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特許異議申立

2020-700344

半導体発光素子およびその製造方法

審判番号
2020-700344
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2016-246130
登録番号
6608352
請求日
2020年05月18日
審決日
2022年09月26日
公報発行日
2022年12月28日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】DOWAエレクトロニクス株式会社
  • 【権利者代理人】杉村 憲司
  • 【権利者代理人】塚中 哲雄
  • 【権利者代理人】福井 敏夫
  • 【異議申立人】清水 すみ子
審判長/審判官
  • 審判長 瀬川 勝久
  • 審判官 吉野 三寛
  • 審判官 野村 伸雄
分類
P1652.113-YAA(H01L) / P1652.121-YAA(H01L)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法120条の8第1項特許法135条
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第5項、特許法第29条第1項、特許法第120条の8第1項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第6608352号発明「半導体発光素子およびその製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第6608352号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~5〕、〔6~7〕について訂正することを認める。 特許第6608352号の請求項2~5に係る特許を維持する。 特許第6608352号の請求項1及び6に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第6608352号(以下「本件特許」という。)の請求項1~7に係る特許についての出願は、平成28年12月20日の出願であって、令和元年11月1日にその特許権の設定登録がされ、令和元年11月20日に特許掲載公報が発行された。 その後の本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。 令和2年 5月18日 :特許異議申立人清水すみ子(以下「申立人」 という。)による特許異議の申立て 令和2年10月21日付け:取消理由通知書 令和2年12月25日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出 令和3年 4月13日 :申立人による意見書の提出 令和3年 9月30日付け:取消理由通知書(決定の予告) 令和3年12月17日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出 なお、令和4年2月25日付けで当審から申立人に対し、訂正請求があった旨の通知(特許法第120条の5第5項)をするとともに、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、申立人から意見書は提出されなかった。 第2 訂正の適否 1 訂正の内容 令和3年12月17日提出の訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)は、次のとおりである(下線は、訂正箇所として特許権者が付したものである。)。 なお、本件訂正は、一群の請求項〔1~5〕、〔6~7〕に対して請求されたものである。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1を削除する。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項2に、「前記凹部の形状が、前記光取出し側から平面視して楕円状であり、前記楕円状の長軸が前記凹部の前記底部に沿う、請求項1に記載の半導体発光素子。」とあるものについて、独立形式に改め、「導電性支持基板上に、p型InPクラッド層、半導体発光層、およびn型InPクラッド層が順次設けられ、前記n型InPクラッド層を光取出し側とする半導体発光素子であって、 前記導電性支持基板と前記型InPクラッド層との間に、前記半導体発光層から放射される光を反射する金属反射層をさらに有し、 前記n型InPクラッド層の表面に、複数の凹部が設けられ、 波長1000nm~2200nmの近赤外領域を発光波長とし、 前記凹部の底部が<011>方位に沿い、 前記凹部の形状が、前記光取出し側から平面視して楕円状であり、前記楕円状の長軸が前記凹部の前記底部に沿い、 前記金属反射層および前記p型InPクラッド層の間に並列して設けられた誘電体層およびコンタクト部と、を有し、 前記コンタクト部は、前記金属反射層上のオーミック金属部と、該オーミック金属部上のIII-V族化合物半導体からなるコンタクト層と、からなり、 発光スペクトルにおいて、極小値が1つ又は2つであることを特徴とする半導体発光素子。」に訂正する。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項3に、「前記光取出し側から平面視して、前記凹部の幅が前記凹部の中心軸方向に沿って周期的に変化し、前記中心軸方向は前記凹部の前記底部に沿う、請求項1に記載の半導体発光素子。」とあるものについて、独立形式に改め、「導電性支持基板上に、p型InPクラッド層半導体発光層、およびn型InPクラッド層が順次設けられ、前記n型InPクラッド層を光取出し側とする半導体発光素子であって、 前記導電性支持基板と、前記型InPクラッド層との間に、前記半導体発 光層から放射される光を反射する金属反射層をさらに有し、 前記n型InPクラッド層の表面に、複数の凹部が設けられ、波長1000nm~2200nmの近赤外合域を発光波長とし、 前記凹部の底部が<011>方位に沿い、 前記光取出し側から平面視して、前記凹部の幅が前記凹部の中心軸方向に沿って周期的に変化し、前記中心軸方向は前記凹部の前記底部に沿い、 前記金属反射層および前記p型InPクラッド層の間に並列して設けられた誘電体層およびコンタクト部と、を有し、 前記コンタクト部は、前記金属反射層上のオーミック金属部と、該オーミック金属部上のIII-V族化合物半導体からなるコンタクト層と、からなり、 発光スペクトルにおいて、極小値が1つ又は2つであることを徴とする半導体発光素子。」に訂正する。 (4)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項4に「請求項1~3のいずれか1項に記載の」とあるのを、「請求項2、3のいずれか1項に記載の」に訂正する。 (5)訂正事項5 特許請求の範囲の請求項5に「請求項1~4のいずれか1項に記載の」とあるのを、「請求項2~4のいずれか1項に記載の」に訂正する。 (6)訂正事項6 特許請求の範囲の請求項6を削除する。 (7)訂正事項7 特許請求の範囲の請求項7に、「前記粗面化処理工程が、前記III-V族化合物半導体エッチングストップ層をエッチングしてパターン形成する第1工程と、前記パターン形成された前記III-V族化合物半導体エッチングストップ層をマスクとして用い、前記n型InPクラッド層の表面をエッチングする第2工程と、を含む、請求項6に記載の半導体発光素子の製造方法。」とあるものについて、独立形式に改め、「InP基板上に、In、GaおよびAsを含むIII-V族化合物半導体エッチングストップ層、n型InPクラッド層、半導体発光層、ならびに、p型InPクラッド層を順次形成する半導体層形成工程と、 前記p型InPクラッド層上に、前記半導体発光層から放射される光を反射する金属反射層を形成する金属反射層形成工程と、 金属接合層が表面に設けられた導電性支持基板を、該金属接合層を介して前記金属反射層に接合する接合工程と、 前記InP基板を除去する基板除去工程と、 該基板除去工程の後、前記n型InPクラッド層の表面に複数の凹部を形成する粗面化処理工程と、を含み、 波長1000nm~2200nmの近赤外領域を発光波長とし、 前記粗面化処理工程において、前記凹部の底部を<011>方位に沿わせることを特徴とする半導体発光素子の製造方法であって、 前記粗面化処理工程が、前記III-V族化合物半導体エッチングストップ層をエッチングしてパターン形成する第1工程と、 前記パターン形成された前記III-V族化合物半導体エッチングストップ層をマスクとして用い、前記n型InPクラッド層の表面をエッチングする第2工程と、を含む、半導体発光素子の製造方法。」に訂正する。 2 訂正要件の判断 (1)訂正事項1について ア 訂正の目的 訂正事項1は、本件訂正前の請求項1を削除するものである。 そうすると、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 新規事項追加の有無 訂正事項1は、本件訂正前の請求項1を削除するものであるから、新規事項を追加するものではない。 そうすると、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。 ウ 特許請求の範囲の実質拡張変更の有無 上記ア及びイに照らせば、訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。 したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。 エ 訂正事項1の小括 よって、訂正事項1は、訂正要件を満たす。 (2)訂正事項2について ア 訂正の目的 訂正事項2は、本件訂正前の請求項2に対して、次の内容からなるものである。 (i)本件訂正前の請求項2の記載が本件訂正前の請求項1の記載を引用する記載であったものを、請求項間の引用関係を解消し、請求項1の記載を引用しないものとし、独立形式請求項へ改めること。 (ii)本件訂正前の請求項1の記載を引用する本件訂正前の請求項2では、「金属反射層」と「p型InP基板」との間の構成を特定していなかったものを、「前記金属反射層および前記p型InPクラッド層の間に並列して設けられた誘電体層およびコンタクト部と、を有し、前記コンタクト部は、前記金属反射層上のオーミック金属部と、該オーミック金属部上のIII-V族化合物半導体からなるコンタクト層と、からなり、」と限定すること。 (iii)本件訂正前の請求項1の記載を引用する本件訂正前の請求項2における「半導体発光素子」の「発光」を、「発光スペクトルにおいて、極小値が1つ又は2つである」と限定すること。 そうすると、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること、及び特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 新規事項追加の有無 (ア)上記ア(i)について 当該訂正事項は、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとするものであるから、新規事項を追加するものではない。 (イ)上記ア(ii)について 本件明細書には、「コンタクト部形成工程では、まず、半導体積層体30上にIII-V族化合物半導体からなるコンタクト層41を形成する(図2(C))。次いで、コンタクト層41上の一部にオーミック金属部43を形成すると共に、コンタクト層41の表面に露出領域E1を残す(図3(A))。さらに、露出領域E1におけるコンタクト層41を、半導体積層体30の表面が露出するまで除去して、オーミック金属部43およびコンタクト層41aからなるコンタクト部40を形成すると共に、半導体積層体30の露出面E2を形成する(図3(B))。」、「誘電体層形成工程では、半導体積層体30の露出面E2上の少なくとも一部に誘電体層50を形成する(図3(C))。金属反射層形成工程では、誘電体層50およびコンタクト部40上に、半導体発光層35から放射される光を反射する金属反射層60を形成する(図4(A))。」(【0037】・【0038】)と記載されている。 よって、上記ア(ii)の点は、新規事項を追加するものではない。 (ウ)上記ア(iii)について 本件明細書には、「発光スペクトルにおいて極小値があるということは、波長スペクトルが分裂していることを意味し、ピークが複数存在することとなる。図15(A),(B)を対比すると、粗面化処理をしていない比較例1では極小値が4つあったところ、粗面化処理を行った実施例1では極小値は1つであることが確認できる。また、図16(A),(B)を対比すると、粗面化処理をしていない比較例2では極小値が5つあったところ、粗面化処理を行った実施例2では極小値は1つであることが確認できる。」、「さらに、実施例1,2と同様にして実施例3の発光スペクトルを測定した。結果を図18に示す。実施例3,では、極小値が2つとなっており、マルチピークが緩和できたことを確認した。」(【0097】・【0101】)と記載されており、本件明細書には、実施例1~3として、発光スペクトルの極小値が1つ又は2つである半導体発光素子が記載されている。 よって、上記ア(iii)の点は、新規事項を追加するものではない。 (エ)小括 したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。 ウ 特許請求の範囲の実質拡張変更の有無 上記ア及びイにも照らせば、訂正事項2は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。 したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。 エ 訂正事項2の小括 よって、訂正事項2は、訂正要件を満たす。 (3)訂正事項3について ア 訂正の目的 訂正事項3は、本件訂正前の請求項3に対して、次の内容からなるものである。 (i)本件訂正前の請求項3の記載が本件訂正前の請求項1の記載を引用する記載であったものを、請求項間の引用関係を解消し、請求項1の記載を引用しないものとし、独立形式請求項へ改めること。 (ii)本件訂正前の請求項1の記載を引用する本件訂正前の請求項3では、「金属反射層」と「p型InP基板」との間の構成を特定していなかったものを、「前記金属反射層および前記p型InPクラッド層の間に並列して設けられた誘電体層およびコンタクト部と、を有し、前記コンタクト部は、前記金属反射層上のオーミック金属部と、該オーミック金属部上のIII-V族化合物半導体からなるコンタクト層と、からなり、」と限定すること。 (iii)本件訂正前の請求項1の記載を引用する本件訂正前の請求項3における「半導体発光素子」の「発光」を、「発光スペクトルにおいて、極小値が1つ又は2つである」と限定すること。 そうすると、訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること、及び特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 新規事項追加の有無 (ア)上記ア(i)について 当該訂正事項は、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとするものであるから、新規事項を追加するものではない。 (イ)上記ア(ii)について 上記(2)イ(イ)に記載のとおりである。 よって、上記ア(ii)の点は、新規事項を追加するものではない。 (ウ)上記ア(iii)について 上記(2)イ(ウ)に記載のとおりである。 よって、上記ア(iii)の点は、新規事項を追加するものではない。 (エ)小括 したがって、訂正事項3は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。 ウ 特許請求の範囲の実質拡張変更の有無 上記ア及びイにも照らせば、訂正事項3は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。 したがって、訂正事項3は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。 エ 訂正事項3の小括 よって、訂正事項3は、訂正要件を満たす。 (4)訂正事項4について ア 訂正の目的 訂正事項4は、本件訂正前の請求項4が引用していた請求項のうち、請求項1を削除するものである。 そうすると、訂正事項4は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 新規事項追加の有無 訂正事項3は、本件訂正前の請求項4が引用していた請求項のうち、請求項1を削除するものであるから、新規事項を追加するものではない。 そうすると、訂正事項4は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。 ウ 特許請求の範囲の実質拡張変更の有無 上記ア及びイにも照らせば、訂正事項4は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。 したがって、訂正事項4は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。 エ 訂正事項4の小括 よって、訂正事項4は、訂正要件を満たす。 (5)訂正事項5について ア 訂正の目的 訂正事項5は、本件訂正前の請求項5が引用していた請求項のうち、請求項1を削除するものである。 そうすると、訂正事項5は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 新規事項追加の有無 訂正事項5は、本件訂正前の請求項5が引用していた請求項のうち、請求項1を削除するものであるから、新規事項を追加するものではない。 そうすると、訂正事項5は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。 ウ 特許請求の範囲の実質拡張変更の有無 上記ア及びイにも照らせば、訂正事項4は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。 したがって、訂正事項5は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。 エ 訂正事項5の小括 よって、訂正事項5は、訂正要件を満たす。 (6)訂正事項6について ア 訂正の目的 訂正事項6は、本件訂正前の請求項6を削除するものである。 そうすると、訂正事項6は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 新規事項追加の有無 訂正事項6は、本件訂正前の請求項6を削除するものであるから、新規事項を追加するものではない。 そうすると、訂正事項6は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。 ウ 特許請求の範囲の実質拡張変更の有無 上記ア及びイに照らせば、訂正事項6は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。 したがって、訂正事項6は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。 エ 訂正事項6の小括 よって、訂正事項6は、訂正要件を満たす。 (7)訂正事項7について ア 訂正の目的 訂正事項7は、本件訂正前の請求項7の記載が本件訂正前の請求項6の記載を引用する記載であったものを、請求項間の引用関係を解消し、請求項6の記載を引用しないものとし、独立形式請求項へ改めるための訂正である。 そうすると、訂正事項7は、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とする訂正である。 イ 新規事項追加の有無 訂正事項7は、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとするものであるから、新規事項を追加するものではない。 そうすると、訂正事項7は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。 ウ 特許請求の範囲の実質拡張変更の有無 上記ア及びイに照らせば、訂正事項7は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。 したがって、訂正事項7は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。 エ 訂正事項7の小括 よって、訂正事項7は、訂正要件を満たす。 3 訂正の適否の小括 以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~5〕、〔6~7〕について訂正することを認める。 第3 訂正後の本件発明 本件訂正請求により訂正された請求項1~7に係る発明(以下「本件発明1~7」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~7に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 <本件発明1> (削除) <本件発明2> 「導電性支持基板上に、p型InPクラッド層、半導体発光層、およびn型InPクラッド層が順次設けられ、前記n型InPクラッド層を光取出し側とする半導体発光素子であって、 前記導電性支持基板と前記p型InPクラッド層との間に、前記半導体発光層から放射される光を反射する金属反射層をさらに有し、 前記n型InPクラッド層の表面に、複数の凹部が設けられ、 波長1000nm~2200nmの近赤外領域を発光波長とし、 前記凹部の底部が<011>方位に沿い、 前記凹部の形状が、前記光取出し側から平面視して楕円状であり、前記楕円状の長軸が前記凹部の前記底部に沿い、 前記金属反射層および前記p型InPクラッド層の間に並列して設けられた誘電体層およびコンタクト部と、を有し、 前記コンタクト部は、前記金属反射層上のオーミック金属部と、該オーミック金属部上のIII-V族化合物半導体からなるコンタクト層と、からなり、 発光スペクトルにおいて、極小値が1つ又は2つであることを特徴とする半導体発光素子。」 <本件発明3> 「導電性支持基板上に、p型InPクラッド層半導体発光層、およびn型InPクラッド層が順次設けられ、前記n型InPクラッド層を光取出し側とする半導体発光素子であって、 前記導電性支持基板と、前記p型InPクラッド層との間に、前記半導体発 光層から放射される光を反射する金属反射層をさらに有し、 前記n型InPクラッド層の表面に、複数の凹部が設けられ、波長1000nm~2200nmの近赤外合域を発光波長とし、 前記凹部の底部が<011>方位に沿い、 前記光取出し側から平面視して、前記凹部の幅が前記凹部の中心軸方向に沿って周期的に変化し、前記中心軸方向は前記凹部の前記底部に沿い、 前記金属反射層および前記p型InPクラッド層の間に並列して設けられた誘電体層およびコンタクト部と、を有し、 前記コンタクト部は、前記金属反射層上のオーミック金属部と、該オーミック金属部上のIII-V族化合物半導体からなるコンタクト層と、からなり、 発光スペクトルにおいて、極小値が1つ又は2つであることを徴とする半導体発光素子。」 <本件発明4> 「前記複数の凹部が規則的に配列される、請求項2、3のいずれか1項に記載の半導体発光素子。」 <本件発明5> 「前記n型InPクラッド層の表面において、隣り合う前記凹部の間が平坦面である、請求項2~4のいずれか1項に記載の半導体発光素子。」 <本件発明6> (削除) <本件発明7> 「InP基板上に、In、GaおよびAsを含むIII-V族化合物半導体エッチングストップ層、n型InPクラッド層、半導体発光層、ならびに、p型InPクラッド層を順次形成する半導体層形成工程と、 前記p型InPクラッド層上に、前記半導体発光層から放射される光を反射する金属反射層を形成する金属反射層形成工程と、 金属接合層が表面に設けられた導電性支持基板を、該金属接合層を介して前記金属反射層に接合する接合工程と、 前記InP基板を除去する基板除去工程と、 該基板除去工程の後、前記n型InPクラッド層の表面に複数の凹部を形成する粗面化処理工程と、を含み、 波長1000nm~2200nmの近赤外領域を発光波長とし、 前記粗面化処理工程において、前記凹部の底部を<011>方位に沿わせることを特徴とする半導体発光素子の製造方法であって、 前記粗面化処理工程が、前記III-V族化合物半導体エッチングストップ層をエッチングしてパターン形成する第1工程と、 前記パターン形成された前記III-V族化合物半導体エッチングストップ層をマスクとして用い、前記n型InPクラッド層の表面をエッチングする第2工程と、を含む、半導体発光素子の製造方法。」 第4 取消理由の概要 1 令和3年9月30日付け取消理由(決定の予告)で通知した取消理由の概要 当審が令和3年9月30日付け取消理由通知書(以下、単に「取消理由通知書」という。)により特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。 「(進歩性)本件訂正前の請求項2~5に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の甲第1号証、甲第11号証、甲第12号証に記載されたいずれかの発明及び周知技術(甲第6号証~甲第8号証及び甲第12号証)に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、本件訂正前の請求項2~5に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 [引用文献等一覧] 甲第1号証:特開2013-30606号公報 甲第6号証:ADACHI, Sadao et al., "Chemical Etching Characteristics of (001) InP", Journal of the Electrochemical Society, Volume 128, Issue 6, pp. 1342-1349 (1981). 甲第7号証:R. Klockenbrink et al., "Wet Chemical Etching of Alignment V‐Grooves in (100) InP through Titanium or In0.53Ga0.47As Masks", Journal of the Electrochemical Society, Volume 141, Issue 6, pp. 1594-1599 (1994) 甲第8号証:特開2010-118431号公報 甲第11号証:特開2014-195055号公報 甲第12号証:特開2012-231000号公報」 2 令和2年10月21日付け取消理由の概要 当審が令和2年10月21日付け取消理由通知書により特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。 「1(新規性) 本件特許発明1、4~6は、甲第1号証に記載された発明であり、本件特許発明1、4は、甲第11号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。 2(進歩性) 本件特許発明1~6は、甲第1号証、甲第11号証又は甲第12号証に記載された発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許発明1~6は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。」 第5 取消理由通知に記載した取消理由に対する当審の判断 1 各甲号証に記載された事項 (1)甲第1号証(特開2013-30606号公報)に記載された事項 ア 甲第1号証には、図面と共に、次の記載がなされている(下線は当審が付与した。以下同じ。)。 「【請求項1】 支持基板を有する支持構造体と発光層を有する発光構造体とが接合層を介して接合され、 前記発光構造体は、 前記接合層の上に配置され、金属材料からなる反射層と前記発光層が発する光の波長に対して光学的に透明な材料からなる透明層とを備える第1反射部と、 前記第1反射部の上に配置され、一部が光取り出し面となる面を有する第1導電型クラッド層と前記第1導電型とは異なる導電型の第2導電型クラッド層との間に挟まれる前記発光層を備える半導体積層部と、 前記第1導電型クラッド層の光取り出し面となる面側の一部に配置される電極と、を有し、 前記半導体積層部は、 前記電極と前記第1導電型クラッド層との間に、屈折率の異なる2以上の半導体層を積層した第2反射部を備えることを特徴とする半導体発光素子。」 「【0023】 図1に示すように、半導体発光素子1は、例えば支持基板200を有する支持構造体20と、発光層142を有する発光構造体10と、が支持構造体20側の接合層220及び発光構造体10側の接合層180を介して接合され、金属材料からなる反射層としての金63を有するMR(Metal Reflector)型の半導体発光素子として構成されている。」 「【0025】 [支持構造体] 支持構造体20は、例えばp型Si等の導電性を有する半導体材料からなる支持基板200を有する。…(後略)…。」 「【0028】 [発光構造体] (第1反射部) …(前略)…。また、発光構造体10は、バリア層170を介して接合層180の上に配置され、金属材料からなる反射層としての金属層163と発光層142が発する光の波長に対して光学的に透明な材料からなる透明層161とを備える第1反射部を有する。」 「【0030】 透明層161は、例えば発光層142が発する所定波長の光に対して高い透過性を有するSiO2等の電気絶縁性を有する材料からなり、透明層161における上記光の吸収損失を抑えることができる。透明層161の厚さは、透明層161での光の吸収が少なくなるよう設定されている。 【0031】 また、透明層161の一部には、表面電極310cと裏面電極320cとを電気的に接続する界面電極162が形成されている。界面電極162は、例えば表面電極310cの直下の位置を避け、ドット状に分散して配置される。また、界面電極162は、例えばAuZn合金等の金属材料からなり、後述するp型コンタクト層150とオーミック接合している。」 「【0033】 (ダブルヘテロ構造) 半導体積層部10sは、透明層161上に、例えばp型GaP等の化合物半導体からなる第2導電型コンタクト層としてのp型コンタクト層150を備える。また、半導体積層部10sは、p型コンタクト層150を介して第1反射部の上に配置され、一部が光取り出し面141sとなる面を有する第1導電型クラッド層としてのn型クラッド層141と第1導電型とは異なる導電型の第2導電型クラッド層としてのp型クラッド層143との間に挟まれる発光層142を備える。…(後略)…。」 「【0038】 …(前略)…。光取り出し面141sは、例えば発光層142が発した光の一部を乱反射させるような凹凸部141rを有する。凹凸部141rは、例えばn型クラッド層141の表面を粗面化して得られた規則的、或いは不規則な凹凸形状を有する。…(後略)…。」 「【0040】 (第2反射部) また、半導体積層部10sは、半導体積層部10sの上面の一部に形成される表面電極310cとn型クラッド層141との間に、屈折率の異なる2以上の半導体層を積層した第2反射部としてのn型DBR層130を備える。n型DBR層130の詳細構造については後述する。」 「【0055】 図2(a)に示すように、表面電極310cから裏面電極320cに向けて電流を導入すると、図中に例示する電流E1,E2のように、電流は透明層161の一部に形成された界面電極162を介して流れ、その際、電流の通過位置で発光層142から放射状に光を発する。図2(b1),(c1)に示すように、上記光の一部は光取り出し面141sから半導体発光素子1の外部へと放射されるほか(L1)、表面電極310cの下面側(L2)や、金属層163側へ(図示せず)と向かう光も存在する。」 「【0076】 (エピタキシャルウエハの製造) まずは、図3(a)に示すように、例えばMOVPE法により、成長基板100上に複数のエピタキシャル層が形成されたエピタキシャルウエハ1eを製造する。すなわち、例えばn型GaAs基板等の成長基板100上に、n型AlGaInP等からなるエッチングストップ層110、n型GaAs等からなるn型コンタクト層120、n型のAlAs/AlNGa1-NAs等からなるn型DBR層130、n型AlGaInP等からなるn型クラッド層141、アンドープAlGaInP等からなる発光層142、p型AlGaInP等からなるp型クラッド層143、p型GaP等からなるp型コンタクト層150を、この順に成長させる。これにより、例えばピーク波長が630nmの赤色光を発するエピタキシャルウエハ1eが得られる。」 「【0084】 次に、真空蒸着法やスパッタ法等を用いて、図3(d)に示すように、例えばAu等からなる金属層163を蒸着する。」 【0085】 以上の構造により、反射層としての金属層163と一部に界面電極162が形成された透明層161とを備える第1反射部が構成される。 【0086】 続いて、図3(e)に示すように、真空蒸着法やスパッタ法等を用いて、例えばPt等からなるバリア層170と、Au等からなる接合層180とを、この順に蒸着する。以上の構造により、発光構造体10の主要部が構成される。 【0087】 (貼り合わせウエハの製造) 一方、図3(f)に示すように、例えばp型Si等からなる支持基板200上に、真空蒸着法やスパッタ法等を用いて、Ti等からなるコンタクト電極210と、Au等からなる接合層220とを、この順に蒸着する。以上の構造により、支持構造体20の主要部が構成される。 【0088】 次に、例えば熱圧着法等により、上記支持基板200と先の成長基板100とを貼り合わせる。…(中略)…。」 【0089】 この後、図4(h),(i)に示すように、貼り合わせウエハ1bから成長基板100とエッチングストップ層110とを、例えば機械的研磨やエッチング液等、又はその組み合わせにより除去する。」 「【0091】 n型クラッド層141の一部が露出した面には、フォトリソグラフィ法等により周期的なドット状のレジストパターン(図示せず)を形成してエッチング液に浸漬し、その後レジストパターンを除去して、図4(k)に示す凹凸部141rを形成する。…(後略)…。」 「【0105】 <本発明の第2実施形態> 図5に示すように、本発明の第2実施形態に係る半導体発光素子2は、表面電極310c側のみならず、界面電極162の直上にも第3反射部としてのp型DBR層130dを備える。p型DBR層130dを構成するペア層に含まれる各半導体層は、導電型をp型とすれば、上述の実施形態や変形例と同様の材料及び構成を用いることができる。 【0106】 半導体発光素子2の製造方法としては、上述の実施形態と同様の手法で、p型コンタクト層150までを成長させた後、p型DBR層130dをさらに成長させ、フォトリソグラフィ法等を用いて例えばドット状にパターニングする。その後、p型DBR層130dのパターンが形成されたp型コンタクト層150上の全面に、p型DBR層130dと界面電極162との合計の厚さに略等しくなるよう、透明層161を形成し、開口して、p型DBR層130d上に、例えばドット状に点在する界面電極162を形成する。以後の製造方法は、上述の実施形態と同様である。」 「【0119】 また、上述の実施形態においては、GaAs基板を成長基板100とし、半導体積層構造10sを含む複数の半導体層をGaAs格子整合系材料により構成したが、InP基板を成長基板として、各半導体層をInP格子整合系材料により構成することも可能である。」 「図5 [図:0001391973000001.jpg] 」 イ 上記アより、以下の技術的事項が認められる。 (ア)上記アの【0119】に記載のとおり、「InP基板を成長基板として、各半導体層をInP格子整合系材料により構成することも可能である」ことから、甲第1号証には、「半導体積層構造を含む複数の半導体層」を「InP格子整合系材料」により構成した、図1に記載される如き構造の半導体発光素子が記載されているものと認められる。 (イ)上記アの【0091】に記載のとおり、「フォトリソグラフィ法等により周期的なドット状のレジストパターン(図示せず)を形成してエッチング液に浸漬し」ていることから、「凹凸部141r」の形成手段として、レジストパターンを用いたウェットエッチングが記載されていることは明らかであるところ、「周期的なドット状のレジストパターン」について、具体的な構成の明記はなされてはいない。しかしながら、「凹凸部141r」を形成するための「レジストパターン」であることに鑑みれば、当該「レジストパターン」には、「周期的なドット状」に「開口」が形成されたものが含まれるものと解される。そして、当該「レジストパターン」が、「周期的なドット状」に「開口」が形成されたものであれば、エッチングにより、n型クラッド層141の一部が露出した面には、「凹部」が形成されるものと理解できる。 したがって、甲第1号証には、「n型クラッド層141の一部が露出した面」に「ウェットエッチングにより形成された複数の凹部」が設けられた発光素子が記載されているものと認められる。 (ウ)上記アの図5より、「支持基板200」と「p型クラッド層143」との間に、「金属層163」を有する構成がみてとれる。 (エ)上記アの【0105】及び上記(ア)より、p型DBR層130dは、InP格子整合系材料を用いるものと認められる。 ウ 甲第1号証に記載された発明 以上より、甲第1号証には次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているものと認められる。 <甲1発明> 「導電性を有する半導体材料からなる支持基板200を有する支持構造体20と、発光層142を有する発光構造体10と、が支持構造体20側の接合層220及び発光構造体10側の接合層180を介して接合された、半導体発光素子であって、 半導体発光素子からは、ピーク波長が得られ、 発光構造体10は、半導体積層部10sを有し、 半導体積層部10sは、一部が光取り出し面141sとなる面を有するn型クラッド層141と、第1導電型とは異なる導電型のp型クラッド層との間に挟まれる発光層142を備え、 半導体積層部10sをInP格子整合系材料により構成し、 支持基板200とp型クラッド層143との間に、金属材料からなる反射層としての金属層163を有し、 金属層163と発光層142が発する光の波長に対して光学的に透明な材料からなる透明層161とを備える第1反射部を有し、 透明層161上に、p型コンタクト層150を備え、 透明層161は、電気絶縁性を有する材料からなり、 透明層161の一部には、界面電極162が形成されており、界面電極162は、金属材料からなり、p型コンタクト層150とオーミック接合し、 電流は透明層161の一部に形成された界面電極162を介して流れ、 n型クラッド層141の一部が露出した光取り出し面141sは、ウェットエッチングにより形成された複数の凹部を有し、 半導体積層部10sの上面の一部に形成される表面電極310cとn型クラッド層141との間に、屈折率の異なる2以上の半導体層を積層した第2反射部としてのn型DBR層130を備え、 界面電極162の直上にも第3反射部としてのp型DBR層130dを備え、p型DBR層130dは、InP格子整合系材料用いる、半導体発光素子。」 (2)甲第11号証(特開2014-195055号公報)に記載された事項 ア 甲第11号証には、図面と共に、次の記載がなされている。 「【0015】 半導体発光素子1は、ここでは図2に示すように、基板11上に、基板側接着層13と、第1電極側接着層14と、第1電極15と、絶縁膜16と、第2電極17と、第1保護膜18と、半導体積層体19と、第2保護膜21とが積層された構造を有している。また、基板11の下面には、裏面接着層12が設けられている。なお、図2は図1のA-A断面に相当するが、ここでは図示の便宜上、図1に示したA-A断面上に6個設けられている第1電極15の突出部151を第2電極17の外部接続部17c側から順に3個だけ図示し、残り3個は図示を省略している。」 「【0016】 すなわち、第1実施形態の半導体発光素子1は、基板11と、基板11の上方に、上面側から下面側に向かって順に、第1半導体層19a、活性層19cおよび第2半導体層19bが積層された半導体積層体19とを備え、以下のように構成されている。 第1半導体層19aに接続された第1電極15と、第2半導体層に接続された第2電極17とは、半導体積層体19と基板11との間に設けられている。 …(後略)…。」 「【0017】 以上のように構成された第1実施形態の半導体発光素子1において、さらに、第1半導体層19aの上面に、発光した光を効果的に外部に取り出すために、複数の凹部191が形成されている。複数の凹部191は、…(後略)…。」 「【0021】 (基板11) 基板11は、電極などの部材を介して貼り合わせられた半導体積層体19などを支持するためのものである。…(後略)…。」 「【0022】 基板11の具体例としては、Si基板の他、GaAsなどからなる半導体基板や、Cu,Ge,Niなどの金属材料、あるいは、Cu-Wなどの複合材料からなる導電性基板などが挙げられる。前記したSi基板を基板11として用いると、安価でチップ化しやすいという利点があり、前記した導電性基板を基板11として用いると、基板11側からの電力供給が可能となるほか、放熱性に優れた素子とすることができるという利点がある。」 「【0043】 (第2電極17) 第2電極17は、第2半導体層19bに電流を供給するためのものである。第2電極17は、第2半導体層19bがp型半導体層である本実施形態においてはp電極として機能する。第2電極17は、図2に示すように、第2半導体層19bの下部に膜状に形成され、絶縁膜16を挟んで第1電極15と対向するように配置されている。第2電極17は、より具体的には、第2半導体層19bと接続される内部接続部17bと、内部接続部17bを介して第2半導体層19bに電気的に接続される配線部17aと、配線部17aと接続される外部接続部17cとから構成されている。」 「【0045】 …(前略)…。また、配線部17aは、後記する内部接続部17bと同様に、活性層19cからの光に対して反射率の高い材料で、かつ、導電性の高い材料で構成されることが好ましい。」 「【0057】 半導体積層体19は、図2に示すように、第1半導体層19a、活性層19cおよび第2半導体層19bが上から順に積層された構造を有している。この第1半導体層19a、第2半導体層19bおよび活性層19cの具体的構成は特に限定されず、例えばInAlGaP系、InP系、AlGaAs系、これらの混晶、GaN系などの窒化物半導体のいずれかで構成することができる。…(後略)…。」 「【0058】 ここで、第1半導体層19aとは、n型またはp型半導体層を指し、第2半導体層19bとは、第1半導体層19aとは異なる導電型、すなわちp型またはn型半導体層を指している。半導体発光素子1は、ここでは好ましい形態として、第1半導体層19aがn型半導体層で構成され、第2半導体層19bがp型半導体層で構成されている。本実施形態の構成では、第2半導体層19bよりも第1半導体層19a内の抵抗を低くすることが好ましく、これにより、第1電極15に接続された第1半導体層19a中を電流が拡散しやすくなるので、第1電極15の近傍で起こりやすい傾向にある電流集中を緩和することが可能になる。…(後略)…。」 「【0065】 ここで、凹部191の底部を含む第1半導体層19aの上面には、図2に示すように、粗面部192が形成されている。この粗面部192の凹凸は、凹部191よりも浅い高低差で、かつ凹部191のピッチよりも狭いピッチでランダムに設けられている。…(後略)…。」 「【0081】 次に、半導体発光素子1の製造方法は、図7(b)に示すように、水酸化テトラメチルアンモニウム(Tetramethylammoniumhydroxide:TMAH)溶液を用いたウェットエッチングによって、凹部191の底部を含む第1半導体層19aの上面を粗面化し、粗面部192を形成する。…(後略)…。」 「【0118】 また、前記した半導体発光素子1,1A,1B,1C,1D,1E,1Fは、図2に示すように、凹部191が六角形状に形成されていたが、その他の多角形状、円形状、楕円形状に形成された構成であってもよい。」 「図2 [図:0001391973000002.jpg] 」 「図3 [図:0001391973000003.jpg] 」 イ 甲第11号証に記載された技術的事項 甲第11号証には、図2に記載される構成を備える半導体発光素子が記載されているところ、【0057】には、「この第1半導体層19a、第2半導体層19bおよび活性層19cの具体的構成は特に限定されず」と記載され、その材料系の一つとして「InP系」が例示されていることから、甲第11号証には、「InP系」の材料で構成された半導体発光素子が記載されているものと認められる。 また、第1半導体層19aがn型半導体層で構成され、「第1半導体層19a、活性層19cおよび第2半導体層19b」と積層されている構成からみれば、「第1半導体層19a」及び「第2半導体層19b」は、いわゆる「クラッド層」に相当する層といえる。 ウ 甲第11号証に記載された発明 以上より、甲第11号証には次の発明(以下「甲11発明」という。)が記載されているものと認められる。 <甲11発明> 「基板11と、基板11の上方に、上面側から下面側に向かって順に、第1半導体層19a、活性層19cおよび第2半導体層19bが積層された半導体積層体19とを備える半導体発光素子1であって、 半導体積層体19は、InP系で構成され、 導電性基板を基板11として用い、 基板11は、電極などの部材を介して貼り合わせられた半導体積層体19などを支持するためのものであり、 第1半導体層19aがn型クラッド層で構成され、第2半導体層19bがp型クラッド層で構成され、 第1半導体層19aに接続された第1電極15と、第2半導体層に接続された第2電極17とは、半導体積層体19と基板11との間に設けられ、 第2電極17は、第2半導体層19bと接続される内部接続部17bと、内部接続部17bを介して第2半導体層19bに電気的に接続される配線部17aと、配線部17aと接続される外部接続部17cとから構成され、 配線部17aは、内部接続部17bと同様に、活性層19cからの光に対して反射率の高い材料で構成され、 第1半導体層19aの上面に、発光した光を効果的に外部に取り出すために、複数の凹部191が形成され、 凹部191の底部を含む第1半導体層19aの上面には、粗面部192が形成されている、半導体発光素子。」 (3)甲第12号証(特開2012-231000号公報)に記載された事項 ア 甲第12号証には、図面と共に、次の記載がなされている。 「【0010】 半導体発光装置100は、第1半導体層であるn型クラッド層5と、第2半導体層であるp型クラッド層7と、n型クラッド層5とp型クラッド層7との間に設けられた発光層9と、を含む。そして、各半導体層は、支持基板25の上にp電極21を介して設けられる。」 「【0014】 半導体発光装置100では、第1電極であるn電極17と、第2電極であるp電極21と、の間に駆動電流を流すことにより、発光層9から青色の光が放射される。そして、発光層9から放射された光は、透明電極13を透過して外部に放出される。p電極21は、発光層9から放射された光をn型クラッド層5の方向に反射する。これにより、発光効率を向上させる。」 「【0015】 一方、n型クラッド層5には薄層部5aが設けられ、薄層部5aの下の発光層9へ注入されるキャリア(電子および正孔)の密度を高くするように構成される。すなわち、発光層9から薄層部5aを介して透明電極13に至る電流経路の抵抗は、発光層9から薄層部5a以外の厚いn型クラッド層5を介して透明電極13に流れる電流経路の抵抗よりも小さい。このため、p電極21から透明電極13へ流れる駆動電流の多くが、薄層部5aを介した電流経路に集中し、薄層部5aの下の発光層9におけるキャリア密度が、発光層9の他の部分よりも多くなる。」 「【0020】 例えば、図2(a)に示すように、n型クラッド層5に設けられる複数の薄層部5aは、離間した複数の凹部として形成することができる。その形状は任意であり、同図に示すように矩形でも良いし、円形でも良い。隣り合う薄層部5aの間隔は、電子または正孔の拡散長以上で、製造過程におけるサイドエッチング等を考慮しても離間して形成できる値(2~100μm)が好ましい。」 「【0037】 まず、図4(a)に示すように、サファイア基板3の上に、n型クラッド層5と、超格子層6と、発光層9と、p型クラッド層7と、を順に成長したウェーハ10aを形成する。これらの層は、例えば、MOCVD(Meta Organic Chemical Vapor Deposition)法を用いて形成することができる。」 「【0040】 次に、図4(b)に示すように、p型クラッド層7の上に、電流ブロック層23と、p電極21aとを形成する。電流ブロック層23には、例えば、CVD(Chemical Vapor Deposition)法により形成されるシリコン酸化膜(SiO2膜)を用いることができる。p電極21aには、p型クラッド層7の側から、例えば、ニッケル(Ni)、Ag、白金(Pt)およびAuを順に積層した多層膜を用いることができる。 【0041】 次に、図5(a)に示すように、ウェーハ10aと、ウェーハ10bと、を貼り合わせる。ウェーハ10bは、支持基板25と、その表面に形成されたp電極21bと、を含む。支持基板25には、例えば、p型シリコン基板、もしくは、p型ゲルマニウム基板を用いることができる。p電極21bには、例えば、Auを用いる。そして、同図に示すように、p電極21aの表面と、p電極21bの表面と、を接触させ、両ウェーハの裏面側から加重を加えることにより、p電極21aとp電極21bとを接合する。p電極21は、一体となったp電極21aおよびp電極21bを含む。 【0042】 続いて、ウェーハ10aの裏面側から、例えば、YAGレーザを照射し、n型クラッド層5の一部の結晶を解離させ、図5(b)に示すように、サファイア基板3をn型クラッド層5から分離する。 【0043】 次に、図6(a)に示すように、サファイア基板3を分離して露出させたn型クラッド層5の表面5bにエッチングマスク31を形成する。続いて、n型クラッド層5を、例えば、RIE(Reactive Ion Etching)法を用いてエッチングし、薄層部5aを形成する。」 「【0053】 以上、第1および第2の実施形態では、窒化物半導体を材料とする半導体発光装置を例に説明したが、半導体材料は窒化物半導体に限られる訳ではない。例えば、GaAs系、あるいは、InP系などの化合物半導体を材料とする発光装置であっても良い。」 「図1 [図:0001391973000004.jpg] 」 イ 甲第12号証に記載された技術的な事項 甲第12号証には、図1に記載された構成を備える半導体発光素子が記載されているところ、【0053】には、「半導体材料は窒化物半導体に限られる訳ではない」と記載され、その材料系の一つとして「InP系」が例示されていることから、甲第12号証には、「InP系」で構成された半導体発光素子が記載されているものと認められる。 ウ 甲第12号証に記載された発明 上記a~bより、甲第12号証には次の発明(以下「甲12発明」という。)が記載されているものと認められる。 <甲12発明> 「半導体発光装置100は、第1半導体層であるn型クラッド層5と、第2半導体層であるp型クラッド層7と、n型クラッド層5とp型クラッド層7との間に設けられた発光層9と、を含む半導体発光装置であって、 各半導体層は、InP系の化合物半導体を材料とし、 各半導体層は、支持基板25の上にp電極21を介して設けられ、 支持基板25には、p型シリコン基板、もしくは、p型ゲルマニウム基板を用い、 p電極21は、発光層9から放射された光をn型クラッド層5の方向に反射し、 n型クラッド層75には薄層部5aが設けられ、 n型クラッド層5に設けられる複数の薄層部5aは、離間した複数の凹部として形成することがでる、半導体発光装置。」 2 甲1発明に基づく進歩性 (1)本件発明2について ア 対比 (ア)甲1発明の「支持基板200」は、「導電性を有する半導体材料からなる」基板であるから、本件発明2の「導電性支持基板」に相当し、甲1発明の「発光層142」は、本件発明2の「半導体発光層」に相当する。 また、甲1発明の「p型クラッド層143」及び「n型クラッド層141」は、本件発明2の「p型InPクラッド層」及び「n型InPクラッド層」と「p型クラッド層」及び「n型クラッド層」である点で一致するといえ、甲1発明の「n型クラッド層141」は、「一部が光取り出し面141sとなる面を有する」ことから、本件発明2の「光取出し側とする」との構成を満たすといえる。 (イ)甲1発明の「金属層163」は「金属材料からなる反射層として」機能しているところ、「発光層142」からの光を反射していることは明らかであるから、甲1発明の「金属層163」は、本件発明2の「金属反射層」に相当し、「前記導電性支持基板と、前記p型クラッド層との間に、前記半導体発光層から放射される光を反射する」との特定を満たすものである。 (ウ)甲1発明は、「金属層163と発光層142が発する光の波長に対して光学的に透明な材料からなる透明層161とを備える第1反射部を有し」、「透明層161上に、p型コンタクト層150を備え」、「透明層161は、電気絶縁性を有する材料からなり」、「透明層161の一部には、界面電極162が形成されており、界面電極162は、金属材料からなり、p型コンタクト層150とオーミック接合し」、「電流は透明層161の一部に形成された界面電極162を介して流れ」、「界面電極162の直上にも第3反射部としてのp型DBR層130dを備え、p型DBR層130dは、InP格子整合系材料用いることができる」と特定されており、界面電極162を介して電流が流れることに鑑みれば、金属層163と界面電極162とは「オーミック接触」しているものと理解できる。 そうすると、甲1発明の「透明層161」、「界面電極162」、「p型DBR層130d」及び「界面電極162及びp型DBR層130d」は、それぞれ、本件発明2の「誘電体層」、「オーミック金属部」、「III-V族化合物半導体」及び「コンタクト部」に相当し、「透明層161」及び「界面電極162及びp型DBR層130d」は、並列して設けられているといえる。 よって、甲1発明は、本件発明2の「前記金属反射層および前記p型InPクラッド層の間に並列して設けられた誘電体層およびコンタクト部と、を有し、前記コンタクト部は、前記金属反射層上のオーミック金属部と、該オーミック金属部上のIII-V族化合物半導体からなるコンタクト層と、からなり」との構成と、「前記金属反射層および前記p型」「クラッド層の間に並列して設けられた誘電体層およびコンタクト部と、を有し、前記コンタクト部は、前記金属反射層上のオーミック金属部と、該オーミック金属部上のIII-V族化合物半導体からなるコンタクト層と、からなり」との点で一致する。 (エ)以上より、本件発明2と甲1発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。 <一致点> 「導電性支持基板上に、p型クラッド層、半導体発光層、およびn型クラッド層が順次設けられ、前記n型クラッド層を光取出し側とする半導体発光素子であって、 前記導電性支持基板と、前記p型クラッド層との間に、前記半導体発光層から放射される光を反射する金属反射層をさらに有し、 前記金属反射層および前記p型クラッド層の間に並列して設けられた誘電体層およびコンタクト部と、を有し、 前記コンタクト部は、前記金属反射層上のオーミック金属部と、該オーミック金属部上のIII-V族化合物半導体からなるコンタクト層と、からなり、 前記n型クラッド層の表面に、複数の凹部が設けられた、半導体発光素子。」 <相違点> ・相違点1 「発光波長」の「波長域」について、本件発明2では、「波長1000nm~2200nmの近赤外領域を発光波長とし」と、波長域を特定しているのに対して、甲1発明では、波長域は特定されていない点。 ・相違点2 「p型クラッド層」及び「n型クラッド層」について、本件発明2では、「p型InPクラッド層」及び「n型InPクラッド層」と、クラッド層の材料を特定しているのに対して、甲1発明では、クラッド層の材料は特定されていない点。 ・相違点3 「凹部の底部」について、本件発明2では、「凹部の底部が<011>方位に沿う」と特定しているのに対して、甲1発明では、凹部の底部の構成は特定されていない点。 ・相違点4 「凹部の形状」について、本件発明2では、「前記光取出し側から平面視して楕円状であり、前記楕円状の長軸が前記凹部の前記底部に沿う」と特定しているのに対して、甲1発明では、凹部の形状は特定されていない点。 ・相違点5 本件発明2では、「発光スペクトルにおいて、極小値が1つ又は2つである」と特定されているのに対し、甲1発明では、そのように特定されていない点。 イ 判断 事案に鑑み、相違点5について検討する。 (ア)甲1発明の発光スペクトルについて、甲1発明は、ピーク波長が得られるものであるところ、発光ダイオードの発光スペクトルは、一般に単峰性であることが技術常識であるから、甲1発明の発光スペクトルのピークは一つ(単峰性)であると解するのが自然である。 (イ)そうすると、甲1発明において相違点5に係る構成に至るためには、甲1発明の発光スペクトルを、「単峰性(極小値を有しない)」であるものから、「極小値が1つ又は2つ」であるものに変更すれば足りるものと解される。 そこで、そのように変更し得るかについて検討すると、甲第1号証には、「多峰性(極小値が1つ以上)」について記載はなく、発光スペクトルが単峰性のものを多峰性とすることは技術常識ともいえないので、甲1発明の発光スペクトルを、「多峰性(極小値が1つ以上)」とする動機は認められない。 よって、甲1発明を、相違点5に係る「発光スペクトルにおいて、極小値が1つ又は2つである」ものとすることは、当業者が容易になし得たとはいえないものである。 ウ 本件発明2についての小括 したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明2は、甲1発明、技術常識及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (2)本件発明3~5について これらの各発明は、いずれも、甲1発明との間に相違点5を含むものであるから、上記(1)と同様の理由により、甲1発明、技術常識及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3)甲1発明に基づく進歩性についての小括 以上のとおりであるから、この取消理由によっては、本件発明2~5に係る特許を取り消すことはできない。 3 甲11発明に基づく進歩性 (1)本件発明2について ア 対比 (ア)甲11発明の「基板11」は、「導電性基板」であるから、本件発明2の「導電性支持基板」に相当し、甲11発明の「活性層19c」は、本件発明2の「半導体発光層」に相当する。 また、甲11発明の「p型クラッド層」及び「n型クラッド層」は、本件発明2の「p型InPクラッド層」及び「n型InPクラッド層」と「p型クラッド層」及び「n型クラッド層」である点で一致し、甲11発明の「n型クラッド層」の上面には、「発光した光を効果的に外部に取り出すために、複数の凹部191が形成され」ていることから、甲11発明の「n型クラッド層」は、本件発明2の「光取出し側とする」との特定を満たすものであり、当該「複数の凹部191」は、本件発明2の「複数の凹部」に相当するといえる。 (イ)甲11発明の「第2電極17」は、「第2半導体層19bと接続される内部接続部17bと、内部接続部17bを介して第2半導体層19bに電気的に接続される配線部17aと、配線部17aと接続される外部接続部17cとから構成され」ており、「配線部17aは、内部接続部17bと同様に、活性層19cからの光に対して反射率の高い材料で構成され」ていることから、本件発明2の「金属反射層」に相当し、「前記導電性支持基板と、前記p型InPクラッド層との間に、前記半導体発光層から放射される光を反射する」との特定を満たすものである。 (ウ)上記(ア)~(イ)のとおりであるから、本件発明2と甲11発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。 <一致点> 「導電性支持基板上に、p型クラッド層、半導体発光層、およびn型クラッド層が順次設けられ、前記n型クラッド層を光取出し側とする半導体発光素子であって、 前記導電性支持基板と、前記p型クラッド層との間に、前記半導体発光層から放射される光を反射する金属反射層をさらに有し、 前記n型クラッド層の表面に、複数の凹部が設けられた、半導体発光素子。」 <相違点> ・相違点1 「発光波長」の「波長域」について、本件発明2では、「波長1000nm~2200nmの近赤外領域を発光波長とし」と、波長域を特定しているのに対して、甲11発明では、波長域は特定されていない点。 ・相違点2 「p型クラッド層」及び「n型クラッド層」について、本件発明2では、「p型InPクラッド層」及び「n型InPクラッド層」と、クラッド層の材料を特定しているのに対して、甲11発明では、クラッド層の材料は特定されていない点。 ・相違点3 「凹部の底部」について、本件発明2では、「凹部の底部が<011>方位に沿う」と特定しているのに対して、甲11発明では、凹部の底部の構成は特定されていない点。 ・相違点4 「凹部の形状」について、本件発明2では、「前記光取出し側から平面視して楕円状であり、前記楕円状の長軸が前記凹部の前記底部に沿う」と特定しているのに対して、甲11発明では、凹部の形状は特定されていない点。 ・相違点5 本件発明2では、「前記金属反射層および前記p型InPクラッド層の間に並列して設けられた誘電体層およびコンタクト部と、を有し、前記コンタクト部は、前記金属反射層上のオーミック金属部と、該オーミック金属部上のIII-V族化合物半導体からなるコンタクト層と、からなり」と特定されているのに対し、甲11発明では、そのように特定されていない点。 ・相違点6 本件発明2では、「発光スペクトルにおいて、極小値が1つ又は2つである」と特定されているのに対し、甲11発明では、そのように特定されていない点。 イ 判断 事案に鑑み、相違点6について検討する。 (ア)甲11発明の発光スペクトルについて、甲第11号証に発光スペクトルについての記載はなく、発光ダイオードの発光スペクトルは、一般に単峰性であることが技術常識である。そして、甲第11号証に、発光スペクトルや発光波長について明記されていない以上、上記技術常識に倣うと、甲11発明の発光スペクトルのピークは一つ(単峰性)であると解するのが自然である。 (イ)そうすると、甲11発明において相違点6に係る構成に至るためには、甲11発明の発光スペクトルを、「単峰性(極小値を有しない)」であるものから、「極小値が1つ又は2つ」であるものに変更すれば足りるものと解される。 そこで、そのように変更し得るかについて検討すると、甲第11号証には、「多峰性(極小値が1つ以上)」について記載はなく、発光スペクトルが単峰性のものを多峰性とすることは技術常識ともいえないので、甲11発明の発光スペクトルを、「多峰性(極小値が1つ以上)」とする動機は認められない。 よって、甲11発明を、相違点6に係る「発光スペクトルにおいて、極小値が1つ又は2つである」ものとすることは、当業者が容易になし得たとはいえないものである。 ウ 本件発明2についての小括 したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明2は、甲11発明、技術常識及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (2)本件発明3~5について これらの各発明は、いずれも、甲11発明との間に相違点6を含むものであるから、上記(1)と同様の理由により、甲11発明、技術常識及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3)甲11発明に基づく進歩性についての小括 以上のとおりであるから、この取消理由によっては、本件発明2~5に係る特許を取り消すことはできない。 4 甲12発明に基づく進歩性 (1)本件発明2について ア 対比 (ア)甲12発明の「支持基板25」は、「p型シリコン基板、もしくは、p型ゲルマニウム基板」であるから、本件発明2の「導電性支持基板」に相当し、甲12発明の「発光層9」は、本件発明2の「半導体発光層」に相当する。 また、甲12発明の「p型クラッド層7」及び「n型クラッド層5」は、本件発明2の「p型InPクラッド層」及び「n型InPクラッド層」と「p型クラッド層」及び「n型クラッド層」である点で一致するといえ、「p電極21」は、「発光層9から放射された光をn型クラッド層5の方向に反射し」ていることから、光がn型クラッド層5から取り出されていることは明らかであり、甲12発明の「n型クラッド層5」は、本件発明2の「光取出し側とする」との特定を満たすといえる。 (イ)甲12発明の「p電極21」は、「発光層9から放射された光をn型クラッド層5の方向に反射し」ていることから、本件発明2の「金属反射層」に相当し、「前記導電性支持基板と、前記p型InPクラッド層との間に、前記半導体発光層から放射される光を反射する」との特定を満たすものである。 (ウ)上記(ア)~(イ)のとおりであるから、本件発明2と甲12発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。 <一致点> 「導電性支持基板上に、p型クラッド層、半導体発光層、およびn型クラッド層が順次設けられ、前記n型クラッド層を光取出し側とする半導体発光素子であって、 前記導電性支持基板と、前記p型クラッド層との間に、前記半導体発光層から放射される光を反射する金属反射層をさらに有し、 前記n型クラッド層の表面に、複数の凹部が設けられた、半導体発光素子。」 <相違点> ・相違点1 「発光波長」の「波長域」について、本件発明2では、「波長1000nm~2200nmの近赤外領域を発光波長とし」と、波長域を特定しているのに対して、甲12発明では、波長域は特定されていない点。 ・相違点2 「p型クラッド層」及び「n型クラッド層」について、本件発明2では、「p型InPクラッド層」及び「n型InPクラッド層」と、クラッド層の材料を特定しているのに対して、甲12発明では、クラッド層の材料は特定されていない点。 ・相違点3 「凹部の底部」について、本件発明2では、「凹部の底部が<011>方位に沿う」と特定しているのに対して、甲12発明では、凹部の底部の構成は特定されていない点。 ・相違点4 「凹部の形状」について、本件発明2では、「前記光取出し側から平面視して楕円状であり、前記楕円状の長軸が前記凹部の前記底部に沿う」と特定しているのに対して、甲12発明では、凹部の形状は特定されていない点。 ・相違点5 本件発明2では、「前記金属反射層および前記p型InPクラッド層の間に並列して設けられた誘電体層およびコンタクト部と、を有し、前記コンタクト部は、前記金属反射層上のオーミック金属部と、該オーミック金属部上のIII-V族化合物半導体からなるコンタクト層と、からなり」と特定されているのに対し、甲12発明では、そのように特定されていない点。 ・相違点6 本件発明2では、「発光スペクトルにおいて、極小値が1つ又は2つである」と特定されているのに対し、甲12発明では、そのように特定されていない点。 イ 判断 事案に鑑み、相違点6について検討する。 (ア)甲12発明の発光スペクトルについて、甲第12号証に発光スペクトルについての記載はなく、発光ダイオードの発光スペクトルは、一般に単峰性であることが技術常識である。そして、甲第12号証に、発光スペクトルや発光波長について明記されていない以上、上記技術常識に倣うと、甲12発明の発光スペクトルのピークは一つ(単峰性)であると解するのが自然である。 (イ)そうすると、甲12発明において相違点6に係る構成に至るためには、甲12発明の発光スペクトルを、「単峰性(極小値を有しない)」であるものから、「極小値が1つ又は2つ」であるものに変更すれば足りるものと解される。 そこで、そのように変更し得るかについて検討すると、甲第12号証には、「多峰性(極小値が1つ以上)」について記載はなく、発光スペクトルが単峰性のものを多峰性とすることは技術常識ともいえないので、甲12発明の発光スペクトルを、「多峰性(極小値が1つ以上)」とする動機は認められない。 よって、甲12発明を、相違点6に係る「発光スペクトルにおいて、極小値が1つ又は2つである」ものとすることは、当業者が容易になし得たとはいえないものである。 ウ 本件発明2についての小括 したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明2は、甲12発明、技術常識及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (2)本件発明3~5について これらの各発明は、いずれも、甲12発明との間に相違点6を含むものであるから、上記(1)と同様の理由により、甲11発明、技術常識及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3)甲12発明に基づく進歩性についての小括 以上のとおりであるから、この取消理由によっては、本件発明2~5に係る特許を取り消すことはできない。 5 取消理由通知に記載した取消理由に対する当審の判断の小括 以上のとおり、取消理由通知に記載した取消理由によっては、本件発明2~5に係る特許を取り消すことはできない。 第6 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について 1 甲第10号証に記載された発明に基づく新規性欠如・進歩性欠如 (1)本件発明2について ア 甲第10号証(特開2012-84727号公報)に記載された事項 (ア)甲第10号証には、図面と共に、次の記載がなされている。 「【請求項1】 第1導電型の第1半導体層と、前記第1導電型とは異なる第2導電型の第2半導体層と、前記第1半導体層と前記第2半導体層とに挟まれる発光層とを有する半導体積層構造と、 前記半導体積層構造の一方の面上に設けられ、線形状の線状表面電極部を有する表面電極と、 前記半導体積層構造の前記表面電極が設けられる側の反対の面側に設けられ、前記発光層が発する光を反射する反射層と、 前記半導体積層構造と前記反射層との間に設けられる誘電体層と、 前記半導体積層構造と前記反射層とを電気的に接続し、線形状の線状界面電極部を有する界面電極とを備え、 前記線状表面電極部と前記線状界面電極部とがそれぞれ、平面視にて予め定められた方向に沿って延び、 前記半導体積層構造が、前記半導体積層構造の前記反射層の反対側の表面に、前記予め定められた方向とは異なる方向に沿って設けられる溝を有する発光素子。」 「【請求項5】 前記第1半導体層が、前記発光層の反対側の表面に凹凸部を有する請求項4に記載の発光素子。」 「【0018】 (発光素子1の構造の概要) 本実施の形態に係る発光素子1は、例えば、赤色光又は赤外光を放射する発光素子としての発光ダイオード(Light Emitting Diode:LED)である。発光素子1は、図1Bに示すように、発光層としての活性層13を有すると共に、平面視にて予め定められた一の方向に沿って直線状に延びる溝80を一方の面に有する半導体積層構造10と、半導体積層構造10の一方の面上であって溝80が設けられている領域を除く領域にオーミック接合する表面電極50と、半導体積層構造10の他方の面側に設けられ、活性層13が発する光を反射する反射層32と、半導体積層構造10と反射層32との間に設けられる誘電体層としての絶縁層30と、絶縁層30の一部を貫通し、半導体積層構造10と反射層32とを電気的に接続する界面電極40とを備える。 【0019】 また、発光素子1は、反射層32の絶縁層30に接している側の反対側に導電性を有する支持基板20を備え、支持基板20の反射層32の反対側の面の略全面には、支持基板20にオーミック接合する裏面電極55が設けられる。そして、発光素子1は、反射層32の半導体積層構造10の側の反対側に設けられる半導体積層構造側接合層36と、支持基板20の裏面電極55の反対側に設けられる支持基板側接合層24とを備える。半導体積層構造側接合層36と支持基板側接合層24とはそれぞれ主として金属材料を用いて形成されており、両層が互いに接合することにより半導体積層構造10が支持基板20に支持される。更に、表面電極50の表面の一部には、ワイヤーボンディング用パッドとしてのパッド電極60が設けられる。」 「【0024】 (半導体積層構造10) 半導体積層構造10は、例えば、III-V族化合物半導体であるAlGaInP系半導体(すなわち、(AlxGa1-x)yIn1-yP[ただし、0≦x≦1、0≦y≦1])からなる複数の化合物半導体層を有して形成される。具体的に、半導体積層構造10は、不純物であるドーパントがドープされていないアンドープのAlGaInP系の化合物半導体から形成される活性層13を、第1導電型としてのn型のAlGaInPを含んで形成されるn型クラッド層14と、第2導電型としてのp型のAlGaInPを含んで形成される第2半導体層としてのp型クラッド層12とで挟んだ構成を有する。」 【0025】 また、半導体積層構造10は、p型クラッド層12の活性層13の反対側に設けられるp型コンタクト層11と、n型クラッド層14の活性層13の反対側に設けられる第1半導体層としてのn型電流分散層15と、n型電流分散層15のn型クラッド層14の反対側に設けられるn型コンタクト層16とを更に有する。ここで、発光素子1に供給された電流が表面電極50から界面電極40に流れる場合に、当該電流が表面電極50の直下の活性層13に集中して流れることを抑制し、活性層13の面方向に電流を分散させることにより発光素子1の発光出力を向上させるべく、n型電流分散層15は、p型クラッド層12の体積抵抗率より低い体積抵抗率を有する化合物半導体から構成する。なお、体積抵抗率は、Van der pauw法により測定することができる。また、過電流を応用した非接触式抵抗測定方法を用いることもできる。」 「【0032】 (反射層32) 反射層32は、半導体積層構造10の表面電極50が設けられる側の反対の面側に設けられる。反射層32は、活性層13が発する光に対して高い反射率を有する導電性材料から形成される。具体的に、反射層32は、Auを含む金属材料を用いて形成することができる。一例として、反射層32は、Auから形成することができる。反射層32は、活性層13が発した光のうち、反射層32に達した光を活性層13側に向けて反射する。」 「図1B [図:0001391973000005.jpg] 」 (イ)上記(ア)の【0025】を参酌しつつ、図1Bより、導電性を有する支持基板20上に、p型クラッド層12、活性層13、n型クラッド層14、及び凹凸部を有するn型電流分散層15をこの順に備え、n型クラッド層14側より光は取り出される発光素子1がみてとれる。 (ウ)甲第10号証に記載された発明 以上より、甲第10号証には次の発明(以下「甲10発明」という。)が記載されているものと認められる。 <甲10発明> 「第1導電型の第1半導体層と、前記第1導電型とは異なる第2導電型の第2半導体層と、前記第1半導体層と前記第2半導体層とに挟まれる発光層とを有する半導体積層構造と、 前記半導体積層構造の一方の面上に設けられ、線形状の線状表面電極部を有する表面電極と、 前記半導体積層構造の前記表面電極が設けられる側の反対の面側に設けられ、前記発光層が発する光を反射する反射層と、 前記半導体積層構造と前記反射層との間に設けられる誘電体層と、 前記半導体積層構造と前記反射層とを電気的に接続し、線形状の線状界面電極部を有する界面電極とを備え、 前記線状表面電極部と前記線状界面電極部とがそれぞれ、平面視にて予め定められた方向に沿って延び、 前記半導体積層構造が、前記半導体積層構造の前記反射層の反対側の表面に、前記予め定められた方向とは異なる方向に沿って設けられる溝を有し、 前記第1半導体層が、前記発光層の反対側の表面に凹凸部を有し、 発光素子は、赤外光を放射する発光ダイオードであり、 凹凸部は、n型電流分散層15に形成され、 反射層32は、Auを含む金属材料を用いて形成し、 半導体積層構造10が支持基板20に支持され 導電性を有する支持基板20上に、p型クラッド層12、活性層13、n型クラッド層14、及びn型電流分散層15をこの順に備え、n型クラッド層14側より光は取り出され、支持基板20とp型クラッド層12との間に反射層32を有する、発光素子。」 イ 対比 (ア)甲10発明の「導電性を有する支持基板20」は、本件発明2の「導電性支持基板」に相当し、甲10発明の「活性層13」は、本件発明2の「半導体発光層」に相当する。 また、甲10発明の「p型クラッド層12」及び「n型クラッド層14」は、本件発明2の「p型InPクラッド層」及び「n型InPクラッド層」と「p型クラッド層」及び「n型クラッド層」である点で一致するといえ、「n型クラッド層14側より光は取り出され」るので、甲10発明の「n型クラッド層14」は、本件発明2の「光取出し側とする」との構成を満たすといえる。 (イ)甲10発明の「反射層32」は、「前記半導体積層構造の前記表面電極が設けられる側の反対の面側に設けられ」、「発光層が発する光を反射する」「Auを含む金属材料」であるから、本件発明2の「金属反射層」に相当し、引用発明の「半導体積層構造10」が「支持基板20に支持され」ていることを踏まえると、本件発明2の「前記導電性支持基板と、前記p型クラッド層との間に、前記半導体発光層から放射される光を反射する」との特定を満たすものである。 (ウ)甲10発明は、「前記半導体積層構造と前記反射層との間に設けられる誘電体層と、前記半導体積層構造と前記反射層とを電気的に接続し、線形状の線状界面電極部を有する界面電極とを備え」と特定されている。 そうすると、甲10発明の「誘電体層」及び「界面電極」は、それぞれ、本件発明2の「誘電体層」及び「コンタクト部」に相当し、「誘電体層」及び「界面電極」は、並列して設けられているといえる。 よって、甲10発明は、本件発明2の「前記金属反射層および前記p型InPクラッド層の間に並列して設けられた誘電体層およびコンタクト部と、を有し」との構成と、「前記金属反射層および前記p型」「クラッド層の間に並列して設けられた誘電体層およびコンタクト部と、を有し」との点で一致する。 (エ)甲10発明では、「凹凸部は、n型電流分散層15に形成され」ているから、本件発明2の「前記n型InPクラッド層の表面に、複数の凹部が設けられ」との構成と、「n型層の表面に、複数の凹部が設けられ」との点で一致する。 (オ)以上より、本件発明2と甲10発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。 <一致点> 「導電性支持基板上に、p型クラッド層、半導体発光層、およびn型クラッド層が順次設けられ、前記n型クラッド層を光取出し側とする半導体発光素子であって、 前記導電性支持基板と、前記p型クラッド層との間に、前記半導体発光層から放射される光を反射する金属反射層をさらに有し、 n型層の表面に、複数の凹部が設けられ、 前記金属反射層および前記p型クラッド層の間に並列して設けられた誘電体層およびコンタクト部と、を有する半導体発光素子。」 「導電性支持基板上に、p型InPクラッド層、半導体発光層、およびn型InPクラッド層が順次設けられ、前記n型InPクラッド層を光取出し側とする半導体発光素子であって、 前記導電性支持基板と前記型InPクラッド層との間に、前記半導体発光層から放射される光を反射する金属反射層をさらに有し、 前記n型InPクラッド層の表面に、複数の凹部が設けられ、 波長1000nm~2200nmの近赤外領域を発光波長とし、 前記凹部の底部が<011>方位に沿い、 前記凹部の形状が、前記光取出し側から平面視して楕円状であり、前記楕円状の長軸が前記凹部の前記底部に沿い、 前記金属反射層および前記p型InPクラッド層の間に並列して設けられた誘電体層およびコンタクト部と、を有し、 前記コンタクト部は、前記金属反射層上のオーミック金属部と、該オーミック金属部上のIII-V族化合物半導体からなるコンタクト層と、からなり、 発光スペクトルにおいて、極小値が1つ又は2つであることを特徴とする半導体発光素子。」 <相違点> ・相違点1 「発光波長」の「波長域」について、本件発明2では、「波長1000nm~2200nmの近赤外領域を発光波長とし」と、波長域を特定しているのに対して、甲10発明では、波長域は特定されていない点。 ・相違点2 「p型クラッド層」及び「n型クラッド層」について、本件発明2では、「p型InPクラッド層」及び「n型InPクラッド層」と、クラッド層の材料を特定しているのに対して、甲10発明では、クラッド層の材料は特定されていない点。 ・相違点3 「複数の凹凸部」について、本件発明2では、「n型InPクラッド層」の表面に形成されているのに対して、甲10発明では、「n型電流分散層15」の表面に形成されている点。 ・相違点4 「凹部の底部」について、本件発明2では、「凹部の底部が<011>方位に沿う」と特定しているのに対して、甲10発明では、凹部の底部の構成は特定されていない点。 ・相違点5 「凹部の形状」について、本件発明2では、「前記光取出し側から平面視して楕円状であり、前記楕円状の長軸が前記凹部の前記底部に沿う」と特定しているのに対して、甲10発明では、凹部の形状は特定されていない点。 ・相違点6 本件発明2では、「前記金属反射層および前記p型InPクラッド層の間に並列して設けられた誘電体層およびコンタクト部と、を有し、前記コンタクト部は、前記金属反射層上のオーミック金属部と、該オーミック金属部上のIII-V族化合物半導体からなるコンタクト層と、からなり」と特定されているのに対し、甲10発明では、そのように特定されていない点。 ・相違点7 本件発明2では、「発光スペクトルにおいて、極小値が1つ又は2つである」と特定されているのに対し、甲10発明では、そのように特定されていない点。 ウ 判断 事案に鑑み、相違点2について検討する。 申立人は、甲第10号証の「半導体積層構造10は、例えば、III-V族化合物半導体であるAlGaInP系半導体(すなわち、(AlxGa1-x)yIn1-yP[ただし、0≦x≦1、0≦y≦1])からなる複数の化合物半導体層を有して形成される」(【0024】)との記載より、半導体積層構造10を構成する「p型クラッド層」及び「n型クラッド層」が、「p型InPクラッド層」及び「n型InPクラッド層」(y=0)で形成され得ることが開示されていると主張している。 しかしながら、「AlGaInP系半導体」からなる半導体発光素子は、GaAs基板上に形成され、AlGaInP系の化合物半導体からなる活性層を備えるものであることが技術常識であるから、バンドギャップの関係を踏まえると、そのクラッド層が「InP」より構成されることはない。そして、他の記載及び周知技術を参酌しても、甲10発明の「p型クラッド層」及び「n型クラッド層」を、「InP」により構成する動機は認められない。 よって、甲10発明の「p型クラッド層」及び「n型クラッド層」を、相違点2に係る本件発明2の構成とすることは、当業者が容易になし得たものではない。 エ 本件発明2についての小括 したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明2は、甲10発明ではなく、甲10発明、技術常識及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 (2)本件発明3~5について これらの各発明は、いずれも、甲10発明との間に相違点2を含むものであるから、上記(1)と同様の理由により、本件発明3~5は、甲10発明ではなく、甲10発明、技術常識及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 (3)甲第10号証に記載された発明に基づく新規性欠如・進歩性欠如についての小括 以上のとおりであるから、この取消理由によっては、本件発明2~5に係る特許を取り消すことはできない。 2 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由についての小括 以上のとおり、取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由によっては、本件発明2~5に係る特許を取り消すことはできない。 第7 むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知に記載された取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、本件発明2~5に係る特許を取り消すことはできない。そして、他に、本件発明2~5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 本件発明1及び6に係る特許は、本件訂正により削除され、特許異議の申立てについて、当該各発明に係る特許に対する申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。 よって、結論のとおり決定する。

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2020-700344

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