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特許異議申立

2023-700217

油脂含有排水処理方法、システムおよび装置

審判番号
2023-700217
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2019-540014
登録番号
7128530
請求日
2023年02月27日
審決日
2023年05月18日
公報発行日
2023年06月30日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】国立大学法人東海国立大学機構
  • 【権利者代理人】山本 秀策
  • 【権利者代理人】森下 夏樹
  • 【権利者代理人】▲駒▼谷 剛志
  • 【権利者代理人】飯田 貴敏
  • 【権利者代理人】石川 大輔
  • 【権利者代理人】山本 健策
  • 【異議申立人】井上 朝子
審判長/審判官
  • 審判長 日比野 隆治
  • 審判官 金 公彦
  • 審判官 松井 裕典
分類
P1651.121-Y (C12N) / P1651.536-Y (C12N) / P1651.537-Y (C12N)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第2条第3項第2号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7128530号発明「油脂含有排水処理方法、システムおよび装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7128530号の請求項1~12に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7128530号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~12に係る特許についての出願は、2018年(平成30年)11月14日(優先権主張 平成29年11月14日 平成30年10月26日)を国際出願日とする出願であって、令和4年8月23日にその特許権の設定登録がされ、同年同月31日に特許掲載公報が発行され、その後、令和5年2月27日に、請求項1~12に係る特許について、特許異議申立人 井上 朝子(以下、「申立人」という。)により、甲第1~4号証を証拠方法として特許異議の申立てがなされたものである。 第2 本件発明 本件特許の請求項1~12に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」~「本件発明12」といい、これらを総称して「本件発明」ということがある。)は、それぞれ、特許請求の範囲の請求項1~12に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「【請求項1】 油脂含有排水が連続的に流入出する油脂分解槽に、油脂分解能力を有する微生物製剤を連続的又は間欠的に投入し、油脂を分解する工程であって、前記微生物製剤の投入量が、微生物が油脂分解槽に定着するのに有効な量であり、油脂含有排水には前記微生物製剤に含まれる投入微生物以外の微生物が存在する、工程を含み、 前記油脂分解槽からの流出水中の投入微生物量が、1×108cells/mL以下であり、 前記微生物製剤の投入量が、油脂分解槽中の排水に対して5.0×104cells/mL以上であり、 前記微生物製剤が、22~35℃、pH=5.5~8.5、DO≧0.1mg/L、バッチ培養の条件で、1.0×106cells/mLになるように植菌された場合に、n-Hex値=10000mg/L相当の油脂及び加水分解物産物の脂肪酸を、72時間内に80%以上分解する能力を有し、 前記排水が平均してノルマルヘキサン抽出物300mg/L以上の濃度の油脂を含み、 前記油脂分解槽の水理学的滞留時間(HRT)が12時間以上であり、 前記微生物製剤の投入間隔は、前記HRT以下であり、 前記油脂分解槽中の油脂含有排水のpHが4.5~9.0の範囲内であり、 前記油脂分解槽中の油脂含有排水の温度が12~42℃の範囲内であり、 前記油脂分解槽からの流出水中の投入微生物の濃度が、前記油脂分解槽に投入する投入時投入微生物の濃度の0.1倍以上100倍以下であり、 前記投入微生物がバークホルデリア・アルボリスを最も多く含み、 前記油脂分解槽は担体を含まない、油脂含有排水処理方法。 【請求項2】 前記投入微生物が、リパーゼを生産する微生物、並びに脂肪酸及び/又はグリセロールを分解する微生物からなる群から選択される少なくとも1種の微生物をさらに含む、請求項1に記載の処理方法。 【請求項3】 前記投入微生物が、バチルス属細菌、コリネバクテリウム属細菌、ロドコッカス属細菌、バークホルデリア属細菌、アシネトバクター属細菌、シュードモナス属細菌、アルカリゲネス属細菌、ロドバクター属細菌、ラルストニア属細菌、アシドボラックス属細菌、セラチア属細菌、フラボバクテリウム属細菌、カンジダ属酵母、ヤロウィア属酵母、クリプトコッカス属酵母、トリコスポロン属酵母、及びハンゼヌラ属酵母からなる群から選択される少なくとも1種の微生物をさらに含む、請求項1または2に記載の処理方法。 【請求項4】 前記投入微生物がヤロウィア・リポリティカをさらに含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の処理方法。 【請求項5】 前記投入微生物の投入量が、油脂分解槽中の排水に対して5.0×104~1.0×107cells/mLとなる量である、請求項1~4のいずれか一項に記載の処理方法。 【請求項6】 前記投入微生物の投入量が、前記油脂分解槽に流入する油脂含有排水中のノルマルヘキサン抽出物1mg当たり、3.0×104~1.0×108cellsである、請求項1~5のいずれか一項に記載の処理方法。 【請求項7】 前記投入微生物の投入量が、前記油脂分解槽に流入する油脂含有排水中のノルマルヘキサン抽出物1mg当たり、3.0×104~1.0×107cellsである、請求項6に記載の処理方法。 【請求項8】 前記油脂分解槽中の油脂含有排水の溶存酸素濃度が0.05mg/L以上である、請求項1~7のいずれか一項に記載の処理方法。 【請求項9】 前記油脂分解槽のHRTが12時間以上48時間以下である、請求項1~8のいずれか一項に記載の処理方法。 【請求項10】 前記油脂分解槽中の油脂含有排水のC/Nが2~50の範囲内である、請求項1~9のいずれか一項に記載の処理方法。 【請求項11】 前記油脂分解槽中の油脂含有排水のN/Pが1~20の範囲内である、請求項1~10のいずれか一項に記載の処理方法。 【請求項12】 前記油脂分解槽からの流出水中の投入微生物の濃度が、前記油脂分解槽に投入する投入時投入微生物の濃度の0.1倍~10倍である、請求項1~11のいずれか一項に記載の処理方法。」 第3 特許異議申立理由の概要 1 特許法第29条第2項所定の規定違反(進歩性欠如)について 本件発明1~12は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2~4号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1~12に係る特許は、特許法第29条第2項所定の規定に違反してされたものである。 2 特許法第36条第6項第1号所定の規定違反(サポート要件違反)について (1)本件発明1においては、「前記投入微生物がバークホルデリア・アルボリスを最も多く含」むことが特定されているが、本件特許明細書にはバークホルデリア・アルボリスとヤロウィア・リポリティカの混合製剤を用いた実施例しか記載されておらず、それ以外の微生物製剤までサポートされていないから、本件特許請求の範囲の記載はサポート要件を満たさない。 (2)本件発明2においては、「前記投入微生物が、リパーゼを生産する微生物、並びに脂肪酸及び/又はグリセロールを分解する微生物からなる群から選択される少なくとも1種の微生物をさらに含む」ことが特定されているが、本件特許明細書にはバークホルデリア・アルボリスとヤロウィア・リポリティカの混合製剤を用いた実施例しか記載されておらず、それ以外の微生物製剤までサポートされていないから、本件特許請求の範囲の記載はサポート要件を満たさない。 (3)本件発明3においては、「前記投入微生物が、バチルス属細菌、コリネバクテリウム属細菌、ロドコッカス属細菌、バークホルデリア属細菌、アシネトバクター属細菌、シュードモナス属細菌、アルカリゲネス属細菌、ロドバクター属細菌、ラルストニア属細菌、アシドボラックス属細菌、セラチア属細菌、フラボバクテリウム属細菌、カンジダ属酵母、ヤロウィア属酵母、クリプトコッカス属酵母、トリコスポロン属酵母、及びハンゼヌラ属酵母からなる群から選択される少なくとも1種の微生物をさらに含む」ことが特定されているが、本件特許明細書にはバークホルデリア・アルボリスとヤロウィア・リポリティカの混合製剤を用いた実施例しか記載されておらず、それ以外の微生物製剤までサポートされていないから、本件特許請求の範囲の記載はサポート要件を満たさない。 3 特許法第36条第4項第1号所定の規定違反(実施可能要件違反)について (1)本件発明1においては、「前記投入微生物がバークホルデリア・アルボリスを最も多く含」むことが特定されているが、本件特許明細書にはバークホルデリア・アルボリスとヤロウィア・リポリティカの混合製剤を用いた実施例しか記載されておらず、当業者は、それ以外の微生物製剤について実施することができないから、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は実施可能要件を満たさない。 (2)本件発明2においては、「前記投入微生物が、リパーゼを生産する微生物、並びに脂肪酸及び/又はグリセロールを分解する微生物からなる群から選択される少なくとも1種の微生物をさらに含む」ことが特定されているが、本件特許明細書にはバークホルデリア・アルボリスとヤロウィア・リポリティカの混合製剤を用いた実施例しか記載されておらず、当業者は、それ以外の微生物製剤について実施することができないから、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は実施可能要件を満たさない。 (3)本件発明3においては、「前記投入微生物が、バチルス属細菌、コリネバクテリウム属細菌、ロドコッカス属細菌、バークホルデリア属細菌、アシネトバクター属細菌、シュードモナス属細菌、アルカリゲネス属細菌、ロドバクター属細菌、ラルストニア属細菌、アシドボラックス属細菌、セラチア属細菌、フラボバクテリウム属細菌、カンジダ属酵母、ヤロウィア属酵母、クリプトコッカス属酵母、トリコスポロン属酵母、及びハンゼヌラ属酵母からなる群から選択される少なくとも1種の微生物をさらに含む」ことが特定されているが、本件特許明細書にはバークホルデリア・アルボリスとヤロウィア・リポリティカの混合製剤を用いた実施例しか記載されておらず、当業者は、それ以外の微生物製剤について実施することができないから、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は実施可能要件を満たさない。 4 特許法第36条第6項第2号所定の規定違反(明確性要件違反)について 本件発明1においては、「前記投入微生物がバークホルデリア・アルボリスを最も多く含」むことが特定されているが、「最も」とは、通常、3種類以上存在する際に用いる語句であるのに、本件発明1においては投入微生物が3種類以上含まれることが特定されていないし、本件特許明細書にはバークホルデリア・アルボリスとヤロウィア・リポリティカの混合製剤という2種の微生物を用いた実施例しか記載されておらず、「最も」という語句を用いるにはふさわしくないから、本件発明1における「前記投入微生物がバークホルデリア・アルボリスを最も多く含」む、との発明特定事項は不明確であるので、本件特許請求の範囲の記載は明確性要件を満たさない。 5 証拠方法 甲第1号証:堀 克敏 監著,「低コスト・ハイパフォーマンス技術による水処理革命」,初版第1刷,2013年12月11日,株式会社コロナ社,目次,p.145-161 甲第2号証:堀 克敏,「バイオコントロールによる高濃度油脂含有排水のハイパフォーマンス処理」,Journal of Environmental Biotechnology,2017年5月31日,Vol.17,No.1,p.3-8 甲第3号証:特開2013-146689号公報 甲第4号証:特開2017-177031号公報 第4 特許異議申立理由についての当審の判断 1 特許法第29条第2項所定の規定違反(進歩性欠如)について (1)甲各号証の記載事項等 ア 甲第1号証の記載事項及び甲第1号証に記載された発明 (ア)甲第1号証には、以下のa~bの記載がある(当審注:下線は当審が付与した。また、「・・・」は記載の省略を表す。以下、同様である。)。 a「6.4 弱酸性条件下で油脂分解能に長けた微生物の探索 このような高濃度油脂含有廃水の課題を解決する新たな手法として,油脂成分の消化分解能力に長けた好気性微生物を活用した油脂成分の前処理法が提唱されている。これは,現状の生物処理槽の前段階に油脂成分を効率的に消化分解するための「油分解槽」を設け,槽内に油脂分解微生物が優占するように微生物製剤を定期的に投入する方法である。 ・・・ また,短い滞留時間のうちに油脂成分を効率的に分解除去させるためには,図6.1で示した化学反応式に沿って,戦略的に微生物を配合することが重要である。つまり,まずは油脂分解酵素リパーゼが効果的に作用してトリグリセリドが脂肪酸とグリセリンに加水分解され,その後にこれらの生成物が効率よく消化分解されることが望ましい。したがって、リパーゼを産出する微生物と加水分解生成物である脂肪酸とグリセリンを優先的に資化する微生物が,油分解槽内で弱酸性条件下において互いに共存し合うことができれば,トリグリセリドの加水分解逆反応が抑制され,非常に効率よく油脂成分を分解処理することが期待される。 このような微生物の探索戦略に基づき,弱酸性条件下において動植物性油脂の消化分解能力に優れた2種類の微生物の単離同定に成功した例が2009年に報告された3)。この2種の微生物とは,油脂分解酵素リパーゼを産出し遊離の脂肪酸を優先的に資化する細菌Burkholderia arboris SL1B1(以後,B.arborisと略す)および加水分解生成物であるグリセリンを資化する酵母Candida cylindracea SL1B2(以後,C.cylindraceaと略す)である。 これら微生物による油脂成分の消化分解過程を示すのが図6.2である。・・・培養条件は,培地体積=3L,温度=28℃,pH=6.0,である。・・・このことから、B.arboris単独培養で,10 000mg/Lもの高濃度の植物油を32時間という短時間でほぼ完全に消化分解することが確認された。さらに興味深いことに,B.arborisとC.cylindraceaの2種混合培養を行うと,植物油の消化分解時間が24時間まで短縮された。」(148ページ19行~151ページ4行) b「6.5 油脂分解微生物製剤を活用した工場廃水の油分解処理の実証例 前述のように,新たに発見された微生物群に関しては,実験室レベルで油脂成分の高効率な分解除去効果が確認された。つぎに,食用油脂メーカー工場敷地内の総合排水処理場に油分解槽パイロットプラントを設置して,実際の工場廃水を用いた分解除去効果の実証実験が行われた。 図6.3に排水処理場の全体概要図を示す。当該工場の廃水は,油脂含有量が特に多い重負荷廃水と洗浄水を中心とした雑排水に大別される。重負荷廃水のノルマルヘキサン抽出物質量(n-hex)は4 000mg/L以上,また化学的酸素要求量(chemical oxygen demand, COD)および生物学的酸素要求量(biochemical oxygen demand, BOD)が7 000mg/Lと非常に高濃度である。・・・ 実証実験では,重負荷廃水を前段処理して活性汚泥槽にかかる油脂成分負荷を低減することを目的として油分解槽を設置し,実用可能な排水処理システムを検討した。重負荷廃水の一部を油分解槽に移送し,滞留時間が24時間の連続処理システムに調整し,油脂分解微生物製剤を毎日一定量投与した。また,槽内には,油脂分解微生物が油分解活性を高く維持するのに必要な空気を供給し,pHはつねに6以上を保つように制御した。 本実証試験は,およそ3週間にわたり実施された。期間中の重負荷廃水および油分解処理水のn-hex値とBOD値の推移を図6.4(a)に示す。重負荷廃水のn-hex値とBOD値がともに3 000mg/L以上と高濃度であった一方で,油分解処理水ではどちらの値も期間内にわたって1 000mg/L以下を示し,n-hex減少率およびBOD減少率が最大で80%以上の数値を達成した。このことから,油脂分解微生物を活用した油分解処理システムが,加圧浮上分離装置に匹敵する油除去効果を発揮することが実証された。」(151ページ10行~152ページ最終行) (イ)前記(ア)bの記載によれば、甲第1号証には、実際の工場廃水を用いた分解除去効果の「実証実験」が記載されており、当該「実証実験」は、食用油脂メーカー工場敷地内の総合排水処理場に油分解槽パイロットプラントを設置して行われたものであって、当該工場の廃水は、油脂含有量が特に多い重負荷廃水と洗浄水を中心とした雑排水に大別され、重負荷廃水のノルマルヘキサン抽出物質量(n-hex)は4 000mg/L以上、また化学的酸素要求量(chemical oxygen demand, COD)及び生物学的酸素要求量(biochemical oxygen demand, BOD)が7 000mg/Lと非常に高濃度であるものである。 そして、前記「実証実験」では、重負荷廃水を前段処理して活性汚泥槽にかかる油脂成分負荷を低減することを目的として油分解槽を設置し、実用可能な排水処理システムを検討したものであり、重負荷廃水の一部を油分解槽に移送し、滞留時間が24時間の連続処理システムに調整し、油脂分解微生物製剤を毎日一定量投与したものであり、槽内には、油脂分解微生物が油分解活性を高く維持するのに必要な空気を供給し、pHはつねに6以上を保つように制御したものであり、前記「実証試験」は、およそ3週間にわたり実施され、期間中の重負荷廃水のn-hex値とBOD値がともに3 000mg/L以上と高濃度であった一方で、油分解処理水ではどちらの値も期間内にわたって1 000mg/L以下を示し、n-hex減少率およびBOD減少率が最大で80%以上の数値を達成したことから、油脂分解微生物を活用した油分解処理システムが、加圧浮上分離装置に匹敵する油除去効果を発揮することが実証されたものである。 また、前記(ア)aの記載によれば、前記「実証実験」で用いられた微生物製剤は、油脂分解酵素リパーゼを産出し遊離の脂肪酸を優先的に資化する細菌Burkholderia arboris SL1B1(B.arboris)及び加水分解生成物であるグリセリンを資化する酵母Candida cylindracea SL1B2(C.cylindracea)であり、培地体積=3L、温度=28℃、pH=6.0の培養条件でのB.arboris単独培養で、10 000mg/Lの高濃度の植物油を32時間という短時間でほぼ完全に消化分解することが確認され、B.arborisとC.cylindraceaの2種混合培養を行うと、植物油の消化分解時間が24時間まで短縮されたものである。 (ウ)前記(イ)によれば、甲第1号証には、 「実際の工場廃水を用いた分解除去効果の実証実験であって、 当該実証実験は、食用油脂メーカー工場敷地内の総合排水処理場に油分解槽パイロットプラントを設置して行われたものであり、当該工場の廃水は、油脂含有量が特に多い重負荷廃水と洗浄水を中心とした雑排水に大別され、重負荷廃水のノルマルヘキサン抽出物質量(n-hex)は4 000mg/L以上、また化学的酸素要求量(chemical oxygen demand, COD)及び生物学的酸素要求量(biochemical oxygen demand, BOD)が7 000mg/Lと非常に高濃度であるものであり、 前記実証実験では、重負荷廃水を前段処理して活性汚泥槽にかかる油脂成分負荷を低減することを目的として油分解槽を設置し、実用可能な排水処理システムを検討したものであり、重負荷廃水の一部を油分解槽に移送し、滞留時間が24時間の連続処理システムに調整し、油脂分解微生物製剤を毎日一定量投与したものであり、槽内には、油脂分解微生物が油分解活性を高く維持するのに必要な空気を供給し、pHはつねに6以上を保つように制御したものであり、 前記実証試験は、およそ3週間にわたり実施され、期間中の重負荷廃水のn-hex値とBOD値がともに3 000mg/L以上と高濃度であった一方で、油分解処理水ではどちらの値も期間内にわたって1 000mg/L以下を示し、n-hex減少率およびBOD減少率が最大で80%以上の数値を達成したことから、油脂分解微生物を活用した油分解処理システムが、加圧浮上分離装置に匹敵する油除去効果を発揮することが実証されたものであり、 前記実証実験で用いられた微生物製剤は、油脂分解酵素リパーゼを産出し遊離の脂肪酸を優先的に資化する細菌Burkholderia arboris SL1B1(B.arboris)及び加水分解生成物であるグリセリンを資化する酵母Candida cylindracea SL1B2(C.cylindracea)であり、培地体積=3L、温度=28℃、pH=6.0の培養条件でのB.arboris単独培養で、10 000mg/Lの高濃度の植物油を32時間という短時間でほぼ完全に消化分解することが確認され、B.arborisとC.cylindraceaの2種混合培養を行うと、植物油の消化分解時間が24時間まで短縮されたものである、実証実験。」の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されているといえる。 イ 甲第2号証の記載事項 甲第2号証には、以下の記載がある。 「排水中には実に多くの微生物が存在し,微生物生態系を形成している。ここに外来の微生物を入れても,既に形成されている微生物生態系の中で,投入された微生物が定着することは困難である6)。」(6ページ右欄2行~5行) ウ 甲第3号証の記載事項 甲第3号証には、以下の記載がある。 「【0023】 本発明で用いるヤロウィア リポリティカの使用量は、処理対象や処理条件等を考慮して設定することができる。使用量の例を挙げれば、工場排水(ノルマルヘキサン値が約300mg/L)に適用する場合、1×104CFU/mL~1×109CFU/mLのヤロウィア リポリティカ培養物を処理槽の容積1L当たり1mL~100mL添加する。グリーストラップに適用する場合にあっては、1×104CFU/mL~1×1011CFU/mLのヤロウィア リポリティカ培養物をグリーストラップの容積1L当たり1 mL~100 mL添加する。併用する成分の使用量についても同様に、処理対象や処理条件等を考慮して設定すればよい。バークホルデリア アルボリスを併用する場合の使用量は、例えば、処理槽の容積1L当たり1×104CFU/mL~1×109CFU/mLの培養物1 mL~100 mL(排水処理の場合)、グリーストラップの容積1L当たり1×104CFU/mL~1×1011CFU/mLの培養物1 mL~100 mL(グリーストラップの浄化の場合)である。同様に、カンジダ シリンドラセアを併用する場合の使用量は、例えば、処理槽の容積1L当たり1×104CFU/mL~1×109CFU/mLの培養物1 mL~100 mL(排水処理の場合)、グリーストラップの容積1L当たり1×104CFU/mL~1×1011CFU/mLの培養物1 mL~100 mL(グリーストラップの浄化の場合)である。尚、効果を持続させるために、例えば1時間~7日の間隔で微生物の追加又は交換を行うことが好ましい。微生物の使用量と同様に、追加又は交換の頻度は処理対象や処理条件等を考慮して設定すればよい。」 エ 甲第4号証の記載事項 甲第4号証には、以下の記載がある。 「【0069】 本発明にかかる方法において、添加する菌量は任意に設定できる。排水に添加する菌量は、特に制限されるものではないが、排水に含まれる油分1gに対して1×104~1×1012CFUであり、好ましくは1×105~1×1011CFUである。または、グリーストラップ内の排水に対して、例えば1×106~1×1012CFU/L、より好ましくは1×107~1×1011CFU/Lとなるような量であってもよい。なお、油分分解菌を2種以上組み合わせて用いる場合は、その合計量を意味する。なお、排水に添加する油分分解菌は、前培養したものを用いてもよい。前培養することにより、接種する菌量を容易に調節できる。また、生菌製剤の形態の油分分解菌を用いることでも、接種する菌量を容易に調節できる。」 (2)対比・判断 ア 対比 (ア)本件発明1と甲1発明とを対比すると、甲1発明における「重負荷廃水」、「油分解槽」、「油脂分解微生物製剤」及び「実証実験」は、それぞれ、本件発明1における「油脂含有排水」、「油脂分解槽」、「微生物製剤」及び「油脂含有排水処理方法」に相当する。 また、甲1発明において、「重負荷廃水の一部を油分解槽に移送し」、「油脂分解微生物製剤を毎日一定量投与」することは、本件発明1における、「油脂含有排水が連続的に流入出する油脂分解槽に、油脂分解能力を有する微生物製剤を連続的又は間欠的に投入し、油脂を分解する工程」に相当し、甲1発明において、「培地体積=3L、温度=28℃、pH=6.0の培養条件でのB.arboris単独培養で、10 000mg/Lの高濃度の植物油を32時間という短時間でほぼ完全に消化分解することが確認され、B.arborisとC.cylindraceaの2種混合培養を行うと、植物油の消化分解時間が24時間まで短縮された」ことは、本件発明1において、「前記微生物製剤が、22~35℃、pH5.5~8.5」、「の条件で」「植菌された場合に」、「n-Hex値=10000mg/L相当の油脂及び加水分解物産物の脂肪酸を、72時間内に80%以上分解する能力を有」することに相当し、甲1発明において、「期間中の重負荷廃水のn-hex値とBOD値がともに3 000mg/L以上と高濃度であった」ことは、本件発明1において、「前記排水が平均してノルマルヘキサン抽出物300mg/L以上の濃度の油脂を含」むことに相当する。 更に、甲1発明において、「滞留時間が24時間の連続処理システムに調整し、油脂分解微生物製剤を毎日一定量投与した」ことは、本件発明1において、「前記油脂分解槽の水理学的滞留時間(HRT)が12時間以上であり、前記微生物製剤の投入間隔は、前記HRT以下」であることに相当し、甲1発明において、「pHはつねに6以上を保つように制御した」ことは、本件発明1において、「前記油脂分解槽中の油脂含有排水のpHが4.5~9.0の範囲内」であることとおおよそ重複するものであり、甲1発明において、「前記実証実験で用いられた微生物製剤」が、「油脂分解酵素リパーゼを産出し遊離の脂肪酸を優先的に資化する細菌Burkholderia arboris SL1B1(B.arboris)及び加水分解生成物であるグリセリンを資化する酵母Candida cylindracea SL1B2(C.cylindracea)」であることは、本件発明1において、「前記投入微生物がバークホルデリア・アルボリスを」「含」むことに相当する。 (イ)前記(ア)によれば、本件発明1と甲1発明とは、 「油脂含有排水が連続的に流入出する油脂分解槽に、油脂分解能力を有する微生物製剤を連続的又は間欠的に投入し、油脂を分解する工程を含み、 前記微生物製剤が、22~35℃、pH5.5~8.5の条件で植菌された場合に、n-Hex値=10000mg/L相当の油脂及び加水分解物産物の脂肪酸を、72時間内に80%以上分解する能力を有し、 前記排水が平均してノルマルヘキサン抽出物300mg/L以上の濃度の油脂を含み、 前記油脂分解槽の水理学的滞留時間(HRT)が12時間以上であり、 前記微生物製剤の投入間隔は、前記HRT以下であり、 前記油脂分解槽中の油脂含有排水のpHが4.5~9.0の範囲内であり、 前記投入微生物がバークホルデリア・アルボリスを含む、 油脂含有排水処理方法。」 の点で一致し、以下の点で相違する。 ・相違点1:本件発明1においては、「前記微生物製剤の投入量が、微生物が油脂分解槽に定着するのに有効な量であり」、「前記微生物製剤の投入量が、油脂分解槽中の排水に対して5.0×104cells/mL以上」であるのに対して、甲1発明における「微生物製剤の投入量」が明らかでない点。 ・相違点2:本件発明1においては、「油脂含有排水」に「前記微生物製剤に含まれる投入微生物以外の微生物が存在する」のに対して、甲1発明において、「油脂含有排水」に「前記微生物製剤に含まれる投入微生物以外の微生物が存在する」か否かが明らかでない点。 ・相違点3:本件発明1においては、「前記油脂分解槽からの流出水中の投入微生物量が、1×108cells/mL以下であり」、「前記油脂分解槽からの流出水中の投入微生物の濃度が、前記油脂分解槽に投入する投入時投入微生物の濃度の0.1倍以上100倍以下」であるのに対して、甲1発明における「前記油脂分解槽からの流出水中の投入微生物量」及び「前記油脂分解槽からの流出水中の投入微生物の濃度」と「前記油脂分解槽に投入する投入時投入微生物の濃度」の比がいずれも明らかでない点。 ・相違点4:本件発明1においては、「前記微生物製剤」の「能力」が、「DO≧0.1mg/L、バッチ培養の条件で、1.0×106cells/mLになるように植菌された場合」の能力であるのに対して、甲1発明におけるこれらの培養の条件及び植菌の条件が明らかでない点。 ・相違点5:本件発明1においては、「前記油脂分解槽中の油脂含有排水の温度が12~42℃の範囲内」であるのに対して、甲1発明における「前記油脂分解槽中の油脂含有排水の温度」が明らかでない点。 ・相違点6:本件発明1においては、「前記投入微生物がバークホルデリア・アルボリスを最も多く含」むのに対して、甲1発明においては、「前記投入微生物がバークホルデリア・アルボリスを最も多く含」むか否かが明らかでない点。 ・相違点7:本件発明1においては、「前記油脂分解槽」が「担体を含まない」のに対して、甲1発明における「前記油脂分解槽」が「担体」を含むか否かが明らかでない点。 イ 判断 事案に鑑み、前記ア(イ)の相違点3から検討すると、甲第2~4号証には、「油脂含有排水処理方法」において、「前記油脂分解槽からの流出水中の投入微生物量」を「1×108cells/mL以下」とし、「前記油脂分解槽からの流出水中の投入微生物の濃度」を、「前記油脂分解槽に投入する投入時投入微生物の濃度の0.1倍以上100倍以下」とすることは記載も示唆もされていないから、これらの証拠を斟酌しても、甲1発明において、前記相違点3に係る本件発明1の発明特定事項を有するものとするには至らない。 してみれば、そのほかの相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明及び甲第2~4号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 更に、本件発明2~12について検討しても事情は同じである。 (3)申立人の主張について ア 前記相違点3に係る本件発明1の発明特定事項についての特許異議申立書における申立人の主張は、概略、以下のとおりである。 本件発明1における、「前記油脂分解槽からの流出水中の投入微生物量が、1×108cells/mL以下であり」、との発明特定事項及び「前記油脂分解槽からの流出水中の投入微生物の濃度が、前記油脂分解槽に投入する投入時投入微生物の濃度の0.1倍以上100倍以下」である、との発明特定事項における「流出水」は、「油脂含有排水」を処理した結果物である。 そして、先行文献に本件発明1と同じ処理対象物及び同じ処理方法が開示又は示唆されていれば、前記先行文献においても同じ結果物が得られることとなるものである。 このことからすれば、本件発明1及び甲1発明との間の前記相違点3以外の全ての相違点がなくなれば、前記相違点3も相違点とはならなくなるのであり、前記相違点3以外の全ての相違点は、甲第2~4号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に想到し得るものであるから、その結果として、前記相違点3も相違点とはならない(特許異議申立書51ページ1行~52ページ14行、64ページ7行~11行)。 イ そこで、前記アの主張について検討すると、前記主張は、本件発明1における前記相違点3に係る発明特定事項の「流出水」は、「油脂含有排水」を処理した結果物であるから、本件発明1及び甲1発明との間の相違点3以外の全ての相違点がなくなれば、前記相違点3も相違点とはならなくなることを前提としたものといえる。 ところが、本件特許明細書には、以下の(ア)、(イ)の記載がある。 (ア)「【0053】 油脂分解槽に流入する排水中には、窒素が微生物に利用可能な形態、好ましくはアンモニウム塩、硝酸塩、硫酸塩、又は有機窒素化合物、より好ましくは硫酸アンモニウム、尿素、アミノ酸、又はペプトン、トリプトン、カザミノ酸などのペプチドを含む形態で存在していることが望ましい。必要な窒素の量はあらかじめラボスケール又はパイロットスケールの試験から推定するのが好ましく、一般的にはC/N = 2~50の範囲(ここでのCはn-Hex由来のみの炭素を指す)であり、好ましくはC/N = 2~30、より好ましくはC/N=2~20の範囲である。ただし、C/Nとは、排水中に含まれるn-Hex由来炭素原子と窒素原子の重量比である。・・・ 【0054】 油脂分解槽に流入する排水中には、リン(P)が微生物が利用可能な形態、好ましくはリン酸塩又は核酸、より好ましくはリン酸塩の形態で存在していることが望ましい。必要なリンの量はラボスケール又はパイロットスケールの試験から推定することが望ましく、一般的には、排水中の窒素に対してN/P = 1~20となる量である。ただし、N/Pとは、排水中に含まれる窒素原子とリン原子の重量比である。・・・ ・・・ 【0057】 排水が微生物の生育を抑制するほどの塩素、抗生物質などを含む場合は、除去処理を施した後、あるいは排水処理システム全体を考慮してこれら生育抑制物質の濃度が低下した後段(例えば、調整槽の後)などに微生物製剤を投入し得る。」 (イ)「【0085】 一つの実施形態では、本発明の装置またはシステムはまた、油脂分解槽中の油脂含有排水のC/Nを制御するように構成されていてもよい。この油脂含有排水のC/Nの範囲は、2~50、2~30、あるいは2~20であることが好ましいが、これに限定されない。・・・排水中の窒素が不足するため上記範囲に入らない場合、必要量の窒素(好ましくは硫酸アンモニウム又は尿素)をN源タンクから、例えばポンプP7を介して添加し得る(図18)。あるいは、pH調製と連動させる形式でアンモニア水などを添加し得る。 【0086】 一つの実施形態では、本発明の装置またはシステムはまた、油脂分解槽中の油脂含有排水のN/Pを制御するように構成されていてもよい。この油脂含有排水のN/Pの範囲は、1~20、1~10、あるいは1~5であることが好ましいが、これに限定されない。・・・排水中のリンが不足するため上記範囲に入らない場合は、必要量のリンをリン酸塩の形態で、P源タンクから、例えばポンプP8を介して添加し得る(図18)。また、上記の窒素源およびリン酸塩を含む水溶液を、N/Pが上記の範囲にあるようにあらかじめ調製した一つの活性化剤として一つのタンクに保管し、まとめて供給し得る。」 ウ 前記イ(ア)、(イ)の記載からみれば、本件発明1における排水中の「投入微生物」の量や濃度は、前記相違点3以外の相違点のみならず、微生物が利用可能な窒素やリンの量、微生物の生育を抑制する塩素や抗生物質の量といった、そのほかの条件にも左右されることが強く推認されるものである。 そうすると、本件発明1における「前記油脂分解槽からの流出水中の投入微生物量」及び「前記油脂分解槽からの流出水中の投入微生物の濃度」も、前記相違点3以外の相違点のみならず、微生物が利用可能な窒素やリンの量、微生物の生育を抑制する塩素や抗生物質の量といった、そのほかの諸条件によるところが大きいと解すべきであるから、仮に、前記相違点3以外の全ての相違点がなくなったとしても、このことから直ちに、前記相違点3が相違点とはならなくなるわけではない。また、申立人の主張を認めるに足りる証拠もないので、申立人の前記アの主張は前提において誤っているといわざるを得ず、採用できない。 (4)小括 よって、本件発明1~12は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2~4号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、前記第3の1の特許異議申立理由は理由がない。 2 特許法第36条第6項第1号所定の規定違反(サポート要件違反)について (1)サポート要件の判断手法 特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が本件特許の出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものであるから、以下、この観点に立って検討する。 (2)サポート要件について ア 始めに、サポート要件の一般的な判断手法にのっとって検討すると、本件特許明細書には、更に、以下の(ア)~(イ)の記載がある。 (ア)「【0004】 そこで、排水中の油分を分離しないで消滅させるような技術の確立が切望されている。こうした中、微生物による油脂分解技術の適用が試みられてきた。 【0005】 そこで、本発明者は、油脂含有排水を効率的に処理する微生物として、油脂加水分解酵素であるリパーゼを分泌する新規微生物バークホルデリア・アルボリス(Burkholderia arboris)SL1B1株を報告している(特許文献1)。さらに、当該バークホルデリア・アルボリスと、リパーゼによる加水分解生成物であるグリセロールを分解する微生物(例えば、カンジダ・シリンドラセア(Candida cylindracea))とを併用することで油脂を効率的に分解することを報告している(特許文献2、非特許文献1)。・・・ 【0006】 しかし、いくら分解能力の高い微生物製剤を使用したとしても、その使い方が正しくないと目的の効果を得ることはできない。・・・ 【0007】 また、排水処理は開放系で行われるため、投入微生物以外にも雑多な微生物が無数に存在する環境であり、油脂分解微生物のような目的微生物をそのような微生物コミュニティの中に安定的に定着(対象とする環境中で、目的微生物が淘汰されずに効果的に存在する状態)させる方法論は存在していない。その上、排水は連続的に一定の滞留時間をもって流出するため、目的の投入微生物が他の無数の微生物との生存競争に打ち勝って滞留時間より速い比増殖速度で増殖できないとウォッシュアウトしてしまうことになる。そのため、期待された分解効果を得られないことが多く、環境バイオテクノロジー分野の課題となっている。 【0008】 ウォッシュアウトを避ける方法として、担体に微生物を固定する方法があるが、油が多い排水中では油が担体に付着してしまうという問題点の他、担体という新たな廃棄物の発生、担体にかかるコストといった新たな問題が生じる。 【0009】 さらに、これまで、微生物製剤の使い方についてはあまり注意が払われず、効果を見ながら投入量及び投入間隔を感覚的に調整していることがほとんどである。実際に、現場によって、排水量も排水中の油脂濃度も多様であるため、画一的な方法論を確立することは難しかったのも事実である。その他にも、従来技術では、広範囲の油脂濃度に同じ微生物製剤を適用することが困難であるという問題がある。特に、食品工場及び油脂精製工場などから排出される高濃度の油脂に対して微生物製剤を適用することは困難であり、適用できたとしても、109 cells/mL以上の高濃度の微生物濃度が必要である。 ・・・ 【課題を解決するための手段】 【0012】 本発明は、油脂分解能力を有する微生物製剤を用いて、連続的に流入出し、雑多な微生物が存在する排水中の油脂の濃度を効果的に低下させる油脂含有排水処理方法、ならびに関連するシステムおよび装置を提供する。」 (イ)「【0024】 本発明の油脂含有排水処理方法は、油脂含有排水が連続的に流入出する油脂分解槽に、油脂分解能力を有する微生物製剤を連続的又は間欠的に投入し、油脂を分解する工程であって、該微生物製剤の投入量が、微生物が油脂分解槽に定着できる量であり、油脂含有排水には該微生物製剤に含まれる微生物以外の微生物が存在する、工程を含むことを特徴とする。 ・・・ 【0028】 本発明における油脂含有排水のn-Hex値は、特に制限されず、通常100~40000 mg/L、好ましくは200~30000 mg/L、より好ましくは300~30000 mg/Lである。本発明は、平均n-Hex値300 mg/Lを超える油脂含有排水の処理に特に好ましい。・・・ ・・・ 【0031】 微生物製剤としては、油脂分解能力を有するものであれば特に制限無く使用することができる。微生物製剤中の微生物としては、1種単独又は2種以上を混合して使用することができる。2種以上を混合して使用する場合は、共生可能な微生物の組み合わせを使用することが望ましい。また、微生物製剤には、油脂分解を助ける共生菌を含ませることもできる。 【0032】 微生物製剤の一例として、22~35℃、pH = 5.5~8.5、DO≧0.1 mg/L、バッチ培養の条件で、n-Hex値 = 10000 mg/L相当の油脂及び加水分解物産物の脂肪酸を、72時間内に、好ましくは48時間以内に、より好ましくは36時間以内に、より一層好ましくは24時間以内に80%以上分解する能力を有する微生物製剤が挙げられる。 【0033】 微生物製剤には、リパーゼを生産する微生物、並びに(油脂のリパーゼによる分解産物である)脂肪酸及び/又はグリセロールを分解する微生物を好適に使用することができる。・・・ 【0034】 リパーゼを生産する微生物としては、真性細菌、酵母、糸状真菌類などが挙げられ、好ましくは真性細菌及び酵母、より好ましくは真性細菌である。真性細菌としては、例えば、バチルス(Bacillus)属細菌、コリネバクテリウム(Corynebacterium)属細菌、ロドコッカス(Rhodococcus)属細菌、バークホルデリア(Burkholderia)属細菌、アシネトバクター(Acinetobacter)属細菌、シュードモナス(Pseudomonas)属細菌、アルカリゲネス(Alcaligenes)属細菌、ロドバクター(Rhodobacter)属細菌、ラルストニア(Ralstonia)属細菌、アシドボラックス(Acidovorax)属細菌、セラチア(Serratia)属細菌、フラボバクテリウム(Flavobacterium)属細菌等を用いることができる。中でも、バークホルデリア属細菌、特にバークホルデリア・アルボリス(例えば、SL1B1株(NITE P-724)など)が好ましい。 【0035】 グリセロールを分解(資化)する微生物としては、真性細菌、酵母、糸状真菌類などが挙げられ、好ましくは真性細菌及び酵母、より好ましくは酵母である。酵母としては、カンジダ(Candida)属酵母、特にカンジダ・シリンドラセア(例えば、SL1B2株(NITE P-714)など)が好ましい。 【0036】 脂肪酸を分解(資化)する微生物としては、真性細菌、酵母、糸状真菌類などが挙げられ、好ましくは真性細菌及び酵母、より好ましくは酵母である。酵母としては、ヤロウィア(Yarrowia)属酵母、クリプトコッカス(Cryptococcus)属酵母、トリコスポロン(Trichosporon)属酵母、及びハンゼヌラ(Hansenula)属酵母、特にヤロウィア・リポリティカ(例えば、1A1株(NITE BP-1167)など)が好ましい。 【0037】 微生物製剤を製造する際に使用する微生物の具体例としては、バークホルデリア・アルボリス、カンジダ・シリンドラセア、及びヤロウィア・リポティカが挙げられ、これらを2又は3種組み合わせて使用することが望ましい。 ・・・ 【0045】 微生物製剤を油脂分解槽に間欠的に投入する場合、微生物製剤の投入量は、油脂分解槽中の排水に対し、好ましくは5.0×104~1.0×107 cells/mL・・・となる量である。定期的に投入される微生物の投入間隔は、油脂分解槽における排水の滞留時間から24時間の間で設定することが望ましい。ここでの微生物製剤の投入量は、微生物製剤に最も多く含まれる種類の微生物の濃度とすることもできる。 ・・・ 【0050】 油脂分解槽中の油脂含有排水のpHは、通常4.5~9.0、好ましくは5.5~8.5、より好ましくは6.0~8.0の範囲内である。これらの範囲に入らない場合は、酸又はアルカリの添加により適宜pHの調整を行い得る。 【0051】 油脂分解槽中の油脂含有排水の温度は、通常12℃~42℃、好ましくは15℃~40℃、より好ましくは15~37℃、更に好ましくは18~37℃、最も好ましくは20~35℃の範囲内に保つことが望ましい。これらの温度範囲に入らない場合は、加温又は冷却による温度調節を適宜行い得る。 【0052】 代表的な実施形態において、本発明は、油脂分解槽のHRT (水理学的滞留時間)が1時間以上であるような油脂分解を対象とする。具体的には、油脂分解槽のHRTは、通常12時間以上、好ましくは18時間以上、より好ましくは20時間以上、更に好ましくは24時間以上である。 ・・・ 【0061】 連続系での微生物による油脂分解処理のためには、微生物を十分に増殖させる必要があるというのが従来の当該分野における認識であったが、本発明者は、予想外に、従来の認識ほど微生物を増殖させることなく油脂分解が達成され得ることを発見した。・・・例えば流出水中の投入した微生物の量は、投入した量に対して、好ましくは0.01倍以上100倍以下、0.01倍以上10倍以下、0.1倍以上100倍以下、0.1倍以上10倍以下、0.5倍以上100倍以下、0.5倍以上10倍以下、1倍以上100倍以下、1倍以上10倍以下であり、好ましくは0.1倍以上10倍以下である。そのため、1つの実施形態において、油脂分解槽からの流出水中の投入した微生物の量は、1×108 cells/mL以下であり得る。これによって流出水中の微生物量が抑制され、環境への影響を低減することができた。・・・」 イ 前記ア(ア)の記載によれば、本件発明は、(i)微生物による油脂分解技術において、分解能力の高い微生物製剤を使用したとしても、その使い方が正しくないと目的の効果を得ることはできない、という課題、(ii)排水処理は開放系で行われるため、投入微生物以外にも雑多な微生物が無数に存在する環境であり、油脂分解微生物のような目的微生物をそのような微生物コミュニティの中に安定的に定着させる(対象とする環境中で、目的微生物が淘汰されずに効果的に存在する状態とする)方法論は存在していない、という課題、(iii)排水は連続的に一定の滞留時間をもって流出するため、目的の投入微生物が他の無数の微生物との生存競争に打ち勝って滞留時間より速い比増殖速度で増殖できないとウォッシュアウトしてしまうことになることから、期待された分解効果を得られないことが多く、環境バイオテクノロジー分野の課題となっている、という課題、(iv)ウォッシュアウトを避ける方法として、担体に微生物を固定する方法があるが、油が多い排水中では油が担体に付着してしまうという問題点の他、担体という新たな廃棄物の発生、担体にかかるコストといった新たな問題が生じる、という課題、(v)これまで、微生物製剤の使い方についてはあまり注意が払われず、効果を見ながら投入量及び投入間隔を感覚的に調整していることがほとんどであり、その他にも、広範囲の油脂濃度に同じ微生物製剤を適用することが困難であり、特に、食品工場及び油脂精製工場などから排出される高濃度の油脂に対して微生物製剤を適用することは困難であり、適用できたとしても、109cells/mL以上の高濃度の微生物濃度が必要である、という課題(以下、これら(i)~(v)の課題をまとめて「本件課題」という。)を解決するものであると解される。 ウ そして、前記ア(イ)の記載によれば、本件発明は、以下の構成を有する「油脂含有排水処理方法」を用いて微生物による油脂の分解を行うことによって、本件課題を解決できるものであることが分かる。 (ア)本件発明は、油脂含有排水が連続的に流入出する油脂分解槽に、油脂分解能力を有する微生物製剤を連続的又は間欠的に投入し、油脂を分解する工程であって、該微生物製剤の投入量が、微生物が油脂分解槽に定着できる量であり、油脂含有排水には該微生物製剤に含まれる微生物以外の微生物が存在する工程を含むものであり、油脂含有排水のn-Hex値は、より好ましくは300~30000 mg/Lであり、平均n-Hex値300 mg/Lを超える油脂含有排水の処理に特に好ましいこと。 (イ)微生物製剤としては、22~35℃、pH = 5.5~8.5、DO≧0.1 mg/L、バッチ培養の条件で、n-Hex値 = 10000 mg/L相当の油脂及び加水分解物産物の脂肪酸を、72時間内に、80%以上分解する能力を有する微生物製剤が挙げられるものであり、微生物製剤には、リパーゼを生産する微生物、並びに(油脂のリパーゼによる分解産物である)脂肪酸及び/又はグリセロールを分解する微生物を好適に使用することができるものであり、リパーゼを生産する微生物としては、真性細菌、酵母、糸状真菌類などが挙げられ、好ましくは真性細菌及び酵母、より好ましくは真性細菌であり、真性細菌としては、例えば、バチルス(Bacillus)属細菌、コリネバクテリウム(Corynebacterium)属細菌、ロドコッカス(Rhodococcus)属細菌、バークホルデリア(Burkholderia)属細菌、アシネトバクター(Acinetobacter)属細菌、シュードモナス(Pseudomonas)属細菌、アルカリゲネス(Alcaligenes)属細菌、ロドバクター(Rhodobacter)属細菌、ラルストニア(Ralstonia)属細菌、アシドボラックス(Acidovorax)属細菌、セラチア(Serratia)属細菌、フラボバクテリウム(Flavobacterium)属細菌等を用いることができ、中でも、バークホルデリア属細菌、特にバークホルデリア・アルボリス(例えば、SL1B1株(NITE P-724)など)が好ましいものであり、グリセロールを分解(資化)する微生物は、より好ましくは酵母であり、酵母としては、カンジダ(Candida)属酵母、特にカンジダ・シリンドラセア(例えば、SL1B2株(NITE P-714)など)が好ましいものであり、脂肪酸を分解(資化)する微生物は、より好ましくは酵母であり、酵母としては、ヤロウィア(Yarrowia)属酵母、クリプトコッカス(Cryptococcus)属酵母、トリコスポロン(Trichosporon)属酵母、及びハンゼヌラ(Hansenula)属酵母、特にヤロウィア・リポリティカ(例えば、1A1株(NITE BP-1167)など)が好ましいこと。 (ウ)微生物製剤を油脂分解槽に間欠的に投入する場合、微生物製剤の投入量は、油脂分解槽中の排水に対し、好ましくは5.0×104~1.0×107cells/mLとなる量であり、定期的に投入される微生物の投入間隔は、油脂分解槽における排水の滞留時間から24時間の間で設定することが望ましいものであり、ここでの微生物製剤の投入量は、微生物製剤に最も多く含まれる種類の微生物の濃度とすることもできるものであり、油脂分解槽中の油脂含有排水のpHは、通常4.5~9.0の範囲内であり、油脂分解槽中の油脂含有排水の温度は、通常12℃~42℃の範囲内に保つことが望ましいものであり、油脂分解槽のHRTは、通常12時間以上であり、好ましくは24時間以上であり、流出水中の投入した微生物の量は、投入した量に対して、0.1倍以上100倍以下であり、油脂分解槽からの流出水中の投入した微生物の量は、1×108cells/mL以下であり得ること。 エ そして、前記ウに記載された構成の主要な点は、本件発明1の発明特定事項としておおむね反映されているから、本件特許明細書の記載に接した当業者は、本件発明1の発明特定事項により本件課題を解決できることを理解することができるので、本件発明1は、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえる。 そして、このことを前記(1)の判断手法に当てはめれば、本件特許請求の範囲の請求項1の記載はサポート要件に適合するといえる。また更に、同請求項2~12について検討しても事情は同じであるから、これらの請求項の記載もサポート要件に適合するものということができる。 (3)申立人の主張について 次に、前記第3の2(1)~(3)の申立人の主張について検討すると、前記主張は、総じて、本件特許明細書に、バークホルデリア・アルボリスとヤロウィア・リポリティカの混合製剤を用いた実施例しか記載されていないことを理由としたものといえる。 ここで、前記(2)イ、ウによれば、本件発明は、前記(2)イに記載された種々の本件課題を、前記(2)ウに記載された様々な構成を組み合わせることで解決するものといえる。 そして、前記様々な構成のうち、「投入微生物」についてみると、前記(2)ア(イ)(段落【0032】~【0034】)の記載によれば、本件特許明細書の記載に接した当業者は、「投入微生物」を、専ら「バークホルデリア・アルボリス」を含むものとすることで、より一層、本件課題を解決できることを理解することができる。 そうすると、本件特許明細書に、バークホルデリア・アルボリスとヤロウィア・リポリティカの混合製剤を用いた実施例しか記載されていないとしても、当業者は、本件発明1で特定される「バークホルデリア・アルボリスを最も多く含」む「投入微生物」により、本件課題を解決できることを理解することができるから、本件特許請求の範囲の請求項1の記載はサポート要件に適合するといえるのであり、更に、同請求項2~12について検討しても事情は同じであるから、前記第3の2(1)~(3)の申立人の主張はいずれも採用できない。 (4)小括 よって、本件特許請求の範囲の記載は特許法第36条第6項第1号所定の規定に適合するから、前記第3の2の特許異議申立理由は理由がない。 3 特許法第36条第4項第1号所定の規定違反(実施可能要件違反)について (1)実施可能要件の判断手法 明細書の発明の詳細な説明の記載が、実施可能要件に適合するか否かは、明細書の発明の詳細な説明に、当業者が、明細書の発明の詳細な説明の記載及び出願当時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その発明を実施することができる程度に発明の構成等の記載があるか否かという観点から判断すべきものである。 また、方法の発明における実施とは、その方法の使用をする行為をいうから(特許法第2条第3項第2号)、方法の発明について、例えば、明細書等に当業者がその方法を使用することができる程度の記載があるか、そのような記載がなくても、出願時の技術常識に基づいて当業者がその方法を使用することができるのであれば、実施可能要件に適合するということができるから、以下、この観点に立って検討する。 (2)実施可能要件について 始めに、実施可能要件の一般的な判断手法にのっとって検討すると、前記2(2)ア(イ)の記載からみれば、本件特許明細書の記載に接した当業者は、前記2(2)ウに記載された様々な構成を組み合わせることで、過度の試行錯誤を要することなく、「油脂含有排水処理方法」を使用することができるものである。 そして、前記2(2)ウに記載された構成の主要な点は、本件発明1の発明特定事項としておおむね反映されているのであるから、本件特許明細書の記載に接した当業者は、過度の試行錯誤を要することなく、本件発明1に係る「油脂含有排水処理方法」を使用することができるのであり、更に、本件発明2~12について検討しても事情は同じであって、このことを前記(1)の判断手法に当てはめれば、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は実施可能要件に適合するといえる。 (3)申立人の主張について 次に、前記第3の3(1)~(3)の申立人の主張について検討すると、前記主張は、総じて、本件特許明細書に、バークホルデリア・アルボリスとヤロウィア・リポリティカの混合製剤を用いた実施例しか記載されていないことを理由としたものといえる。 ところが、前記2(2)ウの記載によれば、当業者は、「投入微生物」として、専ら「バークホルデリア・アルボリス」を含む「投入微生物」を用いつつ、前記2(2)ウに記載されたそのほかの構成を組み合わせることで、過度の試行錯誤を要することなく、本件発明に係る「油脂含有排水処理方法」を使用することができるものである。 してみれば、本件特許明細書に、バークホルデリア・アルボリスとヤロウィア・リポリティカの混合製剤を用いた実施例しか記載されていないとしても、当業者は、「バークホルデリア・アルボリスを最も多く含」む「投入微生物」を用いて、過度の試行錯誤を要することなく、本件発明を実施することができるのであるから、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は実施可能要件に適合するといえるので、前記第3の3(1)~(3)の申立人の主張も、いずれも採用できない。 (4)小括 よって、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は特許法第36条第4項第1号所定の規定に適合するから、前記第3の3の特許異議申立理由は理由がない。 4 特許法第36条第6項第2号所定の規定違反(明確性要件違反)について (1)明確性要件の判断手法 請求項に係る発明が明確性要件に適合するか否かは、当該請求項の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願当時における技術常識を基礎として、当該請求項の記載が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるか否かという観点から判断すべきであるから、以下、この観点に立って検討する。 (2)明確性要件について 前記2(2)ア(イ)(段落【0031】)の記載によれば、本件発明における「微生物製剤」としては、油脂分解能力を有するものであれば特に制限無く使用することができ、「微生物製剤」中の微生物としては、1種単独又は2種以上を混合して使用することができるものである。 このことからみれば、本件特許明細書の記載に接した当業者は、本件発明1における「バークホルデリア・アルボリスを最も多く含」む「投入微生物」が、もとより1種単独の微生物からなるもの、すなわち「バークホルデリア・アルボリス」単独のものを含み、2種以上の微生物を混合した場合でも、「バークホルデリア・アルボリスを最も多く含」むものであることを理解することができる。 すると、仮に、「最も」が、通常、3種類以上存在する際に用いる語句であるとしても、本件特許明細書の記載をみれば、特許請求の範囲の請求項1の記載が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとはいえないのであり、このことを前記(1)の判断手法に当てはめれば、本件特許請求の範囲の請求項1の記載は明確性要件に適合するといえる。 更に、同請求項2~12について検討しても事情は同じであるから、本件特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第2号所定の規定に適合するので、前記第3の4の特許異議申立理由は理由がない。 第5 むすび 以上のとおりであるから、申立人の特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件発明1~12に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件発明1~12に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2023-700217

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