特許異議申立
2025-701156
ドレッシング装置、歯車研削装置、及び砥石のドレッシング方法
- 審判番号
- 2025-701156
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2023-532950
- 登録番号
- 7708857
- 請求日
- 2025年12月18日
- 審決日
- 2026年03月17日
- 公報発行日
- 2026年04月24日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】ニデックマシンツール株式会社
- 【権利者代理人】及川 周
- 【権利者代理人】成田 友紀
- 【権利者代理人】松本 将尚
- 【権利者代理人】古都 智
- 【権利者代理人】梶原 慶
- 【異議申立人】川▲崎▼ 安代
- 審判長/審判官
- 審判長 鈴木 貴雄
- 審判官 田々井 正吾
- 審判官 塩澤 如正
- 分類
- P1651.113-Y (B24B) / P1651.121-Y (B24B) / P1651.537-Y (B24B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第29条第1項、特許法第36条第6項第1号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7708857号発明「ドレッシング装置、歯車研削装置、及び砥石のドレッシング方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7708857号の請求項1~7に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7708857号の請求項1~7に係る特許についての出願は、2021年(令和3年)7月7日を国際出願日とする日本語特許出願であり、令和7年7月7日にその特許権の設定登録がされ、同月15日に特許掲載公報が発行された。
その後、本件特許に対し、令和7年12月18日(受理日:同月19日)に、特許異議申立人 川崎(「崎」の右上部分の「大」は「立」。) 安代(以下「申立人」という。)は、特許異議申立書(以下「申立書」という。)を提出し、請求項1~7に係る特許について、本件特許異議の申立てをした。
第2 本件発明
本件特許の請求項1~7に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」~「本件発明7」という。)は、特許掲載公報に記載された特許請求の範囲の請求項1~7に記載された、以下の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
砥石回転軸線周りに螺旋状に連続する研削溝を有する砥石に対し、前記砥石回転軸線に直交する第一方向に相対的に移動可能とされ、前記研削溝をドレッシング可能なドレッシング機構と、
前記ドレッシング機構の動作を制御する制御部と、を備え、
前記ドレッシング機構は、
前記砥石回転軸線に沿うように延びる工具回転軸線周りに回転駆動され、前記研削溝を構成する面であって溝幅方向で隣り合う二つの研削面に対してドレッシング可能な一対のドレッシング面を先端に有した円盤状のドレッシング工具と、
前記ドレッシング工具を、前記工具回転軸線及び前記第一方向に直交する工具旋回軸線周りに旋回させる工具旋回部と、
を備え、
前記制御部は、前記砥石を前記砥石回転軸線周りに回転させるとともに、前記ドレッシング工具を前記工具回転軸線周りに回転させて、前記溝幅方向で隣り合う二つの前記研削面を一対の前記ドレッシング面でドレッシングするとともに、前記工具旋回部によって前記ドレッシング工具を前記工具旋回軸線周りに旋回させることで、二つの前記研削面に対する一対の前記ドレッシング面の角度を変化させ、
螺旋状の前記研削溝は、歯車の一つの歯を研削する場合に、前記歯の歯筋方向における前記歯の一方側の第一端に接触する第一部位と、前記歯筋方向における前記歯の他方側の第二端に接触する第二部位とを有し、
前記制御部は、
前記砥石回転軸線を含む断面において、前記第一部位では、前記溝幅方向における前記研削溝の中間に位置する溝中心軸に対して前記先端が前記溝幅方向の第一側に位置するように前記ドレッシング工具を傾斜させ、
前記砥石回転軸線を含む断面において、前記第二部位では、前記溝中心軸に対して前記先端が前記溝幅方向の第二側に位置するように前記ドレッシング工具を傾斜させる、ドレッシング装置。
【請求項2】
前記制御部は、ドレッシングを行う際に、前記第一部位から前記第二部位に近づくにしたがって、徐々に前記ドレッシング工具を旋回させる請求項1に記載のドレッシング装置。
【請求項3】
前記ドレッシング工具は、一のドレッシング部を前記先端に有し、
一対の前記ドレッシング面は、前記工具回転軸線の延びる方向において互いに反対側を向いて前記ドレッシング部の側面に形成されている請求項1または2に記載のドレッシング装置。
【請求項4】
前記ドレッシング工具は、第一のドレッシング部と、前記第一のドレッシング部に対して前記工具回転軸線の延びる方向に間隔をあけて配置された第二のドレッシング部と、を前記先端に有し、
前記第一のドレッシング部に形成された前記ドレッシング面と前記第二のドレッシング部に形成された前記ドレッシング面は、前記工具回転軸線の延びる方向において互いに向かい合っている請求項1または2に記載のドレッシング装置。
【請求項5】
螺旋状の前記研削溝は、前記砥石が所定数回転した際の前記砥石回転軸線の延びる方向の長さであるリード寸法が非均一であり、
前記制御部は、ドレッシングを行う際に、前記リード寸法の変化量に対応するように前記ドレッシング工具の旋回量を調整する請求項1から4の何れか一項に記載のドレッシング装置。
【請求項6】
歯車となるワークを回転可能に支持するワークテーブルと、
前記ワークを研削する砥石と、
前記砥石を、前記砥石回転軸線周りに回転駆動させる砥石支持部と、
請求項1から5の何れか一項に記載のドレッシング装置と、を備える歯車研削装置。
【請求項7】
請求項1から5の何れか一項に記載のドレッシング装置における砥石のドレッシング方法であって、
前記砥石を前記砥石回転軸線周りに回転させる工程と、
前記ドレッシング工具を前記工具回転軸線周りに回転駆動させる工程と、
前記溝幅方向で隣り合う二つの前記研削面を一対の前記ドレッシング面でドレッシングするとともに、前記工具旋回部によって前記ドレッシング工具を前記工具旋回軸線周りに旋回させることで、二つの前記研削面に対する一対の前記ドレッシング面の角度を変化させる工程と、を含む、砥石のドレッシング方法。」
第3 申立人が主張する申立ての理由の概要
1 証拠方法(書証)
(1)甲第1号証:特許第4099258号公報
(2)甲第2号証:特公平7-8454号公報
(3)甲第3号証:独国特許出願公開第102014009868号明細書
(4)甲第4号証:特開2015-39764号公報
(5)甲第5号証:米国特許第6491568号明細書
(6)甲第6号証:独国特許出願公開第102012006581号明細書
(7)甲第7号証:特開平10-58231号公報
(「甲第1号証」~「甲第7号証」を、以下それぞれ「甲1」等という。)
2 申立ての理由
申立人による申立ての理由は、以下のとおり整理することができる。
(1)申立ての理由1(申立書17、38~43、45ページ)
ア 条文
特許法第29条第1項第3号(同法第113条第2号)
イ 請求項
1~5、7
ウ 理由
甲1に記載された発明に基づく、新規性欠如
(2)申立ての理由2(申立書17、39~45ページ)
ア 条文
特許法第29条第2項(同法第113条第2号)
イ 請求項
1~7
ウ 理由
甲1に記載された発明を主引用発明とした、進歩性欠如
(3)申立ての理由3(申立書17、45~49ページ)
ア 条文
特許法第36条第6項第1号(同法第113条第4号)
イ 請求項
1~7
ウ 理由
サポート要件違反
第4 申立ての理由1に対する当審の判断
上記第3の2(1)に示される申立ての理由1のとおり、本件発明1~5、7が甲1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に掲げる発明に該当し、本件発明1~5、7に係る特許が特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであるか、以下検討する。
1 本件発明1について
(1)本件発明1の認定
本件発明1は、上記第2の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものであると認める。
(2)甲1に記載された発明の認定
ア 甲1の記載
甲1には、以下の事項が記載されている(なお、下線は当審にて付した。以下同様。)。
「【0002】
【従来の技術】
今日の歯車技術で使用されている平歯車の大部分は、インボリュート歯面を有している。しかしながら、力の伝達に関しては、2つのインボリュート歯車の噛み合いは、たいていの場合に最適な作動挙動を示さないので、歯面はインボリュートから設計計算により歯高方向及び歯幅方向に修正される。このような修正の大きさは、ほとんどμmの範囲内にあるので、修正歯面の創成において、研削過程が重要な役割を有している。
【0003】
歯面の簡単な修正としては、とくに高さ又は幅のクラウニング、歯末又は歯元の歯高方向の逃げならびに端部の歯幅方向の逃げがある。歯面の2つの方向(歯高及び歯幅)における歯面の変化に関してこの修正を注目すると、歯面の修正は必ず一方の歯面方向にのみ変化し、第2の歯面方向は一定のままであることがわかる。歯面の修正は、連続創成研削では、特殊なプロフィール形成ツールを用いた研削ツールのプロフィール形成(概して歯高方向における修正)又は機械の適切な運動(概して歯幅方向における修正)のいずれかにより達成することができる。この場合、これらの追加の軸運動が連続創成研削において歯面プロフィールの望ましくないひずみを形成することがしばしばある。
【0004】
これに対し、複雑な歯面修正には、多くの正面切削及び/又は多くの円筒におてその創成のために種々の要求がある。極端な場合には、歯面の各点が異なる修正値(プロフィール形状のインボリュートからの偏差)を有する。連続創成研削によるこのタイプの歯車の創成は特殊な技術手順を必要とする。
【0005】
解決手段を見いだすためには、研削ウォームのプロフィール形成における従来技術が重要である。これに関する既知の方法(図8)において、たいていの場合、ディスク形状のプロフィール形成ツール1が使用される。このプロフィール形成ツールは、回転研削ウォーム2に対するストローク運動3により移動され、研削ウォームねじ4の一方又は両方のフランクの歯末、側面及び/又は歯元底と接触する。プロフィール形成ツール1のストローク運動3及び研削ウォーム2の回転運動5は相互に正確に同調され、これにより、ウォームが1回転した後にプロフィールツールはPI×モジュール×条数に対応するストロークを行う。これに関して使用されている種々の方法仕様の中から2つの一般原理が知られている。
【0006】
プロフィールロール(図8a)を用いてプロフィール形成を行う場合には、ディスク形状のプロフィール形成ツール1の能動領域6は一条円錐ねじ又は二条円錐ねじプロフィールを有している。プロフィール形成工程の間、このプロフィール形状は、プロフィール形成ツール1と研削ウォームねじ4の軸方向断面との間に線接触を形成する。このような線接触は、プロフィール形成ツール1又は研削ウォーム2の1回のストローク運動により、研削ウォームの全幅bS にわたり、歯元及び歯末領域を含むウォームねじの全高さhについてプロフィールを形成できるという利点を有している。この結果、プロフィール形成時間を短くすることができる。この方法原理においては、常に、ウォームねじの軸方向断面の大きなフランク高さ領域(概してプロフィール全体)がかみ合っているので、以下、この方法原理をプロフィールドレッシングと呼ぶことにする。
【0007】
型ロール(図8b)を用いたプロフィール形成は、能動領域6内にたとえば半径プロフィールを有するディスク形状のプロフィール形成ツールを使用している。このツールでは、プロフィール形成ツール1とウォームねじ4との間の接触がほぼ点形状である。したがって、研削ウォーム幅bS にわたるストローク運動3の間、常に、ウォームねじ高さhのうちの限定された狭い領域のみがプロフィール形成される。ウォームねじ全体をプロフィール形成するためには、複数回のプロフィール形成ストロークが必要である。この場合、プロフィール形成ツールには、各ストロークごとにウォームねじの高さに沿って所定量ΔUだけ送りが与えられる。とくにモジュールの大きい研削ウォームに対しては、このプロフィール形成原理は長いプロフィール形成時間を必要とする。一方、この方法は、かみ合い領域で点形状の接触をすることから、ウォームねじの高さに対しほぼ任意の修正を創成するのにきわめて有利である。この方法原理は、以下、ラインごとのプロフィール形成と呼ぶことにする。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
創成研削において複雑な歯面修正を創成する方法として、研削ストロークの間に研削ツールを歯車に対する接線方向に移動(シフト又は斜め創成研削)するものが知られている(ドイツ特許公開第3704607号)。この創成研削方法の優れた特徴は、研削ストローク中の接線方向移動により、各歯車垂直断面に、常に歯車と研削ウォームとの間の新しいかみ合いラインを割り当てることができることである。その全能動領域にわたり連続的に変化するフランク圧力角を備えた研削ウォームねじを有する研削ウォームを使用することにより、上記の方法を用いて、研削過程に基づく歯面のひずみが補正される。このひずみは、はすば平歯車の連続創成研削において、研削ストロークの間に加工物とツールとの間の軸間隔が変化したとき(たとえば幅クラウニングの創成のとき)発生する。この方法においては、研削ウォームがその全能動領域に沿って変化する圧力角(修正)を有し、このために通常の研削材による研削ウォームを使用したときに研削領域内に著しい摩耗が発生し、単位時間当たり多量の研削量で研削されるという欠点がある。一方、超硬化研削材を有するプロフィール形成が不可能な研削ウォームを使用したとき、新たな圧力角変化を有する研削ウォームのフレキシブルなプロフィール形成(修正)ができない。」
「【0013】
【発明の実施の形態】
修正なしにインボリュート歯面を創成するために、図1に示すように、ツールプロフィール(基準プロフィール)として、基本的に、プロフィールラインに対し歯切り圧力角αだけ傾斜した直線歯面7を備えたラック4が使用される。創成すべきインボリュートプロフィール8と基準プロフィール(ラック)4との間でかみ合うときに形成される右フランク及び左フランクに関する接触ライン9、10(図1a)ならびに斜め創成研削において追加的に発生するシフト運動11(図1b)を考慮して、適当な近似による変換計算を行うことにより、歯面上の任意の各点に対し研削ウォームねじの対応する垂直断面(基準プロフィール)上の接触点12を割り当てることができる。シフト送り及び歯切り幅から、研削ウォームの軸方向に、研削ストロークの間にかみ合い部分が通過するシフト領域bSShが与えられる。上記変換計算を歯面点のネットワーク全体について行うことにより、特定の歯面点に対応するウォームねじフランクの接触点の修正値(歯面プロフィールのインボリュートからの符号(+/-)を付けた偏差)を得ることができる。これにより、研削ウォームの所定の幅方向位置Vjにおける研削ウォームねじの垂直断面に対して、たとえばねじ高さhに関し、図2に示した基準プロフィールに対する修正量Mi,j(ウォームねじフランクプロフィールのインボリュート基準プロフィールからの符号(+/-)を付けた偏差)を得ることができる。
【0014】
したがって、第1のステップにおいて、研削ウォームの歯面の希望の修正が研削ウォームねじのフランクに転換される。この場合、鏡像原理により、変換計算において修正の符号が逆になることに注意すべきである。歯面と接触しない研削ウォームねじのフランク上の点には、修正値0が割り当てられる。変換計算の結果、ウォームの幅方向の任意の位置について、修正すべき研削ウォームねじのフランクの目標プロフィールが得られる。
【0015】
修正すべきウォームねじフランクの目標プロフィールの創成は、プロフィールドレッシングにより時間効率よくなされる。このように時間効率よく行われるのは、基本的に、ウォームの幅方向の所定位置Vjにおける研削ウォームねじ4の基準断面の両方のフランク7についての補正計算により、修正値Mi,jとウォームねじ高さ位置hiとの間の関係が得られているからである(図2)。この場合、補正関数として任意の定常関数式を選択してよい。ただし、一度選択された式は、ウォームねじのその他の基準断面についての計算でも使用されなければならない。補正関数としてたとえば線形関数が選択された場合には、計算された補正直線13の勾配は角度ΔFを示す。つまり、対応する研削ウォームの幅方向位置
Vjにおいて修正基準プロフィールの圧力角は、無修正基準プロフィールフランク7の圧力角から角度ΔFだけの偏差を有している。選択された関数式を用いたこの補正計算が、ウォームの幅bSの全体について、多数のウォームねじ基準断面に関して行えば、全体として勾配値、すなわち、角度ΔFと研削ウォームの幅方向位置Vjとの関数関係が得られる。
【0016】
さらに、プロフィールドレッシング(図8a)を考慮して、選択された補正関数の具体例としてプロフィール形成ツール1のフランクプロフィール6(たとえば直線)が使用された場合には、補正関数の勾配値の和は、研削ウォーム幅bS、つまり、プロフィール形成ストロークにわたり、回転軸Fの回りについてのプロフィール形成ツールの一定の回転に関するガイド値を与える。プロフィール形成ツールを回転させるのに利用できる回転軸Fが存在しない場合には、回転軸Cの回りに研削ウォームを回転させることでも同じ効果が得られる。
【0017】
第2のステップでは、プロフィール形成ツールの回転に関し、次の関係を得る。
ΔF=f(V)
また、研削ウォームの回転に関しては、
ΔC=f(X)
なる関係を得る。
【0018】
図3a及び3bより明らかなように、回転点Pr(回転軸F)の回りに回転運動を行うと、研削ウォームねじ4のフランク7に対するプロフィール形成ツール1の送り位置(U軸)及びストローク位置(V軸)に関してプロフィール形成ツール1の歯面が好ましい位置から外れる。したがって、プロフィール形成ツールをU及びV方向に同時にΔU及びΔVだけ移動することにより(図3b及び3c)、並びに/又は、研削ウォームをX及びY方向に同時にΔX及びΔYだけ移動することにより、プロフィール形成ツール1の回転運動の結果生じた位置偏差を補正しなければならない。これらの補正運動の大きさは、本質的に、回転角ΔFの大きさ、ならびにプロフィール形成におけるプロフィール形成ツールのフランク上の理想的な回転点Piに対するF軸の実際の回転点Prの相対位置に依存する。この補正運動は次式より計算できる。
【0019】
ΔV=f(ΔF,Urel,Vrel)
ΔU=f(ΔF,Urel,Vrel)
同様のことは、研削ウォームを回転軸C(図4)の周りに回転させることでもなされる。このとき、補正運動は次式から得られる。
【0020】
ΔY=f(ΔC,Xrel,Yrel)
ΔX=f(ΔC,Xrel,Yrel)
提案されたプロフィール形成方法は、図4に示す装置を用いて行うことができる。図に示されているのは、プロフィール形成ツールが、ストローク運動、送り運動及び回転運動を行う装置である。なお、研削ウォームが、ストローク運動、送り運動及び回転運動を行うことであってもよく、あるいは、これらの運動の他の組み合わせがなされることであってもよい。
【0021】
図示の装置は、加工物側において、ベースプレート14上に水平に設けられた、モータで駆動されるスピンドルユニット15を有する。スピンドルユニット15上には、軸Bの周りに回転可能な、プロフィール加工すべき研削ウォーム16が装着されている。スピンドルユニット15は、回転軸Cの周りに回転可能である。軸Eの周りに回転可能なディスク形状のプロフィール形成ツール1は、研削ウォームスピンドルに平行に設けられたモータで駆動可能なスピンドルユニット17上に固定されており、サーボ駆動されたストローク往復台18により回転研削ウォーム16(当審注:「回転研削ウォーム16」は「研削ウォーム16」の誤記と認める。)に沿ってV方向に移動される。ストローク終端位置では、送り往復台19によりU方向の送り運動が行われる。このために、送り往復台19それ自身はベースプレート14上で加工物軸に垂直な方向に移動可能となっている。送り往復台19上にストローク往復台18が設けられている。プロフィール形成ツール1のストローク運動及び研削ウォーム16の回転運動は、制御ユニット22により、制御信号20及び21を介して、ウォームが1回転した後にプロフィール形成ツールがPI×モジュール×条数に対応するストロークを行うように同調されている。提案されたプロフィール形成方法を行うために、装着されたプロフィール形成ツールを備えたスピンドルユニットは、ストローク往復台18上に設けられた回転テーブルにより、プロフィール形成スピンドルに垂直かつ送り運動に垂直な軸Fの周りに回転可能となっている。回転運動及び補正運動は、制御ユニット22及び制御信号20,24及び25により、プロフィール形成ツールの研削ウォーム16に対する相対位置に従って行われる。このために、送り方向における補正運動は往復台19により送り運動に重ねられ、ストローク方向における補正運動は往復台18によりストローク運動に重ねられる。
【0022】
上記の方法によりかつ上記の装置を使用して研削ウォームねじのプロフィール形成を行うことにより研削ウォームねじが形成される。得られた研削ウォームねじのフランクの圧力角は研削ウォーム幅の領域に沿って連続的に変化し、したがってウォームねじフランクの実際の修正を形成する。」
「【符号の説明】
1 プロフィール形成ツール
2,16 研削ウォーム
3 ストローク運動(プロフィール形成ツール)
4 研削ウォームねじ,ラック
5 回転運動(研削ウォーム)
6 能動領域(プロフィール形成ツール)
7 無修正基準プロフィールフランク
8 インボリュートプロィール
9 右フランクに対する接触ライン
10 左フランクに対する接触ライン
11 シフト運動
12 接触点
13 補正直線
14 ベースプレート
15 スピンドルユニット(研削ウォーム)
17 スピンドルユニット(プロフィール形成ツール)
18 ストローク往復台
19 送り往復台
20,21,24,25 制御信号
22 制御ユニット
23 回転テーブル
26 歯先半径
27 フランク半径
28 歯先丸み半径
29 フランク逃げ
B、C、E、F 回転軸(研削ウォーム)
α 圧力角」
「【図2】
[図:0001434204000001.jpg]
【図3】
[図:0001434204000002.jpg]
【図4】
[図:0001434204000003.jpg]
」
「【図8】
[図:0001434204000004.jpg]
」
イ 甲1に記載されているといえる事項
上記アから、甲1には次の事項が記載されているといえる。
(ア)段落【0020】~【0021】、【符号の説明】の記載及び図4の図示内容から、甲1には、プロフィール形成ツール1、スピンドルユニット17、回転テーブル23(以下「プロフィール形成ツール1、スピンドルユニット17、回転テーブル23」を「プロフィール形成機構」という。)、ストローク往復台18、送り往復台19、制御装置4、スピンドルユニット15、及び、研削ウォーム16を備えた装置が示されているといえる。
(イ)段落【0022】の「上記の方法によりかつ上記の装置を使用して研削ウォームねじのプロフィール形成を行うことにより研削ウォームねじが形成される。」における「研削ウォームねじ」との記載に鑑みれば、研削ウォーム16はねじ状の形状、すなわち、ねじ状に連続する研削溝を有するものといえる。さらに、段落【0021】の記載及び図4の図示内容も鑑みれば、研削ウォーム16は、研削ウォーム16の回転軸である軸B周りにねじ状に連続する研削溝を有するものといえる。
(ウ)段落【0021】の記載、図4の図示内容から、プロフィール形成機構は、送り往復台19により、研削ウォーム16に対し、軸Bに直交するU方向に移動可能となっていることが示されているといえる。また、段落【0006】の記載から、プロフィール形成ツールによるプロフィール形成のことをドレッシングとも呼んでおり、さらに、段落【0021】~【0022】の記載、図3の図示内容及び上記(ア)も鑑みれば、プロフィール形成機構のプロフィール形成ツール1は、研削ウォーム16の研削溝をドレッシングするものといえる。
(エ)段落【0021】の記載及び図4の図示内容から、制御ユニット22は、制御信号20、24及び25により、プロフィール形成機構の動作を制御するとともに、制御信号21により、スピンドルユニット15を制御するものといえる。
(オ)段落【0021】の「軸Eの周りに回転可能なディスク形状のプロフィール形成ツール1は、研削ウォームスピンドルに平行に設けられたモータで駆動可能なスピンドルユニット17上に固定されており」との記載及び図4の図示内容から、プロフィール形成機構のプロフィール形成ツール1は、軸Bと平行な軸E周りに回転駆動するものであり、ディスク形状であることが示されているといえる。また、段落【0018】の記載、図3の図示内容及び上記(ウ)から、プロフィール形成機構のプロフィール形成ツール1は、研削溝を構成する面であるフランク7の一つの面に対してドレッシングを行う歯面を先端に有するものといえる。
(カ)段落【0021】、【符号の説明】の記載及び図4の図示内容から、プロフィール形成機構の回転テーブル23は、プロフィール形成ツール1を、軸E及びU方向に直交する軸Fの周りに回転させるものといえる。
(キ)段落【0018】、【0021】~【0022】の記載及び図3の図示内容から、制御ユニット22は、プロフィール形成の際に、研削ウォーム16を軸B周りに回転させるとともに、回転テーブル23によってプロフィール形成ツール1を軸F周りに回転させるものといえる。さらに、上記(オ)、及び、ドレッシングの際にドレッシングする機械を回転させてドレッシング対象へ接触させることが技術常識であることに鑑みれば、プロフィール形成の際に、研削ウォーム16を軸B周りに回転させるとともに、プロフィール形成ツール1を軸E周りに回転させて、フランク7の一つの面をドレッシングを行う歯面でドレッシングするものといえる。また、上記(オ)、図3a及び図3cの図示内容から、プロフィール形成ツール1を軸F周りに回転すると、フランク7の一つの面に対してドレッシングを行う歯面の角度が変化するものといえる。
(ク)段落【0002】~【0008】の従来技術及び課題の記載から、甲1における研削ウォームは、歯車の歯を研削することを前提としているといえるから、研削ウォーム16は、歯車の歯を研削するものといえる。また、ねじ状の研削ウォームで歯車を研削するにあたり、その研削溝は、歯車の一つの歯を研削する場合に、歯の歯筋方向における歯の一方側の第一端に接触する第一部位と、歯筋方向における歯の他方側の第二端に接触する第二部位を有することは技術常識であり、研削ウォーム16のねじ状に連続する研削溝は、歯車の一つの歯を研削する場合に、歯の歯筋方向における歯の一方側の第一端に接触する第一部位と、歯筋方向における歯の他方側の第二端に接触する第二部位を有するものであるといえる。
(ケ)図3cにおいてプロフィール形成ツール1と接触する研削ウォームの位置を、上記(ク)における第一部位とすると、段落【0018】、【0021】の記載及び図3cの図示内容から、制御ユニット22は、第一部位では、溝幅方向における研削溝の中間に位置する溝中心軸に対して先端が溝幅方向の第一側に位置するようにプロフィール形成ツール1を傾斜させるものといえる。
ウ 甲1発明
上記ア~イから、甲1に記載された事項を本件発明1に合わせて整理すると、甲1には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているものといえる。
「 研削ウォーム16の回転軸である軸B周りにねじ状に連続する研削溝を有する研削ウォーム16に対し、前記軸Bに直交するU方向に移動可能とされ、前記研削溝をドレッシングするプロフィール形成機構と、
前記プロフィール形成機構の動作を制御するとともに、スピンドルユニット15を制御する制御ユニット22と、を備え、
前記プロフィール形成機構は、
前記軸Bと平行な軸E周りに回転駆動され、前記研削溝を構成する面であるフランク7の一つの面に対してドレッシングを行う歯面を先端に有したディスク状のプロフィール形成ツール1と、
前記プロフィール形成ツール1を、前記軸E及び前記U方向に直交する軸Fの周りに回転させる回転テーブル23と、
を備え、
前記制御ユニット22は、前記研削ウォーム16を前記軸B周りに回転させるとともに、前記プロフィール形成ツール1を前記軸E周りに回転させて、前記フランク7の一つの面を前記ドレッシングを行う歯面でドレッシングするとともに、前記回転テーブル23によって前記プロフィール形成ツール1を前記軸F周りに回転させることで、前記フランク7の一つの面に対する前記ドレッシングを行う歯面の角度を変化させ、
ねじ状の前記研削溝は、歯車の一つの歯を研削する場合に、前記歯の歯筋方向における前記歯の一方側の第一端に接触する第一部位と、前記歯筋方向における前記歯の他方側の第二端に接触する第二部位とを有し、
前記制御ユニット22は、
前記第一部位では、溝幅方向における前記研削溝の中間に位置する溝中心軸に対して前記先端が前記溝幅方向の第一側に位置するように前記プロフィール形成ツール1を傾斜させる、装置。」
(3)対比
ア 本件発明1と甲1発明とを対比すると、以下のことがいえる。
(ア)甲1発明における「研削ウォーム16」は、本件発明1の「砥石」に相当する。以下同様に、「研削ウォーム16の回転軸である軸B」は「砥石回転軸線」に、「ねじ状」は「螺旋状」に、「前記軸Bに直交するU方向に移動可能とされ」ることは「前記砥石回転軸線に直交する第一方向に相対的に移動可能とされ」ることに、「ドレッシングする」ことは「ドレッシング可能な」ことにそれぞれ相当する。
そうすると、甲1発明における「研削ウォーム16の回転軸である軸B周りにねじ状に連続する研削溝を有する研削ウォーム16に対し、前記軸Bに直交するU方向に移動可能とされ、前記研削溝をドレッシングするプロフィール形成機構」は、本件発明1における「砥石回転軸線周りに螺旋状に連続する研削溝を有する砥石に対し、前記砥石回転軸線に直交する第一方向に相対的に移動可能とされ、前記研削溝をドレッシング可能なドレッシング機構」に相当する。
(イ)甲1発明における「前記プロフィール形成機構の動作を制御する」ことは、本件発明1における「前記ドレッシング機構の動作を制御する」ことに相当する。
そうすると、甲1発明における「前記プロフィール形成機構の動作を制御する」「制御ユニット22」は、本件発明1における「前記ドレッシング機構の動作を制御する制御部」に相当する。
(ウ)2本の線が平行であれば、一方の線は他方の線に沿っているものといえるから、甲1発明における「前記軸Bと平行な軸E」は、本件発明1における「前記砥石回転軸線に沿うように延びる工具回転軸線」に相当する。以下同様に、「ドレッシングを行う」ことは「ドレッシング可能」であることに、「ドレッシングを行う歯面」は「ドレッシング面」に、「ディスク状」は「円盤状」に、「プロフィール形成ツール1」は「ドレッシング工具」にそれぞれ相当する。
また、甲1発明における「前記研削溝を構成する面であるフランク7の一つの面に対してドレッシングを行う歯面」と、本件発明1における「前記研削溝を構成する面であって溝幅方向で隣り合う二つの研削面に対してドレッシング可能な一対のドレッシング面」とは、前記研削溝を構成する面である一つの研削面に対してドレッシング可能な一つのドレッシング面である点で共通する。
そうすると、甲1発明における「前記軸Bと平行な軸E周りに回転駆動され、前記研削溝を構成する面であるフランク7の一つの面に対してドレッシングを行う歯面を先端に有したディスク状のプロフィール形成ツール1」と、本件発明1における「前記砥石回転軸線に沿うように延びる工具回転軸線周りに回転駆動され、前記研削溝を構成する面であって溝幅方向で隣り合う二つの研削面に対してドレッシング可能な一対のドレッシング面を先端に有した円盤状のドレッシング工具」とは、「前記砥石回転軸線に沿うように延びる工具回転軸線周りに回転駆動され、前記研削溝を構成する面である一つの研削面に対してドレッシング可能な一つのドレッシング面を先端に有した円盤状のドレッシング工具」である点で共通する。
(エ)甲1発明における「前記軸E及び前記U方向に直交する軸F」は、本件発明1における「前記工具回転軸線及び前記第一方向に直交する工具旋回軸線」に相当する。また、「回転」は「旋回」に相当する。
そうすると、甲1発明における「前記プロフィール形成ツール1を、前記軸E及び前記U方向に直交する軸Fの周りに回転させる回転テーブル23」は、本件発明1における「前記ドレッシング工具を、前記工具回転軸線及び前記第一方向に直交する工具旋回軸線周りに旋回させる工具旋回部」に相当する。
(オ)甲1発明における「前記フランク7の一つの面を前記ドレッシングを行う歯面でドレッシングする」ことと、本件発明1における「前記溝幅方向で隣り合う二つの前記研削面を一対の前記ドレッシング面でドレッシングする」こととは、一つの研削面を一つのドレッシング面でドレッシングする点で共通する。
また、甲1発明における「前記フランク7の一つの面に対する前記ドレッシングを行う歯面の角度を変化させ」ることと、本件発明1における「二つの前記研削面に対する一対の前記ドレッシング面の角度を変化させ」ることは、「一つの前記研削面に対する一つの前記ドレッシング面の角度を変化させ」る点で共通する。
そうすると、甲1発明における「前記制御ユニット22は、前記研削ウォーム16を前記軸B周りに回転させるとともに、前記プロフィール形成ツール1を前記軸E周りに回転させて、前記フランク7の一つの面を前記ドレッシングを行う歯面でドレッシングするとともに、前記回転テーブル23によって前記プロフィール形成ツール1を前記軸F周りに回転させることで、前記ドレッシングを行う歯面の角度を変化させ」ることと、本件発明1における「前記制御部は、前記砥石を前記砥石回転軸線周りに回転させるとともに、前記ドレッシング工具を前記工具回転軸線周りに回転させて、前記溝幅方向で隣り合う二つの前記研削面を一対の前記ドレッシング面でドレッシングするとともに、前記工具旋回部によって前記ドレッシング工具を前記工具旋回軸線周りに旋回させることで、二つの前記研削面に対する一対の前記ドレッシング面の角度を変化させ」ることとは、「前記制御部は、前記砥石を前記砥石回転軸線周りに回転させるとともに、前記ドレッシング工具を前記工具回転軸線周りに回転させて、一つの前記研削面を一つの前記ドレッシング面でドレッシングするとともに、前記工具旋回部によって前記ドレッシング工具を前記工具旋回軸線周りに旋回させることで、一つの前記研削面に対する一つの前記ドレッシング面の角度を変化させ」る点で共通する。
(カ)甲1発明における「ねじ状の前記研削溝は、歯車の一つの歯を研削する場合に、前記歯の歯筋方向における前記歯の一方側の第一端に接触する第一部位と、前記歯筋方向における前記歯の他方側の第二端に接触する第二部位とを有し」ていることは、本件発明1における「螺旋状の前記研削溝は、歯車の一つの歯を研削する場合に、前記歯の歯筋方向における前記歯の一方側の第一端に接触する第一部位と、前記歯筋方向における前記歯の他方側の第二端に接触する第二部位とを有し」ていることに相当する。
(キ)甲1発明における「前記制御ユニット22」は、「前記第一部位では、溝幅方向における前記研削溝の中間に位置する溝中心軸に対して前記先端が前記溝幅方向の第一側に位置するように前記プロフィール形成ツール1を傾斜させる」ことは、本件発明1における「前記制御部」は、「前記第一部位では、前記溝幅方向における前記研削溝の中間に位置する溝中心軸に対して前記先端が前記溝幅方向の第一側に位置するように前記ドレッシング工具を傾斜させ」ることに相当する。
(ク)甲1発明における「装置」は、ディスク状のプロフィール形成ツール1の歯面によりドレッシングを行うから、本件発明1の「ドレッシング装置」に相当する。
イ 一致点
上記アから、本件発明1と甲1発明とは、以下の点で一致する。
「 砥石回転軸線周りに螺旋状に連続する研削溝を有する砥石に対し、前記砥石回転軸線に直交する第一方向に相対的に移動可能とされ、前記研削溝をドレッシング可能なドレッシング機構と、
前記ドレッシング機構の動作を制御する制御部と、を備え、
前記ドレッシング機構は、
前記砥石回転軸線に沿うように延びる工具回転軸線周りに回転駆動され、前記研削溝を構成する面である一つの研削面に対してドレッシング可能な一つのドレッシング面を先端に有した円盤状のドレッシング工具と、
前記ドレッシング工具を、前記工具回転軸線及び前記第一方向に直交する工具旋回軸線周りに旋回させる工具旋回部と、
を備え、
前記制御部は、前記砥石を前記砥石回転軸線周りに回転させるとともに、前記ドレッシング工具を前記工具回転軸線周りに回転させて、一つの前記研削面を一つの前記ドレッシング面でドレッシングするとともに、前記工具旋回部によって前記ドレッシング工具を前記工具旋回軸線周りに旋回させることで、一つの前記研削面に対する一つの前記ドレッシング面の角度を変化させ、
螺旋状の前記研削溝は、歯車の一つの歯を研削する場合に、前記歯の歯筋方向における前記歯の一方側の第一端に接触する第一部位と、前記歯筋方向における前記歯の他方側の第二端に接触する第二部位とを有し、
前記制御部は、
前記第一部位では、前記溝幅方向における前記研削溝の中間に位置する溝中心軸に対して前記先端が前記溝幅方向の第一側に位置するように前記ドレッシング工具を傾斜させる、ドレッシング装置。」
ウ 相違点
他方、本件発明1と甲1発明とは、次の相違点で相違する。
(ア)相違点1
本件発明1においては、「ドレッシング工具」の「先端」に、「溝幅方向で隣り合う二つの研削面に対してドレッシング可能な一対のドレッシング面」を有しており、「ドレッシングする」際に、「前記溝幅方向で隣り合う二つの前記研削面を一対の前記ドレッシング面でドレッシングするとともに、前記工具旋回部によって前記ドレッシング工具を前記工具旋回軸線周りに旋回させることで、二つの前記研削面に対する一対の前記ドレッシング面の角度を変化させ」るものであるのに対し、
甲1発明においては、「プロフィール形成ツール1」の「先端」に、「前記研削溝を構成する面であるフランク7の一つの面に対してドレッシングを行う歯面」を有しており、「ドレッシングする」際に、「前記フランク7の一つの面を前記ドレッシングを行う歯面でドレッシングするとともに、前記回転テーブル23によって前記プロフィール形成ツール1を前記軸F周りに回転させることで、前記フランク7の一つの面に対する前記ドレッシングを行う歯面の角度を変化させ」るものであるものの、「プロフィール形成ツール1」の「先端」に「溝幅方向で隣り合う二つの研削面に対してドレッシング可能な一対のドレッシング面」を有しておらず、また、「ドレッシングする」際に、「前記溝幅方向で隣り合う二つの前記研削面を一対の前記ドレッシング面でドレッシングする」ものでなく、「二つの前記研削面に対する一対の前記ドレッシング面の角度を変化させ」るものでもない点。
(イ)相違点2
本件発明1においては、「制御部」が、「前記第一部位では、前記溝幅方向における前記研削溝の中間に位置する溝中心軸に対して前記先端が前記溝幅方向の第一側に位置するように前記ドレッシング工具を傾斜させ」ることが「前記砥石回転軸線を含む断面において」行われ、また、「前記砥石回転軸線を含む断面において、前記第二部位では、前記溝中心軸に対して前記先端が前記溝幅方向の第二側に位置するように前記ドレッシング工具を傾斜させる」ことを行うのに対し、
甲1発明においては、「制御ユニット22」が「前記第一部位では、溝幅方向における前記研削溝の中間に位置する溝中心軸に対して前記先端が前記溝幅方向の第一側に位置するように前記プロフィール形成ツール1を傾斜させる」ことがどのような断面において行われるものか不明であり、また、「前記砥石回転軸線を含む断面において、前記第二部位では、前記溝中心軸に対して前記先端が前記溝幅方向の第二側に位置するように前記ドレッシング工具を傾斜させる」ものか不明である点。
(4)小括
したがって、本件発明1は、甲1発明との間に相違点1及び2を有しており、甲1発明と同一であるとはいえないから、特許法第29条第1項第3号に掲げる発明には該当せず、本件特許の請求項1に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであるとはいえない。
2 本件発明2~5、7について
請求項2~5、7が請求項1の記載を引用して記載するものであるところ、本件発明1が上記1のとおり、甲1発明と同一であるとはいえないことから、本件発明2~5、7についても同様に、甲1発明と同一であるとはいえない。
したがって、本件発明2~5、7は、特許法第29条第1項第3号に掲げる発明には該当せず、本件特許の請求項2~5、7に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであるとはいえない。
3 申立書における主張について
(1)申立書における主張の概要
申立人は、申立書において、以下の主張をしている。
ア 主張1
上記相違点1に関して、甲1には、甲1発明として、
ドレッシング工具を旋回させる工具旋回部(回転テーブル23)を備えたドレッシング装置において、
「1B:前記ドレッシング機構は、
前記砥石回転軸線に沿うように延びる工具回転軸線周りに回転駆動され、前記研削溝を構成する面であって溝幅方向で隣り合う二つの研削面(無修正基準プロフィールフランク7)に対してドレッシング可能な一対のドレッシング面を先端に有した円盤状のドレッシング工具(プロフィール形成ツール1)」、
「1D:前記制御部は、・・・前記ドレッシング工具を前記工具回転軸線周りに回転させて、前記溝幅方向で隣り合う二つの前記研削面を一対の前記ドレッシング面でドレッシングするとともに、前記工具旋回部によって前記ドレッシング工具を前記工具旋回軸線周りに旋回させることで、二つの前記研削面に対する一対の前記ドレッシング面の角度を変化させ」ること
を含む発明が記載されているといえると主張している。
イ 主張2
上記相違点2に関して、甲1には、甲1発明として、
ドレッシング装置において、
「1F:前記制御部は、
前記砥石回転軸線を含む断面において、前記第一部位では、前記溝幅方向における前記研削溝の中間に位置する溝中心軸に対して前記先端が前記溝幅方向の第一側に位置するように前記ドレッシング工具を傾斜させ、
1G:前記砥石回転軸線を含む断面において、前記第二部位では、前記溝中心軸に対して前記先端が前記溝幅方向の第二側に位置するように前記ドレッシング工具を傾斜させる」こと
を含む発明が記載されているといえると主張している。
(2)申立書における主張の検討
ア 主張1について
甲1の1B、1Dに関し、回転テーブル23により回転するプロフィール形成ツール1として具体的に開示されているものとしては、図3に示されたプロフィール形成ツール1のみであるところ、図3の図示内容に鑑みて、プロフィール形成ツール1は、研削溝を構成する面であって溝幅方向で隣り合う二つの研削面のうちの図中右側の面に対してプロフィール形成ツール1の先端の図中右側の面でドレッシング可能であることは読み取れるものの、溝幅方向で隣り合う二つの研削面のうちの図中左側の面に対してプロフィール形成ツール1の先端の図中左側の面でドレッシング可能であることは読み取れない。
また、主張1における1B、1Dの「一対のドレッシング面」という用語は甲1に記載された用語ではなく、「一対のドレッシング面」を甲1のどの記載に基づいて認定しているか説明がない。仮に、図8aに示されたプロフィール形成ツール1は、研削溝を構成する面であって溝幅方向で隣り合う二つの研削面に対してドレッシング可能な一対のドレッシング面を先端に有していることが読み取れるものとして検討しても、図8aに示されたプロフィール形成ツール1が回転テーブル23により回転することは記載されていないことから、甲1には、1B、1Dが記載されているとはいえない。
したがって、上記主張1は、採用することができない。
イ 主張2について
甲1発明を認定した上記第4の1(2)の内容からみても、甲1発明は明らかに1F、1Gを含んでおらず、また、この主張2自体、1F、1Gの内容を甲1のどの記載に基づいて認定しているか説明がなく、その根拠が不明である。
したがって、上記主張2は、採用することができない。
ウ 小括
上記ア、イから、申立人の申立書における主張は、採用することができない。
第5 申立ての理由2に対する当審の判断
上記第3の2(2)に示される申立ての理由2のとおり、本件発明1~7が甲1発明を主引用発明として当業者が容易に発明をすることができたものであって、本件発明1~7に係る特許が特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるか、以下検討する。
1 本件発明1について
(1)本件発明1の認定
上記第4の1(1)と同様である。
(2)甲1に記載された発明の認定
上記第4の1(2)と同様である。
(3)甲3記載の技術的事項の認定
甲3の段落[0022]~[0023]の記載、図1b~1dの図示内容から、甲3には、以下の技術的事項が記載されているといえる。
「図1cに示される、いわゆるダブルテーパドレッサ、及び、図1b及び図1dに示される、いわゆるコンポジットドレッサ。」
(4)甲7記載の技術的事項の認定
甲7の段落【0009】、【0018】~【0022】の記載、図3~4、6の図示内容から、甲7には、以下の技術的事項が記載されているといえる。
「旋回軸F周りに旋回可能なディスク形状のプロフィル形成ツールは、ウォームねじの研削溝を構成する面であって溝幅方向で隣り合う二つの研削面である右フランク及び左フランクに対してドレッシング可能な一対のドレッシング面を先端に有しており、プロフィル形成のための加工順序(図6(A)~(D))により前記左フランクを加工するにあたり、前記プロフィル形成ツールを前記旋回軸F周りに回転させて、前記左フランクを左フランク側の前記ドレッシング面でドレッシングするとともに、前記プロフィル形成ツールを前記旋回軸F周りに旋回させることで、前記二つの研削面である右フランク及び左フランクに対する一対の前記ドレッシング面の角度を変化させ、右フランクの加工を左フランクに続いてプロフィル形成するか、第2のプロフィル形成ツールを用いて左フランクと同時にプロフィル形成すること。」
(5)対比
本件発明1と甲1発明とを対比すると、両者は、上記第4の1(3)イに示した一致点で一致し、上記第4の1(3)ウに示した相違点1及び相違点2で相違している。
(6)相違点1に対する当審の判断
甲3記載の技術的事項や甲7記載の技術的事項のいずれにも、「前記溝幅方向で隣り合う二つの前記研削面を一対の前記ドレッシング面でドレッシングする」ことは特定されておらず、甲3及び甲7には、「前記溝幅方向で隣り合う二つの前記研削面を一対の前記ドレッシング面でドレッシングするとともに、前記工具旋回部によって前記ドレッシング工具を前記工具旋回軸線周りに旋回させることで、二つの前記研削面に対する一対の前記ドレッシング面の角度を変化させ」る技術思想は開示されていない。
してみると、甲1発明、並びに、甲3及び甲7記載の技術的事項を参酌しても、甲1発明においてドレッシングする際に、「前記溝幅方向で隣り合う二つの前記研削面を一対の前記ドレッシング面でドレッシングする」ように変更することは、当業者が容易に想到し得たとする、十分な理由は見出せない。
また、申立人より提出された他の証拠である甲2、甲4~甲6にも、上記技術思想に関連する記載は見受けられず、甲2、甲4~甲6を参照しても、上記相違点1に係る本件発明1の構成を当業者が容易に想到し得たとまではいうことができない。
(7)小括
以上のとおり、本件発明1は、相違点2について検討するまでもなく、甲1発明、並びに、甲2~甲7記載の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、本件特許の請求項1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるとはいえない。
2 本件発明2~7について
本件発明2~7は、請求項1の記載を引用するものであるところ、本件発明1が上記1のとおり、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないことから、本件発明2~7についても同様に、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
3 申立書における主張について
(1)申立書における主張の概要
申立人は、上記1(6)で検討した相違点1に関して、以下の主張をしている。
ア 主張1
甲3には、いわゆるダブルテーパドレッサ1c及びコンポジットドレッサ1b、1dが記載されているといえること。
イ 主張2
甲7には、以下の発明が記載されているといえること。
「1D:前記制御部は、前記砥石(砥石フォーム2)を前記砥石回転軸線(研削スピンドル軸21の軸線)周りに回転させるとともに、前記ドレッシング工具(プロフィール形成ツール1)を前記工具回転軸線周りに回転させて、前記溝幅方向で隣り合う二つの前記研削面(右フランク及び左フランク)を一対の前記ドレッシング面(プロフィール形成ツール1の直線または曲面セグメント9,10)でドレッシングするとともに、前記工具旋回部によって前記ドレッシング工具を前記工具旋回軸線周りに旋回させることで、二つの前記研削面に対する一対の前記ドレッシング面の角度を変化させ(図4)」ること。
(2)申立書における主張の検討
ア 主張1について
甲3には、いわゆるダブルテーパドレッサ1c及びコンポジットドレッサ1b、1dが記載されているとはいえるものの、ダブルテーパドレッサやコンポジットドレッサは「前記溝幅方向で隣り合う二つの前記研削面を一対の前記ドレッシング面でドレッシングするとともに、前記工具旋回部によって前記ドレッシング工具を前記工具旋回軸線周りに旋回させることで、二つの前記研削面に対する一対の前記ドレッシング面の角度を変化させ」るものではない。
したがって、上記主張1は、採用することができない。
イ 主張2について
上記1(4)にて示したとおり、甲7に開示されているのは、右フランクの加工を左フランクに続いてプロフィル形成するか、第2のプロフィル形成ツールを用いて左フランクと同時にプロフィル形成する技術思想であって、左フランクと右フランクのドレッシングは、異なるタイミングで行うか、複数のプロフィル形成ツール形成ツールを用いて一度に行うことが開示されているに過ぎない。したがって、甲7の1つのプロフィル形成ツールにおいて、溝幅方向で隣り合う二つの研削面(右フランク及び左フランク)を一対のドレッシング面(プロフィール形成ツール1の直線または曲面セグメント9,10)でドレッシングするものとは認められないし、上記主張2も、1Dにおける「前記溝幅方向で隣り合う二つの前記研削面(右フランク及び左フランク)を一対の前記ドレッシング面(プロフィール形成ツール1の直線または曲面セグメント9,10)でドレッシングする」の内容を甲7のどの記載に基づいて認定しているか説明がなく、その根拠が不明である。
したがって、上記主張2は、採用することができない。
ウ 小括
上記ア、イから、申立人の申立書における主張は、採用することができない。
第6 申立ての理由3に対する当審の判断
1 申立ての理由3の概要
本件特許発明の課題は、ドレッシングを効率良く短時間で行うことができるドレッシング装置を提供することである。
しかしながら、甲1号証の記載から、本件発明1において、傾斜動作のみを行うと、甲第1号証の図3bに示されるように、プロフィール形成ツールが研削溝に食い込んで必要以上に削れてしまうおそれがあり、そうなると所望のドレッシング作業を効率よく行うことはできないから、プロフィール形成ツールを、傾斜させる制御だけではなく、プロフィール形成ツールをU方向及びV方向に同時にΔU及びΔVだけ移動する複雑な補正制御が必要になることは明らかである。
そうすると、本件発明1は、発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えるものであり、サポート要件を満たさない。
2 当審の判断
本件発明の詳細な説明においては、本件発明が解決しようとする課題として、複雑な形状を有した研削面を有する砥石であっても、ドレッシングを効率良く短時間で行うことができるドレッシング装置、歯車研削装置、及び砥石のドレッシング方法を提供する(段落【0006】)ことを挙げ、その課題の解決手段として、円盤状のドレッシング工具の先端に、溝幅方向で隣り合う二つの研削面に対してドレッシング可能な一対のドレッシング面が形成されており、ドレッシングを施す際に、ドレッシング工具の一対のドレッシング面へのドレッシングを同時に施しながら、ドレッシング工具を工具旋回軸線周りに旋回させること(段落【0037】、【0039】~【0040】、【0052】~【0063】)という発明が具体的に記載される。そして、このような解決手段により、二つの研削面に対する一対のドレッシング面の接触する角度を同時に調整できるから、ドレッシングを効率良く行うことができ、上記課題が解決できるという作用機序を開示している。
そして、本件発明1においても、
「前記ドレッシング機構は、
前記砥石回転軸線に沿うように延びる工具回転軸線周りに回転駆動され、前記研削溝を構成する面であって溝幅方向で隣り合う二つの研削面に対してドレッシング可能な一対のドレッシング面を先端に有した円盤状のドレッシング工具と、
前記ドレッシング工具を、前記工具回転軸線及び前記第一方向に直交する工具旋回軸線周りに旋回させる工具旋回部と、
を備え、
前記制御部は、前記砥石を前記砥石回転軸線周りに回転させるとともに、前記ドレッシング工具を前記工具回転軸線周りに回転させて、前記溝幅方向で隣り合う二つの前記研削面を一対の前記ドレッシング面でドレッシングするとともに、前記工具旋回部によって前記ドレッシング工具を前記工具旋回軸線周りに旋回させることで、二つの前記研削面に対する一対の前記ドレッシング面の角度を変化させ」ることが特定されており、上記課題を解決する手段が十分に反映されているといえる。そうすると、本件発明1は、二つの研削面に対する一対のドレッシング面の接触する角度を同時に調整できるものと認識できるから、当業者が出願時の技術常識に照らし発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえる。
なお仮に、ドレッシング工具が研削溝に食い込んで必要以上に削れてしまう恐れがあったとしても、当該課題は、本件発明が解決しようする課題として発明の詳細な説明に記載されたものではない。また、段落【0056】における「ドレッシング工具が押し当てられている砥石Tを、砥石回転軸線O4周りに回転した状態で第二方向D2に送る」と開示されるように、砥石側を移動するよう制御することで対処することが可能であるものといえ、その点からも、ドレッシング装置において移動制御を行うことが、当該課題を解決の手段として必須の事項であるともいえない。
したがって、本件発明1は、発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された発明の詳細な説明の範囲を超えておらず、発明の詳細な説明に記載したものである。
3 申立ての理由3についてのまとめ
上記2に示したとおり、本件特許請求の範囲の記載は、上記1を理由として、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされた、ということはできない。
第7 むすび
以上のとおり、本件特許の請求項1~7に係る特許は、上記第3に示した申立書に記載された申立ての理由1~3によっては、取り消すことはできない。また、本件特許の請求項1~7に係る特許を取り消すべき他の理由も発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2025-701156