特許異議申立
2023-701101
ネガ型感光性樹脂組成物、それを用いた半導体装置および電子機器
- 審判番号
- 2023-701101
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2018-239162
- 登録番号
- 7259317
- 請求日
- 2023年10月16日
- 審決日
- 2024年01月05日
- 公報発行日
- 2024年02月22日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】住友ベークライト株式会社
- 【権利者代理人】速水 進治
- 【異議申立人】石川 竜郎
- 審判長/審判官
- 審判長 里村 利光
- 審判官 宮澤 浩
- 審判官 本田 博幸
- 分類
- P1651.113-Y (G03F) / P1651.121-Y (G03F) / P1651.536-Y (G03F) / P1651.537-Y (G03F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条、特許法第29条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7259317号発明「ネガ型感光性樹脂組成物、それを用いた半導体装置および電子機器」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7259317号の請求項1~13に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7259317号の請求項1~13に係る特許についての出願は、平成30年12月21日に出願され、令和5年4月10日にその特許権の設定登録がされ、令和5年4月18日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、令和5年10月16日に特許異議申立人 石川竜郎(以下「申立人」という。)が特許異議の申立てを行った。
第2 本件発明
特許第7259317号の請求項1~13の特許に係る発明(以下「本件特許発明1」~「本件特許発明13」という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1~13に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
熱硬化性樹脂と、
光酸発生剤と、
酸無水物基を有するカップリング剤と、
水と、を含む、ネガ型感光性樹脂組成物であって、
前記水の含有量が、水を除いた当該ネガ型感光性樹脂組成物全体に対して、0.20質量%以上10質量%以下である、ネガ型感光性樹脂組成物。
【請求項2】
請求項1に記載のネガ型感光性樹脂組成物であって、
ヘーズメーターを用いて測定した、25℃における当該ネガ型感光性樹脂組成物のヘーズ値が、3.0以下である、ネガ型感光性樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1または2に記載のネガ型感光性樹脂組成物であって、
有機溶剤を含む、ネガ型感光性樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載のネガ型感光性樹脂組成物であって、
当該ネガ型感光性樹脂組成物の不揮発成分の含有量が、20質量%以上60質量%以下である、ネガ型感光性樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載のネガ型感光性樹脂組成物であって、
25℃における当該ネガ型感光性樹脂組成物の粘度が、10cP以上6000cP以下である、ネガ型感光性樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載のネガ型感光性樹脂組成物であって、
前記熱硬化性樹脂は、25℃で固形状の成分を含む、ネガ型感光性樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載のネガ型感光性樹脂組成物であって、
前記熱硬化性樹脂が、エポキシ樹脂を含む、ネガ型感光性樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載のネガ型感光性樹脂組成物であって、
硬化剤を含む、ネガ型感光性樹脂組成物。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載のネガ型感光性樹脂組成物であって、
熱可塑性樹脂を含む、ネガ型感光性樹脂組成物。
【請求項10】
請求項9に記載のネガ型感光性樹脂組成物であって、
前記熱可塑性樹脂が、フェノキシ樹脂を含む、ネガ型感光性樹脂組成物。
【請求項11】
半導体チップと、
前記半導体チップ上に設けられた、請求項1~10のいずれか一項に記載のネガ型感光性樹脂組成物の硬化物を含む樹脂膜と、
を備える、半導体装置。
【請求項12】
請求項11に記載の半導体装置であって、
前記樹脂膜中に埋設された再配線層を備えており、
前記再配線層が、前記半導体チップと電気的に接続するように構成される、半導体装置。
【請求項13】
請求項11または12に記載の半導体装置を備える、電子機器。」
第3 申立理由の概要
申立人は、以下の申立ての理由1~5によって、本件特許発明1~13に係る特許を取り消すべきものである旨主張する。なお、申立人が引用する甲第1号証~甲第10号証は、次のとおりであり、甲第1号証~甲第3号証が、主引用発明が記載された文献として引用されたものである。
甲第1号証:特開2018-164072号公報
甲第2号証:特開2018-163312号公報
甲第3号証:特開2012- 58304号公報
甲第4号証:特開2003-295427号公報
甲第5号証:特開2008- 58683号公報
甲第6号証:特開2002-293885号公報
甲第7号証:特開2015-187205号公報
甲第8号証:特開2018- 36533号公報
甲第9号証:DIC株式会社のホームページ
(https://www.dic-global.com/pdf/products/catalog/
dic_epoxy_ja.pdf)におけるEPICON(登録商標)
エポキシ樹脂&硬化剤のカタログの11頁
甲第10号証:DIC株式会社のホームページ
(https://www.dic-global.com/ja/products/epoxy/
phenol_mn/)
1 申立ての理由1(特許法29条1項3号)
本件特許発明1、3、4、6、7~8は、甲第1号証に記載の発明である。
2 申立ての理由2(特許法29条2項)
本件特許発明1~13は、甲第1号証~甲第10号証に記載の発明に基づき容易想到である。
3 申立ての理由3(特許法36条4項1号)
本件特許発明1~13は、当業者が発明を実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものでない。
4 申立ての理由4(特許法36条6項1号)
本件特許発明1~13は、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えている。
5 申立ての理由5(特許法36条6項2号)
本件特許発明1~13は明確でない。
第4 甲号証
1 甲第1号証
(1)甲第1号証の記載事項
本件特許に係る出願前に公開され、主引用発明が記載された引用文献であり、甲第1号証として申立人が引用する、特開2018-164072号公報(以下「甲1」という。)には、以下の記載事項がある。
ア 技術分野
「【0001】
本発明は、電子デバイスの製造方法、および、当該製造方法に用いられる感光性接着剤樹脂組成物に関する。」
イ 発明が解決しようとする課題
「【0005】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、電子デバイスの製造において、十分に強度が高く、かつ、位置精度のよい接着を可能にすることを課題とする。」
ウ 課題を解決するための手段
「【0008】
また、本発明によれば、
感光性接着剤樹脂組成物を用いて基板上に樹脂膜を形成する工程、
前記樹脂膜を60~150℃でプリベークする工程、
前記プリベークされた樹脂膜を露光および現像してパターニングされた樹脂膜を得る工程、
前記パターニングされた樹脂膜を180~250℃で硬化して硬化膜を得る工程、
前記硬化膜同士、または、前記硬化膜が形成されていない基板と前記硬化膜とを密着させて、210~350℃で加熱しながら押圧し、前記硬化膜同士、または、前記硬化膜が形成されていない基板と前記硬化膜とが接着された構造を得る工程、
を含む電子デバイスの製造方法に用いられる感光性接着剤樹脂組成物であって、
熱硬化性樹脂(A)と、感光剤(C)と、有機溶剤(D)とを含む感光性接着剤樹脂組成物
が提供される。」
エ 発明の効果
「【0009】
本発明によれば、電子デバイスの製造において、十分に強度が高く、かつ、位置精度が良好な接着が可能となる。また、そのような接着に好ましく用いられる、パターニング性が良好な感光性接着剤樹脂組成物が得られる。」
オ 感光性接着剤樹脂組成物
「【0042】
<感光性接着剤樹脂組成物>
本実施形態に係る電子デバイスの製造方法に用いられる、感光性接着剤樹脂組成物について説明する。…
【0043】
感光性接着剤樹脂組成物は、一態様として、熱硬化性樹脂(A)と、感光剤(C)と、有機溶剤(D)とを含む感光性接着剤樹脂組成物であることが好ましい。このような感光性接着剤樹脂組成物を用いることで、接着力をより良好にすることができる。また、パターニング性を良好にすることができ、微細な構造形成が必要な場合等にも好ましく用いることができる。
また、感光性接着剤樹脂組成物は、上記(A)、(C)および(D)に加え、または(A)、(C)および(D)とは別に、さらに他の成分(例えば後述の硬化剤(B)、界面活性剤(E)や界面活性剤(e)、密着助剤(F)など)を含むことがより好ましい。…」
カ 熱硬化性樹脂
「【0044】
・熱硬化性樹脂(A)
感光性接着剤樹脂組成物は、熱硬化性樹脂(A)を含むことが好ましい。熱硬化性樹脂(A)としては、例えば、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ビスマレイミド樹脂、エポキシ樹脂、ユリア(尿素)樹脂、メラミン樹脂、ポリウレタン樹脂、シアネートエステル樹脂、シリコーン樹脂、オキセタン樹脂、(メタ)アクリレート樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ベンゾオキサジン樹脂等が挙げられる。
【0045】
熱硬化性樹脂(A)は、エポキシ樹脂(a)を含むことが好ましい。これにより、最終的な接着後の膜の熱膨張/熱収縮を小さくすることができるため、電子デバイスの信頼性向上に寄与しうる。また、接着後の膜の伸縮性を高められる、接着後の膜のガラス転移温度を高くするといったことも可能であり、電子デバイス分野への適用に望ましい物性の接着膜が得られる。
【0046】
エポキシ樹脂(a)としては、例えば、1分子中にエポキシ基が2個以上であるものを使用することができる。たとえば、…、フェノキシ樹脂、…などが挙げられる。エポキシ樹脂(a)は、単独で用いても複数組み合わせて用いてもよい。」
キ 硬化剤
「【0049】
・硬化剤(B)
感光性接着剤樹脂組成物は、硬化剤(B)を含有することが好ましい。これにより、接着力をより良好にすることができる。硬化剤(B)としては、上述の熱硬化性樹脂(A)(好ましくはエポキシ樹脂(a))の重合/架橋反応を促進させるものであればとくに限定されない。」
ク 感光剤
「【0052】
・感光剤(C)
感光剤(C)としては、光酸発生剤を用いることができる。光酸発生剤としては、紫外線等の活性光線の照射により酸を発生する光酸発生剤を含有する。光酸発生剤として、オニウム塩化合物を挙げることができ、例えば、ジアゾニウム塩、ジアリールヨードニウム塩等のヨードニウム塩、トリアリールスルホニウム塩等のスルホニウム塩、トリアリールビリリウム塩、ベンジルピリジニウムチオシアネート、ジアルキルフェナシルスルホニウム塩、ジアルキルヒドロキシフェニルホスホニウム塩などカチオン型光重合開始剤を挙げることができる。また、感光性のジアゾキノン化合物も挙げることができる。感光性のジアゾキノン化合物は、特に、感光性接着剤樹脂組成物をポジ型(アルカリ現像液で現像したときに露光部が溶解する)とする時に好適に用いられる。なお、感光剤としては、感光性組成物が金属に接するため、メチド塩型やボレート塩型のような、分解によるフッ化水素の発生がないものが好ましい。」
ケ 有機溶剤
「【0054】
・有機溶剤(D)
感光性接着剤樹脂組成物は溶剤を含むことが好ましい。この溶剤としては、感光性接着剤樹脂組成物の各成分を溶解可能なもので、且つ、各構成成分と化学反応しないものであれば特に制限なく用いることができる。…
【0055】
有機溶剤(D)は、感光性接着剤樹脂組成物中の非揮発成分全量の濃度が、5~60質量%となるように用いられることが好ましい。この範囲とすることで、各成分を十分に溶解させることができ、また、良好な塗布性を担保することができる。」
コ 界面活性剤
「【0056】
・界面活性剤(E)
感光性接着剤樹脂組成物は、界面活性剤(E)を含むことが好ましい。界面活性剤(E)を含むことにより、均一な樹脂膜を得ることができる。また、現像時の残渣やパターン浮き上がり防止が期待できる。界面活性剤は、たとえば、フッ素系界面活性剤、シリコン系界面活性剤、アルキル系界面活性剤、およびアクリル系界面活性剤等が挙げられる。」
サ 密着助剤
「【0061】
・密着助剤(F)
感光性接着剤樹脂組成物は、密着助剤(F)を含むことが好ましい。これにより、接着力の一層の向上を図ることができる。詳細なメカニズムは不明であるが、密着助剤(F)の密着性基(密着能を奏する官能基)は、加熱に対しても比較的安定であり、180~250℃での硬化後も一定量の密着助剤(F)が硬化膜中に残存する結果、その残存した密着助剤(F)が接着力の向上に寄与すると考えられる。
【0062】
密着助剤(F)は、とくに限定されないが、たとえばアミノシラン、エポキシシラン、アクリルシラン、メルカプトシラン、ビニルシラン、ウレイドシラン、カルボン酸シラン(酸無水物感応型シランを含む)、またはスルフィドシラン等のシランカップリング剤を用いることができる。シランカップリング剤は、1種類を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、エポキシシラン(すなわち、1分子中に、エポキシ部位と、加水分解によりシラノール基を発生する基の両方を含む化合物)を用いることがより好ましい。…
【0068】
カルボン酸シラン(酸無水物感応型シランを含む)としては、信越化学工業社製の、商品名X-12-967C(化合物名:3-トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物)等が挙げられる。…
【0070】
密着助剤(F)の含有量は、感光性接着剤樹脂組成物の不揮発性成分の全量を基準として、通常0.01~5質量%、好ましくは0.05~3質量%である。この範囲とすることで、上述の接着強度の向上の効果をより一層得ることが期待できる。」
シ 実施例
「【0074】
以下、実施例を示すが、本発明は実施例に限定されるものではない。…
【0076】
熱硬化性樹脂、硬化剤、感光剤、密着助剤、界面活性剤および有機溶剤としては、それぞれ以下を使用した。
【0077】
・熱硬化性樹脂:以下構造のエポキシ樹脂(日本化薬株式会社製のノボラック型エポキシ樹脂「EPPN201」
[図:0001406750000001.jpg]
【0078】
【化1】
[図:0001406750000002.jpg]
【0079】
・硬化剤:以下構造のフェノール化合物(住友ベークライト株式会社製のノボラック型フェノール樹脂「PR-51470」(重量平均分子量:2200(ポリスチレン換算)))
【0080】
【化2】
[図:0001406750000003.jpg]
【0081】
・感光剤:CPI-310B(サンアプロ株式会社製、トリアリールスルホニウム塩)
【0082】
・有機溶剤:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)…
【0083】
・界面活性剤:メガファック R41(DIC株式会社製、フッ素原子含有ノニオン系界面活性剤、親油性基含有オリゴマー)…
【0086】
<接着構造の作製>
以下手順により、基板同士の接着構造を作製した。
(1)厚さ0.725mmのシリコンウェハ上に、表1に示す感光性接着剤樹脂組成物をスピン塗布し、1μm厚の樹脂膜を形成した。
(2)上記の樹脂膜が形成されたウェハを、ホットプレートを用い、…プリベークした。
(3)上記プリベークしたウェハ上の樹脂膜をパターン露光後、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)を用いてスプレー現像した。そして、リンス液としてイソプロピルアルコール(IPA)を用いてリンス工程を行い、パターニングされた樹脂膜を有するウェハを得た。
(4)上記のパターニングされた樹脂膜を有するウェハを加熱し、パターニングされた樹脂膜を硬化させ、硬化膜を得た。加熱は窒素置換したオーブン(酸素濃度が100ppm以下)を用い、表1に記載の温度・時間とした。
(5)上記の硬化膜を有するウェハの、硬化膜がある部分を、ダイシングソーを用いて切り出し、10mm×10mm角の正方形の評価用基板(ボトムダイ)と、5mm×5mm角の正方形の評価用基板(トップダイ)を作製した。
(6)ステージ上に、上記のボトムダイを、硬化膜がある面を上にして静置した。そして、そのボトムダイの上に、トップダイを、ボトムダイの硬化膜とトップダイの硬化膜同士が密着するように配置した。
(7)上記の静置したボトムダイおよびトップダイの上下から加熱加圧した。このとき、下からの加熱温度は100℃に設定した。また、上からは、市販の半導体組立用ボンディングツールを用い、加熱したボンディングヘッドをトップダイに押し当てることで熱と圧力を加えた。ボンディングヘッドの温度は250~370℃の間で適宜設定した。加熱加圧の時間は60秒とした。
なお、表1の「ボンディング条件」に記載の温度は、熱電対をトップダイとボトムダイの間に挟んで計測した温度であり、硬化膜が実際に加熱された温度を反映した数値である。
【0087】
<ガラス転移温度>
実施例1において、上記(1)~(4)の工程により得られた試験片(硬化膜)に関し、熱機械分析装置(セイコーインスツル社製、TMA100)を用いて、測定温度範囲30℃~350℃、昇温速度10℃/分の条件下で熱機械分析をおこなった。ガラス転移温度は190℃だった。
【0088】
<評価>
上記で得られた基板同士の接着構造を用いて、以下評価を行った。
【0089】
・接着力の評価
上記の接着工程を通じて得られた接合構造のボトムダイ部分をステージ上に固定し、図2に示すように、横方向から徐々に力を加え、ボトムダイとトップダイが剥がれる、または、トップダイが破壊されるときの力を求めた。その値を、ボトムダイとトップダイとの接着面積(5×5mm2)で除し、単位面積あたりの「ダイシェア強度(単位:MPa)」として表1に記載した。なお、ダイシェア強度が1.0MPa以上であれば、実用上十分な強度で接着していると言える。」
合議体注:図2は次のものである。
[図:0001406750000004.jpg]
「【0090】
・位置精度の評価
上記の接着工程を通じて得られた接合構造を観察し、ボトムダイとトップダイが、平行に、当初配置した位置からずれずに接着されているか否かを評価した。すなわち、ボトムダイとトップダイが、当初配置した位置からずれずに、電子デバイスの作製上問題ない程度に平行に接着された場合を「良」とし、そうでない場合を「不良」とした。
【0091】
・パターニング性
感光性接着剤樹脂組成物のパターニング性を評価すべく、上記の接着力の評価および位置精度の評価とは別に、以下評価を行った。
直径200mmのシリコン基板(表面処理なし)上に、表1の実施例1~8及び比較例1の感光性接着剤樹脂組成物をスピンコートし、120℃5分乾燥させて、膜厚1μmの樹脂膜を得た。
この樹脂膜に対し、i線ステッパーを用いて200mJ/cm2のパターン露光(直径100μmの円形パターン)を行い、その後、基板を3000rpmで回転させながら、2秒間、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)を現像液として用いてスプレー現像した。
現像後に得られたパターンを観察し、円形パターンが良好に形成されている(開口している)ものを○、そうでないものを×とした。…
【0105】
7.組成物の組成(処方)やプロセス条件のバリエーションに関する実施例(実施例2-1~2-9)
表7に示す組成の感光性接着剤樹脂組成物を調製した。
表7において、熱硬化性樹脂、硬化剤、感光剤、および密着助剤の量は、熱硬化性樹脂の量を100質量部としたときの量である。また、界面活性剤の量は、感光性接着剤樹脂組成物中の不揮発成分の全量を基準とした量である。
【0106】
表7中の素材のうち、熱硬化性樹脂、硬化剤、感光材および密着助剤については、以下のとおりである。
・素材の明記が無いものは、実施例1~8と同様の素材を用いた。
・素材の明記があるものについては、以下のものを用いた
感光材:Irgacuce290・・・カチオン系光重合開始剤(トリアリールスルフォニウム テトラキス-(ペンタフルオロフェニル)ボレート、BASF社製)
密着助剤:X-12-976C・・・3-トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物(信越化学工業社製)
【0107】
また、表7中の素材のうち、界面活性剤および有機溶剤については、記載されているものを用いた。すなわち、「メガファック R41」「SILFOAM SD 850」および「PGMEA」は、それぞれ表1に記載のものと同様である。…
【0108】
<接着構造の作製>
表7に記載の各組成物を用いて、実施例1~8と同様のプロセス評価を行った。ただし、プリベーク、硬化、加熱押圧の条件は、表7に記載のとおりとした。
評価結果も併せて表7に示す。
【0109】
【表7】
[図:0001406750000005.jpg]
」
合議体注:表7のうち、実験例2-7のみを拡大し、他の実施例に係る部分の記載を省略したものを以下に示す。
[図:0001406750000006.jpg]
「【0110】
表7より、様々なバリエーションの感光性接着剤樹脂組成物を用いた場合であっても、特定温度でのプリベーク工程、パターニング工程、特定温度で硬化膜を得る工程、および、特定温度で加熱押圧して接着構造を得る工程、の一連の工程により、ダイシェア強度や位置精度に関して良好な結果が得られることが示された。また、これら感光性接着剤樹脂組成物は、良好なパターニング性を示した。」
(2)甲第1号証に記載された発明
甲1の記載事項シに基づけば、甲1には、「実施例2-7」に係る発明として、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていたといえる。
「以下に示す組成の感光性接着剤樹脂組成物。」
熱硬化性樹脂:ノボラック型エポキシ樹脂「EPPN201」100質量部
硬化剤:ノボラック型フェノール樹脂「PR-51470」 54質量部
感光剤:CPI-310B(トリアリールスルホニウム塩) 2質量部
密着助剤:X-12-976C
3-トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物 2質量部
界面活性剤:メガファック R41 不揮発成分中 4000ppm
有機溶剤:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
(PGMEA)」
2 甲第2号証
(1)甲第2号証の記載事項
本件特許に係る出願前に公開され、主引用発明が記載された引用文献であり、甲第2号証として申立人が引用する、特開2018-163312号公報(以下「甲2」という。)には、以下の記載事項がある。
ア 技術分野
「【0001】
本発明は、感光性樹脂組成物、硬化膜および電気・電子機器に関する。」
イ 発明が解決しようとする課題
「【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものである。つまり、本発明は、最終的に得られる硬化膜の伸び率が15%以上である高伸張性の感光性樹脂組成物において、良好なパターニングを可能にすることを目的の1つとする。」
ウ 課題を解決するための手段
「【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した。その結果、最終的に得られる硬化膜の伸び率が15%以上である高伸張性の感光性樹脂組成物において、その感光性樹脂組成物を用いて形成した硬化膜のガラス転移温度という指標が、パターニング性と密接に関係していることを見出した。そして、そのガラス転移温度が特定の数値となる感光性樹脂組成物を設計することで、上記課題を解決できることを見出した。
【0007】
すなわち、本発明によれば、
硬化膜形成用の感光性樹脂組成物であって、
熱硬化性樹脂(A)と、感光剤(C)と、有機溶剤(D)とを含み、
120℃5分の条件で前記有機溶剤を乾燥して樹脂膜を得た後、前記樹脂膜を露光して露光樹脂膜を得、その後、前記露光樹脂膜に対して窒素雰囲気下、200℃90分の条件で加熱処理して得られる硬化膜について、引張速さ5mm/分の条件で測定したときの伸び率が15~60%であり、ガラス転移温度が100~250℃である感光性樹脂組成物が提供される。
【0008】
また、本発明によれば、上記の感光性樹脂組成物を用いた硬化膜が提供される。
【0009】
更に、本発明によれば、上記の硬化膜を備えた電気・電子機器が提供される。」
エ 熱硬化性樹脂
「【0020】
<熱硬化性樹脂(A)>
本実施形態の感光性樹脂組成物は、熱硬化性樹脂(A)を含む。熱硬化性樹脂(A)としては、例えば、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ビスマレイミド樹脂、エポキシ樹脂、ユリア(尿素)樹脂、メラミン樹脂、ポリウレタン樹脂、シアネートエステル樹脂、シリコーン樹脂、オキセタン樹脂、(メタ)アクリレート樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ベンゾオキサジン樹脂等が挙げられる。
【0021】
熱硬化性樹脂(A)は、エポキシ樹脂(a)を含むことが好ましい。これにより、高い伸張性を得つつ、パターニング性のより一層の向上を図ることができる。
【0022】
エポキシ樹脂(a)としては、例えば、1分子中にエポキシ基が2個以上であるものを使用することができる。たとえば、…、フェノキシ樹脂、…などが挙げられる。エポキシ樹脂(a)は、単独で用いても複数組み合わせて用いてもよい。」
オ 硬化剤
「【0031】
<硬化剤(B)>
本実施形態の感光性樹脂組成物は、硬化剤(B)を含むことが好ましい。これにより、高い伸張性を得つつ、パターニング性のより一層の向上を図ることができる。また、硬化膜の基板への接着力を高める効果も期待できる。硬化剤(B)としては、上述の熱硬化性樹脂(A)(好ましくはエポキシ樹脂(a))の重合/架橋反応を促進させるものであれば特に限定されない。
【0032】
硬化剤(B)は、フェノール化合物(b)を含むことが好ましい。これにより、硬化膜の熱膨張を一層小さくすることができ、電子デバイスの信頼性向上に寄与できると考えられる。フェノール化合物(b)として具体的には、フェノール樹脂を用いることができる。フェノール樹脂としては、公知のもののなかから適宜選択することができるが、たとえばノボラック型フェノール樹脂、レゾール型フェノール樹脂、トリスフェニルメタン型フェノール樹脂、アリールアルキレン型フェノール樹脂を用いることができる。良好な現像特性の観点から、/ノボラック型フェノール樹脂を用いることができる。…」
カ 感光剤
「【0035】
<感光剤(C)>
本実施形態の感光性樹脂組成物は、感光剤(C)を含む。感光剤(C)としては、光酸発生剤を用いることができる。光酸発生剤としては、紫外線等の活性光線の照射により酸を発生する光酸発生剤を含有する。…」
キ 有機溶剤
「【0037】
<有機溶剤(D)>
本実施形態の感光性樹脂組成物は、有機溶剤(D)を含む。有機溶剤(D)としては、感光性樹脂組成物の各成分を溶解可能なもので、且つ、各構成成分と化学反応しないものであれば特に制限なく用いることができる。…」
ク 界面活性剤
「【0039】
<界面活性剤(E)>
本実施形態の感光性樹脂組成物は、界面活性剤(E)を含むことが好ましい。界面活性剤(E)を含むことにより、均一な樹脂膜そして硬化膜を得ることができる。また、現像時の残渣やパターン浮き上がり防止が期待できる。界面活性剤は、たとえば、フッ素系界面活性剤、シリコン系界面活性剤、アルキル系界面活性剤、およびアクリル系界面活性剤等が挙げられる。…」
ケ 密着助剤
「【0042】
<密着助剤(F)>
本実施形態の感光性樹脂組成物は、密着助剤(F)を含むことが好ましい。これにより、硬化膜の密着性を一層向上させることができる。
【0043】
密着助剤(F)は、とくに限定されないが、たとえばアミノシラン、エポキシシラン、アクリルシラン、メルカプトシラン、ビニルシラン、ウレイドシラン、またはスルフィドシラン等のシランカップリング剤を用いることができる。シランカップリング剤は、1種類を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、エポキシシラン(すなわち、1分子中に、エポキシ部位と、加水分解によりシラノール基を発生する基の両方を含む化合物)を用いることがより好ましい。…」
コ 電気・電子機器
「【0065】
<電気・電子機器>
本実施形態の感光性樹脂組成物の硬化膜を備えた電気・電子機器は、硬化膜が良好な伸び特性と低い熱膨張率を有しているため、高い信頼性を有する。
ここで、「電気・電子機器」とは、半導体チップ、半導体素子、プリント配線基板、電気回路、テレビ受像機やモニター等のディスプレイ装置、情報通信端末、発光ダイオード、物理電池、化学電池など、電子工学の技術を応用した素子、デバイス、最終製品、その他電気に関係する機器一般のことをいう。
本実施形態の感光性樹脂組成物の硬化膜は、電気・電子機器において、例えば永久膜、保護膜、絶縁膜、再配線材料などとして用いられる。」
サ 実施例
「【0066】
以下、実施例を示すが、本発明は実施例に限定されるものではない。
<感光性樹脂組成物の調製>
以下の成分を、表1に示す量(単位:質量部)で均一に混合、溶解し、その後、孔径0.2μmのポリプロピレンフィルターで濾過して感光性樹脂組成物を得た。表中の各成分の詳細は下記のとおりである。なお、界面活性剤の量は、プロピレングリコールものメチルエーテルアセテート20質量%溶液としての量である。
【0067】
・熱硬化性樹脂(A)
A-1:以下構造で表される多官能エポキシ樹脂(DIC株式会社製 EPICLON N-740、フェノールノボラック型エポキシ樹脂)
【0068】
【化2】
[図:0001406750000007.jpg]
【0069】
A-2、A-3:以下構造式で表される2官能エポキシ樹脂(A-2とA-3は重量平均分子量が異なる。A-2の数平均分子量は1900前後、A-3の数平均分子量は約3700前後(ともにポリスチレン換算値)である)
【0070】
【化3】
[図:0001406750000008.jpg]
…
【0073】
・硬化剤(B)
B-1:以下構造で表されるノボラック型フェノール樹脂(PR-55617、住友ベークライト株式会社製)
【0074】
【化5】
[図:0001406750000009.jpg]
【0075】
・感光剤(C)
CPI-310B(サンアプロ株式会社製、トリアリールスルホニウム塩)
・有機溶剤(D)
ベンジルアルコール
・界面活性剤(E)
メガファック R41(DIC株式会社製、フッ素系)の、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート20質量%溶液
・密着助剤(F)
KBM-403E(信越化学工業株式会社製、エポキシ基含有シランカップリング剤)…
【0083】
【表1】
[図:0001406750000010.jpg]
」
合議体注:表1の実施例1のみを拡大したものを以下に示す。
[図:0001406750000011.jpg]
「【0084】
実施例に示されているように、本実施形態の高伸張性の感光性樹脂組成物は、伸び率が良好、また、パターニング性能が良好(すなわち加工性が良好)であり、さらに、熱膨張率を低く抑えることができた。」
(2)甲第2号証に記載された発明
甲2の記載事項サに基づけば、甲2には、実施例1に係る発明として、次の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されていたといえる。
「以下の成分を、以下に示す量(単位:質量部)で均一に混合、溶解し、その後、孔径0.2μmのポリプロピレンフィルターで濾過して得た感光性樹脂組成物。
硬化剤
B-1:ノボラック型フェノール樹脂(PR-55617)
27.4質量部
熱硬化性樹脂
A-1:多官能エポキシ樹脂(EPICLON N-740、
フェノールノボラック型エポキシ樹脂) 40.4質量部
A-2:以下構造式で表される2官能エポキシ樹脂 19.4質量部
[図:0001406750000012.jpg]
光酸発生剤
CPI-310B(トリアリールスルホニウム塩) 0.9質量部
密着助剤
KBM-403E(エポキシ基含有シランカップリング剤)
1.6質量部
界面活性剤
メガファック R41の、プロピレングリコールモノメチル
エーテルアセテート20質量%溶液 1.5質量部
有機溶剤
ベンジルアルコール 57.0質量部」
3 甲第3号証
(1)甲第3号証の記載事項
本件特許に係る出願前に公開され、主引用発明が記載された引用文献であり、甲第3号証として申立人が引用する、特開2012-58304号公報(以下、「甲3」という。)には、以下の記載事項がある。
ア 技術分野
「【0001】
本発明は、半導体装置の表面保護膜及び層間絶縁膜等として有用な感光性樹脂組成物、該感光性樹脂組成物を用いた耐熱性を有する硬化レリーフパターンの製造方法、並びに該硬化レリーフパターンを有して成る半導体装置に関する。」
イ 発明が解決しようとする課題
「【0009】
本発明は、塗布時の膜厚均一性、および膜厚安定性(貯蔵前後の膜厚安定性)に優れた感光性樹脂組成物、該組成物を用いた硬化レリーフパターンの製造方法、及び該硬化レリーフパターンを有して成る半導体装置を提供することを目的とする。」
ウ 課題を解決するための手段
「【0010】
本発明者は、感光性樹脂組成物中における水分含有量を特定範囲とすることにより、上記の課題を解決する感光性樹脂組成物が得られることを見出し、本発明をなすに至った。すなわち、本発明は以下の通りである。
【0011】
[1](a)アルカリ可溶性樹脂100質量部に対して、(b)光酸発生剤1~50質量部、及び(c)溶媒としてγ-ブチロラクトン30~1500質量部を含有する感光性樹脂組成物であって、該感光性樹脂組成物中における水分含有量が0.6~18質量%である、感光性樹脂組成物。
【0012】
[2]前記水分含有量が、1.0~12質量%である、[1]に記載の感光性樹脂組成物。…
【0016】
[6](1)前記[1]~[5]のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物を基板上に塗布することによって感光性樹脂層を該基板上に形成する工程、
(2)該感光性樹脂層を露光する工程、
(3)該露光後の感光性樹脂層を現像することによってレリーフパターンを形成する工程、及び
(4)得られたレリーフパターンを加熱処理することによって硬化レリーフパターンを形成する工程
を含む、硬化レリーフパターンの製造方法。
【0017】
[7]前記[6]に記載の方法により製造された硬化レリーフパターン。
【0018】
[8]半導体素子と、該半導体素子の上部に設けられた硬化膜とを備える半導体装置であって、該硬化膜は、[7]に記載の硬化レリーフパターンであることを特徴とする半導体装置。」
エ アルカリ可溶性樹脂
「【0021】
(a)アルカリ可溶性樹脂
本発明の感光性樹脂組成物のベースポリマーとして用いられる(a)アルカリ可溶性樹脂としては、水酸基を有しアルカリ性溶液に可溶であり、例えば、ポリイミド構造、ポリベンゾオキサゾール構造、ポリイミド前駆体構造、及びポリベンゾオキサゾール前駆体構造から成る群から選ばれる1種以上の構造を有する樹脂が挙げられる。…」
オ 光酸発生剤
「【0048】
(b)光酸発生剤
本発明の感光性樹脂組成物が含有する(b)光酸発生剤としては、感光性樹脂組成物をポジ型又はネガ型として使用目的に応じて適用することを可能にする化合物を利用できる。感光性樹脂組成物をポジ型として使用する場合には、(b)光酸発生剤としては、感光性ジアゾキノン化合物、オニウム塩、ハロゲン含有化合物などを用いることができるが、感光性ジアゾキノン化合物が好ましい。…
【0054】
なお、本発明の感光性樹脂組成物をネガ型で使用する場合は、(b)光酸発生剤として、活性光線の照射により酸を発生する化合物を用い、これを後述する(d)架橋剤と組み合わせることによりネガ型として利用できる。活性光線照射により酸を発生する化合物としては、例えば、以下の化合物ア)~ケ)が挙げられる。…
【0063】
ク)オキシムエステル化合物
2-[2-(4-メチルフェニルスルホニルオキシイミノ)]-2,3-ジヒドロチオフェン-3-イリデン]-2-(2-メチルフェニル)アセトニトリル(チバスペシャルティケミカルズ社、商品名「イルガキュアPAG121」)、…等を挙げることができる。…
【0065】
とりわけ、感度の観点から、上記ク)オキシムエステル化合物群が特に好ましい。…」
カ 溶媒
「【0067】
(c)溶媒
本発明に用いられる(c)溶媒について説明する。本発明の感光性樹脂組成物は、上記(a)アルカリ可溶性樹脂、(b)光酸発生剤、及び必要に応じて使用する後述の(d)架橋剤又は(e)その他の添加剤を(c)溶媒として用いられるγ-ブチロラクトンに溶解してワニス状にした感光性樹脂組成物として提供される。γ-ブチロラクトンは、(a)アルカリ可溶性樹脂及び(b)光酸発生剤に対して良溶媒であり、本発明においては必須成分である。(c)溶媒は、γ-ブチロラクトンを必須成分とし、その他の溶媒を含むことも出来る。…(c)溶媒の添加量は、感光性樹脂組成物の所望の塗布膜厚及び粘度に応じて、(a)アルカリ可溶性樹脂100質量部に対して、30~1500質量部の範囲、好ましくは50~1000質量部の範囲、最も好ましくは100~300質量部の範囲である。(c)溶媒の添加量については、上記の範囲内で塗布装置、及び塗布厚みに適した粘度に設定できるように調整することが、硬化レリーフパターンの製造を容易にするために好ましい。(c)溶媒中におけるγ-ブチロラクトンの含有量は、60質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、100質量%が最も好ましい。」
キ 架橋剤
「【0068】
(d)架橋剤
本発明の感光性樹脂組成物は、ポジ型で利用する場合には、熱硬化後の膜(感光性樹脂層)の耐薬品性を高める目的で、ネガ型で利用する場合には、熱硬化後の膜の耐薬品性を高める目的とともにパターン形成の目的で、それぞれ、(d)架橋剤をさらに含むことが好ましい。
【0069】
(d)架橋剤としては、メチロール基及び/又はアルコキシメチル基を有する芳香族化合物、N位がメチロール基及び/又はアルコキシメチル基で置換された化合物、エポキシ化合物、オキセタン化合物、アリル化合物、並びに(メタ)アクリレート化合物から成る群から選ばれる少なくとも1種の化合物等が利用できる。…
【0076】
N位がメチロール基及び/又はアルコキシメチル基で置換された化合物として、具体的には、サイメル300、301、303、370、325、327、701、266、267、238、1141、272、202、1156、1158、1123、1170及び1174並びにUFR65及び300(三井サイテック(株)製)、ニカラックMX-270、-280及び-290並びにニカラックMS-11、ニカラックMW-30、-100、-300、-390及び-750(三和ケミカル社製)等を好ましく使用することができる。…
【0078】
エポキシ化合物は、3員環環状エーテル構造を持つ化合物であり、その具体例としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ポリスルフィド型エポキシ樹脂等が挙げられるが、これらに限定されない。…」
ク その他の添加剤
「【0086】
(e)その他の添加剤
本発明の感光性樹脂組成物には、必要に応じて、感光性樹脂組成物の添加剤として知られているフェノール化合物、染料、界面活性剤、安定剤、及び/又はシリコンウエハーとの密着性を高めるための接着助剤等の添加剤を加えることも可能である。
【0087】
上記添加剤について更に具体的に述べると、フェノール化合物としては、前記感光性ジアゾキノン化合物に使用しているバラスト剤、並びにパラクミルフェノール、ビスフェノール類、レゾルシノール類、又はMtrisPC、MtetraPC(本州化学工業社製:商品名)等の直鎖状フェノール化合物、TrisP-HAP、TrisP-PHBA、TrisP-PA(本州化学工業社製:商品名)等の非直鎖状フェノール化合物、ジフェニルメタンのフェニル基の水素原子2~5個を水酸基に置換した化合物、2,2-ジフェニルプロパンのフェニル基の水素原子1~5個を水酸基に置換した化合物等が挙げられる。該フェノール化合物の添加により、現像時のレリーフパターンの密着性を向上させて残渣の発生を抑えることができる。なお、バラスト剤とは、フェノール性水素原子の一部がナフトキノンジアジドスルホン酸エステル化されたフェノール化合物である前述の感光性ジアゾキノン化合物に原料として使用されているフェノール化合物をいう。…
【0091】
接着助剤としては、t-ブチルノボラック、アルミ化合物、チタンカップリング剤、エポキシポリマー、およびエポキシシランなどの各種シランカップリング剤が挙げられる。
【0092】
シランカップリング剤の具体的な好ましい例としては、3-メタクリロキシプロピルトリアルコキシシラン、3-メタクリロキシプロピルジアルコキシアルキルシラン、3-グリシドキシプロピルトリアルコキシシラン、3-グリシドキシプロピルジアルコキシアルキルシラン、3-アミノプロピルトリアルコキシシラン又は3-アミノプロピルジアルコキシアルキルシランと、酸無水物又は酸二無水物の反応物、3-アミノプロピルトリアルコキシシラン又は3-アミノプロピルジアルコキシアルキルシランのアミノ基をウレタン基又はウレア基に変換したものが挙げられる。この際のアルキル基としてはメチル基、エチル基、ブチル基などが、酸無水物としてはマレイン酸無水物、フタル酸無水物などが、酸二無水物としてはピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、4,4’-オキシジフタル酸二無水物などが、ウレタン基としてはt-ブトキシカルボニルアミノ基などが、ウレア基としてはフェニルアミノカルボニルアミノ基などが挙げられる。」
ケ 感光性樹脂組成物中の水分
「【0095】
<感光性樹脂組成物中の水分>
さらに、本発明においては、感光性樹脂組成物の感度及び保存安定性を向上させるために、感光性樹脂組成物中に特定範囲の量の水を含有させる。(a)アルカリ可溶性樹脂は、分子骨格内に水酸基を持つ。これらの極性基はその距離が近づくと水素結合を介して(a)アルカリ可溶性樹脂同士で3次元的なネットワークを作りあげると考えられる。本発明においては、感光性樹脂組成物中に十分な水分が存在することで、(a)アルカリ可溶性樹脂同士の水素結合形成を抑制して分散状態が良好となるため、膜厚均一性および膜厚安定性を向上させることができると考えられる。さらに、十分な水分量があることで、感光性樹脂組成物全体の保存安定性が外的要因を受けにくい安定領域に達するものと考えられる。
【0096】
以上の観点から、感光性樹脂組成物中の水分含有量は0.6~18質量%であり、好ましくは、1.0~12質量%である。水分は感光性樹脂組成物を構成するそれぞれの成分から副次的に導入されてもよいし、意図的に添加することもできる。水分含有量が0.6質量%以上であることにより、感光性樹脂組成物の感度及び保存安定性を確保するとともにワニスの膜厚均一性および膜厚安定性を向上させる効果を十分に得ることができる。また水分含有量が18質量%以下であることにより、(a)アルカリ可溶性樹脂の(c)溶媒への溶解性を確保できる。本明細書に記載する、感光性樹脂組成物中の水分含有量は、カールフィッシャー電量滴定法により測定される値である。」
コ 実施例
「【0110】
本発明を参考例、実施例及び比較例に基づいて更に具体的に説明する。ただし、それらは、本発明を詳細に説明するものであり、本発明を限定するものではないことを理解されたい。…
【0114】
<感光性樹脂組成物の調製>
[実施例1~8、比較例1~5]
(c)溶媒としてのγ-ブチロラクトン(GBL)154質量部、又はγ-ブチロラクトン(GBL)108質量部とプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)46質量部との混合溶媒に、上記参考例1で得られた(a)アルカリ可溶性樹脂としてのポリヒドロキシアミド(P-1)又はノボラック樹脂(旭有機材社製 EP4080G)(P-2)100質量部、表1に記載の質量部の(b)光酸発生剤としての下記感光性ジアゾキノン化合物(Q-1)、及び表1に記載の質量部の(d)架橋剤としての下記製品(D-1)を溶解した後、得られた溶液の粘度を約10ポイズに調整し、必要に応じ水を更に加えることによって感光性樹脂組成物とした。
【0115】
このようにして作製した各感光性樹脂組成物中の水分量はカールフィッシャー電量滴定法で測定した。測定は平沼微量水分測定装置AQ-200(平沼産業株式会社製)を用い、発生液にハイドラナールRアクアライトRS、対極液にアクアライトCNを選択した。シリンジを用い試料を約1ml採取し、0.0001gの位まで精秤することで試料量1とし、その後装置に注入し水分量を測定した(実測水分量)。注入後のシリンジの重さを0.0001gの位まで精秤し試料量2とした。感光性樹脂組成物中の水分含有量は以下の式で求めた。
水分含有量(単位:%)={実測水分量/(試料量1-試料量2)}×100
各組成物と水分含有量を表1に示す。
【0116】
【表1】
[図:0001406750000013.jpg]
【0117】
…
(Q-2)PAG121(チバスペシャルティケミカルズ社製)
(D-1)MX-270(三和ケミカル製)」
サ 産業上の利用可能性
「【0123】
本発明の感光性樹脂組成物は、半導体装置の表面保護膜、層間絶縁膜、及び再配線用絶縁膜、並びにフリップチップ装置用保護膜、バンプ構造を有する装置の保護膜、多層回路の層間絶縁膜、フレキシブル銅張板のカバーコート、ソルダーレジスト膜、及び液晶配向膜等として好適に利用できる。」
(2)甲第3号証に記載された発明
甲3の記載事項コに基づけば、甲3には、実施例7に係る発明として、次の発明(以下「甲3発明」という。)が記載されていたといえる。
「(c)溶媒としてのγ-ブチロラクトン(GBL)154質量部に、(a)アルカリ可溶性樹脂としてのポリヒドロキシアミド(P-1)100質量部、20質量部の(b)光酸発生剤としてのPAG121(Q-2)、及び30質量部の(d)架橋剤としてのMX-270(D-1)を溶解した後、得られた溶液の粘度を約10ポイズに調整し、必要に応じ水を更に加えた、水分率2.3%の感光性樹脂組成物。」
4 甲第4号証の記載事項
本件特許に係る出願前に公開された引用文献であり、申立人がネガ型感光性組成物中に占める水の含有量に関する周知技術を示す甲第4号証として引用する、特開2003-295427号公報(以下「甲4」という。)には、以下の記載事項がある。
(1)技術分野
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、液晶表示素子や固体撮像素子(CCD、CMOSなど)に用いられるカラーフィルターの着色画像を形成するのに好適なカラーフィルター用着色感光性樹脂組成物、並びに、これを用いたカラーフィルター及びその製造方法に関する。」
(2)発明が解決しようとする課題
「【0010】しかし、これら着色感光性樹脂組成物は、アルカリ現像液によるパターン形成の際、形成パターンと基板との密着性が問題となっており、その改良が望まれている。特に、現像後に生じる、微小パターンの剥離、パターンと基板との間の食い込み形状の改良が必要とされている。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、着色感光性樹脂組成物を用いて形成されるパターンと基板との密着性を改良し、現像後に微小パターンの剥離を起こさず、パターンと基板との間の食い込み形状の発生を防止した着色感光性樹脂組成物並びにこれを用いたカラーフィルター及びその製造方法を提供することにある。」
(3)課題を解決するための手段
「【0012】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、鋭意検討した結果、有機溶剤可溶性染料を含む着色感光性樹脂組成物中の水分量を特定の範囲以下にすることで、現像後の微小パターンの剥離や、パターンと基板との食い込み形状の発生を防止することができ、本目的を達成できることを見出し、本発明に到った。
【0013】即ち、上記目的は以下により達成される。
<1> (A)アルカリ可溶性樹脂、(B)有機溶剤可溶性染料、(C)感光性化合物、及び(D)溶剤を少なくとも含み、かつ、含水率が1.0質量%以下であることを特徴とする着色感光性樹脂組成物である。」
(4)含水率
「【0019】
【発明の実施の形態】以下、本発明の染料含有着色感光性樹脂組成物及びそれを使用したカラーフィルターの製造方法について詳述する。本発明の着色感光性樹脂組成物(以下、「本発明の組成物」という場合がある。)は、(A)アルカリ可溶性樹脂、(B)有機溶剤可溶性染料、(C)感光性化合物、及び(D)溶剤を少なくとも含み、かつ、含水率が1.0質量%以下であることを特徴とする。ここで、本発明の組成物中の含水率はカールフィッシャー法などの公知の方法により求めることができる。本発明において、本発明の組成物中の含水率は、カラーフィルターなどのパターン形成のために、所望の基板上に塗布する直前の含水率が1.0質量%以下であることが望ましいが、少なくとも着色感光性樹脂組成物としてガラス、金属、プラスチックなどの密閉容器中に充填された際の含水率が1.0質量%であることが必要である。
【0020】本発明の組成物中の含水率が1.0質量%を超えると、現像後の微小パターンの剥離やパターンと基板との食い込み形状が発生し、CCDやCMOSの得率を著しく減少させるため問題となる。上記含水率は、0.7質量%以下であることがさらに好ましく、パターンと基板との食い込み形状が著しく改善されることから、0.5質量%以下であることが特に好ましい。
【0021】また、本発明の成物中の含水率を1.0質量%以下にするためには、原料の乾燥を十分行うこと、若しくは各原料を着色感光性樹脂組成物の溶剤に混合溶解した後、加熱して必要に応じて減圧し、水分を共沸脱水することが有効である。また着色感光性樹脂組成物をモレキュラーシーブス等の脱水剤を用いて処理、脱水することも有効である。」
(5)実施例
「【0082】
【実施例】本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその主旨を越えない限り以下の実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は質量基準である。…
【0090】(C)ネガ型着色感光性樹脂組成物B-1の調製
下記の組成B-1を三口フラスコに仕込み溶解した。この溶液を40℃に加熱し、5~30mmHgに減圧して濃縮脱水し着色樹脂組成物を得た。得られた溶液中の固形分濃度は、10質量%であった。この溶液に更に、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート10部と、光重合開始剤(TAZ-107、みどり化学社製)1部と、を加え溶解させ、ネガ型着色感光性樹脂組成物B-1を得た。カールフィッシャー法で求めた溶液中の含水率は0.2%であった。
【0091】
〔組成B-1〕
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 120部
(PGMEA)
・樹脂P-1 6部
・黄色染料Valifast Red1360 2.3部
(オリエント化学製)
・重合禁止剤(p-メトキシフェノール) 0.005部
・フッ素系界面活性剤 0.4部
(F-475大日本インキ化学工業製)…
【0096】[実施例7~16及び比較例1~12]
(D)ポジ型着色感光性樹脂組成物CA-1の調製
上記(A)ポジ型着色感光性樹脂組成物A-1の調製の組成A-1におけるプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートの添加量を、「30部」から「21.85部」に変更し、濃縮脱水を行わなかった以外は同様にして、ポジ型着色感光性樹脂組成物CA-1を得た。得られた溶液中の含水率は1.3%であった。
(E)ポジ型着色感光性樹脂組成物CA-2の調製
上記(D)とまったく同じ方法で調整した溶液に、更に、ヘキサメトキシメチロール化メラミン0.5部と、光酸発生剤TAZ-107(みどり化学製)1部と、を加えてポジ型着色感光性樹脂組成物CA-2を得た。得られた溶液中の含水率は1.4%であった。
【0097】(F)ネガ型着色感光性樹脂組成物CB-1の調製
上記(C)ネガ型着色感光性樹脂組成物B-1の調製の組成B-1におけるプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートの添加量を「120部」から「78.35部」に変更し、濃縮脱水を行わなかった以外は同様にして、樹脂組成物を得た。この溶液に、更に、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート10部と、光重合開始剤(TAZ-107、みどり化学社製)1部と、を加え溶解させて、ネガ型着色感光性樹脂組成物CB-1を得た。カールフィッシャー法で求めた溶液中の含水率は1.2%であった。」
5 甲第5号証の記載事項
本件特許に係る出願前に公開された引用文献であり、申立人がネガ型感光性組成物中に占める水の含有量に関する周知技術を示す甲第5号証として引用する、特開2008-58683号公報(以下「甲5」という。)には、以下の記載事項がある。
(1)技術分野
「【0001】
本発明は、液晶表示素子や固体撮像素子に用いられるカラーフィルタを形成するのに好適な染料含有ネガ型硬化性組成物、並びに染料含有のカラーフィルタ及びその製造方法に関する。」
(2)発明が解決しようとする課題
「【0006】
かかる問題に鑑み、顔料に代えて、有機溶剤可溶性染料(以降、単に「染料」という場合がある)を使用する技術が提案されている。(例えば、特許文献7参照)。
染料を含有した着色感光性樹脂組成物として、組成物中の水分量を特定の範囲以下にして、現像後の微小パターンの剥離やパターンと基板との食い込み形状の発生を抑制する技術が提案されている(例えば、特許文献6参照)。
また、染料を含有した組成物は一般的に顔料に比して耐光性が劣るという問題がある。耐光性を向上させる方法には、ガラス質の着色フィルタにおいてアルコール可溶のNi,Coの金属化合物や遷移金属錯体を添加する技術が提案されている…。…
【0008】
本発明は、上記に鑑み成されたものであり、下記目的を達成することを課題とする。
すなわち、本発明は、組成物作成後の経時安定性に優れ、かつ露光量変動によるパターン線幅変動の割合が小さい染料含有ネガ型硬化性組成物、並びに、色相及び解像力に優れ、パターン形状が良好なカラーフィルタ及び
該カラーフィルタを高い生産性(高いコストパフォーマンス)にて作製し得るカラーフィルタの製造方法を提供することを目的とする。」
(3)課題を解決するための手段
「【0009】
本発明は、特定の染料と光重合開始剤を組み合わせ、かつ、含水量を特定した組成物により、前記課題を達成するものであり、その具体的手段は以下の通りである。
【0010】
<1> (A)ヘテロ環アゾ系化合物、フタロシアニン系化合物、及びアゾメチン系化合物から選択される少なくとも2種の有機溶剤可溶性染料と(B)少なくとも1種のオキシム系光重合開始剤と(C)少なくとも1種のラジカル重合性モノマーと(D)少なくとも1種の有機溶剤とを含有する染料含有ネガ型硬化性組成物であって、該組成物の含水量が組成物全量に対して1質量%未満であることを特徴とする染料含有ネガ型硬化性組成物。…」
(4)組成物の含水量
「【0332】
<組成物の含水量>
本発明の組成物の含水量は、染料含有ネガ型硬化性組成物としてガラス、金属、プラスチックなどの密閉容器中に充填された際、1.0質量%未満であることが必要である。
本発明の組成物の含水量を1.0質量%未満とすることにより、組成物の経時安定性が向上し、さらに露光量変動によるパターン変動の割合が低下する。
上記の中でも、前記含水量は0.7質量%未満が好ましく、0.5質量%未満がより好ましい。
本発明の組成物の含水量を0.7質量%未満とすることにより、経時安定性の観点から好ましい。
本発明における含水量とは、組成物全量に対する水分の割合であり、質量%で示される。
本発明の組成物中の含水量はカールフィッシャー法などの公知の方法により求めることができ、本発明はこれを採用する。
【0333】
本発明の含水率が1.0質量%未満である組成物を得るには、本発明の組成物を構成する各成分及び必要に応じて添加する各成分を、それらが分解しない程度に加熱し、減圧条件下で乾燥する方法、組成物を構成する各成分及び必要に応じて添加する各成分の有機溶剤溶液を減圧条件下加熱して水分を留去する方法、組成物を構成する各成分及び必要に応じて添加する各成分を、例えば分子ふるいとして知られるモレキュラーシーブ(ユニオン昭和株式会社製)により脱水処理して調整する方法、本発明の組成物を構成する各成分及び必要に応じて添加する各成分の有機溶剤溶液を直接モレキュラーシーブで処理する方法等があるが、該組成物中の含水率を低下できる方法ならば、これらに限定されるものではない。」
(5)実施例
「【0342】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。尚、特に断りのない限り、「部」は質量基準である。…
【0345】
3)染料含有ネガ型硬化性組成物の調製
下記表1に示す成分(量は表1に示す通りとした。)を、下記表1に示す有機溶剤に溶解させた。その後、これらの溶液10gに対して1gの割合でモレキュラーシーブス4A(ペレット状)を加え、12時間攪拌した。この溶液を乾燥窒素雰囲気下でモレキュラーシーブスを濾別して、染料含有ネガ型硬化性組成物N-1~N-16を得た。ただし、組成物N-12、N-13だけは、上記モレキュラーシーブス4Aによる処理を行わなかった。
3-1)組成物の含水率測定
前記3)で得られた染料含有ネガ型硬化性組成物N-1~N-16をそれぞれ50μL取り出し、カールフィッシャー水分計MKC-120(KYOTOELECTRONICS社製)にて測定し、含水率を評価した。…
【0353】
【表1】
[図:0001406750000014.jpg]
…
【0355】
尚、前記表1中の各成分の詳細を以下に示す。
(A)染料
実施例の名称の欄は、既述した有機溶剤可溶性染料の例示化合物の番号を示す。使用する染料の一部の合成例を後述する。
比較例の染料H-1~H-4
*比較例中の染料
・H-1:Valifast Yellow 1101
・H-2:C.I. Acid Red 249
・H-3:Valifast Blue 2620
・H-4:C.I. Acid Red 80
・H-5:Valifast Red 1360
(B)光重合開始剤
・B-1:イルガキュアOXE01(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製;本発明に係る開始剤)
・B-2:CGI-242(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製;本発明に係る開始剤)
・B-3:イルガキュア369(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製;α-アミノケトン系光重合開始剤)
・B-4:TAZ-107(みどり化学社製;トリハロメチルトリアジン系光重合開始剤)
・B-5:イルガキュア819(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製;アミルホスフィン系光重合開始剤)
・B-6:2,2’-ビス(2,4-ジクロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニル-1,2’-ビイミダゾール(ビイミダゾール系光重合開始剤)
(C)ラジカル重合性モノマー
・C-1:ラジカル重合性モノマーの既述の例示化合物(M-2)とジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの3:7の混合物
・C-2:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
(D)有機溶剤
・D-1:シクロヘキサノン
・D-2:乳酸エチル
・D-3:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)
・D-4:プロピレングリコールモノメチルエーテル
・D-5:3-エトキシプロピオン酸エチル
(E)遷移金属錯体
・E-1:コバルト(II)アセチルアセトネート
・E-2:ジ-nブチルジチオカルバメートニッケル(II)
(F)その他の成分
*界面活性剤
・F-1:フッ素系界面活性剤 F-475〔大日本インキ化学工業(株)製〕
*樹脂(バインダー)
・G-1:ベンジルメタクリレート/メタクリル酸/2-ヒドロキシエチルメタクリル酸=7/2/1(モル比)、共重合体Mw=25,000、Mw/Mnは2.5)
*重合禁止剤
・I-1:p-メトキシフェノール」
6 甲第6号証の記載事項
本件特許に係る出願前に公開された引用文献であり、申立人が酸無水物基を有するシランカップリング剤と水を併用することに関する周知技術を示す甲第6号証として引用する、特開2002-293885号公報(以下「甲6」という。)には、以下の記載事項がある。
(1)技術分野
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、耐半田性に優れる半導体封止用エポキシ樹脂組成物及びこれを用いた半導体装置に関するものである。」
(2)発明が解決しようとする課題
「【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、吸湿後の半田処理においても半導体装置にクラックや基材との剥離が発生しない耐半田性に優れる特性を有する半導体封止用エポキシ樹脂組成物及びこれを用いた半導体装置を提供するものである。」
(3)課題を解決するための手段
「【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は、[1](A)エポキシ樹脂、(B)フェノール樹脂、(C)一般式(1)で示される化合物又は一般式(1)で示される化合物の加水分解物(D)無機充填材、及び(E)硬化促進剤を必須成分とすることを特徴とする半導体封止用エポキシ樹脂組成物、
【0007】
【化4】
[図:0001406750000015.jpg]
(式中、R1炭素数1~5のアルコキシ基、R2は炭素数1~5のアルキル基又は炭素数1~5のアルコキシ基である。mは1~6の整数である。nは平均値で1~3の正数。)」
(4)シランカップリング剤
「【0026】本発明の一般式(1)で示される化合物と、一般式(1)で示される化合物の加水分解物は、シランカップリング剤として作用するものである。一般的にシランカップリング剤は、シラノール基と有機官能基を同一分子内に有することを特徴とする化合物であるが、本発明のシランカップリング剤は酸無水物の構造を有することを特徴とする。酸無水物の構造を有しているので、基材表面や材料中の他の成分と反応せず樹脂組成物の保存中フリーの状態で安定しているが、成形時の熱により無機充填材表面の付着水等の水分により開環し、基材金属表面等と反応し密着性が向上するため,耐半田性が改善される。特に該シランカップリング剤を用いた半導体用エポキシ樹脂組成物は、銅リードフレームやNi、Ni-Pd、Ni-Pd-Au等のプリプレーティングフレーム等において耐半田性が改善される。又該シランカップリング剤は、基材金属表面と反応すると同時に無機充填材とも化学結合するので該シランカップリング剤を添加したエポキシ樹脂組成物は熱時強度が向上する。
【0027】本発明の一般式(1)で示される化合物の加水分解物は、予めアルコキシ基が加水分解されているため、容易に無機充填材や各種基材表面の水酸基と水素結合あるいは共有結合を形成し、耐半田性を向上させることが可能となる。加水分解の方法としては、特に限定するものではないが、例えばシランカップリング剤と純水を混合し、混合物が2層に分離しなくなるまで十分攪拌混合する方法等が挙げられる。」
(5)実施例
「【0034】以下、本発明を実施例で具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。配合割合は重量部とする。
実施例1
式(7)のビフェニル型エポキシ樹脂を主成分とする樹脂(エポキシ当量190、融点105℃) 6.2重量部
【化12】
[図:0001406750000016.jpg]
【0035】
式(8)のフェノールアラルキル樹脂(水酸基当量174、軟化点75℃) 5.7重量部
【化13】
[図:0001406750000017.jpg]
【0036】
式(9)の化合物(以下、シランカップリング剤Aという)0.4重量部
【化14】
[図:0001406750000018.jpg]
…
【0039】実施例2~9、比較例1~2
表1の配合に従い、実施例1と同様にしてエポキシ樹脂組成物を得、実施例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。なお実施例1以外で用いたエポキシ樹脂、フェノール樹脂、加水分解物、加熱混合物、表面処理した無機充填材の詳細を以下に示す。…
【0043】[加水分解物Aの製造例]シランカップリング剤Aと純水を重量比80:20で混合し、この混合物が2層に分離しなくなるまで十分攪拌混合し、加水分解物Aを得た。…
【0045】[表面処理した無機充填材の製造例]
…
【表1】
[図:0001406750000019.jpg]
」
7 甲第7号証の記載事項
本件特許に係る出願前に公開された引用文献であり、申立人が酸無水物基を有するシランカップリング剤とネガ型感光性組成物中の水に関する周知技術とネガ型感光性組成物のヘーズ値に関する周知技術を示す甲第7号証として引用する、特開2015-187205号公報(以下「甲7」という。)には、以下の記載事項がある。
(1)技術分野
「【0001】
本発明は、硬化性樹脂組成物に関する。更に詳しくは、本発明は、ガラス基材、プラスチック基材、金属基材等の基材との密着性に優れ、高硬度を有し、また、撥水性、撥油性、耐指紋性等の防汚性、硬化物表面の滑り性、耐衝撃性、耐擦傷性、耐傷付性等に優れた硬化物を与えることのできる硬化性樹脂組成物、並びにこれを用いて得られる硬化物及び積層体に関する。」
(2)発明が解決しようとする課題
「【0006】
本発明は上記従来技術の諸問題点を鑑みてなされたものであり、本発明の課題は、高硬度を有し、かつ10μm以上の厚膜であっても、ガラス基材、プラスチック基材、金属基材等の基材との密着性に優れ、また、撥水性、撥油性、耐指紋性等の防汚性、硬化物表面の滑り性、耐衝撃性、耐擦傷性、耐傷付性等に優れた硬化物を与える硬化性樹脂組成物、該組成物の硬化物及び該硬化物を有する積層体を提供することにある。」
(3)課題を解決するための手段
「【0007】
本発明者等は上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、アルコキシシリル基を有する化合物、1分子内に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有するウレタン(メタ)アクリレート及び/又はイソシアヌレート基を有する多官能(メタ)アクリレートを含み、かつこれらを特定の含有量で含む硬化性樹脂組成物が、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明に到達した。即ち、本発明の要旨は以下の[1]~[11]の通りである。
【0008】
[1] 下記成分(A)及び成分(B)を含み、成分(A)の含有量が、硬化性樹脂組成物の固形分全体に対して10重量%超過であり、かつ成分(A)及び成分(B)の合計量に対して10~80重量%である硬化性樹脂組成物。
成分(A):アルコキシシリル基を有する化合物
成分(B):1分子内に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有するウレタン(メタ)アクリレート及び/又はイソシアヌレート基を有する多官能(メタ)アクリレート」
(4)硬化性樹脂組成物
「【0021】
本発明の硬化性樹脂組成物は、下記成分(A)及び成分(B)を含み、成分(A)の含有量が、硬化性樹脂組成物の固形分全体に対して10重量%超過であり、かつ成分(A)及び成分(B)の合計量に対して10~80重量%であるものである。
成分(A):トリアルコキシシリル基を有する化合物
成分(B):1分子内に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有するウレタン(メタ)アクリレート及び/又はイソシアヌレート基を有する多官能(メタ)アクリレート
【0022】
なお、本発明の硬化性樹脂組成物において、成分(B)と解されうるものうち成分(A)及び成分(B)のいずれにも該当しうるものは成分(A)とみなすこととする。また、本発明において、「(メタ)アクリレート」という表現を用いた場合、「アクリレート」及び「メタクリレート」のうちの一方又は両方を意味することとし、「(メタ)アクリロイル基」等についても同様の意味をもつこととする。
【0023】
本発明の硬化性樹脂組成物は、ガラス基材、プラスチック基材、金属基材等の基材との密着性に優れ、高硬度を有し、また、撥水性、撥油性、耐指紋性等の防汚性、硬化物としたときの表面の滑り性、耐擦傷性等に優れた硬化物を与えるという効果を奏する。本発明がこれらの効果を奏する理由は定かではないが、その理由は次のように推定される。即ち、成分(A)のアルコキシシリル基が、基材と結合し、密着性を向上させ、成分(B)のウレタン結合基またはイソシアヌレート基が、成分(A)のアルコキシシリル基の基材との反応を加速し、密着向上を促進し、また、成分(B)の(メタ)アクリル基により、硬度、耐傷付き性を更に向上させることができる。また、後述の成分(C)を配合することにより、(メタ)アクリル基の反応を促進し、硬化性樹脂組成物の硬化性が向上し、硬度、耐傷付き性、基材への密着耐久性の一層の向上に寄与する。また、必要に応じ、成分(D)を配合することで、さらに耐傷つき性を向上させたり、寸法安定性、柔軟性、基材への密着耐久性を向上することが可能である。更に、必要に応じて水、および/または後述する成分(E)を配合することにより、成分(A)のアルコキシシリル基と、基材との反応を大幅に促進し、密着性の一層の向上を実現することが可能である。更に後述の成分(F)は、硬化性基を有し、かつ表面に偏析する傾向があるため、本発明の硬化性樹脂組成物に成分(F)を配合し、硬化することで、硬化物の表面に成分(F)を集中させることが可能となり、その結果として、他の性能を維持しつつ、防汚性や滑り性を優れたものとすることができるものと推察される。
【0024】
<成分(A)>
本発明の硬化性樹脂組成物は、成分(A)として、アルコキシシリル基を有する化合物を含有する。成分(A)はアルコキシシリル基を有するものであれば、特に制限されない。…
【0027】
成分(A)の具体例としては、(メタ)アクリロイル基とトリメトキシシリル基とを有する化合物(例えば、アクリロイル基を有するシランカップリング剤[商品名「KBM5103」、信越化学(株)製]、メタクリロイル基を有するシランカップリング剤[商品名「KBM503」、信越化学(株)製])、カルボン酸無水物基とトリメトキシシリル基とを有する化合物(例えば、酸無水物含有基を有するシランカップリング剤[商品名「X-12-967C」、信越化学(株)製])、トリアリルイソシアヌレートに2~3モルのトリメトキシシランを反応させた化合物(例えば、イソシアヌレート基を有するトリメトキシシリル化合物[商品名「KBM9659」、信越化学(株)製])、エポキシ基とトリメトキシシリル基とを有する化合物(例えば、エポキシ基を有するシランカップリング剤[商品名「KBM403」、信越化学(株)製])、メルカプト基とトリメトキシシリル基とを有する化合物(例えば、メルカプト基を有するシランカップリング剤[商品名「KBM803」、信越化学(株)製])等が挙げられる。これらの中でも、成分(B)との反応性が良好である点から、(メタ)アクリロイル基とトリメトキシシリル基とを有する化合物及びトリアリルイソシアヌレートに2~3モルのトリメトキシシランを反応させた化合物が好ましく、(メタ)アクリロイル基とトリメトキシシリル基とを有する化合物が特に好ましい。…
【0029】
<成分(B)>
本発明の硬化性樹脂組成物は、成分(B)として、1分子内に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有するウレタン(メタ)アクリレート及び/又はイソシアヌレート基を有する多官能(メタ)アクリレートを含む。…
【0037】
<成分(C)>
本発明の硬化性樹脂組成物には上記成分(A)及び(B)に加えて下記成分(C)を含有することが硬化物を得る際に硬化反応を十分に進行させる観点から好ましい。
成分(C):光重合開始剤…
【0042】
<成分(D)>
本発明の硬化性樹脂組成物には上記成分(A)及び(B)に加えて下記成分(D)を含有することが、さらに耐傷つき性を向上させたり、寸法安定性、柔軟性、基材への密着耐久性を向上させる観点から好ましい。
成分(D):1分子内に1~6個の(メタ)アクリロイル基を有する化合物(但し、成分(A)及び(B)を除く)…
【0049】
<成分(E)>
本発明の硬化性樹脂組成物には上記成分(A)及び(B)に加えて下記成分(E)を含有することが、特に水と併用した場合、(A)のアルコキシシリル基と基材との反応を大幅に促進し、密着性の一層の向上を実現させる観点から好ましい。
成分(E):金属のβ-ジケト錯体…
【0051】
<成分(F)>
本発明の硬化性樹脂組成物には上記成分(A)及び(B)に加えて下記成分(F)を含有することが撥水性、撥油性、耐指紋性等の防汚性や硬化物表面の滑り性等を向上させる観点から好ましい。
成分(F):ポリジメチルシロキサン基、パーフルオロアルキル基、パーフルオロアルキレン基及び炭素数6~30の飽和炭化水素基(ここでいう「飽和炭化水素基」は鎖状構造であっても環状構造であってもよい。)からなる群から選ばれる1種以上の基を有する(メタ)アクリル重合体…
【0090】
<配合量>
本発明の硬化性樹脂組成物は、成分(A)の含有量が、アルコキシシリル基により基材に対する密着性や硬度を発現させる観点から、硬化性樹脂組成物の固形分全体に対して10重量%超過である。また、これらの効果を高める観点から、12重量%以上であることが好ましく、20重量%以上であることがより好ましく、25重量%以上であることが更に好ましい。成分(A)の含有量の上限は、硬化性と耐傷付き性の観点から、通常、硬化性樹脂組成物の固形分全体に対して80重量%以下、好ましくは、75重量%以下である。…
【0096】
<水>
本発明の硬化性樹脂組成物は、水を含むことが好ましい。本発明の硬化性樹脂組成物が水を含有することにより、基材への密着性を向上させることができる。これは水が硬化性樹脂組成物中において、成分(A)のアルコキシシリル基を加水分解し、基材との反応を促進する作用を及ぼすためであると考えられる。
【0097】
また、本発明の硬化性樹脂組成物において、水の含有量は、反応促進作用の観点から、成分(A)のトリアルコキシシリル基1モル当たり、0.01モル以上であることが好ましく、0.05モル以上であることがより好ましい。一方、水の含有量は、組成物の安定性や硬化物の透明性の観点から、成分(A)のトリアルコキシシリル基1モル当たり、0.3モル以下であることが好ましく、0.25モル以下であることがより好ましい。
【0098】
<有機溶媒>
本発明の硬化性樹脂組成物は、有機溶媒を用いることが好ましい。有機溶媒としては、特に限定されるものではなく、成分(A)~(F)の種類や積層体とする際に用いる基材の種類、基材への塗布方法等を考慮して適宜選択することができる。…
【0101】
<その他の成分>
本発明の硬化性樹脂組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲で成分(A)~(F)及び有機溶媒以外のその他の成分を含んでいてもよい。その他の成分としては、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系光安定剤、充填剤、反応性希釈剤、帯電防止剤、有機顔料、スリップ剤、分散剤、チクソトロピー性付与剤(増粘剤)、消泡剤、酸化防止剤等が挙げられる。」
(5)実施例
「【実施例】
【0120】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。…
【0126】
<実施例1~14、比較例1~3>
表-1に従って原料を配合し、硬化性樹脂組成物(実施例1~14、比較例1~3)を得た。配合成分は下記の通りである。下記の基材に、硬化性樹脂組成物を、バーコーターを用いて塗布(塗布直後の厚みは15μm。但し実施例12、13は塗布直後の厚み3μm。)した後、紫外線照射装置[型番 US5-XO40:アイグラフィックス(株)製]を用いて500~2,000mJ/cm2の紫外線を照射して塗膜を硬化させ、硬化後膜厚が10μm(実施例12、13は2μm)、の被覆物試験片を得た(膜厚は、厚みゲージ(ミツトヨ社製ABSデジマチックインジケータで測定した)。この試験片を用いて以下の各種評価を行った。
(基材)
ガラス:ケイ酸ガラス板[松浪硝子(株)製、サイズ1mm(厚み)×2.6cm×7.6cm、ヘーズ0.1%]
【0127】
(成分(A))
a-1:アクリロイル基を有するトリメトキシシリル化合物(シランカップリング剤)[商品名「KBM5103」、信越化学工業社製]
a-2:エポキシ基を有するトリメトキシシリル化合物(シランカップリング剤)[商品名「KBM403」、信越化学工業社製]
a-3:イソシアヌル酸エステル構造を有するトリス(トリメトキシシリル)化合物(シランカップリング剤)[商品名「KBM9659」、信越化学工業社製]
【0128】
(成分(B))
b-1:両末端にアクリロイル基を有するポリエステル系非芳香族ウレタンアクリレート[商品名「NKオリゴUA122P」、新中村化学工業社製]
b-2:トリス(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート[商品名「アロニックス M315」、東亞合成社製]
b-3:アクリロイル基を9個有するウレタンアクリレート[商品名「NKオリゴU-9HA」、新中村化学工業社製]
【0129】
(成分(C))
c-1:1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン[商品名「イルガキュア184」、BASF社製]
【0130】
(成分(D))
d-1:ペンタエリスリトールトリアクリレートとペンタエリスリトールテトラアクリレートの混合物[商品名「ビスコート300」、大阪有機社製]
【0131】
(成分(E))
e-1:トリス(アセチルアセトナート)アルミニウム[キシダ化学社製]
【0132】
(成分(F))
f-1:上記製造例1で得られた重合体
f-2:上記製造例2で得られた重合体
【0133】
(有機溶媒)
MEK:メチルエチルケトン[商品名「2-ブタノン」、三協化学製]…
【0145】
【表1】
[図:0001406750000020.jpg]
【0146】
【表2】
[図:0001406750000021.jpg]
【0147】
表-1の結果から、本発明に該当する実施例1~14の硬化物は、10μm以上の厚膜であっても、高硬度領域でガラス基材との密着性(初期密着性、経時密着性及び耐熱密着性)に優れることがわかる。更に、(f-1)、(f-2)を用いた硬化性樹脂組成物から得られる塗膜は水、ヘキサデカンに対する接触角が大きく撥水性、撥油性が向上し、また、耐指紋性や滑り性に優れることがわかる(実施例1と実施例10、11、13との比較)。」
第5 当審の判断
1 申立ての理由1(新規性)
(1)本件特許発明1
ア 対比
本件特許発明と甲1発明とを対比する。
(ア)熱硬化性樹脂
甲1発明の「ノボラック型エポキシ樹脂「EPPN201」」は、「熱硬化性樹脂」である。したがって、甲1発明の「ノボラック型エポキシ樹脂「EPPN201」」は、本件特許発明1の「熱硬化性樹脂」に相当する。
(イ)光酸発生剤
甲1発明の「CPI-310B(トリアリールスルホニウム塩)」は、「感光剤」であり、甲1の記載事項クに基づけば、「光酸発生剤」である。したがって、甲1発明の「CPI-310B(トリアリールスルホニウム塩)」は、本件特許発明1の「光酸発生剤」に相当する。
(ウ)酸無水物基を有するカップリング剤
甲1発明の「X-12-976C」は、「3-トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物」であり、甲1の記載事項サに基づけば、「シランカップリング剤」である。したがって、甲1発明の「X-12-976C」は、本件特許発明1の「酸無水物基を有するカップリング剤」に相当する。
(エ)ネガ型感光性樹脂組成物
甲1発明の「感光性接着剤樹脂組成物」は、その組成からみて、ネガ型の感光性接着剤であるといえる。したがって、甲1発明の「感光性接着剤樹脂組成物」は、本件特許発明1の「ネガ型感光性樹脂組成物」に相当する。
(オ)一致点及び相違点
以上より、本件特許発明1と甲1発明とは、
「 熱硬化性樹脂と、
光酸発生剤と、
酸無水物基を有するカップリング剤と、
を含む、ネガ型感光性樹脂組成物。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
[相違点1-1]本件特許発明1は、「水」を含むとともに、「水の含有量が、水を除いた当該ネガ型感光性樹脂組成物全体に対して、0.20質量%以上10質量%以下」であるのに対し、甲1発明は、「水」を含むとされておらず、その含有量も明らかでない点。
イ 判断
上記[相違点1-1]は、以下に示すとおり、実質的な相違点である。
申立人は、甲4及び甲5の記載を引用し、「溶剤としてPGMEAを含有し、感光剤として光酸発生剤を含有するネガ型感光性組成物において、特段の脱水処理を行わなかった場合のネガ型感光性組成物中に占める水の含有量は本件特許発明1の構成要件を満たす。仮に、何らかの脱水処理を行ったとしても、ネガ型感光性組成物中に占める水の含有量は本件特許発明1の構成要件を満たす。」(特許異議申立書第33頁第17~22行)と主張している。甲4の記載事項(5)には、濃縮脱水を行わずに得たポジ型着色感光性樹脂組成物CA-1の含水率が1.3%であったこと、濃縮脱水を行わずに得たネガ型着色感光性樹脂組成物CB-1の含水率が1.2%であったことが記載されている。また、甲5の記載事項(5)には、モレキュラーシーブス4Aによる処理を行わなかった染料含有ネガ型硬化性組成物N-13(比較例3)の含水率が、1.53%であったことが記載されている。
しかし、組成物の水分率は、原材料に混在する水分量の影響のみならず、製造工程及び保存工程における環境の影響を受けることは明らかである。また、原材料の化学種が共通していたとしても、そのグレードによって不純物濃度が異なることも自明である。甲4及び甲5に開示された実験例と甲1発明とにおいて、溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを使用している点、及び、何らかの光酸発生剤を含有している点が共通しているとしても、甲4及び甲5に開示された実験例に用いられた原材料に含まれる水分量と甲1発明に用いられた原材料に含まれる水分量が同程度であるとする根拠を見いだせず、それぞれの組成物の水分含有量が同程度であるということもできない。
したがって、上記[相違点1-1]が実質的な相違点でないということはできない。
なお、申立人は、甲3の記載を引用し、「感光剤として光酸発生剤を含有するネガ型感光性組成物においても、ネガ型感光性組成物中に占める水の含有量は本件特許発明1の構成要件を満たす。」(特許異議申立書第34頁第3~5行)とも主張しているが、甲3に開示された実験例における水分率は、甲3の記載事項コに「必要に応じ水を更に加えることによって感光性樹脂組成物とした」(段落【0114】)と記載されているとおり、所望の水分率になるように調整されたものであるから、甲1発明の水分率を示すものとなり得ない。
ウ 小括
以上のとおり、上記[相違点1-1]は実質的な相違点であるから、本件特許発明1が、甲1発明と同一であるということはできない。
(2)本件特許発明3、4、6~8
本件特許発明3、4、6~8は、本件特許発明1にさらに構成要件を付加した発明である。そうすると、本件特許発明3、4、6~8と甲1発明とを対比すると、上記[相違点1-1]において実質的に相違するといえる。
したがって、本件特許発明3、4、6~8も、甲1発明と同一であるということはできない。
2 申立ての理由2-1(甲1を主引用例とした場合の進歩性)
(1)本件特許発明1
ア 対比
本件特許発明1と甲1発明とを対比すると、前記1(1)ア(オ)に記載したとおり、上記[相違点1-1]において実質的に相違する。
イ 判断
甲1発明について、本件特許発明1の上記[相違点1-1]に係る構成を採用することを、当業者が容易になし得たとする根拠を見いだせない。
上記[相違点1-1]について、申立人は、甲3、甲4、甲5、甲7の記載を引用するとともに、「ネガ型感光性組成物において、感度向上、密着性向上、及びパターン形状改善などのパターン加工性向上は、幅広い用途において一般的に要求される特性である。また組成物の保存安定性向上及び露光量許容幅向上(プロセスマージン向上)は、用途に依らずネガ型感光性組成物の産業上の利用において求められる特性である。」、「甲1発明におけるネガ型感光性組成物中に占める水の含有量を特定範囲として本件特許発明1の構成要件を満たすことは、数値範囲の最適化又は好適化、あるいは設計変更や設計的事項の採用の範疇であり、当業者にとって特段の困難性はない…。」(特許異議申立書第35頁第4~12行)と主張している。
そこで検討するに、甲3には、記載事項ケに、「感光性樹脂組成物の感度及び保存安定性を向上させるために、感光性樹脂組成物中に特定範囲の量の水を含有させる。(a)アルカリ可溶性樹脂は、分子骨格内に水酸基を持つ。これらの極性基はその距離が近づくと水素結合を介して(a)アルカリ可溶性樹脂同士で3次元的なネットワークを作りあげると考えられる。本発明においては、感光性樹脂組成物中に十分な水分が存在することで、(a)アルカリ可溶性樹脂同士の水素結合形成を抑制して分散状態が良好となるため、膜厚均一性および膜厚安定性を向上させることができると考えられる。…以上の観点から、感光性樹脂組成物中の水分含有量は0.6~18質量%であり、好ましくは、1.0~12質量%である」(段落【0095】、【0096】)と記載されている。当該記載に基づけば、甲3において、水分は、アルカリ可溶性樹脂同士の水素結合形成を抑制するために含有させるものと理解できる。一方、甲1発明は、記載事項シに記載されているように「プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)を現像液として用いてスプレー現像」(段落【0086】、【0091】)されるものであり、アルカリ性溶液でエッチングすることを予定していない。また、硬化剤(ノボラック型フェノール樹脂)の含有量も、熱硬化性樹脂の半分程度である。このような甲1発明において、アルカリ可溶性樹脂同士の水素結合形成を抑制して分散状態を良好とする課題が内在するとはいえない。このため、当業者であったとしても、甲3の記載を参酌して、その水分含有量を調整しようとする動機付けがあるとはいえない。
また、甲4の記載事項(4)には、「本発明の組成物中の含水率が1.0質量%を超えると、現像後の微小パターンの剥離やパターンと基板との食い込み形状が発生し、CCDやCMOSの得率を著しく減少させるため問題となる。」(段落【0020】)、「本発明の成物中の含水率を1.0質量%以下にするためには、原料の乾燥を十分行うこと、若しくは各原料を着色感光性樹脂組成物の溶剤に混合溶解した後、加熱して必要に応じて減圧し、水分を共沸脱水することが有効である」(段落【0021】)との記載がある。しかし、記載事項(2)に「アルカリ現像液によるパターン形成の際、形成パターンと基板との密着性が問題となっており、その改良が望まれている。…本発明の目的は、着色感光性樹脂組成物を用いて形成されるパターンと基板との密着性を改良し、現像後に微小パターンの剥離を起こさず、パターンと基板との間の食い込み形状の発生を防止した着色感光性樹脂組成物並びにこれを用いたカラーフィルター及びその製造方法を提供することにある。」(段落【0010】、【0011】)と記載されていることから、甲4における含水率の調整は、アルカリ現像における食い込み形状の発生を防止するために行われるものである。また、記載事項(3)に「含水率が1.0質量%以下であることを特徴とする着色感光性樹脂組成物」(段落【0013】)との記載があり、さらに記載事項(4)に「本発明の組成物中の含水率は、カラーフィルターなどのパターン形成のために、所望の基板上に塗布する直前の含水率が1.0質量%以下であることが望ましいが、少なくとも着色感光性樹脂組成物としてガラス、金属、プラスチックなどの密閉容器中に充填された際の含水率が1.0質量%であることが必要である。」(段落【0019】)との記載があるように、甲4には含水率に上限を設けることについての記載はあるものの、下限値についての記載や示唆はない。そうすると、アルカリ性溶液でエッチングすることを予定していない甲1発明において、アルカリ現像液における食い込み形状の発生を防止するために甲4に記載されたような上記含水率の調整を行おうとする動機付けはなく、さらに、その下限値を「0.20質量%以上」とする要件を導き出すこともできない。
さらに、甲5の記載事項(4)には、「本発明の組成物の含水量を1.0質量%未満とすることにより、組成物の経時安定性が向上し、さらに露光量変動によるパターン変動の割合が低下する。」(段落【0332】)との記載があり、「含水率が1.0質量%未満である組成物を得る」(段落【0333】)ための方法が記載されているが、記載事項(2)に「染料を含有した着色感光性樹脂組成物として、組成物中の水分量を特定の範囲以下にして、現像後の微小パターンの剥離やパターンと基板との食い込み形状の発生を抑制する」(段落【0006】)と記載されているとおり、染料を含有した着色感光性樹脂組成物を前提とする技術である。また、記載事項(3)に「該組成物の含水量が組成物全量に対して1質量%未満であることを特徴とする染料含有ネガ型硬化性組成物」(段落【0010】)との記載があり、記載事項(4)に「本発明の組成物の含水量を1.0質量%未満とすることにより、組成物の経時安定性が向上し、さらに露光量変動によるパターン変動の割合が低下する。」(段落【0332】)との記載があるものの、含水率の下限値についての記載や示唆はない。そうすると、染料を含有した着色感光性樹脂組成物ではない甲1発明において、甲5の記載を参酌して、その含水率を調整しようとする動機付けはなく、さらに、下限値を「0.20質量%以上」とする要件を導き出すこともできない。
また、甲7の記載事項(4)には、「本発明の硬化性樹脂組成物が水を含有することにより、基材への密着性を向上させることができる。これは水が硬化性樹脂組成物中において、成分(A)のアルコキシシリル基を加水分解し、基材との反応を促進する作用を及ぼすためであると考えられる。」(段落【0096】)との記載があり、記載事項(5)には、実施例11として、水が0.8重量部であった実験例が開示されている。しかし、甲1発明において、実施例11と同様の水分量にしようとする動機付けがない。
そして、本件特許発明1は、「酸無水物基を有するカップリング剤および水を併用するとともに、その水の含有量を所定範囲内とすることで、ネガ型感光性樹脂組成物の硬化物の金属密着性を向上できる」(段落【0005】)というものである。そして、段落【0190】に「実施例1~6のネガ型感光性樹脂組成物は、比較例1と比べて、銅などの金属に対する硬化後の密着性に優れることが分かった。」と記載されているとおり、水の含有量が所定範囲にあることにより、所望の効果を奏することが確認されている。これに対して、甲3、甲4、甲5、甲7は、酸無水物基を有するカップリング剤および水を併用すること、及び、水の含有量を所定範囲内とすることによりネガ型感光性樹脂組成物の硬化物の金属密着性を向上させることについて開示していない。
そうすると、甲3、甲4、甲5、甲7に、水を含有する樹脂組成物が開示されていたとしても、酸無水物基を有するカップリング剤および水を併用し、水の含有量を所定範囲内とすることにより、ネガ型感光性樹脂組成物の硬化物の金属密着性が向上することは、甲1~甲5、甲7のいずれの文献に開示も示唆もない、格別な効果といえるから、当業者といえども、上記[相違点1-1]に係る本件特許発明1の構成に容易に想到し得たということはできない。
ウ 小括
以上より、甲1発明において、上記[相違点1-1]に係る本件特許発明1の構成とすることは、当業者であっても、容易になし得たとはいえないから、本件特許発明1は、当業者が容易に発明できたものでない。
(2)本件特許発明2~10
本件特許発明2~10は、本件特許発明1にさらに構成要件を付加した発明である。そうすると、本件特許発明2~10と甲1発明とを対比すると、上記[相違点1-1]において実質的に相違するといえる。
したがって、本件特許発明2~10も、同じ理由により、当業者が容易に発明できたものではない。
3 申立ての理由2-2(甲2を主引用例とした場合の進歩性)
(1)本件特許発明1
ア 対比
本件特許発明1と甲2発明とを対比する。
(ア)熱硬化性樹脂
甲2発明の「A-1」及び「A-2」は、「熱硬化性樹脂」である。したがって、甲2発明の「A-1」及び「A-2」は、本件特許発明1の「熱硬化性樹脂」に相当する。
(イ)光酸発生剤
甲2発明の「CPI-310B(トリアリールスルホニウム塩)」は、「光酸発生剤」である。したがって、甲2発明の「CPI-310B(トリアリールスルホニウム塩)」は、本件特許発明1の「光酸発生剤」に相当する。
(ウ)酸無水物基を有するカップリング剤
本件特許発明1の「酸無水物基を有するカップリング剤」と甲2発明の「KBM-403E(エポキシ基含有シランカップリング剤)」とは、「カップリング剤」である点で共通する。
(エ)ネガ型感光性樹脂組成物
甲2発明の「感光性樹脂組成物」は、その組成からみて、ネガ型の感光性樹脂組成物であるといえる。したがって、甲2発明の「感光性樹脂組成物」は、本件特許発明1の「ネガ型感光性樹脂組成物」に相当する。
(オ)一致点及び相違点
本件特許発明1と甲2発明とは、
「 熱硬化性樹脂と、
光酸発生剤と、
カップリング剤と、
を含む、ネガ型感光性樹脂組成物。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
[相違点2-1]カップリング剤が、本件特許発明1では、「酸無水物基」を有するのに対し、甲2発明では、「エポキシ基」を有する点。
[相違点2-2]本件特許発明1は、「水」を含むとともに、「水の含有量が、水を除いた当該ネガ型感光性樹脂組成物全体に対して、0.20質量%以上10質量%以下」であるのに対し、甲2発明は、「水」を含むとされておらず、その含有量も明らかでない点。
イ 判断
事案に鑑みて、[相違点2-2]について検討すると、まず、[相違点2-2]は、実質的な相違点である。
申立人は、「組成物中の不純物としての水は、組成物中に最も多く含まれる溶剤から主にもたらされると考えるのが当業者にとっての技術常識である。また甲第3号証、甲第4号証、及び甲第5号証による上記開示と同様、発明の詳細な説明には脱水処理に関する記載が無く、特段の脱水処理を行っていないと考えられる甲2発明におけるネガ型感光性組成物中に占める水の含有量も2.3%、1.2%、又は1.53%程度になると推認される(構成要件1D及び1Eに相当)。」(特許異議申立書第36頁第15~21行)とし、水の含有量は実質的な相違点とはならないと主張している。
しかし、前記1(1)イにおける検討と同様に、甲4及び甲5に開示された実験例に用いられた原材料に含まれる水分量と甲2発明に用いられた原材料に含まれる水分量が同程度であるとする根拠を見いだせず、それぞれの組成物の水分含有量が同程度であるということもできない。また、甲3に開示された実験例における水分率は、所望の水分率になるように調整されたものであるから、甲2発明の水分率を示すものとなり得ない。
また、申立人は、「甲第3号証、甲第4号証、甲第5号証、及び甲第7号証による上記開示に基づき、甲第2号証におけるネガ型感光性組成物中に占める水の含有量を特定範囲として本件特許発明1の構成要件を満たすことは、数値範囲の最適化又は好適化、あるいは設計変更や設計的事項の採用の範疇であり、当業者にとって特段の困難性はない…。」(特許異議申立書第37頁第3~7行)と主張している。
しかし、前記2(1)イにおける検討と同様に、甲2発明において、甲3、甲4、甲5、甲7の記載を参酌して水分率を調整しようとする動機付けはなく、また、酸無水物基を有するカップリング剤および水を併用し、水の含有量を所定範囲内とすることにより、ネガ型感光性樹脂組成物の硬化物の金属密着性が向上することは、甲2~甲5、甲7のいずれの文献に開示も示唆もない、格別な効果といえるから、当業者といえども、上記[相違点2-2]に係る本件特許発明1の構成に容易に想到し得たということはできない。
さらに、申立人は、甲1、甲6及び甲7の記載を引用し、「酸無水物基を有するシランカップリング剤や、酸無水物基を有するシランカップリング剤と水とを反応させたカルボキシ基を有するシランカップリング剤を用いて密着性を向上させることは周知の技術である。」(特許異議申立書第38頁第18~21行)と主張している。
まず、前記1(1)ア(オ)及び前記1(1)ウに記載したとおり、甲1発明は、「水」を含むとはされておらず、この点において実質的に相違するものである。また、甲1には、感光性接着剤樹脂組成物が水を含むことについて、記載も示唆もない。
次に、甲6には、記載事項(4)に「一般的にシランカップリング剤は、シラノール基と有機官能基を同一分子内に有することを特徴とする化合物であるが、本発明のシランカップリング剤は酸無水物の構造を有することを特徴とする。酸無水物の構造を有しているので、基材表面や材料中の他の成分と反応せず樹脂組成物の保存中フリーの状態で安定しているが、成形時の熱により無機充填材表面の付着水等の水分により開環し、基材金属表面等と反応し密着性が向上するため,耐半田性が改善される。」(段落【0026】)、「本発明の一般式(1)で示される化合物の加水分解物は、予めアルコキシ基が加水分解されているため、容易に無機充填材や各種基材表面の水酸基と水素結合あるいは共有結合を形成し、耐半田性を向上させることが可能となる。」(段落【0027】)との記載がある。また、記載事項(5)には、実施例9として、「シランカップリング剤Aと純水を重量比80:20で混合し、この混合物が2層に分離しなくなるまで十分攪拌混合」(段落【0043】)して得た「加水分解物A」を0.4重量部(加水分解物Aに含まれる純水は、0.4×20÷(80+20)=0.08重量部、純水を除いたエポキシ樹脂組成物は、6.2+5.7+0.4+87.0+0.2+0.2+0.3-0.08=99.92、純水を除いたエポキシ樹脂組成物に対する純水の含有割合は、0.08÷99.92×100=0.08重量%)配合したエポキシ樹脂組成物が開示されている。以上より、甲6には、シランカップリング剤が有する酸無水物の構造が無機充填材表面の付着水等の水分により開環して基材金属表面等と反応し密着性が向上することが開示されるものの、上記[相違点2-2]に係る本件特許発明1の「水の含有量が、水を除いた当該ネガ型感光性樹脂組成物全体に対して、0.20質量%以上10質量%以下」であるとする要件を開示又は示唆するものではない。
さらに、甲7には、記載事項(4)に、成分(A)の具体例の一つとして、「カルボン酸無水物基とトリメトキシシリル基とを有する化合物(例えば、酸無水物含有基を有するシランカップリング剤[商品名「X-12-967C」、信越化学(株)製])」(段落【0027】)が挙げられている。また、「本発明の硬化性樹脂組成物が水を含有することにより、基材への密着性を向上させることができる。これは水が硬化性樹脂組成物中において、成分(A)のアルコキシシリル基を加水分解し、基材との反応を促進する作用を及ぼすためであると考えられる。」(段落【0096】)こと、「本発明の硬化性樹脂組成物において、水の含有量は、反応促進作用の観点から、成分(A)のトリアルコキシシリル基1モル当たり、0.01モル以上であることが好ましく、0.05モル以上であることがより好ましい。一方、水の含有量は、組成物の安定性や硬化物の透明性の観点から、成分(A)のトリアルコキシシリル基1モル当たり、0.3モル以下であることが好ましく、0.25モル以下であることがより好ましい。」(段落【0097】)ことが記載されている。以上より、甲7には、硬化性樹脂組成物に水を含有することによりアルコキシシリル基を加水分解して基板との反応を促進することが開示されているものの、上記[相違点2-2]に係る本件特許発明1の「水の含有量が、水を除いた当該ネガ型感光性樹脂組成物全体に対して、0.20質量%以上10質量%以下」であるとする要件を開示又は示唆するものではない。
以上のとおり、甲1、甲6、甲7は、いずれも、「水の含有量が、水を除いた当該ネガ型感光性樹脂組成物全体に対して、0.20質量%以上10質量%以下」であるとする要件を開示又は示唆するものではないから、甲2発明において、甲1、甲6、甲7の記載に基づいて、上記[相違点2-2]に係る本件特許発明1の構成とすることは、当業者であっても容易になし得たとはいえない。
ウ 小括
以上より、上記[相違点2-2]は実質的な相違点であり、甲2発明において、上記[相違点2-2]に係る本件特許発明1の構成とすることは、当業者であっても、容易になし得たとはいえないから、本件特許発明1は、当業者が容易に発明できたものでない。
(2)本件特許発明2~13
本件特許発明2~13は、本件特許発明1にさらに構成要件を付加した発明である。そうすると、本件特許発明2~13と甲2発明とを対比すると、上記[相違点2-2]において実質的に相違するといえる。
したがって、本件特許発明2~13も、同じ理由により、当業者が容易に発明できたものではない。
4 申立ての理由2-3(甲3を主引用例とした場合の進歩性)
(1)本件特許発明1
ア 対比
本件特許発明1と甲3発明とを対比する。
(ア)光酸発生剤
甲3発明の「PAG121(Q-2)」は、「光酸発生剤」である。したがって、甲3発明の「PAG121(Q-2)」は、本件特許発明1の「光酸発生剤」に相当する。
(イ)水
甲3発明の感光性樹脂組成物は、「水分率2.3%」である。したがって、甲3発明は、本件特許発明1の「水」を含むとする要件、及び、「水の含有量が、水を除いた当該ネガ型感光性樹脂組成物全体に対して、0.20質量%以上10質量%以下である」を満たしているといえる。
(ウ)ネガ型感光性樹脂組成物
甲3発明の「感光性樹脂組成物」は、光酸発生剤(Q-2)及び架橋剤(D-1)を含むものである。甲3の記載事項オの段落【0054】における「本発明の感光性樹脂組成物をネガ型で使用する場合は、(b)光酸発生剤として、活性光線の照射により酸を発生する化合物を用い、これを後述する(d)架橋剤と組み合わせることによりネガ型として利用できる。」との記載からみて、甲3発明の「感光性樹脂組成物」は、「ネガ型」の感光性樹脂組成物であるといえる。したがって、甲3発明の「感光性樹脂組成物」は、本件特許発明1の「ネガ型感光性樹脂組成物」に相当する。
(エ)一致点及び相違点
本件特許発明1と甲3発明とは、
「 光酸発生剤と、
水と、を含む、ネガ型感光性樹脂組成物であって、
前記水の含有量が、水を除いた当該ネガ型感光性樹脂組成物全体に対して、0.20質量%以上10質量%以下である、ネガ型感光性樹脂組成物。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
[相違点3-1]本件特許発明1は、「熱硬化性樹脂」を含むのに対し、甲3発明は、熱硬化性樹脂を含まない点。
[相違点3-2]本件特許発明1は、「酸無水物基を有するカップリング剤」を含むのに対し、甲3発明は、カップリング剤を含まない点。
イ 判断
事案に鑑みて[相違点3-2]について検討する。
本件特許発明1は、「酸無水物基を有するカップリング剤および水を併用するとともに、その水の含有量を所定範囲内とすることで、ネガ型感光性樹脂組成物の硬化物の金属密着性を向上できる」(段落【0005】)というものである。そして、段落【0190】に「実施例1~6のネガ型感光性樹脂組成物は、比較例1と比べて、銅などの金属に対する硬化後の密着性に優れることが分かった。」と記載されているとおり、水の含有量が所定範囲にあることにより、所望の効果を奏することが確認されている。
申立人は、「甲第1号証、甲第6号証、及び甲第7号証には、酸無水物基を有するシランカップリング剤や、酸無水物基を有するシランカップリング剤と水とを反応させたカルボキシ基を有するシランカップリング剤を用いることで、密着性を向上させることの記載があり、これらのシランカップリング剤を用いて密着性を向上させることは周知の技術である。」(特許異議申立書第42頁第17~21行)と主張している。
前記1(1)ア(オ)に記載したとおり、甲1には、「酸無水物基を有するカップリング剤」を含むネガ型感光性樹脂組成物が開示されている。また、前記3(1)イに記載したとおり、甲6及び甲7には、樹脂組成物に、酸無水物の構造を有するシランカップリング剤を用いることが開示されている。しかし、甲1、甲6、甲7は、「水の含有量が、水を除いた当該ネガ型感光性樹脂組成物全体に対して、0.20質量%以上10質量%以下」であるとする要件を開示又は示唆していない。そうすると、甲3には、感光性樹脂組成物において水の含有量を所定範囲内とすることにより、塗布時の膜厚均一性、および膜厚安定性(貯蔵前後の膜厚安定性)に優れた感光性樹脂組成物を提供できることが開示されており、甲1、甲6、甲7には、樹脂組成物に酸無水物基を有するカップリング剤を用いることが開示されるものの、酸無水物基を有するカップリング剤および水を併用すること、及び、水の含有量を所定範囲内とすることによりネガ型感光性樹脂組成物の硬化物の金属密着性を向上させることについて開示していない。
そうすると、甲1、甲6、甲7に、樹脂組成物に酸無水物基を有するカップリング剤を用いることが示唆されていたとしても、酸無水物基を有するカップリング剤および水を併用し、水の含有量を所定範囲内とすることにより、ネガ型感光性樹脂組成物の硬化物の金属密着性が向上することは、甲3、甲1、甲6、甲7のいずれの文献に開示も示唆もない、格別な効果といえるから、当業者といえども、上記[相違点3-2]に係る本件特許発明1の構成に容易に想到し得たということはできない。
ウ 小括
以上より、甲3発明において、上記[相違点3-2]に係る本件特許発明1の構成とすることは、当業者であっても、容易になし得たとはいえないから、本件特許発明1は、当業者が容易に発明できたものでない。
(2)本件特許発明2~13
本件特許発明2~13は、本件特許発明1にさらに構成要件を付加した発明である。そうすると、本件特許発明2~13と甲3発明とを対比すると、上記[相違点3-2]において相違するといえる。
したがって、本件特許発明2~13も、同じ理由により、当業者が容易に発明できたものではない。
5 申立ての理由3(実施可能要件)
申立人は、本件特許発明1及び本件特許発明1の記載を引用する本件特許発明2~13について「水と、を含む、ネガ型感光性樹脂組成物であって、」及び「水の含有量が、水を除いた当該ネガ型感光性樹脂組成物全体に対して、0.20質量%以上10質量%以下である」とする発明特定事項が、実施可能要件を満たしていないと主張している。
しかし、本件特許の発明の詳細な説明には、段落【0065】に、「また、上記ネガ型感光性樹脂組成物に水を含める方法は、とくに限定されない。上記の各成分を混合した混合物に対して水を添加する方法や、各成分のいずれかにと水とを混合してなる調製液を作製し、その後、調製液と他の成分とを混合する方法が考えられる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。」と記載されており、実施例として段落【0179】にも、「まず、表1に示すカップリング剤および水のモル比に従って、純水にカップリング剤を添加し、得られた混合物を、表1に示す混合時間だけ、室温で攪拌混合して調製液を得た。」、及び、「混合溶液中に、表1に示す配合比率(質量換算)となるように純水を添加し、再び混合した。」と記載されている。これらの記載に基づけば、ネガ型感光性樹脂組成物は、各成分を混合して得られること、混合に用いた各成分及び水の配合比率(質量換算)から、水の含有量が計算できることが理解できる。そして、混合に用いる各成分及び水の配合量を得る方法は、例示するまでもなく周知技術であって、その方法が特定されていないとしても、「水と、を含む、ネガ型感光性樹脂組成物」を得ること、及び「水の含有量が、水を除いた当該ネガ型感光性樹脂組成物全体に対して、0.20質量%以上10質量%以下」となるように配合量を調整することは、当業者が実施できるものである。
申立人は、「水の含有量の測定方法が特定されていない。…よって、当業者が本件特許発明を追試しようとしても不可能である。」(特許異議申立書第60頁第5~9行)と主張している。しかし、上記のとおり、混合に用いた各成分及び水の配合比率(質量換算)から、水の含有量が計算できるのであり、組成物を測定しなければ「水の含有量」が特定できないとする事情は存在しない。
したがって、本件特許の発明の詳細な説明の記載は、当業者が本件特許発明1~13を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものであるから、申立人の主張は採用できない。
6 申立ての理由4-1(サポート要件(その1))
申立人は、本件特許発明1及び本件特許発明1の記載を引用する本件特許発明2~13について「水と、を含む、ネガ型感光性樹脂組成物であって、」及び「水の含有量が、水を除いた当該ネガ型感光性樹脂組成物全体に対して、0.20質量%以上10質量%以下である」とする発明特定事項について、「本件特許発明の具体例である実施例に記載のネガ型感光性組成物は、…水により開館したカルボキシ基を有するシランカップリング剤のみを含有する可能性が高い。」とし、「本件特許発明の具体例であるカルボキシ基を有するシランカップリング剤のみを含有する実施例1~6を以って、本件特許発明1で規定される酸無水物基を有するカップリング剤を含むことを規定した範囲において、本件特許の発明の課題を解決できることを当業者が認識できるように記載されていない。すなわち、本件の発明の詳細な説明に記載された具体例を、本件特許発明1に規定された全ての酸無水物基を有するカップリング剤を含む範囲に対してまで、拡張ないし一般化することはできない。」、「本件特許発明1は、カルボキシ基を有するカップリング剤を含むことが規定されていないため、本件特許発明の課題を解決できない範囲も包含する蓋然性が高い」と主張している。
本件特許の発明の詳細な説明の段落【0066】には、「詳細なメカニズムは定かではないが、水によって、酸無水物基を有するカップリング剤が加水分解されるため、ネガ型感光性樹脂組成物の硬化物と金属膜に容易に共有結合、水素結合、あるいは配位結合し、密着性を向上できる、と考えられる。」と記載されている。当該記載に基づけば、「酸無水物基を有するカップリング剤」と、「水」と、を含む、ネガ型感光性樹脂組成物において、酸無水物基を有するカップリング剤が加水分解され、カルボキシ基を有するシランカップリング剤となり、金属膜との間の密着性を向上することになると理解できる。そして、仮に「酸無水物基を有するカップリング剤」が「カルボキシ基を有するカップリング剤」となり、ほとんど残存しないとしても、金属膜との間の密着性が向上することになり、発明が解決しようとする課題を解決できることは明らかである。
したがって、本件特許発明1~13は、発明の詳細な説明に記載されたものであるから、申立人の主張を採用することはできない。
7 申立ての理由4-2(サポート要件(その2))
申立人は、「PGMEAのみを溶剤として含有するネガ型感光性樹脂組成物において、水の含有量を本件特許発明1で規定された上限値である、水を除いたネガ型感光性樹脂組成物全体に対して10質量%とした場合、PGMEAと水とが総分離するため、均一な溶液とはならない可能性が高い。…本件特許発明1は、本件特許発明の課題を解決できない範囲も包含する蓋然性が高い。」(特許異議申立書第65頁第9~15行)、「本件特許の具体例である実施例1~6における水の含有量が0.23~0.95質量%であることのみを以って、本件特許発明1で規定される水の含有量の範囲において、本件特許の発明の課題を解決できることを当業者が認識できるように記載されていない。すなわち、本件の発明の詳細な説明に記載された具体例を、本件特許発明1に規定されたネガ型感光性樹脂組成物における水の含有量の範囲に対してまで、拡張ないし一般化することはできない。」(特許異議申立書第65頁25行~第66頁第3行)と主張している。
しかし、本件特許発明が解決しようとする課題は、段落【0004】に記載されるとおり、「金属密着性」を改善することにある。そして、段落【0066】には、「詳細なメカニズムは定かではないが、水によって、酸無水物基を有するカップリング剤が加水分解されるため、ネガ型感光性樹脂組成物の硬化物と金属膜に容易に共有結合、水素結合、あるいは配位結合し、密着性を向上できる、と考えられる。」と記載されている。当該記載に基づけば、「酸無水物基を有するカップリング剤」と、「水」と、を含む、ネガ型感光性樹脂組成物において、ある程度の量の酸無水物基を有するカップリング剤が加水分解されて、カルボキシ基を有するシランカップリング剤となれば、金属膜との間の密着性を向上することになると理解できる。そして、実施例1~6及び比較例1の結果も、下限値以上であれば上記課題を解決できることを支持しているといえる。
なお、本件特許発明1~13が、仮に、均一な溶液とはならない場合を含むとしても、上記課題解決に影響を与えるものとは考えられない。
したがって、本件特許発明1~13は、発明の詳細な説明に記載されたものであるから、申立人の主張は採用できない。
8 申立ての理由5-1(明確性要件(その1))
申立人は、本件特許発明1及び本件特許発明1の記載を引用する本件特許発明2~13について「水と、を含む、ネガ型感光性樹脂組成物であって、」及び「水の含有量が、水を除いた当該ネガ型感光性樹脂組成物全体に対して、0.20質量%以上10質量%以下である」とする発明特定事項が、「水の含有量の測定方法が特定されていない」から不明確であると主張している。
しかし、前記5において検討したとおり、混合に用いた各成分及び水の配合比率(質量換算)から、水の含有量が計算できるのであり、組成物を測定しなければ「水の含有量」が特定できないとする事情は存在しない。
したがって、本件特許発明1~13は、不明確とはいえないから、申立人の主張は採用できない。
9 申立ての理由5-2(明確性要件(その2))
申立人は、本件特許発明1及び本件特許発明1の記載を引用する本件特許発明2~13について、「水の含有量」が「実際に含まれる水の量」又は「水の仕込み量」のいずれであるか不明確であると主張している。
しかし、「酸無水物基を有するカップリング剤」と「水」が共存する場合、発明の詳細な説明の段落【0066】にも説明されているとおり、「水によって、酸無水物基を有するカップリング剤が加水分解される」ことは自明である。そうすると、技術的にみて、本件特許発明1において、ネガ型感光性樹脂組成物に含まれるとされる「酸無水物基を有するカップリング剤」や「水」などの各成分が、加水分解や吸着等の変化を経た後の成分を特定したものと理解することはできない。したがって、本件特許発明1の「酸無水物基を有するカップリング剤」と「水」が、申立人のいうところの「仕込み量」であることは明らかであり、本件特許発明1~13が不明確であるとはいえない。
また、実施例に係る段落【0179】の「混合溶液中に、表1に示す配合比率(質量換算)となるように純水を添加し、再び混合した。」との記載からも、添加した量(仕込み量)を意味するものと理解でき、加水分解反応等が進行した後の「水の含有量」を意味すると解釈することができない。
したがって、本件特許発明1~13は、不明確とはいえないから、申立人の主張は採用できない。
第6 むすび
以上より、特許異議の申立の理由及び証拠によっては、本件特許発明1~13に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許発明1~13に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2023-701101