2020-013098
ソフトハンドオーバにおける機能強化されたアップリンク動作
- 審判番号
- 2020-013098
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2018-141550外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2020年09月18日
- 審決日
- 2022年02月24日
- 公報発行日
- 2022年08月26日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】パンテック ワイヤレス, リミティッド ライアビリティ カンパニー
- 【請求人代理人】特許業務法人ナガトアンドパートナーズ
- 分類
- P18 .121-WZ (H04W)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 21項目
第1 手続の経緯
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本願は,2004年(平成16年)8月25日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理 2003年8月25日 アメリカ合衆国(US),2003年10月1日 アメリカ合衆国(US),2003年10月3日 アメリカ合衆国(US),2003年11月14日 アメリカ合衆国(US),2004年7月2日 アメリカ合衆国(US))を国際出願日とした特願2006-524806号の一部を,平成19年9月20日に新たな特許出願とした特願2007-244349号の一部を,平成23年3月22日に新たな特許出願とした特願2011-063039号の一部を,平成25年6月5日に新たな特許出願とした特願2013-119218号の一部を,平成26年5月13日に新たな特許出願とした特願2014-099555号の一部を,平成27年6月17日に新たな特許出願とした特願2015-121962号の一部を,平成28年11月25日に新たな特許出願とした特願2016-229124号の一部を,平成30年7月27日に新たな特許出願としたものであって,その手続の経緯は以下のとおりである。
平成30年12月 4日 上申書及び手続補正書の提出
令和 元年 8月30日付け 拒絶理由通知書
令和 2年 1月21日 意見書及び手続補正書の提出
令和 2年 5月13日付け 拒絶査定
令和 2年 9月18日 審判請求書及び手続補正書の提出
令和 2年10月26日 手続補正書の提出(方式)
令和 3年 6月30日付け 拒絶理由通知書(当審)
令和 3年12月 3日 意見書及び手続補正書の提出
第2 本願発明
本願の請求項1ないし10に係る発明は,令和3年12月3日にされた手続補正(以下,「本件補正」という。)により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし10に記載された事項により特定されるものと認められるところ,その請求項6には,以下のとおり記載されている(下線は,審判請求人が補正箇所に付与したものである。)。
「 【請求項6】無線送受信ユニット(WTRU)と通信するために、1つのネットワークノードを用いて、プライマリセル及び非プライマリセルを動作させることと、前記プライマリセルのみを介して、前記プライマリセルのダウンリンク共有チャネル上で前記WTRUへ前記非プライマリセルのダウンリンク共有チャネルを識別する情報を含む1メッセージを送信することと、前記非プライマリセルの前記識別されたダウンリンク共有チャネル上で、前記WTRUへ第2メッセージを送信することと、を含む、方法。」
当該記載のうち,第2段落の「1メッセージ」との記載は,本件補正前の令和2年9月18日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項6に「第1メッセージ」との記載されていたこと,本件補正によりなされた補正箇所を表す下線が,第1段落の「1つの」には付与されているのに対し,「1メッセージ」には付与されていないことを鑑みれば,「第1メッセージ」は「1メッセージ」に補正されるべきものではなく,「1メッセージ」は本件補正前に記載されていたように「第1メッセージ」の誤記であることは明らかである。したがって,本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項6に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,次のとおりのものと認める(下線は,当審が付与した。)。
「 【請求項6】無線送受信ユニット(WTRU)と通信するために、1つのネットワークノードを用いて、プライマリセル及び非プライマリセルを動作させることと、前記プライマリセルのみを介して、前記プライマリセルのダウンリンク共有チャネル上で前記WTRUへ前記非プライマリセルのダウンリンク共有チャネルを識別する情報を含む第1メッセージを送信することと、前記非プライマリセルの前記識別されたダウンリンク共有チャネル上で、前記WTRUへ第2メッセージを送信することと、を含む、方法。」
第3 拒絶の理由
令和3年6月30日付けで当審が通知した拒絶理由(以下,「当審拒絶理由」という。)の概要は,以下のとおりのものである。
1.(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記 (引用例等については引用例等一覧参照)
・請求項 6ないし9
・引用例等 1ないし3,5
・請求項 1ないし5,10
・引用例等 1ないし3,5,6
<引用例等一覧>
1.特開2000-217139号公報
2.特開2003-501974号公報
3.国際公開第2003/037027号
5.国際公開第03/049481号
6.3GPP, 3rd Generation Partnership Project; Technical Specification Group Radio Access Network; Radio resource management strategies (Release5), 3GPP TR 25.922 V5.0.0 (2002-03), 2002.03.19アップロード, インターネット<URL:https://www.3gpp.org/ftp/Specs/archive/25_series/25.922/25922-500.zip>
ここで,上記引用例2について,当審拒絶理由では「特開」と記載していたが,令和2年5月13日付け拒絶査定時に通知したとおり,「特表」の明らかな誤記である。また,上記引用例3について,当審拒絶理由では発行年を表す「03」を「2003」と記載していたが,正確には「03」である。
第4 引用例の記載,引用発明,周知技術及び技術常識
1 引用例1の記載及び引用発明
当審拒絶理由で引用され,本願優先日前に公開された引用例1(特開2000-217139号公報)には,図面とともに以下の記載がある。(なお,下線は当審で付与した。)
(1)「【0002】【従来の技術】CDMA方式移動通信システムにおいて、ソフトハンドオフと呼ばれるハンドオフ方式が実用化されている。ソフトハンドオフについては米国特許5,267,261号明細書(1992年3月5日出願、"Mobile Station Assisted Soft Handoff In A CDMA Cellular Communications System")に記載されている。【0003】ソフトハンドオフとは通信の無瞬断、及びセル境界におけるセルダイバーシチ効果という特性を有するハンドオフ方法である。ソフトハンドオフはCDMA方式は複数の無線回線の同時受信が可能という特性を利用して実現される。具体的には、上り回線においては無線端末が送信した信号を複数の無線基地局で受信し、受信信号を基地局制御装置において選択又は合成することによって上記特性が実現される。一方、下り回線においては、複数の無線基地局から単一の無線端末に対して同一情報に異なる拡散を施した信号を同時に送信し、無線端末が各信号を同時に受信し逆拡散して同一情報を取り出した後、取り出した情報を選択又は合成することによって上記特性が実現される。」
(2)「【0023】【発明の実施の形態】1. 無線通信システムの基本構成図2に本発明に係わる無線通信システムの構成図を示す。この図では一例として、CDMA方式セルラー移動通信システムの構成を示している。【0024】サービスエリア206を有する無線基地局203は無線回線を介してサービスエリア206内に位置する無線端末201と通信している。又、サービスエリア207を有する無線基地局101及びサービスエリア208を有する無線基地局102は両サービスエリアの共通地域に存在する無線端末103と同時に通信している。又、無線基地局203は基地局制御装置209と、無線基地局101及び102は基地局制御装置210と、有線又は無線の通信回線を介して接続されている。【0025】基地局制御装置209及び210は通信回線を介して交換機211と接続されている。基地局制御装置は接続されている複数の無線基地局を制御し、無線インタフェースの終端やハンドオフの制御等を行う。」
(3)「【0058】4.1 ハンドオフ状態への移行・・・(中略)・・・【0063】無線基地局102は、無線端末103の送信信号を基地局制御装置からの情報を元に探索し(804)、捕捉成功後基地局制御装置210に対して上り回線捕捉成功を通知する(805)。この段階で状態b)に移行する。図10に示されるように、状態b)は上り回線のみ両無線基地局に受信されている。基地局制御装置において両無線基地局から供給される信号を最大比合成又は選択合成することにより、上り回線はセルダイバーシチ状態となる。これ以降、上り回線に関してはハンドオフが終了するまでセルダイバーシチ状態を保つ。【0064】基地局制御装置210は無線基地局102から上り回線捕捉成功を通知されると、無線基地局102に新たな直交符号を割り当て、同時にスイッチの設定を切り替えることによって、部分チャネル1の送信を開始するよう命令信号を送信する(806)。また、基地局制御装置210は、無線基地局101を介して無線端末103に無線基地局102に新たに割り当てた直交符号を送信し、無線基地局102が送信する部分チャネル1を受信するように指示する。【0065】指示を受けた無線基地局102は部分チャネル1(1105)のみ送信を開始する(807)。これは、図13に示されるように、無線基地局102の直交符号拡散器108に基地局制御装置210から新たに供給された直交符号OC21を割り当て、同時に直交符号を割り当てた直交符号拡散器108の出力に対応するスイッチ112の設定のみオンに切り替えることにより実現される。この段階で状態c)に移行する。図10に示されるように、無線端末103に向けて信号1005の送信が開始される。また、指示を受けた無線端末103は無線基地局102が送信する部分チャネル1の受信を開始する。これは、現在レイク合成に利用している全復調エレメントのうち、もっとも受信強度が弱い復調エレメントに信号探索エレメントを用いて得た無線基地局102のオフセットを割り当て、同時にその復調エレメントの出力を無線基地局102に割り当てられた直交符号で逆拡散し、第二シンボル合成器において両無線基地局から送信されてきた部分チャネル1を合成した後、マルチプレクサで多重化することによって実現される。」
(4)図2として以下の図が記載されている。
「[図:0001386559000001.jpg]」
(5)図5として以下の図が記載されている。
「[図:0001386559000002.jpg]」
(6)図10として以下の図が記載されている。
「[図:0001386559000003.jpg]」
引用例1の上記記載,及び移動通信システムの分野における技術常識を考慮すると,次のことがいえる。
ア 上記「(2)」の段落【0023】には「この図では一例として、CDMA方式セルラー移動通信システムの構成を示している。」との記載,及び【0025】には「基地局制御装置は接続されている複数の無線基地局を制御し、・・・(中略)・・・ハンドオフの制御等を行う。」との記載があるから,引用例1には「CDMA方式セルラー移動通信システム」におけるハンドオフの制御の方法が記載されているといえる。
イ 上記「(3)」の段落【0058】には「ハンドオフ状態への移行」とのタイトルが記載され,その中で,段落【0064】に「基地局制御装置210は、無線基地局101を介して無線端末103に無線基地局102に新たに割り当てた直交符号を送信」との記載があるから,ハンドオフ状態で無線基地局101は無線端末103と通信するといえる。また,同様に,段落【0065】に「無線基地局102は部分チャネル1(1105)のみ送信を開始する(807)。」との記載,及び「無線端末103は無線基地局102が送信する部分チャネル1の受信を開始する。」との記載があるから,ハンドオフ状態で無線基地局102は無線端末103と通信するといえる。
そして,上記「(1)」の段落【0003】に「ソフトハンドオフはCDMA方式は複数の無線回線の同時受信が可能という特性を利用して実現される。具体的には、・・・(中略)・・・下り回線においては、複数の無線基地局から単一の無線端末に対して同一情報に異なる拡散を施した信号を同時に送信し、無線端末が各信号を同時に受信し逆拡散して同一情報を取り出した後、取り出した情報を選択又は合成することによって上記特性が実現される。」との記載がある。そうすると,上記「(3)」の段落【0065】に「両無線基地局から送信されてきた部分チャネル1を合成した後、マルチプレクサで多重化する」との記載は,ソフトハンドオフの動作といえるから,上記「(3)」に記載された「ハンドオフ」とは「ソフトハンドオフ」を表していることは明らかである。
よって,引用例1には「ソフトハンドオフ状態で,無線基地局101及び無線基地局102は無線端末103と通信すること」が記載されているといえる。
ウ 上記「(3)」の段落【0058】には「ハンドオフ状態への移行」とのタイトルが記載され,その中で,段落【0064】に「基地局制御装置210は、無線基地局101を介して無線端末103に無線基地局102に新たに割り当てた直交符号を送信し、無線基地局102が送信する部分チャネル1を受信するように指示する。」との記載があるから,ハンドオフ状態で,無線基地局101を介して無線端末103に無線基地局102に新たに割り当てた直交符号を送信し、無線基地局102が送信する部分チャネル1を受信するように指示するといえる。そして,上記「イ」で説示したように,上記「(3)」に記載された「ハンドオフ」が「ソフトハンドオフ」を表していることは明らかであるから,引用例1には「ソフトハンドオフ状態で,無線基地局101を介して無線端末103に無線基地局102に新たに割り当てられた直交符号を送信し、無線基地局102が送信する部分チャネル1を受信するように指示すること」が記載されているといえる。
エ 上記「(3)」の段落【0058】には「ハンドオフ状態への移行」とのタイトルが記載され,その中で,【0065】に「指示を受けた無線基地局102は部分チャネル1(1105)のみ送信を開始する(807)。」との記載及び「図10に示されるように、無線端末103に向けて信号1005の送信が開始される。」との記載がある。ここで,上記「(6)」の図10を参酌すると,無線基地局102から送信される「部分チャネル1」には「1005」という符号が付されていることから,上記「部分チャネル1(1105)」との記載は「部分チャネル1(1005)」の誤記であることは明らかである。また,これらの記載及び移動通信システムの分野において,信号はチャネル上で送信することが技術常識であることを考慮すれば,ハンドオフ状態で,無線基地局102は部分チャネル1上で信号の送信を開始するといえる。そして,上記「イ」で説示したように,上記「(3)」に記載された「ハンドオフ」が「ソフトハンドオフ」を表していることは明らかであるから,引用例1には「ソフトハンドオフ状態で,無線基地局102は部分チャネル1上で信号の送信を開始すること」が記載されているといえる。
したがって,上記「ア」ないし「エ」を総合すると,引用例1には,次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「 CDMA方式セルラー移動通信システムにおいて,ソフトハンドオフ状態で,無線基地局101及び無線基地局102は無線端末103と通信すること,前記無線基地局101を介して前記無線端末103に前記無線基地局102に新たに割り当てられた直交符号を送信し,前記無線基地局102が送信する部分チャネル1を受信するように指示すること,前記無線基地局102は前記部分チャネル1上で信号の送信を開始すること,を含む,方法。」
2 周知技術
(1)当審拒絶理由で引用され、本願優先日前に公開された引用例2(特表2003-501974号公報)には、図面とともに以下の事項が記載されている。(なお,下線は当審で付与した。)
ア 「【0009】最初に図1を参照すると、ここにはセルラ通信ネットワークの3つのセル2が示されている。各セル2は、それぞれの基地トランシーバ局(BTS)4によってサービスを提供される。基地局はCDMAシステムではノードBと呼ばれることがある。各基地トランシーバ局は、所与の基地トランシーバ局4に関連付けられたセル内に位置する移動局6へ信号を送信し、かつそこから信号を受信するように構成される。同様に、各移動局6は、それぞれの基地トランシーバ局4へ信号を送信し、かつそこから信号を受信することができる。」
イ 「【0023】接続モード32時の主要な状態は、セル接続状態34およびUTRAN登録エリア(URA)接続状態である。1つの無線ネットワーク制御装置がサービス提供無線ネットワーク制御装置として働き、移動局と当該サービス提供無線ネットワーク制御装置との間に無線資源制御接続が確立される。移動局の位置がセルレベルで知られると、移動局はセル接続状態になる。無線資源制御接続の変更は、ハンドオーバ手続きによって処理される。この状態で、無線リンクは、様々なチャネルを使用することができる。【0024】1.専用チャネル(DCH):このチャネルでは、拡散符号が移動局に割り当てられ、その移動局単独で使用される。2.専用共有チャネル(DSCH):このチャネルでは、拡散符号が多数の移動局の間で共用される。無線チャネルはパケットトラフィック用に最適化される。3.ダウンリンクの共通チャネルおよびアップリンクのランダムアクセスチャネル:これらは共有チャネルであり、短いパケットに使用するのに適している。」
(2)当審拒絶理由で引用され,本願優先日前に公開された引用例5(国際公開第03/049481号)には、以下の事項が記載されている。(なお,下線は当審で付与した。)
ア 「In a WCDMA based system the applicable transport channels for packet data transfer are Dedicated Transport channel (DCH) in uplink and downlink direction, Random Access Channel (RACH) in uplink direction, Forward Access Channel(FACH) in downlink direction, Common Packet Channel (CPCH) in uplink direction, and Downlink Shared Channel (DSCH) in downlink direction. 」(第3頁第28行ないし第35行)
(当審仮訳:WCDMAベースのシステムでは、パケットデータ転送に適用できる搬送チャンネルは、アップリンク及びダウンリンク方向の専用搬送チャンネル(DCH)、アップリンク方向のランダムアクセスチャンネル(RACH)、ダウンリンク方向の順方向アクセスチャンネル(FACH)、アップリンク方向の共通パケットチャンネル(CPCH)、及びダウンリンク方向のダウンリンク共有チャンネル(DSCH)である。)
イ 「 Figure 2 illustrates a radio resource management system for packet switched data in a WCDMA radio communication system comprising a dedicated transport channel DCH1 and shared and/or common transport channels SCH1 and SCH2. The radio communication system illustrated in Figure 2 is a WCDMA-based system, thus the dedicated channel is a DCH-channel and the shared and common channels are RACH-, FACH-, CPCH- and/or DSCH-channels. 」(第12頁第30行ないし第13頁第1行)
(当審仮訳:図2は、専用の搬送チャンネルDCH1と、共有及び/又は共通の搬送チャンネルSCH1及びSCH2とを備えたWCDMA無線通信システムにおいてパケット交換データに対し無線リソースを管理するシステムを示す。図2に示された無線通信システムは、WCDMAベースのシステムであり、従って、専用チャンネルは、DCHチャンネルであり、そして共有及び共通のチャンネルは、RACH、FACH、CPCH及び/又はDSCHチャンネルである。)
上記「(1)」及び「(2)」に示されるように,以下の点は周知技術(以下「周知技術」という。)であると認める。
「CDMAシステムでは,ダウンリンク共用チャネルを使用する。」
3 技術常識1
当審拒絶理由で引用され,本願優先日前に公開された引用例3(国際公開第03/037027号)には、以下の事項が記載されている。(なお,下線は当審で付与した。)
(1)「移動局は,ソフトハンドオーバを行っている基地局の1つをプライマリセル(primary cell)として選択し,他の基地局をノンプライマリセルとする。」(第1頁第24行ないし第26行)
上記「(1)」によれば,以下の点が技術常識(以下「技術常識1」という。)であると認める。
「ソフトハンドオーバを行っている基地局の1つをプライマリセル(primary cell),他の基地局をノンプライマリセルとする。」
4 技術常識2
当審拒絶理由で引用され、本願優先日前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用例6(3GPP, 3rd Generation Partnership Project; Technical Specification Group Radio Access Network; Radio resource management strategies(当審仮訳:無線リソース管理戦略) (Release 5), 3GPP TR 25.922 V5.0.0 (2002-03), 2002.03.19アップロード, インターネット<URL:https://www.3gpp.org/ftp/Specs/archive/25_series/25.922/25922-500.zip>)には,以下の記載がある。(なお,下線は当審で付与した。)
(1)「5.1.4 Soft Handover5.1.4.1 Soft Handover Parameters and DefinitionsSoft Handover is a handover in which the mobile station starts communication with a new Node-B on a same carrier frequency, or sector of the same site (softer handover), performing utmost a change of code.」
(当審仮訳:5.1.4 ソフトハンドオーバ
5.1.4.1 ソフトハンドオーバのパラメータと定義
ソフトハンドオーバは,コードの変更を最大限に実行することで,移動局が同じキャリア周波数の新しいノードB又は同じサイトの新しいセクタ(ソフターハンドオーバ)と通信を開始するハンドオーバである。)
上記「(1)」によれば,ソフターハンドオーバは,ソフトハンドオーバの一種であって,同じサイトの新しいセクタへのハンドオーバを表すものといえる。してみれば,以下の点が技術常識(以下「技術常識2」という。)であると認める。
「ソフターハンドオーバは,ソフトハンドオーバの一種であって,同じサイトの新しいセクタへのハンドオーバである。」
第5 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
1 移動通信システムの分野において,無線端末を無線送受信ユニット(WTRU)とも称することは技術常識であるから,引用発明の「無線端末103」は,本願発明の「無線送受信ユニット(WTRU)」に相当する。
また,引用発明の「ソフトハンドオフ」がソフトハンドオーバとも呼ばれ,上記「第4」の「3」に技術常識1として説示したように「ソフトハンドオーバを行っている基地局の1つをプライマリセル(primary cell),他の基地局をノンプライマリセルとする。」ことは技術常識である。加えて,セルとは基地局もしくは基地局が通信する際に形成するエリアを表すことが技術常識である。そして,引用発明は「ソフトハンドオフ状態」で,「無線基地局101」が「無線端末103に無線基地局102に新たに割り当てられた直交符号を送信し,無線基地局102が送信する部分チャネル1を受信するように指示する」ものであって,他の無線基地局に関する指示を無線端末に行うものである。一方,「ソフトハンドオフ状態」で,「無線基地局102」は「部分チャネル1で信号の送信を開始する」ものであって,「無線基地局101」の指示に応じた動作を行うものといえる。そうすると,引用発明において,「無線基地局102」に関する指示を行う「無線基地局101」が形成するエリアは本願発明の「プライマリセル」に相当し,引用発明の「無線基地局101」の指示に応じた動作を行う「無線基地局102」が形成するエリアは本願発明の「非プライマリセル」に相当するといえる。
以上のことから,引用発明の「ソフトハンドオフ状態で,無線基地局101及び無線基地局102は無線端末103と通信すること」は,無線端末103と通信するために,無線基地局101及び無線基地局102がプライマリセル及び非プライマリセルを形成し,セルを動作させるものといえる。
よって,本願発明の「無線送受信ユニット(WTRU)と通信するために、1つのネットワークノードを用いて、プライマリセル及び非プライマリセルを動作させること」と引用発明の「無線基地局101及び無線基地局102は無線端末103と通信すること」は,「無線送受信ユニット(WTRU)と通信するために、プライマリセル及び非プライマリセルを動作させる」点で共通する。
2 引用発明は「無線基地局101を介して無線端末103に無線基地局102に新たに割り当てられた直交符号を送信」するものであって,「無線端末103」は「無線基地局102に新たに割り当てられた直交符号」を受信しない状態では「無線基地局102」からの信号を受信することができないことは明らかである。そうすると,「無線基地局102に新たに割り当てられた直交符号」は「無線基地局101」のみを介して送信するものであって,「無線基地局102」を介して送信するものではないことが明らかである。
また,移動通信システムの分野において,無線基地局が無線端末に送信する際,ダウンリンクチャネル上で送信が行われることは技術常識であるから,引用発明の「無線基地局101を介して無線端末103に」送信される「無線基地局102に新たに割り当てられた直交符号」はダウンリンクチャネル上で送信するものといえる。
そして,前記「1」で説示したように,引用発明の「無線端末103」が本願発明の「WTRU」に相当し,引用発明における「無線基地局101」が通信する際に形成するエリアは「プライマリセル」ということができることを考慮すれば,本願発明の「プライマリセルのみを介して、前記プライマリセルのダウンリンク共有チャネル上で」「WTRUへ」「送信すること」と引用発明の「無線基地局101を介して無線端末103に」「送信」することは,「プライマリセルのみを介して,前記プライマリセルのダウンリンクチャネル上でWTRUへ送信する」点で共通する。
3 引用発明は「CDMA方式セルラー移動通信システム」に関するものである。ここで,CDMA方式においては,直交符号を用いてチャネルを形成することが技術常識であるから,引用発明の「無線基地局102に新たに割り当てられた直交符号」は,当該直交符号を用いて形成されたチャネルを識別する情報といえる。そして,この引用発明の「無線基地局102に新たに割り当てられた直交符号」は,当該「直交符号を送信し,無線基地局102が送信する部分チャネル1を受信するように指示する」ものであるから,「無線基地局102が送信する部分チャネル1」を識別する情報といえる。
ここで,移動通信システムの分野において,無線基地局が無線端末に送信する際のチャネルがダウンリンクチャネルであることは技術常識であるから,引用発明の「無線基地局102が送信する部分チャネル1」はダウンリンクチャネルといえる。そして,前記「1」で説示したように,引用発明における「無線基地局102」が通信する際に形成するエリアは「非プライマリセル」ということができることを考慮すれば,本願発明の「非プライマリセルのダウンリンク共有チャネルを識別する情報」と引用発明の「無線基地局102に新たに割り当てた直交符号」は,「非プライマリセルのダウンリンクチャネルを識別する情報」である点で共通する。
4 上記「2」及び「3」によれば,本願発明の「プライマリセルのみを介して、前記プライマリセルのダウンリンク共有チャネル上でWTRUへ非プライマリセルのダウンリンク共有チャネルを識別する情報を含む第1メッセージを送信すること」と、引用発明の「無線基地局101を介して無線端末103に無線基地局102に新たに割り当てられた直交符号を送信し,前記無線基地局102が送信する部分チャネル1を受信するように指示すること」は,「プライマリセルのみを介して、前記プライマリセルのダウンリンクチャネル上でWTRUへ非プライマリセルのダウンリンクチャネルを識別する情報を送信する」点で共通する。
5 引用発明は「無線基地局102は部分チャネル1上で信号の送信を開始する」するものである。ここで、上記「3」で説示したように,引用発明の「無線基地局102に新たに割り当てられた直交符号」が、当該直交符号を用いて形成された「無線基地局102が送信する部分チャネル1」を識別する情報といえること,「信号の送信」が無線端末103へ行われることは明らかであることを考慮すると,引用発明の「無線基地局102は部分チャネル1上で信号の送信を開始すること」は,「無線基地局102に新たに割り当てられた直交符号」で識別された「部分チャネル1上で」無線端末103へ「信号」を「送信する」ものといえる。また,本願発明の「第2メッセージ」と引用発明の「信号」は,「信号」である点で共通する。
そして,上記「3」で説示したように,引用発明の「無線基地局102が送信する部分チャネル1」はダウンリンクチャネルといえること,前記「1」で説示したように、引用発明の「無線端末103」が本願発明の「WTRU」に相当し,引用発明における「無線基地局102」が通信する際に形成するエリアは「非プライマリセル」ということができることを考慮すれば,本願発明の「非プライマリセルの識別されたダウンリンク共有チャネル上で、WTRUへ第2メッセージを送信すること」と,引用発明の「無線基地局102は部分チャネル1上で信号の送信を開始すること」は,「非プライマリセルの識別されたダウンリンクチャネル上で、WTRUへ信号を送信する」点で共通する。
したがって,上記「1」ないし「5」を総合すれば,本願発明と引用発明は,以下の点で一致し,また相違する。
<一致点>
「 無線送受信ユニット(WTRU)と通信するために、プライマリセル及び非プライマリセルを動作させることと、前記プライマリセルのみを介して、前記プライマリセルのダウンリンクチャネル上で前記WTRUへ前記非プライマリセルのダウンリンクチャネルを識別する情報を送信することと、前記非プライマリセルの前記識別されたダウンリンクチャネル上で、前記WTRUへ信号を送信することと、を含む、方法。」
<相違点1>
本願発明が,「1つのネットワークノードを用いて」プライマリセル及び非プライマリセルを動作させるものであるのに対し,引用発明は「無線基地局101及び無線基地局102」を用いて動作させるものであって,本願発明の当該発明特定事項が特定されていない点。
<相違点2>
本願発明のダウンリンクチャネルが「ダウンリンク共有チャネル」であるのに対し,引用発明のダウンリンクチャネルは,本願発明の当該発明特定事項が特定されていない点。
<相違点3>
本願発明が,ダウンリンクチャネルを「識別する情報を含む第1メッセージ」を送信するのに対し,引用発明は,ダウンリンクチャネルである部分チャネル1を識別する情報である「無線基地局102に新たに割り当てられた直交符号」を送信するものであって,本願発明の当該発明特定事項が特定されていない点。
<相違点4>
本願発明が「第2メッセージ信号」を送信するのに対し,引用発明は「信号」を送信するものであって,本願発明の当該発明特定事項が特定されていない点。
第6 判断
1 相違点1について
上記「第4」の「4」に技術常識2として説示したように,ソフターハンドオーバは,ソフトハンドオーバの一種であって,同じサイトの新しいセクタへのハンドオーバであることは技術常識である。ここで,セクタとは,一つの無線基地局が形成するセルをアンテナの指向性等に基づいて分割したセルであり,同じサイトとは同じ無線基地局を表すことは,当業者にとって自明である。また,セルラー移動通信システムにおいて,無線基地局をネットワークノードと呼称することは技術常識である。つまり,ソフターハンドオーバは,ソフトハンドオーバの一種であって,同じ無線基地局(ネットワークノード)の新しいセルへのハンドオーバであることが,技術常識である。
してみれば,ソフターハンドオーバは,ソフトハンドオーバの一種であって,同じ無線基地局(ネットワークノード)の新しいセルへのハンドオーバであるという上記技術常識を参酌し,ソフトハンドオフ(ソフトハンドオーバ)の技術である引用発明を,同じソフトハンドオーバの一種であるソフターハンドオーバに対して適用を試みることは、当業者の通常の創作能力の発揮であるといえるから,引用発明の「無線基地局101及び無線基地局102」を用いてプライマリセル及び非プライマリセルを動作させるソフトハンドオフの動作を,「ソフトハンドオーバ」の一種であって,1つの無線基地局(ネットワークノード)を用いて,プライマリセル及び非プライマリセルを動作させる「ソフターハンドオーバ」に適用することで,引用発明において,1つのネットワークノードを用いてプライマリセル及び非プライマリセルを動作させるよう構成することは,当業者が容易に想到し得たことである。
2 相違点2について
上記「第4」の「2」に周知技術として説示したように,CDMAシステムでは,ダウンリンク共用チャネルを使用することは周知技術である。そして,引用発明は,「CDMA方式セルラー移動通信システムにおける無線端末」であるから,上記周知技術を考慮して,ダウンリンクチャネルとして,ダウンリンク共用チャネルを用いることは,当業者であれば容易に想到し得たことである。
3 相違点3について
引用発明のCDMA方式セルラー移動通信システムにおいて,無線基地局101から無線端末に「無線基地局102に新たに割り当てられた直交符号」という情報を送信する際,どのような形で送信するかは適宜であり,その送信に用いるものを第1メッセージと称することは任意である。
してみれば,引用発明において,「無線基地局102に新たに割り当てられた直交符号」を第1メッセージと称するものに含めて送信するように構成することは,当業者であれば容易に想到し得たことである。
4 相違点4について
上記「3」で説示したことと同様,無線基地局102から無線端末に「信号」を送信する際,どのような形で送信するかは適宜であり,その送信に用いたものを第2メッセージと称することは任意である。
してみれば,上記「3」と同様に,引用発明において,「信号」を第2メッセージと称するものとして送信するように構成することは,当業者であれば容易に想到し得たことである。
5 審判請求人の主張について
(1)審判請求人は,令和3年12月3日に提出された意見書の「4.」の「(4-2)」において「本願の発明の技術分野に属するワイヤレス通信ネットワークシステムでは、一般に、複数の基地局を有し、移動局が、それらの基地局間を移動するときにはソフトハンドオーバ技術により制御される構成であり(上記(a)の技術に相当)、さらに、これら複数の基地局のそれぞれは、その基地局がカバーする領域を複数のセクタに分割して制御され、移動局が、セクタ間を移動するときにはソフターハンドオーバ技術で制御される(上記(b)の技術に相当)構成を有し、ソフトハンドオーバとソフターハンドオーバとでは、異なる制御を行うことが知られています・・・(中略)・・・。
このように、ソフトハンドオーバとソフターハンドオーバはいずれも、移動局が、互いに隣接する2つのセクタ間を移動するときの制御技術である点で類似していますが、その互いに隣接する2つのセクタが、それぞれ異なる基地局により制御されている場合と、両方のセクタが1つの基地局で制御されている場合とでは、異なる技術が必要になることは周知であります。」との主張,「広義のソフトハンドオーバには、狭義のソフトハンドオーバ(上記(a)の技術に相当)と、これとは異なる、ソフターハンドオーバ(上記(b)の技術に相当)とが含まれています。しかしながら、「ソフターハンドオーバは広義のソフトハンドオーバの一種であることは、当該技術分野における技術常識である」としても、引用例1に記載されているものは、狭義のソフトハンドオフ動作に係るものですから、これとは異なる、ソフターハンドオーバに適用することはできないと考えます。」との主張を行っている。
しかしながら,上記「1」で説示したように,ソフターハンドオーバは,ソフトハンドオーバの一種であることが技術常識であり,ソフトハンドオーバの技術である引用発明をソフトハンドオーバ一種であるソフターハンドオーバに対して適用を試みることは、当業者の通常の創作能力の発揮であるといえる。また,引用発明をソフターハンドオーバに適用することができないという特段の事情もない。してみれば,上記審判請求人の主張を採用することはできない。
(2)また,審判請求人は,令和3年12月3日に提出された意見書の「4.」の「(4-3)」において「引用文献1には、無線基地局101と、それとは別の無線基地局102とが、それぞれ無線端末103と通信する技術を開示するだけであって、本願の特徴である1つの基地局を2つ以上のセルに分割してソフターハンドオーバにより制御を行う構成については、開示も示唆もありません。・・・(中略)・・・このように、これらの引用文献には、前述の通り、狭義のソフトハンドオーバに関する開示はあるものの、ソフターハンドオーバに関する記載や示唆は全くあるません。そしてこのことは、ソフターハンドオーバが広義のソフトハンドオーバの一種であったとしてもなんら変わることはありません。」と主張している。
しかしながら,上記「1」及び上記「(1)」で説示したとおり,ソフターハンドオーバは,ソフトハンドオーバの一種であることが技術常識であり,ソフトハンドオーバの技術である引用発明をソフトハンドオーバ一種であるソフターハンドオーバに対して適用を試みることは、当業者の通常の創作能力の発揮であって,引用発明における,プライマリセル及び非プライマリセルを,無線基地局101及び無線基地局102を用いてそれぞれ動作させることに代えて,1つのネットワークノードを用いて動作させるよう構成することは,当業者が容易に想到し得たことである。してみれば,上記審判請求人の主張を採用することはできない。
(3)したがって,審判請求人の主張を採用することはできない。
6 まとめ
以上のとおりであるから,本願発明は,引用発明,引用例2及び引用例5に記載された周知技術,引用例3に記載された技術常識,並びに引用例6に記載された技術常識に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものである。
第7 むすび
以上のとおり,本願の請求項6に係る発明は,引用例1に記載された発明,引用例2及び引用例5に記載された周知技術,引用例3に記載された技術常識,並びに引用例6に記載された技術常識に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって,本願は,他の請求項について検討するまでもなく,拒絶されるべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
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2020-013098