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特許異議申立

2023-700367

板状アルミナ粒子、及び板状アルミナ粒子の製造方法

審判番号
2023-700367
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2022-518211
登録番号
7151935
請求日
2023年04月11日
審決日
2024年02月27日
公報発行日
2024年05月31日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】DIC株式会社
  • 【権利者代理人】西澤 和純
  • 【権利者代理人】阿部 茂輝
  • 【権利者代理人】宮本 龍
  • 【権利者代理人】成田 友紀
  • 【異議申立人】藤江 桂子
審判長/審判官
  • 審判長 宮澤 尚之
  • 審判官 立木 林
  • 審判官 増山 淳子
分類
P1652.113-YAA(C01F) / P1652.121-YAA(C01F) / P1652.536-YAA(C01F) / P1652.537-YAA(C01F)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第1項、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第9項、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第4項第1号、特許法第2条第3項第1号、特許法第2条第3項第3号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7151935号発明「板状アルミナ粒子、及び板状アルミナ粒子の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許7151935号の特許請求の範囲を訂正する請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~10〕について訂正することを認める。 特許7151935号の請求項1~5に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7151935号の請求項1~10に係る特許(以下、「本件特許」という場合がある。)についての出願は、2019年(令和1年)10月9日を国際出願日とする出願であって、令和4年10月3日にその特許権の設定登録がされ、同年10月12日に特許掲載公報が発行された。 その後、本件特許の請求項1~5に係る特許に対し、令和5年4月11日に特許異議申立人 藤江 桂子(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがなされた。 その後の手続の経緯の概要は次のとおりである。 令和5年 7月12日付け 取消理由通知 同年 9月15日 意見書・訂正請求書の提出(特許権者) 同年10月20日 意見書の提出(申立人) 同年12月12日付け 訂正拒絶理由通知 令和6年 1月15日 意見書の提出(特許権者) 第2 本件訂正の適否 1 本件訂正の内容 令和5年9月15日提出の訂正請求書による訂正(以下、「本件訂正」という。)は、特許法第120条の5第4項の規定に従い、一群の請求項を構成する請求項1~10を訂正の単位とするものであって、その訂正事項は次のとおりである。なお、訂正箇所には下線を付した。 <訂正事項> 特許請求の範囲の請求項1の「0.2以上である」との記載を、「0.25以上である」に訂正する。 請求項1の記載を引用する請求項2~10についても同様に訂正する。 2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否 訂正事項は、願書に添付された明細書(以下、「本件特許明細書」といい、明細書、特許請求の範囲又は図面をまとめて「本件特許明細書等」という。)の【0198】【表2】の実施例4におけるXRD強度比(006/113)の記載に基づき、訂正前の請求項1に記載された「I(006)/I(113)」を、「0.2以上」から「0.25以上」に限定するものであるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 3 独立特許要件 本件特許異議の申立てにおいて、本件訂正前の請求項6~10に対して特許異議の申立てはされておらず、上記2のとおり、上記訂正事項は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。したがって、上記訂正事項による本件訂正後の請求項6~10については、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する要件(独立特許要件)を満たさなければならない。 令和5年12月12日付けの訂正拒絶理由は、当該独立特許要件に関して、X線回折測定に用いられる試料の作製方法が不明であることを論拠として、本件訂正後の請求項6~10に係る発明が明確でないことを指摘したものである。 しかしながら、当該理由を改めて検討すると、後記第6の1(2)イで検討したとおり、X線回折測定に用いられる試料は、本件出願時の技術常識に沿って作製されたものと解されるから、上記訂正拒絶理由には理由がない。 また、後記第6で述べるとおり、本件訂正後の請求項6~10が引用する本件訂正後の請求項1に係る特許を取り消すべき理由は発見されず、また、他に本件訂正後の請求項6~10に係る特許を取り消すべき理由も発見しないから、本件訂正後の請求項6~10に係る発明が、独立して特許を受けることができるものであることは明らかである。 4 小括 以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ同条第9項において読み替えて準用する同法第126条第5項から第7項までの規定に適合する。 したがって、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~10〕について訂正することを認める。 第3 特許請求の範囲の記載(本件発明) 上記第2のとおり、本件訂正請求による訂正が認められるから、本件特許の請求項1~10に係る発明(以下、請求項の項番にしたがって、「本件発明1」などといい、全体をまとめて「本件発明」という。)は、令和5年9月15日提出の訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~10に記載された事項により特定される、以下のものである。 「【請求項1】 Cu-Kα線を用いたX線回折測定で得られる回折ピークの、 (006)面に対応する2θ=41.6±0.3度のピーク強度I(006)と、 (113)面に対応する2θ=43.3±0.3度のピーク強度I(113)と、の比I(006)/I(113)が、 0.25以上である板状アルミナ粒子。 【請求項2】 Cu-Kα線を用いたX線回折測定で得られる回折ピークの、 (006)面に対応する2θ=41.6±0.3度のピーク強度I(006)と、 (113)面に対応する2θ=43.3±0.3度のピーク強度I(113)と、の比I(006)/I(113)が、 0.3以上である、請求項1に記載の板状アルミナ粒子。 【請求項3】 厚みが0.1μm以上である、請求項1又は2に記載の板状アルミナ粒子。 【請求項4】 D50値が20μm以上である、請求項1~3のいずれか一項に記載の板状アルミナ粒子。 【請求項5】 ケイ素及び/又はゲルマニウムを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の板状アルミナ粒子。 【請求項6】 モリブデンを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の板状アルミナ粒子。 【請求項7】 ムライトを表層に含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の板状アルミナ粒子。 【請求項8】 アルミニウム元素を含むアルミニウム化合物と、モリブデン元素を含むモリブデン化合物と、形状制御剤と、を混合して混合物とし、前記混合物を焼成することを含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の板状アルミナ粒子の製造方法。 【請求項9】 酸化物換算した原料全量を100質量%とした際に、Al2O3換算で50質量%以上のアルミニウム元素を含むアルミニウム化合物と、MoO3換算で7質量%以上40質量%以下のモリブデン元素を含むモリブデン化合物と、SiO2換算で0.4質量%以上10質量%未満のシリコン又はケイ素元素を含むケイ素化合物と、を混合して混合物とし、前記混合物を焼成する、請求項1~7のいずれか一項に記載の板状アルミナ粒子の製造方法。 【請求項10】 酸化物換算した原料全量を100質量%とした際に、Al2O3換算で50質量%以上のアルミニウム元素を含むアルミニウム化合物と、MoO3換算で7質量%以上40質量%以下のモリブデン元素を含むモリブデン化合物と、GeO2換算で0.4質量%以上1.5質量%未満の原料ゲルマニウム化合物と、を混合して混合物とし、前記混合物を焼成する、請求項1~7のいずれか一項に記載の板状アルミナ粒子の製造方法。」 第4 証拠方法、取消理由及び申立理由の概要 1 証拠方法 申立人及び特許権者から提出された各証拠は、以下のように整理できる。 ここで、「乙第1号証」は、令和5年9月15日に特許権者より提出された意見書に添付された資料1であり、「乙第2号証」及び「乙第3号証」は、令和6年1月15日に特許権者より提出された意見書に添付された資料1及び資料2である。 甲第1号証:P. Billik et al., "Mechanochemical-molten salt syntehs is of α-Al2O3 platelets", Ceramics International, 20 15年3月27日, Vol.41, 8742-8747 甲第2号証:特許第5141920号公報 甲第3号証:特開2002-249315号公報 甲第4号証:特開2016-222501号公報 甲第5号証:特開2007-51037号公報 甲第6号証:中村利廣 他1名, "粉末X線回折法による配向性試料の定 量*―スルホニルジアミドの定量への応用―", 分析化学, 1980年, Vol.29, 467-471 甲第7号証:Frank R. FERET et al., "Determination of alpha and bet a alumina in ceramic alumina by X-ray diffraction", Sp ectrochimica Acta Part B Atomic Spectroscopy, 2000年7 月,Vol.55,1051-1061 甲第8号証:小野修一郎他3名, "アルミナの熱水反応における不純物の 影響", 窯業協会誌, 1968年, Vol.76 No.7, 207-218 甲第9号証:掛川一幸 他4名, "基礎から理解する化学2 結晶化学", 初版第1刷, 株式会社みみずく舎, 2009年3月30日, 35-37 甲第10号証:特開2019-169343号公報 甲第11号証:特開2013-102122号公報 参考資料1:藤井孝太郎 他1名, "有機粉末構造解析をはじめよう!( 2)試料準備から測定まで", 日本結晶学会誌, 2011年, Vol .53, 170-177 乙第1号証:山野昭人, "X線回折装置の原理と応用", 一般社団法人日本 分析機器工業会, 2013年2月21日公開, [online], [令和5年9 月14日検索], <https://www.jaima.or.jp/jp/analytical/ba sic/xray/xrd/> 乙第2号証:"試料水平型X線回折装置 Ultima IV 取扱説明書 Manual No.MJ11565A03", Rigaku Corporation, 3版, 2017年2月, 目 次、52ページ 乙第3号証:岡崎壮平, "粉末&バルクのX線回折(XRD)測定の基礎" , ブルカー・エイエックスエス株式会社, 2017年6月22日, 14-15ページ 以下では、甲第1号証、乙第1号証等を、それぞれ「甲1」、「乙1」等という。 2 取消理由の概要 当審が特許権者に通知した、令和5年7月12日付けの取消理由の概要は、次のとおりである。 (1) 取消理由1(明確性要件違反) 本件特許の請求項1~5に係る特許は、特許請求の範囲の記載が、後記第6の1(1)の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 (2) 取消理由2(甲1を主たる証拠とした新規性欠如) 請求項1~3に係る発明は、甲1に記載された発明であるから、当該請求項に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。 (3) 取消理由3(甲2を主たる証拠とした新規性欠如) 請求項1、3及び4に係る発明は、甲2に記載された発明であるから、当該請求項に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。 3 取消理由通知で採用しなかった申立理由の概要 申立人が主張する特許異議申立理由のうち、取消理由において採用しなかった特許異議申立理由は、概略、以下のとおりである。 (1) 申立理由1(甲1を主たる証拠とする進歩性欠如) 請求項1~3に係る発明は、甲1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、また、請求項5に係る発明は、甲1に記載された発明及び甲4、5に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 (2) 申立理由2(甲2を主たる証拠とする進歩性欠如) 請求項1、3及び4に係る発明は、甲2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、また、請求項1~5に係る発明は、甲2に記載された発明及び甲1、4、5に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 (3) 申立理由3(甲3を主たる証拠とする新規性欠如、進歩性欠如) 請求項1~4に係る発明は、甲3に記載された発明であるか、又は甲3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第1項又は同条第2項の規定に違反してされたものである。 また、請求項1~5に係る発明は、甲3に記載された発明及び甲1、4、5に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 (4) 申立理由4(サポート要件違反、実施可能要件違反) 本件特許の請求項1~5に係る特許は、発明の詳細な説明及び特許請求の範囲の記載が、後記第6の5(1)の点で不備のため、特許法第36条第4項第1号及び同条第6項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものである。 第5 各証拠の記載事項 1 甲1の記載事項 甲1には、「α‐Al2O3板状体のメカノケミカル溶融塩合成」に関し、次の事項が記載されている(なお、下線は当審が付与した。以下、同様。)。 (1) 「 [図:0001410199000001.jpg] [図:0001410199000002.jpg] 」(第8743ページ左欄第47行~同ページ右欄26行) (当審訳:2.材料と方法 アルミニウムロッド(金属に基づき99.999%)を95-100℃で2M塩酸(p.a.)に溶解させて、8wt%のAlを含むPACl溶液を準備した。空気中100℃で24時間乾燥させた後、非吸湿性で透明かつもろいPAClゲルを得た。乾燥工程後に得られたPAClゲルは、XRD的に非晶質材料からなる[17]。 10gのPAClゲルに200gのジルコニア10mmボールとともに、容積0.2dm3のコランダム広口瓶の中で回転速度890rpmの遊星ボールミルTB-2を用いた高エネルギーボールミル処理を施した。このタイプの高エネルギー遊星ボールミルに関する、より技術的な詳細については参考文献[21]に見出すことができる。その後、等モル比のNaCl-KCl混合物7gを5分間粉砕したPAClゲル3gに加え、さらに5分間粉砕した(5+5分試料)。5+5分試料は、その後、周囲雰囲気下600-1000℃の温度範囲内で2時間アニールされた。そのような処理の後、反応生成物とNaCl-KCl溶融塩マトリックスは蒸留水による簡単な洗浄で分離された。濾過後に得られた粉末を120℃で2時間乾燥した。調整したα-Al2O3板状体に基づく十分に配向した層を得るため、700℃アニール及び洗浄後に得られた少量のα-Al2O3粉末を2枚のガラス板の間に置いた。その後、これら2枚のガラス板を単純に線状にずらしてα-Al2O3粉末を平らにした。 Philips PW 1050ディフラクトメータ(Cu Kα線)を用いた粉末X線回折により相組成が調べられた。Dericatograph Q-1500D(MOM、ハンガリー)で昇温速度10℃/分のもと熱分析(DTA/TG)が行われた。FESEM JEOL JSM 7600F装置を用いたSEMによって、生成したα-Al2O3板状体の形態を調べた。PACl溶液の27Al NMRスペクトルは、Varian Mercury Plus 300MHz分光器で記録された。[Al(H2O)6]Cl3外部標準に対して、化学シフトはppmであった。光学分析は、VNMRJ 1.1Dソフトウェアを用いて行われた[17]。) (2) 「 [図:0001410199000003.jpg] 」(第8746ページ左欄第16~37行) (当審訳:3.1. 十分に配向したα-Al2O3層の作製 ランダム配向したα-Al2O3板状体と、この粉末を用いてガラス基板上に作製した十分に配向した層のXRDパターンとを比較することで、十分に配向した層の作製におけるα-Al2O3の板状形態の影響を調べた。図5(a)に示すように、ランダム配向したα-Al2O3板状体のXRDパターンは、α-Al2O3相の典型的なパターン(ICDD No.10-0173)と一致しており、このことは、優位な構造や優先配向が試料中に形成されていないことを意味する。意外なことに、ランダム配向したα-Al2O3板状体では殆ど観察されない0006反射が、ガラス基板上に作製された試料では支配的である。(図5(b))。ランダムα-Al2O3板状体では非常に弱い0006反射が、テクスチャーサンプルのXRDパターンでは支配的であることがよく知られている[34]。他の反射が存在しないことは、薄いAl2O3板状体が大きな体積分率でガラス基板に平行となるように配向していることを意味する[24]。そのようにガラス基板上に十分に配向したα-Al2O3層を簡単に作製できるということは、独特であり、調整したα-Al2O3板状体の凝集度合いが低いことを間接的に示す。) (3) 「 [図:0001410199000004.jpg] 」 (当審訳:図5.ランダム配向した、700℃でのアニーリング後に得られた、ランダム配向したα-Al2O3板状体のXRDパターン(a)、及びガラス基板上に作製したα-Al2O3板状体のよく配向した層のXRDパターン(b)) 2 甲2の記載事項 甲2には、「アスペクト比が大きい薄片状アルファーアルミナ結晶体及びその製造方法」(発明の名称)に関して、次の記載がある。 (1) 「【請求項1】 必須成分として酸化アルミニウム、酸化亜鉛及び酸化スズを含有し、厚さが0.1~0.5μmであり、平均直径が30~70μmであり、且つアスペクト比が100~500である薄片状アルファ-アルミナ結晶体であって、 前記酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化亜鉛(ZnO)及び酸化スズ(SnO)が100:0.05~5:0.01~0.5の質量比で含有される、前記薄片状アルファ-アルミナ結晶体。」 (2) 「【図面の簡単な説明】 【0019】 【図1】本発明による薄片状アルファ-アルミナ結晶体の製造方法を示す。 【図2】実施例1により製造された薄片状アルファ-アルミナ結晶体のX線回折パターンを示す。」 (3) 「【0052】 実施例1 純水1,900mLが入った反応器5Lに、硫酸アルミニウム(Al2(SO4)3・18H2O)670g、硫酸ナトリウム(Na2SO4)345g、硫酸カリウム(K2SO4)280g、34%硫酸亜鉛(ZnSO4・7H2O)水溶液4.8g、及び17%硫酸亜鉛(ZnSO4・7H2O)水溶液1.0gを65℃で混合して、均一な混合溶液を製造した。アルカリ溶液は、65℃の蒸留水900mLに、炭酸ナトリウム(Na2CO3)324gとリン酸ナトリウム((NaPO3)6)2.7gを溶解して製造された。疑ベーマイトと溶剤が混合されたゲルは、攪拌しながら、硫酸アルミニウム混合溶液(65℃)にアルカリ溶液を25mL/minの速度で滴定して、最終pH6.8となるように調節して製造された。前記混合ゲルは90℃で20時間熟成され、60℃で真空蒸留して、110℃で20時間乾燥した。薄片状アルファ-アルミナ結晶体は、前記乾燥された混合ゲルを約5mm以下に粉砕して、7時間1,200℃でアルミナるつぼ(2L)で結晶化して製造された。室温まで前記るつぼを冷却して、温水(60℃)に前記溶剤を溶解した後、ろ過することで、薄片状アルファ-アルミナ結晶体から前記溶剤を分離した。反応器(5L)に、前記分離した薄片状アルファ-アルミナ結晶体と10%硫酸溶液3Lを入れて、前記混合液を60℃で48時間攪拌することで、前記結晶体を完全に分散した。 前記分散された溶液をろ過し、洗浄して、100℃で乾燥することで、平均粒子厚さが0.22μmであり、平均粒子サイズが35.8μmである透明な薄片状アルファ-アルミナ粒子を製造した。X線回折分析を通して、アルファ-アルミナ結晶体が生成されたことを確認し、原子分析を通して、0.4質量部の酸化亜鉛と0.09質量部の酸化スズを含有することを確認した。」 (4) 「【図2】 [図:0001410199000005.jpg] 」 3 甲3の記載事項 甲3には、「薄片状α-アルミナ粒子及びその製造方法」(発明の名称)に関して、以下の記載がある。 (1) 「【請求項1】 平均粒径0.5~25μm、平均粒径/粒子厚みで表されるアスペクト比が50(50は含まず)~2000の扁平形状からなることを特徴とする薄片状α-アルミナ粒子。」 (2) 「【0008】本発明において製造される薄片状アルミナの形状は図1のようになる。従来の水熱合成法で合成されるα-アルミナ粒子は図2のように(n,c,a,r)等の面にて構成されるが、本発明の薄片状粒子は(n,c)面でのみ構成される。・・・」 (3) 「【0022】 【発明の実施の形態】以下、具体的な実施例について述べる。 実施例1 ・・・ 【0024】さらに粒子は、1)樹脂への添加、2)水性溶媒への添加実験を行い分散性をそれぞれ評価した。 【0025】1)それぞれの粒子100部に対し、アクリルラッカー(水谷ペイント製)50部、トルエン20部、メチルエチルケトン10部を添加し、ホモジナイザーにて(ika製 LR-41B,1000rpm)5分間攪拌を行い、ガラス板上にこのスラリーを塗布後、50℃で1時間加熱乾燥し硬化した。 【0026】2)それぞれの粒子100部に対し、純水を40部添加し、ホモジナイザーにて(ika製 LR-41B,1000rpm)5分間攪拌を行い、ガラス板状にこのスラリーを塗布後、120℃で30秒間乾燥させた。 【0027】各々のガラス板上にある成形体をX線回折分析し、Lotgering法により、粉体の配向度を算出した。分散性が高い程配向度の数値は大きくなり、1に近い値を取る。1)樹脂添加実験の配向度は0.91、2)水性溶媒添加実験の配向度は0.84となった。」 4 甲7の記載事項 甲7には、「Al2O3(コランダム)-主なXRD反射」(Table 1の表題)に関して、次の記載がある。 (1) 「 [図:0001410199000006.jpg] 」 (当審訳:表1 Al2O3(コランダム)-主なXRD反射(JCPDS-ICDDファイル No.46-1212)) 5 乙1の記載事項 乙1には「X線回折装置の原理と応用」に関して以下の事項が記載されている。 (1) 「 [図:0001410199000007.jpg] 」(2ページ中央) 6 乙2の記載事項 乙2には、「試料水平型X線回折装置」(乙2のタイトル)に関して、以下の事項が記載されている。 (1) 「 [図:0001410199000008.jpg] 」(52ページの9.2) 7 乙3の記載事項 乙3には、「粉末&バルクのX線回折(XRD)測定の基礎」(乙3のタイトル)に関して、以下の事項が記載されている。 (1) 「 [図:0001410199000009.jpg] [図:0001410199000010.jpg] 」(14~15ページ) 第6 当審の判断 事案に鑑み、まず取消理由1(明確性要件違反)について検討した上で、他の取消理由又は申立理由について検討する。 1 取消理由1(明確性要件違反)について (1) 具体的な指摘事項 取消理由1は、要するに、(i)本件発明における「ピーク強度」が高さ、面積の何れを示すのか不明であるし、また、(ii)X線回折測定に用いられる測定試料の作製方法が不明であって、本件発明における「回折ピーク」の測定方法が明らかでないから、本件発明は明確でない、というものである。 (2) 指摘事項の検討 ア ピーク強度について 乙1の記載(上記第5の5)からも理解できるように、粉末X線回折測定における回折強度(ピーク強度)は、「ピークの高さ」から求めることが本件出願時の技術常識と認められるから、本件発明における「X線回折測定で用いられる回折ピーク」の「ピーク強度」もピークの高さを意味すると解するのが相当である。 なお、このように解することについて、申立人から反論はない。 イ 測定試料の作製方法について (ア) 請求項1には、測定試料の作製方法は記載されていない。また、本件特許明細書【0186】には、実施例として「作製した試料を0.5mm深さの測定試料用ホルダーにのせ、一定荷重で平らになるように充填し」と記載されているものの、どのように充填し、荷重をかけるのか具体的な方法は明記されていない。 (イ) 本件出願時の技術常識を検討するに、上記第5の6及び7(乙2、乙3の記載)によれば、粉末X線回折測定の試料作製は、粉末試料をホルダーに載せ、基準面に試料表面が合うよう、載せられた粉末試料をスライドガラス等の平らな板で軽く押さえ、真横に引いて行われるものであって、強く押し固める必要はないことが、当業者にとって本件出願時の技術常識であったと認められる。 (ウ) 上記(ア)のとおり、本件明細書等には試料作製方法の詳細が記載されていなかったところ、上記(イ)のとおり、粉末X線回折測定の試料作製方法が技術常識であったことを踏まえれば、本件特許明細書等を読んだ当業者であれば、本件発明における粉末X線回折測定のための試料は、当該技術常識に沿って作製するものと理解するのが自然である。本件特許明細書【0186】の「一定荷重で平らになるように充填し」との記載は、測定試料によっては「強く押し固める」といったことがないよう、一定の条件で測定したことを表現したものと解するのが相当である。 (エ) 以上のとおり、本件発明のX線回折測定に用いる測定試料の作製方法は、上記技術常識に沿って一定荷重で作製されたことは明らかであり、本件発明のX線回折測定は、このように作製された測定試料を、本件特許明細書【0186】の記載に沿って行うものと理解することができ、第三者に不測の不利益をおよぼすほどに不明確とまではいえない。 (オ) 令和5年10月20日提出の意見書において、申立人は、本件発明のピーク強度測定は「ランダム配向」による測定であるとする特許権者の主張(当審注:令和5年9月15日に、特許権者より提出された意見書における主張)には根拠がないから、本件発明1における回折ピークの測定方法は明らかでない、と主張する。 しかしながら、上記(ウ)及び(エ)で検討したとおり、本件発明の回折ピークの測定方法は明らかであるから、当該主張は採用できない。 (3) 小括 以上のとおりであるから、取消理由1には理由がない。 2 取消理由2、申立理由1(甲1を主たる証拠とする新規性、進歩性欠如)について (1) 甲1発明について 甲1に記載された事項を、Fig.5の測定対象である、700℃でアニーリングした、α-Al2O3板状体に着目して整理すると、以下の発明が記載されていると認められる(以下、「甲1発明」という。)。 「 ランダム配向した状態では、Cu Kα線を用いた粉末X線回折により求められたXRDパターンが、α-Al2O3相の典型的なパターンであるICDD No.10-0173と一致しており、0006反射が殆ど観察されず、 十分に配向した層では、XRDパターンにおいて0006反射が支配的である、α-Al2O3板状体。」 (2) 本件発明1について ア 対比 本件発明1と甲1発明とを対比すると、甲1発明の「α-Al2O3板状体」は、本件発明1の「板状アルミナ粒子」に相当する。 そうすると、本件発明1と甲1発明とは、「板状アルミナ粒子」の点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点1> 本件発明1が「Cu-Kα線を用いたX線回折測定で得られる回折ピークの、(006)面に対応する2θ=41.6±0.3度のピーク強度I(006)と、(113)面に対応する2θ=43.3±0.3度のピーク強度I(113)と、の比I(006)/(113)が、0.25以上である」のに対し、甲1発明は、「ランダム配向した状態では、Cu Kα線を用いた粉末X線回折により求められたXRDパターンが、α-Al2O3相の典型的なパターンであるICDD No.10-0173と一致しており、0006反射が殆ど観察されず、十分に配向した層では、XRDパターンにおいて0006反射が支配的である」点。 イ 相違点の判断 (ア) 甲1発明のランダム配向した状態について 甲1発明の構成のうち、「ランダム配向した状態」では「0006反射が殆ど観察され」ず、ピーク強度I(006)は殆どないと解されるから、甲1発明において相違点1に係る本件発明1の構成(比I(006)/I(113)が、0.25以上)を満たさないことは明らかである。 (イ) 甲1発明の十分に配向した層について 上記第5の1(1)によれば、甲1発明における「十分に配向した層」とは、「α-Al2O3粉末を2枚のガラス板の間に置」き、「これら2枚のガラス板を単純に線状にずらしてα-Al2O3粉末を平らにした」ものである。 これに対し、上記1(2)イ(イ)~(エ)で検討したとおり、本件発明1における「比I(006)/I(113)」は、「粉末試料をホルダーに載せ、基準面に試料表面が合うよう、載せられた粉末試料をスライドガラス等の平らな板で軽く押さえ、真横に引いて行われ」たものを測定したものであって、甲1発明とは異なる条件で測定したものであるから、本件発明1における「比I(006)/I(113)」と甲1発明における「十分に配向した層」の(0006)反射とが対応するものでないことは明らかである。また、甲1発明における「十分に配向した層」において(0006)反射が支配的であれば、本件発明1における「比I(006)/I(113)が、0.25以上」となることを示す証拠もない。 (ウ) よって、上記相違点1は実質的なものであるし、また、甲1には、板状アルミナ粒子の比I(006)/I(113)について記載も示唆もないから、甲1発明において、相違点1に係る本件発明1の構成(比I(006)/I(113)を0.25以上)とすることが、当業者にとって容易想到の事項ともいえない。 ウ 申立人の主張について 特許異議申立書(30ページ下から8行~31ページ20行)において、申立人は、甲1発明の「板状アルミナ粒子(Al2O3板状晶)」のX線回折(XRD)測定時に、「試料を所定深さの試料測定用ホルダーにのせ、一定荷重で平らになるように充填」するという慣用手段を採用することは当業者が容易に想到し得たことであり、また、その際、荷重(圧力)を変化させて配向の程度を変化させ、「比I(006)/I(113)」を調整することは、当業者が適宜なし得たことと主張する。 しかしながら、甲1をみても「比I(006)/I(113)」を調整することは記載も示唆もないから、当該主張は採用できない。 (3) 本件発明2~5について 本件発明2~5は、本件発明1の全ての特定事項を含むものであるから、上記(2)で検討したのと同様の理由により、本件発明2~5は、甲1に記載された発明であるといえないし、また、甲1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。 (4) 小括 以上のとおりであるから、取消理由2及び申立理由1に理由はない。 3 取消理由3、申立理由2(甲2を主たる証拠とする新規性、進歩性欠如)について (1) 甲2発明について 甲2の記載を、実施例1の薄片状アルファ―アルミナ粒子に着目して整理すると、以下の発明が記載されているといえる(以下、「甲2発明」という。)。 「 図2に記載されたX線回折パターンを示す、薄片状アルファ―アルミナ結晶体。 【図2】 [図:0001410199000011.jpg] 」 (2) 本件発明1について ア 対比 本件発明1と甲2発明とを対比すると、甲2発明の「薄片状アルファ―アルミナ結晶体」は、本件発明1の「板状アルミナ粒子」に相当する。 甲2発明の「図2に記載されたX線回折パターン」(以下、「甲2XRDパターン」ともいう。)について検討するに、甲2XRDパターンと、甲7のTable 1に示される標準粉末X線回折データ(上記第5の4)におけるCu Kα1によるデータとを照らし合わせると、両者のピークの回折角2θに殆ど差異がない。したがって、出願時の技術常識も踏まえると、上記甲2XRDパターンは、Cu Kα線で測定されたものと解される(甲7のTable1に示される標準X線回折データ(上記第5の4)におけるCu Kα1のデータと回折角2θに殆ど差異がないため。)。そうすると、上記甲2XRDパターンにおける、2θ=41.6±0.3度及び2θ=43.3±0.3度のピークは、それぞれ(006)面及び(113)面に対応するものと解され、甲2の図2より対応するピークを読み取り、計算すると、I(006)/I(113)が「0.215」と認められる。 そうすると、本件発明1と甲2発明とは、「Cu-Kα線を用いたX線回折測定で得られる回折ピークの、(006)面に対応する2θ=41.6±0.3度のピーク強度I(006)と、(113)面に対応する2θ=43.3±0.3度のピーク強度I(113)」とを測定した「板状アルミナ粒子」の点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点2> 本件発明1が、「比I(006)/I(113)が、0.25以上である」のに対し、甲2発明において、比I(006)/I(113)が0.215である点。 イ 相違点の判断 上記相違点2は実質的なものであるし、また、甲2には、板状アルミナ粒子の比I(006)/I(113)を0.25以上とすることについて記載も示唆もないから、甲2発明において、相違点2に係る本件発明1の構成(比I(006)/I(113)を0.25以上)とすることが、当業者にとって容易想到の事項ともいえない。 (3) 本件発明2~5について 本件発明2~5は、本件発明1の全ての特定事項を含むものであるから、上記(2)で検討したのと同様の理由により、本件発明2~5は、甲2に記載された発明であるといえないし、また、甲2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。 (4) 小括 以上のとおりであるから、取消理由3及び申立理由2に理由はない。 4 申立理由3(甲3を主たる証拠とする新規性、進歩性欠如)について (1) 甲3に記載された発明 上記第5の3によれば、甲3には以下の発明(以下、「甲3発明」という。)が記載されているといえる。 「 (n,c)面でのみ構成され、 樹脂添加実験の配向度が0.91であり、水性溶媒添加実験の配向度が0.84である、 薄片状α-アルミナ粒子。」 (2) 本件発明1について ア 対比 本件発明1と甲3発明とを対比すると、甲3発明の「薄片状α-アルミナ粒子」は、本件発明1の「板状アルミナ粒子」に相当する。 そうすると、本件発明1と甲3発明とは、「板状アルミナ粒子」の点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点3> 本件発明1が「Cu-Kα線を用いたX線回折測定で得られる回折ピークの、(006)面に対応する2θ=41.6±0.3度のピーク強度I(006)と、(113)面に対応する2θ=43.3±0.3度のピーク強度I(113)と、の比I(006)/I(113)が、0.25以上である」のに対し、甲3発明が、「樹脂添加実験の配向度が0.91であり、水性溶媒添加実験の配向度が0.84である」点。 イ 相違点の判断 甲3発明における「樹脂添加実験」又は「水性溶媒添加実験」による配向度について検討するに、上記第5の3(3)(甲3の明細書【0025】~【0027】)によれば、それぞれ所定のスラリーをガラス板状に塗布して硬化又は乾燥させた成形体をX線回折分析したものであることが理解できる。 これに対し、上記1(2)イ(イ)~(エ)で検討したとおり、本件発明1における「比I(006)/I(113)」は、「粉末試料をホルダーに載せ」たものを測定したものであって、甲3発明とは異なる条件で測定したものであるから、本件発明1における「比I(006)/I(113)」と甲3発明における「配向度」とが対応するものでないことは明らかである。また、甲3発明における配向度が「0.91」又は「0.84」であれば、本件発明1における「比I(006)/I(113)が、0.25以上」となることを示す証拠もない。 ウ よって、上記相違点3は実質的なものであるし、また、甲3には、板状アルミナ粒子の比I(006)/I(113)について記載も示唆もないから、甲3発明において、相違点3に係る本件発明1の構成(比I(006)/I(113)を0.25以上)とすることが、当業者にとって容易想到の事項ともいえない。 (3) 本件発明2~5について 本件発明2~5は、本件発明1の全ての特定事項を含むものであるから、上記(2)で検討したのと同様の理由により、本件発明2~5は、甲3に記載された発明であるといえないし、また、甲3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。 (4) 小括 以上のとおりであるから、申立理由3に理由はない。 5 申立理由4(サポート要件違反、実施可能要件違反)について (1) 具体的な指摘事項 申立理由4は、要するに、Moと形状制御剤由来のSi及び/又はGeとを含まないものを包含する本件特許の「板状アルミナ粒子」は、発明の詳細な説明に開示されたものでないし、また当業者が製造を行える程度に発明の詳細な説明に十分に記載されたものでない、というものである。 (2) 指摘事項の検討 ア 各要件の判断手法について (ア) サポート要件の判断手法 特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲内のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。 (イ) 実施可能要件の判断手法 また、明細書の発明の詳細な説明の記載が、実施可能要件に適合するか否かは、明細書の発明の詳細な説明に、当業者が、明細書の発明の詳細な説明の記載及び出願当時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その発明を実施することができる程度に発明の構成等の記載があるか否かという観点から判断すべきものである。 そして、物の発明における実施とは、その物の生産、使用等をする行為をいうから(特許法第2条第3項第1号)、例えば、明細書等にその物を生産することができる具体的な記載があるか、そのような記載がなくても、出願時の技術常識に基づいて当業者がその物を生産することができるのであれば、実施可能要件を満たすということができる。 また、物を生産する方法の発明における実施とは、その物を生産する方法の使用をする行為のほか、その方法により生産した物の使用等をする行為をいうから(特許法第2条第3項第3号)、例えば、明細書等にその物を生産する方法を使用することができることの具体的な記載があるか、そのような記載がなくても、出願時の技術常識に基づいて当業者がその物を生産する方法を使用することができるのであれば、実施可能要件を満たすということができる。 イ 本件発明1について 本件発明の課題は、本件特許明細書の【0004】によると、「光輝性に優れた板状アルミナ粒子の提供」である。 ここで、本件特許明細書の【0011】によれば、「板状アルミナ粒子」の「I(006)/I(113)」「の値が大きいことは、(113)面に対し(006)面の比率が大きいことを意味し、(006)面の方位の結晶に対応する面が顕著に発達した平板状のアルミナ粒子であることを意味していると理解され」、「かかる平板状のアルミナ粒子は、板状アルミナの板形状の表面において発達した上面又は下面の面積が大きく、そこに反射する反射光の視認性が高まるとともに、(113)面の方位の結晶に対応する面の形成が抑制されているので、一粒あたりの質量が小さくとも、高い光輝性を発揮する」ことが記載されており、(113)面に対し(006)面の比率が大きい平板状のアルミナ粒子は、反射光の視認性が高まり、高い光輝性を発揮することが理解できる。 さらに、本件特許明細書の【0175】~【0212】(特に【0198】表2)には、実施例1~7として、「XRD強度比(006/113)」が0.25以上であって、「光輝性」がC以上の例が開示されている。 そうすると、当業者は、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載に基づいて、本件発明1のように「板状アルミナ粒子」を「比I(006)/(113)が、0.25以上」とすることにより、高い光輝性のものとすることができ、上記課題を解決できると認識することができるといえる。 また、同じく発明の詳細な説明には、上記実施例1~7の具体的な製造方法が【0176】、【0177】及び【0179】【表1】に開示されていることから、当業者は、これに倣って本件発明1に係る板状アルミナ粒子を生産することができるといえる。 以上の点に照らしながら、上記の判断手法を本件に当てはめてみると、本件の特許請求の範囲の記載及び発明の詳細な説明の記載は、それぞれサポート要件及び実施可能要件に適合するものというべきである。 ウ 本件発明2~5について 上記イと同様の理由により、本件発明2~5についても、上記課題を解決できることを当業者が認識できる範囲を超えるものでなく、発明の詳細な説明に記載されたものであるし、また、発明の詳細な説明は、当業者であれば本件発明2~5が実施可能な程度に明確かつ十分に記載されているといえる。 (3) 小括 以上のとおりであるから、申立理由4には理由がない。 第7 むすび 以上の検討のとおり、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、本件請求項1~5に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件請求項1~5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2023-700367

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