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特許異議申立

2025-700676

冷凍サイクル装置

審判番号
2025-700676
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2023-116595
登録番号
7610144
請求日
2025年07月02日
審決日
2026年05月27日
公報発行日
2026年09月25日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】ダイキン工業株式会社
  • 【権利者代理人】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
  • 【異議申立人】伊藤 裕美
審判長/審判官
  • 審判長 村守 宏文
  • 審判官 光本 美奈子
  • 審判官 山田 貴之
分類
P1651.121-YAA(C09K) / P1651.113-YAA(C09K) / P1651.537-YAA(C09K) / P1651.4 -YAA(C09K)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第126条第7項、特許法第29条第1項第3号、特許法第39条第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の8第1項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7610144号発明「冷凍サイクル装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7610144号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-18〕について訂正することを認める。 特許第7610144号の請求項2-5、8-18に係る特許を維持する。 特許第7610144号の請求項1、6及び7に係る特許についての特許異議申立てを却下する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7610144号の請求項1-18に係る特許についての出願は、2019年(令和元年)7月16日(優先権主張 2018年7月17日、2018年12月4日、2018年12月7日、2019年1月30日、2019年2月5日、2019年2月6日、2019年4月16日、2019年4月25日、2019年6月18日、2019年6月21日、2019年7月8日)を国際出願日とする出願である特願2020-531325号の一部を、令和5年7月18日に新たな出願としたものであって、令和6年12月24日にその特許権の設定登録がされ(請求項の数18)、令和7年1月8日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許について、令和7年7月2日に特許異議申立人 伊藤裕美(以下、「申立人」という)により特許異議の申立てがされた。 その後の主な経緯は、以下のとおりである。 令和7年10月29日付け 取消理由通知 同年12月29日 意見書及び訂正請求書の提出(特許権者) 令和8年 2月25日 意見書提出(申立人) 第2 訂正の適否についての判断 1 訂正の内容 (1) 訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1を削除する。 (2) 訂正事項2 特許請求の範囲の請求項2に「HFO-1132(E)及びHFO-1234yfの全質量に対して、HFO-1132(E)の含有割合が12.1~72.0質量%であり、HFO-1234yfの含有割合が87.9~28.0質量%である、」とあるのを「HFO-1132(E)及びHFO-1234yfの全質量に対して、HFO-1132(E)の含有割合が12.1~45.0質量%であり、HFO-1234yfの含有割合が87.9~55.0質量%である、」に訂正する(請求項2の記載を直接的又は間接的に引用する請求項14~18も同様に訂正する)。 (3) 訂正事項3 特許請求の範囲の請求項6を削除する。 (4) 訂正事項4 特許請求の範囲の請求項7を削除する。 (5) 訂正事項5 特許請求の範囲の請求項14の引用する請求項を「請求項1から13のいずれかに」から「請求項2から5,8から13のいずれかに」に変更する。 (6) 訂正事項6 特許請求の範囲の請求項15の引用する請求項を「請求項1から14のいずれかに」から「請求項2から5,8から14のいずれかに」に変更する。 (7) 訂正事項7 特許請求の範囲の請求項16の引用する請求項を「請求項1から15のいずれかに」から「請求項2から5,8から15のいずれかに」に変更する。 (8) 訂正事項8 特許請求の範囲の請求項17の引用する請求項を「請求項1から15のいずれかに」から「請求項2から5,8から15のいずれかに」に変更する。 (9) 訂正事項9 特許請求の範囲の請求項18の引用する請求項を「請求項1から17のいずれかに」から「請求項2から5,8から17のいずれかに」に変更する。 (10) 一群の請求項について 本件訂正前の請求項6及び7、請求項8及び9、請求項10~12、並びに、請求項13は、それぞれ、本件訂正前の請求項1、3、4及び5の引用形式で記載される発明を包含するものである。そして、本件訂正前の請求項14~17は、先行する請求項のいずれかの引用形式で記載される発明を包含するものであり、請求項18は、請求項1~17のいずれかの引用形式で記載される発明を包含するものである。このように、本件訂正前の特許請求の範囲には、共通の請求項を有する一群の請求項が複数あり、これらの一群の請求項は組み合わされて、1つの一群の請求項となる(特許法施行規則第45条の4)から、本件訂正前の請求項1~18は、特許法120条の5第4項に規定する一群の請求項であり、本件訂正請求は、一群の請求項ごとに請求されたものである。 したがって、本件訂正前の請求項1~18は、特許法120条の5第4項に規定する一群の請求項である。 2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1)訂正事項1、3及び4について 訂正事項1、3及び4は、それぞれ、請求項1、6及び7を削除するものであるから、いずれも特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更をするものには該当せず、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正である。 (2)訂正事項2について 訂正事項2は、本件訂正前の請求項2における、「HFO-1132(E)及びHFO-1234yfの全質量に対」する「HFO-1132(E)の含有割合」の上限を「72.0質量%」から「45.0質量%」とすると共に、「HFO-1234yfの含有割合」の下限を「28.0質量%」から「55.0質量%」とするものであるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更をするものではなく、願書に添付した明細書【1124】の「HFO-1132(E)及びHFO-1234yfの全質量に対して、HFO-1132(E)の含有割合は特に好ましくは30.0~45.0質量%であり、HFO-1234yfの含有割合は特に好ましくは70.0~55.0質量%である。」との記載から、当該訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正である。 (3)訂正事項5~9について 訂正事項5~9は、いずれも、前記(1)により請求項1、6及び7が削除されたことに伴い、訂正前に引用していた請求項1、6及び7を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明、及び、同第1号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、これらの訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更をするものには該当せず、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正である。 (4)特許出願の際に独立して特許を受けることができること 本件においては、訂正前の全ての請求項1~18について特許異議申立てがされているので、訂正事項1~9により訂正される訂正後の請求項2~5、8~18に係る発明に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。 3 小括 以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、及び、第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-18〕について訂正することを認める。 第3 訂正後の本件発明 前記第2のとおり、本件訂正は認められたので、本件特許の請求項2~5、8~18に係る発明(以下、請求項の番号順に「本件発明2」などといい、これらを合わせて「本件発明」ともいう。)は、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項2~5、8~18に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。 なお、請求項1、6及び7は削除された。 「【請求項1】(削除) 【請求項2】 圧縮機と凝縮器と減圧部と蒸発器とを有する冷媒回路と、 前記冷媒回路に封入された冷媒と、 を備え、 前記冷媒は、HFO-1132(E)及びHFO-1234yf、を含み、 前記冷媒は、HFO-1132(E)及びHFO-1234yfをこれらの濃度の総和で99.7質量%以上含有し、HFO-1132(E)及びHFO-1234yfの全質量に対して、 HFO-1132(E)の含有割合が12.1~45.0質量%であり、 HFO-1234yfの含有割合が87.9~55.0質量%である、 冷凍サイクル装置。 【請求項3】 圧縮機と凝縮器と減圧部と蒸発器とを有する冷媒回路と、 前記冷媒回路に封入された冷媒と、 を備え、 前記冷媒は、HFO-1132(E)及びHFO-1234yf、を含み、 前記冷媒は、HFO-1132(E)及びHFO-1234yfをこれらの濃度の総和で99.5質量%以上含有し、HFO-1132(E)及びHFO-1234yfの全質量に対して、 HFO-1132(E)の含有割合が40.5~49.2質量%であり、 HFO-1234yfの含有割合が59.5~50.8質量%である、 冷凍サイクル装置。 【請求項4】 圧縮機と凝縮器と減圧部と蒸発器とを有する冷媒回路と、 前記冷媒回路に封入された冷媒と、 を備え、 前記冷媒は、HFO-1132(E)及びHFO-1234yf、を含み、 前記冷媒は、HFO-1132(E)及びHFO-1234yfをこれらの濃度の総和で99.5質量%以上含有し、HFO-1132(E)及びHFO-1234yfの全質量に対して、 HFO-1132(E)の含有割合が31.1~39.8質量%であり、 HFO-1234yfの含有割合が68.9~60.2質量%である、 冷凍サイクル装置。 【請求項5】 圧縮機と凝縮器と減圧部と蒸発器とを有する冷媒回路と、 前記冷媒回路に封入された冷媒と、 を備え、 前記冷媒は、HFO-1132(E)及びHFO-1234yf、を含み、 前記冷媒は、HFO-1132(E)及びHFO-1234yfをこれらの濃度の総和で99.5質量%以上含有し、HFO-1132(E)及びHFO-1234yfの全質量に対して、 HFO-1132(E)の含有割合が21.0~28.4質量%であり、 HFO-1234yfの含有割合が79.0~71.6質量%である、 冷凍サイクル装置。 【請求項6】(削除) 【請求項7】(削除) 【請求項8】 前記冷媒が、HFO-1132(E)及びHFO-1234yfのみからなる、 請求項3に記載の冷凍サイクル装置。 【請求項9】 蒸発温度が-75~-5℃である、 請求項3又は8に記載の冷凍サイクル装置。 【請求項10】 前記冷媒は、HFO-1132(E)及びHFO-1234yfの全質量に対して、 HFO-1132(E)の含有割合が31.1~37.9質量%であり、 HFO-1234yfの含有割合が68.9~62.1質量%である、 請求項4に記載の冷凍サイクル装置。 【請求項11】 前記冷媒が、HFO-1132(E)及びHFO-1234yfのみからなる、 請求項4又は10に記載の冷凍サイクル装置。 【請求項12】 蒸発温度が-75~-5℃である、 請求項4,10,11のいずれかに記載の冷凍サイクル装置。 【請求項13】 前記冷媒が、HFO-1132(E)及びHFO-1234yfのみからなる、 請求項5に記載の冷凍サイクル装置。 【請求項14】 前記冷媒回路は、前記蒸発器から前記圧縮機の吸入側に向かう冷媒流路の途中に設けられた低圧レシーバ(41)をさらに有している、 請求項1から13のいずれかに記載の冷凍サイクル装置(1a、1b、1g、1l、1m)。 【請求項15】 前記冷媒回路は、前記凝縮器から前記蒸発器に向かう冷媒流路の途中に設けられた高圧レシーバ(42)をさらに有している、 請求項1から14のいずれかに記載の冷凍サイクル装置(1c、1d)。 【請求項16】 前記冷媒回路は、前記凝縮器から前記蒸発器に向かう冷媒流路の途中に設けられた第1減圧部(44)と第2減圧部(45)と中間圧レシーバ(43)とさらに有しており、 前記中間圧レシーバは、前記凝縮器から前記蒸発器に向かう冷媒流路における前記第1減圧部と前記第2減圧部との間に設けられている、 請求項1から15のいずれかに記載の冷凍サイクル装置(1e、1f、1h、1i)。 【請求項17】 前記冷媒回路は、前記凝縮器から前記蒸発器に向かう冷媒流路の途中に設けられた第1減圧部(44)と第2減圧部(45)とをさらに有しており、 前記第1減圧部を通過する冷媒の減圧程度と前記第2減圧部を通過する冷媒の減圧程度との両方を調節する制御部(7、27)をさらに備えた、 請求項1から16のいずれかに記載の冷凍サイクル装置(1g)。 【請求項18】 前記冷媒回路は、前記凝縮器から前記蒸発器に向かう冷媒と、前記蒸発器から前記圧縮機に向かう冷媒と、の間で熱交換を行わせる冷媒熱交換部(50、51)をさらに有している、 請求項1から17のいずれかに記載の冷凍サイクル装置(1h、1i、1j、1k)。」 第4 特許異議の申立ての理由、及び、令和7年10月29日付け取消理由の概要 1 特許異議申立書に記載された理由の概要 (1)申立理由1(甲1を主引用例とする進歩性欠如) 本件特許の請求項1~18に係る発明は、本件出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、甲第1号証に記載された発明、及び、甲第3~5号証に記載された事項に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件発明1~18に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 (2)申立理由2(甲2を主引用例とする進歩性欠如) 本件特許の請求項1~18に係る発明は、本件出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、甲第2号証に記載された発明、及び、甲第3~5号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件発明1~18に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 2 証拠方法 申立人が提出した証拠である甲第1~5号証は、以下のとおりである(以下、甲1~甲5ともいう)。 甲第1号証:特開2015-229768号公報 甲第2号証:国際公開第2015/186670号 甲第3号証:特開2016-056340号公報 甲第4号証:特開2000-356420号公報 甲第5号証:特開2015-078800号公報 3 取消理由の概要 取消理由1(新規性) 本件特許の請求項1、2、6、7に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲2に記載された発明であるから、上記の請求項に係る特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものである。 取消理由2(進歩性) 本件特許の請求項1~18に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲2に記載された発明、及び、甲2~甲5に記載された事項に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、上記の請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである(前記1(2)の申立理由2に相当)。 取消理由3(同日出願) 本件特許の請求項1~13に係る発明は、同日出願された出願(特願2023-116594号(特許第7610143号))の請求項20に係る発明と同一と認められ、かつ、当該出願に係る発明は特許されており協議を行うことができないから、請求項1~13に係る特許は、特許法第39条第2項の規定に違反してされたものである。 取消理由4(明確性) この出願の特許請求の範囲の請求項17及び18の記載は、以下の理由から、特許を受けようとする発明が明確でないから、本件特許は、特許法第36条第6項第2号の規定に違反してされたものである。 第1減圧部(44)と第2減圧部(45)を有することを特定事項とする請求項16の引用形式で記載される請求項17の「第1減圧部(44)と第2減圧部(45)をさらに有しており」との記載における「第1減圧部(44)と第2減圧部(45)」の意味するところが不明である。 第5 当審における合議体の判断 以下、下線は合議体による。 1 甲号証の記載事項 (1) 甲1の記載事項 「【請求項1】 (E)-1,2-ジフルオロエチレンと、 1,1-ジフルオロエチレン、フルオロエチレン、フルオロエタン、(Z)-1,2-ジフルオロエチレンおよびエチレンからなる群から選択される少なくとも1つである第1の化合物を含有することを特徴とする熱サイクル用作動媒体。 ・・・ 【請求項4】 さらに、1-クロロ-1-フルオロエチレン、1-クロロ-2,2-ジフルオロエチレン、(E)-1-クロロ-1,2-ジフルオロエチレン、(Z)-1-クロロ-1,2-ジフルオロエチレン、(E)-1-クロロ-2-フルオロエチレン、(Z)-1-クロロ-2-フルオロエチレン、1,1-ジクロロ-2,2-ジフルオロエチレン、(E)-1,2-ジクロロ-1,2-ジフルオロエチレン、(Z)-1,2-ジクロロ-1,2-ジフルオロエチレン、1,1-ジフルオロエタン、1,2-ジフルオロエタン、1-クロロ-1,1-ジフルオロエタン、1-クロロ-2,2-ジフルオロエタン、1,2-ジクロロ-1,1,2-トリフルオロエタン、1,1-ジクロロ-2,2,2-トリフルオロエタン、メタン、クロロエタンおよびトリクロロフルオロメタンからなる群から選択される少なくとも1つである第2の化合物を含有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の熱サイクル用作動媒体。」 「【技術分野】 【0001】 本発明は、熱サイクル用作動媒体とその製造方法に係り、さらに詳しくは、(E)-1,2-ジフルオロエチレンを含み、熱伝達組成物として有用な熱サイクル用作動媒体と、そのような熱サイクル用作動媒体を製造する方法に関する。」 「【0007】 (E)-HFO-1132は各種の方法により製造される。特許文献2には、1,2-ジクロロ-1,2-ジフルオロエチレン(CFO-1112)を気相で水素還元することで、(E)-HFO-1132を製造する方法が提示されている。 【0008】 しかし、どのような製造方法を採る場合にも、生成物中には不純物が存在し、不純物を含む(E)-HFO-1132(以下、粗(E)-HFO-1132ともいう。)をそのまま用いた場合には、サイクル性能に優れる作動媒体が得られない場合があった。そのため、粗HFO-1132を作動媒体として用いるためには、粗HFO-1132中の不純物を低減する工程が必須となっていた。」 「【発明が解決しようとする課題】 【0010】 本発明は、低いGWPを有する(E)-HFO-1132を含有し、オゾン層への影響が少なく、地球温暖化への影響が少ないうえに、サイクル性能に優れる、生産性が高い熱サイクル用作動媒体を提供することを目的とする。また、本発明は、粗HFO-1132からの不純物を低減する工程をできるだけ簡略化して、サイクル性能に優れる熱サイクル用作動媒体を得ることを目的とする。 【課題を解決するための手段】 【0011】 本発明者らは、種々の検討を重ねた結果、(E)-HFO-1132を含み、かつ(E)-HFO-1132の製造の際に不純物として存在する以下の化合物、すなわち1,1-ジフルオロエチレン(HFO-1132a)、フルオロエチレン(HFO-1141)、フルオロエタン(HFC-161)、(Z)-1,2-ジフルオロエチレン((Z)-HFO-1132)およびエチレンからなる群から選択される少なくとも1つの化合物を低い割合で含有する作動媒体を用いることにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。 【0012】 すなわち、本発明は、(E)-HFO-1132と、HFO-1132a、HFO-1141、HFC-161、(Z)-HFO-1132およびエチレンからなる群から選択される少なくとも1つである第1の化合物を含有することを特徴とする。 【0013】 また本発明は、CFO-1112と水素とを、パラジウム触媒存在下に80℃以上の温度で反応させる反応工程と、前記反応工程で得られた生成物を蒸留する工程を有し、(E)-HFO-1132と、HFO-1132a、HFO-1141、HFC-161、(Z)-HFO-1132およびエチレンからなる群から選択される少なくとも1つである第1の化合物を含有する組成物を得ることを特徴とする熱サイクル用作動媒体の製造方法を提供する。 【発明の効果】 【0014】 本発明の熱サイクル用作動媒体(以下、作動媒体とも記す。)は、オゾン層への影響が少なく、かつ地球温暖化への影響が少ないので、従来から使用されてきたR410Aや温室効果ガスである1,1,1,2-テトラフルオロエタン(HFC-134a)に代わる低GWPの新しい冷媒としての使用が期待される。 また、(E)-HFO-1132の製造の際の不純物として存在する第1の化合物の含有が、所定の範囲ではあるが許容されているので、粗HFO-1132からの不純物を低減する工程を簡略化できる。」 「【0016】 [作動媒体] 本発明の実施形態の作動媒体は、(E)-HFO-1132と、HFO-1132a、HFO-1141、HFC-161、(Z)-HFO-1132およびエチレンからなる群から選択される少なくとも1つである第1の化合物を含有する。 【0017】 <(E)-HFO-1132> (E)-HFO-1132は、GWPが低く、オゾン層への影響が少なく、地球温暖化への影響が少ない化合物である。また、(E)-HFO-1132は、作動媒体としての能力に優れ、特にサイクル性能(例えば、後述する方法で求められる冷凍能力や成績係数)に優れている。 (E)-HFO-1132の含有量は、サイクル性能の点から、作動媒体の全量(100質量%)に対して20質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましく、40質量%以上がさらに好ましい。 【0018】 また、(E)-HFO-1132は、単独で用いた場合に高温または高圧下で着火源があると分解反応を起こす、いわゆる自己分解性を有することが知られている。(E)-HFO-1132の自己分解反応防止の観点からは、(E)-HFO-1132の含有量は、作動媒体の全量に対して80質量%以下であることが好ましく、70質量%以下がより好ましく、60質量%以下が最も好ましい。 【0019】 本発明の作動媒体においては、(E)-HFO-1132を、ジフルオロメタン(HFC-32)や2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)等と混合して(E)-HFO-1132の含有量の割合(以下、含有量の割合を含有割合ともいう。)を抑えることで、自己分解反応を抑えることができる。(E)-HFO-1132の含有割合を80質量%以下とした場合、熱サイクルシステムに適用する場合の温度や圧力条件下では自己分解性を有しないため、安全性の高い作動媒体を得ることができる。 【0020】 <第1の化合物> 第1の化合物は、(E)-HFO-1132の製造の際に副生し、不純物として生成組成物中に存在する化合物であり、HFO-1132a、HFO-1141、HFC-161、(Z)-HFO-1132およびエチレンからなる群から選択される少なくとも1つの化合物である。 【0021】 作動媒体が第1の化合物を含有すると、サイクル性能が低くなる。サイクル性能の観点から、第1の化合物のそれぞれの含有量は、(E)-HFO-1132の含有量と第1の化合物の総含有量との合計に対して、0.5質量%未満の割合であることが好ましい。また、第1の化合物の総含有量は、(E)-HFO-1132の含有量と第1の化合物の総含有量との合計に対して、0.5質量%未満の割合であることが好ましい。第1の化合物のそれぞれの含有量および総含有量が、前記範囲であれば、十分に優れたサイクル性能を有する作動媒体を得ることができる。 なお、本明細書において、「第1の化合物の総含有量」は、第1の化合物が1種である場合は、その化合物の含有量を意味し、第1の化合物が2種以上である場合は、それぞれの化合物の含有量の合計を意味する。後述する「第2の化合物の総含有量」についても同様である。」 「【0052】 [実施例1] <粗(E)-HFO-1132の製造> 内径2.1cm(断面積3.53cm2)、長さ80cmのステンレス製の反応管に、ヤシ殻活性炭100質量部に対して0.5質量部のパラジウムを担持させたパラジウム担持活性炭を充填し、高さ80cmの触媒層を形成した。触媒層におけるパラジウム担持活性炭の充填密度は、0.62g/cm3であった。 【0053】 次いで、こうして形成された反応管内の触媒層を電気ヒータによって80℃に管理し、内圧(ゲージ圧)0.04MPaで、CFO-1112と水素からなる原料組成物(以下、原料ガスともいう。)を反応管に供給した。以下、圧力はいずれもゲージ圧とする。 【0054】 原料ガスにおける水素とCFO-1112のモル比(水素/CFO-1112)が2.0となるようにして、原料ガスを反応管内に流通させた。触媒層に対する原料ガスの接触時間は53秒間とし、原料ガスの線速度uは1.5cm/秒とした。 反応中の触媒層の最高温度を、位置を移動させながら触媒層に挿入した挿し込み型の温度計により測定した。触媒層の最高温度は255℃であった。 なお、反応器の出口から取り出された出口ガスには、反応により生成または副生したガスの他に、未反応の原料ガスも含まれるが、以下の記載では出口ガスを生成ガスということもある。 【0055】 次いで、反応管の出口から排出された生成ガスを、アルカリ洗浄してから脱水処理した後、ガスクロマトグラフィで分析して、出口ガスに含まれるガス成分のモル組成を計算した。また、出口ガスのモル組成を基にして、CFO-1112の反応率(転化率)を求めた。結果を、製造の条件とともに表2に示す。 ・・・ 【0057】 <粗(E)-HFO-1132の蒸留による精製> 次に、上記で得られた(E)-HFO-1132組成物(粗(E)-HFO-1132)を回収し、段数40段の蒸留塔(第一蒸留塔)の塔頂から10段目に7096.7g/hの速度で供給し、運転圧力1.55MPa(ゲージ圧)、塔頂温度-3.4℃、塔底温度70.7℃で連続的に蒸留を行った。このとき、還流液は蒸留塔の最上段に供給した。 【0058】 そして、還流比16.0で運転し、塔頂から低沸点成分が濃縮した留分を379.6g/hの速度で留出させ、塔底から缶出液を6717.1g/hの速度で留出させた。ここで、第一蒸留塔の塔頂からの留出液を留出液1と示し、塔底からの缶出液を缶出液1と示す。留出液1および缶出液1の組成、塔頂温度、塔底温度をそれぞれ表3に示す。 ・・・ 【0060】 次に、上記第一蒸留塔の缶出液1を、段数30段の蒸留塔(第二蒸留塔)の塔頂から25段目に6717.1g/hの速度で供給し、運転圧力1.5MPa、塔頂温度26.7℃、塔底温度81.3℃で連続的に蒸留を行った。このとき、還流液は蒸留塔の最上段に供給した。 【0061】 そして、還流比10.0で運転し、第二蒸留塔の塔頂から(E)-HFO-1132を含む組成物の留分を896.0g/hの速度で留出させ、塔底から缶出液を5821.1g/hの速度で留出させた。ここで、第二蒸留塔の塔頂からの留出液を留出液2と示し、塔底からの缶出液を缶出液2と示す。留出液2および缶出液2の組成、塔頂温度、塔底温度をそれぞれ表4に示す。 【0062】 こうして、留出液2として、(E)-HFO-1132を主成分として含む組成物が得られた。この(E)-HFO-1132組成物が、実施例1で得られた作動媒体となる。なお、表3および表4から、本実施例における(E)-HFO-1132の蒸留収率は、76.4%であることがわかる。また、表4から、作動媒体において、第1の化合物の総含有量は、(E)-HFO-1132の含有量と第1の化合物の総含有量との合計(以下、(E)-HFO-1132と第1化合物の合計含有量と示す。)に対して、0.33質量%であることがわかる。 【0063】 【表4】 [図:0001439203000001.jpg] ・・・ 【0069】 こうして、缶出液4として、(E)-HFO-1132を主成分として含む組成物が得られた。この(E)-HFO-1132組成物が、実施例2で得られた作動媒体となる。なお、表5および表6から、本実施例における(E)-HFO-1132の蒸留収率は、76.9%であることがわかる。また、表6から、作動媒体において、第1の化合物の総含有量は、(E)-HFO-1132と第1化合物の合計含有量に対して、0.49質量%であることがわかる。 (2)甲2の記載事項 「[0006] HFOを用いた作動媒体として、例えば、特許文献1には上記特性を有するとともに、優れたサイクル性能が得られる1,2-ジフルオロエチレン(HFO-1132)を用いた作動媒体に係る技術が開示されている。特許文献1においては、さらに、該作動媒体の不燃性、サイクル性能等を高める目的で、HFO-1132に、各種HFCやHFOを組み合わせて作動媒体とする試みもされている。 [0007] しかしながら、HFO-1132は、分子中に不飽和結合を含む化合物であり、大気寿命が非常に小さい化合物であることから、熱サイクルにおける圧縮、加熱が繰り返される条件では、従来のHFCやHCFCといった飽和のヒドロフルオロカーボン、ヒドロクロロフルオロカーボンよりも安定性に劣っている問題があった。 [0008] そこで、HFO-1132を作動媒体として使用する熱サイクルシステムにおいて、HFO-1132が有する優れたサイクル性能を充分に活かしながら、安定性を高め、熱サイクルシステムを効率的に稼働できる方法が求められていた。 ・・・ 発明が解決しようとする課題 [0010] 本発明は、上記観点からなされたものであって、1,2-ジフルオロエチレン(HFO-1132)を含む熱サイクルシステム用組成物において、HFO-1132の有する低い地球温暖化係数および優れたサイクル性能を充分に活かしながら、HFO-1132をより安定化させた熱サイクルシステム用組成物、および該組成物を用いた、地球温暖化への影響が少なく、かつ高いサイクル性能を兼ね備え、さらに熱サイクル用作動媒体の使用寿命を長命化させた熱サイクルシステムの提供を目的とする。 課題を解決するための手段 [0011] 本発明は、以下の[1]~[15]に記載の構成を有する熱サイクル用作動媒体、熱サイクルシステム用組成物および熱サイクルシステムを提供する。 [1]1,2-ジフルオロエチレンを含む熱サイクル用作動媒体と、前記熱サイクル用作動媒体の劣化を抑制する安定剤とを含む、熱サイクルシステム用組成物。・・・」 「[0020] このような熱サイクルシステムにHFO-1132を作動媒体として用いると、温度条件、圧力条件によって、HFO-1132が不安定化し、自己分解が生じて熱サイクル用作動媒体の機能が低下する場合がある。本発明の熱サイクルシステム用組成物においては、安定剤を共存させることで、HFO-1132の分解を抑制し、安定化させ、熱サイクル作動媒体としての寿命を長くすることが可能となる。 以下、本発明の熱サイクルシステム用組成物が含有する各成分を説明する。 [0021]<作動媒体> 本発明の熱サイクルシステム用組成物は作動媒体として、HFO-1132を含有する。本発明に係る作動媒体は、HFO-1132に加えて、必要に応じて、後述する任意成分を含んでいてもよい。作動媒体の100質量%に対するHFO-1132の含有量は、20質量%以上が好ましく、20~80質量%がより好ましく、40~80質量%が一層好ましく、40~60質量%がさらに好ましい。 [0022](HFO-1132) HFO-1132としては、トランス-1,2-ジフルオロエチレン(HFO-1132(E))、シス-1,2-ジフルオロエチレン(HFO-1132(Z))の2種類の立体異性体が存在する。本発明においては、HFO-1132(E)を単独で用いてもよく、HFO-1132(Z)を単独で用いてもよく、HFO-1132(E)およびHFO-1132(Z)の混合物を用いてもよい。 HFO-1132の作動媒体としての特性を、特に、R410A(HFC-32とHFC-125の質量比1:1の擬似共沸混合冷媒)との相対比較において表1に示す。サイクル性能は、後述する方法で求められる成績係数と冷凍能力で示される。HFO-1132の成績係数と冷凍能力は、R410Aを基準(1.000)とした相対値(以下、相対成績係数および相対冷凍能力という)で示す。地球温暖化係数(GWP)は、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第4次評価報告書(2007年)に示される、または該方法に準じて測定された100年の値である。本明細書において、GWPは特に断りのない限りこの値をいう。作動媒体が混合物からなる場合、後述するとおり温度勾配は、作動媒体を評価する上で重要なファクターとなり、値は小さい方が好ましい。」 「[0040] なかでも、HFO-1132以外のHFOとしては、高い臨界温度を有し、安全性、成績係数が優れる点から、HFO-1234yf(GWP=4)、HFO-1234ze(E)、HFO-1234ze(Z)((E)体、(Z)体共にGWP=6)が好ましく、HFO-1234yfがより好ましい。HFO-1132以外のHFOは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。 [0041] 作動媒体(100質量%)中のHFO-1132以外のHFOの含有量は、作動媒体の要求特性に応じ任意に選択可能である。例えば、HFO-1132とHFO-1234yfまたはHFO-1234zeとからなる作動媒体の場合、HFO-1234yfまたはHFO-1234zeの含有量が1~99質量%の範囲で成績係数が向上する。 [0042] HFO-1132とHFO-1234yfを含む作動媒体の場合、例えば、作動媒体全量に対するHFO-1132とHFO-1234yfの合計量の割合が70~100質量%であり、HFO-1132とHFO-1234yfの合計量に対するHFO-1234yfの割合が5~65質量%である作動媒体が、サイクル能力、温度勾配、GWPのバランスの点から好ましい。さらに、HFO-1234yfは、HFO-1132(Z)と(疑似)共沸混合物を形成できる観点から好ましく用いられる。」 「[0052]<安定剤> 本発明の熱サイクルシステム用組成物は、上記HFO-1132を含有する作動媒体と共に安定剤を含有する。この安定剤は、作動媒体、特に上記したHFO-1132、の劣化を防止できるものであればよく、特に限定されずに使用できる。このような安定剤としては、耐酸化性向上剤、耐熱性向上剤、金属不活性剤等が挙げられる。 [0053] この安定剤の含有量は、本発明の効果を著しく低下させない範囲であればよく、熱サイクル用組成物(100質量%)中、1質量ppm~10質量%であり、好ましくは5質量ppm~5質量%である。 [0054] 耐酸化性向上剤および耐熱性向上剤としては、フェノール系化合物、不飽和炭化水素基含有芳香族化合物、芳香族アミン化合物、芳香族チアジン化合物、テルペン化合物、キノン化合物、ニトロ化合物、エポキシ化合物、ラクトン化合物、オルトエステル化合物、フタル酸のモノまたはジアルカリ金属塩化合物、水酸化チオジフェニルエーテル化合物等が挙げられる。 [0055] 具体的には、フェノール系化合物としては、・・・が挙げられる。 [0056] 不飽和炭化水素基含有芳香族化合物としては、α-メチルスチレン、p-イソプロペニルトルエン、ジイソプロペニルベンゼンが挙げられる。 [0057] 芳香族アミン化合物、芳香族チアジン化合物としては、・・・等が挙げられる。 [0058] テルペン系化合物としては、・・・等が挙げられる。 [0059] キノン系化合物としては、ハイドロキノン、1,4-ベンゾキノン、トコフェロール、t-ブチルヒドロキノン、や他のハイドロキノン誘導体が挙げられる。 ニトロ化合物としては、ニトロメタン、ニトロエタン、ニトロプロパン等が挙げられる。 [0060] エポキシ化合物としては、・・・が挙げられる。 ・・・ [0072] これらの冷凍機油は、作動媒体と混合して熱サイクルシステム用組成物として使用することが好ましい。このとき、冷凍機油の配合割合は、熱サイクルシステム用組成物全量に対して5~60質量%が望ましく、10~50質量%がより好ましい。」 「[0130][熱サイクルシステム] 本発明の熱サイクルシステムは、本発明の熱サイクルシステム用組成物を用いたシステムである。本発明の熱サイクルシステムは、凝縮器で得られる温熱を利用するヒートポンプシステムであってもよく、蒸発器で得られる冷熱を利用する冷凍サイクルシステムであってもよい。」 「[0136] 図1に示す冷凍サイクルシステム10は、作動媒体蒸気Aを圧縮して高温高圧の作動媒体蒸気Bとする圧縮機11と、圧縮機11から排出された作動媒体蒸気Bを冷却し、液化して低温高圧の作動媒体Cとする凝縮器12と、凝縮器12から排出された作動媒体Cを膨張させて低温低圧の作動媒体Dとする膨張弁13と、膨張弁13から排出された作動媒体Dを加熱して高温低圧の作動媒体蒸気Aとする蒸発器14と、蒸発器14に負荷流体Eを供給するポンプ15と、凝縮器12に流体Fを供給するポンプ16とを具備して概略構成されるシステムである。」 「【実施例】 [0159] 以下、本発明について、実施例(例1~43、例64~106、例127~169)および比較例(例44~63、例107~126、例170~189)を参照しながらさらに詳細に説明する。各例においては、表2~5に示した配合(質量%)で混合して熱サイクルシステム用組成物を製造した。 [0160] ここで、作動媒体、安定剤、冷凍機油としては、以下に示すものを使用した。 作動媒体1~30の組成(質量比)を表2に示す。なお、表2中「HFO-1132」は、HFO-1132(E)とHFO-1132(Z)の等量混合物である。 [表2] [図:0001439203000002.jpg] [0161]安定剤1:2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール 安定剤2:1,4-ベンゾキノン 安定剤3:フェノチアジン 安定剤4:3-メトキシフェノール ・・・ [0163[安定性試験] 例1~189で得られた熱サイクルシステム用組成物を、内部に150mlのガラス筒を入れた200mlのステンレス製の耐圧容器にそれぞれ入れた。ここで、作動媒体の配合量は50g、安定剤の配合量は0.5g(作動媒体に対して1質量%)であり、冷凍機油を配合する場合は、50gを加える。さらに、酸素濃度を18体積%になるように調整した空気を入れて密閉した。次いで、密閉した耐圧容器を恒温槽(パーフェクトオーブンPHH-202、エスペック株式会社製)中に175℃で14日間保存し、次のように作動媒体の酸分量および冷凍機油の全酸価分析を行い、それらの結果を表2~5に示した。 [0164](酸分量の測定) 上記試験後の耐圧容器を室温になるまで静置した。 吸収瓶4本にそれぞれ純水を100ml入れ、導管で直列に連結したものを準備した。 室温になった耐圧容器に、純水を加えた吸収瓶を連結したものをつなぎ、徐々に耐圧容器の弁を開放して、冷媒ガスを吸収瓶の水中に導入し、冷媒ガスに含まれる酸分を抽出した。 抽出後の吸収瓶の水は、1本目と2本目を合わせて指示薬(BTB:ブロモチモールブルー)を1滴加え、1/100N-NaOHアルカリ標準液を用いて滴定した。同時に、吸収瓶の3本目および4本目の水を合わせて同様に滴定し、測定ブランクとした。これら測定値と測定ブランクの値から、試験後の冷媒に含まれる酸分をHCl濃度として求めた。 [0165] (冷凍機油の全酸価分析) JIS-K2211(冷凍機油)の全酸価分析方法に準拠した方法で、作動媒体ガス回収後の冷凍機油全酸価値の測定を次のように行った。上記試験後の耐圧容器内に残った冷凍機油を秤りとり、トルエン/イソプロパノール/水混合溶液に溶解させ、指示薬としてp-ナフトールベンゼインを用いて、1/100N-KOH・エタノール溶液にて中和滴定し、滴定量から冷凍機油の全酸価値(mg・KOH/g)を測定した。 ・・・ [0178] 本試験結果より、安定剤を配合した例1~43、例64~106、例127~169において、酸分や全酸価値の上昇はみられなかったのに対し、安定剤を配合しなかった例44~63、例107~126、例170~189の比較例では、いずれも酸分および全酸価値の上昇がみられた。したがって、比較例では、作動媒体の分解劣化が生じているものと考えられる。本実施例により、本発明の安定剤を配合した熱サイクルシステム用組成物は、作動媒体の寿命を長くして該組成物の使用期間を長く交換時期を遅くでき、効率的な熱サイクルシステムとするに適していることが明らかになった。」 「 [図:0001439203000003.jpg] 」 「[請求項1] 1,2-ジフルオロエチレンを含む熱サイクル用作動媒体と、前記熱サイクル用作動媒体の劣化を抑制する安定剤とを含む、熱サイクルシステム用組成物。 [請求項2] 1,2-ジフルオロエチレンが、トランス-1,2-ジフルオロエチレン、シス-1,2-ジフルオロエチレンまたはそれらの混合物である、請求項1に記載の熱サイクルシステム用組成物。 [請求項3] 前記安定剤が、耐酸化性向上剤、耐熱性向上剤および金属不活性剤から選ばれる少なくとも1種の安定剤である、請求項1または2に記載の熱サイクルシステム用組成物。 ・・・ [請求項15] 前記熱サイクルシステムが冷凍・冷蔵機器、空調機器、発電システム、熱輸送装置または二次冷却機である、請求項14に記載の熱サイクルシステム。」 2 甲2に記載された発明 前記1(2)の甲2の段落[0159]~[0178]の実施例95、105、148又は158、並びに、同[0130]、同[0136]、[図1]、請求項15等の記載から、以下の甲2発明が記載されていると認められる。 「HFO-1132(E)とHFO-1234yfが質量比50:50である作動媒体49.75質量%と、冷凍機油49.75質量%と、1,4―ベンゾキノン又はフェノキチアジンである安定剤を0.5質量%含む熱サイクルシステム用組成物を用いた冷凍サイクルシステムであり、作動媒体蒸気を圧縮して高温高圧の作動媒体蒸気とする圧縮機と、圧縮機から排出された作動媒体蒸気を冷却し、液化して低温高圧の作動媒体とする凝縮器と、凝縮器から排出された作動媒体を膨張させて低温低圧の作動媒体とする膨張弁と、膨張弁から排出された作動媒体を加熱して高温低圧の作動媒体蒸気とする蒸発器と、蒸発器に負荷流体を供給するポンプと、凝縮器に流体を供給するポンプとを具備して構成されるシステム」(以下「甲2発明」という。) 3 取消理由1及び2(新規性・進歩性欠如)について (1)本件発明2について ア 対比 本件発明2と甲2発明を対比する。 甲2発明の「冷凍サイクルシステム」は、本件発明1の「冷凍サイクル装置」に相当し、甲2発明は冷凍機油を含む熱サイクルシステム用組成物を用いた冷凍サイクルシステムであることから、甲2発明の「作動媒体」は、本件発明2の「冷媒」に相当する。 甲2発明の「HFO-1132(E)とHFO-1234yfが質量比50:50である作動媒体」は、本件発明2の「HFO-1132(E)及びHFO-1234yf、を含み、前記冷媒は、HFO-1132(E)及びHFO-1234yfをこれらの濃度の総和で99.7質量%以上含有し」に相当する。また、甲2発明の「作動媒体蒸気を圧縮して高温高圧の作動媒体蒸気とする圧縮機」、「圧縮機から排出された作動媒体蒸気を冷却し、液化して低温高圧の作動媒体とする凝縮器」、「凝縮器から排出された作動媒体を膨張させて低温低圧の作動媒体とする膨張弁」及び「膨張弁から排出された作動媒体を加熱して高温低圧の作動媒体蒸気とする蒸発器」は、それぞれ、本件発明1の「圧縮機」、「凝縮器」、「減圧部」及び「蒸発器」に相当する。 甲2発明の冷凍サイクルシステムは、「蒸発器に負荷流体を供給するポンプと、凝縮器に流体を供給するポンプとを具備」しており、「作動媒体蒸気を圧縮して高温高圧の作動媒体蒸気とする圧縮機」、「圧縮機から排出された作動媒体蒸気を冷却し、液化して低温高圧の作動媒体とする凝縮器」、「凝縮器から排出された作動媒体を膨張させて低温低圧の作動媒体とする膨張弁」及び「膨張弁から排出された作動媒体を加熱して高温低圧の作動媒体蒸気とする蒸発器」が、冷媒配管で接続され、内部を作動媒体が循環する冷媒回路を備えていることは明らかであるから、本件発明1の「冷媒回路に封入された冷媒を備え」を充足する。 そうすると、両者は、「圧縮機と凝縮器と減圧部と蒸発器とを有する冷媒回路と、 前記冷媒回路に封入された冷媒と、 を備え、 前記冷媒は、HFO-1132(E)及びHFO-1234yf、を含み、 前記冷媒は、HFO-1132(E)及びHFO-1234yfをこれらの濃度の総和で99.7質量%以上含有」する「冷凍サイクル装置」の点で一致し、以下の相違点1で相違する。 (相違点1) HFO-1132(E)及びHFO-1234yfの全質量に対する、HFO-1132(E)とHFO-1234yfの含有割合が、本件発明2は、12.1~45.0質量%と87.9~55.0質量%であるのに対し、甲2発明はいずれも50質量%である点。 イ 判断イ 判断 (ア) 相違点1は実質的な相違点であるから、本件発明2は、甲2に記載された発明ではない。 (イ) 前記1(2)の段落[0010]のとおり、甲2は、HFO-1132を含む熱サイクルシステム用組成物におけるHFO-1132の安定化等を解決しようとする課題とするものであり、同[0011]及び請求項1のとおり、「1,2-ジフルオロエチレンを含む熱サイクル用作動媒体」とその「劣化を抑制する安定剤」を含む組成物を提供することを開示するものであり、実施例において、種々の安定剤の添加による組成物の酸分や全酸価が確認されているものの、主としてHFO-1132(E)に加えてHFO-1234yfのみを含む作動媒体として、甲2発明の認定の根拠である作動媒体19が記載されるのみである。 (ウ) 前記1(2)のとおり、甲2には、段落[0041]に「HFO-1132とHFO-1234yfまたはHFO-1234zeとからなる作動媒体の場合、HFO-1234fまたはHFO-1234zeの含量が1~99質量%の範囲で成績係数が向上する」と記載された上で、[00042]に「HFO-1132とHFO-1234yfを含む作動媒体の場合、例えば、作動媒体全量に対するHFO-1132とHFO-1234yfの合計量の割合が70~100質量%であり、HFO-1132とHFO-1234yfの合計量に対するHFO-1234yfの割合が5~65質量%である作動媒体が、サイクル能力、温度勾配、GWPのバランスの点から好ましい」と記載されている。 甲2の[0022]の「サイクル性能は、後述する方法で求められる成績係数と冷凍能力で示される」との記載から[0042]の「サイクル能力」は[0041]の「成績係数」と関連することは明らかであることからも、これらの記載に接した当業者は、甲2には「作動媒体全量に対するHFO-1132とHFO-1234yfの合計量の割合が70~100質量%」について、HFO-1234yfの含有量を99質量%まで増加させることではなく、「HFO-1132とHFO-1234yfの合計量に対するHFO-1234yfの割合」を「5~65質量%」、すなわち、「HFO-1132」の割合を「35~95質量%」とすることが好ましいことが記載されていると理解するといえる。 (エ) 一方、本件明細書には、HFO-1132(E)及びHFO-1234yfの全質量に対するHFO-1132(E)とHFO-1234yfの含有割合の異なる冷媒C2、C3及びC5について、以下の記載がなされている。 a 冷媒C2は、R404Aと同等又はそれ以上のCOPを有し、R404Aと同等又はそれ以上の冷凍能力を有しており、飽和濃度40℃の飽和圧力が、1.75MPa以上1.88Pa以下となり、市販のR404A用冷凍装置に対して大きな設計変更なく適用することができるものであり(【1018】~【1020】)、HFO-1132(E)とHFO-1234yfの質量比が40.0:60.0~49.2:50.8の範囲である比較例2-20及び実施例2-13~2-18は、40℃の飽和圧力が1.745~1.874MPaでありR404Aの同値(1.822MPa)と同程度である(【表224】)。 b 冷媒C3は、R134aと同等程度のCOPを有し、R134aと比較して150%以上の冷凍能力を有しており、吐出温度が90℃以下でR134a用冷凍装置の部材の寿命を長く確保できるものであり(【1049】~【1052】)、HFO-1132(E)とHFO-1234yfの質量比が30.0:70.0~40.0:60.0の範囲である比較例3-2、実施例3-1~3-5及び比較例3-3は、R134aに対して91.8~92.7%程度のCOPを有し、R134aに対して148.3%以上の冷凍能力を有しており、吐出温度が90.1℃以下である(【表227】)。 c 冷媒C5は、電気自動車でヒートポンプを用いて暖房する場合に有利な-40℃以下の沸点を確保できるものであり(【1110】~【1113】)、(【表229】)、HFO-1132(E)とHFO-1234yfの質量比が12.1:87.9以上である実施例5-1~5-13では暖房にヒートポンプ方式が利用できる(【表229】)。 (オ) 甲2には、通常の空調機器等に広く用いられてきた冷媒として、R410A(HFC-32とHFC-125の質量比1:1の擬似共沸混合冷媒)の記載はあるものの(前記1(2)の段落[0022]に加え、同[0003]及び[0004])、R404AやR134aに関する記載はなく、HFO-1132とHFO-1234yfの合計量に対するHFO-1132(E)の含有割合が一定の範囲であることにより、COP及び冷凍能力のいずれもが、R404A又はR134aと同程度又はそれ以上であり、R404A用冷凍装置からの設計変更が不要であること又はR134a用冷凍装置の部材の寿命を長く確保できることを開示ないし示唆するものではない。 また、これらの事項が本件優先日当時の技術常識や、甲2~甲5の記載から明らかということもできない。 (カ) そうすると、甲2の記載に接した当業者は、前記(ウ)の記載から、HFO-1132(E)とHFO-1234yfの合計量に対するHFO-1132(E)の含有割合を35質量%以上とすることを想起し得たとしても、R404Aと同等又はそれ以上のCOPや冷凍能力、及び、飽和濃度40℃の飽和圧力等に着目してHFO-1132(E)の含有割合を40.0~49.2質量%とすることや、R134aと同等程度のCOPや150%以上の冷凍能力、及び、吐出温度等に着目して、HFO-1132(E)の含有割合を~40.0質量%とすることを想起したとはいえず、前記(エ)の効果について、本件優先日当時、本件発明2の構成が奏するものとして予測することができたともいえない。 なお、前記(ウ)のとおり、甲2の[0042]の記載から、甲2の記載に接した当業者が、専ら成績係数のみを考慮して[0041]の記載に基づいてHFO-1234yfの含有割合を99質量%まで増加させることを想起するものではないが、仮に、甲2の記載に基づきHFO-1234yfの含有割合を99質量%まで増加させることを想起し得たとしても、甲2には、冷媒を電気自動車でのヒートポンプを用いた暖房に用いることについて記載も示唆もされておらず、HFO-1234yfの沸点(いずれの甲号証にも記載がないが、本願の【表229】には-28.5℃と記載されている。)及びHFO-1132(E)の沸点(甲1の【表3】によれば、-53.1℃である。)を勘案しても、HFO-1132(E)の含有割合を12.1質量%以上、すなわち、HFO-1234yfの含有割合を87.9質量%以下とすることを動機づけられるとも、そのような含有割合であれば前記(エ)cのとおり-40℃以下の沸点が確保できることを予測し得たともいえない。 ウ 小括 したがって、本件発明2は、甲2に記載された発明ではなく、甲2に記載された発明及び甲2~甲5に記載の事項に基いて当業者が容易に想到し得たものでもない。 (2) 本件発明3 ア 対比 本件発明3と甲2発明は、下記相違点2で相違する。 (相違点2) HFO-1132(E)及びHFO-1234yfの全質量に対する、HFO-1132(E)とHFO-1234yfの含有割合が、本件発明3は、40.5~49.2質量%と59.5~50.8質量%であるのに対し、甲2発明はいずれも50質量%である点。 イ 検討 前記(1)イ(イ)~(カ)において検討したとおり、甲2の記載に接した当業者は、HFO-1132(E)とHFO-1234yfの合計量に対するHFO-1132(E)の含有割合が40.5~49.2質量%とすることを想起し得たとはいえず、前記(1)イ(エ)aの効果について、本件優先日当時、本件発明3の構成が奏するものとして予測できたともいえない。 したがって、前記(1)で検討したとおりの理由から、本件発明3は、甲2に記載された発明ではなく、また、甲2に記載された発明及び甲2~甲5に記載の事項に基いて当業者が容易に想到し得たものでもない。 (3)本件発明4 ア 対比 本件発明4と甲2発明は、下記相違点3で相違する。 (相違点3) HFO-1132(E)及びHFO-1234yfの全質量に対する、HFO-1132(E)とHFO-1234yfの含有割合が、本件発明4は、31.1~39.8質量%と68.9~60.2質量%であるのに対し、甲2発明はいずれも50質量%である点。 イ 検討 前記(1)イ(イ)~(カ)において検討したとおり、甲2の記載に接した当業者は、HFO-1132(E)とHFO-1234yfの合計量に対するHFO-1132(E)の含有割合を31.1~39.8質量%とすることを想起し得たとしても、前記(1)イ(エ)bの効果について、本件優先日当時、本件発明4の構成が奏するものとして予測できたとはいえない。 したがって、前記(1)で検討したとおりの理由から、本件発明4は、甲2に記載された発明ではなく、また、甲2に記載された発明及び甲2~甲5に記載の事項に基いて当業者が容易に想到し得たものでもない。 (4)本件発明5 ア 対比 本件発明5と甲2発明は、下記相違点4で相違する。 (相違点4) HFO-1132(E)及びHFO-1234yfの全質量に対する、HFO-1132(E)とHFO-1234yfの含有割合が、本件発明5は、21.0~28.4質量%と79.0~71.6質量%であるのに対し、甲2発明はいずれも50質量%である点。 イ 検討 前記(1)イ(ウ)から、甲2は、HFO-1132(E)とHFO-1234yfの合計量に対するHFO-1132(E)の含有割合が35質量%未満である21.0~28.4質量%という範囲の冷媒を含む冷凍サイクル装置を製造することを動機づけるものではないから、本件発明5は、甲2に記載された発明ではなく、また、甲2に記載された発明及び甲2~甲5に記載の事項に基いて当業者が容易に想到し得たものでもない。 (5)本件発明8~18 本件発明8~18は、本件発明2~5のいずれかの従属請求項であり、さらに特定事項を加えたものであるから、前記(1)~(4)で検討したとおり、甲2に記載された発明ではなく、また、甲2に記載された発明、及び、甲2~甲5に記載された事項に基いて当業者が容易に想到し得たものでもない。 (6)申立人の主張について ア 申立人の主張 申立人は、令和8年2月25日提出の意見書において、概略、以下のとおり主張する。 (ア) 令和7年12月29日に特許権者が提出した意見書で主張された本件発明の冷媒の効果について 甲2に開示された作動媒体は冷媒C5、C2、C3及びC4と同様の含有割合の範囲内に含まれるから、意見書で述べられた“特有の効果”を冷媒C5、C2、C3及びC4と同様に奏するといえる。 (イ) 本件発明5について 甲2の[0041]にHFO-1234yfの含有量が1~99質量%の範囲で成績係数が向上する旨記載されていること、[0040]にHFO-1132以外のHFOとしてHFO-1234yfが好ましい点が記載されていること、[0021]に作動媒体の100質量%に対するHFO-1132の含有割合は20質量%以上が好ましいこと、及び、[0022]にHFO-1132としてHFO-1132(E)を単独で用いてもよい旨記載されているから、HFO-1132とHFO-1234yfの合計量に対するHFO-1132(E)の含有割合を21.0~28.4質量%とすることは甲2に記載された範囲内の事項である。 イ 申立人の主張についての検討 (ア) 前記ア(ア)の主張について 冷媒C5、C2、C3及びC4は、それぞれ、本件発明2~5に対応する冷媒である。 前記(1)イ(ウ)のとおり、甲2の記載はHFO-1132(E)の割合を35質量%未満とすることを動機づけるものではないから、本件発明5に係る冷媒C4、及び、本件発明2に係る冷媒C5のHFO-1132(E)が~35質量%である態様に関する効果は、進歩性の判断に何ら影響を与えるものではない。 そこで、冷媒C2(本件発明3)及び冷媒C3(本件発明4)について検討すると、特許権者が令和7年12月29日に提出した意見書((5-2-3)及び(5-3-3))における主張は、概略以下のとおりである。 冷媒C2は、GWPが小さく(100以下)、R404Aと同等又はそれ以上のCOPを有しており、R404Aと同等又はそれ以上の冷凍能力を有しており、飽和温度40℃の飽和圧力が1.75MPa以上1.88MPa以下となり、市販のR404A用冷凍装置に対して大きな設計変更なく適用できるという効果を奏するものである。 冷媒C3は、GWPが小さく(100以下)、R134aと同等又はそれ以上のCOPを有しており、R134aと比較して150%以上の冷凍能力を有しており、吐出温度が90℃以下であり、冷凍サイクルにおける吐出温度を90℃以下に維持し、R134a用冷凍装置の部材の寿命を長く確保できるという効果を奏するものである。 本件発明の効果が予測できないものであるか否かについては、本件出願日当時、本件発明の構成が奏するものとして当業者が予測することができなかったものか否か、当該構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものであるか否かという観点から検討すべきである(最高裁平成30年(行ヒ)第69号参照)。 しかしながら、申立人の前記ア(ア)の主張は、意見書において特許権者が主張する本件発明の効果が、本件発明の構成が奏するものとして本願優先日当時当業者が予測できたことを何ら指摘するものではないから、申立人の主張は採用できない。 (イ) 前記ア(イ)の主張について 甲2の[0021]、[0022]、[0040]及び[0041]の記載自体は、申立人の主張どおりであるとしても、それに続く[0042]の記載から、甲2は、HFO-1132とHFO-1234yfの合計量に対するHFO-1132(E)の含有割合を21.0~28.4質量%とすることを記載乃至示唆するものではないことは、前記(1)イ(ウ)で検討したとおりである。 したがって、申立人の主張は、採用できない。 (7)小括 以上のとおりであるから、本件発明2~5、8~18は、甲2に記載された発明ではなく、また、甲2に記載された発明、及び、甲2~甲5に記載された事項に基づいて当業者が容易に想到し得たものでもない。 4 取消理由1(新規性)、取消理由3(同日出願)及び取消理由4(明確性要件)について (1)請求項1、6、7に係る特許についての取消理由1(新規性)について 本件訂正による請求項1、6、7の削除に伴い、当該取消理由は解消した。 (3) 取消理由3(同日出願)について 同日出願1(特願2023-116594号(特許第7610143号))の訂正による請求項20の削除に伴い、当該取消理由は解消した。 (3)取消理由4(明確性) 本件訂正により、請求項17が請求項16を引用しないものとなったことにより、当該取消理由は解消した。 5 申立理由1(甲1を主引用例とする進歩性欠如)について 前記1(1)のとおり、甲1は、「低いGWPを有する(E)-HFO-1132を含有し、オゾン層への影響が少なく、地球温暖化への影響が少ないうえに、サイクル性能に優れる、生産性が高い熱サイクル用作動媒体を提供すること」及び「粗HFO-1132からの不純物を低減する工程をできるだけ簡略化して、サイクル性能に優れる熱サイクル用作動媒体を得ること」を目的とするものであり(【0007】~【0010】)、実施例として、粗(E)-HFO-1132の製造とその蒸留による精製等(【0052】~【0069】)と共に、「(E)-1,2-ジフルオロエチレンと、 1,1-ジフルオロエチレン、フルオロエチレン、フルオロエタン、(Z)-1,2-ジフルオロエチレンおよびエチレンからなる群から選択される少なくとも1つである第1の化合物を含有することを特徴とする熱サイクル用作動媒体」(請求項1等)を記載するものである。 甲1には、(E)-HFO-1132及びHFO-1234yfをこれらの濃度の総和で99.5質量%以上含有する作動媒体について、実施例の記載はなされておらず、【0016】~【0021】等の記載も、このような組成を具体的に開示ないし示唆するものではない。 したがって、甲1の段落【0019】の「本発明の作動媒体においては、(E)-HFO-1132を、ジフルオロメタン(HFC-32)や2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)等と混合して(E)-HFO-1132の含有量の割合(以下、含有量の割合を含有割合ともいう。)を抑えることで、自己分解反応を抑えることができる。(E)-HFO-1132の含有割合を80質量%以下とした場合、熱サイクルシステムに適用する場合の温度や圧力条件下では自己分解性を有しないため、安全性の高い作動媒体を得ることができる。」との記載から、当業者が、作動媒体中の(E)-HFO-1132の含有割合を80質量%以下とすることを想起し得たとしても、作動媒体が、(E)-HFO-1132及びHFO-1234yfをこれらの濃度の総和で99.5質量%又は99.7質量%以上含有する作動媒体であって、(E)-HFO-1132とHFO-1234yfについて本件発明に規定される含有割合とすることを動機づけられたとはいえず、前記3(1)イで検討した本件発明により奏される効果を予測し得たということもできない。 したがって、本件発明2~5、8~18は、甲1に記載された発明、及び、甲3~甲5に記載された事項に基いて当業者が容易に想到し得たものであるとの申立理由1は採用できない。 第6 まとめ 以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項2~5、8~18に係る特許を取り消すことはできず、他に本件請求項2~5、8~18に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 また、請求項1、6及び7は、前記のとおり、訂正により削除された。これにより、申立人による特許異議の申立てについて、請求項1、6及び7に係る申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。 よって、結論のとおり決定する。

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2025-700676

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