特許異議申立
2020-700595
ドライフィルム積層体の製造方法
- 審判番号
- 2020-700595
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2015-160780外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2020年08月13日
- 審決日
- 2021年07月13日
- 公報発行日
- 2021年10月29日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】信越化学工業株式会社
- 【権利者代理人】特許業務法人英明国際特許事務所
- 【異議申立人】藤江 桂子
- 分類
- P1651.121-YAA(G03F) / P1651.536-YAA(G03F) / P1651.537-YAA(G03F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第36条、特許法第29条
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第6650696号発明「ドライフィルム積層体の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第6650696号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-2〕、〔3-4〕について訂正することを認める。
特許第6650696号の請求項1ないし4に係る特許を維持する。
理由
【理 由】
第1 手続等の経緯
特許第6650696号(以下「本件特許」という。)の請求項1~4に係る特許についての出願(特願2015-160780号)は、平成27年8月18日(先の出願に基づく優先権主張 平成26年9月8日)の出願であって、令和2年1月23日にその特許権の設定登録がされ、令和2年2月19日に特許掲載公報が発行された。
本件特許について、特許掲載公報発行の日から6月以内である令和2年8月13日に特許異議申立人 藤江桂子(以下「特許異議申立人」という。)から全請求項に対して特許異議の申立てがされた。その後の手続等の経緯の概要は、以下のとおりである。
令和2年11月20日付け:取消理由通知書
令和3年 1月22日付け:意見書(特許権者)
令和3年 1月22日付け:訂正請求書(この訂正請求書による訂正の請求 を、以下「本件訂正請求」という。)
令和3年 3月24日付け:手続補正書(方式)
令和3年 5月20日付け:意見書(特許異議申立人)
第2 本件訂正請求について
1 訂正の趣旨及び訂正の内容
(1)訂正の趣旨
本件訂正請求の趣旨は、特許第6650696号の特許請求の範囲及び明細書を、本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~4について訂正し、また、本訂正請求書の手続補正書に添付した明細書のとおり、明細書の【0009】について訂正することを求める、というものである。
(2)訂正の内容
本件訂正請求において特許権者が求める訂正の内容は、以下のとおりである。
なお、下線は当合議体が付したものであり、訂正箇所を示す。
ア 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「化学増幅ポジ型レジスト材料溶液(ただし、下記一般式(A)で表される構造単位を含有する樹脂を含まない。)」と記載されているのを、「化学増幅ポジ型レジスト材料溶液(ただし、下記一般式(A)で表される構造単位を含有する樹脂、及び下記一般式(B)で表されるビニル低級アルキルエーテルの単独または2種以上の混合物を重合することにより得られる(共)重合本であるポリ(ビニル低級アルキルエーテル)を含まない。)」、
「【化2】
(式中、R201は、炭素数1~5の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基を示す。)」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2も同様に訂正する。)。
イ 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項3に「化学増幅ポジ型レジスト材料溶液(ただし、下記一般式(A)で表される構造単位を含有する樹脂を含まない。)」と記載されているのを、「化学増幅ポジ型レジスト材料溶液(ただし、下記一般式(A)で表される構造単位を含有する樹脂、及び下記一般式(B)で表されるビニル低級アルキルエーテルの単独または2種以上の混合物を重合することにより得られる(共)重合本であるポリ(ビニル低級アルキルエーテル)を含まない。)」、
「【化4】
(式中、R201は、炭素数1~5の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基を示す。)」に訂正する(請求項3の記載を引用する請求項4も同様に訂正する。)。
イ 訂正事項3
願書に添付した明細書の【0009】に「化学増幅ポジ型レジスト材料溶液(ただし、下記一般式(A)で表される構造単位を含有する樹脂を含まない。)を、クリーン度1000以下のクリーンルーム中で、温度5~45℃かつ湿度5~90%に管理された領域内で、支持フィルム上に塗工する工程、
ii.インラインドライヤで40~130℃、1~40分間加熱することにより、支持フィルム上に塗工したレジスト材料から有機溶剤及び揮発分を除去して化学増幅ポジ型レジストドライフィルムを得る工程
を含み、得られた化学増幅ポジ型レジストドライフィルム中に、5~40質量%の、常圧での沸点が55~250℃の成分を含有することを特徴とするドライフィルム積層体の製造方法。
【化13】
(式中、R101は水素原子又はメチル基を示し、R102、R103は、相互に独立に、水素原子、炭素数1~6の直鎖状、分岐状若しくは環状のアルキル基を示す。尚、R102及びR103が相互に結合して環状構造を形成してもよい。また、kは1~4の整数である。)」と記載されているのを、「化学増幅ポジ型レジスト材料溶液(ただし、下記一般式(A)で表される構造単位を含有する樹脂、及び下記一般式(B)で表されるビニル低級アルキルエーテルの単独または2種以上の混合物を重合することにより得られる(共)重合本であるポリ(ビニル低級アルキルエーテル)を含まない。)を、クリーン度1000以下のクリーンルーム中で、温度5~45℃かつ湿度5~90%に管理された領域内で、支持フィルム上に塗工する工程、
ii.インラインドライヤで40~130℃、1~40分間加熱することにより、支持フィルム上に塗工したレジスト材料から有機溶剤及び揮発分を除去して化学増幅ポジ型レジストドライフィルムを得る工程
を含み、得られた化学増幅ポジ型レジストドライフィルム中に、5~40質量%の、常圧での沸点が55~250℃の成分を含有することを特徴とするドライフィルム積層体の製造方法。
【化13】
(式中、R101は水素原子又はメチル基を示し、R102、R103は、相互に独立に、水素原子、炭素数1~6の直鎖状、分岐状若しくは環状のアルキル基を示す。尚、R102及びR103が相互に結合して環状構造を形成してもよい。また、kは1~4の整数である。)
【化14】
(式中、R201は、炭素数1~5の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基を示す。)」に訂正する。
(3)本件訂正請求は、一群の請求項〔1~2〕、〔3~4〕に対して請求されたものである。
2 訂正の適否
(1)訂正事項1について
訂正事項1による訂正は、特許請求の範囲の請求項1に記載された「化学増幅ポジ型レジスト材料溶液」について、「一般式(B)で表されるビニル低級アルキルエーテルの単独または2種以上の混合物を重合することにより得られる(共)重合体であるポリ(ビニル低級アルキルエーテル)を含まない」(当合議体注:一般式(B)は、上記1(2)アで一般式(B)として示したとおりのものである。)という限定を付加する訂正である。
したがって、訂正事項1による訂正は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる事項(特許請求の範囲の減縮)を目的とする訂正に該当する。
また、訂正事項1による訂正は、本件特許の願書に添付した明細書の記載に基づくものであるから、当業者によって、明細書、特許請求の範囲又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものである。
したがって、訂正事項1による訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものである。
さらに、訂正事項1による訂正によって、訂正前の特許請求の範囲には含まれないこととされた発明が訂正後の特許請求の範囲に含まれることとならないことは明らかであるから、訂正事項1による訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正に該当しない。
請求項2についてみても、同じである。
(2)訂正事項2について
訂正事項2による訂正は、特許請求の範囲の請求項3に記載された「化学増幅ポジ型レジスト材料溶液」について、「一般式(B)で表されるビニル低級アルキルエーテルの単独または2種以上の混合物を重合することにより得られる(共)重合体であるポリ(ビニル低級アルキルエーテル)を含まない」(当合議体注:一般式(B)は、上記1(2)イで一般式(B)として示したとおりのものである。)という限定を付加する訂正である。
したがって、訂正事項2による訂正は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる事項(特許請求の範囲の減縮)を目的とする訂正に該当する。
また、訂正事項2による訂正は、本件特許の願書に添付した明細書の記載に基づくものであるから、当業者によって、明細書、特許請求の範囲又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものである。
したがって、訂正事項2による訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものである。
さらに、訂正事項2による訂正によって、訂正前の特許請求の範囲には含まれないこととされた発明が訂正後の特許請求の範囲に含まれることとならないことは明らかであるから、訂正事項2による訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正に該当しない。
請求項4についてみても、同じである。
(3)訂正事項3について
訂正事項3による訂正は、訂正事項1及び2に係る訂正に伴って、特許請求の範囲の請求項1及び3の記載と発明の詳細な説明の記載との整合性を図るための訂正である。
したがって、訂正事項3による訂正は、特許法120条の5第2項ただし書3号に掲げる事項(明瞭でない記載の釈明)を目的とする訂正に該当する。
また、訂正事項3による訂正は、本件特許の願書に添付した明細書の記載に基づくものであるから、当業者によって、明細書、特許請求の範囲又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものである。
したがって、訂正事項3による訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものである。
さらに、訂正事項3による訂正によって、訂正前の特許請求の範囲には含まれないこととされた発明が訂正後の特許請求の範囲に含まれることとならないことは明らかであるから、訂正事項3による訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正に該当しない。
(4)小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正(訂正事項1ないし3による訂正)は、特許法120条の5第2項ただし書、同法同条9項において準用する同法126条4項から6項までの規定に適合する。
よって、本件特許の明細書及び特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~2〕、〔3~4〕について訂正することを認める。
第3 本件特許発明
上記「第2」のとおり、本件訂正請求による訂正は認められた。
したがって、本件特許の特許請求の範囲の請求項1~4に係る発明(以下、それぞれ、「本件特許発明1」などといい、総称して「本件特許発明」という。)は、本件訂正請求による訂正後の特許請求の範囲の請求項1~4に記載された事項により特定される、次のものである。
「【請求項1】
i.酸の作用によりアルカリ水溶液に可溶となる、フェノール含有樹脂である高分子化合物、放射線又は活性光線の作用により酸を生じる光酸発生剤、及び常圧での沸点が55~250℃の成分を含有する化学増幅ポジ型レジスト材料溶液(ただし、下記一般式(A)で表される構造単位を含有する樹脂、及び下記一般式(B)で表されるビニル低級アルキルエーテルの単独または2種以上の混合物を重合することにより得られる(共)重合体であるポリ(ビニル低級アルキルエーテル)を含まない。)を、クリーン度1000以下のクリーンルーム中で、温度5~45℃かつ湿度5~90%に管理された領域内で、支持フィルム上に塗工する工程、
ii.インラインドライヤで40~130℃、1~40分間加熱することにより、支持フィルム上に塗工したレジスト材料から有機溶剤及び揮発分を除去して化学増幅ポジ型レジストドライフィルムを得る工程
を含み、得られた化学増幅ポジ型レジストドライフィルム中に、5~40質量%の、常圧での沸点が55~250℃の成分を含有することを特徴とするドライフィルム積層体の製造方法。
【化1】
(式中、R101は水素原子又はメチル基を示し、R102、R103は、相互に独立に、水素原子、炭素数1~6の直鎖状、分岐状若しくは環状のアルキル基を示す。尚、R102及びR103が相互に結合して環状構造を形成してもよい。また、kは1~4の整数である。)
【化2】
(式中、R201は、炭素数1~5の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基を示す。)
【請求項2】
工程iiの後、得られたドライフィルム上に保護フィルムを積層する工程
を含み、保護フィルムのドライフィルムに対する剥離力が1~500gf/24mmであることを特徴とする請求項1記載のドライフィルム積層体の製造方法。」
「【請求項3】
iii.酸の作用によりアルカリ水溶液に可溶となる、フェノール含有樹脂である高分子化合物、放射線又は活性光線の作用により酸を生じる光酸発生剤、及び常圧での沸点が55~250℃の成分を含有する化学増幅ポジ型レジスト材料溶液(ただし、下記一般式(A)で表される構造単位を含有する樹脂、及び下記一般式(B)で表されるビニル低級アルキルエーテルの単独または2種以上の混合物を重合することにより得られる(共)重合体であるポリ(ビニル低級アルキルエーテル)を含まない。)を、クリーン度1000以下のクリーンルーム中で、温度5~45℃かつ湿度5~90%に管理された領域内で、支持フィルム上に0.05~1,000m/minの速度で塗工する工程、
iv.インラインドライヤで40~130℃、1~40分間加熱することにより、支持フィルム上に塗工したレジスト材料から有機溶剤及び揮発分を除去して化学増幅ポジ型レジストドライフィルムを得る工程、
v.連続的に得られた積層体をロールフィルム化する工程
を含み、得られた化学増幅ポジ型レジストドライフィルム中に、5~40質量%の、常圧での沸点が55~250℃の成分を含有することを特徴とするドライフィルム積層体の製造方法。
【化3】
(式中、R101は水素原子又はメチル基を示し、R102、R103は、相互に独立に、水素原子、炭素数1~6の直鎖状、分岐状若しくは環状のアルキル基を示す。尚、R102及びR103が相互に結合して環状構造を形成してもよい。また、kは1~4の整数である。)
【化4】
(式中、R201は、炭素数1~5の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基を示す。)
【請求項4】
工程vの後、得られたドライフィルム上に保護フィルムを積層する工程
を含み、保護フィルムのドライフィルムに対する剥離力が1~500gf/24mmであることを特徴とする請求項3記載のドライフィルム積層体の製造方法。」
第4 取消しの理由の概要
令和2年11月20日付け取消理由通知書により特許権者に通知した取消しの理由は、概略、以下のとおりである。
理由1:(進歩性)本件特許の請求項1~4に係る発明は、先の出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明に基づいて、先の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献1:特開2001-281863号公報(甲第1号証)
引用文献2:征矢野晃雄,”フォトレジスト材料における高分子材料技術”,日本ゴム協会誌,日本ゴム協会,2012年,第85巻,第2号,p.33-39(甲第2号証)
引用文献3:特開2011-145664号公報(甲第3号証)
引用文献4:特開2010-258147号公報(甲第4号証)
引用文献5:特表2008-529080号公報(甲第5号証)
引用文献6:特開2004-287267号公報(甲第6号証)
引用文献7:特開平10-293404号公報(甲第7号証)(当合議体注:引用文献1は、主引用例であり、引用文献2~引用文献7は、副引例又は周知技術を示す文献である。)
理由2:(実施可能要件)本件特許は、発明の詳細な説明が、当業者が本件特許の請求項1~4に係る発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるということができないから、特許法36条4項1号に規定する要件を満たしていない。
理由3:(サポート要件)本件特許は、特許請求の範囲の請求項1~4の記載が、特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていない。
理由4:(明確性要件)本件特許は、特許請求の範囲の請求項1~4の記載が、特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていない。
第5 当合議体の判断
1 取消理由通知書により特許権者に通知した取消しの理由1(進歩性)について
(1)引用文献1の記載、引用発明
ア 引用文献1の記載
取消しの理由に引用された引用文献1(特開2001-281863号公報)には、次の記載がある。なお、下線は、重合体等の項目名の下線を除いて当合議体が付与したものであって、引用発明の認定及び判断等で活用した箇所である。
(ア)「【特許請求の範囲】
【請求項1】 (A)酸により解離して酸性官能基を生じる酸解離性官能基を有する重合体、(B)ポリ(ビニル低級アルキルエーテル)、(C)放射線の照射により酸を発生する成分および(D)有機溶剤を含有するポジ型感放射線性樹脂組成物。
【請求項2】 (A)酸により解離して酸性官能基を生じる酸解離性官能基を有する重合体と(B)ポリ(ビニル低級アルキルエーテル)との合計を100重量部としたときに、(B)ポリ(ビニル低級アルキルエーテル)の含有量が5~60重量部、(C)放射線の照射により酸を発生する成分の含有量が0.1~20重量部、並びに(D)有機溶剤の含有量が20~400重量部である請求項1に記載のポジ型感放射線性樹脂組成物。
【請求項3】 (B)ポリ(ビニル低級アルキルエーテル)のポリスチレン換算重量平均分子量が1,000~200,000である請求項1または請求項2に記載のポジ型感放射線性樹脂組成物。
【請求項4】 (A)酸により解離して酸性官能基を生じる酸解離性官能基を有する重合体中の該酸解離性官能基が解離して発生する酸解離物質の1気圧における沸点が20℃以上であることを特徴とする請求項1~3の何れかに記載のポジ型感放射線性樹脂組成物。
【請求項5】 (イ)請求項1~4の何れかに記載のポジ型感放射線性樹脂組成物を、表面に導電層を有する基板上に塗布したのち乾燥して樹脂膜を形成する工程、(ロ)該樹脂膜に所定の形状に放射線を照射後加熱し、さらに現像してパターンを形成する工程、(ハ)基板上に形成された該パターンを鋳型とし所定厚さに電解メッキしてメッキ造形物を形成する工程、(ニ)基板から樹脂膜部分を剥離する工程、および(ホ)基板上のメッキ造形物を形成した領域以外の導電層を除去する工程を経てなることを特徴とするメッキ造形物の製造方法。
【請求項6】 請求項1~4の何れかに記載のポジ型感放射線性樹脂組成物を支持体フィルム上に塗布して乾燥したのち、該支持体フィルムを剥離することにより形成されてなるポジ型感放射線性樹脂膜。
【請求項7】 (イ)請求項6に記載のポジ型感放射線性樹脂膜を、表面に導電層を有する基板上に積層する工程、(ロ)積層された樹脂膜に所定の形状に放射線を照射後加熱し、さらに現像してパターンを形成する工程、(ハ)基板上に形成された該パターンを鋳型とし所定厚さに電解メッキしてメッキ造形物を形成する工程、(ニ)基板から樹脂膜部分を剥離する工程、および(ホ)基板上のメッキ造形物を形成した領域以外の導電層を除去する工程を経てなることを特徴とするメッキ造形物の製造方法。
【請求項8】 基板上に形成または積層された樹脂膜の膜厚が20~100μmであることを特徴とする請求項5または請求項7のメッキ造形物の製造方法。」
(イ)「【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ポジ型感放射線性樹脂組成物およびメッキ造形物の製造方法に関わり、さらに詳しくは、酸解離性官能基を有する重合体およびポリ(ビニル低級アルキルエーテル)を樹脂成分として含有するポジ型感放射線性樹脂組成物、並びに当該ポジ型感放射線性樹脂組成物を用いる、集積回路素子に実装する際のバンプあるいは配線等として好適なメッキ造形物の製造方法に関わる。
・・・省略・・・
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、従来技術における前記問題点に鑑み、バンプなどの加工用レジストとして使用される感放射線性樹脂組成物の構成成分について鋭意検討した結果なされたものであり、その課題は、特に、メッキ中およびメッキ後の水洗・乾燥によってもレジストパターンにクラックを生じることがなく、バンプあるいは配線等の厚膜のメッキ造形物を精度よく形成することができ、かつ感度、解像度等にも優れたポジ型感放射線性樹脂組成物、並びに当該ポジ型感放射線性樹脂組成物を用いるメッキ造形物の製造方法を提供する。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明によると、前記課題は、第一に、(A)酸により解離して酸性官能基を生じる酸解離性官能基を有する重合体、(B)ポリ(ビニル低級アルキルエーテル)、(C)放射線の照射により酸を発生する成分および(D)有機溶剤を含有するポジ型感放射線性樹脂組成物、により達成される。」
(ウ)「【0012】
【発明の実施の形態】以下、本発明を具体的に説明する。
重合体(A)
本発明に用いられる酸により解離して酸性官能基を生じる酸解離性官能基を有する重合体(以下、「重合体(A)」という。)としては、酸により解離して、例えばカルボキシル基、フェノール性水酸基等の酸性官能基を生成する酸解離性官能基を有する限り特に限定されるものではないが、前記酸解離性官能基を有するラジカル重合性単量体(以下、「単量体(I)」という。)の重合性不飽和結合が開裂した繰返し単位(以下、「酸解離性繰返し単位」という。)を含有する重合体が好ましい。
【0013】酸解離性繰返し単位のうち、酸により解離してカルボキシル基を生成する繰返し単位としては、例えば、t-ブチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロピラニル(メタ)アクリレート、2-t-ブトキシカルボニルメチル(メタ)アクリレート、2-ベンジルオキシカルボニルエチル(メタ)アクリレート、2-メチルアダマンチル(メタ)アクリレート、1,1-ジメチル-3-オキソブチル(メタ)アクリレート、t-ブトキシカルボニルメトキシスチレンの重合性不飽和結合が開裂した単位や、下記一般式(1)で表される繰返し単位(以下、「繰返し単位(1)」という。)等を挙げることができる。
・・・省略・・・
【0017】さらに、酸により解離してフェノール性水酸基を生成する繰返し単位としては、例えば、p-1-メトキシエトキシスチレン、p-1-エトキシエトキシスチレン等のアセタール基で保護されたヒドロキシスチレン類や、t-ブトキシスチレン、t-ブトキシカルボニルオキシスチレン等の重合性不飽和結合が開裂した単位等を挙げることができる。
・・・省略・・・
【0024】前記ラジカル重合開始剤としては、例えば、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2’-アゾビス-(2,4-ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物や、ベンゾイルペルオキシド、ラウリルペルオキシド、t-ブチルペルオキシド等の有機過酸化物などを挙げることができる。また、前記溶液重合法に用いられる溶媒としては、使用される単量体成分と反応せず、生成する重合体を溶解するものであれば特に限定されるものではなく、例えば、メタノール、エタノール、n-ヘキサン、トルエン、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、2-ヘプタノン、シクロヘキサノン、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、乳酸エチル、γ-ブチロラクトン等を挙げることができる。これらの溶媒は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。なお、重合体(A)が溶液重合法により製造された場合、得られる重合体溶液をそのままポジ型感放射線性樹脂組成物の調製に供してもよく、あるいは重合体溶液から重合体(A)を分離してポジ型感放射線性樹脂組成物の調製に供してもよい。また、前記(i)~(iii)の方法における重合に際しては、必要に応じて、例えばメルカプタン化合物、ハロゲン炭化水素等の分子量調節剤を使用することができる。
・・・省略・・・
【0026】(B)ポリ(ビニル低級アルキルエーテル)
本発明に用いられるポリ(ビニル低級アルキルエーテル)は、下記一般式(2)で表されるビニル低級アルキルエーテルの単独または2種以上の混合物を重合することにより得られる(共)重合体からなる。
・・・省略・・・
【0031】本発明において、ポリ(ビニル低級アルキルエーテル)は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。ポリ(ビニル低級アルキルエーテル)の使用量は、重合体(A)とポリ(ビニル低級アルキルエーテル)との合計を100重量部としたときに、好ましくは5~60重量部、さらに好ましくは10~50重量部である。この場合、ポリ(ビニル低級アルキルエーテル)の使用量が5重量部未満では、厚膜のメッキ造形物を製造する際のメッキ後の水洗・乾燥過程で、鋳型となるレジストパターンにクラックが発生することがあり、好ましくなく、一方60重量部を超えると、パターンを形成するための現像時に、露光部と未露光部とのコントラストが低下して、パターン形状が損なわれるおそれがある。
【0032】酸発生剤(C)
本発明に用いられる感放射線性酸発生剤(以下、「酸発生剤(C)」という。)は、露光により酸を発生する化合物であり、この酸の作用により重合体(A)中に存在する酸解離性官能基が解離して、例えばカルボキシル基、フェノール性水酸基等の酸性官能基が生成し、その結果、ポジ型感放射線性樹脂組成物から形成された樹脂膜の露光部がアルカリ性現像液に易溶性となり、ポジ型のパターンを形成することができる。酸発生剤(C)としては、例えば、オニウム塩化合物(但し、チオフェニウム塩化合物を含む。)、ハロゲン含有化合物、ジアゾケトン化合物、スルホン化合物、スルホン酸化合物、スルホンイミド化合物、ジアゾメタン化合物等を挙げることができる。以下、これらの化合物の具体例を示す。
・・・省略・・・
【0050】(D)有機溶剤
本発明に用いられる有機溶剤としては、例えば、前記重合体(A)を製造する溶液重合法について例示した溶媒のほか、ジメチルスルホキシド、アセトニルアセトン、イソホロン、炭酸プロピレン等を挙げることができる。これらの有機溶剤は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。有機溶剤の使用量は、ポジ型感放射線性樹脂組成物の塗布方法、製造されるメッキ造形物の用途等を考慮して調整することができ、組成物を均一に混合させることができれば特に限定されないが、重合体(A)とポリ(ビニル低級アルキルエーテル)との合計を100重量部としたときに、好ましくは20~400重量部、さらに好ましくは50~300重量部である。
【0051】本発明のポジ型感放射線性樹脂組成物は、特に、例えば集積回路素子のバンプあるいは配線等のメッキ造形物の製造に好適に使用することができる。また、本発明のポジ型感放射線性樹脂組成物は、支持体フィルム上に塗布して乾燥したのち、該支持体フィルムを剥離することにより樹脂膜とし、このポジ型感放射線性樹脂膜を前記と同様のメッキ造形物の製造に好適に使用することができる。この場合、ポジ型感放射線性樹脂組成物を支持体フィルム上に塗布する方法としては、例えば、スピンコート法、ロールコート法、スクリーン印刷、アプリケーター法等を挙げることができる。なお、支持体フィルムの材料は、特に限定されるものではなく、所要の強度を有する限り適宜のものを使用することができる。」
(エ)「【0061】以下、実施例を挙げて本発明の実施の形態をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制約されるものではない。以下において、部および%は、特記しない限り重量基準である。
〈重合体(A)の合成〉
合成例1
p-アセトキシスチレン71g、2-ベンジル-2-プロピルアクリレート23gおよびスチレン6gをジオキサン150gと混合して均一溶液とした。この溶液を30分間窒素ガスによりバブリングしたのち、AIBN4.5gを添加し、窒素ガスによるバブリングを継続しつつ、反応温度を70℃に維持して、7時間重合した。重合終了後、反応溶液を多量のヘキサンと混合して、生成した重合体を凝固させた。次いで、重合体をジオキサンに再溶解したのち、再度ヘキサンにより凝固させる操作を数回繰り返して、未反応モノマーを除去し、減圧下50℃で乾燥して、白色の重合体を得た。得られた重合体を、プロピレングリコールモノメチルエーテル500gに溶解したのち、25%アンモニア水溶液50gを添加し、80℃で5時間攪拌して、加水分解を行った。次いで、反応溶液を0.2%蓚酸水溶液中に投入して、重合体を凝固させたのち、水洗し、減圧下50℃で乾燥して、白色の重合体を得た。この重合体は、Mwが10,000であり、元素分析の結果、p-ヒドロキシスチレン、2-ベンジル-2-プロピルアクリレートおよびスチレンの共重合重量比が、70:10:20であった。この重合体を、重合体A-1とする。
【0062】合成例2
p-イソプロペニルフェノール35gおよび2-ベンジル-2-プロピルアクリレート65gをジオキサン150gと混合して均一溶液とした。この溶液を30分間窒素ガスによりバブリングしたのち、AIBN4.5gを添加し、窒素ガスによるバブリングを継続しつつ、反応温度を70℃に維持して、7時間重合した。重合終了後、反応溶液を多量のヘキサンと混合して、生成した重合体を凝固させた。次いで、重合体をジオキサンに再溶解したのち、再度ヘキサンにより凝固させる操作を数回繰り返して、未反応モノマーを除去し、減圧下50℃で乾燥して、白色の重合体を得た。この重合体は、Mwが16,000であり、元素分析の結果、p-イソプロペニルフェノールおよび2-ベンジル-2-プロピルアクリレートの共重合重量比が、35:65であった。この重合体を、重合体A-2とする。
【0063】合成例3
単量体として、p-イソプロペニルフェノール30g、2-ベンジル-2-プロピルアクリレート20gおよびイソボルニルアクリレート50gを使用した以外は、合成例2と同様にして、白色の重合体を得た。この重合体は、Mwが19,000であり、元素分析の結果、p-イソプロペニルフェノール、2-ベンジル-2-プロピルアクリレートおよびイソボルニルアクリレートの共重合重量比が、30:20:50であった。この重合体を重合体A-3とする。
【0064】合成例4
単量体として、p-イソプロペニルフェノール45g、2-ベンジル-2-プロピルアクリレート35gおよびエチルアクリレート20gを使用した以外は、合成例2と同様にして、白色の重合体を得た。この重合体は、Mwが15,000であり、元素分析の結果、p-イソプロペニルフェノール、2-ベンジル-2-プロピルアクリレートおよびエチルアクリレートの共重合重量比が、45:35:20であった。この重合体を、重合体A-4とする。
【0065】合成例5
単量体として、p-イソプロペニルフェノール40g、2-ベンジル-2-プロピルアクリレート30g、2-ヒドロキシプロピルアクリレート10gおよびベンジルアクリレート20gを使用した以外は、合成例2と同様にして、白色の重合体を得た。この重合体は、Mwが16,000であり、元素分析の結果、p-イソプロペニルフェノール、2-ベンジル-2-プロピルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレートおよびベンジルアクリレートの共重合重量比が、40:30:10:20であった。この重合体を、重合体A-5とする。
【0066】合成例6
単量体として、p-イソプロペニルフェノール37g、2-ベンジル-2-プロピルアクリレート28g、2-ヒドロキシプロピルアクリレート5gおよびイソボルニルアクリレート30gを使用した以外は、合成例2と同様にして、白色の重合体を得た。この重合体は、Mwが17,000であり、元素分析の結果、p-イソプロペニルフェノール、2-ベンジル-2-プロピルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレートおよびイソボルニルアクリレートの共重合重量比が、37:28:5:30であった。この重合体を、重合体A-6とする。
【0067】
【実施例】実施例1~10および比較例1~2
表1に示す各成分を混合して、均一溶液としたのち、孔径3μmのテフロン(登録商標)製メンブレンフィルターでろ過して、各樹脂組成物を調製し、下記の要領で、パターニング基板およびメッキ基板を作製して、各種評価を行った。評価結果を、表2に示す。【0068】金スパッタ基板の作製
直径4インチのシリコンウエハー基板上に、クロムを厚さが約500Åとなるようにスパッタリングしたのち、その上に、金を厚さが1,000Åとなるようにスパッタリングして、導電層を形成した。以下、この導電層を形成した基板を、「金スパッタ基板」という。
【0069】パターンの形成
金スパッタ基板にスピンコーターを用いて、各樹脂組成物を塗布したのち、ホットプレート上にて、90℃で5分間加熱して、厚さ25μmの樹脂膜を形成した。次いで、パターンマスクを介し、超高圧水銀灯(OSRAM社製HBO、出力1,000W)を用いて、1,000~3,000J/m2 の紫外線を露光した。露光量は、照度計((株)オーク製作所製 UV-M10(照度計)にプローブUV-35(受光器)をつないだもの)により確認した。露光後、ホットプレート上にて、100℃で5分間PEBを行った。次いで、2.38重量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液を用い、室温で1分間浸漬して現像したのち、流水洗浄し、窒素ブローして、パターンを形成した。以下、このパターンを形成した基板を、「パターニング基板」という。
【0070】メッキ造形物の形成
パターニング基板に対して、電解メッキの前処理として、酸素プラズマによるアッシング処理(出力200W、酸素流量200ミリリットル、処理時間2分)を行って、親水化処理を行った。次いで、この基板をノンシアン金メッキ液(エヌ・イー・ケムキャット(株)製、商品名ECF88K)2リットル中に浸漬し、メッキ浴温度60℃、電流密度0.5A/dm2 に設定して、約60分間電解メッキを行い、厚さ19~20μmのバンプ用メッキ造形物を形成した。次いで、流水洗浄し、窒素ガスにてブローして乾燥したのち、室温にて、ジメチルスルホキシドとN,N-ジメチルホルムアミドの混合溶液(重量比=50:50)中に5分間浸漬して、樹脂膜部分を剥離し、さらに基板上のメッキ造形物を形成した領域以外の導電層をウエットエッチングにより除去することにより、メッキ造形物を有する基板を得た。以下、このメッキ造形物を有する基板を、「メッキ基板」という。
【0071】評価
(1)感度
金スパッタ基板に、マスク設計寸法で40μmピッチのパターン(30μm幅抜きパターン/10μm幅残しパターン)を形成したとき、抜きパターンの底部の寸法が30μmになる露光量を最適露光量とし、この最適露光量より評価した。
(2)解像度
マスク設計寸法で40μmピッチの2種のパターン(30μm幅抜きパターン/10μm幅残しパターン、32μm幅抜きパターン/8μm幅残しパターン)を別々に形成した2枚のパターニング基板を、光学顕微鏡と走査型電子顕微鏡にて観察し、下記の基準で評価した。
○: 32μm幅抜きパターン/8μm幅残しパターンが解像できる。
△: 30μm幅抜きパターン/10μm幅残しパターンは解像できるが、32μm幅抜きパターン/8μm幅残しパターンが解像できない。
×: 40μmピッチのパターンが解像できないかあるいは再現性よく解像できない。
【0072】(3)クラック耐性
パターニング基板に対して、前記メッキ造形物の形成と同様にして、バンプ用メッキ造形物を形成したのち、流水洗浄し、窒素ガスにてブローして乾燥した基板(樹脂膜部分を剥離していない基板)を、室温23℃および湿度約45%に保持したクリーンルーム内に放置して、3時間後および24時間後に、光学顕微鏡にて基板表面を観察し、下記の基準で評価した。ここで、「残しパターン」は、レジストパターンに相当するものである。
○: 24時間後も、残しパターン中にクラックが発生しない。
△: 3時間後は、残しパターン中にクラックが発生しないが、24時間後に、残しパターン中にクラックが発生する。
×: 3時間後に、残しパターン中にクラックが発生する。
(4)パターンの寸法忠実性
マスク寸法で40μmピッチのパターン(30μm幅抜きパターン/10μm幅残しパターン)を形成したパターニング基板を、光学顕微鏡と走査型電子顕微鏡にて観察し、抜きパターンの頂部寸法(Wt)と底部寸法(Wb)を測定して、マスク寸法(30μm)に対するパターンの寸法忠実性を評価した。
【0073】(5)メッキの形状
マスク寸法で40μmピッチのパターン(30μm幅抜きパターン/10μm幅残しパターン)を形成したパターニング基板にメッキ造形物を形成したメッキ基板を、光学顕微鏡と走査型電子顕微鏡にて観察し、下記の基準で評価した。
○: メッキの形状が、樹脂膜から形成されたパターン形状を忠実に転写しており、こぶ状の異常突出は認められない。
×: メッキの形状が、樹脂膜から形成されたパターン形状を忠実に転写せず、こぶ状の異常突出が認められる。
(6)メッキの寸法忠実性
マスク寸法で40μmピッチのパターン(30μm幅抜きパターン/10μm幅残しパターン)を形成したパターニング基板にメッキ造形物を形成したメッキ基板を、光学顕微鏡と走査型電子顕微鏡にて観察し、メッキ部分の頂部寸法(Wt)と底部寸法(Wb)を測定して、マスク寸法(30μm)に対するメッキの寸法忠実性を評価した。
【0074】表1において、重合体(A)以外の成分は、次のとおりである。
ポリ(ビニルメチルエーテル)
B-1: ポリ(ビニルメチルエーテル)(Mw=50,000)のメタノール溶液(東京化成工業(株)製、濃度50重量%)を、ロータリーエバポレーターを用いて、2-ヒドロキシプロピオン酸エチルに溶剤置換して、濃度50重量%の溶液として使用した。
酸発生剤(C)
C-1: 4,7-ジ-n-ブトキシナフチルテトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート
C-2: 4-t-ブチルフェニル・ジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート
(D)有機溶剤
D-1:乳酸エチル
D-2:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
酸拡散制御剤
E-1:2,4,6-トリ(2-ピリジル)-s-トリアジン
【0075】
【表1】
【0076】
【表2】
【0077】
【発明の効果】本発明のポジ型感放射線性樹脂組成物は、電解メッキの鋳型となるパターンをマスク寸法に忠実に形成できるとともに、電解メッキ段階でも、鋳型となるパターンの形状を忠実に転写し、かつマスク寸法に忠実なメッキ造形物を形成できる。しかも、本発明のポジ型感放射線性樹脂組成物は、メッキ中およびメッキ後の水洗・乾燥によってもレジストパターンにクラックを生じることがなく、かつ感度、解像度等にも優れている。したがって、本発明のポジ型感放射線性樹脂組成物は、集積回路素子におけるバンプあるいは配線等の厚膜のメッキ造形物の製造に極めて好適に使用することができる。」
イ 引用発明
上記アの記載によると、引用文献1には、実施例1の各成分を混合して樹脂組成物を調製し、金スパッタ基板に樹脂組成物を塗布したのち、ホットプレート上にて樹脂膜を形成する方法として、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「 重合体A-1(80部)、ポリ(ビニルメチルエーテル)B-1(20部)、酸発生剤C-1(1部)、有機溶剤D-1(150部)の各成分を混合して、均一溶液としたのち、ろ過して樹脂組成物を調製し、金スパッタ基板に樹脂組成物を塗布したのち、ホットプレート上にて、90℃で5分間加熱して、厚さ25μmの樹脂膜を形成する方法。
ここで、重合体A-1は、p-ヒドロキシスチレン、2-ベンジル-2-プロピルアクリレートおよびスチレンの共重合比が、70:10:20であり、ポリ(ビニルメチルエーテル)B-1は、ポリ(ビニルメチルエーテル)ポリ(ビニルメチルエーテル)(Mw=50,000)メタノール溶液(濃度50重量%)を、ロータリーエバポレーターを用いて、2-ヒドロキシプロピオン酸エチルに溶剤置換して、濃度50重量%の溶液としたものであり、酸発生剤C-1は、4,7-ジ-n-ブトキシナフタチルテトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネートであり、有機溶剤D-1は、乳酸エチルである。」
(2)本件特許発明1
ア 対比
本件特許発明1と引用発明とを対比する。
(ア)高分子化合物
引用発明の「樹脂組成物」における「重合体A-1」は、「p-ヒドロキシスチレン、2-ベンジル-2-プロピルアクリレートおよびスチレンの共重合比が、70:10:20であ」る。
上記組成からみて、引用発明の「重合体A-1」は、酸の作用によりアルカリ水溶液に可溶となる、フェノール含有樹脂である。
(当合議体注:このことは、本件特許明細書の【0014】の記載からも確認できる事項である。)。
そうしてみると、引用発明の「重合体A-1」は、本件特許発明1の「フェノール含有樹脂である高分子」に相当する。また、引用発明の「重合体A-1」は、本件特許発明1の「フェノール含有樹脂である高分子」の「酸の作用によりアルカリ水溶液に可溶となる」との要件を満たす。
(イ)光酸発生剤
引用発明の「樹脂組成物」における「酸発生剤C-1」は、「4,7-ジ-n-ブトキシナフタチルテトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネートであ」る。
上記組成からみて、引用発明の「酸発生剤C-1」は、放射線又は活性光源の作用により酸を生じるといえる(当合議体注:このことは、引用文献1の【0032】~【0033】の記載からも確認できる事項である。)。
そうしてみると、引用発明の「酸発生剤C-1」は、本件特許発明1の「光酸発生剤」に相当する。また、引用発明の「酸発生剤C-1」は、本件特許発明1の「光酸発生剤」の「放射線又は活性光源の作用により酸を生じる」との要件を満たす。
(ウ)常圧での沸点が55~250℃の成分
引用発明の「樹脂組成物」における「有機溶剤D-1」は、「乳酸エチルである」。
上記組成からみて、引用発明の「乳酸エチル」は、常圧での沸点が55~250℃である(当合議体注:このことは、本件特許明細書の【0055】~【0056】の記載からも確認できる事項である。)。」
そうしてみると、引用発明の「乳酸エチル」は、本件特許発明1の「常圧での沸点が55~250℃の成分」に相当する。
(エ)化学増幅ポジ型レジスト材料
引用発明の「樹脂組成物」は、「重合体A-1(80部)、ポリ(ビニルメチルエーテル)B-1(20部)、酸発生剤C-1(1部)、有機溶剤D-1(150部)の各成分を混合して、均一溶液としたのち、ろ過して」「調製し」たものである。
上記(ア)~(ウ)及び上記工程からみて、引用発明の「樹脂組成物」は、本件特許発明1の「化学増幅ポジ型レジスト材料溶液」に相当する(当合議体注:このことは、引用文献1の【0007】の記載からも確認できる事項である。)。
また、引用発明の「樹脂組成物」が、本件特許発明1の一般式(A)で表される構造単位を含有する樹脂を含まないことは明らかである。
そうしてみると、引用発明の「樹脂組成物」は、本件特許発明1の「化学増幅ポジ型レジスト材料溶液」の、「高分子化合物」、「光酸発生剤、及び常圧での沸点が55~250℃の成分を含有」し、「ただし」、「一般式(A)で表される構造単位を含有する樹脂」「を含まない。」との要件を満たす。
(オ)i.化学増幅ポジ型レジスト材料を支持フィルム上に塗布する工程
引用発明は、「金スパッタ基板に樹脂組成物を塗布したのち、ホットプレート上にて、90℃で5分間加熱して、厚さ25μmの樹脂膜を形成する」。
上記工程からみて、引用発明の「金スパッタ基板」と本件特許発明1の「支持フィルム」とは、「支持体」という点で共通する。
また、上記(ア)~(エ)と上記工程からみて、引用発明は、本件発明の「i.」の「工程」と、「i.化学増幅ポジ型レジスト材料溶液」「を」「支持体」「上に塗布する工程」「を含み」という点で共通する。
(カ)ii.化学増幅ポジ型レジストドライフィルムを得る工程
上記(オ)の工程からみて、引用発明において、加熱することにより、金スパッタ基板上に塗布した樹脂組成物から有機溶剤及び揮発分を除去しているといえる。
そうしてみると、上記(ア)~(オ)も勘案すると、引用発明の「樹脂膜」は、本件特許発明1の「化学増幅ポジ型レジスト」「フィルム」に相当する。また、引用発明は、本件特許発明の「ii.」の「工程」と、「ii.支持体上の塗工したレジスト材料から有機溶剤及び揮発分を除去して化学増幅ポジ型レジスト」「フィルムを得る工程を含み」という点で共通する。
(キ)ドライフィルム積層体の製造方法
上記(ア)~(カ)を総合すると、引用発明の方法は、「金スパッタ基板に」「樹脂膜を形成する」ものであるから、引用発明と本件特許発明1とは、「フィルム積層体の製造方法」である点において共通する。
イ 一致点・相違点
(ア)一致点
上記アの対比からみて、本件特許発明1と引用発明は、次の点で一致する。
「 i.酸の作用によりアルカリ水溶液に可溶となる、フェノール含有樹脂である高分子化合物、放射線又は活性光線の作用により酸を生じる光酸発生剤、及び常圧での沸点が55~250℃の成分を含有する化学増幅ポジ型レジスト材料溶液(ただし、下記一般式(A)で表される構造単位を含有する樹脂を含まない。)を、支持体上に塗工する工程、
ii.加熱することにより、支持体上に塗工したレジスト材料から有機溶剤及び揮発分を除去して化学増幅ポジ型レジストフィルムを得る工程
を含むフィルム積層体の製造方法。
【化1】
(式中、R101は水素原子又はメチル基を示し、R102、R103は、相互に独立に、水素原子、炭素数1~6の直鎖状、分岐状若しくは環状のアルキル基を示す。尚、R102及びR103が相互に結合して環状構造を形成してもよい。また、kは1~4の整数である。)」
(イ)相違点
上記アの対比からみて、本件特許発明1と引用発明は、次の点で相違する。
(相違点1)
「化学増幅ポジ型レジスト材料溶液」が、本件特許発明1は、「下記一般式(B)で表されるビニル低級アルキルエーテルの単独または2種以上の混合物を重合することにより得られる(共)重合体であるポリ(ビニル低級アルキルエーテル)を含まない
【化2】
(式中、R201は、炭素数1~5の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基を示す。)」のに対して、引用発明の「樹脂組成物」は、「ポリ(ビニルメチルエーテル)」を含む点。
(相違点2)
「i.支持体上に塗工する工程」が、本件特許発明1は、「支持体」が「支持フィルム」であって、「化学増幅ポジ型レジスト材料溶液」「を、クリーン度1000以下のクリーンルーム中で、温度5~45℃かつ湿度5~90%に管理された領域内で、支持フィルム上に塗工する」のに対して、引用発明は、「支持体」が「金スパッタ基板」であって、「金スパッタ基板に樹脂組成物を塗布」する際の、クリーン度、温度、湿度は明らかでない点。
(相違点3)
「ii.化学増幅ポジ型レジストフィルムを得る工程」が、本件特許発明1は、「インラインドライヤで40~130℃、1~40分間加熱することによ」るのに対して、引用発明は、「ホットプレート上にて、90℃で5分間加熱して」いる点。
(相違点4)
本件特許発明1は、「得られた化学増幅ポジ型レジスト」「フィルム中に、5~40質量%の、常圧での沸点が55~250℃の成分を含有する」のに対して、引用発明の「樹脂膜」は、そのように特定されていない点。
(相違点5)
「化学増幅ポジ型レジストフィルム」及び「フィルム積層体」が、本件特許発明1では、「化学増幅ポジ型レジストドライフィルム」及び「ドライフィルム積層体」であるのに対して、引用発明では、いわゆる、(レジスト)「ドライフィルム」に該当するものではない点。
ウ 判断
まず、上記相違点1について検討する。
引用文献1の【0031】には、「本発明において、ポリ(ビニル低級アルキルエーテル)は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。ポリ(ビニル低級アルキルエーテル)の使用量は、重合体(A)とポリ(ビニル低級アルキルエーテル)との合計を100重量部としたときに、好ましくは5~60重量部、さらに好ましくは10~50重量部である。この場合、ポリ(ビニル低級アルキルエーテル)の使用量が5重量部未満では、厚膜のメッキ造形物を製造する際のメッキ後の水洗・乾燥過程で、鋳型となるレジストパターンにクラックが発生することがあり、好ましくなく、一方60重量部を超えると、パターンを形成するための現像時に、露光部と未露光部とのコントラストが低下して、パターン形状が損なわれるおそれがある。」と記載されている。
上記記載から、引用発明の「樹脂組成物」において、ポリ(ビニル低級アルキルエーテル)は必須であるといえる。このことは、引用文献1の特許請求の範囲、【0007】の課題を解決するための手段についての記載、【0075】等における、樹脂組成物において、ポリ(ビニル低級アルキルエーテル)を含有する実施例とポリ(ビニル低級アルキルエーテル)を含有しない比較例の記載からも理解できる事項である。
そうしてみると、引用文献1の記載に接した当業者であれば、引用発明の「樹脂組成物」から、ポリ(ビニル低級アルキルエーテル)を除くことは、想定できない。
また、引用文献2~7においても、引用発明において、相違点1に係る本件特許発明1の構成を適用することを窺わせる記載はない。
したがって、たとえ当業者といえども、相違点1に係る本件特許発明1の構成とすることが容易に想到し得たということはできない。
さらに進めて検討する。
引用文献1には、得られた樹脂膜中に、常圧での沸点が55~250℃の成分をどの程度含有するかについて、記載も示唆もなく、また、樹脂膜中の上記成分の含有量を調整するために樹脂膜を形成する際の加熱温度や時間を調整することについても、記載も示唆もない。また、引用発明において、相違点3及び4に係る本件特許発明1の構成を適用することを窺わせる記載は、引用文献2~7においてもなく、周知技術であるともいえない。
そうしてみると、たとえ当業者といえども、相違点3及び4に係る本件特許発明1の構成とすることが容易に想到し得たということはできない。
また、引用文献1における実施例1を他の実施例2~10に置き換えても結論は同様である。
なお、引用文献1には、樹脂組成物はポリ(ビニル低級アルキルエーテル)を含有しない、比較例1及び2も開示されている。しかしながら、引用文献1に記載された発明において、「樹脂組成物」を改善しようとする当業者は、まずは、「樹脂組成物」の成分として、「ポリ(ビニル低級アルキルエーテル)」の採用を試みると考えられる。
したがって、仮に、ポリ(ビニル低級アルキルエーテル)を含有しない比較例を主引用発明としても、当業者は、相違点3及び4に係る本件特許発明1の構成には至らないといえる。
エ 本件特許発明1についてのまとめ
以上のことから、本件特許発明1は、当業者であっても、引用文献1に記載された発明及び引用文献1~7に記載された事項に基づいて容易に発明をすることができたということができない。
(3)本件特許発明2
本件特許発明2は、本件特許発明1の構成を全て具備するものであるから、本件特許発明2も、本件特許発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用文献1に記載された発明及び引用文献1~7に記載された事項に基づいて容易に発明をすることができたということができない。
(4)本件特許発明3
ア 対比、一致点・相違点
本件特許発明3と引用発明とを対比すると、一致点・相違点は以下のとおりとなる。
(ア)一致点
本件特許発明3と引用発明は、次の点で一致する。
「 i.酸の作用によりアルカリ水溶液に可溶となる、フェノール含有樹脂である高分子化合物、放射線又は活性光線の作用により酸を生じる光酸発生剤、及び常圧での沸点が55~250℃の成分を含有する化学増幅ポジ型レジスト材料溶液(ただし、下記一般式(A)で表される構造単位を含有する樹脂を含まない。)を、支持体上に塗工する工程、
ii.加熱することにより、支持体上に塗工したレジスト材料から有機溶剤及び揮発分を除去して化学増幅ポジ型レジストフィルムを得る工程
を含むフィルム積層体の製造方法。
【化1】
(式中、R101は水素原子又はメチル基を示し、R102、R103は、相互に独立に、水素原子、炭素数1~6の直鎖状、分岐状若しくは環状のアルキル基を示す。尚、R102及びR103が相互に結合して環状構造を形成してもよい。また、kは1~4の整数である。)」
(イ)相違点
本件特許発明3と引用発明は、次の点で相違する。
(相違点6)
「化学増幅ポジ型レジスト材料溶液」が、本件特許発明3は、「下記一般式(B)で表されるビニル低級アルキルエーテルの単独または2種以上の混合物を重合することにより得られる(共)重合体であるポリ(ビニル低級アルキルエーテル)を含まない
【化2】
(式中、R201は、炭素数1~5の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基を示す。)」のに対して、引用発明の「樹脂組成物」は、「ポリ(ビニルメチルエーテル)」を含む点。
(相違点7)
「支持体上に塗工する工程」が、本件特許発明3は、「支持体」が「支持フィルム」であって、「化学増幅ポジ型レジスト材料溶液」「を、クリーン度1000以下のクリーンルーム中で、温度5~45℃かつ湿度5~90%に管理された領域内で、支持フィルム上に0.05~1.000m/minの速度で塗工する」のに対して、引用発明は、「支持体」が「金スパッタ基板」であって、「金スパッタ基板に樹脂組成物を塗布」する際の、クリーン度、温度、湿度、塗工の速度は明らかでない点。
(相違点8)
「化学増幅ポジ型レジストフィルムを得る工程」が、本件特許発明3は、「インラインドライヤで40~130℃、1~40分間加熱することによ」るのに対して、引用発明は、「ホットプレート上にて、90℃で5分間加熱して」いる点。
(相違点9)
本件特許発明3は、「連続的に得られた積層体をロールフィルム化する工程を含」むのに対して、引用発明は、そのような工程を有しない点。
(相違点10)
本件特許発明3は、「得られた化学増幅ポジ型レジストフィルム中に、5~40質量%の、常圧での沸点が55~250℃の成分を含有する」のに対して、引用発明の「樹脂膜」は、そのように特定されていない点。
(相違点11)
「化学増幅ポジ型レジストフィルム」及び「フィルム積層体」が、本件特許発明3では、「化学増幅ポジ型レジストドライフィルム」及び「ドライフィルム積層体」であるのに対して、引用発明では、いわゆる、(レジスト)「ドライフィルム」に該当するものではない点。
イ 判断
上記相違点6、8及び10は、それぞれ、上記相違点1、3及び4と同じであるから、上記(2)の本件特許発明1で示した理由と同じ理由により、本件特許発明3は、当業者であっても、引用文献1に記載された発明及び引用文献1~7に記載された事項に基づいて容易に発明をすることができたということができない。
(5)本件特許発明4
本件特許発明4は、本件特許発明3の構成を全て具備するものであるから、本件特許発明4も、本件特許発明3と同じ理由により、当業者であっても、引用文献1に記載された発明及び引用文献1~7に記載された事項に基づいて容易に発明をすることができたということができない。
(6)特許異議申立人の主張について
特許異議申立人は、令和3年5月20日付け意見書において、「「除くクレーム」とする訂正が新規事項追加とならないのであれば、訂正により新たな技術的事項を導入したものではないと解されるはずであり、そうであれば、本件特許発明が訂正により新たな技術的事項を導入したものではないにもかかわらず、該訂正によって進歩性が認められることとなるとすれば、それは理に適わないものと思料する。」と主張している。
しかしながら、上記(2)~(5)で示したとおり、特許異議申立人の上記主張を採用することはできない。
(7)まとめ
本件特許発明1~4は、当業者であっても、引用文献1に記載された発明及び引用文献1~7に記載された事項に基づいて容易に発明をすることができたということができない。
2 取消理由通知書により特許権者に通知した取消しの理由2(実施可能要件)について
(1)本件訂正明細書の【0070】には、「化学増幅ポジ型レジスト材料溶液が塗布された支持フィルム(離型基材)をインラインドライヤ(熱風循環オーブン)に通し、40~130℃、1~40分間、より好ましくは50~120℃、2~30分間で有機溶剤及び揮発分を除去し、乾燥させて化学増幅ポジ型レジストドライフィルム層を形成する。」と記載されている。また、本件訂正明細書の【0079】~【0092】には、実施例、比較例が記載されている。
たしかに、実施例、比較例については、【表2】(【0088】)において、熱風循環オーブン温度のみの記載で、加熱時間は記載されていない。しかしながら、上記【0070】の記載に接した当業者であれば、化学増幅ポジ型レジストドライフィルム中の5~40質量%の、常圧での沸点が55~250℃の成分を含有するドライフィルム積層体を得るためには、上記【0070】に記載された加熱温度及び加熱時間の範囲内で調整すればよいのであるから、過度の試行錯誤を強いるものとまではいえない。
(2)特許異議申立人は、令和3年5月20日付け意見書において、特開2018-155802号公報(以下「参考資料1」という。)の実施例、比較例における乾燥工程温度と沸点55~250℃の成分の関係を示して、「したがって、所望のドライフィルム積層体を製造するために当業者に過度の試行錯誤を強いるものであるから、本件訂正明細書は、当業者が実施できる程度に記載されているということができないと思料する。」と主張している。
たしかに、参考資料1に記載された感光性樹脂組成物の乾燥工程温度が本件特許発明1~4の範囲内にあっても沸点55~250℃の成分の質量%が本件特許発明1~4の範囲外となる場合がある。しかしながら、参考資料1の【0134】~【0141】に記載された感光性樹脂組成物は、本件特許発明の化学増幅ポジ型レジスト材料とは組成が異なるものであるから、前提において異なるものである以上、特許異議申立人の上記主張を採用することはできない。
また、仮に、所望の含有量が得られなかったとしても、上記(1)と同様、当業者は、加熱温度及び加熱時間を適宜調整して対応することができるといえる。
(3)したがって、本件特許は、発明の詳細な説明が、当業者が本件特許発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものである。
3 取消理由通知書により特許権者に通知した取消しの理由3(サポート要件)について
(1)本件特許発明は、「化学増幅ポジ型レジスト材料溶液」「を」「インラインドライヤで」「1~40分間加熱する」という発明特定事項を有している。これに対して、本件訂正明細書の記載は上記2で述べたとおりである。そして、上記2で述べたように、本件特許は、発明の詳細な説明が、当業者が本件特許発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるから、出願時の技術常識に照らせば、本件特許発明の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるといえる。
(2)特許異議申立人は、令和3年5月20日付け意見書において、「本件訂正明細書の記載は理由2について述べたとおりである。したがって、出願時の技術常識に照らしても、本件特許発明の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえないと思料する。」と主張している。
しかしながら、上記2で述べた理由と同じ理由により、特許異議申立の上記主張を採用することはできない。
(3)したがって、本件特許発明は、発明の詳細な説明に記載したものである。
4 取消理由通知書により特許権者に通知した取消しの理由4(明確性要件)について
(1)本件特許発明は、「クリーン度1000以下」という発明特定事項を有している。ここで、「半導体・金属材料用語辞典」、株式会社 工業調査会、第356頁、1999年9月20日初版第1刷発行(以下「乙第1号証」という。)及び「半導体大辞典」、株式会社 工業調査会、第1610-1611頁、1999年12月20日初版第1刷発行(以下「乙第2号証」という。)には、それぞれ、「クリーン度に関しては1立方フィートに0.5μmの塵が何個存在するかで決まる。クラス1000では塵が1,000個存在することになる。」及び「この清浄度クラスに関しては,米国規格Fed.STD.209Dに準じた塵埃粒径0.5μmの微粒子個数で管理する方法が一般的であり」と記載されている。
上記乙第1号証及び乙第2号証の記載を心得た当業者であれば、本件特許発明における「クリーン度1000以下」とは、1立方フィートに0.5μmの塵が1,000個以下存在するクリーン度であると理解できる。
(2)特許異議申立人は、令和3年5月20日付け意見書において、特開2005-332259号公報及び特開2014-72399号公報を示して「以上のように、「クリーン度」や「クラス」の表し方や測定方法には種々なものがあり、特許権者が米国規格Fed.STD.209Dに基づいて主張する、「『クリーン度1000以下』とは、1立方フィートに0.5μmの塵が1,000個以下存在するクリーン度である」ことに一義的に特定されるということはできない。」と主張するとともに、「「クラス1000」のように「クラス」に数字を付して表されるクラス表示が必要になり、「クリーン度1000」という表記は行われない。その点においても、「クリーン度1000以下」の意味は明らかでない。」と主張している。
たしかに、「クリーン度」や「クラス」の表し方や測定方法には種々なものがあるといえども、上記(1)で述べたとおり、「半導体・金属材料用語辞典」や「半導体大辞典」といった辞典の記載を参酌して一義的に理解でき、また、「クリーン度1000以下」との表記についても、当業者がみて理解できる範囲内であって、この記載が第三者に不測の不利益を与えるとまではいえない。
そうしてみると、特許異議申立人の上記主張を採用することはできない。
(3)したがって、本件特許発明は、明確である。
第6 むすび
本件特許1~4は、取消理由通知書に記載した取消しの理由及び特許異議申立書に記載された特許異議の申立ての理由によっては、取り消すことができない。
また、他に本件特許1~4を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2020-700595