特許異議申立
2020-700079
粒子材料及び熱伝導物質
- 審判番号
- 2020-700079
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2019-531838
- 登録番号
- 6561220
- 請求日
- 2020年02月14日
- 審決日
- 2021年11月10日
- 公報発行日
- 2022年02月25日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】株式会社アドマテックス
- 【権利者代理人】特許業務法人 共立
- 【異議申立人】椎名 一男
- 【異議申立人】谷口 真魚
- 審判長/審判官
- 審判長 宮澤 尚之
- 審判官 伊藤 真明
- 審判官 後藤 政博
- 分類
- P1651.121-YAA(C01F) / P1651.536-YAA(C01F) / P1651.537-YAA(C01F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の5第9項、特許法第36条第4項第1号、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項、特許法第36条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6561220号発明「粒子材料及び熱伝導物質」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6561220号の明細書及び特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、2〕について訂正することを認める。
特許第6561220号の請求項1、2に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本件特許第6561220号(以下、「本件特許」という。)の請求項1、2に係る特許についての出願は、2019年(平成31年)2月18日を国際出願日とする出願であって、令和1年7月26日にその特許権の設定登録がされ、同年8月14日に特許掲載公報が発行された。その特許についての特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和 2年 2月14日 :特許異議申立人 椎名 一男(以下「申立
人1」という。)、特許異議申立人 谷口
真魚(以下「申立人2」という。)によ
る請求項1、2に係る特許に対する特許異
議の申立て
同年 5月19日付け:取消理由通知
同年 7月27日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提
出
同年 9月10日 :特許権者による手続補正書の提出
同年11月20日 :申立人1、申立人2による意見書の提出
同年12月15日付け:訂正拒絶理由通知
令和 3年 1月21日 :特許権者による手続補正書及び意見書の提
出
同年 2月 4日 :申立人2による上申書の提出
同年 同月16日付け:申立人1、2に対する審尋
同年 5月25日付け:取消理由通知(決定の予告)
同年 7月27日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提
出
なお、令和3年2月16日付けの審尋に対して、申立人1、2からの応答はなかった。
また、令和3年8月17日付けで通知書(訂正請求があった旨の通知)を申立人1、2に送付したが、申立人1、2からの応答はなかった。
第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
令和3年7月27日に提出された訂正請求書における訂正請求(以下、「本件訂正請求」といい、本件訂正請求による訂正を「本件訂正」という。)は、次の訂正事項1~4からなる(下線部は訂正箇所を示す。)。
なお、本件訂正請求により、令和2年7月27日にされた訂正の請求(以下、「先の訂正請求」という。)は、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1について、「α化率40~85%」との記載を、「α化率68~85%」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2も同様に訂正する。)。
(2)訂正事項2
明細書の段落【0018】について、「本明細書における「設備摩耗試験」は、」との記載を、「本明細書における「設備摩耗試験の結果」は、以下のように求めた値である。」に訂正し、段落【0018】の最後に「鋼球のみでの試験も行い、鋼球のみでの質量増減値に対する相対値を「設備摩耗試験の結果」とする。」との記載を追加する。
(3)訂正事項3
明細書の段落【0027】の【表1】、段落【0032】の【表2】について、「設備摩耗試験(g/100g)」との記載を、「設備摩耗試験(g/10g)」に訂正する。
(4)訂正事項4
明細書の段落【0028】、【0029】、【0030】、【0031】、【0033】について、「円形度」との記載を、「球形度」に訂正する。
なお、訂正明細書では、段落【0024】、段落【0027】の【表1】、段落【0032】の【表2】について、同様に「円形度」との記載を、「球形度」に訂正しているため、これらの訂正も訂正事項4に含める。
(5)一群の請求項について
訂正前の請求項2は、訂正前の請求項1を引用し、これら請求項1、2は一群の請求項を構成するところ、上記訂正事項1に係る特許請求の範囲の訂正は、特許法第120条の5第4項の規定に従い、この一群の請求項1、2を訂正の単位として請求されたものである。
また、上記訂正事項2~4に係る明細書の訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第4項の規定に従い、この一群の請求項1、2を訂正の単位として請求されたものである。
2 訂正要件(訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否について)の判断
(1)訂正事項1について
ア 訂正事項1は、請求項1に記載された「α化率40~85%」との記載を、「α化率68~85%」に訂正して、「α化率」をより限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 「α化率40~85%」との記載を、「α化率68~85%」に訂正することは、この数値範囲の境界値である「68」%が段落【0027】の【表1】に記載されており、このような境界値を下限とした「68~85%」なる数値範囲が記載されていることは明細書の記載から自明な事項であるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものである。
ウ 訂正事項1は、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、また、当該訂正事項により、訂正前の特許請求の範囲には含まれないとされていた発明が訂正後の特許請求の範囲に含まれることとなるという事情は認められないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(2)訂正事項2について
ア 訂正事項2は、段落【0018】に記載された「設備摩耗試験」の内容を訂正して、段落【0026】の記載に整合させるものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 「設備摩耗試験」の内容は、段落【0026】に記載されているから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものである。
ウ 訂正事項2は、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、また、当該訂正事項により、訂正前の特許請求の範囲には含まれないとされていた発明が訂正後の特許請求の範囲に含まれることとなるという事情は認められないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(3)訂正事項3について
ア 訂正事項3は、段落【0027】、【0032】に記載された「設備摩耗試験(g/100g)」との記載を「設備摩耗試験(g/10g)」に訂正するものである。
一方、段落【0018】には「設備摩耗試験」として「摩耗試験前後における10gあたりの鋼球の質量減少量」を計測することが記載されており、段落【0026】には実施例においても「摩耗試験10gあたりの質量減少量」を計測することが記載されていることから、「設備摩耗試験」は「g/10g」を単位とするものであること、すなわち、鋼球「10g」あたりの質量減少量「g」を単位とするものであることが正しく、「g/100g」は誤記であることが明らかであるので、上記訂正は、この正しい記載に整合させるものであるから、誤記の訂正を目的とするものである。
イ 「設備摩耗試験」の単位が「g/10g」であること、すなわち、鋼球「10g」あたりの質量減少量「g」を単位とする量であることは、段落【0026】に記載されているから、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものである。
ウ 訂正事項3は、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、また、当該訂正事項により、訂正前の特許請求の範囲には含まれないとされていた発明が訂正後の特許請求の範囲に含まれることとなるという事情は認められないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(4)訂正事項4について
ア 訂正事項4は、段落【0024】、【0027】~【0033】に記載された「円形度」との記載を「球形度」に訂正して、段落【0016】等の記載に整合させるものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 「球形度」については、段落【0016】等に記載されており、明細書において「球形度」と「円形度」を同一の意味で用いていることは自明な事項であるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものである。
ウ 訂正事項4は、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、また、当該訂正事項により、訂正前の特許請求の範囲には含まれないとされていた発明が訂正後の特許請求の範囲に含まれることとなるという事情は認められないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(5)独立特許要件について
特許異議申立ては、全ての請求項1、2についてされているので、訂正事項1~4に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
3 小括
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第2号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、本件特許の明細書及び特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、2〕について訂正することを認める。
第3 特許異議の申立てについて
1 本件発明
本件訂正請求が認められることは前記第2に記載のとおりであるので、本件訂正請求により訂正された請求項1、2に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」、「本件発明2」といい、まとめて「本件発明」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1、2に記載された事項により特定される次のとおりのものである(下線部は訂正箇所を示す。)。
「【請求項1】
アルミナを主成分とし、体積平均粒径が70~200μm、球形度が0.89以上0.96以下で、α化率68~85%であって、
設備摩耗試験の結果が0.017g以下である粒子材料。
【請求項2】
請求項1に記載の粒子材料と、
前記粒子材料を分散する樹脂材料と、
を有する熱伝導物質。」
2 取消理由の概要
令和3年5月25日付けの取消理由通知(決定の予告)で通知した取消理由の概要は、次のとおりである。
(1)取消理由1(明確性)
ア α化率の測定方法について
先の訂正請求に訂正された特許請求の範囲(以下、「先の訂正特許請求の範囲」という。)には、「粒子材料のα化率68~85%であ」るとの特定事項が記載されている。
一方、先の訂正請求により訂正された明細書(以下、「先の訂正明細書」という。)には、段落【0013】に「なお、α化率とは、粒子材料中に含有されるアルミナ全体を質量基準として算出された、α結晶相のアルミナ質量の割合である。」と記載されているのみであり、α化率の具体的な測定方法については記載されていない。
この点に関して、X線回折法でα化率を測定する場合には、基準となるαアルミナ以外の相の選択が必要になるという技術常識(甲第1号証、引用文献1~3の記載(下記4(1)ア(エ)、4(8)~(10))を参照。)からすれば、基準となるαアルミナ以外の相がどのようなものであるか不明である以上、当業者といえどもα化率の意味を明確に把握することができず、先の訂正特許請求の範囲の上記特定事項を明確に把握することができない。
したがって、先の訂正特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
イ 設備耐摩耗試験の結果について
先の訂正特許請求の範囲には、「粒子材料の設備摩耗試験の結果が0.017g以下である」との特定事項が記載されている。
一方、先の訂正明細書においては、設備摩耗試験の結果について、段落【0018】に「…摩耗試験前後における10gあたりの鋼球の質量減少量を測定する。」と記載されているが、段落【0026】には、「…摩耗試験10gあたりの質量減少量を計測した。鋼球のみでの試験も行い、鋼球のみでの質量増減値に対する相対値とした。結果を表1に併せて示す。」とも記載されている。
そうすると、先の訂正明細書の記載からは、設備摩耗試験の結果が上記「鋼球の質量減少量」自体を意味するのか、そうではなく、上記「鋼球のみでの試験も行い、鋼球のみでの質量増減値に対する相対値」を意味するのか、を把握することができず、先の訂正特許請求の範囲の上記特定事項を明確に把握することができない。
したがって、先の訂正特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
<甲号証及び引用文献一覧>
甲第1号証:特開2011-102215号公報
引用文献1:特開2014-9140号公報
引用文献2:特開2003-192339号公報
引用文献3:特開2014-69996号公報
3 取消理由において採用しなかった特許異議申立理由の概要
申立人1、2が主張する特許異議申立理由のうち、上記2の取消理由において採用しなかった特許異議申立理由は、概略、以下のとおりである。
以下、申立人1による特許異議申立書を申立書1、申立人2による特許異議申立書を申立書2という。
(1)申立理由1(実施可能要件)
ア 申立理由1-1
本件特許に係る設定登録時の明細書(以下、「設定登録時明細書」という。)の発明の詳細な説明の段落【0013】の記載から、α化率がアルミナ中におけるα結晶相の割合であることはわかるが、得られた粒子材料のα化率をどのようにして測定するのかについては、発明の詳細な説明には記載がなく、その測定方法については不明であるから、設定登録時の請求項1に係る発明で特定するα化率を有する粒子材料が得られているかどうか判断することができないため、当業者といえども設定登録時の請求項1に係る発明を実施することはできない。
したがって、本件特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものであり、同法第113条第4号に該当するため、取り消されるべきものである(申立書1第4頁下から11行~第6頁1行)。
イ 申立理由1-2
設定登録時明細書の発明の詳細な説明の段落【0024】の記載から、α化率を高くする条件下では、球形度は低くなり、逆に、α化率を低くすると、球形度が高くなるという関係を有するといえるところ、発明の詳細な説明の段落【0027】に記載された試験例2は、α化率および球形度の双方が、試験例1よりも低下していることから、上記関係を有しておらず、段落【0024】に記載された条件ではなく、特別な条件下で製造されたものと推測できるが、発明の詳細な説明には、このような特別な条件が記載されていないから、試験例2の粒子材料を得るには、当業者に期待し得る程度を超える試行錯誤が必要になる。
したがって、本件特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものであり、同法第113条第4号に該当するため、取り消されるべきものである(申立書1第6頁2行~第7頁下から7行)。
(2)申立理由2(サポート要件)
ア 申立理由2-1
設定登録時の請求項1に係る発明のα化率の測定方法は設定登録時明細書の発明の詳細な説明に記載されていないが、α化率をX線回折法で測定するとしても、X線回折装置の電流値や電圧値が異なるだけでも、得られるピーク強度に差が生じるため、α化率の測定結果は、測定に用いた電流値や電圧値の条件下での値となり、また、アルミナを構成する各相のどのピークを選択するかによってα化率が大きく変わることが想像され、さらに、設定登録時の請求項1に係る発明は「アルミナを主成分とし」と特定とし、段落【0012】の記載からすれば50%未満のアルミナ以外の無機材料を含有することを許容するが、アルミナ全体の量をどのようにして算出するか特定されていない。
要すれば、設定登録時の請求項1に係る発明は、α化率の測定方法が特定されていないから、任意の方法でα化率を測定した結果、これが設定登録時の請求項1に係る発明のα化率の条件を満たしていても、本件発明の課題を解決できるとは限らず、設定登録時の請求項1に係る発明は発明の詳細な説明に記載されたものであるとはいうことができない。
したがって、本件特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものであり、同法第113条第4号に該当するため、取り消されるべきものである(申立書1第7頁下から1行~第10頁2行)。
イ 申立理由2-2
実施例となる試験例2と試験例6の記載をもって、設定登録時の請求項1に係る発明のα化率が40%以上68%未満の範囲まで、拡張ないし一般化することはできないから、設定登録時の請求項1に係る発明は発明の詳細な説明に記載されたものであるとはいうことができない。
したがって、本件特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものであり、同法第113条第4号に該当するため、取り消されるべきものである(申立書1第10頁3行~第11頁下から7行)。
ウ 申立理由2-3
設定登録時明細書の発明の詳細な説明の段落【0027】、【0032】に記載される試験例1~7には、粒子材料の特性値の一つとして「円形度」が記載されており、粒子材料の「球形度」は記載されていないから、設定登録時の請求項1に係る発明の実施例は発明の詳細な説明に記載されていない。
仮に、試験例1~7の「円形度」を「球形度」と解しても、α化率を高くすることで熱伝導率が向上し、設備摩耗性が上昇すること、球形度を高くすることで設備摩耗性が低下すること、という機能作用と試験例1~7を参酌すると、0.96未満の球形度を有する粒子材料の設備摩耗性が低いこと、68%未満のα化率を有する粒子材料の熱伝導性が高いことを理解することができない。
したがって、設定登録時の請求項1に係る発明において0.96未満の球形度、68%未満のα化率の部分は、熱伝導性と設備への攻撃性の低下との両立し、本件発明の課題を解決できることを当業者が認識できない。
また、90μmより大きい粒径、77%を超えるα化率を有するか、又は、0.015を超える設備摩耗試験の結果を示す粒子材料に関しても同様である。
したがって、本件特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものであり、同法第113条第4号に該当するため、取り消されるべきものである(申立書2第10頁下から12行~第12頁下から3行)。
(3)申立理由3(明確性)
設定登録時明細書の発明の詳細な説明の段落【0017】、【0018】、【0026】、【0027】の記載からすれば、設備摩耗試験は粒子材料10g当たりの鋼球の摩耗量であるのか、あるいは粒子材料100gあたりの鋼球の摩耗量であるのか不明であり、鋼のみでの質量増減値に対する相対値としたとあるものの、その数値が「0.017g」という絶対量になっているから、「0.017g」とはどのような数値であるか不明であるから、設定登録時の請求項1に係る発明は明確でない。
したがって、本件特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものであり、同法第113条第4号に該当するため、取り消されるべきものである(申立書1第11頁下から1行~第13頁13行)。
(4)申立理由4(進歩性)
設定登録時の請求項1、2に係る発明は、甲第1号証~甲第6号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号の規定に該当するため、取り消されるべきものである(申立書2第7行14行~第10頁下から15行)。
<甲号証一覧>
甲第1号証:特開2011-102215号公報
甲第2号証:「充填用アルミナ」、日本軽金属株式会社商品紹介、<https://www.nikkeikin.co.jp/pdf/products/chemical/alumina.pdf>
甲第3号証:特開2002-348116号公報
甲第4号証:大木道則、外3名編、「化学大辞典」、第1版、1989年10月20日、p.865
甲第5号証:特開平8-295971号公報
甲第6号証:特開2001-266332号公報
甲第7号証:平成30年(行ケ)第10110号事件、同年(行ケ)第10112号事件、同年(行ケ)第10155号事件の知財高裁判決
4 甲号証及び引用文献の記載事項について
(1)甲第1号証の記載事項及び引用発明について
ア 甲第1号証の記載事項
甲第1号証には、以下の事項が記載されている(当審注:下線は当審による。「…」は当審による省略を意味する。以下同様。)。
(ア)「【技術分野】
【0001】
本発明は球状アルミナ粉末、その製造方法及び用途に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、IC等の発熱性電子部品の高機能化と高速化の進展に伴い、それが搭載された電子機器の発熱量が増大しており、半導体封止材に対しても高い放熱特性が求められている。半導体封止材の放熱特性を高めるには、熱伝導性の高いアルミナ粉末をゴム又は樹脂に含有させればよいが、一般的なバイヤー法アルミナ粉末では高充填時の著しい増粘現象により、アルミナの熱伝導特性を十分に活かすことが出来ていなかった。」
(イ)「【発明の効果】
【0007】
本発明の球状アルミナ粉末は、樹脂に高充填した場合にも流動特性が高く、充填材に適している。特に、放熱部材と半導体封止材の充填材に適している。」
(ウ)「【0013】
球状アルミナ粉末の平均粒子径は、用途に応じて種々選択される。後記する本発明の製造方法によれば、平均粒子径が100μm以下、特に10~95μmの球状アルミナ粉末を容易に製造することができる。平均粒子径は、原料の平均粒子径をコントロールすることによって増減できる。
【0014】
本発明における球状アルミナ粉末の平均粒子径を100μm以下としたのは、平均粒子径が100μmを越えると平均球形度を0.90以上にすることが困難となるためである。高い流動特性を実現するためには平均球形度を0.90以上にすることが必要であり、好ましくは平均球形度が0.95以上である。
【0015】
平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定機シーラスグラニュロメーター「モデル1064」を用いて測定した。平均粒子径25μm以下の粒子についてはサンプル1g、25~45μmの粒子についてはサンプル2g、45~120μmの粒子についてはサンプル4gを秤量し、直接シーラスグラニュロメーターのサンプル導入部に投入する。シーラスグラニュロメーター粒度分布測定は溶媒に水を使用し、ポンプ回転数は60rpmで行った。
【0016】
樹脂に球状アルミナ粉末を高充填するには、球状アルミナ粉末の平均球形度を0.90以上にすることが必要であり、特に0.95以上が好ましい。球状アルミナ粉末の平均球形度は火炎形成に用いる燃料ガス(例えばLPG)量や原料粉末のフィード量を変化させることによって増減させることができる。
【0017】
平均球形度測定
平均球形度は、Sysmex社製フロー式粒子像解析装置「FPIA-3000」を用いて測定する。平均球形度はFPIA-3000から得られる平均円形度の数値を2乗することで得られる。平均円形度は、フロー式粒子像解析装置「FPIA-3000」が、一個の粒子投影像の周囲長と粒子投影像の面積に相当する円の周囲長を解析し、式(円形度)=(粒子投影像の周囲長)/(粒子投影像の面積に相当する円の周囲長)、により求められる。今回の球形度測定に際しては36000個当たりの平均値を自動算出して求めた。本測定は高倍率撮像ユニットで行い、対物レンズにLUCPLFLN20×(倍率20倍)、NDフィルタにAND-40C-70(透過率70%)を使用した。…」
(エ)「【0037】
α相含有率の測定
α相アルミナ粉末AA-05(住友化学社製)とθ相アルミナ粉末タイミクロンTM-100D(大明化学社製)を0:10、5:5、10:0の質量割合で混合した粉末のX線回折測定を行い、2θ=43°に検出されるα相のピークの積分強度を算出し、混合割合と積分強度の検量線を作成した。
次に球状アルミナ粉末のX線回折測定を行い、2θ=43°のピークの積分強度を算出し、検量線からα相含有率を求めた。なお、X線回折にはJDX-3500型X線回折装置(日本電子社製)を使用した。その結果を表2に示す。」
(オ)「【0042】【表2】
[図:0001381628000001.jpg]
」
イ 甲第1号証に記載された発明
上記アの記載を【表2】の「粉末L」に注目して整理すると、甲1号証には、以下の発明が記載されている。
「δ相ピーク強度/θ相ピーク強度の値が1.3、平均球形度が0.93、α相アルミナ粉末とθ相アルミナ粉末を混合した粉末のX線回折測定を行い、2θ=43°に検出されるα相のピークの積分強度を算出し、混合割合と積分強度の検量線を作成し、この検量線から求められたα相含有率が46.3%、平均粒子径が91μmの球状アルミナ粒子。」(以下「甲1発明」という。)
(2)甲第2号証の記載事項について
甲第2号証には、充填用アルミナ「LS-210B」について、アルミナ(Al2O3)含有量が99.9%であることが記載されている。
(3)甲第3号証の記載事項について
甲第3号証には、以下の事項が記載されている。
「【0002】
【従来の技術】近年、電子部品の高集積化、高密度化に伴って、チップ当りの電力消費量も増大の一途にあり、発生した熱を効率良く放熱し、電子部品素子の温度上昇を少なくすることが重要な開発課題になっている。そして、半導体の絶縁封止材料や、部品を実装する基板材料、放熱スペーサーなどの充填剤として、熱伝導性の優れたアルミナ、特にコランダム(α-アルミナ)が注目され、さまざまな分野で使用されている。
【0003】このようなコランダム粒子としては、電融アルミナ、焼結アルミナなどの粉砕品に、水酸化アルミニウムを単独で、または結晶促進剤として公知の他の薬剤を併用して添加し、焼成することでカッティングエッジを有しない、形状が球状化したコランダム粒子が提案されている(特開平5-294613号公報)。
【0004】また、バイヤー法のアルミナを高温プラズマや酸水素炎中に噴射し、溶融させながら急冷することにより丸み化する、いわゆる溶射法が知られているが、この場合は、熱原単位が大きく、経済的でないばかりか、得られるアルミナはα-アルミナが主成分ながら、δ-アルミナなどを副生物として含み、熱伝導率を小さくするため、好ましくない。
【0005】一方、コランダム粒子としては電融アルミナや焼結アルミナの粉砕品が知られているが、いずれも鋭いカッティングエッジを持つ不定形状の粒子であり、ゴム・プラッスチックに充填する際、混練機、成形金型等の磨耗が大きく好ましくない。」
(4)甲第4号証の記載事項について
甲第4号証には、以下の事項が記載されている。
「酸化アルミニウム[aluminium oxide]=アルミナ(alumina).Al2O3,式量101.96.狭い意味ではα-アルミナ(鋼玉*;corundum)を示すが,このほかにアルミナ水和物の熱処理過程で各種の変態が生成する.β-,γ-,δ-,χ-,η-,θ-,κ-アルミナなどが知られている.…狭義の酸化アルミニウム,鋼玉(コランダム,α-Al2O3)は,O2-イオンがほぼ六方最密充填に配列し,層と層との間に六角形にAl3+が入る(Alの配位数は6).…硬度(モース)8.8.…このα-Al2O3は純粋なアルミナの最も安定な形であり,他の変態も熱処理により,最終的にα-Al2O3に転移する.用途は人造宝石の原料のほか,非常に硬いので研削材,切削工具,研磨剤*として用いられる.」(p.865左欄下から16行~右欄18行)
(5)甲第5号証の記載事項について
甲第5号証には、以下の事項が記載されている。
「【0015】本発明では強化材としてα-アルミナ粉末が用いられる。α-アルミナ以外のアルミナは遷移アルミナと呼ばれ、必ずしも安定な化合物ではなく、また粒子そのものの強度が低いために、遷移アルミナの粉末を強化材として用いた金属マトリックス複合材料は機械的強度や耐摩耗性が劣る。」
(6)甲第6号証の記載事項について
甲第6号証には、以下の事項が記載されている。
「【0002】
【従来の技術】従来から、磁気テープ等の磁気記録媒体には、強度の向上、変形、損傷の防止、巻取り、巻戻し時の乱巻の防止を目的として、磁性層と反対側の非磁性支持体上にバックコート層が設けられている。…α-アルミナを含有するバックコート層を備えた磁気記録媒体が示されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところが、…α-アルミナは、極めて硬度が高いため(モース硬度9)、これをバックコート層内に含有させると、ガイドピンなどを傷つける場合がある。…
【0008】本発明に使用されるγ-アルミナは、粒径が0.02~0.2μmの微粒子とする。γ-アルミナは、α-アルミナと比して硬度が低い(モース硬度6)という特性を有する。このため、バックコート層内に含有させた場合でも、ガイドピン、磁気ヘッド等を摩耗し、傷つけることはない。…」
(7)甲第7号証の記載事項について
甲第7号証には、以下の事項が記載されている。
「(1) 本件発明1のサポート要件の適合性について
ア 特許法36条6項1号は,特許請求の範囲の記載に際し,発明の詳細な説明に記載した発明の範囲を超えて記載してはならない旨を規定したものであり,その趣旨は,発明の詳細な説明に記載していない発明について特許請求の範囲に記載することになれば,公開されていない発明について独占的,排他的な権利を請求することになって妥当でないため,これを防止することにあるものと解される。
そうすると,所定の数値範囲を発明特定事項に含む発明について,特許請求の範囲の記載が同号所定の要件(サポート要件)に適合するか否かは,当業者が,発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識から,当該発明に含まれる数値範囲の全体にわたり当該発明の課題を解決することができると認識できるか否かを検討して判断すべきものと解するのが相当である。」(第83頁9行~20行)
(8)引用文献1の記載事項について
引用文献1には、α化率の測定方法に関して、以下の事項が記載されている。
「【0010】
本発明のアルミナフィラーのα化率は80%以上であり、85%以上であることが好ましい。α化率が高いほど熱伝導率の向上が期待できる。
α化率はX線回折測定においてα-アルミナの回折角度2Θ=68.2°のピーク強度をaとし、δ-アルミナの回折角度2Θ=67.3°のピーク強度をbとすると下式(1)で評価できる。
α化率=a/(a+b)×100 ・・・・・・・・(1)」
(9)引用文献2の記載事項について
引用文献2には、α相の比率の測定方法に関して、以下の事項が記載されている。
「【0035】α相を主相とするとは、アルミナ粒に占めるα相の比率が95質量%以上、より好ましくは98質量%以上であることを示す。α相の比率の求め方は以下の方法による。
【0036】アルミナ粒のX線回折分析を下記の条件で行う。
【0037】ターゲット Cu・α
スリット 0.3mm
スキャンスピード 2度/分
スキャン範囲 2θ=10~70度
【0038】2θ=68.2度のピーク(αアルミナピーク)高さをA、2θ=63.1度のピーク(κアルミナピーク)高さをB、2θ=69.5度のベースラインの値をCとして、
α相の比率=(A-C)/((A-C)+(B-C))×100
、とする。」
ここで、引用文献2に記載される「α相の比率」は「α化率」と同義であることは明らかである。
(10)引用文献3の記載事項について
引用文献3には、α化率の測定方法に関して、以下の事項が記載されている。
「【0063】
α-アルミナのα化率とは、α-アルミナになっているアルミナの割合を示すものである。本明細書においては、「高α化率」とは、α化率80%以上であることをいう。α-アルミナのα化率は、X線回折装置(例えば、理学電気株式会社製X線回折装置MINIFLEX)を用いて得た微粒子α-アルミナの回折スペクトルから2θ=25.6°の位置に現れるα-アルミナα相(012面)のピーク高さI25.6と2θ=46°の位置に現れるγ相、η相、χ相、κ相、θ相及びδ相のピーク高さI46とから(式1)により算出することができる。
α化率=I25.6/(I25.6+I46)×100 (式1)」
5 当審の判断
(1)取消理由1(明確性)について
ア α化率の測定方法について
特許権者及び申立人の主張を踏まえて、改めてα化率の測定方法について検討する。
甲第1号証、引用文献1~3の記載(上記4(1)ア(エ)、4(8)~(10))によれば、X線回折法でα化率を測定する場合には、基準となるα結晶相以外の相の選択が必要になることが技術常識として把握できる。
また、この選択は、α化率を測定するにあたり、α結晶相以外がどのような相で構成されるかを前提とした上で行うものと解され、当該選択によって測定の基準が変化するので、α化率の測定結果もまた変化する可能性が高いことは当業者が理解できることである。
一方、アルミナにおいてα結晶相以外に存在し得る相の種類は有限であって且つ既知であるため、それらのすべての相を考慮することは可能であり、しかも、その各相について、存在比が既知である試料によって作成された検量線を用いて未知の試料における存在比を測定することが可能であることから、α結晶相以外に存在し得る相のすべての存在比をこの手段で測定して、α化率を特定することも技術常識といえ、しかも、アルミナにおいて存在し得るすべての相を考慮することで、一部の相を考慮するよりも正確にアルミナ中のα結晶相の質量の割合を表したα化率が得られることも技術常識から予測できる。
そうすると、本件訂正請求により訂正された明細書(以下、「本件明細書」という。)の段落【0013】には、基準となるαアルミナ以外の相について記載されていないことも考慮すると、本件発明においては、X線回折法でα化率を測定する際に、基準となるα結晶相以外の相の選択を行っているというより、アルミナにおいてα相以外に存在し得る相をすべて考慮して、より正確にアルミナ中のα結晶相の質量の割合を表したα化率を測定していると解する方が自然である。
また、このようにX線回折法でα化率を測定するためには、アルミナにおいてα結晶相以外に存在し得るすべての相のそれぞれについて測定に用いるピークを選択することも必要になるが、どのピークを選択しても測定された各相の存在比、及び、それによって定まるα化率は原理上変わることはないと解され、また、これらがピークの選択によって有意に変わるとする証拠もない。
したがって、本件明細書の記載及び技術常識を考慮すれば、α化率の測定方法を把握することができ、本件発明のα化率を特定できるから、本件発明の「α化率」は、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに明確でないとはいえない。
イ 設備耐摩耗試験の結果について
本件訂正により段落【0018】と段落【0026】の内容が整合したものになり、「設備摩耗試験の結果」とは、「鋼球のみでの試験も行い、鋼球のみでの質量増減値に対する相対値」を意味することが明確に把握することができるものとなったから、本件発明の「設備摩耗試験の結果」は、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに明確でないとはいえない。
ウ 小活
したがって、取消理由1に理由はない。
(2)申立理由1(実施可能要件)について
ア 申立理由1-1について
上記(1)アのとおり、本件明細書の記載及び技術常識を考慮すれば、α化率の測定方法を把握することができ、本件発明のα化率を特定できるから、申立理由1-1に理由はない。
イ 申立理由1-2について
本件明細書には、本件発明1の粒子材料の製造に関して、以下の事項が記載されている。
(ア)「【0020】
・粒子材料の製造方法 粒子材料は、金属アルミニウム粉末を酸化雰囲気中で酸化・燃焼させた後、急冷する爆燃法(VMC法)、アルミナからなる粉末を加熱溶融した後、急冷する溶融法、ゾルゲル法などにより球形度の高いアルミナ粒子を製造する。その後、必要な程度にまでα相に変換することで製造できる。α相への変換はα化が進行する高温に曝す時間により制御でき、適正なα化率になるように時間を制御する。加熱による粒子形状の変化が小さくなるように僅かな亜鉛(1ppm~5000ppm)を添加しても良い。またVMC法,溶融法で供給する原料,燃料,酸素の量や炉内の雰囲気を調整することでも製造できる。」
(イ)「【0024】
本発明の粒子材料及び熱伝導物質について実施例に基づき以下詳細に説明を行う。体積平均粒径90μmのアルミナ粒子について火炎中に投入した後、急冷することで表1に示すようにα化率及び円形度が異なる各試験例の試験試料である粒子材料を得た。α化率は燃料供給量を下げ,支燃性ガスの供給量を燃料との理論空燃比の1.5倍ほどとし,原料投入量を上げることで高くすることができた。円形度は燃料供給量を上げ,支燃性ガスの供給量を理論空燃比とし,原料投入量を下げることで高くすることができた。」
上記(イ)には、アルミナ粒子について火炎中に投入した後、急冷する溶融法においてα化率や球形度を制御する手段の一例が記載されており、これによると、α化率を高める条件はアルミナ粒子の処理温度が低くなるものであり、球形度を高める条件はアルミナ粒子の処理温度が高くなるものと理解できる。
また、上記(ア)には、「α相への変換はα化が進行する高温に曝す時間により制御でき、適正なα化率になるように時間を制御する」と記載されているが、相変態に関する技術常識を考慮すれば、ある特定の結晶相が安定な温度に保持する時間によって、当該結晶相の含有率を制御できることは明らかであるから、当該記載は、このような技術常識が本件発明のα相の制御においても適用できることを示しているといえる。
そして、例えば、「燃料供給量」は火炎の形状等にも影響するため、「燃料供給量」、「支燃性ガスと燃料の比率」及び「原料投入量」の3つのパラメータは、高温での滞留時間にも影響することから、この3つのパラメータを独立して制御すれば、処理温度のみならず、高温での滞留時間も調整でき、これによってα化率を制御できることが理解できる。
そうすると、「燃料供給量」、「支燃性ガスと燃料の比率」及び「原料投入量」の3つのパラメータを個別に制御すれば、処理温度及び高温での滞留時間が調整でき、これによってα化率及び球形度をある程度個別に制御できることが理解できるから、α化率を高めると、球形度が低くなり、α化率を低くすると、球形度が高くなる方向にしか制御できないということが発明の詳細な説明の記載から理解されるものではない。
したがって、本件明細書に記載されている試験例1~4のアルミナ粒子においては、試験例1、3、4のアルミナ粒子は、α化率が高くなると球形度が低くなっているのに対し、試験例2のアルミナ粒子においては、球形度は試験例3、4よりも高いが、α化率は試験例1、3、4のアルミナ粒子より低くなっており、α化率と球形度の関係が、上記(イ)に記載されている方法から想定される関係と異なっているとしても、当業者が、「燃料供給量」、「支燃性ガスの供給量」及び「原料投入量」の3つのパラメータを制御することでα化率及び球形度をある程度個別に制御することは可能であり、この3つのパラメータの具体的な条件を見出すことは、これらのパラメータと処理温度及び高温での滞留時間との対応関係が当業者であれば予測できることから、過度の試行錯誤を要するとまではいえない。
よって、本件明細書の発明の詳細な説明は、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願当時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、本件発明の粒子材料を製造することができる程度に記載されているというべきであるから、申立理由1-2に理由はない。
(3)申立理由2(サポート要件)について
ア 申立理由2-1
上記(1)アのとおり、本件明細書の記載及び技術常識を考慮すれば、α化率の測定方法を把握することができ、本件発明のα化率を特定できる。
そこで、上記(1)アで検討していないが申立理由2-1で具体的に主張されている点について検討すると、X線回折装置の電流値や電圧値が異なるだけでピーク強度に差が生じるとしても、そうであるからこそ、X線回折装置を用いて結晶相の定量分析を行う場合にはピーク強度の絶対値ではなく、基準となる物質のピーク強度との比を用いて評価するのが一般的であるから、電流値や電圧値の大小によって各相の存在比やα化率の結果が変化するとは考えにくく、このような変化が生じることを示す具体的な証拠もないことから、この点は、α化率の測定方法を把握することができ、本件発明のα化率を特定できるという結論に影響しない。
さらに、50%未満のアルミナ以外の無機材料を含有する場合に、アルミナ全体の量をどのようにして算出するかについて、無機材料の組成分析の手段は様々なものが存在することが技術常識であり、そのいずれかを用いればよいのであるから、α化率の測定方法を把握することができ、本件発明のα化率を特定できるという結論に影響しない。
したがって、申立理由2-1に理由はない。
イ 申立理由2-2
申立理由2-2は、設定登録時の請求項1に係る発明のα化率が40%以上68%未満の範囲を含むことを前提とするものであるところ、本件訂正により、本件発明1のα化率は「68~85%」となったから、申立理由2-2に理由はない。
ウ 申立理由2-3
本件訂正により、試験例1~7には、粒子材料の特性値の一つとして「球形度」が記載されるものとなったため、これを前提にサポート要件を検討する。
なお、この検討にあたって、甲第7号証(上記4(7))に記載されるとおり、所定の数値範囲を発明特定事項に含む発明について、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号所定の要件(サポート要件)に適合するか否かは、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識から、当該発明に含まれる数値範囲の全体にわたり当該発明の課題を解決することができると認識できるか否かを検討して判断すべきものであることはいうまでもない。
まず、本件発明が解決しようとする課題は、本件明細書の段落【0005】に「本発明は、上記実情に鑑み完成したものであり、熱伝導性が高い粒子材料、及びその粒子材料を含有する熱伝導物質を提供することを解決すべき課題とする。」と記載されていることから、熱伝導性が高い粒子材料を提供することであると認められる。
そうすると、本件発明が、発明の詳細な説明に記載及び出願時の技術常識から熱伝導性が高い粒子材料と認識できる範囲のものであれば、本件発明は、サポート要件に適合するものといえる。
そこで、本件発明1の発明特定事項である「体積平均粒径が70~200μm」、「球形度が0.89以上0.96以下」、「α化率68~85%」のそれぞれ数値範囲に関して、当該数値範囲内で熱伝導性が高い粒子材料となると当業者が認識できるのかを以下検討する。
(ア)体積平均粒径について
本件明細書の段落【0031】~【0033】には、体積平均粒径の下限となる「70μm」の場合の実施例(試験例6)が記載されている。
一方、段落【0014】の記載から、体積平均粒径が大きいほど、熱伝導率が大きくなることが当業者に理解されるから、「体積平均粒径が70~200μm」の範囲内で熱伝導性が高い粒子材料が得られることは当業者が認識できる。
(イ)球形度について
本件明細書の段落【0027】~【0030】には、球形度が「0.96」の場合の実施例(試験例2)が記載されている。
一方、段落【0015】の記載及び【0027】の【表1】の試験例2~4を考慮すれば、球形度が0.96(試験例2)の周辺に球形度が0.83(試験例3)よりも熱伝導率が高い領域が存在することが当業者に理解されるから、「球形度が0.89以上0.96以下」の範囲内で熱伝導性が高い粒子材料が得られることは当業者が認識できる。
(ウ)α化率について
本件明細書の段落【0027】~【0030】には、α化率の下限となる「68%」の場合の実施例(試験例2)が記載されている。また、本件明細書の段落【0031】~【0033】には、α化率が「77%」の場合の実施例(試験例6)が記載されている。
そして、段落【0027】~【0030】の試験例1~4を比較すると、熱伝導率への影響はα化率よりも球形度の方が強いことが理解されるから、本件明細書の段落【0003】に記載されるように、「アルミナはα化率が高いほど熱伝導性に優れている」ことが知られているので、試験例6において、仮に、α化率が68%になった場合を想定すると、試験例6より若干の熱伝導率の低下は予想されるものの、その球形度(0.96)が大きく影響することで、熱伝導性が高い粒子材料が得られると認識できる。
したがって、本件発明1の発明特定事項である「体積平均粒径が70~200μm」、「球形度が0.89以上0.96以下」、「α化率68~85%」のそれぞれ数値範囲に関して、当該数値範囲内で熱伝導性が高い粒子材料となると当業者が認識できる。
なお、本件発明1の他の発明特定事項である「アルミナを主成分」とすることは、アルミナの含有量に応じた熱伝導性が得られることは当業者が理解できるし、「設備摩耗試験の結果が0.017g以下である」については、直接、熱伝導性に関係する特性ではない。
そうすると、本件発明1は、発明の詳細な説明に記載及び技術常識から熱伝導性が高い粒子材料と認識できる範囲のものであるから、サポート要件に適合するものといえる。
また、本件発明2についても、同様に、発明の詳細な説明に記載及び技術常識から熱伝導性が高い粒子材料と認識できるものを分散させた熱伝導物質であるから、同様の観点からサポート要件に適合するものといえる。
したがって、申立理由2-3に理由はない。
(4)申立理由3(明確性)について
本件訂正により、「設備摩耗試験の結果」は粒子材料10g当たりの鋼球の摩耗量であり、鋼のみでの質量増減値に対する相対値としたものであることが明確になったところ、相対値とは、ある基準から見た場合の数値を意味するから、「設備摩耗試験の結果」とは、「鋼球と粒子材料で試験を行った場合の質量増減値」から「鋼球のみで試験行った場合の質量増減値」を引いたものと解することができる。
そうすると、「設備摩耗試験の結果」としての「0.017g以下」という数値は、その意味を明確に把握することができるものである。
したがって、申立理由3に理由はない。
(5)申立理由4(進歩性)について
ア 本件発明1について
本件発明1と甲1発明とを対比すると、平均粒子径について上記4(1)ア(ウ)で摘示した段落【0015】には、「平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定機シーラスグラニュロメーター「モデル1064」を用いて測定した」ことが記載されており、レーザー回折式粒度分布測定器は、体積平均粒子径を測定するものであるから、甲1発明の平均粒子径は、本件発明1における「体積平均粒子径」に相当し、甲1発明の平均粒子径が91μmであることは、本件発明1における「体積平均粒子径が70~200μm」であることを満足する。
また、球形度について上記4(1)ア(ウ)で摘示した段落【0017】には、「平均球形度はFPIA-3000から得られる平均円形度の数値を2乗することで得られる。平均円形度は、フロー式粒子像解析装置「FPIA-3000」が、一個の粒子投影像の周囲長と粒子投影像の面積に相当する円の周囲長を解析し、式(円形度)=(粒子投影像の周囲長)/(粒子投影像の面積に相当する円の周囲長)、により求められる。」旨の記載があることから、甲1-1発明の平均球形度は、(粒子投影像の周囲長)2/(粒子投影像の面積に相当する円の周囲長)2で求められるものであるが、粒子投影像の面積に相当する円の周囲長は、同面積の他の形状の周囲長と比較して最小であることから、甲第1号証の定義によると球形度は1よりも大きいものとなる。しかしながら、上記4(1)ア(オ)で摘示した【表2】に記載されている平均球形度はいずれも1未満であることから、甲1発明の平均球形度は、段落【0017】に記載されている定義と異なり、(粒子投影像の面積に相当する円の周囲長)2/(粒子投影像の周囲長)2で求められるものと解するのが相当である。一方、粒子投影像の面積をπr2とすると、当該面積と同じ面積を有する円の周囲長は2πrであるから、
(粒子投影像の面積に相当する円の周囲長)2=(2πr)2
=4π×πr2=4π×(粒子投影像の面積)
であり、本件発明の球形度は、本件明細書の段落【0016】に記載されているとおり、「4π×(面積)÷(周囲長)2」(ここで、面積及び周囲長はSEM画像から観察される粒子の面積と周囲長である。)で求められるものであるから、甲1発明の平均球形度は本件明細書に記載されている球形度と同一の定義である。そうすると、甲1発明の平均球形度は、本件発明1における「球形度」に相当し、甲1発明の平均球形度が0.93であることは、本件発明1における「球形度が0.89以上0.96以下」であることを満足する。
そして、アルミナ粒子は一般的にアルミナを主成分とするものであるから、甲1発明の「球状アルミナ粒子」は、本件発明1における「アルミナを主成分とし」た「粒子材料」に相当する。
したがって、本件発明1と甲1発明とは、「アルミナを主成分とし、体積平均粒径が70~200μm、球形度が0.89以上0.96以下である粒子材料」である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点1>
本件発明1が、「α化率68~85%」であるのに対し、甲1発明は、α相アルミナ粉末とθ相アルミナ粉末を混合した粉末のX線回折測定を行い、2θ=43°に検出されるα相のピークの積分強度を算出し、混合割合と積分強度の検量線を作成し、この検量線から求められたα相含有率が46.3%である点。
<相違点2>
本件発明1が、「設備摩耗試験の結果が0.017g以下である」のに対し、甲1発明は、設備摩耗試験の結果が不明である点。
事案に鑑み、相違点1について検討する。
上記5(1)アでの判断を踏まえると、本件発明のα化率は、α結晶相以外に存在し得るすべての相について、存在比が既知である試料によって作成された検量線を用いて、その存在比を測定した結果に基づき、本件明細書の段落【0013】に記載される「粒子材料中に含有されるアルミナ全体の質量を基準として算出された、α結晶相のアルミナの質量の割合」として得られたものと認められる。
一方、甲第1号証において、α相含有率を測定する際に、α相以外にθ相のみを考慮しているのは、甲第1号証に記載される球状アルミナにおいて、α相及びθ相以外の結晶相がほぼ存在しないという前提があるからと推認される。
そうすると、本件発明1のα化率と甲1発明のα相含有率は概ね同等の意味を有する数値であるといえるところ、本件発明は、その数値が68~85%であるのに対し、甲1発明は46.3%であるから、相違点1は実質的なものである。
次に、相違点1に係る本件発明1の特定事項の容易想到性について検討すると、甲第1号証~甲第6号証(上記4(1)ア、4(2)~(6))には、α化率を68~85%の範囲とすること、及び、その動機付けとなることが記載されていないから、甲1発明において、α化率を68~85%の範囲とすることは当業者が容易に想到し得たこととはいえない。
よって、本件発明1は、相違点2について検討するまでもなく、甲第1号証に記載された発明、及び、甲第2号証~甲第6号証に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
イ 本件発明2について
請求項2は請求項1を直接又は間接に引用するものであるから、本件発明2は本件発明1と事情は同じである。
よって、本件発明2は、甲第1号証に記載された発明、及び甲第2号証~甲第6号証に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ウ 小活
したがって、申立理由4に理由はない。
(6)申立人の主張について
令和2年11月20日提出の意見書における申立人1、2の主張は、それぞれ、以下のとおり、いずれも採用できない。
ア 申立理由2-2、2-3に関する申立人1の主張について
(ア)主張の内容
申立人1は、申立理由2-2、2-3に関して以下の点を主張する。
a 主張1
α化率の好ましい範囲は、体積平均粒子径により異なるところ、先の訂正請求によりα化率を68%以上とする訂正は体積平均粒径が90μmのアルミナ粒子の結果に基づくものであり、体積平均粒径が70μmの場合に、68~72%の範囲で課題を解決できる根拠はない(令和2年11月20日提出の申立人1による意見書(以下、「意見書1」という。)第1頁下から4行~第3頁下から5行)。
b 主張2
試験例3、7から、球形度が0.89という値を境として、これ以上の場合に課題を解決できるという根拠を見出すことができない(意見書1第3頁下から4行~第4頁10行)。
c 主張3
体積平均粒径が大きいと設備への攻撃性が増していると判断できるところ、実施例は90μm以下のものしかないため、90μm超え200μm以下の範囲で課題が解決できるとはいえない(意見書1第4頁11行~第6頁6行)。
(イ)検討
申立人1の主張1~3について検討する。
a 主張1について
上記5(3)ウ(ウ)に記載するとおり、体積平均粒径が70μmの場合であっても、α化率が68~72%の範囲で課題を解決できることは当業者が認識することができる。
b 主張2について
上記5(3)ウ(イ)に記載するとおり、球形度が0.89以上の領域は球形度が0.83(試験例3)である場合よりも熱伝導率が高い領域であると当業者に理解されるから、この領域で課題を解決できることは当業者が認識することができる。
c 主張3について
本件発明は、「設備摩耗試験の結果が0.017g以下である」と特定されるものであるから、設備への攻撃性が増しているものは含まれるものではないし、上記5(3)ウに記載されるとおり、本件発明の課題は、熱伝導性が高い粒子材料を提供することであるから、設備への攻撃性が増しているといっても課題が解決できないことになるわけではない。
よって、申立人1の主張1~3はいずれも採用できない。
イ 申立理由2-2、2-3に関する申立人2の主張について
(ア)主張の内容
申立人2は、申立理由2-2、2-3に関して以下の点を主張する。
a 主張4
試験例2と6の比較、試験例3と7の比較から、α化率を低くすることでアルミナ粒子の設備への攻撃性が高くなることがあるが、これには体積平均粒径が影響している可能性があるため、体積平均粒径が70~200μmと広範囲にわたっており、一つの値に特定されていない場合、α化率を低くしても設備への攻撃性を低くする方向への変更とはいえない(令和2年11月20日提出の申立人2による意見書(以下、「意見書2」という。)第1頁下から5行~第3頁13行)。
b 主張5
α化率が80%以上85%以下の範囲について球形度を0.89以上にすることで、設備摩耗性試験の結果が0.017g以下になることは、発明の詳細な説明の記載によって裏付けられていない(意見書2第3頁14行~最終行)。
c 主張6
試験例3、7を対比すると、高いα化率のアルミナを用いても、熱伝導率が低くなる場合があることが示されており、実施例には、α化率が80~85%の範囲について、アルミナ粒子のα化率が高くなると、その熱伝導率が高くなることが示されていない。
また、発明の詳細な説明における、α化率が80~85%の範囲で十分な熱伝導率を示すという記載は実験結果に基づいていない(意見書2第4頁第1行~第5頁下から第5行)。
(イ)検討
申立人2の主張4~6について検討する。
a 主張4について
本件発明は、「設備摩耗試験の結果が0.017g以下である」と特定されるものであるから、設備への攻撃性が高くなるものは含まれるものではないし、上記5(3)ウに記載されるとおり、本件発明の課題は、熱伝導性が高い粒子材料を提供することであるから、設備への攻撃性が高くなるといっても課題が解決できないことになるわけではない。
b 主張5について
α化率が80%以上85%以下であって、球形度を0.89以上とした範囲は、試験例2と比較すると、α化率は高く、球形度は低くなる範囲であるから、本件明細書の段落【0013】、【0015】の記載からすれば、設備摩耗性試験の結果が悪いことが予想されるが、段落【0028】の記載も考慮すれば、一定の水準の設備摩耗性試験の結果が得られることは予想できるし、本件発明は、「設備摩耗試験の結果が0.017g以下である」と特定されるものであるから、仮に、この特定を満たさないようにα化率や球形度等を選択できるとしても、このような発明は本件発明に含まれないので、発明の詳細な説明の記載によって裏付けが必要ということはない。
c 主張6について
そもそも、試験例3と試験例7は、体積平均粒径が異なるから、比較して論じることに意味がない。
また、発明の詳細な説明の段落【0003】に従来技術としても記載されるように、アルミナはα化率が高いほど熱伝導率に優れていることが知られているから、実施例として示されていないとしても、α化率が80~85%の範囲について、アルミナ粒子のα化率が高くなると、その熱伝導率が高くなることは当業者が認識することができることである。
よって、申立人2の主張4~6はいずれも採用できない。
ウ 取消理由1、申立理由1-1、申立理由2-1に関する申立人1の主張について
申立人1は、取消理由1、申立理由1-1、申立理由2-1に関して、以下の点を主張する。
・主張7
具体的にどのピークをどのように用いてα化率を算出するのか依然として不明であり、具体的に行った測定法が記載され、実証されているわけでもなく、どのピークを用いて、どのような処理法で、α化率を算出するかにより、算出されるα化率が異なることになることはよく知られている(意見書1第7頁5行~第8頁下から7行)。
しかしながら、上記5(1)ア、5(2)ア、5(3)アに記載されるとおり、本件発明は、α化率を算出するにあたって、アルミナにおいてα結晶相以外に存在し得るすべての相を考慮するものであり、この際に、アルミナにおいてα結晶相以外に存在し得るすべての相のそれぞれについて測定に用いるピークを選択することも必要になるが、どのピークを選択しても、それによって定まるα化率は原理上変わることはないと解され、このような手法は技術常識の一つであるから実証が必要でもなく、どのピークを用いて、どのような処理法でα化率を算出するかにより、算出されるα化率が異なることになるとの主張について申立人1はその根拠を示していない。
よって、申立人1の主張7は採用できない。
エ 申立理由1-2に関する申立人1の主張について
申立人1は、申立理由1-2に関して、以下の点を主張する。
・主張8
「燃料供給量」、「支燃性ガスと燃料の比率」及び「原料投入量」の3つのパラメータが独立して制御可能であるとしても、結局のところ、各パラメータは処理温度を定めるものであり、例えば、燃料供給量を増やした場合に、処理温度を変化させることなく、燃料そのものの作用により、α化率や球形度を制御できるとする理由は見出せない(第9頁8行~第11行3行)。
しかしながら、上記5(2)イに記載されるとおり、3つのパラメータを独立して制御すれば、処理温度のみならず、高温での滞留時間も調整でき、これによってα化率及び球形度をある程度個別に制御できることが理解できる。
よって、申立人1の主張8は採用できない。
第4 むすび
以上のとおりであるから、請求項1、2に係る特許は、特許異議申立書に記載された申立理由、及び、取消理由に記載した取消理由によっては、取り消すことができない。
また、他に請求項1、2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2020-700079