特許異議申立
2018-700144
偏心揺動型歯車装置
- 審判番号
- 2018-700144
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2016-076579
- 登録番号
- 特許第6184546号(P6184546)
- 請求日
- 2018年02月22日
- 審決日
- 2019年09月12日
- 公報発行日
- 2019年12月27日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】ナブテスコ株式会社
- 【権利者代理人】小谷 悦司
- 【権利者代理人】小谷 昌崇
- 【権利者代理人】玉串 幸久
- 【異議申立人】安東 和恭
- 審判長/審判官
- 審判長 大町 真義
- 審判官 尾崎 和寛
- 審判官 内田 博之
- 分類
- P1651.113-YAA(F16H) / P1651.121-YAA(F16H) / P1651.536-YAA(F16H) / P1651.537-YAA(F16H) / P1651.851-YAA(F16H) / P1651.853-YAA(F16H)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第4項第1号、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第6184546号発明「偏心揺動型歯車装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第6184546号の明細書及び特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1及び2〕について訂正することを認める。
特許第6184546号の請求項1ないし2に係る特許を維持する。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
特許第6184546号の請求項1及び2に係る特許についての出願は、平成24年7月3日に出願された特願2012-149350号の一部を平成28年4月6日に新たな特許出願としたものであって、平成29年8月4日にその特許権の設定登録がされ、平成29年8月23日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
平成30年2月22日 :特許異議申立人安東和恭(以下、「異議申
立人」という。)による請求項1及び2に
係る特許に対する特許異議の申立て
平成30年6月8日付け :取消理由通知書
平成30年8月10日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提
出
平成30年10月15日付け:訂正拒絶理由通知書
平成30年11月16日 :特許権者による意見書及び手続補正書の提
出
平成31年1月9日付け :訂正請求があった旨の通知書
平成31年2月15日 :異議申立人による意見書の提出
平成31年3月12日付け :取消理由通知書(決定の予告)
令和1年5月16日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提
出
令和1年7月17日付け :訂正請求があった旨の通知書
令和1年8月20日 :異議申立人による意見書の提出
第2 訂正の適否
1 訂正の内容
特許権者によって令和1年5月16日に提出された訂正請求書による訂正請求(以下、「本件訂正請求」という。)の内容は、特許第6184546号の明細書及び特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1及び2〕について訂正することを求めるものであり、その具体的内容は次のとおりである(下線は、訂正箇所である。)。
なお、本件訂正請求により、平成30年8月10日に提出された訂正請求書による訂正請求は、取り下げられたものとみなされる(特許法第120条の5第7項)。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に記載された「前記揺動歯車を構成する素材の線膨張係数は、10.8~13.6μ/Kである」を「 前記揺動歯車は、炭素含有量が0.2%以下又は0.7~1.0%の鉄系材料で構成され、炭素含有量が0.2%以下の場合における前記揺動歯車を構成する素材の線膨張係数が13.6μ/Kとなり、炭素含有量が0.7~1.0%の場合における前記揺動歯車を構成する素材の線膨張係数が12.0~12.5μ/Kとなるように、焼き入れ硬化されている」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2も同様に訂正する。)。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に記載された「前記第1筒部は、アルミニウム合金製であり、前記揺動歯車は、鉄系材料で構成されている」を「前記第1筒部は、アルミニウム合金製であり、前記揺動歯車は、前記鉄系材料で構成されている」に訂正する。
(3)訂正事項3
願書に添付した明細書の段落【0006】を「 前記の目的を達成するため、本発明は、第1の部材と第2の部材との間で所定の回転数比で回転数を変換して駆動力を伝達する歯車装置であって、偏心部と、前記偏心部が挿入される挿通孔を有すると共に歯部を有する揺動歯車と、前記第1の部材及び前記第2の部材の一方に取り付け可能に構成される第1筒部と、前記第1の部材及び前記第2の部材の他方に取り付け可能に構成される第2筒部と、を備え、前記第1筒部は、前記揺動歯車の材質よりも線膨張係数の大きな材質で構成されるとともに、前記揺動歯車の前記歯部と噛み合う内歯を有しており、前記第2筒部は、前記揺動歯車を保持した状態で前記第1筒部の径方向内側に配置され、前記第1筒部と前記第2筒部とは、前記偏心部の回転に伴う前記揺動歯車の揺動によって同心状に互いに相対的に回転可能であり、前記第1筒部を構成する素材の線膨張係数は、20.0~23.5μ/Kであり、前記揺動歯車は、炭素含有量が0.2%以下又は0.7~1.0%の鉄系材料で構成され、炭素含有量が0.2%以下の場合における前記揺動歯車を構成する素材の線膨張係数が13.6μ/Kとなり、炭素含有量が0.7~1.0%の場合における前記揺動歯車を構成する素材の線膨張係数が12.0~12.5μ/Kとなるように、焼き入れ硬化されている偏心揺動歯車装置である。」に訂正する。
(4)訂正事項4
願書に添付した明細書の段落【0008】を「 ここで、前記第1筒部は、アルミニウム合金製であり、前記揺動歯車は、前記鉄系材料で構成されていてもよい。」 に訂正する。
訂正前の請求項2は、訂正の対象である請求項1の記載を引用している関係にあるから、本件訂正は一群の請求項〔1及び2〕について請求されている。
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1
ア 訂正事項1は、訂正前の請求項1に係る発明における「揺動歯車」の構成をより具体的に特定し、限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 訂正事項1での訂正内容は、願書に添付した明細書の段落【0036】の「・・・揺動歯車14,16は、炭素含有量が0.7~1.0%の鋼製(高炭素鋼製)、あるいは炭素含有量が0.2%以下の鋼製(低炭素鋼製)としてもよく、・・・さらに、これらの鉄系素材を焼入れ硬化させると、炭素含有量0.2%以下の場合に、線膨張係数は13.6μ/Kとなり、また炭素含有量0.7~1.0%の場合に、線膨張係数は12.0~12.5μ/Kとなる。・・・」との記載に基づいて導き出せるから、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内おいてされたものであり、請求項1に係る発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものでもないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(2)訂正事項2
ア 訂正事項1によって、訂正後の請求項1に係る発明において、「揺動歯車」を構成する素材が特定の鉄系材料であると具体的に特定したことに対応して、訂正事項2によって、訂正前の請求項2にある「鉄系材料」との記載を、訂正後の請求項2では「前記鉄系材料」に訂正し、もって、訂正後の請求項2に係る発明における「揺動歯車」においても、その素材について、当該請求項が引用する請求項1との関係で整合させ、限定するものであるといえる。
したがって、訂正事項2は、明瞭でない記載の釈明及び特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 訂正事項2は、訂正事項1と連動するものであり、その訂正事項1が上記(1)イより、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内おいてされたものであるといえるところ、上記アを踏まえれば、訂正事項2も、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてされたものである。そして、訂正事項2は、請求項2に係る発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものでもないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(3)訂正事項3及び4
訂正事項3及び4は、訂正事項1及び2によって、特許請求の範囲の記載が訂正されることから、当該特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るためのものである。
したがって、訂正事項3及び4は、不明瞭な記載の釈明を目的とするものであり、上記(1)及び(2)を踏まえると、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてされたものであるといえるし、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
3 小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求に係る訂正事項1~4は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1及び2〕について訂正することを認める。
第3 訂正後の本件発明
本件訂正請求は上記「第2」に説示のとおり認められるので、本件訂正請求により訂正された請求項1および2に係る発明(以下、「本件発明1」及び「本件発明2」という。)は、令和1年5月16日に提出の訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
[本件発明1]
「第1の部材と第2の部材との間で所定の回転数比で回転数を変換して駆動力を伝達する歯車装置であって、
偏心部と、
前記偏心部が挿入される挿通孔を有すると共に歯部を有する揺動歯車と、
前記第1の部材及び前記第2の部材の一方に取り付け可能に構成される第1筒部と、
前記第1の部材及び前記第2の部材の他方に取り付け可能に構成される第2筒部と、を備え、
前記第1筒部は、前記揺動歯車の材質よりも線膨張係数の大きな材質で構成されるとともに、前記揺動歯車の前記歯部と噛み合う内歯を有しており、
前記第2筒部は、前記揺動歯車を保持した状態で前記第1筒部の径方向内側に配置され、
前記第1筒部と前記第2筒部とは、前記偏心部の回転に伴う前記揺動歯車の揺動によって同心状に互いに相対的に回転可能であり、
前記第1筒部を構成する素材の線膨張係数は、20.0~23.5μ/Kであり、
前記揺動歯車は、炭素含有量が0.2%以下又は0.7~1.0%の鉄系材料で構成され、炭素含有量が0.2%以下の場合における前記揺動歯車を構成する素材の線膨張係数が13.6μ/Kとなり、炭素含有量が0.7~1.0%の場合における前記揺動歯車を構成する素材の線膨張係数が12.0~12.5μ/Kとなるように、焼き入れ硬化されている偏心揺動型歯車装置。」
[本件発明2]
「前記第1筒部は、アルミニウム合金製であり、前記揺動歯車は、前記鉄系材料で構成されている請求項1に記載の偏心揺動型歯車装置。」
第4 取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由
取消理由の概要
訂正前の請求項1及び2に係る特許に対して、当審が平成31年3月12日付けの取消理由通知書(決定の予告)で特許権者に通知した取消理由の概要は次のとおりである。
[取消理由]
本件特許の請求項1及び2に係る発明は、その出願日前に日本国内または外国において頒布された下記の引用文献1に記載された発明、引用文献2に記載された事項及び引用文献3~5に記載された当業者における周知・慣用の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消されるべきものである。
引用文献
引用文献1:特開2010-101454号公報
引用文献2:特開2011-94662号公報
引用文献3:特開平4-331851号公報
引用文献4:特開2008-8437号公報
引用文献5:特開2000-213605号公報
上記引用文献1は、特許異議申立人による特許異議申立書での甲第6号証であり、同様に、引用文献2、引用文献3、引用文献4及び引用文献5は、それぞれ甲第5号証、甲第1号証、甲第4号証及び甲第7号証である。
第5 当審の判断
1 取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由について
(1)引用文献1に記載の事項及び発明
取消理由通知(決定の予告)で引用した引用文献1(特開2010-101454号公報)には、「減速装置」に関し、図面とともに次の記載がある(下線は当審で付した。)。
(i)「【0001】
本発明は、出力部材と固定部材との間に介在される主軸受を備えた減速装置に関する。」
(ii)「【0015】
この減速装置2は、ロボットを制御するための、例えばバックラッシ15分(15/60度)~1分(1/60度)程度の精密機械に使用されるもので、前段に図示せぬモータからの駆動力を受ける等速直交歯車機構4、後段に内接噛合遊星歯車構造の減速歯車機構6を備える。この減速装置2はロボット(全体は図示略)の第1部材8と第2部材10との間に配置され、第1部材8に対し第2部材10を相対的に回転駆動する。従って、この実施形態では、後述する第1、第2フランジ体12、14が固定部材、ケーシング16が出力部材に相当している。即ち、いわゆる枠回転型の減速装置である。」
(iii)「【0018】
モータ軸22の先端には第1ベベル歯車24が直切りされている。第1ベベル歯車24は同じ歯数の第2ベベル歯車26と噛合することによって前記等速直交歯車機構4を形成し、回転方向を直角に変更している。第2ベベル歯車26は後段の減速歯車機構6の入力軸32にスプライン34を介して連結されている。(後段の)入力軸32は1対の玉軸受36、38にて第1、第2フランジ体12、14に支持されている。入力軸32には3個の偏心体40A~40Cが一体的に形成されている。各偏心体40A~40Cの偏心位相は円周方向に120度ずつずれている。各偏心体40A~40Cの外周には、ころ42A~42Cを介して計3枚の外歯歯車44A~44Cが揺動回転自在に組み込まれている。各外歯歯車44A~44Cは内歯歯車46に内接噛合している。
【0019】
内歯歯車46の歯数は、外歯歯車44A~44Cの歯数より「1」だけ多く設定されている。内歯歯車46は、この実施形態ではケーシング16と一体化され、(枠回転型の)出力部材として機能している。また、該内歯歯車46の内歯は、円弧歯形であり、具体的には円弧状の溝46Aに回転自在に嵌入された円筒状の外ピン46Bによって構成されている。内歯歯車46は、ボルト47を介してロボットの前記第2部材10と連結されている。内歯歯車46の軸方向両端部の内周には該主軸受18、20が配置されている。この内歯歯車46及び主軸受18、20付近の構成については、後に詳述する。
【0020】
各外歯歯車44A~44Cには、複数の内ピン孔44A1~44C1が軸方向に貫通して形成されている。内ピン孔44A1~44C1には内ローラ48の被せられた内ピン50が(偏心体40A~40Cの偏心量に相当する分の隙間を有して)遊嵌している。内ピン50は第1フランジ体12から一体的に突出・形成されており、ボルト52によって第2フランジ体14と連結されている。従って、第1、第2フランジ体12、14は、共に固定部材として一体的にロボットの前記第1部材8に固定されていることになる。」
(iv)「【0029】
モータ軸22が回転すると該モータ軸22に形成されている第1ベベル歯車24が回転する。第1ベベル歯車24が回転すると、該第1ベベル歯車24と噛合している第2ベベル歯車26が回転し、スプライン34を介して後段の減速歯車機構6の入力軸32が回転する。入力軸32が回転すると、偏心体40A~40C及びころ42A~42Cを介して3枚の外歯歯車44A~44Cが円周方向に120度の位相で偏心揺動する。
【0030】
この実施形態では、各外歯歯車44A~44Cの内ピン孔44A1~44C1を内ピン50が貫通しており、第1、第2フランジ体12、14と一体化された状態でロボットの第1部材8に固定されているため、各外歯歯車44A~44Cは自転をすることができない。このため、入力軸32が1回回転して各外歯歯車44A~44Cが1回揺動すると、該外歯歯車44A~44Cの揺動によって内歯歯車46との噛合位置が順次ずれ、内歯歯車46が外歯歯車44A~44Cに対して歯数差「1」の分だけ相対回転する(自転する)現象が起こる。この内歯歯車46の回転は、該内歯歯車46と一体化されているケーシング16の回転となって現れ、ボルト47を介してロボットの第2部材10を(ロボットの第1部材8に対して)回転させる。・・・」
(v)「【0031】
ここで、この実施形態では、第1、第2フランジ体12、14が背面合わせで組み込まれた一対の主軸受18、20にてケーシング16の軸方向両端部の内周で支持されている。主軸受18、20の各円筒ころ60A、61Aは、内輪側は、第1、第2フランジ体12、14の転走面12A、14Aに直接接触している。即ち、第1、第2フランジ体12、14自体が円筒ころ60A、61Aの内輪として機能している。また、外輪側は、各円筒ころ60A、61Aは、シートメタル62、63の転走面62A,63Aに接触しており、シートメタル62、63の反転走面62B、63Bがケーシング16の受面16A、16Bに当接している。このため、シートメタル62、63は主軸受18、20の転走面62A、63Aとしての硬度を提供し、一方、ケーシングの受面16A,16Bは、該シートメタル62、63を背面から支えることで、主軸受18、20に必要な真円度及び剛性を提供することになる。従って、ケーシング16自体を軸受鋼のような鋼材で製造する必要がなく、鋳造による製造で十分であるため、重量・大型部材であるケーシング16を低コストで製造できるようになる。また、ケーシング16は主軸受18、20の転走面を提供しないので、受面16A、16Bに対して特別な表面硬化処理を行う必要もない。以上のことから、減速装置の設計の自由度を高めることもできる。一方、シートメタル62、63は、ケーシング16の受面16A、16Bによって反転走面62B、63B側が支持されているため(通常の軸受の外輪ならば必要とされる)真円度や剛性を確保する必要がなく、転走面62A、63Aとして所定の特性(例えば硬度、あるいは摩擦係数等)の観点で吟味された素材を使用することができる。また、シートメタル62、63は1枚の鋼板から製造することができるため、低コストである。」
(vi)「【0048】
なお、上記実施形態においては鋳鉄によってケーシングを製造するようにしていたが、ケーシング(あるいはフランジ体)の素材は、(軸受の素材としての特性が要求されないため)例えば、アルミニウム等で製造することも可能であり、この場合には装置全体の軽量化が実現できる。」
以上の記載事項及び図示内容からみて、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
[引用発明]
「ロボットの第1部材8と第2部材10との間に配置され、第1部材8に対し第2部材10を相対的に回転駆動する減速装置2であって、
3個の偏心体40A~40Cが一体的に形成されている入力軸32が第1、第2フランジ体12、14に支持されており、
各偏心体40A~40Cの外周には、3枚の外歯歯車44A~44Cが揺動回転自在に組み込まれており、
各外歯歯車44A~44Cは内歯歯車46に内接噛合しており、
内歯歯車46は、ボルト47を介してロボットの前記第2部材10と連結されているアルミニウム等で製造されたケーシング16と一体化され、出力部材として機能しており、
第1、第2フランジ体12、14は、共に固定部材として一体的にロボットの前記第1部材8に固定されており、また、ケーシング16の軸方向両端部の内周で支持されており、
各外歯歯車44A~44Cには、複数の内ピン孔44A1~44C1が軸方向に貫通して形成されており、
各外歯歯車44A~44Cの内ピン孔44A1~44C1には、第1フランジ体12から一体的に突出・形成されている内ピン50が(偏心体40A~40Cの偏心量に相当する分の隙間を有して)遊嵌しており、
入力軸32が1回回転して各外歯歯車44A~44Cが1回揺動すると、内歯歯車46が相対回転(自転)し、
この内歯歯車46の回転が、該内歯歯車46と一体化されているケーシング16の回転となって現れるものである、
減速装置2。」
(2)引用文献2に記載の事項
引用文献2には、次の記載がある
「【0009】
ここで、インホイールモータにおいて、主軸の材料に使われることの多い炭素鋼の線膨張係数は、おおよそ11×10-6から13×10-6[K-1]の範囲にあり、ケースの材料に使われることの多いアルミニウム合金の線膨張係数は、おおよそ21×10-6から24×10-6[K-1]の範囲にある。・・・」
(3)対比・判断
ア 対比
本件発明1と引用発明とを対比する。
(ア)引用発明の「ロボットの第1部材8」及び「第2部材10」は、それぞれ本件発明1の「第1の部材」及び「第2の部材」に相当する。
引用発明の「減速装置2」が、所定の回転数比で回転数を変換して駆動力を伝達する装置であることは当業者には自明である。また、引用発明の「減速装置2」は、「入力軸32が1回回転して各外歯歯車44A~44Cが1回揺動すると、内歯歯車46が相対回転(自転)」するものであるから、歯車装置であるといえる。
したがって、引用発明の「ロボットの第1部材8と第2部材10との間に配置され、第1部材8に対し第2部材10を相対的に回転駆動する減速装置2」は、本件発明1の「第1の部材と第2の部材との間で所定の回転数比で回転数を変換して駆動力を伝達する歯車装置」に相当する。
(イ)引用発明の「3個の偏心体40A~40Cが一体的に形成されている入力軸32」は、その機能・構造からみて本件発明1の「偏心部」に相当する。
(ウ)引用発明の「3枚の外歯歯車44A~44C」は、「各偏心体40A~40Cの外周」に「揺動回転自在に組み込まれて」いるものであるから、本件発明1の「歯部を有する揺動歯車」に相当し、引用発明の「各偏心体40A~40Cの外周には、3枚の外歯歯車44A~44Cが揺動回転自在に組み込まれて」いることは、本件発明1の「前記偏心部が挿入される挿入孔を有すると共に歯部を有する揺動歯車と」「を備え」ることに相当する。
(エ)引用発明の「内歯歯車46」は、「ボルト47を介してロボットの前記第2部材10と連結されているアルミニウム等で製造されたケーシング16と一体化され、出力部材として機能して」いるから、引用発明の「ケーシング16」は、第2の部材に取り付け可能に構成されているといえる。また、引用発明の「ケーシング16」は「第1、第2フランジ体12、14」を「ケーシング16の軸方向両端部の内周で支持」するものであり、図1も参酌すると、その形状は筒状であるといえる。したがって、引用発明の「ケーシング16」は、本件発明1の「第1筒部」に相当する。
(オ)引用発明の「第1、第2フランジ体12、14は、共に固定部材として一体的にロボットの前記第1部材8に固定されて」いるものであるから、第1の部材に取り付け可能に構成されているといえる。また、図1よりその形状は筒状であるといえる。したがって、引用発明の第1フランジ体12及び第2フランジ体114を合わせたものは、本件発明1の「第2筒部」に相当する。
(カ)上記(エ)及び(オ)より、引用発明の「内歯歯車46は、ボルト47を介してロボットの前記第2部材10と連結されているアルミニウム等で製造されたケーシング16と一体化され、出力部材として機能しており、第1、第2フランジ体12、14は、共に固定部材として一体的にロボットの前記第1部材8に固定されており、また、ケーシング16の軸方向両端部の内周で支持されて」いることは、本件発明1の「前記第1の部材及び前記第2の部材の一方に取り付け可能に構成される第1筒部と、前記第1の部材及び第2の部材の他方に取り付け可能に構成される第2筒部と、を備え」ることに相当する。
(キ)引用発明の「各外歯歯車44A~44C」は「内歯歯車46に内接噛合して」いるものであり、また、引用発明の「ケーシング16」は、3枚の外歯歯車44A~44Cの歯部と噛み合う「内歯歯車46」を有している。したがって、上記(エ)を踏まえると、引用発明の「内歯歯車46は、ボルト47を介してロボットの前記第2部材10と連結されているアルミニウム等で製造されたケーシング16と一体化され、出力部材として機能して」いることは、本件発明1の「前記第1筒部は、前記揺動歯車の材質よりも線膨張係数の大きな材質で構成されるとともに、前記揺動歯車の前記歯部と噛み合う内歯を有しており」との対比において、「前記第1筒部は、前記揺動歯車の前記歯部と噛み合う内歯を有しており」との限度で共通する。
(ク)引用発明の「第1、第2フランジ体12、14」は、「ケーシング16の軸方向両端部の内周で支持されて」いるから、「ケーシング16」の径方向内側に配置されているといえる。また、引用発明は「各外歯歯車44A~44Cには、複数の内ピン孔44A1~44C1が軸方向に貫通して形成されており、各外歯歯車44A~44Cの内ピン孔44A1~44C1には、第1フランジ体12から一体的に突出・形成されている内ピン50が(偏心体40A~40Cの偏心量に相当する分の隙間を有して)遊嵌して」いるものであるから、引用発明の「第1、第2フランジ体12、14」は、各外歯歯車44A~44Cを保持した状態であるといえる。
したがって、引用発明において、「第1、第2フランジ体12、14は、」「ケーシング16の軸方向両端部の内周で支持されており、各外歯歯車44A~44Cには、複数の内ピン孔44A1~44C1が軸方向に貫通して形成されており、各外歯歯車44A~44Cの内ピン孔44A1~44C1には、第1フランジ体12から一体的に突出・形成されている内ピン50が(偏心体40A~40Cの偏心量に相当する分の隙間を有して)遊嵌して」いることは、本件発明1の「前記第2筒部は、前記揺動歯車を保持した状態で前記第1筒部の径方向内側に配置され」ていることに相当する。
(ケ)引用発明は、「入力軸32が1回回転して各外歯歯車44A~44Cが1回揺動すると、内歯歯車46が相対回転(自転)し、この内歯歯車46の回転が、該内歯歯車46と一体化されているケーシング16の回転となって現れるものである」。したがって、引用発明のケーシング16と第1、第2フランジ体12、14とは、入力軸32の回転に伴う各外歯歯車44A~44Cの揺動によって同心状に互いに相対的に回転可能であるといえる。
よって、引用発明の「入力軸32が1回回転して各外歯歯車44A~44Cが1回揺動すると、内歯歯車46が相対回転(自転)し、この内歯歯車46の回転が、該内歯歯車46と一体化されているケーシング16の回転となって現れるものである」ことは、本件発明1の「前記第1筒部と前記第2筒部とは、前記偏心部の回転に伴う前記揺動歯車の揺動によって同心状に互いに相対的に回転可能であ」ることに相当する。
(コ)引用発明の「回転減速装置2」は、機能・構造からみて、本件発明1の「偏心揺動形歯車装置」に相当する。
(サ)以上のとおりであるので、本件発明1と引用発明との一致点及び相違点は次のとおりとなる。
<一致点>
「第1の部材と第2の部材との間で所定の回転数比で回転数を変換して駆動力を伝達する歯車装置であって、
偏心部と、
前記偏心部が挿入される挿通孔を有すると共に歯部を有する揺動歯車と、 前記第1の部材及び前記第2の部材の一方に取り付け可能に構成される第1筒部と、
前記第1の部材及び前記第2の部材の他方に取り付け可能に構成される第2筒部と、を備え、
前記第1筒部は、前記揺動歯車の前記歯部と噛み合う内歯を有しており、 前記第2筒部は、前記揺動歯車を保持した状態で前記第1筒部の径方向内側に配置され、
前記第1筒部と前記第2筒部とは、前記偏心部の回転に伴う前記揺動歯車の揺動によって同心状に互いに相対的に回転可能である、
偏心揺動型歯車装置。」
<相違点>
本件発明1は、「前記第1筒部は、前記揺動歯車の材質よりも線膨張係数の大きな材質で構成され」、また、「前記第1筒部を構成する素材の線膨張係数は、20.0~23.5μ/Kであり、前記揺動歯車は、炭素含有量が0.2%以下又は0.7~1.0%の鉄系材料で構成され、炭素含有量が0.2%以下の場合における前記揺動歯車を構成する素材の線膨張係数が13.6μ/Kとなり、炭素含有量が0.7~1.0%の場合における前記揺動歯車を構成する素材の線膨張係数が、12.0~12.5μ/Kとなるように、焼き入れ硬化されている」のに対し、引用発明の「ケーシング16」の線膨張係数の「3枚の外歯歯車44A~44C」の線膨張係数との関係は特定されておらず、また、「3枚の外歯歯車44A~44C」の材質及び焼き入れ硬化後の線膨張係数の具体的数値も特定されていない点。
イ 判断
上記相違点について検討する。
(ア)引用発明の「ケーシング16」は、「アルミニウム等で製造された」ものとされる一方で、「3枚の外歯歯車44A~44C」については、その材質は特定されていない。また、「3枚の外歯歯車44A~44C」を焼き入れ硬化することについては、引用文献1には、記載も示唆もされていない。
さらに、取消理由通知で引用した引用文献3~5のいずれにも、内歯を有する筒状部材と当該内歯と噛合する外歯を有する揺動歯車を具備する偏心揺動型歯車装置において、筒部を、揺動歯車の材質よりも線膨張係数の大きな材質で構成することは、記載も示唆もされておらず、まして、当該構成と併せて揺動歯車を焼き入れ硬化する構成を採用することは、記載も示唆もされていない。
なお、取消理由通知で引用した引用文献2にも、かかる構成についての記載も示唆もないし、かかる構成が当業者にとって自明であるともいえない。
したがって、引用発明において、相違点に係る本件発明1の構成の構成となすことは当業者であっても容易にはなし得ない。
(イ)異議申立人は、令和1年8月20日に提出した意見書の中で、上記相違点に関し、「偏心揺動型歯車装置の分野においては、SUJ2を素材として外歯歯車(揺動歯車)を作成することは周知の技術であり、SUJ2の炭素含有量は、0.95~1.0%の範囲で、訂正発明1の『炭素含有量が0.7~1.0%の鉄系材料で構成され』に含まれるものであり、さらに、SUJ2を焼入れ、焼戻しの熱処理を行うことにより線膨張係数は12.5×10-6/℃となることは良く知られた事実であります。そうすると、訂正された『前記揺動歯車は、炭素含有量が0.2%以下又は0.7~1.0%の鉄系材料で構成され、炭素含有量が0.2%以下の場合における前記揺動歯車を構成する素材の線膨張係数が13.6μ/Kとなり、炭素含有量が0.7~1.0%の場合における前記揺動歯車を構成する素材の線膨張係数が、12.0~12.5μ/Kとなるように、焼き入れ硬化されている』との構成は、周知の技術及び当業者によく知られた事実に基づいて、当業者が容易に想到し得たものです。」と主張する(第3頁下から8行~第4頁第5行)。
しかしながら、鉄系材料であるSUJ2の外歯歯車への採用が必然的にSUJ2の熱処理を伴うものとはいえないことからすれば、上記異議申立人の主張によれば、引用発明において、相違点に係る本件発明1の構成となすために、まず、SUJ2を素材とした外歯歯車を、「3枚の外歯歯車44A~44C」として採用した上で、さらに、所定の線膨張係数を得るために、当該SUJ2を素材とした外歯歯車に熱処理を施すという2段階の論理構成(いわゆる「容易の容易」)による必要があり、たとえ、外歯歯車の素材をSUJ2とすること、及び、SUJ2の素材を熱処理することにより所定の線膨張係数が得られることが当業者によく知られた事項であるとしても、このような2段階の論理構成により、引用発明において相違点に係る本件発明1となすことは当業者にとって容易に想到し得たものとはいえない。
なお、偏心揺動型歯車装置において外歯歯車を熱処理した鉄系材料とすることは、偏心揺動型歯車装置において必須であるとはいえない(引用文献5(特開2000-213605号公報)の段落【0020】を参照。)。
(ウ)くわうるに、本件発明1(及び2)は、「偏心揺動型歯車装置では、使用時にキャリア内の温度が外筒の温度よりも高くなる。このため、使用時には揺動歯車が熱膨張するが、この熱膨張により、揺動歯車の外歯と外筒の内歯との間のすき間が狭くなり、揺動歯車の歯面の面圧が高くなり、その結果、揺動歯車の寿命を低下させるという問題がある。」(本件明細書段落【0004】)という課題認識のもと、かかる課題を解決するために、「第1筒部の材質を揺動歯車の材質よりも線膨張係数の大きなものにするだけでなく、第1筒部及び揺動歯車の素材が特定の線膨張係数を有するように焼き入れ硬化処理で調整」するという手段を選択し、これにより、「偏心揺動型歯車装置の使用時に第1筒部、第2筒部及び揺動歯車が昇温したときに、第1筒部が揺動歯車よりも膨張する。このため、第1筒部の内歯と揺動歯車の歯部との間のすき間、すなわち、第1筒部の内周面と揺動歯車との間のすき間が使用前の状態よりも狭くなることがない。」(本件明細書段落【0007】)という作用効果を得たものと解される(特許権者の令和1年5月16日に提出した意見書第6頁第12行~第19行)。
一方、異議申立人の提出したどの証拠も、内歯を有する筒状部材と当該内歯と噛合する外歯を有する揺動歯車を具備する偏心揺動型歯車装置の使用時における上記課題に着目し、筒状部材と揺動歯車について、所定の熱膨張差の生じる特定の材質及び熱処理を選択するという技術的事項を開示ないし示唆するものではない。
してみれば、偏心揺動型歯車装置の使用時における上記課題を解決するために、引用発明において、ケーシング16の材質を3枚の外歯歯車44A~44Cの材質よりも線膨張係数の大きなものとし、さらに、ケーシング16及び3枚の外歯歯車44A~44Cの素材が特定の線膨張係数を有するように焼き入れ硬化処理するという手段を適用し、もって、相違点に係る本件発明1の構成となすことは、当業者であっても容易になし得たものとはいえない。
したがって、異議申立人の上記主張は採用できない。
(エ)そして、本件発明1は、相違点に係る本件発明1の構成を有することにより、「偏心揺動型歯車装置の使用時に第1筒部、第2筒部及び揺動歯車が昇温したときに、第1筒部が揺動歯車よりも膨張する。このため、第1筒部の内歯と揺動歯車の歯部との間のすき間、すなわち、第1筒部の内周面と揺動歯車との間のすき間が使用前の状態よりも狭くなることがない。」(本件明細書段落【0007】)という格別の作用効果を奏するものといる。
(オ)以上のとおりであるから、本件発明1は、引用文献1に記載された発明であるともいえないし、引用文献1に記載された発明(引用発明)及び引用文献2~5に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
2 取消理由通知(決定の予告)において採用しなかった異議申立理由について
(1)特許法第36条第6項第2号について
異議申立人は、特許異議申立書において、特許請求の範囲に関し、請求項1の「第1の部材」及び「第2の部材」は、実施例においてどの構成を示すのかが、明細書及び図面に具体的に示されていないから、「第1の部材」と「第2の部材」を含む構成が不明になっており、特許を受けようとする発明が不明確である旨主張する。
しかしながら、本件明細書の段落【0002】には、「二つの相手側部材間で所定の減速比で回転数を減速する偏心揺動型歯車装置が知られている。この偏心揺動型歯車装置は、一方の相手側部材に固定される外筒と、外筒内に配置されるとともに、もう一方の相手側部材に固定されるキャリアとをそなえており」と記載され、当業者の技術常識をもってすれば、「第1の部材」が「二つの相手側部材」の「一方の相手側部材」に、「第2の部材」が「もう一方の相手側部材」に対応することが明確にわかるから、特許を受けようとする発明が不明確であるとはいえず、本件特許の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第2号の要件を満たしている。
したがって、異議申立人のかかる主張は採用できない。
(2)特許法第36条第4項第1号について
異議申立人は、特許異議申立書において、請求項1の「第1の部材」及び「第2の部材」は、明細書及び図面において、どの構成を示すのか記載されていないから、本件明細書の発明の詳細な説明の記載は、当業者が請求項1及び2に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものではない旨主張する。
しかしながら、本件明細書の段落【0002】には、「二つの相手側部材間で所定の減速比で回転数を減速する偏心揺動型歯車装置が知られている。この偏心揺動型歯車装置は、一方の相手側部材に固定される外筒と、外筒内に配置されるとともに、もう一方の相手側部材に固定されるキャリアとをそなえており」と記載され、当業者の技術常識をもってすれば、「第1の部材」が「二つの相手側部材」の「一方の相手側部材」に、「第2の部材」が「もう一方の相手側部材」に対応することが明確にわかるから、【発明を実施するための形態】において、外筒2が一方の相手側部材に、キャリア4がもう一方の相手側部材に、それぞれ固定されるものであることが、明確かつ十分に記載されているといえる。
したがって、本件明細書の発明の詳細な説明の記載は、当業者が請求項1及び2に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されているといえ、特許法第36条第4項第1号の要件を満たしている。
よって、異議申立人のかかる主張は採用できない。
(3)特許法第29条第2項について
特許異議申立人は、訂正前の請求項1及び2に係る発明について、
異議申立人は、特許異議申立書において、請求項1及び2に係る発明は、甲第1号証(引用文献3:特開平4-331851号公報)、甲第2号証(特開2010-71462号公報)に記載された発明及び本件特許出願日前において周知の事実に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである旨主張し、また、同じく請求項1及び2に係る発明は、甲第3号証(特開2010-249262号公報)に記載された発明、甲第4号証(引用文献4:特開2008-8437号公報)に記載された発明、甲第5号証(引用文献2:特開2011-94662号公報)に記載された発明及び本件特許出願日前において周知の事実に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである旨主張する。
しかしながら、甲第1号証、甲第2号証、甲第3号証、甲第4号証及び甲第5号証のいずれにも、訂正後の請求項1及び2に係る発明(本件特許1及び2)の発明特定事項である、内歯を有する筒状部材と当該内歯と噛合する外歯を有する揺動歯車を具備する偏心揺動型歯車装置において、筒部を、揺動歯車の材質よりも線膨張係数の大きな材質で構成することは、記載も示唆もされておらず、まして、当該構成と併せて揺動歯車を焼き入れ硬化する構成を採用することは、記載も示唆もされていない。また、当該事項が当業者にとって自明であるともいえない。
したがって、訂正後の請求項1および2に係る発明は、甲第1号証(引用文献3:特開平4-331851号公報)、甲第2号証(特開2010-71462号公報)に記載された発明及び本件特許出願日前において周知の事実に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないし、また、甲第3号証(特開2010-249262号公報)に記載された発明、甲第4号証(引用文献4:特開2008-8437号公報)に記載された発明、甲第5号証(引用文献2:特開2011-94662号公報)に記載された発明及び本件特許出願日前において周知の事実に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。
よって、申立人のかかる主張は採用できない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由(決定の予告)に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1及び2に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1及び2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2018-700144