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特許異議申立

2020-700285

繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物

審判番号
2020-700285
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2015-212957外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2020年04月22日
審決日
2020年08月31日
公報発行日
2020年10月30日
結論
維持
当事者
審判長/審判官
分類
P1651.113-Y (C08G) / P1651.121-Y (C08G) / P1651.537-Y (C08G)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第2号
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特許第6593636号発明「繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

【結 論】
特許第6593636号の請求項1~6に係る特許を維持する。

理由

目次 ▾ 7項目
【理 由】

第1 手続の経緯

特許第6593636号(以下、「本件」という。)の請求項1~6に係る特許についての出願は、平成27年10月29日に出願され、令和元年10月4日にその特許権の設定登録がされ、令和元年10月23日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、令和2年4月22日に特許異議申立人 小黒 平二(以下、「申立人」という。)は、特許異議の申立てを行った。

第2 本件発明

本件の請求項1~6の特許に係る発明(以下、「本件発明1」~「本件発明6」という。また、本件特許の願書に添付した明細書を「本件明細書」という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1~6に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「【請求項1】
エポキシ樹脂(A)と、ポリエーテルポリオール由来の構造を有し、且つ、分子鎖の両末端にイソシアネート基又は水酸基を有するウレタンプレポリマー(B)、及び硬化剤(C)を配合して得られるエポキシ樹脂組成物であって、
硬化反応前は(A)と(B)が相溶しており、
硬化反応後は(A)が海構造を形成し、且つ(B)が島構造を形成して、得られるエポキシ樹脂組成物の硬化物が海島相分離構造であることを特徴とする繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物。
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【請求項2】
エポキシ樹脂(A)とウレタンプレポリマー(B)の合計100質量部に対して、(A)60~99質量部と(B)1~40質量部を配合した組成物に、更に硬化剤(C)3~50質量部を加えて得られる請求項1記載の繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物。
【請求項3】
ウレタンプレポリマー(B)の数平均分子量が、1000~5000の範囲である請求項1記載の繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物。
【請求項4】
硬化剤(C)が、イミダゾール系硬化剤である請求項1記載の繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物。
【請求項5】
前記海島相分離構造において、エポキシ樹脂(A)の海構造が硬化物相であり、且つ、ウレタンプレポリマー(B)の島構造が空孔を有する直径100nm~500nmの球状の硬化物相である請求項1記載の繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物。
【請求項6】
前記エポキシ樹脂組成物の硬化物を用いて、ASTM D5045-93に準拠して測定した破壊靱性値が、1.3MPa・m0.5以上である請求項1記載の繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物。」

第3 異議申立ての理由の概要

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申立人の異議申立ての理由は、概要以下のとおりである。

・申立ての理由1

本件発明1~3,6は、甲第1号証に記載された発明又は甲第2号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。よって、係る発明の特許は同法第113条第2号の規定により取り消すべきものである。

・申立ての理由2

本件発明1~6は、甲第1号証に記載された発明又は甲第2号証に記載された発明、及び甲第3~6号証に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に想到したものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。よって、係る発明の特許は同法第113条第2号の規定により取り消すべきものである。

・申立ての理由3

本件特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号、第36条第6項第2号に適合するものではない。よって、係る発明の特許は同法第113条第4号の規定により取り消すべきものである。

<証拠方法>

甲第1号証:博士論文「種々のポリウレタンによる一液性エポキシ接着剤の改質に関する研究」,佐藤 暢也 著,2004年,p.1~129
甲第2号証:Nobuya SATO et al., Structures and Physical Properties of Epoxy Resins Reacted with Various Polyurethanes, 日本接着学会誌,Vol.39,No.8,2003,p.287~294
甲第3号証:エポキシ樹脂ハンドブック,新保 正樹 編,日刊工業新聞社,1987年発行,p.211~221,228~229
甲第4号証:特開平02-305860号公報
甲第5号証:特開2005-314536号公報
甲第6号証:特開2014-141632号公報

(以下、「甲第1号証」~「甲第6号証」を、それぞれ「甲1」~「甲6」という。)

第4 異議申立ての理由についての判断

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事案に鑑み、まずは申立ての理由3を検討し、その後、申立ての理由1~2を検討する。

1 申立ての理由3について

(1)発明の詳細な説明に記載された事項

本件明細書の発明の詳細な説明には、次の記載がある。

ア「【発明が解決しようとする課題】

【0017】

本発明の目的は、繊維基材(炭素繊維、ガラス繊維など)への含浸性に優れ、且つ、耐熱性と機械的特性(特に破壊靭性)などの優れた性能を有する繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物を提供することにある。」

イ「【0023】

≪エポキシ樹脂(A)≫

本発明で用いるエポキシ樹脂(A)としては、エポキシ基を2個以上有する化合物であれば特に制限せず、例えば、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、臭素化ビスフェノールA型、水添ビスフェノールA型、ビスフェノールS型、ビスフェノールAF型、ビフェニル型のようなビスフェニル基を有するエポキシ化合物、ポリアルキレングリコール型、アルキレングリコール型のエポキシ化合物、ナフタレン環を有するエポキシ化合物、フルオレン基を有するエポキシ化合物等の二官能型のグリシジルエーテル型エポキシ樹脂;フェノールノボラック型、オルソクレゾールノボラック型、トリスヒドロキシフェニルメタン型、テトラフェニロールエタン型のような多官能型のグリシジルエーテル型エポキシ樹脂;ダイマー酸のような合成脂肪酸のグリシジルエステル型エポキシ樹脂;N,N,N’,N’-テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン(TGDDM)、テトラグリシジル-m-キシリレンジアミン、トリグリシジル-p-アミノフェノール、N,N-ジグリシジルアニリンのようなグリシジルアミノ基を有する芳香族エポキシ樹脂;トリシクロデカン環を有するエポキシ化合物(例えば、ジシクロペンタジエンとm-クレゾールのようなクレゾール類またはフェノール類を重合させた後、エピクロルヒドリンを反応させる製造方法によって得られるエポキシ化合物)等を挙げることができる。これらは単独又は2種以上を組み合わせて使用することができる。

・・・

【0036】

[両末端NCO基プレポリマー]

両末端NCO基プレポリマー及び両末端OH基プレポリマーは、共にポリオール化合物(a)とポリイソシアネート化合物(b)を原料にして常法に従い反応させて得ることができる。その合成反応は、特に限定しない。

・・・

【0039】

前記ポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール(PPG)、ポリエチレンプロピレングリコール(PEPG)、ポリテトラメチレングリコール(PTMG)、2種以上のアルキレンオキサイド共重合体(例えば、エチレンオキサイド・プロピレンオキサイド共重合体)等が挙げられ、これらの中でも、ポリテトラメチレングリコール(PTMG)が好ましい。前記ポリエーテルポリオールは、直鎖、分岐の何れの構造を有していてもよい。

・・・

【0053】

ポリイソシアネート化合物(b)としては、公知のものがいずれも使用でき、例えば、トリレンジイソシアネ-ト(TDI;その2,4体又は2,6体、若しくはそれらの混合物)、ジフェニルメタンジイソシアネ-ト(MDI;その4,4’体、2,4’体又は2,2’体、若しくはそれらの混合物、クルードMDI)、MDI変性体(カルボジイミド変性体、ヌレート変性体、ビュレット変性体、ウレタンイミン変性体など)、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、カルボジイミド化ジフェニルメタンポリイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、1,5-ナフタレンジイソシアネート(NDI)、テトラメチルキシレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート(TODI)等の芳香族ポリイソシアネ-ト、あるいはイソホロンジイソシアネート(IPDI)、水添ジフェニルメタンジイソシアネート(水添MDI)、水添キシリレンジイソシアネート(水添XDI)等の脂環式ポリイソシアネート、あるいはヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ダイマー酸ジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート等が挙げられる。これらの中でも、適度な反応性、優れた機械的特性(特に破壊靱性、弾性)を得られることから、好ましくはTDI、MDIであり、より好ましくはTDIである。これらは単独使用でも2種以上を併用してもよい。

・・・

【0058】

[両末端OH基プレポリマー]

また、両末端OH基プレポリマーの合成反応に用いるポリオール化合物及びポリイソシアネート化合物は、両末端NCO基プレポリマーの合成反応の原料として用いることが可能なポリオール化合物(a)及びポリイソシアネート化合物(b)から選択すればよい。

・・・

【0065】

硬化剤(C)としては、例えば、イミダゾール系硬化剤、ジシアンジアミド系硬化剤、アミン系硬化剤、ポリアミド系硬化剤、酸無水物系硬化剤、フェノール樹脂系硬化剤、アミノ樹脂系硬化剤、ポリメルカプタン系硬化剤などが挙げられるが、これらの中でも、可使時間が比較的長く、作業性に優れることから、イミダゾール系硬化剤が好ましい。これらは単独使用でも2種以上を併用してもよい。」

ウ「【0067】

≪エポキシ樹脂硬化物≫

次いで、本発明の繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物を用いたエポキシ樹脂硬化物について、以下に説明する。

【0068】

エポキシ樹脂硬化物は、例えば、以下のような〔工程1〕~〔工程5〕を含む一連の工程を経て得ることができる。

【0069】

なお、各工程の設定条件(温度、時間、圧力、不活性ガスや添加剤の使用の有無やその種類、供給量など)は、特に限定しない。また、添加剤を用いる場合、添加剤が支障なく添加でき、且つ、均一な配合と混合が可能であれば、何れの工程で如何なる方法を選択し組み合わせて添加しても差し支えない。

【0070】

〔工程1〕エポキシ樹脂(A)の調整

反応装置に、エポキシ樹脂(A)として、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(25℃で液状のもの)を仕込み、窒素雰囲気下で攪拌を開始する。

【0071】

〔工程2〕ポリエーテルポリオール由来の構造を有し、且つ、分子鎖の両末端にイソシアネート基又は水酸基を有するウレタンプレポリマー(B)の調整

別の反応装置に、ポリイソシアネート化合物(b)とポリオール化合物(a)とを、[NCO]/[OH]当量比で、両末端NCO基プレポリマーを得る場合には1.2~2.0の範囲に、また、両末端OH基プレポリマーを得る場合には0.25~0.7の範囲に設定して、常法に従い発熱に充分注意しながら仕込み、不活性雰囲気下(例えば窒素雰囲気下)で攪拌しながら、設定温度(好ましくは70℃~90℃の範囲)で反応させて、ウレタンプレポリマー(B)を得る。

【0072】

〔工程3〕繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物の調製

〔工程1〕のエポキシ樹脂(A)と、〔工程2〕のウレタンプレポリマー(B)とを、それぞれ所定量混合容器に仕込み、設定温度(好ましくは50℃~80℃の範囲)で加温し、撹拌しながら、所定量の硬化剤(C)を加えて相溶するまで撹拌して、繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物を調製する。

【0073】

〔工程4〕注型・硬化工程

前記エポキシ樹脂組成物を予熱しておいた金型中に注入する。次いで、エポキシ樹脂組成物を真空中で脱泡した後、60℃から30分ごとに10分ずつ昇温して、更に110℃にて12時間保持することでエポキシ樹脂硬化物を得る。

【0074】

〔工程5〕後加工工程

金型より抜き出した硬化物は、必要に応じて、溝入れ加工、切削加工、切断加工、研摩加工などの適当な加工方法を施して、用途に応じた形状に整えて、繊維強化樹脂成型品を得る。」

エ「【0075】

本発明の繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物は、硬化反応前はエポキシ樹脂(A)とウレタンプレポリマー(B)が共に液状を保ち相溶しているが、硬化反応後は(A)が海構造を形成し、且つ、(B)が島構造を形成して、得られる硬化物は海島相分離構造になるという特徴がある。

・・・

【0079】

本発明の繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物は、硬化反応後に硬化物がこのような海島相分離構造を形成できるので、繊維強化樹脂成型品において、エポキシ樹脂の優れた耐熱性や機械強度を維持したまま、破壊靱性を飛躍的に向上させることができる。」

オ「【実施例】

【0085】

以下、本発明を実施例により、具体的に説明するが、本発明の範囲はこれら実施例のみに限定されるものではない。

また、本発明では、特に断りのない限り、「部」は「質量部」、「%」は「質量%」である。

尚、本発明で用いた測定方法及び評価方法は、以下の通りである。

【0086】

〔破壊靱性の評価方法と判定基準〕

実施例及び比較例で得たエポキシ樹脂組成物を60℃に加熱した後、真空中で脱泡し、4mm厚のシリコン製スペーサーをガラス板で挟んだ注型板を用いて、60℃から30分ごとに10℃ずつ上昇させて、110℃到達後は110℃にて12時間ホールドすることにより、4mm厚の硬化物を得た。

得られた硬化物を幅13mm×長さ80mm×厚さ4mmの大きさに切削し試験片として、ASTM D5045-93(ISO 13586)に従い加工し、破壊靱性(単位;MPa・m0.5)の測定を行った。

尚、試験前における試験片へのノッチ(刻み目)の作成は、剃刀の刃を試験片にあて、ハンマーで剃刀の刃に衝撃を与えることで行った。

測定機器  :島津オートグラフ(株式会社島津製作所製)
型式    :AG-X plus
試験速度  :10mm/分
標線間距離 :50mm

【0087】

尚、破壊靱性の判定は、下記の基準に従い行なった。

○:破壊靱性値が1.3MPa・m0.5以上の場合、優れる。

×:破壊靱性値が1.3MPa・m0.5未満の場合、劣る。

【0088】

〔引張強度及び引張破断伸度の評価方法〕

実施例及び比較例で得たエポキシ樹脂組成物を60℃に加熱した後、真空中で脱泡し、2mm厚のゴム製スペーサーをガラス板で挟んだ注型板を用いて、60℃から30分ごとに10℃ずつ上昇させて、110℃到達後は110℃にて12時間ホールドすることにより、2mm厚の硬化物を得た。

得られた硬化物を切削して試験片を作成して、JIS K7161に準拠して、引張強度(単位;Mpa)、及び引張破断伸度(単位;%)を測定した。

測定機器  :島津オートグラフ(株式会社島津製作所製)
型式    :AG-100KNG
試験速度  :伸び0.2%まで1mm/分、0.2%到達後に5mm/分に変更
標線間距離 :50mm

【0089】

尚、硬化物の引張強度の判定は、下記の基準に従い行なった。

○:引張強度が70以上の場合、優れる。

△:引張強度が60以上70未満の場合、良い。

×:引張強度が60未満の場合、劣る。

【0090】

硬化物の引張破壊伸度の判定は、下記の基準に従い行なった。

○:引張破壊伸度が5以上の場合、優れる。

△:引張破壊伸度が4以上5未満の場合、良い。

×:引張破壊伸度が4未満の場合、劣る。

【0091】

〔硬化物のガラス転移温度(Tg)の評価方法と判定基準〕

実施例及び比較例で得たエポキシ樹脂組成物を60℃に加熱した後、真空中で脱泡し、2mm厚のゴム製スペーサーをガラス板で挟んだ注型板を用いて、60℃から30分ごとに10℃ずつ上昇させて、110℃到達後は110℃にて12時間ホールドすることにより、2mm厚の硬化物を得た。

得られた硬化物を幅10mm×長さ50mm×厚さ2mmの大きさに切削し試験片として、下記の条件にて、貯蔵弾性率(E')及び損失弾性率(E")を測定した。

E'/E"をtanδとした場合、tanδが最大となる温度をガラス転移温度(Tg、単位;℃)を測定した。

測定機器  :動的粘弾性測定機(エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製)
型式    :DMA6100
測定温度範囲:-100℃~250℃
昇温速度  :5℃/分
周波数   :1Hz
測定モード :曲げモード

【0092】

尚、硬化物のTgの判定は、下記の基準に従い行なった。

○:130℃以上の場合、優れる。

△:120℃以上、130℃未満の場合、良い

×:120℃未満の場合、劣る。

【0093】

〔硬化物の海島相分離構造の評価方法と判定基準〕

実施例及び比較例で得たエポキシ樹脂組成物を60℃に加熱した後、真空中で脱泡し、2mm厚のゴム製スペーサーをガラス板で挟んだ注型板を用いて、60℃から30分ごとに10℃ずつ上昇させて、110℃到達後は110℃にて12時間ホールドすることにより、2mm厚の硬化物を得た。

得られた硬化物をウルトラミクロトームで切削し、硬化物の断面を下記の条件にて観察し、海島相分離の有無を評価した。

測定機器  :環境制御型走査型プローブ顕微鏡システム(株式会社日立ハイテクサイエンス製)
型式    :NanoNavi II/SPA-300HV
測定モード :DMF
スキャナー :80μm
カンチレバー:SI-DF20

【0094】

尚、硬化物の海島相分離構造の判定は、下記の基準に従い行なった。

○:硬化物が海島相分離構造を形成している場合、優れる。

×:硬化物が海島相分離構造を形成していない場合、劣る。

【0095】

〔合成例1〕両末端NCO基プレポリマー(B1)の合成

反応装置に、コスモネートT-80(登録商標;三井化学株式会社製、トリレンジイソシアネート(TDI)の2,4体/2,6体=80/20質量比の混合物)339.1部を仕込み、PTMG-1000(登録商標;三菱化学株式会社製、ポリテトラメチレングリコール、Mn=1000のもの)1000.0部を4分割で発熱に充分注意しながら仕込んだ。

次いで、外温80℃に昇温して2時間反応を継続して、イソシアネート当量(以下「NCO当量」と云う)が715~785g/eq(以下単位略す)であり、液状(常温)の両末端NCO基プレポリマー(B1)を得た。

【0096】

〔合成例2〕両末端OH基プレポリマー(B2)の合成

反応装置に、PTMG-1000を1000.0部加えて、ヘキサメチレンジイソシアネート(以下「HDI」と云う)124.2部仕込んだ。

次いで、外温80℃に昇温した後、重合触媒としてネオスタンU-28(登録商標;日東化成株式会社製)0.030部を加えて8時間反応を継続して、水酸基価が23.7~26.2であり、液状(常温)の両末端OH基プレポリマー(B2)を得た。

【0097】

〔合成例3〕両末端NCO基プレポリマー(B3)の合成

反応装置に、コスモネートT-80を389.6部仕込み、PTMG-1000を1000.0部と1,4-ブタンジオールを21.5部とを4分割で発熱に充分注意しながら仕込んだ。

次いで、外温80℃に昇温して2時間反応を継続して、NCO当量が715~785であり、液状(常温)の両末端NCO基プレポリマー(B3)を得た。

【0098】

〔合成例4〕両末端NCO基プレポリマー(B4)の合成

両末端NCO基プレポリマー(B4)の合成は、前述の両末端NCO基プレポリマー(B1)の合成と同様の操作手順で行い、コスモネートT-80とPTMG-1000の仕込量のみを変更して以下のように行った。

反応装置に、コスモネートT-80を219.7部仕込み、PTMG-1000を1000.0部を4分割で発熱に充分注意しながら仕込んだ。

次いで、外温80℃に昇温して4時間反応を継続して、NCO当量が2150~2350であり、液状(常温)の両末端NCO基プレポリマー(B4)を得た。

【0099】

〔合成例5〕両末端OH基プレポリマー(B5)の合成

反応装置に、PTMG-1000を1000.0部仕込み、コスモネートT-80を128.5部仕込んだ。

次いで、外温80℃に昇温して5時間反応を継続して、水酸基価が23.7~26.2であり、液状(常温)の両末端OH基プレポリマー(B5)を得た。

【0100】

〔合成例6〕ポリカーボネートポリオール由来の構造を有し、且つ、分子鎖の両末端にOH基を有するウレタンプレポリマー(b6)の合成

反応装置に、ETERNACOLL UH-200(登録商標;宇部興産株式会社製、ポリカーボネートジオール)1000.0部を仕込み、コスモネートT-80を46.0部仕込んだ。

次いで、外温80℃に昇温して6時間反応を継続して、水酸基価が23.7~26.2であり、液状(常温)のポリカーボネートポリオール由来の構造を有し、且つ、分子鎖の両末端にOH基を有するウレタンプレポリマー(b6)を得た。

【0101】

〔合成例7〕ポリエステルポリオール由来の構造を有し、且つ、分子鎖の両末端にNCO基を有するウレタンプレポリマー(b7)の合成

反応装置に、コスモネートT-80を378.8部仕込み、クリスボンCMA-1024(登録商標;DIC株式会社製、ポリエステルポリオール)621.2部を4分割で投入した。

次いで、外温80℃に昇温して2時間反応を継続して、NCO当量が715~785であり、液状(常温)のポリエステルポリオール由来の構造を有し、且つ、分子鎖の両末端にNCO基を有するウレタンプレポリマー(b7)を得た。

【0102】

〔実施例1〕

第1表の配合組成に従い、混合容器に、エポキシ樹脂(A)としてエピクロン 850-S(登録商標;DIC株式会社製、ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂、エポキシ当量183~193g/eq、粘度11000~15000(25℃,mPa・s))を95部に、合成例1で得られた両末端NCO基プレポリマー(B1)を5部配合して、内温60℃で攪拌した後、硬化剤(C)としてjERキュアEMI24(登録商標;三菱化学株式会社製、化合物名;2-エチル-4(5)-メチルイミダゾール)を12.4部配合して、相溶するまで攪拌し、本発明の繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物(X1)を得た。

前記エポキシ樹脂組成物(X1)を真空中で脱泡した後、60℃から30分ごとに10℃ずつ上昇し、110℃で12時間保持することでエポキシ樹脂硬化物(Y1)を得た。

得られた硬化物(Y1)の評価結果を第1表に示した。

硬化物(Y1)は、原子間力顕微鏡による測定画像において、硬化反応後にエポキシ樹脂(A)が海構造を形成し、且つ両末端NCO基プレポリマー(B1)が島構造を形成して、海島相分離構造となっていることを確認した。

また、硬化物(Y1)は、優れた機械的特性(特に破壊靱性など)を有していた。

【0103】

〔実施例2〕

第1表の配合組成に従い、混合容器に、エポキシ樹脂(A)としてエピクロン 850-Sを90部に、合成例1で得られた両末端NCO基プレポリマー(B1)を10部配合して、内温60℃で攪拌した後、硬化剤(C)としてjERキュアEMI24を11.7部配合して、相溶するまで攪拌し、本発明の繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物(X2)を得た。

前記エポキシ樹脂組成物(X2)を真空中で脱泡した後、60℃から30分ごとに10℃ずつ上昇し、110℃で12時間保持することでエポキシ樹脂硬化物(Y2)を得た。

得られた硬化物(Y2)の評価結果を第1表に示した。

硬化物(Y2)は、図1の如く、原子間力顕微鏡(AFM:Atomic Force Microscope)による測定画像から、硬化反応後にエポキシ樹脂(A)が海構造を形成し、且つ両末端NCO基プレポリマー(B1)が島構造を形成して、海島相分離構造となっていることを確認した。

また、硬化物(Y2)は、優れた機械的特性(特に破壊靱性など)を有していた。

【0104】

〔実施例3~7〕

実施例3~7では、第1表に記載の配合組成に変更した以外は、実施例1と同様の手順で、それぞれエポキシ樹脂組成物(X3)~(X7)、エポキシ樹脂硬化物(Y3)~(Y7)を得た。

得られた硬化物(Y3)~(Y7)の評価結果を第1表に示した。

硬化物(Y3)~(Y7)はいずれも、AFM測定画像において、硬化反応後に、エポキシ樹脂(A)が海構造を形成し、且つウレタンプレポリマー(B)が島構造を形成して、海島相分離構造となっていることを確認した。

また、硬化物(Y3)~(Y7)はいずれも、優れた機械的特性(特に破壊靱性など)を有していた。

【0105】

〔比較例1〕

比較例1は、エポキシ樹脂(A)に、ウレタンプレポリマー(B)を配合せず、硬化剤(C)のみを配合して行った。

エポキシ樹脂(A)としてエピクロン 850-Sの100部に、硬化剤(C)としてjERキュアEMI24を13部配合して、繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物(X8)を得た。

前記エポキシ樹脂組成物(X8)を真空中で脱泡した後、60℃から30分ごとに10℃ずつ上昇し、110℃で12時間保持することでエポキシ樹脂硬化物(Y8)を得た。

得られた硬化物(Y8)の評価結果を第2表に示した。

硬化物(Y8)は、原子間力顕微鏡(AFM)による測定画像において、硬化反応後に相溶状態にあり、海島相分離構造を有していないことを確認した。

また、硬化物(Y8)は、耐熱性、機械的特性は優れていたが、破壊靱性には劣っていた。

【0106】

〔比較例2〕

比較例2は、実施例で用いたポリエーテルポリオール由来の構造を有し、且つ、分子鎖の両末端にイソシアネート基又は水酸基を有するウレタンプレポリマー(B)に代えて、ポリカーボネートポリオール由来の構造を有し、且つ、分子鎖の両末端にOH基を有するウレタンプレポリマー(b6)を用いた。

第2表の配合組成に従い、混合容器に、エポキシ樹脂(A)としてエピクロン 850-Sを90部に、合成例6で得られたポリカーボネートポリオール由来の構造を有し、且つ、分子鎖の両末端にOH基を有するウレタンプレポリマー(b6)を10部配合して、内温60℃で攪拌した後、硬化剤(C)としてjERキュアEMI24を11.7部配合して、相溶するまで攪拌して、繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物(X9)を得た。

前記エポキシ樹脂組成物(X9)を真空中で脱泡した後、60℃から30分ごとに10℃ずつ上昇し、110℃で12時間保持することでエポキシ樹脂硬化物(Y9)を得た。

得られた硬化物(Y9)の評価結果を第2表に示した。

硬化物(Y9)は、図2の如く、原子間力顕微鏡(AFM)による測定画像において、硬化反応後にエポキシ樹脂(A)とウレタンプレポリマー(b7)が、完全に相溶状態にあり、海島相分離構造を有していないことを確認した。

また、硬化物(Y9)は、機械的特性に優れていたが、耐熱性と破壊靱性には劣っていた。

【0107】

〔比較例3〕

比較例3は、実施例で用いたポリエーテルポリオール由来の構造を有し、且つ、分子鎖の両末端にイソシアネート基又は水酸基を有するウレタンプレポリマー(B)に代えて、ポリエステルポリオール由来の構造を有し、且つ、分子鎖の両末端にNCO基を有するウレタンプレポリマー(b7)を用いた。

第2表の配合組成に従い、混合容器に、エポキシ樹脂(A)としてエピクロン 850-Sを90部に、合成例7で得られたポリエステルポリオール由来の構造を有し、且つ、分子鎖の両末端にNCO基を有するウレタンプレポリマー(b7)を10部配合して、内温60℃で攪拌した後、硬化剤(C)としてjERキュアEMI24を11.7部配合して、相溶するまで攪拌して、繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物(X10)を得た。

前記エポキシ樹脂組成物(X10)を真空中で脱泡した後、60℃から30分ごとに10℃ずつ上昇し、110℃で12時間保持することでエポキシ樹脂硬化物(Y10)を得た。

得られた硬化物(Y10)の評価結果を第2表に示した。

硬化物(Y10)は、原子間力顕微鏡(AFM)による測定画像において、硬化反応後に完全な相溶状態にあり、海島相分離構造を有していないことを確認した。

また、硬化物(Y10)は、機械的特性は優れていたが破壊靱性が大幅に劣っていた。

【0108】

【表1】

【0109】

【表2】

【0110】

【表3】

【0111】

第1表及び第2表に記載の略号は、下記の化合物を意味する。

コスモネートT-80;登録商標、三井化学株式会社製、2,4-トルエンジイソシアネート/2,6-トルエンジイソシアネート=80/20質量比の混合物。

PTMG-1000;登録商標、三菱化学株式会社製、ポリテトラメチレングリコール、数平均分子量1000のもの。

HDI;ヘキサメチレンジイソシアネート。

エピクロン 850-S;登録商標、DIC株式会社製、ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂。

jERキュアEMI24;登録商標;三菱化学株式会社製、2-エチル-4(5)-メチルイミダゾール。

ネオスタンU-28;登録商標、日東化成株式会社製、スズ系重合触媒。

ETERNACOLL UH-200;登録商標、宇部興産株式会社製、ポリカーボネートジオール。

クリスボンCMA-1024;登録商標、DIC株式会社製、ポリエステルポリオール。」

(2)当審の判断

ア 特許法第36条第6項第2号について

本件発明1は、「エポキシ樹脂(A)と、ポリエーテルポリオール由来の構造を有し、且つ、分子鎖の両末端にイソシアネート基又は水酸基を有するウレタンプレポリマー(B)、及び硬化剤(C)を配合して得られるエポキシ樹脂組成物」に係るものであり、本件明細書には、各工程の設定条件は特に限定されないとしたうえで、繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物の調製として、エポキシ樹脂(A)と、ウレタンプレポリマー(B)とを、それぞれ所定量混合容器に仕込み、設定温度(好ましくは50℃~80℃の範囲)で加温し、撹拌しながら、所定量の硬化剤(C)を加えて相溶するまで撹拌することが記載されている(上記(1)ウの【0069】、【0072】)。

本件発明1は、上記エポキシ樹脂組成物中の(A)~(C)成分について、それぞれを「配合」してエポキシ樹脂組成物を得ており、また、本件明細書の記載をみても、各成分を反応させるのではなく、(A)成分と(B)成分は共に液状を保ち「相溶」させていることから(上記(1)エ)、エポキシ樹脂組成物中には、各成分がそれぞれ独立して存在していると解するのが自然であり、エポキシ樹脂組成物が不明確なものとはいえない。

この点、申立人は、(B)成分のウレタンプレポリマーは、加温操作が行われていることから、少なくとも一部はエポキシ樹脂(A)と反応している蓋然性が高く、組成物として一義的に定まらないから結局不明確である旨主張している。

しかしながら、通常の「配合」であれば、各成分同士が反応していずれかの成分が消失しているようなことは考え難く、本件発明1における上記調製の一例である「加温(好ましくは50℃~80℃の範囲)」も、必要不可欠な操作ではないし、上述のとおり、繊維基材への含浸性のために、エポキシ樹脂(A)とウレタンプレポリマー(B)を相溶させる程度に行うものと解されるから、(A)成分と(B)成分はそれぞれ独立して存在しており、明確であるといえる。よって、本件発明1の「エポキシ樹脂組成物」は組成物として定まるものであるから、不明確であるという申立人の主張は採用できない。

そうすると、本件発明1におけるエポキシ樹脂組成物は明確であり、本件発明1を引用する本件発明2~6についても同様である。

イ 特許法第36条第6項第1号について

特許請求の範囲の記載が、明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。そこで、この点について、以下に検討する。

ウ 本件発明1の課題について

本件発明1が解決しようとする課題は、上記(1)アによると、「繊維基材(炭素繊維、ガラス繊維など)への含浸性に優れ、且つ、耐熱性と機械的特性(特に破壊靭性)などの優れた性能を有する繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物を提供する」ことであると解される。

エ 本件発明1について

上記第2で述べたように、本件発明1は、「エポキシ樹脂(A)と、ポリエーテルポリオール由来の構造を有し、且つ、分子鎖の両末端にイソシアネート基又は水酸基を有するウレタンプレポリマー(B)、及び硬化剤(C)を配合して得られるエポキシ樹脂組成物であって、硬化反応前は(A)と(B)が相溶しており、硬化反応後は(A)が海構造を形成し、且つ(B)が島構造を形成して、得られるエポキシ樹脂組成物の硬化物が海島相分離構造である繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物」に係る発明であり、上記アで検討したとおり、硬化反応前の(A)~(C)成分はそれぞれ独立して存在するものである。

そして、本件明細書には、エポキシ樹脂組成物を構成する成分であるエポキシ樹脂(A)、ウレタンプレポリマー(B)、硬化剤の具体的な記載がされ(上記(1)イ)、(A)成分と(B)成分が相溶するまで撹拌して樹脂組成物を調製し、それを硬化することが記載(上記(1)ウ)された上で実施例1~7が記載されているところ、実施例1~7は、「エポキシ樹脂(A)と、ポリエーテルポリオール由来の構造を有し、且つ、分子鎖の両末端にイソシアネート基又は水酸基を有するウレタンプレポリマー(B)、及び硬化剤(C)を配合して得られるエポキシ樹脂組成物」であって、「硬化反応前は(A)と(B)が相溶しており、硬化反応後は(A)が海構造を形成し、且つ(B)が島構造を形成して、得られるエポキシ樹脂組成物の硬化物が海島相分離構造である」繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物に関する具体例であるといえる(上記(1)オ)。

これらの実施例において、硬化反応前の相溶した組成物については、撹拌、脱泡できるような液状のものであるから、繊維基材への含浸性に優れることが示されているといえる。また、硬化反応後の海島相分離構造を有する硬化物については、ガラス転移温度、破壊靱性、引張強度、引張破断伸度が測定され、【表1】~【表2】には、その結果が示されているが、その結果によれば、実施例1~7において、ガラス転移温度、破壊靱性、引張強度、引張破断伸度がいずれも高く、硬化物の耐熱性、機械的特性に優れることが示されているといえるから、本件発明1の上記課題を解決できると認識できるように記載されているといえる。

ここで、申立人は、上記実施例における硬化反応前の相溶した組成物について、(A)成分と(B)成分を60℃で撹拌、相溶させていることから、少なくとも一部は反応している蓋然性が高く、広範な組成物の状態を含むものである旨主張しているが、上記アで検討したとおり、(A)~(C)成分はそれぞれ独立して存在するものであるから、硬化反応前の相溶した組成物が、(A)成分と(B)成分とが反応している場合も含む広範な組成物の状態を含むものとはいえない。そして、本件明細書によれば、上記硬化反応前の組成物が「相溶」したもので、上記硬化反応後の硬化物が「海島相分離構造」を有するものとすることで、繊維基材への含浸性、耐熱性、機械的特性に優れたものとすることができるものである(上記(1)エ)。

そうすると、当業者であれば、エポキシ樹脂(A)と、ウレタンプレポリマー(B)と、硬化剤(C)とがそれぞれ独立して存在するエポキシ樹脂組成物であり、硬化反応前は(A)と(B)が相溶しており、硬化反応後は(A)が海構造を形成し、且つ(B)が島構造を形成して、得られるエポキシ樹脂組成物の硬化物が海島相分離構造であれば、上記実施例と同様に本件発明1の課題を解決することが認識できるといえる。そして、本件発明1に含まれるエポキシ樹脂組成物が、上記課題を解決できない場合があることを示す本件出願時の技術常識も見当たらない。

よって、本件発明1は、発明の詳細な説明により、当業者が上記課題を解決できると認識できる範囲のものであり、本件発明1は、発明の詳細な説明に記載したものである。

オ 本件発明2~6について

本件発明2~6は、本件発明1を引用するものであるから、上記エで本件発明1について述べたのと同じ理由により、発明の詳細な説明に記載したものである。

カ まとめ

したがって、本件発明1~6は、発明の詳細な説明に記載したものであり、明確に把握することができるから、申立て理由3により、本件発明1~6に係る特許を取り消すことはできない。

2 申立ての理由1~2について

以下、申立て理由1~2を検討するにあたり、申立人が提示した甲1~6につき記載された事項を確認した上で、甲1~2に記載された発明を認定し、対比・判断を行う。

(1) 甲1に記載された事項

申立人が提出した、本件特許の出願日前に頒布された甲1には、下記の事項が記載されている。

なお、甲1の博士論文は、国会図書館のホームページ(https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000007424795-00)を参照すると、出版年が2004年となっており、2004年に発行されたものである。

ア「

」(第6頁~第7頁)

イ「第3章 ブロックドウレタン変性一液性エポキシ接着剤の物性に対するソフトセグメントの影響

・・・

3.2 実 験

3.2.1 原材料及び硬化物の調製

ここで用いたマクログリコール及びブロッドウレタンの化学構造をTable 3-1に示す。エポキシ樹脂として、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エピコート828、エポキシ当量:190±5、ジャパンエポキシレジン(株)製)を市販品のまま使用した。硬化剤として、ジシアンジアミド(DICY、ジャパンエポキシレジン(株)製)を、硬化剤の沈降防止剤として、シリカ系充填剤(アエロジル200、日本アエロジル(株)製)を使用した。

マクログリコールとして、ポリエーテル系にはポリオキシプロピレングリコール(PPG、旭電化工業(株)製、2官能、分子量1000をPPG-D1、2000をPPG-D2、分子量3000をPPG-D3及び3官能、3000をPPG-T3とそれぞれ略記)、ポリオキシテトラメチレングリコール(PTMG、三洋化成工業(株)製、2官能、分子量1000をPTMG-1、2000をPTMG-2とそれぞれ略記)、また、ポリエステル系にはポリメチルバレロラクトングリコール(PMVL、(株)クラレ製、2官能、分子量2000をPMVL-2と略記)及びポリメチルペンタンアジペートグリコール(PMPA、(株)クラレ製、2官能、分子量2000をPMPA-2と略記)をそれぞれ減圧脱水して用いた。

ジイソシアネートとして、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI、三井化学(株)製)を、ブロック化剤として、フェノールを試薬特級品(キシダ化学(株)製)をそのまま用いた。ブロックドウレタンは、第2章で述べた反応器に、マクログリコールとMDIをNCO/OH比2.01で仕込み、80℃で4時間反応させてポリウレタンプレポリマーとし、次に、ブロック化剤のフェノールをイソシアナート基に対して小過剰の1.1mol及び触媒としてトリエチレンジアミンを1滴加え、100℃で3時間反応させて目的物を得た、反応の終了は、赤外吸収スペクトルを用いて2270cm-1のイソシアナート基の消失により確認した。

各種物性測定用の試料として、エポキシ樹脂に対して、ブロックドウレタンを10phr~50phr、硬化剤のジシアンジアミド(DICY)を8hr、沈降防止剤としてのアエロジル200を10phr添加し、自動乳鉢で均一に混合した後減圧脱泡し、160℃×100分あるいは180℃×30分の2通りの条件でそれぞれ硬化した。

」(第33頁第1行~第36頁第13行)

ウ「

」(第38頁)

エ「硬化条件が160℃×100分あるいは180℃×30分の1段であるため、エポキシ樹脂の硬化反応とブロックドウレタン中のイソシアナート基(ブロックドイソシアナート基の反応開始温度は約140℃である)との反応が同時に起こると考えられる。その過程で、ブロックドウレタンの分子量によって、エポキシ樹脂との相溶性が変化し、エポキシマトリックス中に取り込まれたウレタン成分が硬化反応の進行と共に析出し、海島構造を形成すると考えられる。」(第51頁第8行~第13行)

オ「160℃あるいは180℃での1段硬化のため、ブロックドウレタンと系内の活性水素との反応及びエポキシ樹脂の硬化反応が、競争反応となるが、硬化に伴うウレタン相の析出による相分離構造に対して、マクログリコールの化学構造がエポキシ樹脂との相溶性に対して大きく影響することを認めた。ポリエステル系ではほぼ相溶状態の可とう化によるため、高添加量で接着物性を向上させるのに対して、ポリエーテル系では相分離構造を取りやすい。更に、PTMG系の方が微細な相分離構造を形成しやすく、低添加量からの接着物性の向上に寄与するものと考えられる。相溶性の低いポリエーテル系では、分子量が更に影響し、エポキシ樹脂と化学結合しているにもかかわらず、分子量が増加するとよりエポキシ樹脂網目から析出されやすくなると思われる。」(第53頁第13行~第22行)

カ「第4章 種々のポリウレタンプレポリマーで鎖延長した一液性エポキシ接着剤の物性

・・・

4.2 ポリウレタンプレポリマー中のマクログリコールの影響

4.2.1 原材料

ここで使用した原材料をTable 4-1に示す。エポキシ樹脂として、2種類のビスフェノールA型エポキシ樹脂(エピコート828、エポキシ当量:190±5及びエピコート1004、エポキシ当量:925±50、水酸基当量:約323、ジャパンエポキシレジン(株)製)を減圧脱水して使用した。硬化剤に、ジシアンジアミド(DICY、ジャパンエポキシレジン(株)製)を、硬化剤の沈降防止剤として、シリカよりもチキソトロピー性付与が小さい炭酸カルシウムを使用した。

マクログリコールとして、ポリエーテル系のポリオキシテトラメチレングリコール(PTMG、三洋化成工業(株)製)の分子量1000及び2000(PTMG-1000、PTMG-2000とそれぞれ略記)、ポリカーボネート系のポリヘキサメチレンカーボネートグリコール(ニッポラン981、980、日本ポリウレタン工業(株)製)の分子量1000及び2000(PCG-1000、PCG-2000とそれぞれ略記)、ポリブタジエン系のポリブタジエングリコール(Polybd R-15HT、R-45HT、出光石油化学(株)製)の分子量1200及び2800(HTPB-1200、HTPB-2800とそれぞれ略記)をそれぞれ減圧脱水して用いた。

ジイシシアナートとしては4,4’-ジフェニルメタンジイソシアナート(MDI、三井化学(株)製)を用いた。

4.2.2 鎖延長エポキシ樹脂の合成と試験片の調製

鎖延長エポキシ樹脂は、第2章で述べた反応器に、マクログリコールとMDIをNCO/OH比2.01で仕込み、80℃で4時間反応させてポリウレタンプレポリマーとした。還流冷却可能な同様の反応器中で、2種類のエポキシ樹脂(エピコート1004:20phr、エピコート828:100phr)をトルエンに溶解し、先に合成したポリウレタンプレポリマーの所定量(10phr~100phr)を加えて100℃で4時間エピコート1004の水酸基と反応させた。反応の終了は、赤外吸収スペクトルを用いて2270cm-1のイソシアナート基の消失により確認した。室温まで冷却後、ジシアンジアミドを8phrと炭酸カルシウム(固形分の25重量%)を加え十分に混合した後、減圧下でトルエンを完全に留去した。ウレタン鎖延長エポキシ樹脂の配合組成をTable 4-2に示す。エポキシ樹脂の硬化は180℃×45分の1段で行った。

」(第55頁第1行~第58頁第14行)

キ「

」(第59頁)

ク「

」(第61頁)

ケ「この様にソフトセグメントの化学構造の違いにより接着強度の発現性に特徴が見られる。第3章で示した様に、ポリエステル系がエポキシ樹脂に対して非常に相溶性が良好であるため、均一な相構造を形成し、逆にポリエーテル系は相分離構造を形成しやすい。エステル結合と類似の化学構造であるカーボネート結合は、エポキシ樹脂との相溶性が良好であるため、PCG系では低反応量でほとんど改質効果がなく、反応量に比例して直線的に強度が発現すると考えられる。」(第67頁第2行~第7行)

コ「4.5.4 破壊靱性

Fig. 4-13にPPG-PUsを反応させたエポキシ樹脂硬化物の破壊靱性値を示す。いずれの系も未変性エポキシ樹脂系の値0.4MN/m3/2と比較して大きく増大し、はく離強さとほぼ同じ挙動を示している。2官能のD1-PU系、D2-PU系及びD3-PU系はいずれも40phrでピークを示し、その後ゆるやかに低下している。D2-PU系が、最も高い破壊靱性値を示し、次にD3-PU系、D1-PU系の順である。一方、D3-PU系と同じ分子量である3官能のT3-PU系の破壊靱性値は、20phrでピークを示し、D2-PU系とほぼ同じ3.5MN/m3/2という高い値を示している。」(第79頁第9行~第16行)

サ「以上のことから、ウレタン粒子がエポキシ樹脂に分散した相分離構造と2成分の相溶した相の両方を形成していると考えられる。」(第82頁第4行~第5行)

シ「第5章 ポリウレタンを主鎖に導入した一液性エポキシ接着剤の化学構造と物性

・・・

5.2 実験

5.2.1 原材料

ここで使用した原材料をTable 5-1に示す。エポキシ樹脂にはビスフェノールA型エポキシ樹脂(エピコート828、エポキシ当量:190±5、ジャパンエポキシレジン(株)製)を、硬化剤にはアジピン酸ジヒドラジド(エピキュア PD797、ジャパンエポキシレジン(株)製、以下ADHと略記)を市販品のまま用いた。改質剤の主たる成分となるマクログリコール(分子量2000)については、化学構造の異なる4種類:ポリオキシプロピレングリコール(PPG)、ポリオキシテトラメチレングリコール(PTMG)ポリカーボネートグリコール(PCG)、1,2-ポリブタジエングリコール(1,2-PBG)を用いた。ジイシシアナートとしては、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアナート(MDI、三井化学(株)製)を用いた。改質剤の末端修飾のために、1官能水酸基含有エポキシ樹脂(エピコート834、エポキシ当量:250±5、ジャパンエポキシレジン(株)製)を用いた。

5.2.2 ポリウレタン導入エポキシ樹脂の合成と試験片の調製

ポリウレタンを主鎖に導入したエポキシ樹脂(ETPU-Nタイプ)の合成方法をFig. 5-1に示す。まず最初にEP-828と各々のマクログリコールを混合し、NCO/OH=2.0のモル比でMDIを加え、窒素雰囲気中で80℃×3時間反応させ、ポリウレタンプレポリマーを合成した。次に、EP-834をNCO/OH=1.0のモル比で添加し、130℃×3時間反応させ、4種類のETPU-Nタイプを合成した。それぞれの略号を、PPG系をP2N、PTMG系をT2N、PCG系をC2N、1,2-PBG系をB2Nとした。ETPU-Nタイプをそれぞれ10phr~50phr含むエポキシ樹脂に対して、硬化剤であるADHを23phr配合して均一になるまで混合した。次に撹拌しながら減圧脱法し、試料中の空気を除去した後に、所定の試験片を作製し、160℃×2時間で加熱硬化させた。

」(第89頁第1行~第93頁第1行)

ス「5.3.3 破壊靱性

Fig. 5-4にETPU-Nタイプを添加したエポキシ樹脂硬化物の破壊靱性値を示す。いずれのETPU-Nタイプ系も未変性エポキシ樹脂(コントロール)よりも高い値を示し、強靱化効果が認められた。4種類のETPU-Nタイプの中で、C2N系が最も高い値4.4MNm-3/2を20phrで示したが、高い値を保持する添加量領域が狭いことが明らかである。次に、T2N系が、10phrで3.8MNm-3/2という高い値を示したが、添加量の増加と共に直線的に低下した。」(第95頁17行~23行)

セ「5.3.5 電子顕微鏡観察

Fig. 5-8にP2Nを添加したエポキシ樹脂硬化物の破断面のSEM写真を示す。コントロールは、平面的でエネルギー吸収能力が低いため脆性的である。10phrでは、粒子径約1.0μmのミクロ相分離構造を示し、20phrでは、その粒子径が約1.5~2.0μmとなった。30phrでは、粒子径がさらに大きくなると同時に部分的に共連続相を観察できた。そして、40phr、50phrでは、丸みを帯びた大きな不均一な凹凸を有する共連続相を示した。

Fig. 5-9にC2N添加系のSEM写真を示す。10phr、20phrでは、粒子径が1.0μm~2.0μmのミクロ相分離構造を示し、30phrでは、P2N系と同様に、ミクロ相分離構造と共連続相が混在した。しかし、ミクロ相分離構造中の粒子径は、10phr、20phr系の粒子径よりも小さい0.5μmであった。40phrでは、約5μm~7μmの丸い凹凸を示す共連続相を形成し、50phrでは、その凹凸の大きさが約3μmとなると共に、より均一になった。先に述べた物性と比較すると、はく離強さは共連続相(40phr、50phr)で、せん断強さは共連続相に変化する直前のミクロ相分離構造(30phr)で高い値を示した。また、破壊靱性値は、粒子径が小さいミクロ相分離構造(20phr)で極大値を示すことが明らかである。この強度発現性とモルホルジーの関係については、T2N系(Fig. 5-10)の場合もほとんど同じであった。」(第101頁第12行~第106頁第4行)

(2) 甲2に記載された事項

申立人が提出した、本件特許の出願日前に頒布された甲2には、下記の事項が記載されている。

ア「2.Experimental

2.1 Raw materials and preparation

2.1.1 Raw materials

The chemical structures of raw materials used in this study are shown in Table 1.

Two epoxy resins used were diglycidylether of bisphenol-A (Epikote 828 (DGEBA): epoxy equivalent weight (EEW) 190, Epikote 834: EEW 250, Japan Epoxy Resin Co.) Adipic acid dihydrazide (ADH, Epikure PD797, Japan Epoxy Resin Co.) was used as the curing agent. Four kinds of macrogiycols with the same molecular weight (Mn=2000), which had bifunctional hydroxy groups, were used: Polyoxypropylene glycol (PPG, P-2000, Asahi Denka Kogyo Co.), Polyoxytetramethylene glycol (PTMG, PTG2000SN, Hodogaya Chemical Co.) Polycarbonateglycol (PCG, NIPPOLLAN 980R, Nippon Polyurethane Industry Co.) and 1.2-Polybutadiene glycol(1.2-PBG, G-2000, Nippon Soda Co.). Epoxy resins and macroglycols were hydrated before use. 4.4'-Diphenylmethanediisocyanate (MDI, Mitsui Chemical Co.) was usedas diisocyanate chemicals.

2.1.2 Synlhesis and preparation

ETPU were prepared in the following two steps shown in Fig.1. At the first step each macroglycol was added to MDI in a reactor with athermometer, capillary for the introduction of dry nitrogen and stirrer. The mixtures were heated to react between 2mole of isocyanate group (NCO group) and 1mole of hydroxyl group (OH group) at 80℃ for 3hr in a nitrogen atmosphere. Synthetic substances were applied as polyurethaneprepolymer at the second step continuously. At the second step the NCO group of polyurethaneprepolymer and the secondary OH group of EP-834 were reacted in mole ratio NCO/OH=1.0 at 130℃ for 3hr. The end point of reaction was confirmed by the disappearance of peak resulted from NCO group at 2263cm-1 in infrared absorption spectrum. The formulations of DGEBA, ETPU and ADH are shown in Table 2. 10 to 50phr of ETPU and 23phr of ADH are added to 100phr of DGEBA. The constituents were perfectly mixed and degassed under vacuum at 50℃ for 30min. The mixtures were cured in an air circulated oven at 160℃ for 2hr.

当審訳:

2.実験

2.1 原材料及び準備

2.1.1 原材料

本研究で使用した原材料の化学構造をTable 1に示す。

2つのビスフェノールA型エポキシ樹脂(エピコート828(DGEBA):エポキシ当量(EEW)190、エピコート834:EEW 250、ジャパンエポキシレジン(株)製)を使用した。硬化剤にはアジピン酸ジヒドラジド(ADH、エピキュアPD797、ジャパンエポキシレジン(株)製)を用いた。2官能水酸基を持つ同じ分子量の4種類のマクログリコール(Mn=2000)を用いた:ポリオキシプロピレングリコール(PPG, P-2000, 旭電化工業(株)製)、ポリオキシテトラメチレングリコール(PTMG, PTG2000SN, 保土ケ谷化学工業(株)製)、ポリカーボネートグリコール(PCG, ニッポラン 980R, 日本ポリウレタン工業(株)製)、1,2-ポリブタジエングリコール(1,2-PBG, G-2000, 日本曹達(株)製)。・・・ジイソシアナートとしては、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアナート(MDI, 三井化学(株)製)を用いた。

2.1.2 合成及び準備

ETPUはFig. 1に示す以下の2つのステップで準備した。最初に、温度計、乾燥窒素ガス導入管及び撹拌機を備えた反応器に、各々のマクログリコールとMDIを加えた。2モルのイソシアネート基と1モルの水酸基とを反応させるよう、窒素雰囲気中で80℃×3時間混合物を加熱した。合成物質は、第2ステップでポリウレタンプレポリマーとして継続的に適用された。第2ステップでは、ポリウレタンプレポリマーのNCO基とEP-834の二級水酸基を、NCO/OH=1.0のモル比で、130℃×3時間反応させた。反応終点は、赤外吸収スペクトルを用いて2263cm-1のNCO基のピークの消失による確認した。DGEBA、ETPU及びADHの配合組成をTable 2に示す。10から50phrのETPUと23phrのADHとを100phrのDGEBAに加えた。成分を完全に混合し、50℃で30分間真空下にて脱気した。混合物を空気循環オーブン内で、160℃で2時間硬化させた。」(第288頁左欄第5行~第289頁左欄第1行)

イ「3.1 Adhesive properties

・・・

3.3 Fracture toughness

The fracture toughness measured for the cured DGEBA with ETPU are shown in Fig.5. It was observed that the fracture toughness of curedDGEBA/ETPU blends was significantly high in comparison with neat DGEBA. Especially C2N system had an effective improvement in all ETPU, and the maximum was 4.4MNm-3/2 at 20phr. But the peak was sharp and the fracture toughness dramatically decreased at 30phr. Regarding the other three kinds of ETPU, there was also a peak of the fracturetoughness respectively. In the case of T2N system the peak value came the second in all ETPU at 10phr, and then it linearly decreased with the amount of adding ETPU up to 50phr. B2N and P2N system showed ・・・.

当審訳:

3.1 接着性

・・・

3.3 破壊靱性

Fig. 5 に、DGEBAとETPUの硬化物の破壊靱性の測定値を示す。DGEBA/ETPUの混合硬化物は、そのままのDGEBAと比較して、有意に高い破壊靭性を示した。特にC2N系が最も高い値4.4MNm-3/2 を20phrで示したが、ピークが狭く、30phrでは劇的に滅少した。他の3種のETPUに関しては、各々ピークを有した。T2N系では、ピーク値は、すべてのETPUにおいて10phrで2番目になり、その後50phrまでのETPUの追加量とともに直線的に減少した。B2N及びP2Nは・・・。」(第289頁右欄第22行、第291頁左欄第3行~右欄第7行)

ウ「3.5 SEM observation

Fig.7 shows SEM micrographs of the fracture surface of neat DGEBA and DGEBA modified with T2N. The surface of neat DGEBA(a) is basically featureless due to the intrinsic brittleness of this epoxy system. On the surface of 10phr T2N system(b), it is seen that particles (av.size: 0.8μm) were dislodged from the DGEBA matrix at 10phr, and the particles increased to av.1.3μm in size at 20phr(c). At 30,40phr(d), (e), the micro-structure simultaneously showed two kinds of phase. The first was the dispersed T2N particles in the DGEBA matrix and the second was continuous round-unevenness caused by the T2N rich matrix. At 50phr(f) it was observed that the dispersed particles disappeared and the uniformed round-unevenness of 3-4μm appeared instead. ・・・.

当審訳:

3.5 SEM観察

Fig. 7に、そのままのDGEBAとT2Nを添加したDGEBAとの破壊破断面のSEM写真を示す。そ のままのDGEBAの表面は、このエポキシ系に固有の脆弱性のため、基本的に特徴は無い。10phr のT2N系(b)では、DGEBAマトリックスから粒子(平均0.8μm) が取り除かれたことがわかり、20phr(c)ではサイズが平均1.3μmに増えている。30phr(d)、40phr(e)では、微細構造は同時に 2種類の相を示した。1つはDGEBAマトリックス内の分散T2N粒子で、2つ目はT2Nリッチマトリックスによって引き起こされる連続的な丸みを帯びたものである。50phr(f)では、分散した粒子が消え、代わりに3~4μmの均一な丸い凹凸が現れたことが観察された。・・・。」(第292頁左欄第20行~右欄第3行)

(3) 甲3に記載された事項

申立人が提出した、本件特許の出願日前に頒布された甲3には、下記の事項が記載されている。

ア「

」(第211頁~第221頁)

イ「

」(第228頁~第229頁)

(4) 甲4に記載された事項

申立人が提出した、本件特許の出願日前に頒布された甲4には、下記の事項が記載されている。

ア「2.特許請求の範囲

・・・

(2)次の構成要素[A]、[B]、[C]を必須の原料とし、硬化した後に、構成要素[C]を主とする相が、構成要素[A]および構成要素[B]を主とする相と分離して存在し、その分離した両相がともに3次元的に連続した構造を有し、さらに、その連続相中に互いに他相からなる分散相を含有する樹脂硬化物。

[A]:熱硬化性樹脂

[B]:硬化剤

[C]:熱可塑性樹脂

・・・

(9)請求項(1)ないし(4)記載の樹脂硬化物と強化繊維[D]よりなる繊維強化プラスチック。

(10)強化繊維[D]が炭素(黒鉛)繊維であることをさらなる特徴とする請求項(9)記載の繊維強化プラスチック。

(11)請求項(9)記載の樹脂硬化物と強化繊維[D]よりなる繊維強化プラスチックであって、構成要素[C]を主とする相が構成要素[A]および[B]を主とする相と分離して存在し、かつ、構成要素[A]および[B]を主とする相が強化繊維[D]の周辺に偏在する繊維強化プラスチック。」(特許請求の範囲)

イ「(課題を解決するための手段)

上記目的を達成するため、次のような手段を採用する。

すなわち、本発明は、次の構成要素[A]、[B]、[C]を必須とし、硬化した後に、構成要素[C]を主とする相が、構成要素[A]および構成要素[、B]を主とする相と分離して存在し、両方の相が好ましくは3次元に連続しているミクロ相分離構造を有する樹脂硬化物及びそれを与える樹脂組成物を提供するものである。

また、場合によって、その連続相中に互いに他相の分散相を含有する硬化物及びそれを与える樹脂組成物を提供するものである。

[A]:熱硬化性樹脂

[B]:硬化剤

[C]:熱可塑性樹脂

また、本発明は上記樹脂をマトリックス樹脂とする繊維強化プラスチックならびにプリプレグを提供するものである。

また、本発明は、少なくとも400J/m2以上の破壊歪エネルギー解放率GICと300kg/mm2以上の曲げ弾性率および120℃以上のガラス転移点(Tg)を有する熱硬化性樹脂硬化物を与えることを特徴とするものである。」(第4頁右下欄第9行~第5頁左上欄第12行)

(5) 甲5に記載された事項

申立人が提出した、本件特許の出願日前に頒布された甲5には、下記の事項が記載されている。

ア「【請求項1】

構成要素[A]エポキシ樹脂および硬化剤、ならびに構成要素[B]イソシアネート化合物およびポリオール化合物、の少なくとも1種を母剤とし、構成要素[C]極性を有する分子量4000未満の有機分子、および構成要素[D]母剤に溶解する高分子、を含有する繊維強化複合材料用熱硬化性樹脂組成物。

・・・

【請求項10】

構成要素[D]が、母剤に溶解した後、硬化過程において、相分離する請求項1~9のいずれかに記載の繊維強化複合材料用熱硬化性樹脂組成物。

・・・

【請求項16】

請求項1~14のいずれかに記載の繊維強化複合材料用熱硬化性樹脂組成物と強化繊維とからなるプリプレグ。

【請求項17】

請求項1~14のいずれかに記載の繊維強化複合材料用熱硬化性樹脂組成物の硬化物と強化繊維とからなる繊維強化複合材料。」(特許請求の範囲)

イ「【0045】

さらに構成要素[D]は、樹脂組成物の調製過程や硬化過程において、構成要素[A]または[B]のいずれかに一旦溶解した後、構成要素[A]または[B]の硬化過程において相分離することが好ましい。構成要素[D]の添加・溶解後の硬化過程において、硬化樹脂中でサブミクロン~数ミクロン程度の構造周期となるミクロ相分離構造が形成されることにより、硬化樹脂が振動減衰、吸音、エネルギー吸収機能を発揮する周波数・温度領域を十分拡大しやすくなる。」(段落【0045】)

(6) 甲6に記載された事項

申立人が提出した、本件特許の出願日前に頒布された甲6には、下記の事項が記載されている。

ア「【請求項1】

エポキシ化合物を含む2種以上の樹脂成分、前記エポキシ化合物を硬化せしめる硬化剤、および比表面積が50m2/g以上でチキソトロピー性を有する粒子を含んでなり、下記a)b)の特徴を有するエポキシ樹脂組成物。

a)剪断粘度におけるチキソトロピー係数が1.1以上

b)前記2種以上の樹脂成分が硬化反応前は一旦相溶し、硬化反応後は相分離する

・・・

【請求項3】

前記エポキシ樹脂組成物は、硬化させた後に相分離構造を形成し、その構造周期が0.01μm以上5μm以下となるものである、請求項1または2に記載のエポキシ樹脂組成物。

・・・

【請求項6】

前記エポキシ樹脂組成物は、硬化させた後に海島分散構造を形成し、前記粒子が海島分離構造の海相に局在化するものである、請求項1~4のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。

【請求項7】

請求項1~6のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物と強化繊維を有してなるプリプレグ。

【請求項8】

請求項7に記載のプリプレグを硬化させてなる繊維強化複合材料。

【請求項9】

請求項1~6のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物を硬化させて得られる樹脂硬化物と、強化繊維を有してなる繊維強化複合材料。」(特許請求の範囲)

イ「【発明の効果】

【0013】

本発明によれば、チキソトロピー性を有するフィラーによる硬化時の増粘効果により、低粘度で強化繊維間への含浸性に優れ、硬化時に形成される相分離構造の粗大化を抑制することで、微細な相構造を有し、優れた弾性率と靭性を併せ持つ樹脂硬化物が得られるエポキシ樹脂組成物を得ることができる。」(段落【0013】)

ウ「【0015】

本発明のエポキシ樹脂組成物はエポキシ化合物を含む2種以上の樹脂成分を含み、前記2種以上の樹脂成分が硬化反応前は一旦相溶し、硬化反応に伴いスピノーダル分解を経て相分離構造を形成することを特徴とする。かかる2種以上の樹脂成分が硬化反応前に相溶し、硬化中に相分離を生じることで、微細かつ均一な共連続構造または分散構造の樹脂硬化物を得ることができる。」(段落【0015】)

(7) 甲1に記載された発明

甲1は、「種々のポリウレタンによる一液性エポキシ接着剤の改質に関する研究」と題する博士論文であり、その「第3章」には、概略「フェノールブロックMDI系ポリウレタンプレポリマーのソフトセグメントに用いるマクログリコールの化学構造及び分子量がジシアンジアミド硬化系の一液性エポキシ接着剤の物性に与える影響について検討した」ことが記載され、同「第4章」には、概略「化学構造の異なる3種類のマクログリコール:PTMG系、ポリカーボ ネート(PCG)系、ポリブタジエン(HTPB)系をソフトセグメントとするポリウレタンプレポリマーと多官能の二級水酸基を有するビスフェノールA型エポキシ樹脂との鎖延長をビスフェノールA型エポキシ樹脂中で行うin-situ重合法でウレタン鎖延長エポキシ樹脂を調製し、そのウレタン鎖延長エポキ シ樹脂を含むビスフェノールA型エポキシ樹脂をジシアンジアミド硬化系の一液性接着剤として調製し、硬化物の諸物性とポリウレタンのソフトセグメントの化学構造との関係を検討した」ことが記載され、同「第5章」には、概略「モルホロジーに差が生じやすい分子量2000のマクログリコールをソフトセグメントとするポリウレタンの末端をエポキシ樹脂でキャップしたオリゴマー(ETPU-Nタイプ)を合成し、ビスフェノー ルA型エポキシ樹脂/アジピン酸ジヒドラジド(ADH)硬化系の一液性エポキシ接着剤の物性とその化学 構造について検討した」ことが記載され、Table 1-1に各章で用いたエポキシ樹脂の改質・強靱化剤の概略構造が示されている(上記(1)ア)。

このうち、第4章の「種々のポリウレタンプレポリマーで鎖延長した一液性エポキシ接着剤の物性」の具体例に着目すると、鎖延長エポキシ樹脂の合成について記載されており(上記(1)カ)、これによれば、一液性エポキシ接着剤は、「マクログリコール(ポリエーテル系のポリオキシテトラメチレングリコール(PTMG、三洋化成工業(株)製)の分子量1000及び2000(PTMG-1000、PTMG-2000とそれぞれ略記)、ポリカーボネート系のポリヘキサメチレンカーボネートグリコール(ニッポラン981、980、日本ポリウレタン工業(株)製)の分子量1000及び2000(PCG-1000、PCG-2000とそれぞれ略記)、ポリブタジエン系のポリブタジエングリコール(Polybd R-15HT、R-45HT、出光石油化学(株)製)の分子量1200及び2800(HTPB-1200、HTPB-2800とそれぞれ略記))とMDIをNCO/OH比2.01で仕込み、80℃で4時間反応させてポリウレタンプレポリマーとし」、「2種類のエポキシ樹脂(エピコート1004:20phr、エピコート828:100phr)をトルエンに溶解し、先に合成したポリウレタンプレポリマーの所定量(10phr~100phr)を加えて100℃で4時間エピコート1004の水酸基と反応させ」、「室温まで冷却後、ジシアンジアミドを8phrと炭酸カルシウム(固形分の25重量%)を加え十分に混合した後、減圧下でトルエンを完全に留去」することにより得られるものである。

そうすると、マクログリコールとしてポリエーテル系ポリオールに着目すると、甲1には、以下の発明が記載されていると認められる。

「マクログリコール(PTMG-1000、PTMG-2000)とMDIをNCO/OH比2.01で仕込み、80℃で4時間反応させてポリウレタンプレポリマーとし、2種類のエポキシ樹脂(エピコート1004:20phr、エピコート828:100phr)をトルエンに溶解し、先に合成したポリウレタンプレポリマーの所定量(10phr~100phr)を加えて100℃で4時間エピコート1004の水酸基と反応させ、室温まで冷却後、ジシアンジアミドを8phrと炭酸カルシウム(固形分の25重量%)を加え十分に混合した後、減圧下でトルエンを完全に留去することにより得られる一液性エポキシ接着剤。」(以下、「甲1発明1」という。)

同様に、第5章の「ポリウレタンを主鎖に導入した一液性エポキシ接着剤の化学構造と物性」の具体例に着目すると、ポリウレタン導入エポキシ樹脂の合成について記載されており(上記(1)シ)、これによれば、一液性接着剤は、「EP-828と各々のマクログリコール(ポリオキシプロピレングリコール(PPG)、ポリオキシテトラメチレングリコール(PTMG)ポリカーボネートグリコール(PCG)、1,2-ポリブタジエングリコール(1,2-PBG))を混合し、NCO/OH=2.0のモル比でMDIを加え、窒素雰囲気中で80℃×3時間反応させ、ポリウレタンプレポリマーを合成し」、「次に、EP-834をNCO/OH=1.0のモル比で添加し、130℃×3時間反応させ、4種類のETPU-Nタイプを合成し」、「ETPU-Nタイプをそれぞれ10phr~50phr含むエポキシ樹脂に対して、硬化剤であるADHを23phr配合して均一になるまで混合」することにより得られるものである。

そうすると、マクログリコールとしてポリエーテル系ポリオールに着目すると、甲1には、以下の発明が記載されていると認められる。

「EP-828と各々のマクログリコール(PPG、PTMG)を混合し、NCO/OH=2.0のモル比でMDIを加え、窒素雰囲気中で80℃×3時間反応させ、ポリウレタンプレポリマーを合成し、次に、EP-834をNCO/OH=1.0のモル比で添加し、130℃×3時間反応させ、4種類のETPU-Nタイプを合成し、ETPU-Nタイプをそれぞれ10phr~50phr含むエポキシ樹脂に対して、硬化剤であるADHを23phr配合して均一になるまで混合することにより得られる一液性エポキシ接着剤。」(以下、「甲1発明2」という。)

同様に、第3章の「ブロックドウレタン変性一液性エポキシ接着剤の物性に対するソフトセグメントの影響」の具体例に着目すると、原材料及び硬化物の調製について記載されており(上記(1)イ)、これによれば、一液性接着剤は、「マクログリコール(ポリオキシプロピレングリコール(PPG、旭電化工業(株)製、2官能、分子量1000をPPG-D1、2000をPPG-D2、分子量3000をPPG-D3及び3官能、3000をPPG-T3とそれぞれ略記)、ポリオキシテトラメチレングリコール(PTMG、三洋化成工業(株)製、2官能、分子量1000をPTMG-1、2000をPTMG-2とそれぞれ略記)、ポリメチルバレロラクトングリコール(PMVL、(株)クラレ製、2官能、分子量2000をPMVL-2と略記)、ポリメチルペンタンアジペートグリコール(PMPA、(株)クラレ製、2官能、分子量2000をPMPA-2と略記))とMDIをNCO/OH比2.01で仕込み、80℃で4時間反応させてポリウレタンプレポリマーとし、次に、ブロック化剤のフェノールをイソシアナート基に対して小過剰の1.1mol及び触媒としてトリエチレンジアミンを1滴加え、100℃で3時間反応させてブロックドウレタンを得」て、「エポキシ樹脂に対して、ブロックドウレタンを10phr~50phr、硬化剤のジシアンジアミド(DICY)を8hr、沈降防止剤としてのアエロジル200を10phr添加し、自動乳鉢で均一に混合」することにより得られるものである。

そうすると、マクログリコールとしてポリエーテル系ポリオールに着目すると、甲1には、以下の発明が記載されていると認められる。

「マクログリコール(PPG-D1、PPG-D2、PPG-D3、PPG-T3、PTMG-1、PTMG-2)とMDIをNCO/OH比2.01で仕込み、80℃で4時間反応させてポリウレタンプレポリマーとし、次に、ブロック化剤のフェノールをイソシアナート基に対して小過剰の1.1mol及び触媒としてトリエチレンジアミンを1滴加え、100℃で3時間反応させてブロックドウレタンを得て、エポキシ樹脂に対して、ブロックドウレタンを10phr~50phr、硬化剤のジシアンジアミド(DICY)を8hr、沈降防止剤としてのアエロジル200を10phr添加し、自動乳鉢で均一に混合することにより得られる一液性エポキシ接着剤。」(以下、「甲1発明3」という。)

(8) 本件発明1と甲1発明1との対比・判断

ア 本件発明1と甲1発明1とを対比する。

甲1発明1は、まず、マクログリコールとしてポリエーテル系ポリオールであるPTMG-1000又はPTMG-2000とMDIをNCO/OH比2.01で反応させてポリウレタンプレポリマーとしているから、このポリウレタンプレポリマーは、末端がNCO基のポリウレタンプレポリマーであるといえる。

次に、甲1発明1は、この末端がNCO基のポリウレタンプレポリマーと、エポキシ樹脂であるエピコート1004の水酸基とを反応させており、この反応物は、ウレタン鎖延長エポキシ樹脂であるといえる。

そうすると、甲1発明1は、ウレタン鎖延長エポキシ樹脂と、ジシアンジアミドと、炭酸カルシウムとを含有する一液性エポキシ接着剤であるといえる。

以上を踏まえた上で、本件発明1と対比する。

甲1発明1の「ウレタン鎖延長エポキシ樹脂」は、「エポキシ樹脂」の一種であるから、本件発明1の「エポキシ樹脂」と、「エポキシ樹脂」である点で一致する。

さらに、甲1発明1の「一液性エポキシ接着剤」は、エポキシ樹脂を含む組成物であるから、本件発明1の「エポキシ樹脂組成物」に相当する。

また、甲1発明1の「ジシアンジアミド」は、上記(1)カの「硬化剤にジシアンジアミド(DICY、ジャパンエポキシレジン(株)製)・・・を使用した」の記載からみて、本件発明1の「硬化剤(C)」に相当する。

そうすると、本件発明1と甲1発明1は以下の点で一致する。

「エポキシ樹脂(A)と硬化剤(C)を配合して得られるエポキシ樹脂組成物」

そして、両者は下記の点で相違する。

・相違点1:「エポキシ樹脂組成物」について、本件発明1は、「ポリエーテルポリオール由来の構造を有し、且つ、分子鎖の両末端にイソシアネート基又は水酸基を有するウレタンプレポリマー(B)」を、エポキシ樹脂(A)とは別に配合しているのに対し、甲1発明1は、末端がNCO基のポリウレタンプレポリマーとエポキシ樹脂を反応させて「ウレタン鎖延長エポキシ樹脂」としている点。

・相違点2:「エポキシ樹脂組成物」について、本件発明1は、「硬化反応前は(A)と(B)が相溶しており、硬化反応後は(A)が海構造を形成し、且つ(B)が島構造を形成して、得られるエポキシ樹脂組成物の硬化物が海島相分離構造である」のに対し、甲1発明1はそのような特定がない点。
・相違点3:「エポキシ樹脂組成物」の用途について、本件発明1は、「繊維強化複合材料用」であるのに対し、甲1発明1は、「一液性接着剤」である点。

イ 上記相違点について検討する。

相違点1に関し、甲1発明1の「ウレタン鎖延長エポキシ樹脂」の原料に末端がNCO基のポリウレタンプレポリマーが用いられているから、甲1発明1の「ウレタン鎖延長エポキシ樹脂」が、本件発明1のウレタンプレポリマー(B)に相当するか検討すると、甲1には、末端がNCO基のポリウレタンプレポリマーと、エピコート1004の水酸基との反応について、イソシアナート基の消失を確認したことが記載されているから(上記(1)カ)、甲1発明1のウレタン鎖延長エポキシ樹脂には、イソシアナート基は存在せず、少なくとも本件発明1における「ポリエーテルポリオール由来の構造を有し、且つ、分子鎖の両末端にイソシアネート基又は水酸基を有するウレタンプレポリマー(B)」とは異なるものであり、甲1発明1の「ウレタン鎖延長エポキシ樹脂」は、本件発明1のウレタンプレポリマー(B)には相当しない。

また、甲1には、甲1発明1においてさらにポリウレタンプレポリマーを配合することは記載されておらず、また、技術常識ともいえないから、相違点1を構成することは、当業者が容易であるとはいえない。

ここで、申立人は、本件発明1における「エポキシ樹脂(A)」と「ポリエーテルポリオール由来の構造を有し、且つ、分子鎖の両末端にイソシアネート基又は水酸基を有するウレタンプレポリマー(B)」は、本件明細書の記載から(上記1(1)ウ,オ)、反応しているものと推察され、甲1発明1のウレタン鎖延長エポキシ樹脂と相違しない旨主張しているが、本件発明1における「エポキシ樹脂(A)」と「ポリエーテルポリオール由来の構造を有し、且つ、分子鎖の両末端にイソシアネート基又は水酸基を有するウレタンプレポリマー(B)」がそれぞれ独立して存在しているものであることは、上記1(2)アで検討したとおりであるから、申立人の主張は採用しない。

加えて、相違点3に関し、エポキシ樹脂組成物を繊維強化複合材料に用いるものと、一液性接着剤に用いるものでは、明らかに用途が異なり、相違点3は実質的な相違点である。さらに、甲1発明1において、甲1の記載に基づき、繊維基材への含浸性から組成物の粘度が低いほど好ましい繊維強化複合材料に用いることが、当業者に容易に想到し得たことだったともいえない。

また、甲1発明1において、甲3~甲6に記載された事項を組み合わせることにより、当業者が適宜なし得ることであるかにつき検討すると、甲3は、エポキシ樹脂の硬化剤としてイミダゾール類が当業者によく知られたものであること(上記(3)ア~イ)、甲4~甲6は、エポキシ樹脂組成物を繊維強化複合材料に用いることが周知技術であること(上記(4)ア~(6)ウ)を示すにとどまり、甲1発明1において、一液性接着剤に用いるものを繊維強化複合材料に用いるものとすることを動機付ける技術事項が存するものとは認められないから、甲1発明1において、甲3~甲6に記載された事項を組み合わせたとしても、上記相違点3につき、当業者が適宜なし得たことということはできない。

したがって、本件発明1は、相違点2につき検討するまでもなく、甲1に記載された発明ではなく、また、甲1に記載された発明と、甲3~甲6に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に想到したものでもない。

(9) 本件発明1と甲1発明2との対比・判断

ア 本件発明1と甲1発明2とを対比する。

甲1発明2は、まず、マクログリコールとしてポリエーテル系ポリオールであるPPG又はPTMGとEP-828を混合し、MDIをNCO/OH比2.0で反応させてポリウレタンプレポリマーとしているから、このポリウレタンプレポリマーは、末端がNCO基のポリウレタンプレポリマーであるといえる。

次に、甲1発明2は、この末端がNCO基のポリウレタンプレポリマーと、EP-834をNCO/OH=1.0のモル比で反応させて、EPTU-Nタイプを合成しており、このEPTU-Nタイプは、「ポリウレタン導入エポキシ樹脂」であるといえる。

そうすると、甲1発明2は、エポキシ樹脂と、EPTU-Nタイプ(ポリウレタン導入エポキシ樹脂)と、硬化剤であるADHとを含有する一液性エポキシ接着剤であるといえる。

以上を踏まえた上で、本件発明1と対比する。

甲1発明2の「エポキシ樹脂」は、本件発明1の「エポキシ樹脂(A)」に相当する。

さらに、甲1発明2の「一液性エポキシ接着剤」は、エポキシ樹脂を含む組成物であるから、本件発明1の「エポキシ樹脂組成物」に相当する。

また、甲1発明2の「硬化剤であるADH」は、本件発明1の「硬化剤(C)」に相当する。

そうすると、本件発明1と甲1発明2は以下の点で一致する。

「エポキシ樹脂(A)と硬化剤(C)を配合して得られるエポキシ樹脂組成物」

そして、両者は下記の点で相違する。

・相違点4:「エポキシ樹脂組成物」について、本件発明1は、「エポキシ樹脂(A)」とは別に、「ポリエーテルポリオール由来の構造を有し、且つ、分子鎖の両末端にイソシアネート基又は水酸基を有するウレタンプレポリマー(B)」を配合しているのに対し、甲1発明2は、エポキシ樹脂とポリウレタンプレポリマーを反応させた「ETPU-Nタイプ(ポリウレタン導入エポキシ樹脂)」を配合している点。

・相違点5:「エポキシ樹脂組成物」について、本件発明1は、「硬化反応前は(A)と(B)が相溶しており、硬化反応後は(A)が海構造を形成し、且つ(B)が島構造を形成して、得られるエポキシ樹脂組成物の硬化物が海島相分離構造である」のに対し、甲1発明2はそのような特定がない点。
・相違点6:「エポキシ樹脂組成物」の用途について、本件発明1は、「繊維強化複合材料用」であるのに対し、甲1発明2は、「一液性接着剤」である点。

イ 上記相違点について検討する。

相違点4に関し、甲1には、ETPU-Nタイプ(ポリウレタン導入エポキシ樹脂)について、PPG、PTMG由来の構造を有し、その両末端がエポキシ樹脂で封鎖されたものであることが示されているから(上記(1)シのFig. 5-1)、甲1発明2の「ETPU-Nタイプ(ポリウレタン導入エポキシ樹脂)」には、その両末端にイソシアネート基は存在せず、本件発明1における「ポリエーテルポリオール由来の構造を有し、且つ、分子鎖の両末端にイソシアネート基又は水酸基を有するウレタンプレポリマー(B)」とは異なるものであり、相違点4は実質的な相違点である。さらに、甲1発明2において、甲1の記載(上記(1)シ)に基づき、「ETPU-Nタイプ(ポリウレタン導入エポキシ樹脂)」を、エポキシ樹脂による封鎖前の状態にして配合することが、当業者に容易に想到し得たことだったともいえない。

ここで、申立人は、本件発明1における「エポキシ樹脂(A)」と「ポリエーテルポリオール由来の構造を有し、且つ、分子鎖の両末端にイソシアネート基又は水酸基を有するウレタンプレポリマー(B)」は、本件明細書の記載から(上記1(1)ウ,オ)、反応しているものと推察され、甲1発明2の「ETPU-Nタイプ(ポリウレタン導入エポキシ樹脂)」と相違しない旨主張している。

しかしながら、本件発明1における「エポキシ樹脂(A)」と「ポリエーテルポリオール由来の構造を有し、且つ、分子鎖の両末端にイソシアネート基又は水酸基を有するウレタンプレポリマー(B)」がそれぞれ独立して存在しているものであることは、上記1(2)アで検討したとおりであるから、申立人の主張は採用しない。そうすると、本件発明1における「ウレタンプレポリマー(B)」は、分子鎖の両末端にイソシアネート基又は水酸基を有するが、甲1発明2における「ETPU-Nタイプ(ポリウレタン導入エポキシ樹脂)」は、その末端がエポキシ樹脂で封鎖されているから、両者は、物として異なるものである。

加えて、相違点6については、上記(8)イの相違点3について示した事項と同一であり、相違点6は実質的な相違点であるし、さらに、甲1発明2において、甲1の記載に基づき、当業者に容易に想到し得たことだったともいえない。

また、甲1発明2において、甲3~甲6に記載された事項を組み合わせたとしても、上記相違点6につき、当業者が適宜なし得たことということはできない。

したがって、本件発明1は、相違点5につき検討するまでもなく、甲1に記載された発明ではなく、また、甲1に記載された発明と、甲3~甲6に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に想到したものでもない。

(10) 本件発明1と甲1発明3との対比・判断

ア 本件発明1と甲1発明3とを対比する。

甲1発明3は、まず、マクログリコールとしてポリエーテル系ポリオールであるPPG-D1、PPG-D2、PPG-D3、PPG-T3、PTMG-1又はPTMG-2とMDIをNCO/OH比2.0で反応させてポリウレタンプレポリマーとしているから、このポリウレタンプレポリマーは、末端がNCO基のポリウレタンプレポリマーであるといえる。

次に、甲1発明3は、この末端がNCO基のポリウレタンプレポリマーと、ブロック化剤のフェノールをイソシアナート基に対して小過剰の1.1molで反応させて、ブロックドウレタンを合成している。

そうすると、甲1発明3は、エポキシ樹脂と、ブロックドウレタンと、硬化剤のジシアンジアミドとを含有する一液性エポキシ接着剤であるといえる。

以上を踏まえた上で、本件発明1と対比する。

甲1発明3の「エポキシ樹脂」は、本件発明1の「エポキシ樹脂(A)」に相当する。

さらに、甲1発明3の「一液性エポキシ接着剤」は、エポキシ樹脂を含む組成物であるから、本件発明1の「エポキシ樹脂組成物」に相当する。

また、甲1発明3の「硬化剤のジシアンジアミド」は、本件発明1の「硬化剤(C)」に相当する。

そうすると、本件発明1と甲1発明3は以下の点で一致する。

「エポキシ樹脂(A)と硬化剤(C)を配合して得られるエポキシ樹脂組成物」

そして、両者は下記の点で相違する。

・相違点7:「エポキシ樹脂組成物」について、本件発明1は、「ポリエーテルポリオール由来の構造を有し、且つ、分子鎖の両末端にイソシアネート基又は水酸基を有するウレタンプレポリマー(B)」を配合しているのに対し、甲1発明3は、「ブロックドウレタン」を配合している点。
・相違点8:「エポキシ樹脂組成物」について、本件発明1は、「硬化反応前は(A)と(B)が相溶しており、硬化反応後は(A)が海構造を形成し、且つ(B)が島構造を形成して、得られるエポキシ樹脂組成物の硬化物が海島相分離構造である」のに対し、甲1発明3はそのような特定がない点。
・相違点9:「エポキシ樹脂組成物」の用途について、本件発明1は、「繊維強化複合材料用」であるのに対し、甲1発明3は、「一液性接着剤」である点。

イ 上記相違点について検討する。

相違点7に関し、甲1には、ブロックドウレタンについて、その両末端が小過剰のフェノールで封鎖されたものであることが示されているから(上記(1)イ)、甲1発明3の「ブロックドウレタン」には、その両末端にイソシアネート基又は水酸基は存在せず、本件発明1における「ポリエーテルポリオール由来の構造を有し、且つ、分子鎖の両末端にイソシアネート基又は水酸基を有するウレタンプレポリマー(B)」とは異なるものであり、相違点7は実質的な相違点である。さらに、甲1発明3において、甲1の記載に基づき、「ブロックドウレタン」を、フェノールによる封鎖前の状態にして配合することが、当業者に容易に想到し得たことだったともいえない。

ここで、申立人は、甲1発明3におけるブロックドウレタンについては、硬化前においてのみ本件発明1の(B)成分の末端基と異なるだけであって、硬化条件で加熱された際には、同じように、ポリエーテルポリオール由来の構造を有して分子鎖の末端にNCO基を有するウレタンプレポリマーになる旨主張しているが、硬化と同時にブロックドウレタンの末端が解離するからといって、硬化前のエポキシ樹脂組成物について、両者が物として同じものであるということはできない。

加えて、相違点9については、上記(8)イの相違点3について示した事項と同一であり、相違点9は実質的な相違点であるし、さらに、甲1発明3において、甲1の記載に基づき、当業者に容易に想到し得たことだったともいえない。

また、甲1発明3において、甲3~甲6に記載された事項を組み合わせたとしても、上記相違点6につき、当業者が適宜なし得たことということはできない。

したがって、本件発明1は、相違点8につき検討するまでもなく、甲1に記載された発明ではなく、また、甲1に記載された発明と、甲3~甲6に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に想到したものでもない。

(11) 本件発明2~6と甲1発明1~3との対比・判断

本件発明2~6は、いずれも本件発明1を引用し、更に限定を加えたものであるから、本件発明2,3,6は、本件発明1と同様、甲1に記載された発明ではなく、また、本件発明2~6は、甲1に記載された発明及び甲3~甲6に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に想到したものとはいえない。

(12) 甲2に記載された発明

甲2は、「Structures and Physical Properties of Epoxy Resins Reacted withVarious Polyurethanes(当審訳:種々のポリウレタン鎖を導入したエポキシ樹脂の構造と物性)」と題する論文であり、概略「汎用ビスフェノールA型エポキシ樹脂に対してETPU(ポリウレタン鎖導入エポキシ樹脂)を10~50phr添加し、潜在性硬化剤であるアジピン酸ジヒドラジド(ADH)で硬化させ、硬化物の物性(接着強度、破壊靱性)とETPUに用いたポリウレタン鎖の構造との関係について検討した」ことが記載され、このうち、「2.実験」の具体例に着目すると、合成及び準備について記載されており(上記(2)ア)、これによれば、接着性を有する組成物は、「反応器に各々のマクログリコール(ポリオキシプロピレングリコール(PPG, P-2000, 旭電化工業(株)製)、ポリオキシテトラメチレングリコール(PTMG,PTG2000SN, 保土ケ谷化学工業(株)製)、ポリカーボネートグリコール(PCG, ニッポラン 980R, 日本ポリウレタン工業(株)製)、1,2-ポリブタジエングリコール(1,2-PBG, G-2000, 日本曹達(株)製))とMDIを加え」、「2モルのイソシアネート基と1モルの水酸基とを反応させるよう、窒素雰囲気中で80℃×3時間混合物を加熱し」、「第2ステップでは、ポリウレタンプレポリマーのNCO基とEP-834(上記(2)アの「原材料」の欄から、「ビスフェノールA型エポキシ樹脂」の商品名である。)の二級水酸基を、NCO/OH=1.0のモル比で、130℃×3時間反応させ」、ETPUを合成し、「10から50phrのETPUと23phrのADHとを100phrのDGEBA(上記(2)アの「原材料」の欄から、「ビスフェノールA型エポキシ樹脂」であるエピコート828の略。)に加え」、「成分を完全に混合し、50℃で30分間真空下にて脱気」することにより得られるものである。

そうすると、マクログリコールとしてポリエーテル系ポリオールに着目すると、甲2には、以下の発明が記載されていると認められる。

「反応器に各々のマクログリコール(P-2000、PTG2000SN)とMDIを加え、2モルのイソシアネート基と1モルの水酸基とを反応させるよう、窒素雰囲気中で80℃×3時間混合物を加熱し、第2ステップでは、ポリウレタンプレポリマーのNCO基とエポキシ樹脂であるEP-834の二級水酸基を、NCO/OH=1.0のモル比で、130℃×3時間反応させ、ETPUを合成し、10から50phrのETPUと23phrのADHとを100phrのDGEBAに加え、成分を完全に混合し、50℃で30分間真空下にて脱気することにより得られる接着性を有する組成物。」(以下、「甲2発明」という。)

(13) 本件発明1と甲2発明との対比・判断

ア 本件発明1と甲2発明とを対比する。

甲2発明は、まず、マクログリコールとしてポリエーテル系ポリオールであるP-2000又はPTG2000SNとMDIをNCO/OH比2.0で反応させてポリウレタンプレポリマーとしているから、このポリウレタンプレポリマーは、末端がNCO基のポリウレタンプレポリマーであるといえる。

次に、甲2発明は、この末端がNCO基のポリウレタンプレポリマーと、エポキシ樹脂であるEP-834の二級水酸基をNCO/OH=1.0のモル比で反応させて、EPTUを合成しており、このEPTUは、「ポリウレタン導入エポキシ樹脂」であるといえる。

そうすると、甲2発明は、エポキシ樹脂と、EPTU(ポリウレタン導入エポキシ樹脂)と、硬化剤であるADHとを含有する接着性組成物であるといえる。

以上を踏まえた上で、本件発明1と対比する。

甲2発明の「DGEBA(ビスフェノールA型エポキシ樹脂)」は、本件発明1の「エポキシ樹脂(A)」に相当する。

さらに、甲2発明の「組成物」は、エポキシ樹脂を含むものであるから、本件発明1の「エポキシ樹脂組成物」に相当する。

また、甲2発明の「ADH(アジピン酸ジヒドラジド)」は、本件発明1の「硬化剤(C)」に相当する。

そうすると、本件発明1と甲2発明は以下の点で一致する。

「エポキシ樹脂(A)と硬化剤(C)を配合して得られるエポキシ樹脂組成物」

そして、両者は下記の点で相違する。

・相違点10:「エポキシ樹脂組成物」について、本件発明1は、「エポキシ樹脂(A)」とは別に、「ポリエーテルポリオール由来の構造を有し、且つ、分子鎖の両末端にイソシアネート基又は水酸基を有するウレタンプレポリマー(B)」を配合しているのに対し、甲2発明は、「ETPU(ポリウレタン導入エポキシ樹脂)」を配合している点。
・相違点11:「エポキシ樹脂組成物」について、本件発明1は、「硬化反応前は(A)と(B)が相溶しており、硬化反応後は(A)が海構造を形成し、且つ(B)が島構造を形成して、得られるエポキシ樹脂組成物の硬化物が海島相分離構造である」のに対し、甲2発明はそのような特定がない点。
・相違点12:「エポキシ樹脂組成物」の用途について、本件発明1は、「繊維強化複合材料用」であるのに対し、甲2発明は、「接着性を有する」組成物である点。

イ 上記相違点について検討する。

相違点10に関し、甲2には、ETPUについて、その両末端がエポキシ樹脂で封鎖されたものであることが示されているから(上記(2)アのFig. 1)、甲2発明の「ETPU」には、その両末端にイソシアネート基は存在せず、本件発明1における「ポリエーテルポリオール由来の構造を有し、且つ、分子鎖の両末端にイソシアネート基又は水酸基を有するウレタンプレポリマー(B)」とは異なるものであり、相違点10は実質的な相違点である。さらに、甲2発明において、甲2の記載に基づき、「ETPU」を、エポキシ樹脂による封鎖前の状態にして配合することが、当業者に容易に想到し得たことだったともいえない。

ここで、申立人は、本件発明1における「エポキシ樹脂(A)」と「ポリエーテルポリオール由来の構造を有し、且つ、分子鎖の両末端にイソシアネート基又は水酸基を有するウレタンプレポリマー(B)」は、本件明細書の記載から(上記1(1)イ,エ)、反応しているものと推察され、甲2発明の「ETPU」と相違しない旨主張している。

しかしながら、本件発明1における「エポキシ樹脂(A)」と「ポリエーテルポリオール由来の構造を有し、且つ、分子鎖の両末端にイソシアネート基又は水酸基を有するウレタンプレポリマー(B)」がそれぞれ独立して存在しているものであることは、上記1(2)アで検討したとおりである。そうすると、本件発明1における「ウレタンプレポリマー(B)」は、分子鎖の両末端にイソシアネート基又は水酸基を有するが、甲2発明における「ETPU」は、その末端がエポキシ樹脂で封鎖されているから、両者は、物として異なるものである。

加えて、相違点12については、上記(8)イの相違点3について示した事項と実質的に同一であり、相違点12は実質的な相違点であるし、さらに、甲2発明において、甲2の記載に基づき、当業者に容易に想到し得たことだったともいえない。

また、甲2発明において、甲3~甲6に記載された事項を組み合わせたとしても、上記相違点12につき、当業者が適宜なし得たことということはできない。

したがって、本件発明1は、相違点11につき検討するまでもなく、甲2に記載された発明ではなく、また、甲2に記載された発明と、甲3~甲6に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に想到したものでもない。

(14) 本件発明2~6と甲2発明との対比・判断

本件発明2~6は、いずれも本件発明1を引用し、更に限定を加えたものであるから、本件発明2,3,6は、本件発明1と同様、甲2に記載された発明ではなく、また、本件発明2~6は、甲2に記載された発明及び甲3~甲6に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に想到したものとはいえない。

(15) まとめ

したがって、本件発明1~3,6は、甲1又は甲2に記載された発明ではなく、また、本件発明1~6は、甲1又は甲2に記載された発明、及び甲3~甲6に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に想到したものとはいえないから、申立て理由1~2により、本件発明1~6に係る特許を取り消すことはできない。

第5 むすび

以上のとおりであるから、申立人が主張する異議申立ての理由及び証拠によっては、本件発明1~6に係る特許を取り消すことはできない。

また、他に本件発明1~6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり決定する。

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2020-700285

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