特許異議申立
2019-700732
曇り止め剤
- 審判番号
- 2019-700732
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2014-191803
- 登録番号
- 特許第6483981号(P6483981)
- 請求日
- 2019年09月13日
- 審決日
- 2020年06月30日
- 公報発行日
- 2020年10月30日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】小林製薬株式会社
- 【権利者代理人】特許業務法人 安富国際特許事務所
- 【異議申立人】藤本 幸弘
- 審判長/審判官
- 審判長 日比野 隆治
- 審判官 蔵野 雅昭
- 審判官 木村 敏康
- 分類
- P1652.113-YAA(C09K) / P1652.121-YAA(C09K) / P1652.537-YAA(C09K)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第1項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第6483981号発明「曇り止め剤」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第6483981号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~4〕、5について訂正することを認める。
特許第6483981号の請求項1ないし4に係る特許を維持する。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
特許第6483981号の請求項1~5に係る特許についての出願は、平成26年9月19日になされたものであって、平成31年2月22日にその特許権の設定登録がなされ、同年3月13日にその特許掲載公報が発行されたものである。
その後、その特許についてなされた特許異議の申立ての手続きの経緯は、以下のとおりである。
令和 元年 9月13日 特許異議申立人である藤本幸弘により、
請求項1~4に係る特許に対する特許
異議の申立て
同年12月 2日付け 取消理由通知
令和 2年 2月 3日 訂正請求及び意見書の提出(特許権者)
なお、特許権者から令和2年2月3日に訂正請求があったこと及び意見書が提出されたことを、同年同月7日付けで特許異議申立人藤本幸弘(以下、「異議申立人」という。)に通知し、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、意見書は提出されなかった。
第2 本件訂正請求について
1 本件訂正請求の内容
令和2年2月3日になされた訂正請求による訂正(以下、「本件訂正」という。)は、一群の請求項を形成する請求項1~5に対して請求されたものであって、その「請求の趣旨」は、「特許第6483981号の特許請求の範囲を本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~5について訂正することを求める。」というものである。また、その内容は、以下の訂正事項1~4からなるものであり、併せて、請求項5についての訂正が認められる場合には、一群の請求項の他の請求項とは別途訂正することを求めるというものである。
訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1における「フッ素系両性界面活性剤」について、
「前記フッ素系両性界面活性剤は下記の一般式(1)
Rf-X-Ya (1)
(式中、Rfはフルオロアルキル基またはフルオロアルケニル基を表し、Xは、アルキレン基またはアリーレン基であって、スルホアミド基、カルボニル基、オキサ基を有していても良い。Yaは両性イオン基を表す。)で表され」
と限定する。
また、請求項1の記載を引用する請求項2~4も同様に訂正する。
訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1における「フッ素系アニオン界面活性剤」について、
「前記フッ素系アニオン界面活性剤は下記の一般式(2)
Rf-X-Yb (2)
(式中、Rf、Xは、一般式(1)で示されたものと同じであり、Ybはアニオン基を表す。)で表され」
と限定する。
また、請求項1の記載を引用する請求項2~4も同様に訂正する。
訂正事項3
特許請求の範囲の請求項1における「フッ素系ノニオン界面活性剤」について、
「前記フッ素系ノニオン界面活性剤は下記の一般式(3)
Rf-X-Yc (3)
(式中、Rf、Xは、一般式(1)で示されたものと同じであり、Ycはノニオン基を表す。)で表され」
と限定する。
また、請求項1の記載を引用する請求項2~4も同様に訂正する。
訂正事項4
特許請求の範囲の請求項5における「請求項1~4のいずれかに記載の曇り止め剤を不織布に含浸させたメガネクリーナー。」について、独立形式に改め、「(A)フッ素系両性界面活性剤またはフッ素系アニオン界面活性剤、および(B)フッ素系ノニオン界面活性剤を含有する曇り止め剤を不織布に含浸させたメガネクリーナー。」に訂正する。
2 訂正の適否
(1) 訂正事項1~3について
ア 訂正の目的の適否、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項1は、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1の「フッ素系両性界面活性剤」について、本件特許の願書に添付した明細書の発明の詳細な説明(以下、「発明の詳細な説明」という。)の【0016】の記載に基づき「前記フッ素系両性界面活性剤は下記の一般式(1)
Rf-X-Ya (1)
(式中、Rfはフルオロアルキル基またはフルオロアルケニル基を表し、Xは、アルキレン基またはアリーレン基であって、スルホアミド基、カルボニル基、オキサ基を有していても良い。Yaは両性イオン基を表す。)で表され」と限定し、さらに請求項1の記載を引用する請求項2~4も同様に訂正するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項1は、発明の詳細な説明の【0016】の記載に基づき、願書に添付した明細書及び特許請求の範囲に記載された事項の範囲内においてするものであり、訂正事項1によって本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1の「フッ素系両性界面活性剤」が限定されたことによって、実質的に特許請求の範囲が拡張・変更されているといえるものでもないから、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5、6項の規定に適合する。
訂正事項2は、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1の「フッ素系アニオン界面活性剤」について、発明の詳細な説明の【0020】の記載に基づき「前記フッ素系アニオン界面活性剤は下記の一般式(2)
Rf-X-Yb (2)
(式中、Rf、Xは、一般式(1)で示されたものと同じであり、Ybはアニオン基を表す。)で表され」と限定し、さらに請求項1の記載を引用する請求項2~4も同様に訂正するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項2は、発明の詳細な説明の【0020】の記載に基づき、願書に添付した明細書及び特許請求の範囲に記載された事項の範囲内においてするものであり、訂正事項2によって本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1の「フッ素系アニオン界面活性剤」が限定されたことによって、実質的に特許請求の範囲が拡張・変更されているといえるものでもないから、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5、6項の規定に適合する。
訂正事項3は、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1の「フッ素系ノニオン界面活性剤」について、発明の詳細な説明の【0023】の記載に基づき「前記フッ素系ノニオン界面活性剤は下記の一般式(3)
Rf-X-Yc (3)
(式中、Rf、Xは、一般式(1)で示されたものと同じであり、Ycはノニオン基を表す。)で表され」と限定し、さらに請求項1の記載を引用する請求項2~4も同様に訂正するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項3は、発明の詳細な説明の【0023】の記載に基づき、願書に添付した明細書及び特許請求の範囲に記載された事項の範囲内においてするものであり、訂正事項3によって本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1の「フッ素系ノニオン界面活性剤」が限定されたことによって、実質的に特許請求の範囲が拡張・変更されているといえるものでもないから、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5、6項の規定に適合する。
イ 独立特許要件について
本件特許異議申立においては、請求項1~4に対して特許異議の申立てがなされているので、訂正事項1~3に関して、特許法第120条の5第9項に読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する独立特許要件は、課されない。
ウ 小括
以上のとおり、訂正事項1~3は、いずれも、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、同法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5、6項の規定に適合するものである。
(2) 訂正事項4について
ア 訂正の目的の適否、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項4は、特許請求の範囲の請求項5における「請求項1~4のいずれかに記載の曇り止め剤を不織布に含浸させたメガネクリーナー。」を「(A)フッ素系両性界面活性剤またはフッ素系アニオン界面活性剤、および(B)フッ素系ノニオン界面活性剤を含有する曇り止め剤を不織布に含浸させたメガネクリーナー。」に訂正しようとするものであり、訂正前後の記載を対比すると、訂正後の「(A)フッ素系両性界面活性剤またはフッ素系アニオン界面活性剤、および(B)フッ素系ノニオン界面活性剤を含有する曇り止め剤」という事項は、訂正前の「請求項1~4のいずれかに記載の曇り止め剤」のうち、「請求項1に記載の曇り止め剤」に対応するものであると認められる。
そうすると、訂正事項4は、請求項5において引用する請求項が「1~4」であったものを「1」のみに減縮するとともに、当該減縮後の発明を独立形式に改めることを目的とするものであると認められるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する、特許請求の範囲の減縮、及び、同条同項ただし書第4号に規定する、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。
また、訂正事項4は、引用する請求項を一部削除するとともに、その記載を独立形式に改めることを目的とするものであるから、願書に添付した明細書及び特許請求の範囲に記載された事項の範囲内においてするものであり、実質的に特許請求の範囲を拡張・変更するものでもなく、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5、6項の規定に適合する。
イ 独立特許要件について
本件特許異議の申立てにおいては、請求項5に対して申立てがなされていない。また、上記アのとおり、訂正事項4に係る訂正の目的は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する、特許請求の範囲の減縮を含むものである。
そこで、訂正事項4に係る訂正が特許法第120条の5第9項に読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する要件(いわゆる独立特許要件)を満足するか検討する。
(ア) 訂正事項4に係る訂正後の発明
訂正事項4に係る訂正後の請求項5に係る発明(以下、「訂正発明5」ともいう。)は、以下のとおりのものである。
<訂正発明5>
「(A)フッ素系両性界面活性剤またはフッ素系アニオン界面活性剤、および(B)フッ素系ノニオン界面活性剤を含有する曇り止め剤を不織布に含浸させたメガネクリーナー。」
(イ) 進歩性について
a 引用する刊行物
特開平5-107401号公報(異議申立人が提出した甲第1号証。以下、「甲1」という。)
特開平4-211461号公報(異議申立人が提出した甲第3号証。以下、「甲3」という。)
b 刊行物に記載されている事項
(a) 甲1の記載事項
甲1には以下の事項が記載されている。
「【請求項1】 フッ化炭素系界面活性剤0.5~20重量%を含有することを特徴とするプラスチックレンズ用防曇剤。」
「【0006】本発明の目的は、前記課題を解決することにある。すなわち、本願発明の目的は、水焼け防止レンズに防曇性を付与することができ、しかもそのような性能を長時間に渡って持続させることのできる防曇剤を提供することにある。
【0007】
【課題を解決する手段】前記課題を解決するための本発明は、フッ化炭素系界面活性剤0.5~20重量%を含有することを特徴とするプラスチックレンズ用防曇剤である。前記フッ化炭素系界面活性剤としては、疎水性基としてフッ化炭素基を有する界面活性剤であれば特に制限がなく、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤および両性界面活性剤のいずれであっても良い。」
「【0009】フッ化炭素系界面活性剤の親水基として、-COOM(ただし、Mは水素原子、ナトリウム、カリウム等の金属原子を表す。]、-(OCH2 CH2 )m OCH2 COOM[ただし、Mは前記と同様の意味を表す。mは整数を表す。]、-CON(CH3)CH2 COOM[ただし、Mは前記と同様の意味を表す。]、-SO3 M[ただし、Mは前記と同様の意味を表す。]、-COO(CH2)mSO3 M[ただし、Mおよびmは前記と同様の意味を表す。]、-CON(CH3)CH2 SO3 M[ただし、Mは前記と同様の意味を表す。]、-OSO3 M[ただし、Mは前記と同様の意味を表す。]、>CHOSO3 M[ただし、Mは前記と同様の意味を表す。]、-(OCH2 CH2 )m OSO3 M[ただし、Mは前記と同様の意味を表す。]、-CONHCH2CH2 OSO3 M[ただし、Mは前記と同様の意味を表す。]、-OP(=O)(OH)等の種々のアニオン系親水性基を有するアニオン系界面活性剤、-NH2 、-CONHCH2CH2NR2 [ただし、Rは低級アルキル基を表す。]、-NR3+X-[ただし、4個のRは水素原子、アルキル基またはアリル基を示し、互いに同一であっても相違しても良い。]、エーテル結合を有する四級アンモニウム塩基、アミド結合を有する四級アンモニウム塩基等のカチオン系親水性基を有するカチオン系界面活性剤、ポリオキシエチレンエーテル型非イオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルおよびアルキルアリルエーテル型非イオン界面活性剤、エーテルエステル型非イオン界面活性剤等を挙げることができる。
【0010】本発明における好ましいフッ化炭素系界面活性剤としては、フッ化炭素基を有する界面活性剤であり、その中でも、化1、化2、化3、化4、化5、化6、化7および化8で示される構造を有する界面活性剤を挙げることができる。
【0011】
【化1】
【0019】上記式において、RfはCnF2n+1(ただし、nは5~10)で表されるフッか炭素基を表し、RはCnH2n+1(ただし、nは1~8)で表されるアルキル基を表す。
【0020】前記構造で示されるフッ化炭素系界面活性剤は、三菱マテリアル(株)製のエフトップシリーズ、ダイキン工業(株)製のユニダインシリーズ、大日本インキ化学工業(株)製のメガファクタシリーズ、日本油脂(株)製のユニセーフHシリーズとして市販されている。前記例示の各種フッ化炭素系界面活性剤は、一種を単独で、または、二種以上を併用することもできる。」
「【0028】
【実施例】以下に、本発明の実施例と比較例とを示す。
(実施例1~12、比較例1~4)秤量23g/m2のティッシュペーパー(21cm×12cm)に、表1a、表1b、および表1cとに示した配合の防曇剤を含浸させて、プラスチックレンズに、塗布した後、新しいティッシュペーパーで前記レンズ表面のプラスチックレンズ用防曇剤をふき上げる操作を行なった。このプラスチックレンズ用防曇剤を塗布し、ふき取った後の、各レンズにおいて、以下に示す各評価項目について各評価方法によりプラスチックレンズ用防曇剤の効果を評価した。
【0029】実施例に用いるプラスチックレンズ用防曇剤を表1aおよび表1bに示し、この表1aおよび表1bに記載した配合1~12のプラスチックレンズ用防曇剤ををそれぞれ実施例1~12に用いた。この実施例1~12の結果を表2aおよび表2bに示した。この表1aにおける配合1~7は、一種類のフッ化炭素系界面活性剤を含有したプラスチックレンズ用防曇剤、表1bにおける配合8~9は、二種類のフッ化炭素系界面活性剤を含有するプラスチックレンズ用防曇剤、表1bにおける配合10~12はフッ化炭素系界面活性剤と従来の界面活性剤とを含有するプラスチックレンズ用防曇剤をそれぞれ示している。」
「【0035】以上の実施例と比較例を行なった結果、本発明のフッ化炭素系界面活性剤を含有する防曇剤は、上記プラスチックレンズに用いた場合、全ての評価項目において、良い結果を得ることができた。このことより、本発明の防曇剤は、優れた防曇効果と、この効果を長時間持続させることができることが証明された。また、本発明の防曇剤において、実施例1~12と比較例1~2との結果より、界面活性剤の好適な含有範囲は、0.5~20重量%であることが確認された。
【0036】本発明は、上記の実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲で適宜に変形して実施することができる。
【0037】
【表1a】
【0038】
【表1b】
【0039】
【表1c】
【0040】
【表2a】
【0041】
【表2b】
」
(b) 甲3の記載事項
甲3には以下の事項が記載されている。
「【請求項1】 下記に示したブロック共重合体(a)、下記に示した光重合性化合物(b)、前記ブロック共重合体(a)中の疎水性重合体部分に対してよりも親水性重合体部分に対して良溶剤である極性溶剤(c)及び光重合開始剤(d)からなり、固形分重量比が前記(a)成分/(b)成分=10/90~90/10であることを特徴とする紫外線硬化型防曇剤組成物。
(a)成分
下記一般式(1)又は化1で表されるN置換又は非置換の(メタ)アクリルアミド誘導体、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルから選ばれる親水性単量体の1種以上70~99重量%、グリシジル基、アミノ基、カルボキシル基、スルホン酸基、酸無水物基のいずれかの官能基を有するラジカル重合性単量体からなるA群から選ばれる単量体の1種以上1~30重量%より形成される親水性重合体部分と、上記A群から選ばれる単量体1~30重量%及びA群単量体と共重合性を有する疎水性単量体の1種以上70~99重量%より形成される疎水性重合体部分からなり、親水性重合体部分と疎水性重合体部分の重量比率が50/50~95/5であるブロック共重合体。
CH2=CR1CONR2R3 ・・・(1)
上式において、R1は水素原子又はメチル基、R2は水素原子、直鎖状又は分岐状のCnH2n+1、R3は水素原子、直鎖状又は分岐状のCnH2n+1、N,N-ジメチルアミノプロピル基又は-C(CH3)2CH2COCH3を表す。但し、nは1~4の整数である。
【化1】
(化1とその説明の記載を省略)
(b)成分
CH2=CR1COO(CH2CR4HO)nOCCR1=CH2 ・・(2)上式において、R1,R4は水素原子又はメチル基を表し、nは1~30の整数である。
【請求項2】 請求項1に記載のブロック共重合体(a)、下記に示す光重合性化合物(b´)、請求項1に記載の極性溶剤(c)、光重合開始剤(d)及び界面活性剤(e)からなり、固形分重量比が前記(a)成分:(b´)成分:(e)成分=100/10~900/0.5 ~300であることを特徴とする紫外線硬化型防曇剤組成物。
(b´)成分
下記化2で表される光重合性化合物又はこれと請求項1に記載の一般式(2)で表される光重合性化合物との混合物。
【化2】
(化2の記載を省略)
【請求項3】 請求項2に記載の界面活性剤が含フッ素界面活性剤であることを特徴とする紫外線硬化型防曇剤組成物。」
「【0010】本発明は上記問題点を解消するためになされたものであって、その目的は、防曇性、塗膜強度、密着性及び塗膜外観に優れているとともに、塗膜形成速度の迅速化を図ることができる紫外線硬化型防曇剤組成物及び防曇塗膜の作成方法を提供することにある。」
「【0035】第1の発明においては、必要に応じてこの界面活性剤を配合することができる。第2の発明においては、不可欠な成分として使用される。この界面活性剤としては、一般に使用される非イオン系界面活性剤、陰イオン系界面活性剤、陽イオン系界面活性剤、両性イオン系界面活性剤等から選択して使用される。これらのうち、防曇性の長期間にわたる持続性の点から、非イオン系界面活性剤又は陰イオン系界面活性剤が好ましく、非イオン系界面活性剤と陰イオン系界面活性剤の組合わせがさらに好ましい。
【0036】第3の発明においては、界面活性剤はフッ素を含有する界面活性剤であることが必要である。特に、一般に使用される前記界面活性剤の炭化水素基(アルキル基)がパーフルオロアルキル基に置換された含フッ素界面活性剤が好適に使用される。含フッ素界面活性剤は、表面活性能が非常に高いため、紫外線硬化により塗膜が形成される際、塗膜の表面近傍へ高濃度に濃縮されるという特性がある。この含フッ素界面活性剤は、適正量の存在下で塗膜表面のレベリング性を一層改善し、塗膜外観をさらに良好なものとする。なお、塗膜形成時に一旦表面近傍に濃縮された含フッ素界面活性剤が、その後塗膜表面に移行する際の挙動は前述の一般の界面活性剤の場合と同一と推定される。」
「【0040】両性イオン系界面活性剤としては、例えばジメチルアルキルラウリルベタイン、ジメチルアルキルステアリルベタイン等の脂肪酸型両性界面活性剤、ジメチルアルキルスルホベタインのようなスルホン酸型両性界面活性剤、アルキルグリシン等が使用される。含フッ素界面活性剤としては、非イオン系、アニオン系、カチオン系、両性イオン系のいずれのものを使用することもできる。非イオン系のものとしては、CPF2P+1C2H4O(C2H4O)qH(pは6~12の整数、qは3~30の整数)、CPF2P+1SO2N(CrH2r+1)(C2H4O)qH(pは6~12の整数、qは3~30の整数、rは1~4の整数)、CPF2P+1SO3H(pは6~12の整数)、CPF2P+1CO2H(pは6~12の整数)、CPF2P+1SO2N(CrH2r+1)C2H4OSO3H(pは6~12の整数、2rは1~4の整数)、CPF2P+1O-C6H4-CO2(C2H4O)qRS(pは6~12の整数、qは3~30の整数、RSは炭素数が1~16のアルキル基、フェニル基又は炭素数が1~16のアルキル基で置換されたアルキルフェニル基)、CPF2P+1O-C6H3-[CO2(C2H4O)qRS]2(pは6~12の整数、qは3~30の整数、RSは炭素数が1~16のアルキル基、フェニル基又は炭素数が1~16のアルキル基で置換されたアルキルフェニル基)、CPF2P+1C2H4OCONHC6H4(CH3)NHOCO(C2H4O)qH(pは6~12の整数、qは3~30の整数)等があげられる。
【0041】これらのうち、 CPF2P+1C2H4O(C2H4O)qH(pは6~10の整数、qは10~30の整数)、CPF2P+1SO2N(CrH2r+1)(C2H4O)qH(pは6~10の整数、qは10~30の整数、rは1~3の整数)が特に好ましい。アニオン系のものとしては、CPF2P+1SO3M(pは6~12の整数、MはLi,Na,K,NH4,NH3C2H4OH)、CPF2P+1CO2M(pは6~12の整数、MはLi,Na,K,NH4,NH3C2H4OH)、CPF2P+1C2H4O(C2H4O)qSO3M(pは6~12の整数、qは3~30の整数、MはLi,Na,K,NH4,NH3C2H4OH)等があげられ、いずれも好適に用いられる。
【0042】カチオン系のものとしては、 CPF2P+1C2H4SC2H4CO2C2H4N(CrH2r+1)3X(pは6~12の整数、rは1~4の整数、XはI、Br、Cl)、CPF2P+1CONHCtH2tN(CrH2r+1)3X(pは6~12の整数、rは1~4の整数、tは1~5の整数、XはI、Br、Cl)、CPF2P+1SO2NHCtH2tN(CrH2r+1)3X(pは6~12の整数、rは1~4の整数、tは1~5の整数、XはI、Br、Cl)等があげられる。」
「【0046】なお、(a)成分の配合割合は、少ないと密着性等が低下し、多いと塗膜強度等が低下するが、上記(b)成分及び(d)成分の配合割合が設定されることにより相対量が決定される。また、第3の発明において、(e)成分である界面活性剤に占める含フッ素界面活性剤の比率は10重量%以上であることが好ましく、10~80重量%であることがさらに好ましい。10重量%未満では、前述したような含フッ素界面活性剤の効果が十分に発現されにくい。また、塗膜のレベリング性等の外観上の点から、非フッ素系界面活性剤との併用が好ましい。」
「【0055】第3の発明では、界面活性剤としてフッ素を含有する界面活性剤を用いたことにより、紫外線硬化時にその表面活性能に基づいて塗膜表面に濃縮される。その結果、防曇特性が一層向上し、特に低温環境下において優れた防曇特性を発揮する。しかも、塗膜表面に濃縮された含フッ素界面活性剤が適正量の存在下で塗膜表面のレベリング性を改善するため、塗膜外観がさらに良好となる。」
「【0081】
(中略)
(実施例12~29及び比較例21~34)前記参考例1~16で合成した重合体溶液に表12~15に示した化合物を加えた。
(中略)
【0082】
(中略)
基材の種類、加熱乾燥時間及び紫外線照射時間を表12~15に併せて示す。
【0083】なお、表12~15における略号は次の意味を表す。
溶剤
MC:メチルセロソルブ、MK:メチルエチルケトン、TL:トルエン
架橋剤
光重合性化合物を意味し、次の化合物を表す。
(1)(当審注:原文は、「○の中に1」と表記されている。):ペンタエリスリトールトリアクリレート、新中村化学工業株式会社製の商品名NKエステルA-TMM3
(2)(当審注:原文は、「○の中に2」と表記されている。):ペンタエリスリトールテトラアクリレート、新中村化学工業株式会社製の商品名NKエステルA-TMMT
(3)(当審注:原文は、「○の中に3」と表記されている。):ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、SARTOMER Company社製の商品名サートマーSR 367
(4)(当審注:原文は、「○の中に4」と表記されている。):ポリエチレングリコールジアクリレート、新中村化学工業株式会社製の商品名NKエステル200
(5)(当審注:原文は、「○の中に5」と表記されている。):ポリエチレングリコールジアクリレート、新中村化学工業株式会社製の商品名NKエステル600
(6)(当審注:原文は、「○の中に6」と表記されている。):ポリプロピレングリコールジアクリレート、新中村化学工業株式会社製の商品名NKエステルAPG400
(7)(当審注:原文は、「○の中に7」と表記されている。):ポリエチレングリコールジメタクリレート、新中村化学工業株式会社製の商品名NKエステル23G
(8)(当審注:原文は、「○の中に8」と表記されている。): ポリプロピレングリコールジメタクリレート、新中村化学工業株式会社製の商品名NKエステル9PG
(9)(当審注:原文は、「○の中に9」と表記されている。):エチレングリコールジメタクリレート、SARTOMER Company社製の商品名サートマーSR 206界面活性剤
(a) :ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、日本油脂株式会社製商品名ノニオンHS-212
(b) :ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、日本油脂株式会社製商品名ノニオンHS-210
(c) :ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、日本油脂株式会社製商品名ラピゾール B-80
(d) :ジメチルアルキル(ヤシ)ベタイン、日本油脂株式会社製商品名アノンBF
光重合開始剤
(1) :2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、メルク・ジャパン社製の商品名ダイロキュア1173
基材
PVC :ポリ塩化ビニル、PC:ポリカーボネート、PMMA:ポリメチルメタクリレート」
「【0099】従って、本発明の紫外線硬化型防曇剤組成物は、流水接触や温水浸漬等を行っても優れた防曇性を発揮することができ、水中ゴーグルをはじめ、ヘルメットシールド、計器カバー、家屋や車の窓等の表面に防曇性を付与するために好適である。
(実施例30~37及び比較例38~40)前記参考例2、3、11及び参考例13、14、16で合成した重合体溶液に表20に示した化合物を加えた後、実施例12と同様にして紫外線硬化型防曇剤組成物の調製と防曇塗膜の作成を行った。表20の架橋剤及び非フッ素系界面活性剤の種類と添加量の表示法は、前記実施例12~29の場合と同じである。また、光重合開始剤の種類、加熱乾燥時間と紫外線照射時間の表示法も実施例12の場合と同じである。
【0100】なお、含フッ素界面活性剤として、下記のものを使用した。表20中の表示法は非フッ素系界面活性剤の場合と同じである。
(e)パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物(EO付加モル数は約10)、大日本インキ化学株式会社製商品名メガファックF-142D
(f)パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物(EO付加モル数は約20)、旭ガラス株式会社製商品名サーフロンS-145
(g)パーフルオロアルキルカルボン酸のカリウム塩、住友スリーエム株式会社製商品名フロラードFC-129
(h)パーフルオロアルキルスルホン酸のアンモニウム塩、住友スリーエム株式会社製商品名フロラードFC-93
【0101】
【表20】
【0102】このようにして得られた各塗膜について、下記に示す評価方法により物性を評価した。その結果を表21に示す。」
「【0103】
【表21】
」
c 甲1に記載されている発明
上記b(a)によれば、甲1(特に、【請求項1】、実施例8、9)の記載に基づき、以下の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
<甲1発明>
「フッ化炭素系界面活性剤0.5~20重量%を含有することを特徴とするプラスチックレンズ用防曇剤であって、
フッ化炭素系界面活性剤が
【化4】(【化4】の記載を省略。)において、m=1、n=3で表される、フッ化炭化水素系界面活性剤3.0重量%と、【化1】(【化1】の記載を省略。)において、M=NH4で表される、フッ化炭化水素系界面活性剤1.5重量%と、イオン交換水95.5重量%からなるものであるか、
または、
【化3】(【化3】の記載を省略。)において、n=10で表される、フッ化炭化水素系界面活性剤2.0重量%と、【化5】(【化5】の記載を省略。)において、M=Naで表される、フッ化炭化水素系界面活性剤3.0重量%と、イソプロピルアルコール20.0重量%と、イオン交換水75.0重量%からなるものである、
フッ化炭素系界面活性剤」
d 対比
訂正発明5と甲1発明を対比する。
甲1発明の「【化4】において、m=1、n=3で表される、フッ化炭化水素系界面活性剤」は、甲1の【0009】、【0014】を参照すると、ポリオキシエチレンエーテル型非イオン性界面活性剤であるから、訂正発明5の「(B)フッ素系ノニオン界面活性剤」に相当する。
甲1発明の「【化1】において、M=NH4で表される、フッ化炭化水素系界面活性剤」は、甲1の【0009】、【0011】を参照すると、アニオン系親水基を有するアニオン系界面活性剤であるから、訂正発明5の「フッ素系アニオン界面活性剤」に相当する。
甲1発明の「【化3】において、n=10で表される、フッ化炭化水素系界面活性剤」は、甲1の【0009】、【0014】を参照すると、ポリオキシエチレンエーテル型非イオン性界面活性剤であるから、訂正発明5の「(B)フッ素系ノニオン界面活性剤」に相当する。
甲1発明の「【化5】において、M=Naで表される、フッ化炭化水素系界面活性剤」は、甲1の【0009】、【0011】を参照すると、アニオン系親水基を有するアニオン系界面活性剤であるから、訂正発明5の「フッ素系アニオン界面活性剤」に相当する。
訂正発明5の「曇り止め剤」は、本件特許の明細書の発明の詳細な説明の【0001】によれば、「ガラスまたはプラスチック等の硬質表面の曇り止め剤に関する」ものであるから、甲1発明の「プラスチックレンズ用防曇剤」は、訂正発明5の「曇り止め剤」に相当する。
したがって、訂正発明5と甲1発明は、「(A)フッ素系両性界面活性剤またはフッ素系アニオン界面活性剤、および(B)フッ素系ノニオン界面活性剤を含有する曇り止め剤に係る物品」である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点1>
物品について、訂正発明5は、「曇り止め剤を不織布に含浸させたメガネクリーナー」であるのに対し、甲1発明は、「曇り止め剤」である点
e 相違点の検討
上記b(a)のとおり、甲1には、甲1発明の曇り止め剤について、「本願発明の目的は、水焼け防止レンズに防曇性を付与することができ、しかもそのような性能を長時間に渡って持続させることのできる防曇剤を提供することにある」(【0006】)とは記載されているが、甲1発明の曇り止め剤を不織布に含浸させることや、メガネクリーナーの製造に使用することについては記載も示唆もない。
また、上記b(b)のとおり、甲3にも、甲3に記載されている紫外線硬化型防曇剤組成物(【請求項1】~【請求項3】)について、「本発明は上記問題点を解消するためになされたものであって、その目的は、防曇性、塗膜強度、密着性及び塗膜外観に優れているとともに、塗膜形成速度の迅速化を図ることができる紫外線硬化型防曇剤組成物及び防曇塗膜の作成方法を提供することにある」(【0010】)と記載されているが、曇り止め剤を不織布に含浸させることや、メガネクリーナーの製造に使用することについては記載も示唆もない。
むしろ、甲3に記載されている防曇剤組成物は紫外線硬化型のものであるから、不織布に含浸させて硬化した場合には、不織布が硬化して布として使用することができなくなる(メガネクリーナーを製造することができない)ことが明らかであり、このことを踏まえれば、曇り止め剤には様々な種類のものが存在するのであって、必ずしも不織布に含浸させてメガネクリーナーとすることができるものばかりではないことが理解できる。
また、甲1発明は、曇り止め剤であるから、これを曇り止めの用途に使用する物品の製造に使用するのであればともかく、メガネクリーナーのようなメガネを洗浄する用途に使用する物品の製造に使用することを容易に着想し得るとはいえない。
そして、本件特許の明細書の発明の詳細な説明において、訂正発明5は、「(A)フッ素系両性界面活性剤またはフッ素系アニオン界面活性剤、および(B)フッ素系ノニオン界面活性剤を含有するので、均一塗布性を維持したうえで、曇り止め効果を長時間持続することができる」(【0014】)という効果を奏するものであると説明されているとともに、その実施例が、「(A)フッ素系両性界面活性剤またはフッ素系アニオン界面活性剤」、または、「(B)フッ素系ノニオン界面活性剤」のいずれかを欠く比較例と比べて、「曇り止め効果」の点で優れていること(【表2】)も理解できる。
したがって、訂正発明5は、甲1に記載された発明及び甲1、3に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとは認められない。
f 小括
したがって、訂正発明5は、甲1に記載された発明及び甲1、3に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとは認められないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。
(ウ) 独立特許要件のまとめ
以上のとおり、訂正発明5は、甲1に記載された発明及び甲1、3に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとは認められないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。
また、他に、訂正発明5が独立して特許を受けることができないものであるといえる理由を発見しない。
ウ 訂正事項4のまとめ
以上のとおり、訂正事項4は、特許法第120条の5第2項第1、4号に掲げる事項を目的とするものであり、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第5~7項の規定に適合するものである。
(3) 小括
以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項第1、4号に掲げる事項を目的とするものであり、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5、6項及び同法同条の5同項において読み替えて準用する同法第126条第7項の規定に適合するものである。
また、本件訂正後の請求項5については、一群の請求項を構成する請求項1~4とは別途訂正することを認める。
したがって、本件特許の特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~4〕、5について訂正することを認める。
第3 本件訂正発明
上記第2のとおり、本件訂正は認められたので、本件特許の特許請求の範囲の請求項1~5に係る発明(以下、「本件訂正発明1」などといい、まとめて「本件訂正発明」ともいう。)は、その特許請求の範囲の請求項1~5に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。
「【請求項1】
(A)フッ素系両性界面活性剤またはフッ素系アニオン界面活性剤、および(B)フッ素系ノニオン界面活性剤を含有する曇り止め剤であって、
前記フッ素系両性界面活性剤は下記の一般式(1)
Rf-X-Ya (1)
(式中、Rfはフルオロアルキル基またはフルオロアルケニル基を表し、Xは、アルキレン基またはアリーレン基であって、スルホアミド基、カルボニル基、オキサ基を有していても良い。Yaは両性イオン基を表す。)で表され、
前記フッ素系アニオン界面活性剤は下記の一般式(2)
Rf-X-Yb (2)
(式中、Rf、Xは、一般式(1)で示されたものと同じであり、Ybはアニオン基を表す。)で表され、
前記フッ素系ノニオン界面活性剤は下記の一般式(3)
Rf-X-Yc (3)
(式中、Rf、Xは、一般式(1)で示されたものと同じであり、Ycはノニオン基を表す。)で表される、曇り止め剤。
【請求項2】
フッ素系両性界面活性剤またはフッ素系アニオン界面活性剤(A)の濃度が0.1~20重量%である請求項1に記載の曇り止め剤。
【請求項3】
フッ素系ノニオン界面活性剤(B)の濃度が0.01~20重量%である請求項1または2に記載の曇り止め剤。
【請求項4】
フッ素系両性界面活性剤またはフッ素系アニオン界面活性剤(A)は、パーフルオロアルキル基またはパーフルオロアルケニル基を有する請求項1~3のいずれかに記載の曇り止め剤。
【請求項5】
(A)フッ素系両性界面活性剤またはフッ素系アニオン界面活性剤、および(B)フッ素系ノニオン界面活性剤を含有する曇り止め剤を不織布に含浸させたメガネクリーナー。」
第4 取消理由通知に記載した取消理由について
1 取消理由の概要
当審が令和元年12月2日付けで通知した取消理由は、以下の取消理由1~3である。また、取消理由1、2で引用する刊行物、及び、取消理由3で指摘する「下記の点」の概略は、以下のとおりである。
<取消理由>
取消理由1
本件特許の請求項1~4に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、本件特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
取消理由2
本件特許の請求項1~4に係る発明は、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が、その出願前日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、容易に発明をすることができたものであるから、本件特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
取消理由3
本件特許は、その特許請求の範囲の記載が、下記の点で特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものである。
<取消理由1、2で引用する刊行物>
甲1 特開平5-107401号公報(特許異議申立人が提出した甲第1号証。以下、「甲1」という。)
甲3 特開平4-211461号公報(特許異議申立人が提出した甲第3号証。以下、「甲3」という。)
なお、甲第1、3号証は、それぞれ、上記第2 2(2)イ(イ)aに記載した甲1、3である。
<取消理由3で指摘する「下記の点」の概略>
発明の詳細な説明には、本件特許発明の「フッ素系両性界面活性剤」について、アルキル鎖中の水素原子をフッ素原子に置換した両性界面活性剤であればいずれも使用することができ、その課題を解決することができる原理や作用機序などに関する説明が記載されていない。「フッ素系アニオン界面活性剤」および「フッ素系ノニオン界面活性剤」についても同様である。
また、本件特許発明の「フッ素系両性界面活性剤」として実施例で使用しているものは、「フッ素系両性界面活性剤:パーフルオロアルキル化合物、AGCセイミケミカル株式会社製「サーフロンS-233」」のみであり、「フッ素系アニオン界面活性剤」および「フッ素系ノニオン界面活性剤」についてもそれぞれ「フッ素系アニオン界面活性剤:パーフルオロアルキル化合物、AGCセイミケミカル株式会社製「サーフロンS-211」」、「フッ素系ノニオン界面活性剤:パーフルオロアルキル基含有エチレンオキシド付加物、AGCセイミケミカル株式会社製「サーフロンS-242」」のみに限られている。しかも、これらはいずれも商品名が記載されているだけであって、その化学構造が不明である。
そうすると、本件特許発明の「フッ素系両性界面活性剤」、「フッ素系アニオン界面活性剤」および「フッ素系ノニオン界面活性剤」としてそれぞれ実施例で具体的に使用しているものを選択した場合には、本件特許発明が解決しようとする課題を解決することができるとしても、実施例で具体的に使用しているものとは異なるものを使用する場合についてもその課題を解決することができるか否かは不明である(課題を解決することができるとはいえない)と認められる。
2 当審の判断
(1) 取消理由1、2について
ア 刊行物に記載されている事項及び刊行物に記載されている発明
甲1、3に記載されている事項は、上記第2 2 (2)イ(イ)bに記載したとおりである。
また、甲1に記載された発明は、上記第2 2 (2)イ(イ)cに記載したとおりであり、再掲すると以下のとおりである。
<甲1発明>
「フッ化炭素系界面活性剤0.5~20重量%を含有することを特徴とするプラスチックレンズ用防曇剤であって、
フッ化炭素系界面活性剤が
【化4】(【化4】の記載を省略。)において、m=1、n=3で表される、フッ化炭化水素系界面活性剤3.0重量%と、【化1】(【化1】の記載を省略。)において、M=NH4で表される、フッ化炭化水素系界面活性剤1.5重量%と、イオン交換水95.5重量%からなるものであるか、
または、
【化3】(【化3】の記載を省略。)において、n=10で表される、フッ化炭化水素系界面活性剤2.0重量%と、【化5】(【化5】の記載を省略。)において、M=Naで表される、フッ化炭化水素系界面活性剤3.0重量%と、イソプロピルアルコール20.0重量%と、イオン交換水75.0重量%からなるものである、
フッ化炭素系界面活性剤」
イ 本件訂正発明1について
本件訂正発明1と甲1発明を対比する。
甲1発明の「【化4】において、m=1、n=3で表される、フッ化炭化水素系界面活性剤」は、甲1の【0009】、【0014】を参照すると、ポリオキシエチレンエーテル型非イオン性界面活性剤であるから、本件訂正発明1の「(B)フッ素系ノニオン界面活性剤」に相当する。
甲1発明の「【化1】において、M=NH4で表される、フッ化炭化水素系界面活性剤」は、甲1の【0009】、【0011】を参照すると、アニオン系親水基を有するアニオン系界面活性剤であるから、本件訂正発明1の「フッ素系アニオン界面活性剤」に相当する。
甲1発明の「【化3】において、n=10で表される、フッ化炭化水素系界面活性剤」は、甲1の【0009】、【0014】を参照すると、ポリオキシエチレンエーテル型非イオン性界面活性剤であるから、本件訂正発明1の「(B)フッ素系ノニオン界面活性剤」に相当する。
甲1発明の「【化5】において、M=Naで表される、フッ化炭化水素系界面活性剤」は、甲1の【0009】、【0011】を参照すると、アニオン系親水基を有するアニオン系界面活性剤であるから、本件訂正発明1の「フッ素系アニオン界面活性剤」に相当する。
本件訂正発明1の「曇り止め剤」は、本件特許の明細書の発明の詳細な説明の【0001】によれば、「ガラスまたはプラスチック等の硬質表面の曇り止め剤に関する」ものであるから、甲1発明の「プラスチックレンズ用防曇剤」は、本件訂正発明1の「曇り止め剤」に相当する。
したがって、本件訂正発明1と甲1発明は、「(A)フッ素系両性界面活性剤またはフッ素系アニオン界面活性剤、および(B)フッ素系ノニオン界面活性剤を含有する曇り止め剤」である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点2>
「フッ素系アニオン界面活性剤」について、本件訂正発明1は、「一般式(2) Rf-X-Yb (2)」(化学構造式の説明の記載を省略する)で表されるものに特定されているのに対し、甲1発明は、「【化1】において、M=NH4で表される」もの(化学構造式の説明の記載を省略する)、あるいは、「【化5】において、M=Naで表される」もの(化学構造式の説明の記載を省略する)に特定されている点
<相違点3>
「フッ素系ノニオン界面活性剤」について、本件訂正発明1は、「一般式(3)Rf-X-Yc (3)」(化学構造式の説明の記載を省略する)で表されるものに特定されているのに対し、甲1発明は、「【化4】において、m=1、n=3で表される」もの(化学構造式の説明の記載を省略する)、あるいは「【化3】において、n=10で表される」もの(化学構造式の説明の記載を省略する)に特定されている点
相違点2について検討する。
甲1発明の「【化1】において、M=NH4で表される、フッ化炭化水素系界面活性剤」、あるいは、「【化5】において、M=Naで表される、フッ化炭化水素系界面活性剤」は、本件訂正発明1の「一般式(2) Rf-X-Yb (2)」という化学構造式に含まれている「-X-」という部分構造を備えていない化合物である点で、本件訂正発明1のフッ素系アニオン界面活性剤に該当しない。また、甲1、3には、本件訂正発明1の「一般式(2) Rf-X-Yb (2)」で表されるフッ素系アニオン界面活性剤は記載されていない。
そうすると、仮に当業者が甲1発明において、甲1発明の「【化1】において、M=NH4で表される、フッ化炭化水素系界面活性剤」、あるいは、「【化5】において、M=Naで表される、フッ化炭化水素系界面活性剤」を、他の界面活性剤に変更することを着想したとしても、まず、甲1に記載されている界面活性剤の中からその候補を選択するのであって、あえて、甲1にも甲3にも記載も示唆もない本件訂正発明1の「一般式(2) Rf-X-Yb (2)」で表されるフッ素系アニオン界面活性剤に変更することは、本件訂正発明1の「一般式(2) Rf-X-Yb (2)」で表されるフッ素系アニオン界面活性剤が仮に周知であったとしても、容易に着想しえたとはいえない。
相違点3について検討する。
甲1発明の「【化4】において、m=1、n=3で表される、フッ化炭化水素系界面活性剤」、あるいは、「【化3】において、n=10で表される、フッ化炭化水素系界面活性剤」は、本件訂正発明1の「一般式(3) Rf-X-Yc (3)」という化学構造式に含まれている「-X-」という部分構造を備えていない化合物である点で、本件訂正発明1のフッ素系ノニオン界面活性剤に該当しない。また、甲1、3には、本件訂正発明1の「一般式(3) Rf-X-Yc (3)」で表されるフッ素系アニオン界面活性剤は記載されていない。
そうすると、仮に当業者が甲1発明において、甲1発明の「【化4】において、m=1、n=3で表される、フッ化炭化水素系界面活性剤」、あるいは、「【化3】において、n=10で表される、フッ化炭化水素系界面活性剤」を、他の界面活性剤に変更することを着想したとしても、まず、甲1に記載されている界面活性剤の中からその候補を選択するのであって、あえて、甲1にも甲3にも記載も示唆もない本件訂正発明1の「一般式(3) Rf-X-Yc (3)」で表されるフッ素系アニオン界面活性剤に変更することは、本件訂正発明1の「一般式(3) Rf-X-Yc (3)」で表されるフッ素系アニオン界面活性剤が仮に周知であったとしても、容易に着想しえたとはいえない。
効果について検討する。
本件訂正発明1は、「(A)フッ素系両性界面活性剤またはフッ素系アニオン界面活性剤、および(B)フッ素系ノニオン界面活性剤を含有するので、均一塗布性を維持したうえで、曇り止め効果を長時間持続することができる」(【0014】)という効果を奏するものであると説明されているとともに、その実施例が、「(A)フッ素系両性界面活性剤またはフッ素系アニオン界面活性剤」、または、「(B)フッ素系ノニオン界面活性剤」のいずれかを欠く比較例と比べて、「曇り止め効果」の点で優れていること(【表2】)も理解できる。
以上によれば、本件訂正発明1は、甲1に記載された発明ではない。また、甲1に記載された発明及び甲1、3に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとは認められない。
ウ 本件訂正発明2~4について
本件訂正発明2~4は、本件訂正発明1を引用し、さらに限定したものに該当する。
また、上記イのとおり、本件訂正発明1は、甲1に記載された発明ではあるとも、また、甲1に記載された発明及び甲1、3に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとも認められないものである。
そうすると、さらに検討するまでもなく、本件訂正発明2~4は、本件訂正発明1と同様の理由により、甲1に記載された発明ではあるとも、また、甲1に記載された発明及び甲1、3に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとも認められない。
エ 小括
以上のとおりであるから、本件訂正発明1~4は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとも、また、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとも認められないので、本件特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものであるとはいえない。
(2) 取消理由3について
ア 判断手法
特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件(いわゆるサポート要件)に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らして当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
以下、この観点に沿って検討する。
イ 発明の詳細な説明の記載
本件特許の明細書の発明の詳細な説明には、以下の記載がある。
「【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、ガラスまたはプラスチック等の硬質表面の曇りを持続的に防止する曇り止め剤および洗浄剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討したところ、特定の2種のフッ素系界面活性剤を併用すると、フッ素系界面活性剤の使用量を大きく低減しても、曇り止め効果が長時間持続することを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、(A)フッ素系両性界面活性剤またはフッ素系アニオン界面活性剤、および(B)フッ素系ノニオン界面活性剤を含有する曇り止め剤に関する。
【0009】
フッ素系両性界面活性剤またはフッ素系アニオン界面活性剤(A)の濃度が0.1~20重量%であることが好ましい。
【0010】
フッ素系ノニオン界面活性剤(B)の濃度が0.01~20重量%であることが好ましい。
【0011】
フッ素系両性界面活性剤またはフッ素系アニオン界面活性剤(A)は、パーフルオロアルキル基またはパーフルオロアルケニル基を有することが好ましい。
【0012】
また、本発明は、(A)フッ素系両性界面活性剤またはフッ素系アニオン界面活性剤、および(B)フッ素系ノニオン界面活性剤を含有する洗浄剤に関する。
【0013】
また、本発明は、前記曇り止め剤または前記洗浄剤を不織布に含浸させたメガネクリーナーに関する。」
「【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の曇り止め剤および洗浄剤は、(A)フッ素系両性界面活性剤またはフッ素系アニオン界面活性剤、および(B)フッ素系ノニオン界面活性剤を含有する。
【0016】
フッ素系両性界面活性剤(A)は、界面活性剤中のアルキル鎖中の水素原子をフッ素原子に置換した両性界面活性剤である。たとえば、下記の一般式(1)
Rf-X-Ya(1)
(式中、Rfはフルオロアルキル基またはフルオロアルケニル基を表し、Xは、アルキレン基またはアリーレン基であって、スルホアミド基、カルボニル基、オキサ基を有していても良い。Yaは両性イオン基を表す。)で表される化合物が挙げられる。
【0017】
Rfで表されるフルオロアルキル基またはフルオロアルケニル基の炭素数は、特に限定されないが、好ましくは3~20であって、直鎖、分岐または環状構造のいずれでもよいが、容易に入手できることから直鎖構造が好ましい。フルオロアルキル基またはフルオロアルケニル基のフッ素の置換数も、特に限定されないが、全ての水素原子がフッ素に置換されたパーフルオロアルキル基またはパーフルオロアルケニル基が好ましい。
【0018】
Yaで表される両性イオン基は特に限定されないが、例えばベタイン基、スルホベタイン基、アミンオキサイド基等が挙げられる。
【0019】
フッ素系両性界面活性剤(A)の組成物中の濃度は特に限定されないが、好ましくは30重量%以下、より好ましくは0.1~20重量%、さらに好ましくは0.3~10重量%である。0.1重量%未満では、曇り止め効果が十分に発揮できない虞があり、30重量%を超えると、経時安定性が損なわれる虞があると共に、コストの面からも好ましくない。
【0020】
フッ素系アニオン界面活性剤(A)は、界面活性剤中のアルキル鎖中の水素原子をフッ素原子に置換したアニオン界面活性剤である。たとえば、一般式(2)
Rf-X-Yb (2)
(式中、Rf、Xは、一般式(1)で示されたものと同じであり、Ybはアニオン基を表す。)で表される化合物が挙げられる。
【0021】
Ybで表されるアニオン基としては特に限定されないが、例えばカルボキシル基、硫酸基、スルホン基、リン酸基などが挙げられる。
【0022】
フッ素系アニオン界面活性剤(A)の組成物中の濃度は特に限定されないが、好ましくは30重量%以下、より好ましくは0.1~20重量%、さらに好ましくは0.3~10重量%である。0.1重量%未満では、曇り止め効果が十分に発揮できない虞があり、30重量%を超えると、経時安定性が損なわれる虞があると共に、コストの面からも好ましくない。
【0023】
フッ素系ノニオン界面活性剤(B)は、界面活性剤中のアルキル鎖中の水素原子をフッ素原子に置換したノニオン界面活性剤である。たとえば、下記の一般式(3)
Rf-X-Yc (3)
(式中、Rf、Xは、一般式(1)で示されたものと同じであり、Ycはノニオン基を表す。)で表される化合物が挙げられる。
【0024】
Ycで表されるノニオン基としては特に限定されないが、例えば、炭素数2~20のオキシアルキレン基(アルキレン基の水素原子はフッ素原子で置換されていても良い。)等が挙げられる。
【0025】
フッ素系ノニオン界面活性剤(B)の組成物中の濃度は特に限定されないが、好ましくは30重量%以下、より好ましくは0.01~20重量%、さらに好ましくは0.1~10重量%である。0.01重量%未満では、曇り止め効果が十分に発揮できない虞があり、30重量%を超えると、経時安定性が損なわれる虞があると共に、コストの面からも好ましくない。
【0026】
フッ素系両性界面活性剤またはフッ素系アニオン界面活性剤(A)、およびフッ素系ノニオン界面活性剤(B)の組成物中の合計濃度は特に限定されないが、好ましくは60重量%以下、より好ましくは0.1~40重量%、さらに好ましくは0.3~20重量%である。0.1重量%未満では、曇り止め効果が十分に発揮できない虞があり、60重量%を超えると、経時安定性が損なわれる虞があると共に、コストの面からも好ましくない。なお、上限については、2重量%以下であっても効果を奏する。
【0027】
溶媒としては、例えば水、アルコール等が挙げられる。アルコールとしては、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、t-ブタノール等が挙げられる。水とアルコールは単独で用いてもよいが、油汚れ等の洗浄力および速乾性を両立させる点で混合して用いることが好ましい。
【0028】
水の組成物中の濃度は特に限定されないが、好ましくは99重量%以下、より好ましくは10~90重量%、さらに好ましくは20~80重量%である。アルコールの組成物中の濃度は特に限定されないが、好ましくは99重量%以下、より好ましくは10~90重量%、さらに好ましくは20~80重量%である。
【0029】
また、本発明の曇り止め剤および洗浄剤は、本発明の効果を損なわない範囲で、例えば溶媒、キレート剤、ビルダー、防腐剤、色素、香料、安定化剤、紫外線防止剤、アルカリ化剤、増粘剤、ハイドロトロープ剤、酵素、抗菌剤などを含有していてもよい。
【0030】
本発明の曇り止め剤または洗浄剤は硬質表面に塗布して使用する。硬質表面は特に限定されないが、例えばメガネレンズ、サングラスレンズ、携帯電話の画面、時計のガラス面、テレビやパソコンのガラス面、鏡等が挙げられる。表面にコーティング処理が施され、界面活性剤を均一に塗布し難い硬質表面に適用した場合でも、均一に塗布することができ、曇り止め効果を長時間持続することができる。
【0031】
本発明の曇り止め剤および洗浄剤は、例えば本発明の曇り止め剤または洗浄用組成物を不織布に含浸させる方法、曇り止め剤および洗浄剤をノズル付き容器、スプレー容器または吸液芯を有するペンタイプ容器等に充填する方法、刷毛で塗り広げる方法等で使用できる。この場合、硬質表面に塗布された曇り止め剤および洗浄剤は、別途乾いた不織布等を用いて塗り広げるように使用されても良い。これらの中でも、携帯性、拭き易さ、汚れのかきとり性などの点で、不織布に含浸させる方法が好ましい。
【0032】
不織布に含浸させる方法で使用する不織布の材質は特に限定されず、例えば、レーヨン、アクリル、綿、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン等が挙げられる。また、不織布の製造方法も特に限定されず、接合バインダー接着布,スパンボンド布、ニードルパンチ布、スパンレース布、スプレーファイバー布、ステッチボンド布等が挙げられる。なお、不織布に限らず、織布や紙などに含浸させたものであっても良く、その素材も特に限定されるものではない。」
「【実施例】
【0033】
以下、実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0034】
以下、実施例及び比較例で使用した各種薬品について、まとめて説明する。
フッ素系両性界面活性剤:パーフルオロアルキル化合物、AGCセイミケミカル株式会社製「サーフロンS-233」、濃度30重量%
フッ素系アニオン界面活性剤:パーフルオロアルキル化合物、AGCセイミケミカル株式会社製「サーフロンS-211」、濃度50重量%
フッ素系カチオン界面活性剤:パーフルオロアルキル化合物、AGCセイミケミカル株式会社製「サーフロンS-221」、濃度30重量%
フッ素系ノニオン界面活性剤:パーフルオロアルキル基含有エチレンオキシド付加物、AGCセイミケミカル株式会社製「サーフロンS-242」、濃度100重量%
イソプロピルアルコール:株式会社トクヤマ製「トクソーIPA」
【0035】
実施例1~12および比較例1~7
表1~2に記載した界面活性剤、イソプロピルアルコール、水を表1~2に示した配合量で混合し、曇り止め剤を作製した。
【0036】
<曇り止め試験>
事前に、140ml容積のマヨネーズ瓶に水100gを入れ、50~57℃に維持されるように調節された水浴中に置き、マヨネーズ瓶内の水が50~57℃に維持された状態にしておく。ワイパー(11cm×11cm、日本製紙クレシア株式会社製「ケイドライワイパー」)を4つ折りにし、その中心部に得られた曇り止め剤50μlを染み込ませ、レンズ(スーパーパワーシールドコート、屈折率1.76、東海光学株式会社製「ベルーナZX-AS」)の凸面に対して一定方向に2回やさしく塗り広げるように塗布した。次いで、該レンズを90度回転させ、上記と同様に曇り止め剤を一定方向に2回やさしく塗布した。このときの均一塗布性を下記基準により評価した。その結果を表1~2に示す。
そして、曇り止め剤を塗布したレンズをよく乾かし、凸面が下になるようにして上記マヨネーズ瓶の開口部に載せ、この時を曇り止め試験の開始時間とした。レンズを目視観察し、レンズにおける上記マヨネーズ瓶の開口部に接する部分より中心側の部分のうち、面積にして約半分が曇るまでの時間を曇り止め持続時間として測定した。また、曇り止め効果を下記基準により評価した。その結果を表1~2に示す。
【0037】
(均一塗布性)
◎:容易に塗り広げやすく、ムラなく均一に塗り広げることができる
○:容易に塗り広げやすく、わずかにムラができる程度でほぼ均一に塗り広げることができる
△:塗り広げにくく、ややムラができる
×:塗り広げにくく、ムラができる
【0038】
(曇り止め効果)
◎:20分以上
○:5分以上20分未満
△:0分を超えて、5分未満
×:すぐに曇る(表中では0分と表記)
【0039】
【表1】
【0040】
表1より、4種のフッ素系界面活性剤を単独で使用した比較例1~4においては、比較例1および2は活性剤の合計濃度に対する曇り止め効果が明らかに実施例1および2より低く、また比較例3および4はいずれも曇り止め効果が充分ではなかった。また、4種のフッ素系界面活性剤のうち2種を併用した比較例5~7においても、曇り止め効果は充分ではなかった。一方、フッ素系両性界面活性剤またはフッ素系アニオン界面活性剤(A)とフッ素系ノニオン界面活性剤(B)を組合せると、実施例1および2に示すように、曇り止め持続時間が明らかに長時間持続し、満足できるものとなった。
【0041】
【表2】
【0042】
表2の実施例1、3~7は、フッ素系両性界面活性剤(A)とフッ素系ノニオン界面活性剤(B)の濃度を変えた実験結果を示す。フッ素系両性界面活性剤(A)の濃度が0.3重量%の実施例3や、フッ素系ノニオン界面活性剤(B)の濃度が0.1重量%の実施例4のように一方の界面活性剤の濃度を大きく低減した場合であっても、充分な曇り止め持続時間を示した。
また、表2の実施例2、8~12は、フッ素系アニオン界面活性剤(A)とフッ素系ノニオン界面活性剤(B)の濃度を変えた実験結果を示す。フッ素系アニオン界面活性剤(A)の濃度が0.5重量%の実施例8や、フッ素系ノニオン界面活性剤(B)の濃度が0.1重量%の実施例9のように一方の界面活性剤の濃度を大きく低減した場合であっても、充分な曇り止め持続時間を示した。」
ウ 発明が解決しようとする課題
上記イによれば、本件訂正発明が解決しょうとする課題は、「ガラスまたはプラスチック等の硬質表面の曇りを持続的に防止する曇り止め剤および洗浄剤を提供すること」(【0006】)であると認められる。
エ 検討・判断
本件訂正発明1の「曇り止め剤」は、「(A)フッ素系両性界面活性剤またはフッ素系アニオン界面活性剤」、および、「(B)フッ素系ノニオン界面活性剤」を含有するものであるところ、本件特許の明細書の発明の詳細な説明(以下、単に「発明の詳細な説明」という。)には、本件訂正発明1が解決しようとする課題を解決するための手段について、「特定の2種のフッ素系界面活性剤を併用すると、フッ素系界面活性剤の使用量を大きく低減しても、曇り止め効果が長時間持続することを見出し、本発明を完成した」(【0007】)と説明されている。
また、本件訂正発明1を実施するための形態について、発明の詳細な説明には、「フッ素系両性界面活性剤(A)は、界面活性剤中のアルキル鎖中の水素原子をフッ素原子に置換した両性界面活性剤である。たとえば、下記の一般式(1)(式とその説明の記載は省略)で表される化合物が挙げられる。」(【0016】)と説明されている。
また、「フッ素系アニオン界面活性剤」および「フッ素系ノニオン界面活性剤」についてもそれぞれ同様の説明(【0020】、【0023】)がされている。
さらに、発明の詳細な説明には、本件訂正発明1の「フッ素系両性界面活性剤」の具体例として「フッ素系両性界面活性剤:パーフルオロアルキル化合物、AGCセイミケミカル株式会社製「サーフロンS-233」」を使用したことが記載されており、「フッ素系アニオン界面活性剤」および「フッ素系ノニオン界面活性剤」についてもそれぞれ「フッ素系アニオン界面活性剤:パーフルオロアルキル化合物、AGCセイミケミカル株式会社製「サーフロンS-211」」、「フッ素系ノニオン界面活性剤:パーフルオロアルキル基含有エチレンオキシド付加物、AGCセイミケミカル株式会社製「サーフロンS-242」」を使用したことなどが記載されていて、本件訂正発明1の「フッ素系両性界面活性剤」、「フッ素系アニオン界面活性剤」および「フッ素系ノニオン界面活性剤」としてそれぞれ実施例で具体的に使用しているものを選択した場合には、本件訂正発明1が解決しようとする課題を解決することができることを理解することができる。
また、本件訂正発明1の「フッ素系両性界面活性剤」、「フッ素系アニオン界面活性剤」および「フッ素系ノニオン界面活性剤」は、実施例で具体的に使用しているものと近い範囲に限定されている。
そうすると、本件訂正発明1は、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであると認められる。
また、本件訂正発明2~4は、本件訂正発明1を引用しさらに限定したものに該当するところ、上記のとおり、本件訂正発明1は、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであると認められるものである。
そうすると、本件訂正発明2~4も、本件訂正発明1と同様の理由により、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであると認められる
オ 小括
以上のとおりであるから、本件訂正発明1~4に係る特許は、その特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものであるとは認められないので、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものであるとはいえない。
(3) まとめ
以上のとおりであるから、本件特許の請求項1~4に係る発明の特許は、取消理由通知に記載した取消理由によって取消すべきものであるとすることはできない。
第6 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
1 特許異議申立人が申し立てた取消理由
特許異議申立人が申し立てた取消理由は、以下の理由1~3であり、そのうち、取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由は、理由3である。
理由1
本発明の実施例で用いた界面活性剤は「サーフロンS-211」と「サーフロンS-242」の一種類の組み合わせだけであるから、実施例に基づいて、広範な組み合わせを含むフッ素系アニオン界面活性剤(A)とフッ素系ノニオン界面活性剤(B)との組み合わせについても同じ効果が得られると予測することができない。したがって、本件特許の請求項1~4に係る発明の特許は、特許法第36条第6項第1号の規定を満たしていない特許出願に対してなされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
理由2
本件特許の特許請求の範囲の請求項1~4に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物である甲第1号証(特開平5-107401号公報)に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであり、その特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
理由3
本件特許の特許請求の範囲の請求項1~4に係る発明は、その発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が、本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である甲第1号証(特開平5-107401号公報)に記載された発明及び甲第2~4号証(特開昭52-63186号公報、特開平4-211461号公報、特開昭59-145275号公報)に記載された事項に基いて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであり、その特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
なお、甲第1、3号証は、それぞれ、上記第4 1に記載した甲1、3である。
2 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由(理由3)についての当審の判断
理由3は、主たる刊行物を上記第4 1の甲1とし、従たる刊行物を上記第4 1の甲3に加えて甲2、4とする進歩性に係るものであるが、上記第4 2(1)イのとおり、本件訂正発明1と甲1発明は、相違点2、3において相違しているところ、甲2、4にも、当該相違点2に係る本件訂正発明1の「一般式(2) Rf-X-Yb (2)」で表されるフッ素系アニオン界面活性剤などは記載も示唆もされていないから、さらに、相違点3について検討するまでもなく、甲3に加えて甲2、4に記載された事項を参酌しても、本件訂正発明1を、甲1に記載された発明及び甲1~4に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとは認められない。
本件訂正発明2~4は、本件訂正発明1を引用し、さらに限定したものに該当するから、本件訂正発明2~4も、本件訂正発明1と同様の理由により、甲1に記載された発明及び甲1~4に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとは認められない。
したがって、理由3には、理由がない。
第7 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1~4に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1~4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2019-700732