2019-700752
合わせガラス
- 審判番号
- 2019-700752
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2015-193018外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2019年09月20日
- 審決日
- 2019年12月16日
- 公報発行日
- 2020年02月28日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】AGC株式会社
- 【権利者代理人】特許業務法人サクラ国際特許事務所
- 【異議申立人】柴田 留理子
- 分類
- P1651.121-Y (C03C)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
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結論
理由
目次 ▾ 11項目
1 手続の経緯
特許第6485309号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~9に係る特許についての出願は、平成27年9月30日に出願され、平成31年3月1日にその特許権の設定登録がされ、平成31年3月20日に特許掲載公報が発行され、その後、その請求項1~9に係る特許に対して、令和1年9月20日付けで特許異議申立人柴田留理子により特許異議の申立てがされたものである。
2 本件発明
本件特許の請求項1~9に係る発明(以下、「本件発明1」~「本件発明9」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1~9に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「 【請求項1】各々の板厚が0.3mm~1.8mmである1対のガラス板と、前記ガラス板の間に設けられた、周波数1Hz、温度20℃における貯蔵弾性率G’が2.0×106Pa以上である中間膜と、を有し、周波数3~6KHz、温度20℃における少なくとも1つの共振点において損失係数が0.2以上である合わせガラスであって、続きを表示(全21行)前記中間膜は、コア層と前記コア層を挟持する1対のアウター層の3層からなり、前記コア層は、前記1対のアウター層に比べて、周波数1Hz、温度20℃における貯蔵弾性率G’が小さい、合わせガラス。【請求項2】前記1対のガラス板は板厚が異なる請求項1記載の合わせガラス。【請求項3】前記コア層におけるTg(ガラス転移点)が0℃~20℃の範囲である請求項1または2に記載の合わせガラス。【請求項4】前記コア層の層厚が0.05mm~0.30mmである請求項1~3のいずれか1項に記載の合わせガラス。【請求項5】前記コア層の前記貯蔵弾性率G’が1.0×104Pa以上1.0×107Pa以下である請求項1~4のいずれか1項に記載の合わせガラス。【請求項6】前記アウター層の前記貯蔵弾性率G’が5.0×106Pa以上1.3×108Pa以下である請求項1~5のいずれか1項に記載の合わせガラス。【請求項7】自動車用であり、サイドガラス、ルーフガラスまたはリアガラスとして用いる請求項1~6のいずれか1項に記載の合わせガラス。【請求項8】三点曲げ試験により測定される剛性が100N/mm以上である請求項1~7のいずれか1項に記載の合わせガラス。【請求項9】SAE J1400に準拠して測定される音響透過損失が25dB以上である請求項1~8のいずれか1項に記載の合わせガラス。」
3 申立理由の概要
特許異議申立人は、証拠として以下の甲第1号証~甲第8号証を提出し、本件発明1~9は、甲第1号証~甲第8号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものであるとの申立理由を主張している。
(証拠方法)
4 甲号証の記載事項
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(1)甲第1号証の記載事項(なお、下線は当審が付した。)
ア 「【特許請求の範囲】【請求項1】 2種の樹脂膜(A)及び(B)からなる積層膜であって、樹脂膜(A)及び(B)の各膜数は複数であってもよく、樹脂膜(A)は樹脂(a)と可塑剤とからなり、樹脂膜(B)は樹脂(b)と可塑剤とからなり、樹脂(a)はポリビニルアルコールを炭素数6~10のアルデヒドでアセタール化して得たポリビニルアセタールであり、樹脂(b)はポリビニルアルコールを炭素数1~4のアルデヒドでアセタール化して得たポリビニルアセタールであることを特徴とする遮音性合わせガラス用中間膜。【請求項2】 積層膜が樹脂膜(A)とその両面の樹脂膜(B)とからなり、樹脂(a)がポリビニルアルコールを炭素数6~8のアルデヒドでアセタール化して得たポリビニルアセタールであり、樹脂(b)がポリビニルアルコールをブチルアルデヒドでアセタール化して得たポリビニルアセタールである請求項1記載の中間膜。」
イ 「【0001】【産業上の利用分野】この発明は、広い温度領域において優れた遮音性能を長期にわたって発揮する合わせガラスを構成するための中間膜に関する。【0002】【従来の技術】一般に、一対のガラス板間に樹脂膜をサンドイッチして成る合わせガラスは、破損時に破片が飛散しなくて安全性に優れているため、例えば、自動車等の交通車両の窓ガラスや建築物の窓ガラス等に広く用いられている。」
(2)甲第1号証に記載された発明
上記(1)ア及びイに摘示した甲第1号証の記載を、当該号証の請求項2に記載の中間膜を使用した合わせガラスに注目して整理すると、甲第1号証には、
「一対のガラス板と、前記ガラス板間にサンドイッチされた中間膜と、を有し、前記中間膜は、ポリビニルアルコールを炭素数6~8のアルデヒドでアセタール化して得たポリビニルアセタールである樹脂(a)と可塑剤とからなる樹脂膜(A)と、その両面のポリビニルアルコールを炭素数1~4のアルデヒドでアセタール化して得たポリビニルアセタールである樹脂(b)と可塑剤とからなる樹脂膜(B)とからなる、遮音性合わせガラス。」
の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されているといえる。
5 申立理由の検討
(1)本件発明1について
ア 本件発明1と甲1発明を対比すると、甲1発明の「ガラス板間にサンドイッチされた」こと、「ポリビニルアルコールを炭素数6~8のアルデヒドでアセタール化して得たポリビニルアセタールである樹脂(a)と可塑剤とからなる樹脂膜(A)、その両面のポリビニルアルコールを炭素数1~4のアルデヒドでアセタール化して得たポリビニルアセタールである樹脂(b)と可塑剤とからなる樹脂膜(B)とからなる」ことは、それぞれ、本件発明1の「ガラス板の間に設けられた」こと、「コア層と前記コア層を挟持する1対のアウター層の3層からな」ることに相当する。
よって、本件発明1は、甲1発明と、
「1対のガラス板と、前記ガラス板の間に設けられた中間膜と、を有し、前記中間膜は、コア層と前記コア層を挟持する1対のアウター層の3層からなる、合わせガラス。」
の点で一致し、以下の点で相違している。
(相違点1)
ガラス板の板厚について、本件発明1では、各々の板厚が0.3mm~1.8mmであるのに対して、甲1発明では、その点が明らかでない点。
(相違点2)
中間膜及び中間膜を構成するコア層及びアウター層の周波数1Hz、温度20℃における貯蔵弾性率G’について、本件発明1では、中間層の貯蔵弾性率G’が2.0×106Pa以上であり、かつ、1対のアウター層に比べて、コア層の貯蔵弾性率G’が小さいものであるのに対して、甲1発明では、その点が明らかでない点。
(相違点3)
本件発明1では、合わせガラスの周波数3~6KHz、温度20℃における少なくとも1つの共振点において損失係数が、0.2以上であるのに対して、甲1発明では、その点が明らかでない点。
イ 上記相違点1~3について検討するにあたり、甲第2号証の段落【0006】の「従来コインシデンス効果によって生じる透過損失(Transmission Loss)、すなわち、TL値の低下を防止するために、合わせガラスにおけるガラスの質量を増大させる方法・・・などが試みられている。」との記載、甲第3号証の段落【0005】の「ガラス板に比べてせん断貯蔵弾性率の小さい中間膜は、一方のガラス板からもう一方のガラス板に伝達される振動を吸収できる。」との記載、及び、甲第4号証の段落【0012】の「積層グレージングユニット内への減衰中間層の統合に関して、損失係数tanδを単独で考慮すべきではなく、剛性率(shear modulus)G’が中間層の減衰特性において考慮すべき別の特性を構成しているということも同様に記述されてきた。」との記載をみたとき、合わせガラスのガラス板の板厚、中間膜の貯蔵弾性率G’及び、合わせガラスの損失係数は、相互に関連した物理的特性であって、それぞれを独立に調整できるものといえないから、上記相違点1~3に係る本件発明1の特定事項は、一体として検討すべきものといえる。
そして、甲第2号証~甲第8号証のいずれにも、合わせガラスのガラス板の板厚を0.3mm~1.8mmとすると共に、中間膜の周波数1Hz、温度20℃における貯蔵弾性率G’を2.0×106Pa以上であり、かつ、コア層の貯蔵弾性率G’をアウター層より小さくし、しかも、合わせガラスの周波数3~6KHz、温度20℃における少なくとも1つの共振点において損失係数を0.2以上とすることは記載も示唆もされていない。
そうしてみると、甲第2号証~甲第8号証の記載を参酌したとしても、甲1発明において、相違点1~3に係る本件発明1の特定事項をなすことは、当業者が容易に想到し得ることであるといえない。
したがって、本件発明1は、甲第1号証~甲第8号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をできたものといえない。
ウ 特許異議申立人は、甲第1号証~甲第6号証の記載に基づき、本件特許の出願時には、軽量でありながら、剛性と遮音性をともに有する合わせガラスを提供することが周知の課題であり、合わせガラスの技術分野において、板ガラスの板厚、中間層における貯蔵弾性率G’、合わせガラスの共振点における損失係数といった物理的特性が、上記課題を解決する上で、当業者が着目すべき物理的な特性であることを前提として、これらの物理的な特性の好適な組合せを実験的に選択することは当業者が容易に着想し得ることであるから、甲1発明において、合わせガラスの板厚として、「0.3mm~1.8mm」といった値を選択すること、合わせガラスの「中間膜及び中間膜を構成するコア層及びアウター層の周波数1Hz、温度20℃における貯蔵弾性率G’が、中間膜における貯蔵弾性率G’が2.0×106Pa以上であり、かつ、コア層は、1対のアウター層に比べて、貯蔵弾性率G’が小さいものである」といった値を選択すること、並びに、合わせガラスの「周波数3~6KHz、温度20℃における少なくとも1つの共振点において損失係数が0.2以上」といった値を選択することは、当業者が容易になし得たことである旨を主張している(特許異議申立書第26~32頁の(ア-1-2-1)~(ア-1-2-4)参照)。
この点について検討するに、上記イで検討したとおり、合わせガラスのガラス板の板厚、中間膜の貯蔵弾性率G’及び、合わせガラスの損失係数は、相互に関連した物理的特性であって、それぞれを独立に調整できるものといえないから、これらの物理的特性の好適な組合せを実験的に選択することが、当業者が容易に想到し得る事項であるといえない。
よって、特許異議申立人の上記主張は採用できない。
(2)本件発明2~9について
本件発明2~9は、本件発明1を引用するものであって、少なくとも上記相違点1~3が存在するから、本件発明2~9も、上記(1)で検討したとおり、甲第1号証~甲第8号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるといえない。
(3)小括
以上で検討したとおり、本件発明1~9に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものでないから、特許異議申立人の主張する申立理由に理由はない。
6 むすび
したがって、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、請求項1~9に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1~9に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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