特許異議申立
2020-700081
パラレルロボット
- 審判番号
- 2020-700081
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2015-181060
- 登録番号
- 特許第6558849号(P6558849)
- 請求日
- 2020年02月14日
- 審決日
- 2020年10月29日
- 公報発行日
- 2021年02月26日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】株式会社ミツバ
- 【権利者代理人】西澤 和純
- 【権利者代理人】鈴木 慎吾
- 【権利者代理人】鎌田 康一郎
- 【権利者代理人】志賀 正武
- 【権利者代理人】鈴木 三義
- 【異議申立人】藤江 桂子
- 審判長/審判官
- 審判長 刈間 宏信
- 審判官 大山 健
- 審判官 田々井 正吾
- 分類
- P1651.113-YAA(B25J) / P1651.121-YAA(B25J)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第6558849号発明「パラレルロボット」の特許異議申立事件について,次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第6558849号の明細書及び特許請求の範囲を,訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項〔1-8〕について訂正することを認める。
特許第6558849号の請求項1,3ないし8に係る特許を維持する。
特許第6558849号の請求項2に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
特許第6558849号(以下「本件特許」という。)の請求項1ないし8に係る特許についての出願は,平成27年9月14日に出願され,令和1年7月26日にその特許権の設定登録がされ,令和1年8月14日に特許掲載公報が発行された。
そして,本件特許異議の申立ての経緯は,次のとおりである。
令和 2年 2月14日 :特許異議申立人 藤江 桂子(以下
「異議申立人」という。)による請求項1
ないし8に係る特許に対する特許異議
の申立て
令和 2年 5月11日付け:取消理由通知書
令和 2年 7月 1日 :特許権者 株式会社ミツバ(以下
「特許権者」という。)による意見書及び
訂正請求書の提出
なお,当審は,異議申立人に対して期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが,異議申立人は応答しなかった。
第2 訂正の適否
1.訂正の内容
令和2年7月1日付け訂正請求書によってされた訂正の請求(以下「本件訂正請求」という。)による訂正事項は,以下のとおりである。(なお,下線部は,訂正事項について,特許権者が付したものである。)
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に,
「ベース部と,
該ベース部の一面側に周方向に等間隔で配置された3つのリンク機構と,
前記ベース部に配置され,前記3つのリンク機構の基端側に別々に連結されている3つの駆動部と,
該3つのリンク機構の先端側に設けられ,3つの前記先端側と回動自在に連結されている可動部と,
を備え,
前記3つの駆動部は,該駆動部の駆動軸が前記ベース部の面方向に沿うように配置されていると共に,
前記3つの駆動部のうちの第1駆動部および第2駆動部は,前記リンク機構の前記基端側の同一の一側面に配置されている一方,前記3つの駆動部のうちの第3駆動部は,前記リンク機構の前記基端側の前記一側面とは反対側の他側面に配置されていることを特徴とするパラレルロボット。」とあるのを,
「ベース部と,
該ベース部の一面側に周方向に等間隔で配置された3つのリンク機構と,
前記ベース部に配置され,前記3つのリンク機構の基端側に別々に連結されている3つの駆動部と,
該3つのリンク機構の先端側に設けられ,3つの前記先端側と回動自在に連結されている可動部と,
を備え,
前記3つの駆動部は,該駆動部の駆動軸が前記ベース部の面方向に沿うように配置されていると共に,
前記3つの駆動部のうちの第1駆動部および第2駆動部は,前記リンク機構の前記基端側の同一の一側面に配置されている一方,前記3つの駆動部のうちの第3駆動部は,前記リンク機構の前記基端側の前記一側面とは反対側の他側面に配置されており,
前記3つのリンク機構は,前記ベース部の法線方向からみて放射状に設けられており,
隣り合う2つの前記リンク機構の間のうち,前記駆動部が存在しない領域に対応する前記ベース部の一辺は,前記領域を形成する2つの前記リンク機構の前記領域側の側面と,対応する前記駆動軸の中心とが交差する点同士を結んだ直線よりも前記領域とは反対の内側に形成されていることを特徴とするパラレルロボット。」
に訂正する。(請求項1の記載を引用する請求項2~8も同様に訂正する。なお,請求項2は,下記のとおり,削除される。)
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2を削除する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3に,「・・・を特徴とする請求項2に記載のパラレルロボット。」とあるのを「・・・を特徴とする請求項1に記載のパラレルロボット。」に訂正する。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項5に,「・・・を特徴とする請求項1~請求項4の何れか1項に記載のパラレルロボット。」とあるのを
「・・・を特徴とする請求項1,請求項3,請求項4の何れか1項に記載のパラレルロボット。」に訂正する。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項7に,「・・・を特徴とする請求項1~請求項6の何れか1項に記載のパラレルロボット。」とあるのを
「・・・を特徴とする請求項1または請求項3~請求項6の何れか1項に記載のパラレルロボット。」に訂正する。
(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項8に,「・・・を特徴とする請求項1~請求項7の何れか1項に記載のパラレルロボット。」とあるのを
「・・・を特徴とする請求項1または請求項3~請求項7の何れか1項に記載のパラレルロボット。」に訂正する。
(7)訂正事項7
明細書の段落【0007】を,
「【0007】
上記の課題を解決するために,本発明に係るパラレルロボットは,ベース部と,該ベース部の一面側に周方向に等間隔で配置された3つのリンク機構と,前記ベース部に配置され,前記3つのリンク機構の基端側に別々に連結されている3つの駆動部と,該3つのリンク機構の先端側に設けられ,3つの前記先端側と回動自在に連結されている可動部と,を備え,前記3つの駆動部は,該駆動部の駆動軸が前記ベース部の面方向に沿うように配置されていると共に,前記3つの駆動部のうちの第1駆動部および第2駆動部は,前記リンク機構の前記基端側の同一の一側面に配置されている一方,前記3つの駆動部のうちの第3駆動部は,前記リンク機構の前記基端側の前記一側面とは反対側の他側面に配置されており,前記3つのリンク機構は,前記ベース部の法線方向からみて放射状に設けられており,隣り合う2つの前記リンク機構の間のうち,前記駆動部が存在しない領域に対応する前記ベース部の一辺は,前記領域を形成する2つの前記リンク機構の前記領域側の側面と,対応する前記駆動軸の中心とが交差する点同士を結んだ直線よりも前記領域とは反対の内側に形成されていることを特徴とする。」に訂正する。
(8)訂正事項8
明細書の段落【0009】の記載を削除する。
2.訂正の目的の適否,新規事項の有無,及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1
訂正事項1は,一群の請求項〔1-8〕について請求されたものであるところ,訂正前の請求項2の発明特定事項を訂正前の請求項1に付加するものであるから,特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり,新規事項の追加に該当せず,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものでもない。
(2)訂正事項2
訂正事項2は,請求項を削除するものであるから,特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり,新規事項の追加に該当せず,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものでもない。
(3)訂正事項3
訂正事項3は,訂正前の請求項3が請求項2を引用していたところ,上記訂正事項1及び2の,訂正前の請求項2の発明特定事項が請求項1に付加され,該請求項2が削除される訂正により生じた不合理を正すことを目的として,訂正後の請求項3が請求項1を引用するものとする訂正であるから,明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり,新規事項の追加に該当せず,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものでもない。
(4)訂正事項4-6
訂正事項4-6は,訂正前の請求項5,7-8について,請求項2を引用しないものとする訂正であり,多数項を引用している請求項の引用請求項数の削減を目的とするものであるから,特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり,新規事項の追加に該当せず,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものでもない。
(5)訂正事項7-8
訂正事項7-8は,上記訂正事項1及び2の,訂正前の請求項2の発明特定事項が請求項1に付加され,該請求項2が削除される訂正に伴い,特許請求の範囲と整合させるために行う明細書の訂正であるから,明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり,新規事項の追加に該当せず,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものでもない。
3.小括
上記のとおり,訂正事項1ないし8に係る訂正は,特許法120条の5第2項ただし書1号又は3号に掲げる事項を目的とするものであり,かつ,同条9項で準用する同法126条5項及び6項の規定に適合する。
したがって,本件特許明細書及び特許請求の範囲を,訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項〔1-8〕について訂正することを認める。
第3 訂正後の本件特許発明
<本件特許発明1ないし8>
本件訂正請求により訂正された請求項1ないし8に係る発明(以下,各請求項に係る発明を「本件特許発明1」などといい,特許発明1ないし8をまとめて「本件特許発明」という。)は,訂正特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
【請求項1】
ベース部と,
該ベース部の一面側に周方向に等間隔で配置された3つのリンク機構と,
前記ベース部に配置され,前記3つのリンク機構の基端側に別々に連結されている3つの駆動部と,
該3つのリンク機構の先端側に設けられ,3つの前記先端側と回動自在に連結されている可動部と,
を備え,
前記3つの駆動部は,該駆動部の駆動軸が前記ベース部の面方向に沿うように配置されていると共に,
前記3つの駆動部のうちの第1駆動部および第2駆動部は,前記リンク機構の前記基端側の同一の一側面に配置されている一方,前記3つの駆動部のうちの第3駆動部は,前記リンク機構の前記基端側の前記一側面とは反対側の他側面に配置されており,
前記3つのリンク機構は,前記ベース部の法線方向からみて放射状に設けられており,
隣り合う2つの前記リンク機構の間のうち,前記駆動部が存在しない領域に対応する前記ベース部の一辺は,前記領域を形成する2つの前記リンク機構の前記領域側の側面と,対応する前記駆動軸の中心とが交差する点同士を結んだ直線よりも前記領域とは反対の内側に形成されていることを特徴とするパラレルロボット。
【請求項2】
(削除)
【請求項3】
前記ベース部に,ワークを検出する検出手段が前記領域を臨むように設けられていることを特徴とする請求項1に記載のパラレルロボット。
【請求項4】
前記検出手段は,前記ワークを認識可能なカメラであることを特徴とする請求項3に記載のパラレルロボット。
【請求項5】
前記駆動部は,ブラケットを介して前記ベース部に固定されており,
前記ブラケット,および前記リンク機構の前記基端側には,それぞれ前記駆動軸に対する前記リンク機構の原点位置を決めるための調整部が設けられていることを特徴とする請求項1,請求項3,請求項4の何れか1項に記載のパラレルロボット。
【請求項6】
前記調整部は,
前記ブラケットと前記リンク機構の前記基端側とにそれぞれ形成された孔と,
該孔に挿通可能なピンと,
を有していることを特徴とする請求項5に記載のパラレルロボット。
【請求項7】
前記リンク機構は,
前記駆動部に連結される第1アームと,
前記可動部に連結される第2アームと,
前記第1アームの先端と前記第2アームの基端とを連結する連結部と,
を備え,
前記連結部は,
前記第1アームの前記先端に,厚さ方向に貫通形成された貫通孔と,
前記貫通孔に挿通される連結軸と,
前記第2アームの基端に設けられ,前記連結軸に連結される第2連結部と,
を備え,
前記第2連結部は,
前記連結軸が挿入されるホルダと,
前記第2アームの前記基端に設けられ前記ホルダを回動自在に保持するジョイント部と,
を備え,
前記ジョイント部と前記ホルダとの回動軸と,前記連結軸は,交差していることを特徴とする請求項1または請求項3~請求項6の何れか1項に記載のパラレルロボット。
【請求項8】
前記駆動部は,前記ベース部の前記一面に配置されていることを特徴とする請求項1または請求項3~請求項7の何れか1項に記載のパラレルロボット。
第4 取消理由についての当審の判断
1.取消理由の概要
当審が令和2年5月11日付けで特許権者に通知した取消理由の概要は,次のとおりである。
(1)新規性について
訂正前の請求項1に係る特許発明は,甲第2号証(「FANUC Robot M-1iA 機構部 保守説明書」,3版,日本,2014年7月,23,24,28,31,33及び37ページ)に記載された発明であって,特許法29条1項3号に該当するから,その特許は特許法29条1項の規定に違反してされたものである。
(2)進歩性について
訂正前の請求項1に係る特許発明は前記甲第2号証及び甲第3号証(「FANUC Robot M-1iA 機構部 取扱説明書」,6版,日本,平成25年7月,39及び52ページ)に記載された発明に基づいて,
訂正前の請求項5及び6に係る特許発明は前記甲第2号証,前記甲第3号証及び甲第5号証(特開昭63-278787号公報)に基づいて,
訂正前の請求項7に係る特許発明は前記甲第2号証,前記甲第3号証,前記甲第5号証,甲第7号証(特開2000-46140号公報)及び甲第8号証(特開平10-180674号公報)に基づいて,
訂正前の請求項8に係る特許発明は前記甲第2号証,前記甲第3号証,前記甲第5号証,前記甲第7号証,前記甲第8号証及び甲第9号証(特開2010-247324号公報)に基づいて,
本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下,「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから,それらの特許は特許法29条2項の規定に違反してされたものである。
2.取消理由についての判断
(1)新規性についての判断
本件訂正請求により,本件特許発明1は,訂正前の請求項1に係る特許発明に訂正前の請求項2に係る特許発明の発明特定事項の全てを付加して訂正されたものであり,すなわち,実質的に訂正前の請求項2に係る特許発明と同じ発明特定事項を具備するものとなったものであり,該訂正前の請求項2に係る特許発明に対して,新規性違反の取消理由を通知していないから,本件特許発明1に係る特許を,新規性違反の取消理由によって取り消すことはできない。
なお,本件特許発明2は,本件訂正請求により削除されている。
(2)進歩性についての判断
上記(1)に示すとおり,本件訂正請求により,本件特許発明1は,実質的に訂正前の請求項2に係る特許発明と同じ発明特定事項を具備するものとなったものであり,該訂正前の請求項2に係る特許発明に対して,進歩性の取消理由を通知していないから,本件特許発明1及び本件特許発明1の構成要素の全てを包含する本件特許発明5ないし8に係る特許を,進歩性違反の取消理由によって取り消すことはできない。
なお,本件特許発明2は,本件訂正請求により削除されている。
(3)小活
したがって,当審が令和2年5月11日付けで特許権者に通知した取消理由によって,請求項1,5ないし8に係る特許を取り消すことはできない。
第5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由についての当審の判断
1.特許異議申立理由の概要及び異議申立人が提出した証拠
取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由の概要及び異議申立人が提出した証拠(甲第1号証ないし甲第9号証。以下,「甲1」などという。)は,以下のとおりである。
(1)甲3に基づく特許法29条1項3号(新規性違反)の理由
訂正前の請求項1及び請求項1を引用する請求項5に係る特許発明は,甲1及び甲2を参酌すれば,甲3に記載された発明であるから,新規性がない。(特許異議申立書14-27ページ)
(2)甲4に基づく特許法29条2項(進歩性違反)の理由
訂正前の請求項1ないし8に係る特許発明は,甲4に記載された発明に甲1-3及び甲5-9に記載された技術事項を適用して当業者が容易に発明できたものであるから,進歩性がない。(特許異議申立書27-44ページ)
(3)異議申立人が提出した証拠
甲1:FANUC Robot M-1iA カタログ
甲2:FANUC Robot M-1iA 機構部 保守説明書
甲3:FANUC Robot M-1iA 機構部 取扱説明書
甲4:特開2014-39977号公報
甲5:特開昭63-278787号公報
甲6:特開昭62-63303号公報
甲7:特開2000-46140号公報
甲8:特開平10-180674号公報
甲9:特開2010-247324号公報
2.甲3に基づく新規性違反の理由の検討
上記第4の2.(1)で示したとおり,本件訂正請求により,本件特許発明1は,実質的に訂正前の請求項2に係る特許発明と同じ発明特定事項を具備するものとなったものである。そして,該訂正前の請求項2及び請求項2を引用する請求項5に係る特許発明については,異議申立人は甲3に基づく新規性違反を主張していない。
したがって,本件特許発明1及び5に係る特許を甲3に基づく新規性違反の理由によって取り消すことはできない。
3.甲4に基づく進歩性の理由の検討
(1)本件特許発明1について
上記第4の2.(1)で示したとおり,本件訂正請求により,本件特許発明1は,実質的に訂正前の請求項2に係る特許発明と同じ発明特定事項を具備するものとなったものであり,異議申立人は,該訂正前の請求項2に係る特許発明について,甲4に記載された発明に,甲3及び甲1の技術事項を適用して当業者が容易に発明をできたものである旨を主張(特許異議申立書の39-40ページ)しているから,この点について検討する。
(2)甲4に記載された事項及び甲4に記載された発明
ア 甲4に記載された事項
(ア)「【0001】
この発明は,パラレルロボットに関する。」
(イ)「【0028】
図1および図2に示すように,本実施形態のパラレルロボット1は,所定の間隔を隔てて配置された2つの脚部材(2,2)と,脚部材(2,2)に取り付けられた略円盤状の基部材3と,移動部材5と,移動部可動機構10と,回動部駆動機構20と,を主に備える。なお,基部材3の外周部には,3つの切欠き溝が等ピッチにて中心に向けて形成されている。また,2つの脚部材(2,2)間には補強部材3が取り付けられている。
【0029】
移動部可動機構10は,基部材3の略外周部に等ピッチ間隔に配置された3つのリンク機構(11,11,11)と,これらのリンク機構(11,11,11)をそれぞれ駆動する3つのリンク用モータ装置(12,12,12)と,を備える。
【0030】
この移動部可動機構10はパラレルメカニズム方式にて構成されており,基部材4と移動部材5とを機械的に接続するとともに,移動部材5を基部材4に対し所定の3次元空間内を自由に,移動部材5の姿勢を変えることなく(平行状態にて)空間移動させることができる。このようにして,移動部材5は基部材4に対して空間移動可能に配置される。なお,リンク機構11と移動部材5との機械的な接合は,回転自在な接続部材13を介して行われる。」
(なお,段落【0028】及び【0029】の「基部材3」との記載は,「基部材4」の誤記と認める。)
イ 甲4に記載された事項及び図面から看取できる事項
(ア)上記ア(イ)の記載事項及び図2から,3つのリンク用モータ装置12は,その駆動軸が基部材4の面方向に沿うように配置されていることが看取される。
(イ)上記ア(イ)の記載事項及び図2から,3つのリンク機構11の基端側には3つのリンク用モータ装置12が別々に連結され,3つのリンク機構11の先端側には移動部材5が回転自在に連結されていることが看取できる。また,図2から,3つのリンク用モータ装置12は,いずれも3つのリンク機構11の基端側の同一の一側面(反時計回り側の一側面)に配置されていることが看取される。
【図2】
ウ 甲4に記載された発明
上記ア及びイの事項から,甲4には,以下の発明(以下,「甲4発明」という。)が記載されているといえる。なお,括弧内には,甲4の記載に対応する本件特許発明の用語や表現等を挿入した。
<甲4発明>
「基部材4(ベース部)と,
該基部材4の一面側に周方向に等間隔で配置された3つのリンク機構11(リンク機構)と,
前記前記基部材4に配置され,前記3つのリンク機構11の基端側に別々に連結されている3つのリンク用モータ装置12(駆動部)と,
該3つのリンク機構11の先端側に設けられ,3つの前記先端側と回転自在(回動自在)に連結されている移動部材5(可動部)と,
を備え,
前記3つのリンク用モータ装置12は,該リンク用モータ装置12の駆動軸が前記基部材4の面方向に沿うように配置されていると共に,
前記3つのリンク用モータ装置12は,いずれも前記3つのリンク機構11の基端側の同一の一側面に配置されており,
前記3つのリンク機構11は,前記基部材4の略外周部に等ピッチ間隔に配置されており(前記ベース部の法線方向からみて放射状に設けられており),
前記基部材4は略円盤状で,その外周部に3つの切欠き溝が等ピッチにて中心に向けて形成されているパラレルロボット1(パラレルロボット)。」
エ 甲3に記載された技術事項
甲3(52ページ)の図7.3(a)及び図7.3(b)を総合すると,甲3から,3つのリンク機構を有するロボットにおいて,3つのモータのうちの2つのモータ(A及びC)は,リンク機構の反時計回り側の側面に配置し,3つのモータのうちの1つのモータ(B)は,リンク機構の時計回り側の側面に配置するとの技術事項が看取できる。
[図7.3(a)]
[図7.3(b)]
オ 甲1に記載された技術事項
甲1の3ページの[知能化]欄に,「iRVision(内蔵ビジョン)のカメラを本体に内蔵できます。」と記載されているとともに,図面に,3つのリンク機構を備えるロボット本体の内部にカメラが内蔵されている様が図示されているから,甲1から,3つのリンク機構を有するロボットにおいて,カメラを本体内に内蔵するとの技術事項が看取できる。
[甲1の図面]
(3)対比
本件特許発明1と甲4発明を対比すると,以下の点で一致し,以下の点で相違する。
[一致点]
「ベース部と,
該ベース部の一面側に周方向に等間隔で配置された3つのリンク機構と,
前記ベース部に配置され,前記3つのリンク機構の基端側に別々に連結されている3つの駆動部と,
該3つのリンク機構の先端側に設けられ,3つの前記先端側と回動自在に連結されている可動部と,
を備え,
前記3つの駆動部は,該駆動部の駆動軸が前記ベース部の面方向に沿うように配置されていると共に,
前記3つのリンク機構は,前記ベース部の法線方向からみて放射状に設けられているパラレルロボット。」
[相違点1]
本件特許発明1は,「前記3つの駆動部のうちの第1駆動部および第2駆動部は,前記リンク機構の前記基端側の同一の一側面に配置されている一方,前記3つの駆動部のうちの第3駆動部は,前記リンク機構の前記基端側の前記一側面とは反対側の他側面に配置されて」いるのに対し,甲4発明は,3つのリンク用モータ装置12がいずれも3つのリンク機構11の基端側の同一の一側面に配置されている点。
[相違点2]
本件特許発明1は,「隣り合う2つの前記リンク機構の間のうち,前記駆動部が存在しない領域に対応する前記ベース部の一辺は,前記領域を形成する2つの前記リンク機構の前記領域側の側面と,対応する前記駆動軸の中心とが交差する点同士を結んだ直線よりも前記領域とは反対の内側に形成されている」のに対し,甲4発明では,基部材4は略円盤状で,その外周部に3つの切欠き溝が等ピッチにて中心に向けて形成されている点。
(4)判断
ア 上記相違点1について検討する。
(ア)甲4発明は,3つのリンク用モータ装置12がいずれも3つのリンク機構11の基端側の同一の一側面に配置されており,甲4の図2等を参酌すれば,3つのリンク用モータ装置12は,基部材4上で回転対称に均等に配置(以下「モータの均等配置」という。)されていることを理解できる。
(イ)これに対して,上記(2)エに示したとおり,甲3から,3つのリンク機構を有するロボットにおいて,3つのモータのうちの2つのモータは,リンク機構の反時計回り側の側面に配置し,3つのモータのうちの1つのモータは,リンク機構の時計回り側の側面に配置するとの技術事項が看取できるが,甲3には,2つのモータをリンク機構の反時計回り側に配置し,1つのモータを時計回り側に配置するという不均等な配置(以下「モータの不均等配置」という。)を採用することの利点などは明らかではない。
(ウ)そして,モータを時計回り側の側面に配置することと,反時計回り側に配置することは,勝手反対(左右反転)の関係であることが明らかであるから,当業者であれば,ロボットを製造する際にモータを取り付けるにあたり,モータの均等配置であれば,全てのモータを同様の作業動作で取り付けることができ,効率的であるのに対して,モータの不均等配置であれば,時計回り側に配置する動作と,それとは勝手反対に,反時計回り側に配置する動作が必要になり,作業手順がより複雑で非効率であることを当然に理解できるといえる。
(エ)そうすると,モータの不均等配置を採用することの利点も不明なまま,当業者が,製造の際の効率化を期待できる甲4発明に係るモータの均等配置に替えて,非効率が予測される甲3に係るモータの不均等配置を採用する動機があるとはいえない。
また,甲1-2及び甲5-9を参照しても,甲4発明に係るモータの均等配置に替えて,甲3に係るモータの不均等配置を採用する動機があるとはいえない。
したがって,甲4発明に上記甲3の技術事項を適用して,3つのリンク用モータ装置12のうちの2つは,リンク機構11の反時計回り側の側面に配置し,3つのリンク用モータ装置12のうちの残り1つは,リンク機構11の時計回り側の側面に配置するように設計変更することが,当業者にとって容易になし得るものとまではいうことができない。
イ 上記相違点2について検討する。
(ア)本件特許発明1は,「隣り合う2つの前記リンク機構の間のうち,前記駆動部が存在しない領域に対応する前記ベース部の一辺は,前記領域を形成する2つの前記リンク機構の前記領域側の側面と,対応する前記駆動軸の中心とが交差する点同士を結んだ直線よりも前記領域とは反対の内側に形成されている」との構成を有することにより,「隣り合う2つのリンク機構の間の空きスペースを大きく確保することができる。このため,この空きスペースを,例えば作業者の作業スペースとして活用することも可能になる。よって,使い勝手のよいパラレルロボットを提供できる。」(本件特許の明細書の段落【0010】を参照。)との作用効果を奏するものである。
そして,当該作用効果は,相違点1に係るモータの不均等配置を採用することにより,相違点2に係る「隣り合う2つの前記リンク機構の間のうち,前記駆動部が存在しない領域」が生じることを前提とすることは明らかである。
(イ)他方,甲4発明は,モータの均等配置を採用しているから,相違点2に係る「隣り合う2つの前記リンク機構の間のうち,前記駆動部が存在しない領域」が生じない。
そして,甲4発明が「前記駆動部が存在しない領域」を有していないのであるから,甲4発明において,相違点2に係る「前記領域を形成する2つの前記リンク機構の前記領域側の側面と,対応する前記駆動軸の中心とが交差する点同士を結んだ直線よりも前記領域とは反対の内側に形成」しようと試みる動機があるとはいえない。
また,甲1-3及び甲5-9を参照しても,甲4発明に相違点2に係る構成を適用する動機があるとはいえない。
(ウ)したがって,甲4発明に基づいて,相違点2に係る本件特許発明1の構成とすることが当業者にとって容易になし得るものとはいえない。
ウ 小括
したがって,本件特許発明1は,甲4発明に甲1-3及び甲5-9に記載された技術事項を適用して当業者が容易に発明できたものとはいえないから,本件特許発明1に係る特許を甲4に基づく進歩性違反の理由により取り消すことはできない。
同様に,本件特許発明1を引用する本件特許発明3-8は,上記相違点1,2を有するものであり,甲4発明に甲1-3及び甲5-9に記載された技術事項を適用して当業者が容易に発明できたものとはいえないから,本件特許発明3-8に係る特許を甲4に基づく進歩性違反の理由により取り消すことはできない。
(5)異議申立人の主張について
ア 異議申立人の主張の概要
異議申立人は,上記相違点1及び2に対して,おおむね以下のように主張している。
(ア)相違点1について
甲4発明においても,装置の小型化のため空きスペースを効率的に利用することは自明の技術課題として課されているといえるところ,当該課題解決のために,甲4発明に甲3に記載のモータ(駆動部)の配置を適用することに動機付けがある。(異議申立書の38ページ)
(イ)相違点2について
甲1のパラレルロボットは,本体部の底板部上にカメラを内蔵し,底板部の下のリンク機構の先端を撮影していることから,本体の底板部には,カメラの視界となる穴が設けられているといえ,その穴の少なくとも一辺は,「(駆動部が存在しない)前記領域を形成する2つの前記リンク機構の前記領域側の側面と,対応する前記駆動軸の中心とが交差する点同士を結んだ直線よりも前記領域とは反対の内側に形成されている」ように構成されているといえる,又は,カメラの視線がリンク機構の先端(手首)にできるだけ真上から届くように構成することは当業者が容易に想到し得る。(異議申立書の39ページ)
イ 異議申立人の主張の検討
(ア)相違点1に係る主張の検討
仮に,リンク機構間の空きスペースを効率的に利用するとの技術課題が自明であるとしても,甲3には,モータの不均等配置により当該技術課題が解決されることが記載も示唆もされていないから,甲4発明と甲3に接した当業者が両者を組み合わせる動機付けは見出せず,異議申立人の主張は採用できない。
(イ)相違点2に係る主張の検討
上記(2)オで示したとおり,甲1からは,3つのリンク機構を有するロボットにおいて,カメラを本体内に内蔵するとの技術事項が看取できるにとどまり,本体の底板部にカメラの視界となる穴が設けられているとか,その穴の一辺が「(駆動部が存在しない)前記領域を形成する2つの前記リンク機構の前記領域側の側面と,対応する前記駆動軸の中心とが交差する点同士を結んだ直線よりも前記領域とは反対の内側に形成されている」ように構成されていると解釈することはできない。
また,仮に,甲4発明に該甲1の技術事項を適用して,本体内にカメラを内蔵することが容易になし得るものであるとしても,甲4発明の略円盤状の基部材4の形状を設計変更して,「隣り合う2つの前記リンク機構の間のうち,前記駆動部が存在しない領域に対応する前記ベース部の一辺は,前記領域を形成する2つの前記リンク機構の前記領域側の側面と,対応する前記駆動軸の中心とが交差する点同士を結んだ直線よりも前記領域とは反対の内側に形成されている」構成とすることが,当業者にとって容易になし得るものということはできない。
第6 むすび
以上のとおり,請求項1,3ないし8に係る特許は,取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては,取り消すことができない。
また,他に請求項1,3ないし8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
さらに,請求項2は,上記のとおり,訂正により削除された。これにより,申立人による特許異議の申立てについて,請求項2に係る申立ては,申立ての対象が存在しないものとなったため,特許法120条の8第1項で準用する同法135条の規定により却下する。
よって,結論のとおり決定する。
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2020-700081