特許異議申立
2020-700585
液体柔軟剤組成物
- 審判番号
- 2020-700585
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2016-060415外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 登録番号
- 6643160
- 請求日
- 2020年08月12日
- 審決日
- 2022年03月25日
- 公報発行日
- 2022年07月29日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 分類
- P1651.113-YAA(D06M) / P1651.121-YAA(D06M) / P1651.537-YAA(D06M)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の8第1項、特許法第135条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6643160号発明「液体柔軟剤組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6643160号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1、〔2~10〕について訂正することを認める。
特許第6643160号の請求項1~6、8、9に係る特許を維持する。
特許第6643160号の請求項7、10に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第6643160号(以下「本件特許」という。)の請求項1~10に係る特許についての出願は、平成28年3月24日を出願日とする出願であって、令和2年1月8日にその特許権の設定登録(特許掲載公報令和2年2月12日発行)がされ、その後、その請求項1~10に係る特許について、令和2年8月12日に特許異議申立人森田弘潤(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、令和2年12月17日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である令和3年2月19日に特許権者から意見書の提出及び訂正の請求がされ、この訂正の請求について、令和3年4月5日に申立人より意見書が提出され、令和3年7月2日付けで取消理由(決定の予告)が通知され、その指定期間内である令和3年9月13日に特許権者から意見書の提出及び訂正の請求(以下「本件訂正請求」という。)がされ、この本件訂正請求について、令和3年11月18日に申立人より意見書が提出されたものである。
なお、特許権者が平成3年2月19日に提出した訂正請求書による訂正の請求は、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。
第2 訂正の請求について
1.訂正の内容
本件訂正請求は、「特許第6643160号の特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~10について訂正することを求める」ものであり、その訂正の内容は、本件特許に係る願書に添付した特許請求の範囲を、次のように訂正するものである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「(B)硫黄含有香料前駆体」と記載されているのを、
「(B)液体柔軟剤組成物の総質量に対し0.01~0.2質量%の硫黄含有香料前駆体」に訂正する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1に「(C)液体柔軟剤組成物の総質量に対し0.1~1質量%の金属捕捉剤」と記載されているのを、
「(C)液体柔軟剤組成物の総質量に対し0.1~0.4質量%の金属捕捉剤」に訂正する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項1に、下記の発明特定事項を追加する。
「(B)成分が、一般式(B-1)で表される少なくとも1種の化合物であり、Y-S-G-Q (B-1)
〔式中、
Yは、以下に示した基(Y-1)~(Y-7)からなる群より選択される基又はその異性体を表し、
[図:0001386086000001.jpg]
((Y-1)~(Y-7)の各式中、波線はY-S結合の位置を表し、点線は単結合又は二重結合の位置を表す)、
Sは、硫黄原子を表し、
Gは、2~15個の炭素原子を有する直鎖状又は分枝鎖状のアルキル基又はアルケニル基から誘導される2価又は3価の基を表し(前記2価又は3価の基は、場合により-OR11、-NR112、-COOR11及びR11基(各基中、R11は、水素原子又はC1~C6アルキル基又はアルケニル基を表す)からなる群から選択される1つ以上の基で置換されていてもよい)、
Qは、水素原子、-S-Y基又は-NR12-Y基(各基中、Yは上記のように規定され、且つ、R12が水素原子又はメチル基である)を表す。〕、」
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項1に、発明特定事項「かつ(C)成分に対する(B)成分の質量比((B)/(C))が0.1~2である、」を追加する。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項2に「(C)成分に対する(B)成分の質量比((B)/(C))が0.05~50である、請求項1に記載の液体柔軟剤組成物。」と記載されているのを、次のとおりに訂正する。
「液体柔軟剤組成物であって、
下記(A)~(C)成分:
(A)エステル基(-COO-)及び/又はアミド基(-NHCO-)で分断されていてもよい、炭素数10~26の炭化水素基を分子内に1~3個有するアミン化合物、その塩及びその4級化物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物、
(B)液体柔軟剤組成物の総質量に対し0.01~0.2質量%の硫黄含有香料前駆体、並びに、
(C)液体柔軟剤組成物の総質量に対し0.1~0.4質量%の金属捕捉剤、を含有し、
(B)成分が、一般式(B-1)で表される少なくとも1種の化合物であり、Y-S-G-Q (B-1)
〔式中、
Yは、以下に示した基(Y-1)~(Y-7)からなる群より選択される基又はその異性体を表し、
[図:0001386086000002.jpg]
((Y-1)~(Y-7)の各式中、波線はY-S結合の位置を表し、点線は単結合又は二重結合の位置を表す)、
Sは、硫黄原子を表し、
Gは、2~15個の炭素原子を有する直鎖状又は分枝鎖状のアルキル基又はアルケニル基から誘導される2価又は3価の基を表し(前記2価又は3価の基は、場合により-OR11、-NR112、-COOR11及びR11基(各基中、R11は、水素原子又はC1~C6アルキル基又はアルケニル基を表す)からなる群から選択される1つ以上の基で置換されていてもよい)、
Qは、水素原子、-S-Y基又は-NR12-Y基(各基中、Yは上記のように規定され、且つ、R12が水素原子又はメチル基である)を表す。〕、かつ
(C)成分に対する(B)成分の質量比((B)/(C))が0.4~2である、液体柔軟剤組成物。」
(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項3に「請求項1又は2のいずれかに記載の液体柔軟剤組成物」と記載されているのを、「請求項2に記載の液体柔軟剤組成物」に訂正する。
(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項5に「請求項1~4のいずれか1項に記載の液体柔軟剤組成物」と記載されているのを、「請求項2~4のいずれか1項に記載の液体柔軟剤組成物」に訂正する。
(8)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項6に「請求項1~5のいずれか1項に記載の液体柔軟剤組成物」と記載されているのを、「請求項2~5のいずれか1項に記載の液体柔軟剤組成物」に訂正する。
(9)訂正事項9
特許請求の範囲の請求項7を削除する。
(10)訂正事項10
特許請求の範囲の請求項8に「請求項7に記載の液体柔軟剤組成物」と記載されているのを、「請求項2~6のいずれか1項に記載の液体柔軟剤組成物」に訂正する。
(11)訂正事項11
特許請求の範囲の請求項9に「請求項1~8のいずれか1項に記載の液体柔軟剤組成物」と記載されているのを、「請求項2~6又は8のいずれか1項に記載の液体柔軟剤組成物」に訂正する。
(12)訂正事項12
特許請求の範囲の請求項10を削除する。
(13)一群の請求項について
訂正前の請求項2~10は、訂正前の請求項1を、直接的又は間接的に引用するものであって、訂正事項1~4によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものであり、本件訂正請求は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項ごとにされたものである。
そうであるところ、特許権者は、訂正後の請求項2と、訂正後の請求項2の記載を直接的又は間接的に引用する訂正後の請求項2~6、8及び9については、当該請求項についての訂正が認められる場合は、一群の請求項の他の請求項とは別途訂正することを求めている。
2.訂正の適否
(1)訂正事項1について
訂正事項1は、訂正前の請求項1に記載されていた(B)成分を含有量により限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、本件特許の願書に添付した明細書又は特許請求の範囲(以下「本件特許明細書等」という。)の段落【0037】に「(B)成分の配合量は、配合目的を達成できる量である限り特に限定されないが、液体柔軟剤組成物の総質量に対し、好ましくは0.0001~1質量%、より好ましくは0.005~0.5質量%、さらに好ましくは0.01~0.2質量%である。」と記載されており、訂正事項1は、本件特許明細書等に記載された事項の範囲内においてするものである。
さらに、訂正事項1は、上記のように、訂正前の請求項1の発明特定事項を更に限定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでない。
(2)訂正事項2について
訂正事項2は、訂正前の請求項1に記載されていた(C)成分を含有量により限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、本件特許明細書等の段落【0077】の【表3】に実施例の(C)成分の含有量が「0.40」であることが示されているから、訂正事項2は、本件特許明細書等に記載された事項の範囲内においてするものである。
さらに、訂正事項2は、上記のように、訂正前の請求項1の発明特定事項を更に限定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでない。
(3)訂正事項3について
訂正事項3は、訂正前の請求項1に記載されていた(B)成分を化学構造により更に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、訂正事項3は、訂正前の特許請求の範囲の請求項7の記載に基づいて導き出される事項であるから、訂正事項3は、本件特許明細書等に記載された事項の範囲内においてするものである。
さらに、訂正事項3は、上記のように、訂正前の請求項1の発明特定事項を更に限定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでない。
(4)訂正事項4について
訂正事項4は、訂正前の請求項1に記載されていた(B)成分及び(C)成分を質量比により更に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、本件特許明細書等の段落【0045】に「本発明では、(C)成分に対する(B)成分の質量比((B)/(C))が0.05~50であることが好ましく、より好ましくは0.1~10、さらに好ましくは0.2~5、特に好ましくは0.2~1である。(B)/(C)を0.05~50とすると、より高い(C)成分の配合効果(硫黄様異臭の発生抑制効果及び凍結復元性)を得ることができる。」と記載され、段落【0077】の【表3】に実施例の(B)/(C)の上限値が「2」であることが示されているから、訂正事項4は、本件特許明細書等に記載された事項の範囲内においてするものである。
さらに、訂正事項4は、上記のように、訂正前の請求項1の発明特定事項を更に限定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでない。
(5)訂正事項5について
訂正事項5は、次のように整理される。
訂正事項5-1:独立形式請求項への書き下し
訂正事項5-2:(B)成分を含量により限定
訂正事項5-3:(C)成分を含量により限定
訂正事項5-4:(B)成分を化学構造により限定
訂正事項5-5:(C)成分に対する(B)成分の質量比を限定
ア 訂正事項5-1は、訂正前の請求項2が請求項1の記載を引用する記載であったものを、請求項間の引用関係を解消して、請求項1の記載を引用しない独立形式請求項へ改めるための訂正であるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものに該当する。
訂正事項5-2~5-5は、いずれも、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
イ 訂正事項5-1は、それにより実質的な内容が変更されるものではないから、本件特許明細書等に記載された事項の範囲内のものであることは明らかである。
訂正事項5-2は、訂正事項1と同様に、本件特許明細書等の段落【0037】の記載に基づいて導き出せる事項であり、訂正事項5-3は、訂正事項2と同様に、本件特許明細書等の段落【0077】の記載に基づいて導き出せる事項であり、また、訂正事項5-4は、特許請求の範囲の請求項7の記載に基づいて導き出される事項であるから、これらの訂正事項は、いずれも、本件特許明細書等に記載された事項の範囲内のものである。
さらに、訂正事項5-5は、本件特許明細書等の段落【0077】の【表3】に実施例の(B)/(C)の上限値が「2」で下限値が「0.4」あることが示されているから、本件特許明細書等に記載された事項の範囲内のものである。
ウ 訂正事項5-1が請求項2に係る発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものでないことは明らかであり、また、訂正事項5-2~5-5のいずれも、訂正前の請求項1の発明特定事項を更に限定するものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、訂正事項5は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでない。
(6)訂正事項6~8について
訂正事項6~8は、請求項1を直接的に引用していた請求項3、5及び6について、請求項1を引用しないようにするものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、訂正事項6~8は、本件特許明細書等に記載された事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないことは明らかである。
(7)訂正事項9について
訂正事項9は、請求項7を削除するというものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、訂正事項9は、本件特許明細書等に記載された事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないことは明らかである。
(8)訂正事項10について
訂正事項10は、請求項1~6のいずれかを1項を引用する請求項7を直接的に引用していた訂正前の請求項8について、訂正事項5により請求項2が請求項1及び7の発明特定事項を含むものとなり、さらに訂正事項9により請求項7を削除することから、引用する請求項の項番を整合させるものであり、明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。
また、訂正事項10は、本件特許明細書等に記載された事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(9)訂正事項11について
訂正事項11は、請求項1~8のいずれか1項を引用していた訂正前の請求項9について、訂正事項5により請求項2が請求項1及び7の発明特定事項を含むものとなり、さらに訂正事項9により請求項7を削除することから、引用する請求項の項番を整合させるものであり、明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。
また、訂正事項11は、本件特許明細書等に記載された事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(10)訂正事項12について
訂正事項12は、請求項10を削除するというものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、訂正事項12は、本件特許明細書等に記載された事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
3.訂正についてのまとめ
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、並びに同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
よって、訂正後の請求項1、〔2~10〕について訂正を認める。
第3 本件特許発明
上記のとおり、本件訂正請求が認められるから、本件特許の請求項1~6、8、9に係る発明(以下「本件発明1」等という。)は、それぞれ、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~6、8、9に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
「【請求項1】
液体柔軟剤組成物であって、
下記(A)~(C)成分:
(A)エステル基(-COO-)及び/又はアミド基(-NHCO-)で分断されていてもよい、炭素数10~26の炭化水素基を分子内に1~3個有するアミン化合物、その塩及びその4級化物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物、
(B)液体柔軟剤組成物の総質量に対し0.01~0.2質量%の硫黄含有香料前駆体、並びに、
(C)液体柔軟剤組成物の総質量に対し0.1~0.4質量%の金属捕捉剤、を含有し、
(B)成分が、一般式(B-1)で表される少なくとも1種の化合物であり、
Y-S-G-Q (B-1)
〔式中、
Yは、以下に示した基(Y-1)~(Y-7)からなる群より選択される基又はその異性体を表し、
[図:0001386086000003.jpg]
((Y-1)~(Y-7)の各式中、波線はY-S結合の位置を表し、点線は単結合又は二重結合の位置を表す)、
Sは、硫黄原子を表し、
Gは、2~15個の炭素原子を有する直鎖状又は分枝鎖状のアルキル基又はアルケニル基から誘導される2価又は3価の基を表し(前記2価又は3価の基は、場合により-OR11、-NR112、-COOR11及びR11基(各基中、R11は、水素原子又はC1~C6アルキル基又はアルケニル基を表す)からなる群から選択される1つ以上の基で置換されていてもよい)、
Qは、水素原子、-S-Y基又は-NR12-Y基(各基中、Yは上記のように規定され、且つ、R12が水素原子又はメチル基である)を表す。〕、かつ
(C)成分に対する(B)成分の質量比((B)/(C))が0.1~2である、液体柔軟剤組成物。
【請求項2】
液体柔軟剤組成物であって、
下記(A)~(C)成分:
(A)エステル基(-COO-)及び/又はアミド基(-NHCO-)で分断されていてもよい、炭素数10~26の炭化水素基を分子内に1~3個有するアミン化合物、その塩及びその4級化物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物、
(B)液体柔軟剤組成物の総質量に対し0.01~0.2質量%の硫黄含有香料前駆体、並びに、
(C)液体柔軟剤組成物の総質量に対し0.1~0.4質量%の金属捕捉剤、
を含有し、
(B)成分が、一般式(B-1)で表される少なくとも1種の化合物であり、
Y-S-G-Q (B-1)
〔式中、
Yは、以下に示した基(Y-1)~(Y-7)からなる群より選択される基又はその異性体を表し、
[図:0001386086000004.jpg]
((Y-1)~(Y-7)の各式中、波線はY-S結合の位置を表し、点線は単結合又は二重結合の位置を表す)、
Sは、硫黄原子を表し、
Gは、2~15個の炭素原子を有する直鎖状又は分枝鎖状のアルキル基又はアルケニル基から誘導される2価又は3価の基を表し(前記2価又は3価の基は、場合により-OR11、-NR112、-COOR11及びR11基(各基中、R11は、水素原子又はC1~C6アルキル基又はアルケニル基を表す)からなる群から選択される1つ以上の基で置換されていてもよい)、
Qは、水素原子、-S-Y基又は-NR12-Y基(各基中、Yは上記のように規定され、且つ、R12が水素原子又はメチル基である)を表す。〕、かつ
(C)成分に対する(B)成分の質量比((B)/(C))が0.4~2である、液体柔軟剤組成物。
【請求項3】
(C)成分が、アミノカルボン酸又はその塩である、請求項2に記載の液体柔軟剤組成物。
【請求項4】
(C)成分が、メチルグリシン二酢酸又はその塩である、請求項3に記載の液体柔軟剤組成物。
【請求項5】
更に、(D)成分として高度分岐環状デキストリンを含む、請求項2~4のいずれか1項に記載の液体柔軟剤組成物。
【請求項6】
(A)成分が、一般式(A1-1)~(A1-8)で表される化合物、それらの塩及びそれらの4級化物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物である、請求項2~5のいずれか1項に記載の液体柔軟剤組成物。
[図:0001386086000005.jpg]
〔(A1-1)式中、R7及びR8はそれぞれ独立に、炭素数10~26の炭化水素基であり、
(A1-2)~(A1-8)の各式中、R9及びR10はそれぞれ独立に、炭素数7~21の炭化水素基である。〕」
「【請求項8】
一般式(B-1)で表される化合物が、3-(ドデシルチオ)-1-(2,6,6-トリメチルシクロヘキサ-3-エン-1-イル)-1-ブタノン及び4-(ドデシルチオ)-4-(2,6,6-トリメチルシクロヘキサ-2-エン-1-イル)-2-ブタノンからなる群より選ばれる、請求項2~6のいずれか1項に記載の液体柔軟剤組成物。
【請求項9】
(A)成分の含有量が、液体柔軟剤組成物の総質量に対し8~30質量%である、請求項2~6又は8のいずれか1項に記載の液体柔軟剤組成物。」
第4 特許異議の申立てについて
1 取消理由(決定の予告)の概要
本件訂正の前の本件特許に対して、当審が特許権者に通知した令和3年7月2日付けの取消理由(決定の予告)の要旨は、次のとおりである。
(1)理由1(特許法第36条第6項第2号に規定する要件)
請求項1で特定された「(C)成分に対する(B)成分の質量比((B)/(C))」の最大値は「50」とされており、(B)成分と(C)成分の含有量の全ての組合せから想定される比の最大値である「5」を超えるものであるから矛盾し、かかる矛盾する記載を含んだ請求項1に係る発明は、明確ではない。また、請求項3~6、8~10に係る発明も同様である。
(2)理由2(特許法第36条第6項第1号に規定する要件)
「(C)成分に対する(B)成分の質量比((B)/(C))が0.05~50である」との事項を含む請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明において「発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲」を超えるものである。また、請求項3~6、8~10に係る発明も同様である。
2 取消理由(決定の予告)についての判断
(1)理由1(特許法第36条第6項第2号に規定する要件)について
特許権者は、この取消理由の通知に応答して、本件訂正請求を行った。
このことにより、本件特許の請求項1の記載上、(B)成分たる硫黄含有香料前駆体、(C)成分たる金属捕捉剤は、液体柔軟剤組成物の総質量に対してそれぞれ0.01~0.2質量%、0.1~0.4質量%とされ、かつ、(C)成分に対する(B)成分の質量比((B)/(C))が0.1~2とされた。
この請求項1の記載について、取消理由で指摘したような矛盾は生じていない。
また、本件訂正請求により独立請求項に改められた請求項2の記載についても、(B)成分たる硫黄含有香料前駆体、(C)成分たる金属捕捉剤は、液体柔軟剤組成物の総質量に対してそれぞれ0.01~0.2質量%、0.1~0.4質量%とされ、かつ、(C)成分に対する(B)成分の質量比((B)/(C))が0.4~2とされたことから、取消理由として指摘したような矛盾は生じていない。
したがって、本件発明1~6、8、9は明確であり、本件特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第2号の規定に適合する。
(2)理由2(特許法第36条第6項第1号に規定する要件)について
ア 本件特許に係る各発明が解決しようとする課題は、本件特許明細書等の記載全体(とくに段落【0005】の記載)からして、液体柔軟剤組成物として、残香性に優れたものであって、硫黄様異臭の発生が抑制されかつ凍結復元性に優れたものを得ることと理解する。
その課題を解決するための原理は、柔軟基剤たる(A)成分及び硫黄含有香料前駆体たる(B)成分を含有した液体柔軟剤組成物に対して、金属捕捉剤たる(C)成分を含有させることにし、それら(B)成分、(C)成分をそれぞれ所定の含有量となるようにすることで、硫黄様異臭の発生が抑制されかつ凍結復元性に優れたものとできると理解される(段落【0038】【0045】等参照)。
イ ここで、「(C)成分に対する(B)成分の質量比((B)/(C))」の値は、本件特許明細書等の発明の詳細な説明によれば、一般的な説明として「本発明では、(C)成分に対する(B)成分の質量比((B)/(C))が0.05~50であることが好ましく、より好ましくは0.1~10、さらに好ましくは0.2~5、特に好ましくは0.2~1である。(B)/(C)を0.05~50とすると、より高い(C)成分の配合効果(硫黄様異臭の発生抑制効果及び凍結復元性)を得ることができる。」(段落【0045】)と記載されており、また、実際に効果の確認されている実施例で「0.4」(実施例1)~「2」(実施例3)の範囲である。
ウ 本件訂正請求によって、(C)成分に対する(B)成分の質量比((B)/(C))は、請求項1では「0.1~2」とされ、請求項2では「0.4~2」とされた。
請求項2の「0.4~2」は、実際に効果が確認された実施例に対応したものである。
また、請求項1での下限値の「0.1」についても、実施例の下限値(0.4)から大きく乖離するものではなく、それにより実施例と同程度の効果がもたらされ得るものと推認できる。
エ 本件発明1、本件発明2は、いずれも、液体柔軟剤組成物が(A)成分、硫黄含有香料前駆体たる(B)成分、金属捕捉剤たる(C)成分を含有すること、(A)成分及び(B)成分がそれぞれ特定の化合物であること、(B)成分及び(C)成分の含有量がそれぞれ総質量に対して特定の範囲であること、及び、(C)成分に対する(B)成分の質量比が所定の範囲であることが特定されたものであり、とくに(C)成分に対する(B)成分の質量比については、上記ウで述べたとおりである。
そうすると、本件発明1、本件発明2、さらには、本件発明2の発明特定事項を全て含んだ本件発明3~6、8、9は、既に上記アで述べた当審の理解と整合したものであって、それらの発明特定事項によって、所与の課題が解決できるものと理解できる。
オ したがって、本件発明1~6、8~10は、本件特許明細書等の発明の詳細な説明において「発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲」を超えるものではなく、本件特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号の規定に適合する。
3 取消理由(決定の予告)に採用しなかった特許異議申立理由について
(1)申立人は、甲第1号証~甲第12号証(以下「甲1」等という。)を提出して、次のア~ウの理由を申立てている。
甲1:特開2016-35059号公報
甲2:国際公開第2015/073223号
(翻訳文として、甲2の2:特表2016-536478号公報)
甲3:「香りつづくトップ スウィートハーモニー つめかえ用810g」、[online]、2014年11月21日登録、価格.com、[2020年8月12日検索]、インターネット<URL:http://kakaku.com/item/K0000716972/?lid=pc_Ksearch_kakakuitem>
甲4:「花王/柔軟剤入り液体洗剤「フレグランスニュービーズジェル」、リニューアル」、[online]、2015年4月21日、流通ニュース、[2020年8月12日検索]、インターネット<URL:http://www.ryutsuu.biz/backnumber/commodity/mn4940-3.html>
甲5:「「ボールド 香りのサプリインジェル」9月下旬リニューアル発売」、[online]、2015年7月30日、プロクター・アンド・ギャンブル・ジャパン株式会社、インターネット<URL:http://jp.pg.com/news/release_pdf/20150730p02.pdf>
甲6:特開2015-101795号公報
甲7:特開2010-47851号公報
甲8:特開2015-120995号公報
甲9:特開2004-211215号公報
甲10:特開2013-245422号公報
甲11:松永聡、「-特集- 日常生活におけるにおい対策 日常生活における洗濯衣料の部屋干し臭とその抑制」、におい・かおり環境学会誌、平成17年、36巻2号、82~89頁
甲12:特開2015-203100号公報
ア 甲1を主引用例とする新規性・進歩性に係る申立理由
イ 甲2を主引用例とする新規性・進歩性に係る申立理由
ウ サポート要件に係る申立理由
(2)甲1を主引用例とする新規性・進歩性に係る申立理由について
ア 甲1には、以下の事項が記載されている。
(ア)「【請求項1】
(A)成分:下記一般式(A1)で表される化合物、及び下記一般式(A2)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも1種と、
(B)成分:アニオン界面活性剤と、
(C)成分:下記一般式(C1)で表される化合物、下記一般式(C1)で表される化合物の塩、及び下記一般式(C2)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも1種と、
(D)成分:香料と、
を含有する、繊維製品用液体洗浄剤。
【化1】
[図:0001386086000006.jpg]
・・・・
【化2】
[図:0001386086000007.jpg]
・・・・
【請求項3】
(F)成分:香料前駆体をさらに含有する、請求項1又は2記載の繊維製品用液体洗浄剤。」
(イ)「【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維製品用液体洗浄剤に関する。」
(ウ)「【0012】
<(A)成分>
(A)成分は、下記一般式(A1)で表される化合物(以下「(A1)成分」ともいう。)、及び下記一般式(A2)で表される化合物(以下「(A2)成分」ともいう。)からなる群より選択される少なくとも1種である。(A)成分は、水に溶解した際、解離によって分子内に-COO-を生じる。
本発明の液体洗浄剤においては、(A)成分を含有することで、繊維製品に、洗浄剤の香気を維持したまま賦香できる効果(香気維持性能)がより高められる。
【0013】
【化3】
[図:0001386086000008.jpg]
[式(A1)中、X11~X14は、それぞれ独立に、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属又はカチオン性アンモニウムを表す。R10は、水素原子又はヒドロキシ基を表す。mは、0又は1を表す。式(A2)中、X21~X23は、それぞれ独立に、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属又はカチオン性アンモニウムを表す。R20は、アルキル基、カルボキシ基、スルホ基、アミノ基、ヒドロキシ基又は水素原子を表す。nは、0~5の整数を表す。]
・・・・
【0020】
(A2)成分の具体例としては、ニトリロトリ酢酸、メチルグリシンジ酢酸、ジカルボキシメチルグルタミン酸、L-アスパラギン酸-N,N-二酢酸、セリン二酢酸又はこれらの塩等が挙げられ、これらの中でもメチルグリシンジ酢酸又はその塩が好ましい。
・・・・
【0021】
(A)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
(A)成分としては、上記の中でも、香気維持性能が特に向上しやすいことから、(A2)成分が好ましい。
繊維製品用液体洗浄剤中の(A)成分の含有量は、液体洗浄剤の総質量に対して0.1~10質量%が好ましく、より好ましくは0.2~5質量%であり、さらに好ましくは0.3~3質量%である。
(A)成分の含有量が、前記の好ましい下限値以上であると、香気維持性能がより向上する。一方、前記の好ましい上限値を超えても、それに見合う香気維持性能の向上効果が得られにくく、経済的にも不利となる。」
(エ)「【0027】
<(C)成分>
(C)成分は、下記一般式(C1)で表される化合物、下記一般式(C1)で表される化合物の塩(以下これらをまとめて「(C1)成分」ともいう。)、及び下記一般式(C2)で表される化合物(但し、一般式(C1)で表される化合物の塩に該当するものを除く。)(以下「(C2)成分」ともいう。)からなる群より選択される少なくとも1種である。
本発明の液体洗浄剤においては、主に(C)成分を含有することで、香気維持性能が発揮される。
【0028】
【化4】
[図:0001386086000009.jpg]
[式(C1)中、R1は、炭素数7~27の直鎖状又は分岐鎖状の炭化水素基を表す。R1における炭化水素基は、ヒドロキシ基及びアミノ基からなる群より選択される少なくとも1種の置換基を有していてもよく、炭素鎖中に連結基を有していてもよい。R2は、炭素数1~25の直鎖状又は分岐鎖状の炭化水素基を表す。R2における炭化水素基は、置換基としてヒドロキシ基を有していてもよく、炭素鎖中に連結基を有していてもよい。R3は、炭素数1~4の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基、炭素数1~4の直鎖状もしくは分岐鎖状のヒドロキシアルキル基、又は、-(CH2CH2O)p-Hで表される基(pは、1~25の整数を表す。)を表す。式(C2)中、R11及びR12は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~25の直鎖状もしくは分岐鎖状の炭化水素基、又は、-(CH2CH2O)q-Hで表される基(qは、1~25の整数を表す。)を表す。R11及びR12における炭化水素基は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよく、炭素鎖中に連結基を有していてもよい。R13は、炭素数8~25の直鎖状又は分岐鎖状の炭化水素基を表す。R13における炭化水素基は、置換基を有していてもよく、炭素鎖中に連結基を有していてもよい。R14は、水素原子、炭素数1~3の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基、炭素数1~3の直鎖状もしくは分岐鎖状のヒドロキシアルキル基、又は、-(CH2CH2O)r-Hで表される基(rは、1~25の整数を表す。)を表す。Z-は、対アニオンを表す。]
【0029】
≪(C1)成分≫
前記式(C1)中、R1は、炭素数7~27の直鎖状又は分岐鎖状の炭化水素基を表す。R1における炭化水素基は、飽和炭化水素基であってもよく不飽和炭化水素基であってもよい。R1における炭化水素基の炭素数は、7~25が好ましい。
・・・・
R1における該炭素鎖中に有していてもよい連結基としては、例えばアミド基(-C(=O)-NH-)、エステル基(-C(=O)-O-)、エーテル基(-O-)が挙げられ、アミド基、エステル基が好ましい。
・・・・
【0031】
前記式(C1)中、R2は、炭素数1~25の直鎖状又は分岐鎖状の炭化水素基を表す。R2における炭化水素基は、飽和炭化水素基であってもよく不飽和炭化水素基であってもよい。R2における炭化水素基の炭素数は、1~20が好ましく、炭素数1~4がより好ましい。
・・・・
R2における該炭素鎖中に有していてもよい連結基としては、例えばアミド基(-C(=O)-NH-)、エステル基(-C(=O)-O-)、エーテル基(-O-)が挙げられる。
・・・・
【0043】
≪(C2)成分≫
前記式(C2)中、R11及びR12は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~25の直鎖状もしくは分岐鎖状の炭化水素基、又は、-(CH2CH2O)q-Hで表される基(qは、1~25の整数を表す。)を表す。
・・・・
R11及びR12における炭化水素基は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよく、炭素鎖中に連結基を有していてもよい。・・・・該炭素鎖中に有していてもよい連結基としては、アミド基(-C(=O)-NH-)、エステル基(-C(=O)-O-)又はエーテル基(-O-)等が挙げられる。・・・・
【0044】
前記式(C2)中、R13は、炭素数8~25の直鎖状又は分岐鎖状の炭化水素基を表す。・・・・
R13における炭化水素基は、置換基を有していてもよく、炭素鎖中に連結基を有していてもよい。・・・・該炭素鎖中に有していてもよい連結基としては、アミド基(-C(=O)-NH-)、エステル基(-C(=O)-O-)又はエーテル基(-O-)等が挙げられ、中でもエステル基が好ましい。・・・・」
(オ)「【0050】
<(D)成分>
(D)成分は、香料であり、従来、衣料用等の洗浄剤に用いられている公知のものを用いることができる。
(D)成分としては、例えば、香料成分を含有する香料組成物が挙げられる。
・・・・
【0052】
上記の中でも、香料成分としては、香りの認知性が高いことから、ケトン類とエステル類とからなる群より選択される少なくとも1種を含むものが好ましく、芳香族ケトンと芳香族カルボン酸エステルとからなる群より選択される少なくとも1種を含むものがより好ましく、芳香族ケトンを含むもの、芳香族ケトンと芳香族カルボン酸エステルとの組合せを含むものがさらに好ましい。
その中でも、香りが長く残りやすい(残香性が良い)ことから、芳香族ケトンと芳香族カルボン酸エステルとの組合せを含むものが特に好ましい。」
(カ)「【0065】
≪(F)成分≫
本発明の液体洗浄剤においては、上記の(A)~(D)成分に加えて、又は、上記の(A)~(E)成分に加えて、(F)成分:香料前駆体をさらに含有することが好ましい。(F)成分をさらに含有することで、洗濯処理・乾燥後の被洗物から感じられる香りの強さ(香気強度)がより高められる。加えて、香気維持性能がより向上する。
「香料前駆体」とは、その化合物自体は無臭又は無臭に近いものであり、液体洗浄剤の中で、又は繊維上での酸化反応等によって香りを発生するものをいう。
【0066】
(F)成分としては、液体洗浄剤に一般的に用いられているものを特に制限なく用いることができる。
本発明において、(F)成分は、(D)成分の種類等に応じて適宜選択すればよく、例えば硫黄含有香料前駆体が挙げられ、好ましくは下記一般式(F1)で表される化合物が挙げられる。特に、(D)成分として(d1)成分と(d2)成分との組合せを含有する香料組成物を用いる場合、この一般式(F1)で表される化合物を併用することが好ましい。かかる併用によって、前記組合せを含有する香料組成物に特有の香りが繊維製品に充分に賦香されやすくなり、その香気の残香性が強められる。
【0067】
【化6】
[図:0001386086000010.jpg]
[式(F1)中、Sは硫黄原子である。Jは、下記の化学式(J-1)~(J-7)でそれぞれ表される基、及びこれらの異性体からなる群より選択される少なくとも1種の基を表す。化学式(J-4)中、jは、5~20の整数を表す。化学式(J-1)~(J-7)中、波線は、Sと結合する結合手を表す。化学式(J-1)~(J-2)中、点線は、点線が設けられている炭素原子間の結合の1つ以上が二重結合であることを意味する。Gは、置換基を有していてもよい炭素数2~15の直鎖状又は分岐鎖状の炭化水素基を表す。Qは、-S-Jで表される基、-NR17-Jで表される基又は水素原子(Sは硫黄原子である。Nは窒素原子である。Jは、下記の化学式(J-1)~(J-7)でそれぞれ表される基、及びこれらの異性体からなる群より選択される少なくとも1種の基を表す。R17は、水素原子又はメチル基を表す。)を表す。]
【0068】
【化7】
[図:0001386086000011.jpg]
【0069】
前記式(F1)中のJにおける「これらの異性体」とは、化学式(J-1)~(J-7)でそれぞれ表される基が、化学構造上、採り得る異性体、例えば立体異性体などをいう。
中でも、Jとしては、化学式(J-1)で表される基、化学式(J-2)で表される基がより好ましい。
前記の化学式(J-4)中、jは、5~20の整数を表し、好ましくは5~15の整数を表す。
【0070】
前記式(F1)中、Gにおける炭化水素基は、飽和炭化水素基であってもよく不飽和炭化水素基であってもよい、すなわち、アルキル基又はアルケニル基である。中でも、Gにおける炭化水素基としては、直鎖状のアルキル基が好ましい。
Gにおける炭化水素基の炭素数は、10~14が好ましい。
Gにおける炭化水素基は、置換基を有していてもよい。この置換基としては、例えば、-OR16、-N(R16)2、-COOR16(R16は、炭素数1~6のアルキル基もしくは炭素数1~6のアルケニル基、又は水素原子を表す)等が挙げられる。
【0071】
好ましい(F)成分としては、・・・・
これらの中でも、香りの持続性を高める観点から、3-(ドデシルチオ)-1-(2,6,6-トリメチルシクロヘキサ-3-エン-1-イル)-1-ブタノン、4-(ドデシルチオ)-4-(2,6,6-トリメチルシクロヘキサ-2-エン-1-イル)-2-ブタノン、4-(ドデシルチオ)-4-(2,6,6-トリメチルシクロヘキサ-1-エン-1-イル)-2-ブタノン及び3-(ドデシルチオ)-5-イソプロペニル-2-メチルシクロヘキサノンからなる群より選択される少なくとも1種の化合物が好ましい。
・・・・
【0072】
(F)成分は、市場において容易に入手可能であり、公知の方法によっても合成可能である。
(F)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
本発明の液体洗浄剤が(F)成分をさらに含有する場合、繊維製品用液体洗浄剤中の(F)成分の含有量は、液体洗浄剤の総質量に対して0.0001~1質量%が好ましく、より好ましくは0.001~0.1質量%であり、さらに好ましくは0.006~0.04質量%であり、特に好ましくは0.01~0.04質量%である。
(F)成分の含有量が、前記の好ましい下限値以上であると、香気強度がより高められるとともに、香気維持性能がより向上する。一方、前記の好ましい上限値を超えると、香りが強く残りすぎるおそれがある。」
(キ)「【0084】
以上説明した本発明の繊維製品用液体洗浄剤によれば、洗浄の際、洗浄剤の香気を維持したまま繊維製品に賦香でき、かつ、洗浄効果を高められる。かかる効果が得られる理由は定かではないが以下のように推測される。
本発明の繊維製品用液体洗浄剤は、水中でマイナスイオンを生じる(A)成分及び(B)成分と、水中でプラスイオンを生じる(C)成分と、香料である(D)成分と、を含有する。この繊維製品用液体洗浄剤を水に加えて調製される洗浄液中では、静電的な相互作用によって(A)成分及び(B)成分と、(C)成分と、の複合体が形成される。そして、この複合体に、疎水性相互作用によって、(D)成分における多様な香料成分が吸着する。これにより、洗浄の際、多様な香料成分が吸着した複合体、が繊維製品に付着するため、洗濯後の繊維製品の香りは、液体洗浄剤の香気が維持される、と考えられる。
また、前記の複合体は、静電的な相互作用によって形成されているため、カチオン強度が低くなっている。このため、洗浄中、複合体が、繊維製品に過剰に付着することがなく、適度な量で付着する。この効果は、表面にマイナスを帯びやすい綿繊維の場合に顕著である。これにより、洗浄の際、再汚染が抑制されることで、洗浄効果が高められる、と考えられる。
上記のように、(A)成分及び(B)成分と、(C)成分と、(D)成分と、が組み合わされた本発明の液体洗浄剤は、繊維製品用という用途の洗浄剤として特に適している。
・・・・
【0086】
また、(A)~(D)成分に加えて、さらに、香料前駆体である(F)成分を含有する本発明の液体洗浄剤は、(F)成分とこれ以外の配合成分(複合体、(D)成分における多様な香料成分)との相互作用によって、洗濯処理・乾燥後の被洗物から感じられる香りの強さ(香気強度)もより高められ、残香性に優れる。」
(ク)「【実施例】
【0087】
以下に実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。尚、「%」は特に断りがない限り「質量%」を示す。
【0088】
各例の液体洗浄剤の組成を表2~4に示した。 本実施例において使用した原料は下記の通りである。
【0089】
・(A)成分
A-1:メチルグリシン二酢酸三ナトリウム、商品名「トリロンM liquid」、BASF社製。一般式(A2)中、X21=ナトリウム、X22=ナトリウム、X23=ナトリウム、R20=水素原子、n=1。
・・・・
【0091】
・(C)成分
C-1:C16-18アミドアミン、商品名「カチナールMPAS-R」、東邦化学工業株式会社製。一般式(C1)中、R1=R-C(=O)-NH-(CH2)3-、RはC17H35/C15H31=7/3(質量比)。
R2=メチル基、R3=メチル基。
C-2:塩化アルキル(炭素数16~18)トリメチルアンモニウム、商品名「アーカードT-800」、ライオン・アクゾ株式会社製。
【0092】
・(D)成分 D-1:表1に示す香料組成物(a)。 D-2:表1に示す香料組成物(b)。 D-3:表1に示す香料組成物(c)。
・・・・
【0094】
・任意成分
・・・・
【0095】
・・(F)成分
F-1:3-(ドデシルチオ)-1-(2,6,6-トリメチルシクロヘキサ-3-エン-1-イル)-1-ブタノン。特表2005-511710号公報の例4に記載の化合物。上記一般式(F1)における、Jが化学式(J-1)(3,4位間に二重結合を有する)で表される基、Gがドデシル基、Qが水素原子である化合物。
F-2:4-(ドデシルチオ)-4-(2,6,6-トリメチルシクロヘキサ-2-エン-1-イル)-2-ブタノン。原料としてドデカンチオール(東京化成工業株式会社製)とβヨノン(ヴェ・マンフィス香料株式会社製)とを用い、特表2005-511710号公報の例4に記載の合成方法と同様にして合成した化合物。上記一般式(F1)における、Jが化学式(J-2)(1,2位間に二重結合を有する)で表される基、Gがドデシル基、Qが水素原子である化合物。」
(ケ)「【0125】
【表4】
[図:0001386086000012.jpg]
イ 上記アに記載した事項のうち、特に【請求項3】等に記載されたF成分(香料前駆体)を含有した繊維製品用液体柔軟剤に着目し、段落【0021】に記載された一般的な(A)成分の含有量、段落【0072】に記載された一般的な(F)成分の含有量、(C)成分に関する段落【0029】、【0031】、【0043】及び【0044】で(C-1)成分のR1、R2及び(C-2)成分のR11、R12、R13における炭化鎖中に連結基としてアミド基又はエステル基を有してもよいことが記載されていることを考慮すると、甲1には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
「(A)成分:下記一般式(A1)で表される化合物、及び下記一般式(A2)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも1種と、
(B)成分:アニオン界面活性剤と、
(C)成分:下記一般式(C1)で表される化合物、下記一般式(C1)で表される化合物の塩、及び下記一般式(C2)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも1種と、
(D)成分:香料と、
(F)成分:好ましくは下記一般式(F1)で表される硫黄含有香料前駆体をさらに含有し、
(A)成分の含有量は、液体洗浄剤の総質量に対して0.1~10質量%であり、
(F)成分の含有量は、液体洗浄剤の総質量に対して0.0001~1質量%である、 繊維製品用液体洗浄剤。
[図:0001386086000013.jpg]
[式(A1)中、X11~X14は、それぞれ独立に、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属又はカチオン性アンモニウムを表す。R10は、水素原子又はヒドロキシ基を表す。mは、0又は1を表す。式(A2)中、X21~X23は、それぞれ独立に、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属又はカチオン性アンモニウムを表す。R20は、アルキル基、カルボキシ基、スルホ基、アミノ基、ヒドロキシ基又は水素原子を表す。nは、0~5の整数を表す。]
[図:0001386086000014.jpg]
[式(C1)中、R1は、炭素数7~27の直鎖状又は分岐鎖状の炭化水素基を表す。R1における炭化水素基は、ヒドロキシ基及びアミノ基からなる群より選択される少なくとも1種の置換基を有していてもよく、炭素鎖中に連結基としてアミド基又はエステル基を有していてもよい。R2は、炭素数1~25の直鎖状又は分岐鎖状の炭化水素基を表す。R2における炭化水素基は、置換基としてヒドロキシ基を有していてもよく、炭素鎖中に連結基としてアミド基又はエステル基を有していてもよい。R3は、炭素数1~4の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基、炭素数1~4の直鎖状もしくは分岐鎖状のヒドロキシアルキル基、又は、-(CH2CH2O)p-Hで表される基(pは、1~25の整数を表す。)を表す。式(C2)中、R11及びR12は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~25の直鎖状もしくは分岐鎖状の炭化水素基、又は、-(CH2CH2O)q-Hで表される基(qは、1~25の整数を表す。)を表す。R11及びR12における炭化水素基は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよく、炭素鎖中に連結基としてアミド基又はエステル基を有していてもよい。R13は、炭素数8~25の直鎖状又は分岐鎖状の炭化水素基を表す。R13における炭化水素基は、置換基を有していてもよく、炭素鎖中に連結基としてアミド基又はエステル基を有していてもよい。R14は、水素原子、炭素数1~3の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基、炭素数1~3の直鎖状もしくは分岐鎖状のヒドロキシアルキル基、又は、-(CH2CH2O)r-Hで表される基(rは、1~25の整数を表す。)を表す。Z-は、対アニオンを表す。]
[図:0001386086000015.jpg]
[式(F1)中、Sは硫黄原子である。Jは、下記の化学式(J-1)~(J-7)でそれぞれ表される基、及びこれらの異性体からなる群より選択される少なくとも1種の基を表す。化学式(J-4)中、jは、5~20の整数を表す。化学式(J-1)~(J-7)中、波線は、Sと結合する結合手を表す。化学式(J-1)~(J-2)中、点線は、点線が設けられている炭素原子間の結合の1つ以上が二重結合であることを意味する。Gは、置換基を有していてもよい炭素数2~15の直鎖状又は分岐鎖状の炭化水素基を表す。Qは、-S-Jで表される基、-NR17-Jで表される基又は水素原子(Sは硫黄原子である。Nは窒素原子である。Jは、下記の化学式(J-1)~(J-7)でそれぞれ表される基、及びこれらの異性体からなる群より選択される少なくとも1種の基を表す。R17は、水素原子又はメチル基を表す。)を表す。]
[図:0001386086000016.jpg]
」
ウ 本件発明1について
(ア)本件発明1と甲1発明を対比する。
甲1発明の「(C)成分」について、特にその(C1)成分又は(C2)成分としてR1、R2、R11、R12、R13のいずれかの炭素鎖中に連結基としてアミド基又はエステル基を有したものに着目すれば、甲1発明の「(C)成分」は、本件発明1の「(A)成分」に相当するといえる。
甲1発明の「(F)成分」は、本件発明1の「(B)成分」としての「硫黄含有香料前駆体」に相当する。
甲1発明の「(A)成分」は、本件特許明細書等において(C)成分として例示される「メチルグリシン二酢酸又はその塩」を含み得るものであるから、本件発明1の「(C)成分」に相当するといえる。
甲1発明の「繊維製品用液体洗浄剤」は、本件発明1の「液体柔軟剤組成物」に相当する。
以上を踏まえると、両発明は、
「液体柔軟剤組成物であって、
下記(A)~(C)成分:
(A)エステル基(-COO-)及び/又はアミド基(-NHCO-)で分断されていてもよい、炭素数10~26の炭化水素基を分子内に1~3個有するアミン化合物、その塩及びその4級化物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物、
(B)硫黄含有香料前駆体、並びに、
(C)金属捕捉剤、
を含有し、
(B)成分が、一般式(B-1)で表される少なくとも1種の化合物である、液体柔軟剤組成物。
Y-S-G-Q (B-1)
〔式中、
Yは、以下に示した基(Y-1)~(Y-7)からなる群より選択される基又はその異性体を表し、
[図:0001386086000017.jpg]
((Y-1)~(Y-7)の各式中、波線はY-S結合の位置を表し、点線は単結合又は二重結合の位置を表す)、
Sは、硫黄原子を表し、
Gは、2~15個の炭素原子を有する直鎖状又は分枝鎖状のアルキル基又はアルケニル基から誘導される2価又は3価の基を表し(前記2価又は3価の基は、場合により-OR11、-NR112、-COOR11及びR11基(各基中、R11は、水素原子又はC1~C6アルキル基又はアルケニル基を表す)からなる群から選択される1つ以上の基で置換されていてもよい)、
Qは、水素原子、-S-Y基又は-NR12-Y基(各基中、Yは上記のように規定され、且つ、R12が水素原子又はメチル基である)を表す。〕」である点で一致し、以下の点で相違する。
《相違点1》
本件発明1では、(B)成分たる硫黄含有香料前駆体、(C)成分たる金属捕捉剤の量がそれぞれ液体柔軟剤組成物の総質量に対して0.01~0.2質量%、0.1~0.4質量%であり、かつ、(C)成分に対する(B)成分の質量比((B)/(C))が0.1~2であるのに対して、甲1発明では、硫黄含有香料前駆体((F)成分)、金属捕捉剤((A)成分)の量がそれぞれ液体柔軟剤組成物(液体洗浄剤)の総質量に対して0.0001~1質量%、0.1~10質量%、である点。
(イ)この相違点1につき検討する。
本件発明1は、相違点1に係る発明特定事項、すなわち、(B)成分たる硫黄含有香料前駆体、(C)成分たる金属捕捉剤の液体柔軟剤組成物の総質量に対する量を限定した上で、さらに両者の質量比(B)/(C)を限定してなるもので、そうした事項を含むことによって、硫黄様異臭の発生が抑制されつつ、残香性、凍結復元性に優れる、といった効果をもたらすものである。
これに対して、甲1発明は、それを開示する甲1の記載全体からすると、残香性が考慮されたものであるものの、特に硫黄様異臭の発生の抑制、凍結復元性に対応したものではなく、他の証拠を考慮しても、甲1発明において、液体柔軟剤組成物(液体洗浄剤)の総質量に対して0.0001~1質量%とされている硫黄含有香料前駆体((F)成分)の量を0.01~0.2質量%の範囲に限定し、液体柔軟剤組成物(液体洗浄剤)の総質量に対して0.1~10質量%とされている金属捕捉剤((A)成分)の量を0.1~0.4質量%に限定した上で、さらに、金属捕捉剤((A)成分)に対する硫黄含有香料前駆体((F)成分)の質量比を0.1~2にすることの全てを満たすものとすることは、当業者が容易に想到し得たことではない。
そして、本件発明1は、既に述べたように、相違点1に係る発明特定事項を含むことによって、硫黄様異臭の発生が抑制されつつ、残香性、凍結復元性に優れる、といった効果をもたらすものであって、かかる効果は、甲1発明からすると異質なものというべきである。
(ウ)したがって、相違点1は実質的なものであり、本件発明1は甲1発明ではない。また、相違点1に係る本件発明1の発明特定事項は、甲1発明において当業者が容易に採用し得たものとはいえず、本件発明1は、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明し得たものではない。
エ 本件発明2~6、8、9について
本件発明2は、本件発明1において「0.1~2」とされた(C)成分に対する(B)成分の質量比((B)/(C))が「0.4~2」とされたものである。
本件発明2と甲1発明を対比すると、本件発明1と甲1発明を対比した際と同様の相当関係が成り立つから、両発明の相違点も、本件発明1と甲1発明を対比した際の相違点1において(C)成分に対する(B)成分の質量比((B)/(C))が0.1~2であったのが「0.4~2」であること以外では相違点1と同じである。
そうすると、上記ウで本件発明1について判断した理由と同様に、本件発明2も甲1発明ではなく、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明し得たものではない。
本件発明3~6、8、9は、いずれも、本件発明2の発明特定事項を全て含んだ上で他の発明特定事項が付加されたものである。
そうすると、本件発明2と同様に、本件発明3~6、8、9のいずれも甲1発明ではなく、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明し得たものではない。
オ 小活
よって、甲1を主引用例とする新規性・進歩性に係る申立理由には、理由がない。
(3)甲2を主引用例とする新規性・進歩性に係る申立理由について
ア 甲2には、以下の事項が記載されている。なお、参照箇所は、翻訳文としての甲2の2の段落番号で示す。
(ア)「特許請求の範囲
1 布地柔軟仕上げ剤組成物であって、
a)式(I):
{R4-m-N+-[(CH2)n-Y-R5]m}A- (I)
(式中、各Rは独立して、水素、短鎖C1~C6、ポリ(C2~C3アルコキシ)、ベンジル、及びこれらの混合物からなる群から選択され、mは、2又は3であり、各nは独立して、1~4であり、各Yは独立して、-O-(O)C-又は-C(O)-O-であり、各R5中の炭素の合計は、C11~C21であり、各R5は独立して、ヒドロカルビル基又は置換ヒドロカルビル基であり、A-は、柔軟仕上げ剤と相溶性のアニオンである)
のジエステル第四級アンモニウム化合物の布地柔軟仕上げ剤活性物質と、
b)前記布地柔軟仕上げ剤組成物の約0.4重量%~約0.9重量%の、式(II):
【化1】
[図:0001386086000018.jpg]
(式中、R1は、分岐又は非分岐のC6~C22アルキルであり、R2は、水素、メチル、エチル、又は-(CH2CH2O)yであり、yは、1~20であり、R3は、水素、メチル、又はエチルであり、xは、1~20であり、Zは、アニオン性対イオンである)
の両親媒性化合物と、
c)香油と、
を含む、布地柔軟仕上げ剤組成物。
・・・・
6 イオウ含有プロ香料化合物、香料マイクロカプセル(PMC)、ポリオール、レオロジー変性剤、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される補助成分を更に含む、請求項1に記載の組成物。
7 前記補助成分が、イオウ含有プロ香料化合物であり、前記イオウ含有プロ香料が、3-(ドデシルチオ)-1-(2,6,6-トリメチルシクロヘキサ-3-エン-1-イル)-1-ブタノン、4-(ドデシルチオ)-4-(2,6,6-トリメチルシクロヘキサ-2-エン1-イル)-2-ブタノン、4-(ドデシルチオ)-4-(2,6,6-トリメチルシクロヘキサ-1-エン-1-イル)-2-ブタノン、3-(ドデシルチオ)-5-イソプロペニル-2-メチルシクロヘキサノン、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項6に記載の組成物。」
(イ)「【技術分野】
【0001】
本発明は、布地柔軟仕上げ剤組成物及び布地柔軟仕上げ剤組成物の製造方法に関する。」
(ウ)「【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、その布地柔軟仕上げ特性を損なうことなく広範な温度範囲にわたって(すなわち、より低い温度及びより高い温度の両方において)改良された物理的安定性を提供する布地柔軟仕上げ剤組成物に対するニーズが存在する。特に、本発明は、組成物中で安定化剤を比較的低濃度で使用して、望ましい物理的安定性をもたらすことを可能にする。
【0006】
本発明の1つの利点は、広範な温度範囲にわたって改良された物理的安定性を有し、かつ、布地柔軟仕上げ剤活性物質及び香油を比較的高濃度で含む布地柔軟仕上げ剤組成物を提供することである。」
(エ)「【0016】
本明細書で使用するとき、用語「香油」は、1つ以上の香料原料(PRM)と、任意の溶媒と、を含む、遊離の揮発性油を指し、このときPRMと結合又は反応する化合物は意図的に加えられておらず、そのためにPRMは遊離しており、揮発して、利用者の嗅覚で検知できるように利用できる。本明細書で使用するとき、用語「香料送達系」は、PRMの特定の化合物との組み合わせ又は反応生成物を指し、これによって香料の布地上への付着効率、及び/又は、香料の制御放出が向上する。例えば、イオウ含有プロ香料化合物及び香料マイクロカプセル(PMC)は、2種類の香料送達系である。用語「香料」は、本明細書において、PRM、香料送達系、香油、又は、これらによって得られる心地よい香りを指す一般的用語である。」
(オ)「【0022】
布地柔軟仕上げ剤組成物
・・・・
【0024】
上述したように、所定の濃度で両親媒性化合物を組み込むことにより、本発明の布地柔軟仕上げ剤組成物は、より低い温度及びより高い温度の両方において商業的に許容可能な粘度をもたらす。一実施形態では、組成物は、液状であり、1/秒の剪断速度及び25℃において300cps未満、好ましくは10~300cps、より好ましくは50~250cps、更により好ましくは75~200cpsの粘度値を有する。」
(カ)「【0025】
両親媒性化合物
・・・・
【0029】
両親媒性化合物は、布地柔軟仕上げ剤組成物中に、布地柔軟仕上げ剤組成物の0.4重量%~0.9重量%、好ましくは0.5重量%~0.9重量%、より好ましくは0.5重量%~0.8重量%存在する。」
(キ)「【0030】
布地柔軟剤活性物質
・・・・
【0034】
一実施形態では、布地柔軟仕上げ剤活性物質は、布地柔軟仕上げ剤組成物を製造するために他の成分と組み合わせられる前に、布地柔軟仕上げ剤活性物質組成物中に含有されている。好ましくは、布地柔軟仕上げ剤活性物質組成物は、布地柔軟仕上げ剤活性物質組成物の3重量%~50重量%、好ましくは6重量%~25重量%、より好ましくは7重量%~18重量%、更により好ましくは9重量%~15重量%の布地柔軟仕上げ剤活性物質を含んでいる。布地柔軟仕上げ剤活性物質に加えて、布地柔軟仕上げ剤活性物質組成物は、好ましくは他の材料を含み、その非限定例としては、水、塩(例えば、CaCl2)、酸(例えば、HCl及びギ酸)、並びに防腐剤が挙げられる。」
(ク)「【0035】
香油
本発明の布地柔軟仕上げ剤組成物は、香油を含む。香油は、布地柔軟仕上げ剤組成物中に任意の好適な濃度で、好ましくは比較的高濃度(例えば、布地柔軟仕上げ剤組成物の1重量%超)で存在してもよい。一実施形態では、香油は、布地柔軟仕上げ剤組成物の0.5重量%~5重量%、好ましくは1重量%~4重量%、より好ましくは2重量%~3.5重量%存在する。布地柔軟仕上げ剤活性物質と同様に、布地柔軟仕上げ剤組成物中に比較的高濃度の香油を配合することもまた、安定性上の課題を提起する。しかし、本発明では、驚くべきことに、両親媒性化合物を所定の濃度で組み込むことが、比較的高濃度の香油の存在下において、布地柔軟仕上げ剤組成物に改良された物理的安定性をもたらすことが見出された。したがって、本発明において、両親媒性化合物は、改良された物理的安定性及び良好な洗いたて特性を提供する布地柔軟仕上げ剤組成物を可能にする。」
(ケ)「【0043】
補助成分
布地柔軟仕上げ剤組成物は、好ましくは1種以上の補助材料を含む。本明細書に記載の補助材料としては、香料送達系(例えば、イオウ含有プロ香料化合物、香料マイクロカプセル(PMC))、レオロジー変性剤(例えば、BASFより入手可能なRheovis(登録商標))、安定剤、pH調整剤、金属イオン制御剤、着色剤、漂白剤、染料、溶媒(例えば、ポリオール)、防汚ポリマー、防腐剤(例えば、Arch Chemicals,Inc.より入手可能なProxel(登録商標)GXL)、抗菌剤、塩素捕捉剤、酵素、防縮剤、布地縮剤、シリコーン(例えば、ポリジメチルシリコーン(PDMS))、スポッティング剤、抗酸化剤、防錆剤、増粘剤、ドレープ性及び成形性調整剤、平滑化剤、静電気制御剤、しわ抑制剤、衛生化剤、殺菌剤、細菌調整剤、成形抑制剤、カビ制御剤、抗ウイルス剤、抗菌剤、乾燥剤、耐汚染性剤、防汚剤、悪臭抑制剤、布地リフレッシュ剤、塩素漂白臭気抑制剤、染料定着剤、転染阻害剤、色保持剤、色復元/再生剤、抗退色剤、白度向上剤、抗磨耗剤、耐磨耗剤、布地結着性剤、耐摩耗剤、及びすすぎ助剤、紫外線保護剤、直射日光による色褪せ阻害剤、防虫剤、抗アレルギー剤、酵素、難燃剤、防水剤、布地快適剤、水質調節剤、耐収縮剤、耐伸剤、酵素、カチオン性デンプン、及びこれらの組み合わせを挙げることができる。好ましい一実施形態では、布地柔軟仕上げ剤組成物は、イオウ含有プロ香料化合物、PMC、溶媒(例えば、ポリオール)、レオロジー変性剤、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される補助成分を更に含む。」
(コ)「【0044】
香料送達系
本明細書に記載の布地柔軟仕上げ剤組成物は、1種類以上の香料送達系を含み得る。本明細書に用いるのに好適な香料送達系の非限定例としては、イオウ不含有プロ香料化合物、PMC、シクロデキストリン、ゼオライト及び無機キャリア、でんぷん封入アコード、アミン支援型香料送達系(AAD)、及びポリアクリレートカプセルが挙げられる。・・・・
【0045】
一実施形態では、本明細書に記載の布地柔軟仕上げ剤組成物は、イオウ含有プロ香料化合物を更に含む。用語「イオウ含有プロ香料化合物」は、本明細書において、イオウを含有するタイプのプロ香料化合物を指す。用語「プロ香料化合物」は、本明細書において、PRMと他の化学物質との反応によって得られる化合物を指し、1つ以上のPRMとこれら他の化学物質との間に共有結合を有する。PRMはプロ香料化合物と呼ばれる新たな材料へと変換され、次に、水又は光又は大気中酸素などの誘因への曝露によって元のPRM(すなわち、変換前)を放出できる。・・・・
【0046】
好ましくは、イオウ含有プロ香料化合物は、・・・・より好ましくは、イオウ含有プロ香料化合物は、3-(ドデシルチオ)-1-(2,6,6-トリメチルシクロヘキサ-3-エン-1-イル)-1-ブタノン、4-(ドデシルチオ)-4-(2,6,6-トリメチルシクロヘキサ-2-エン1-イル)-2-ブタノン、4-(ドデシルチオ)-4-(2,6,6-トリメチルシクロヘキサ-1-エン-1-イル)-2-ブタノン、及び3-(ドデシルチオ)-5-イソプロペニル-2-メチルシクロヘキサノン、並びにこれらの組み合わせからなる群から選択される。・・・・
【0047】
イオウ含有プロ香料化合物は、布地柔軟仕上げ剤組成物中に任意の好適な濃度で存在してもよい。好ましくは、イオウ含有プロ香料化合物は、組成物の少なくとも0.0001重量%、あるいは0.0001重量%~5重量%、あるいは0.001重量%~4重量%、あるいは0.01重量%~3重量%、あるいは0.05重量%~2重量%、あるいは0.08重量%~1重量%、あるいはこれらの組み合わせで存在する。」
イ 上記アに記載した事項から、特に(コ)のイオウ含有プロ香料化合物の濃度に関する記載事項を考慮すると、甲2には、次の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。
「a)式1:{R4-m-N+-[(CH2)n-Y-R5]m}A-
(式1中、各Rは独立して、水素、短鎖C1~C6、ポリ(C2~C3アルコキシ)、ベンジル、及びこれらの混合物からなる群から選択され、mは、2又は3であり、各nは独立して、1~4であり、各Yは独立して、-O-(O)C-又は-C(O)-O-であり、各R5中の炭素の合計は、C11~C21であり、各R5は独立して、ヒドロカルビル基又は置換ヒドロカルビル基であり、A-は、柔軟仕上げ剤と相溶性のアニオンである)のジエステル第四級アンモニウム化合物の布地柔軟仕上げ剤活性物質と、
b)前記布地柔軟仕上げ剤組成物の約0.4重量%~約0.9重量%の、式2:
[図:0001386086000019.jpg]
(式中、R1は、分岐又は非分岐のC6~C22アルキルであり、R2は、水素、メチル、エチル、又は-(CH2CH2O)yであり、yは、1~20であり、R3は、水素、メチル、又はエチルであり、xは、1~20であり、Zは、アニオン性対イオンである)の両親媒性化合物と、
c)香油と、
3-(ドデシルチオ)-1-(2,6,6-トリメチルシクロヘキサ-3-エン-1-イル)-1-ブタノン、4-(ドデシルチオ)-4-(2,6,6-トリメチルシクロヘキサ-2-エン1-イル)-2-ブタノン、4-(ドデシルチオ)-4-(2,6,6-トリメチルシクロヘキサ-1-エン-1-イル)-2-ブタノン、及び3-(ドデシルチオ)-5-イソプロペニル-2-メチルシクロヘキサノン、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、イオウ含有プロ香料化合物と、
金属イオン制御剤を含み、
前記イオウ含有プロ香料化合物は、組成物の0.0001重量%~5重量%存在する、布地柔軟仕上げ剤組成物。」
ウ 本件発明1について
(ア)本件発明1と甲2発明を対比する。
甲2発明の「布地柔軟仕上げ剤活性物質」、「金属イオン制御剤」、「布地柔軟仕上げ剤組成物」は、それぞれ、本件発明1の「(A)成分」、「(C)成分」、「液体柔軟剤組成物」に相当する。
また、甲2発明の「イオウ含有プロ香料化合物」は、本件特許明細書等において(B)成分として例示される「3-(ドデシルチオ)-1-(2,6,6-トリメチルシクロヘキサ-3-エン-1-イル)-1-ブタノン、4-(ドデシルチオ)-4-(2,6,6-トリメチルシクロヘキサ-2-エン1-イル)-2-ブタノン、4-(ドデシルチオ)-4-(2,6,6-トリメチルシクロヘキサ-1-エン-1-イル)-2-ブタノン、及び3-(ドデシルチオ)-5-イソプロペニル-2-メチルシクロヘキサノン」を含み得るものであるから、本件発明1の「(B)成分」に相当する。
そうすると、両発明は、
「液体柔軟剤組成物であって、
下記(A)~(C)成分:
(A)エステル基(-COO-)及び/又はアミド基(-NHCO-)で分断されていてもよい、炭素数10~26の炭化水素基を分子内に1~3個有するアミン化合物、その塩及びその4級化物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物、
(B)硫黄含有香料前駆体、並びに、
(C)金属捕捉剤、
を含有し、
(B)成分が、一般式(B-1)で表される少なくとも1種の化合物である、液体柔軟剤組成物。
Y-S-G-Q (B-1)
〔式中、
Yは、以下に示した基(Y-1)~(Y-7)からなる群より選択される基又はその異性体を表し、
[図:0001386086000020.jpg]
((Y-1)~(Y-7)の各式中、波線はY-S結合の位置を表し、点線は単結合又は二重結合の位置を表す)、
Sは、硫黄原子を表し、
Gは、2~15個の炭素原子を有する直鎖状又は分枝鎖状のアルキル基又はアルケニル基から誘導される2価又は3価の基を表し(前記2価又は3価の基は、場合により-OR11、-NR112、-COOR11及びR11基(各基中、R11は、水素原子又はC1~C6アルキル基又はアルケニル基を表す)からなる群から選択される1つ以上の基で置換されていてもよい)、
Qは、水素原子、-S-Y基又は-NR12-Y基(各基中、Yは上記のように規定され、且つ、R12が水素原子又はメチル基である)を表す。〕」である点で一致し、以下の点で相違する。
《相違点2》
本件発明1では、(B)成分たる硫黄含有香料前駆体、(C)成分たる金属捕捉剤の量がそれぞれ液体柔軟剤組成物の総質量に対して0.01~0.2質量%、0.1~0.4質量%であり、かつ、(C)成分に対する(B)成分の質量比((B)/(C))が0.1~2であるのに対して、甲2発明では、硫黄含有香料前駆体(イオウ含有プロ香料化合物)の量が液体柔軟剤組成物(布地柔軟仕上げ剤組成物)に対して0.0001重量%~5重量%である点。
(イ)この相違点2について検討する。
本件発明1は、相違点2に係る発明特定事項、すなわち、(B)成分たる硫黄含有香料前駆体、(C)成分たる金属捕捉剤の液体柔軟剤組成物の総質量に対する量を限定した上で、さらに両者の質量比(B)/(C)を限定してなるもので、そうした事項を含むことによって、硫黄様異臭の発生が抑制されつつ、残香性、凍結復元性に優れる、といった効果をもたらすものである。
これに対して、甲2発明は、それを開示する甲2の記載全体からすると、広範な温度範囲にわたっての物理的安定性が考慮されたものであるものの、特に残香性、硫黄様異臭の発生の抑制に対応したものではない。
甲8~甲10は、柔軟剤組成物に金属イオンを捕捉するキレート剤を含有させることを開示するものであって、総質量に対するその含有量についても開示しているが、それらの証拠を考慮しても、甲2発明において、液体柔軟剤組成物(布地柔軟仕上げ剤組成物)に対して0.0001重量%~5重量%とされている硫黄含有香料前駆体(イオウ含有プロ香料化合物)の量を0.01~0.2質量%の範囲に限定した上で、金属捕捉剤(金属イオン制御剤)の量を液体柔軟剤組成物(布地柔軟仕上げ剤組成物)に対して0.1~2に限定すること、さらに、金属捕捉剤(金属イオン制御剤)に対する硫黄含有香料前駆体(イオウ含有プロ香料化合物)の質量比を0.1~2にすることの全てを満たすものとすることは、当業者が容易に想到し得たことではない
そして、本件発明1は、既に述べたように、相違点2に係る発明特定事項を含むことによって、硫黄様異臭の発生が抑制されつつ、残香性、凍結復元性に優れる、といった効果をもたらすものであって、かかる効果は、甲2発明からすると異質なものというべきである。
(ウ)したがって、相違点2は実質的なものであり、本件発明1は甲2発明ではない。また、相違点2に係る本件発明1の発明特定事項は、甲2発明において当業者が容易に採用し得たものとはいえず、本件発明1は、甲2発明に基づいて当業者が容易に発明し得たものではない。
エ 本件発明2~6、8、9について
前記(2)エにおいて、本件発明2に対する甲1発明についての判断した理由と同様に、本件発明2は甲2発明ではなく、甲2発明に基づいて当業者が容易に発明し得たものではない。
本件発明3~6、8、9は、いずれも、本件発明2の発明特定事項を全て含んだ上で他の発明特定事項が付加されたものである。
そうすると、本件発明2と同様に、本件発明3~6、8、9のいずれも甲2発明ではなく、甲2発明に基づいて当業者が容易に発明し得たものではない。
オ 小活
よって、甲2を主引用例とする新規性・進歩性に係る申立理由には、理由がない。
(4)サポート要件に係る申立理由について
ア 上記2(2)で述べたように、本件特許に係る各発明が解決しようとする課題は、本件特許明細書等の記載全体からみて、液体柔軟剤組成物として、残香性に優れたものであって、硫黄様異臭の発生が抑制されかつ凍結復元性に優れたものを得ることであり、その課題の解決は、柔軟基剤たる(A)成分及び硫黄含有香料前駆体たる(B)成分を含有した液体柔軟剤組成物に対して、金属捕捉剤たる(C)成分を含有させることにし、それら(B)成分、(C)成分をそれぞれ所定の含有量となるようにすることで成されるものと理解される。
そして、上述のように、本件発明1~6、8、9は、それらの発明特定事項によって、所与の課題が解決できると理解されるものである。
イ 申立人は、特許異議申立書において、
(ア)香気評価、香りの持続性評価のためのパネラーの選定、評価基準が明らかでないこと(「4-2-2」参照)、
(イ)実施例・比較例で用いられているB-1及びB-2はYの部分がY-1かY-2という互いに類似する構成単位のみであって、その効果を(B-1)全体にまで一般化・抽象化し得ず、また、硫黄様異臭のマスキング及び香りの持続性に重要な役割を持つ香料組成物の配合やその割合についての特定を欠いていること(「4-2-3」参照)、
(ウ)実施例に用いられた特殊なカチオン系界面活性剤、金属捕捉剤についてのみ効果が認められるものであって、本件発明の範囲まで一般化・抽象化しえないこと(「4-2-4」「4-2-5」参照)、
(エ)pH条件が規定されていないことから、本件特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件、いわゆるサポート要件を満たさない旨主張している。
ウ そこで、主張(ア)についてみると、本件特許明細書等には、香気評価、香りの持続性評価につき5名のパネラーによりいわゆる官能評価を行ったことが記載されているが、この種の官能評価の手法としてとくに問題とすべき事項は見当たらず、上記(ア)に係る主張は採用できない。
また、主張(イ)~(エ)についても、上記2.(2)で述べたことからすれば、本件発明1~6、8、9は、さらに発明特定事項を限定せずとも、発明の課題を解決し得るものというべきであるから、上記(イ)~(エ)に係る主張も採用できない。
エ よって、サポート要件に係る申立理由には、理由がない。
第5 むすび
以上のとおりであるから、請求項1~6、8、9に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては取り消すことはできない。
また、他に請求項1~6、8、9に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
そして、本件訂正請求に係る訂正により、請求項7及び10に係る特許は削除されたため、請求項7及び10に対して申立人がした特許異議の申立ては、不適法であって、その補正をすることができないものであることから、特許法第120条の8第1項で準用する特許法第135条の規定により、却下すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
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2020-700585