの主表面の各々の外縁部を面取りすることと、面取りされた前記円盤状ガラス素板の前記2つの主表面を両面研削装置で研削することと、研削された前記円盤状ガラス素板の前記2つの主表面を両面研磨装置で研磨することとを含み」に係る訂正は、本件訂正前の請求項7が請求項1を引用していたところ、本件訂正前の請求項1の「1つ又は複数の薄板ガラス基板・・・研磨することとを含み」という事項の「1つ又は」という選択肢を削除し、さらに、「角部を有する」という限定を付加するものであるから、当該訂正の目的は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる特許請求の範囲の減縮に該当する。 そして、当該訂正が、願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であることや、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは、訂正事項1について説示するとおり(上記ア(ア))であるから、当該訂正は、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項及び6項の規定に適合する。 (イ)「とともに、板厚が100~350μmで・・・屈折率が1.60以上の円盤状ガラス基板を得る」に係る訂正について 訂正事項7のうち、「とともに、板厚が100~350μmで、2つの主表面の平行度が0.05~0.95μmの範囲内かつ2つの主表面の二乗平均平方根粗さRqが0.4nm以下である屈折率が1.60以上の円盤状ガラス基板を得る」に係る訂正は、本件訂正前の請求項7に記載されていた「円盤状ガラス基板」について、板厚、平行度、二乗平均平方根粗さRq及び屈折率の各数値を限定して付加するものであるから、当該訂正の目的は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる特許請求の範囲の減縮に該当する。 また、当該訂正のうちの板厚、平行度、二乗平均平方根粗さ及び屈折率について、いずれも、願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内のものであることや、当該訂正が、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは、訂正事項1について説示するとおり(上記ア(ウ))であるから、当該訂正は、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項及び6項の規定に適合する。 (ウ)「特徴とする円盤状ガラス基板の製造方法」に係る訂正について 訂正事項7のうち、「特徴とする円盤状ガラス基板の製造方法」に係る訂正は、本件訂正前の請求項7が、請求項1から6のいずれか1項を引用する記載であったところ、他の請求項の記載を引用しないように訂正するものであるから、当該訂正の目的は、特許法120条の5第2項ただし書4号に掲げる他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることに該当する。 そして、当該訂正が、願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であることや、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは明らかであるから、当該訂正は、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項及び6項の規定に適合する。 オ 訂正事項8について 訂正事項8は、「請求項1、6、7のいずれか1項に記載の円盤状ガラス基板の製造方法」と訂正する事項であり、本件訂正前の請求項8が請求項1から7のいずれか1項を引用していたところ、訂正事項2~5に係る訂正において、本件訂正前の請求項2~5が削除されたことに伴って、請求項2~5を引用しないものにするから、その訂正の目的は、特許法120条の5第2項ただし書3号に掲げる明瞭でない記載の釈明に該当する。 そして、訂正事項8に係る訂正が、願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であることや、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは明らかであるから、当該訂正は、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項及び6項の規定に適合する。 カ 訂正事項9について 訂正事項9に係る訂正は、本件訂正前の請求項9を削除するものであるから、その訂正の目的は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる特許請求の範囲の減縮に該当する。 そして、訂正事項9に係る訂正が、願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であることや、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは明らかであるから、当該訂正は、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項及び6項の規定に適合する。 キ 訂正事項10について (ア)「角部を有する・・・両面研磨装置で研磨することとを含み、」に係る訂正について 訂正事項10のうち、「角部を有する複数の薄板ガラス基板を切り出すための円盤状ガラス基板の製造方法であって、円形の2つの主表面を有するガラス素板である円盤状ガラス素板を準備することと、前記円盤状ガラス素板の前記2つの主表面の各々の外縁部を面取りすることと、面取りされた前記円盤状ガラス素板の前記2つの主表面を両面研削装置で研削することと、研削された前記円盤状ガラス素板の前記2つの主表面を両面研磨装置で研磨することとを含み、」に係る訂正は、本件訂正前の請求項10が請求項1を引用していたところ、本件訂正前の請求項1の「1つ又は複数の薄板ガラス基板・・・両面研磨装置で研磨することとを含む」という事項の「1つ又は」という選択肢を削除し、さらに、「角部を有する」という限定を付加するものであるから、当該訂正の目的は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる特許請求の範囲の減縮に該当する。 そして、当該訂正が、願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であることや、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは、訂正事項1について説示するとおり(上記ア(ア))であるから、当該訂正は、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項及び6項の規定に適合する。 (イ)「これにより、板厚が100~350μmで・・・屈折率が1.60以上の円盤状ガラス基板を得る」に係る訂正について 訂正事項10のうち、「これにより、板厚が100~350μmで、2つの主表面の平行度が0.05~0.95μmの範囲内かつ2つの主表面の二乗平均平方根粗さRqが0.4nm以下である屈折率が1.60以上の円盤状ガラス基板を得る」に係る訂正は、本件訂正前の請求項10が請求項1を引用していたところ、本件訂正前の請求項1の「円盤状ガラス基板」について、板厚、平行度、二乗平均平方根粗さRq及び屈折率の各数値を限定して付加するものであるから、当該訂正の目的は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる特許請求の範囲の減縮に該当する。 また、当該訂正のうちの板厚、平行度、二乗平均平方根粗さ及び屈折率について、いずれも、願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内のものであることや、当該訂正が、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは、訂正事項1について説示するとおり(上記ア(ウ))であるから、当該訂正は、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項及び6項の規定に適合する。 (ウ)「特徴とする円盤状ガラス基板の製造方法」に係る訂正について 訂正事項10のうち、「特徴とする円盤状ガラス基板の製造方法」に係る訂正は、本件訂正前の請求項10が、請求項1から9のいずれか1項を引用する記載であったところ、他の請求項の記載を引用しないように訂正するものであるから、当該訂正の目的は、特許法120条の5第2項ただし書4号に掲げる他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることに該当する。 そして、当該訂正が、願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であることや、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは明らかであるから、当該訂正は、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項及び6項の規定に適合する。 2 一群の請求項11~13に係る訂正 (1)訂正の内容 ア 訂正事項11 特許請求の範囲の請求項11に 「円形の2つの主表面を有するガラス板である円盤状ガラス素板を準備することと、 前記円盤状ガラス素板の前記2つの主表面の各々の外縁部を面取りすることと、 面取りされた前記円盤状ガラス素板の前記2つの主表面を両面研削装置で研削することと、 研削された前記2つの主表面を両面研磨装置で研磨することと、 前記研磨することによって得られる円盤状ガラス基板から、複数の薄板ガラス基板を切り出すこととを含む ことを特徴とする薄板ガラス基板の製造方法。」 と記載されているのを 「屈折率が1.60以上である高屈折ガラスの塊からスライスされた円形の2つの主表面を有するガラス板である円盤状ガラス素板を準備することと、 前記円盤状ガラス素板の前記2つの主表面の各々の外縁部を面取りすることと、 面取りされた前記円盤状ガラス素板の前記2つの主表面を両面研削装置で取り代が120~400μmで研削することと、 研削された前記2つの主表面を両面研磨装置で研磨することと、 前記研磨することによって得られる板厚が100~350μmで、2つの主表面の平行度が0.05~0.95μmの範囲内かつ2つの主表面の二乗平均平方根粗さRqが0.4nm以下である円盤状ガラス基板から、角部を有する複数の薄板ガラス基板を切り出すこととを含む ことを特徴とする薄板ガラス基板の製造方法。」 に訂正する。 (請求項11を引用する請求項12も同様に訂正する。) イ 訂正事項12 特許請求の範囲の請求項13を削除する。 なお、本件訂正前の請求項11~13について、請求項12~13は、請求項11を直接的または間接的に引用しているものであって、訂正事項11によって記載が訂正される請求項11に連動して訂正されるものである。したがって、本件訂正前の請求項11~13は、特許法120条の5第4項に規定する一群の請求項であり、訂正事項11~12は、この一群の請求項について請求されたものである。 (2)訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否 ア 訂正事項11について (ア)「屈折率が1.60以上である高屈折ガラスの塊からスライスされた」に係る訂正について 訂正事項11のうち、「屈折率が1.60以上である高屈折ガラスの塊からスライスされた」に係る訂正は、本件訂正前の請求項11に記載されていた「円形の2つの主表面を有するガラス板である円盤状ガラス素板」について、「屈折率が1.60以上である高屈折ガラスの塊からスライスされた」という限定を付加するものであるから、当該訂正の目的は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる特許請求の範囲の減縮に該当する。 そして、「屈折率が1.60以上である高屈折ガラスの塊からスライスされた円形の2つの主表面を有するガラス板である円盤状ガラス素板を準備すること」という事項について、願書に添付した明細書の【0018】には「円盤状ガラス基板100の屈折率は、好ましくは、1.60以上である」として記載され、【0044】に「詳細には例えば、円盤状ガラス素板107aは、高屈折ガラスにより形成された角柱状のガラスの塊から円柱状のガラスを切り出した後に円盤状にスライスすることによって製造されてもよい」として記載されており、これらを総合すると、上記の事項は、願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内のものであると認められるから、上記の訂正は、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項の規定に適合する。 また、上記訂正が、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは明らかであるから、特許法120条の5第9項で準用する同法126条6項の規定に適合する。 (イ)「取り代が120~400μmで研削する」に係る訂正について 訂正事項11のうち、「取り代が120~400μmで研削する」に係る訂正は、本件訂正前の請求項11に記載されていた「2つの主表面を両面研削装置で研削すること」について、「2つの主表面を両面研削装置で取り代が120~400μmで研削すること」と限定するものであるから、当該訂正の目的は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる特許請求の範囲の減縮に該当する。 そして、「2つの主表面を両面研削装置で取り代が120~400μmで研削すること」という事項について、願書に添付した明細書の【0060】には「研削工程(ステップS3)による取り代は、例えば、120[μm]~400[μm]程度である」として記載され、【0061】には「研削工程(ステップS3)では、例えば、面取りされた円盤状ガラス素板107bの2つの主表面101e,101fが図7に示す両面研削装置108を用いて同時に研削が行われる」として記載されており、これらを総合すると、上記の事項は、願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内のものであると認められるから、上記の訂正は、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項の規定に適合する。 また、上記訂正が、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは明らかであるから、特許法120条の5第9項で準用する同法126条6項の規定に適合する。 (ウ)「板厚が100~350μmで・・・Rqが0.4nm以下である円盤状ガラス基板」に係る訂正について 訂正事項11のうち、「板厚が100~350μmで、2つの主表面の平行度が0.05~0.95μmの範囲内かつ2つの主表面の二乗平均平方根粗さRqが0.4nm以下である円盤状ガラス基板」に係る訂正は、本件訂正前の請求項11に記載されていた「円盤状ガラス基板」について、板厚、平行度及び二乗平均平方根粗さRqの各数値を限定して付加するものであるから、当該訂正の目的は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる特許請求の範囲の減縮に該当する。 また、当該訂正のうちの板厚、平行度及び二乗平均平方根粗さについて、いずれも、願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内のものであることや、当該訂正が、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは、訂正事項1について説示するとおり(上記1(2)ア(ウ))であるから、当該訂正は、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項及び6項の規定に適合する。 (エ)「角部を有する複数の薄板ガラス基板」に係る訂正について 訂正事項11のうち、「角部を有する複数の薄板ガラス基板」に係る訂正は、本件訂正前の請求項11に記載されていた「複数の薄板ガラス基板」に「角部を有する」という限定を付加するものであるから、当該訂正の目的は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる特許請求の範囲の減縮に該当する。 また、当該訂正が、願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内のものであることや、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは、訂正事項1について説示するとおり(上記1(2)ア(ア))であるから、当該訂正は、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項及び6項の規定に適合する。 イ 訂正事項12について 訂正事項12に係る訂正は、本件訂正前の請求項13を削除するものであるから、その訂正の目的は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる特許請求の範囲の減縮に該当する。 そして、訂正事項12に係る訂正が、願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であることや、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは明らかであるから、当該訂正は、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項及び6項の規定に適合する。 3 一群の請求項14~15に係る訂正 (1)訂正の内容 訂正事項13 特許請求の範囲の請求項14に 「円形の2つの主表面を有するガラス板である円盤状ガラス素板を準備することと、 前記円盤状ガラス素板の前記2つの主表面の各々の外縁部を面取りすることと、 面取りされた前記円盤状ガラス素板の前記2つの主表面を両面研削装置で研削することと、 研削された前記2つの主表面を両面研磨装置で研磨することと、 前記研磨することによって得られる円盤状ガラス基板から、複数の薄板ガラス基板を切り出すこととを含む ことを特徴とする導光板の製造方法。」 と記載されているのを 「屈折率が1.60以上である高屈折ガラスにより成形されたガラスの塊からスライスすることによって製造された円形の2つの主表面を有するガラス板である円盤状ガラス素板を準備することと、 前記円盤状ガラス素板の前記2つの主表面の各々の外縁部を面取りすることと、 面取りされた前記円盤状ガラス素板の前記2つの主表面を両面研削装置で取り代が120~400μmで研削することと、 前記研削された円盤状ガラス素板の前記2つの主表面を両面研磨装置で研磨する第1研磨を施すことと、 前記第1研磨が施された円盤状ガラス素板の前記2つの主表面を前記両面研磨装置で研磨する第2研磨を施すことと、 前記第1研磨と前記第2研磨とでは、前記両面研磨装置に適用される研磨パッドと研磨スラリとの組み合わせが互いに異なり、 前記研磨することによって得られる板厚が100~350μmで、2つの主表面の平行度が0.05~0.95μmの範囲内かつ2つの主表面の二乗平均平方根粗さRqが0.4nm以下であり、屈折率が1.60以上である円盤状ガラス基板から、角部を有する複数の薄板ガラス基板を切り出すこととを含む ことを特徴とする導光板の製造方法。」 に訂正する。 (請求項14を引用する請求項15も同様に訂正する。) なお、訂正事項13について、訂正請求書9ページには「角部を有する」との記載がないが、訂正請求書2ページの「6 請求の趣旨」に基づいて、訂正特許請求の範囲に記載のとおりの上記の訂正を請求するものと認める。 また、本件訂正前の請求項14~15について、請求項15は、請求項14を引用しているものであって、訂正事項13によって記載が訂正される請求項14に連動して訂正されるものである。したがって、本件訂正前の請求項14~15は、特許法120条の5第4項に規定する一群の請求項であり、訂正事項13は、この一群の請求項について請求されたものである。 (2)訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否 訂正事項13について ア 「屈折率が1.60以上である高屈折ガラスにより・・・スライスすることによって製造された」に係る訂正について 訂正事項13のうち、「屈折率が1.60以上である高屈折ガラスにより成形されたガラスの塊からスライスすることによって製造された」に係る訂正は、本件訂正前の請求項14に記載されていた「円形の2つの主表面を有するガラス板である円盤状ガラス素板」について、「屈折率が1.60以上である高屈折ガラスにより成形されたガラスの塊からスライスすることによって製造された」という限定を付加するものであるから、当該訂正の目的は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる特許請求の範囲の減縮に該当する。 また、訂正事項13のうち、「屈折率が1.60以上である高屈折ガラスにより成形されたガラスの塊からスライスすることによって製造された円形の2つの主表面を有するガラス板である円盤状ガラス素板」という事項が、願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内のものであることや、当該事項に係る訂正が、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは、訂正事項11(請求項11)について説示するとおり(上記2(2)ア(ア))であるから、当該訂正は、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項及び6項の規定に適合する。 イ 「取り代が120~400μmで研削する」に係る訂正について 訂正事項13のうち、「取り代が120~400μmで研削する」に係る訂正は、本件訂正前の請求項14に記載されていた「2つの主表面を両面研削装置で研削すること」について、「2つの主表面を両面研削装置で取り代が120~400μmで研削すること」と限定するものであるから、当該訂正の目的は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる特許請求の範囲の減縮に該当する。 そして、当該訂正が、願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であることや、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは、訂正事項11について説示するとおり(上記2(2)ア(イ))であるから、当該訂正は、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項及び6項の規定に適合する。 ウ 「前記研削された円盤状ガラス素板の前記2つの主表面を両面研磨装置で研磨する・・・組み合わせが互いに異なり、」に係る訂正について 訂正事項13のうち、「前記研削された円盤状ガラス素板の前記2つの主表面を両面研磨装置で研磨する第1研磨を施すことと、前記第1研磨が施された円盤状ガラス素板の前記2つの主表面を前記両面研磨装置で研磨する第2研磨を施すことと、前記第1研磨と前記第2研磨とでは、前記両面研磨装置に適用される研磨パッドと研磨スラリとの組み合わせが互いに異なり、」に係る訂正は、本件訂正前の請求項14に記載されていた「研削された前記2つの主表面」について、「前記研削された円盤状ガラス素板の前記2つの主表面」と限定し、さらに、「両面研磨装置で研磨すること」について、「両面研磨装置で研磨する第1研磨を施すことと、前記第1研磨が施された円盤状ガラス素板の前記2つの主表面を前記両面研磨装置で研磨する第2研磨を施すことと、前記第1研磨と前記第2研磨とでは、前記両面研磨装置に適用される研磨パッドと研磨スラリとの組み合わせが互いに異なり」という限定を付加するものであるから、当該訂正の目的は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる特許請求の範囲の減縮に該当する。 そして、当該訂正に係る事項について、願書に添付した明細書の【0073】には「研磨工程(ステップS4)では、例えば、研削された円盤状ガラス素板の2つの主表面に対して両面研磨装置を用いて同時に研磨が行われる」として記載され、【0077】には「本実施の形態に係る研磨工程(ステップS4)は、図3に示すように、第1研磨工程(ステップS41)と第2研磨工程(ステップS42)とを含む」として記載され、【0083】には「なお、第2研磨工程(ステップS42)では、研磨スラリに含まれる遊離砥粒の種類及び粒子サイズ、研磨パッドの少なくとも1つが、第1研磨工程(ステップS41)と異なっていればよい」として記載されており、これらを総合すると、上記の事項は、願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内のものであると認められるから、上記訂正は、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項の規定に適合する。 また、上記訂正が、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは明らかであるから、特許法120条の5第9項で準用する同法126条6項の規定に適合する。 エ 「板厚が100~350μmで・・・屈折率が1.60以上である円盤状ガラス基板」に係る訂正について 訂正事項13のうち、「板厚が100~350μmで、2つの主表面の平行度が0.05~0.95μmの範囲内かつ2つの主表面の二乗平均平方根粗さRqが0.4nm以下であり、屈折率が1.60以上である円盤状ガラス基板」に係る訂正は、本件訂正前の請求項14に記載されていた「円盤状ガラス基板」について、板厚、平行度、二乗平均平方根粗さRq及び屈折率の各数値を限定して付加するものであるから、当該訂正の目的は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる特許請求の範囲の減縮に該当する。 また、当該訂正のうちの板厚、平行度、二乗平均平方根粗さ及び屈折率について、いずれも、願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内のものであることや、当該訂正が、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは、訂正事項1について説示するとおり(上記1(2)ア(ウ))であるから、当該訂正は、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項及び6項の規定に適合する。 オ 「角部を有する複数の薄板ガラス基板」に係る訂正について 訂正事項13のうち、「角部を有する複数の薄板ガラス基板」に係る訂正は、本件訂正前の請求項14に記載されていた「複数の薄板ガラス基板」に「角部を有する」という限定を付加するものであるから、当該訂正の目的は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる特許請求の範囲の減縮に該当する。 また、当該訂正が、願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内のものであることや、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは、訂正事項1について説示するとおり(上記1(2)ア(ア))であるから、当該訂正は、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項及び6項の規定に適合する。 4 一群の請求項16~19に係る訂正 (1)訂正の内容 ア 訂正事項14 特許請求の範囲の請求項16に 「1つ又は複数の薄板ガラス基板を切り出すための円盤状ガラス基板であって、 円形の2つの主表面と、 外周端面と、 前記2つの主表面の各々と前記外周端面との間を傾斜して接続する面取り面とを備え、 前記2つの主表面の間の距離が100~350μmであり、 前記2つの主表面の平行度が1.0μm未満である ことを特徴とする円盤状ガラス基板。」 と記載されているのを 「角部を有する複数の薄板ガラス基板を切り出すための円盤状ガラス基板であって、 二乗平均平方根粗さRqが0.4nm以下となる円形の2つの主表面と、 外周端面と、 前記2つの主表面の各々と前記外周端面との間を側方から見て傾斜した曲線で接続する面取り面とを備え、 前記2つの主表面の間の距離が100~350μmであり、 直径が70~210mmでかつ、前記2つの主表面の平行度が0.05~0.95μmの範囲内であり、屈折率が1.60以上である ことを特徴とする円盤状ガラス基板。」 に訂正する。 (請求項16を引用する請求項17~19も同様に訂正する。) イ 訂正事項15 特許請求の範囲の請求項17に 「屈折率が1.60以上であり、かつ、平行度が0.5μm以下である ことを特徴とする請求項16に記載の円盤状ガラス基板。」 と記載されているのを 「平行度が0.05~0.5μmの範囲内である ことを特徴とする請求項16に記載の円盤状ガラス基板。」 に訂正する。 (請求項17を引用する請求項18~19も同様に訂正する。) なお、本件訂正前の請求項16~19について、請求項17~19は、請求項16を直接的または間接的に引用しているものであって、訂正事項14によって記載が訂正される請求項16に連動して訂正されるものである。したがって、本件訂正前の請求項16~19は、特許法120条の5第4項に規定する一群の請求項であり、訂正事項14~15は、この一群の請求項について請求されたものである。 (2)訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否 ア 訂正事項14について (ア)「角部を有する複数の薄板ガラス基板」に係る訂正について 訂正事項14のうち、「角部を有する複数の薄板ガラス基板」に係る訂正は、本件訂正前の請求項16に記載されていた「1つ又は複数の薄板ガラス基板」という事項の「1つ又は」という選択肢を削除し、さらに、「角部を有する」という限定を付加するものであるから、当該訂正の目的は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる特許請求の範囲の減縮に該当する。 また、当該訂正が、願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内のものであることや、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは、訂正事項1について説示するとおり(上記1(2)ア(ア))であるから、当該訂正は、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項及び6項の規定に適合する。 (イ)「二乗平均平方根粗さRqが0.4nm以下となる円形の2つの主表面」に係る訂正について 訂正事項14のうち、「二乗平均平方根粗さRqが0.4nm以下となる円形の2つの主表面」に係る訂正は、本件訂正前の請求項16に記載されていた「円形の2つの主表面」に二乗平均平方根粗さRqの数値を限定して付加するものであるから、当該訂正の目的は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる特許請求の範囲の減縮に該当する。 また、「二乗平均平方根粗さRqが0.4nm以下となる円形の2つの主表面」という事項は、本件訂正前の請求項4に「前記研磨することでは、前記研削された円盤状ガラス素板の2つの主表面を研磨することによって、二乗平均平方根粗さRqが0.4nm以下の円盤状ガラス基板を作製する」として記載されており、願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内のものであると認められるから、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項の規定に適合する。 そして、上記訂正が、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは明らかであるから、特許法120条の5第9項で準用する同法126条6項の規定に適合する。 (ウ)「側方から見て傾斜した曲線で接続する面取り面」に係る訂正について 訂正事項14のうち、「側方から見て傾斜した曲線で接続する面取り面」に係る訂正は、本件訂正前の請求項16に記載されていた「傾斜して接続する面取り面」について、「側方から見て」という限定や、「曲線で」という限定を付加するものであるから、当該訂正の目的は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる特許請求の範囲の減縮に該当する。 また、「側方から見て傾斜した曲線で接続する面取り面」という事項について、願書に添付した明細書の【0029】に「面取り面103a,103bは、側方から見て曲線をなしてもよい」として記載されており、上記の事項は、願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内のものであると認められるから、上記の訂正は、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項の規定に適合する。 そして、上記訂正が、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは明らかであるから、特許法120条の5第9項で準用する同法126条6項の規定に適合する。 (エ)「直径が70~210mmで・・・屈折率が1.60以上である」に係る訂正について 訂正事項14のうち、「直径が70~210mmでかつ、前記2つの主表面の平行度が0.05~0.95μmの範囲内であり、屈折率が1.60以上である」に係る訂正は、本件訂正前の請求項16に記載されていた「円盤状ガラス基板」について、直径、平行度及び屈折率の各数値を限定して付加するものであるから、当該訂正の目的は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる特許請求の範囲の減縮に該当する。 また、当該訂正のうちの直径、平行度及び屈折率について、いずれも、願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内のものであることや、当該訂正が、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは、訂正事項1について説示するとおり(上記1(2)ア(ウ))であるから、当該訂正は、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項及び6項の規定に適合する。 イ 訂正事項15について 訂正事項15に係る訂正は、本件訂正前の請求項17に記載されていた「屈折率が1.60以上であり、かつ、平行度が0.5μm以下である」ことについて、訂正事項14において、「屈折率が1.60以上である」ことが請求項16に記載されるように訂正されたことに伴って、重複する屈折率の記載を削除し、さらに、平行度の数値範囲を「0.05~0.5μmの範囲内」に限定するものであるから、当該訂正の目的は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる特許請求の範囲の減縮、及び同条同項ただし書3号に掲げる明瞭でない記載の釈明に該当する。 また、当該訂正のうちの平行度について、願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内のものであることや、当該訂正が、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは、訂正事項6(請求項6)について説示するとおり(上記1(2)ウ(ア))であるから、当該訂正は、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項及び6項の規定に適合する。 5 小括 上記のとおり、訂正事項1~15に係る訂正は、特許法120条の5第2項ただし書1号、3号及び4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条9項で準用する同法126条5項及び6項の規定に適合する。 したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、本件訂正後の請求項〔1~10〕、〔11~13〕、〔14~15〕、〔16~19〕について訂正することを認める。 第3 本件訂正後の本件特許発明 本件訂正後の請求項1~19に係る発明(以下、各請求項に係る発明を「本件発明1」などといい、それらをまとめて「本件特許発明」という。)は、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~19に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 「【請求項1】 角部を有する複数の薄板ガラス基板を切り出すための円盤状ガラス基板の製造方法であって、 円形の2つの主表面を有するガラス素板である円盤状ガラス素板を準備することと、 前記円盤状ガラス素板の前記2つの主表面の各々の外縁部を面取りすることと、 面取りされた前記円盤状ガラス素板の前記2つの主表面を両面研削装置で研削することと、 研削された前記円盤状ガラス素板の前記2つの主表面を両面研磨装置で研磨することとを含み、 前記研磨することでは、取り代をDとしたときに、20μm≦D<150μmを満たすように段階的に、前記研削された円盤状ガラス素板の前記2つの主表面を研磨し、これによって、板厚が100~350μm、かつ、直径が70~210mm、かつ、2つの主表面の平行度が0.05~0.95μmの範囲内かつ2つの主表面の二乗平均平方根粗さRqが0.4nm以下である屈折率が1.60以上である円盤状ガラス基板を作製する ことを特徴とする円盤状ガラス基板の製造方法。 【請求項2】(削除) 【請求項3】(削除) 【請求項4】(削除) 【請求項5】(削除) 【請求項6】 前記研磨することでは、前記研削された円盤状ガラス素板の2つの主表面を研磨することによって、平行度が0.05~0.5μmの範囲内の円盤状ガラス基板を作製する ことを特徴とする請求項1に記載の円盤状ガラス基板の製造方法。 【請求項7】 角部を有する複数の薄板ガラス基板を切り出すための円盤状ガラス基板の製造方法であって、 円形の2つの主表面を有するガラス素板である円盤状ガラス素板を準備することと、 前記円盤状ガラス素板の前記2つの主表面の各々の外縁部を面取りすることと、 面取りされた前記円盤状ガラス素板の前記2つの主表面を両面研削装置で研削することと、 研削された前記円盤状ガラス素板の前記2つの主表面を両面研磨装置で研磨することとを含み、 前記面取りされた円盤状ガラス素板の外周端面及び面取り面以外の板厚をt1ミリメートル、 前記面取りされた円盤状ガラス素板の外周端面の板厚をt2ミリメートル、 前記研磨することによって作製される円盤状ガラス基板の外周端面及び面取り面以外の板厚をt3ミリメートル、としたとき、 t1×0.15<t2<t1×0.4と、t3×0.5<t2とを満たすとともに、板厚が100~350μmで、2つの主表面の平行度が0.05~0.95μmの範囲内かつ2つの主表面の二乗平均平方根粗さRqが0.4nm以下である屈折率が1.60以上の円盤状ガラス基板を得る ことを特徴とする円盤状ガラス基板の製造方法。 【請求項8】 前記面取りすることでは、機械的処理又は化学的処理を用いて前記外縁部を面取りすることによって面取り面を形成し、 前記研削すること及び前記研磨することでは、前記面取り面の少なくとも一部が残存する範囲の取り代で、前記円盤状ガラス素板の前記2つの主表面が研削されて研磨される ことを特徴とする請求項1、6、7のいずれか1項に記載の円盤状ガラス基板の製造方法。 【請求項9】(削除) 【請求項10】 角部を有する複数の薄板ガラス基板を切り出すための円盤状ガラス基板の製造方法であって、 円形の2つの主表面を有するガラス素板である円盤状ガラス素板を準備することと、 前記円盤状ガラス素板の前記2つの主表面の各々の外縁部を面取りすることと、 面取りされた前記円盤状ガラス素板の前記2つの主表面を両面研削装置で研削することと、 研削された前記円盤状ガラス素板の前記2つの主表面を両面研磨装置で研磨することとを含み、 前記研磨することは、 前記研削された円盤状ガラス素板の前記2つの主表面を前記両面研磨装置で研磨する第1研磨を施すことと、 前記第1研磨が施された円盤状ガラス素板の前記2つの主表面を前記両面研磨装置で研磨する第2研磨を施すこととを含み、 前記第1研磨と前記第2研磨とでは、前記両面研磨装置に適用される研磨パッドと研磨スラリとの組み合わせが互いに異なり、 これにより、板厚が100~350μmで、2つの主表面の平行度が0.05~0.95μmの範囲内かつ2つの主表面の二乗平均平方根粗さRqが0.4nm以下である屈折率が1.60以上の円盤状ガラス基板を得る ことを特徴とする円盤状ガラス基板の製造方法。 【請求項11】 屈折率が1.60以上である高屈折ガラスの塊からスライスされた円形の2つの主表面を有するガラス板である円盤状ガラス素板を準備することと、 前記円盤状ガラス素板の前記2つの主表面の各々の外縁部を面取りすることと、 面取りされた前記円盤状ガラス素板の前記2つの主表面を両面研削装置で取り代が120~400μmで研削することと、 研削された前記2つの主表面を両面研磨装置で研磨することと、 前記研磨することによって得られる板厚が100~350μmで、2つの主表面の平行度が0.05~0.95μmの範囲内かつ2つの主表面の二乗平均平方根粗さRqが0.4nm以下である円盤状ガラス基板から、角部を有する複数の薄板ガラス基板を切り出すこととを含む ことを特徴とする薄板ガラス基板の製造方法。 【請求項12】 前記複数の薄板ガラス基板を切り出すことでは、矩形の薄板ガラス基板が切り出される ことを特徴とする請求項11に記載の薄板ガラス基板の製造方法。 【請求項13】(削除) 【請求項14】 屈折率が1.60以上である高屈折ガラスにより成形されたガラスの塊からスライスすることによって製造された円形の2つの主表面を有するガラス板である円盤状ガラス素板を準備することと、 前記円盤状ガラス素板の前記2つの主表面の各々の外縁部を面取りすることと、 面取りされた前記円盤状ガラス素板の前記2つの主表面を両面研削装置で取り代が120~400μmで研削することと、 前記研削された円盤状ガラス素板の前記2つの主表面を両面研磨装置で研磨する第1研磨を施すことと、 前記第1研磨が施された円盤状ガラス素板の前記2つの主表面を前記両面研磨装置で研磨する第2研磨を施すことと、 前記第1研磨と前記第2研磨とでは、前記両面研磨装置に適用される研磨パッドと研磨スラリとの組み合わせが互いに異なり、 前記研磨することによって得られる板厚が100~350μmで、2つの主表面の平行度が0.05~0.95μmの範囲内かつ2つの主表面の二乗平均平方根粗さRqが0.4nm以下であり、屈折率が1.60以上である円盤状ガラス基板から、角部を有する複数の薄板ガラス基板を切り出すこととを含む ことを特徴とする導光板の製造方法。 【請求項15】 前記切り出された薄板ガラス基板を積層することをさらに含む ことを特徴とする請求項14に記載の導光板の製造方法。 【請求項16】 角部を有する複数の薄板ガラス基板を切り出すための円盤状ガラス基板であって、 二乗平均平方根粗さRqが0.4nm以下となる円形の2つの主表面と、 外周端面と、 前記2つの主表面の各々と前記外周端面との間を側方から見て傾斜した曲線で接続する面取り面とを備え、 前記2つの主表面の間の距離が100~350μmであり、 直径が70~210mmでかつ、前記2つの主表面の平行度が0.05~0.95μmの範囲内であり、屈折率が1.60以上である ことを特徴とする円盤状ガラス基板。 【請求項17】 平行度が0.05~0.5μmの範囲内である ことを特徴とする請求項16に記載の円盤状ガラス基板。 【請求項18】 前記複数の薄板ガラス基板の各々は、導光板である ことを特徴とする請求項16又は17に記載の円盤状ガラス基板。 【請求項19】 前記複数の薄板ガラス基板の各々は、積層して用いられる導光板である ことを特徴とする請求項16から18のいずれか1項に記載の円盤状ガラス基板。」 第4 取消理由の概要 令和4年9月1日の訂正請求により訂正された請求項16~19(以下「先の請求項16~19」という。)に係る特許に対して、当審が令和5年3月2日付けで特許権者に通知した取消理由(決定の予告、以下、当審が通知した取消理由を「先の決定予告」という。)の概要は、次のとおりである(先の決定予告の第5の4(1)及び9~12)。 理由(拡大先願) 先の請求項16~19に係る発明は、その出願の日前の外国語特許出願(優先日2017年2月24日)であって、その出願後に国際公開がされた外国語特許出願であるPCT/US2018/019421号(特願2019-545991号、国際公開第2018/156894号、特表2020-511383号公報(甲第1号証))の国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面に記載された発明と実質的に同一である。 よって、先の請求項16~19に係る特許は、特許法29条の2の規定(同法184条の13参照)に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。 特許法29条の2について提示した、周知技術を示す文献 引用文献 3:特開2016-131178号公報(甲第3号証) 引用文献 4:特開2006-35413号公報(甲第4号証) 引用文献 5:特開2017-161807号公報(甲第5号証) 引用文献 6:特許第6184577号公報(甲第6号証) 引用文献10:特開2017-32673号公報(甲第10号証) 引用文献12:特開平10-340056号公報 (令和4年6月30日付け取消理由通知(決定の予告)で提示した文献) 引用文献13:特開2015-99238号公報 (令和4年6月30日付け取消理由通知(決定の予告)で提示した文献) 引用文献15:特開2017-27850号公報 (令和4年10月4日提出の申立人の意見書に添付された参考資料2) 引用文献16:特開2008-266046号公報 (令和4年10月4日提出の申立人の意見書に添付された参考資料3) 引用文献17:特開平7-140450号公報 (令和4年10月4日提出の申立人の意見書に添付された参考資料4) 第5 先の決定予告についての当審の判断 1 先願1明細書等及び各引用文献の記載事項並びに先願1発明 (1)先願1明細書等について ア 先願1明細書等の記載事項 本件特許発明に係る出願の日(平成29年(2017年)12月27日)前の2017年2月24日を優先日とする外国語特許出願であって、その出願後に国際公開がされたPCT/US2018/019421号(特願2019-545991号、以下、当該国際出願を「先願1」といい、先願1の国際公開(国際公開第2018/156894号)を「先願1公報」という。)の国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面(以下「先願1明細書等」という。)には、以下の記載がある(なお、括弧内に、当審の日本語翻訳文として、先願1公報に対応する特表2020-511383号公報(甲第1号証、以下「甲1」という。)の記載を付記する。また、下線は理解を容易にするために当審で付したものである。第5欄における下線については、以下同様。)。 「[0003]As components of visual display devices get more and more complex, such as, for example as virtual reality displays (VRD) light guides・・・the substrates must be exceedingly thin to meet the production tolerances of the devices being produced.」 (【0003】 例えば、バーチャルリアリティディスプレイ(VRD)などの視覚ディスプレイデバイス・・・デバイスに用いられるライトガイドは、通常、高屈折率ガラスで作られる。・・・このようなライトガイドの表面は、きわめて平行でなければならず、全厚さ変動(TTV)、反り、及び湾曲などのパラメータについての許容度が非常に厳しい。・・・基板表面の平坦性要件は、非常に高くなる。・・・ガラス基板が高度の平坦性を有するという要件に加えて、・・・基板は非常に薄くなければならない。) 「[0004]Even though the demands for glass flatness and thinness are becoming more and more strict, it is more efficient to produce the glass in large wafers and then cut the wafer to the desired size of the substrate.・・・」 (【0004】 ガラスの平坦性と薄さに対する要求はますます厳しくなっているが、大きいウエハでガラスを製造し、その後ウエハを基板の所望のサイズで切断することが、より効率的である。・・・) 「[0008]・・・A total thickness variation (TTV) of the glass wafer is less than 1 μm, a bow of the glass wafer is less than or equal to ± 15 μm, and a warp of the glass wafer is less than or equal to 30 μm.」 (【0008】 ・・・ガラスウエハの全厚さ変動(TTV)は1μm未満であり、ガラスウエハの湾曲は±15μm以下であり、ガラスウエハの反りは30μm以下である。) 「[0019]・・・Therefore, the edge of the glass wafer may be chamfered, which can lead to damage.」 (【0016】 ・・・したがって、ガラスウエハのエッジは面取りされるが、それによって損傷を生じる可能性がある。) 「[0024]・・・In some embodiments, the glass wafer 100 has a refractive index from greater than or equal to・・・or equal to 1.75, or from greater than or equal to 1.65 to less than or equal to 1.70.」 (【0021】 ・・・幾つかの実施形態では、ガラスウエハ100は、・・・1.60以上1.90以下、・・・などの屈折率を有する。・・・さらに他の実施形態では、ガラスウエハは、・・・1.60以上1.75以下、又は1.65以上1.70以下などの屈折率を有する。) 「[0025]The glass wafer 100, such as, for example, a silica glass wafer・・・not drawn to scale and is thinner than depicted in FIGS 1 A and IB.」 (【0022】 例えばシリカガラスウエハなどのガラスウエハ100は、第1の主面110と、該第1の主面110に対して実質的に平衡(当審注:「平行」の誤記と認める。)であり、かつそれと反対側にある第2の主面120とを有する。ガラスウエハ100の最外径で(すなわち、周囲に沿って)露出しているのは、第1の主面110と第2の主面120との間に接触して配置された側壁140である。第1の主面110と第2の主面120は一緒に、ガラスウエハ100の厚さtを画成する。本明細書で用いられる場合、ガラスウエハ100の厚さtは、第1の主面110及び第2の主面120に対してほぼ垂直に測定された第1の主面110と第2の主面120との間の平均距離を指す。図1A及び1Bは、実施形態によるガラスウエハ100のさまざまな要素を説明するために用いられる例示的な概略図であり、縮尺通りには描かれていないことが理解されるべきである。特に、図1A及び1Bに示されるガラスウエハ100の厚さtは、縮尺通りに描かれておらず、図1A及び1Bに示されたものよりも薄い。) 「[0026]With reference now to FIG. 2,・・・toward the geometrical center of the glass wafer 100.」 (【0023】 次に、図2を参照すると、例えばシリカガラスウエハなどのガラスウエハ100は、ガスウエハのエッジ部分130の第1の位置131から、ガラスウエハ100の幾何学中心を通ってガラスウエハのエッジ部分130の第2の位置132へと直線状に延びる直径dを有する。ガラスウエハ100の直径dは、ガラスウエハ100の周囲に沿った第1の位置131及び第2の位置132の位置にかかわらず、実質的に一定である。・・・ガラスウエハ100の直径dは、ガラスウエハ100の露出したエッジ表面からガラスウエハ100の幾何学中心に向かって延びる環状エッジ部分130を含む。) 「[0027]As mentioned above, and with reference to FIGS. 1A, IB, and 2,・・・that can be divided in the sizes that are desired.」 (【0024】 上述のように、図1A、1B、及び2を参照すると、例えばシリカガラスウエハなどのガラスウエハ100は、ガラスウエハのエッジの第1の点131からガラスウエハ100の幾何学中心を通ってガラスウエハのエッジの第2の点132への直線上に延びる直径dを有する。本明細書に開示及び記載された実施形態によるガラスウエハ100は、当技術分野で通常説明されるガラスウエハと比較して、シリカガラスウエハを、大きい直径のウエハを必要としうる複数の用途で使用できるようになり、また、所望のサイズに分割できる、大きいウエハでのシリカの効率的な形成も提供できるようになる。) 「[0028]・・・ In other embodiments, the diameter d of the glass wafer 100 is ・・・from greater than or equal to 175 mm to less than or equal to 210 mm, or from greater than or equal to 175 mm to less than or equal to 200 mm.・・・」 (【0025】 ・・・他の実施形態では、ガラスウエハ100の直径dは、・・・175mm以上210mm以下、・・・などである。・・・」 「[0032]・・・In some embodiments, the thickness t of the glass wafer 100 may be from greater than or equal to 0.225 mm to less than or equal to 0.325 mm,・・・」 (【0029】 ・・・幾つかの実施形態では、ガラスウエハ100の厚さtは、0.225mm以上0.325mm以下・・・などでありうる。・・・) 「[0034]・・・In other embodiments, the glass wafer 100 has a TTV of less than or equal to 4 μm, such as less than or equal to 3 μm, less than or equal to 2 μm, or less than or equal to 1 μm.・・・」 (【0031】 ・・・他の実施形態では、ガラスウエハ100は、例えば3μm以下、2μm以下、又は1μm以下など、4μm以下のTTVを有する。・・・) 「[0039]・・・In some embodiments, at least one of the first major surface 110 and the second major surface 120 may have a surface roughness (Ra) of less than or equal to about 1.5 nm, less than or equal to about 1.0 nm, or less than or equal to 0.5 nm.」 (【0038】 ・・・幾つかの実施形態では、第1の主面110及び第2の主面120の少なくとも一方は、約1.5nm以下、約1.0nm以下、又は0.5nm以下の表面粗さ(Ra)を有しうる。」 「[0043]The quality of the clear aperture is provided,・・・not receive the same finishing treatment as the first major surface 110 and the second major surface.」 (【0042】 クリアアパーチャの品質は、一部には、研磨、研削、及び他の表面処理など、さまざまな仕上げプロセスによってもたらされる。図1A及び1Bを参照すると、1つ以上の実施形態では、リングホルダは、例えばシリカガラスウエハなどのガラスウエハの周囲に配置され、それによって、例えばシリカガラスウエハなどのガラスウエハ100の側壁140に接触する。リングホルダは、例えば研磨などのさまざまな仕上げプロセス中にガラスウエハを固定する。しかしながら、幾つかの実施形態によれば、仕上げプロセスは、ガラスウエハの表面全体には行われない。例えば、1つ以上の実施形態において、図2を参照すると、仕上げプロセスは、ガラスウエハ100のエッジ部分130には行われない。幾つかの実施形態では、エッジ部分130の少なくとも一部は、ガラスウエハの表面が主面110、120の1つ以上から側壁140まで角度が付けられている、面取り部を含みうる。面取り部の角度は特に限定されず、幾つかの実施形態では、隣接する主面の平面から測定して15°から約75°の角度でありうる。エッジ部分のこの面取りされた部分は、ガラスウエハ100の厚さt全体には及ばない側壁140を生じる。1つ以上の実施形態では、側壁140は、ウエハ厚さtの55%~65%など、ウエハ厚さtの50%~70%を含む。したがって、一例として、0.2mmの厚さを有するウエハでは、側壁は0.1mm~0.14mmでありうる。エッジ部分130の面取り部分は、湾曲、反り、及びTTの測定には含まれないことが理解されるべきである。加えて、ガラスウエハの面取り部分は、第1の主面110又は第2の主面120と同じ平面上にはないことから、ガラスウエハの面取り部分は、第1の主面110及び第2の主面と同じ仕上げ処理を受けないことが理解されるべきである。) 「【図1A】 [図:0001407781000001.jpg] 」 「【図1B】 [図:0001407781000002.jpg] 」 「【図2】 [図:0001407781000003.jpg] 」 イ 先願1明細書等の記載の整理 先願1明細書等の記載から、以下の技術的事項を認めることができる(なお、括弧内に甲1の記載箇所を付記する。)。 (ア)先願1明細書等には、バーチャルリアリティディスプレイ(VRD)などに用いられるライトガイド(【0003】)等の用途のガラス基板が記載されており、当該ガラス基板を製造するにあたり、直径を有するガラスウエハ100(【0023】)から、所望のサイズの複数の薄いガラス基板を切断すること(【0004】)について記載されていると認められる。 (イ)ガラスウエハ100の第1の主面110及び第2の主面120の表面粗さ(Ra)は、0.5nm以下であること(【0038】)が記載されていると認められる。 (ウ)「エッジ部分130の少なくとも一部は、ガラスウエハの表面が主面110、120の1つ以上から側壁140まで角度が付けられている、面取り部を含みうる。」(【0042】)という記載から、先願1明細書等には、ガラスウエハ100は、側壁140を備え、第1の主面110及び第2の主面120と側壁140との間を角度を付けて接続する面取り部を備えることが記載されていると認められる。 (エ)ガラスウエハ100の厚さtは、225μm以上325μm以下であること(【0029】)が記載されていると認められる。 (オ)ガラスウエハ100の全厚さ変動(TTV、【0008】)は、1μm以下であること(【0031】)が記載されていると認められる。 (カ)ガラスウエハ100の屈折率は、1.60以上であること(【0021】)が記載されていると認められる。 (キ)ガラスウエハ100は直径を有する(上記ア)ことから、円盤状であることは、当業者にとって自明であるところ、その直径dは、175mm以上210mm以下であること(【0025】)が記載されていると認められる。 ウ 先願1の発明16 上記アの記載事項及び上記イの技術的事項からみて、先願1明細書等には、本件発明16に対応する以下の発明(以下「先願1の発明16」という。)が記載されていると認められる。 「バーチャルリアリティディスプレイ(VRD)などに用いられるライトガイド等の用途の所望のサイズの複数の薄いガラス基板を切断するための円盤状のガラスウエハ100であって、 表面粗さ(Ra)が0.5nm以下である円形の第1の主面110及び第2の主面120と、 側壁140と、 第1の主面110及び第2の主面120と側壁140との間を角度を付けて接続する面取り部とを備え、 厚さ(t)が225μm以上325μm以下であり、 直径(d)が175mm以上210mm以下でかつ、第1の主面110及び第2の主面120の全厚さ変動(TTV)が1μm以下であり、屈折率が1.60以上である円盤状のガラスウエハ100。」 (2)引用文献4について ア 引用文献4の記載事項 引用文献4には、以下の記載がある。 「【0001】 本発明は、ガラス基板の研磨方法およびガラス基板に関し、特に半導体製造工程のEUV(Extreme Ultra Violet)リソグラフィに使用される反射型マスク用等のガラス基板の研磨方法およびガラス基板に関するものである。」 「【0034】 次いで、予備研磨した60枚の試料基材を20枚づつの3グループに分けて最終研磨を実施した。すなわち、第一グループは従来の平均一次粒子径を有するコロイダルシリカと水とを含有する研磨スラリーを用いた。・・・」 【0038】の【表2】 「 [図:0001407781000004.jpg] 」 イ 引用文献4記載の技術的事項 上記【表2】には、第一グループの表面粗さRmsにおいて、基板No.1~20の表面粗さRmsは、0.117nm(基板12)~0.139nm(基板2)であることが記載されているから、引用文献4には、「ガラス基板の表面を研磨することで、その表面粗さRmsを0.117~0.139nmとすること」(以下「引用文献4記載の技術的事項」という。)が記載されているといえる。 (3)引用文献5について ア 引用文献5の記載事項 引用文献5には、以下の記載がある。 「【0034】 本発明の基板の製造方法は、ガラス基板の主表面を研磨する場合に好適である。本発明のように高平坦度で且つ欠陥を低減させたガラス基板の主表面に仕上げる場合には、研磨液が異なる複数段階の研磨工程でガラス基板の両面研磨を行うことにより、性状の異なる研磨液を用いて、段階的に(徐々に)ガラス基板の主表面を所望する表面形状精度や品質に作り込むことが好適である。 「【0070】 また、このマスクブランク用基板における転写パターンが形成される側の主表面の表面粗さは、二乗平均平方根粗さ(RMS:root mean square、Rq)で0.25nm以下であることが好ましく・・・」 イ 引用文献5記載の技術的事項 引用文献5には、「ガラス基板の表面を研磨することで、その表面粗さを二乗平均平方根粗さ(RMS)で0.25nm以下とすること」(以下「引用文献5記載の技術的事項」という。)が記載されているといえる。 (4)引用文献6について ア 引用文献6の記載事項 引用文献6には、以下の記載がある。 「【0021】 以下、本発明の磁気ディスク用ガラス基板の製造方法及び研磨パッドについて詳細に説明する。・・・ガラス基板の主表面の研磨により、・・・研磨前の0.6nm以下の二乗平均平方根粗さRqを0.06nm以下に低減することができる。・・・」 イ 引用文献6記載の技術的事項 引用文献6には、「ガラス基板の表面を研磨することで、その表面粗さを二乗平均平方根粗さRqで0.06nm以下にとすること」(以下「引用文献6記載の技術的事項」という。)が記載されているといえる。 (5)引用文献10について ア 引用文献10の記載事項 引用文献10には、以下の記載がある。 「【0064】 図1は、本発明の積層導光板の一例を示す概念斜視図である。積層導光板1は、8枚のガラス板10を図示しない接着剤により積層一体化された構造を有している。・・・」 図1 「 [図:0001407781000005.jpg] 」 イ 引用文献10記載の技術的事項 上記図1には、ガラス板10を8枚積層することで積層導光板1を構成することが図示されているから、引用文献10には、「ガラス板を積層することで導光板を構成すること」(以下「引用文献10記載の技術的事項」という。)が記載されているといえる。 (6)引用文献12について ア 引用文献12の記載事項 引用文献12には、以下の記載がある。 「【0001】・・・本発明は、液晶パネルなどを照明するバックライトを使用するヘッドマウント型表示装置に関するものである。」 「【0009】・・・プラスチック又はガラスなどから成る導光板20L、20Rが配置されている。・・・」 図2 「 [図:0001407781000006.jpg] 」 図3 「 [図:0001407781000007.jpg] 」 イ 引用文献12記載の技術的事項 上記図2、図3には、導光板20L、20Rが角部を有するように図示されているから、引用文献12には、「ヘッドマウント型表示装置に用いられる導光板が角部を有すること」(以下「引用文献12記載の技術的事項」という。)が記載されているといえる。 (7)引用文献13について ア 引用文献13の記載事項 引用文献13には、以下の記載がある。 「【0023】 ・・・図2は、本実施形態に係るヘッドマウントディスプレイの内部構造及び導光板の一例を模式的に示す要部断面図である。・・・」 「【0026】 導光板200は、第1の導光板101と第2の導光板201から構成されている。第1の導光板101及び第2の導光板201の全体的な外観は、図中YX面に平行に延びる平板状の部材によって形成されている。第1の導光板101及び第2の導光板201は、ガラスあるいは光透過性の樹脂材料等により形成された板状の部材である。」 図1 「 [図:0001407781000008.jpg] 」 イ 引用文献13記載の技術的事項 上記図1には、導光板200が角部を有するように図示されているから、引用文献13には、「ヘッドマウントディスプレイに用いられる導光板が角部を有すること」(以下「引用文献13記載の技術的事項」という。)が記載されているといえる。 (8)引用文献15について ア 引用文献15の記載事項 引用文献15には、以下の記載がある。 「【0036】 ・・・ガラス板1の対向側端辺部10は、一方の主面7と端面17との間に面取り面18を有すると共に、他方の主面8と端面17との間にも面取り面19を有する・・・」 「【0060】 図12に示す対向側端辺部10は、平面からなる端面17と主面7、8との間にそれぞれR面取り面18a、19aが形成されている。・・・」 図4 「 [図:0001407781000009.jpg] 」 図12 「 [図:0001407781000010.jpg] 」 イ 引用文献15記載の技術的事項 上記図4には、面取り面18、19が直線状に図示され、上記図12には、面取り面18a、19aが曲線状に図示されているから、引用文献15には、「ガラス板の表面と側面との間に面取り面を設ける際に、側方から見て直線状とすること及び曲線状とすること」(以下「引用文献15記載の技術的事項」という。)が記載されているといえる。 (9)引用文献16について ア 引用文献16の記載事項 引用文献16には、以下の記載がある。 「【0020】 図2は、本発明のフラットパネルディスプレイ用ガラス基板を示す断面概略図である。フラットパネルディスプレイ用ガラス基板1の表裏面2と端面3が交差する端縁に面取り面5が形成されている。」 「【0022】 図4(a)は、本発明のフラットパネルディスプレイ用ガラス基板の応用例を示す断面概略図であり、フラットパネルディスプレイ用ガラス基板1の表裏面2と端面3が交差する端縁に面取り面5が形成されており、面取り面5は凸状の曲面になっている。・・・」 図2 「 [図:0001407781000011.jpg] 」 図4(a) 「 [図:0001407781000012.jpg] 」 イ 引用文献16記載の技術的事項 上記図2には、面取り面5が直線状に図示され、上記図4(a)には、面取り面5が曲線状に図示されているから、引用文献16には、「ガラス板の表面と側面との間に面取り面を設ける際に、側方から見て直線状とすること及び曲線状とすること」(以下「引用文献16記載の技術的事項」という。)が記載されているといえる。 (10)引用文献17について ア 引用文献17の記載事項 引用文献17には、以下の記載がある。 「【0011】 【実施例】・・・図1及び図2に示すように・・・ガラス基板1は・・・上面及び下面に含まれる8つの端縁Pがそれぞれ面取りされる。・・・」 「【0020】図4に示すように、ガラス基板1は、線分Aから線分Bに延びる端縁P側に凸な曲面に面取りされている。・・・」 図2 「 [図:0001407781000013.jpg] 」 図4 「 [図:0001407781000014.jpg] 」 イ 引用文献17記載の技術的事項 上記図2には、面取りが直線状に図示され、上記図4には、面取りが曲線状に図示されているから、引用文献17は、「ガラス板の表面と側面との間に面取り面を設ける際に、側方から見て直線状とすること及び曲線状とすること」(以下「引用文献17記載の技術的事項」という。)が記載されているといえる。 2 本件発明16について (1)本件発明16と先願1の発明16との対比 ア 本件発明16は、上記第3において示したとおりのものであり、本件発明16と先願1の発明16を対比すると、先願1の発明16の「バーチャルリアリティディスプレイ(VRD)などに用いられるライトガイド等の用途の所望のサイズの複数の薄いガラス基板を切断する」ことと、本件発明16の「角部を有する複数の薄板ガラス基板を切り出す」こととは、「複数の薄板ガラス基板を切り出す」ことという点で一致する。 イ 先願1の発明16の「円盤状のガラスウエハ100」は、本件発明16の「円盤状ガラス基板」に相当する。 ウ 先願1の発明16において「表面粗さ(Ra)が0.5nm以下」であることと、本件発明16において「二乗平均平方根粗さRqが0.4nm以下」であることを対比すると、「粗さが所定値以下」という点で一致する。 エ 先願1の発明16の「円形の第1の主面110及び第2の主面120」は、本件発明16の「円形の2つの主表面」に相当し、同様に、「側壁140」は、「外周端面」に相当する。 オ 先願1の発明16の「第1の主面110及び第2の主面120と側壁140との間を角度を付けて接続する面取り部」と、本件発明16の「前記2つの主表面の各々と前記外周端面との間を側方から見て傾斜した曲線で接続する面取り面」を対比すると、「前記2つの主表面の各々と前記外周端面との間を接続する面取り面」という点で一致する。 カ 先願1の発明16における「厚さ(t)」は、第1の主面110と第2の主面120の距離を意味するから、先願1の発明16において「厚さ(t)が225μm以上325μm以下」であることは、本件発明16において「前記2つの主表面の間の距離が100~350μm」であることに相当する。 キ 先願1の発明16において「直径(d)が175mm以上210mm以下」であることは、本件発明16において「直径が70~210mm」であることに相当する。 ク 本件発明16における「平行度」は、いわゆるTTV(Total Thickness Variation)を意味する(本件特許の明細書【0025】)から、先願1の発明16において「第1の主面110及び第2の主面120の全厚さ変動(TTV)が1μm以下」であることと、本件発明16において「前記2つの主表面の平行度が0.05~0.95μmの範囲内」であることを対比すると、「前記2つの主表面の平行度が所定範囲内」という点で一致する。 ケ 先願1の発明16の「屈折率が1.60以上」は、本件発明16の「屈折率が1.60以上」に相当する。 コ 以上から、本件発明16と先願1の発明16は、以下の一致点で一致し、以下の相違点1~4で一応相違する。 [一致点] 「複数の薄板ガラス基板を切り出すための円盤状ガラス基板であって、 粗さが所定値以下となる円形の2つの主表面と、 外周端面と、 前記2つの主表面の各々と前記外周端面との間を接続する面取り面とを備え、 前記2つの主表面の間の距離が100~350μmであり、 直径が70~210mmでかつ、前記2つの主表面の平行度が所定範囲内であり、屈折率が1.60以上である 円盤状ガラス基板。」 [相違点1] 薄板ガラス基板が、本件発明16では、「角部を有する」ものであるのに対して、先願1の発明16では、角部を有するか不明な点。 [相違点2] 主表面の粗さが所定値以下であることについて、本件発明16では、「二乗平均平方根粗さRqが0.4nm以下」であるのに対して、先願1の発明16では、「表面粗さ(Ra)が0.5nm以下」である点。 [相違点3] 面取り面について、本件発明16では、「前記2つの主表面の各々と前記外周端面との間を側方から見て傾斜した曲線で接続する」ものであるのに対して、先願1の発明16では、「第1の主面110及び第2の主面120と側壁140との間を角度を付けて接続する」ものである点。 [相違点4] 主表面の平行度が所定範囲内であることについて、本件発明16では、「0.05~0.95μmの範囲内」であるのに対して、先願1の発明16では、「1μm以下」である点。 (2)相違点の判断 ア 相違点1について (ア)先願1の発明16のガラスウエハ100は、所望のサイズの複数の薄いガラス基板を切断するためのものであるところ、先願1明細書等には「ウエハを基板の所望のサイズで切断する」(甲1の【0004】)との記載や、「指定された値は、ガラスウエハの所望の最終用途によって決定され、さまざまな実施形態で異なりうる。」(甲1の【0039】)との記載があるから、切り出す薄板ガラス基板の形状は、最終用途に依存するものと解される。 (イ)そして、先願1の発明16における、バーチャルリアリティディスプレイ(VRD)などに用いられるライトガイド等の用途のガラス基板において、角部を有するものは、引用文献12記載の技術的事項(上記1(6)イ)及び引用文献13記載の技術的事項(上記1(7)イ)に示すように、周知の技術(以下「周知技術1」という。)である。 (ウ)したがって、先願1の発明16において、VRDなどに用いられるライトガイド等の用途のガラス基板について、この用途に応じ、周知技術1のように角部を有する形状のものを切り出し、相違点1の「角部を有する」ガラス基板とすることは、単なる周知技術の付加であって、新たな効果を奏するものとは認められないため、上記相違点1は課題解決のための具体化手段における微差にすぎず、実質的なものではない。 イ 相違点2について (ア)先願1の発明16は、表面粗さ(Ra)を0.5nm以下とするものであるが、表面粗さの数値の下限値が規定されていないことを考慮すると、数値をできる限り小さくすることが示唆されているといえる。 また、先願1の発明16の表面粗さが「Ra」(算術平均表面粗さ)であるのに対して、本件発明16の表面粗さは「二乗平均平方根粗さRq」であるが、一般に、二乗平均平方根粗さは、平均面からの距離の標準偏差(ばらつき)に相当するものであり、仮に、表面粗さが正規分布する場合であれば、Rq=1.25Raとなることが知られている。 (イ)上記(ア)のとおり、先願1の発明16は、表面粗さRaの数値の上限を0.5nmとし、数値をできる限り小さくすることが示唆されているといえるから、例えば、表面粗さが正規分布する場合に、Raを0.32nm以下とすることで、二乗平均平方根粗さRqを0.4nm以下とすることは、課題解決のための具体化手段における微差に過ぎず、上記相違点2は実質的なものではない。 (ウ)また、円盤状ガラス基板において、ガラス素板の主表面を研磨することによって、作製するガラス基板(の主表面の粗さ)を、二乗平均平方根粗さRqが0.4nm以下とすることは、引用文献4記載の技術的事項(上記1(2)イ)、引用文献5記載の技術的事項(上記1(3)イ)及び引用文献6記載の技術的事項(上記1(4)イ)に示すように、周知の技術(以下「周知技術2」という。)である。 (なお、引用文献4記載の技術的事項の「Rms」や引用文献5記載の技術的事項の「RMS」は、2013年の改正前のJIS B 0601:1994で規定されていた二乗平均平方根粗さを意味することは明らかであり、本件発明16の二乗平均平方根粗さRqと同義である。) (エ)そうすると、相違点2に係る本件発明16の発明特定事項は、周知技術2にすぎず、また、先願1の発明16の粗さを該周知技術2のような粗さとなるように構成することで新たな効果を奏するものとも認められないため、上記相違点2は課題解決のための具体化手段における微差にすぎず、実質的なものではない。 ウ 相違点3について (ア)本件発明16の面取り面は、側方から見て傾斜した曲線のものであるのに対して、先願1の発明16の面取り面(面取り部)は、角度の付いたものであることから、側方から見て直線状のものであると解される。 (イ)しかし、ガラス板の表面と側面との間に面取り面を設ける際に、側方から見て直線状とすること及び曲線状とすることは、いずれも、引用文献15記載の技術的事項(上記1(8)イ)、引用文献16記載の技術的事項(上記1(9)イ)及び引用文献17記載の技術的事項(上記1(10)イ)に示すように、周知の技術(以下「周知技術3」という。)である。 (ウ)先願1の発明16の面取り面は、側方から見て直線状のものであるが、面取り面を直線状とすること及び曲線状とすることは、いずれも、周知技術3にすぎないから、先願1の発明16の面取り面を、周知の直線状のものから、同じく周知の曲線状のものとすることは、課題解決のための具体化手段における微差にすぎず、上記相違点3は実質的なものではない。 エ 相違点4について 相違点4に係る主表面の平行度の数値範囲は、作製する円盤状ガラス基板として達成する品質ないし精度についてのものであり、先願1の発明16では、平行度が1μm以下という上限値のみにより数値範囲を規定していることから、数値をできる限り小さくすることで、より高品質かつ高精度とすることが示唆されているといえる。 そして、より高品質かつ高精度を要する数値範囲の一部に該当する、本件発明16における0.05~0.95μmという数値範囲との差は課題解決のための具体化手段における微差程度のものにすぎず、上記相違点4は実質的なものではない。 (3)特許権者の主張について ア 特許権者の主張の概要 令和5年5月1日に提出された意見書において、特許権者は、主に以下の点を主張している。 主張1:本件発明16は、面取り面が「側方から見て傾斜した曲線で接続する」もので、かつ大きさとして「直径が70~210mm」のものであるが、先願1の発明16及び周知技術を示す文献にはそのような記載はない。 主張2:引用文献15~17はいずれも、本件発明16の「円盤状ガラス基板」を切り出した後の「角部を有する複数の薄板ガラス基板」の面取り面の形状について記載しているだけであって、「円盤状ガラス基板」それ自体の大きさや面取り面の形状については何ら記載も開示も示唆もない。 主張3:引用文献15~17における課題は、「角部を有する複数の薄板ガラス基板」の欠けや破損を防止できる面取り面を形成することであるのに対して、本件特許発明の課題は、サイズが大きな薄い円盤状ガラス基板から「角部を有する複数の薄板ガラス基板」を切り出すときに、高い表面品質かつ高精度の板厚を有する「角部を有する複数の薄板ガラス基板」を大量に安定して生産することにある。 また、先願1の発明16における課題は、大きい直径、高いアスペクト比、小さい湾曲、小さい反り、および小さいTTV(全厚変動)を有するガラスウエハを提供することであり(先願1明細書等の[0005]、甲1の【0005】)、先願1明細書等は、大きいウエハでガラスを製造し、その後ウエハを基板の所望のサイズに切断することを記載している(先願1明細書等の[0004]、甲1の【0004】)が、切断する際に円盤状ガラス基板が破損する課題についての問題意識がないから、引用文献15~17及び先願1の発明16と本件特許発明とは、課題が異なる。 主張4:先願1の発明16では、大きいウエハを基板の所望のサイズに切断する際に起こりえる円盤状ガラス基板が破損する課題についての問題意識がないから、先願1の発明16には、ガラスウエハの面取り部の直線状の形状を、あえて引用文献15~17のような曲線状に変更する動機付けがなく、先願1の発明16の面取り面を、直線状のものから曲線状のものへ変更することは、課題解決のための具体化手段における微差ではない。 主張5:引用文献15~17は、「角部を有する複数の薄板ガラス基板」の面取り面の曲線状の形状を、先願1明細書等の「円盤状ガラス基板」の面取り面の形状として適用することや使用することを開示も示唆もしていない。 主張6:本件発明16は、面取り面を備えることにより、薄板ガラス基板を切り出す際に円盤状ガラス基板が破損する可能性が低くなり、面取り面がない場合よりも高い歩留まりで薄板ガラス基板を切り出すことができるという作用効果を奏する(本件特許明細書の【0032】)。 主張7:先願1の発明16及び周知技術は、少なくとも、直径が70~210mmで、2つの主表面の間の距離が100~350μmで、円盤状ガラス基板に側方から見て傾斜した曲線で接続する面取り面を設けること、の有機的な結合を何ら記載も示唆もしていないから、本件発明16は、先願1明細書等に記載された発明と同一ではない。 イ 特許権者の主張の検討 (ア)主張3及び6について 特許権者は、引用文献15~17及び先願1の発明16と本件特許発明とは、課題が異なること(主張3)や、本件発明16は、面取り面を備えることにより、薄板ガラス基板を切り出す際に円盤状ガラス基板が破損する可能性が低くなる作用効果(主張6)を主張している。 しかし、先願1の発明16は、本件発明16と同様の大きさの円盤状ガラス基板であり、当該ガラス基板から所望のサイズの複数の薄いガラス基板を切断することが予定されており、しかも、面取り面を備えるから、薄板ガラス基板を切り出す際に円盤状ガラス基板が破損する課題について、先願1明細書等に明示的な記載がないとしても、先願1の発明16は、本件発明16と同様に、薄板ガラス基板を切り出す際に円盤状ガラス基板が破損する可能性が低くなる作用効果を奏すると認めるほかない。 したがって、主張3及び6に係る主張は採用できない。 (イ)主張2及び5について また、特許権者は、面取り面が曲線状であることについて、引用文献15~17はいずれも、「角部を有する複数の薄板ガラス基板」の面取り面であり(主張2)、「円盤状ガラス基板」の面取り面の形状として適用することや使用することを開示も示唆もしていないこと(主張5)を主張している。 しかし、面取り面を形成する対象物の形状が角部を有する形状(多角形状)又は円盤状であることと、面取り面の形状として、直線状又は曲線状のものを選択することは、相互に干渉するものではなく、ガラス基板の形状が多角形状である場合に、面取り面の形状を直線状又は曲線状のものを選択できるのと同様に、ガラス基板の形状が円盤状である場合にも、面取り面の形状を直線状又は曲線状のものを選択することができる。 そして、先願1の発明16は、円盤状のガラス基板に、直線状の面取り面が存在するところ、周知技術3(面取り面の形状を直線状又は曲線状とすること)を示す文献として引用文献15~17を例示しているから、請求人の主張2及び5の主張は採用できない。 (ウ)主張4について また、請求人は、先願1の発明16では、大きい円盤状ガラス基板を切断する際に円盤状ガラス基板が破損する課題についての問題意識がないから、先願1の発明16には、円盤状ガラス基板の面取り部の直線状の形状を、あえて引用文献15~17のような曲線状に変更する動機付けがないなどと主張している(主張4)が、薄板ガラス基板を切り出す際に円盤状ガラス基板が破損する課題は、円盤状ガラス基板に面取り面を形成することで解決される(面取り面が直線状と曲線状のいずれであっても解決される)のであって、面取り面の形状を曲線状のものに選択することで解決されるわけではない。 これを詳述すると、円盤状ガラス基板に面取り面を形成することで、薄板ガラス基板を切り出す際に円盤状ガラス基板が破損する可能性が低くなることについて、本件特許明細書には、以下の記載がある。 「【0029】 本実施の形態では面取り面103a,103bは、側方から見て直線をなしている(図2参照)。・・・なお、面取り面103a,103bは、側方から見て曲線をなしてもよい。 【0030】 これまで、本実施の形態に係る円盤状ガラス基板100の構成について説明した。 【0031】 本実施の形態に係る円盤状ガラス基板100は、1つ又は複数の薄板ガラス基板を切り出すための中間体である。また、円盤状ガラス基板100は、・・・高い表面品質と高精度の板厚を有する。そのため、高い表面品質かつ高精度の板厚を有する薄板ガラス基板を切り出すことができる。 【0032】 また、円盤状ガラス基板100は、面取り面103a,103bを備える。そのため、薄板ガラス基板を切り出す際に円盤状ガラス基板100が破損する可能性が低くなり、面取り面103a,103bがない場合よりも高い歩留りで薄板ガラス基板を切り出すことができる。 【0033】 さらに、円盤状ガラス基板100は、面取り面103a,103bを備えるだけでなく、円盤状でもあるので、詳細後述するように、高い表面品質と高精度の板厚を有する比較的大型の薄板ガラス基板であっても、安定して高い歩留りで製造することができる。 【0034】 従って、高い表面品質かつ高精度の板厚を有する所望の形状の薄板ガラス基板を大量に安定して生産することが可能になる。」 上記の本件特許明細書の記載を参酌すると、円盤状ガラス基板に面取り面を形成することで、薄板ガラス基板を切り出す際に円盤状ガラス基板が破損する可能性が低くなることについて、特に【0032】に記載されているが、当該記載は「本実施の形態に係る円盤状ガラス基板100」(【0031】)についての記載であることを理解でき、「本実施の形態」の面取り面の形状は直線状(【0029】)であることを理解できるから、結局、【0032】の記載は、直線状の面取り面を設けることで、薄板ガラス基板を切り出す際に円盤状ガラス基板が破損する可能性が低くなることを示す記載であり、【0029】の記載をみても、面取り面の形状として曲線状のものを選択することにより、直線状のものに比して、薄板ガラス基板を切り出す際に円盤状ガラス基板が破損する可能性が低くなることを示すものとはいえない。 したがって、請求人の主張4は採用できない。 (エ)主張1及び7について 主張1及び7は、主張2~6を包括的に説明するものと解されるが、上記ア~ウで説示するとおり、主張2~6は採用することができないから、主張1及び7についても採用できない。 (4)本件発明16についての小括 以上のとおり、相違点1~4は、いずれも実質的な相違点ではないから、本件発明16は、先願1の発明16と実質的に同一であり、本件発明16に係る特許は、特許法29条の2の規定に違反してされたものであって、同法113条2号に該当し、取り消されるべきである。 3 本件発明17について (1)本件発明17と先願1の発明16との対比 本件発明17は、上記第3において示したとおりのものであり、本件発明16を引用する発明であるから、本件発明17と先願1の発明16とは、上記2(1)と同様に対比することができ、上記2(1)の一致点で一致し、相違点1~3で相違するほかに、以下の相違点5で相違する。 [相違点5] 主表面の平行度が所定範囲内であることについて、本件発明17では、「0.05~0.5μmの範囲内」であるのに対して、先願1の発明16では、「1μm以下」である点。 (2)相違点の判断 ア 相違点1~3について 相違点1~3は、本件発明16について説示したとおり(上記2(2)ア~ウ)、いずれも実質的な相違点ではない。 イ 相違点5について 先願1の発明16では、平行度が1μm以下という上限値のみにより数値範囲を規定していることから、数値をできる限り小さくすることで、より高品質かつ高精度とすることが示唆されており、より高品質かつ高精度を要する数値範囲の一部に該当する、本件発明17における0.05~0.5μmという数値範囲との差は課題解決のための具体化手段における微差程度のものにすぎず、上記相違点5は実質的なものではない。 (3)本件発明17についての小括 以上のとおり、相違点1~3及び5は、いずれも実質的な相違点ではないから、本件発明17は、先願1の発明16と実質的に同一であり、本件発明17に係る特許は、特許法29条の2の規定に違反してされたものであって、同法113条2号に該当し、取り消されるべきである。 4 本件発明18について (1)本件発明18と先願1の発明16との対比 本件発明18は、上記第3において示したとおりのものであり、本件発明16又は17を引用する発明であるから、本件発明18と先願1の発明16とは、上記2(1)又は上記3(1)と同様に対比でき、上記2(1)の一致点で一致し、相違点1~5で相違するほかに、以下の相違点6で相違する。 [相違点6] 複数の薄板ガラス基板が、本件発明18では「導光板」であるのに対して、先願1の発明16では「バーチャルリアリティディスプレイ(VRD)などに用いられるライトガイド等の用途」のものである点。 (2)相違点の判断 ア 相違点1~5について 相違点1~5は、本件発明16~17について説示したとおり(上記2(2)ア~エ及び3(2)イ)、いずれも実質的な相違点ではない。 イ 相違点6について 先願1の発明16の「ライトガイド等の用途」の薄板ガラス基板は、「導光板」を意味するといえるから、相違点12は表現上の差異にすぎず、実質的な相違点ではない。 (3)本件発明18についての小括 以上のとおり、相違点1~6は、いずれも実質的な相違点ではないから、本件発明18は、先願1の発明16と実質的に同一であり、本件発明18に係る特許は、特許法29条の2の規定に違反してされたものであって、同法113条2号に該当し、取り消されるべきである。 5 本件発明19について (1)本件発明19と先願1の発明16との対比 本件発明19は、上記第3において示したとおりのものであり、本件発明16~18のいずれか一つを引用する発明であるから、本件発明19と先願1の発明16とは、上記2(1)、上記3(1)及び上記4(1)と同様に対比でき、上記2(1)の一致点で一致し、相違点1~5で相違するほかに、以下の相違点7で相違する。 [相違点7] 複数の薄板ガラス基板が、本件発明19では「積層して用いられる導光板」であるのに対して、先願1の発明16では「バーチャルリアリティディスプレイ(VRD)などに用いられるライトガイド等の用途」のものである点。 (2)相違点の判断 ア 相違点1~5について 相違点1~5は、本件発明16~18について説示したとおり(上記2(2)ア~エ及び3(2)イ)、いずれも実質的な相違点ではない。 イ 相違点7について 先願1の発明16の「ライトガイド等の用途」の薄板ガラス基板は、「導光板」を意味するといえる。 そして、「積層して用いられる導光板」は、引用文献10記載の技術的事項(上記1(5)イ)に示すように、周知の技術(以下「周知技術4」という。)である。 そうすると、相違点7に係る本件発明19の発明特定事項は、周知技術4にすぎないから、上記相違点7は課題解決のための具体化手段における微差にすぎず、実質的なものではない。 (3)本件発明19についての小括 以上のとおり、相違点1~5及び7は、いずれも実質的な相違点ではないから、本件発明19は、先願1の発明16と実質的に同一であり、本件発明19に係る特許は、特許法29条の2の規定に違反してされたものであって、同法113条2号に該当し、取り消されるべきである。 6 先の決定予告についての当審の判断の小括 したがって、本件発明16~19に係る特許は、特許法29条の2の規定に違反してされたものであるから、特許法113条2号に該当し、取り消されるべきものである。 第6 先の決定予告で採用しなかった特許異議申立理由 1 先の決定予告で採用しなかった特許異議申立理由の概要 (1)特許法29条の2(拡大先願)に係る特許異議申立理由 本件訂正前の請求項1~6、8、11~15に係る特許は、その出願の日前の外国語特許出願であって、その出願後に国際公開がされた外国語特許出願であるPCT/US2018/019421号(特願2019-545991号、国際公開第2018/156894号、特表2020-511383号公報(甲1))の国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面に記載された発明と実質的に同一である。 よって、本件訂正前の請求項1~6、8、11~15に係る特許は、特許法29条の2の規定(同法184条の13参照)に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。 なお、申立人は、当該拡大先願に係る特許異議申立理由について、条文を特許法29条の2とし、証拠を甲1(特表2020-511383号公報)として提出しているが、本件特許の出願日より前の日を優先日とする甲1に対応する外国語特許出願は、PCT/US2018/019421号であり、その出願後に国際公開がされたものは、国際公開第2018/156894号であるから、当該特許異議申立理由は、上記(1)のものと善解する。 したがって、拡大先願に係る特許異議申立理由のうち、請求項16~19に対するものは、先の決定予告の理由(上記第4)と同趣旨のものである。 (2)特許法29条2項(進歩性)に係る特許異議申立理由 本件訂正前の請求項1~19に係る発明は、甲第2号証に記載された発明及び甲第2~11号証にて例示される各周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 よって、本件訂正前の請求項1~19に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。 2 申立人が提出した証拠 申立人が提出した証拠は次のとおりである(なお、先の決定予告で引用した文献と同じものは、括弧内に引用文献番号を付記する。)。 (1)異議申立書に添付した証拠 甲第 1号証:特表2020-511383号公報(先願1明細書等の 日本語翻訳文) 甲第 2号証:特開2005-263569号公報 甲第 3号証:特開2016-131178号公報(引用文献3) 甲第 4号証:特開2006- 35413号公報(引用文献4) 甲第 5号証:特開2017-161807号公報(引用文献5) 甲第 6号証:特許第6184577号公報(引用文献6) 甲第 7号証:特開2016- 85426号公報 甲第 8号証:国際公開第2017/038350号 甲第 9号証:特許第5703876号公報 甲第10号証:特開2017- 32673号公報(引用文献10) 甲第11号証:国際公開第2017/172861号 (2)令和4年10月4日提出の意見書に添付した証拠 参考資料 1:特開2008-119801号公報 参考資料 2:特開2017- 27850号公報(引用文献15) 参考資料 3:特開2008-266046号公報(引用文献16) 参考資料 4:特開平7-140450号公報(引用文献17) (3)令和5年6月12日提出の意見書に添付した証拠 参考資料 5:特開2006- 45016号公報 参考資料 6:米国特許出願公開第2011/0298730号明細書 参考資料 7:特開2014-147994号公報 3 拡大先願に係る特許異議申立理由について (1)先願1の発明1 先願1明細書等の記載からみて、先願1明細書等には、本件発明1に対応する以下の発明(以下「先願1の発明1」という。)が記載されていると認められる。 「バーチャルリアリティディスプレイ(VRD)などに用いられるライトガイド等の用途の所望のサイズに複数の薄いガラス基板を切断するための円盤状のガラスウエハ100の製造方法であって、 円形の第1の主面110及び第2の主面120を有する仕上げプロセス前のガラスウエハ100である仕上げプロセス前の円盤状のガラスウエハ100を準備することと、 円盤状のガラスウエハ100の第1の主面110及び第2の主面120の各々のエッジ部分130を面取りすることと、 仕上げプロセス前の円盤状のガラスウエハ100の第1の主面110及び第2の主面120に、仕上げプロセスを行い、仕上げプロセスは、仕上げプロセス前の円盤状のガラスウエハ100の第1の主面110及び第2の主面120を研削することと研磨することとを含み、 これにより、厚さ(t)が225μm以上325μm以下で、かつ、直径(d)が175mm以上210mm以下、かつ、第1の主面110及び第2の主面120の全厚さ変動(TTV)が1μm以下の範囲内かつ表面粗さ(Ra)が0.5nm以下である屈折率が1.60以上の円盤状のガラスウエハ100を得る 円盤状のガラスウエハ100の製造方法。」 (2)本件発明1について ア 本件発明1と先願1の発明1との対比 (ア)本件発明1と先願1の発明1を対比すると、以下の一致点で一致し、以下の本件発明1の相違点1~5で相違する。 [一致点] 「複数の薄板ガラス基板を切り出すための円盤状ガラス基板の製造方法であって、 円形の2つの主表面を有するガラス素板である円盤状ガラス素板を準備することと、 前記円盤状ガラス素板の前記2つの主表面の各々の外縁部を面取りすることと、 面取りされた前記円盤状ガラス素板の前記2つの主表面を研削することと、 研削された前記円盤状ガラス素板の前記2つの主表面を研磨することとを含み、 これによって、板厚が100~350μm、かつ、直径が70~210mm、かつ、2つの主表面の平行度が所定範囲内かつ2つの主表面の二乗平均平方根粗さが所定値以下である屈折率が1.60以上である円盤状ガラス基板を作製する 円盤状ガラス基板の製造方法。」 [本件発明1の相違点1] 薄板ガラス基板が、本件発明1では、「角部を有する」ものであるのに対して、先願1の発明1では、角部を有するか不明な点。 [本件発明1の相違点2] 本件発明1では、「両面研削装置」で研削し、「両面研磨装置」で研磨するのに対して、先願1の発明1では、どのように研削及び研磨するのか不明な点。 [本件発明1の相違点3] 研磨することについて、本件発明1では、「取り代をDとしたときに、20μm≦D<150μmを満たすように段階的に、前記研削された円盤状ガラス素板の前記2つの主表面を研磨」するのに対して、先願1の発明1では、取り代の範囲が不明な点。 [本件発明1の相違点4] 2つの主表面の平行度について、本件発明1は「0.05~0.95μmの範囲内」であるのに対して、先願1の発明1は「1μm以下の範囲内」である点。 [本件発明1の相違点5] 表面粗さについて、本件発明1は「二乗平均平方根粗さRqが0.4nm以下」であるのに対して、先願1の発明1は「表面粗さ(Ra)が0.5nm以下」である点。 (イ)相違点の判断 事案に鑑みて、本件発明1の相違点3について検討すると、先願1明細書等には、ガラスウエハ100の第1の主面110及び第2の主面120を研磨することは示されているが、その取り代(除去される部分の上下方向の長さ)について、具体的な数値までは示されていない。 また、申立人が提出した証拠を参照しても、複数の薄板ガラス基板を切り出すための円盤状ガラス基板、すなわち、板厚が100~350μm程度の薄いガラス基板の製造方法における研磨工程での取り代をDとしたときに、20μm≦D<150μmを満たすように段階的に研磨を行うことが周知の技術的事項であると認めるに足る証拠はない。 すなわち、甲第2号証には、以下の4(1)に示すように、高温ポリシリコンTFT用のガラス基板の製造方法として、1次研磨で40μm研磨し、2次研磨で5μm研磨すること(すなわち、取り代を45μmとすること)が示されている。 しかし、高温ポリシリコンTFT用のガラス基板は、薄板ガラス基板を切り出すためのものではなく、板厚が800μmを超えるものであることから、当該甲第2号証のみを根拠として、板厚が100~350μm程度の薄いガラス基板の製造方法における研磨工程での取り代を20μm~150μmとすることが、周知の技術的事項であると評価することはできない。 したがって、本件発明1における2つの主表面を研磨することについて、取り代をDとしたときに、20μm≦D<150μmを満たすように段階的に行うことは、先願1明細書等に記載された事項とはいえないし、課題解決のための具体化手段における微差ということもできないから、その他の本件発明1の相違点1~2、4~5について検討するまでもなく、本件発明1と先願1の発明1は同一とはいえない。 なお、付言すると、本件発明1の相違点3に係る技術的事項は、本件訂正前の請求項9に記載されており、当該請求項9については、拡大先願に係る特許異議申立理由は申し立てられていない。 (ウ)本件発明1についての小括 以上のとおり、本件発明1と先願1の発明1は同一とはいえないから、拡大先願に係る特許異議申立理由により、本件発明1に係る特許を取り消すことはできない。 (3)本件発明2~5及び13について 本件発明2~5及び13は、訂正により削除されたから、特許異議の申立ての対象が存在しない。 (4)本件発明6及び8について 本件発明6及び8は、本件発明1を引用し、本件発明1の発明特定事項を全て含むから、本件発明1と同様の理由により、拡大先願に係る特許異議申立理由により、本件発明6及び8に係る特許を取り消すことはできない。 (5)本件発明11について ア 本件発明11と先願1の発明1との対比 本件発明11と先願1の発明1を対比すると、少なくとも以下の点で相違する。 [本件発明11の相違点] 本件発明11は「両面研削装置で取り代が120~400μmで」研削するのに対して、先願1の発明1は取り代の範囲が不明な点。 イ 本件発明11の相違点の判断 先願1明細書等には、ガラスウエハ100の第1の主面110及び第2の主面120を研削することは示されているが、その取り代(除去される部分の上下方向の長さ)について、具体的な数値までは示されていない。 また、申立人が提出した証拠を参照しても、ガラス基板の製造方法における研削工程での取り代を120~400μmとすることが周知の技術的事項であると認めるに足る証拠はない。 したがって、本件発明11における2つの主表面を研削することについて、取り代を120~400μmとすることは、先願1明細書等に記載された事項とはいえないし、課題解決のための具体化手段における微差ということもできないから、その他の相違点について検討するまでもなく、本件発明11と先願1の発明1は同一とはいえない。 (ウ)本件発明11についての小括 以上のとおり、本件発明11と先願1の発明1は同一とはいえないから、拡大先願に係る特許異議申立理由により、本件発明11に係る特許を取り消すことはできない。 (6)本件発明12について 本件発明12は、本件発明11を引用し、本件発明11の発明特定事項を全て含むから、本件発明11と同様の理由により、拡大先願に係る特許異議申立理由により、本件発明12に係る特許を取り消すことはできない。 (7)本件発明14について 本件発明14は、本件発明11と同様に、「両面研削装置で取り代が120~400μmで」研削することが特定されているから、本件発明11と同様の理由により、拡大先願に係る特許異議申立理由により、本件発明14に係る特許を取り消すことはできない。 (8)本件発明15について 本件発明15は、本件発明14を引用し、本件発明14の発明特定事項を全て含むから、本件発明14と同様の理由により、拡大先願に係る特許異議申立理由により、本件発明15に係る特許を取り消すことはできない。 (9)拡大先願に係る特許異議申立理由の小括 したがって、拡大先願に係る特許異議申立理由により、請求項1、6、8、11~12及び14~15に係る特許を取り消すことはできない。 また、請求項2~5及び13について、拡大先願に係る特許異議の申立ての対象が存在しない。 4 進歩性に係る特許異議申立理由について (1)甲2発明 甲第2号証(以下「甲2」という。)には、高温ポリシリコンTFT用の円板状の合成石英ガラス基板の製造方法が記載されており、ガラス基板の板厚について、まず、合成石英ガラスのインゴットを1.2mm厚に切断し(【0033】)、この合成石英ガラスの板材を厚み0.99mmになるまで1次ラッピング加工し(【0034】)、さらに、厚み0.91mmになるまで2次ラッピング加工し(【0035】)、次に、両面で40μmを1次研磨し(【0037】)、次に、両面で5μmを2次研磨すること(【0038】)が記載されているから、合成石英ガラス基板の厚みは0.91mmから1次研磨による両面の40μm研磨分と2次研磨による両面の5μm研磨分を差し引いて、最終的に、865μm(=910-40-5)と認められる。 これをふまえて、甲2に記載された事項を整理すると、甲2には、以下の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。なお、括弧内に甲2の用語に対応する本件発明1の用語や、甲2の記載箇所等を付記する。 「高温ポリシリコンTFT用の円板状の合成石英ガラス基板(円盤状ガラス基板:【0028】)の製造方法であって、 円形の2つの基板表面(2つの主表面)を有する合成石英ガラスのインゴットをスライスして形成した円板状の基板(円盤状ガラス素板)を準備すること(【0028】のステップS1)と、 円板状の基板(円盤状ガラス素板)の2つの基板表面(2つの主表面)の各々の円板周縁(外縁部)に面取り加工を施す(を面取りする:【0028】のステップS2)ことと、 面取り加工を施された(面取りされた)円板状の基板(円盤状ガラス素板)の2つの基板表面(2つの主表面)を両面研磨機(両面研削装置)でラッピング工程を行う(研削する:【0028】のステップS3及びS4)ことと、 ラッピング工程が行われた(研削された)円板状の基板(円盤状ガラス素板)の2つの基板表面(2つの主表面)を両面研磨機(両面研磨装置)でポリッシュ工程を行う(研磨する:【0028】のステップS5及びS8)こととを含み、 これにより、厚み(板厚)が865μmの薄い円板状の合成石英ガラス基板(円盤状ガラス基板)を得る 薄い円板状の合成石英ガラス基板(円盤状ガラス基板)の製造方法。」 (2)本件発明1について ア 本件発明1と甲2発明との対比 本件発明1と甲2発明を対比すると、少なくとも以下の点で相違する。 [本件発明1と甲2発明との相違点] ガラス基板について、本件発明1は「板厚が100~350μm」であるのに対して、甲2発明は「865μm」である点。 イ 上記アの相違点の判断 甲2発明におけるガラス基板は、「高温ポリシリコンTFT用」のもの、すなわち、石英ガラスの基板上に成膜、露光、エッチングを繰り返してTFT(Thin Film Transister(薄膜トランジスタ))や配線等を構成するものであり、TFT製造プロセスでの高温環境に耐える必要性(甲2の【0032】)や機械的強度が要求されることから、甲2発明の865μmのような、一定程度の厚みが必要であると解される。 これに対して、申立人が提出した証拠を参照しても、高温ポリシリコンTFT用のガラス基板について、板厚を100~350μmとすることが当業者にとって容易に想到できたと評価するに足る証拠はない。 したがって、上記アの相違点は、甲2発明及び他の甲号証に基づいて、当業者が容易に想到できたものとはいえないから、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲2発明及び他の甲号証に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 ウ 本件発明1についての小括 以上のとおり、本件発明1は、甲2発明及び他の甲号証に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないから、進歩性に係る特許異議申立理由により、本件発明1に係る特許を取り消すことはできない。 (3)本件発明2~5、9及び13について 本件発明2~5、9及び13は、訂正により削除されたから、進歩性に係る特許異議の申立ての対象が存在しない。 (4)本件発明6及び8について 本件発明6及び8は、本件発明1を引用し、本件発明1の発明特定事項を全て含むから、本件発明1と同様の理由により、進歩性に係る特許異議申立理由により、本件発明6及び8に係る特許を取り消すことはできない。 (5)本件発明7、10、11及び14について 本件発明7、10、11及び14は、本件発明1と同様に、「板厚が100~350μm」という発明特定事項を含むから、本件発明1と同様に、進歩性に係る特許異議申立理由により、本件発明7、10、11及び14に係る特許を取り消すことはできない。 (6)本件発明16について 本件発明16は、「前記2つの主表面の間の距離が100~350μmであり」という発明特定事項を含むところ、「2つの主表面の間の距離」は、実質的に板厚を意味するから、本件発明1と同様に、進歩性に係る特許異議申立理由により、本件発明16に係る特許を取り消すことはできない。 (7)本件発明12、15、及び17~19について 本件発明12は、本件発明11を引用し、本件発明11の発明特定事項を全て含むから、本件発明11と同様に、進歩性に係る特許異議申立理由により、本件発明12に係る特許を取り消すことはできない。 また、本件発明15は、本件発明14を引用し、本件発明14の発明特定事項を全て含むから、本件発明14と同様に、進歩性に係る特許異議申立理由により、本件発明15に係る特許を取り消すことはできない。 また、本件発明17~19は、本件発明16を直接又は間接に引用し、本件発明16の発明特定事項を全て含むから、本件発明16と同様に、進歩性に係る特許異議申立理由により、本件発明17~19に係る特許を取り消すことはできない。 (8)進歩性に係る特許異議申立理由の小括 したがって、進歩性に係る特許異議申立理由により、請求項1、6~8、10~12及び14~19に係る特許を取り消すことはできない。 また、請求項2~5、9及び13について、進歩性に係る特許異議の申立ての対象が存在しない。 第7 むすび 以上のとおり、本件発明16~19に係る特許は、特許法29条の2の規定に違反してされたものであるから、特許法113条2号に該当し、取り消されるべきものである。 また、本件発明1、6~8、10~12及び14~15に係る特許は、特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては取り消すことはできない。 さらに、他に、本件発明1、6~8、10~12及び14~15を取り消すべき理由を発見しない。 そして、本件発明2~5、9及び13は、本件訂正により削除された。これにより、特許異議申立人による本件発明2~5,9及び13に対する特許異議の申立ては、申立ての対象が存在しないことになったため、特許法120条の8第1項で準用する同法135条の規定により却下する。 よって、結論のとおり決定する。

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2020-700887

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