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特許異議申立

2020-700744

難燃性エアーバッグ、難燃性エアーバッグの製造方法、及び難燃性エアーバッグ用付加硬化型液状シリコーンゴム組成物

審判番号
2020-700744
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2019-505792外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
登録番号
6737394
請求日
2020年09月30日
審決日
2022年01月11日
公報発行日
2022年04月28日
結論
訂正認容
当事者
審判長/審判官
分類
P1651.536-YAA(D06M) / P1651.537-YAA(D06M)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第6737394号発明「難燃性エアーバッグ、難燃性エアーバッグの製造方法、及び難燃性エアーバッグ用付加硬化型液状シリコーンゴム組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論
特許第6737394号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書および訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-5〕、〔6-9〕、〔10-12〕について訂正することを認める。
特許第6737394号の請求項1ないし12に係る特許を維持する。

理由

目次 ▾ 12項目
理 由

1 手続の経緯

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特許第6737394号の請求項1ないし12に係る特許についての出願は、平成30年2月16日(優先権主張 平成29年3月15日)を国際出願日とする出願であって、令和2年7月20日にその特許権の設定登録がされ、令和2年8月5日に特許掲載公報が発行された。その特許についての本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。

令和2年 9月30日 : 特許異議申立人 大澤 豊(以下、「特許異議申立人」という。)による特許異議の申立て
令和3年 3月16日付け: 取消理由通知書
令和3年 5月19日 : 特許権者による意見書及び訂正請求書の提出

同 年 7月 9日付け: 訂正請求があった旨の通知(特許法第120条の5第5項)。特許異議申立人からは、意見書の提出はなかった。

同 年11月 1日付け: 訂正拒絶理由通知書

同 年12月 1日 : 特許権者による手続補正書及び意見書の提出

2 訂正の適否についての判断

(1)訂正の内容

令和3年12月1日提出の手続補正書により補正された本件訂正請求書による訂正の内容は、以下の訂正事項1~6のとおりである。

ア 訂正事項1

1-1 請求項1に「(B)0.05~0.15mol/100gのアルケニル基が2官能性のR1R2SiO2/2単位・・・

3官能性のR3SiO3/2単位(T単位、式中、R3は独立して、炭素数1~8のアルキル基、又は炭素数6~12のアリール基から選ばれる基である。)」と記載されているのを、

「(B)0.05~0.15mol/100gのアルケニル基が2官能性のR1R2SiO2/2単位・・・
3官能性のR3SiO3/2単位(T単位、式中、R3はメチル基である。)」に訂正する。(請求項1の記載を引用する請求項2~5も同様に訂正する。)

1-2 請求項1に「(B)0.05~0.15mol/100gのアルケニル基が2官能性のR1R2SiO2/2単位・・・及び/又は4官能性のSiO4/2単位(Q単位)の分岐鎖状シロキサン単位に対する単官能性のR33SiO1/2単位(M単位、式中、R3は上記と同じである。)の比(M単位/T及び/又はQ単位)が0.65~1.40で、」と記載されているのを、

「(B)0.05~0.15mol/100gのアルケニル基が2官能性のR1R2SiO2/2単位・・・又は4官能性のSiO4/2単位(Q単位)の分岐鎖状シロキサン単位に対する単官能性のR33SiO1/2単位(M単位、式中、R3は上記と同じである。)の比(M単位/T単位またはM単位/Q単位)が0.65~1.40で、」に訂正する。(請求項1の記載を引用する請求項2~5も同様に訂正する。)

1-3 請求項1に「(C)BET法における比表面積が50m2/g以上のシリカ微粉末:0.1~50質量部、」と記載されているのを、

「(C)BET法における比表面積が50m2/g以上のシリカ微粉末:10~30質量部、」に訂正する。(請求項1の記載を引用する請求項2~5も同様に訂正する。)

1-4 請求項1に「(D)1分子中に少なくとも2個のケイ素原子に結合した水素原子を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン:(D)成分の1分子中に含まれるケイ素原子に結合した水素原子の数が、(A)及び(B)成分中のケイ素原子結合アルケニル基の合計1個当たり、1~10個となる量、」と記載されているのを、

「(D)1分子中に少なくとも2個のケイ素原子に結合した水素原子を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン:(D)成分の1分子中に含まれるケイ素原子に結合した水素原子の数が、(A)及び(B)成分中のケイ素原子結合アルケニル基1個に対して、1~10個となる量、」に訂正する。(請求項1の記載を引用する請求項2~5も同様に訂正する。)

イ 訂正事項2

明細書の発明の詳細な説明の段落【0008】の

「〔1〕
(A)ケイ素原子に結合した炭素数2~8のアルケニル基を1分子中に2個以上含有する25℃で液状のオルガノポリシロキサン:100質量部、
(B)0.05~0.15mol/100gのアルケニル基が2官能性のR1R2SiO2/2単位(D単位、式中、R1は炭素数2~8のアルケニル基、R2は炭素数1~8のアルキル基、炭素数2~8のアルケニル基、炭素数6~12のアリール基から選ばれる基である。)のみに結合し、
3官能性のR3SiO3/2単位(T単位、式中、R3は独立して、炭素数1~8のアルキル基、又は炭素数6~12のアリール基から選ばれる基である。)及び/又は4官能性のSiO4/2単位(Q単位)の分岐鎖状シロキサン単位に対する単官能性のR33SiO1/2単位(M単位、式中、R3は上記と同じである。)の比(M単位/T及び/又はQ単位)が0.65~1.40で、
水酸基量が0.040mol/100g以下である三次元網状オルガノポリシロキサンレジン:5~100質量部、
(C)BET法における比表面積が50m2/g以上のシリカ微粉末:0.1~50質量部、
(D)1分子中に少なくとも2個のケイ素原子に結合した水素原子を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン:(D)成分の1分子中に含まれるケイ素原子に結合した水素原子の数が、(A)及び(B)成分中のケイ素原子結合アルケニル基の合計1個当たり、1~10個となる量、
(E)ヒドロシリル化反応用触媒としての白金族金属系触媒:有効量、
(F)接着性付与官能基を含有する有機ケイ素化合物:0.1~10質量部を含む、コーティング量5~150g/m2の付加硬化型液状シリコーンゴム組成物の硬化被膜がエアーバッグ用基布の少なくとも片面に形成されてなることを特徴とする難燃性エアーバッグ。」という記載を
「〔1〕
(A)ケイ素原子に結合した炭素数2~8のアルケニル基を1分子中に2個以上含有する25℃で液状のオルガノポリシロキサン:100質量部、
(B)0.05~0.15mol/100gのアルケニル基が2官能性のR1R2SiO2/2単位(D単位、式中、R1は炭素数2~8のアルケニル基、R2は炭素数1~8のアルキル基、炭素数2~8のアルケニル基、炭素数6~12のアリール基から選ばれる基である。)のみに結合し、
3官能性のR3SiO3/2単位(T単位、式中、R3はメチル基である。)又は4官能性のSiO4/2単位(Q単位)の分岐鎖状シロキサン単位に対する単官能性のR33SiO1/2単位(M単位、式中、R3は上記と同じである。)の比(M単位/T単位またはM単位/Q単位)が0.65~1.40で、
水酸基量が0.040mol/100g以下である三次元網状オルガノポリシロキサンレジン:5~100質量部、
(C)BET法における比表面積が50m2/g以上のシリカ微粉末:10~30質量部、
(D)1分子中に少なくとも2個のケイ素原子に結合した水素原子を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン:(D)成分の1分子中に含まれるケイ素原子に結合した水素原子の数が、(A)及び(B)成分中のケイ素原子結合アルケニル基1個に対して、1~10個となる量、
(E)ヒドロシリル化反応用触媒としての白金族金属系触媒:有効量、
(F)接着性付与官能基を含有する有機ケイ素化合物:0.1~10質量部を含む、コーティング量5~150g/m2の付加硬化型液状シリコーンゴム組成物の硬化被膜がエアーバッグ用基布の少なくとも片面に形成されてなることを特徴とする難燃性エアーバッグ。」に訂正する。

ウ 訂正事項3

3-1 請求項6に「(B)0.05~0.15mol/100gのアルケニル基が2官能性のR1R2SiO2/2単位・・・

3官能性のR3SiO3/2単位(T単位、式中、R3は独立して、炭素数1~8のアルキル基、又は炭素数6~12のアリール基から選ばれる基である。)」と記載されているのを、

「(B)0.05~0.15mol/100gのアルケニル基が2官能性のR1R2SiO2/2単位・・・
3官能性のR3SiO3/2単位(T単位、式中、R3はメチル基である。)」に訂正する。(請求項6の記載を引用する請求項7~9も同様に訂正する。)

3-2 請求項6に「(B)0.05~0.15mol/100gのアルケニル基が2官能性のR1R2SiO2/2単位・・・及び/又は4官能性のSiO4/2単位(Q単位)の分岐鎖状シロキサン単位に対する単官能性のR33SiO1/2単位(M単位、式中、R3は上記と同じである。)の比(M単位/T及び/又はQ単位)が0.65~1.40で、」と記載されているのを、

「(B)0.05~0.15mol/100gのアルケニル基が2官能性のR1R2SiO2/2単位・・・又は4官能性のSiO4/2単位(Q単位)の分岐鎖状シロキサン単位に対する単官能性のR33SiO1/2単位(M単位、式中、R3は上記と同じである。)の比(M単位/T単位またはM単位/Q単位)が0.65~1.40で、」に訂正する。(請求項6の記載を引用する請求項7~9も同様に訂正する。)

3-3 請求項6に「(C)BET法における比表面積が50m2/g以上のシリカ微粉末:0.1~50質量部、」と記載されているのを、

「(C)BET法における比表面積が50m2/g以上のシリカ微粉末:10~30質量部、」に訂正する。(請求項6の記載を引用する請求項7~9も同様に訂正する。)

3-4 請求項6に「(D)1分子中に少なくとも2個のケイ素原子に結合した水素原子を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン:(D)成分の1分子中に含まれるケイ素原子に結合した水素原子の数が、(A)及び(B)成分中のケイ素原子結合アルケニル基の合計1個当たり、1~10個となる量、」と記載されているのを、

「(D)1分子中に少なくとも2個のケイ素原子に結合した水素原子を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン:(D)成分の1分子中に含まれるケイ素原子に結合した水素原子の数が、(A)及び(B)成分中のケイ素原子結合アルケニル基1個に対して、1~10個となる量、」に訂正する。(請求項6の記載を引用する請求項7~9も同様に訂正する。)

エ 訂正事項4

明細書の発明の詳細な説明の段落【0008】の

「〔6〕
(A)ケイ素原子に結合した炭素数2~8のアルケニル基を1分子中に2個以上含有する25℃で液状のオルガノポリシロキサン:100質量部、
(B)0.05~0.15mol/100gのアルケニル基が2官能性のR1R2SiO2/2単位(D単位、式中、R1は炭素数2~8のアルケニル基、R2は炭素数1~8のアルキル基、炭素数2~8のアルケニル基、炭素数6~12のアリール基から選ばれる基である。)のみに結合し、
3官能性のR3SiO3/2単位(T単位、式中、R3は独立して、炭素数1~8のアルキル基、又は炭素数6~12のアリール基から選ばれる基である。)及び/又は4官能性のSiO4/2単位(Q単位)の分岐鎖状シロキサン単位に対する単官能性のR33SiO1/2単位(M単位、式中、R3は上記と同じである。)の比(M単位/T及び/又はQ単位)が0.65~1.40で、
水酸基量が0.040mol/100g以下である三次元網状オルガノポリシロキサンレジン:5~100質量部、
(C)BET法における比表面積が50m2/g以上のシリカ微粉末:0.1~50質量部、
(D)1分子中に少なくとも2個のケイ素原子に結合した水素原子を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン:(D)成分の1分子中に含まれるケイ素原子に結合した水素原子の数が、(A)及び(B)成分中のケイ素原子結合アルケニル基の合計1個当たり、1~10個となる量、
(E)ヒドロシリル化反応用触媒としての白金族金属系触媒:有効量、
(F)接着性付与官能基を含有する有機ケイ素化合物:0.1~10質量部を含む付加硬化型液状シリコーンゴム組成物を調製する工程、前記組成物をエアーバッグ用基布の少なくとも片面に5~150g/m2のコーティング量で塗布する工程、及び前記組成物が塗布された基布を加熱硬化する工程を有することを特徴とする難燃性エアーバッグの製造方法。」という記載を
「〔6〕
(A)ケイ素原子に結合した炭素数2~8のアルケニル基を1分子中に2個以上含有する25℃で液状のオルガノポリシロキサン:100質量部、
(B)0.05~0.15mol/100gのアルケニル基が2官能性のR1R2SiO2/2単位(D単位、式中、R1は炭素数2~8のアルケニル基、R2は炭素数1~8のアルキル基、炭素数2~8のアルケニル基、炭素数6~12のアリール基から選ばれる基である。)のみに結合し、
3官能性のR3SiO3/2単位(T単位、式中、R3はメチル基である。)又は4官能性のSiO4/2単位(Q単位)の分岐鎖状シロキサン単位に対する単官能性のR33SiO1/2単位(M単位、式中、R3は上記と同じである。)の比(M単位/T単位またはM単位/Q単位)が0.65~1.40で、
水酸基量が0.040mol/100g以下である三次元網状オルガノポリシロキサンレジン:5~100質量部、
(C)BET法における比表面積が50m2/g以上のシリカ微粉末:10~30質量部、
(D)1分子中に少なくとも2個のケイ素原子に結合した水素原子を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン:(D)成分の1分子中に含まれるケイ素原子に結合した水素原子の数が、(A)及び(B)成分中のケイ素原子結合アルケニル基1個に対して、1~10個となる量、
(E)ヒドロシリル化反応用触媒としての白金族金属系触媒:有効量、
(F)接着性付与官能基を含有する有機ケイ素化合物:0.1~10質量部を含む付加硬化型液状シリコーンゴム組成物を調製する工程、前記組成物をエアーバッグ用基布の少なくとも片面に5~150g/m2のコーティング量で塗布する工程、及び前記組成物が塗布された基布を加熱硬化する工程を有することを特徴とする難燃性エアーバッグの製造方法。」に訂正する。

オ 訂正事項5

5-1 請求項10に「(B)0.05~0.15mol/100gのアルケニル基が2官能性のR1R2SiO2/2単位・・・

3官能性のR3SiO3/2単位(T単位、式中、R3は独立して、炭素数1~8のアルキル基、又は炭素数6~12のアリール基から選ばれる基である。)」と記載されているのを、

「(B)0.05~0.15mol/100gのアルケニル基が2官能性のR1R2SiO2/2単位・・・
3官能性のR3SiO3/2単位(T単位、式中、R3はメチル基である。)」に訂正する。(請求項10の記載を引用する請求項11~12も同様に訂正する。)

5-2 請求項10に「(B)0.05~0.15mol/100gのアルケニル基が2官能性のR1R2SiO2/2単位・・・及び/又は4官能性のSiO4/2単位(Q単位)の分岐鎖状シロキサン単位に対する単官能性のR33SiO1/2単位(M単位、式中、R3は上記と同じである。)の比(M単位/T及び/又はQ単位)が0.65~1.40で、」と記載されているのを、

「(B)0.05~0.15mol/100gのアルケニル基が2官能性のR1R2SiO2/2単位・・・又は4官能性のSiO4/2単位(Q単位)の分岐鎖状シロキサン単位に対する単官能性のR33SiO1/2単位(M単位、式中、R3は上記と同じである。)の比(M単位/T単位またはM単位/Q単位)が0.65~1.40で、」に訂正する。(請求項10の記載を引用する請求項11~12も同様に訂正する。)

5-3 請求項10に「(C)BET法における比表面積が50m2/g以上のシリカ微粉末:0.1~50質量部、」と記載されているのを、

「(C)BET法における比表面積が50m2/g以上のシリカ微粉末:10~30質量部、」に訂正する。(請求項10の記載を引用する請求項11~12も同様に訂正する。)

5-4 請求項10に「(D)1分子中に少なくとも2個のケイ素原子に結合した水素原子を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン:(D)成分の1分子中に含まれるケイ素原子に結合した水素原子の数が、(A)及び(B)成分中のケイ素原子結合アルケニル基の合計1個当たり、1~10個となる量、」と記載されているのを、

「(D)1分子中に少なくとも2個のケイ素原子に結合した水素原子を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン:(D)成分の1分子中に含まれるケイ素原子に結合した水素原子の数が、(A)及び(B)成分中のケイ素原子結合アルケニル基1個に対して、1~10個となる量、」に訂正する。(請求項10の記載を引用する請求項11~12も同様に訂正する。)

カ 訂正事項6

明細書の発明の詳細な説明の段落【0008】の

「〔10〕
(A)ケイ素原子に結合した炭素数2~8のアルケニル基を1分子中に2個以上含有する25℃で液状のオルガノポリシロキサン:100質量部、
(B)0.05~0.15mol/100gのアルケニル基が2官能性のR1R2SiO2/2単位(D単位、式中、R1は炭素数2~8のアルケニル基、R2は炭素数1~8のアルキル基、炭素数2~8のアルケニル基、炭素数6~12のアリール基から選ばれる基である。)のみに結合し、
3官能性のR3SiO3/2単位(T単位、式中、R3は独立して、炭素数1~8のアルキル基、又は炭素数6~12のアリール基から選ばれる基である。)及び/又は4官能性のSiO4/2単位(Q単位)の分岐鎖状シロキサン単位に対する単官能性のR33SiO1/2単位(M単位、式中、R3は上記と同じである。)の比(M単位/T及び/又はQ単位)が0.65~1.40で、
水酸基の量が0.040mol/100g以下である三次元網状オルガノポリシロキサンレジン:5~100質量部、
(C)BET法における比表面積が50m2/g以上のシリカ微粉末:0.1~50質量部、
(D)1分子中に少なくとも2個のケイ素原子に結合した水素原子を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン:(D)成分の1分子中に含まれるケイ素原子に結合した水素原子の数が、(A)及び(B)成分中のケイ素原子結合アルケニル基の合計1個当たり、1~10個となる量、
(E)ヒドロシリル化反応用触媒としての白金族金属系触媒:有効量、
(F)接着性付与官能基を含有する有機ケイ素化合物:0.1~10質量部を含むことを特徴とする難燃性エアーバッグ用付加硬化型液状シリコーンゴム組成物。」という記載を
「〔10〕
(A)ケイ素原子に結合した炭素数2~8のアルケニル基を1分子中に2個以上含有する25℃で液状のオルガノポリシロキサン:100質量部、
(B)0.05~0.15mol/100gのアルケニル基が2官能性のR1R2SiO2/2単位(D単位、式中、R1は炭素数2~8のアルケニル基、R2は炭素数1~8のアルキル基、炭素数2~8のアルケニル基、炭素数6~12のアリール基から選ばれる基である。)のみに結合し、
3官能性のR3SiO3/2単位(T単位、式中、R3はメチル基である。)又は4官能性のSiO4/2単位(Q単位)の分岐鎖状シロキサン単位に対する単官能性のR33SiO1/2単位(M単位、式中、R3は上記と同じである。)の比(M単位/T単位またはM単位/Q単位)が0.65~1.40で、
水酸基の量が0.040mol/100g以下である三次元網状オルガノポリシロキサンレジン:5~100質量部、
(C)BET法における比表面積が50m2/g以上のシリカ微粉末:10~30質量部、
(D)1分子中に少なくとも2個のケイ素原子に結合した水素原子を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン:(D)成分の1分子中に含まれるケイ素原子に結合した水素原子の数が、(A)及び(B)成分中のケイ素原子結合アルケニル基1個に対して、1~10個となる量、
(E)ヒドロシリル化反応用触媒としての白金族金属系触媒:有効量、
(F)接着性付与官能基を含有する有機ケイ素化合物:0.1~10質量部を含むことを特徴とする難燃性エアーバッグ用付加硬化型液状シリコーンゴム組成物。」に訂正する。

本件訂正請求の訂正事項1、2は、一群の請求項〔1-5〕に対して請求されたものである。また、訂正事項3、4に係る訂正は、一群の請求項〔6-9〕について請求されたものである。さらに訂正事項5、6は、一群の請求項〔10-12〕について請求されたものである。

(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否

ア 訂正事項1に係る訂正について

訂正事項1のうち、訂正事項1-1に係る訂正は、請求項1に係る「(B)」中の「3官能性のR3SiO3/2単位」とされる「R3」が採り得る対象範囲を、「メチル基」のみに限定する訂正であるから、係る訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

訂正事項1-2に係る訂正は、請求項1に係る「(B)」中の「比」の分母の候補として、訂正前は「3官能性」の「T単位」及び/又は「4官能性」の「Q単位」とされていたものを、「又は」のみとすると共に、これに伴って訂正前の「(M単位/T及び/又はQ単位)」を「(M単位/T単位またはM単位/Q単位)」に修正する訂正である。この訂正は訂正前の記載が明瞭でなかったものを訂正により明瞭とするものであるから、係る訂正は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

訂正事項1-3に係る訂正は、請求項1に係る「(C)」成分の配合量を、訂正前に「0.1~50質量部」とされていたものを、「10~30質量部」へと、その数値範囲を狭める訂正であるから、係る訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

訂正事項1-4に係る訂正は、請求項1に係る「(D)」中の1分子中に含まれるケイ素原子に結合した水素原子の数について、訂正前は「ケイ素原子結合アルケニル基の合計1個あたり、」とされていたものを、「ケイ素原子結合アルケニル基1個に対して、」に修正する訂正である。この訂正は訂正前の記載が明瞭でなかったものを訂正により明瞭とするものであるから、係る訂正は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

次に、明細書の発明の詳細な説明には、訂正事項1-1に関し、【0023】に好ましい例として記載がなされ、訂正事項1-2に関し、【0024】に意図する比の正確な記載がなされ、訂正事項1-3に関し、【0037】に好ましい範囲の記載がなされ、訂正事項1-4に関し、【0043】に意図する正確な記載がなされている。よって、上記訂正事項1-1~1-4は、本件特許明細書に記載された事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないと認められる。

イ 訂正事項2に係る訂正について

上記訂正事項2に係る訂正は、上記アの特許請求の範囲の訂正に伴う明細書の訂正である。そうすると、当該訂正は、明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正であって、上記アで示したとおり新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

ウ 訂正事項3に係る訂正について

上記訂正事項3のうち、訂正事項3-1に係る訂正は、請求項6に係る「(B)」中の「3官能性のR3SiO3/2単位」とされる「R3」が採り得る対象範囲を、「メチル基」のみに限定する訂正であるから、係る訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

訂正事項3-2に係る訂正は、請求項6に係る「(B)」中の「比」の分母の候補として、訂正前は「3官能性」の「T単位」及び/又は「4官能性」の「Q単位」とされていたものを、「又は」のみとすると共に、これに伴って訂正前の「(M単位/T及び/又はQ単位)」を「(M単位/T単位またはM単位/Q単位)」に修正する訂正である。この訂正は訂正前の記載が明瞭でなかったものを訂正により明瞭とするものであるから、係る訂正は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

訂正事項3-3に係る訂正は、請求項6に係る「(C)」成分の配合量を、訂正前に「0.1~50質量部」とされていたものを、「10~30質量部」へと、その数値範囲を狭める訂正であるから、係る訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

訂正事項3-4に係る訂正は、請求項6に係る「(D)」中の1分子中に含まれるケイ素原子に結合した水素原子の数について、訂正前は「ケイ素原子結合アルケニル基の合計1個あたり、」とされていたものを、「ケイ素原子結合アルケニル基1個に対して、」に修正する訂正である。この訂正は訂正前の記載が明瞭でなかったものを訂正により明瞭とするものであるから、係る訂正は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

次に、明細書の発明の詳細な説明には、訂正事項3-1に関し、【0023】に好ましい例として記載がなされ、訂正事項3-2に関し、【0024】に意図する比の正確な記載がなされ、訂正事項3-3に関し、【0037】に好ましい範囲の記載がなされ、訂正事項3-4に関し、【0043】に意図する正確な記載がなされている。よって、上記訂正事項3-1~3-4は、本件特許明細書に記載された事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないと認められる。

エ 訂正事項4に係る訂正について

上記訂正事項4に係る訂正は、上記ウの特許請求の範囲の訂正に伴う明細書の訂正である。そうすると、当該訂正は、明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正であって、上記ウで示したとおり新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

オ 訂正事項5に係る訂正について

上記訂正事項5のうち、訂正事項5-1に係る訂正は、請求項10に係る「(B)」中の「3官能性のR3SiO3/2単位」とされる「R3」が採り得る対象範囲を、「メチル基」のみに限定する訂正であるから、係る訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

訂正事項5-2に係る訂正は、請求項10に係る「(B)」中の「比」の分母の候補として、訂正前は「3官能性」の「T単位」及び/又は「4官能性」の「Q単位」とされていたものを、「又は」のみとすると共に、これに伴って訂正前の「(M単位/T及び/又はQ単位)」を「(M単位/T単位またはM単位/Q単位)」に修正する訂正である。この訂正は訂正前の記載が明瞭でなかったものを訂正により明瞭とするものであるから、係る訂正は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

訂正事項5-3に係る訂正は、請求項10に係る「(C)」成分の配合量を、訂正前に「0.1~50質量部」とされていたものを、「10~30質量部」へと、その数値範囲を狭める訂正であるから、係る訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

訂正事項5-4に係る訂正は、請求項10に係る「(D)」中の1分子中に含まれるケイ素原子に結合した水素原子の数について、訂正前は「ケイ素原子結合アルケニル基の合計1個あたり、」とされていたものを、「ケイ素原子結合アルケニル基1個に対して、」に修正する訂正である。この訂正は訂正前の記載が明瞭でなかったものを訂正により明瞭とするものであるから、係る訂正は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

次に、明細書の発明の詳細な説明には、訂正事項5-1に関し、【0023】に好ましい例として記載がなされ、訂正事項5-2に関し、【0024】に意図する比の正確な記載がなされ、訂正事項5-3に関し、【0037】に好ましい範囲の記載がなされ、訂正事項5-4に関し、【0043】に意図する正確な記載がなされている。よって、上記訂正事項5-1~5-4は、本件特許明細書に記載された事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないと認められる。

カ 訂正事項6に係る訂正について

上記訂正事項6に係る訂正は、上記オの特許請求の範囲の訂正に伴う明細書の訂正である。そうすると、当該訂正は、明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正であって、上記オで示したとおり新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(3)小括

以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第4項ないし第6項の規定に適合する。

したがって、明細書、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-5〕、〔6-9〕、〔10-12〕について訂正することを認める。

3 本件特許発明

本件訂正請求により訂正された請求項1ないし12に係る発明(以下「本件発明1ないし12」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1ないし12に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。

【請求項1】(A)ケイ素原子に結合した炭素数2~8のアルケニル基を1分子中に2個以上含有する25℃で液状のオルガノポリシロキサン:100質量部、

(B)0.05~0.15mol/100gのアルケニル基が2官能性のR1R2SiO2/2単位(D単位、式中、R1は炭素数2~8のアルケニル基、R2は炭素数1~8のアルキル基、炭素数2~8のアルケニル基、炭素数6~12のアリール基から選ばれる基である。)のみに結合し、

3官能性のR3SiO3/2単位(T単位、式中、R3はメチル基である。)又は4官能性のSiO4/2単位(Q単位)の分岐鎖状シロキサン単位に対する単官能性のR33SiO1/2単位(M単位、式中、R3は上記と同じである。)の比(M単位/T単位またはM単位/Q単位)が0.65~1.40で、

水酸基量が0.040mol/100g以下

である三次元網状オルガノポリシロキサンレジン:5~100質量部、

(C)BET法における比表面積が50m2/g以上のシリカ微粉末:10~30質量部、

(D)1分子中に少なくとも2個のケイ素原子に結合した水素原子を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン:(D)成分の1分子中に含まれるケイ素原子に結合した水素原子の数が、(A)及び(B)成分中のケイ素原子結合アルケニル基1個に対して、1~10個となる量、

(E)ヒドロシリル化反応用触媒としての白金族金属系触媒:有効量、

(F)接着性付与官能基を含有する有機ケイ素化合物:0.1~10質量部

を含む、コーティング量5~150g/m2の付加硬化型液状シリコーンゴム組成物の硬化被膜がエアーバッグ用基布の少なくとも片面に形成されてなることを特徴とする難燃性エアーバッグ。

【請求項2】付加硬化型液状シリコーンゴム組成物が、更に、(G)成分として、有機チタニウム化合物及び有機ジルコニウム化合物から選ばれる少なくとも1種の縮合助触媒を(A)成分100質量部に対して0.1~5質量部含有することを特徴とする請求項1記載の難燃性エアーバッグ。

【請求項3】(C)成分が、表面疎水化シリカ微粉末であることを特徴とする請求項1又は2記載の難燃性エアーバッグ。

【請求項4】(F)成分が、接着性付与官能基として1分子中にエポキシ基とケイ素原子結合アルコキシ基とを有する有機ケイ素化合物であることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項記載の難燃性エアーバッグ。

【請求項5】エアーバッグのFMVSS No.302燃焼試験における燃焼速度が40mm/min.以下であることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項記載の難燃性エアーバッグ。

【請求項6】(A)ケイ素原子に結合した炭素数2~8のアルケニル基を1分子中に2個以上含有する25℃で液状のオルガノポリシロキサン:100質量部、

(B)0.05~0.15mol/100gのアルケニル基が2官能性のR1R2SiO2/2単位(D単位、式中、R1は炭素数2~8のアルケニル基、R2は炭素数1~8のアルキル基、炭素数2~8のアルケニル基、炭素数6~12のアリール基から選ばれる基である。)のみに結合し、

3官能性のR3SiO3/2単位(T単位、式中、R3はメチル基である。)又は4官能性のSiO4/2単位(Q単位)の分岐鎖状シロキサン単位に対する単官能性のR33SiO1/2単位(M単位、式中、R3は上記と同じである。)の比(M単位/T単位またはM単位/Q単位)が0.65~1.40で、

水酸基量が0.040mol/100g以下

である三次元網状オルガノポリシロキサンレジン:5~100質量部、

(C)BET法における比表面積が50m2/g以上のシリカ微粉末:10~30質量部、

(D)1分子中に少なくとも2個のケイ素原子に結合した水素原子を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン:(D)成分の1分子中に含まれるケイ素原子に結合した水素原子の数が、(A)及び(B)成分中のケイ素原子結合アルケニル基1個に対して、1~10個となる量、

(E)ヒドロシリル化反応用触媒としての白金族金属系触媒:有効量、

(F)接着性付与官能基を含有する有機ケイ素化合物:0.1~10質量部

を含む付加硬化型液状シリコーンゴム組成物を調製する工程、前記組成物をエアーバッグ用基布の少なくとも片面に5~150g/m2のコーティング量で塗布する工程、及び前記組成物が塗布された基布を加熱硬化する工程を有することを特徴とする難燃性エアーバッグの製造方法。

【請求項7】付加硬化型液状シリコーンゴム組成物が、更に、(G)成分として、有機チタニウム化合物及び有機ジルコニウム化合物から選ばれる少なくとも1種の縮合助触媒を(A)成分100質量部に対して0.1~5質量部含有することを特徴とする請求項6記載の難燃性エアーバッグの製造方法。

【請求項8】付加硬化型液状シリコーンゴム組成物を調製する工程において、(C)成分に、予め表面処理された表面疎水化シリカ微粉末を用いるか、又は上記調製工程において表面処理されてなる表面疎水化シリカ微粉末を用いるかの、いずれかの工程を含むことを特徴とする請求項6又は7記載の難燃性エアーバッグの製造方法。

【請求項9】付加硬化型液状シリコーンゴム組成物のJIS K 7117-1:1999に記載の方法で測定した25℃における粘度が1,000~1,000,000mPa・sであることを特徴とする請求項6~8のいずれか1項記載の難燃性エアーバッグの製造方法。

【請求項10】(A)ケイ素原子に結合した炭素数2~8のアルケニル基を1分子中に2個以上含有する25℃で液状のオルガノポリシロキサン:100質量部、

(B)0.05~0.15mol/100gのアルケニル基が2官能性のR1R2SiO2/2単位(D単位、式中、R1は炭素数2~8のアルケニル基、R2は炭素数1~8のアルキル基、炭素数2~8のアルケニル基、炭素数6~12のアリール基から選ばれる基である。)のみに結合し、

3官能性のR3SiO3/2単位(T単位、式中、R3はメチル基である。)又は4官能性のSiO4/2単位(Q単位)の分岐鎖状シロキサン単位に対する単官能性のR33SiO1/2単位(M単位、式中、R3は上記と同じである。)の比(M単位/T単位またはM単位/Q単位)が0.65~1.40で、

水酸基の量が0.040mol/100g以下である三次元網状オルガノポリシロキサンレジン:5~100質量部、

(C)BET法における比表面積が50m2/g以上のシリカ微粉末:10~30質量部、

(D)1分子中に少なくとも2個のケイ素原子に結合した水素原子を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン:(D)成分の1分子中に含まれるケイ素原子に結合した水素原子の数が、(A)及び(B)成分中のケイ素原子結合アルケニル基1個に対して、1~10個となる量、

(E)ヒドロシリル化反応用触媒としての白金族金属系触媒:有効量、

(F)接着性付与官能基を含有する有機ケイ素化合物:0.1~10質量部

を含むことを特徴とする難燃性エアーバッグ用付加硬化型液状シリコーンゴム組成物。

【請求項11】付加硬化型液状シリコーンゴム組成物が、更に、(G)成分として、有機チタニウム化合物及び有機ジルコニウム化合物から選ばれる少なくとも1種の縮合助触媒を(A)成分100質量部に対して0.1~5質量部含有することを特徴とする請求項10記載の難燃性エアーバッグ用付加硬化型液状シリコーンゴム組成物。

【請求項12】付加硬化型液状シリコーンゴム組成物のJIS K 7117-1:1999に記載の方法で測定した25℃における粘度が1,000~1,000,000mPa・sであることを特徴とする請求項10又は11記載の難燃性エアーバッグ用付加硬化型液状シリコーンゴム組成物。

4 取消理由通知に記載した取消理由について

(1)取消理由の概要

訂正前の請求項1ないし12に係る特許に対して、当審が令和3年3月16日に特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。

ア 本件特許は、明細書の記載が不備のため、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消されるべきものである。

イ 本件特許は、特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消されるべきものである。

ウ 本件特許は、特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消されるべきものである。

(2)各取消理由の詳細

ア 特許法第36条第4項第1号に係る理由

本件特許明細書には、実施例3として、「実施例1において三次元網状構造のオルガノポリシロキサンレジン(B1)を(CH3)3SiO1/2単位と(CH3)(CH2=CH)SiO2/2単位とSiO3/2単位からなり、」(【0069】)と記載されている。しかし、「SiO3/2単位」について具体的に記載されていない。

そうすると、実施例3は、具体的に実施できる程度に記載されているとはいえない。

イ 特許法第36条第6項第1号に係る理由

本件発明が解決しようとする課題は、「FMVSS NO.302に規定される低燃焼速度性に優れ、且つ機械的強度にも優れる難燃性エアーバッグ、難燃性エアーバッグの製造方法、及び難燃性エアーバッグ用付加硬化型液状シリコーンゴム組成物を提供すること」(【0006】)である。

そして、本件特許明細書には、実施例1~3のみ(【0064】~【0076】)が、上記課題を解決することが記載されている。

また、【0026】、【0028】、【0032】、【0037】、【0043】等には、アルケニル基量、水酸基量、シリカ微粉末の比表面積と配合量、オルガノハイドロジェンポリシロキサンの配合量等が上記課題に影響することが記載されているが、具体的には、各成分により燃焼速度や機械強度が異なることが技術常識であるから、上記記載を参酌しても、実施例1~3の記載から、本願特許発明の全範囲のものが、上記課題を解決するとは理解できない。

したがって、本件特許発明は、本件特許明細書に記載されたものでない。

ウ 特許法第36条第6項第2号に係る理由

a.請求項1中の「3官能性のR3SiO3/2単位(T単位、式中、R3は独立して、炭素数1~8のアルキル基、又は炭素数6~12のアリール基から選ばれる基である。)及び/又は4官能性のSiO4/2単位(Q単位)の分岐鎖状シロキサン単位に対する単官能性のR33SiO1/2単位(M単位、式中、R3は上記と同じである。)の比(M単位/T及び/又はQ単位)」は、文言上、T単位及びQ単位を含む場合に、M単位/(T又はQ単位)、又はM単位/(T及びQ単位)と読むこと等もでき、当該「比」は、一義的に決定せず、明確でない。

b.請求項1中の「(D)成分の1分子中に含まれるケイ素原子に結合した水素原子の数が、(A)及び(B)成分中のケイ素原子結合アルケニル基の合計1個当たり、1~10個となる量」とは、「合計1個当たり」の意味が不明確である。

本件特許明細書の【0043】には、「1個に対して」と記載されており、整合するのかも明確でない。

c.請求項6の対応する記載も同様である。

また、請求項1を引用する請求項2~5、及び請求項6を引用する請求項7~12も同様である。

(3)当審の判断

ア 特許法第36条第4項第1号について

本件特許明細書の【0069】には、本件発明1、6、及び10における発明特定事項(B)の「三次元網状オルガノポリシロキサンレジン」が「3官能性のR3SiO3/2単位」を有する態様として、実施例3の組成物が記載されている。

当該「3官能性のR3SiO3/2単位」を有する態様に関する発明の詳細な説明の他の記載としては、【0023】に「R3」の採り得る候補が列記されている。この【0023】の記載を援用することにより、実施例3の「SiO3/2単位」と結合する「R3」の有機基を選択でき、発明の実施は当業者にとり十分に行えると認められる。よって、発明の詳細な説明の記載は、当業者が請求項1ないし12に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものである。

イ 特許法第36条第6項第1号について

本件発明1ないし12が解決しようとする課題(本件特許明細書の【0006】)に対して、本件特許明細書の発明の詳細な説明のうち、【0028】には(B)成分中のケイ素原子に結合した水酸基の含有量に関し、その数値範囲を定めるに当たっての理由が付され、【0032】には(C)成分のシリカ微粉末の比表面積の数値範囲を定めるに当たっての理由が付され、【0037】には(C)成分の配合量の数値範囲を定めるに当たっての理由が付され、【0043】には(D)成分の配合に係るケイ素原子結合水素原子数の適値を定めるに当たっての理由が付されていることが確認できる。

そうすると、本件発明1ないし12は、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものである。

ウ 特許法第36条第6項第2号について

上記(2)ウに挙げた、a.請求項1の比に関する記載箇所が多義的である点、b.請求項1の「合計1個あたり」の表現及び明細書との不整合の点、c.請求項6に記載の同様の箇所で生じている不備の点、については、いずれも本件訂正の上記訂正事項1、3、5に係る訂正により解消された。

よって、本件発明1~12は明確である。

5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について

特許異議申立人は、

理由1:特許異議申立書の第19-25頁において、訂正前の請求項1ないし12にかかる特許発明は、以下の(ア)~(エ)の点で発明の詳細な説明に記載されているとはいえないから、特許法第36条第6項第1号の規定に違反してなされたものであり、取り消されるべき
理由2:特許異議申立書の第25-59頁において、訂正前の請求項1ないし12にかかる特許発明は、甲第1号証ないし甲第6号証に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない

旨を主張する。

甲第1号証:特開昭60-51754号公報
甲第2号証:特開2001-164187号公報
甲第3号証:特表2012-514143号公報
甲第4号証:特表2002-504612号公報
甲第5号証:米国特許第5658674号明細書
甲第6号証:特開平6-329917号公報

<理由1>について

(ア)本件発明1の「(B)0.05~0.15mol/100gのアルケニル基が2官能性のR1R2SiO2/2単位(D単位、式中、R1は炭素数2~8のアルケニル基、R2は炭素数1~8のアルキル基、炭素数2~8のアルケニル基、炭素数6~12のアリール基から選ばれる基である。)のみに結合し、

3官能性のR3SiO3/2単位(T単位、式中、R3は独立して、炭素数1~8のアルキル基、又は炭素数6~12のアリール基から選ばれる基である。)及び/又は4官能性のSiO4/2単位(Q単位)の分岐鎖状シロキサン単位に対する単官能性のR33SiO1/2単位(M単位、式中、R3は上記と同じである。)の比(M単位/T及び/又はQ単位)が0.65~1.40で、

水酸基量が0.040mol/100g以下である三次元網状オルガノポリシロキサンレジン:5~100質量部」について、課題が解決されたとする場合は発明の詳細な説明では実施例1~3で示された特定のアルケニル基量、配合量及び比のみであるところ、前記本件発明1で特定した範囲すべてを、課題を解決できるとはいえない。

(イ)本件発明1の上記「(B)」成分について、所定の効果を奏することが示された発明の詳細な説明での記載は、実施例1、2だけであり、実施例3では示されておらず、加えて実施例3で用いられる(B2)成分自体が明確でもないから、本件明細書において本件発明1の三次元網状オルガノポリシロキサンレジン(B)が、2官能性のR1R2SiO2/2単位(D単位)と、4官能性のSiO4/2単位(Q単位)と、単官能性のR33SiO1/2単位(M単位)とで構成されている場合以外について、所定の三次元網状オルガノポリシロキサンレジン(B)を用いることで本件発明の課題を解決できることを、当業者が認識できるように記載されているとは言えない。

(ウ)本件発明1の「(C)・・・シリカ微粉末:0.1~50質量部」について、本件発明の課題が解決できる例として明細書に示されたのは実施例1、3だけであり、上記本件発明1の0.1~50質量部となる全ての場合について本件発明の課題が解決できることを記載していない。

(エ)本件発明1の「(D)・・・オルガノハイドロジェンポリシロキサン:(D)成分の1分子中に含まれるケイ素原子に結合した水素原子の数が、(A)及び(B)成分中のケイ素原子結合アルケニル基の合計1個当たり、1~10個となる量」について、本件発明の課題が解決できる例として明細書に示されたのは実施例1~3だけであり、上記本件発明1の1~10個となる量の全ての場合について本件発明の課題が解決できることを記載していない。

しかしながら、上記(ア)の主張について発明の詳細な説明を見るに、本件発明1の(B)で特定される対象物は、アルケニル基の量の特定に際しての留意事項(【0026】)や、アルケニル基と結合する相手方の好適な範囲(【0021】、【0022】)や、採用したオルガノポリシロキサンレジンを三次元網状とする化学構造における特定事項(【0023】-【0024】)について詳述されており、当該特定の範囲の中で実施例として3例を開示しており、これらの開示された内容と本件発明1における特定との間で特段の齟齬は生じていない。また、上記(イ)~(エ)の主張も、いずれも関係する発明特定事項について、本件特許明細書の発明の詳細な説明で事足りる特定に至る事情の記載があるから、本件特許の訂正前の特許請求の範囲の記載が、発明の詳細な説明に記載されていないとは扱うに足る主張とはいえない。

<理由2>について

特許異議申立人は、甲第1号証に

「Aa (a)25℃で液状のジメチルビニル終端ジメチルポリシロキサンである液体ビニル終端ポリシロキサン:100部、
Ab (b)0.099mol/100gのビニル基が2官能性のメチルビニルシロキサン単位のみに結合し、
4官能性のSiO4/2単位(Q単位)の分岐鎖状シロキサン単位に対する単官能性のトリメチルシロキサン単位の比(M単位/Q単位)が0.8で
水酸基量が0mol/100gである樹脂状オルガノポリシロキサン共重合体:200部、
Ac 石英粉:200重量部以下、
Ad (d)SiO2単位1個当りジメチル水素シロキサン単位を平均2個含有するジメチル水素シロキサン単位とSiO2単位からなる液体オルガノ水素ポリシロキサン:珪素結合ビニル基1個当り約0.5~約1.0個の珪素結合水素原子を与えるのに十分な量、
Ae (c)白金触媒:組成物中の珪素結合ビニル基1モル当り約10-3~約10-6グラム原子の白金を与えるのに十分な量、
Ag を含む、硬化性シリコーン被覆組成物の硬化膜が基礎材料織物の表面に形成されてなる構造体。」

の「甲1発明」が記載されており、本件発明1~12は甲1発明及び甲2~6の記載事項に基づき、当業者が容易に発明ができたものである旨主張する。

しかしながら、甲第1号証に記載されている発明は、そもそも防塵性シリコーン被覆組成物であり、主には屋根を用途と想定したものであって、従来の被覆組成物に比して非吸塵性のものを提供することを課題としたものである(7頁上段右欄~9頁上段右欄参照)。そうすると、本件発明1~12とはわずかに被覆・コーティング素材という点でのみ両者は共通するにとどまり、素材に求める作用や性質の点で最初から大きな隔たりがあると認められる。その結果、甲1発明と本件発明1との間には、少なくとも特許異議申立人がいう(相違点1-1)~(相違点1-6)の多くの相違点が存在する。

そして、係る相違点を本件特許の技術思想に近づけるための動機付けになる記載が甲第1号証の中には見いだせない。

他に参照できる公知技術が記載された書証として、甲第2号証~6号証が添えられており、その中には本件特許の用途と同じ、エアーバッグのコーティング用組成物を対象としたものが甲第2号証、甲第3号証、甲第4号証、甲第5号証として存在するが、これらは甲第2号証、甲第3号証、甲第4号証では(B)成分で相違し、甲第5号証では主成分の選択でいずれも相違し、本件特許の発明特定事項への変更を可とする示唆がない。

そうすると、特許異議申立人が主張する論旨に沿い、本件発明1~12を当業者が容易に発明できたとは認められない。

したがって、特許異議申立人のいずれの主張も、採用することができない。

6 むすび

以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1ないし12に係る特許を取り消すことはできない。

また、他に本件請求項1ないし12に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり決定する。

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2020-700744

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