2020-008864
光学フィルム検査用二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム
- 審判番号
- 2020-008864
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2015-158849外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2020年06月25日
- 審決日
- 2021年03月22日
- 公報発行日
- 2021年06月25日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】東洋紡株式会社
- 分類
- P18 .121-Z (G02B) / P18 .575-Z (G02B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第6項、特許法第17条の2第3項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
結論
理由
目次 ▾ 11項目
第1 手続の経緯
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特願2015-158849号(以下「本件出願」という。)は、平成27年8月11日(先の出願に基づく優先権主張 平成26年8月20日)にされた特許出願であって、その手続等の経緯の概要は、以下のとおりである。
第2 補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和2年6月25日にした手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正の内容
(1)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前、すなわち、令和元年11月27日付け手続補正書による手続補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおりである。
「下記要件(1)~(3)、(8)及び(9)を満たす光学フィルム検査用二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム。(1)全光線透過率が85%以上(2)フィルムヘーズが15%以下(3)透過偏光度が7.0%以上(8)中心層とこれに接する両表層から構成される積層フィルム(9)両表層は平均粒径1.0~5.0μmの微粒子を0.10~0.20質量%含有する」
(2)本件補正後の特許請求の範囲
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された。なお、下線は当合議体が付したものであり、補正箇所を示す。
「下記要件(1)~(3)、(8)及び(9)を満たす光学フィルム検査用二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム。(1)全光線透過率が85%以上(2)フィルムヘーズが15%以下(3)透過偏光度が7.0%以上(8)中心層とこれに接する両表層から構成される積層フィルム(9)両表層は平均粒径1.5~4.0μmの微粒子を0.10~0.20質量%含有する」
2 補正の適否について
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明(以下「本願発明」という。)を特定するために必要な事項である「微粒子」の平均粒径を、本件出願の願書に最初に添付した明細書の【0016】の記載に基づいて、平均粒径「1.0~5.0μm」から「1.5~4.0μm」へと限定する補正事項を含むものである。また、本願発明と本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本件補正後発明」という。)の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一である(本件出願の明細書の【0001】、【0008】参照。)。
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に適合するとともに、同条5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後発明が、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。
(1)本件補正後発明
本件補正後発明は、上記「1」「(2)本件補正後の特許請求の範囲」に記載したとおりのものである。
(2)引用文献1及び引用発明
ア 引用文献1の記載
原査定の拒絶の理由において引用文献1として引用された、特開2011-255599号公報(以下「引用文献1」という。)は、先の出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物であるところ、そこには、以下の記載がある。
なお、下線は当合議体が付したものであり、引用発明の認定、判断等に活用した箇所を示す。
(ア)「【技術分野】【0001】本発明は、光学用途向けの基材レス両面粘着シート用ポリエステルフィルムに関するものである。【背景技術】続きを表示(全39行)【0002】従来、物体間を面接着する粘着シートは種々知られており、粘着シートの1つとして基材レス両面粘着シートが知られている。基材レス両面粘着シートは、粘着剤層の両面に剥離力の相対的に低い軽剥離シートと、剥離力の相対的に高い重剥離シートが積層されて構成され、両面の剥離シートを除去した後には、支持基材を有さない粘着剤層のみとなる両面粘着シートである。基材レス両面粘着シートは、まず軽剥離シートが剥がされ、露出された粘着剤層の一方の面が物体面に接着され、その接着後、さらに重剥離シートが剥がされ、露出された粘着剤層の他方の面が、異なる物体面に接着され、これにより物体間が面接着される。【0003】近年、基材レス両面粘着シートは、その用途が広がりつつあり、各種光学用途の部材等にも用いられている。例えば、LCDの部材として、基材レス両面粘着剤シートの剥離力の軽い方の離型フィルムを剥がして、その面に偏光板を貼り合わせて、その反対面側に剥離力の重い離型フィルムを用いた時に、クロスニコル法での検査時に、残った離型フィルムにおいて、異物等の欠点検出を容易とするため、離型フィルムに用いる二軸配向ポリエステルフィルムの配向主軸の傾きを小さくする提案がなされている(例えば、特許文献5等)。【0004】このように、基材レス両面粘着シートを光学用途に用いる場合は、基材レス両面粘着シートだけでなく、それに用いられる離型フィルムも、今まで以上に異物等の欠点が重要な問題となっている。・・・中略・・・【発明が解決しようとする課題】【0006】本発明は、上記実情に鑑みなされたものであって、その解決課題は、基材レス両面粘着シートを光学用途、例えば、タッチパネル、液晶偏向板、位相差板等において使用した際、光学検査時の不具合を容易に検出でき、また、粘着剤に貼り合わせる際に離型フィルムの剥離力差を有し、生産性、コストなどの問題を解決した、安価な基材レス両面粘着シート用ポリエステルフィルムを提供することにある。【課題を解決するための手段】【0007】本発明者は、上記実情に鑑み鋭意検討した結果、特定の構成を有するポリエステルフィルムによれば、上記課題を容易に解決できることを見いだし、本発明を完成するに至った。【0008】すなわち、本発明の要旨は、少なくとも1種類以上の遷移金属系触媒を0.5~5.0重量%含有するシリコーン系離型層を有する離型フィルムであり、当該離型フィルムのMOR値が1.5~3.0であることを特徴とする基材レス両面粘着シート用ポリエステルフィルムに存する。【発明の効果】【0009】本発明によれば、光学検査が容易で、安価かつ高い生産性を有する基材レス両面粘着シート用ポリエステルフィルムを提供することができるため、その工業的価値は高い。【発明を実施するための形態】【0010】本発明でいうポリエステルフィルムとは、いわゆる押出法に従い押出口金から溶融押出されたシートを延伸したフィルムである。【0011】上記のフィルムを構成するポリエステルとは、ジカルボン酸と、ジオールとからあるいはヒドロキシカルボン酸から重縮合によって得られるエステル基を含むポリマーを指す。ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸等を、ジオールとしては、エチレングリコール、1,4-ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ポリエチレングリコール等を、ヒドロキシカルボン酸としては、p-ヒドロキシ安息香酸、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸等をそれぞれ例示することができる。かかるポリマーの代表的なものとして、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレン-2、6-ナフタレート等が例示される。【0012】本発明のフィルム中には、易滑性の付与および各工程での傷発生防止を主たる目的として、粒子を配合することが好ましい。配合する粒子の種類は、易滑性付与可能な粒子であれば特に限定されるものではなく、具体例としては、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、カオリン、酸化アルミニウム、酸化チタン等の粒子が挙げられる。また、特公昭59-5216号公報、特開昭59-217755号公報等に記載されているような耐熱性有機粒子を用いてもよい。この他の耐熱性有機粒子の例として、熱硬化性尿素樹脂、熱硬化性フェノール樹脂、熱硬化性エポキシ樹脂、ベンゾグアナミン樹脂等が挙げられる。さらに、ポリエステル製造工程中、触媒等の金属化合物の一部を沈殿、微分散させた析出粒子を用いることもできる。・・・中略・・・【0014】また、用いる粒子の平均粒径は、通常0.01~3μm、好ましくは0.1~2μmの範囲である。平均粒径が0.01μm未満の場合には、易滑性を十分に付与できない場合がある。一方、3μmを超える場合には、フィルムの製膜時に、その粒子の凝集物のために透明性が低下することがある他に、破断などを起こし易くなり、生産性の面で問題になることがある。【0015】さらにポリエステル中の粒子含有量は、通常0.001~5重量%、好ましくは0.005~3重量%の範囲である。粒子含有量が0.001重量%未満の場合には、フィルムの易滑性が不十分な場合があり、一方、5重量%を超えて添加する場合には、フィルムの透明性が不十分な場合がある。・・・中略・・・【0020】次に本発明におけるポリエステルフィルムの製造例について具体的に説明するが、以下の製造例に何ら限定されるものではない。すなわち、先に述べたポリエステル原料を使用し、ダイから押し出された溶融シートを冷却ロールで冷却固化して未延伸シートを得る方法が好ましい。この場合、シートの平面性を向上させるためシートと回転冷却ドラムとの密着性を高めることが好ましく、静電印加密着法および/または液体塗布密着法が好ましく採用される。次に得られた未延伸シートは二軸方向に延伸される。その場合、まず、前記の未延伸シートを一方向にロールまたはテンター方式の延伸機により延伸する。延伸温度は、通常90~140℃、好ましくは95~120℃であり、延伸倍率は通常2.5~7倍、好ましくは3.0~6倍である。次いで、一段目の延伸方向と直交する方向に延伸するが、その場合、延伸温度は通常90~170℃であり、延伸倍率は通常3.0~7倍、好ましくは3.5~6倍である。そして、引き続き180~270℃の温度で緊張下または30%以内の弛緩下で熱処理を行い、二軸配向フィルムを得る。上記の延伸においては、一方向の延伸を2段階以上で行う方法を採用することもできる。その場合、最終的に二方向の延伸倍率がそれぞれ上記範囲となるように行うのが好ましい。【0021】また、本発明のポリエステルフィルム製造に関しては、同時二軸延伸法を採用することもできる。同時二軸延伸法は、前記の未延伸シートを通常90~140℃、好ましくは80~110℃で温度コントロールされた状態で機械方向および幅方向に同時に延伸し配向させる方法であり、延伸倍率としては、面積倍率で4~50倍、好ましくは7~35倍、さらに好ましくは10~25倍である。そして、引き続き、170~250℃の温度で緊張下または30%以内の弛緩下で熱処理を行い、延伸配向フィルムを得る。上述の延伸方式を採用する同時二軸延伸装置に関しては、スクリュー方式、パンタグラフ方式、リニアー駆動方式等、従来公知の延伸方式を採用することができる。」
(イ)「【実施例】【0033】以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。また、本発明で用いた測定法および評価方法は次のとおりである。【0034】続きを表示(全96行)(1)ポリエステルの固有粘度の測定ポリエステルに非相溶な他のポリマー成分および顔料を除去したポリエステル1gを精秤し、フェノール/テトラクロロエタン=50/50(重量比)の混合溶媒100mlを加えて溶解させ、30℃で測定した。【0035】(2)平均粒径(d50:μm)の測定遠心沈降式粒度分布測定装置(株式会社島津製作所社製SA-CP3型)を使用して測定した等価球形分布における積算(重量基準)50%の値を平均粒径とした。【0036】(3)ポリエステルフィルムの透過率測定JIS - K7105に準じ、日本電色工業社製積分球式濁度計NDH-300Aによりポリエステルフィルムの全光線透過率を測定した。次のような基準で判断する。【0037】(4)ポリエステルフィルムのヘーズ(濁度)測定JIS-K7105に準じ、日本電色工業社製積分球式濁度計NDH-20Dにより、フィルムのヘーズを測定した。【0038】(5)ポリエステルフィルムの加熱収縮率測定ポリエステルフィルムを縦長さの方向(以後、MDと略する)と横幅の方向(以後、TDと略する)にそれぞれ、任意の長さL(cm)でサンプリングする。続いて、そのサンプルをオーブンで160℃、5分の加熱を行い、そのサンプルをオーブンから取り出して長さl(cm)を測定する。この操作を3回行い、平均値を加熱収縮率の値として採用する。下記式で加熱収縮率は算出できる。加熱収縮率(%)={(L-l)/L}×100【0039】(6)離型フィルムの剥離力(F)の評価試料フィルムの離型層表面に両面粘着テープ(日東電工製「No.502」)の片面を貼り付けた後、50mm×300mmのサイズにカットした後、室温にて1時間放置後の剥離力を測定する。剥離力は、引張試験機((株)インテスコ製「インテスコモデル2001型」)を使用し、引張速度300mm/分の条件下、180°剥離を行った。【0040】(7)ポリエステルフィルムのマイクロ波分子配向計によるMOR_C値測定王子計測機器株式会社製のマイクロ波方式分子配向計を用い、透過マイクロ波強度パターンからMOR_C値を求めた。次のような基準で判断する。○:2.0~2.5△:1.5以上2.0未満、もしくは、2.6を超え3.0以下×:1.5%未満、もしくは、3.0を超える【0041】(8)実用特性<クロスニコル下での目視検査性>偏光板検査を考慮に入れて、フィルム上に離型剤を塗布しドライヤー温度120℃、ライン速度30m/分の条件で得た離型フィルムの幅方向が、偏光フィルムの配向軸と平行となるように、粘着剤を介して離型フィルムを偏光フィルムに密着させ偏光板とし、密着させた離型フィルム上に配向軸がフィルム幅方向と直交するように検査用の偏光板を重ね合わせ、偏光板側より白色光を照射し、検査用の偏光板より目視にて観察し、クロスニコル下での目視検査性を下記基準に従い評価した。なお、測定の際には、得られたフィルムの幅方向に対し中央部と両端部の計3ヶ所から、それぞれA4サイズのサンプルを切り出して実施した。「判定基準」○:光干渉性無く検査可能△:光干渉はあるが検査可能×:光干渉があり検査不能○および△のものが実使用上問題のないレベルである。【0042】<離型特性>粘着層を有する積層フィルムより離型フィルムを剥がした時の状況より、離型特性を評価した。○:離型フィルムが綺麗に剥がれ、粘着剤が離型層に付着する現象が見られない△:離型フィルムは剥がれるが、速い速度で剥離した場合に粘着剤が離型層に付着する×:離型フィルムに粘着剤が付着する【0043】(9)総合評価精算歩留まり、生産性、検査特性全てを考慮に入れた評価を行う。次のような基準で判断する。○:生産しても十分に製品として供給できる△:生産性が良い、かつ、不具合の頻度が少ない×:生産性が悪いか、不具合が多発する【0044】実施例および比較例において使用したポリエステルは、以下のようにして準備したものである。<ポリエステル(a)の製造方法>テレフタル酸ジメチル100重量部とエチレングリコール60重量部とを出発原料とし、触媒としてテトラブトキシチタネートを加えて反応器にとり、反応開始温度を150℃とし、メタノールの留去とともに徐々に反応温度を上昇させ、3時間後に230℃とした。4時間後、実質的にエステル交換反応を終了させた後、4時間重縮合反応を行った。すなわち、温度を230℃から徐々に昇温し280℃とした。一方、圧力は常圧より徐々に減じ、最終的には0.3mmHgとした。反応開始後、反応槽の攪拌動力の変化により、極限粘度0.61に相当する時点で反応を停止し、窒素加圧下ポリマーを吐出させ、極限粘度0.61のポリエステル(a)を得た。【0045】<ポリエステル(b)の製造方法>ポリエステル(a)の製造方法において、エチルアシッドフォスフェートを添加後、平均粒子径0.8μmの合成炭酸カルシウム粒子のエチレングリコールスラリーを粒子のポリエステルに対する含有量が1重量%となるように添加した以外は、ポリエステル(a)の製造方法と同様の方法を用いてポリエステル(b)を得た。得られたポリエステル(b)は極限粘度0.60であった。【0046】<ポリエステル(c)の製造>テレフタル酸ジメチル100重量部とエチレングリコール60重量部とを出発原料とし、触媒として酢酸マグネシウム四水塩を加えて反応器にとり、反応開始温度を150℃とし、メタノールの留去とともに徐々に反応温度を上昇させ、3時間後に230℃とした。4時間後、実質的にエステル交換反応を終了させた。この反応混合物にエチルアシッドフォスフェートを添加した後、重縮合槽に移し、三酸化アンチモン0.04部を加えて、4時間重縮合反応を行った。すなわち、温度を230℃から徐々に昇温し280℃とした。一方、圧力は常圧より徐々に減じ、最終的には0.3mmHgとした。反応開始後、反応槽の攪拌動力の変化により、固有粘度0.45に相当する時点で反応を停止し、窒素加圧下ポリマーを吐出させ、ポリエステルのチップ(c)を得た。このポリエステルの固有粘度は0.45であった。【0047】<ポリエステル(d)の製造>このポリエステルチップを固相重縮合法にて固有粘度を上げた。予備結晶化槽にて170℃の窒素雰囲気化にて0.5時間処理した後、不活性ガスを流す塔式乾燥機を用い、200℃の温度下にて水分率が0.005%になるまで乾燥した。その後固相重合槽へ送り、240℃にて3時間、固相重合を行い固有粘度0.70のポリエステル(d)を得た。【0048】<ポリエステル(e)の製造>ポリエステル(d)を製造する際、固相重合槽にて5時間固相重合を行い、固有粘度0.80のポリエステル(e)を得た。【0049】実施例1:〈ポリエステルフィルムの製造〉表層の原料としてポリエステル(e)70重量%と、ポリエステル(b)30重量%とを混合し、中間層の原料として、ポリエステル(a)84重量%とポリエステル(b)16重量%とを混合し、2台のベント付き押出機に各々供給し、290℃で溶融押出した後、静電印加密着法を用いて表面温度を40℃に設定した冷却ロール上で冷却固化して未延伸シートを得た。次いで、100℃にて縦方向に2.8倍延伸した後、テンター内で予熱工程を経て120℃で5.1倍の横延伸を施した後、220℃で10秒間の熱処理を行い、その後180℃で幅方向に4%の弛緩を加え、幅4000mmのマスターロールを得た。このマスターロールの端から1400mmの位置よりスリットを行い、コアに1000m巻き取りし、ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの全厚みは38μm(層構成:表層4μm/中間層30μm/表層4μm)であった。【0050】得られたポリエステルフィルムに、下記に示す離型剤組成-Aからなる離型剤を塗布量(乾燥後)が0.1g/m2になるようにリバースグラビアコート方式により塗布し、ドライヤー温度120℃、ライン速度30m/分の条件でロール状の剥離力が21mN/cm離型フィルムで、そのポリエステルフィルムのMOR_C値は2.3であった。【0051】<離型剤組成-A>硬化型シリコーン樹脂(KS-847H:信越化学製) 20部触媒(PL-50T:信越化学製) 0.3部(1.5重量%)MEK/トルエン混合溶媒(混合比率は1:1)【0052】得られたポリエステルフィルムは、下記方法で偏向板を作成し、クロスニコル下での目視検査性と剥離特性の評価を行った。得られた離型フィルムは光干渉性無く検査可能であり、かつ、偏光板綺麗に剥がれ、粘着剤が離型層に付着する現象が見られなかった。【0053】<離型フィルム付き偏光板の製造>偏光板に下記に示すアクリル粘着剤を、乾燥後の厚みが25μmとなるように塗布し、130℃の乾燥炉内を30秒で通過させた後、離型フィルムを貼り合わせ、粘着剤を介して離型フィルムと偏光フィルムが密着された離型フィルム付き偏光板を作成した。フィルムの貼り合せ方向は、離型フィルムの幅方向が、偏光フィルムの配向軸と平行となるように行った。【0054】・アクリル粘着剤塗布液アクリル粘着剤(オリバインBPS429-4:東洋インキ製) 100部硬化剤(BPS8515:東洋インキ製) 3部MEK/トルエン混合溶媒(混合比率は1:1) 50部【0055】実施例2~5:実施例1において、ポリエステルフィルム製造時の延伸倍率、フィルム厚さを変更する、塗布層中離型剤組成の遷移金属系触媒含有量を変更する以外は実施例1と同様にして製造し、ポリエステルフィルムを得た。作製したポリエステルフィルムは表1に示す通りであった。【0056】【表1】・・・中略・・・【産業上の利用可能性】【0059】本発明のポリエステルフィルムは、需要が大きい光学用途における基材レス両面粘着シート用分野で、生産性がよく、工程光学検査が容易に行えるセパレーターポリエステルフィルムとして好適に利用できる。」
イ 引用発明
上記アによれば、引用文献1の【0049】には、実施例1として、「ポリエステルフィルム」が記載されている。「実施例1」において混合された「ポリエステル(a)」、「ポリエステル(b)」及び「ポリエステル(e)」は、引用文献1の【0044】-【0048】に記載された工程にて調整されたものである。また、引用文献1の【0056】【表1】には、上記実施例1として形成された「ポリエステルフィルム」の製造条件及び光学特性が記載されている。さらに、引用文献1の【0041】には、上記実施例1として形成された「ポリエステルフィルム」のクロスニコル下での目視検査性の評価方法が記載されている。
以上勘案すると、引用文献1には、実施例1として、次の「ポリエステルフィルム」の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。
「 テレフタル酸ジメチル100重量部とエチレングリコール60重量部とを出発原料とし、触媒としてテトラブトキシチタネートを加えて反応器にとり、反応開始温度を150℃とし、メタノールの留去とともに徐々に反応温度を上昇させ、3時間後に230℃とし、4時間後、実質的にエステル交換反応を終了させた後、4時間重縮合反応を行いポリエステル(a)を得、ポリエステル(a)の製造方法において、エチルアシッドフォスフェートを添加後、平均粒子径0.8μmの合成炭酸カルシウム粒子のエチレングリコールスラリーを粒子のポリエステルに対する含有量が1重量%となるように添加し、ポリエステル(b)を得、テレフタル酸ジメチル100重量部とエチレングリコール60重量部とを出発原料とし、触媒として酢酸マグネシウム四水塩を加えて反応器にとり、反応開始温度を150℃とし、メタノールの留去とともに徐々に反応温度を上昇させ、3時間後に230℃とし、4時間後、実質的にエステル交換反応を終了させ、反応混合物にエチルアシッドフォスフェートを添加した後、重縮合槽に移し、三酸化アンチモン0.04部を加えて、4時間重縮合反応を行い、ポリエステルのチップ(c)を得、このポリエステルチップを予備結晶化槽にて170℃の窒素雰囲気化にて0.5時間処理した後、不活性ガスを流す塔式乾燥機を用い、200℃の温度下にて水分率が0.005%になるまで乾燥し、その後固相重合槽へ送り、240℃にて3時間、固相重合を行い固有粘度0.70のポリエステル(d)を得、ポリエステル(d)を製造する際、固相重合槽にて5時間固相重合を行い、固有粘度0.80のポリエステル(e)を得、表層の原料としてポリエステル(e)70重量%と、ポリエステル(b)30重量%とを混合し、中間層の原料として、ポリエステル(a)84重量%とポリエステル(b)16重量%とを混合し、2台のベント付き押出機に各々供給し、290℃で溶融押出した後、静電印加密着法を用いて表面温度を40℃に設定した冷却ロール上で冷却固化して未延伸シートを得、次いで、100℃にて縦方向に2.8倍延伸した後、テンター内で予熱工程を経て120℃で5.1倍の横延伸を施した後、220℃で10秒間の熱処理を行い、その後180℃で幅方向に4%の弛緩を加え、幅4000mmのマスターロールを得、このマスターロールの端から1400mmの位置よりスリットを行い、コアに1000m巻き取りし、得たポリエステルフィルムであって、得られたフィルムの全厚みは38μm(層構成:表層4μm/中間層30μm/表層4μm)であり、JIS-K7105に準じ、測定したポリエステルフィルムの全光線透過率が88.8%、ポリエステルフィルムのヘーズが2.9%であり、検査用の偏光板より目視にて観察し、クロスニコル下での目視検査性において、光干渉性無く検査可能である、ポリエステルフィルム。」
(5)対比
本件補正後発明と引用発明とを対比する。
ア 光学フィルム検査用二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム
引用発明の「ポリエステルフィルム」は、「テレフタル酸ジメチル100重量部とエチレングリコール60重量部とを出発原料とし」、「エステル交換反応」及び「重縮合反応を行」って得られた、「ポリエステル(e)」、「ポリエステル(b)」及び「ポリエステル(a)」「を混合し」て「得たポリエステルフィルムであって、得られたフィルムの全厚みは38μm」である。
上記原料、製造方法及びフィルムの厚さからみて、引用発明の「ポリエステルフィルム」は、ポリエチレンテレフタレートからなるフィルムといえる。また、引用発明の「ポリエステルフィルム」は、「未延伸シートを得、次いで、」「縦方向に2.8倍延伸した後、」「5.1倍の横延伸を施し」て「得たれたフィルム」であることから、いわゆる、二軸延伸フィルムに該当する。さらに、引用発明の「ポリエステルフィルム」は、「検査用の偏光板より目視にて観察し、クロスニコル下での目視検査性において、光干渉性無く検査可能である」ことから、光学フィルム検査に適した特性を備えたフィルムといえる。
以上によれば、引用発明の「ポリエステルフィルム」は、本件補正後発明の「光学フィルム検査用二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム」に相当する。
イ 全光線透過率、フィルムヘーズ
引用発明の「ポリエステルフィルム」は、「JIS-K7105に準じ、測定したポリエステルフィルムの全光線透過率が88.8%、ポリエステルフィルムのヘーズが2.9%であ」る。
ここで、本願補正後発明の「全光線透過率」及び「フィルムヘーズ」も上記「JIS-K7105」に準拠した測定値(本件出願の明細書の【0051】)である。
そうしてみると、引用発明の「ポリエステルフィルム」は、本件補正後発明の「ポリエチレンテレフタレートフィルム」における、「全光線透過率が85%以上」及び「フィルムヘーズが15%以下」という要件を満たす。
ウ 積層フィルム
引用発明の「ポリエステルフィルム」の「層構成」は、「表層4μm/中間層30μm/表層4μm」であるから、引用発明の「ポリエステルフィルム」は、本件補正後発明の「ポリエチレンテレフタレートフィルム」における、「中心層とこれに接する両表層から構成される積層フィルム」という要件を満たす。
エ 微粒子
引用発明の「表層の原料」である「ポリエステル(b)」は、「平均粒子径0.8μmの合成炭酸カルシウム粒子」を含有する。上記粒子径からみて、「平均粒子径0.8μmの合成炭酸カルシウム粒子」は微粒子といえる。
そうしてみると、引用発明の「ポリエステルフィルム」は、本件補正後発明の「ポリエチレンテレフタレートフィルム」とは、「両表層は」「微粒子を」「含有する」という点で共通する。
(6)一致点・相違点
ア 一致点
上記(5)によれば、本件補正後発明と引用発明は、以下の点で一致する。
「下記要件(1)~(2)、(8)及び(9)を満たす光学フィルム検査用二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム。(1)全光線透過率が85%以上(2)フィルムヘーズが15%以下(8)中心層とこれに接する両表層から構成される積層フィルム(9)両表層は微粒子を含有する」
イ 相違点
本件補正後発明と引用発明は、以下の点で相違する。
(相違点1)
本件補正後発明は、「透過偏光度が7.0%以上」であるのに対して、引用発明は、一応、これが明らかではない点。
(相違点2)
「両表層」が、本件補正後発明では、「平均粒径1.5~4.0μmの微粒子を0.10~0.20質量%含有する」のに対して、引用発明では、微粒子を含有するものの、その平均粒径及び含有割合が上記数値範囲にない(平均粒(子)径が0.8μm、含有量が0.3質量%(=1質量%×30/(30+70)))点。
(7)判断
ア 相違点1について検討する。
引用発明の「ポリエステルフィルム」は、「原料としてポリエステル(e)70重量%と、ポリエステル(b)30重量%とを混合し」「溶融押出した後、」「未延伸シートを得、」「次いで、100℃にて縦方向に2.8倍延伸した後、テンター内で予熱工程を経て120℃で5.1倍の横延伸を施した後、220℃で10秒間の熱処理を行い、その後180℃で幅方向に4%の弛緩を加え、」「得たポリエステルフィルムであ」る。
ここで、本件出願の明細書の【0042】には、「本発明における光学フィルム検査用二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを得るためには4.8~7.0倍の範囲で幅方向に延伸を行うことが望ましい。幅方向の延伸倍率が4.8倍以上では、透過偏光度が高くなり好ましい。」、【0043】には、「本発明における光学フィルム検査用二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを得るためには3.0倍以下の範囲で長手方向に延伸を行うことが望ましい。長手方向の延伸倍率が3.0倍以下であると透過偏光度が高くなり好ましい。」とそれぞれ記載されている。一方、引用発明の「ポリエステルフィルム」は、未延伸シートを縦方向に2.8倍延伸し、横方向に5.1倍延伸している。
そうしてみると、引用発明の「ポリエステルフィルム」は、原料、製造方法(特に、縦方向及び横方向の延伸倍率)等からみて、引用発明の「ポリエステルフィルム」の「透過偏光度」が、本件補正後発明の「7.0%以上」を満たす蓋然性は高いといえる。
したがって、相違点1は、実質的な相違点ではない。
あるいは、クロスニコル法による光学フィルム(例えば、偏光板)検査用のポリエステルフィルムとして、透過偏光度が高いことが好ましいことは明らかであって、透過偏光度が延伸倍率と密接に関係することは技術常識であるから、延伸倍率を適宜調整して、当業者が相違点1に係る本件補正後発明の構成に到ることは容易である。
イ 相違点2について検討する。
引用文献1の【0014】には、「用いる粒子の平均粒径は、通常0.01~3μm、好ましくは0.1~2μmの範囲である。平均粒径が0.01μm未満の場合には、易滑性を十分に付与できない場合がある。一方、3μmを超える場合には、フィルムの製膜時に、その粒子の凝集物のために透明性が低下することがある他に、破断などを起こし易くなり、生産性の面で問題になることがある。」、【0015】には、「さらにポリエステル中の粒子含有量は、通常0.001~5重量%、好ましくは0.005~3重量%の範囲である。粒子含有量が0.001重量%未満の場合には、フィルムの易滑性が不十分な場合があり、一方、5重量%を超えて添加する場合には、フィルムの透明性が不十分な場合がある。」とそれぞれ記載されている。
そして、上記記載に接した当業者は、微粒子の平均粒径及び含有量が、フィルムの易滑性及び透明性を制御可能なパラメータであって、一方を減らしても、その分他方を増やせば、易滑性及び透明性は維持可能であることを理解するといえる。
他方、平滑性を付与するために微粒子が混入された、光学フィルム検査用二軸延伸ポリエチレンテレフタレートにおいて、微粒子の平均粒径が「1.5~4.0μm」かつ含有割合が「0.10~0.20質量%」であり、ポリエチレンテレフタレートの透明性が十分に確保できた(全光線透過率が89.7%)実例は、先の出願時に周知であったと認められる(例えば、特開2011-148202号公報の【実施例1】及び【0072】【表2】、特開2011-73266号公報の【実施例1】及び【0059】【表2】(いずれも、微粒子の平均粒径:2.7μm、含有量:0.1質量%程度)等を参照。)。
そうしてみると、引用発明の「ポリエステルフィルム」の製造にあたり、微粒子(スラリー)の使用量の削減に関心を寄せる当業者が、引用文献1の上記記載に基づいて、上記周知の実例を参考にして、相違点2に係る本件補正後発明の構成に想到することは容易である。
(8)効果
本件補正後発明の効果に関して、本件出願の明細書の【0010】には、「本発明の光学フィルム検査用二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムは、優れた偏光検査性を有するので、大画面用途の光学フィルムの高精度の検査に好適である。また、さらに好ましい実施態様によれば、高温での後加工処理に優れた光学フィルム検査用二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを提供することができる。」と記載されている。
しかしながら、このような効果は、引用発明及び周知技術から、当業者が予測可能な効果にとどまると認められる。
また、本件出願の明細書の【0016】には、「微粒子の平均粒径が1.0μm以上であれば、表面に易滑性付与に好適な凹凸構造を付与することができ好ましい。一方、微粒子の平均粒径が5.0μm以下であれば、高い透明性が維持されるので好ましい。」、「表層中の微粒子の含有量が0.10質量%以上であれば、表層表面に易滑性付与に好適な凹凸構造を付与することができ好ましい。一方、表層中の微粒子の含有量が0.20質量%以下であれば、高い透明性が維持されるので好ましい。」と記載されている。
しかしながら、このような効果は、同質の効果を奏する引用発明及び周知技術から、当業者が予測可能な範囲にとどまる。さらに、本件出願の明細書の実施例及び比較例においては、平均粒径が特定の1つの値のもの(2.7μm)を用いた例が開示されているに過ぎず、その他の箇所の記載を参酌しても、相違点2に係る数値限定の臨界的意義としての、有利な効果の顕著性は認められない。
(9)小括
本件補正後発明は、引用文献1に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。
(10)引用文献2及び引用文献3について
原査定の拒絶の理由において引用文献2として引用された、特開2005-178163号公報(以下「引用文献2」という。)及び引用文献3として引用された、特開2005-14545号公報(以下「引用文献3」という。)は、先の出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物であるところ、引用文献2又は3のそれぞれに記載の各実施例から、引用発明を認定したとしても判断は同様である。
3 補正の却下の決定のむすび
本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、前記[補正の却下の決定の結論]のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
以上のとおり、本件補正は却下されたので、本願発明は、前記第2[理由]1(1)に記載のとおりのものである。
2 原査定の拒絶の理由
本願発明の原査定の拒絶の理由は、本願発明は、先の出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物である下記の引用文献に記載された発明及び周知技術に基づいて、先の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、という理由を含むものである。
記
(当合議体注:引用文献1-3は、いずれも主引用例である。)
3 引用文献及び引用発明
引用文献1の記載及び引用発明は、前記第2[理由]2(2)ア及びイに記載したとおりである。
4 対比及び判断
本願発明は、前記第2[理由]2で検討した本件補正後発明における、「微粒子」の「平均粒径」を、「平均粒径1.5~4.0μm」から「平均粒径1.0~5.0μm」へ拡張したものである。
そうしてみると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに「微粒子」の「平均粒径」の数値範囲が本願発明より限定されたものである本件補正後発明が、前記第2[理由]2に記載したとおり、引用文献1に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用文献1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本件出願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2020-008864