特許異議申立
2020-700743
外用組成物
- 審判番号
- 2020-700743
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2016-048015
- 登録番号
- 6698387
- 請求日
- 2020年09月30日
- 審決日
- 2022年02月07日
- 公報発行日
- 2022年05月27日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】小林製薬株式会社
- 【権利者代理人】特許業務法人三枝国際特許事務所
- 【異議申立人】永 滋康
- 審判長/審判官
- 審判長 森井 隆信
- 審判官 大久保 元浩
- 審判官 岡崎 美穂
- 分類
- P1651.113-YAA(A61K) / P1651.121-YAA(A61K) / P1651.536-YAA(A61K) / P1651.537-YAA(A61K)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第9項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6698387号発明「外用組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6698387号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項[1~3]について訂正することを認める。
特許第6698387号の請求項1~3に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第6698387号の請求項1~3に係る特許(以下、「本件特許」という。)についての出願は、平成28年3月11日に特許出願したものであって、令和2年5月1日にその特許権の設定登録がされ、同年5月27日に特許掲載公報が発行されたものである。その後、本件特許について、同年9月30日に、特許異議申立人 永 滋康(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、当審は、令和3年3月8日付けで取消理由を通知した。それに対し、特許権者は、同年4月28日に意見書を提出した。また、同年5月20日に刊行物等提出書が提出された。
その後の経緯は以下のとおり。
令和3年 7月26日付け 取消理由通知(決定の予告)
同 年 9月28日提出 特許権者による意見書、訂正請求書(以下、「本件訂正請求」という。)
同 年11月12日提出 申立人による意見書
第2 訂正についての適否
1 訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は、以下の訂正事項1のとおりであり、下線部は訂正箇所を示す。また、当該訂正請求は、訂正前の請求項1を直接又間接的に引用する訂正前の請求項2及び3を含む一群の請求項1~3についてされたものである。
(1) 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に
「ヘパリン類似物質及び非水膨潤性の粉体を含み、前記ヘパリン類似物質の含有量は0.001~10重量%であり、
25℃で流動性を呈し、B型粘度計を用いて、25℃で測定した際における粘度が20,000mPa・s~2,000,000mPa・sである、外用組成物。」
とあるのを
「ヘパリン類似物質及び非水膨潤性の粉体を含み、前記ヘパリン類似物質の含有量は0.001~10重量%であり、
25℃で流動性を呈し、B型粘度計を用いて、25℃で測定した際における粘度が20,000mPa・s~2,000,000mPa・sである、外用組成物
(但し、以下の処方のクリーム及びファンデーションを除く
クリーム:
ヘパリン類似物質 0.3(重量%、以下同様)
ビタミンA油(パルミチン酸レチノール、100万IU/g) 0.5
グリチルリチン酸ジカリウム 0.05
月見草油 3
ライチ種子エキス 0.1
α-リポ酸 0.01
加水分解大豆タンパク 0.1
ブドウ種子エキス 0.005
チガヤ根エキス 0.001
アルテミアエキス 0.5
パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル 10
ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル 5
2,4,6-トリス[4-(2-エチルヘキシルオキシカルボニル)アニリノ]1,3,5-トリアジン 3
シリコーン被覆酸化亜鉛 5
シリコーン被覆酸化チタン 1
無機化合物被覆酸化亜鉛 0.05
グリセリン 5
1,3-ブチレングリコール 2
ラウリルPEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン 1
PEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン 1
トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル 1.5
メチルポリシロキサン 3
デカメチルシクロペンタシロキサン 30
メチルシロキサン網状重合体 5
アクリル酸アルキル共重合体メチルポリシロキサンエステル 0.1
アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体 0.05
マイカ 2
キレート剤 適量
ヒアルロン酸ナトリウム 0.05
酢酸トコフェロール 0.05
防腐剤(パラオキシ安息香酸プロピル、フェノキシエタノール) 適量
pH調整剤 適量
香料 適量
水 残部を含み、
B形粘度計 RB-80L、M-3ロータを用いて、3rpm、1分、25℃の条件下で測定したときの粘度が10000~60000であるクリーム;
ファンデーション:
イ
70%マルチトール水溶液 5 重量部
グリセリン 5 重量部
1,3-ブタンジオール 5 重量部
メチルパラベン 0.2重量部
ブチルパラベン 0.1重量部
ロ
トリグリセリンジイソステアレート 5 重量部
ハ
流動パラフィン 12 重量部
軽質イソパラフィン 8 重量部
マイクロクリスタリンワックス 4 重量部
ネオペンチルグリコールジイソオクタネート 4 重量部
ニ
水 42.5重量部
ヘパリン類似物質 0.1重量部
エルヒビン 0.1重量部
ホ
鉄ドープ二酸化チタン 10 重量部
ジルコニウムドープ二酸化チタン 2 重量部
酸化鉄 3 重量部
タルク 5 重量部
を含有する、乳化したファンデーション;及び
ファンデーション:
イ
70%マルチトール水溶液 5 重量部
グリセリン 5 重量部
1,3-ブタンジオール 5 重量部
メチルパラベン 0.2重量部
ブチルパラベン 0.1重量部
ロ
トリグリセリンジイソステアレート 5 重量部
ハ
流動パラフィン 12 重量部
軽質イソパラフィン 8 重量部
マイクロクリスタリンワックス 4 重量部
ネオペンチルグリコールジイソオクタネート 4 重量部
ニ
水 26.5重量部
ヘパリン類似物質 0.1重量部
ホ
鉄ドープ二酸化チタン 10 重量部
ジルコニウムドープ二酸化チタン 2 重量部
酸化鉄 3 重量部
タルク 5 重量部」
ヘ
水 5 重量部
リパーゼ 0.1重量部
を含有する乳化したファンデーション)。」
に訂正する。
2 訂正の目的の適否、新規事項の追加の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項1は、請求項1に係る発明から、特許法第29条第1項第3号で指摘された引用文献1、4、5記載された発明を除外することとした、いわゆる除くクレームとする訂正であり、特許請求の範囲を減縮しようとするものであるから、当該訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項1は、いわゆる除くクレームとして、指摘された引用文献に係る発明のみを除くものであるから、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてされたものであり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。
そして、訂正事項1は、特許請求の範囲を減縮するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。
3 小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-3〕について訂正することを認める。
第3 訂正後の本件発明
本件訂正請求により訂正された請求項1~3に係る発明(以下、「本件発明1~3」等といい、これらをまとめて「本件発明」ということもある。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~3に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
ヘパリン類似物質及び非水膨潤性の粉体を含み、前記ヘパリン類似物質の含有量は0.001~10重量%であり、
25℃で流動性を呈し、B型粘度計を用いて、25℃で測定した際における粘度が20,000mPa・s~2,000,000mPa・sである、外用組成物
(但し、以下の処方のクリーム及びファンデーションを除く
クリーム:
ヘパリン類似物質 0.3(重量%、以下同様)
ビタミンA油(パルミチン酸レチノール、100万IU/g) 0.5
グリチルリチン酸ジカリウム 0.05
月見草油 3
ライチ種子エキス 0.1
α-リポ酸 0.01
加水分解大豆タンパク 0.1
ブドウ種子エキス 0.005
チガヤ根エキス 0.001
アルテミアエキス 0.5
パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル 10
ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル 5
2,4,6-トリス[4-(2-エチルヘキシルオキシカルボニル)アニリノ]1,3,5-トリアジン 3
シリコーン被覆酸化亜鉛 5
シリコーン被覆酸化チタン 1
無機化合物被覆酸化亜鉛 0.05
グリセリン 5
1,3-ブチレングリコール 2
ラウリルPEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン 1
PEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン 1
トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル 1.5
メチルポリシロキサン 3
デカメチルシクロペンタシロキサン 30
メチルシロキサン網状重合体 5
アクリル酸アルキル共重合体メチルポリシロキサンエステル 0.1
アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体 0.05
マイカ 2
キレート剤 適量
ヒアルロン酸ナトリウム 0.05
酢酸トコフェロール 0.05
防腐剤(パラオキシ安息香酸プロピル、フェノキシエタノール) 適量
pH調整剤 適量
香料 適量
水 残部を含み、
B形粘度計 RB-80L、M-3ロータを用いて、3rpm、1分、25℃の条件下で測定したときの粘度が10000~60000であるクリーム;
ファンデーション:
イ
70%マルチトール水溶液 5 重量部
グリセリン 5 重量部
1,3-ブタンジオール 5 重量部
メチルパラベン 0.2重量部
ブチルパラベン 0.1重量部
ロ
トリグリセリンジイソステアレート 5 重量部
ハ
流動パラフィン 12 重量部
軽質イソパラフィン 8 重量部
マイクロクリスタリンワックス 4 重量部
ネオペンチルグリコールジイソオクタネート 4 重量部
ニ
水 42.5重量部
ヘパリン類似物質 0.1重量部
エルヒビン 0.1重量部
ホ
鉄ドープ二酸化チタン 10 重量部
ジルコニウムドープ二酸化チタン 2 重量部
酸化鉄 3 重量部
タルク 5 重量部
を含有する、乳化したファンデーション;及び
ファンデーション:
イ
70%マルチトール水溶液 5 重量部
グリセリン 5 重量部
1,3-ブタンジオール 5 重量部
メチルパラベン 0.2重量部
ブチルパラベン 0.1重量部
ロ
トリグリセリンジイソステアレート 5 重量部
ハ
流動パラフィン 12 重量部
軽質イソパラフィン 8 重量部
マイクロクリスタリンワックス 4 重量部
ネオペンチルグリコールジイソオクタネート 4 重量部
ニ
水 26.5重量部
ヘパリン類似物質 0.1重量部
ホ
鉄ドープ二酸化チタン 10 重量部
ジルコニウムドープ二酸化チタン 2 重量部
酸化鉄 3 重量部
タルク 5 重量部
ヘ
水 5 重量部
リパーゼ 0.1重量部
を含有する乳化したファンデーション)。
【請求項2】
更に酸化鉄を含む請求項1に記載の外用組成物。
【請求項3】
更に常温で固体の油性成分を含む請求項1又は2に記載の外用組成物。」
第4 取消理由及び特許異議申立理由の概要
1 取消理由の概要
(1) 令和3年7月26日付けで通知した取消理由の概要
「1.(新規性) 本件特許の下記の請求項に係る発明は、本件特許の出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。」
「理由1について
・請求項 1~3
・引用文献等 1、3~5、a~d」
「<引用文献等一覧>
1.特開2012-36176号公報(異議申立人の提出した甲第1号証)
3.「R85型 粘度計」カタログ、東機産業株式会社、<URL:http://www.tokisangyo.co.jp/pdf/viscometer/R85.pdf>(異議申立人の提出した甲第4号証)
4.特開2000-204014号公報
5.特開2001-19611号公報
a.主要設備(回転粘度計):千葉県の産業支援技術研究所・加曽利庁舎、[On line]、[検索日:2021年5月17日]、URL<http://www.pref.chiba.lg.jp/sanken/kikisetsubi/food-bio/food/kaiten-nendo.html>
b.東機産業のホームページ「RB80型粘度計 取扱説明書」第81頁の付表3の「RB80L型粘度計 測定上限値」、2005年12月、[On line]、[検索日:2021年7月5日]、URL<http://tokisangyo.co.jp/product/keiki/viscometer.html>
c.東機産業のホームページ「サポート」の「保守情報」の「販売終了品一覧」、[On line]、[検索日:2021年7月5日]、URL<http://tokisangyo.co.jp/info/repair_list.html>
d.日本工業規格Z8803「液体の粘度測定方法」、[On line]、[検索日:2021年7月12日]、URL<https://kikakrui.com/z8/z8803-2011-01.html>」
(2) 令和3年3月8日付けで通知した取消理由の概要
「1.(新規性) 本件特許の下記の請求項に係る発明は、本件特許の出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
2.(進歩性) 本件特許の下記の請求項に係る発明は、本件特許の出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。」
「理由1,2について
・請求項1~3
・引用文献 1~5」
「<引用文献等一覧>
1.特開2012-36176号公報(異議申立人の提出した甲第1号証)
2.武田克之 ほか2名監修、「化粧品の有用性 評価技術の進歩と将来展望」、株式会社薬事日報社、2001年3月31日、300~311頁(異議申立人の提出した甲第3号証)
3.「R85型 粘度計」カタログ、東機産業株式会社、<URL:http://www.tokisangyo.co.jp/pdf/viscometer/R85.pdf>(異議申立人の提出した甲第4号証)
4.特開2000-204014号公報(合議体が新たに引用した文献)
5.特開2001-16911号公報(合議体が新たに引用した文献)
(合議体注:引用文献5は、「特開2001-19611号公報」の誤記)」
2 特許異議申立理由の概要
(1) 特許法第29条第1項第3号及び特許法第29条第2項について(同法第113条第2号)
ア 本件発明1は、 甲第1号証に記載された発明と同一であるか、あるいはこの発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第1項第3号に該当するか又は同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件発明1に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
イ 本件発明2は、甲第1号証に記載された発明及び甲第3号証に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、これらの請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
ウ 本件発明3は、甲第1号証に記載された発明と同一であるか、あるいは甲第1号証に記載された発明及び甲第3号証に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第1項第3号に該当するか又は同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件発明1に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消されるべきものである。
(2) 特許法第36条第6項第1号について(同条第113条第4号)
本件発明1~3に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に違反してなされたものであり、同法第113条第1項第4号に該当し取り消されるべきものである。
(3) 特許法第36条第4項第1号について(同条第113条第4号)
本件発明1~3に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に違反してなされたものであり、同法第113条第1項第4号に該当し取り消されるべきものである。
(4) 特許法第36条第6項第2号について(同条第113条第4号)
本件発明1~3に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に違反してなされたものであり、同法第113条第1項第4号に該当し取り消されるべきものである。
(5) 証拠方法
甲第1号証:特開2012-36176号公報
甲第2号証:特表平10-506121号公報
甲第3号証:武田克之 ほか2名監修、「化粧品の有用性 評価技術の進歩と将来展望」、株式会社薬事日報社、2001年3月31日、300~311頁
甲第4号証:「R85型 粘度計」カタログ、東機産業株式会社、<URL:http://www.tokisangyo.co.jp/pdf/viscometer/R85.pdf>
(以下、「甲1」等という。)
第5 当審の判断:取消理由について
当審は、令和3年7月26日付けで通知した取消理由(特許法第29条第1項第3号)、同年3月8日付けで通知した取消理由(特許法第29条第1項第3号、同法同条第2項)について、両取消理由における主引用文献1、4、5が共通するものであるところ、これらの文献に記載された発明に基づいた両取消理由はその理由がないものと判断する。
理由は、以下のとおりである。
1 引用文献に記載された事項
引用文献1、4、5には以下の記載がある。なお、下線は合議体で付した。
(1) 引用文献1(特開2012-36176号公報:甲1)
(ア1)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビタミンA類及びヘパリン類似物質を含む、皮膚刺激性を抑えながら肌荒れを改善するための外用組成物。」
(イ1)「【0001】 本発明は、乾皮症などの肌荒れを予防、治療、又は改善できる外用組成物に関する。
・・・
【0003】
ヘパリン類似物質は、優れた保湿作用、抗炎症作用、血行促進作用などを有することから、外用剤の有効成分として広く用いられている。
特許文献2には、セラミドと、ヘパリン類似物質とを含有する皮膚外用剤が、皮膚の水分保持作用を向上させ、保湿効果を増強させることにより、水分保持機能または皮膚バリア機能を正常化し、水分乾燥肌を効果的に改善することが記載されている。
しかし、これらの文献には、ビタミンA類とヘパリン類似物質を配合した皮膚外用剤が、優れた肌荒れ改善効果を有することは記載されていない。
・・・・・・・
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、肌荒れ改善効果に優れた外用組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は上記課題を解決するために研究を重ね、以下の知見を得た。
(i)ビタミンA類とヘパリン類似物質とを含む外用組成物が、荒れた肌に塗布した場合、効果的に荒れた肌を改善する。また、その程度は、ビタミンA類、又はヘパリン類似物質を単独で含む外用組成物と比べて、格段に優れる。
(ii)荒れ肌にビタミンA類を含む外用組成物を塗布すると、ビタミンA類の濃度にもよるが、皮膚刺激性を有する場合がある。この外用組成物にヘパリン類似物質を配合すると、ビタミンA類による皮膚刺激性が効果的に軽減される。
・・・・
【発明の効果】
【0008】
本発明の外用組成物は、ビタミンA類と、ヘパリン類似物質とを共に配合していることにより、例えば乾皮症や角化症のような荒れ肌に対して、角層水分量の増大、経表皮水分喪失量の低減(バリア機能の改善)、肌のキメの正常化又は改善、皮膚所見(皮膚乾燥及び落屑の程度)の改善を導く。さらに、かかる改善は、ビタミンA、ヘパリン類似物質をそれぞれ単独で含む組成物に比べて、格段に優れている。」
(ウ1)「【0018】
<形態>
医薬品用の外用組成物の形態は特に限定されず、例えば、液剤、懸濁剤、乳剤、クリーム剤、軟膏剤、ゲル剤、リニメント剤、ローション剤、又はパップ剤などが挙げられる。医薬用の外用組成物は、好ましくは、乳液、クリーム剤、軟膏剤、ゲル剤、より好ましくは、乳液、クリーム剤、さらにより好ましくは、乳液の形態で用いられる。かかる形態とすることにより、肌荒れ改善効果を十分に発揮することができる。これらの製剤は、第15改正日本薬局方製剤総則に記載の方法等に従い製造することができる。
医薬部外品又は化粧品用の外用組成物の形態は特に限定されず、例えば、化粧水、乳液、クリーム、美容液、日焼け止め用化粧料、パック、ハンドクリーム、ボディローション、ボディークリームのような基礎化粧料;洗顔料、メイク落とし、ボディーシャンプーのような洗浄用化粧料;ファンデーション、化粧下地、リップクリーム、口紅、チークカラーのようなメークアップ化粧料;入浴剤などが挙げられる。医薬部外品又は化粧品用の外用組成物は、好ましくは、乳液、クリーム、美容液、より好ましくは、乳液、クリーム、さらにより好ましくは、乳液の形態で用いられる。かかる形態とすることにより、肌荒れ改善効果を十分に発揮することができる。」
(エ1)「【0037】
粘度
本発明の外用組成物の粘度は、約10000~60000が好ましく、約20000~45000がより好ましい。かかる粘度は、B形粘度計 RB-80L、M-3ロータを用いて、3rpm、1分、25℃の条件下で測定したときの値である。上記粘度範囲であれば、肌荒れ改善効果を十分に発揮することができる。」
(オ1)「【実施例】
【0040】
以下、本発明を実施例を挙げてより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(1)肌荒れ改善効果の評価
外用組成物の調製
表1に記載の処方に従って、実施例1の外用組成物を製造した。具体的には、パルミチン酸レチノール、濃グリセリン、1,3-ブチレングリコール、無水エタノール、パルミチン酸イソプロピル、ジメチルポリシロキサン、セタノール、ポリソルベート60、モノステアリン酸ソルビタン及びパラオキシ安息香酸エチルを約70℃まで加温溶解し、混合溶液Aを調製した。ヘパリン類似物質、カルボキシビニルポリマー、エデト酸ナトリウム水和物及び水を約70℃まで加温溶解し、混合溶液Bを調製した。混合溶液A及びBを均一に混合後、冷却し、さらにトリエタノールアミンを添加して、乳液状の外用組成物を得た。得られた組成物の粘度を、B形粘度計 RB-80L、M-3ロータを用いて、3rpm、1分、25℃の条件下で測定したところ、30000~35000Pa・sであった。」
(カ1)「【0061】
実施例4(クリーム)
ヘパリン類似物質 0.3
ビタミンA油(パルミチン酸レチノール、100万IU/g) 0.5
グリチルリチン酸ジカリウム 0.05
月見草油 3
ライチ種子エキス 0.1
α-リポ酸 0.01
加水分解大豆タンパク 0.1
ブドウ種子エキス 0.005
チガヤ根エキス 0.001
アルテミアエキス 0.5
パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル 10
ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル 5
2,4,6-トリス[4-(2-エチルヘキシルオキシカルボニル)アニリノ]1,3,5-トリアジン 3
シリコーン被覆酸化亜鉛 5
シリコーン被覆酸化チタン 1
無機化合物被覆酸化亜鉛 0.05
グリセリン 5
1,3-ブチレングリコール 2
ラウリルPEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン 1
PEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン 1
トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル 1.5
メチルポリシロキサン 3
デカメチルシクロペンタシロキサン 30
メチルシロキサン網状重合体 5
アクリル酸アルキル共重合体メチルポリシロキサンエステル 0.1
アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体 0.05
マイカ 2
キレート剤 適量
ヒアルロン酸ナトリウム 0.05
酢酸トコフェロール 0.05
防腐剤(パラオキシ安息香酸プロピル、フェノキシエタノール) 適量
pH調整剤 適量
香料 適量
水 残部」
(2) 引用文献4(特開2000-204014号公報)
(ア4)「【請求項1】 硫酸基を有するムコ多糖類から選ばれる1種乃至は2種以上と、エラスターゼ抑制剤とを含有することを特徴とする化粧料。
【請求項2】 硫酸基を有するムコ多糖類として、ヘパリン類似物質を含有することを特徴とする、請求項1に記載の化粧料。
【請求項3】 エラスターゼ抑制剤が大豆蛋白であることを特徴とする、請求項1に記載の化粧料。
【請求項4】 敏感肌用であることを特徴とする、請求項1~3の何れか一項に記載の化粧料。」
(イ4)「【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、この様な状況下為されたものであり、敏感肌の人が安心して使用できる化粧料を提供することを課題とする。
【0006】
【課題の解決手段】
この様な状況に鑑みて、本発明者らは、敏感肌の人が安心して使用できる化粧料を求めて鋭意研究努力を重ねた結果、硫酸基を有するムコ多糖類から選ばれる1種乃至は2種以上とエラスターゼ抑制剤とを含有する化粧料が、この様な特性を有していることを見出し、発明を完成させるに至った。以下、本発明について、実施の形態を中心に詳細に説明を加える。
【0007】
【発明の実施の形態】
(1)本発明の必須成分である硫酸基を有するムコ多糖類
本発明の化粧料は、硫酸基を有するムコ多糖類から選ばれる1種乃至は2種以上を含有することを特徴とする。硫酸基を有するムコ多糖類としては、例えば、コンドロイチン硫酸とその塩、デルマタン硫酸とその塩等のコンドロイチン硫酸類、ヘパリン類、ケラタン硫酸とその塩やコンドロイチン多硫酸とその塩等のヘパリン類似物質が例示できる。これらの中で、本発明の化粧料としては、ヘパリン類似物質を含有することが好ましい。本発明で言うヘパリン類似物質とは、コンドロイチン多硫酸などの多硫酸化ムコ多糖類の総称を意味する。この様なヘパリン類似物質は、ムコ多糖類を硫酸化することにより得ることもできるし、ウシなどの動物の気管支を含む内臓より水性担体を用いて抽出・精製し得ることもできる。この様なヘパリン類似物質は既に医薬・化粧品原料として開発されているため、この様な市販品を利用することもできる。この様なヘパリン類似物質として最も好ましいものは、三共ファルマ株式会社より販売されている、ウシの気管支を含む肺臓抽出・精製物である、ヘパリノイド(登録商標)を使用することである。このものは既に優れた保湿作用を有していることが知られている。本発明の化粧料に於いては、これら硫酸基を有するムコ多糖類は、肌の化学物質に対する過剰反応を抑制する作用を有する。本発明の化粧料に於いては、これら硫酸基を有するムコ多糖類は唯1種を含有させることもできるし、2種以上を組み合わせて含有させることも可能である。本発明の化粧料に於ける、これら硫酸基を有するムコ多糖類の好ましい含有量は、0.001~5重量%であり、更に好ましくは0.005~1重量%である。これは多すぎても効果が頭打ちになり、これら硫酸基を有するムコ多糖類のぬめぬめした不快な感触がでてしまうことがあり、少なすぎると過剰な皮膚反応を抑制することが出来なくなる場合があるからである。」
(ウ4)「【0009】
(3)本発明の化粧料
本発明の化粧料は、上記硫酸基を有するムコ多糖類から選ばれる1種乃至は2種以上とエラスターゼ抑制剤とを含有することを特徴とする。この様な必須成分を含有することにより、過剰反応を起こしやすい、いわゆる敏感肌の人であって安心して使用できる化粧料を提供することが出来る。これらの成分は、個々に優れた保湿作用を有していたり、シワ抑制作用を有していたりするため、通常の人が使用しても不都合がないばかりか、肌の保全には好ましいため、本発明の化粧料は敏感肌の人のみならず、通常の人も使用することが出来る。本発明の化粧料に於いては、上記必須成分以外に通常化粧料で使用される任意成分を含有することが出来る。かかる任意成分としては、例えば、ワセリンやマイクロクリスタリンワックス等のような炭化水素類、ホホバ油やゲイロウ等のエステル類、牛脂、オリーブ油等のトリグリセライド類、セタノール、オレイルアルコール等の高級アルコール類、ステアリン酸、オレイン酸等の脂肪酸、グリセリンや1,3-ブタンジオール等の多価アルコール類、非イオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、エタノール、カーボポール等の増粘剤、防腐剤、紫外線吸収剤、抗酸化剤、色素、粉体類等が好ましく例示できる。これらの構成成分を常法に従って処理することにより、本発明の化粧料は製造することが出来る。又、本発明の化粧料の類別としては、化粧料であれば特段の限定はされず、化粧水、乳液、クリーム、パック等の基礎化粧料、ファンデーション、アンダーメークアップ、リップカラー、チークカラー、アイカラーなどのメークアップ化粧料、シャンプーやリンス、洗顔料などの洗浄用化粧料、ヘアクリーム、ヘアトニック等の頭髪用化粧料等が例示できる。この中では、最下層に適用される基礎化粧料が、本発明の化粧料として特に好ましい。」
(エ4)「【0019】
<実施例7>
下記に示す処方に従って、ファンデーションを作成した。即ち、イ、ロ、ハ、ニの成分をそれぞれ80℃に加熱し、イとロとを良く混練りした後、ハを加えて希釈し、これにホを分散した後、80℃に温度調整し、これに撹拌しながらニを徐々に加えて乳化し、撹拌冷却してファンデーションを得た。このファンデーションは敏感肌の人が使用しても問題なかった。
イ
70%マルチトール水溶液 5 重量部
グリセリン 5 重量部
1,3-ブタンジオール 5 重量部
メチルパラベン 0.2重量部
ブチルパラベン 0.1重量部
ロ
トリグリセリンジイソステアレート 5 重量部
ハ
流動パラフィン 12 重量部
軽質イソパラフィン 8 重量部
マイクロクリスタリンワックス 4 重量部
ネオペンチルグリコールジイソオクタネート 4 重量部
ニ
水 42.5重量部
ヘパリン類似物質 0.1重量部
エルヒビン 0.1重量部
ホ
鉄ドープ二酸化チタン 10 重量部
ジルコニウムドープ二酸化チタン 2 重量部
酸化鉄 3 重量部
タルク 5 重量部」
(3) 引用文献5(特開2001-19611号公報)
(ア5)「【請求項1】リパーゼと多価アルコールを含有することを特徴とする、皮膚外用組成物
・・・
【請求項3】多価アルコールがエチレングリコール、ポリエチレングリコール200~1000、グリセリン、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ジグリセリン、1、3ーブチレングリコール、イソプレングリコール、エリスリトール、ジエチレングリコール、ペンチルグリコール、ネオペンチルグリコールから選ばれる1種乃至は2種以上を含有してなることを特徴とする、請求項1又は2に記載の皮膚外用組成物。
【請求項4】化粧料であることを特徴とする、請求項1~3の何れか一項に記載の皮膚外用組成物。
【請求項5】敏感肌用であることを特徴とする、請求項1~4の何れか一項に記載の皮膚外用組成物。」
(イ5)「【0022】
<実施例9>
下記に示す処方に従って、ファンデーションを作製した。即ち、イ、ロ、ハ、ニの成分をそれぞれ80℃に加熱し、イとロを良く混練りした後、ハを加えて希釈し、これにホを分散した後、80℃に温度調整し、これに撹拌しながらニを徐々に加えて乳化し、冷却撹拌して温度が30℃~40℃になったところでヘを加えさらに冷却撹拌してファンデーションを得た。このファンデーションは敏感肌の人が使用しても支障は無かった。
イ
70%マルチトール水溶液 5 重量部
グリセリン 5 重量部
1,3-ブタンジオール 5 重量部
メチルパラベン 0.2重量部
ブチルパラベン 0.1重量部
ロ
トリグリセリンジイソステアレート 5 重量部
ハ
流動パラフィン 12 重量部
軽質イソパラフィン 8 重量部
マイクロクリスタリンワックス 4 重量部
ネオペンチルグリコールジイソオクタネート 4 重量部
ニ
水 26.5重量部
ヘパリン類似物質 0.1重量部
ホ
鉄ドープ二酸化チタン 10 重量部
ジルコニウムドープ二酸化チタン 2 重量部
酸化鉄 3 重量部
タルク 5 重量部
ヘ
水 5 重量部
リパーゼ 0.1重量部」
2 引用文献に記載された発明
(1) 引用文献1に記載された発明
上記1(1)(ア1)~(カ1)、特に(エ1)及び(カ1)の記載からみて、引用文献1には、以下の発明が記載されているといえる。
「ヘパリン類似物質 0.3(重量%、以下同様)
ビタミンA油(パルミチン酸レチノール、100万IU/g) 0.5
グリチルリチン酸ジカリウム 0.05
月見草油 3
ライチ種子エキス 0.1
α-リポ酸 0.01
加水分解大豆タンパク 0.1
ブドウ種子エキス 0.005
チガヤ根エキス 0.001
アルテミアエキス 0.5
パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル 10
ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル 5
2,4,6-トリス[4-(2-エチルヘキシルオキシカルボニル)アニリノ]1,3,5-トリアジン 3
シリコーン被覆酸化亜鉛 5
シリコーン被覆酸化チタン 1
無機化合物被覆酸化亜鉛 0.05
グリセリン 5
1,3-ブチレングリコール 2
ラウリルPEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン 1
PEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン 1
トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル 1.5
メチルポリシロキサン 3
デカメチルシクロペンタシロキサン 30
メチルシロキサン網状重合体 5
アクリル酸アルキル共重合体メチルポリシロキサンエステル 0.1
アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体 0.05
マイカ 2
キレート剤 適量
ヒアルロン酸ナトリウム 0.05
酢酸トコフェロール 0.05
防腐剤(パラオキシ安息香酸プロピル、フェノキシエタノール)適量
pH調整剤 適量
香料 適量
水 残部を含み、
B形粘度計 RB-80L、M-3ロータを用いて、3rpm、1分、25℃の条件下で測定したときの粘度が10000~60000である、
クリーム。」(以下、「引用発明1」という。)
(2) 引用文献4に記載された発明
上記1(2)(ア4)~(エ4)、特に(エ4)の記載からみて、引用文献4には、以下の発明が記載されているといえる。
「イ
70%マルチトール水溶液 5 重量部
グリセリン 5 重量部
1,3-ブタンジオール 5 重量部
メチルパラベン 0.2重量部
ブチルパラベン 0.1重量部
ロ
トリグリセリンジイソステアレート 5 重量部
ハ
流動パラフィン 12 重量部
軽質イソパラフィン 8 重量部
マイクロクリスタリンワックス 4 重量部
ネオペンチルグリコールジイソオクタネート 4 重量部
ニ
水 42.5重量部
ヘパリン類似物質 0.1重量部
エルヒビン 0.1重量部
ホ
鉄ドープ二酸化チタン 10 重量部
ジルコニウムドープ二酸化チタン 2 重量部
酸化鉄 3 重量部
タルク 5 重量部
を含有する乳化したファンデーション」(以下、「引用発明4」という。)
(3) 引用文献5に記載された発明
上記1(3)(ア5)~(イ5)、特に(イ5)の記載からみて、引用文献5には、以下の発明が記載されているといえる。
「イ
70%マルチトール水溶液 5 重量部
グリセリン 5 重量部
1,3-ブタンジオール 5 重量部
メチルパラベン 0.2重量部
ブチルパラベン 0.1重量部
ロ
トリグリセリンジイソステアレート 5 重量部
ハ
流動パラフィン 12 重量部
軽質イソパラフィン 8 重量部
マイクロクリスタリンワックス 4 重量部
ネオペンチルグリコールジイソオクタネート 4 重量部
ニ
水 26.5重量部
ヘパリン類似物質 0.1重量部
ホ
鉄ドープ二酸化チタン 10 重量部
ジルコニウムドープ二酸化チタン 2 重量部
酸化鉄 3 重量部
タルク 5 重量部
ヘ
水 5 重量部
リパーゼ 0.1重量部
を含有する乳化したファンデーション」(以下、「引用発明5」という。)
3 引用発明1を主引用発明とする場合について
(1) 特許法第29条第1項第3号について
本件発明1、3について
本件訂正請求により、本件発明1は引用発明1を除くものとなったから、本件発明1は、引用文献1に記載された発明ではない。
本件の請求項1を引用する本件発明3についても同様であり、引用文献1に記載された発明ではない。
(2) 特許法第29条第2項について
本件発明1~3について
本件発明1から引用発明1は除かれており、引用文献1及び他の引用文献をみても、本件発明1は、引用発明1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
本件の請求項1を引用する本件発明2、3についても同様であり、引用文献1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3) 令和3年11月12日提出の意見書における申立人の主張について
ア 申立人の主張
(ア) 引用文献1に記載されたクリームの各成分の数値は、ある程度の幅をもっており、粘度についても10000~60000以外の範囲となることも想定できるし、引用文献1に記載されたクリームは、引用発明1のクリーム以外のものも含むというべきである。
また、本件発明1において、除く対象となっているクリーム以外のものとすることは、当業者にとって容易に想到し得たものである。
よって、本件発明1は、引用発明1と同一であり、新規性を欠くから、特許法第29条第1項第3号により特許を受けることができず、また、仮にそうでないとしても進歩性を欠くから、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、同号第113条第1項第2号により取り消されるべきである。
本件発明2、3についても同様である。
(イ) 甲2には、その粒子が診断に有効な実質的に水不溶性の金属酸化物結晶性材料とヘパリン類の被覆剤とからなる診断剤において、ヘパリンやコンドロイチンによって粒子の安定性を向上させるとの知見が記載され、また、参考資料1~4(参考資料1:特開2004-091423号公報、参考資料2:特開2010-138074号公報、参考資料3:特開2000-119158号公報、参考資料4:特開平10-251125号公報)には、ヘパリン類似物質と同様の水溶性高分子において、粒子の分散安定性が向上させることができるとの知見が記載されており、ヘパリンのような水溶性高分子によって、粒子の分散安定性が向上するという効果を奏することは周知の技術的事項である。
よって、引用発明1において、分散安定性の向上を目的として、ヘパリン類似物質の配合率を変更することは当業者にとって容易であるから、本件発明1において除く対象となっているクリーム以外のものとすることは当業者が容易に想到し得たものである。
本件発明2、3についても同様である。
イ 申立人の主張に対する判断
(ア) 上記主張(ア)について
引用発明1は、引用文献1の実施例4の特定のクリームの処方に基づくものであるところ、引用文献1の摘記(エ1)、(オ1)の記載からみれば、その粘度は10000~60000以外の範囲となることは想定されないし、また、引用発明1の各成分の数値を変更して引用発明1のクリーム以外のものとすることについても、どの成分をどのように変更したものとするのか、申立人の主張をみても具体的な指摘はないから、申立人の主張は採用できない。
(イ) 上記主張(イ)について
まず、甲2に記載された発明は、診断剤に関するものであって、本件発明に関する外用剤組成物に係るものではないから、甲2は、外用剤組成物に関する技術常識を示す文献とはいえないものである。
また、参考資料1~4の水溶性高分子に「ヘパリン類似物質」に関する記載は全くないし、甲2と参考資料1~4を組み合わせても、申立人が主張するような周知の技術的事項が構成されるとはいえないから、この周知の技術的事項に基づく申立人の容易性の主張も採用できない。
(4) 小括
よって、本件発明1~3は、引用文献1に記載された発明ではなく、また、引用文献1に記載された発明及び他の引用文献に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
4 引用発明4と主引用発明とする場合について
(1) 特許法第29条第1項第3号について
本件発明1~3について
本件訂正請求により、本件発明1は引用発明4を除くものとなったから、本件発明1は、引用文献4に記載された発明ではない。
本件の請求項1を引用する本件発明2、3についても同様であり、引用文献4に記載された発明ではない。
(2) 特許法第29条第2項について
本件発明1~3について
本件発明1から引用発明4は除かれており、引用文献4及び他の引用文献をみても、本件発明1は、引用発明4に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
本件の請求項1を引用する本件発明2、3についても同様であり、引用文献4に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3) 小括
よって、本件発明1~3は、引用文献4に記載された発明ではなく、また、引用文献4に記載された発明及び他の引用文献に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
5 引用発明5と主引用発明とする場合について
(1) 特許法第29条第1項第3号について
本件発明1~3について
本件訂正請求により、本件発明1は引用発明5を除くものとなったから、本件発明1は、引用文献5に記載された発明ではない。
本件の請求項1を引用する本件発明2、3についても同様であり、引用文献5に記載されたものではない。
(2) 特許法第29条第2項について
本件発明1~3について
本件発明1から引用発明5は除かれており、引用文献5及び他の引用文献をみても、本件発明1は、引用発明5に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
本件の請求項1を引用する本件発明2、3についても同様であり、引用文献5に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3) 小括
よって、本件発明1~3は、引用文献5に記載された発明ではなく、また、引用文献5に記載された発明及び他の引用文献に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
第6 当審の判断:取消理由で採用されなかった特許異議申立理由について1 取消理由で採用されなかった特許異議申立理由の概要
取消理由で採用されなかった特許異議申立理由は、第4 2に記載されたもののうち、以下の(2)~(4)の理由である。
「(2) 特許法第36条第6項第1号について(同条第113条第4号)
本件発明1~3に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に違反してなされたものであり、同法第113条第1項第4号に該当し取り消されるべきものである。
(3) 特許法第36条第4項第1号について(同条第113条第4号)
本件発明1~3に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に違反してなされたものであり、同法第113条第1項第4号に該当し取り消されるべきものである。
(4) 特許法第36条第6項第2号について(同条第113条第4号)
本件発明1~3に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に違反してなされたものであり、同法第113条第1項第4号に該当し取り消されるべきものである。」
2 特許法第36条第6項第1号に係る特許異議申立理由ついて
(1) 申立理由の概要
申立人の主張する理由の概要は以下のア1~エ1のとおりである。
ア1 本件明細書の発明の詳細な説明の段落【0127】には、非水膨潤性の粉体を含み、粘度を2,000,000mPa・s以上である、流動性のない組成物とした場合、ヘパリン類似物質を含有しなくても分散安定性を有することが記載されている(表4の参考例1)。
そうすると、本件発明1~3は、粘度が2,000,000Pa・sである場合を含み、そのような場合、非水膨潤性の粉体の分散安定性を解決しようとする課題が存在せず、当該課題を解決できると当業者が認識できるものではない。
イ1 本件明細書の実施例1~7は粘度が不明であり、実施例8~12では粘度が1,500mPa・s未満であり、実施例13~16では、粘度が90,400mPa・s、101,100mPa・s、138,400mPa・s、932,000mPa・sであるが、非水膨潤性粉体の分散安定性が向上しているかは不明である。
よって、本件の発明の詳細な説明は、20,000~2,000,000mPa・sである外用組成物において、非水膨潤性の粉体の分散安定性向上の効果が得られると、当業者において認識できる程度に記載されたものではない。
ウ1 実施例以外の非水膨潤性の粉体を用いた場合や、実施例に記載された非水膨潤性の粉体やヘパリン類似物質の配合割合以外を用いた場合に、実施例と同様の効果を奏するかは不明であるから、外用剤組成物一般においてまで、拡張乃至一般化することはできない。
エ1 水性組成物及び乳化組成物以外の外用組成物についての実施例はないから、水性組成物及び乳化組成物以外の外用剤組成物一般に拡張乃至一般化することはできない。
(2) 判断
ア 本件発明の課題
本件発明の課題は、本件明細書の段落【0009】に記載されているとおり、非水膨潤性の粉体を含有した外用組成物において、当該粉体の分散安定性を向上させた外用組成物を提供することである。
そして、本件発明は、外用組成物において、ヘパリン類似物質を特定の配合割合で配合することで解決しようとするものであり(段落【0011】)、本件発明に係る特定の粘度における実施例は表7の実施例13~16に記載されており、酸化鉄の発色性が良好なことが示されている。
イ 上記理由ア1について
確かに、本件明細書の段落【0127】の表4には、参考例1として、非水膨潤性粉体を含むヘパリン類似物質を含まない組成物が記載され、粘度(mPa・s)が「2,000,000以上」、分散安定性が「◎」と記載されているものの、これは、参考例1に記載された特定の配合組成に係るものであり、かつ、粘度も2,000,000以上とされているものの、具体的な数値は不明であるから、この例が、組成も異なる外用組成物における2,000,000(mPa・s)の粘度での分散安定性を一様に示したものとはいえない。
よって、申立人の主張する理由ア1は採用できない。
ウ 上記理由イ1について
本件明細書の段落【0132】の表5の実施例10、11には、粘度は1500未満の実施例であるが、非水膨潤性粉体と酸化鉄とヘパリン類似物質を配合した組成物が記載されており、分散安定性が「◎」、発色性「◎」となっている。また、一方で、表5の比較例8、9には、ヘパリン類似物質は含有されない例があり、これらはそれぞれ実施例10、11の比較例に対応するものであるが、分散安定性は「×」、発色性は「×」又は「△」となっている。
そうすると、表5の実施例及び比較例の結果から、ヘパリン類似物質を含む組成物において、非水膨潤性粉体の分散安定性がよければ、顔料である酸化鉄の発色性もよいことが理解できる。
そして、段落【0146】の表7には、実施例13~16として、粘度が90,400mPa・s、101,100mPa・s、138,400mPa・s、932,000mPa・sである組成物の結果が記載されており、これらの例は発色性が「◎」であるから、これらの組成物における非水膨潤性粉体及び酸化鉄の分散安定性もよいことが強く推認できるものである。
また、組成物の粘度についても、1,500mPa・s未満、90,400~932,000mPa・sの範囲にわたる実施例があり、これらの実施例から幅広い粘度範囲においてヘパリン類似物質を組成物に含有することにより、非水膨潤性の粉体の分散安定性が向上していることが理解できる。
よって、申立人の主張する理由イ1は採用できない。
エ 上記理由ウ1について
本件発明1~3では、非水膨潤性の粉体の種類や配合割合についての特定はなく、ヘパリン類似物質の配合割合については、本件発明1で「0.001~10重量%」と特定されている。
本件明細書には、非水膨潤性の粉体について、段落【0035】~【0048】に説明があり、段落【0036】には、非水膨潤性の粉体の種類は特に限定されないと記載されているものの、段落【0037】~【0045】には好ましいとされる種類についてさらに説明がされ、配合割合については、段落【0048】に記載がある。
そして、非水膨潤性の粉体の種類について、本件明細書の実施例では、非水膨潤性の粉体として、段落【0121】の表1に、カオリン、タルク、酸化亜鉛、酸化チタン、シリカ、コーンスターチのいずれかの場合において、分散安定化が図られることが記載されている。また、酸化亜鉛、タルク、カオリンに、酸化鉄を配合した場合についても、段落【0132】の表5では分散安定性について、段落【0146】の表7では上記ウに記載したとおり粉体の分散安定性と正の相関関係にあることが強く推認される発色性について、それぞれ向上していることが示されている。
実施例以外の非水膨潤性の粉体の種類について、本件明細書の【0037】~【0045】には、実施例で使用されたものを同様に外用組成物に汎用されるものがあげられていると認められるところ、実施例のものと実施例以外の非水膨潤性の粉体とが区別されるような事情はないし、本件発明の組成物におけるヘパリン類似物質の効果が、実施例以外の非水膨潤性の粉体には及ばないとする証拠や技術常識も見当たらない。
また、配合割合について、段落【0146】の表7には、本件発明に係る実施例として、組成物100g中ヘパリン類似物質が0.3g、非水膨潤性粉体15g、16g又は20g、酸化鉄1.5gを配合した例が記載され、発色性がよいことが記載されており、その他に、組成物の粘度は不明であるが、表1には、組成物100g中、非水膨潤性粉体5g、ヘパリン類似物質1gを配合した実施例が記載されており、分散安定性がよいことが記載されている。これらの実施例をみれば、非水膨潤性粉体の配合割合に合わせてヘパリン類似物質の配合割合を調整して分散安定性を向上できることを当業者であれば理解するものといえる。
そうすると、実施例以外の非水膨潤性の粉体を用いた場合や、実施例に記載された非水膨潤性の粉体やヘパリン類似物質の配合割合以外を用いた場合に、実施例と同様又は類似の効果を奏さないとする根拠はなく、また、申立人も具体的な根拠を述べるものでもないから、申立人の主張する理由ウ1は採用できない。
オ 上記理由エ1について
確かに、本件明細書中には、水性組成物及び乳化組成物以外の外用組成物についての実施例はないが、申立人は、水性組成物及び乳化組成物以外の外用剤組成物に拡張乃至一般化することはできないとする具体的な理由を何ら挙げていない。
また、本件発明の組成物におけるヘパリン類似物質の効果が、水性組成物及び乳化組成物以外の外用組成物については、全く及ばないとする証拠や技術常識も見当たらない。
そうであるから、申立人の主張する理由エ1は採用できない。
3 特許法第36条第4項第1号に係る特許異議申立理由ついて
(1) 申立理由の概要
概略、上記2(1)イ1~エ1に関連した以下の理由ア2~ウ2を述べている。
ア2 発明の詳細な説明には本件発明で特定される粘度を有する外用組成物に関する効果の裏付けがない。
イ2 実施例に記載された非水膨潤性の粉体やヘパリン類似物質の配合割合以外の外用組成物一般を製造、使用するためには過度の試行錯誤を要する。
ウ2 水性組成物及び乳化組成物以外の外用剤組成物一般を製造、使用するためには過度な試行錯誤を要する。
(2) 判断
ア 本件明細書の記載について実施可能であることについて
本件発明は、非水膨潤性の粉体を含有した外用組成物において、ヘパリン類似物質を0.001~10重量%で含有させることで、当該粉体の分散安定性を向上させた外用組成物としたものであり、当該外用組成物は、25℃で流動性を呈し、B型粘度計を用いて、25℃で測定した際における粘度が20,000mPa・s~2,000,000mPa・sのものである。
そして、本件明細書には、非水膨潤性の粉体について段落【0035】~【0048】に説明があり、組成物に配合できる他の成分についてなど、非水膨潤性の粉体以外の外用組成物に関する情報についての説明がされ、外用組成物の調製方法についての説明もされている(【0091】~【0094】)。
まず、実施例として、本件発明の粘度範囲ではないが、表1には、ヘパリン類似物質を含むことで、カオリン、タルク、酸化亜鉛、酸化チタン、シリカ、コーンスターチのいずれか非水膨潤性粉体を含む組成物において、非水膨潤性粉体の分散安定性が「◎」か「○」であり、ヘパリン類似物質を含まないものに比して、分散安定性が改善していることが記載され、表4にも、同様の実施例の記載があり、表5には、分散安定性が「◎」で均一に分散し、かつ、発色性も「◎」で色鮮やかであることが記載されている。
また、本件発明に係る実施例として、表7の実施例13~16には、粘度が90,400mPa・s、101,100mPa・s、138,400mPa・s又は932,000mPa・sである組成物が記載され、これらの組成物は、酸化チタンおよびタルク、またはさらにカオリンを非水膨潤性粉体として含み、加えて酸化鉄も含むものであって、発色性が「◎」で色鮮やかであるとの結果が記載されている。当該組成物における発色は顔料である酸化鉄によるものであるが、発色がよい(色鮮やか)ことは、酸化鉄が組成物中に均一に分散し、非水膨潤性の粉体も同様に均一に分散して、組成物の分散安定性がよいことをも意味するものであって、表8のヘパリン類似物質を含まない比較例に比べて、発色性、さらには分散安定性が向上していることが記載されている。
上記の記載内容を踏まえると、本件明細書は、本件発明についての効果の裏付けもあり、当業者が本件発明を実施できる程度に明確かつ十分に記載されているものといえる。
イ 上記理由ア2について
上記アでも述べたとおり、表7の実施例13~16には、粘度が90,400mPa・s、101,100mPa・s、138,400mPa・s、又は932,000mPa・sである本件発明に係るものが記載され、これらの組成物は発色がよい(色鮮やか)との結果が記載されており、これは、非水膨潤性の粉体を含む組成物の分散安定性がよいことをも意味するものであって、ヘパリン類似物質を含まない表8における比較例11の発色性の結果に比べて、発色性がよく、分散安定性が向上していることが理解できる。
また、粘度が1500mPa・s未満であり、本件発明の範囲ではない実施例ではあるが、表5には、ヘパリン類似物質を含有することで、分散安定性、発色性がない場合(比較例8、9)より向上しているから、実施例以外の粘度が20,000mPa・s~2,000,000mPa・sとの範囲であれば、ヘパリン類似物質を配合することによって、非水膨潤性の粉体を含む組成物の分散安定性が向上することを理解できる。
よって、申立人の主張する理由ア2は採用できない。
ウ 上記理由イ2について
本件明細書の記載をみれば、上記イ(上記理由ア2について)で述べたことが理解でき、さらなる具体例の開示がなくとも、実施例以外の非水膨潤性の粉体やヘパリン類似物質の配合割合であっても、外用組成物を製造し、使用できることは、当業者であれば認識できる。
よって、申立人の主張する理由イ2は採用できない。
エ 上記理由ウ2について
確かに、本件明細書には、水性組成物及び乳化組成物以外の外用剤組成物についての具体的な記載や実施例はない。
しかしながら、本件明細書の段落【0031】の記載から、粘度が20,000mPa・s~2,000,000mPa・sの組成物は、半固形状のもの、具体的には、軟膏剤、クリーム剤、ゲル剤、ゼリー剤、懸濁剤、乳剤などの態様が含まれるものといえ、技術常識を加味すれば、水性組成物及び乳化組成物以外の外用剤組成物についても、その製造、使用が全くできない、つまり、過度の試行錯誤を要するとまではいえない。
よって、申立人の主張する理由ウ2は採用できない。
4 特許法第36条第6項第2号に係る特許異議申立理由ついて
(1) 申立理由の概要
申立人は、特許異議申立書には、以下理由ア3の主張をし、また、令和3年11月12日付け意見書において、以下理由イ3の主張をしている。
ア3 本件発明1の「非水膨潤性の粉体」は極めて広範な概念であるから、その外延が不明確である。本件発明2,3も同様である。
イ3 本件発明1から除く対象のクリームの粘度は「10000~60000」と記載されているが、その組成からするとそのような広い範囲とはなり得ず、より狭い範囲の粘度に限定されるべきであり、除く対象のクリームの外延が不明確であるから、本件発明1は明確ではない。
本件発明2、3も同様である。
(2) 判断
ア 上記理由ア3について
本件発明1の「非水膨潤性の粉体」との用語は、これを構成する「非水膨潤性」、「粉体」との単語自体も明確であるから、不明確ではないし、また、「非水膨潤性の粉体」について、本件明細書の段落【0035】~【0045】に説明もあり、当該粉体は外用組成物に用いられる範囲のものであるから、その外延は明確である。
よって、申立人の主張する理由ア3は採用できない。
イ 上記理由イ3について
本件発明1から除く対象のクリームは、それを構成する成分も明らかであり、また、防腐剤、pH調整剤、香料、水以外の成分の配合量も特定されており、クリームの粘度は「B形粘度計 RB-80L、M-3ロータを用いて、3rpm、1分、25℃の条件下で測定したときの粘度が10000~60000である」と特定されているから、除く対象の外延は明確である。申立人は、除く対象のクリームの組成からするとそのような広い範囲とはなり得ないというが、上記クリームとして特定される粘度の範囲内のものであることは明らかであり、不明確なものではない。
よって、申立人の主張する理由イ3は採用できない。
第7 まとめ
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件の請求項1~3に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件の請求項1~3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2020-700743