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特許異議申立

2020-700402

球状粒子からなる金属粉末

審判番号
2020-700402
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2016-019607
登録番号
6620029
請求日
2020年06月10日
審決日
2022年03月15日
公報発行日
2022年06月24日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】山陽特殊製鋼株式会社
  • 【権利者代理人】特許業務法人 有古特許事務所
  • 【権利者代理人】岡 憲吾
  • 【異議申立人】井上 朝子
審判長/審判官
  • 審判長 平塚 政宏
  • 審判官 池渕 立
  • 審判官 佐藤 陽一
分類
P1651.113-YAA(B22F) / P1651.121-YAA(B22F) / P1651.536-YAA(B22F) / P1651.537-YAA(B22F)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第9項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第4項、特許法第36条第4項第1号、特許法第26条第4項第1号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第6620029号発明「球状粒子からなる金属粉末」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第6620029号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-7〕について訂正することを認める。 特許第6620029号の請求項1~7に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第6620029号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~7に係る特許についての出願(以下、「本願」という。)は、平成28年 2月 4日(優先権主張平成27年 3月31日)を出願日とする出願であって、令和 1年11月22日にその特許権の設定登録がなされ、同年12月11日にその特許掲載公報が発行された。 その後、本件特許について、令和 2年 6月10日付けで、特許異議申立人井上朝子(以下、「申立人」という。)により、請求項1~7(全請求項)に係る本件特許に対して特許異議の申立てがなされ、同年 8月12日付けで取消理由が通知され、これに対して、同年 9月23日に意見書と訂正請求書が提出され、これに対して令和 3年 3月 4日に申立人から意見書が提出され、さらに、同年 6月21日付けで取消理由(決定の予告)が通知され、これに対して、同年 7月21日に意見書と訂正請求書(以下、「本件訂正請求書」といい、当該請求書による訂正請求を「本件訂正請求」という。)が提出され、これに対して同年12月16日に申立人から意見書が提出されたものである。 第2 訂正請求について 1 訂正の趣旨、及び、訂正の内容 (1)訂正の趣旨 本件訂正請求による訂正(以下、「本件訂正」という。)は、「特許第6620029号の特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~7について訂正を求める」というものであり、その訂正の内容は以下のとおりである。なお、下線は訂正した箇所を表す。 なお、令和 2年 9月23日にされた訂正請求は、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなされる。 (2)訂正の内容 ア 訂正事項1 請求項1について、本件訂正前の 「Ni、Fe及びCoのうちの少なくとも1種を含んでおり、かつこのNi、Fe及びCoの合計含有率(T.C.)が、50質量%以上であり、」を 「Ni及びCoのうちの少なくとも1種を含んでおり、Feを含んでおらず、かつこのNi及びCoの合計含有率(T.C.)が、50質量%以上であり、」と訂正する。 請求項1を引用する請求項2~7も同様に訂正する。 イ 訂正事項2 請求項2について、本件訂正前の 「上記Ni、Fe及びCoの残部が、C、Si、Cr、Mo、Al、Ti、V、W、Nb、Zn、Ta、B、Ag、Cu及びSnのうちの少なくとも1種並びに不可避不純物である請求項1に記載の粉末。」を 「 多数の球状粒子からなり、 Ni及びCoのうちの少なくとも1種を含んでおり、かつこのNi及びCoの合計含有率(T.C.)が、50質量%以上であり、 上記Ni及びCoの残部が、C、Si、Cr、Mo、Al、Ti、V、W、Nb、Zn、Ta、B、Ag、Cu及びSnのうちの少なくとも1種並びに不可避不純物であり、 累積10体積%粒子径D10が、1.0μm以上であり、 下記数式によって算出される値Yが、7.5以上12.0以下である金属粉末。 Y = D50 × ρ × S (上記数式において、D50は上記粉末の累積50体積%粒子径(m)であり、ρは上記粉末の真密度(kg/m3)であり、Sは上記粉末の比表面積(m2/kg)である。)」と訂正する。 請求項2を引用する請求項3~7も同様に訂正する。 2 本件訂正の適否についての当審の判断 (1)訂正事項1について ア 訂正事項1は、本件訂正前の請求項1に記載された「金属粉末」に含まれる金属元素のうち「合計含有率(T.C.)が、50質量%以上」となる金属元素について、「Ni、Fe及びCoのうちの少なくとも1種を含んでおり」と記載されており、Ni、Fe及びCoの3元素の含有について、次の7つの類型 (ア)Niを含む (イ)Feを含む (ウ)Coを含む (エ)Ni及びFeを含む (オ)Fe及びCoを含む (カ)Ni及びCoを含む (キ)Ni、Fe及びCoを含む からなることが特定されていたものを、「Ni及びCoのうちの少なくとも1種を含んでおり、Feを含んでおらず、」と訂正することによって、上記(イ)、(エ)、(オ)、(キ)の類型を除く次の3つの類型 (ア)Niを含む (ウ)Coを含む (カ)Ni及びCoを含む からなるものであって、かつ、(ク)Feを含まないものに限定する訂正である。 したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 イ 本件特許に係る願書に添付した明細書(以下「本件明細書」という。)の段落【0020】には 「この粒子は、Ni、Fe及びCoのうちの少なくとも1種を含んでいる。粒子が、Ni、Fe及びCoのうちの1種のみを含んでもよい。粒子が、Ni及びFeのみを含んでもよい。粒子が、Fe及びCoのみを含んでもよい。粒子が、Co及びNiのみを含んでもよい。粒子が、Ni、Fe及びCoの全てを含んでもよい。」 と記載されており(下線は当審が付与した。)、請求項1記載の「金属粉末」に含まれる金属元素が、上記アの(ア)、(ウ)、(カ)の三つの類型であって(ク)の条件を含むものが記載されている。 したがって、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。 ウ 上記アのとおり、訂正事項1による訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。 (2)訂正事項2について ア 訂正事項2は、本件訂正前の請求項2において、 (ア)訂正事項2-1:本件訂正前の請求項1を引用する形式で記載されていたものを、請求項1を引用しない形式で記載する訂正と、 (イ)訂正事項2-2:本件訂正前の請求項1において特定された「金属粉末」に含まれる金属元素のうち、「合計含有率(T.C.)が、50質量%以上」となる金属元素以外の金属元素について、「Ni、Fe及びCoのうちの少なくとも1種を含んでおり」と記載されており、Ni、Fe及びCoの3元素の含有について、次の7つの類型 a Niを含む b Feを含む c Coを含む d Ni及びFeを含む e Fe及びCoを含む f Ni及びCoを含む g Ni、Fe及びCoを含む からなることが特定されていたものを、「Ni及びCoのうちの少なくとも1種を含んでおり、」と訂正することによって、上記b、d、e、gの類型を除く次の3つの類型 a Niを含む c Coを含む f Ni及びCoを含む からなるものに限定する訂正と、 (ウ)訂正事項2-3:上記(イ)のとおり「Ni、Fe及びCoのうちの少なくとも1種を含んでおり」との記載が「Ni及びCoのうちの少なくとも1種を含んでおり」に訂正されたことに伴って、訂正前の請求項2に「上記Ni、Fe及びCoの残部が」と記載されていたものを「上記Ni及びCoの残部が」と訂正することによって、訂正後の請求項2内の記載の不整合を正す訂正とからなるものである。 したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮、第3号に規定する明瞭でない記載の釈明、及び第4号に規定する他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものに該当する。 イ 本件明細書には 「【0020】 この粒子は、Ni、Fe及びCoのうちの少なくとも1種を含んでいる。粒子が、Ni、Fe及びCoのうちの1種のみを含んでもよい。粒子が、Ni及びFeのみを含んでもよい。粒子が、Fe及びCoのみを含んでもよい。粒子が、Co及びNiのみを含んでもよい。粒子が、Ni、Fe及びCoの全てを含んでもよい。」 と記載されており(下線は当審が付与した。)、本件発明の「金属粉末」に含まれる金属元素が、上記ア(イ)のa、c、fの三つの類型が記載されている。また、 「【0022】 この粒子におけるNi、Fe及びCoの合計含有率(T.C.)は、50質量%以上である。Niは高耐食性が求められる用途に適しており、Feは高強度が求められる用途に適しており、Coは高耐食性及び高耐摩耗性が求められる用途に適している。求められる用途が複数の場合は、粉末がNi、Fe及びCoのうち2つ以上を含んでもよい。合計含有率(T.C.)は、70質量%以上が特に好ましい。合計含有率(T.C.)が100質量%であってもよい。 【0023】 粒子が、他の元素を含んでもよい。他の元素として、 (1)C、Mg、Al、Ti、V、Mn、Zn及びBのような、強度向上に寄与しうる元素、 (2)S、P、Bi及びSbのような、切削性に寄与する元素、 (3)C、Cr、W、Mo、N及びBのような、耐摩耗性に寄与しうる元素、 (4)Cr、Ag、Cu、Zr、Nb、Mo、Ta、W及びSnのような、耐食性に寄与しうる元素、 並びに (5)Si、Ge、Hf、La、Ce、Nd、Pr、Gd、Tb、Dy、Yb及びYのような、磁気特性に寄与しうる元素が例示される。粒子は、不可避的不純物を含みうる。 【0024】 好ましくは、Ni、Fe及びCoの残部は、C、Si、Cr、Mo、Al、Ti、V、W、Nb、Zn、Ta、B、Ag、Cu及びSnのうちの少なくとも1種並びに不可避不純物である。」 と記載されており(下線は当審が付与した。)、残部の金属が「C、Si、Cr、Mo、Al、Ti、V、W、Nb、Zn、Ta、B、Ag、Cu及びSnのうちの少なくとも1種並びに不可避不純物」であることが記載されている。 したがって、訂正事項2は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。 ウ 上記アのとおり、訂正事項2による訂正は、特許請求の範囲の減縮、明瞭でない記載の釈明、及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。 (3)一群の請求項について 本件訂正によって、本件訂正前の請求項1を引用する請求項2~7が連動して訂正されるから、本件訂正前の請求項1~7は一群の請求項であるところ、本件訂正請求は、上記一群の請求項についてされたものであるから、特許法第120条の5第4項の規定に適合する。 そして、本件訂正のうち訂正事項2は、請求項間の引用関係の解消を目的とするものであり、訂正後の請求項2について訂正が認められる場合には、請求項2を一群の請求項の他の請求項とは別の訂正単位とする求めがなされているが、訂正後の請求項3~7はいずれも訂正後の請求項1と請求項2を共通して引用するものであるから、請求項1及び請求項1を引用する請求項3~7と、請求項2及び請求項2を引用する請求項3~7とを別の訂正単位とすることはできない。 (4)独立して特許を受けることができるかについて 本件特許異議の申立ては、全請求項(請求項1~7)を対象に申し立てられたものであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項の規定は適用されず、特許出願の際独立して特許を受けることができるものでなければならないとの要件は課されない。 (5)小括 以上のとおりであるから、令和 3年 7月21日に特許権者によってなされた本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号、第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項、第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項1~7について訂正することを認める。 第3 本件発明 上記第2で検討したとおり、本件訂正は適法になされたものであるから、請求項1~7に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」~「本件発明7」といい、これらをまとめて「本件発明」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~7に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。なお、下線は訂正された箇所を表す。 「【請求項1】 多数の球状粒子からなり、 Ni及びCoのうちの少なくとも1種を含んでおり、Feを含んでおらず、かつこのNi及びCoの合計含有率(T.C.)が、50質量%以上であり、 累積10体積%粒子径D10が、1.0μm以上であり、 下記数式によって算出される値Yが、7.5以上12.0以下である金属粉末。 Y = D50 × ρ × S (上記数式において、D50は上記粉末の累積50体積%粒子径(m)であり、ρは上記粉末の真密度(kg/m3)であり、Sは上記粉末の比表面積(m2/kg)である。) 【請求項2】 多数の球状粒子からなり、 Ni及びCoのうちの少なくとも1種を含んでおり、かつこのNi及びCoの合計含有率(T.C.)が、50質量%以上であり、 上記Ni及びCoの残部が、C、Si、Cr、Mo、Al、Ti、V、W、Nb、Zn、Ta、B、Ag、Cu及びSnのうちの少なくとも1種並びに不可避不純物であり、 累積10体積%粒子径D10が、1.0μm以上であり、 下記数式によって算出される値Yが、7.5以上12.0以下である金属粉末。 Y = D50 × ρ × S (上記数式において、D50は上記粉末の累積50体積%粒子径(m)であり、ρは上記粉末の真密度(kg/m3)であり、Sは上記粉末の比表面積(m2/kg)である。)。 【請求項3】 上記粒子径D10に対する、累積60体積%粒子径D60の比(D60/D10)が、1.0以上10.0未満である請求項1又は2に記載の粉末。 【請求項4】 上記粒子径D50とモード径Dmとの比(D50/Dm)が、0.80以上1.20以下である請求項1から3のいずれかに記載の粉末。 【請求項5】 上記粒子の総数に対する、その円形度が0.95以上である粒子の数の比率P2が、50%以上である請求項1から4のいずれかに記載の粉末。 【請求項6】 上記比率P2が80%以上である請求項5に記載の粉末。 【請求項7】 その酸素濃度が1000ppm未満である請求項1から6のいずれかに記載の粉末。」 第4 申立理由の概要 1 申立人は、証拠方法として、いずれも本件特許に係る優先日前に、日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、下記甲第1~5号証、及び,本件特許公報の一部である、下記甲第6号証を提出して、以下の申立理由1~6により、本件訂正前の請求項1~7に係る本件特許を取り消すべきものである旨主張している。 (1)申立理由1(新規性) 本件発明1~3は、甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、同発明に係る特許は、取り消されるべきものである。(取消理由として採用) (2)申立理由2(新規性) 本件発明1~4は、甲第2号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、同発明に係る特許は、取り消されるべきものである。(取消理由として採用) (3)申立理由3(進歩性) 本件発明1~3は、甲第1号証に記載された発明に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、同発明に係る特許は、取り消されるべきものである。(取消理由として不採用) (4)申立理由4(進歩性) 本件発明1~7は、甲第2号証に記載された発明と、甲第1号証、甲第3号証の記載に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、同発明に係る特許は、取り消されるべきものである。(取消理由として一部採用) (5)申立理由5(進歩性) 本件発明1~7は、甲第4号証または甲第5号証に記載された発明と、甲第1号証、甲第2号証、甲第3号証の記載に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、同発明に係る特許は、取り消されるべきものである。(取消理由として不採用) (6)申立理由6(委任省令要件) 本件特許の発明の詳細な説明は、その記載によっては本件発明1~7において特定される「値Y」が有する技術的意義を理解することができないものであるから、特許法第36条第4項第1号の規定による委任省令で定めるところにより記載されたものではないので、同発明に係る特許は、取り消されるべきものである。(取消理由として不採用) 2 証拠方法 甲第1号証:M.A.Omar 外4名,“Processing of Water-atomised 316L Stainless Steel Powder Using Metal-infection Processes”, Journal of Engineering Seience, 2012, Vol.8, p1-13 甲第2号証:O.Lyckfeldt O 外1名,“Powder rheology of steel powders for additive manufacturing”, European Powder Metallurgy Association (EPMA), Euro PM2013 Proceedings, Powder Characterisation, 2013 甲第3号証:Christopher T Schade 外1名,“DEVELOPMENT OF ATOMIZED POWDERS FOR ADDITIVE MANUFACTURING”, Advances in Powder Metallurgy and Particulate Materials-2014, Proceedings of the 2014 World Congress on Powder Metallurgy and Particulate Materials, 2014, p215-225 甲第4号証:特開平5-279701号公報 甲第5号証:特開2001-192703号公報 甲第6号証:特許第6620029号公報(本件特許公報)の表2~10、12~14に加筆したもの なお、申立人が提出した、上記甲第1号証~甲第6号証をそれぞれ「甲1」~「甲6」ということがある。 第5 取消理由の概要 令和2年8月12日付けで次の取消理由1~3が通知された。 取消理由1 本件訂正前の請求項1~3に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、同発明に係る特許は、取り消されるべきものである。 取消理由2 本件訂正前の請求項1~4に係る発明は、甲第2号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、同発明に係る特許は、取り消されるべきものである。 取消理由3 本件訂正前の請求項5~7に係る発明は、甲第2号証に記載された発明と、甲第3号証に記載された技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、同発明に係る特許は、取り消されるべきものである。 また、令和3年6月21日付けの決定の予告で次の新たな取消理由が通知された。 取消理由4 令和2年9月23日提出の訂正請求によって訂正された請求項1は、Fe元素の含有の有無について明確であるとはいえず、特許を受けようとする発明が明確であるとはいえないから、同発明に係る特許は、取り消されるべきものである。また、請求項1を引用するが、Fe元素を含有しないことが特定されている請求項2を引用しない、請求項3~7についても同様である。 第6 各甲号証に記載された事項と記載された発明 1 甲1について (1)甲1に記載された事項 ア 甲1には、以下の事項が記載されている。(なお、「…」は記載の省略を表し、下線は当審が付したものである。以下同様。) 1ア 「Abstract: A water-atomised 316L stainless steel (SS) powder has been evaluated for physical and mechanical properties in a metal-injection moulding (MIM) process using the locally-based binder system palm stearin(PS).…」 (当審訳:要約 水アトマイズされた316Lステンレス鋼(SS)粉末について、パームステアリン(PS)ベースのバインダーシステムを用いた金属射出成形(MIM)プロセスにおける物理的・機械的特性を評価した。…) 1イ 「1. INTRODUCTION The application of metal-injection moulding (MIM) to stainless steel (SS) samples is of great benefit to the metal industry because of the increased shape complexity compared to the casting process, material utilisation and achievable high final density. The MIM process is composed of four sequential steps : mixing of the powder with an organic binder, injection moulding, de-binding (binder removal)and sintering.」(第1頁) (当審訳:序論 金属射出成形(MIM)をステンレス鋼(SS)サンプルに適用することは、鋳造プロセスと比較して形状の複雑さが増し、材料の歩留まりが向上し、最終的に高い密度が得られるため、金属産業にとって大きなメリットがある。MIMプロセスは、粉末と有機バインダーの混合、射出成形、脱バインダー(バインダー除去)、焼結の4つの連続したステップで構成される。) 1ウ 「2.EXPERIMENTAL The powders used in this study were water-atomised 316L SS powders. The chemical compositions of the powders are shown in Table 1, and all powder characteristics are listed in Table 2. As shown in Figure 1, the powders can be characterised as rounded and irregular in shape. The powder loading levels used were 62 vol%. The binder system composition was 70 wt.% PS / 30 wt.% PE. The powder and binder system mixing processes were carried out using a sigma-blade mixer set at 160°C and with incubation times of 2 hours. Then feedstock was granulated to pellet form to ease feeding into the injection-moulding machine. The feedback viscosity was calculated using a Shimadzu CFT-500D (Japan) capillary rheometer. During the capillary rheometer test, feedstock was forcibly extruded through a small cylindrical orifice of 1.0 mm diameter and 10 mm length (L/D=10). Tests were conducted at 130°C, 150°C and 160°C. Tensile specimens were prepared using a vertical injection-moulding model, MCP HEK-GMBH (Germany). During the moulding stage, temperatures and injection pressures were adjusted until the optimum conditions were obtained. The green parts present very good homogeneity as deduced from the SEM observation and from green density values.」(第2頁~第3頁) (当審訳:2.実験 本研究で使用された粉末は、水アトマイズされた316L SS粉末である。粉末の化学組成を表1に示し、すべての粉末特性を表2に示す。 図1に示すように、粉末は丸みを帯びた不規則な形状をしていることを特徴とすることができる。使用した粉末の充填量は62vol%であった。 バインダー系の組成は、70重量%のPS/30重量%のPEであった。粉末とバインダー系の混合工程は、シグマブレードミキサーを160°Cに設定し、2時間のインキュベーション時間で行った。次に、フィードストックは、射出成形機への供給を容易にするためにペレット状に造粒された。フィードストックの粘度は、Shimadzu CFT-500D(日本)キャピラリーレオメーターを用いて算出された。キャピラリーレオメーターの試験では、フィードストックは直径1.0 mm、長さ10 mm(L/D=10)の小さな円筒形オリフィスを通して強制的に押し出され、130°C、150°C、160°Cの温度で行われた。引張試験片は、縦型射出成形機(MCP HEK-GMBHドイツ)を使用して作製した。成形工程では、最適な条件が得られるまで温度と射出圧力を調整した。SEM観察およびグリーン体密度から推定されるように、 グリーン体は非常に良好な均一性を示している。) 1エ 「 [図:0001385115000001.jpg] 」(第3頁) (当審訳:表1 水アトマイズ法で製造された316L SS粉末の化学組成。) 1オ 「 [図:0001385115000002.jpg] 」(第3頁) (当審訳:表2:水アトマイズ法で製造された316L SS粉末の特性 項目 316SS 販売者 ATMIX 形状 丸みを帯びた不規則な形状 粒子径(μm) D10 3.4 D50 10.79 D90 29.22 分布の幅(SW) 2.74 比表面積(m2/g) 0.11 ピクノメーター密度(g/cm3)7.9 タップ密度(g/cm3) 4.44 注:*SW=2.56/log(D90/D10) ) 1カ 「 [図:0001385115000003.jpg] 」 (当審訳:図1:水アトマイズされた316L SS粉末のSEM像) (2)甲1に記載された発明 ア 上記1ア、1イによれば、甲1の論文では、金属射出成形(MIM)に用いられる、水アトマイズ法で製造された316Lステンレス鋼(SS)粉末について、物理的・機械的特性の評価がなされている。 イ 上記1ウによれば、上記水アトマイズ法で製造された316Lステンレス鋼(SS)粉末の形状は、丸みを帯びた不規則な形状であるとされており、上記1カの図1のSEM像を見ると、比較的大きな複数の球状粒子と、比較的小さな複数の球状粒子と、わずかながら不定形の粒子が混在し相互に付着している状態を確認することができる。したがって、上記水アトマイズされた316Lステンレス鋼(SS)粉末の形状は、わずかに含まれる不定形の粒子を除けば、概略球状の粒子であるということができる。 ウ 上記水アトマイズされた316Lステンレス鋼(SS)粉末の組成は、上記1エの表1に示されており、当該表1に明示的に示されたCやSi等の元素の重量の総計は32.727Wt%と計算できるから、その余の重量100-32.727=67.273Wt%は、ステンレス鋼の主成分である鉄のWt%に相当している。そして、通常、Wt%と質量%は等しい値である。 したがって、上記アトマイズされた316Lステンレス鋼(SS)粉末は、 Fe:67.27、 Cr:16.47、 Ni:12.49、 Mo: 2.09 Si: 0.81、 Mn: 0.81、 P : 0.021、 S : 0.011、 C : 0.0025、 を含有(単位:質量%)するものであるといえる。 エ 上記1オの表2によれば、ステンレス鋼316L粉末について、その真密度は、ピクノメーターで測定した7.9g/cm3=7900kg/m3であり、その比表面積は0.11m2/g=110m2/kgであり、粒子径D10、D50、D90(単位μm)はそれぞれ3.4、10.79、29.22である。 オ 上記オの検討に基づいて、上記ステンレス鋼316L粉末の「Y値」を次のとおり算出することができる。 Y=D50(累積50体積%粒子径m)×ρ(真密度kg/m3)×S(比表面積m2/kg)であるから、 Y=10.79×10-6m×7900kg/m3×110m2/kg≒9.37 カ 上記イ~オの検討を総合すれば、甲1には、次の粉末が記載されているものと認められる。 「多数の概略球状の粒子からなり、 Fe:67.27、 Cr:16.47、 Ni:12.49、 Mo: 2.09、 Si: 0.81、 Mn: 0.81、 P : 0.021、 S : 0.011、 C : 0.0025、 を含有し(単位:質量%)、 粒子径D10が、3.4μmであり、 粒子径D50が、10.79μmであり、 粒子径D90が、29.22μmであり、 値Yが9.37である、水アトマイズされた316Lステンレス鋼粉末。」(以下「甲1発明」という。) 2 甲2について (1)甲2に記載された事項 ア 甲2には、以下の事項が記載されている。 2ア 「 [図:0001385115000004.jpg] 」(第1頁) (当審訳:乾式粉末の特性を評価するための高度なレオメーター(粘弾性や流動性の測定機器)が近年開発され、プロセスに応じた粉末の流動特性を高精度で計測することが可能となった。本研究ではパウダーレオメーターを用いて積層造形 (AM、additive manufacturing) 用のスチール粉末の基本流動性、圧縮性、通気性およびせん断特性の計測を行った。同じ粒度分布で同品質のSUS316L粉末はバッチが異なると、積層造形の機能に大きな影響を与える乾式の流動特性が大きく変化する。比表面積の違いはレオメーターデータと相関する可能性のある粒子の形状/表面粗さの変化を示している。圧縮性が低いこと、通気に対する感受性が高いことおよび付着力が小さいためせん断応力に対する抵抗が小さいことは、粉体が積層造形に適していることを示している、よってレオメーターで粉末の流動性を測定することにより、粉末の品質管理と積層造形における性能を確認することが可能となる。) 2イ 「 [図:0001385115000005.jpg] ・・・ [図:0001385115000006.jpg] 」 (当審訳:イントロダクション 粉末冶金分野における粉末特性は、製造工程や適用するタイプに依存して変わる。典型的には、水アトマイズ法によって製造されたより粗い粉末はプレス工程に用いられ、ガスアトマイズ法によって製造されたより微細な粉末は金属射出成形(MIM)に用いられる。 ・・・ ガスアトマイズ法によって製造されたMIMに適した品質の316ステンレス鋼粉末は、3Dインクジェット印刷技術による積層造形(AM)に適用することを目的としているものであるが、本研究においてはレオメータによって計測された。その結果は、粒子径分布、比表面積、3D印刷機における機能に関係している。) 2ウ 「 [図:0001385115000007.jpg] 」(第2頁中程) (当審訳:試料と実験 同じ生産者による316LのMIM用品質の4つの粉末バッチ(ラベルA、B、CおよびD)を評価した。粒度分布をX線沈降法(機器名:Sedigraph、Micromeritics社製、米国)で測定し、比表面積をBET法(機器名:Gemini 2360、Micromeritics社製、米国)で測定した。粉末の流動性および粉末床の特性は、FT4粉末レオメーターで評価した。測定に先立ち、粉体を70℃で少なくとも12時間乾燥させた後、水分の取り込みを防ぐためにデシケーターで周囲温度まで冷却した。充填性能、流動エネルギー、圧縮特性、通気衝撃、粉体床透過性、せん断セル試験による降伏応力を測定するために、直径25mmの様々な高さの測定容器を使用した。個々の測定ごとに、新しい粉末試料(10~35ml)を適用した。) 2エ 「 [図:0001385115000008.jpg] 」(第2頁下部) (当審訳:実験結果と検討 図3に異なる粉末の累積粒度分布を示す。粉末Dで微粉末が僅かに少ないという違いがあるだけで、4つの粉末の粒度分布は非常によく似ている。この粒度分布の結果を考慮すると4つの粉末はよく似た流動性を示すことが想定される。しかし表1に示すように4つの粉末の比表面積と積層造形における性能には大きな違いがある。 粉末の敷き詰めにおける機能(敷き詰め易さ)は比表面積の最も小さいAとBでは良好であり、中間の値を示すCではあまり良くなく、最も大きいDでは悪い。粉末Dおいて最も比表面積が大きいことは、粉末形状が不規則形状で、多くのサテライト粒子が付着し、粒子の表面粗度が大きいことを示している。粉末Cもまた、粉末AやBよりも大きな比表面積であり、良好な敷き詰め性能を示した粉末AやBよりも粒子の表面粗度や形状の不規則度合いが大きいことを示している。) 2オ 「 [図:0001385115000009.jpg] 」(第4頁左上) (当審訳:sedigraphにより測定された粒度分布(図3の標題)。当審注:sedigraphとはX線透過式沈降法を用いた粒度分布測定装置のこと。) 2カ 「 [図:0001385115000010.jpg] 」(第4頁右上) (当審訳:粉末の比表面積(BET)およびAMについての性能(表1の標題)) 2キ 「 [図:0001385115000011.jpg] 」(第5頁) (当審訳:結論 本研究では粉末のレオロジーが金属粉末の流動特性を定義するのにいかに有用であるかを検証した。本検証は特に、積層造形用粉末について検証をおこなったが、ほとんどの粉末冶金のプロセスでの機能と粉末特性の相関を調査するツールとして適用が可能である。ほぼ等しい粒度分布をもつ粉末を評価したにも関わらず、流動特性は大きく異なる結果となった。粉末の凝集性が高くなることにより、圧縮性は高くなればなるほど、通気による流動性の低下は小さくなり、せん断時の降伏応力は大きくなった。2つの粉末(A、B)は他の粉末との比較において優れた流動性を示したが、これは比表面積が小さいことで示されるとおり、粉末形状の不規則度合いや表面粗さが小さいことによるものであると推測される。積層造形への応用を考慮すると付着力は十分に小さくなければならない。付着力が小さいと粉末の充填密度は高くなり粉末は流動しやすくなる。つまり次の粉末層を敷き詰める際に引き起こされるせん断力に応じてではなく、要求に応じて適切に流れることができるようにする必要がある。結論として、流動エネルギーは十分に高くなければならないが、付着力ではなく高いタップ密度によって制御されなければならない。) (2)甲2に記載された発明 ア 上記2ア、2イによれば、甲2の論文では、積層造形 (AM、additive manufacturing) 用の粉末である、ステンレススチール316Lの粉末について、基本流動特性等の評価がなされている。 イ 上記2イによれば、上記316Lの粉末はMIMに適した粉末であり、ガスアトマイズ法によって製造された粉末であるものと認められる。そして、上記2ウ、2カによれば、上記MIMに適した粉末として、比表面積(SSA)の異なる4つの粉末A、B、C、Dが用意され、表1に示されるとおり、上記粉末A、Bの比表面積(単位m2/g)はそれぞれ0.09、0.10であり、粉末C、Dの比表面積よりも小さい。 ウ 上記2キによれば、2つの粉末(A、B)は、他の粉末(C、D)と比較して優れた流動性を示すものであり、これは比表面積が小さいことから示されるとおり、粉末形状の不規則度合いや表面粗さが小さいことによるものであると推測されている。したがって、粉末A、Bは、粉末C、Dと比べて、比表面積が小さく、粉末形状の不規則度合いが小さく、表面粗さが小さく、流動性の高い粒子である。 エ 上記2オの図3には、sedigraph(上記2イによれば、X線沈降法による粒度分布測定装置)によって測定された、粉末A~Dの粒度分布が示されており、横軸は粒径(Particle size(μm))、縦軸は累積質量割合(Cumulative mass(%))を表す。図3の粒度分布曲線において、縦軸の10、50、60(%)に対応する横軸の粒径は、それぞれ、質量基準の累積粒子径D10、D50、D60を表しており、目視により、粉末Aについて、D10=6.3、D50=13.8、D60=15.7(μm)であり、粉末Bについて、D10=7.0、D50=14.1、D60=15.9(μm)であると読み取ることができる。ここで、体積と質量は比例の関係にあるから、上記質量基準の累積粒子径D10等は、体積基準の累積粒子径D10等と同じ値となる。 オ 上記エの検討に基づいて、粉末Aと粉末Bについて、「D60/D10」を次のとおり算出することができる。 粉末A:D60/D10=15.7/6.3=2.49 粉末B:D60/D10=15.9/7.0=2.27 カ 甲2には、ステンレススチール316Lの成分組成については記載されていないが、甲1についての上記1(1)ウの検討を参照すると、 Fe:67.27、 Cr:16.47、 Ni:12.49、 Mo: 2.09 Si: 0.81、 Mn: 0.81、 P : 0.021、 S : 0.011、 C : 0.0025、 を含有するものであるといえる。 また、ステンレススチール316Lの真密度については、甲1の1オを参照すると、ピクノメーターで測定した7.9g/cm3=7900kg/m3であるといえる。 キ 上記イ、エ、カの検討に基づいて、本件発明の「値Y」を次のとおり算出することができる。 Y=D50(累積50体積%粒子径[m])×ρ(真密度[kg/m3])×S(比表面積[m2/kg])であるから、 粉末A:Y=13.8×10-6m×7900kg/m3×90m2/kg≒9.81 粉末B:Y=14.1×10-6m×7900kg/m3×100m2/kg≒11.14 ク 上記ア~キの検討を総合すれば、甲2には、粉末A、粉末Bに注目すると、次の金属粉末が記載されているものと認められる。 「ガスアトマイズ法によって製造され、比表面積が小さく、粉末形状の不規則度合いが小さく、表面粗さが小さく、流動性の高い粒子からなり、 Fe:67.27、 Cr:16.47、 Ni:12.49、 Mo: 2.09 Si: 0.81、 Mn: 0.81、 P : 0.021、 S : 0.011、 C : 0.0025、 を含有し(単位:質量%)、 累積10体積%粒子径D10が、6.3μmであり、 累積50体積%粒子径D50が、13.8μmであり、 累積60体積%粒子径D60が、15.7μmであり、 値Yが、9.81である金属粉末。」(以下「甲2発明A」という。) 「ガスアトマイズ法によって製造され、比表面積が小さく、粉末形状の不規則度合いが小さく、表面粗さが小さく、流動性の高い粒子からなり、 Fe:67.27、 Cr:16.47、 Ni:12.49、 Mo: 2.09 Si: 0.81、 Mn: 0.81、 P : 0.021、 S : 0.011、 C : 0.0025、 を含有し(単位:質量%)、 累積10体積%粒子径D10が、7.0μmであり、 累積50体積%粒子径D10が、14.1μmであり、 累積60体積%粒子径D10が、15.9μmであり、 値Yが、11.14である金属粉末。」(以下「甲2発明B」という。) 3 甲3について (1)甲3に記載された事項 ア 甲3には、以下の事項が記載されている。 3ア 「 [図:0001385115000012.jpg] 」(第1頁上部) (当審訳: 要約 積層造形用粉末は、プレスおよび焼結用途の噴霧粉末では通常見られない特性を必要とする。一般に、積層造形用粉末は粉末床に堆積したときに最大の密度を達成するために、高い見掛け密度を必要とする。さらに、試作部品の製造装置からこれらの粉末を供給する際に、粉末の流動性が重要となる。本論文では、積層造形用に製造された水アトマイズとガスアトマイズの両方の粉末について報告する。積層造形で使用する粉末としての有効性を検討するために、粒子形状、粒度分布、表面粗さ、化学的性質などの粉末特性を調べた。水アトマイズ粉末とガスアトマイズ粉末の性能を、積層造形で使用するための性能と関連づけて検討した。) 3イ 「 [図:0001385115000013.jpg] 」(第1頁中央部) (当審訳:3次元印刷(3DP)やバインダージェット、選択的レーザー溶融(SLM)などの積層造形法は、粉末冶金で通常使用される従来のプレス・焼結プロセスでは製造できない設計上の特徴を必要とする部品のラピッドプロトタイピングや製造の需要があるため、ますます一般的になってきている。3DPは、粒子状物質、化学バインダー、デジタル設計からパーツを1層ずつ構築する積層造形プロセスである。3DPで製造された部品は、密度が低く、粒子間の付着力が弱いため、他の積層造形技術[SLMなど]のような機械的特性レベルが得られない場合がある。その機械的特性を改善するために、部品は従来のPM(粉末冶金)プロセスと同様に焼結される。機械的特性のさらなる改善が必要な場合は、青銅や銅などの2番目の金属を部品に浸透させることができる。) 3ウ 「 [図:0001385115000014.jpg] 」(第2頁 Fig. 1の後) (当審訳:上述した両方のプロセス(当審注:3D印刷とSLMのこと)で、粉末の物理的特性は、粉末床への輸送および粉末床内での粒子充填において重要な役割を果たしている。粒子径、形状、表面積、充填密度などの粉末の多くの特性が、粉末床の形成に影響を与える。粉末床の充填密度は、最終部品の焼結密度、機械的および物理的特性に影響を与える。本研究では、積層造形で使用するために製造された粉末のガスアトマイズグレードと水アトマイズグレードの両方について、粉末の物理的特性を比較した。) 3エ 「 [図:0001385115000015.jpg] [図:0001385115000016.jpg] [図:0001385115000017.jpg] 」(第3頁中央~第4頁上部) (当審訳:実験結果と考察 図2:(a)ガスアトマイズした316L粉末のSEM像と(b)積層造形に用いられる316L粉末の典型的な粒度分布 図2は、積層造形に用いられる、典型的なガスアトマイズした316Lステンレス粉末を示す。この粉末は15~45μmの粒径分布を備えた球状性質によって特徴付けられる。この粉末は、粒子が凝集せず、サテライト粒子もほとんど存在しないことにより、極めて優れた品質であると考えられる。この粉末の見かけ密度、すなわち、充填密度は4.41g/cm3であり、この数値は球状であることを示している。この粉末の大部分は400メッシュ(37μm)以下であり、このことはかなり微細な粉末であることを意味しているが、10μm以下の粉末は取り除かれているために、この粉末は21.5secs/50gという極めて優れた流動性を有している。) 3オ 「 [図:0001385115000018.jpg] 」(第4頁上部) (当審訳:表I:ガスアトマイズした316Lの化学的・物理的性質 [図:0001385115000019.jpg] )(当審注:表は一部のみ抜粋。ADはapparent density、見かけ密度を表す。) 3カ 「 [図:0001385115000020.jpg] 」(第4頁中央) (当審訳:ガスアトマイズと水アトマイズ 一般的に、ガスアトマイズした粉末は、その球状の性質が積層造形のために好ましい。水アトマイズは、金属粉末を製造するための、最も一般的で経済的な技術である。一般的に、水アトマイズ法は、急速な冷却率のために、不規則な形状の粉末を製造する。加えて、高い水圧は溶融した金属流により大きいエネルギーの衝撃を与え、粉末粒子を粗い形状とする。この不規則な形状は、流動性を悪化させ、充填密度を減少させるので、あまり好ましくない。しかしながら、もし、高圧の水アトマイズにおいて、金属に対する水の割合を低くできるなら、積層造形のために最適化された粒度分布を有する球状粒子が生産できるだろう。この例が図3に示されている。) 3キ 「 [図:0001385115000021.jpg] [図:0001385115000022.jpg] 」(第5頁上部) (当審訳:表II:水アトマイズした鉄の化学的・物理的性質(抜粋) [図:0001385115000023.jpg] 一般的に、積層造形のために最も好ましい粉末特性は、微細な粒径を伴う球状粉末である。流動性が良く、密度が高い良好な充填床が形成できる粒子の分布を持つことは、3DP及びSLMのいずれにおいても重要である。…) 3ク 「 [図:0001385115000024.jpg] [図:0001385115000025.jpg] 」(第5頁下部~第6頁上部) (当審訳:形状分析 理論的には、粉末が完全に球形で、粒子径の分布が非常に狭い場合に、最良の流動性を実現できる。粉末床内の大きな粒子間の隙間を埋める小さな粒子がある場合、最高のパッキングが達成できる。材料の費用対効果を高めるために十分な粉末の収量を達成するには、これらの特性の両方をバランスさせる必要がある。このようにして水アトマイズ粉末を製造することができれば、ガスアトマイズと比較して、コスト削減効果は大きいはずである。ガスアトマイズに比べた時の高圧水アトマイズの利点の一つは、より微細な粒子径の歩留まりが高いことである。欠点は、溶融金属に供給される運動量が大きく、冷却速度が速いため、特にガスアトマイズ粉末と比較して、不規則な形状の粉末粒子の割合が大きくなることである。しかし、このような不規則な形状の粒子を分離する技術はいくつか存在しており、これらにより積層造形用に高圧水アトマイズ粉末の性能を改善することができる。) 4 甲4について (1)甲4に記載された事項 ア 甲4には、以下の事項が記載されている。 4ア 「【0001】 【産業上の利用分野】本発明は押出成形、特に幅100μm以下の細いスリットからの押出成形に適した金属粉末及びその製造方法、並びにこの金属粉末を用いた金属成形体及び金属ハニカムモノリスの製造方法に関する。」 4イ 「【0003】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、水アトマイズ法は、コスト的には安価であるが、得られる粉末の粒子形状が、図1に示すように不規則形状で、粒子表面の凹凸も激しい。また、市販されているNi粉も図4に示すように不規則形状で、粒子表面の凹凸が激しく、各粒子が鎖状に連なっている。そのため、押出成形性に不具合があり、特に幅100μm以下の細いスリットからの押出成形が困難である。また、成形体の充填密度も低いという問題があった。一方、ガスアトマイズ法によれば、球状形状の粉末を得ることができるが、成形性、充填性、焼結性等に優れた金属粉末を得るには、粒子形状を球状にするだけでは十分とはいえない。したがって、本発明は、上記金属粉末に求められる諸特性、特に良好な押出成形性を得るのに好適な粒子形状や粒度分布等を有する金属粉末及びその製造方法、並びに該金属粉末を用いた金属成形体及び金属ハニカムモノリスの製造方法を提供することを目的とする。」 4ウ 「【0006】・・・また、10重量%径、50重量%径、90重量%径d90、最大径dmaxとは、それぞれレーザー回折散乱法により描かれた累積重量曲線上の累積重量分率10%、50%、90%、100%(順に図6のA、B、C、D点)における粒径をいう。・・・ 【0008】 【作用】本発明の金属粉末は、塊状形状あるいは球状形状の規則的な粒子形状を有し、最大径dmax及び90重量%径d90が上記範囲に限定されていることにより、成形性、充填性、焼結性等に優れ、特に幅100μm以下の細いスリットからの押出成形に適する。また、良好な流動性が要求される射出成形にも好適に使用できる。」 4エ 「【0013】本発明の金属粉末が、Fe、Cr及びAlを主成分とする合金粉末である場合、その好ましい粉末組成は、Fe:50~87wt%、Cr:10~30wt%、Al:3~20wt%を含む組成であり、更に好ましい粉末組成は、Fe:70~85wt%、Cr:10~20wt%、Al:5~10wt%を含む組成である。Crが少ないと得られる焼結体が耐食性に劣り、多いとσ相が析出し易くなる。また、Alが少ないと耐酸化性に劣り、多いと耐熱性が低下する。なお、Si、Y、Zr、Ca、Ce、La、希土類等の添加物を含んでもよい。」 4オ 「【0019】[粒子形状、粒度分布等と成形性との関係](実施例1)Fe-20Cr-5Al-1Si組成の溶湯から、窒素ガスアトマイズ法によって球状の出発原料Aを得た。その粒度分布は、d10=8、d50=67、d90=96、dmax=150(μm)で、真比重は、6.9g/ccであった。この出発原料Aを目開き20μmの篩及び目開き43μmの篩を用いて篩分けした後、ブレンドし、表1に示す粉体特性を有する合金粉末を得た。次に、この合金粉末100重量部に対し、水10重量部、メチルセルロース2重量部、オレイン酸1重量部を混合し、スリット幅0.08mmの正方形セルを600セル/インチ2もつ口金から押出成形し、得られた成形体について成形体中のポア及び成形体密度を測定した。その結果を表1に示す。」 4カ 「【0026】 【表1】 [図:0001385115000026.jpg] 」 (2)甲4に記載された発明 ア 上記4ア、4イによれば、甲4には、良好な押出成形性を得るのに好適な粒子形状や粒度分布を有する金属粉末について記載されている。 イ 上記4オ、4カによれば、実施例1の金属粉末に注目すると、実施例1の金属粉末の組成は、溶湯の組成と同じと考えられるから、Fe-20Cr-5Al-1Si、すなわち、Fe74%、Cr20%、Al5%、Si1%であり、上記溶湯から窒素ガスアトマイズ法によって形成された出発原料Aの粒子形状は球状で、真比重は6.9g/ccである。 そして、上記出発原料Aを篩分けした合金粉末について、表1を参照すると、その粒度分布は、d10=4、d50=17、d90=28(μm)であり、BET比表面積は0.11m2/gであると読み取ることができる。ここで、上記4ウの【0006】によれば、上記粒度分布は重量基準の累積粒子径で表示されているものであり、体積と質量は比例の関係にあるから、上記d10等は、体積基準の累積粒子径d10等と読み替えることができる。したがって、上記出発原料Aを篩分けした合金粉末の粒度分布は、累積10重量%径d10=4、累積50重量%径d50=17、累積90重量%径d90=28(μm)であるものと認められる。 ウ 上記イの検討に基づいて、上記実施例1の金属粉末の「Y値」を次のとおり算出することができる。 Y=D50(累積50体積%粒子径m)×ρ(真密度kg/m3)×S(比表面積m2/kg)であるから、 Y=17×10-6m×6900kg/m3×110m2/kg≒12.9 エ 上記イ~ウの検討を総合すれば、甲4には、次の粉末が記載されているものと認められる。 「粒子形状が球形であり、 Fe74%、Cr20%、Al5%、Si1%を含有し、 累積10体積%径d10=4μmであり、 累積50体積%径d50=17μmであり、 累積90体積%径d90=28μmであり、 値Yが12.9である、窒素ガスアトマイズされた金属粉末。」 (以下「甲4発明」という。) 4 甲5について (1)甲5に記載された事項 ア 甲5には、以下の事項が記載されている。 5ア 「【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、特に金属射出成形用に適した形状をもつ原料金属粉末に関するものである。」 5イ 「【0003】 【発明が解決しようとする課題】金属射出成形用の原料粉末としては、射出成形性および脱脂体強度等の要求品質を満足し、かつ経済性の高い製品を選択することが肝要であるが、前述の金属粉末単体もしくは混合体の品質特性は、使用する粉末のタップ密度、粉末の平均粒径、粒度分布、比表面積等では制御できず、粉末の製造ロット間で大きなバラツキが発生していた。これは射出成形性、脱脂体強度に影響を与える個々の粒子の形状状態を把握できていなかったためである。一見粉末の形状を体現しているかに見えるタップ密度も所詮粒子形状のみならず、粒度分布の影響を大きく受けている。したがって、この品質特性のバラツキをなくすことが課題となっている。」 5ウ 「【0006】ρ0:測定する金属粉末の真密度(g/cm3)…ピクノメータによる。SA:BET法による粉末の比表面積(m2/g)・・・ 【0009】 【発明の実施の形態】原料金属粉末として、SUS316L、コバール、17-4PH、410L組成のガスアトマイズ粉末、水アトマイズ粉末、水アトマイズ粉末の機械的球状化粉末の3種につき粒度を種々変えたものを準備した。 【0010】表1に示すように、これらの粉末を適宜混合することにより、いろいろな粒度、タップ密度の粉末原料を調製した。・・・なお、表中、水アトマイズ粉末とガスアトマイズ粉末をそれぞれ、水、ガスと略記したところがある。水球状化とは水アトマイズ粉末を球状化処理した粉末を意味する。 【0011】 【表1】 [図:0001385115000027.jpg] (なお、表1は平成11年12月22日に提出された手続補正書によって補正されたものである。)」 (2)甲5に記載された発明 ア 上記5ア、5イによれば、甲5には、金属射出成形用に適した形状をもつ原料金属粉末について記載されている。 イ 表1の「材質鋼種」の欄を参照すると、No5の金属粉末の材質鋼種はSUS316Lであるから、上記1(1)ウの検討を参照するとその組成は、 Fe:67.27、 Cr:16.47、 Ni:12.49、 Mo: 2.09 Si: 0.81、 Mn: 0.81、 P : 0.021、 S : 0.011、 C : 0.0025、 を含有(単位:質量%)するものであるといえる。 また、No16の金属粉末の材質鋼種はコバールであるから、その組成は、Ni28%、Co18%、Fe残部(化学大辞典7共立出版株式会社、1997年9月20日発行、745頁「フェニルコ」)である。 ウ 表1の「粒子構成」の欄を参照すると、No5の金属粉末の粒子構成は「水球状化」、すなわち水アトマイズ粉末をさらに球状化処理した粉末であり、No16の金属粉末の粒子構成は「水、水球状化」すなわち、水アトマイズ粉末と水アトマイズ粉末を球状化処理した粉末を混合したものであるところ、No5とNo16の金属粉末はいずれも、機械的球状化粉末またはそれをさらに球状化したものであるから、その粒子形状は球状である。 エ 表1の「ρ0(g/cm3)」の欄を参照すると、No5、16の金属粉末の真密度はそれぞれ8.03g/cm3、8.15g/cm3あり、同「累計体積径(μm)」の欄を参照すると、粒度分布(D10、D50、D90)(単位μm)は、それぞれ、(6.0、11.0、20.3)、(8.2、15.8、29.7)であり、同「SA(m2/g)」の欄を参照すると、BET比表面積はそれぞれ0.267m2/g、0.139m2/gであるものと認められる。 オ 上記イの検討に基づいて、No5、16の金属粉末の「Y値」を次のとおり算出することができる。 Y=D50(累積50体積%粒子径m)×ρ(真密度kg/m3)×S(比表面積m2/kg)であるから、 No5のY Y=11.0×10-6m×8030kg/m3×267m2/kg≒23.6 No16のY Y=15.8×10-6m×8150kg/m3×139m2/kg≒17.9 カ 上記ア~ウの検討を総合すれば、甲4には、No5、16の金属粉末に注目すると、次の粉末が記載されているものと認められる。 「粒子形状が球形であり、 Fe:67.27、 Cr:16.47、 Ni:12.49、 Mo: 2.09 Si: 0.81、 Mn: 0.81、 P : 0.021、 S : 0.011、 C : 0.0025、 を含有し(単位:質量%)、 累積10体積%粒子径D10が、6.0μmであり、 累積50体積%粒子径D50が、11.0μmであり、 累積90体積%粒子径D90が、20.3μmであり、 値Yが、23.6である金属粉末。」(以下「甲5発明5」という。) 「粒子形状が球形であり、 Fe54%、Ni28%、Co18%を含有し、 累積10体積%粒子径D10が、8.2μmであり、 累積50体積%粒子径D50が、15.8μmであり、 累積90体積%粒子径D90が、29.7μmであり、 値Yが、17.9である金属粉末。」(以下「甲5発明16」という。) 第7 当審の判断 1 甲1を主たる引用文献とする新規性・進歩性について(申立理由1、3、取消理由1について) (1)本件発明1について ア 本件発明1の「金属粉末」と甲1発明の「316Lステンレス鋼粉末」を対比すると一致点、相違点は次のとおりである。 <一致点> 「 多数の球状粒子からなり、 Ni及びCoのうちの少なくとも1種を含んでおり、 累積10体積%粒子径D10が、1.0μm以上であり、 下記数式によって算出される値Yが、7.5以上12.0以下である金属粉末」の点。 <相違点1> 金属粉末の化学組成について、本件発明1は「Feを含んでおらず、かつこのNi及びCoの合計含有率(T.C.)が、50質量%以上」であるのに対して、甲1発明は「Fe:67.27」を含有し、Coは含有しておらず、そのため「Ni及びCoの合計含有率(T.C.)が、50質量%以上」ではない点。 イ 上記相違点1について検討する。 甲1は、金属射出成形(MIM)に用いられる、水アトマイズ法で製造された「316Lステンレス鋼粉末」について報告している論文であるところ、甲1全体を精査しても、当該「316Lステンレス鋼粉末」に含まれる金属元素のうち、316Lステンレスとして必須の金属元素であるFeを除去するとともに、Coを含有させること、もしくは、Niの含有量を増加させることを動機付けるような記載や示唆を見いだすことができず、また、上記Feを除去するとともに、Coを含有させること、もしくはNiの含有量を増加させることが技術常識であるともいえない。 したがって、甲1発明において、相違点1に係る本件発明1の構成とすることは、当業者にとって容易になし得ることであるとはいえない。 ウ よって、本件発明1は甲1に記載されたものではなく、また、甲1に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 (2)本件発明2について ア 本件発明2の「金属粉末」と甲1発明の「316Lステンレス鋼粉末」を対比すると、一致点、相違点は次のとおりである。 <一致点> 「 多数の球状粒子からなり、 Ni及びCoのうちの少なくとも1種を含んでおり、 累積10体積%粒子径D10が、1.0μm以上であり、 下記数式によって算出される値Yが、7.5以上12.0以下である金属粉末」の点。 <相違点2> 金属の化学組成について、本件発明2は「Ni及びCoの合計含有率(T.C.)が、50質量%以上であり、上記Ni及びCoの残部が、C、Si、Cr、Mo、Al、Ti、V、W、Nb、Zn、Ta、B、Ag、Cu及びSnのうちの少なくとも1種並びに不可避不純物」であるのに対して、甲1発明は「Ni:12.49」を含有するがCoは含有しておらず、そのため「Ni及びCoの合計含有率(T.C.)が、50質量%以上」ではなく、「上記Ni(及びCo)の残部」が「Fe、Cr、Mo、Si、Mn、P、S、C」である点。 イ 上記相違点2について検討する。 上記相違点2は、FeとCoとNiの含有に注目すると、本件発明2は、Feを必須の成分として含んでおらず、「Ni及びCoの合計含有率(T.C.)が、50質量%以上」であるのに対して、甲1発明は「Fe:67.27」を含有し、Niは含有しているもの「Ni及びCoの合計含有率(T.C.)が、50質量%以上」ではない点で少なくとも相違しているということができるので、相違点1についての上記(1)イで検討した理由と同様の理由によって、甲1発明において、相違点2に係る本件発明2の構成とすることが、当業者にとって容易になし得ることであるとはいえない。 ウ したがって、本件発明2は甲1に記載されたものではなく、甲1に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 (3)本件発明3~7について 本件発明3~7は、本件発明1又は本件発明2を引用して、さらに限定するものであるから、上記(1)及び(2)において、本件発明1及び本件発明2について検討した理由と同様の理由によって、甲1に記載されたものではなく、甲1に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 2 甲2を主たる引用文献とする新規性・進歩性について(申立理由2、4、取消理由2、3について) (1)本件発明1について ア 本件発明1の「金属粉末」と甲2発明A、Bの「金属粉末」を対比する。 本件発明における「球状粒子」とは、真球のみならず、真球に近い形状の粒子を含むものである(本件明細書段落【0019】)。一方、甲2発明A、Bの「金属粉末」が「粉末形状の不規則度合いが小さく、表面粗さが小さ」い形状であることは、その金属粉末がガスアトマイズ法によって製造されたものであることも勘案すると、概略球状であることを意味するものと解されるから、甲2発明A、Bの「比表面積が小さく、粉末形状の不規則度合いが小さく、表面粗さが小さく、流動性の高い粒子」は、本件発明1の「球状粒子」に相当する。 イ そうすると、本件発明1の「金属粉末」と甲2発明A、Bの「金属粉末」を対比すると一致点、相違点は次のとおりである。 <一致点> 「 多数の球状粒子からなり、 Ni及びCoのうちの少なくとも1種を含んでおり、 累積10体積%粒子径D10が、1.0μm以上であり、 下記数式によって算出される値Yが、7.5以上12.0以下である金属粉末」の点。 <相違点3> 金属粉末の化学組成について、本件発明1は 「Feを含んでおらず、かつこのNi及びCoの合計含有率(T.C.)が、50質量%以上」であるのに対して、甲2発明A、Bは 「Fe:67.27」を含有し、Coは含有しておらず、そのため「Ni及びCoの合計含有率(T.C.)が、50質量%以上」ではない点。 ウ 上記相違点3について検討する。 甲2は、積層造形(AM)に使用される、ガスアトマイズ法で製造された「ステンレススチール316Lから製造された金属粉末」について報告している論文であるところ、甲2全体を精査しても、当該「ステンレススチール316Lから製造された金属粉末」に含まれる金属元素のうち、316Lステンレスとして必須の金属元素であるFeを除去するとともに、Coを含有させること、もしくは、Niの含有量を増加させることを動機付けるような記載や示唆を見いだすことができない。 また、甲1、甲3を参照しても、甲2発明A、Bに含有される必須の金属元素であるFeを除去するとともに、Coを含有させること、もしくはNiの含有量を増加させることを動機付けるような記載や示唆を見いだすことができない。 したがって、甲2発明A、Bにおいて、相違点3に係る本件発明1の構成とすることは、甲2の記載及び甲1、甲3の記載を参照したとしても、当業者にとって容易になし得ることであるとはいえない。 エ したがって、本件発明1は甲2に記載されたものではなく、また、甲2に記載された発明と甲2、甲1、甲3の記載に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 (2)本件発明2について ア 上記(1)のアの検討を参照し、本件発明2の「金属粉末」と甲2発明A、Bの「金属粉末」を対比すると一致点、相違点は次のとおりである。 <一致点> 「 多数の球状粒子からなり、 Ni及びCoのうちの少なくとも1種を含んでおり、 累積10体積%粒子径D10が、1.0μm以上であり、 下記数式によって算出される値Yが、7.5以上12.0以下である金属粉末」の点。 <相違点4> 金属の化学組成について、本件発明2は 「Ni及びCoの合計含有率(T.C.)が、50質量%以上であり、上記Ni及びCoの残部が、C、Si、Cr、Mo、Al、Ti、V、W、Nb、Zn、Ta、B、Ag、Cu及びSnのうちの少なくとも1種並びに不可避不純物」であるのに対して、甲2発明A、Bは「Ni:12.49」を含有するがCoは含有しておらず、そのため「Ni及びCoの合計含有率(T.C.)が、50質量%以上」ではなく、「上記Ni(及びCo)の残部」が「Fe、Cr、Mo、Si、Mn、P、S、C」である点。 イ 上記相違点4について検討する。 上記相違点4は、FeとCoとNiの含有に注目すると、本件発明2は、Feを必須の成分として含んでおらず、Coを含み、しかも「Ni及びCoの合計含有率(T.C.)が、50質量%以上」であるのに対して、甲2発明A、Bは「Fe:67.27」を含有し、Niは含有しているもののCoは含有していないため「Ni及びCoの合計含有率(T.C.)が、50質量%以上」ではない点で少なくとも相違しているということができるので、相違点3についての上記(1)ウで検討した理由と同様の理由によって、甲2発明A、Bにおいて、上記相違点4に係る本件発明2の構成とすることが、甲2の記載及び甲1、甲3の記載を参照したとしても、当業者にとって容易になし得ることであるとはいえない。 ウ したがって、本件発明2は甲2に記載されたものではなく、甲2に記載された発明と甲2、甲1、甲3の記載に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 (3)本件発明3~7について 本件発明3~7は、本件発明1又は本件発明2を引用して、さらに限定するものであるから、上記(1)及び(2)において、本件発明1及び本件発明2について検討した理由と同様の理由によって、甲2に記載されたものではなく、また、甲2に記載された発明と甲2、甲1、甲3の記載に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 3 甲4を主たる引用文献とする進歩性について(申立理由5について) (1)本件発明1、2について ア 本件発明1、2の「金属粉末」と甲4発明の「金属粉末」を対比すると、一致点、相違点は次のとおりである。 <一致点> 「 多数の球状粒子からなり、 累積10体積%粒子径D10が、1.0μm以上であり、 金属粉末」の点。 <相違点5> 金属粉末の化学組成について、本件発明1は「Ni及びCoのうちの少なくとも1種を含んでおり、Feを含んでおらず、かつこのNi及びCoの合計含有率(T.C.)が、50質量%以上」であり、本件発明2は「Ni及びCoのうちの少なくとも1種を含んでおり、かつこのNi及びCoの合計含有率(T.C.)が、50質量%以上であり、上記Ni及びCoの残部が、C、Si、Cr、Mo、Al、Ti、V、W、Nb、Zn、Ta、B、Ag、Cu及びSnのうちの少なくとも1種並びに不可避不純物」であるのに対して、甲4発明は「Fe74%、Cr20%、Al5%、Si1%を含有」するものである点。 <相違点6> 「値Y」が、本件発明1、2では「7.5以上12.0以下」であるのに対し、甲4発明では「12.9」である点。 イ 上記相違点5について検討する。 甲4発明は、幅100μm以下の細いスリットからの押出成形に適した金属粉末の一実施例として甲4に記載されているものであり、甲4の全体を精査しても、甲4発明に含有される必須の金属元素であるFeを除去するとともに、Ni及びCoを含有させ、しかも、Ni及びCoの合計含有率(T.C.)が、50質量%以上」とすることを動機付けるような記載や示唆を見いだすことができない。 また、甲1~甲3を参照しても、甲4発明に含有される必須の金属元素であるFeを除去するとともに、Ni及びCoを含有させ、しかも、Ni及びCoの合計含有率(T.C.)が、50質量%以上」とすることを動機付けるような記載や示唆を見いだすことができない。 したがって、甲4発明において、相違点5に係る本件発明1、2の構成とすることは、甲4の記載及び甲1~甲3の記載を参照したとしても、当業者にとって容易になし得ることであるとはいえない。 ウ したがって、相違点6について検討するまでもなく、本件発明1は甲4に記載された発明と、甲4、甲1~甲3の記載に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (2)本件発明3~7について 本件発明3~7は、本件発明1又は本件発明2を引用して、さらに限定するものであるから、本件発明3~7と甲4発明は、少なくとも、相違点5と相違点6で相違しており、本件発明1及び本件発明2について検討した理由と同様の理由によって、甲4に記載された発明と、甲4、甲1~甲3の記載に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 4 甲5を主たる引用文献とする(甲5発明5を引用発明とする)進歩性について(申立理由5について) (1)本件発明1について ア 本件発明1の「金属粉末」と甲5発明5の「金属粉末」を対比すると一致点、相違点は次のとおりである。 <一致点> 「 多数の球状粒子からなり、 Ni及びCoのうちの少なくとも1種を含んでおり、 累積10体積%粒子径D10が、1.0μm以上である金属粉末」の点。 <相違点7> 金属粉末の化学組成について、本件発明1は 「Feを含んでおらず、かつこのNi及びCoの合計含有率(T.C.)が、50質量%以上」であるのに対して、甲5発明5は「Fe:67.27」を含有し、Coは含有しておらず、そのため「Ni及びCoの合計含有率(T.C.)が、50質量%以上」ではない点。 <相違点8> 「値Y」が、本件発明1では「7.5以上12.0以下」であるのに対し、甲5発明5では「23.6」である点。 イ 上記相違点7について検討する。 甲5発明5は、鋼種として316Lを用いた、金属射出成形用に適した形状をもつ原料金属粉末の1実施例として甲5に記載されているものであり、甲5全体を精査しても、甲5発明5に含有される必須の金属元素であるFeを除去するとともに、Coを含有させること、もしくは、Niの含有量を増加させることを動機付けるような記載や示唆を見いだすことができない。 また、甲1~3を参照しても、甲5発明5に含有される必須の金属元素であるFeを除去するとともに、Coを含有させること、もしくはNiの含有量を増加させることを動機付けるような記載や示唆を見いだすことができない。 したがって、甲5発明5において、相違点7に係る本件発明1の構成とすることは、甲5の記載及び甲1~3の記載を参照したとしても、当業者にとって容易になし得ることであるとはいえない。 ウ したがって、相違点8について検討するまでもなく、本件発明1は甲5に記載された発明と、甲5、甲1~甲3の記載に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (2)本件発明2について ア 本件発明2の「金属粉末」と甲5発明5の「金属粉末」を対比すると一致点、相違点は次のとおりである。 <一致点> 「 多数の球状粒子からなり、 Ni及びCoのうちの少なくとも1種を含んでおり、 累積10体積%粒子径D10が、1.0μm以上である金属粉末」の点。 <相違点9> 金属粉末の化学組成について、本件発明2は 「Ni及びCoの合計含有率(T.C.)が、50質量%以上であり、上記Ni及びCoの残部が、C、Si、Cr、Mo、Al、Ti、V、W、Nb、Zn、Ta、B、Ag、Cu及びSnのうちの少なくとも1種並びに不可避不純物」であるのに対して、甲5発明5は「Ni:12.49」を含有するがCoは含有しておらず、そのため「Ni及びCoの合計含有率(T.C.)が、50質量%以上」ではなく、「上記Ni(及びCo)の残部」が「Fe、Cr、Mo、Si、Mn、P、S、C」である点。 <相違点10> 「値Y」が、本件発明2では「7.5以上12.0以下」であるのに対し、甲5発明5では「23.6」である点。 イ 上記相違点9について検討する。 上記相違点9は、FeとCoとNiの含有に注目すると、本件発明2は、Feを必須の成分として含んでおらず、「Ni及びCoの合計含有率(T.C.)が、50質量%以上」であるのに対して、甲1発明は「Fe:67.27」を含有し、Niは含有しているもの「Ni及びCoの合計含有率(T.C.)が、50質量%以上」ではない点で少なくとも相違しているということができるので、相違点7についての上記(1)イで検討した理由と同様の理由によって、甲5発明5において、上記相違点9に係る本件発明2の構成とすることは、甲5の記載及び甲1~3の記載を参照したとしても、当業者にとって容易になし得ることであるとはいえない。 ウ したがって、相違点10について検討するまでもなく、本件発明2は甲5に記載された発明と、甲5、甲1~甲3の記載に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3)本件発明3~7について 本件発明3~7は、本件発明1又は本件発明2を引用して、さらに限定するものであるから、本件発明3~7と甲5発明5は、少なくとも、相違点9と相違点10で相違しており、本件発明1及び本件発明2について検討した理由と同様の理由によって、甲5に記載された発明と、甲5、甲1~甲3の記載に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 5 甲5を主たる引用文献とする(甲5発明16を引用発明とする)進歩性について(申立理由5について) (1)本件発明1、2について ア 本件発明1、2の「金属粉末」と甲5発明16の「金属粉末」を対比すると一致点、相違点は次のとおりである。 <一致点> 「 多数の球状粒子からなり、 Ni及びCoのうちの少なくとも1種を含んでおり、 累積10体積%粒子径D10が、1.0μm以上である金属粉末」の点。 <相違点11> 金属粉末の化学組成について、本件発明1は「Feを含んでおらず、かつこのNi及びCoの合計含有率(T.C.)が、50質量%以上」であり、本件発明2は「Ni及びCoの合計含有率(T.C.)が、50質量%以上であり、上記Ni及びCoの残部が、C、Si、Cr、Mo、Al、Ti、V、W、Nb、Zn、Ta、B、Ag、Cu及びSnのうちの少なくとも1種並びに不可避不純物」であるのに対して、甲5発明16は「Fe54%」を含有しており、「Ni28%」と「Co18%」を含有しているため「Ni及びCoの合計含有率(T.C.)が、50質量%以上」ではない点。 <相違点12> 「値Y」が、本件発明1では「7.5以上12.0以下」であるのに対し、甲5発明16では「17.9」である点。 イ 上記相違点11について検討する。 甲5発明16は、鋼種としてコバールを用いた、金属射出成形用に適した形状をもつ原料金属粉末の1実施例として、甲5に記載されているものであり、甲5全体を精査しても、甲5発明16に含有される必須の金属元素であるFeを除去するとともに、NiもしくはCoの含有量を増加させることを動機付けるような記載や示唆を見いだすことができない。 また、甲1~3を参照しても、甲5発明16に含有される必須の金属元素であるFeを除去するとともに、NiもしくはCoの含有量を増加させることを動機付けるような記載や示唆を見いだすことができない。 したがって、甲5発明16において、相違点11に係る本件発明1、2の構成とすることは、甲5の記載及び甲1~3の記載を参照したとしても、当業者にとって容易になし得ることであるとはいえない。 ウ よって、相違点12について検討するまでもなく、本件発明1は甲5に記載された発明と、甲5、甲1~甲3の記載に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (2)本件発明3~7について 本件発明3~7は、本件発明1又は本件発明2を引用して、さらに限定するものであるから、本件発明3~7と甲5発明16は、少なくとも、相違点11と相違点12で相違しており、本件発明1及び本件発明2について検討した理由と同様の理由によって、甲5に記載された発明と、甲5、甲1~甲3の記載に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 6 発明の詳細な説明によって「値Y」の技術的意義が理解できるかについて(申立理由6について) ア 申立人は、本件特許明細書に記載の表2~10、12~14における実施例および参考例は、値Yが「7.5以上12.0以下」の範囲内にある場合と範囲外にある場合とで発明の効果に差異があることを何ら示していないから、値Yが「7.5以上12.0以下」であることと「流動性に優れた金属粉末の提供」という課題との間に実質的関連性はなく、値Yの技術的意義が不明であるから、委任省令要件に違反しており、特許法第26条第4項第1号の要件を充足しない、と主張している。 イ しかしながら、本件特許明細書に記載の表2~10、12~14に示された実施例と比較例の流動性の実験に基づく総合評価において、「値Y」が「7.5以上12.0以下」の範囲にあるいずれの実施例もその評価値はS、A、B、Cのいずれかであるのに対して、「値Y」が上記範囲外である比較例と一部実施例は評価値がFのものを含んでいる。 ウ したがって、本件発明について、「値Y」を上記特定の範囲にすることによって、評価値Fのものを排除しているといえるから、粉末の流動性が向上するとの技術的意義は実験結果によって示されている。また、「値Y」が上記特定の範囲内であることから、本件発明は、「粒子の表面の凹凸が小さい。この粉末は、流動性に優れる。従ってこの粉末は、取り扱い性に優れる。この粉末から得られた造形物は、高強度である。この粉末から得られた被覆層は、耐摩耗性に優れる。」(段落【0027】)との技術的意義も有するものである。 エ よって、本件特許明細書の記載に基いて、発明が解決しようとする課題と本件発明との関係を理解できるから、上記アの主張は採用できない。 7 本件発明の金属粉末はFe元素の含有の有無が明確であるかについて(取消理由4について) ア 取消理由4の概要は、令和2年9月23日提出の訂正請求によって訂正された特許請求の範囲の請求項1には、「金属粉末」の組成について、「Ni及びCoのうちの少なくとも1種を含んでおり、かつこのNi及びCoの合計含有率(T.C.)が、50質量%以上」であることが特定されており、当該特定事項によれば、本件発明1は、50質量%未満であればFeを含むことを許容するものであるとする第一の解釈と、必須元素としてFeを含むことを排除しているとする第二の解釈の二通りに解釈することができるものであり、Fe元素の含有の有無について明確であるとはいえないものであったから、特許を受けようとする発明が明確であるとはいえないものであった。 イ しかしながら、本件訂正後の本件発明1の「金属粉末」が「Feを含んで」いないことが特定されたので、上記アの明確性についての取消理由は解消された。 8 甲7を主たる引用文献とする新規性・進歩性について ア 申立人は、令和 3年 3月 4日に提出された意見書と、同年 12月16日に提出された意見書において、日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、下記甲第7~14号証と参考資料1~2を提出して、次の申立理由7によって、本件訂正後の請求項1~7に係る本件特許を取り消すべきものである旨主張している。 申立理由7 本件訂正後の請求項1~7に係る発明は、甲第7号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲第7号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、同発明に係る特許は、取り消されるべきものである。 甲第7号証:I.Yadroitsev 外1名,“Selective laser melting technology: from the single laser melted track stability to 3D parts of complex shape”,Physics Procedia, 5(2010), p551-560 甲第8号証:SPECIAL METALS CORPORATION INCONEL alloy 625技術資料,2013(Aug13) 甲第9号証:特開平8-225870号公報 甲第10号証:OSPREYTM METAL POWDERS PRODUCT RANGE TECHNICAL SPECIFICATION, Sandvik,05.2015 甲第11号証:Assoc.Prof.N.A.Dolgov 外4名,“MECHANICAL PROPERTIES OF DENTAL Co-Cr ALLOYS FABRICATED VIA CASTING AND SELECTIVE LASER MELTING”,MATERIAL SCIENCE NON-EQUILIBRIUM PHASE TRANSFORMATIONS, ISSUE3,2016,p3-7 甲第12号証: Designation:F75-07 Standard Specification for Cobalt-28 Chromium-6 Molybdenum Alloy Castings and Casting Alloy for Surgical Implants(UNS R30075), ASTM International, 2007 甲第13号証:特開2015-48500号公報 甲第14号証:国際公開第2013/058339号 参考資料1:OSPREYTM METAL POWDERS PRODUCT RANGE TECHNICAL SPECIFICATION, Sandvik,05.2015(甲第10号証と同じ文献) 参考資料2:特表2008-531849号公報 なお、申立人が提出した、上記甲第7号証~甲第14号証をそれぞれ「甲7」~「甲14」ということがある。 イ 甲7について (ア)甲7に記載された事項 7ア「 [図:0001385115000028.jpg] ・・・ [図:0001385115000029.jpg] 」(551頁) (当審訳:1.はじめに 選択的レーザー溶融(SLM)は、複雑な形状とバルク材料に匹敵する機械的特性を持つ物体を金属粉末から製造する独特な技術として知られている。また、傾斜機能材料部品の製造にも有望な方法である。SLM技術は、設計コンセプトから少量生産まで、製品開発のすべての段階で使用することができる[1,2]。 ・・・ 粉末層の吸収率は、粉末材料の物理化学的性質だけでなく、粉末の粒度分布、粒子形状や見掛け密度にも依存し、本質的にバルク状の物体の吸収率よりも高くなる。・・・) 7イ「 [図:0001385115000030.jpg] [図:0001385115000031.jpg] 」(552頁) (当審訳:2.材料と実験方法 実験は、SLM装置PM100(Phenix Systems)で行った。光源には、1075nmの波長で動作するIPG Photonics社製のYLR-50cwイッテルビウムファイバーレーザーを使用した。PM100の主な特徴は、次のとおりである。:最大レーザー出力がP=50W、最大レーザー走査速度がV=3m/s、レーザスポットサイズが70μm、最小層厚が5μmである(微粉末使用時)。本機の炉は、最高900℃までの温度を提供し、保護ガスとして窒素またはアルゴンで満たされた閉鎖環境を有している。内部チャンバの動作温度は80℃に固定されていた。 表1.粉末の特性。 物質・・・Inconel625 Co212-F 粉末特性 相当直径(体積基準)μm p10 4.7 6.7 p50 9.0 16.7 p90 14.5 26.6 体積比表面積μm-1 0.783 0.482 見掛け密度% 47±0.6 61±0.4 タップ密度% 53±0.7 66±0.4 p10-p50-p90は、調査指標の10,50,90パーセンタイルである。10,50,90パーセンタイルは、調査指標の値がこの値以下である割合が10,50,90%となる値である。) 7ウ「 [図:0001385115000032.jpg] 」(553頁) (当審訳:適用した材料は事前に合金化されたガスアトマイズ粉末である。SSグレード316L(-25μm)、CuNi10(-25μm)、工具鋼H13(-25μm)はTLS Technik GMBH & Co製であり、SSグレード904L(-16μm)、Inconel625(-16μm)、Co212-F(-31μm)はSandvik Osprey Ltd.製である。(当審注:表1内の数値は実測値であるが、(-25μm)等の()内の数値は、製品カタログ上の最大粒子径を意味するものと推定される。)粒子の形状学的分析は、リアルタイム光学式ふるい分けシステムである光学式形状計ALPAGA500NANO(OCCHIO s.a.)を用いて行った。使用した金属粉末の相当直径(体積基準)、体積比表面積、タップ密度、見掛け密度を表1に示す。すべての粉末について、ほとんどの粒子は高い球形度と滑らかな表面を持ち、サテライトの量はわずかであった。) (イ)上記7ウの表1に記載の金属粉末「Inconel625」と「Co212-F」に注目すると、これらはSandvik Osprey Ltd.製のガスアトマイズ粉末であり、これら金属粉末を構成する粒子は高い球形度を備えている(7ウ)。そして表1に記載された「p10、p50」は、それぞれ、体積基準の10,50%累積直径を表すものと解されるから、本件発明1の「累積体積10%粒子径D10、累積体積50%粒子径D50」に相当する。 したがって、 Inconel625のD10=4.7μm=4.7×10-6m Inconel625のD50=9.0μm=9.0×10-6m Co212-FのD10=6.7μm=6.7×10-6m Co212-FのD50=16.7μm=16.7×10-6m と認められる。 (ウ)また、本件発明1の「Y=D50×ρ×S」を計算するにあたり、体積Vの粉末の質量をM、表面積をΣとすると、 単位質量あたりの比表面積S=Σ/M 単位体積あたりの比表面積Sv=Σ/V 密度ρ=M/V ρ×S=(M/V)×(Σ/M)=Σ/V=Sv の関係があるので、 Y=D50×ρ×S=D50×Sv として計算することができる(令和3年3月4日付け意見書第5頁15~20行の記載事項を採用。)。 ここで、単位体積あたりの比表面積Svは、表1では「体積比表面積(μm-1)」と記載されているものであり、 Inconel625のSv=0.783μm-1=0.783×106m-1 Co212-FのSv=0.482μm-1=0.482×106m-1 であるから、値Yは次のとおりに算出される。 Inconel625について Y=D50×Sv=9.0×10-6m×0.783×106m-1 =7.047≒7.05 Co212-Fについて Y=D50×Sv=16.7×10-6m×0.482×106m-1 =8.0494≒8.05 (エ)甲7に記載された発明 上記(イ)、(ウ)の検討によれば、甲7には、選択的レーザー溶融(SLM)に用いられる次の金属粉末が記載されているものと認められる。 「ガスアトマイズ法で製造された高い球形度を備えている粒子から構成されるInconel625金属粉末であって、 累積10体積%粒子径D10が、4.7μmであり、 下記数式によって算出される値Yが、7.05である金属粉末。 Y = D50 × ρ × S」(甲7発明1) 「ガスアトマイズ法で製造された高い球形度を備えている粒子から構成されるCo212-F金属粉末であって、 累積10体積%粒子径D10が、6.7μmであり、 下記数式によって算出される値Yが、8.05である金属粉末。 Y = D50 × ρ × S」(甲7発明2) ウ 甲8について (ア)甲8に記載された事項 8ア「 [図:0001385115000033.jpg] 」(第1頁左欄1~6行) (当審訳:INCONEL ニッケル-クロム合金625(UNSN06625/W,Nr,2.4856)は、その高強度、優れた加工性(溶接性も含む)、及び極めて優れた耐腐食性を理由に用いられる。使用温度は極低温から1800°F(982℃)である。組成は表1に示される。) 8イ「 [図:0001385115000034.jpg] 」(第1頁右欄下) (当審訳:表1 化学組成の制限。%) エ 甲9について (ア)甲9に記載された事項 9ア「【0015】 【実施例】次に、本発明を一層明らかにするために、実施例を比較例と対比させつつ以下に説明する。実施例及び比較例のNb含有Ni基合金粉末の組成を、表1に示す。いずれもインコネル625相当のNi基合金である。 【0016】 【表1】 [図:0001385115000035.jpg] 」 オ 甲10(参考資料1)について (ア)甲10に記載された事項 10ア「 [図:0001385115000036.jpg] 」(第2頁右欄) (当審訳:化学組成 以下の表における値は、他に断り書きがないかぎり名目上の値である。最大値はアスタリスク*によってハイライトされている。) 10イ「 [図:0001385115000037.jpg] 」(第4頁) (当審訳:コバルト合金) カ 甲11について (ア)甲11に記載された事項 11ア「 [図:0001385115000038.jpg] 」(第3頁右欄27~30行) (当審訳:・・・この研究の目的は、SLM工程を用いてCo-Cr合金を製造し、また、微細構造と機械特性について調査することである。) 11イ「 [図:0001385115000039.jpg] 」(第4頁左欄) (当審訳:表1 使用された合金の化学組成 SLMの試料(図1)は、ドイツの“SLMソリューションズ”製のSLM125を用いて、バーチャル3Dモデルから直接に製造された。この機械は、出力100Wレーザスポット径0.2mmの連続Nd:YAGレーザを装備している。Co-Cr合金である、表1のCo212-f ASTM F75の金属粉末は、所望の構成が得られるまで、0.03mm厚さの複数層に溶解される。・・・) キ 甲12について (ア)甲12に記載された事項 12ア「 [図:0001385115000040.jpg] 」(第1頁) 「指定:F75-07 コバルト-28クロム-6モリブデン合金の鋳造と医療インプラント用鋳造合金のための標準規格」 12イ「 [図:0001385115000041.jpg] [図:0001385115000042.jpg] 」(第2頁左欄下) (当審注:6.化学的要求 6.1 製品の鋳造及び鋳造用合金は、表1に記載された化学的要求に準じていなければならない。供給者は、表1に特定された制限を超えるような物質を出荷してはいけない。 6.1.1 ・・・ 6.1.2 主たる元素構成と従たる元素構成についての要求は表1に一覧表として表されている。また、重要な残余の元素についても同様である。この規格に遵守していることを証明するために、表1に一覧されていない元素について分析することは求められない。) 12ウ「 [図:0001385115000043.jpg] 」(第2頁左欄下) (当審訳:表1 化学組成) ク 甲13について (ア)甲13に記載された事項 13ア「【0095】 〔Co-28Cr-6Mo合金について〕 まず、Co-28Cr-6Mo合金からなる粉末粒子を焼結することによって金属材料を製造した際の実験例について説明する。 (実験例1~4) 粉末粒子として、回転電極法によって製造されたCo-28Cr-6Mo合金(ASTM-F75相当)の粉末(平均粒子径217μm)を用いた。 このCo-28Cr-6Mo合金の粉末粒子の化学成分は、下記表1の通りであり、用いた粉末粒子は、実質的に単一の合金からなるものであることが確認できる。 【0096】 【表1】 [図:0001385115000044.jpg] 」 ケ 甲14について (ア)甲14に記載された事項 14ア「【背景技術】 【0002】 Co-Cr-Mo合金は、生体用の材料として世界中で広く使用されており、例えばASTM F75規格のCo-28%Cr-6%Mo合金(鋳造材)などが知られている。しかし、ASTM F75規格材は、鋳造ままで凝固欠陥や偏析を十分に抑制することが難しく、強度及び延性に改善の余地があった。」 14イ「【0010】 本発明には、上記生体用Co-Cr-Mo合金を製造するために用いる粉末も包含され、この粉末は、粒径が100μm以下であるところに要旨を有している。」 コ 参考資料2について (ア)参考資料2に記載された事項 15ア「【0031】 このようにして調製した、寸法300mmx150mmx1.9mmのベース発泡体を振動装置中に固定し、粉末混合物を散布した。振動により、結合剤で濡らしたベース発泡体の表面上に粉末を一様に分配させることができた。同時に、ベース発泡体の開気孔質は維持されている。この混合物中には、下記の組成、すなわち炭素0.1質量%、クロム22.4質量%、モリブデン10質量%、鉄4.8質量%、コバルト0.3質量%、ニオブ3.8質量%、ニッケル58.6質量%、を有する、「Inconel 625」の商品名で市販されている粉末状ニッケル系合金が含まれている。」 サ 甲7発明1を主たる発明とする新規性・進歩性についての当審の判断 (ア)甲7発明1を再掲すると次のとおりである。 「ガスアトマイズ法で製造された高い球形度を備えている粒子から構成されるInconel625金属粉末であって、 累積10体積%粒子径D10が、4.7μmであり、 下記数式によって算出される値Yが、7.05である金属粉末。 Y = D50 × ρ × S」(甲7発明1) (イ)甲7発明1と本件発明1、2との対比 本件発明1、2の「金属粉末」と甲7発明1の「金属粉末」を対比すると一致点、相違点は次のとおりである。 <一致点> 「多数の球状粒子からなり、 累積10体積%粒子径D10が、1.0μm以上である金属粉末」の点。 <相違点13> 金属粉末の化学組成について、本件発明1、2は、「Ni及びCoのうちの少なくとも1種を含んでおり、Feを含んでおらず、かつこのNi及びCoの合計含有率(T.C.)が、50質量%以上であり」(本件発明1)又は「Ni及びCoのうちの少なくとも1種を含んでおり、かつこのNi及びCoの合計含有率(T.C.)が、50質量%以上であり、上記Ni及びCoの残部が、C、Si、Cr、Mo、Al、Ti、V、W、Nb、Zn、Ta、B、Ag、Cu及びSnのうちの少なくとも1種並びに不可避不純物」(本件発明2)であるのに対して、甲7発明1は組成が特定されておらず不明である点。 <相違点14> 「値Y」について、本件発明1、2はいずれも「7.5以上12.0以下」であるのに対して、甲7発明1は「7.05」である点。 (ウ)相違点についての判断 上記相違点14について検討する。 甲7について、上記イ(ア)で摘記した記載及びその他の記載を参照しても、甲7発明1の値Yを本件発明のような「7.5以上12.0以下」とすることを動機付けるような記載や示唆を見いだすことはできない。 そして、本件発明は、上記6で検討したように、値Yを「7.5以上12.0以下」とすることによって、粉末の流動性が向上するとともに、取り扱い性に優れ、この粉末から得られた造形物は高強度であるという本件発明の効果を奏するものである。 したがって、相違点13について検討するまでもなく、本件発明1、2は、甲7発明1と同一ではないし、甲7発明1から当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 なお、甲8、甲9、参考資料2には、Inconel625の合金組成が記載されているにとどまり、値Yについての何らかの示唆を与えるものとはいえない。 (エ)本件発明3~7について 本件発明3~7は、本件発明1又は本件発明2を引用して、さらに限定するものであるから、本件発明3~7と甲7発明1は、少なくとも、相違点14で相違しており、本件発明1及び本件発明2について検討した理由と同様の理由によって、甲7発明1から当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 シ 甲7発明2を主たる発明とする新規性・進歩性についての当審の判断 (ア)甲7発明2を再掲すると次のとおりである。 「ガスアトマイズ法で製造された高い球形度を備えている粒子から構成されるCo212-F金属粉末であって、 累積10体積%粒子径D10が、6.7μmであり、 下記数式によって算出される値Yが、8.05である金属粉末。 Y = D50 × ρ × S」(甲7発明2) (イ)甲7発明2と本件発明1、2との対比 本件発明1、2の「金属粉末」と甲7発明2の「金属粉末」を対比すると一致点、相違点は次のとおりである。 <一致点> 「多数の球状粒子からなり、 累積10体積%粒子径D10が、1.0μm以上であり、 下記数式によって算出される値Yが、7.5以上12.0以下である金属粉末」の点。 <相違点15> 金属粉末の化学組成について、本件発明1、2は、「Ni及びCoのうちの少なくとも1種を含んでおり、Feを含んでおらず、かつこのNi及びCoの合計含有率(T.C.)が、50質量%以上であり」(本件発明1)又は「Ni及びCoのうちの少なくとも1種を含んでおり、かつこのNi及びCoの合計含有率(T.C.)が、50質量%以上であり、上記Ni及びCoの残部が、C、Si、Cr、Mo、Al、Ti、V、W、Nb、Zn、Ta、B、Ag、Cu及びSnのうちの少なくとも1種並びに不可避不純物」(本件発明2)であるのに対して、甲7発明2は組成が特定されておらず不明である点。 (ウ)相違点15についての判断 a 甲7発明2の金属粉末は、Sandvik Osprey Ltd.製の「Co212-F」であり市販されているものであるところ、当該金属粉末の組成は、甲11の表1に記載された「Co212-f」の組成と同じものと推定され、その組成は次のとおりである(単位は質量%)。 Co 65.2 Cr 28.3 Mo 5.48 Si 0.754 Fe 0.164 b 上記aの組成によれば、「Co212-F」は、成分としてFeを0.164質量%含んでいて、甲7には、当該Feが不可避不純物であるとの説明もないのに対して、本件発明1,2の金属粉末は成分としてFeを含まないことが特定されているから、上記組成におけるFe含有の有無についての相違点は、本件発明1,2と甲7発明2との実質的な相違点である。 そして、甲11の表1には「Co212-f ASTM F75」と記載されており、当該記載は、「Co212-f」が同表1に記載の「ASTM F75」の合金組成の規格に準拠する合金であることを示すにとどまり、「Co212-f」合金に含有されるFe成分を除去してFeを含まない金属粉末にすることを動機付けるような記載であるとまでは認めることができない。 c したがって、甲7発明2において、Co212-F金属粉末の組成からFeを除去することによって、本件発明1,2の合金組成とすることが、当業者にとって容易になし得ることであるとはいえない。 d なお、甲10(参考資料1)には「Co212」の組成が記載されているが、「Co212」と「Co212-F」は、Mn含有の有無が異なっており、同一の合金であるとはいえない。 また、甲12には、ASTM F75が規定する合金組成の規格が記載されているにとどまり、甲7発明2の「Co212-F」合金においてFeを排除することを動機付けるものであるとまではいうことができない。 また、甲13、甲14には、ASTM-F75の規格に適合するCo-28Cr-6Mo合金の粉末について記載されているにとどまり、甲7発明2の「Co212-F」合金においてFeを排除することを動機付けるものであるとまではいうことができない。 (エ)本件発明3~7について 本件発明3~7は、本件発明1又は本件発明2を引用して、さらに限定するものであるから、本件発明3~7と甲7発明2は、相違点15の点で相違しており、本件発明1及び本件発明2について検討した理由と同様の理由によって、甲7発明2から当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 第7 まとめ 以上のとおり、取消理由通知書に記載した取消理由、特許異議申立書に記載した特許異議の申立ての理由、及び令和 3年 3月 4日と同年 12月16日に提出された意見書に記載した追加の理由によっては、本件訂正後の請求項1~7に係る特許を取り消すことはできない。また、他に本件訂正後の請求項1~7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2020-700402

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