特許異議申立
2023-700404
情報処理方法及び情報処理装置
- 審判番号
- 2023-700404
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2018-018583
- 登録番号
- 7158862
- 請求日
- 2023年04月20日
- 審決日
- 2024年10月08日
- 公報発行日
- 2025年01月31日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】キヤノン株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人近島国際特許事務所
- 【異議申立人】佐々木 敬
- 審判長/審判官
- 審判長 刈間 宏信
- 審判官 田々井 正吾
- 審判官 大山 健
- 分類
- P1651.113-YAA(B25J) / P1651.121-YAA(B25J) / P1651.537-YAA(B25J)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第1項、特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第4項、特許法第126条第7項、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7158862号発明「情報処理方法及び情報処理装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7158862号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~23、25~26〕、24について訂正することを認める。
特許第7158862号の請求項1~9、12、15~26に係る特許を維持する。
特許第7158862号の請求項10~11、13~14に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7158862号の請求項1~26に係る特許(以下「本件特許」という。)についての出願は、平成30年2月5日に出願され、令和4年10月14日にその特許権の設定登録がされ、令和4年10月24日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議の申立ての主な経緯は、次のとおりである。
1 令和5年4月20日
特許異議申立人佐々木敬(以下「申立人」という。)による請求項1~26に係る特許に対する特許異議の申立て。
2 令和5年8月2日付け
取消理由を通知。
3 令和5年9月11日
特許権者キヤノン株式会社(以下「特許権者」という。)との面接審理を実施。
4 令和5年9月11~12日
特許権者との電話及び電子メールでの応対。
5 令和5年10月3日
特許権者による訂正請求(以下「先にした訂正請求」という。)と意見書の提出。
6 令和5年11月10日
申立人による意見書の提出。
7 令和6年1月16日
取消理由を通知(決定の予告)。
8 令和6年3月6日
特許権者との面接審理を実施。
9 令和6年3月19日
特許権者による訂正請求(以下「本件訂正請求」という。)と意見書の提出。
10 令和6年4月19日
特許権者による上記9の本件訂正請求の訂正請求書を補正する手続補正書(方式)の提出。
11 令和6年6月4日
申立人による意見書の提出。
12 令和6年7月31日付け
訂正拒絶理由を通知。
13 令和6年9月20日
特許権者による上記9の本件訂正請求の訂正請求書を補正する手続補正書と意見書(令和6年9月19日付け)の提出
本件訂正請求がされたため、先にした訂正請求は、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。
なお、上記13の手続補正書により、本件訂正請求に係る特許請求の範囲は補正されているが、その補正の内容は、実質的に特許請求の範囲について、請求項11を削除すること及び請求項11を引用する請求項について請求項11を引用しないものとすることを要旨とするものであり、申立人は、上記11において、本件訂正請求に対して意見書を提出しているから、補正された本件訂正請求について、改めて、申立人に意見書を提出する機会を与えることを要しないと判断した。
第2 本件訂正請求による訂正の適否
本件訂正請求による訂正(以下「本件訂正」という。)の適否について検討する。
1 請求の趣旨
本件訂正請求の趣旨は、本件特許の明細書及び特許請求の範囲を、令和6年9月20日提出の手続補正書により補正をした訂正請求書に添付した訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~26について訂正することを求めるものである。
2 一群の請求項〔1~23、25~26〕についての説明
訂正前の請求項1~23,25~26について、請求項2~23、25~26は、請求項1を直接的又は間接的に引用しているものであって、本件訂正によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項1~23、25~26に対応する訂正後の請求項〔1~23、25~26〕は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
3 独立特許要件
本件特許異議申立てにおいては、本件訂正前の全ての請求項1~26について特許異議申立てがされているので、本件訂正に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
4 一群の請求項〔1~23、25~26〕に係る訂正
(1)訂正事項
ア 訂正事項1
訂正前の請求項1における
「中間教示点群を複数設定し、前記中間教示点群に基づき複数の中間軌道を取得する取得工程と、前記取得工程で取得された前記中間軌道において評価値を取得する評価工程と、前記評価値に基づき前記中間軌道のうち所定の中間軌道を選択し、前記所定の中間軌道に基づいて前記軌道の更新を行う更新工程と、」
の記載を、
「複数の第1中間教示点を有する第1中間教示点群を設定し、前記第1中間教示点群の前記第1中間教示点に変位を与えることで複数の第2中間教示点群を取得し、前記複数の第2中間教示点群がそれぞれ有する第2中間教示点に基づき曲線補間することで複数の第1中間軌道を取得する第1取得工程と、前記第1取得工程で取得された前記複数の第1中間軌道において、前記ロボットアームと、前記ロボットアームが動作する空間に配置される物体との干渉に関する第1評価値を取得する第1評価工程と、前記第1評価値に基づき、前記ロボットアームと前記物体とが干渉を回避できる経路を規定する所定の第1中間軌道を選択する選択工程と、前記選択工程において選択した前記所定の第1中間軌道に対応する前記第2中間教示点群が有する前記第2中間教示点に変位を与えることで複数の第3中間教示点群を取得し、前記複数の第3中間教示点群がそれぞれ有する第3中間教示点に基づき曲線補間することで複数の第2中間軌道を取得する第2取得工程と、前記第2取得工程で取得された前記複数の第2中間軌道において、前記ロボットアームと前記物体とが干渉しているか否かを判定し、前記ロボットアームと前記物体とが干渉していないと判定された第2中間軌道において、前記ロボットアームを動作させる動作時間に関する第2評価値を取得する第2評価工程と、前記第2評価値に基づき、所定の第2中間軌道を選択し、前記所定の第2中間軌道に基づいて前記軌道の更新を行う更新工程と、」(なお、下線部は、訂正箇所について、特許権者が付したものである。訂正事項について、以下同様。)
に訂正する(請求項1を引用する請求項2~9、12、15~23、25~26についても同様に訂正する。)。
イ 訂正事項2
訂正前の請求項2における
「前記取得工程では、所定の中間教示点群が有する中間教示点に異なる変位を与えることで前記複数の中間教示点群を設定する、」
の記載を、
「前記第1取得工程および前記第2取得工程では、前記第1中間教示点群が有する前記第1中間教示点および前記第2中間教示点群が有する第2中間教示点に値を加算することで変位を与え、前記第2中間教示点群および前記第3中間教示点群を取得する、」
に訂正する(請求項2を引用する請求項3~9、12、15~23、25~26についても同様に訂正する。)。
ウ 訂正事項3
訂正前の請求項3における
「前記変位は相関のある乱数に基づいて付与される、」
との記載を、
「前記第1中間教示点群が有する隣り合う前記第1中間教示点および前記第2中間教示点群が有する隣り合う前記第2中間教示点に相関のある乱数に基づいて変位が付与される、」
に訂正する(請求項3を引用する請求項4~9、12、15~23、25~26についても同様に訂正する。)。
エ 訂正事項4
訂正前の請求項4における
「分散共分散行列に共分散に正の値を付与する」
との記載を、
「分散共分散行列における共分散に正の値を付与する」
に訂正する(請求項4を引用する請求項5~9、12、15~23、25~26についても同様に訂正する。)。
オ 訂正事項5
訂正前の請求項5における
「前記取得工程では、前記ロボットアームの駆動機構に関する物理的な制約条件を満たす前記中間軌道を取得する、」
との記載を、
「前記第1取得工程では、前記ロボットアームの駆動機構に関する物理的な制約条件を満たす前記複数の第1中間軌道を取得する、」
に訂正する(請求項5を引用する請求項6~9、12、15~23、25~26についても同様に訂正する。)。
カ 訂正事項6
訂正前の請求項8における
「前記評価工程では、前記中間軌道における、前記ロボットアームと、前記ロボットアームの動作する空間に配置される物体と、の間の干渉量に基づき前記評価値を取得する、」
との記載を、
「前記第1評価工程では、前記複数の中間軌道における、前記ロボットアームと前記物体との間の干渉量に基づき前記第1評価値を取得する、」
に訂正する(請求項8を引用する請求項9、12、15~23、25~26についても同様に訂正する。)。
キ 訂正事項7
請求項10を削除する。
ク 訂正事項8
請求項11を削除する。
ケ 訂正事項9
訂正前の請求項12における
「請求項1から11のいずれか1項に記載の情報処理方法において、前記取得工程、前記評価工程、及び前記更新工程を繰り返し実行する、」
との記載を、
「請求項1から9のいずれか1項に記載の情報処理方法において、前記第1取得工程、前記第1評価工程、前記選択工程、前記第2取得工程、前記第2評価工程、及び前記更新工程を繰り返し実行する、」
に訂正する(請求項12を引用する請求項15~23、25~26についても同様に訂正する。)。
コ 訂正事項10
請求項13を削除する。
サ 訂正事項11
請求項14を削除する。
シ 訂正事項12
訂正前の請求項15に
「請求項1から14のいずれか1項に記載の情報処理方法において、前記更新工程において、前記評価値が所定条件を満たすことを条件として、前記軌道の更新を停止する、」
と記載されているのを、
「請求項1から9のいずれか1項、または請求項12に記載の情報処理方法において、前記更新工程において、前記第2評価値が所定条件を満たすことを条件として、前記軌道の更新を停止する、」
に訂正する(請求項15を引用する請求項16~23、25~26についても同様に訂正する。)。
ス 訂正事項13
訂正前の請求項16における
「前記所定条件は、前記軌道の更新を所定回数実行しても前記評価値の変化が一定となる場合である、」
との記載を、
「前記所定条件は、前記軌道の更新を所定回数実行しても前記第2評価値の変化が一定となる場合である、」
に訂正する。
セ 訂正事項14
訂正前の請求項17における
「請求項1から14のいずれか1項に記載の情報処理方法において、」
との記載を、
「請求項1から9のいずれか1項、または請求項12に記載の情報処理方法において、」
に訂正する。
ソ 訂正事項15
訂正前の請求項18における
「請求項1から17のいずれか1項に記載の情報処理方法において、前記取得工程において、ポテンシャル法、PRM、RRT、可視グラフ法、セル分割法、ボロノイ図法、の内の少なくとも1つを用いて前記複数の中間軌道を取得する、」
との記載を、
「請求項1から9のいずれか1項、または請求項12、または請求項15から17のいずれか1項に記載の情報処理方法において、前記第1取得工程において、ポテンシャル法、PRM、RRT、可視グラフ法、セル分割法、ボロノイ図法、の内の少なくとも1つを用いて前記複数の第1中間軌道を取得する、」
に訂正する(請求項18を引用する請求項19~23、25~26についても同様に訂正する。)。
タ 訂正事項16
訂正前の請求項19における
「請求項1から18のいずれか1項に記載の情報処理方法において、前記取得工程において、Spline補間、B-Spline補間、ベジェ曲線補間、の内少なくとも1つを用いて前記複数の中間軌道を平滑化する、」
との記載を、
「請求項1から9のいずれか1項、または請求項12、または請求項15から18のいずれか1項に記載の情報処理方法において、前記第1取得工程および前記第2取得工程において、Spline補間、B-Spline補間、ベジェ曲線補間、の内少なくとも1つを用いて前記複数の第1中間軌道および前記第2中間軌道を平滑化する、」
に訂正する(請求項19を引用する請求項20~23、25~26についても同様に訂正する。)。
チ 訂正事項17
訂正前の請求項20における
「請求項1から19のいずれか1項に記載の情報処理方法において、」
との記載を、
「請求項1から9のいずれか1項、または請求項12、または請求項15から19のいずれか1項に記載の情報処理方法において、」
に訂正する。
ツ 訂正事項18
訂正前の請求項21における
「請求項1から19のいずれか1項に記載の情報処理方法において、」
との記載を、
「請求項1から9のいずれか1項、または請求項12、または請求項15から20のいずれか1項に記載の情報処理方法において、」
に訂正する。
テ 訂正事項19
訂正前の請求項22における
「請求項1から21のいずれか1項に記載の情報処理方法」
との記載を、
「請求項1から9のいずれか1項、または請求項12、または請求項15から21のいずれか1項に記載の情報処理方法」
に訂正する。
ト 訂正事項20
訂正前の請求項25における
「請求項1から22のいずれか1項に記載の情報処理方法を用いて」
との記載を、
「請求項1から9のいずれか1項、または請求項12、または請求項15から21のいずれか1項に記載の情報処理方法を用いて」
に訂正する。
ナ 訂正事項21
訂正前の請求項26における
「請求項1から22のいずれか1項に記載の情報処理方法を用いて」
との記載を、
「請求項1から9のいずれか1項、または請求項12、または請求項15から21のいずれか1項に記載の情報処理方法を用いて」
に訂正する。
(2)一群の請求項の訂正事項であること
訂正事項1~21は、上記2の一群の請求項〔1~23、25~26〕を訂正するものである。
(3)訂正事項の訂正要件
ア 訂正事項1
(ア)訂正の目的
訂正事項1は、訂正前の請求項1のa「取得工程」、b「評価工程」、c「更新工程」について
a 訂正前の「中間教示点群を複数設定し、前記中間教示点群に基づき複数の中間軌道を取得する取得工程」を、
「複数の第1中間教示点を有する第1中間教示点群を設定し、前記第1中間教示点群の前記第1中間教示点に変位を与えることで複数の第2中間教示点群を取得し、前記複数の第2中間教示点群がそれぞれ有する第2中間教示点に基づき曲線補間することで複数の第1中間軌道を取得する第1取得工程」及び「前記選択工程において選択した前記所定の第1中間軌道に対応する前記第2中間教示点群が有する前記第2中間教示点に変位を与えることで複数の第3中間教示点群を取得し、前記複数の第3中間教示点群がそれぞれ有する第3中間教示点に基づき曲線補間することで複数の第2中間軌道を取得する第2取得工程」
に限定し、
b 訂正前の「前記取得工程で取得された前記中間軌道において評価値を取得する評価工程」を、
「前記第1取得工程で取得された前記複数の第1中間軌道において、前記ロボットアームと、前記ロボットアームが動作する空間に配置される物体との干渉に関する第1評価値を取得する第1評価工程」及び「前記第2取得工程で取得された前記複数の第2中間軌道において、前記ロボットアームと前記物体とが干渉しているか否かを判定し、前記ロボットアームと前記物体とが干渉していないと判定された第2中間軌道において、前記ロボットアームを動作させる動作時間に関する第2評価値を取得する第2評価工程」
に限定し、
c 訂正前の「前記評価値に基づき前記中間軌道のうち所定の中間軌道を選択し、前記所定の中間軌道に基づいて前記軌道の更新を行う更新工程」を、
「前記第1評価値に基づき、前記ロボットアームと前記物体とが干渉を回避できる経路を規定する所定の第1中間軌道を選択する選択工程」及び「前記第2評価値に基づき、所定の第2中間軌道を選択し、前記所定の第2中間軌道に基づいて前記軌道の更新を行う更新工程」
に限定するものであり、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(イ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項1は、上記(ア)の訂正前の各工程を限定したものであり、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。
(ウ)願書に添付した明細書、特許請求の範囲、又は図面(以下「本件明細書等」という。)に記載した事項の範囲内の訂正であること
a 上記(ア)aの限定に関して、本件明細書の<実施形態1>の項においては、段落【0040】に複数の第1中間教示点を有する第1中間教示点群を設定すること(図4のステップS101)が、段落【0044】に第1中間教示点群の前記第1中間教示点に変位を与えることで複数の第2中間教示点群を取得すること(同S102)が、段落【0046】に複数の第2中間教示点群がそれぞれ有する第2中間教示点に基づき曲線補間することで複数の第1中間軌道を取得すること(同S103)が記載され、これらの記載は、「複数の第1中間教示点を有する第1中間教示点群を設定し、前記第1中間教示点群の前記第1中間教示点に変位を与えることで複数の第2中間教示点群を取得し、前記複数の第2中間教示点群がそれぞれ有する第2中間教示点に基づき曲線補間することで複数の第1中間軌道を取得する第1取得工程」に対応する事項であることが認められる。
そして、<実施形態2>の項においては、段落【0063】、【0064】の記載からみて、<実施形態1>の最適化処理を経て出力された軌道(第1中間軌道)の中間教示点群(第2中間教示点群)に対して、<実施形態1>と同様に、図4のステップS101~S103の処理を行うことが理解されるから、「前記選択工程において選択した前記所定の第1中間軌道に対応する前記第2中間教示点群が有する前記第2中間教示点に変位を与えることで複数の第3中間教示点群を取得し、前記複数の第3中間教示点群がそれぞれ有する第3中間教示点に基づき曲線補間することで複数の第2中間軌道を取得する第2取得工程」に対応する事項が記載されていることが認められる。
b 上記(ア)bの限定に関して、本件明細書の<実施形態1>の項における段落【0044】、【0050】~【0052】には、第1の中間教示点群から生成した第2の中間教示点群に対応する軌道(第1中間軌道)において、ロボットアームと障害物の干渉に関する評価値(第1評価値)を取得すること(図4のステップS107)が記載されており、当該S107の記載は、「前記第1取得工程で取得された前記複数の第1中間軌道において、前記ロボットアームと、前記ロボットアームが動作する空間に配置される物体との干渉に関する第1評価値を取得する第1評価工程」に対応する事項であることが認められる。
そして、<実施形態2>の項における段落【0064】~【0067】には、<実施形態1>の最適化処理を経て出力された中間教示点群に対応する軌道(第1中間軌道)から生成した新たな中間教示点に対応する軌道(第2中間軌道)について、既にロボットアームが障害物と干渉しているか否かを判定(図4のステップS104)し、干渉していないと判定済みのものについて、動作時間を評価値(第2評価値)として軌道(第2中間軌道)の評価を行うこと(同S107)が記載されており、<実施形態2>における、これらのS104~S107の記載は、「前記第2取得工程で取得された前記複数の第2中間軌道において、前記ロボットアームと前記物体とが干渉しているか否かを判定し、前記ロボットアームと前記物体とが干渉していないと判定された第2中間軌道において、前記ロボットアームを動作させる動作時間に関する第2評価値を取得する第2評価工程」に対応する事項であることが認められる。
c 上記(ア)cの限定に関して、<実施形態1>の項における段落【0054】には、ロボットアームと障害物の干渉に関する評価値(第1評価値)に基づき中間教示点群を移動させること(第1中間軌道を選択すること、図4のステップS108)が記載され、当該記載は、「前記第1評価値に基づき、前記ロボットアームと前記物体とが干渉を回避できる経路を規定する所定の第1中間軌道を選択する選択工程」に対応する事項であることが認められる。
そして、<実施形態2>の項における段落【0063】から、<実施形態1>と同様に、図4のステップS108の処理を行い、中間教示点群を移動させること(軌道の更新を行うこと)が理解されるから、「前記第2評価値に基づき、所定の第2中間軌道を選択し、前記所定の第2中間軌道に基づいて前記軌道の更新を行う更新工程」に対応する事項が記載されていることが認められる。
d よって、上記a~cより、訂正事項1で請求項1に導入された事項は、本件明細書の記載、及び図4~7の図示内容から導き出される内容であるから、訂正事項1は、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。
イ 訂正事項2
(ア)訂正の目的
訂正事項2は、訂正前の請求項2について
a 訂正前の「取得工程」を訂正事項1に合わせて「第1取得工程及び第2取得工程」と明確化し、
b 訂正前の「所定の中間教示点群が有する中間教示点に異なる変位を与えることで前記複数の中間教示点群を設定する、」を、「前記第1中間教示点群が有する前記第1中間教示点および前記第2中間教示点群が有する第2中間教示点に値を加算することで変位を与え、前記第2中間教示点群および前記第3中間教示点群を取得する、」として、「中間教示点群」が「第1中間教示点群」、「第2中間教示点群」、及び「第3中間教示点群」であり、「中間教示点」が「第1中間教示点」、及び「第2中間教示点」であることを訂正事項1に合わせて明確化し、
c 訂正前の「異なる変位を与える」ことについて、「値を加算する」と具体化して下位概念化するものである。
よって、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮、及び同項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
(イ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項2は、上記(ア)における明確化、及び下位概念化を図るものであり、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
(ウ)本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項2の「値を加算する」という事項(上記(ア)c)について、本件明細書の段落【0044】には「この変位を与える方法としては、例えば、中間教示点の1つ1つに対し、空間的な変位を与えるためのパラメータとして乱数値を足し込む(加算する)方法が考えられる。」との、値を加算する旨の記載がある。
また、訂正事項2の上記(ア)a及びbに係る事項は、訂正事項1で説示したとおり、本件明細書の記載、及び図4~7の図示内容から導き出される内容である
よって、訂正事項2で請求項2に導入された事項は、本件明細書の記載、及び図4~7の図示内容から導き出される内容であるから、訂正事項2は、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。
ウ 訂正事項3
(ア)訂正の目的
訂正事項3は、訂正前の請求項3の「前記変位は相関のある乱数に基づいて付与される、」の「相関のある乱数」に関する事項について、「前記第1中間教示点群が有する隣り合う前記第1中間教示点および前記第2中間教示点群が有する隣り合う前記第2中間教示点に相関のある」乱数であることを付加して限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(イ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項3は、上記(ア)における事項の付加を内容とし、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。
(ウ)本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項3について、本件明細書の段落【0045】には「そこで、空間的な変位を与えるために隣り合う中間教示点に作用させる乱数の間に相関を与え、これにより軌道(経路)を平滑化することができる。」との、相関のある乱数に基づく変位が隣り合う中間教示点に付与される旨の記載がある。
よって、訂正事項3で請求項3に導入された事項は、この記載から導き出される内容であるから、訂正事項3は、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。
エ 訂正事項4
(ア)訂正の目的
訂正事項4は、訂正前の請求項4の発明特定事項における「分散共分散行列に共分散に正の値を付与する」が日本語として意味が不明である旨の取消理由が通知されたことに対応して、「分散共分散行列に」を「分散共分散行列における」として明確化を図るものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
(イ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項4は、上記(ア)の明確化を内容とするものであり、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。
(ウ)本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項4について、本件明細書の段落【0045】には「このように、分散共分散行列における共分散に、正の値を与えることで、隣り合う中間教示点の関節値に相関を持たせることができ、」との記載がある。
よって、訂正事項4で請求項4に導入された事項は、この記載から導き出される内容であるから、訂正事項4は、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。
オ 訂正事項5
(ア)訂正の目的
訂正事項5は、訂正前の請求項5における「前記取得工程では、前記ロボットアームの駆動機構に関する物理的な制約条件を満たす前記中間軌道を取得する、」の事項について、「取得工程」の用語を「第1取得工程」と訂正して、訂正事項1で訂正された請求項1に対応させ、同様に「中間軌道」の用語を「複数の第1中間軌道」と訂正して、訂正事項1で訂正された請求項1に対応させ、それぞれ明確化するものであり、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
(イ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項5は、上記(ア)の明確化を内容とし、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。
(ウ)本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項5について、本件明細書の段落【0047】には、<実施形態1>の取得工程(第1取得工程)において、ロボットアームの駆動に関する「機構が可動範囲外にはみ出さないこと」、あるいは「ロボットアームの関節トルク制約、関節角速度制約、関節角加速度制約、ジャーク制約、手先速度制約、ないし手先加速度制約」などの物理的制約条件を満たす軌道(第1中間軌道)を取得することの記載があり、段落【0048】、図5(d)の図示内容から軌道(第1中間軌道)は複数保存されることが理解され、上記(ア)の明確化に関する事項が記載されている。
よって、訂正事項5で請求項5に導入された事項は、これらの記載、及び図示内容から導き出される内容であるから、訂正事項5は、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。
カ 訂正事項6
(ア)訂正の目的
訂正事項6は、訂正前の請求項8における「評価工程」、「中間軌道」、及び「評価値」の用語について、それぞれ、「第1評価工程」、「複数の中間軌道」、及び「第1評価値」と訂正し、訂正事項1で訂正された請求項1に対応させ、明確化するものであり、また、「物体と、の間の」を「前記物体との間」と訂正して、請求項8に記載した「干渉量」が訂正後の請求項1に記載した「ロボットアーム」と「物体」との間のものであることを明確化するものであり、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
(イ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項6は、上記(ア)の明確化を内容とし、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。
(ウ)本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項6について、本件明細書の段落【0067】には「図7(d)の例では、動作時間に係る第2の中間教示点群の評価値は、R11、R12…R1nでは180、R21、R22…R2nでは120、R31、R32…R3nでは150、となっている。ここで最も評価値が良いのは干渉量の小さい(動作時間値の小さい)中間教示点群R21、R22…R2nである。」との記載があり、当該記載は<第1の実施形態>における評価工程(第1評価工程)において、複数の中間軌道における、ロボットアームと物体との間の干渉量に基づき評価値(第1評価値)を取得することについて示されている。
よって、訂正事項6で請求項8に導入された事項は、これらの記載、及び図示内容から導き出される内容であるから、訂正事項6は、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。
キ 訂正事項7
(ア)訂正の目的
訂正事項7は、請求項10を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(イ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項7は、上記(ア)の請求項の削除を内容とし、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。
(ウ)本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項7は、請求項を削除するものであるから、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。
ク 訂正事項8
(ア)訂正の目的
訂正事項8は、請求項11を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(イ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項8は、上記(ア)の請求項の削除を内容とし、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。
(ウ)本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項8は、請求項を削除するものであるから、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。
ケ 訂正事項9
(ア)訂正の目的
a 訂正事項9において、訂正前の請求項12における「請求項1から11のいずれか1項に記載の情報処理方法において、」を「請求項1から9のいずれか1項に記載の情報処理方法において、」と訂正することは、請求項12において請求項10~11を引用していた部分を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
b 訂正事項9において、訂正前の請求項12における「前記取得工程、前記評価工程、及び前記更新工程を繰り返し実行する、」を「前記第1取得工程、前記第1評価工程、前記選択工程、前記第2取得工程、前記第2評価工程、及び前記更新工程を繰り返し実行する、」と訂正することは、訂正前の請求項12の「前記取得工程、前記評価工程、及び前記更新工程」を、訂正事項1で訂正された請求項1に整合させて「前記第1取得工程、前記第1評価工程、前記選択工程、前記第2取得工程、前記第2評価工程、及び前記更新工程」に整合させて、請求項1を引用する請求項12の明確化を図るものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
(イ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項9は、上記(ア)aにおいては請求項12における請求項10~11を引用していた部分を削除し、(ア)bにおいては、請求項12の記載を、請求項1に合わせて明確化するものであり、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。
(ウ)本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項9の上記(ア)aの訂正内容は、請求項12における請求項10~11を引用していた部分を削除するものであるから、本件明細書等に記載した事項の範囲内のものであることが明らかである。
そして、訂正事項9の上記(ア)bの訂正内容は、訂正後の請求項12に記載した第1取得工程、第1評価工程、選択工程、第2取得工程、第2評価工程、及び更新工程が、訂正後の請求項1に対応するものであって、訂正事項1について上記ア(ウ)で検討したのと同様のことがいえるから、上記(ア)bの訂正内容は、本件明細書等に記載した事項の範囲内のものであるといえる。
以上より、上記(ア)a~bのいずれも本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であるから、訂正事項9は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。
コ 訂正事項10
(ア)訂正の目的
訂正事項10は、請求項13を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(イ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項10は、上記(ア)の請求項の削除を内容とし、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。
(ウ)本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項10は、請求項を削除するものであるから、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。
サ 訂正事項11
(ア)訂正の目的
訂正事項11は、請求項14を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(イ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項11は、上記(ア)の請求項の削除を内容とし、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。
(ウ)本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項11は、請求項を削除するものであるから、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。
シ 訂正事項12
(ア)訂正の目的
a 訂正事項12において、訂正前の請求項15における「請求項1から14のいずれか1項に記載の情報処理方法において、」を「請求項1から9のいずれか1項、または請求項12に記載の情報処理方法において、」と訂正することは、請求項15において請求項10~11、13~14を引用していた部分を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
b 訂正事項12において、訂正前の請求項15における「前記更新工程において、前記評価値が所定条件を満たすことを条件として、前記軌道の更新を停止する、」を「前記更新工程において、前記第2評価値が所定条件を満たすことを条件として、前記軌道の更新を停止する、」と訂正することは、訂正前の請求項15の「評価値」について、訂正事項1で訂正された請求項1に評価値として新たに記載した「第1評価値」及び「第2評価値」のうち、「第2評価値」に限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(イ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項12は、上記(ア)aにおいては、請求項15における請求項10~11、13~14を引用していた部分を削除し、(ア)bにおいては、請求項15の内容を訂正後の請求項1に合わせて限定するものであり、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。
(ウ)本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項12の上記(ア)aの訂正内容は、請求項15における請求項10~11、13~14を引用していた部分を削除するものであるから、本件明細書等に記載した事項の範囲内のものであることが明らかである。
そして、訂正事項12の上記(ア)bの訂正内容について、訂正後の請求項12に記載した「第2評価値」は、訂正後の請求項1に対応するものであるから、訂正事項1について上記ア(ウ)で検討したのと同様に、上記(ア)bの訂正内容は、本件明細書等に記載した事項の範囲内のものであるといえる。
以上より、上記(ア)a~bのいずれも本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であるから、訂正事項12は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。
ス 訂正事項13
(ア)訂正の目的
訂正事項13において、訂正前の請求項16における「評価値」を「第2評価値」と訂正することは、訂正前の請求項16の「評価値」について、訂正事項1で訂正された請求項1に評価値として新たに記載した「第1評価値」及び「第2評価値」のうち、「第2評価値」に限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(イ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項13は、請求項16の内容を訂正後の請求項1に合わせて限定するものであり、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。
(ウ)本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項13について、訂正後の請求項16に記載した「第2評価値」は、訂正後の請求項1に対応するものであるから、訂正事項1について上記ア(ウ)で検討したのと同様に、本件明細書等に記載した事項の範囲内のものであるといえる。
よって、訂正事項13は、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であるから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。
セ 訂正事項14
(ア)訂正の目的
訂正事項14において、訂正前の請求項17における「請求項1から14のいずれか1項に記載の情報処理方法において、」を「請求項1から9のいずれか1項、または請求項12に記載の情報処理方法において、」と訂正することは、請求項17において訂正前の請求項10~11、13~14を引用していた部分を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(イ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項14は、訂正前の請求項17について、請求項10~11、13~14を引用していた部分を削除することを内容とし、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。
(ウ)本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項14は、訂正前の請求項17について、請求項10~11、13~14を引用していた部分を削除するものであるから、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。
ソ 訂正事項15
(ア)訂正の目的
a 訂正事項15において、訂正前の請求項18における「請求項1から17のいずれか1項に記載の情報処理方法において、」を「請求項1から9のいずれか1項、または請求項12、または請求項15から17のいずれか1項に記載の情報処理方法において、」と訂正することは、請求項18において請求項10~11、13~14を引用していた部分を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
b 訂正事項15において、訂正前の請求項18における「取得工程」を「第1取得工程」に訂正することは、訂正前の請求項18の「取得工程」について、訂正事項1で訂正された請求項1に取得工程として新たに記載した「第1取得工程」及び「第2取得工程」のうち、「第1取得工程」に限定するものであり、そして、訂正前の請求項18における「中間軌道」を「第1中間軌道」に訂正することは、訂正前の請求項18の「中間軌道」について、訂正事項1で訂正された請求項1に中間軌道として新たに記載した「第1中間軌道」及び「第2中間軌道」のうち、「第1中間軌道」に限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(イ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項15は、上記(ア)aにおいては、請求項18が請求項10~11、13~14を引用していた部分を削除し、(ア)bにおいては、請求項18の記載を、訂正後の請求項1に合わせて限定するものであり、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。
(ウ)本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項15の上記(ア)aの訂正内容は、請求項18における請求項10~11、13~14を引用していた部分を削除するものであるから、本件明細書等に記載した事項の範囲内のものであることが明らかである。
そして、訂正事項15の上記(ア)bの訂正内容について、訂正後の請求項18に記載した「第1取得工程」及び「第1中間軌道」は、訂正後の請求項1に対応するものであるから、訂正事項1について上記ア(ウ)で検討したのと同様に、本件明細書等に記載した事項の範囲内のものであるといえる。
以上より、上記(ア)a~bのいずれも本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であるから、訂正事項15は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。
タ 訂正事項16
(ア)訂正の目的
a 訂正事項16において、訂正前の請求項19における「請求項1から18のいずれか1項に記載の情報処理方法において、」を「請求項1から9のいずれか1項、または請求項12、または請求項15から18のいずれか1項に記載の情報処理方法において、」と訂正することは、請求項19において請求項10~11、13~14を引用していた部分を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
b 訂正事項16において、訂正前の請求項19における「前記取得工程」を「前記第1取得工程および前記第2取得工程」に訂正することは、訂正前の請求項19の「取得工程」について、訂正事項1で訂正された請求項1に取得工程として新たに記載した「第1取得工程」及び「第2取得工程」に対応させて請求項1を引用する請求項19を明確化するものであり、そして、訂正前の請求項19における「前記複数の中間軌道」を「前記複数の第1中間軌道および前記第2中間軌道」に訂正することは、訂正前の請求項19」の「中間軌道」について、訂正事項1で訂正された請求項1に中間軌道として新たに記載した「第1中間軌道」及び「第2中間軌道」に対応させて請求項1を引用する請求項19を明確化するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
(イ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項16は、上記(ア)aにおいては、請求項19において請求項10~11、13~14を引用していた部分を削除し、(ア)bにおいては、請求項19の記載を、訂正後の請求項1に合わせて明確化するものであり、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。
(ウ)本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項16の上記(ア)aの訂正内容は、請求項19における請求項10~11、13~14を引用していた部分を削除するものであるから、本件明細書等に記載した事項の範囲内のものであることが明らかである。
そして、訂正事項16の上記(ア)bの訂正内容について、訂正後の請求項19に記載した「第1取得工程」及び「第1中間軌道」は、訂正後の請求項1に対応するものであるから、訂正事項1について上記ア(ウ)で検討したのと同様に、本件明細書等に記載した事項の範囲内のものであるといえる。
以上より、上記(ア)a~bのいずれも本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であるから、訂正事項16は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。
チ 訂正事項17~19
(ア)訂正の目的
訂正事項17~19は、それぞれ訂正前の請求項20~22について、請求項10~11、13~14を引用していた部分を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(イ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項17~19は、訂正前の請求項20~22について、請求項10~11、13~14を引用していた部分を削除することを内容とし、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。
(ウ)本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項17~19は、訂正前の請求項20~22について、請求項10~11、13~14を引用していた部分を削除するものであるから、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。
ツ 訂正事項20~21
(ア)訂正の目的
訂正事項20~21は、それぞれ訂正前の請求項25~26について、請求項10~11、13~14、22を引用していた部分を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(イ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項20~21は、訂正前の請求項25~26について、請求項10~11、13~14、22を引用していた部分を削除することを内容とし、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。
(ウ)本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項20~21は、訂正前の請求項25~26について、請求項10~11、13~14、22を引用していた部分を削除するものであるから、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。
5 請求項24に係る訂正
(1)訂正事項22
訂正前の請求項24における「前記第1位置から前記第2位置までの経路を規定する中間教示点群を複数設定し、前記中間教示点群に基づき複数の中間軌道を取得し、取得された前記中間軌道において評価値を取得し、前記評価値に基づき前記中間軌道のうち所定の中間軌道を選択し、前記所定の中間軌道に基づいて前記軌道の更新を行う、」
との記載を、
「前記第1位置から前記第2位置までの経路を規定する複数の第1中間教示点を有する第1中間教示点群を設定し、前記第1中間教示点群の前記第1中間教示点に変位を与えることで複数の第2中間教示点群を取得し、前記複数の第2中間教示点群がそれぞれ有する第2中間教示点に基づき曲線補間することで複数の第1中間軌道を取得し、取得された前記複数の第1中間軌道において、前記ロボットアームと、前記ロボットアームが動作する空間に配置される物体との干渉に関する第1評価値を取得し、前記第1評価値に基づき、前記ロボットアームと前記物体とが干渉を回避できる経路を規定する所定の第1中間軌道を選択し、選択した前記所定の第1中間軌道に対応する前記第2中間教示点群が有する前記第2中間教示点に変位を与えることで複数の第3中間教示点群を取得し、前記複数の第3中間教示点群がそれぞれ有する第3中間教示点に基づき曲線補間することで複数の第2中間軌道を取得し、取得された前記複数の第2中間軌道において、前記ロボットアームと前記物体とが干渉しているか否かを判定し、前記ロボットアームと前記物体とが干渉していないと判定された第2中間軌道において、前記ロボットアームを動作させる動作時間に関する第2評価値を取得し、前記第2評価値に基づき、所定の第2中間軌道を選択し、前記所定の第2中間軌道に基づいて前記軌道の更新を行う、」
に訂正する。
(2)訂正事項22の訂正要件
ア 訂正の目的
訂正事項22は、訂正前の請求項24のa’「中間軌道を取得」すること、b’「評価値を取得」すること、及びc’「軌道の更新」を行うことに対して、上記請求項1のそれぞれa「取得工程」、b「評価工程」、及びc「更新工程」に対する訂正事項1の訂正と同様に訂正を行うものであり、上記4(3)ア(ア)で訂正事項1について検討したのと同様に、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項22は、上記アのとおり、訂正事項1と同様に、請求項24に対して特許請求の範囲の減縮を行うものであり、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しないから、上記4(3)ア(イ)で検討したのと同様に、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。
ウ 本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項22で、請求項24に導入された事項は、上記訂正事項1で導入された事項と実質的に同じであるから、訂正事項22は上記訂正事項1と同様に、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、上記4(3)ア(ウ)で検討したのと同様に、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。
6 明細書に係る訂正
(1)訂正事項23
訂正前の明細書の段落[0013]における
「本発明の一態様は、第1位置および第2位置の間でロボットアームを動作させる軌道を取得する情報処理方法において、前記第1位置から前記第2位置までの経路を規定する中間教示点群を複数設定し、前記中間教示点群に基づき複数の中間軌道を取得する取得工程と、前記取得工程で取得された前記中間軌道において評価値を取得する評価工程と、前記評価値に基づき前記中間軌道のうち所定の中間軌道を選択し、前記所定の中間軌道に基づいて前記軌道の更新を行う更新工程と、を有している、ことを特徴とする情報処理方法である。」
との記載を、
「本発明の一態様は、第1位置および第2位置の間でロボットアームを動作させる軌道を取得する情報処理方法において、前記第1位置から前記第2位置までの経路を規定する複数の第1中間教示点を有する第1中間教示点群を設定し、前記第1中間教示点群の前記第1中間教示点に変位を与えることで複数の第2中間教示点群を取得し、前記複数の第2中間教示点群がそれぞれ有する第2中間教示点に基づき曲線補間することで複数の第1中間軌道を取得する第1取得工程と、前記第1取得工程で取得された前記複数の第1中間軌道において、前記ロボットアームと、前記ロボットアームが動作する空間に配置される物体との干渉に関する第1評価値を取得する第1評価工程と、前記第1評価値に基づき、前記ロボットアームと前記物体とが干渉を回避できる経路を規定する所定の第1中間軌道を選択する選択工程と、前記選択工程において選択した前記所定の第1中間軌道に対応する前記第2中間教示点群が有する前記第2中間教示点に変位を与えることで複数の第3中間教示点群を取得し、前記複数の第3中間教示点群がそれぞれ有する第3中間教示点に基づき曲線補間することで複数の第2中間軌道を取得する第2取得工程と、前記第2取得工程で取得された前記複数の第2中間軌道において、前記ロボットアームと前記物体とが干渉しているか否かを判定し、前記ロボットアームと前記物体とが干渉していないと判定された第2中間軌道において、前記ロボットアームを動作させる動作時間に関する第2評価値を取得する第2評価工程と、前記第2評価値に基づき、所定の第2中間軌道を選択し、前記所定の第2中間軌道に基づいて前記軌道の更新を行う更新工程と、を有している、ことを特徴とする情報処理方法である。」
に訂正する。
(2)明細書の訂正と関係する請求項
訂正前の明細書の段落【0013】には、訂正前の請求項1に係る課題を解決するための手段が記載され、また、請求項24は情報処理装置に係る発明である点で、情報処理方法に係る発明である請求項1と異なるが、課題を解決する手段の内容は実質的に相違しない。
そして、本件訂正請求は請求項ごとに訂正を請求するものであるところ、訂正事項23は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第4項の明細書の訂正に係る請求項を含む一群の請求項である請求項1~23、25~26、及び請求項24の全てについて訂正をするものである。
(3)訂正事項23の訂正要件
ア 訂正の目的
訂正事項23は、訂正事項1で訂正された請求項1に、明細書の段落【0013】の内容を対応させて、訂正後の請求項1との不整合を解消するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項23は、上記アの事項を目的とし、訂正後の明細書の段落【0013】は、請求項1に対応した内容となる。
よって、上記4(3)ア(イ)で検討したのと同様に、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。
ウ 本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項23で明細書の段落【0013】に導入された事項は、上記訂正事項1で導入された事項と同じであるから、訂正事項23は上記訂正事項1と同様に、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。
7 小括
以上のとおりであるから、本件訂正の訂正事項1~23は、いずれも特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」、又は同第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものであり、同法同条第9項で準用する同法第126条第5~6項の規定に適合するものである。
したがって、明細書及び特許請求の範囲を、本件訂正請求の訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~23、25~26〕、24について訂正することを認める。
第3 本件特許発明
上記第2のとおり、本件訂正は認められたから、本件特許の請求項1~9、12、15~26に係る発明(以下、請求項1の特許に係る発明を「本件特許発明1」、他の請求項○に係る発明を同様に「本件特許発明○」といい、まとめて「本件特許発明」ということがある。)は、本件訂正請求の訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲の請求項1~26(請求項10~11、13~14は削除。)に記載した以下の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
第1位置および第2位置の間でロボットアームを動作させる軌道を取得する情報処理方法において、
前記第1位置から前記第2位置までの経路を規定する複数の第1中間教示点を有する第1中間教示点群を設定し、前記第1中間教示点群の前記第1中間教示点に変位を与えることで複数の第2中間教示点群を取得し、前記複数の第2中間教示点群がそれぞれ有する第2中間教示点に基づき曲線補間することで複数の第1中間軌道を取得する第1取得工程と、
前記第1取得工程で取得された前記複数の第1中間軌道において、前記ロボットアームと、前記ロボットアームが動作する空間に配置される物体との干渉に関する第1評価値を取得する第1評価工程と、
前記第1評価値に基づき、前記ロボットアームと前記物体とが干渉を回避できる経路を規定する所定の第1中間軌道を選択する選択工程と、
前記選択工程において選択した前記所定の第1中間軌道に対応する前記第2中間教示点群が有する前記第2中間教示点に変位を与えることで複数の第3中間教示点群を取得し、前記複数の第3中間教示点群がそれぞれ有する第3中間教示点に基づき曲線補間することで複数の第2中間軌道を取得する第2取得工程と、
前記第2取得工程で取得された前記複数の第2中間軌道において、前記ロボットアームと前記物体とが干渉しているか否かを判定し、前記ロボットアームと前記物体とが干渉していないと判定された第2中間軌道において、前記ロボットアームを動作させる動作時間に関する第2評価値を取得する第2評価工程と、
前記第2評価値に基づき、所定の第2中間軌道を選択し、前記所定の第2中間軌道に基づいて前記軌道の更新を行う更新工程と、を有している、
ことを特徴とする情報処理方法。
【請求項2】
請求項1に記載の情報処理方法において、
前記第1取得工程および前記第2取得工程では、前記第1中間教示点群が有する前記第1中間教示点および前記第2中間教示点群が有する第2中間教示点に値を加算することで変位を与え、前記第2中間教示点群および前記第3中間教示点群を取得する、
ことを特徴とする情報処理方法。
【請求項3】
請求項2に記載の情報処理方法において、
前記第1中間教示点群が有する隣り合う前記第1中間教示点および前記第2中間教示点群が有する隣り合う前記第2中間教示点に相関のある乱数に基づいて変位が付与される、
ことを特徴とする情報処理方法。
【請求項4】
請求項3に記載の情報処理方法において、
分散共分散行列における共分散に正の値を付与することで前記乱数に相関を持たせる、
ことを特徴とする情報処理方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の情報処理方法において、
前記第1取得工程では、前記ロボットアームの駆動機構に関する物理的な制約条件を満たす前記複数の第1中間軌道を取得する、
ことを特徴とする情報処理方法。
【請求項6】
請求項5に記載の情報処理方法において、
前記制約条件は、前記ロボットアームの可動範囲である、
ことを特徴とする情報処理方法。
【請求項7】
請求項5または6に記載の情報処理方法において、
前記制約条件は、前記ロボットアームに関する関節トルク制約、関節角速度制約、関節角加速度制約、ジャーク制約、手先速度制約、ないし手先加速度制約のうちいずれか1つまたは複数である、
ことを特徴する情報処理方法。
【請求項8】
請求項5から7のいずれか1項に記載の情報処理方法において、
前記第1評価工程では、前記複数の中間軌道における、前記ロボットアームと前記物体との間の干渉量に基づき前記第1評価値を取得する、
ことを特徴とする情報処理方法。
【請求項9】
請求項8に記載の情報処理方法において、
前記干渉量は、前記ロボットアームと、前記物体と、が同一の空間を占める干渉時間、または干渉距離である、
ことを特徴とする情報処理方法。
【請求項10】(削除)
【請求項11】(削除)
【請求項12】
請求項1から9のいずれか1項に記載の情報処理方法において、
前記第1取得工程、前記第1評価工程、前記選択工程、前記第2取得工程、前記第2評価工程、及び前記更新工程を繰り返し実行する、
ことを特徴とする情報処理方法。
【請求項13】(削除)
【請求項14】(削除)
【請求項15】
請求項1から9のいずれか1項、または請求項12に記載の情報処理方法において、
前記更新工程において、前記第2評価値が所定条件を満たすことを条件として、前記軌道の更新を停止する、
ことを特徴とする情報処理方法。
【請求項16】
請求項15に記載の情報処理方法において、
前記所定条件は、前記軌道の更新を所定回数実行しても前記第2評価値の変化が一定となる場合である、
ことを特徴とする情報処理方法。
【請求項17】
請求項1から9のいずれか1項、または請求項12に記載の情報処理方法において、
前記軌道の更新の繰り返し実行回数が所定回数に達したことに基づいて前記軌道の更新を停止する、
ことを特徴とする情報処理方法。
【請求項18】
請求項1から9のいずれか1項、または請求項12、または請求項15から17のいずれか1項に記載の情報処理方法において、
前記第1取得工程において、ポテンシャル法、PRM、RRT、可視グラフ法、セル分割法、ボロノイ図法、の内の少なくとも1つを用いて前記複数の第1中間軌道を取得する、
ことを特徴とする情報処理方法。
【請求項19】
請求項1から9のいずれか1項、または請求項12、または請求項15から18のいずれか1項に記載の情報処理方法において、
前記第1取得工程および前記第2取得工程において、Spline補間、B-Spline補間、ベジェ曲線補間、の内少なくとも1つを用いて前記複数の第1中間軌道および前記第2中間軌道を平滑化する、
ことを特徴とする情報処理方法。
【請求項20】
請求項1から9のいずれか1項、または請求項12、または請求項15から19のいずれか1項に記載の情報処理方法において、
更新された前記軌道を表示装置に表示する出力工程をさらに備える、
ことを特徴とする情報処理方法。
【請求項21】
請求項1から9のいずれか1項、または請求項12、または請求項15から20のいずれか1項に記載の情報処理方法において、
更新された前記軌道を前記ロボットアームを制御する制御装置に出力する出力工程をさらに備える、
ことを特徴とする情報処理方法。
【請求項22】
請求項1から9のいずれか1項、または請求項12、または請求項15から21のいずれか1項に記載の情報処理方法の各工程をコンピュータに実行させるプログラム。
【請求項23】
請求項22に記載のプログラムを格納したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【請求項24】
第1位置および第2位置の間でロボットアームを動作させる軌道を取得する情報処理装置において、
前記第1位置から前記第2位置までの経路を規定する複数の第1中間教示点を有する第1中間教示点群を設定し、前記第1中間教示点群の前記第1中間教示点に変位を与えることで複数の第2中間教示点群を取得し、前記複数の第2中間教示点群がそれぞれ有する第2中間教示点に基づき曲線補間することで複数の第1中間軌道を取得し、
取得された前記複数の第1中間軌道において、前記ロボットアームと、前記ロボットアームが動作する空間に配置される物体との干渉に関する第1評価値を取得し、
前記第1評価値に基づき、前記ロボットアームと前記物体とが干渉を回避できる経路を規定する所定の第1中間軌道を選択し、
選択した前記所定の第1中間軌道に対応する前記第2中間教示点群が有する前記第2中間教示点に変位を与えることで複数の第3中間教示点群を取得し、前記複数の第3中間教示点群がそれぞれ有する第3中間教示点に基づき曲線補間することで複数の第2中間軌道を取得し、
取得された前記複数の第2中間軌道において、前記ロボットアームと前記物体とが干渉しているか否かを判定し、前記ロボットアームと前記物体とが干渉していないと判定された第2中間軌道において、前記ロボットアームを動作させる動作時間に関する第2評価値を取得し、
前記第2評価値に基づき、所定の第2中間軌道を選択し、前記所定の第2中間軌道に基づいて前記軌道の更新を行う、
ことを特徴とする情報処理装置。
【請求項25】
請求項1から9のいずれか1項、または請求項12、または請求項15から21のいずれか1項に記載の情報処理方法を用いて取得された軌道で前記ロボットアームを動作させてワークの組み立てを行い、物品を製造する生産システム。
【請求項26】
請求項1から9のいずれか1項、または請求項12、または請求項15から21のいずれか1項に記載の情報処理方法を用いて取得された軌道で前記ロボットアームを動作させてワークの組み立てを行い、物品を製造する物品の製造方法。」
第4 特許異議申立人が提出した甲号証
特許異議申立人が提出した甲号証は、次のとおりである(以下、甲第1号証を「甲1」といい、他の甲第○号証を、同様に「甲○」という。)。
1 甲第1号証:Jeong-Jung KIM et al、“Trajectory Optimization With Particle Swarm Optimization for Manipulator Motion Planning”、IEEE TRANSACTIONS ON INDUSTRIAL INFORMATICS、VOL.11、NO.3、2015年6月、第620~631ページ
2 甲第2号証:Sungjoon CHOI et al、“Gaussian Random Paths for Real-Time Motion Planning”、IEEE/RSJ International Conference on Intelligent Robots and Systems (IROS),2016年、第1456~1461ページ
3 甲第3号証:特開2015-160277号公報
4 甲第4号証:特開2008-269021号公報
5 甲第5号証:特開2016-36895号公報
6 甲第6号証:特開2015-160253号公報
7 甲第7号証:特許第5828539号公報
8 甲第8号証:「Gaussian Random Paths for Real-Time Motion Planning|IEEE Conference Publication|IEEE Xplore」、https://ieeexplore.ieee.org/document/7759237
第5 甲号証の記載
1 甲1
(1)甲1の記載事項(外国語の文献の摘示については、申立人が提出した訳文を参考に当審が翻訳した翻訳文を記載し、摘示の範囲については、外国語の原文の該当範囲を記載する。また、下線は当審で付した。以下同様。)
ア 「I イントロダクション モーションプランニングは一定の制約を満たしながら、モーション初期構成から目標構成へオブジェクトを移動する動作のシーケンスを見つけるプロセスです。
…
モーションプランニングの主な目標は、衝突の回避です。…
…
本研究では、粒子群最適化(PSO)を使用した軌道最適化を調査します。…
…
論文の構成は次のとおりです。セクションIIでは、PSOを使用した軌道の最適化について説明します、これには、パラメーターのエンコード方法、軌道修正のためのコスト関数の選択、及び粒子の初期化方法が含まれます。…」
[「I イントロダクション」:甲1第620ページ左欄第25行~右欄最終行]
イ 「II 粒子群による軌道最適化 モーションプランニングの最適化 A.軌道最適化のための粒子群最適化
…
PSOでは、候補解が粒子の位置にエンコードされ、最適化プロセス中に最良の結果が保存されます。粒子sの1つの最適化ステップを(1)と(2)に示します。
[図:0001418195000001.jpg]
ここで、Vi+1(s)は速度、Xi+1(s)はi+1回目の反復における粒子の位置、|randn|は正規分布の絶対値、つまりabs[Normal(0,1)]にしたがって生成された正の乱数です。pbest(s)は各粒子の以前の最良の位置であり、gbest(s)は、これまでに得られたすべての粒子の中で最良の位置です。反復回数が増えると、粒子は協力して、以前の最良の位置を保持および共有することにより、パラメーターの最適値を決定します。」
[IIのA「軌道最適化のための粒子群最適化」:甲1第621ページ左欄第5行~下から4行]
ウ 「B.PSOの軌道変更ベクトルのエンコード
軌道の変更は粒子にエンコードされ、最適な軌道を見つけるためにPSOで最適化されます。開始形状から最終形状までの経過時間はT、サンプリング時間はdt、軌跡のステップ数は TN=T/dtです。TNステップの軌道変更P[n]modは、粒子にエンコードされます。修正P[n]modは、直交座標または関節座標で表すことができます。
Fig.1 D=WD×TN次元修正ベクトル。各ワークスペースの変更ベクトルは、TN次元のベクトルで構成されます。D次元ベクトルは、PSOの粒子にエンコードされます。
[図:0001418195000002.jpg]
初期軌道P[n]initが与えられると、最終軌道P[n]は次のように定義されます。
[図:0001418195000003.jpg]
ワークスペースの次元がWDの場合、D=WD×TNの可能な修正ステップがあります。 次元TNのWD変更ベクトルは、次元Dの粒子ベクトルを形成するために積み上げられます。ステップnでワークスペースwd内の候補Pwd[n]modは、次のようにエンコードされます。
[図:0001418195000004.jpg]
粒子の構造を図1に示します。」
[IIのB「PSOの軌道変更ベクトルのエンコード」:甲1第621ページ左欄下から3行~右欄下から16行]
エ 「C.コスト関数の設計
粒子はコスト関数を最小化することによって最適化されます。
[図:0001418195000005.jpg]
…
最初の制約は障害物を回避するためのもので、次の形式を持っています。
[図:0001418195000006.jpg]
ここで、obs[o]は障害物の中心の位置、Robs[o]は障害物oの半径、Oは障害物の数、Rendはエンドエフェクタの半径であり、…
…
2番目の制約は、ステップ間の距離に関するもので、次の形式を持ちます。
[図:0001418195000007.jpg]
…
3番目の制約は、加速度を最小にするためのもので、次の形式を持ちます。
[図:0001418195000008.jpg]
4番目の制約は、軌道への変更を最小限に抑え、次の形式を持ちます。
…
[図:0001418195000009.jpg]
…
最適化する総コスト関数は
[図:0001418195000010.jpg]
」
[IIのC「コスト関数の設計」:甲1第621ページ右欄下から15行~第622ページ左欄下から5行]
オ 「E.軌道最適化の全体最適化プロセス
軌道最適化の最適化手順は、アルゴリズム3にまとめられています。…次に、各粒子のコストが(11)のように評価され、停止条件が満たされるまで粒子の位置が更新されます。最終軌道Pは、初期軌道Pinitと、最終反復でgbestにエンコードされた修正Pmodの合計です。…
…
<アルゴリズム3>
[図:0001418195000011.jpg]
」
[「IIのE「軌道最適化の全体最適化プロセス」:甲1第623ページ右欄下から15行~第624ページ左欄第34行」
カ 「IV シミュレーション この節では、シミュレーションにより提案方法を検証します。シミュレートされているロボットを図4に示します。…初期軌道と障害物のパラメーターを図5に示します。
[図:0001418195000012.jpg]
図4.ロボットアームの運動学的モデル。ロボットには3つの関節と4つのリンクがあります。最初のジョイントはy軸を中心に回転し、2番目と3番目のジョイントはx軸を中心に回転します。
[図:0001418195000013.jpg]
図5.初期軌道と障害物の設定。軌道最適化法は、初期軌道を修正して制約違反を減らします。
」
[IV 「シミュレーション」:甲1第625ページ左欄第1行~左欄下から4行]
(2)甲1の記載事項の整理({ }内に原文の用語を記載した。)
ア 上記(1)イ~ウの記載からみて、甲1に記載されているのは、軌道のスタート点である開始形状{starting configuration}および軌道のゴール点である最終形状{goal configuration}の間で最適な軌道[trajectory}を取得する軌道最適化{trajectory optimization}に関する方法であって、上記(1)カの図4に関する記載からみて、ロボットアーム{robot arm}の動作に適用できるものである。
イ 上記(1)イの記載、特に式(1)、(2)に関する記載からみて、甲1記載の軌道最適化方法は、軌道を粒子sの位置であるXiの集合体Xi(s)と表し、Xi(s)に正の乱数であるVi+1を加算してXi+1(s)を得ることを繰り返して、複数の候補軌道を得るものであり(上記(1)オのアルゴリズム3の第9~12行も参照。)、このXi+1(s)は、変更ベクトル{modification vector}Pwd[n]modの候補{candidate}としてエンコードされる。
ウ 上記(1)ウの記載、特に式(3)に関する記載からみて、甲1記載の軌道最適化方法において、最初にワークスペース{workspace}wd=0において、軌道のスタート点である開始形状から軌道のゴール点である最終形状までの経路を規定する初期軌道{initial trajectory}P[n]init〔n=0、…、TN-1、ワークスペースwd=0〕を設定する。
エ 次いで、上記(1)ウの記載、特に式(4)に関する記載からみて、初期軌道P[n]init〔n=0、…、TN-1、ワークスペースwd=0〕に変更ベクトルPwd[n]modの候補を求めて(上記(1)オのアルゴリズム3の第11~16行も参照。)加算することで、ワークスペースwd=1、…、WD-1ごとの初期軌道P[n]init〔n=0、…、TN-1、ワークスペースwd=1、…、WD-1〕を取得し、この取得した初期軌道P[n]initから式(3)により、ワークスペースwd=1、…、WD-1ごとの最終軌道P[n]〔wd=1、…、WD-1〕を取得する。(上記(1)オのアルゴリズム3の第17行も参照。)。
オ そして、上記(1)エの記載、特に式(5)、及び式(11)に関する記載からみて、甲1の上記エのワークスペースwdごとの最終軌道P[n]については、制約条件として障害物の回避(式(6)、及び上記(1)カの図5に関する記載を参照。)を要因として含む総コスト関数11{total cost function}によりコスト{cost}を評価{evaluate}する(上記(1)オのアルゴリズム3の第18行も参照。)。
カ 上記(1)ウ~オの記載からみて、甲1記載の軌道最適化方法は、総コスト関数11に基づきワークスペースwdごとの最終軌道P[n]のうちコストを最小化するワークスペースwdの最終軌道P[n]を選択し、このコストを最小化するワークスペースwdの最終軌道P[n]に基づいて軌道の変更{modification}を行う(上記(1)オのアルゴリズム3の第19~31行も参照。)。
(3)甲1発明
上記(1)~(2)より、甲1には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されている。
「開始形状{starting configuration}および最終形状{goal configuration}の間でロボットアーム{robot arm}を動作させる軌道{trajectory}を取得する軌道最適化{trajectory optimization}方法において、
前記開始形状から前記最終形状までにおいて、前記ロボットアームの経路を規定する初期軌道{initial trajectory}P[n]init〔n=0、…、TN-1、ワークスペース{workspace}wd=0〕を設定し、前記初期軌道P[n]init〔n=0、…、TN-1、ワークスペースwd=0〕に変更ベクトル{modification vector}の候補{candidate}Pwd[n]mod〔n=0、…、TN-1、ワークスペースwd=0、…、WD-1〕を加算することでワークスペースwd=1、…、WD-1ごとの初期軌道P[n]init〔n=0、…、TN-1、ワークスペースwd=1、…、WD-1〕を取得し、前記ワークスペースwd=1、…、WD-1ごとの初期軌道P[n]init〔n=0、…、TN-1、wd=1、…、WD-1〕に基づきワークスペースwd=1、…、WD-1ごとの複数の最終軌道{final trajectory}P[n]〔ワークスペースwd=1、…、WD-1〕を取得する取得工程と、
前記取得工程で取得された前記複数の最終軌道P[n]において総コスト関数{total cost function}11によるコスト{cost}を評価{evaluate}する評価工程と、
前記総コスト関数11によるコストに基づき前記ワークスペースwd=1、…、WD-1ごとの最終軌道P[n]〔ワークスペースwd=1、…、WD-1〕のうちコストを最小化するワークスペースwdの最終軌道P[n]を選択し、前記コストを最小化するワークスペースwdの最終軌道P[n]に基づいて前記軌道の変更{modification}を行う変更工程と、を有している、軌道最適化方法。」
2 甲3
(1)甲3の記載事項
ア 明細書
「「【0019】
図1は、本発明の好適な実施形態に係るロボットシミュレーション装置(以降、単にシミュレーション装置とも称する)10の機能ブロック図である。シミュレーション装置10は、ロボット12及び該ロボットの周辺に配置された外部機器等の周辺物14の3次元モデルを同一の仮想空間内に配置して、ロボット12のシミュレーションを(通常はオフラインで)行うものであり、ロボット12の所定の動作プログラムのシミュレーションを実行して、ロボット12の第1の動作経路を取得する動作経路取得部16と、ロボット12を第1の動作経路に沿って移動させたときの、ロボット12と周辺物14との干渉を検出して、該干渉が発生する直前の教示点である第1の教示点(以降、始点とも称する)、及び干渉が発生した直後の教示点である第2の教示点(以降、終点とも称する)を特定する教示点特定部18と、第1の教示点と第2の教示点との間に、第1の教示点又は第2の教示点から、乱数で定めた探索方向に乱数で定めた探索距離だけ離れた少なくとも1つの第3の教示点を自動的に追加・挿入し、ロボット12と周辺物14との干渉が発生しない第2の動作経路を生成する動作経路生成部20と、動作経路生成部20が生成した複数の異なる第2の動作経路の各々について、予め定めた少なくとも1つのパラメータに基づく評価を行う評価部22と、評価部22が行った評価に基づいて、複数の第2の動作経路から、ロボット12の最適動作経路を選択する動作経路選択部24と、を備える。
【0020】
またシミュレーション装置10は任意に、ロボット12及び周辺物14の3次元モデルが配置された仮想空間等を表示する表示部26と、第3の教示点のうち余剰な教示点を削除する教示点削除部28と、第3の教示点の位置姿勢を調整する教示点調整部30と、を備えてもよい。削除部28及び調整部30の機能については後述する。
【0021】
次に図2及び図3を参照して、シミュレーション装置10における処理の流れについて説明する。先ずステップS1において、ロボット12について予め用意された動作プログラムのシミュレーションを実行し、ロボット12の第1の動作経路32を取得する。第1の動作経路には、動作プログラムに基づきロボット12の代表点(例えばツール先端点)の位置及び姿勢を規定する複数の教示点が含まれており、第1の動作経路では、周辺物14との干渉は考慮していない。
【0022】
次のステップS2では、第1の動作経路に沿ってロボット12を移動させたときのロボット12と周辺物14との干渉の有無を検出し、干渉がある場合は、干渉が発生する直前の教示点である第1の教示点(始点)と、干渉が発生した直後の教示点である第2の教示点(終点)とを特定する。図3の例では、第1の動作経路32に含まれる教示点PmとPnとの間で干渉が発生しているので、教示点Pmが始点、教示点Pnが終点として特定される。
【0023】
次のステップS3では、始点Pmと終点Pnとの間に、Pm又はPnから乱数で定めた探索方向に、乱数で定めた探索距離だけ離れた少なくとも1つの第3の教示点を自動的に追加し、ロボット12と周辺物14との干渉が発生しない第2の動作経路34を生成する。図3の例では、始点Pmから、始点Pmから乱数で定めた探索方向に乱数で定めた探索距離だけ離れた1つの中間教示点P1に至る動作経路34に沿ってロボットを移動させたときの周辺物14との干渉の有無を検出する。動作経路34では干渉が発生しないので、中間教示点P1が始点Pmと終点Pnとの間に挿入される。逆に動作経路34にて干渉がある場合は、中間教示点P1は破棄して新たな中間教示点を探索する。
【0024】
次に、最後に挿入された中間教示点(ここではP1)から終点Pnに至る動作経路36に沿ってロボットを移動させたときの周辺物14との干渉の有無を検出する。図示例では、動作経路36では干渉が発生するので、中間教示点P1からさらに、P1から乱数で定めた探索方向に乱数で定めた探索距離だけ離れた1つの新たな中間教示点P2を求め、中間教示点P1とP2との間の動作経路38において干渉の有無を検出する。動作経路38では干渉が発生しないので、中間教示点P2が中間教示点P1と終点Pnとの間に挿入される。逆に動作経路38にて干渉がある場合は、中間教示点P2は破棄して新たな中間教示点を探索する。なお、P2の探索を所定回数繰り返しても干渉が発生しない経路が得られない場合は、P1も破棄してP1の探索をやり直す。
【0025】
このような処理を、干渉が発生しなくなるまで繰り返す。図示例では、最後に挿入された中間教示点(P2)から終点Pnに至る動作経路40では干渉が発生しないので、始点Pmから中間教示点P1及びP2を経由して終点Pnに至る動作経路(すなわち動作経路34、38及び40を含む経路)が、干渉回避可能な第2の動作経路として生成される。なお乱数により決定された探索方向及び探索距離に基づくロボットの移動は、並進移動に限られず、回転移動を含むものでもよい。
【0026】
このように本発明では、中間教示点を求めるための探索方向及び探索距離を、乱数を用いて無作為に決定するので、演算処理が袋小路や局所解に陥ることなく、干渉回避経路を得ることができる。また乱数を使用するため、動作経路の生成は作業者の熟練度にも依存しない。但し、第2の動作経路をより効率的に得るため、ロボットを移動する方向を決定する乱数を、以下のように操作してもよい。
・・・
【0032】
上述のように、第2の動作経路の生成に際し作業者の熟練度等は要求されない反面、明らかに不要なロボットの移動が含まれる等、得られた第2の動作経路があまり現実的なものではない場合がある。そこで、得られた第2の動作経路のそれぞれに沿ってロボットを動作させたときのシミュレーションを行い、第2の動作経路に含まれる第3の教示点のそれぞれについて、評価部22を用いて所定のパラメータに基づく評価を行い、比較的低い評価値となった教示点(特に最低評価値の教示点)を、その評価値が高くなるように調整する(ステップS6)。これを繰り返すことで、第2の動作経路を、より現実的なものにすることができる。
【0033】
上述の評価値を求めるためのパラメータ(評価項目)としては例えば、以下のものが挙げられる。これらはいずれも、第2の動作経路に沿ったシミュレーションを行うことで計算又は推定することができる。
(a)ロボットの動作時間
(b)ロボットと周辺物との最小離隔距離
(c)ロボットを駆動するモータの発熱量
(d)ロボットの減速機の寿命
(e)ロボットの消費電力
【0034】
上記のパラメータを少なくとも1つ用いて、以下のような基準に従って個々の教示点の評価値を求めることができ、また同一の動作経路に含まれる教示点の評価値を積算することで、該動作経路全体の評価値も得ることができる。
(a)ロボットの動作時間を計算して、該動作時間が短いほど高い評価値とする。
(b)ロボットと周辺物との最小離隔距離を計算して、該最小離隔距離が大きいほど高い評価値とする。
(c)ロボットを駆動するモータの発熱量を推定して、該発熱量が小さいほど高い評価値とする。
(d)ロボットの減速機の寿命を推定して、該寿命が長いほど高い評価値とする。
(e)ロボットの消費電力を推定して、該消費電力が小さいほど高い評価値とする。
・・・
【0036】
なお、上記パラメータを複数使用することももちろん可能であるが、その場合は、それぞれのパラメータに予め重み付けをしておき、その重み付けに従って評価値を求めることが好ましい。
【0037】
ステップS6における第3の教示点の調整方法としては、教示点の位置変更が挙げられる。具体的には、調整対象である(評価値が低い又は最低の)教示点の位置を、微小距離だけ移動して、前後の教示点との間のロボットの動作経路を取得する。その動作経路上でロボットと周辺装置との干渉が発生しない場合、新しい位置における評価値を算出する。この処理を、予め定めた許容範囲(例えば前後の教示点が含まれない領域)内で所定回数だけ繰り返し行い、最高の評価値が得られた位置を、調整後の教示点の位置として設定する。なお上述の微小距離の移動は、ロボットの用途や教示点の間隔等によって適宜設定可能であるが、例えば上記許容範囲を、一辺の長さが1~5mm程度のメッシュに分割し、各メッシュ内に教示点を移動させることが考えられる。
【0038】
或いは、干渉の発生しないロボットの動作経路の取得、余剰な教示点の削除、教示点の調整を行って、動作経路全体の評価値を取得する処理を複数回繰り返して、最高の評価値となった動作経路を選択することで、より現実的な動作経路を取得することもできる。この場合の上記手順は、予め定めた回数だけ繰り返す、又は予め定めた評価値に達するまで繰り返すことが考えられる。なおステップS5及びS6は任意である。
【0039】
次のステップS7では、生成された第2の動作経路の評価値を計算する。動作経路の評価値は、当該動作経路に含まれる教示点の評価値を積算することにより計算できる。
【0040】
次のステップS8では、第2の動作経路の生成が所定回数行われたか否かを判定する。第2の動作経路は少なくとも2つ生成されるが、シミュレーション装置の演算能力等を考慮しつつ、なるべく多数の動作経路を生成することが好ましい。
【0041】
最後にステップS9において、生成された第2の動作経路のうち、評価の高いもの(通常は評価値が最高のもの)を、ロボットの最適動作経路(干渉回避経路)として選択する。このようにして、作業者の熟練度に依存せず、現実的なロボットの干渉回避経路を自動的に生成することができるようになる。」
イ 図面
(ア)図1
[図:0001418195000014.jpg]
(イ)図2
[図:0001418195000015.jpg]
(ウ)図3
[図:0001418195000016.jpg]
(2)甲3の記載事項の整理
ア 段落【0019】、【0022】~【0025】、図3の記載からみて、甲3には、図3に図示された点Pl(「l」は小文字のエル。以下「第1位置Pl」という。)とPo(「o」は小文字のオー。以下「第2位置Po」という。)の間でロボットを動作させる動作経路を取得する動作経路生成方法について、記載されている。
イ 段落【0019】、【0021】~【0025】の記載からみて、甲3の動作経路生成方法は、周辺物14との干渉は考慮していない第1の動作経路を取得した後、第1の動作経路と周辺物14の干渉がある場合は、干渉が発生する直前の教示点である始点Pmと、干渉が発生した直後の教示点である終点Pnとを特定し、始点Pmから終点Pnにおいて、ロボットと、ロボットが動作する仮想空間に配置される周辺物14とが干渉を回避できる第2の動作経路を規定する第3の教示点<中間教示点P1、P2、…>を設定するもの(図2のステップS3)であり、すなわち、第1位置Plから前記第2位置Poまでにおいて、始点Pmから終点Pnにおける第1の動作経路と周辺物14の干渉が発生しない第2の動作経路を規定する第3の教示点<中間教示点P1、P2、…>を設定することが理解できる。
そうすると、甲3の経路生成方法は、第1位置Plおよび第2位置Poの間において、ロボットと、ロボットが動作する仮想空間に配置される周辺物14の干渉が発生しない第2の動作経路を規定する第3の教示点<中間教示点P1、P2、…>を設定するものである。
ウ 段落【0025】、【0032】、【0037】~【0038】の記載、特に段落【0032】の
「得られた第2の動作経路のそれぞれに沿ってロボットを動作させたときのシミュレーションを行い、第2の動作経路に含まれる第3の教示点のそれぞれについて、評価部22を用いて所定のパラメータに基づく評価を行い[当審注:この評価を行うことはステップS5に該当する。]、比較的低い評価値となった教示点(特に最低評価値の教示点)を、その評価値が高くなるように調整する(ステップS6)。これを繰り返すことで、第2の動作経路を、より現実的なものにすることができる。」との記載、
【0034】の
「(a)ロボットの動作時間を計算して、該動作時間が短いほど高い評価値とする。」との記載、
及び段落【0037】の
「ステップS6における第3の教示点の調整方法としては、教示点の位置変更が挙げられる。具体的には、調整対象である(評価値が低い又は最低の)教示点の位置を、微小距離だけ移動して、前後の教示点との間のロボットの動作経路を取得する。その動作経路上でロボットと周辺装置との干渉が発生しない場合、新しい位置における評価値を算出する。この処理を、予め定めた許容範囲(例えば前後の教示点が含まれない領域)内で所定回数だけ繰り返し行い、最高の評価値が得られた位置を、調整後の教示点の位置として設定する。」からみて、
上記イで取得した第3の教示点を評価し(ステップS5)、比較的低い評価値となった第3の教示点を調整すること(【0032】、図2のステップS6)で位置変更した第3の教示点(以下「調整後の第3の教示点」という。)により、第1位置Plおよび第2位置Poの間に新たに第2の動作経路(以下「調整後の第2の動作経路」という。)が取得できることが理解できる。よって、甲3の動作経路生成方法は、上記イの第3の教示点に評価と調整を所定回数繰り返すことで、ロボットと周辺物14が干渉しない複数の調整後の第3の教示点を取得し、前記複数の調整後の第3の教示点に基づきロボットと周辺物14が干渉しない複数の調整後の第2の動作経路を取得するステップを備え、教示点の評価は、ロボットの動作時間が短いほど高い評価値となるものである。
エ 段落【0032】~【0034】、【0036】~【0041】の記載から、図2のステップS5での教示点の評価は、調整前、及び調整後の第2の動作経路に対して行われるといえる。そして、調整前、又は調整後の第2の動作経路に沿ったシミュレーションを行うことで動作経路全体の評価値が得られるもの(図2のステップS7)であることから、甲3のステップS5及びS7では、調整前の第2の動作経路及び複数の調整後の第2の動作経路においてロボットの動作時間の評価値を取得するステップを行っているといえる。
オ 上記ウの段落【0037】の記載から、図2のステップS6において、ロボットの動作経路の取得と教示点の評価値の算出の処理が所定回数だけ繰り返し行われることからみて、甲3の動作経路精製方法は、上記ウの複数の調整後の第2の動作経路を取得するステップ、及び上記エのロボットの動作時間の評価値を取得するステップを所定回数繰り返して行い、取得された前記ロボットの動作時間に関する評価値に基づき、前記調整後の第2の動作経路のうち評価値が最高の前記第2の動作経路を、より現実的でロボットと周辺物14との干渉が発生しない調整後の第2の動作経路として選択するステップを行っているといえる。
カ 段落【0032】~【0034】、【0036】~【0041】の記載からみて、甲3の動作経路生成方法は、上記エのより現実的でロボットと周辺物14との干渉が発生しない調整後の第2動作経路の生成を所定回数繰り返し(図2のステップS8)、生成した調整後の第2動作経路のうちロボットの動作時間の評価値に基づき、評価値が最高の調整後の第2の動作経路を選択し、評価値が最高の調整後の第2の動作経路に基づいて(図2のステップS9の複数の調整後の第2の動作経路を評価することにより)最適動作経路の選択を行うステップを備えるものである。
(3)甲3発明
上記(1)~(2)より、甲3には、次の発明(以下「甲3発明」という。)が記載されている。
「第1位置Plおよび第2位置Poの間でロボットを動作させる動作経路を取得する動作経路を生成する方法において、
前記第1位置Plから前記第2位置Poまでの動作経路に含まれてロボットと周辺物14との干渉が発生しない第3の教示点<中間教示点P1、P2、…>を設定し、前記第3の教示点<中間教示点P1、P2、…>を調整することでロボットと周辺物14との干渉が発生しない複数の調整後の第3の教示点を取得し、前記複数の調整後の第3の教示点に基づきロボットと周辺物14との干渉が発生しない複数の調整後の第2の動作経路を取得するステップと、
前記複数の調整後の第2の動作経路において前記ロボットの動作時間の評価値を取得するステップと、
前記ロボットの動作時間の評価値に基づき、前記複数の調整後の第2の動作経路のうち評価値が最高の前記第2の動作経路を、より現実的な調整後の第2の動作経路として選択するステップと、
前記より現実的な調整後の第2の動作経路とそのロボットの動作時間の評価値を所定回数繰り返して取得するステップと、
取得された前記ロボットの動作時間に関する評価値に基づき、評価値が最高の前記より現実的な調整後の第2の動作経路を選択し、評価値が最高の前記より現実的な調整後の第2の動作経路に基づいて最適動作経路の選択を行うステップ、とを有している
動作経路を生成する方法。」
第6 当審で通知した取消理由
1 令和5年8月2日付けで通知した取消理由
当審は、令和5年8月2日付けで概略、次の取消理由を通知(以下、この通知を「第1回取消理由通知」という。)した。
A.(甲1による新規性)本件訂正前の請求項1~5、24に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である甲1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、本件訂正前の請求項1~5、24に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
B.(甲1を主引用例とする進歩性)本件訂正前の請求項6~23、25~26に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である甲1、甲3~甲6に記載された発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、本件訂正前の請求項6~23、25~26に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
C.(明確性)本件訂正前の本件特許は、特許請求の範囲の請求項2~23、25~26の記載が不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
D.(サポート要件)本件訂正前の本件特許は、特許請求の範囲の請求項10~23、25~26の記載が不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
2 令和6年1月16日付けで通知した取消理由(決定の予告)
当審は、本件について上記1の第1回取消理由通知で通知した取消しの理由は解消したと判断した。
しかし、さらに取消しの理由を発見したため、決定の予告として、令和6年1月16日付けで、概略、以下の取消理由を通知(以下、この通知を「決定の予告」という。)した。
E.(甲3による新規性)本件訂正前の請求項1~2、24に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である甲3に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、本件訂正前の請求項1~2、24に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
F.(甲1又は甲3を主引用例とする進歩性)本件訂正前の請求項1~9、11~26に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である甲1~甲6に記載された発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、本件訂正前の請求項1~9、11~26に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
第7 第1回取消理由通知及び決定の予告で通知した取消理由に対する当審の判断
1 本件特許発明1の新規性、進歩性
(1)甲3を主引用例とする取消理由(新規性、進歩性)について
ア 本件特許発明1と甲3発明の対比
(ア)甲3発明の「第1位置Pl」は本件特許発明1の「第1位置」に相当し、以下同様に「第2位置Po」は「第2位置」に、「ロボット」は「ロボットアーム」に、「動作経路」は「軌道」に、「動作経路を生成する方法」は「情報処理方法」に、それぞれ相当する。
(イ)甲3発明の「周辺物14」は本件特許発明1の「物体」に相当し、以下同様に、「ロボットと周辺物14との干渉が発生しない第3の教示点<中間教示点P1、P2、…>」は「第1中間教示点群」あるいはその各々の「第1中間教示点」に、「第3の教示点<中間教示点P1、P2、…>を調整すること」は「第1中間教示点群に変位を与えること」に、「ロボットと周辺物14との干渉が発生しない調整後の第3の教示点<中間教示点P1、P2、…>」は「第2中間教示点群」あるいはその各々の「第2中間教示点」に、それぞれ相当する。
また、甲3発明の「前記複数の調整後の第3の教示点に基づきロボットと周辺物14との干渉が発生しない複数の調整後の第2の動作経路を取得するステップ」と、本件特許発明1の「前記複数の第2中間教示点群がそれぞれ有する第2中間教示点に基づき曲線補間することで複数の第1中間軌道を取得する第1取得工程」を対比すると、両者は「前記複数の第2中間教示点群がそれぞれ有する第2中間教示点に基づき複数の第1中間軌道を取得する第1取得工程」という点に限り一致する。
(ウ)甲3発明の「前記複数の調整後の第2の動作経路において前記ロボットの動作時間の評価値を取得するステップ」と、本件特許発明1の「前記第1取得工程で取得された前記複数の第1中間軌道において、前記ロボットアームと、前記ロボットアームが動作する空間に配置される物体との干渉に関する第1評価値を取得する第1評価工程」を対比すると、両者は「前記第1取得工程で取得された前記複数の第1中間軌道において、評価値を取得する第1評価工程」という点に限り一致する。
(エ)甲3発明の「前記ロボットの動作時間の評価値に基づき、前記複数の調整後の第2の動作経路のうち評価値が最高の前記第2の動作経路を、より現実的な調整後の第2の動作経路として選択するステップ」と本件特許発明1の「前記第1評価値に基づき、前記ロボットアームと前記物体とが干渉を回避できる経路を規定する所定の第1中間軌道を選択する選択工程」を対比すると、両者は「前記評価値に基づき、前記ロボットアームと前記物体とが干渉を回避できる経路を規定する所定の第1中間軌道を選択する選択工程」という点に限り一致する。
(オ)甲3発明の「前記より現実的な調整後の第2の動作経路」「を所定回数繰り返して取得するステップ」と、本件特許発明1の「前記選択工程において選択した前記所定の第1中間軌道に対応する前記第2中間教示点群が有する前記第2中間教示点に変位を与えることで複数の第3中間教示点群を取得し、前記複数の第3中間教示点群がそれぞれ有する第3中間教示点に基づき曲線補間することで複数の第2中間軌道を取得する第2取得工程」を対比すると、両者は、
「さらに複数の中間教示点群を取得し、前記複数の中間教示点群に基づき複数の中間軌道を取得する第2取得工程」
という点に限り一致する。
(カ)甲3発明の「前記より現実的調整後の第2の動作経路」「のロボットの動作時間の評価値を所定回数繰り返して取得するステップ」と、本件特許発明1の「前記第2取得工程で取得された前記複数の第2中間軌道において、前記ロボットアームと前記物体とが干渉しているか否かを判定し、前記ロボットアームと前記物体とが干渉していないと判定された第2中間軌道において、前記ロボットアームを動作させる動作時間に関する第2評価値を取得する第2評価工程」を対比すると、両者は、
「前記第2取得工程で取得された前記複数の中間軌道において、ロボットアームを動作させる動作時間に関する第2評価値を取得する第2評価工程」
という点に限り一致する。
(キ)甲3発明の「取得された前記ロボットの動作時間に関する評価値に基づき、評価値が最高の」は本件特許発明1の「前記第2評価値に基づき」に相当する。
そして、甲3発明の「前記より現実的な調整後の第2の動作経路を選択し、評価値が最高の前記より現実的な調整後の第2の動作経路に基づいて最適動作経路の選択を行うステップ」と本件特許発明1の「所定の第2中間軌道を選択し、前記所定の第2中間軌道に基づいて前記軌道の更新を行う更新工程」を対比すると、両者は「所定の中間軌道を選択し、前記所定の中間軌道に基づいて前記軌道の更新を行う更新工程」という点に限り一致する。
イ 本件特許発明1と甲3発明の一致点及び相違点
本件特許発明1と甲3発明は、以下の(ア)の点で一致し、(イ)~(エ)の点で相違する。
(ア)一致点
第1位置および第2位置の間でロボットアームを動作させる軌道を取得する情報処理方法において、
前記第1位置から前記第2位置までの経路を規定する複数の第1中間教示点を有する第1中間教示点群を設定し、前記第1中間教示点群の前記第1中間教示点に変位を与えることで複数の第2中間教示点群を取得し、前記複数の第2中間教示点群がそれぞれ有する第2中間教示点に基づき複数の第1中間軌道を取得する第1取得工程と、
前記第1取得工程で取得された前記複数の第1中間軌道において、評価値を取得する第1評価工程と、
前記評価値に基づき、前記ロボットアームと前記物体とが干渉を回避できる経路を規定する所定の第1中間軌道を選択する選択工程と、
さらに複数の中間教示点群を取得し、前記複数の中間教示点群に基づき複数の中間軌道を取得する第2取得工程と、
前記第2取得工程で取得された前記複数の中間軌道において、ロボットアームを動作させる動作時間に関する第2評価値を取得する第2評価工程と、
前記第2評価値に基づき、所定の中間軌道を選択し、前記所定の中間軌道に基づいて前記軌道の更新を行う更新工程と、を有している、
情報処理方法。
(イ)相違点1
第1評価工程及び選択工程における評価値に関し、本件特許発明1が、第1評価工程において、ロボットアームが動作する空間に配置される物体との干渉に関する評価値を取得し、選択工程において、ロボットアームが動作する空間に配置される物体との干渉に関する評価値に基づき、第1中間軌道を選択するのに対して、甲3発明は、第1評価工程において、動作時間の評価値を取得し、これに伴い、選択工程において、動作時間の評価値に基づき、第1中間軌道(より現実的な調整後の第2の動作経路)を選択する点。
(ウ)相違点2
第2取得工程、第2評価工程、及び更新工程に関し、
本件特許発明1が
「前記選択工程において選択した前記所定の第1中間軌道に対応する前記第2中間教示点群が有する前記第2中間教示点に変位を与えることで複数の第3中間教示点群を取得し、前記複数の第3中間教示点群がそれぞれ有する第3中間教示点に基づき曲線補間することで複数の第2中間軌道を取得する」第2取得工程、「前記第2取得工程で取得された前記複数の第2中間軌道において、前記ロボットアームと前記物体とが干渉しているか否かを判定し、前記ロボットアームと前記物体とが干渉していないと判定された第2中間軌道において、前記ロボットアームを動作させる動作時間に関する第2評価値を取得する」第2評価工程、及び「前記第2評価値に基づき、所定の第2中間軌道を選択し、前記所定の第2中間軌道に基づいて前記軌道の更新を行う」更新工程を備えるのに対して、
甲3発明は、第1中間軌道(より現実的な調整後の第2の動作経路)とその第2評価値(ロボットの動作時間の評価値)を繰り返して取得する第2取得工程及び第2評価工程、並びに第2評価値に基づき、第1の動作経路(より現実的な調整後の第2の動作経路)を選択し、第1の動作経路に基づいて前記軌道の更新を行う更新工程を備える点。
(エ)相違点3
第1取得工程と第2取得工程の曲線補間に関し、本件特許発明1が、第1取得工程において、複数の第2中間教示点群がそれぞれ有する第2中間教示点に基づき曲線補間することで複数の第1中間軌道を取得し、第2取得工程において、第3中間教示点群がそれぞれ有する第3中間教示点に基づき曲線補間することで複数の第2中間軌道を取得するのに対して、甲3発明は各中間軌道(調整後の第2の動作経路及びより現実的な調整後の第2の動作経路)の取得が曲線補間することによらない点。
ウ 相違点の検討
事案に鑑み、相違点2から検討する。
甲3発明は、少なくとも、第2取得工程における本件特許発明1の「前記選択工程において選択した前記所定の第1中間軌道に対応する前記第2中間教示点群が有する前記第2中間教示点に変位を与えることで複数の第3中間教示点群を取得し」「複数の第2中間軌道を取得する」という処理を行わない。
本件特許発明1は、この複数の第3教示点群に基づいて取得される複数の第2中間軌道から、動作時間に関する第2評価値に基づいて軌道を選択して更新を行うものであるが、甲3発明は、所定の第1中間軌道(より現実的な調整後の第2の動作経路)を取得するステップを繰り返して取得した複数の所定の第1中間軌道から第2評価値(ロボットの動作時間の評価値)に基づいて軌道を選択して更新を行うものである。すなわち、軌道の更新のための中間軌道の最終的な選択肢が、本件特許発明1では「第2中間軌道」であるのに対して、甲3発明では「第1中間軌道」である点で、中間軌道の選定の情報処理の手法としてのアルゴリズムが全く異なる。
換言すれば、本件特許発明1は、選択工程で選択された所定の第1中間軌道について、その軌道に対応する第2中間教示点に、さらに変位を与えて第3中間教示点群を取得して複数の第2中間軌道を取得するものである。これに対して、甲3発明は選択工程(選択するステップ)で選択された所定の第1中間軌道(より現実的な調整後の第2の動作経路)について、この軌道の教示点をさらに調整するものではない(甲3発明において、第1中間軌道(調整後の第2の動作経路)を取得するために教示点を調整することは、本件特許発明1において、第1中間教示点群に変位を与えることに相当するものであり(上記ア(イ))、甲3発明において、調整後の第2の動作経路の教示点を、さらに調整することは行っていない。)。
さらに、本件特許発明1は、干渉の観点で選択した所定の第1中間軌道にその中間教示点に変位を与えて複数の第2中間軌道を取得したうちから、動作時間の観点で選択した所定の第2中間軌道に基づいて軌道の更新をするのに対して、甲3発明は干渉の発生しない複数の第1中間軌道(調整後の第2の動作経路)から動作時間の観点で所定の第1中間軌道(より現実的な調整後の第2の動作経路)を求め、この所定の第1中間軌道の生成を繰り返して取得した複数の所定の第1中間軌道のうちから、動作時間の観点で選択した1つの所定の第1中間軌道を選択して軌道の更新をするものであり、両発明は、第2中間軌道の取得の有無に加え、中間軌道の選択の観点など、中間軌道を選択することの技術的思想が全く異なる。
また、この第2取得工程に関する相違に伴い、甲3発明は、本件特許発明1と、第2評価工程及び更新工程の内容も異なることが明らかである。
そして、甲3には、本件特許発明1のアルゴリズムについて記載や示唆、あるいは適用することの動機もなく、他の各甲号証を見ても見出すことはできない。
したがって、相違点2は実質的な相違点であるから、本件特許発明1が、甲3発明であるとはいえない。
また、相違点2が、甲3や他の甲号証に基づいて、当業者が容易に想到できたものであると評価することはできないから、本件特許発明1は、相違点1、3について検討するまでもなく、甲3発明、及び他の甲号証記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(2)甲1を主引用例とする取消理由(進歩性)について
ア 本件特許発明1と甲1発明の対比
本件特許発明1と甲1発明を対比する。
(ア)甲1発明の「開始形状」は本件特許発明1の「第1位置」に相当し、以下同様に「最終形状」は「第2位置」に、「軌道最適化」は「情報処理」に、それぞれ相当する。
(イ)甲1発明の「初期軌道P[n]init〔n=0、…、TN-1、ワークスペースwd=0〕」は本件発明1の「第1中間教示点群」に相当し、甲1発明の「初期軌道P[n]init〔n=0、…、TN-1、ワークスペースwd=0〕に変更ベクトルの候補Pwd[n]mod〔n=0、…、TN-1、wd=0、…、WD-1〕を加算する」ことは本件発明1の「第1中間教示点群に変位を与える」ことに相当する。(ウ)甲1発明の「ワークスペースwd=1、…、WD-1ごと」の「初期軌道P[n]init〔n=0、…、TN-1、ワークスペースwd=1、…、WD -1〕」は本件発明1の「複数」の「第2中間教示点群」に相当し、甲1発明の「ワークスペースwd=1、…、WD-1ごとの複数」の「最終軌道P[n]〔ワークスペースwd=1、…、WD-1〕」は本件発明1の「複数」の「第1中間軌道」に相当する。
(エ)甲1発明の「総コスト関数11によるコスト」は本件発明1の「第1評価値」に、同様に「評価」は「取得」に相当する。
(オ)甲1発明の「コストを最小化するワークスペースwdの最終軌道P[n]」は本件発明1の「所定の第1中間軌道」に相当し、同様に「変更」は「選択」に、「変更工程」は「選択工程」それぞれ相当する。
イ 本件特許発明1と甲1発明の対比、判断
本件特許発明1は甲1発明と、少なくとも上記(1)イ(ウ)の相違点2と同様の相違点、すなわち、本件特許発明1は第2取得工程、第2評価工程、及び更新工程を備えているのに対して、甲1発明はそれらの工程を備えていない点で相違するから、本件特許発明1が、甲1発明であるとはいえない。
また、上記(1)ウで検討したのと同様に、相違点2と同様の相違点は、甲1発明、及び他の甲号証記載の発明に基づいて、当業者が容易に想到することができたものではない。
(3)本件特許発明1の新規性、進歩性についてのまとめ
したがって、本件特許発明1は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものではない。
また、本件特許発明1は、甲1発明、甲3発明、及び他の各甲号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではなく、本件の請求項1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。
2 本件特許発明2~9、12、15~23、25~26の新規性、進歩性
本件特許発明2~9、12、15~23、25~26は、本件特許発明1に対して、さらに発明特定事項を追加したものである。
したがって、本件特許発明2~5は、甲3発明又は甲1発明ではないから、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものではない。
また、本件特許発明2~9、12、15~23、25~26は、本件特許発明1と同様に、甲3発明又は甲1発明、及び他の各甲号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではなく、本件の請求項2~9、12、15~23、25~26に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。
3 本件特許発明24の新規性、進歩性
情報処理装置の発明である本件特許発明24は、情報処理方法の発明である本件特許発明1とは、同じ情報処理の技術的事項を内容とし、請求項に記載された事項にカテゴリーの違いによる表現上の差異があるのみであるから、本件特許発明1と同様に、甲3発明又は甲1発明ではないから、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものではない。
また、本件特許発明24は、甲3発明又は甲1発明、及び他の各甲号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではなく、本件の請求項24に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。
4 請求項2、4、10、11の明確性
第1回取消理由通知において通知した
(1)請求項2に記載した「所定」の中間教示点群の意味が不明であることによる請求項2~23、25~26の明確性
(2)請求項10に記載した「所定の中間軌道」の請求項1との関係が不明であることによる請求項10~23、25~26の明確性
(3)請求項10に記載した「所定」の意味が不明であることによる請求項10~23、25~26の明確性
(4)請求項11に記載した「評価値が0」であることと「干渉が発生していない」ことの関係が不明であることによる請求項11~23、25~26の明確性
(5)請求項4に記載した「分散共分散行列に共分散に正の値を付与する」の意味が不明であることによる請求項4~23、25~26の明確性
についての特許法第36条第6項第2号の取消理由は、本件訂正請求において、(1)は訂正事項2により請求項2における「所定」の中間教示点群が第1教示点群であることが明確となり、(5)は訂正事項4により請求項4における訂正前の「分散共分散行列に共分散に」という記載が「分散共分散行列における共分散に」と訂正されたことで明確となった。
また、(2)~(4)は請求項10~11が削除されたことにより、取消理由の対象が存在しない。
したがって、第1回取消理由通知において通知した明確性に係る取消理由で、本件特許を取り消すことはできない。
5 請求項10のサポート要件
第1回取消理由通知において通知した、訂正前の請求項10に対して通知した、発明の詳細な説明には、請求項10の発明特定事項における干渉が発生している中間軌道を所定の中間軌道とすることについて記載されておらず、当該発明特定事項に対応する技術的事項を、発明の詳細な説明に見出すことができない旨の特許法第36条第6項第1号の取消理由は、本件訂正により請求項10、及び請求項11~23、25~26のうち請求項10を引用する部分は削除され、取消理由の対象が存在しなくなったから、当該取消理由で、本件特許を取り消すことはできない。
6 小括
したがって、本件請求項1~9、12、15~23、25~26に係る特許は、第1回取消理由通知及び決定の予告で通知した取消理由によっては取り消すことができない。
第8 申立人の意見書における主張
申立人は、令和6年6月4日提出の意見書(以下、単に「意見書」という。)において、本件特許発明1及び本件特許発明24に関し、甲3について「図3及び段落0022における「図3の例では、第1の動作経路32に含まれる教示点PmとPnとの間で干渉が発生しているので、教示点Pmが始点、教示点Pnが終点として特定される。」との記載より、始点Piから終点Poまでの経路を規定する教示点Pmと教示点Pnを有する中間教示点群を設定することが開示されている。」とした上で、本件特許発明1が甲3発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであることを主張する。
この主張は、上記第7の1(1)ア(ア)で、甲3発明の第3の教示点<P1、P2・・・>が本件特許発明1の第1中間教示点に相当すると認定したのとは異なり、甲3の始点Piから終点Poまでの経路を規定する教示点Pmと教示点Pnのみからなる中間教示点群(第1の動作経路32)が、本件特許発明1の第1中間教示点群に相当することを主張するものであると認められる。
しかし、そのように、教示点Pmと教示点Pnのみからなる第1中間教示点群を認定すると、甲3の「教示点Pmが始点、教示点Pnが終点として特定される」という記載からみて、当該第1中間教示点群は、始点及び終点のみが存在し、変位を与えるべき他の第1中間教示点が存在しないし、仮に申立人が主張するように教示点Pmと教示点Pnを第1中間教示点群とみた場合に、中間教示点P1とP2は、教示点Pmと教示点Pnに加えて新たに追加した教示点であって、教示点Pmと教示点Pnに異なる変位を与えて設定した第2中間教示点群に該当しないから、申立人の上記の主張は失当であり、採用できない。
第9 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
特許異議申立書においては、第1回取消理由通知及び決定の予告において通知した以外に請求項11に対して、請求項に記載した「前記評価値が0となった場合を、前記ロボットアームと前記物体との間において干渉が発生していないと判定する」の事項について、人為的な取決めであり、自然法則を利用していないから、請求項11に係る特許は、特許法第29条第1項柱書きに規定する発明に該当せず、同項の規定に違反してされたものである旨の取消理由が申立てられた。
これに対して、当審では、上記請求項11に係る事項について、明確でない旨の取消理由を第1回取消理由通知で通知したが、本件訂正請求により請求項11は削除され、特許異議申立ての対象が存在しない。
第10 むすび
以上のとおりであるから、第1回取消理由通知及び決定の予告に記載した取消理由、及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件特許の請求項1~9、12、15~26に係る特許を取り消すことができない。そして、他に取り消すべき理由を発見しない。
また、本件特許の請求項10~11、13~14は、第2のとおり本件訂正で削除された。これにより本件特許異議の申立てについて、請求項10~11、13~14に係る特許に対する申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
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2023-700404