2019-700980
遊技機
- 審判番号
- 2019-700980
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2015-146295外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2019年12月04日
- 審決日
- 2020年07月22日
- 公報発行日
- 2020年10月30日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】株式会社三共
- 【権利者代理人】特許業務法人深見特許事務所
- 【異議申立人】日本電動式遊技機特許株式会社
- 【異議申立人代理人】特許業務法人 武和国際特許事務所
- 分類
- P1651.537-YAA(A63F) / P1651.55 -YAA(A63F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第17条の2第3項、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第2項第3号、特許法第113条第1号、特許法第36条第6項第1号、特許法第113条第4号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
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結論
理由
目次 ▾ 17項目
第1 手続の経緯
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特許第6523851号の請求項1に係る特許(以下、「本件特許」という。)についての出願は、平成27年7月24日に特許出願され、平成30年12月14日に手続補正書が提出され、平成31年4月12日付けで特許査定がされるとともに令和1年5月10日にその特許権の設定登録がされ、同年6月5日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、同年12月4日に特許異議申立人日本電動式遊技機特許株式会社(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがなされた。
その後、当審より、令和2年1月30日付けで取消理由が通知され、同年4月3日付けで特許権者から意見書及び訂正請求書が提出されたので、申立人に対して、当該訂正請求書による訂正請求(以下、「本件訂正請求」という。)があった旨を通知したところ、同年6月22日付けで申立人から意見書が提出されたものである。
第2 訂正の適否について
1 訂正の内容
本件訂正請求による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、上記訂正請求書の記載によれば、以下の訂正事項1及び2のとおりである。なお、下線は訂正箇所を示す。
(1) 訂正事項1
本件特許の特許請求の範囲の請求項1に係る「前記日時情報に基づき、前記所定情報記憶手段に記憶された前記所定情報のうちの特定情報を初期化する初期化条件が成立するか否かを判定する判定手段とを備え、」と記載されているのを、
「前記日時情報に基づき、前記所定情報記憶手段に記憶された前記所定情報のうちの特定情報を初期化する初期化条件が成立するか否か、および前記日付情報に基づく前記初期化条件が成立しない理由を判定する判定手段とを備え、」に訂正する。
(2) 訂正事項2
本件特許の明細書の【0007】において、
「所定の遊技を行う遊技機(たとえば、スロットマシン1、パチンコ遊技機201)であって、日付情報および時刻情報を含む日時情報を記憶可能な手段であって、電断発生時を特定可能な日時情報と復電時を特定可能な日時情報を記憶可能な日時情報記憶手段(たとえば、RAM91c)と、所定情報(たとえば、消化ゲーム数、エラー履歴情報などの情報)を記憶する所定情報記憶手段(たとえば、RAM91c)と、前記日時情報に基づき、前記所定情報記憶手段に記憶された前記所定情報のうちの特定情報(たとえば、消化ゲーム数、エラー履歴情報)を初期化する初期化条件(たとえば、図22(a)の初期化条件、図30の初期化条件)が成立するか否かを判定する判定手段(たとえば、図21のSt8,St10,St11,St12,St13を実行する処理、図21のSt8,St10,St11,St12a,St13aを実行する処理)とを備え、前記判定手段は、前記日付情報に基づき前記初期化条件が成立するか否かを判定する第1判定手段(たとえば、図21のSt8を実行する処理、図29のSt8aを実行する処理)と、前記第1判定手段による判定で前記初期化条件が成立しないときに、前記時刻情報に基づき前記初期化条件が成立するか否かを判定する第2判定手段(たとえば、図21のSt11,St12,St13を実行する処理、図29のSt11a,St12a,St13aを実行する処理)と、前記第1判定手段による判定で前記初期化条件が成立しないときに、該初期化条件が成立しない理由が第1理由(復電日-電断日=1日)と第2理由(復電日=電断日)のいずれであるかを判定する第3判定手段と、を含み、前記第2判定手段は、前記初期化条件が成立しない理由が前記第1理由と前記第2理由のいずれであるかに応じて、前記時刻情報に基づく判定の判定基準を異ならせる(たとえば、図22(a)および図30に示すように、復電日-電断日=1日の場合には初期化条件2,3,2a,3aの成否を判定し、復電日=電断日の場合には初期化条件4,4aの成否を判定する)。」
と記載されているのを、
「所定の遊技を行う遊技機(たとえば、スロットマシン1、パチンコ遊技機201)であって、日付情報および時刻情報を含む日時情報を記憶可能な手段であって、電断発生時を特定可能な日時情報と復電時を特定可能な日時情報を記憶可能な日時情報記憶手段(たとえば、RAM91c)と、所定情報(たとえば、消化ゲーム数、エラー履歴情報などの情報)を記憶する所定情報記憶手段(たとえば、RAM91c)と、前記日時情報に基づき、前記所定情報記憶手段に記憶された前記所定情報のうちの特定情報(たとえば、消化ゲーム数、エラー履歴情報)を初期化する初期化条件(たとえば、図22(a)の初期化条件、図30の初期化条件)が成立するか否か、および前記日付情報に基づく前記初期化条件が成立しない理由を判定する判定手段(たとえば、図21のSt8,St10,St11,St12,St13を実行する処理、図21のSt8,St10,St11,St12a,St13aを実行する処理)とを備え、前記判定手段は、前記日付情報に基づき前記初期化条件が成立するか否かを判定する第1判定手段(たとえば、図21のSt8を実行する処理、図29のSt8aを実行する処理)と、前記第1判定手段による判定で前記初期化条件が成立しないときに、前記時刻情報に基づき前記初期化条件が成立するか否かを判定する第2判定手段(たとえば、図21のSt11,St12,St13を実行する処理、図29のSt11a,St12a,St13aを実行する処理)と、前記第1判定手段による判定で前記初期化条件が成立しないときに、該初期化条件が成立しない理由が第1理由(復電日-電断日=1日)と第2理由(復電日=電断日)のいずれであるかを判定する第3判定手段と、を含み、前記第2判定手段は、前記初期化条件が成立しない理由が前記第1理由と前記第2理由のいずれであるかに応じて、前記時刻情報に基づく判定の判定基準を異ならせる(たとえば、図22(a)および図30に示すように、復電日-電断日=1日の場合には初期化条件2,3,2a,3aの成否を判定し、復電日=電断日の場合には初期化条件4,4aの成否を判定する)。」に訂正する。
2 訂正事項についての判断
(1) 訂正事項1
ア 新規事項の有無
本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「本件特許明細書等」という。)の【0123】には、「[初期化判定処理]図21を参照しながら、サブ制御部91が起動処理(サブ)において実行する初期化判定処理について説明する。」と記載され、【0129】には、「初期化条件1は、「復電日-電断日≧2日」であることを条件に成立する。・・・。」と記載され、【0130】には、「初期化条件2は、「復電日-電断日=1日」、かつ「復電時刻がAM4:00以降」であることを条件に成立する。・・・。」と記載され、【0131】には、「初期化条件3は、「復電日-電断日=1日」、かつ「電断から復電まで4時間以上経過」であることを条件に成立する。・・・。」と記載され、【0132】には、「初期化条件4は、「復電日=電断日」、かつ「復電時刻-電断時刻≧4時間」であることを条件に成立する。・・・。」と記載されている。
また、【0138】ないし【0140】には、「一方、サブ制御部91は、異常条件2が成立しない場合(St7でN)、「復電日-電断日≧2日」で初期化条件1が成立するか否かを判定する(St8)。サブ制御部91は、初期化条件1が成立する場合(St8でY)、初期化フラグ2をオンし(St9)、本ルーチンを終了する。」「一方、サブ制御部91は、初期化条件1が成立しない場合(St8でN)、「復電日-電断日=1日」であるか否かを判定する(St10)。サブ制御部91は、「復電日-電断日=1日」である場合(St10でY)、「復電時刻がAM4:00以降」で初期化条件2が成立するか否かを判定する(St11)。サブ制御部91は、初期化条件2が成立する場合(St11でY)、初期化フラグ2をオンし(St9)、本ルーチンを終了する。」「一方、サブ制御部91は、初期化条件2が成立しない場合(St11でN)、「電断から復電まで4時間以上経過」で初期化条件3が成立するか否かを判定する(St12)。サブ制御部91は、初期化条件3が成立する場合(St12でY)、初期化フラグ2をオンし(St9)、本ルーチンを終了する。」と記載されており、【0142】には、「St10の処理において、サブ制御部91は、「復電日-電断日=1日」でない場合(St10でN)、「復電日=電断日」であるため、「復電時刻-電断時刻≧4時間」で初期化条件4が成立するか否かを判定する(St13)。サブ制御部91は、初期化条件4が成立する場合(St13でY)、初期化フラグ2をオンし(St9)、本ルーチンを終了する。」と記載されている。
また、【0146】には、「日付情報のみに基づく初期化条件1の判定の結果、「復電日-電断日=1日」である場合には、初期化条件2および初期化条件3の成立有無が判定され、「復電日=電断日」である場合には、初期化条件4の成立有無が判定される。このように、日付情報に基づく判定において初期化条件1が成立しない理由に応じて、時刻情報に基づく判定基準を適切に選択することができるため、日時情報を用いた判定を効率良くすることができる。」と記載されている。
そして、【図21】は以下のとおりである。
「」
これらの記載を総合すると、初期化判定処理を実行するサブ制御部91には、「「復電日-電断日≧2日」で初期化条件1が成立するか否かを判定する(St8)」手段、「初期化条件1が成立しない場合(St8でN)、「復電日-電断日=1日」であるか否かを判定する(St10)」手段、「「復電日-電断日=1日」である場合(St10でY)、「復電時刻がAM4:00以降」で初期化条件2が成立するか否かを判定する(St11)」手段、「初期化条件2が成立しない場合(St11でN)、「電断から復電まで4時間以上経過」で初期化条件3が成立するか否かを判定する(St12)」手段、「「復電日-電断日=1日」でない場合(St10でN)、「復電日=電断日」であるため、「復電時刻-電断時刻≧4時間」で初期化条件4が成立するか否かを判定する(St13)」手段が設けられていることが読み取れ、St8は、日付情報(「復電日-電断日≧2日」であるか否か)に基づき初期化条件が成立するか否かを判定していることから、第1判定手段であり、St11、St12、St13は、日付情報(「復電日-電断日=1日」が成立しないこと)に加えて復電時刻に関する情報である時刻情報(「復電時刻がAM4:00以降」であるるか否か、及び、「電断から復電まで4時間以上経過」であるか否か)に基づき初期化条件が成立するか否かを判定していることから、第1判定手段による判定で初期化条件が成立しないときに、時刻情報に基づき初期化条件が成立するか否かを判定するのが第2判定手段であるといえる。
また、初期化判定処理を実行するサブ制御部91は、St10において、「復電日-電断日=1日」の条件が成立するか否かの判定を行っており、この判定は、St8における「初期化条件1が成立しない場合(St8でN)」に、さらに日付条件に応じた判定を行うものであって、第1判定手段による判定で初期化条件が成立しないときに、該初期化条件が成立しない理由が第1理由(「復電日-電断日=1日」の条件が成立するか)と第2理由(「復電日-電断日=1日」の条件が成立しないか)のいずれであるかを判定する手段であるといえる。
そして、サブ制御部91は、St8、St10、St11、St12、St13の処理を行うことによって初期化判定に関する判定手段を構成していることが読み取れ、その判定手段は、上記第1判定手段、上記第2判定手段に加えて、St10の処理である、第1判定手段による判定で初期化条件が成立しないときに、該初期化条件が成立しない理由が第1理由(「復電日-電断日=1日」の条件が成立するか)と第2理由(「復電日-電断日=1日」の条件が成立しないか)のいずれであるかを判定する処理を行う手段を有しており、当該手段は、第3判定手段であるといえるから、上記判定手段は、上記初期化条件が成立するか否かの判定に加えて、該初期化条件が成立しない理由が第1理由と第2理由のいずれであるかを判定を行うものである点も記載されていると認められる。
同様のことは、「変形例」として記載された【0232】、【0233】、【0236】ないし【0242】、【0244】、【0250】及び図29の記載からも導き出せる。
したがって、訂正事項1は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であって、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。
イ 訂正の目的の適否
本件訂正前の「判定手段」は、「前記日時情報に基づき、前記所定情報記憶手段に記憶された前記所定情報のうちの特定情報を初期化する初期化条件が成立するか否かを判定する」ものであって、「前記判定手段は、前記日付情報に基づき前記初期化条件が成立するか否かを判定する第1判定手段と、前記第1判定手段による判定で前記初期化条件が成立しないときに、前記時刻情報に基づき前記初期化条件が成立するか否かを判定する第2判定手段」に加えて、「前記第1判定手段による判定で前記初期化条件が成立しないときに、該初期化条件が成立しない理由が第1理由と第2理由のいずれであるかを判定する第3判定手段と、を含」む点が特定されていたところ、「第3判定手段」は「初期化条件が成立するか否かを判定する」ものでないことから、「判定手段」の定義に「第3判定手段」が含まれないことになり、「判定手段」と「第3判定手段」の関係が整合しないものとなっていたところ、本件訂正により、「判定手段」が、「前記日時情報に基づき、前記所定情報記憶手段に記憶された前記所定情報のうちの特定情報を初期化する初期化条件が成立するか否か、および前記日付情報に基づく前記初期化条件が成立しない理由を判定する」ものである点が特定されたことにより、「判定手段」が「初期化条件が成立するか否かを判定する」ものであることに加えて「前記日付情報に基づく前記初期化条件が成立しない理由を判定する」ものとなり、「判定手段」と「第3判定手段」との関係が整合するものとされた。
してみると、訂正事項1の訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書き第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
請求項1に係る訂正事項1の訂正は、本件訂正前の「判定手段」が判定する対象に関して、本件訂正前は「前記日時情報に基づき、前記所定情報記憶手段に記憶された前記所定情報のうちの特定情報を初期化する初期化条件が成立するか否か」の判定であったのに対して、本件訂正後は、「前記日時情報に基づき、前記所定情報記憶手段に記憶された前記所定情報のうちの特定情報を初期化する初期化条件が成立するか否か」の判定に加えて、「前記日付情報に基づく前記初期化条件が成立しない理由」の判定が含まれる点が特定されたものである。
そして、訂正事項1は、本件訂正前の「判定手段」が判定する対象を、追加することによって、「判定手段」を特定する事項を付加したものであり、その結果、「判定手段」の構成に限定を加えたものである。
してみると、訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。
(2) 訂正事項2
ア 新規事項の有無
訂正事項2は、訂正事項1に係る訂正により、本件特許の明細書の【0007】の記載を請求項1の記載と整合をとるためのものであるから、訂正事項1において検討したとおり、当該訂正事項2は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であって、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。
イ 訂正の目的の適否
訂正事項2は、訂正事項1に係る訂正により、本件特許の明細書の【0007】の記載が特許請求の範囲の請求項1の記載と整合が取れなくなったことを是正するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項2の訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。
3 訂正についてのまとめ
以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、明細書、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1について訂正することを認める。
第3 本件訂正発明
上記「第2 訂正の適否について」に記したように、本件訂正は認められることとなったので、訂正後の本件特許の請求項1に係る発明は、次の事項により特定される発明であると認める。
なお、本件訂正により訂正された請求項1に係る発明を、「本件訂正発明」という。また、AないしIの符号は、当審にて分説して付与したものである。
【請求項1】
A 所定の遊技を行う遊技機であって、
B 日付情報および時刻情報を含む日時情報を記憶可能な手段であって、電断発生時を特定可能な日時情報と復電時を特定可能な日時情報を記憶可能な日時情報記憶手段と、
C 所定情報を記憶する所定情報記憶手段と、
D’ 前記日時情報に基づき、前記所定情報記憶手段に記憶された前記所定情報のうちの特定情報を初期化する初期化条件が成立するか否か、および前記日付情報に基づく前記初期化条件が成立しない理由を判定する判定手段とを備え、
E 前記判定手段は、
前記日付情報に基づき前記初期化条件が成立するか否かを判定する第1判定手段と、
F 前記第1判定手段による判定で前記初期化条件が成立しないときに、前記時刻情報に基づき前記初期化条件が成立するか否かを判定する第2判定手段と、
G 前記第1判定手段による判定で前記初期化条件が成立しないときに、該初期化条件が成立しない理由が第1理由と第2理由のいずれであるかを判定する第3判定手段と、を含み、
H 前記第2判定手段は、前記初期化条件が成立しない理由が前記第1理由と前記第2理由のいずれであるかに応じて前記時刻情報に基づく判定の判定基準を異ならせる、
I 遊技機。
第4 特許異議の申立てについて
1 特許異議の申立ての概要
申立人は、特許異議申立書及び特許異議申立書を補正する令和1年12月24日付け手続補正書において、証拠方法として下記甲第1号証及び甲第2号証を提出し、本件訂正前の請求項1に係る発明は、願書に最初に添付した明細書には記載されておらず、平成30年12月14日に提出された手続補正書の請求項1の補正により初めて導入されたものであるから、その補正は新規事項の追加に該当し、本件特許は特許法第17条の2第3項に違反してなされたものであり、特許法第113条第1号に該当し、取り消されるべきものである旨を主張している。
(証拠方法)
2 取消理由の概要
本件訂正前の請求項1に係る特許に対して、当審が令和2年1月30日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次の通りである。
理由1 本件特許第6523851号(以下「本件特許」という。)は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、本件特許は特許法第113条第1号に該当し、取り消されるべきものである。
理由2 本件特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、特許法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
3 令和2年4月3日付け意見書(特許権者提出)の概要
特許権者は、令和2年4月3日付け意見書において、本件訂正発明は、理由1,理由2のいずれにも該当しないため、取り消されるべきものではない旨を主張している。
4 令和2年6月22日付け意見書(申立人提出)の概要
申立人は、令和2年6月22日付け意見書において、本件訂正は、特許請求の範囲を減縮するものでなく、特許請求の範囲を拡張又は変更するものであり、また、本件訂正の目的を「明瞭でない記載の釈明」とするには、本件訂正前の請求項1に明瞭でない記載が存在することが必要であるが、異議申立ての理由においても、取消理由通知においても、請求項1の記載が不明瞭であることの指摘はされておらず、仮に本件訂正の目的が明瞭でない記載の釈明であったとしても、本件訂正は実質上特許請求の範囲を拡張又は変更する訂正に該当し、本件訂正は認められず、本件訂正前の請求項1に係る発明は取消理由通知で通知された理由によって取り消されるべきものである旨を主張している。
第5 取消理由についての当審の判断
1 本件訂正の適否について
本件訂正の適否は、上記「第2 訂正の適否について」において検討したとおりであり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものであって、本件訂正は認められるべきものである。
2 新規事項の有無について
上記1のとおり、本件訂正は認められるべきものであり、本件訂正発明が本件特許明細書等に記載されたものであることは、上記「第2 訂正の適否について」「2 訂正事項についての判断」「(1) 訂正事項1」「ア 新規事項の有無」において検討したとおりであり、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
そして、本件特許明細書等における【0007】以外の各段落及び図面の記載内容は、本件特許の願書に最初に添付した明細書の【0007】以外の各段落及び願書に最初に添付した図面の記載内容と同じである。
そうすると、本件訂正発明は、本件特許の願書に最初に添付した明細書又は図面においても記載されたものといえる。
したがって、本件特許は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものでない。
3 本件訂正発明が本件特許の発明の詳細な説明に記載されたものであるか否かについて
本件訂正前においては、請求項1の記載において、判定手段が「前記日時情報に基づき、前記所定情報記憶手段に記憶された前記所定情報のうちの特定情報を初期化する初期化条件が成立するか否かを判定する」ものと定義されていたことから、前記判定手段が「第1判定手段」、「第2判定手段」に加えて「第3判定手段」を含むものは、本件特許の発明の詳細な説明に記載したものとはいえなかったが、本件訂正により、判定手段が「前記日時情報に基づき、前記所定情報記憶手段に記憶された前記所定情報のうちの特定情報を初期化する初期化条件が成立するか否か」に加えて、「前記日付情報に基づく前記初期化条件が成立しない理由を判定する」ものであることが特定されたことにより、本件訂正発明において定義された判定手段は、「第3判定手段」を含むものといえ、本件訂正発明における判定手段は、本件特許の発明の詳細な説明に記載したものと認められる。
したがって、本件訂正発明は、本件特許の発明の詳細な説明に記載されたものであるから、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしている。
第6 申立人の意見について
1 本件訂正が特許請求の範囲の拡張又は変更する訂正に当たるという主張に対して
申立人は、令和2年6月22日付け意見書において、本件訂正に対して、「第3判定手段」を含む「判定手段」に、「前記日付情報に基づく前記初期化条件が成立しない理由を判定する」という新たな構成を付加する訂正は、特許請求の範囲の減縮ではなく、「判定手段」の構成を、さらに、「前記日付情報に基づく前記初期化条件が成立しない理由を判定する」ことまで含むものに拡張しており、これにより、判定手段が行う処理に訂正前には含まれていなかった事項が新たに含まれるようになり、判定手段の構成が拡張しており、本件訂正は実質上特許請求の範囲の拡張又は変更する訂正に当たり、「請求項に記載された発明を特定するための事項において、択一的記載の要素を追加するもの」に該当する旨を主張している。
しかしながら、本件訂正は、訂正前の「判定手段」において特定されていた「前記日時情報に基づき、前記所定情報記憶手段に記憶された前記所定情報のうちの特定情報を初期化する初期化条件が成立するか否かを判定する」ことを削除するものではなく、その判定に加えて「前記日付情報に基づく前記初期化条件が成立しない理由を判定する」ものである点を限定するものであり、どちらかの判定を行うことが特定されたものではないことから、新たな構成を付加する訂正は、択一的記載の要素の追加としてなされたものではなく、本件訂正が特許請求の範囲の拡張又は変更する訂正には当たらない。
2 「明瞭でない記載の釈明」を訂正の目的とすることについての主張に対して
申立人は、上記意見書において、審判便覧の38-3「訂正要件」の5(2)における「明瞭でない記載の釈明が認められるためには、設定登録時」「の明細書、特許請求の範囲又は図面に明瞭でない記載が存在することが必要である。」の記載を引用し、異議申立ての理由においても、取消理由においても、請求項1の記載が不明瞭であることの指摘はされておらず、本件の設定登録時の特許請求の範囲に記載された用語、記載内容自体は明瞭である旨を主張している。
そこで、審判便覧を参照すると、38-3「訂正要件」の5(3)において、「「明瞭でない記載の釈明」に該当する場合の類型」として、「イそれ自体の記載内容が他の記載との関係において不合理を生じている記載を正すとき。」と記載されている。
そして、本件訂正前においては、「判定手段」は、「前記日時情報に基づき、前記所定情報記憶手段に記憶された前記所定情報のうちの特定情報を初期化する初期化条件が成立するか否かを判定する」ものである点が特定されており、その一方、前記「判定手段」は、「第1判定手段」と「第2判定手段」に加えて、「該初期化条件が成立しない理由が第1理由と第2理由のいずれであるかを判定する第3判定手段」を含むものであったが、前記「判定手段」は、「前記日時情報に基づき、前記所定情報記憶手段に記憶された前記所定情報のうちの特定情報を初期化する初期化条件が成立するか否かを判定する」ものと定義されていたことから、「第3判定手段」が「判定手段」の定義に含まれないことになり、「判定手段」と「第3判定手段」の記載において不合理を生じていたと認められる。
してみると、本件訂正前の請求項1の記載は、不明瞭な記載を含むと認められ、本件訂正の目的を「明瞭でない記載の釈明」とすることは、認められるべきものである。
したがって、上記意見書における申立人の主張は採用できない。
第7 むすび
以上のことから、上記取消理由、並びに、特許異議申立ての理由及び証拠方法によっては、本件訂正後の請求項1に係る特許を取り消すことはできない。
よって、結論のとおり決定する。
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2019-700980