特許異議申立
2019-700778
ゴム用離型剤、ゴム用離型剤水分散液、ゴム、およびゴムの製造方法
- 審判番号
- 2019-700778
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2016-250678
- 登録番号
- 特許第6496707号(P6496707)
- 請求日
- 2019年09月30日
- 審決日
- 2020年11月20日
- 公報発行日
- 2021年04月30日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社
- 【権利者代理人】辻丸 光一郎
- 【権利者代理人】中山 ゆみ
- 【権利者代理人】伊佐治 創
- 【異議申立人】夏目 由美
- 審判長/審判官
- 審判長 須藤 康洋
- 審判官 大島 祥吾
- 審判官 大畑 通隆
- 分類
- P1651.113-YAA(B29C) / P1651.121-YAA(B29C)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第113条第2号、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第6496707号発明「ゴム用離型剤、ゴム用離型剤水分散液、ゴム、およびゴムの製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第6496707号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項[1~12]について訂正することを認める。
特許第6496707号の請求項1ないし12に係る特許を維持する。
理由
【理 由】
第1 主な手続の経緯等
特許第6496707号(設定登録時の請求項の数は12。以下、「本件特許」という。)は、平成25年11月28日に出願された特願2013-246783号の一部を新たな特許出願として平成28年12月26日に出願された特願2016-250678号に係るものであって、平成31年3月15日にその特許権が設定登録された。
そして、本件特許に係る特許掲載公報は平成31年4月3日に発行されたところ、特許異議申立人 夏目由美(以下、単に「異議申立人」という。)は、令和1年9月30日、請求項1~12に係る特許に対して特許異議の申立てをした。
当審において、令和2年1月22日付けで取消理由を通知したところ、特許権者は、同年3月24日に訂正請求書(当該訂正請求書による訂正の請求を「本件訂正請求」という。)及び意見書を提出した。
当該訂正請求書に関し、当審から、令和2年7月17日付けで異議申立人に対して特許法第120条の5第5項に基づく通知をしたところ、異議申立人からの応答が何らなかったものである。
第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は、以下の訂正事項1ないし17のとおりである。ここで、訂正事項1は訂正前の請求項10及び12という一群の請求項に係る訂正であり、訂正事項2ないし17は特許請求の範囲の請求項1に関係する明細書の内容についての訂正を行っているから、訂正前の請求項1~12の一群の請求項に係る訂正である。そうすると、本件訂正請求による訂正全体として、訂正前の請求項1~12の一群の請求項に係る訂正となる。なお、下線は、訂正箇所に合議体が付したものである。
(1) 訂正事項1
訂正前の特許請求の範囲の請求項10における、
「ゴム用離型剤を水に分散させた、ゴム用離型剤水分散液。」との記載を、
「ゴム用離型剤を水に分散させた、前記ゴム用離型剤の含有率が水100gに対し0.5~10.0gであり、かつ、pHが8.0を超え10.0以下である、ゴム用離型剤水分散液。」
と訂正する。
請求項10を直接に引用する請求項12についても同様に訂正する。
(2) 訂正事項2
訂正前の明細書の段落【0018】~【0022】、【0038】、【0039】、【0041】、【0066】に記載された、
「本発明の第1のゴム用離型剤」との記載を、
「本発明のゴム用離型剤」
と訂正する。
(3) 訂正事項3
訂正前の明細書の段落【0012】に記載された、
「本発明の第1または第2のゴム用離型剤」との記載を、
「本発明のゴム用離型剤」
と訂正する。
(4) 訂正事項4
訂正前の明細書の段落【0009】の記載を、
「前記目的を達成するために、本発明のゴム用離型剤は、ゴム表面に付着させて用いるゴム用離型剤であって、前記ゴム用離型剤が、無機粉末およびpH緩衝剤を含み、前記pH緩衝剤は、炭酸塩および二塩基酸塩の少なくとも一方であり、前記無機粉末が、前記pH緩衝剤以外の無機粉末であり、水100gに前記ゴム用離型剤2.0gを分散させた場合の分散液のpHが8.0を超え10.0以下であることを特徴とする。」
と訂正する。
(5) 訂正事項5
訂正前の明細書の段落【0011】の記載を、
「本発明のゴム用離型剤水分散液は、前記本発明のゴム用離型剤を水に分散させた、ゴム用離型剤の含有率が水100gに対し0.5~10.0gであり、かつ、pHが8.0を超え10.0以下である、ゴム用離型剤水分散液である。」
と訂正する。
(6) 訂正事項6
訂正前の明細書の段落【0016】の記載を、
「前記本発明のゴム用離型剤において、水100gに前記ゴム用離型剤1.5~4.0gを分散させた場合の分散液のpHが8.0を超えることが好ましく、水100gに前記ゴム用離型剤0.5~10.0gを分散させた場合の分散液のpHが8.0を超えることがより好ましい。前記本発明のゴム用離型剤において、前記水分散液の前記pHが9.0以上であることが好ましい。また、前記本発明のゴム用離型剤において、前記水分散液の前記pHが10.0以下であることが好ましい。」
と訂正する。
(7) 訂正事項7
訂正前の明細書の段落【0017】の記載を、
「前記本発明のゴム用離型剤において、前記pH緩衝剤は、前述のとおり、炭酸塩および二塩基酸塩の少なくとも一方である。また、前記本発明のゴム用離型剤は、前記無機粉末100重量部に対し、前記pH緩衝剤を1~30重量部含むことがより好ましい。」
と訂正する。
(8) 訂正事項8
訂正前の明細書の段落【0023】の記載を、
「また、前記本発明のゴム用離型剤を水に分散させた、前記本発明のゴム用離型剤水分散液において、前記本発明のゴム用離型剤の含有率は、前述のとおり、水100gに対し、0.5~10.0gであり、好ましくは1.5~4.0g、特に好ましくは2.0gである。また、前記本発明のゴム用離型剤を水に分散させた、前記本発明のゴム用離型剤水分散液のpHは、前述のとおり、8.0を超える値であり、より好ましくは9.0以上である。また、前記pHの上限値は、前記本発明のゴム用離型剤水分散液の取扱いやすさの観点から、前述のとおり、10.0以下である。」
と訂正する。
(9) 訂正事項9
訂正前の明細書の段落【0031】の記載を、
「前記本発明のゴム用離型剤、ならびにそれを用いた前記本発明のゴム用離型剤水分散液、ゴム、およびゴムの製造方法は、例えば、下記(1)~(32)のようにも記載しうるが、これには限定されない。
(1) ゴム表面に付着させて用いるゴム用離型剤であって、前記ゴム用離型剤が、無機粉末およびpH緩衝剤を含み、前記pH緩衝剤は、炭酸塩および二塩基酸塩の少なくとも一方であり、前記無機粉末が、前記pH緩衝剤以外の無機粉末であり、水100gに前記ゴム用離型剤2.0gを分散させた場合の分散液のpHが8.0を超え10.0以下であることを特徴とするゴム用離型剤。
(2) 水100gに前記ゴム用離型剤1.5~4.0gを分散させた場合の分散液のpHが8.0を超える、(1)に記載のゴム用離型剤。
(3) 水100gに前記ゴム用離型剤0.5~10,0gを分散させた場合の分散液のpHが8.0を超える、(1)に記載のゴム用離型剤。
(4) 前記水分散液の前記pHが9.0以上である、(1)~(3)のいずれかに記載のゴム用離型剤。
(5) 前記水分散液の前記pHが10.0以下である、(1)~(4)のいずれかに記載のゴム用離型剤
(6) 前記pH緩衝剤が、炭酸塩、リン酸塩、ケイ酸塩および二塩基酸塩からなる群から選択される少なくとも一つである、(1)~(5)のいずれかに記載のゴム用離型剤。
(7) 前記無機粉末100重量部に対し、前記pH緩衝剤を1~30重量部含む、(1)~(6)のいずれかに記載のゴム用離型剤。
(8) 前記無機粉末が、微粉無機粉末を含む、(1)~(7)のいずれかに記載のゴム用離型剤。
(9) 前記無機粉末が、水膨潤性無機粉末を含む、(1)~(8)のいずれかに記載のゴム用離型剤。
(10) 前記無機粉末が、ベントナイトを含む、(1)~(9)のいずれかに記載のゴム用離型剤。
(11) 前記ベントナイトが、水膨潤性ベントナイトである、(10)に記載のゴム用離型剤。
(12) 前記無機粉末に対する前記ベントナイトの含有率が、5~100重量%である、(10)または(11)に記載のゴム用離型剤。
(13) 前記無機粉末に対する前記ベントナイトの含有率が、30~100重量%である、(10)または(11)に記載のゴム用離型剤。
(14) 前記無機粉末に対する前記ベントナイトの含有率が、50~100重量%である、(10)または(11)に記載のゴム用離型剤。
(15) 前記無機粉末が、さらに、クレー、タルク、マイカ、およびアルカリ土類金属炭酸塩からなる群から選択される少なくとも1種類の無機粉末を含む、(10)~(14)のいずれかに記載のゴム用離型剤。
(16) 前記アルカリ土類金属炭酸塩が、炭酸カルシウムおよび炭酸マグネシウムの少なくとも一方を含む、(15)に記載のゴム用離型剤。
(17) さらに、界面活性剤を含む、(1)~(16)のいずれかに記載のゴム用離型剤。
(18) 前記界面活性剤の含有量が、前記無機粉末100重量部に対して、1~50重量部である、(17)に記載のゴム用離型剤。
(19) 前記界面活性剤の含有量が、前記無機粉末100重量部に対して、2~30重量部である、(17)に記載のゴム用離型剤。
(20) 前記界面活性剤の含有量が、前記無機粉末100重量部に対して、5~20重量部である、(17)に記載のゴム用離型剤。
(21) さらに、鉱物油を含む、(1)~(20)のいずれかに記載に記載のゴム用離型剤。
(22) 前記鉱物油が、パラフィン系オイルおよびナフテン系オイルの少なくとも一方を含む、(21)に記載のゴム用離型剤。
(23) 前記無機粉末100重量部に対して、前記鉱物油を0.5重量部以上含む、(21)または(22)に記載のゴム用離型剤。
(24) 前記無機粉末100重量部に対して、前記鉱物油を0.5~30重量部含む、(21)または(22)に記載のゴム用離型剤。
(25) 未加硫ゴム用離型剤である、(1)~(24)のいずれかに記載のゴム用離型剤。
(26)(1)~(25)のいずれかに記載のゴム用離型剤を水に分散させた、前記ゴム用離型剤の含有率が水100gに対し0.5~10.0gであり、かつ、pHが8.0を超え10.0以下である、ゴム用離型剤水分散液。
(27) 前記ゴム用離型剤の含有率が、水100gに対し、1.5~4.0gである、(26)に記載のゴム用離型剤水分散液。
(28) 前記ゴム用離型剤の含有率が、水100gに対し、2.0gである、(26)に記載のゴム用離型剤水分散液。
(29) pHが9.0以上である、(26)~(28)のいずれかに記載のゴム用離型剤水分散液。
(30) ゴムの表面に、(1)~(25)のいずれかに記載のゴム用離型剤が付着されて離型処理されていることを特徴とするゴム。
(31) 未加硫ゴムである、(30)に記載のゴム。
(32) (26)~(29)のいずれかに記載のゴム用離型剤水分散液を、離型処理されていないゴムの表面に付着させ、さらに水を揮発させることにより離型処理する離型処理工程を含む、(30)または(31)に記載のゴムの製造方法。」
と訂正する。
(10) 訂正事項10
訂正前の明細書の段落【0034】の記載を、
「[1.ゴム用離型剤]
前記本発明のゴム用離型剤は、前述のとおり、ゴム表面に付着させて用いるゴム用離型剤であって、前記ゴム用離型剤が、無機粉末およびpH緩衝剤を含み、前記pH緩衝剤は、炭酸塩および二塩基酸塩の少なくとも一方であり、前記無機粉末が、前記pH緩衝剤以外の無機粉末であり、水100gに前記ゴム用離型剤2.0gを分散させた場合の分散液のpHが8.0を超え10.0以下であることを特徴とする。前記本発明のゴム用離型剤は、前記水分散液のpHが、前記数値範囲であることにより、ゴム表面への付着性が高く、離型性(防着性)等が良好である。
この理由は、必ずしも明らかでないが、例えば、前記pHが前述の数値範囲であることにより、ゴム用離型剤水分散液の粘度等が適切な範囲となり、前記水分散液のゴム表面への濡れ性が高まるとともに、無機粉末の凝集等が防止できると推測される。ただし、この推測は、本発明を何ら限定しない。前記pHは、9.0~10.0の範囲であることが特に好ましい。」
と訂正する。
(11) 訂正事項11
訂正前の明細書の段落【0035】の記載を、
「また、前記本発明のゴム用離型剤は、増粘剤等により水分散液の粘度を高くしなくても、ゴム表面への付着性が良好である。このため、本発明のゴム用離型剤は、前記水分散液の粘度が高すぎることによる乾燥性の悪さ、水分散液の濃度コントロールの困難さ等がないので、使い勝手が良い。」
と訂正する。
(12) 訂正事項12
訂正前の明細書の段落【0040】の記載を、
「前記本発明のゴム用離型剤は、前述のとおり、前記無機粉末およびpH緩衝剤を含むが、それら以外の他の成分を含んでいても良いし、含んでいなくても良い。前記本発明のゴム用離型剤は、前記pH緩衝剤を含むことで、pH低下要因(例えば、ゴム中に配合されている薬剤等)が存在する場合でも、前記pH緩衝剤がpHを緩衝(コントロール)し、適切なpH領域を維持することができる。前記pH緩衝剤は、前述のとおり、炭酸塩および二塩基酸塩の少なくとも一方であり、炭酸塩、有機酸塩等が挙げられる。前記炭酸塩としては、特に限定されないが、例えば、炭酸ナトリウム、二炭酸水素三ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、等が挙げられる。前記有機酸塩としては、特に限定されないが、例えば、テレフタル酸、アジピン酸等の二塩基酸塩が挙げられる。また、これらの塩としては、ナトリウム、カリウム等の無機金属塩およびジェタノールアミン、トリエタノールアミン等の有機塩が挙げられるが、中でもナトリウム塩およびカリウム塩が、汎用性があり好ましい。」
と訂正する。
(13) 訂正事項13
訂正前の明細書の段落【0045】の記載を、
「前記本発明のゴム用離型剤は、前記他の成分として、さらに、鉱物油を含んでいてもよい。本発明のゴム用離型剤は、例えば、前記鉱物油を含むことで、ゴム表面への付着性が高く、離型性(防着性)等が良好である。この理由は、必ずしも明らかでないが、例えば、親水性の無機粉末に疎水性の鉱物油を混合することで、ゴム用離型剤の水分散液において、ゴム表面(疎水性表面)への濡れ性が向上するためと推測される。すなわち、前記濡れ性の向上により、ゴム用離型剤の、ゴム表面への付着性(吸着性)が高まり、ひいては離型性(防着性)等の各種性能が向上すると推測される。ただし、これらの推測は、本発明を何ら限定しない。」
と訂正する。
(14) 訂正事項14
訂正前の明細書の段落【0046】の記載を、
「前記本発明のゴム用離型剤は、例えば、前記鉱物油を含むことにより、増粘剤等により水分散液の粘度を高くしなくても、ゴム表面への付着性が良好である。このため、前記鉱物油を含む前記本発明のゴム用離型剤は、前記水分散液の粘度が高すぎることによる乾燥性の悪さ、水分散液の濃度コントロールの困難さ等がないので、使い勝手が良い。」
と訂正する。
(15) 訂正事項15
訂正前の明細書の明細書の段落【0053】に記載された「3.ゴム用離型剤水分散液」との記載を「2.ゴム用離型剤水分散液」と訂正する。
(16) 訂正事項16
訂正前の明細書の段落【0056】に記載された「4.ゴムおよびゴムの製造方法」との記載を「3.ゴムおよびゴムの製造方法」と訂正する。
(17) 訂正事項17
訂正前の明細書の段落【0010】、【0024】~【0029】、【0032】、【0047】~【0050】、【0079】~【0093】の記載を削除する。
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1) 訂正事項1について
ア この訂正は、訂正前の請求項10のゴム用離型剤水分散液について、ゴム用離型剤の含有率及びpHをさらに限定するものであるから、請求項10に係る訂正事項1は、特許請求の範囲を減縮の目的とするものである。
イ 請求項10に係る訂正事項1の訂正は、願書に添付した明細書の段落【0023】及び【0031】の記載からみて、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
ウ 訂正事項1の訂正に伴って、訂正される請求項12についての訂正も同様である。
(2) 訂正事項2ないし17について
ア 訂正事項2ないし17に係る明細書の訂正は、明細書の記載内容を、特許請求の範囲の記載と整合させるもの及びそれに伴う訂正によって生じる不備を生じさせないようにするものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 訂正事項2ないし17に係る明細書の訂正は、特許請求の範囲に記載されていない、pH緩衝材を含まない第2のゴム用離型剤に関する記載を削除し、その削除に伴って新たな不備が生じないようにするものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
3 むすび
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、本件特許の明細書及び特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項[1~12]について訂正することを認める。
第3 本件発明
上記第2のとおり、本件訂正請求による訂正は認められるので、本件特許の請求項1ないし12に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」ないし「本件発明12」という。)は、令和2年3月24日付け訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1ないし12に記載された事項により特定される以下に記載のとおりのものである。
「【請求項1】
ゴム表面に付着させて用いるゴム用離型剤であって、
前記ゴム用離型剤が、無機粉末およびpH緩衝剤を含み、
前記pH緩衝剤は、炭酸塩および二塩基酸塩の少なくとも一方であり、
前記無機粉末が、前記pH緩衝剤以外の無機粉末であり、
水100gに前記ゴム用離型剤2.0gを分散させた場合の分散液のpHが8.0を超え10.0以下であることを特徴とするゴム用離型剤。
【請求項2】
前記水分散液の前記pHが9.0以上である請求項1記載のゴム用離型剤。
【請求項3】
前記pH緩衝剤が炭酸ナトリウムである請求項1または2記載のゴム用離型剤。
【請求項4】
さらに、鉱物油を含む請求項1から3のいずれか一項に記載のゴム用離型剤。
【請求項5】
前記鉱物油が、パラフィン系オイルおよびナフテン系オイルの少なくとも一方を含む請求項4記載のゴム用離型剤。
【請求項6】
前記無機粉末が、水膨潤性無機粉末を含み、前記水膨潤性無機粉末の含有率が、前記ゴム用離型剤の総重量に対し、10~90重量%である請求項1から5のいずれか一項に記載のゴム用離型剤。
【請求項7】
前記無機粉末が、ベントナイトを含む請求項1から6のいずれか一項に記載のゴム用離型剤。
【請求項8】
前記無機粉末が、さらに、クレー、タルク、マイカ、およびアルカリ土類金属炭酸塩からなる群から選択される少なくとも1種類の無機粉末を含む請求項7記載のゴム用離型剤。
【請求項9】
さらに、界面活性剤を含む請求項1から8のいずれか一項に記載のゴム用離型剤。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載のゴム用離型剤を水に分散させた、前記ゴム用離型剤の含有率が水100gに対し0.5~10.0gであり、かつ、pHが8.0を超え10.0以下である、ゴム用離型剤水分散液。
【請求項11】
離型処理されたゴムであって、
離型処理されていないゴムの表面に、請求項1から9のいずれか一項に記載のゴム用離型剤が付着されて離型処理されていることを特徴とするゴム。
【請求項12】
請求項10記載のゴム用離型剤水分散液を、離型処理されていないゴムの表面に付着させ、さらに水を揮発させることにより離型処理する離型処理工程を含む、請求項11記載のゴムを製造する方法。」
第3 特許異議申立書に記載した理由の概要
令和1年9月30日に異議申立人が提出した特許異議申立書(以下、「特許異議申立書」という。)に記載した理由の概要は次のとおりである。
1 本件発明1~12は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない発明である。すなわち、本件発明1~12は、甲1に記載された発明、甲2及び甲3に記載された事項に基づいてこの発明の属する技術分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものである。
2 そして、上記取消理由には理由があるから、本件の請求項1~12に係る発明についての特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
3 また、証拠方法として書証を申出、以下の文書(甲1~3)を提出する。
・甲1: 米国特許第4306994号明細書
・甲2: 特開2009-249533号公報
・甲3: 特開昭51-22741号公報
第4 取消理由の概要
令和2年1月22日付けで通知した取消理由は、おおむね次のとおりである。
「1 (新規性) 本件特許の請求項10ないし12に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の甲1に記載された発明であるから、その特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。」
第5 上記取消理由についての判断
以下の検討するとおり、上記取消理由には理由がないと判断する。
1 甲1の記載
甲1には、以下の記載がある。なお、証拠の摘記は一部省略し、訳文のみを記載する場合がある。
(1)「発明の分野
本発明は、未加硫ゴムにコーティングし、ゴムシート(及びまたは)ペレットどうしの接着を防ぐための組成物に関する。」(第1欄第6行~第9行)
(2)「特定の粘土が水中で膨張し、顕著な連続被膜を形成する懸濁液となることが知られている。ワイオミング州で天然に存在するアルカリベントナイトは被膜形成に効果的であり、そしてこれらは本件発明の好ましい基本成分である。」(第2欄第17行~第21行)
(3)「ベントナイト水懸濁液は、例えばプラスチック産業における金型へのコーティングには有用であるが、未加硫ゴムシートの粘着防止措置などとしては有用ではない。ベントナイト水懸濁液は未加硫ゴムシートの表面を均一に濡らすことはない。ゴム素材は表面特性が大きく異なり、べントナイト-界面活性剤の水懸濁液系によってかなり容易に濡れるものもあれば、濡れにくいものもある。また、そのような水懸濁液系の調製に使用される水は、分散液の特性に重要な役割を果たし、その効果は大きく異なることも発見した。」(第2欄第27行~第37行)
(4)「私は、被膜形成粘土-界面活性剤混合物に対し、水に含まれるカルシウムイオンやマグネシウムイオンを不活性化する物質を添加することで、ゴム産業で用いられる様々なゴム種や水においても、均一で優れたゴムヘの濡れが得られることを見出した。これらの物質は合成洗剤業界では広く用いられており、「ビルダー」と呼ばれている。最も一般的なビルダーは、三リン酸ナトリウムおよびカリウム、リン酸三ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウムを例とする、金属ポリリン酸エステルです。ホウ酸ナトリウム(ホウ砂)が優れています。ケイ酸ナトリウムや炭酸ナトリウムもまた、カルシウムやマグネシウムイオンを不活性化するのに効果的である。」(第2欄第38行~第50行)
(5)「界面活性剤は、任意のアニオン性または非イオン性界面活性剤が使用できる。ただし、界面活性剤は性質によって被膜形成粘土に吸着されて不活性化される傾向があるため、費用対効果はかなり異なる。ジオクチルスルホコハク酸ナトリウムは、私が検討した界面活性剤の中で最も費用対効果が高いものである。」(第2欄第54行~第59行)
(6)「これらの組成物は、水で適切な濃度(組成物1に対して水20~25重量部程度)に希釈すると、未加硫ゴムを浸漬または未加硫ゴムに噴霧することで均一なフィルムを得るために塗布できる流動性コーティング組成物を生成する。乾燥後、実質的に粉塵が発生せず、ゴムスラブ同士の接着を防ぐのに効果的である。」(第3欄第26行~第33行)
(7)「コスト面では、添加物はカオリンが最もよい。他の安価な添加物としては、タルク、炭酸カルシウム、シリカが挙げられる。」(第3欄第44行~第45行)
(8)「
」
( 実施例1
ナトリウムベントナイト製品
49.0 ポンド ワイオミングベントナイト(天然のナトリウムベントナイト)
3.2 ポンド ヘキサメタリン酸ナトリウム
1.3 ポンド ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム
-続く
(活性物質70%または活性物質0.91ポンド)
1.3 ポンド 消泡剤(US特許番号3076788の実施例1と同じ、鉱油と界面活性剤中に撥水性微粒子状に分散したシリカの5~10%分散液)
ゴム製ブレンダーでブレンドして、乾燥組成物を生成する。粉末状の混合物は、約150ガロンの水に攪拌して、未加硫またはグリーンゴムスラブ用の効果的な粘着防止コーティングを形成する組成物を生成する必要があります。これは、乾燥後に粉塵がなく、使用中に沈殿しない。」(第3欄第61行~第4欄第13行)
(9)「
」
( 実施例5
80 g 水道水
70 g 8%ベントナイト水分散液
1.5 g 10%のジオクチルスルホコハク酸ナトリウム塩水溶液
0.15 g 実施例1の消泡剤
3.75 g カルシウム及びマグネシウムイオンを不活性にする剤の10%水溶液
不活性にする剤として、以下のものを用いて、これらを混合し、評価した。
ホウ砂(Na2B4O7・H2Oの10%溶液)
ケイ酸ナトリウム(SiO2/Na2O比=3.22)
ケイ酸ナトリウム(SiO2/Na2O比=2.0)
三ポリリン酸カリウム
ピロリン酸テトラカリウム
三ポリリン酸ナトリウム
リン酸三ナトリウム
炭酸ナトリウム
これら全てが満足のいく結果をもたらし、ホウ砂組成物は、沈降において実施例1のものよりもいくぶん優れていた。炭酸ナトリウムによる剥離特性は、試験で使用した使用済みゴムではやや劣るが、一般的には満足できるものであった。」(第5欄第11行~第39行)
2 甲1に記載された発明
上記1(1)~(9)の記載から、甲1には、実施例5として記載されている未加硫ゴム表面処理用防着剤組成物として、以下の発明(以下、「甲1発明A」という。)が記載されていると認める。
<甲1発明A>
「以下の成分を含む未加硫ゴム表面処理用防着剤組成物。
80gの水道水、70gの8%ベントナイト水分散液、1.5gの10%のジオクチルスルホコハク酸ナトリウム塩水溶液、0.15gの鉱油と界面活性剤中に撥水性微粒子状に分散したシリカの5~10%分散液である消泡剤、3.75gのカルシウム及びマグネシウムイオンを不活性にする剤である炭酸ナトリウム」
また、甲1発明Aを利用して離型処理されたゴム及び離型処理する方法として、次の発明も記載されていると認める。
<甲1発明B>
「離型処理されていないゴムの表面に、甲1発明Aを付着させて離型処理されたゴム。」
<甲1発明C>
「甲1発明Aを、離型処理されていないゴムの表面に付着させ、さらに乾燥させることにより、離型処理されたゴムを製造する方法。」
3 本件発明10と甲1発明Aとの対比・判断
甲1発明Aの「ベントナイト」、「炭酸ナトリウム」は、それぞれ、本件発明10における「無機粉末」、「pH緩衝剤」である「炭酸塩」に相当し、甲1発明Aにおいても、本件発明10における「前記pH緩衝剤は、炭酸塩および二塩基酸塩の少なくとも一方であり」及び「無機粉末が、前記pH緩衝材以外の無機粉末である」との発明特定事項を満たしている。
甲1発明Aの「未加硫ゴム表面処理用防着剤組成物」は、甲1発明Aが80gの水道水にベントナイト水分散液等を混合したものであることから、本件発明1におけるゴム用離型剤をさらに水に分散させた状態である、本件発明10の「ゴム用離型剤水分散液」に相当する。
そうすると、本件発明10と甲1発明Aとは、
「ゴム表面に付着させて用いるゴム用離型剤であって、
前記ゴム用離型剤が、無機粉末およびpH緩衝剤を含み、
前記pH緩衝剤は、炭酸塩および二塩基酸塩の少なくとも一方であり、
前記無機粉末が、前記pH緩衝剤以外の無機粉末である、
ゴム用離型剤を水に分散させたゴム用離型剤水分散液。」
の点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点1>
本件発明10においては、水に分散させたゴム用離型剤について、「水100gに前記ゴム用離型剤2.0gを分散させた場合の分散液のpHが8.0を超え10.0以下である」と特定するとともに、ゴム用離型剤水分散液に関し、「前記ゴム用離型剤の含有率が水100gに対し0.5~10.0gであり、かつ、pHが8.0を超え10.0以下である」と特定するのに対し、甲1発明Aにおいては、この点を特定しない点。
以下、相違点1について検討する。
甲1発明Aにおいて、水とそれ以外の成分とに区分して、水以外の成分をゴム用離型剤としたとき、当該成分の配合量を計算すると、水100gに対して約6.5g程度配合されているといえるから、甲1発明Aにおいても、ゴム用離型剤の配合量は本件発明10のものに合致している。
しかしながら、甲1発明Aの「未加硫ゴム表面処理用防着剤組成物」(本件発明10の「ゴム用離型剤水分散液」に相当)のpHについては不明であって、また、本件特許出願に係る審査段階において特許権者が提出した平成29年4月3日付上申書に記載されている実験結果によれば、甲1発明Aである「未加硫ゴム表面処理用防着剤組成物」のpHは10.6であって、本件発明10の範囲を満たさないものである。
さらに、水100gに甲1発明Aにおけるゴム用離型剤に相当する成分2.0gを分散させた場合の分散液のpHについても不明であって、8.0を超え10.0以下であることを示す証拠もない。
そうすると、相違点1は実質的な相違点である。
以上のことから、本件発明10は、甲1発明Aと同一であるとはいえない。
4 本件発明11と甲1発明Bとの対比・判断
本件発明11と甲1発明Bとを対比すると、上記3での対比と同様であるから、両者は、
「離型処理されたゴムであって、
離型処理されていないゴムの表面に、
無機粉末およびpH緩衝剤を含み、
前記pH緩衝剤は、炭酸塩および二塩基酸塩の少なくとも一方であり、
前記無機粉末が、前記pH緩衝剤以外の無機粉末である、
ゴム用離型剤が付着されて離型処理されているゴム。」
の点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点2>
本件発明11においては、ゴム用離型剤について、「水100gに前記ゴム用離型剤2.0gを分散させた場合の分散液のpHが8.0を超え10.0以下である」と特定するのに対し、甲1発明Bにおいては、この点を特定しない点。
以下、相違点2について検討する。
甲1発明Bにおけるゴム用離型剤に相当する成分である甲1発明Aにおけるゴム用離型剤に相当する成分を水100gに前記ゴム用離型剤2.0gを分散させた場合の分散液のpHについては不明であって、8.0を超え10.0以下であることを示す証拠もない。
そうすると、相違点2は実質的な相違点である。
以上のことから、本件発明11は、甲1発明Bと同一であるとはいえない。
5 本件発明12と甲1発明Cとの対比・判断
本件発明12と甲1発明Cとを対比すると、上記3での対比と同様であるから、両者は、
「ゴム表面に付着させて用いるゴム用離型剤であって、
前記ゴム用離型剤が、無機粉末およびpH緩衝剤を含み、
前記pH緩衝剤は、炭酸塩および二塩基酸塩の少なくとも一方であり、
前記無機粉末が、前記pH緩衝剤以外の無機粉末である、
ゴム用離型剤の水100gに対する含有率は0.5~10.0gであって、ゴム用離型剤水分散液を、離型処理されていないゴムの表面に付着させ、さらに水を揮発させることにより離型処理する離型処理工程を含む、ゴムを製造する方法。」
の点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点3>
本件発明12においては、ゴム用離型剤について、「水100gに前記ゴム用離型剤2.0gを分散させた場合の分散液のpHが8.0を超え10.0以下である」と特定し、ゴム用離型剤水分散液に関し、「前記ゴム用離型剤の含有率が水100gに対し0.5~10.0gであり、かつ、pHが8.0を超え10.0以下である」と特定するのに対し、甲1発明Cにおいては、この点を特定しない点。
以下、相違点3について検討する。
相違点3は、上記3における相違点1と同じであるから、上記3で検討したとおりである。
そうすると、相違点3は実質的な相違点であって、本件発明12は、甲1発明Cと同一であるとはいえない。
6 まとめ
以上検討したとおり、本件発明10ないし12は、甲1に記載された発明でないから、上記取消理由には理由がない。
第6 特許異議の申立理由について
1 甲1~3の記載等
(1)甲1の記載及び甲1に記載された発明
甲1には、上記第5 1のとおりの記載があり、第5 2のとおりの発明が記載されていると認める。
(2)甲2の記載
甲2には、以下の記載がある。
「【0018】
無機粉体に占める水膨潤性粘土鉱物の重量割合については、特に限定はないが、ゴム表面に対する被膜性を考慮すると、通常、30~80重量%であり、好ましくは40~80重量%、さらに好ましくは50~80重量%、特に好ましくは60~80重量%、最も好ましくは60~70重量%である。水膨潤性粘土鉱物の重量割合が80重量%超であると、未加硫ゴム用防着剤組成物のハンドリング性が低下することがある。一方、水膨潤性粘土鉱物の重量割合が30重量%未満であると、防着性が低下する。
水膨潤性粘土鉱物は、大きく分けて、層状珪酸塩鉱物、非層状珪酸塩鉱物、酸化・水酸化鉱物に分類され、水膨潤性粘土鉱物が層状珪酸塩鉱物であると、入手が容易であるので好ましい。」
「【0020】
モンモリロナイトは2八面体型含水層状珪酸塩鉱物であり、ナトリウム、カルシウム、カリウム、マグネシウム、水素イオンなどを交換陽イオンとして含有する。これらの陽イオンは容易に交換される性質を有しており、かつ容易に水を取り込める性質も有している。交換陽イオンがナトリウムイオンであると、水和力で水分子を取り込みやすく、層間隔が増大し膨潤が著しい。
一般に、モンモリロナイトを主成分として含有し、石英、クリストパライト、長石類、炭酸塩鉱物等を副成分として含有する水膨潤性粘土鉱物をベントナイトと呼ぶ。ベントナイトは、未加硫ゴム表面に容易に吸着し、被膜を形成することができる。ベントナイトの被膜は、防着性および滑性に優れることから、本発明のゴム用防着剤組成物における水膨潤性粘土鉱物がベントナイトであるとさらに好ましい。また、ベントナイトがナトリウムベントナイトを高い純度で含有すると、水膨潤性の効果が著しく最も好ましい。
【0021】
無機粉体は水膨潤性粘土鉱物を必須とし、これ以外のその他の無機粉体を含んでいてもよい。その他の無機粉体としては、特に限定はないが、たとえば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム等の炭酸塩;カオリン、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム、クレー、タルク、マイカ、セリサイト等のケイ酸塩;硫酸カルシウム、硫酸バリウム等の硫酸塩;シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、三酸化アンチモン、酸化チタン、ホワイトカーボン、酸化鉄等の金属酸化物;水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化鉄等の金属水酸化物;ベンガラ;カーボンブラック;グラファイト等が挙げられる。これらの中でも、無機粒子が、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリン、クレー、ホワイトカーボンから選ばれる少なくとも1種からなると、ゴム表面への付着性に優れるという理由から好ましい。 ・・・」
「【0028】
〔界面活性剤〕
界面活性剤は、未加硫ゴムに対して「濡れ」を補助する成分である。界面活性剤が本発明のゴム用防着剤組成物に含まれていることによって、無機粉体および水溶性多糖類をより均一にゴム表面に被膜化できる。また、本発明のゴム用防着剤組成物が水を含む場合に、無機粉体の水中での分散性を向上できる。・・・」
「【0034】
未加硫ゴム用防着剤組成物が水を含有する場合、そのpHとしては、特に限定はないが、好ましくは5~12、さらに好ましくは5~10、特に好ましくは6~9、最も好ましくは6~8である。未加硫ゴム用防着剤組成物が水を含有する場合のpHが5未満または12超であると、未加硫ゴム用防着剤組成物のハンドリング性に欠ける場合がある。
【0035】
〔その他の成分等〕
本発明のゴム用防着剤組成物は、上記で説明した各成分および水以外に、消泡剤や多価アルコール、金属石鹸粒子等をさらに含有していてもよい。
消泡剤としては特に限定はないが、たとえば、ヒマシ油、ゴマ油、アマニ油、動植物油などの油脂系消泡剤;ステアリン酸、オレイン酸、パルミチン酸などの脂肪酸系消泡剤;ステアリン酸イソアミル、こはく酸ジステアリル、エチレングリコールジステアレート、ステアリン酸ブチルなどの脂肪酸エステル系消泡剤;ポリオキシアルキレンモノハイドリックアルコールジ-t-アミルフェノキシエタノール、3-ヘプタノール、2-エチルヘキサノールなどのアルコール系消泡剤;ジ-t-アミルフェノキシエタノール3-ヘプチルセロソルブノニルセロソルブ3-ヘプチルカルビトールなどのエーテル系消泡剤;トリブチルオスフェート、トリス(ブトキシエチル)フオスフェートなどのリン酸エステル系消泡剤;ジアミルアミンなどのアミン系消泡剤;ポリアルキレンアミド、アシレートポリアミンなどのアミド系消泡剤;ラウリル硫酸エステルナトリウムなどの硫酸エステル系消泡剤;鉱物油等が挙げられ、1種または2種以上を併用してもよい。」
(3)甲3の記載
甲3には、以下の記載がある。
「1.発明の名称
ゴム密着防止用組成物」(第1頁左欄第2~3行目)
「さらに、本発明で使用する鉱油類の例としては、流動パラフィン、固型パラフィン、スピンドル油、マシン油、グリース等、パラフィン系、ナフテン系油を含むものである。」(第1頁右欄下から第2行~第2頁左欄第2行)
「さらに、本発明で使用する前記動物、植物油脂および鉱油類を、可溶化、乳化、分散させるに用いる界面活性剤の一例を挙げると、ドデシルベンゼンスルホン酸、ラウリルアルコール、硫酸エステル、トデカンスルホン酸、直鎖第二級アルカンスルホン酸、ジオクチルスルホ琥珀酸エステル、エトキシ化ラウリルアルコール硫酸エステル、ヒマシ油硫酸エステル、エトキシ化ラウリルアルコール燐酸エステル等のナトリウムやカリウムのごときアルカリ金属塩、カルシウム、マグネシウムのごときアルカリ土類金属塩、アンモニウム塩あるいはアルカノールアミン塩、モルホリン塩等の有機アミン塩のごときアニオン性界面活性剤あるいはポリエチレングリコールラウリルエーテル、ポリエチレングリコールノニルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールオレイルエーテル、ポリエチレングリコールオレイン酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコールアルキルアミンエーテル、脂肪酸ジエタノールアミド等の非イオン性界面活性剤がある。」(第2頁左上欄第5~第19行)
「さらに、タルク、マイカ、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム等の粉末状無機物質を、本発明の組成物と併用した場合は、より効果的となる。その配合方法は本発明の組成物を水中に溶解する前でもよく、また溶解後水中に加えて懸濁液を調製しても良い。この場合、粉末無機物質の水中分散状態は極めて良く、また粉塵性についても処理液濃度中に0~5重量部程度であれば特に影響を及ぼさない。」(第2頁右上欄第13行~第19行)
2 本件発明1と甲1発明Aとの対比・判断
本件発明1と甲1発明Aとを対比すると、上記第5 3での対比と同様であるから、両者は、
「ゴム表面に付着させて用いるゴム用離型剤であって、
前記ゴム用離型剤が、無機粉末およびpH緩衝剤を含み、
前記pH緩衝剤は、炭酸塩および二塩基酸塩の少なくとも一方であり、
前記無機粉末が、前記pH緩衝剤以外の無機粉末である、
ゴム用離型剤。」
の点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点4>
本件発明1においては、ゴム用離型剤について、「水100gに前記ゴム用離型剤2.0gを分散させた場合の分散液のpHが8.0を超え10.0以下である」と特定するのに対し、甲1発明Aにおいては、この点を特定しない点。
以下、相違点4について検討する。
相違点4は、上記第5 4における相違点2と同じである。
そして、甲1には、「水100gに前記ゴム用離型剤2.0gを分散させた場合の分散液のpH」に関する記載はない。また、異議申立人が特許異議申立書に添付したいずれの証拠にも、「水100gに前記ゴム用離型剤2.0gを分散させた場合の分散液のpHが8.0を超え10.0以下である」ことに関する記載はない。
してみれば、甲1発明Aにおいて、「水100gに前記ゴム用離型剤2.0gを分散させた場合の分散液のpHが8.0を超え10.0以下である」ものとすることが、当業者に想到容易ということはできない。
そして、本件発明1において、「水100gに前記ゴム用離型剤2.0gを分散させた場合の分散液のpHが8.0を超え10.0以下である」ゴム用離型剤を用いることで、ゴムへの付着性及びゴムの装着性に優れることが実施例において確認されているから、本件発明1に係る上記相違点において、格別顕著な効果が奏されるものである。
よって、本件発明1は、甲1発明Aに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
異議申立人は、上記相違点4に関し、甲2の段落【0034】には、pHとして、好ましくは5~12、さらに好ましくは5~10と記載されているため、pHが8~10の領域は特別なものでないといえ、上記相違点4は、甲2の記載を参酌することで容易に想到し得たことである旨主張する(特許異議申立書の16~17頁)。しかしながら、上記甲2の段落【0034】の記載は、「未加硫ゴム用防着剤組成物が水を含有する場合、そのpHとしては、(略)、最も好ましくは6~8である。」であって、前記記載に基づいてことさらpHを8.0を超え10.0以下とする動機もなく、本件特許の実施例からpHの上下限に臨界的意義が認められるから、当該主張は採用できない。
3 本件発明2ないし9と甲1発明Aとの対比・判断
本件発明2ないし9は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに、その数値を限定するか、新たな限定事項を付加するものであるから、本件発明2ないし9と甲1発明Aとを対比すると、少なくとも、上記2における相違点4で相違する。そして、上記相違点4についての判断は、上記2での検討のとおりであるから、本件発明2ないし9についても、甲1発明Aに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
4 本件発明10と甲1発明Aとの対比・判断
本件発明10と甲1発明Aとを対比すると、上記第5 3のとおりであって、第5 3に記載の相違点1で相違する。
そして、甲1には、「水100gに前記ゴム用離型剤2.0gを分散させた場合の分散液のpHが8.0を超え10.0以下」とすること、及び、「ゴム用離型剤を水100gに対して0.5~10.0g配合した水分散液のpHが8.0を超え10.0以下」とすることに関する記載はない。また、異議申立人が特許異議申立書に添付したいずれの証拠にも、これらに関する記載はない。
本件発明10において、「水100gに前記ゴム用離型剤2.0gを分散させた場合の分散液のpHが8.0を超え10.0以下である」ゴム用離型剤を用いて、ゴム用離型剤を分散させた分散液のpHを8.0~10.0とすることでゴムへの付着性及びゴムの装着性に優れることが実施例において確認されているから、本件発明10に係る上記相違点において、格別顕著な効果が奏されるものである。
してみれば、甲1発明Aにおいて、「水100gに前記ゴム用離型剤2.0gを分散させた場合の分散液のpHが8.0を超え10.0以下である」と特定するとともに、当該「ゴム用離型剤を水100gに対して0.5~10.0g配合した水分散液のpHが8.0を超え10.0以下である」ものとすることが、当業者に想到容易ということはできない。
よって、本件発明10は、甲1発明Aに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたもといえない。
5 本件発明11と甲1発明Bとの対比・判断
本件発明11と甲1発明Bとを対比すると、上記第5 4のとおりであって、第5 4に記載の相違点2で相違する。
そして、相違点2は、上記2における相違点4と同じであるから、その判断は上記2における相違点4に対して示したとおりである。
よって、本件発明11は、甲1発明Bに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたもといえない。
6 本件発明12と甲1発明Cとの対比・判断
本件発明12と甲1発明Cとを対比すると、上記第5 5のとおりであって、第5 5に記載の相違点3で相違する。
そして、相違点3は、上記4における相違点1と同じであるから、その判断は上記4における相違点1に対して示したとおりである。
よって、本件発明12は、甲1発明Cに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたもといえない。
7 まとめ
以上のとおりであるから、特許異議申立て理由については理由がない。
第7 むすび
以上のとおりであるから、特許第6496707号の請求項1ないし12に係る特許は、取消理由通知書に記載した取消理由又は特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、取り消すことはできない。さらに、他に本件請求項1ないし12に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2019-700778