2019-017661
ソフトハンドオーバにおける機能強化されたアップリンク動作
- 審判番号
- 2019-017661
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2016-229124外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2019年12月26日
- 審決日
- 2022年02月24日
- 公報発行日
- 2022年08月26日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】パンテック ワイヤレス, リミティッド ライアビリティ カンパニー
- 【請求人代理人】特許業務法人ナガトアンドパートナーズ
- 分類
- P18 .121-WZ (H04W)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 16項目
第1 手続の経緯
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本願は,2004年(平成16年)8月25日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理 2003年8月25日 アメリカ合衆国(US),2003年10月1日 アメリカ合衆国(US),2003年10月3日 アメリカ合衆国(US),2003年11月14日 アメリカ合衆国(US),2004年7月2日 アメリカ合衆国(US))を国際出願日とした特願2006-524806号の一部を,平成19年9月20日に新たな特許出願とした特願2007-244349号の一部を,平成23年3月22日に新たな特許出願とした特願2011-063039号の一部を,平成25年6月5日に新たな特許出願とした特願2013-119218号の一部を,平成26年5月13日に新たな特許出願とした特願2014-099555号の一部を,平成27年6月17日に新たな特許出願とした特願2015-121962号の一部を,平成28年11月25日に新たな特許出願としたものであって,その手続の経緯は以下のとおりである。
平成30年 1月26日付け 拒絶理由通知書
平成30年 7月27日 意見書及び手続補正書の提出
平成30年12月 7日付け 拒絶理由通知書(最後)
平成31年 4月25日 意見書及び手続補正書の提出
令和 元年 8月30日付け 拒絶査定
令和 元年12月26日 審判請求書及び手続補正書の提出
令和 2年 9月 9日付け 拒絶理由通知書(当審)
令和 2年12月15日 意見書及び手続補正書の提出
令和 3年 1月28日付け 拒絶理由通知書(当審)
令和 3年 8月 2日 意見書の提出
第2 本願発明
本願の請求項1ないし24に係る発明は,令和2年12月15日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし24に記載された事項により特定されるものと認められるところ,その請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,以下のとおりのものである。
「 【請求項1】無線送受信ユニット(WTRU)であって、無線送受信機と、プロセッサと、を備え、ソフターハンドオーバ中、前記プロセッサは前記WTRUに、前記無線送受信機を用いて、1つのノードBによって制御されるプライマリセル及び非プライマリセルを介して通信させ、前記無線送受信機を用いて、前記プライマリセルを介し、かつ前記非プライマリセルを介さずに、前記非プライマリセルのダウンリンク共有チャネルを識別する情報を含む第1メッセージを受信させ、前記受信された第1メッセージに応じて、前記無線送受信機を用いて、前記識別されたダウンリンク共有チャネルを通じて第2メッセージを受信させ、処理させる、WTRU。」
第3 拒絶の理由
令和3年1月28日付けで当審が通知した拒絶理由(以下,「当審拒絶理由」という。)の概要は,以下のとおりのものである。
1.(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記 (引用例等については引用例等一覧参照)
・請求項1ないし6,7ないし12,13ないし18及び19ないし24に対して,引用例1,3,6及び7
<引用例等一覧>
引用例1.特開2000-217139号公報
引用例3.特表2003-501974号公報
引用例6.3GPP, 3rd Generation Partnership Project; Technical Specification Group Radio Access Network; Radio resource management strategies (Release 5), 3GPP TR 25.922 V5.0.0 (2002-03), 2002.03.19アップロード, インターネット<URL:https://www.3gpp.org/ftp/Specs/archive/25_series/25.922/25922-500.zip>
引用例7.国際公開第03/049481号
ここで,上記引用例3について,当審拒絶理由では「特開」と記載していたが,令和元年8月30日付け拒絶査定時に通知したとおり,「特表」の明らかな誤記である。
第4 引用例の記載,引用発明,周知技術及び技術常識
1 引用例1の記載及び引用発明
当審拒絶理由で引用され,本願優先日前に公開された引用例1(特開2000-217139号公報)には,図面とともに以下の記載がある。(なお,下線は当審で付与した。)
(1)「【0002】【従来の技術】CDMA方式移動通信システムにおいて、ソフトハンドオフと呼ばれるハンドオフ方式が実用化されている。ソフトハンドオフについては米国特許5,267,261号明細書(1992年3月5日出願、"Mobile Station Assisted Soft Handoff In A CDMA Cellular Communications System")に記載されている。【0003】ソフトハンドオフとは通信の無瞬断、及びセル境界におけるセルダイバーシチ効果という特性を有するハンドオフ方法である。ソフトハンドオフはCDMA方式は複数の無線回線の同時受信が可能という特性を利用して実現される。具体的には、上り回線においては無線端末が送信した信号を複数の無線基地局で受信し、受信信号を基地局制御装置において選択又は合成することによって上記特性が実現される。一方、下り回線においては、複数の無線基地局から単一の無線端末に対して同一情報に異なる拡散を施した信号を同時に送信し、無線端末が各信号を同時に受信し逆拡散して同一情報を取り出した後、取り出した情報を選択又は合成することによって上記特性が実現される。」
(2)「【0023】【発明の実施の形態】1. 無線通信システムの基本構成図2に本発明に係わる無線通信システムの構成図を示す。この図では一例として、CDMA方式セルラー移動通信システムの構成を示している。【0024】サービスエリア206を有する無線基地局203は無線回線を介してサービスエリア206内に位置する無線端末201と通信している。又、サービスエリア207を有する無線基地局101及びサービスエリア208を有する無線基地局102は両サービスエリアの共通地域に存在する無線端末103と同時に通信している。又、無線基地局203は基地局制御装置209と、無線基地局101及び102は基地局制御装置210と、有線又は無線の通信回線を介して接続されている。【0025】基地局制御装置209及び210は通信回線を介して交換機211と接続されている。基地局制御装置は接続されている複数の無線基地局を制御し、無線インタフェースの終端やハンドオフの制御等を行う。」
(3)「【0039】3.2 無線端末受信系図5は無線端末受信系の実施例をブロック図の形態で表したものである。アンテナ501は送受共用であり、無線基地局からの送信信号をデュプレクサ502を介してRFユニット503に供給すると同時に、無線端末送信系から供給される信号を送信する。デュプレクサ502はアンテナ501を送受に共用する。RFユニット503は、受信信号に対し増幅、IF周波数への周波数変換、IF周波数帯域でのフィルタリング、及びA/D変換を順に施す。RFユニット503の出力は逆拡散器504に供給される。逆拡散器504は受信信号に対しタイミング調整を行った後、PN符号及び直交符号で相関を取り合成する機能を有する。逆拡散器504の詳細な機能については後で図6を用いて説明する。逆拡散器504の出力はデインタリーバ505に入力される。デインタリーバ505は無線基地局チャネルエレメント305のインタリーバ402に対応しており、インタリーバ402で並び替えられた信号を元の順に並べ直す。復号器506は畳み込み符号化器401と対応しており、復号化によって元の送信情報を取り出す。制御プロセッサ507は以上の処理を統括し制御する。」
(4)「【0058】4.1 ハンドオフ状態への移行・・・(中略)・・・【0063】無線基地局102は、無線端末103の送信信号を基地局制御装置からの情報を元に探索し(804)、捕捉成功後基地局制御装置210に対して上り回線捕捉成功を通知する(805)。この段階で状態b)に移行する。図10に示されるように、状態b)は上り回線のみ両無線基地局に受信されている。基地局制御装置において両無線基地局から供給される信号を最大比合成又は選択合成することにより、上り回線はセルダイバーシチ状態となる。これ以降、上り回線に関してはハンドオフが終了するまでセルダイバーシチ状態を保つ。【0064】基地局制御装置210は無線基地局102から上り回線捕捉成功を通知されると、無線基地局102に新たな直交符号を割り当て、同時にスイッチの設定を切り替えることによって、部分チャネル1の送信を開始するよう命令信号を送信する(806)。また、基地局制御装置210は、無線基地局101を介して無線端末103に無線基地局102に新たに割り当てた直交符号を送信し、無線基地局102が送信する部分チャネル1を受信するように指示する。【0065】指示を受けた無線基地局102は部分チャネル1(1105)のみ送信を開始する(807)。これは、図13に示されるように、無線基地局102の直交符号拡散器108に基地局制御装置210から新たに供給された直交符号OC21を割り当て、同時に直交符号を割り当てた直交符号拡散器108の出力に対応するスイッチ112の設定のみオンに切り替えることにより実現される。この段階で状態c)に移行する。図10に示されるように、無線端末103に向けて信号1005の送信が開始される。また、指示を受けた無線端末103は無線基地局102が送信する部分チャネル1の受信を開始する。これは、現在レイク合成に利用している全復調エレメントのうち、もっとも受信強度が弱い復調エレメントに信号探索エレメントを用いて得た無線基地局102のオフセットを割り当て、同時にその復調エレメントの出力を無線基地局102に割り当てられた直交符号で逆拡散し、第二シンボル合成器において両無線基地局から送信されてきた部分チャネル1を合成した後、マルチプレクサで多重化することによって実現される。」
(5)図2として以下の図が記載されている。
「[図:0001386443000001.jpg]」
(6)図5として以下の図が記載されている。
「[図:0001386443000002.jpg]」
(7)図10として以下の図が記載されている。
「[図:0001386443000003.jpg]」
引用例1の上記記載,及び移動通信システムの分野における技術常識を考慮すると,次のことがいえる。
ア 上記「(2)」の段落【0023】には「この図では一例として、CDMA方式セルラー移動通信システムの構成を示している。」との記載,段落【0024】には「サービスエリア207を有する無線基地局101及びサービスエリア208を有する無線基地局102は両サービスエリアの共通地域に存在する無線端末103と同時に通信している。」との記載があるから,引用例1には「CDMA方式セルラー移動通信システムにおける無線端末」が記載されているといえる。
イ 上記「(3)」の段落【0039】には「無線端末受信系」として,「アンテナ501は送受共用であり、無線基地局からの送信信号をデュプレクサ502を介してRFユニット503に供給すると同時に、無線端末送信系から供給される信号を送信する。デュプレクサ502はアンテナ501を送受に共用する。RFユニット503は、受信信号に対し増幅、IF周波数への周波数変換、IF周波数帯域でのフィルタリング、及びA/D変換を順に施す。RFユニット503の出力は逆拡散器504に供給される。逆拡散器504は受信信号に対しタイミング調整を行った後、PN符号及び直交符号で相関を取り合成する機能を有する。・・・(中略)・・・逆拡散器504の出力はデインタリーバ505に入力される。デインタリーバ505は無線基地局チャネルエレメント305のインタリーバ402に対応しており、インタリーバ402で並び替えられた信号を元の順に並べ直す。復号器506は畳み込み符号化器401と対応しており、復号化によって元の送信情報を取り出す。制御プロセッサ507は以上の処理を統括し制御する。」との記載がある。
ここで,当該記載における「無線端末受信系」は「無線端末」が備えるものであることは明らかであるから,上記記載から,引用例1の「無線端末」は「無線基地局からの送信信号を受信し,元の送信情報を取り出すためのアンテナ,RFユニット,逆拡散器,デインタリーバ,及び復号器を備え,さらに各機器の処理を制御する制御プロセッサを備える」ものといえる。
また,上記「(3)」の段落【0039】には「図5は無線端末受信系の実施例をブロック図の形態で表したものである。アンテナ501は送受共用であり、無線基地局からの送信信号をデュプレクサ502を介してRFユニット503に供給すると同時に、無線端末送信系から供給される信号を送信する。」との記載があり,上記「(6)」の図5から,デュプレクサ502に加入者無線局送信系より信号が供給されることを読み取ることができる。当該記載によれば,「無線端末送信系」を無線端末が備えていることは明らかである。加えて,当該「無線端末送信系」が,図5に記載された無線端末受信系の各機器に対する逆処理を行う機器(符号器や拡散器等)を備えていることも自明である。してみれば,引用例1の「無線端末」が「無線端末送信系の機器を備えている」ことは明らかである。
以上のことを考慮すれば,引用例1の「無線端末」は「無線基地局からの送信信号を受信し,元の送信情報を取り出すためのアンテナ,RFユニット,逆拡散器,デインタリーバ,及び復号器と,各機器の処理を制御する制御プロセッサと,無線端末送信系の機器を備える」ものといえる。
ウ 上記「(4)」の段落【0064】には「無線局制御装置210は,無線基地局101を介して無線端末103に・・・(中略)・・・無線基地局102が送信する部分チャネル1受信するように指示する。」との記載,段落【0065】には「指示を受けた無線端末103は無線基地局102が送信する部分チャネル1の受信を開始する。これは・・・(中略)・・・両無線基地局から送信されてきた部分チャネル1を合成した後、マルチプレクサで多重化することによって実現される。」との記載がある。
ここで,当該記載における「両無線基地局」とは,上記「(5)」及び上記「(7)」の「図10」の「c)-e)」に示されるように「無線基地局101」と「無線基地局102」を表していることは明らかである。してみれば,引用例1の「無線端末」は,「無線基地局101と無線基地局102から送信されてきた部分チャネル1の受信を行う」ものといえる。
エ 上記「(4)」の段落【0064】には「基地局制御装置210は,・・・(中略)・・・無線基地局102に新たな直交符号を割り当て、同時にスイッチの設定を切り替えることによって、部分チャネル1の送信を開始するよう命令信号を送信する(806)。また、基地局制御装置210は、無線基地局101を介して無線端末103に無線基地局102に新たに割り当てた直交符号を送信し、無線基地局102が送信する部分チャネル1を受信するように指示する。」との記載がある。
当該記載事項によれば,引用例1の「基地局制御装置」は,無線基地局101を介して無線端末に無線基地局102に新たに割り当てた直交符号を送信し,無線基地局102が送信する部分チャネル1を受信するよう指示するものである。言い換えれば,引用例1の「無線端末」は,「無線基地局101を介して無線基地局102に新たに割り当てられた直交符号を受信し,無線基地局102が送信する部分チャネル1を受信するように指示される」ものといえる。
オ 上記「(4)」の段落【0064】には「基地局制御装置210は、無線基地局101を介して無線端末103に無線基地局102に新たに割り当てた直交符号を送信し、無線基地局102が送信する部分チャネル1を受信するように指示する。」との記載,段落【0065】には「指示を受けた無線基地局102は部分チャネル1(1105)のみ送信を開始する(807)。」との記載及び「無線端末103に向けて信号1005の送信が開始される。また、指示を受けた無線端末103は無線基地局102が送信する部分チャネル1の受信を開始する。これは・・・(中略)・・・両無線基地局から送信されてきた部分チャネル1を合成した後、マルチプレクサで多重化することによって実現される。」との記載があるから,引用例1の「無線端末」は,「無線基地局102が送信する部分チャネル1を通じて信号を受信」し,「両無線基地局から送信されてきた部分チャネル1を合成する」ものといえる。
カ 上記「(4)」の段落【0058】には「ハンドオフ状態への移行」とのタイトルが記載され,その中で,段落【0064】に「基地局制御装置210は、無線基地局101を介して無線端末103に無線基地局102に新たに割り当てた直交符号を送信し、無線基地局102が送信する部分チャネル1を受信するように指示する。」との記載,段落【0065】に「指示を受けた無線端末103は無線基地局102が送信する部分チャネル1の受信を開始する。」との記載があるから,上記段落【0064】及び【0065】の動作は,実際にハンドオフ中に行われる動作といえる。してみれば,上記「ウ」ないし「オ」で段落【0058】,【0064】及び【0065】の記載から説示した「無線端末」の各動作は,ハンドオフ中に行われる動作であるといえる。
キ 上記「ウ」で説示したように,ハンドオフ中,引用例1の「無線端末」は,無線基地局101と無線基地局102から送信されてきた部分チャネル1の受信を行うものである。ここで,上記「(1)」の段落【0003】に「ソフトハンドオフはCDMA方式は複数の無線回線の同時受信が可能という特性を利用して実現される。具体的には、・・・(中略)・・・下り回線においては、複数の無線基地局から単一の無線端末に対して同一情報に異なる拡散を施した信号を同時に送信し、無線端末が各信号を同時に受信し逆拡散して同一情報を取り出した後、取り出した情報を選択又は合成することによって上記特性が実現される。」との記載があるように,無線端末が複数の無線基地局から送信された各信号を同時に受信するようなハンドオフを,ソフトハンドオフということは明らかである。そうすると,上記「(4)」に記載された「ハンドオフ」とは「ソフトハンドオフ」を表していることは明らかである。
したがって,上記「カ」で説示した上記「ウ」ないし「オ」の「無線端末」の各動作がハンドオフ中に行われる動作であることは,「ソフトハンドオフ中に」行われる動作といえる。
したがって,上記「ア」ないし「キ」を総合すると,引用例1には,次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「 CDMA方式セルラー移動通信システムにおける無線端末であって,無線基地局からの送信信号を受信し,元の送信情報を取り出すためのアンテナ,RFユニット,逆拡散器,デインタリーバ及び復号器と,前記各機器の処理を制御する制御プロセッサと,無線送信系の機器を備え,ソフトハンドオフ中に,無線基地局101と無線基地局102から送信されてきた部分チャネル1の受信を行い,無線基地局101を介して無線基地局102に新たに割り当てられた直交符号を受信し,無線基地局102が送信する部分チャネル1を受信するように指示され,無線基地局102が送信する部分チャネル1を通じて信号を受信し,両無線基地局から送信されてきた部分チャネル1を合成する無線端末。」
2 周知技術
(1)当審拒絶理由で引用され、本願優先日前に公開された引用例3(特表2003-501974号公報)には、図面とともに以下の事項が記載されている。(なお,下線は当審で付与した。)
ア 「【0009】最初に図1を参照すると、ここにはセルラ通信ネットワークの3つのセル2が示されている。各セル2は、それぞれの基地トランシーバ局(BTS)4によってサービスを提供される。基地局はCDMAシステムではノードBと呼ばれることがある。各基地トランシーバ局は、所与の基地トランシーバ局4に関連付けられたセル内に位置する移動局6へ信号を送信し、かつそこから信号を受信するように構成される。同様に、各移動局6は、それぞれの基地トランシーバ局4へ信号を送信し、かつそこから信号を受信することができる。」
イ 「【0023】接続モード32時の主要な状態は、セル接続状態34およびUTRAN登録エリア(URA)接続状態である。1つの無線ネットワーク制御装置がサービス提供無線ネットワーク制御装置として働き、移動局と当該サービス提供無線ネットワーク制御装置との間に無線資源制御接続が確立される。移動局の位置がセルレベルで知られると、移動局はセル接続状態になる。無線資源制御接続の変更は、ハンドオーバ手続きによって処理される。この状態で、無線リンクは、様々なチャネルを使用することができる。【0024】1.専用チャネル(DCH):このチャネルでは、拡散符号が移動局に割り当てられ、その移動局単独で使用される。2.専用共有チャネル(DSCH):このチャネルでは、拡散符号が多数の移動局の間で共用される。無線チャネルはパケットトラフィック用に最適化される。3.ダウンリンクの共通チャネルおよびアップリンクのランダムアクセスチャネル:これらは共有チャネルであり、短いパケットに使用するのに適している。」
(2)当審拒絶理由で引用され,本願優先日前に公開された引用例7(国際公開第03/049481号)には、以下の事項が記載されている。(なお,下線は当審で付与した。)
ア 「In a WCDMA based system the applicable transport channels for packet data transfer are Dedicated Transport channel (DCH) in uplink and downlink direction, Random Access Channel (RACH) in uplink direction, Forward Access Channel(FACH) in downlink direction, Common Packet Channel (CPCH) in uplink direction, and Downlink Shared Channel (DSCH) in downlink direction. 」(第3頁第28行ないし第35行)
(当審仮訳:WCDMAベースのシステムでは、パケットデータ転送に適用できる搬送チャンネルは、アップリンク及びダウンリンク方向の専用搬送チャンネル(DCH)、アップリンク方向のランダムアクセスチャンネル(RACH)、ダウンリンク方向の順方向アクセスチャンネル(FACH)、アップリンク方向の共通パケットチャンネル(CPCH)、及びダウンリンク方向のダウンリンク共有チャンネル(DSCH)である。)
イ 「 Figure 2 illustrates a radio resource management system for packet switched data in a WCDMA radio communication system comprising a dedicated transport channel DCH1 and shared and/or common transport channels SCH1 and SCH2. The radio communication system illustrated in Figure 2 is a WCDMA-based system, thus the dedicated channel is a DCH-channel and the shared and common channels are RACH-, FACH-, CPCH- and/or DSCH-channels. 」(第12頁第30行ないし第13頁第1行)
(当審仮訳:図2は、専用の搬送チャンネルDCH1と、共有及び/又は共通の搬送チャンネルSCH1及びSCH2とを備えたWCDMA無線通信システムにおいてパケット交換データに対し無線リソースを管理するシステムを示す。図2に示された無線通信システムは、WCDMAベースのシステムであり、従って、専用チャンネルは、DCHチャンネルであり、そして共有及び共通のチャンネルは、RACH、FACH、CPCH及び/又はDSCHチャンネルである。)
上記「(1)」ないし「(2)」に示されるように,以下の点は周知技術(以下「周知技術」という。)であると認める。
「CDMAシステムでは,ダウンリンク共用チャネルを使用する。」
3 技術常識
当審拒絶理由で引用され、本願優先日前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用例6(3GPP, 3rd Generation Partnership Project; Technical Specification Group Radio Access Network; Radio resource management strategies(当審仮訳:無線リソース管理戦略) (Release 5), 3GPP TR 25.922 V5.0.0 (2002-03), 2002.03.19アップロード, インターネット<URL:https://www.3gpp.org/ftp/Specs/archive/25_series/25.922/25922-500.zip>)には,以下の記載がある。(なお,下線は当審で付与した。)
(1)「5.1.4 Soft Handover5.1.4.1 Soft Handover Parameters and DefinitionsSoft Handover is a handover in which the mobile station starts communication with a new Node-B on a same carrier frequency, or sector of the same site (softer handover), performing utmost a change of code.」
(当審仮訳:5.1.4 ソフトハンドオーバ
5.1.4.1 ソフトハンドオーバのパラメータと定義
ソフトハンドオーバは,コードの変更を最大限に実行することで,移動局が同じキャリア周波数の新しいノードB又は同じサイトの新しいセクタ(ソフターハンドオーバ)と通信を開始するハンドオーバである。)
上記「(1)」によれば,ソフターハンドオーバは,ソフトハンドオーバの一種であって,同じサイトの新しいセクタへのハンドオーバを表すものといえる。してみれば,以下の点が技術常識(以下「技術常識」という。)であると認める。
「ソフターハンドオーバは,ソフトハンドオーバの一種であって,同じサイトの新しいセクタへのハンドオーバである。」
第5 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
1 移動通信システムの分野において,無線端末を無線送受信ユニット(WTRU)とも称することは技術常識であるから,引用発明の「無線端末」は,本願発明の「無線送受信ユニット(WTRU)」に相当する。
また,引用発明の「アンテナ,RFユニット,逆拡散器,デインタリーバ及び復号器」は「無線基地局からの送信信号を受信し,元の送信情報を取り出すため」の機器であり,また「無線送信系の機器」は無線基地局への送信を行うための機器であることは自明である。してみれば,引用発明における「アンテナ,RFユニット,逆拡散器,デインタリーバ及び復号器」及び「無線送信系の機器」は,本願発明の「無線送受信機」に含まれる。
さらに,引用発明の「制御プロセッサ」は,本願発明の「プロセッサ」に含まれる。
2 引用発明の「制御プロセッサ」は,「無線基地局からの送信信号を受信し,元の送信情報を取り出すためのアンテナ,RFユニット,逆拡散器,デインタリーバ及び復号器」といった「各機器の処理を制御する」ものであるから,「制御プロセッサ」が,前記の各機器を備える「無線端末」に,受信に関する動作を行わせているといえる。
また,引用発明の「ソフトハンドオフ」は,ソフトハンドオーバとも呼ばれることが技術常識であること,及び上記「第4」の「3」に説示した技術常識である「ソフターハンドオーバは,ソフトハンドオーバの一種であって,同じサイトの新しいセクタへのハンドオーバである。」ことを考慮すると,本願発明の「ソフターハンドオーバ中」と引用発明の「ソフトハンドオフ中」は,「ソフトハンドオーバ中」である点で共通する。
以上のことを考慮すれば,引用発明の「ソフトハンドオフ中に」行われる受信に関する処理は,「制御プロセッサ」が「無線端末」に行わせる動作といえる。
してみれば,本願発明の「ソフターハンドオーバ中、前記プロセッサはWTRUに」動作をさせることと,引用発明の「ソフトハンドオフ中に」制御プロセッサが無線端末に処理行わせることは,「ソフトハンドオーバ中、前記プロセッサはWTRUに」動作をさせる点で共通するといえる。
3 引用発明の「無線基地局101と無線基地局102から送信されてきた部分チャネル1の受信」は,「無線基地局からの送信信号を受信し,元の送信情報を取り出すため」の機器である「アンテナ,RFユニット,逆拡散器,デインタリーバ及び復号器」を用いて行われることは明らかである。してみれば,引用発明の「無線基地局101と無線基地局102から送信されてきた部分チャネル1の受信」は,本願発明と同様に,「無線送受信機を用いて」行われているといえる。
また,引用発明は「CDMA方式セルラー移動通信システム」に関するものであり,セルラー移動通信システムの技術分野において,無線基地局が無線端末と送信や受信などの通信を行う際は,無線基地局がセルを形成し,当該セルを介して通信を行うことが技術常識である。してみれば,引用発明の「無線基地局101」及び「無線基地局102」も,セルを形成し,当該セルを介して通信を行うものといえる。
そして,引用発明の「無線端末」は「無線基地局101を介して無線基地局102に新たに割り当てられた直交符号を受信し,無線基地局102が送信する部分チャネル1を通じて信号を受信する」ものであるから,無線基地局102が送信する部分チャネル1を受信するためには,無線基地局101からの受信が必須といえる。つまり,「無線基地局101」が主要な基地局,「無線基地局102」が補助的な基地局となっていることは明らかである。
以上のことを考慮すれば,引用発明における「無線基地局101」は主要な基地局,すなわちプライマリ基地局ということができ,当該「無線基地局101」が通信する際に形成するセルは「プライマリセル」ということができる。同様に,引用発明における「無線基地局102」は補助的な基地局,すなわち非プライマリ基地局ということができ,当該「無線基地局102」が通信する際に形成するセルは「非プライマリセル」ということができる。
そして,上記「2」で説示したように,引用発明の「ソフトハンドオフ中に」行われる受信に関する動作は,「制御プロセッサ」が「無線端末」に行わせる動作といえることを考慮すれば,引用発明の「無線基地局101と無線基地局102から送信されてきた部分チャネル1の受信を行」うことは,「制御プロセッサ」が「無線端末」に「受信」させることといえる。
したがって,本願発明の「無線送受信機を用いて、1つのノードBによって制御されるプライマリセル及び非プライマリセルを介して通信させ」ることと,引用発明の「無線基地局101と無線基地局102から送信されてきた部分チャネル1の受信を行」うことは,「無線送受信機を用いて、プライマリセル及び非プライマリセルを介して通信させ」る点で共通する。
4 引用発明の「無線基地局101を介して無線基地局102に新たに割り当てられた直交符号を受信」することは,「無線基地局からの送信信号を受信し,元の送信情報を取り出すため」の機器である「アンテナ,RFユニット,逆拡散器,デインタリーバ及び復号器」を用いて行われることは明らかである。してみれば,引用発明の「無線基地局101を介して無線基地局102に新たに割り当てられた直交符号を受信」することは,本願発明と同様に,「無線送受信機を用いて」行われているといえる。
また,引用発明は「CDMA方式セルラー移動通信システム」に関するものである。CDMA方式においては,直交符号を用いてチャネルを形成することが技術常識であるから,引用発明において「無線端末」が受信する「無線基地局102に新たに割り当てられた直交符号」は,当該直交符号を用いて形成されたチャネルを識別する情報といえる。そして,この引用発明の「無線基地局102に新たに割り当てられた直交符号」は,「無線基地局102が送信する部分チャネル1を受信する」ためのものであるから,「無線基地局102が送信する部分チャネル1」を識別する情報といえる。すなわち,引用発明の「無線基地局102に新たに割り当てられた直交符号」は,当該直交符号を用いて形成された「無線基地局102が送信する部分チャネル1」を識別する情報といえる。
さらに,移動通信システムの分野において,無線基地局が無線端末に送信する際のチャネルがダウンリンクチャネルであることは技術常識であるから,引用発明の「無線基地局102が送信する部分チャネル1」はダウンリンクチャネルといえる。そして,引用発明の「無線基地局102に新たに割り当てた直交符号」は,「無線基地局101を介して」「受信」するものであるから,無線基地局102を介して受信されないことは明らかである。さらに,前記「3」で説示したように,引用発明における「無線基地局101」が通信する際に形成するセルは「プライマリセル」ということができ,「無線基地局102」が通信する際に形成するセルは「非プライマリセル」ということができることを考慮すれば,本願発明の「前記非プライマリセルのダウンリンク共有チャネルを識別する情報」と引用発明の「無線基地局102に新たに割り当てた直交符号」は,非プライマリセルのダウンリンクチャネルを識別する情報である点で共通し,引用発明の「無線基地局102に新たに割り当てた直交符号」は,本願発明と同様,プライマリセルを介し,非プライマリセルを介さずに,受信するものといえる。
そして,上記「2」で説示したように,引用発明の「ソフトハンドオフ中に」行われる受信に関する動作は,「制御プロセッサ」が「無線端末」に行わせる動作といえることを考慮すれば,引用発明の「無線基地局101を介して無線基地局102に新たに割り当てられた直交符号を受信」することは,「制御プロセッサ」が「無線端末」に「受信」させることといえる。
よって,本願発明の「無線送受信機を用いて、プライマリセルを介し、かつ非プライマリセルを介さずに、前記非プライマリセルのダウンリンク共有チャネルを識別する情報を含む第1メッセージを受信させ」ることと,引用発明の「無線基地局101を介して無線基地局102に新たに割り当てられた直交符号を受信」することは,「無線送受信機を用いて、プライマリセルを介し、かつ非プライマリセルを介さずに、前記非プライマリセルのダウンリンクチャネルを識別する情報を受信させ」る点で共通する。
5 引用発明は「無線基地局101を介して無線基地局102に新たに割り当てられた直交符号を受信し,無線基地局102が送信する部分チャネル1を受信するように指示され,無線基地局102が送信する部分チャネル1を通じて信号を受信」するものである。ここで,上記「4」で説示したように,引用発明の「無線基地局102に新たに割り当てられた直交符号」は,当該直交符号を用いて形成された「無線基地局102が送信する部分チャネル1」を識別する情報といえることを考慮すると,引用発明は,受信された情報に応じて,識別された「無線基地局102が送信する部分チャネル1」を通じて信号を受信するものといえる。
さらに,上記「4」で説示したように,無線基地局が無線端末に送信するチャネルがダウンリンクチャネルであることは技術常識であることを考慮すれば,引用発明は,受信された情報に応じて、識別されたダウンリンクチャネルである「無線基地局102が送信する部分チャネル1」を通じて信号を受信するものといえる。
また,引用発明の「無線基地局102が送信する部分チャネル1を通じて信号を受信する」ことは,「無線基地局からの送信信号を受信し,元の送信情報を取り出すため」の機器である「アンテナ,RFユニット,逆拡散器,デインタリーバ及び復号器」を用いて行われることは明らかである。してみれば,引用発明の「無線基地局102が送信する部分チャネル1を通じて信号を受信する」ことは,本願発明と同様に,「無線送受信機を用いて」行われているといえる。
さらに,本願発明の「第2メッセージ」と引用発明の「無線基地局102が送信する部分チャネル1を通じて信号を受信する」との記載における「信号」は,「信号」である点で共通する。
加えて,引用発明は「信号を受信し,両無線基地局から送信されてきた部分チャネル1を合成する」ものであるから,信号を受信した後,部分チャネル1を合成するという処理を行うものである。
そして,上記「2」で説示したように,引用発明の「ソフトハンドオフ中に」行われる受信に関する処理は,「制御プロセッサ」が「無線端末」に行わせる動作といえることを考慮すれば,引用発明の「無線基地局101を介して無線基地局102に新たに割り当てた直交符号を受信し,無線基地局102が送信する部分チャネル1を受信するように指示され,無線基地局102が送信する部分チャネル1を通じて信号を受信し,両無線基地局から送信されてきた部分チャネル1を合成する」ことは,「制御プロセッサ」が「無線端末」に「直交符号」や「部分チャネル1」を「受信」させ,「合成」という処理をさせることといえる。
以上のことを考慮すれば,本願発明の「受信された第1メッセージに応じて、無線送受信機を用いて、識別されたダウンリンク共有チャネルを通じて第2メッセージを受信させ、処理させる」ことと,引用発明の「無線基地局101を介して無線基地局102に新たに割り当てた直交符号を受信し,無線基地局102が送信する部分チャネル1を受信するように指示され,無線基地局102が送信する部分チャネル1を通じて信号を受信し,両無線基地局から送信されてきた部分チャネル1を合成する」ことは,「受信されたダウンリンクチャネルを識別する情報に応じて、無線送受信機を用いて、識別されたダウンリンクチャネルを通じて信号を受信させ、処理させる」点で共通する。
したがって,上記「1」ないし「5」を総合すれば,本願発明と引用発明は,以下の点で一致し,また相違する。
<一致点>
「 無線送受信ユニット(WTRU)であって、無線送受信機と、プロセッサと、を備え、ソフトハンドオーバ中、前記プロセッサは前記WTRUに、前記無線送受信機を用いて、プライマリセル及び非プライマリセルを介して通信させ、前記無線送受信機を用いて、前記プライマリセルを介し、かつ前記非プライマリセルを介さずに、前記非プライマリセルのダウンリンクチャネルを識別する情報を受信させ、前記受信された情報に応じて、前記無線送受信機を用いて、前記識別されたダウンリンクチャネルを通じて信号を受信させ、処理させる、WTRU。」
<相違点1>
本願発明のソフトハンドオーバが「ソフターハンドオーバ」であり,プライマリセル及び非プライマリセルが「1つのノードBによって制御される」ものであるのに対し,引用発明のソフトハンドオーバは「ソフトハンドオフ」であり,無線基地局101と無線基地局102から送信されてきた部分チャネル1の受信を行うものであって,本願発明の当該発明特定事項が特定されていない点。
<相違点2>
本願発明のダウンリンクチャネルが「ダウンリンク共有チャネル」であるのに対し,引用発明のダウンリンクチャネルは「部分チャネル1」であって,本願発明の当該発明特定事項が特定されていない点。
<相違点3>
本願発明が,ダウンリンクチャネルを「識別する情報を含む第1メッセージ」を受信し,前記受信された「第1メッセージに応じて」信号を受信させるのに対し,引用発明は,ダウンリンクチャネルである部分チャネル1を識別する情報である「無線基地局102に新たに割り当てられた直交符号」を受信し,受信された前記情報に応じて信号を受信させるものであって,本願発明の当該発明特定事項が特定されていない点。
<相違点4>
本願発明が「第2メッセージ信号」を受信させるのに対し,引用発明は「信号」を受信させるものであって,本願発明の当該発明特定事項が特定されていない点。
第6 判断
1 相違点1について
上記「第4」の「3」に技術常識として説示したように,ソフターハンドオーバは,ソフトハンドオーバの一種であって,同じサイトの新しいセクタへのハンドオーバであることは技術常識である。ここで,セクタとは,一つの基地局が形成するセルをアンテナの指向性等に基づいて分割したセルであり,同じサイトとは同じ基地局を表すことは,当業者にとって自明である。また,セルラー移動通信システムにおいて,基地局をノードBと呼称することは技術常識である。
してみれば,当該技術常識を考慮して,引用発明におけるソフトハンドオフ中の動作を「ソフトハンドオーバ」の一種である「ソフターハンドオーバ」に適用することで,無線基地局101と無線基地局102から送信する部分チャネル1に代えて,同じ1つのノードBの2つのセルから送信する部分チャネル1の受信を行うよう構成することは,当業者であれば容易に想到し得たことである。
2 相違点2について
上記「第4」の「2」に周知技術として説示したように,CDMAシステムにおいて,ダウンリンク共用チャネルを使用してパケットを送信することは周知技術である。そして,引用発明における「部分チャネル1」がどのようなチャネルを用いるかは特定されていないが,引用発明は,「CDMA方式セルラー移動通信システムにおける無線端末」であるから,上記周知技術を考慮して,信号を受信する際の「部分チャネル1」として,ダウンリンク共用チャネルを用いることは,当業者であれば容易に想到し得たことである。
3 相違点3について
引用発明のCDMA方式セルラー移動通信システムにおいて,無線基地局101から無線端末に「無線基地局102に新たに割り当てられた直交符号」という情報を送信する際,どのような形で送信するかは適宜であり,その送信に用いるものを第1メッセージと称することは任意である。
してみれば,引用発明において,「無線基地局102に新たに割り当てられた直交符号」を含むものを第1メッセージと称するものに含まれる形で送信するように構成することで,無線端末に,チャネルを識別する情報である「無線基地局102に新たに割り当てられた直交符号」を含む第1メッセージを受信させ,前記受信された第1メッセージに応じて,信号を受信させることは,当業者であれば容易に想到し得たことである。
4 相違点4について
上記「3」で説示したように,無線基地局102から無線端末に「信号」を送信する際,どのような形で送信するかは適宜であり,その送信に用いたものを第2メッセージと称することは任意である。
してみれば,上記「3」と同様に,引用発明において,「信号」を第2メッセージと称するものとして送信するように構成することで,無線端末に,「信号」を第2メッセージとして受信させることは,当業者であれば容易に想到し得たことである。
5 審判請求人の主張について
審判請求人は,令和3年8月2日に提出された意見書の「3.」の「(3-2)」の「(1)」において「本願請求項に記載の「ノードB」は、引用文献1の無線基地局に対応するものであり、引用文献1に記載の無線基地局101および無線基地局102のそれぞれは、互いに異なる2つのノードBを指し示すといえます。したがって、本願請求項1に係る発明のプライマリセル及び非プライマリセルは、発明特定事項(C-1)に記載のとおり、それぞれが1つのノードBによって制御されるものであり、引用文献1の無線基地局101および無線基地局102に対応するものではないことは明らかです。」と主張している。
しかしながら,上記「1」で検討したとおり,ソフターハンドオーバは,技術常識として説示したように,ソフターハンドオーバは,ソフトハンドオーバの一種であって,同じサイトの新しいセクタへのハンドオーバであることは技術常識であり,セクタとは,一つの基地局が形成するセルをアンテナの指向性等に基づいて分割したセルであり,同じサイトとは同じ基地局を表すことが当業者にとって自明であり,また,セルラー移動通信システムにおいて,基地局をノードBと呼称することは技術常識であるから,引用発明における,「ソフトハンドオフ」,すなわちソフトハンドオーバ中の動作を,「ソフトハンドオーバ」の一種である「ソフターハンドオーバ」に適用することで,無線基地局101と無線基地局102から送信する部分チャネル1に代えて,同じ1つのノードBによって制御される2つセルから送信する部分チャネル1の受信を行うよう構成することは,当業者であれば容易に想到し得たことである。
また,審判請求人は,引用発明では「無線端末103が、無線基地局101を介して、無線基地局102に割り当てた直交符号を受信する前提として、まず、無線基地局102が上り回線捕捉成功を通知することは必要になります。仮に、審判官殿が認定するとおり、無線基地局101および無線基地局102がそれぞれ、本願請求項1のプライマリセル及び非プライマリセルに対応すると仮定すると、最初に非プライマリセルを介して通信をすることが必要となり、本願請求項1の発明特定事項(C-2)の、非プライマリセルを介さずに、前記プライマリセルを介し、非プライマリセルのダウンリンク共有チャネルを識別する情報を含む第1メッセージを受信させる、構成とは明らかに異なる技術を開示していることになります。」と主張している。
しかしながら,本願発明は「前記無線送受信機を用いて、前記プライマリセルを介し、かつ前記非プライマリセルを介さずに、前記非プライマリセルのダウンリンク共有チャネルを識別する情報を含む第1メッセージを受信させ」ることしか特定されておらず,その前提については何ら特定されていない。よって,無線基地局102が,無線端末の送信信号を探索することや,基地局制御装置210に上り回線補足成功することなどは,本願の請求項1には記載されておらず、本願発明と関係するものではない。そして,上記「第5」の「4」で説示したように,引用発明の「無線基地局101を介して無線基地局102に新たに割り当てられた直交符号を受信」することは,「無線送受信機を用いて、プライマリセルを介し、かつ非プライマリセルを介さずに、前記非プライマリセルのダウンリンクチャネルを識別する情報を受信させ」る点で本願発明と共通するものであるから,上記主張を採用することはできない。
したがって,審判請求人の主張を採用することはできない。
6 まとめ
以上のとおりであるから,本願発明は,引用発明,引用例3及び引用例7に記載された周知技術,並びに引用例6に記載された技術常識に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものである。
第7 むすび
以上のとおり,本願の請求項1に係る発明は,引用例1に記載された発明,引用例3及び引用例7に記載された周知技術,並びに引用例6に記載された技術常識に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって,本願は,他の請求項について検討するまでもなく,拒絶されるべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
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2019-017661