2020-700796
衣料用液体洗浄剤
- 審判番号
- 2020-700796
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2017-538104外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 登録番号
- 6681404
- 請求日
- 2020年10月15日
- 審決日
- 2022年03月01日
- 公報発行日
- 2022年05月27日
- 結論
- 訂正認容
- 分類
- P1651.113-YAA(C11D) / P1651.121-YAA(C11D) / P1651.537-YAA(C11D)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第2項第1号
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 15項目
第1 手続の経緯
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特許第6681404号の請求項1~5の発明に係る特許についての出願は、平成28年9月1日を国際出願日(優先権主張 平成27年9月3日 (JP)日本国)とするものであって、令和2年3月25日にその特許権の設定登録がなされ、同年4月15日にその特許掲載公報が発行されたものである。
その後、その特許について、令和2年10月15日に森田弘潤(以下、「特許異議申立人」という。)により、特許異議の申立てがなされた。
その後の経緯は、以下のとおりである。
令和3年 1月27日付け 取消理由通知
同年 4月 1日 訂正請求書及び意見書の提出(特許権者)
同年 同月13日付け 訂正請求があった旨の通知
同年 5月17日 意見書の提出(特許異議申立人)
同年 8月 4日付け 取消理由通知(決定の予告)
同年10月 8日 訂正請求書及び意見書の提出(特許権者)
同年 同月13日付け 訂正請求があった旨の通知
同年11月15日 意見書の提出(特許異議申立人)
なお、令和3年4月1日に提出された訂正請求書による訂正の請求は、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。
第2 訂正の適否についての判断
1 請求の趣旨について
令和3年10月8日付けの訂正請求(以下、「本件訂正請求」といい、その訂正の内容を以下「本件訂正」という。)の請求の趣旨は、「特許第6681404号の特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~5について訂正することを求める。」というものである。
2 本件訂正
本件訂正請求の内容は、特許請求の範囲の訂正に係る以下の訂正事項1からなるものである。
訂正事項1
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1に
「 下記成分(A)、成分(B)、成分(C)、成分(D)、及び成分(E)を含む衣料用液体洗浄剤であって(ただし、アルキル多糖界面活性剤を含まない)、前記成分(A)の含有量が、衣料用液体洗浄剤の総質量に対し、20~50質量%であり、前記成分(E)の含有量が、衣料用液体洗浄剤の総質量に対し、15~45質量%であり、成分(A)/[成分(B)+成分(C)]で表される質量比が0.5~3.5であり、続きを表示(全14行)成分(B)/成分(C)で表される質量比が90/10~10/90であり、前記成分(A)が一般式(I)又は(II)で表されるノニオン界面活性剤であり、R1-C(=O)O-[(EO)s/(PO)t]-(EO)u-R2・・・(I)R3-O-[(EO)v/(PO)w]-(EO)x-H・・・(II)(式(I)中、R1は炭素数7~22の炭化水素基であり、R2は炭素数1~6のアルキル基であり、sはEOの平均繰り返し数を表し、6~20の数であり、tはPOの平均繰り返し数を表し、0~6の数であり、uはEOの平均繰り返し数を表し、0~20の数であり、EOはオキシエチレン基を表し、POはオキシプロピレン基を表す。式(II)中、R3は炭素数7~22の分岐鎖の炭化水素であり、酸素原子と結合する炭素原子は2級炭素原子であり、vはEOの平均繰り返し数を表し、3~20の数であり、wはPOの平均繰り返し数を表し、0~6の数であり、xはEOの平均繰り返し数を表し、0~20の数であり、EOはオキシエチレン基を表し、POはオキシプロピレン基を表す。)。前記成分(B)がポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸又はその塩であり、前記成分(C)が直鎖アルキルベンゼンスルホン酸又はその塩であり、前記成分(D)が酵素であり、前記成分(E)が水である、衣料用液体洗浄剤。」
と記載されているのを、
「 下記成分(A)、成分(B)、成分(C)、成分(D)、及び成分(E)を含む衣料用液体洗浄剤であって(ただし、アルキル多糖界面活性剤を含まない。また、ポリ不飽和カルボン酸又はそれと共重合し得る単量体とのコポリマーを主鎖とし、ポリアルキレンオキシドを側鎖とする高分子化合物(但しカルボン酸は塩になっていてもよい)を含まない。)、前記成分(A)の含有量が、衣料用液体洗浄剤の総質量に対し、20~38質量%であり、前記成分(C)の含有量が、衣料用液体洗浄剤の総質量に対し、2~18質量%であり、前記成分(E)の含有量が、衣料用液体洗浄剤の総質量に対し、34.4395~45質量%であり、続きを表示(全15行)成分(A)/[成分(B)+成分(C)]で表される質量比が0.5~3.5であり、成分(B)/成分(C)で表される質量比が90/10~10/90であり、前記成分(A)が一般式(I)又は(II)で表されるノニオン界面活性剤であり、R1-C(=O)O-[(EO)s/(PO)t]-(EO)u-R2・・・(I)R3-O-[(EO)v/(PO)w]-(EO)x-H・・・(II)(式(I)中、R1は炭素数7~22の炭化水素基であり、R2は炭素数1~6のアルキル基であり、sはEOの平均繰り返し数を表し、6~20の数であり、tはPOの平均繰り返し数を表し、0~6の数であり、uはEOの平均繰り返し数を表し、0~20の数であり、EOはオキシエチレン基を表し、POはオキシプロピレン基を表す。式(II)中、R3は炭素数7~22の分岐鎖の炭化水素であり、酸素原子と結合する炭素原子は2級炭素原子であり、vはEOの平均繰り返し数を表し、3~20の数であり、wはPOの平均繰り返し数を表し、0であり、xはEOの平均繰り返し数を表し、0~20の数であり、EOはオキシエチレン基を表し、POはオキシプロピレン基を表す。)。前記成分(B)がポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸又はその塩であり、前記成分(C)が直鎖アルキルベンゼンスルホン酸又はその塩であり、前記成分(D)が酵素であり、前記成分(E)が水である、衣料用液体洗浄剤。」
に訂正する。
また、請求項1の記載を引用する請求項2~5も同様に訂正する。
3 訂正の適否
(1) 一群の請求項について
本件訂正は、本件訂正前の請求項1の記載を訂正するとともに、請求項2~5も同様に訂正することを請求するもの(訂正事項1)であり、請求項2~5はそれぞれ請求項1を直接又は間接的に引用しているものであるから、本件訂正は、一群の請求項1~5について請求されている。
(2) 訂正の目的の適否、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項1は、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1における、
「衣料用液体洗浄剤であって(ただし、アルキル多糖界面活性剤を含まない)」について、「衣料用液体洗浄剤であって(ただし、アルキル多糖界面活性剤を含まない。また、ポリ不飽和カルボン酸又はそれと共重合し得る単量体とのコポリマーを主鎖とし、ポリアルキレンオキシドを側鎖とする高分子化合物(但しカルボン酸は塩になっていてもよい)を含まない。)」と限定すること、
「衣料用液体洗浄剤の総質量」に対する「成分(A)の含有量」について、「20~50質量%であり」とされていたものを、「20~38質量%であり」に限定すること、
「衣料用液体洗浄剤の総質量」に対する「成分(C)の含有量」を新たに特定するとともに、その範囲を「2~18質量%であり」と限定すること、
「衣料用液体洗浄剤の総質量」に対する「成分(E)の含有量」について、「20~45質量%であり」とされていたものを、「34.4395~45質量%であり」に限定すること、
及び、
「前記成分(A)が一般式(I)又は(II)で表されるノニオン界面活性剤であり・・式(II)中・・wはPOの平均繰り返し数を表し、0~6の数であり」について、wの値を、「0であり」と限定することを目的とするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項1は、衣料用液体洗浄剤を構成する成分について、特開2001-107094号公報に記載された発明との重複部分を除くために、「ポリ不飽和カルボン酸又はそれと共重合し得る単量体とのコポリマーを主鎖とし、ポリアルキレンオキシドを側鎖とする高分子化合物(但しカルボン酸は塩になっていてもよい)を含まない」と訂正するとともに、
願書に添付した明細書の段落【0065】の表1に記載されている実施例7において、「衣料用液体洗浄剤の総質量」に対する「成分(A)の含有量」が38質量%であることに基づいて、「成分(A)の含有量」の範囲を限定し、
また、願書に添付した明細書の段落【0066】の表2に記載されている実施例11、12において、それぞれ、「衣料用液体洗浄剤の総質量」に対する「成分(C)の含有量」が2質量%、18質量%であることに基づいて、「成分(C)の含有量」の範囲を特定し、
願書に添付した明細書の段落【0066】の表2に記載されている実施例16において、「衣料用液体洗浄剤の総質量」に対する「成分(E)の含有量」が34.4395質量%であることに基づいて、「成分(E)の含有量」の範囲の下限値を特定し、
さらに、
式(II)中のwの値を、本件特許の明細書の発明の詳細な説明の段落【0015】の「式(II)中、wは、POの平均繰り返し数を表す数である。wは0~6の数であり、0~3が好ましく、0がより好ましい。」という記載に基づき、「0~6」から「0」に限定するものである。
したがって、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質的に特許請求の範囲を拡張・変更するものでもないことも明らかであるから、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5、6項の規定に適合する。
(3) 小括
以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項第1号に掲げる事項を目的とするものであり、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第5、6項の規定に適合するものである。
したがって、本件特許の特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~5について訂正することを認める。
第3 本件発明
上記第2のとおり、本件訂正請求は認められたので、本件特許の特許請求の範囲の請求項1~5に係る発明(以下、項番にしたがって「本件発明1」などといい、まとめて、「本件発明」ともいう。)は、その特許請求の範囲の請求項1~5に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。
「【請求項1】下記成分(A)、成分(B)、成分(C)、成分(D)、及び成分(E)を含む衣料用液体洗浄剤であって(ただし、アルキル多糖界面活性剤を含まない。また、ポリ不飽和カルボン酸又はそれと共重合し得る単量体とのコポリマーを主鎖とし、ポリアルキレンオキシドを側鎖とする高分子化合物(但しカルボン酸は塩になっていてもよい)を含まない。)、前記成分(A)の含有量が、衣料用液体洗浄剤の総質量に対し、20~38質量%であり、前記成分(C)の含有量が、衣料用液体洗浄剤の総質量に対し、2~18質量%であり、続きを表示(全25行)前記成分(E)の含有量が、衣料用液体洗浄剤の総質量に対し、34.4395~45質量%であり、成分(A)/[成分(B)+成分(C)]で表される質量比が0.5~3.5であり、成分(B)/成分(C)で表される質量比が90/10~10/90であり、前記成分(A)が一般式(I)又は(II)で表されるノニオン界面活性剤であり、R1-C(=O)O-[(EO)s/(PO)t]-(EO)u-R2・・・(I)R3-O-[(EO)v/(PO)w]-(EO)x-H・・・(II)(式(I)中、R1は炭素数7~22の炭化水素基であり、R2は炭素数1~6のアルキル基であり、sはEOの平均繰り返し数を表し、6~20の数であり、tはPOの平均繰り返し数を表し、0~6の数であり、uはEOの平均繰り返し数を表し、0~20の数であり、EOはオキシエチレン基を表し、POはオキシプロピレン基を表す。式(II)中、R3は炭素数7~22の分岐鎖の炭化水素であり、酸素原子と結合する炭素原子は2級炭素原子であり、vはEOの平均繰り返し数を表し、3~20の数であり、wはPOの平均繰り返し数を表し、0であり、xはEOの平均繰り返し数を表し、0~20の数であり、EOはオキシエチレン基を表し、POはオキシプロピレン基を表す。)。前記成分(B)がポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸又はその塩であり、前記成分(C)が直鎖アルキルベンゼンスルホン酸又はその塩であり、前記成分(D)が酵素であり、前記成分(E)が水である、衣料用液体洗浄剤。【請求項2】さらに、他のノニオン界面活性剤(ただし、前記成分(A)を除く)を含有する、請求項1に記載の衣料用液体洗浄剤。【請求項3】前記他のノニオン界面活性剤が、第1級アルコールエトキシレートであり、前記成分(A)と、前記第1級アルコールエトキシレートとの質量比(成分(A))/(第1級アルコールエトキシレート)が、3/7~10/1である請求項2に記載の衣料用液体洗浄剤。【請求項4】前記成分(B)及び前記成分(C)の合計含有量が、衣料用液体洗浄剤の総質量に対し、10~20質量%である、請求項1~3のいずれか一項に記載の衣料用液体洗浄剤。【請求項5】前記成分(B)のオキシアルキレン基がオキシエチレン基を含み、前記オキシエチレン基の平均繰り返し数が0.5~1.5である、請求項1~4のいずれか一項に記載の衣料用液体洗浄剤。」
第4 当審において通知した取消理由
当審が、令和3年8月4日付け取消理由通知(決定の予告)において通知した取消理由は、下記の取消理由1(サポート要件)、及び、取消理由4(明確性要件)であり、また、令和3年1月27日付けの取消理由通知において通知した、下記の取消理由2(新規性)、取消理由3(進歩性)のうち、取消理由3(進歩性)が解消していないとの判断を含むものである。また、下記取消理由2、3は、刊行物等として特開2001-107094号公報(特許異議申立人森田弘潤が提出した甲第1号証)を引用するものである。
取消理由1(サポート要件)
本件特許の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないから、本件特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してなされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
取消理由2(新規性)
本件特許の特許請求の範囲の請求項1~5に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであり、本件特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
取消理由3(進歩性)
本件特許の特許請求の範囲の請求項1~5に係る発明は、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本件特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
取消理由4(明確性要件)
本件特許の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないから、本件特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない出願に対してなされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
取消理由2、3で引用する刊行物等
特開2001-107094号公報(特許異議申立人森田弘潤が提出した甲第1号証)
第5 当審の判断
1 取消理由1(サポート要件)について
(1) 取消理由1の概要
取消理由1は、要するに、本件発明において、発明の詳細な説明の記載に基づき充分な液安定性が得られると理解できる範囲は、成分(A)の含有割合が38質量%を超えない範囲であり、成分(E)の含有割合が34.4395質量%未満とならない範囲であり、かつ、成分(C)の含有割合が18質量%を超えない範囲である態様に限られると認められるところ、本件発明は、上記範囲外の態様、例えば、成分(A)の含有割合がその最大値(50質量%)近傍であり、かつ、成分(E)の含有割合がその最小値(15質量%)近傍であり、さらに、成分(C)の含有割合が概ね31.5質量%である態様を含むものであり、かつ、当該態様においては充分な液安定性を得られない蓋然性が高いと言わざるをえないから、本件特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してなされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである、というものである。
(2) 検討手法
特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らして当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
(3) 発明の詳細な説明の記載
本件特許の願書に添付された明細書の発明の詳細な説明(以下、「発明の詳細な説明」という。)には、以下の記載がある。なお、下線は当審が付した。
「【0003】濃縮タイプの衣料用液体洗浄剤では、洗浄成分である界面活性剤の濃度を増加させると、粘度の著しい増大(ゲル化)や流動性の低下など、液安定性の低下を生じやすいという問題がある。・・・【発明が解決しようとする課題】【0008】本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、液安定性を有し、かつ、再汚染抑制効果、及び酵素安定性に優れた衣料用液体洗浄剤の提供を目的とする。」
「【0013】<成分(A)>成分(A)は一般式(I)又は(II)で表されるノニオン界面活性剤である。・・・【0022】成分(A)は、1種であってもよく2種以上であってもよい。衣料用液体洗浄剤中の成分(A)の含有量は、衣料用液体洗浄剤の総質量に対し、5~80質量%が好ましく、10~70質量%がより好ましく、15~60質量%がさらに好ましく、20~50質量%が特に好ましく、25~35質量%が最も好ましい。上記下限値以上であれば、衣料用液体洗浄剤の洗浄力がより向上しやすくなる。上記上限値以下であれば、衣料用液体洗浄剤の液安定性がより向上しやすくなる。」
「<成分(C)>成分(C)は、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸又はその塩である。直鎖アルキルベンゼンスルホン酸又はその塩としては、直鎖アルキル基の炭素数が8~16のものが好ましく、炭素数10~14のものがより好ましい。上記範囲内であれば再汚染防止効果の向上を図ることができる。具体的は、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基が挙げられる。塩としては、ナトリウム、カリウム等とのアルカリ金属塩、マグネシウム等とのアルカリ土類金属塩、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン等とのアルカノールアミン塩等が挙げられる。成分(C)としては、市販品を用いてもよいし、公知の合成方法で製造してもよい。公知の製造方法としては、アルキルベンゼンを無水硫酸でスルホン化する方法により製造することができる。成分(C)は、1種であってもよく2種以上であってもよい。衣料用液体洗浄剤中の成分(C)の含有量は、衣料用液体洗浄剤の総質量に対し、1~30質量%が好ましく、2~15質量%がより好ましく、5~12質量%が特に好ましい。上記下限値以上であれば、再汚染防止効果がより向上しやすくなる。上記上限値以下であれば、液安定性がより向上しやすくなる。」
「【0032】<成分(E)>成分(E)の水としては、例えば精製水、蒸留水、イオン交換水、純水、超純水、水道水などが挙げられる。成分(E)は、1種であってもよく2種以上であってもよい。衣料用液体洗浄剤中の成分(E)の含有量は、衣料用液体洗浄剤の総質量に対し、10~50質量%であることが好ましく、より好ましくは15~50質量%であり、特に好ましくは20~45質量%である。成分(E)の含有量が前記範囲内であれば、洗浄性能を維持しつつ、成分(D)の安定化を十分に図ることができる。特に、成分(E)の含有量が20~45質量%の範囲内であれば、成分(A)が高濃度で含有されることになるので、衣料用液体洗浄剤を濃縮タイプの洗浄剤として好適に用いることができると共に、成分(D)による衣料用液体洗浄剤の濁りや分離を低減することができる。なお、成分(E)の含有量は、衣料用液体洗浄剤中の全水分量を意味し、水単独で配合される量と、原料(各成分)が溶液として配合される際の前記溶液中の水の量との合計として記す。成分(A)~(E)の含有量の合計は、衣料用液体洗浄剤の総質量に対して100質量%を超えない。」
「【実施例】【0045】以下に実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。本実施例において「%」は特に断りがない限り「質量%」を示す。各例の衣料用液体洗浄剤の組成を表1及び2に示す。続きを表示(全22行)・・・【0053】<実施例1~16、比較例1~5>表1及び2に示す組成に従い、成分(E)に、成分(A)~(D)を添加し、任意成分と混合して、各例の衣料用液体洗浄剤を得た。得られた各例の衣料用液体洗浄剤の組成(配合成分、含有量(質量%))を表1及び2に示す。尚、特に断りがない限り質量%は純分を示す。表中、空欄の配合成分がある場合、その配合成分は配合されていない。【0054】<衣料用液体洗浄剤の評価方法>各例の衣料用液体洗浄剤について、酵素安定性、再汚染防止効果、液安定性を以下のように評価した。評価結果を、表1及び2に示す。・・・【0065】【表1】[図:0001384029000001.jpg]【0066】【表2】[図:0001384029000002.jpg]」
(4) 本件発明が解決しようとする課題
本件発明が解決しようとする課題は、発明の詳細な説明(特に段落【0008】)の記載に基づいて、「液安定性を有し、かつ、再汚染抑制効果、及び酵素安定性に優れた衣料用液体洗浄剤」を提供することであると認められる。
(5) 取消理由1についての判断
本件発明1~5をまとめて検討する。
本件発明の衣料用液体洗浄剤は、いずれも、成分(A)の含有割合について「20~38質量%」と数値範囲が特定され、成分(C)の含有割合について「2~18質量%」と数値範囲が特定され、さらに、成分(E)の含有割合について「34.4395~45質量%」と数値範囲が特定されているものである。
また、成分(A)の数値範囲について、発明の詳細な説明には、「成分(A)は、1種であってもよく2種以上であってもよい。衣料用液体洗浄剤中の成分(A)の含有量は、衣料用液体洗浄剤の総質量に対し、5~80質量%が好ましく、10~70質量%がより好ましく、15~60質量%がさらに好ましく、20~50質量%が特に好ましく、25~35質量%が最も好ましい。上記下限値以上であれば、衣料用液体洗浄剤の洗浄力がより向上しやすくなる。上記上限値以下であれば、衣料用液体洗浄剤の液安定性がより向上しやすくなる。」(段落【0022】)と記載されているとともに、実施例として、成分(A)の含有割合が「20~38質量%」であるものが記載されている。
また、発明の詳細な説明には、成分(C)の含有割合について、5~12質量%が特に好ましいことやその上限値以下であれば液安定性が向上しやすいことが記載されている(段落【0025】)とともに、実施例として、成分(C)の含有割合が「2~18質量%」であるものが記載されている。
さらに、発明の詳細な説明には、成分(E)の含有割合について、「濃縮タイプの衣料用液体洗浄剤では、洗浄成分である界面活性剤の濃度を増加させると、粘度の著しい増大(ゲル化)や流動性の低下など、液安定性の低下を生じやすいという問題がある。」(段落【0003】)、「成分(E)は、1種であってもよく2種以上であってもよい。衣料用液体洗浄剤中の成分(E)の含有量は、衣料用液体洗浄剤の総質量に対し、10~50質量%であることが好ましく、より好ましくは15~50質量%であり、特に好ましくは20~45質量%である。成分(E)の含有量が前記範囲内であれば、洗浄性能を維持しつつ、成分(D)の安定化を十分に図ることができる。特に、成分(E)の含有量が20~45質量%の範囲内であれば、成分(A)が高濃度で含有されることになるので、衣料用液体洗浄剤を濃縮タイプの洗浄剤として好適に用いることができると共に、成分(D)による衣料用液体洗浄剤の濁りや分離を低減することができる。」(段落【0032】)と記載されているとともに、実施例として、成分(E)の含有割合が「34.4395~36.4495質量%」であるものが記載されている。
以上によれば、発明の詳細な説明の記載に基づいて、液安定性は、少なくとも、成分(A)、成分(C)、及び、成分(E)の含有割合の影響を受けるものであることが理解できるとともに、それらの数値範囲について実施例による具体的な裏付けがなされていることが理解できる。
また、再汚染抑制効果、及び酵素安定性についても、実施例による具体的な裏付けがなされていることが理解できる。
(6) 特許異議申立人の主張について
特許異議申立人は、令和3年11月15日提出の意見書において、
成分(A)の種類に関して実施例1~3を比較すると、A-1を30質量%配合している実施例1では、酵素安定性が90%、再汚染防止効果のうち綿布のΔZが2.5、PE布のΔZが1であるのに対し、A-3を30質量%配合している実施例3では、酵素安定性が83%、再汚染防止効果のうち綿布のΔZが4.5、PE布のΔZが2.5とそれぞれ大幅に悪化しており、成分(A)の含有量に関して実施例1、7~9を比較すると、A-1の含有量を38質量%に増やした実施例7では、酵素安定性が80%、再汚染防止効果のうち綿布のΔZが4、PE布のΔZが2と大幅に悪化しており、A-1の含有量を38質量%に増やした実施例8、9では、綿布のΔZ、PE布のΔZが更に悪化しているから、成分(A)としてA-3を38質量%配合したような場合には実施例7~9よりもさらにその値が悪化することが合理的に予想でき(意見書4頁下から3行~5頁16行)、
成分(E)の配合量に関して、実施例の裏付けがあるのは34.4395~36.4495質量%の場合に限られていること、成分(E)の配合量が多いということは他の配合量が少ないことと表裏の関係にあり(意見書6頁12行~7頁1行)、
成分(C)の配合量が、その上限(18質量%)及び下限(2質量%)である実施例11及び実施例12を他の実施例比較例と比べると、実施例11は、プロテアーゼ活性残存率(%)の評価が61%となっており、「×:60%未満」に程近い値となっているから、例えば成分(A)を「A-3:ソフタノール」に変更した場合や、その配合量を上限である38質量%に近づけた場合には、プロテーゼ活性残存率(%)がさらに低下し「×:60%未満」となることが合理的に推測され、また、実施例12の液安定性は、5℃の恒温槽内に7日間静置した程度で「△:ガラス瓶の底部に沈殿物質が認められるが、ガラス瓶を軽く振ると、その沈殿物質は消失(溶解)する」というものであって、7日間程度で沈殿が生ずるような液体洗浄剤が「液安定性を有し」という課題を解決することができるものであるとは到底考えられず(意見書7頁2~9頁1行)、
したがって、成分(A)の含有量の上限値を50質量%から38質量%に減縮し、成分(C)の含有量を新たに規定し、成分(E)の下限値を15質量%から34.4395質量%に減縮したとしてもなお、その課題を解決できると認識し得ない態様を含んでいる(意見書9頁2~7行)。
と主張している。
しかしながら、実施例7~9の酵素安定性、及び、再汚染防止効果は、いずれも、◎であるから、仮に、成分(A)としてA-3を38質量%配合したような場合にはその値が◎よりも悪化するとしても、○や△である可能性もあり、必ず×になる(課題を解決することができない)とまではいえない。
また、そもそも、実施例1~3は、成分(A)に該当する物質をいずれも(多少の効果の差があるとしても)区別することなく使用することができることを裏付けるためのものであると解することが合理的であるし、明細書中に、成分(A)をA-1からA-3に変更すると必ずプロテアーゼ活性残存率(%)の評価が低くなる旨の説明があるとか、そのような技術常識が存在するわけでもない。そうすると、実施例1と実施例3のわずか1例のみのデータに基づいて、成分(A)をA-1からA-3に変更すると、必ず、プロテアーゼ活性残存率(%)の評価が低くなると結論づけることはできない。
また、発明の詳細な説明には「成分(A)/[成分(B)+成分(C)]で表される質量比は、0.5~3.5であり、0.5~3であることが好ましく、1~2.5であることがさらに好ましい。上記下限値以上であれば、成分(D)の安定性がより向上しやすくなる。」(段落【0027】)と記載されているから、実施例11におけるA-1の配合量(30質量%)を上限である38質量%に近づけるような変更をすると(この質量比が大きくなるので)成分(D)の安定性がより向上する(プロテアーゼ活性残存率(%)が向上する)とも予想できる。また、A-1の配合量を増やす(38質量%に近づける)ためには、代わりに成分(B)や成分(C)の配合量を減らす必要があり、このような変更も上記質量比を大きくするから、成分(D)の安定性がより向上する(プロテアーゼ活性残存率(%)が向上する)と予想できる。
そうすると、実施例11におけるA-1の配合量を増やした場合に、必ず、プロテアーゼ活性残存率(%)が劣化するとはいえないし、仮に劣化するとしてもその程度は不明と言うほかなく、必ず×になる(課題を解決することができない)とまではいえない。
また、実施例12について、5℃の恒温槽内に7日間静置した程度で沈殿が生ずるような液体洗浄剤が「液安定性を有し」という課題を解決することができるものであるとは到底考えられない旨の主張は、本件特許明細書において、このような判定方法で課題を解決することができたか否かを判定していることを無視した独自の見解に過ぎない。
そうすると、異議申立人の主張は、採用できるものではない。
(7) 小括
以上のとおりであるから、本件発明1~5は、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲を超えて特許を請求するものであるとはいえない。
2 取消理由4(明確性要件)について
取消理由4は、要するに、本件発明1~5が、その発明を特定するための事項として「平均分子量」を含むものであるところ、一般に「平均分子量」には数平均分子量、重量平均分子量、Z平均分子量、粘度平均分子量など複数の定義があるため、平均分子量の定義が明確であるとはいえず、したがって、本件発明は明確ではない、というものである。
しかしながら、上記第2のとおり本件訂正は認められるものであり、上記第3のとおり本件発明はその発明を特定するための事項として「平均分子量」を含まないものとなった。
したがって、本件発明1~5は、その特許請求の範囲の記載が明確ではないとはいえない。
3 取消理由2(新規性)、取消理由3(進歩性)について
(1) 取消理由2、3の概要
取消理由2、3は、要するに、特開2001-107094号公報(以下、「甲1」という。)には、その実施例4で製造した「本発明品4」に係る液体洗剤組成物の記載に基づき、以下の甲1発明が記載されていると認められるところ、本件発明は、甲1発明と同一であるか、または、当業者であれば、甲1発明に基いて本件発明を容易に想到し得ると認められるから、本件発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、または、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本件特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである、というものである。
<甲1発明>
「下記の成分からなり、その合計が100重量部である液体洗剤組成物非イオン界面活性剤(アルキル基の炭素数12、EO平均付加モル数8、平均PO付加モル数2のポリオキシエチレンアルキルエーテル)30重量部LAS-Na(炭素数10~14の直鎖アルキルベンゼン硫酸ナトリウム続きを表示(全16行)10重量部ES-Na(ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム(平均炭素数10~12、平均EO付加モル数2.5)) 3重量部脂肪酸 1重量部高分子化合物(1) 5重量部モノエタノールアミン 4重量部エタノール 3重量部プロピレングリコール 3重量部リポラーゼ100L 0.5重量部チノパールCBS-X 0.2重量部亜硫酸ナトリウム 0.1重量部香料 微量水 残部」
(2) 甲1に記載されている事項
特開2001-107094号公報(以下、「甲1」という。)には、以下の事項が記載されている。
「【請求項1】 (a)界面活性剤、(b)ポリ不飽和カルボン酸又はそれと共重合し得る単量体とのコポリマーを主鎖とし、ポリアルキレンオキシドを側鎖とする平均分子量2千~7万の高分子化合物(但しカルボン酸は塩になっていてもよい)を含有する液体洗剤組成物。」
「【0002】【従来の技術】液体洗剤は粉末洗剤に比べて水への溶解性に優れ、汚れた部分に直接塗布できるという利点を有し、また製造工程において、乾燥設備等の複雑な装置を必要としない等の長所を有する。しかしながら、粉末洗剤にはない相分離、沈殿又は濁りといった安定性の問題があり、・・・粉末洗剤に比較して、充分な量のビルダーを配合することは難しく、泥汚れ洗浄性能及び再付着防止性能の点で十分とは言えなかった。【0003】一方、最近の液体洗剤は、界面活性剤濃度を増加し、系内の水分量を少なくすることで、標準使用量を少なくしたコンパクト化の試みがなされている。しかしながら、このような濃厚系の液体洗剤は、従来以上に液体洗剤自体の配合組成に注意する必要があり、ビルダーの多量の配合は困難であった。【0004】【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、安定性を損なうことなく、泥汚れ洗浄性能と再付着防止性能に優れた液体洗剤を提供することにある。」
「【0013】(2)液体洗剤組成物(a)界面活性剤本発明の液体洗剤組成物に用いられる界面活性剤としては、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤又は両性界面活性剤の少なくとも1種以上であり、特に洗浄性能の点からポリエチレンオキシド及び/又はポリプロピレンオキシド型の非イオン界面活性剤を使用することが好ましい。とりわけ、下記(1)~(3)から選択される1種以上を主に使用することが好ましい。(1)炭素数8~16の第1級アルコールにエチレンオキサイド(以下EO)を平均5~15モル付加したポリオキシエチレンアルキルエーテル続きを表示(全15行)(2)炭素数8~16の第2級アルコールにEOを平均5~15モル付加したポリオキシエチレンアルキルエーテル(3)炭素数8~16の第1級アルコール又は第2級アルコールに平均5~15モルのEO及び平均1~5モルのプロピレンオキサイド(以下PO)を付加したポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル。EOとPOの付加順序には特に制限はなく、ブロック重合でもランダム重合でもよい。いずれの物質を使用するかは、洗剤の用途、目的及び安定性に応じて選択される。【0014】その他の非イオン界面活性剤として、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、蔗糖脂肪酸エステル類、脂肪酸グリセリンモノエステル類、脂肪酸アルカノールアミド類、ポリオキシエチレン脂肪酸アルカノールアミド類、アミンオキサイド類及びアルキルグリコシド類が挙げられる。【0015】非イオン界面活性剤は、組成物中に好ましくは1~40重量%、より好ましくは1~30重量%配合することにより、液体洗剤組成物の安定性がさらに向上する。本発明では、非イオン界面活性剤が全界面活性剤中50重量%以上を占めることが、洗浄力及び安定性の点で好ましい。非イオン界面活性剤以外の界面活性剤としては、全界面活性剤中40重量%以下、好ましくは1~30重量%の陰イオン界面活性剤を配合することができる。陰イオン界面活性剤としては、例えばスルホネート型、硫酸塩型、カルボン酸塩型等の陰イオン界面活性剤が好適に配合される。具体的には、下記(4)~(7)に示したものが好ましい。(4)平均炭素数10~20のアルキル基を有するアルキルベンゼン硫酸塩(5)平均炭素数10~20の直鎖1級もしくは2級アルコール又は分岐アルコール由来のアルキル基を有し、1分子内に平均0.5~6モルのEOを付加したアルキルエーテル硫酸塩(6)平均炭素数10~20のアルキル基又はアルケニル基を有するアルキル又はアルケニル硫酸塩(7)平均炭素数8~18の脂肪酸塩これらの陰イオン界面活性剤の対イオンとしては、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム及びエタノールアミン類等の陽イオン及びそれらの混合物からなる群から選択される。上記陰イオン界面活性剤を配合する場合は、酸型で配合し、別途アルカリ(エタノールアミン等)を添加するような方法を用いてもよい。【0016】またその他の界面活性剤として、洗剤に配合することが公知の陽イオン界面活性剤、両性界面活性剤を配合してもよい。【0017】本発明の液体洗剤組成物において、界面活性剤(a)は20~80重量%、特に30~60重量%配合されるのが好ましい。」
「【0021】【実施例】実施例1<マレイン酸/アクリル酸/アクリル酸ポリオキシアルキレンエステル共重合体(高分子化合物(1))の合成>・・・実施例4続きを表示(全22行)表1に示す各種洗剤組成物を調製し、下記の方法で保存安定性及び泥再付着防止性能を測定した。その結果を表1に示す。【0025】1)保存安定性試験・・・【0028】【表1】[図:0001384029000003.jpg]【0029】(注)・非イオン界面活性剤(1):エマルゲン120(花王株式会社)・非イオン界面活性剤(2):ソフタノール70(株式会社日本触媒)・非イオン界面活性剤(3):ノニデットR-9(シェルジャパン株式会社)・非イオン界面活性剤(4):アルキル基の炭素数12、EO平均付加モル数8、平均PO付加モル数2のポリオキシエチレンアルキルエーテル・アルキルグルコシド:式R1-(OR2)xGyにおいて、R1=炭素数8~16のアルキル基、x=0、y=1.3、G=グルコース残基のもの・LAS-Na:炭素数10~14の直鎖アルキルベンゼン硫酸ナトリウム・ES-Na:ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム(平均炭素数10~12、平均EO付加モル数2.5)・脂肪酸:ルナックL-55(花王株式会社)・デュラザイム16.0L:プロテアーゼ(ノボノルディスクバイオインダストリー株式会社)・リポラーゼ100L:リパーゼ(ノボノルディスクバイオインダストリー株式会社)・チノパールCBS-X:チバスペシャルティーケミカルス社製の蛍光染料」
(3) 甲1に記載された発明
甲1には、その実施例4で製造した「本発明品4」に係る液体洗剤組成物の記載に基づき、以下の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。なお、【表1】には配合量の単位が記載されていないが、実施例1~3の記載において重量部が使われていることを参酌すれば、実施例4においても重量部が使われていると解することが合理的である。
<甲1発明>
「下記の成分からなり、その合計が100重量部である液体洗剤組成物非イオン界面活性剤(アルキル基の炭素数12、EO平均付加モル数8、平均PO付加モル数2のポリオキシエチレンアルキルエーテル)30重量部LAS-Na(炭素数10~14の直鎖アルキルベンゼン硫酸ナトリウム続きを表示(全16行)10重量部ES-Na(ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム(平均炭素数10~12、平均EO付加モル数2.5)) 3重量部脂肪酸 1重量部高分子化合物(1) 5重量部モノエタノールアミン 4重量部エタノール 3重量部プロピレングリコール 3重量部リポラーゼ100L 0.5重量部チノパールCBS-X 0.2重量部亜硫酸ナトリウム 0.1重量部香料 微量水 残部」
(4) 取消理由3についての判断
ア 本件発明1について
(ア) 本件発明1と甲1発明の対比
甲1発明の「非イオン界面活性剤」は、ノニオン界面活性剤であるから、甲1発明の「非イオン界面活性剤 30重量部」は、本件発明1の「前記成分(A)がノニオン界面活性剤であり」及び「成分(A)の含有量が、衣料用液体洗浄剤の総質量に対し、20~38質量%であり」に相当する。
甲1発明の「ES-Na(ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム(平均炭素数10~12、平均EO付加モル数2.5))」は、本件発明1の「成分(B)がポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸又はその塩であり」に相当する。
甲1発明の「LAS-Na(炭素数10~14の直鎖アルキルベンゼン硫酸ナトリウム 10重量部」は、本件発明1の「成分(C)が直鎖アルキルベンゼンスルホン酸又はその塩であり」、及び、「成分(C)の含有量が、衣料用液体洗浄剤の総質量に対し、2~18質量%であり」に相当する。
甲1発明の「リポラーゼ100L」及び「チノパールCBS-X」は、酵素であるから、本件発明1の「成分(D)が酵素であり」に相当する。
甲1発明の「水」の含有割合の「残部」は、約40.2重量部(=100-30-10-3-1-5-4-3-3-0.5-0.2-0.1-微量)であるから、甲1発明の「水 残部」は、本件発明1の「成分(E)が水である」及び「成分(E)の含有量が、衣料用液体洗浄剤の総質量に対し、34.4395~45質量%であり」に相当する。
甲1発明の「液体洗剤組成物」は、甲1全体の記載からみて、衣料用であると認められるから、本件発明1の「衣料用液体洗浄剤」に相当する。
甲1発明は、「LAS-Na」と「ES-Na」の合計が13重量部であるのに対し、「非イオン界面活性剤」を30重量部含むものであるから、その比は2.3である。したがって、甲1発明は、本件発明1の「成分(A)/[成分(B)+成分(C)]で表される質量比が0.5~3.5であり」を充足する。
甲1発明は、「ES-Na」と「LAS-Na」の重量比が3/10(=23/77)であるから、本件発明1の「成分(B)/成分(C)で表される質量比が90/10~10/90であり、」を充足する。
甲1発明が、本件発明1の「アルキル多糖界面活性剤を含まない。」を充足することは明らかである。
以上によれば、本件発明1と甲1発明の一致点、相違点は以下のとおりである。
<一致点>
「下記成分(A)、成分(B)、成分(C)、成分(D)、及び成分(E)を含む衣料用液体洗浄剤であって(ただし、アルキル多糖界面活性剤を含まない。)、前記成分(A)の含有量が、衣料用液体洗浄剤の総質量に対し、20~38質量%であり、前記成分(C)の含有量が、衣料用液体洗浄剤の総質量に対し、2~18質量%であり、前記成分(E)の含有量が、衣料用液体洗浄剤の総質量に対し、34.4395~45質量%であり、続きを表示(全11行)成分(A)/[成分(B)+成分(C)]で表される質量比が0.5~3.5であり、成分(B)/成分(C)で表される質量比が90/10~10/90であり、前記成分(A)がノニオン界面活性剤であり、前記成分(B)がポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸又はその塩であり、前記成分(C)が直鎖アルキルベンゼンスルホン酸又はその塩であり、前記成分(D)が酵素であり、前記成分(E)が水である、衣料用液体洗浄剤。」
<相違点>
相違点1
本件発明1においては、「ポリ不飽和カルボン酸又はそれと共重合し得る単量体とのコポリマーを主鎖とし、ポリアルキレンオキシドを側鎖とする高分子化合物(但しカルボン酸は塩になっていてもよい)を含まない。」とされているのに対して、甲1発明においては、「マレイン酸/アクリル酸/アクリル酸ポリオキシアルキレンエステル共重合体(高分子化合物(1)」(以下「甲1ビルダー」という。)を含む点。
相違点2
成分(A)のノニオン界面活性剤について、本件発明1は、「一般式(I)又は(II)で表されるノニオン界面活性剤であり、
R1-C(=O)O-[(EO)s/(PO)t]-(EO)u-R2・・・(I)
R3-O-[(EO)v/(PO)w]-(EO)x-H・・・(II)
(式(I)中、R1は炭素数7~22の炭化水素基であり、R2は炭素数1~6のアルキル基であり、sはEOの平均繰り返し数を表し、6~20の数であり、tはPOの平均繰り返し数を表し、0~6の数であり、uはEOの平均繰り返し数を表し、0~20の数であり、EOはオキシエチレン基を表し、POはオキシプロピレン基を表す。
式(II)中、R3は炭素数7~22の分岐鎖の炭化水素であり、酸素原子と結合する炭素原子は2級炭素原子であり、vはEOの平均繰り返し数を表し、3~20の数であり、wはPOの平均繰り返し数を表し、0であり、xはEOの平均繰り返し数を表し、0~20の数であり、EOはオキシエチレン基を表し、POはオキシプロピレン基を表す。)。
」と特定されているのに対し、甲1発明のノニオン界面活性剤は、「アルキル基の炭素数12、EO平均付加モル数8、平均PO付加モル数2のポリオキシエチレンアルキルエーテル」である点
(イ) 相違点の検討
a 相違点1について
甲1は、泥汚れ洗浄性能や再付着防止性能を高めるためのビルダーを多量に配合した場合に液安定性が損なわれやすいという課題を解決するために、ビルダーとして、甲1ビルダーを採用したものである。そうすると、甲1発明においては甲1ビルダーは必須の成分であるといえるから、甲1ビルダーを含まない甲1発明を容易に想到するということはできない。
b 相違点2について
甲1の段落【0013】には界面活性剤について、「本発明の液体洗剤組成物に用いられる界面活性剤としては、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤又は両性界面活性剤の少なくとも1種以上であり、特に洗浄性能の点からポリエチレンオキシド及び/又はポリプロピレンオキシド型の非イオン界面活性剤を使用することが好ましい。とりわけ、下記(1)~(3)から選択される1種以上を主に使用することが好ましい。
(1)炭素数8~16の第1級アルコールにエチレンオキサイド(以下EO)を平均5~15モル付加したポリオキシエチレンアルキルエーテル
(2)炭素数8~16の第2級アルコールにEOを平均5~15モル付加したポリオキシエチレンアルキルエーテル
(3)炭素数8~16の第1級アルコール又は第2級アルコールに平均5~15モルのEO及び平均1~5モルのプロピレンオキサイド(以下PO)を付加したポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル。EOとPOの付加順序には特に制限はなく、ブロック重合でもランダム重合でもよい。いずれの物質を使用するかは、洗剤の用途、目的及び安定性に応じて選択される。
」と記載されている(下線は、当審が付した。)。
また、甲1発明は、甲1の実施例4の記載に基づき認定したものである。
そうすると、これらの記載に接した当業者は、甲1発明の非イオン界面活性剤である「アルキル基の炭素数12、EO平均付加モル数8、平均PO付加モル数2のポリオキシエチレンアルキルエーテル」が、「特に洗浄性能の点からポリエチレンオキシド及び/又はポリプロピレンオキシド型の非イオン界面活性剤を使用することが好まし」く、「とりわけ、下記(1)~(3)から選択される1種以上を主に使用することが好ましい」とされたものの中から、「いずれの物質を使用するかは、洗剤の用途、目的及び安定性に応じて選択され」たものであると理解するとともに、これを別の物質に変更した場合には実施例4において想定している「洗剤の用途、目的及び安定性」に悪影響が出る蓋然性が高いと理解する。
また、実施例4において想定している「洗剤の用途、目的及び安定性」がいかなるものであるのかが不明である以上、これに悪影響を及ぼすことなく、甲1発明の非イオン界面活性剤である「アルキル基の炭素数12、EO平均付加モル数8、平均PO付加モル数2のポリオキシエチレンアルキルエーテル」を別の物質に変更することを動機づけるような技術常識等が存在し得ないことは明らかである。
したがって、当業者が、甲1発明の非イオン界面活性剤である「アルキル基の炭素数12、EO平均付加モル数8、平均PO付加モル数2のポリオキシエチレンアルキルエーテル」を別の物質に変更することを動機づけられることはないと認められる。
(ウ) 効果について
本件発明1は、相違点1、2に係る構成を備えるものとすることにより、液安定性に優れ、かつ、再汚染防止効果、及び酵素安定性も良好であるという効果を奏するものである。
(エ) 小括
以上のとおり、本件発明1と甲1発明を対比すると相違点1、2があるから、本件発明1は甲1に記載された発明ではないし、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとも認められない。
イ 本件発明2~5について
本件発明2~5は、いずれも、本件発明1を直接又は間接的に引用し、さらに限定した発明に該当するものであるところ、上記アのとおり、本件発明1は、甲1に記載された発明ではないし、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとも認められないものである。そうすると、さらに検討するまでもなく、本件発明1と同様の理由により、本件発明2~5も甲1に記載された発明ではないし、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとも認められない。
第5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
1 特許異議申立人が申立てた理由及び提出した証拠
特許異議申立人が申立てた取消理由のうち、令和3年1月27日付けの取消理由通知、及び、同年8月4日付けの取消理由通知(決定の予告)のいずれにおいても採用しなかった、特許異議申立理由は、下記の取消理由3-1、及び、取消3-2である。また、取消理由3-1及び取消3-2は、主たる証拠を下記の甲第2号証とし、従たる証拠を下記の甲第1、3~8号証とするものである。
理由3-1(新規性)
本件特許の請求項1~5に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであり、本件特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
理由3-2(進歩性)
本件特許の特許請求の範囲の請求項1~5に係る発明は、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本件特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
異議申立人が提出した証拠
2 取消理由3-1、及び、取消3-2の検討
(1) 甲2に記載されている事項
「【0002】【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】襟袖等の皮脂汚れ及び下着の黄ばみ等の親油的な汚れ、食べこぼし汚れのひどい場合は、通常の洗濯では充分に汚れが取れなかったり、染みのまま残ったりする。このため、従来から洗剤組成物の通常使用濃度よりも高濃度な水溶液に衣料を浸漬することや、液体洗浄剤を直接塗布する、或いは温水による洗濯が行われている。」
「【0005】一方、プロテアーゼ、リパーゼ、セルラーゼ、アミラーゼ等の酵素を洗浄補助剤として洗浄剤に配合することは古くから実施されており、中でもセルラーゼは、木綿単繊維の非晶質領域に作用し、単繊維内の皮脂汚れを効果的に除去し、洗浄力を向上させることが見いだされている。しかしながら、衣料用洗剤液中で作用できるアルカリセルラーゼであっても、従来知られているもののほとんどは耐熱性が低く、衣料用洗剤に安定的に配合するには適しないものであった。【0006】従って、襟・袖口等の皮脂由来の汚れ、染み汚れに対して優れた洗浄力を持つ洗浄剤組成物、より具体的には高濃度な浸漬洗浄や、温水による洗濯に適した液体洗浄剤組成物が望まれていた。」
「【0029】本発明の液体洗浄剤組成物には、上記成分(a)に加えて、更に(b)界面活性剤、(c)ビルダー及び(d)可溶化剤を含有するのが好ましい。(b)界面活性剤としては、従来から液体洗浄剤組成物に配合することが知られている界面活性剤を使用することができる。洗浄性を高める上で界面活性剤として、再汚染防止性の点から陰イオン界面活性剤、皮脂汚れ洗浄性の点から非イオン界面活性剤を主界面活性剤として使用するのが好ましい。【0030】陰イオン界面活性剤としては、炭素数10~18のアルキル鎖を持つ直鎖アルキルベンゼンスルホン酸、アルキル硫酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル、アルファスルホ脂肪酸アルキル(例えばメチル)エステル、炭素数8~20の脂肪酸等のアルカリ金属塩が好ましい。陰イオン界面活性剤の対イオンとしてはナトリウム、カリウム等のアルカリ金属以外に、マグネシウム等のアルカリ土類金属及び/又はモノ、ジ、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン等を使用するが、特にアルカノールアミンを用いることで液安定性が向上することから好適である。その場合、組成物中の陰イオン界面活性剤の含有量は好ましくは5~50質量%、特に10~50質量%とするのが好ましい【0031】非イオン界面活性剤としては、下記(1)~(4)のようなものが使用できる。(1)平均炭素数が8~20の直鎖1級アルコール又は直鎖2級アルコール由来のアルキル基又は分岐アルコール由来のアルキル基又はアルケニル基を有し、エチレンオキサイド(以下、EOと表記する)を平均で1~20モルを付加したポリオキシエチレンアルキル又はアルケニルエーテル。【0032】(2)平均炭素数が8~20のアルキル基又はアルケニル基を有し、EOを平均で1~15モル及びプロピレンオキサイド(以下、POと表記する)を平均で1~5モル付加したポリオキシアルキレンアルキル又はアルケニルエーテル。この場合、EO及びPOはランダム付加でもブロック付加でもいずれでもよい。特に襟・袖口汚れに対する高洗浄力を得ることができる点から、次式(A)のものが好ましい。R1-O(EO)p(PO)q(EO)rH (A)〔式中、R1は炭素数8~20の直鎖のアルキル基又はアルケニル基を示し、EOはオキシエチレン基を示し、POはオキシプロピレン基を示し、p、q及びrは平均付加モル数を示し、p>0、q=1~4、r>0、p+q+r=6~14、p+r=5~12であり、好ましくはp+q+r=7~14、p+r=6~12、q=1~2である。〕」
「【0035】特に、油性汚れに対する洗浄力の点から、(1)及び/又は(2)のポリオキシアルキレンアルキルエーテルを含有するのが好ましく、(2)を含有するのがより好ましい。また、組成物中の非イオン界面活性剤の含有量は好ましくは5~50質量%、特に10~50質量%であるのが好ましい。また、酵素安定化の点から、非イオン界面活性剤/陰イオン界面活性剤の質量比は100/0~100/10であるのが好ましく、100/1~100/10がより好ましく、100/1~100/5が更に好ましい。」
「【0045】本発明の衣料用洗濯前処理剤組成物は、低温安定性、塗布性の点から、(d)可溶化剤を1~30質量%含有するのが好ましく、2~15質量%がより好ましく、3~10質量%が更に好ましい。(d)成分としては、エタノール、メタノール、プロパノール、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール等の炭素数1~4の低級アルコール、トルエンスルホン酸(塩)、キシレンスルホン酸(塩)、下記一般式(C)で示される化合物等が挙げられる。・・・【0046】本発明の液体洗浄剤組成物は、貯蔵安定性の点から、水を3~50質量%、特に5~40質量%含有するのが好ましい。更に本発明の洗浄剤組成物には、従来より洗剤に配合することが知られている成分を配合することができる。このような成分として、二価金属イオン捕捉能を有する多価カルボン酸塩としてニトリロ三酢酸塩、エチレンジアミン四酢酸塩、イミノ二酢酸塩、ジエチレントリアミン五酢酸塩、グリコールエーテルジアミン四酢酸塩、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸塩及びトリエチレンテトラミン六酢酸塩等のアミノポリ酢酸塩、マロン酸、コハク酸、ジグリコール酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸等の塩;ポリアクリル酸塩、ポリマレイン酸塩、カルボキシメチルセルロース、平均分子量5000以上のポリエチレングリコール、アクリル酸?マレイン酸共重合体若しくはその塩、無水マレイン酸-ジイソブチレン共重合体若しくはその塩、無水マレイン酸-メチルビニルエーテル共重合体若しくはその塩、無水マレイン酸-イソブチレン共重合体若しくはその塩、無水マレイン酸―酢酸ビニル共重合体若しくはその塩、ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物、及び特開昭59-62614号公報の請求項1~21(1頁3欄5行~3頁4欄14行)記載のポリマー等の再汚染防止剤又は分散剤0.01~10質量%;ポリビニルピロリドン等の色移り防止剤0.01~10質量%;ポリオキシアルキレンベンジルエーテル、ポリオキシアルキレンフェニルエーテル等の相調整剤又は洗浄力向上剤0.01~10質量%;アミラーゼ、プロテアーゼ、リパーゼ、その他のセルラーゼ等の酵素0.001~10質量%;塩化カルシウム、硫酸カルシウム、ギ酸、ホウ酸(ホウ素化合物)等の酵素安定化剤0.005~10質量%;過炭酸ナトリウム又は過硼酸ナトリウム等の漂白剤0.01~10質量%;テトラアセチルエチレンジアミン、特開平6-316700号公報において一般式(I-2)~(I-7)で示される化合物等の漂白活性化剤0.01~10質量%;チノパールCBS(チバスペシャリティケミカルス社製)やホワイテックスSA(住友化学社製)等の蛍光染料0.001~1質量%;特開平10-60480号公報の請求項1記載のシリコーン等の柔軟基剤を0.1~2質量%;ブチルヒドロキシトルエン、ジスチレン化クレゾール、亜硫酸ナトリウム及び亜硫酸水素ナトリウム等の酸化防止剤0.01~2質量%;シリコーン、シリカ等の調泡剤0.01~2質量%;水溶性色素;香料;抗菌防腐剤等を配合することができる。」
「【0049】本発明の液体洗浄剤組成物が衣料用洗浄剤の場合、20℃の0.1質量%水溶液のpHが6~11であることが洗浄性能の点で好ましく、pH7~11がより好ましく、pH7.5~11が更に好ましく、特にpH10~11が特に好ましい。また、20℃の液体洗浄剤組成物のpH(JISK3362:1998に従って測定)が、6~11であることが保存性の点で好ましく、更にpH7~11、更にpH7.5~11が好ましく、特にpH10~11が特に好ましい。」
「【0057】【表1】[図:0001384029000004.jpg]【0058】a-1:配列番号1に示すアルカリセルラーゼの242位のグルタミンをセリンに置換した変異アルカリセルラーゼa-2:配列番号1に示すアルカリセルラーゼの22位のセリンをプロリンに、242位のグルタミンをセリンに置換した変異アルカリセルラーゼ続きを表示(全17行)a-3:配列番号1に示すアルカリセルラーゼの10位のロイシンをグルタミンに、22位のセリンをプロリンに、242位のグルタミンをセリンに置換した変異アルカリセルラーゼa-4:配列番号1に示すアルカリセルラーゼの10位のロイシンをグルタミンに、16位のイソロイシンをアスパラギンに、76位のイソロイシンをヒスチジンに、242位のグルタミンをセリンに、466位のリシンをロイシンに置換した変異アルカリセルラーゼソフタノール50:炭素数12~14の2級アルコール由来のポリオキシエチレン(平均5モル付加)アルキルエーテル(日本触媒化学工業製)ソフタノール70:炭素数12~14の2級アルコール由来のポリオキシエチレン(平均7モル付加)アルキルエーテル(日本触媒化学工業製)ソフタノール120:炭素数12~14の2級アルコール由来のポリオキシエチレン(平均12モル付加)アルキルエーテル(日本触媒化学工業製)C12-14、EO7:炭素数12~14の1級アルコール由来のポリオキシエチレン(平均7モル付加)アルキルエーテルC10-14、EO5PO2EO3:炭素数10~14の直鎖第1級アルコールにEOを平均5モル、POを平均2モル、EOを平均3モルの順にブロック付加させたものC10-14、EO8、PO2:炭素数10~14の直鎖第1級アルコールにEOを平均8モル、POを平均2モルランダム付加させたものES:ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩(炭素数12/14の直鎖アルキル、エチレンオキシド平均付加モル数3、ナトリウム塩)LAS:炭素数10~14の直鎖アルキルベンゼンスルホン酸石鹸:ヤシ油脂肪酸塩酵素:エバラーゼ16.0L-EX(プロテアーゼ、ノボザイムズ社製)蛍光染料:チノパールCBS-X(チバスペシャリティケミカルス社製)」
(2) 甲2に記載された発明
甲2には、その実施例5(段落【0056】~【0058】)の記載に基づき、以下の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。なお、実施例5における各成分の単位が明記されていないが、甲2において質量%が一貫して用いられていることから、質量%であると認めた。
「以下の成分からなる液体洗浄剤組成物a-1 1質量%ソフタノール70 3質量%C10-14、EO5PO2EO3 5質量%続きを表示(全29行)ES 10質量%LAS 6質量%石鹸 1質量%EO変性AA/MAコポリマー 2質量%クエン酸 0.2質量%モノエタノールアミン 4質量%トリエチレングリコールフェニルエーテル 3質量%プロピレングリコール 3質量%エタノール 2質量%亜硫酸ソーダ 0.2質量%塩化カルシウム 0.05質量%グリセリン 3質量%ホウ砂 0.3質量%酵素 0.1質量%香料 0.2質量%蛍光染料 0.2質量%水 残余ただし、a-1は、配列番号1に示すアルカリセルラーゼの242位のグルタミンをセリンに置換した変異アルカリセルラーゼであり、ソフタノール70は、炭素数12~14の2級アルコール由来のポリオキシエチレン(平均7モル付加)アルキルエーテル(日本触媒化学工業製)であり、C10-14、EO5PO2EO3は、炭素数10~14の直鎖第1級アルコールにEOを平均5モル、POを平均2モル、EOを平均3モルの順にブロック付加させたものであり、ESは、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩(炭素数12/14の直鎖アルキル、エチレンオキシド平均付加モル数3、ナトリウム塩)であり、LASは、炭素数10~14の直鎖アルキルベンゼンスルホン酸であり、石鹸は、ヤシ油脂肪酸塩であり、酵素は、エバラーゼ16.0L-EX(プロテアーゼ、ノボザイムズ社製)であり、蛍光染料は、チノパールCBS-X(チバスペシャリティケミカルス社製)である。」
(3) 判断
ア 本件発明1について
(ア) 本件発明1と甲2発明の対比
甲2発明の「ソフタノール70」は、「炭素数12~14の2級アルコール由来のポリオキシエチレン(平均7モル付加)アルキルエーテル(日本触媒化学工業製)」であるから、本件発明1の「成分(A)が、一般式(II)で表されるノニオン界面活性剤であり、
R3-O-[(EO)v/(PO)w]-(EO)x-H・・・(II)
(式(II)中、R3は炭素数7~22の分岐鎖の炭化水素であり、酸素原子と結合する炭素原子は2級炭素原子であり、vはEOの平均繰り返し数を表し、3~20の数であり、wはPOの平均繰り返し数を表し、0であり、xはEOの平均繰り返し数を表し、0~20の数であり、EOはオキシエチレン基を表し、POはオキシプロピレン基を表す。)。」に相当する。
甲2発明の「ES」は、「ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩(炭素数12/14の直鎖アルキル、エチレンオキシド平均付加モル数3、ナトリウム塩)」であるから、本件発明1の「成分(B)がポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸又はその塩であり」に相当する。
甲2発明の「LAS」は、「炭素数10~14の直鎖アルキルベンゼンスルホン酸」であるから、甲2発明の「LAS 6質量%」は、本件発明1の「成分(C)が直鎖アルキルベンゼンスルホン酸又はその塩であり」、及び、「成分(C)の含有量が、衣料用液体洗浄剤の総質量に対し、2~18質量%であり」に相当する。
甲2発明の「a-1」、「酵素」は、それぞれ、「配列番号1に示すアルカリセルラーゼの242位のグルタミンをセリンに置換した変異アルカリセルラーゼ」、「エバラーゼ16.0L-EX(プロテアーゼ、ノボザイムズ社製)」であっていずれも酵素であるから、甲2発明の「a-1」、及び、「酵素」は、本件発明1の「成分(D)が酵素であり」に相当する。
甲2発明の「水」は、本件発明1の「成分(E)が水である」に相当する。
甲2発明の「液体洗剤組成物」は、本件発明1の「衣料用液体洗浄剤」に相当する。
甲2発明は、「ES」と「LAS」の質量%の比が10/6(=62/38)であるから、本件発明1の「成分(B)/成分(C)で表される質量比が90/10~10/90であり」を充足する。
甲2発明の「EO変性AA/MAコポリマー」は、本件発明1の「ポリ不飽和カルボン酸又はそれと共重合し得る単量体とのコポリマーを主鎖とし、ポリアルキレンオキシドを側鎖とする高分子化合物(但しカルボン酸は塩になっていてもよい)」に相当する。
以上によれば、本件発明1と甲2発明の一致点、相違点は以下のとおりである。
<一致点>
「下記成分(A)、成分(B)、成分(C)、成分(D)、及び成分(E)を含む衣料用液体洗浄剤であって(ただし、アルキル多糖界面活性剤を含まない。)、前記成分(C)の含有量が、衣料用液体洗浄剤の総質量に対し、2~18質量%であり、成分(B)/成分(C)で表される質量比が90/10~10/90であり、前記成分(A)が一般式(I)又は(II)で表されるノニオン界面活性剤であり、続きを表示(全12行)R1-C(=O)O-[(EO)s/(PO)t]-(EO)u-R2・・・(I)R3-O-[(EO)v/(PO)w]-(EO)x-H・・・(II)(式(I)中、R1は炭素数7~22の炭化水素基であり、R2は炭素数1~6のアルキル基であり、sはEOの平均繰り返し数を表し、6~20の数であり、tはPOの平均繰り返し数を表し、0~6の数であり、uはEOの平均繰り返し数を表し、0~20の数であり、EOはオキシエチレン基を表し、POはオキシプロピレン基を表す。式(II)中、R3は炭素数7~22の分岐鎖の炭化水素であり、酸素原子と結合する炭素原子は2級炭素原子であり、vはEOの平均繰り返し数を表し、3~20の数であり、wはPOの平均繰り返し数を表し、0であり、xはEOの平均繰り返し数を表し、0~20の数であり、EOはオキシエチレン基を表し、POはオキシプロピレン基を表す。)。前記成分(B)がポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸又はその塩であり、前記成分(C)が直鎖アルキルベンゼンスルホン酸又はその塩であり、前記成分(D)が酵素であり、前記成分(E)が水である、衣料用液体洗浄剤。」
<相違点>
相違点3
本件発明1は、「ポリ不飽和カルボン酸又はそれと共重合し得る単量体とのコポリマーを主鎖とし、ポリアルキレンオキシドを側鎖とする高分子化合物(但しカルボン酸は塩になっていてもよい)を含まない。」と特定されているのに対し、甲2発明は、「EO変性AA/MAコポリマー」を2質量%含むものである点
相違点4
成分(A)の含有量について、本件発明1は、「衣料用液体洗浄剤の総質量に対し、20~38質量%であり」、と特定されているのに対し、甲2発明は、「ソフタノール70」の含有割合が3質量%である点
相違点5
本件発明1は、「成分(E)」の含有割合について、「成分(E)の含有量が、衣料用液体洗浄剤の総質量に対し、34.4395~45質量%であり」と特定されているのに対し、甲2発明の「水」の含有割合の「残余」は、55.75質量%(=100-1-3-5-10-6-1-2-0.2-4-3-3-2-0.2-0.05-3-0.3-0.1-0.2-0.2)である点
相違点6
本件発明1は、「成分(A)/[成分(B)+成分(C)]で表される質量比が0.5~3.5であり」と特定されているのに対し、甲2発明は、ESとLASの合計が16質量%であるのに対し、ソフタノール70を3質量%含むものであるから、その比は約0.2である点
(イ) 相違点の検討
a 相違点3の検討
甲2発明は、甲2の実施例5の記載に基づき認定したものであるが、甲2発明の「EO変性AA/MAコポリマー」について、甲2にはどのような理由で添加されている成分であるのか説明等が何も記載されていない。しかしながら、甲2には実施例が11記載されており、その全てが「EO変性AA/MAコポリマー」を含むものとなっている(段落【0057】の【表1】)。そうすると、このような記載に接した当業者は、甲2発明において「EO変性AA/MAコポリマー」が必須の成分であると理解する。
また、甲2発明において「EO変性AA/MAコポリマー」がどのような理由で添加されている成分なのかが不明であるにもかかわらず、甲2発明の「EO変性AA/MAコポリマー」を添加しないように変更することを動機づけるような技術常識等が存在し得ないことも明らかである。
したがって、さらに、甲第1、3~8号証に記載されている事項等について検討するまでもなく、当業者が、甲2発明の「EO変性AA/MAコポリマー」を添加しないように変更することを動機づけられることはないと認められる。
b 相違点4、5の検討
相違点4、5は、「成分(A)」の含有割合、及び、「成分(E)」の含有割合に係るものであるところ、甲2発明は、甲2の実施例5に基づいて認定した発明であり、実施例における各成分の含有割合は通常最適化されていると解することが合理的である。そうすると、これを変更することは当該最適化を破壊することを意味するから、あえてそのような変更をすることを強く動機づけるような記載ないし技術常識などが存在しない限り、当業者はそのような変更をしようと動機づけられることはないと認められる。
c 相違点6の検討
相違点6は、「成分(A)/[成分(B)+成分(C)]で表される質量比に係るものであるところ、甲2には、当該質量比に係る記載が全くない。そうすると、当業者といえども当該質量比を特定することを着想するとともに、これを本件発明1に係る範囲に特定することを動機づけられることはないと認められる。
(ウ) 効果について
本件発明1は、相違点3~6に係る構成を全て同時に備えるものとすることにより、液安定性に優れ、かつ、再汚染防止効果、及び酵素安定性も良好であるという効果を奏するものである。
(エ) 小括
以上のとおり、本件発明1と甲2発明を対比すると相違点3~6があるから、本件発明1は甲2に記載された発明ではないし、甲2発明、及び、甲第1、3~8も号証に記載されている事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであると認められない。
イ 本件発明2~5について
本件発明2~5は、いずれも、本件発明1を直接又は間接的に引用し、さらに限定した発明に該当するものであるところ、上記アのとおり、本件発明1は、甲2に記載された発明ではないし、甲2発明、及び、甲第1、3~8号証に記載されている事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとも認められないものである。そうすると、さらに検討するまでもなく、本件発明1と同様の理由により、本件発明2~5も甲2に記載された発明ではないし、甲2発明、及び、甲第1、3~8号証に記載されている事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとも認められない。
ウ 理由3-1、3-2のまとめ
以上のとおりであるから、本件発明は、甲2に記載された発明であるとは認められず、また、甲2に記載された発明、及び、甲第1、3~8号証に記載されている事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとも認められない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1~5に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1~5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2020-700796