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特許異議申立

2019-700657

免震構造

審判番号
2019-700657
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2017-235078
登録番号
特許第6494054号(P6494054)
請求日
2019年08月21日
審決日
2020年06月08日
公報発行日
2020年09月25日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】中村物産有限会社
  • 【権利者代理人】細井 勇
  • 【権利者代理人】栗田 由貴子
  • 【異議申立人】出川 栄一郎
審判長/審判官
  • 審判長 森次 顕
  • 審判官 土屋 真理子
  • 審判官 有家 秀郎
分類
P1651.121-YAA(E04H)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法120条の8第1項特許法135条
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の8第1項、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特許第6494054号発明「免震構造」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

【結 論】 特許第6494054号の明細書、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-6〕について訂正することを認める。 特許第6494054号の請求項1~5に係る特許を維持する。 特許第6494054号の請求項6に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯 特許第6494054号の請求項1~6に係る特許についての出願は、平成29年12月7日に出願され、平成31年3月15日にその特許権の設定登録がされ、平成31年4月3日に特許掲載公報が発行された。 その特許についての本件特許異議の申立ての手続の経緯は、次のとおりである。 令和1年 8月21日  :特許異議申立人出川栄一郎(以下、「申立人 」という。)による請求項1~6に係る特許 に対する特許異議の申立て 令和1年11月28日付け:取消理由通知 (令和1年12月 4日発送) 令和2年 1月31日  :意見書及び訂正請求書の提出(特許権者、 以下、当該訂正請求書による訂正請求を「本              件訂正請求」という。) 令和2年 3月13日  :意見書の提出(特許異議申立人) 第2 本件訂正請求について 1 訂正の内容 本件訂正請求による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、以下のとおりである。(下線は、訂正箇所を示す。以下、同様。) ア 訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に、 「上部構造体と、下部構造体と、前記上部構造体と前記下部構造体との間に位置する免震装置と、を備え、 前記下部構造体が、前記上部構造体の側壁の一部に対し対向するとともに前記側壁と離間した対向壁を有し、 前記側壁の表面に、前記対向壁に面する位置に発泡樹脂体を備える衝撃吸収部材が設置されているとともに、前記衝撃吸収部材と前記対向壁との間には、空間が設けられているか、または、 前記対向壁の表面に、前記側壁に面する位置に発泡樹脂体を備える衝撃吸収部材が設置されているとともに、前記衝撃吸収部材と前記側壁との間には、空間が設けられており、前記側壁の表面に設置された前記衝撃吸収部材と前記対向壁との距離または前記対向壁の表面に設置された前記衝撃吸収部材と前記側壁との距離が、前記側壁と前記対向壁との最短距離よりも小さいことを特徴とする免震構造。」 と記載されているのを、 「上部構造体と、下部構造体と、前記上部構造体と前記下部構造体との間に位置する免震装置と、を備え、 前記下部構造体が、前記上部構造体の側壁の一部に対し対向するとともに前記側壁と離間した対向壁を有し、 前記側壁の表面に、前記対向壁に面する位置に発泡樹脂体を備える衝撃吸収部材が設置されているとともに、前記衝撃吸収部材と前記対向壁との間には、空間が設けられており、前記側壁の表面に設置された前記衝撃吸収部材と前記対向壁との距離が、前記側壁と前記対向壁との最短距離よりも小さく、 前記衝撃吸収部材は、前記側壁から前記対向壁に向かって、断面積が連続的または段階的に減少していることを特徴とする免震構造。」に訂正する。 請求項1の記載を直接的または間接的に引用する請求項2ないし5も同様に訂正する。 イ 訂正事項2 特許請求の範囲の請求項6を削除する。 ウ 訂正事項3 明細書段落【0011】に、 「本発明の免震構造は、上部構造体と、下部構造体と、前記上部構造体と前記下部構造体との間に位置する免震装置と、を備え、前記下部構造体が、前記上部構造体の側壁の一部に対し対向するとともに前記側壁と離間した対向壁を有し、前記側壁の表面に、前記対向壁に面する位置に発泡樹脂体を備える衝撃吸収部材が設置されているとともに、前記衝撃吸収部材と前記対向壁との間には、空間が設けられているか、または、前記対向壁の表面に、前記側壁に面する位置に発泡樹脂体を備える衝撃吸収部材が設置されているとともに、前記衝撃吸収部材と前記側壁との間には、空間が設けられており、前記側壁の表面に設置された前記衝撃吸収部材と前記対向壁との距離または前記対向壁の表面に設置された前記衝撃吸収部材と前記側壁との距離が、前記側壁と前記対向壁との最短距離よりも小さいことを特徴とする。」 と記載されているのを、 「本発明の免震構造は、上部構造体と、下部構造体と、前記上部構造体と前記下部構造体との間に位置する免震装置と、を備え、前記下部構造体が、前記上部構造体の側壁の一部に対し対向するとともに前記側壁と離間した対向壁を有し、前記側壁の表面に、前記対向壁に面する位置に発泡樹脂体を備える衝撃吸収部材が設置されているとともに、前記衝撃吸収部材と前記対向壁との間には、空間が設けられており、前記側壁の表面に設置された前記衝撃吸収部材と前記対向壁との距離が、前記側壁と前記対向壁との最短距離よりも小さく、前記衝撃吸収部材は、前記側壁から前記対向壁に向かって、断面積が連続的または段階的に減少していることを特徴とする。」 に訂正する。 2 訂正の適否の判断 (1)訂正の目的、特許請求の範囲の拡張または変更、新規事項の追加について ア 訂正事項1 (ア)訂正の目的について 訂正事項1は、訂正前の請求項1において、「前記側壁の表面に、前記対向壁に面する位置に発泡樹脂体を備える衝撃吸収部材が設置されているとともに、前記衝撃吸収部材と前記対向壁との間には、空間が設けられているか、または、 前記対向壁の表面に、前記側壁に面する位置に発泡樹脂体を備える衝撃吸収部材が設置されているとともに、前記衝撃吸収部材と前記側壁との間には、空間が設けられており、前記側壁の表面に設置された前記衝撃吸収部材と前記対向壁との距離または前記対向壁の表面に設置された前記衝撃吸収部材と前記側壁との距離が、前記側壁と前記対向壁との最短距離よりも小さい」として衝撃吸収部材が側壁及び対向壁に設置される場合について択一的な記載がされていたものを、訂正後の請求項1においては、衝撃吸収部材が対向壁に設置されるものを削除して、「前記側壁の表面に、前記対向壁に面する位置に発泡樹脂体を備える衝撃吸収部材が設置されているとともに、前記衝撃吸収部材と前記対向壁との間には、空間が設けられており、前記側壁の表面に設置された前記衝撃吸収部材と前記対向壁との距離が、前記側壁と前記対向壁との最短距離よりも小さく」とし、さらに衝撃吸収部材を「前記側壁から前記対向壁に向かって、断面積が連続的または段階的に減少している」構成のものに限定する訂正であるから、訂正事項1は、特許請求の範囲の減縮を目的とした訂正である。 (イ)特許請求の範囲の拡張または変更について 訂正事項1は、上記(ア)のとおり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (ウ)新規事項の追加について 本件明細書の段落【0048】~【0053】には、第三実施形態として断面積が変化する例について説示しており、段落【0049】には、「本実施形態において説明する衝撃吸収部材40は、側壁12から対向壁22に向かって、断面積が連続的または断続的に減少している。・・・」と記載されている。 よって、訂正事項1は、明細書に記載された事項の範囲内でしたものと認められ、新規事項の追加に該当しない。 イ 訂正事項2 訂正事項2は、訂正前の請求項6の記載を削除する訂正であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであることは明らかである。 ウ 訂正事項3 (ア)訂正の目的について 訂正事項3は、明細書の段落【0011】の記載と訂正後の請求項1の記載とを整合させるための訂正であり、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 (イ)特許請求の範囲の拡張または変更について 訂正事項3に係る訂正は、上記(ア)のとおり、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (ウ)新規事項の追加について 訂正事項3に係る訂正は、上記(ア)のとおり、明細書の記載と訂正後の請求項1の記載とを整合させるための訂正であり、訂正後の請求項1は、上記ア(ウ)のとおり、明細書に記載された事項の範囲内でしたものであるから、訂正事項3に係る訂正も、願書に添付した明細書、特許請求の範囲または図面に記載した事項の範囲内の訂正である。 (2)一群の請求項について 訂正前の請求項1~6について、訂正前の請求項2~6は訂正前の請求項1を直接的または間接的に引用するものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものであるから、訂正前の請求項1~6に対応する訂正後の請求項1~6は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。 また、明細書に係る訂正は、一群の請求項〔1~6〕について請求されたものである。 よって、訂正事項1~3の訂正は、一群の請求項〔1~6〕に対して請求されたものである。 (3)独立特許要件について 本件においては、訂正前の請求項1~6について特許異議の申立てがされているから、訂正事項1の訂正は、いずれも特許異議の申立てがされている請求項に係る訂正であり、訂正事項1により特許請求の範囲の限定的減縮が行われていても、訂正後の請求項1~6に係る発明について、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。 3 まとめ 以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 したがって、明細書、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~6〕について訂正することを認める。 第3 訂正後の本件発明 本件訂正請求により訂正された請求項1~6に係る発明(以下、「本件訂正発明1」等という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~6に記載された次の事項により特定される以下のとおりのものである。 「【請求項1】 上部構造体と、下部構造体と、前記上部構造体と前記下部構造体との間に位置する免震装置と、を備え、 前記下部構造体が、前記上部構造体の側壁の一部に対し対向するとともに前記側壁と離間した対向壁を有し、 前記側壁の表面に、前記対向壁に面する位置に発泡樹脂体を備える衝撃吸収部材が設置されているとともに、前記衝撃吸収部材と前記対向壁との間には、空間が設けられており、前記側壁の表面に設置された前記衝撃吸収部材と前記対向壁との距離が、前記側壁と前記対向壁との最短距離よりも小さく、 前記衝撃吸収部材は、前記側壁から前記対向壁に向かって、断面積が連続的または段階的に減少していることを特徴とする免震構造。 【請求項2】 前記発泡樹脂体がポリプロピレン系樹脂発泡体またはポリエチレン系樹脂発泡体である請求項1に記載の免震構造。 【請求項3】 前記衝撃吸収部材の中間部において、前記側壁に対し略平行な方向に延在する荷重分散板が配置されている請求項1または2に記載の免震構造。 【請求項4】 前記上部構造の角部の頂点近傍または頂点を覆う箇所に前記衝撃吸収部材が配置されている請求項1から3のいずれか一項に記載の免震構造。 【請求項5】 前記側壁の前記衝撃吸収部材が配置された第一領域、または前記対向壁の前記衝撃吸収部材に対向する第二領域の少なくともいずれか一方に金属補強手段が設けられている請求項1から4のいずれか一項に記載の免震構造。 【請求項6】 (削除)」 第4 申立人により提出された証拠、参考資料及びそれらの記載内容について 1 証拠、参考資料一覧 申立人が特許異議申立書とともに提出した証拠及び令和2年3月13日付けの意見書とともに提出した参考資料は、以下の通りである。 甲第1号証:特開2017-82433号公報 甲第2号証:特開2016-199910号公報 甲第3号証:特開2017-48546号公報 甲第4号証:特開2016-180292号公報 甲第5号証:特開2007-70857号公報 参考資料1:特開2014-77229号公報 参考資料2:特開2001-207682号公報 2 証拠及び参考資料の記載内容 (1)甲第1号証:特開2017-82433号公報 申立人が特許異議申立てに係る証拠として提出した、本件特許の出願前に出願公開がされた甲第1号証には、次の事項が記載されている。(下線は当審で付した。以下同様。) ア 「【0009】 図1は、設計しようとする免震構造物1の概略図である。図1に示すように、下部構造物である基礎2が地盤に設けられ、基礎2の周縁部に擁壁(離間物)4が立設されている。基礎2上には複数の免震基礎(下部免震基礎)5が凸状に設けられ、免震装置6が免震基礎5上にそれぞれ設置されている。図1に示す建物7は、複数階の上部構造物である。建物7の各柱の下端部には柱脚部(上部免震基礎)8が設けられ、各柱脚部8が免震装置6上に搭載された状態で免震装置6に連結され、免震装置6によって建物7が水平方向に移動可能に支持されている。これら柱脚部8は擁壁4の内側に配置され、柱脚部8の高さ方向の大部分が擁壁4の上端よりも下に位置している。そして、建物7の周縁部に配置された柱脚部8と擁壁4との間に隙間9が設けられている。その隙間9の幅、つまり柱脚部8から擁壁4までの水平距離をL[mm]とすると、L[mm]の具体的な値は例えば500~700[mm]である。」 イ 「【0011】 図2~図5は、図1に示すα部を拡大して示すものである。図2~図5に示すように、免震構造物1には4つの仕様がある。 図2に示すように、第1仕様の免震構造物1では、擁壁4と柱脚部8との間が単なる空間とされており、擁壁4と柱脚部8との間には障害物等が設けられていない。 図3及び図4に示すように、第2及び第3仕様では、周辺部に配置された柱脚部8の近傍において、緩衝材10が擁壁4に設けられている。 第2仕様と第3仕様の相違について説明する。図3に示すように、第2仕様の免震構造物1では、その擁壁4の内側の一部分が緩衝材10となっており、緩衝材10から柱脚部8までの水平距離が柱脚部8から擁壁4までの水平距離Lに等しい。つまり、緩衝材10が擁壁4の内面4aにおいて露出するようにして擁壁4に埋設され、その緩衝材10の表面10aと擁壁4の内面4aが面一となっている。一方、図4に示すように、第3仕様の免震構造物1では、緩衝材10が擁壁4の内面4aに張り付けられるようにして設置され、緩衝材10の表面10aと擁壁4の内面4aとの間に段差が形成されており、緩衝材10から柱脚部8までの距離が柱脚部8から擁壁4までの水平距離Lよりも小さい。 図5に示すように、第4仕様の免震構造物1では、周辺部に配置された柱脚部8の側面に緩衝材10が取り付けられており、緩衝材10から擁壁4までの距離が柱脚部8から擁壁4までの水平距離Lよりも小さい。 【0012】 緩衝材10は、例えば樹脂製(例えばポリプロピレン製)のハニカム構造板やゴム製の防舷材である。このような緩衝材10が設けられることで、大地震或いは巨大地震の発生時に柱脚部8が緩衝材10に衝突したときに、緩衝材10が塑性的に圧縮されることによって建物7の振動エネルギーが吸収され、柱脚部8や擁壁4の破損を防止できる。また、柱脚部8と緩衝材10の衝突によって建物7の振幅を小さく抑えることができ、免震装置6の過大な変形を防止できる。なお、緩衝材10は、柱脚部8との衝突によって建物7の振動エネルギーを吸収するものであれば、ハニカム構造板に限るものではない。」 ウ 図5 「 」 エ 上記ア~ウを踏まえると、甲第1号証には以下の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。 甲1発明 「下部構造物である基礎2が地盤に設けられ、基礎2の周縁部に擁壁4が立設され、 基礎2上には複数の免震基礎5が凸状に設けられ、免震装置6が免震基礎5上にそれぞれ設置され、 上部構造物である建物7の各柱の下端部には柱脚部8が設けられ、 各柱脚部8が免震装置6上に搭載された状態で免震装置6に連結され、 免震装置6によって建物7が水平方向に移動可能に支持されており、 柱脚部8は擁壁4の内側に配置され、柱脚部8の高さ方向の大部分が擁壁4の上端よりも下に位置し、建物7の周縁部に配置された柱脚部8と擁壁4との間に隙間9が設けられており、 第4仕様の免震構造物1では、周縁部に配置された柱脚部8の側面に緩衝材10が取り付けられ、緩衝材10から擁壁4までの距離が柱脚部8から擁壁4までの水平距離Lよりも小さくされており、 緩衝材10は、例えば樹脂製(例えばポリプロピレン製)のハニカム構造板やゴム製の防舷材であって、大地震或いは巨大地震の発生時に柱脚部8が緩衝材10に衝突したときに、緩衝材10が塑性的に圧縮されることによって建物7の振動エネルギーが吸収され、柱脚部8や擁壁4の破損を防止できるものである、免震構造物1の免震構造。」 (2)甲第2号証:特開2016-199910号公報 申立人が特許異議申立てに係る証拠として提出した、本件特許の出願前に出願公開がされた甲第2号証には、次の事項が記載されている。 ア 「【0017】 (第1の実施形態) 図1および図2は、本発明に係る免震構造の第1の実施形態を示すもので、基礎1と建物2との間に免震装置3が介装されることにより免震層4が形成された免震建物の周囲に、擁壁5が構築されている。 【0018】 ここで、免震装置3は、その上下フランジ3a、3bが各々基礎1上および建物2の柱6の下部に一体に構築された台座7、8に取り付けられている。そして、図2に示す平面視において、台座8が建物2の梁9から外方に突出して形成されており、この台座(外周部)8と擁壁5との間に、レベル2以下の地震動に対して建物2が水平変位しても台座8が擁壁5に衝突しない間隔の免震クリアランスCが形成されている。 【0019】 そしてさらに、擁壁5の台座8と対向する部分には、当該擁壁5が取り除かれた凹部10が形成されている。この凹部10は、鉛直方向および水平方向に台座8よりも高さ寸法および水平方向の寸法が大きく形成されており、その内壁面には土圧を支持するための鋼板等からなる補強板11がアンカー12によって擁壁5に固定されている。 【0020】 そして、この凹部10内に減衰材13が貼り付けられている。この減衰材13は、巨大地震時に建物2が大きく水平変位して台座8が擁壁5に衝突した際にそのエネルギーを吸収可能な材料、例えば減衰ゴム、防舷材、発泡スチロール等によって方形板状に形成されたもので、その外表面が擁壁5の表面と略同一平面上に位置する厚さ寸法に形成されている。」 イ 「【0026】 (第3の実施形態)図5は、本発明の第3の実施形態を示すもので、この免震構造は、擁壁5と対向する建物2の台座8に凹部17を形成し、この凹部17内に第1の実施形態に示したものと同様の減衰材13を設けたものである。」 ウ 上記ア、イに摘記した記載を踏まえると、甲第2号証には以下の技術事項(以下「甲2技術事項」という。)が記載されていると認められる。 甲2技術事項 「免震構造において、 基礎1と建物2との間に免震装置3が介装されることにより免震層4が形成された免震建物の周囲に、擁壁5が構築され、 台座8が建物2の梁9から外方に突出して形成され、 この台座(外周部)8と擁壁5との間に、建物2が水平変位しても台座8が擁壁5に衝突しない間隔の免震クリアランスCが形成され、 この台座8の擁壁5と対向する部分に形成された凹部17内に方形板状に形成された減衰材13が貼り付けられ、 この減衰材13を、巨大地震時に建物2が大きく水平変位して台座8が擁壁5に衝突した際にそのエネルギーを吸収可能な材料、例えば発泡スチロールによって形成した点。」 (3)甲第3号証:特開2017-48546号公報 申立人が特許異議申立てに係る証拠として提出した、本件特許の出願前に出願公開がされた甲第3号証には、次の事項が記載されている。 ア 「【0003】 一方、従来、建造物の基礎に用いられる免震構造としては種々のものがある。 例えば、住宅を構築する地盤を、住宅の外周形状よりやや大きく凹状に掘削して、外周に周壁を有する凹部を形成し、且つ該凹部の底盤面に平滑性を持たせる一方、強度性と柔軟性を有する天然ゴム、合成ゴムあるいは合成樹脂により形成され、上・下面シートの外周を周壁板で一体に接合して中空部を設け、且つ該中空部内に前記上・下面シートよりは小巾で、且つ摩擦係数が小さい合成樹脂板より成る中間板を装入すると共に、前記中空部内に潤滑性を有する液状・クリーム状・粉状あるいはゼリー状の潤滑材を多少の空隙部を残して充填密封して形成された免震マットを前記凹部の底盤面上に載置し、且つ前記免震マット上に布基礎を設置して住宅を構築し、更に前記周壁と該周壁に対面する布基礎間の間隙部に巨大地震による衝撃力を受けると崩壊して見掛け上の容積を減少する崩壊性材料を充填したことを特徴とする一般用住宅の免震装置がある(特許文献1参照)。」 イ 「【0011】 本実施形態の免震構造1は、建造物2を構築する地盤3を掘削し、その掘削された部分に配置するもので、複数枚積層された板状の免震部材10(10a、10b、10c)を含む。本実施形態では、免震部材10を3枚積層するが、3枚に限定されるわけではなく、それ以上でも、それ以下であっても良い。 【0012】 図2に示すように免震構造1は、鉛直方向の下から、割り栗石11と、捨コン12と、免震部材10(10a、10b、10c)と、基礎部材14とを備える。捨コン12は、免震部材10を敷設するための水平レベルを出すための流動性の固化剤である。 ・・・(中略)・・・ 【0014】 割り栗石11と捨コン12と免震部材10の上の、基礎部材14が配置されていない部分、すなわち基礎部材14の外周には、30倍発泡ポリエチレンの緩衝材13が配置されている。 また、免震構造1は、基礎部材14の中を通って免震部材10まで延びるパイプ5を備える。基礎部材14の外部よりパイプ5にグリースを注入すると、グリースはパイプ5を通って、積層された免震部材10a、10b、10cの間に供給される。グリースは、例えばリチウム石鹸グリース(静摩擦抵抗をμ=0.01)である。このグリースによって、隣接する免震部材10a、10b、10cは互いに対して水平方向に相対移動しやすくなる。」 ウ 「【0042】 免震部材10は基礎下全面に敷設されているので、建造物2の荷重が掛かった場合にヘルツ接触応力が小さくなる。したがって、免震部材10は変形しにくく、耐久性が向上する。 免震部材10と地盤3の間には変位を吸収するために30倍発泡ポリエチレンの緩衝材13が配置されているので、緩衝材36で地震動や交通振動の変位を吸収することができる。」 エ 図2 「 」 上記イ段落【0011】の「本実施形態の免震構造1は、建造物2を構築する地盤3を掘削し、その掘削された部分に配置するもので」との記載を踏まえると、図2において免震構造1が設置されているのは地盤の掘削された部分であり、当該掘削された部分は、底盤面とそこから立ち上がる立ち上がり部を有することが看取される。また、図2からは、13の符号が付された部分が基礎部材14の外周から地盤3の立ち上がり部までの隙間の全域にわたっていることが看取されるから、上記ウ段落【0042】「免震部材10と地盤3の間には変位を吸収するために30倍発泡ポリエチレンの緩衝材13が配置されている」との記載を踏まえると、図2には、「30倍発泡ポリエチレンの緩衝材13は、基礎部材14の外周から掘削された地盤3の立ち上がり部までの隙間の全域にわたって配置される」点が記載されていると認められる。 オ 上記アないしエを踏まえると、甲第3号証には以下の技術事項(以下「甲3技術事項」という。)が記載されていると認められる。 甲3技術事項 「鉛直方向の下から、割り栗石11と、捨コン12と、免震部材10(10a、10b、10c)と、基礎部材14とを備える免震構造1において、割り栗石11と捨コン12と免震部材10の上の、基礎部材14が配置されていない部分、すなわち基礎部材14の外周から掘削された地盤3の立ち上がり部までの隙間の全域にわたって配置した緩衝材13を、30倍発泡ポリエチレンとして、変位を吸収するようにした点。」 (4)甲第4号証:特開2016-180292号公報 申立人が特許異議申立てに係る証拠として提出した、本件特許の出願前に出願公開がされた甲第4号証には、次の事項が記載されている。 ア 「【0018】 本発明を図示の複数の実施の形態に基づいて詳しく説明する。まず、図1~4に示した第1の実施の形態に係る免震建物構造について説明する。図1において、免震建物構造は、基本的に基礎構造1と上部構造2との間に免震装置3が配置され、基礎構造1は地盤4に打ち込んだ杭5の頭部にラップル基礎6を設けると共に、杭5の頭部周辺と地盤4の上面を覆うマットスラブ7が形成され、該マットスラブ7に連結させて基礎部分の外周を囲う立ち上がり壁8が設けられている。上部構造2は、建物の各柱9を支えるフーチング10がそれぞれ設けられると共に、該各フーチング10間をつなぐ大梁(地中梁)11が設けられ、該大梁11の上面にスラブ12が形成されている。そして、免震装置3は杭頭部のラップル基礎6とフーチング10との間に設置されている。また、前記立ち上がり壁8と免震建物の上部構造躯体2(図1ではフーチング10)との間にクリアランスAが形成されている。 【0019】 本発明に係る第1の発明においては、前記クリアランスAに変形制御装置13を設けた構成に特徴がある。即ち、変形制御装置13は、エネルギー吸収部材14と変形ストッパー部材15とからなるものであって、立ち上がり壁8に所要の箱抜き凹部16を設けて一方のエネルギー吸収部材14を配設し、他方の変形ストッパー部材15はエネルギー吸収部材14に対向させてフーチング10側に取り付けるのである。この場合に重要なことは、エネルギー吸収部材14と変形ストッパー部材15との間に所要の遊間距離aをもって設置することである。 【0020】 そして、図2に示したように、地震が発生した時に、基礎構造1からの地震エネルギーは免震装置3によって吸収され、揺れを上部構造2に伝わらないようにするが、免震装置3の限界(許容変形能力)を超えるような地震が生じた場合に、その限界を超える前に、変形制御装置13によって地震エネルギーを吸収し、揺れによる変形を制御するのである。つまり、設計通りの地震範囲内では、免震装置3によって地震エネルギーを充分吸収できるのであるが、それを超える地震が生じた時に、免震装置3の限界を超える前に、変形ストッパー部材15がエネルギー吸収部材14に当接し、エネルギー吸収部材14の弾性変形により地震エネルギーを吸収し、免震装置3の限界を超えないようにしているのである。地震後、免震装置3と共に変形制御装置13が元の状態に復元する。更に、設計上想定以上の巨大地震が生じた場合に、変形ストッパー部材15がエネルギー吸収部材14に押圧し、エネルギー吸収部材14が押し潰されることにより地震エネルギーを吸収し、免震装置3が過大変形および破損しないようにしているのである。なお、立ち上がり壁8を含めて外周部は蓋部材19によって全面的にカバーされている。 【0021】 変形制御装置13におけるエネルギー吸収部材14は、図3(a)に示したように、プレート17と弾性体または粘弾性体18とで2段以上の多段構造としたものであり、プレート17は金属であり、弾性体は、例えば、天然ゴム、合成ゴムや高減衰ゴム、または低反発弾性ゴム等から適宜選んで使用するものであり、また、粘弾性体としては、例えば、低反発材やシリコーン樹脂等から適宜選択して使用するものであって、特に限定されるものではない。各段の弾性体または粘弾性体は、全て同一材料とすることができる。また、弾性体と粘弾性体を両方使用することもできる。例えば、4段とする場合は、第1段目を粘弾性体とし、第2段目以後に弾性体とすることができる。 【0022】 さらに、各段の弾性体を異なる材料とし、弾性体のバネ係数を異なるように1段目をK1、2段目以降をそれぞれK2、K3、・・・Knとし、表面側から裏面側、即ち、取付部まで順に大きくし、その大きさの順は、下記の関係とすることが好ましい。 K2=α2・K1、 K3=α3・K2、・・・ Kn=αn・K(n-1) K1、K2、K3、・・・・Kn :表面からの順に各段の弾性体のバネ係数 α2、α3、・・・αn:各段の割増し係数 1<α2、α3、・・・・αn<10 n:段数 【0023】 ようするに、各段の弾性体の硬さを変えて、表面から取付部までの順に弾性体の変形量を調整することによって、地震エネルギーを十分に吸収して地震力の衝撃を和らげることが好ましい。例えば、4段とする場合には、第1段に最も柔らかいもの、例えば、低反発弾性ゴムとし、先に変形してエネルギーを吸収して地震力の衝撃を和らげ、変形能力が殆ど尽してから第2段の柔らかい弾性ゴムが続けて変形して同様にエネルギーを吸収する、以後、第3段と第4段の順に硬くして変形し難くなり、図3(b)に示したように、最大変形時の各段の変形量がδ1>δ2>δ3>δ4となり、免震装置の過大変形を防ぐことができる。 なお、上記の各段の割増し係数α2、α3・・・αnは、免震装置の使用種類、配置方法や建物の規模、重量、地盤状況によって適切に設定することができる。例えば、4段とする場合は、α2:α3:α4=1:2:3とする場合もあるし、α2:α3:α4=2:2:2とする場合もある。さらに、α2:α3:α4=1:3:8とする可能性もある。なお、矢印Pは、地震揺れに基づき変形ストッパー部材15による押圧力を示すものである。 【0024】 遊間距離aは、予め免震装置3の許容変形能力(最大許容変形値)に合せて設定することができるものである。例えば、免震装置3における積層ゴム支承の許容最大変形角が45度であるとする場合は、遊間距離aを積層ゴム支承の変形角が35度~40度になった時の変形量に合せて設定することが望ましい。つまり、免震装置3の許容変形能力(最大許容変形値)の70%~80%に合せて所要の遊間距離aを設定することが好ましい。例えば、許容変形能力の70%に達した時点から、変形ストッパー部材15がエネルギー吸収部材14に接触して変形制御し始め、表面の第1段目の弾性材とする弾性ゴム18が最も大きく変形してエネルギーを吸収しながら地震力の衝撃を和らげ、次の2段目から弾性ゴム18の変形量が順次に小さくなる。免震装置3の変形が大きくなってくると、次の各段の弾性体とも順次に変形が大きくなりエネルギーを吸収し免震装置3の変形を制御する。地震後、免震装置3と共に変形制御装置13が元の状態に復元する。設計上想定した以上の巨大地震が発生した場合には、免震装置3の最大許容変形値である変形角が45度になると、変形制御装置の変形も最大となり、免震装置3がそれ以上の変形しないように、免震装置3の代わりに弾性ゴム18を順次押し潰してエネルギー吸収をして変形を抑制する。つまり、免震装置本体は破損することなく、免震装置3が最大許容変形値以上の変形を抑制するように変形制御装置13で対応して免震建物全体の変位を制御する構造仕組みである。なお、巨大地震によって変形制御装置13が塑性変形して潰された場合には、地震後、変形制御装置13は簡単に取替できるため、免震建物構造を速やかに復元することができる。 【0025】 また、弾性体のバネ特性として、図4(a)(b)に示したように、線形バネまたは非線形バネのいずれかとすることができる。ようするに、弾性体を最も一般的な完全弾性ゴムとすることはいうまでもないである。その他には、降伏点荷重Qまで第1剛性として荷重が上がり、降伏点に達してから、荷重が上がらず変形のみ進行し、一定の変形を経て再び第2剛性として荷重が上がる。第1剛性に比べ第2剛性が高くなりゴムが硬くなる特性を持つ非線形弾性ゴムとすることによって、降伏までの第1剛性の段階では、主にエネルギー吸収段階として作用し、降伏後の第2剛性の段階では、主に変位制御段階として作用するのである。 【0026】 変形ストッパー部材15は、例えば、軽量かつ高強度の鉄骨製とすることが好ましいが、これに限ることなく、表面と裏面に鋼板を打込んだコンクリートブロックとしてもよい。その形状は、円形や正方形または多角形としてもよい。その表面の大きさは、エネルギー吸収部材14の表面より小さくし、免震建物の揺れによって上下にずれが生じても、確実にエネルギー吸収部材14の表面内に接することが確保されるのである。 【0027】 また、前記第1の実施の形態に係る他の実施例として、図5,6に示したように、クリアランスAに設置された変形制御装置13内に、例えば、外部から石ころや泥などの落下物、およびネズミなど小動物が入り込まないように、樹脂製の蛇腹状カバー20を取り付けて変形制御装置13を保護することが望ましい。このようにカバーを取り付けることにより、変形制御装置13がどのような場合でも常に正常に機能するようになる。 【0028】 次に、第2の実施の形態に係る免震建物構造について図7~図8について説明する。 この免震建物構造は、前記第1実施例の免震建物構造と、異なる点は、変形制御装置13の一部構造と取り付け位置とが異なるのみで、他の構成部分は実質的に同一であるので、同一符号を付してその詳細についての説明は重複するので省略する。 即ち、図7に示したように、外周を囲う立ち上がり壁8とフーチング10との間に形成されたクリアランスAに変形制御装置13が設置される。即ち、変形制御装置13は、エネルギー吸収部材14と変形ストッパー部材15とからなるものであって、エネルギー吸収部材14は、フーチング10側に取り付けられ、変形ストッパー部材15は、立ち上がり壁8側に取り付けられるのである。そして、エネルギー吸収部材14と変形ストッパー部材15との間に遊間距離aを設けること、およびエネルギー吸収部材14の構成については前記第1の実施の形態と同一である。そこで、立ち上がり壁8側に取り付けられる変形ストッパー部材15は平板状を呈するものであり、支圧板として受ける衝撃力を均等にコンクリート製立ち上がり壁8に伝達してコンクリート壁を破損しないようにするものであり、そして、立ち上がり壁8に凹部を形成しないで取り付けることができる点で相違する。この実施の形態により、コンクリート製立ち上がり壁8を厚くする必要はないため、従来通りの壁にも適用でき、特に、既存の免震建物の補強に簡単に対応できるのである。」 イ 図3(a)及び(b) 「 」 上記ア段落【0021】の記載を踏まえると、図3(a)からは、「立ち上がり壁8の側にエネルギー吸収部材14を設ける場合について、立ち上がり壁8に設けたエネルギー吸収部材14が、その中間部位において、立ち上がり壁8に対し略平行方向に延在する金属のプレート17を配置した点、立ち上がり壁8に固定する面にプレート状の部材を備えた」点が看取される。 ウ 図7 「 」 上記段落【0028】の記載を踏まえると、図7からは、「上部構造2であるフーチング10にエネルギー吸収部材14を設ける場合には、外周を囲う立ち上がり壁8の、エネルギー吸収部材14に対向する領域に、変形ストッパー部材15を設けた」点が看取される。 エ 上記アないしウを踏まえると、甲第4号証には以下の技術事項(以下「甲4技術事項」という。)が記載されていると認められる。 甲4技術事項 「地盤4の上面を覆うマットスラブ7が形成され、該マットスラブ7に連結させて基礎部分の外周を囲う立ち上がり壁8が設けられた基礎構造1と、上部構造2との間に、免震装置3が配置された免震建物構造において、 立ち上がり壁8と上部構造2との間に形成されたクリアランスAに、エネルギー吸収部材14と変形ストッパー部材15とからなる変形制御装置13を設け、 設計通りの地震範囲を超える地震が生じた時に、変形ストッパー部材15がエネルギー吸収部材14に当接し、エネルギー吸収部材14の弾性変形により地震エネルギーを吸収させ、更に、設計上想定以上の巨大地震が生じた場合に、変形ストッパー部材15がエネルギー吸収部材14に押圧し、エネルギー吸収部材14が押し潰されることにより地震エネルギーを吸収し、 エネルギー吸収部材14は、金属のプレート17と弾性体または粘弾性体18とで2段以上の多段構造としたものであり、各段の弾性体または粘弾性体は弾性体のバネ係数を表面から取付部までの順に大きくし、表面の第1段目の弾性体が最も大きく変形し、次の2段目から弾性ゴムの変形量が順次に小さくなるように弾性体の変形量が調整されており、 立ち上がり壁8の側にエネルギー吸収部材14を設ける場合について、立ち上がり壁8に設けたエネルギー吸収部材14が、その中間部位において、立ち上がり壁8に対し略平行方向に延在する金属のプレート17を配置し、立ち上がり壁8に固定する面にプレート状の部材を備えており、エネルギー吸収部材14に対向する、上部構造2であるフーチング10側に、変形ストッパー部材15を設け、 上部構造2であるフーチング10にエネルギー吸収部材14を設ける場合には、外周を囲う立ち上がり壁8の、エネルギー吸収部材14に対向する領域に、変形ストッパー部材15を設け、 変形ストッパー部材15は、平板状を呈し、支圧板として受ける衝撃力を均等に伝達して壁を破損しないようにして、既存の免震建物の補強に簡単に対応できるようにしたものである点。」 (5)甲第5号証:特開2007-70857号公報 申立人が特許異議申立てに係る証拠として提出した、本件特許の出願前に出願公開がされた甲第5号証には、次の事項が記載されている。 ア 「【0007】 本発明にかかる建造物の免震構造は、地盤にコンクリート基礎構造を介して構築される建造物における免震構造であって、前記コンクリート基礎構造を設置する地盤の底面と前記地盤の内底面との間に配置され、互いに水平方向に滑る一対の免震滑り面からなる滑り免震部と、前記基礎構造の外周面と基礎構造の外周面を囲む地盤の内周面との間に配置され、前記基礎構造の外周面のうち外隅部を構成する2面にわたって当接する隅部緩衝材と、前記基礎構造の外周面と基礎構造の外周面を囲む地盤の内周面との間に配置され、前記基礎構造の外周面のうち平坦面に当接する平坦部緩衝材とを備え、前記隅部緩衝材および平坦部緩衝材が、前記基礎構造の外周面に沿って間隔をあけて複数個所に配置されている。」 イ 「【0014】 隅部緩衝材の材料は、通常の免震構造における免震用の緩衝材と共通する材料が採用できる。但し、隅部緩衝材は、後述する平坦部緩衝材とは、変形特性の異なるものを用いることが望ましい。具体的には、地震による大きな震動が加わったときに主に、弾性変形によって震動を吸収するものよりも、塑性変形を起こして震動を吸収するものが望ましい。小さな震動であれば、弾性変形によって震動を吸収するものが望ましい。このような変形特性を有する材料として、スチレン樹脂などの合成樹脂の発泡体が採用できる。合成樹脂の発泡体は、隅部緩衝材を所定形状に成形したり加工したりするにも適し、取り換えの手間やコストも少なくて済む。 【0015】 隅部緩衝材の構造は、基礎構造の外隅部に対応する内面形状と、地盤の内周面に対応する外面形状を有していればよい。通常、基礎構造の外隅部および地盤の内周面は互いに平行で直角に屈曲しているので、隅部緩衝材の平面形状も、直角に屈曲したL字形をなすことが多い。基礎構造の外隅部が直角以外の角度をなしている場合や丸みを有する場合は、隅部緩衝材の内面形状もそれに対応する形状に設定できる。 基礎構造が、断面逆T字形をなす布基礎など、外周面に段差や凹凸がある場合、隅部緩衝材にも対応する凹凸形状を設けておくことができる。例えば、断面逆T字形の布基礎に対して、布基礎の水平下辺の側端面から上面を経て布基礎の垂直辺の側面にかけて当接するように隅部緩衝材を配置することができる。隅部緩衝材が布基礎を上から押さえる形態になり、垂直方向の震動を吸収したり減衰したりする機能も発揮できる。」 ウ 「【0016】 〔平坦部緩衝材〕 基礎構造の外周面と基礎構造の外周面を囲む地盤の内周面との間に配置され、基礎構造の外周面のうち平坦面に当接する。 平坦部緩衝材の材料は、通常の免震構造における免震用の緩衝材と共通する材料が採用できる。但し、前記したように、隅部緩衝材とは、変形特性の異なるものを用いることが望ましい。具体的には、地震による大きな震動が加わったときに主に、弾性変形によって震動を吸収するものが望ましい。このような変形特性を有する材料として、吸振バネ、吸振ゴムなど弾性吸振材が採用できる。」 エ 「【0026】 基礎構造10の四方の平坦な外側面には平坦部緩衝材40bが配置され、四隅の直角に張り出した隅部には隅部緩衝材40aが配置されている。 図1に示すように、基礎構造10は、下辺部分が外側に張り出し、下辺部分の中央から垂直部分が延びる形状を有しているので、隅部緩衝材40aは、基礎構造10の下辺部分から垂直部分の途中までの外面形状に沿った、逆L字形の断面形状を有している。隅部緩衝材40aのうち、人工地盤30の内周面に対応する面は平坦な垂直面である。図1には示されていないが、平坦部緩衝材40bも、断面形状は隅部緩衝材40aと共通している。 【0027】 図3(a)に示すように、隅部緩衝材40aは、全体が発泡ポリスチレン成形体からなるブロック状をなしている。前記した逆L字形の垂直断面形状を有するとともに、基礎構造10の直角をなす隅部の両側辺に沿って当接するように、平面形状が直角に屈曲した形状を有している。 図3(b)に示すように、平坦部緩衝材40bは、弾性的復元性に優れた吸振ゴム材料で形成されている。前記した逆L字形の断面形状が一定の長さで延びている。 隅部緩衝材40aおよび平坦部緩衝材40bは、基礎構造10および人工地盤30の一方あるいは両方に接着などの手段で接合されており、みだりに移動しないようにしている。 【0028】 〔免震機能〕 以上の構造を備えた免震構造は、地震がない通常時には、隅部緩衝材40aおよび平坦部緩衝材40bが、基礎構造10および上部構造90の確実に位置決めしており、風などの外力が加わっても、住宅全体が動くことはない。特に、隅部緩衝材40aが、基礎構造10の四隅を確実に止定しているので、住宅全体が捻られたり旋回したりするような運動が確実に防止できる。 地震が発生すると、地盤Eが震動を起こす。地盤Eとともに人工地盤30および滑り面板22が震動するが、滑り面板22に対して滑り底板24が水平方向に滑り運動を行うことで、滑り底板24よりも上方の基礎構造10および上部構造90は、静止状態を維持することができる。滑り免震機能が発揮される。 【0029】 このような地震の震動に伴う基礎構造10と人工地盤30との相対運動により、平坦部緩衝材40bがその厚み方向に弾力的に変形し弾力的に復元することで、地震の震動エネルギーを吸収、減衰させることができる。人工地盤30の震動に比べて、基礎構造10および住宅全体の震動を小さくできる。隅部緩衝材40aは、地震の震動による基礎構造10と人工地盤30との間の水平面内での旋回方向の運動を抑制することができる。隅部緩衝材40bは、小さな震動であれば、材料が有する弾性変形によって吸収、減衰させる作用が発揮されるとともに、大きな震動の場合は、塑性変形を起こすことで、大きなエネルギーを吸収することができる。平坦部緩衝材40bだけであれば、弾力的な復元力だけで、人工地盤30に対する基礎構造10の相対的運動を抑えようとするので、復元力が却って相対的運動をいつまでも持続させてしまうことがある。しかし、隅部緩衝材40aが塑性変形を起こせば弾力的な復元力が弱くなるので、相対的運動による振動を迅速に終息させることができる。 【0030】 地震が収まったあとは、平坦部緩衝材40bの弾力的復元力によって、基礎構造10および上部構造90を地震前の位置および姿勢へと確実に戻すことができる。隅部緩衝材40aが大きく塑性変形を起こした場合は、隅部緩衝材40aを取り換えたり、損傷部分を補修したりすることによって、平坦部緩衝材40bについては、そのまま継続して使用することが可能である。地震の度に、緩衝部材の全てを取り換えるのに比べて、はるかに経済的であり、復旧工事も簡単かつ迅速に完了させることができる。」 オ 図1 「 」 カ 図2 「 」 キ 図3 「 」 ク 上記オ図1及び上記カ図2から、「隅部緩衝材40aは、基礎構造10、人工地盤30の両方に当接するように隙間無く配置されている」ことが看取される。 上記エ段落【0026】の「図1には示されていないが、平坦部緩衝材40bも、断面形状は隅部緩衝材40aと共通している」との記載を踏まえると、上記オ図1、上記カ図2及び上記キ図3(a)、図3(b)から、「平坦部緩衝材40bは、基礎構造10、人工地盤30の両方に当接するように隙間無く配置されている」ことが看取される。 また、上記イ段落【0015】の「 隅部緩衝材の構造は、基礎構造の外隅部に対応する内面形状と、地盤の内周面に対応する外面形状を有していればよい。・・・断面逆T字形の布基礎に対して、布基礎の水平下辺の側端面から上面を経て布基礎の垂直辺の側面にかけて当接するように隅部緩衝材を配置することができる。隅部緩衝材が布基礎を上から押さえる形態になり、垂直方向の震動を吸収したり減衰したりする機能も発揮できる。」、上記エ段落【0026】の「図1に示すように、基礎構造10は、下辺部分が外側に張り出し、下辺部分の中央から垂直部分が延びる形状を有しているので、隅部緩衝材40aは、基礎構造10の下辺部分から垂直部分の途中までの外面形状に沿った、逆L字形の断面形状を有している。隅部緩衝材40aのうち、人工地盤30の内周面に対応する面は平坦な垂直面である。」との記載を踏まえると、図3(a)からは、「隅部緩衝材40aは、人工地盤30の内周面に対応する面は平坦な垂直面であり、下辺部分が外側に張り出し、下辺部分の中央から垂直部分が延びる形状を有した基礎構造10に沿う部分は当該外面形状に当接する形状の面となり、全体として逆L字形の断面形状である」ことが看取される。 ケ 上記アないしクに摘記した記載を踏まえると、甲第5号証には以下の2の技術事項(以下「甲5技術事項1」及び「甲5技術事項2」という。)が記載されていると認められる。 甲5技術事項1 「人工地盤30に基礎構造10を介して構築される建造物の免震構造において、 平面形状が直角に屈曲した形状を有した隅部緩衝材40aが、基礎構造10の外周面と基礎構造10の外周面を囲む人工地盤30の内周面との間に両方に当接するように隙間無く配置され、 隅部緩衝材40aの垂直断面形状は、基礎構造10の外側に張り出した下辺部分と、下辺部分の中央から垂直部分の途中までの外面形状に当接する形状の面及び人工地盤30の内周面に対応する平坦な垂直面を有する逆L字形の垂直断面形状であって、 前記隅部緩衝材40aの材料としては、地震による大きな震動が加わったときに主に、弾性変形によって震動を吸収するものよりも、塑性変形を起こして震動を吸収するものが望ましく、小さな震動であれば、弾性変形によって震動を吸収するものが望ましく、このような変形特性を有する材料として、スチレン樹脂などの合成樹脂の発泡体を採用した点。」 甲5技術事項2 「人工地盤30に基礎構造10を介して構築される建造物の免震構造において、 基礎構造10の外周面のうち平坦面に当接する平坦部緩衝材40bが、基礎構造10の外周面と基礎構造10の外周面を囲む人工地盤30の内周面との間に両方に当接するように隙間無く配置され、 平坦部緩衝材40bの垂直断面形状は、基礎構造10の外側に張り出した下辺部分と、下辺部分の中央から垂直部分の途中までの外面形状に当接する形状の面及び人工地盤30の内周面に対応する平坦な垂直面を有する逆L字形の垂直断面形状であって、 前記平坦部緩衝材40bの材料としては、地震が収まったあとは、平坦部緩衝材40bの弾力的復元力によって、基礎構造および上部構造を地震前の位置および姿勢へと確実に戻すことができるよう、弾性的復元性に優れた吸振バネ、吸振ゴムなど弾性吸振材を採用した点。」 (6)参考資料1:特開2014-77229号公報 申立人が令和2年3月13日付け意見書に添付して提出した、本件特許の出願前に出願公開がされた参考資料1には、次の事項が記載されている。 ア 「【0012】 《免震建物10》 図1は、ここで提案される免震建物10の概略図である。免震建物10は、図1に示すように、基礎11と、免震装置12と、建物13と、衝撃吸収部材14とを備えている。 【0013】 基礎11は、例えば、建物13を支える構造体であり、建物が建てられる敷地に施工される。基礎11は、例えば、配筋にコンクリートを流し込むことによって構築される。免震装置12は、基礎11に配置されている。免震装置12の上には建物13が配置されている。免震装置12は、建物13が基礎11に対して水平に移動するのを許容する装置である。」 イ 「【0015】 《擁壁11a》 基礎11には、擁壁11aが設けられている。擁壁11aは、建物13の側壁13aの少なくとも一部に対して間隔を空けて対向している。建物13の側壁13aと擁壁11aとの間には、建物13が揺れ動くのを許容するべく、所要の空間(空隙)が確保されている。擁壁11aは、建物13が基礎11に対して過度に揺れ動く際に、建物13が敷地の外へ迫り出すのを防止する部位である。 【0016】 《衝撃吸収部材14》 衝撃吸収部材14は、ゴム製の部材であり、建物13の側壁13aと擁壁11aとが対向する部位において、建物13の側壁13aと擁壁11aとの少なくとも一方(図1に示す例では、擁壁11a)に設けられている。 【0017】 図2は、衝撃吸収部材14を拡大した側面図である。図3は、衝撃吸収部材14の正面図(対向する建物13の側壁13a側から見た図)である。衝撃吸収部材14は、図2および図3に示すように、基部21と、柱部22と、当接部23とを備えている。 ・・・(中略)・・・ 【0019】 柱部22は、対向する他方の壁(この実施形態では、建物13の側壁13a)に向けて、基部21から立ち上がっている。当接部23は、柱部22の先端において、建物13の側壁13aに対向するように設けられている。 【0020】 この実施形態では、柱部22は、2本のフランジ21a、21bからそれぞれ立ち上がった板状の部位である。2本のフランジ21a、21bからそれぞれ立ち上がった柱部22の間隔は、基部21側が広く先端側(当接部23側)に向かうにつれて狭くなっている。また、この実施形態では、柱部22の内壁は、中間部22aにおいて僅かに屈曲している。柱部22の内側面は、基部21から中間部22aまでは緩やかに内側に傾きつつ立ち上がっているが、中間部22aよりも先端側ではテーパがきつくなっている。この実施形態では、柱部22は、擁壁11aに平行に配置された2本のフランジ21a、21bからそれぞれ建物13の側壁13aに向けて間隔が徐々に狭くなるように立ち上がっている。かかる柱部22の内側面は、中間部22aを起点として外側に膨らんでいる。なお、図示例は、柱部22の内壁は、中間部22aにおいて僅かに屈曲しているが、柱部22の内壁は、中間部22aにおいて僅かに湾曲していてもよい。 【0021】 また、柱部22の先端に設けられた当接部23は、柱部22の先端部に架け渡された平板状の部位である。この実施形態では、当接部23は、長方形の板状の部位になっている。図2に示すように、基部21のフランジ21a、21bが擁壁11aに取り付けられ、柱部22が建物13の側壁13aに向けて立ち上がり、当接部23が建物13の側壁13aに対向している。」 ウ 「【0023】 建物13は、地震時に、基礎11に対して揺れ動く。図4は、図1に示された免震建物10において、建物13が基礎11に対して揺れ動き、建物13の側壁13aが衝撃吸収部材14に当った状態を示す図である。図5は、建物13が基礎11に対して過度に揺れ動く際に、建物13の側壁13aが衝撃吸収部材14に衝突した状態を示している。この実施形態では、図4に示すように、建物13が基礎11に対して過度に揺れ動く際に、建物13の側壁13aが衝撃吸収部材14に衝突する。 【0024】 その際、図5に示すように、建物13の側壁13aは、衝撃吸収部材14の当接部23に押し当たる。建物13の側壁13aが衝撃吸収部材14の当接部23に押し当たると、衝撃吸収部材14の柱部22は変形し、衝撃を緩和する。この実施形態では、衝撃吸収部材14の柱部22は、図2に示すように、中間部22aを起点として若干外側に膨らんでいる。建物13の側壁13aが衝撃吸収部材14の当接部23に押し当たると、柱部22は、図5に示すように、その形状のために中間部22aを起点として外側に膨らむ。 【0025】 このように、この免震建物10は、建物13の側壁13aと擁壁11aとの間に衝撃吸収部材14が介在している。このため、建物13が基礎11に対して過度に揺れ動いた場合でも、建物13の側壁13aと擁壁11aとが直接衝突しない。 【0026】 また、建物13の側壁13aが衝撃吸収部材14の当接部23に押し当たると、図5に示すように、衝撃吸収部材14の柱部22は外側に膨らむ。建物13が擁壁11aに当たるような大きな地震時には、建物13は基礎11に対して揺れ動き、建物13の側壁13aは衝撃吸収部材14に繰返し押し当たりうる。この実施形態では、衝撃吸収部材14は高減衰ゴムで成形されている。このため、衝撃吸収部材14の柱部22が繰り返し変形することによって相当のエネルギーが吸収される。 【0027】 《圧縮特性評価》 ここで、図6は、高減衰ゴムによって形成された衝撃吸収部材14に、柱部22が外側に膨らむように当接部23を繰返し押圧した際の押圧荷重と当接部23の変位との関係を示している。この衝撃吸収部材14は、当接部23を押圧する荷重と変位との関係において、図6に示すような履歴曲線(「ヒステリシスループ」とも称される)を示す。衝撃吸収部材14は、このように押圧荷重を繰返し受けると、一周期毎に、当該履歴曲線で囲まれた面積に相当するエネルギーを吸収し得る。」 エ 【図2】 「 」 オ 図3 「 」 カ 上記アないしオに摘記した記載を踏まえると、参考資料1には以下の技術事項(以下「参1技術事項」という。)が記載されていると認められる。 参1技術事項 「擁壁11aが設けられた基礎11に、免震装置12が配置され、免震装置12の上には建物13が配置され、擁壁11aは、建物13の側壁13aの少なくとも一部に対して間隔を空けて対向し、建物13の側壁13aと擁壁11aとが対向する部位において、衝撃吸収部材14が、建物13の側壁13aと擁壁11aとの少なくとも一方に設けられている免震建物において、衝撃吸収部材14は、ゴム製で、基部21と、柱部22と、当接部23とを備えた形状とし、柱部22は板状の部位で、当接部23は柱部22の先端部に架け渡された平板状の部位であり、建物13の側壁13aが衝撃吸収部材14の当接部23に押し当たると、衝撃吸収部材14の柱部22が変形して、衝撃を緩和する技術。」 (7)参考資料2:特開2001-207682号公報 申立人が令和2年3月13日付け意見書に添付して提出した、本件特許の出願前に出願公開がされた参考資料2には、次の事項が記載されている。 ア 「【0007】 【発明の実施の形態】本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1は本発明装置の概略縦断面図であり、木造モルタルや軽量鉄骨等により構築される一般用の住宅1を構築する地盤2に、前記住宅1の外周形状よりやや大きく凹状に掘削して、外周に周壁3を有する凹部4を形成すると共に、該凹部4の底盤面5に平滑性を持たせる。 【0008】前記平滑性を持たせた底盤面5上には免震マット6が載置される。前記免震マット6は、強度性と柔軟性を有する天然ゴム、合成ゴムあるいはポリエチレン・塩化ビニール樹脂等の合成樹脂により形成され、上・下面シート7・8の外周を周壁板9で一体に接合して中空部10を設け、且つ該中空部10内に前記上・下面シート7・8よりは小巾で、且つ摩擦係数が小さい合成樹脂製の中間板11を装入すると共に、前記中空部10内に潤滑性を有する液状・クリーム状・粉状あるいはゼリー状の潤滑材12を多少の空隙部を残して充填密封して形成されている。前記潤滑材12を中空部10内に空隙部を残すことなく充填すると、免震マット6を構成する上・下面シート7・8が、前記潤滑材12の潤滑性を利用してそれぞれ個別に遊動することがなくなるのと共に、破損する虞れが大きいので、潤滑材12は多少の空隙部を残して充填する。また、前記中間板11は上・下面シート7・8よりは摩擦係数が小さいポリエチレン・塩化ビニール樹脂等の合成樹脂製とすることにより上・下面シート7・8に癒着することがなく、更に上・下面シート7・8の中間に装入された中間板11が上・下面シート7・8の癒着を防止し、上・下面シート7・8が潤滑材12の作用によりそれぞれ個別に遊動可能となる。 【0009】前記免震マット6は住宅1の大きさによって異なるが、好ましくは板厚5~15mm程度の天然ゴム板、合成ゴム板あるいは合成樹脂板を用いて、全高が150~200mm程度とすることが推奨され、また免震マット6の周壁板9は蛇腹状13に形成して強度性を保持すると共に、上・下面シート7・8が個別に遊動するある程度の余裕をもたせている。更に、前記潤滑材としては、ひまし油、スピンドルオイル、セラミックスパウダー、かき殻の粉体等、腐敗しないものが好ましい。 【0010】前記免震マット6は、中空部10内に中間板11が装入されているが、上・下面シート7・8が摩擦係数が小さい材質で形成されれば、図4に示すように中間板11が不要である。 【0011】前記構成より成る免震マット6を前記凹部4の底盤面5上に載置すると共に、該底盤面5上に載置された免震マット6上に布基礎14が設置され、且つ該布基礎14上に住宅1が構築される。 【0012】更に、前記地盤2の周壁3と、該周壁3に対面する布基礎14間の間隙部15には、小・中程度の地震による振動エネルギーによっては崩壊せず、巨大地震による衝撃力を受けると崩壊して見掛け上の容積を減少する崩壊性材料16を充填し、常態においては該崩壊性材料16が地盤2の一部として機能して住宅1の地中部分を固定するよう形成されている。 【0013】前記崩壊性材料16の材質や構造等については限定する必要はないが、常態においては住宅1を支持するに充分な強度を有し、且つ一定以上の地震(巨大地震)が発生したときに初めて崩壊するものであれば充分であるし、また崩壊すると容積が減少し、地盤2の周壁3と布基礎14間に見掛け上の空隙が生じて、地震による地盤2の振動がそのまま布基礎14に伝達されないものであれば充分である。そして、前記崩壊性材料16としては、特に限定する必要はないが、好ましくは気孔率が50~70%程度の気泡コンクリート、あるいは発泡スチロールを用いることが推奨される。 【0014】而して、前記のように構成された本発明装置によれば、地震が発生しても、小・中程度の地震であれば、地盤2と共に、免震マット6の下面シート8が遊動するのみで、潤滑材12の作用により地震の振動エネルギーが吸収されて布基礎14より上方の住宅1が揺動することはなく、免震効果を有する。また、巨大地震であれば地盤が振動することにより生じる衝撃力により崩壊性材料16が崩壊すると、周壁3と布基礎14との間に見掛け上の空隙が生じ、地震の振動エネルギーが地盤2から布基礎14、すなわち住宅1に伝達されないという崩壊性材料16の作用と、前記小・中程度の地震におけると同様、免震マット6の下面シート8が遊動するのみで、潤滑材12の作用により地震の振動エネルギーが吸収されて上面シート7は遊動しないという免震マット6の作用の両作用が働いて巨大地震においても免震効果を有するのである。更に、崩壊性材料16があるため、住宅1は風力程度では移動することがない。」 イ 図1 「 」 ウ 上記ア、イに摘記した記載を踏まえると、参考資料2には以下の技術事項(以下「参2技術事項」という。)が記載されていると認められる。 参2技術事項 「地盤2に形成された、外周に周壁3を有する住宅1の外周形状よりやや大きい凹部4の底盤面5に上・下面シート7・8が潤滑材12の作用によりそれぞれ個別に遊動可能となった免震マット6が載置され、該載置された免震マット6上に布基礎14が設置され、且つ該布基礎14上に住宅1が構築された免震装置であって、前記地盤2の周壁3と、該周壁3に対面する布基礎14間の間隙部15に、小・中程度の地震による振動エネルギーによっては崩壊せず、巨大地震による衝撃力を受けると崩壊して見掛け上の容積を減少する崩壊性材料16を充填したものにおいて、崩壊性材料16として、気孔率が50~70%程度の気泡コンクリート、あるいは発泡スチロールを用いる技術。」 第5 当審が特許権者に通知した取消理由の概要 訂正前の請求項1~5に係る特許に対して、当審が令和1年11月28日付けで特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。 1 進歩性 本件特許の請求項1~5に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において頒布されたまたは電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第1号証ないし甲第5号証に記載された発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、本件請求項1~5に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、本件請求項1~5に係る特許は取り消されるべきものである。 第6 当審が特許権者に通知した取消理由についての当審の判断 1 本件訂正発明1~5について 上記第2の通り、本件訂正により本件の請求項1~5に係る発明は訂正されたので、以下、本件訂正前の請求項1~5に係る発明に対応する本件訂正発明1~5について判断する。 (1)本件訂正発明1について ア 本件訂正発明1と甲1発明との対比 本件訂正発明1と甲1発明とを対比する。 (ア)甲1発明における「下部構造物」、「免震装置6」、「上部構造物」は、それぞれ、本件訂正発明1における「下部構造体」、「免震装置」、「上部構造体」に相当する。 (イ)甲1発明の「緩衝材10」は、「例えば樹脂製(例えばポリプロピレン製)のハニカム構造板やゴム製の防舷材」であって、「大地震或いは巨大地震の発生時に柱脚部8が緩衝材10に衝突したときに、緩衝材10が塑性的に圧縮されることによって建物7の振動エネルギーが吸収され、柱脚部8や擁壁4の破損を防止できるものである」から、本件訂正発明1の「発泡樹脂体を備える衝撃吸収部材」とは、「樹脂体を備える衝撃吸収部材」である点で共通する。 (ウ)甲1発明において、「上部構造物」(上部構造体)である「建物7」の「各柱の下端部」に設けられた「柱脚部8」は、それ自体も、「建物7」と一体的に「上部構造物」(上部構造体)を構成しているといえる。また、「建物7」の周縁部に配置された当該「柱脚部8」の「側面」は、「上部構造物」(上部構造体)の外周の面を規定するものであるから、本件訂正発明1の「上部構造体」が「有」する「側壁」に相当する。 (エ)甲1発明において、「下部構造物」(下部構造体)である「基礎2」の「周縁部」に「立設」された「擁壁4」は、それ自体も、「基礎2」と一体的に「下部構造物」(下部構造体)を構成しているといえるから、本件訂正発明1の「下部構造体」が「有」する「対向壁」に相当する。 (オ)甲1発明において、「柱脚部8」は、「擁壁4の内側に配置され」、「高さ方向の大部分が擁壁4の上端よりも下に位置」し、「擁壁4との間に隙間9が設けられ」ているものであることから、「柱脚部8」の「側面」と「擁壁4」とは「隙間9」を介して対向しているということができ、上記(エ)で述べた甲1発明の「擁壁4」(「下部構造体」が「有」する「対向壁」)は、本件訂正発明1と同様に、「上部構造体の側壁の一部に対し対向するとともに側壁と離間し」た構成を備えているといえる。 (カ)甲1発明において、「下部構造物」(下部構造体)である「基礎2」上に「凸状に設けられ」た複数の「免震基礎5」は、それ自体も、「基礎2」と一体的に「下部構造物」(下部構造体)を構成しているといえる。そうすると、「免震装置6が免震基礎5上に設置され」、上記(ウ)で述べた「上部構造物」(上部構造体)の各「柱脚部8」が、「免震装置6上に搭載された状態で免震装置6に連結され」ていることは、本件訂正発明1において、「免震装置」が「上部構造体と下部構造体との間に位置する」ことに相当する。 (キ)甲1発明の「第4仕様の免震構造物1」が、「周縁部に配置された柱脚部8の側面に緩衝材10が取り付けられ、緩衝材10から擁壁4までの距離が柱脚部8から擁壁4までの水平距離Lよりも小さくされ」ていることと、本件訂正発明1の「側壁の表面に、対向壁に面する位置に発泡樹脂体を備える衝撃吸収部材が設置されているとともに、前記衝撃吸収部材と前記対向壁との間には、空間が設けられており、前記側壁の表面に設置された前記衝撃吸収部材と前記対向壁との距離が、前記側壁と前記対向壁との最短距離よりも小さく、前記衝撃吸収部材は、前記側壁から前記対向壁に向かって、断面積が連続的または段階的に減少している」こととは、「側壁の表面に、対向壁に面する位置に樹脂体を備える衝撃吸収部材が設置されているとともに、前記衝撃吸収部材と前記対向壁との間には、空間が設けられており、前記側壁の表面に設置された前記衝撃吸収部材と前記対向壁との距離が、前記側壁と前記対向壁との最短距離よりも小さい」点で共通する。 (ク)そうすると、本件訂正発明1と甲1発明とは、次の一致点で一致し、相違点で相違する。 (一致点) 「上部構造体と、下部構造体と、前記上部構造体と前記下部構造体との間に位置する免震装置と、を備え、 前記下部構造体が、前記上部構造体の側壁の一部に対し対向するとともに前記側壁と離間した対向壁を有し、 前記側壁の表面に、前記対向壁に面する位置に樹脂体を備える衝撃吸収部材が設置されているとともに、前記衝撃吸収部材と前記対向壁との間には、空間が設けられており、 前記側壁の表面に設置された前記衝撃吸収部材と前記対向壁との距離が、前記側壁と前記対向壁との最短距離よりも小さい免震構造。」 (相違点) 「樹脂体を備える衝撃吸収部材」について、本件訂正発明1は、樹脂体が「発泡樹脂体」であり、樹脂体を備える衝撃吸収部材は、「前記側壁から前記対向壁に向かって、断面積が連続的または段階的に減少している」のに対し、甲1発明は、樹脂体が「発泡樹脂体」ではなく、衝撃吸収部材の形状が、「前記側壁から前記対向壁に向かって、断面積が連続的または段階的に減少している」ものではない点。 イ 判断 上記相違点について検討する。 (ア)甲2技術事項について 甲2技術事項は、上記第4 2(2)ウで認定したとおりのものであって、基礎1と建物2との間に免震装置3が介装されることにより免震層4が形成された免震建物の、建物2の台座8の擁壁5と対向する部分に形成された凹部17内に貼り付ける方形板状の「減衰材13」を「発泡スチロール」によって形成し、「巨大地震時に建物2が大きく水平変位して台座8が擁壁5に衝突した際にそのエネルギーを吸収」できるようにしている。 甲2技術事項の上記「減衰材13」は、エネルギーを吸収するとの作用を有する点で甲1発明の「緩衝材10」と共通するものであり、「緩衝材10」を発泡樹脂体である「発泡スチロール」によって形成することに関する教示はあるものの、その形状は「凹部」に収納された「方形板状」であり、「緩衝材10」の形状を、「側壁から対向壁に向かって、断面積が連続的または段階的に減少している」ものとすることに関し、記載も示唆もない。 してみると、甲1発明に甲2技術事項を組み合わせたとしても、甲1発明の柱脚部8の側面に取り付けられた緩衝材10を「発泡樹脂体」とするとともに、さらにその形状を、「柱脚部8の側面(側壁)から擁壁4(対向壁)に向かって、断面積が連続的または段階的に減少している」ものとし、もって上記相違点に係る本件訂正発明1の構成とすることは、当業者といえども容易に想到し得たことではない。 (イ)甲3技術事項について 甲3技術事項は、上記第4 2(3)オで認定したとおりのものであって、免震構造1の基礎部材14の外周から掘削された地盤3の立ち上がり部までの隙間の全域にわたって配置した「緩衝材13」を「30倍発泡ポリエチレン」として、「変位を吸収する」ようにしている。甲3技術事項が有する「緩衝材13」も免震構造に用いられる衝撃吸収部材であるから、甲3技術事項には、免震構造の衝撃吸収部材を発泡樹脂体である発泡ポリエチレンとすることについて教示があるとはいえる。 しかし、甲3技術事項に係る「緩衝材13」は、「基礎部材14の外周から掘削された地盤3の立ち上がり部までの隙間の全域にわたって配置した」ものであって、垂直断面の断面積を変化させるものではなく、甲1発明の擁壁との間に隙間9を空けて設けられる、緩衝材10の形状を、「柱脚部8の側面(側壁)から擁壁4(対向壁)に向かって、断面積が連続的または段階的に減少している」ものとすることに関し、記載も示唆もない。 してみると、甲1発明に甲3技術事項を組み合わせたとしても、甲1発明の柱脚部8の側面に取り付けられた緩衝材10を「発泡樹脂体」とするとともに、さらにその形状を、「柱脚部8の側面(側壁)から擁壁4(対向壁)に向かって、断面積が連続的または段階的に減少している」ものとし、もって上記相違点に係る本件訂正発明1の構成とすることは、当業者といえども容易に想到し得たことではない。 (ウ)甲4技術事項について 甲4技術事項は、上記第4 2(4)エで認定したとおりのものであって、立ち上がり壁8と上部構造2との間に形成されたクリアランスAに、押しつぶされてエネルギーを吸収する弾性体を備えたエネルギー吸収部材14が設置されたものであり、上部構造2にエネルギー吸収部材14を、立ち上がり壁8に変形ストッパー部材15を設けるにあたり、エネルギー吸収部材14の弾性体のバネ係数を、表面側、すなわち取付部と反対の側であって最初に変形ストッパー部材15に衝突する側、から取付部まで順に異ならせるようにし、表面側が大きく変形するようにしたものである。 甲4技術事項は、このように、弾性体のバネ係数をエネルギー吸収部材内の各段で変更することで変形を制御するものであり、エネルギー吸収をする部材の形状や断面積を変化させるものではない。 してみると、甲4技術事項は、甲1発明の緩衝材10の形状を、「柱脚部8の側面(側壁)から擁壁4(対向壁)に向かって、断面積が連続的または段階的に減少している」ものとすることに関し、何らの記載も示唆も与えない。 よって、甲1発明に甲4技術事項を組み合わせたとしても、甲1発明の柱脚部8の側面に取り付けられた緩衝材10を「発泡樹脂体」とするとともに、さらにその形状を、「柱脚部8の側面(側壁)から擁壁4(対向壁)に向かって、断面積が連続的または段階的に減少している」ものとし、もって上記相違点に係る本件訂正発明1の構成とすることは、当業者といえども容易に想到し得たことではない。 (エ)甲5技術事項1について 甲5技術事項1は、上記第4 2(5)ケで認定したとおりのものであって、免震構造における、基礎構造10の外周面と基礎構造10の外周面を囲む地盤30の内周面との間に配置する「隅部緩衝材40a」の材料として、「スチレン樹脂などの合成樹脂の発泡体」を採用し、「地震による大きな震動が加わったとき」に、「塑性変形を起こして震動を吸収」し、「小さな震動であれば、弾性変形によって震動を吸収する」ようにしている。 甲5技術事項1の「隅部緩衝材40a」は、エネルギーを吸収するとの作用を有する点で甲1発明の「緩衝材10」と共通するものであり、「緩衝材10」を「スチレン樹脂などの合成樹脂の発泡体」によって形成することに関する教示はある。また、甲5技術事項1の「隅部緩衝材40a」は、基礎構造の外側に張り出した下辺部分と、下辺部分の中央から垂直部分の途中までの外面形状に当接する形状の面及び人工地盤の内周面に対応する平坦な垂直面を有する逆L字形の垂直断面形状を有しており、断面積のみに着目すれば、途中で変化する構成を有している。 しかしながら、甲5技術事項1の「隅部緩衝材40a」は、基礎構造10と地盤30の両方に当接するように隙間無く配置されたために、基礎構造10の外面及び地盤30の内面の形状に対応して逆L字形の垂直断面形状となっているものと解される。 してみると、甲5技術事項1は、甲1発明の擁壁4との間に隙間9を空けて設けられる、緩衝材10の形状を変更することに関し、何らの記載も示唆も与えない。 よって、甲1発明に甲5技術事項1の「隅部緩衝材40a」の形状を適用する動機付けはなく、甲1発明及び甲5技術事項1に基いて上記相違点に係る本件訂正発明1の構成に至ることは、当業者といえども容易になし得たことではない。 (オ)甲5技術事項2について 甲5技術事項2は、上記第4 2(5)ケで認定したとおりのものであり、その「平坦部緩衝材40b」の断面形状は、甲5技術事項1で検討した「隅部緩衝材40a」のそれと同様であって、基礎構造の外側に張り出した下辺部分と、下辺部分の中央から垂直部分の途中までの外面形状に当接する形状の面及び人工地盤の内周面に対応する平坦な垂直面を有する逆L字形の垂直断面形状を有しており、断面積のみに着目すれば、途中で変化する構成を有している。 しかしながら、甲5技術事項2の「平坦部緩衝材40b」は、基礎構造10と地盤30の両方に当接するように隙間無く配置されたために、基礎構造10の外面及び地盤30の内面の形状に対応して逆L字形の垂直断面形状となっているものと解される。 してみると、甲5技術事項2は、甲1発明の擁壁4との間に隙間9を空けて設けられる、緩衝材10の形状を変更することに関し、何らの記載も示唆も与えない。 よって、甲1発明に甲5技術事項2の「平坦部緩衝材40b」の形状を適用する動機付けはなく、甲1発明及び甲5技術事項2に基いて上記相違点に係る本件訂正発明1の構成に至ることは、当業者といえども容易になし得たことではない。 ウ 小括 以上の通りであるから、甲第2号証~甲第5号証のいずれにも、甲1発明の緩衝材を「発泡樹脂体」とするとともに、さらにその形状を、「柱脚部8の側面(側壁)から擁壁4(対向壁)に向かって、断面積が連続的または段階的に減少している」ものとすることについての教示はなく、甲第1~5号証記載の発明ないし技術事項を組み合わせても、当該構成を想到することが容易ということはできない。 よって、本件訂正発明1は、甲第1~5号証記載の発明ないし技術事項から当業者が容易に想到できたものではない。 エ 申立人の主張について (ア)設計事項について 申立人は、本件訂正発明1と甲1発明との相違点である衝撃吸収部材の形状に関し、衝撃吸収部材の形状を「側壁から対向壁に向かって、断面積が連続的または段階的に減少している」ものとすることは設計事項である旨主張をしている(特許異議申立書第21頁下から5行~22頁第9行)。 上記主張について検討するに、衝撃吸収部材の形状を「側壁から対向壁に向かって、断面積が連続的または段階的に減少している」とすることは、本願明細書段落【0049】に記載の「先端側ほど断面積が小さい衝撃吸収部材40は、対向壁22と衝突した際に塑性変形し易く衝撃を良好に吸収し易い。」との技術的意味を有する。 よって、衝撃吸収部材の形状を「側壁から対向壁に向かって、断面積が連続的または段階的に減少している」構成は、建物の形状や設計当初の地震力を考慮して適宜なし得たといえるものではなく、設計事項ということはできない。 してみると、甲1発明の側壁の表面に設置される衝撃吸収部材の樹脂体を「発泡樹脂体」とする際にその形状を、「柱脚部8の側面(側壁)から擁壁4(対向壁)に向かって、断面積が連続的または段階的に減少している」ものとすることは、当業者といえども容易に想到し得たことではない。 (イ)甲第5号証との組合せによる進歩性について 申立人は、令和2年3月13日付けの意見書において、衝撃吸収部材の断面積を減少させる構成は甲第5号証に記載されているから、本件訂正発明1の甲1発明との相違点に係る構成は、甲第5号証に基いて想到容易であった旨を主張している(意見書第1頁下から第4行~第2頁第6行)。 当該主張に関しては、上記イ(エ)及び(オ)にて判断したとおりであって、申立人の主張を考慮しても、当該判断を覆すべき事情はない。 (ウ)参考資料1との組合せによる進歩性について 申立人は、令和2年3月13日付けの意見書において、衝撃吸収部材の断面積を減少させる構成は参考資料1に記載されているから、本件訂正発明1の甲1発明との相違点に係る構成は、参考資料1に基いて想到容易であった旨を主張している(意見書第2頁第7~17行)。 上記申立人の主張について判断する。 参1技術事項は、上記第4 2(6)カで認定したとおりのものであって、建物13の側壁13aと基礎11の擁壁11aとが対向する部位において、設けられる衝撃吸収部材14をゴム製とするものである。 衝撃吸収部材14は、基部21と、柱部22と、当接部23とを備えた形状とし、柱部22は板状の部位で、当接部23は柱部22の先端部に架け渡された平板状の部位とされているが、このような形状は、ゴムを高減衰ゴムとした場合に、高減衰ゴムが繰り返しの変形を受けて所望のエネルギー吸収を行えるように設計したものであり、発泡樹脂体を備える衝撃吸収部材の形状について記載も示唆も無い。 してみると、甲1発明に参1技術事項を組み合わせたとしても、甲1発明の柱脚部8の側面に取り付けられた緩衝材10を「発泡樹脂体」とするとともに、さらにその形状を、「柱脚部8の側面(側壁)から擁壁4(対向壁)に向かって、断面積が連続的または段階的に減少している」ものとし、もって上記相違点に係る本件訂正発明1の構成とすることは、当業者といえども容易に想到し得たことではない。 よって、申立人の上記主張を考慮しても、相違点に係る構成を容易に想到しえたものではないとの判断を覆すべき事情はない。 (エ)参考資料2との組合せによる進歩性について 申立人は、令和2年3月13日付けの意見書において、衝撃吸収部材の断面積を減少させる構成は参考資料2に記載されているから、本件訂正発明1の甲1発明との相違点に係る構成は、参考資料2に基いて想到容易であった旨を主張している(意見書第2頁第18行~第3頁第1行)。 上記申立人の主張について判断する。 参2技術事項は、上記第4 2(7)ウで認定したとおりのものであって、地盤2の周壁3と、該周壁3に対面する布基礎14間の間隙部15に充填する崩壊性材料16を、気孔率が50~70%程度の発泡スチロールとするものである。 しかし、この崩壊性材料16は、「地盤2の周壁3と、該周壁3に対面する布基礎14間の間隙部15に充填」したものであって、崩壊性材料16の形状は、間隙部を形成する布基礎や周壁3によって間隙部と同じ形状に規定されるものと認められる。また、当該崩壊性材料16は、上記のように布基礎の形状を反映するものであって、布基礎14(側壁)から周壁3(対向壁)に向かって、断面積が増加しているものである。 してみると、参2技術事項には、甲1発明の擁壁との間に隙間9を空けて設けられる緩衝材10の形状を変更することに関し、何らの記載も示唆もない。 よって、甲1発明に参2技術事項を組み合わせたとしても、甲1発明の擁壁との間に隙間9を空けて設けられる、柱脚部8の側面に取り付けられた緩衝材10を「発泡樹脂体」とするとともに、さらにその形状を、「柱脚部8の側面(側壁)から擁壁4(対向壁)に向かって、断面積が連続的または段階的に減少している」ものとし、もって上記相違点に係る本件訂正発明1の構成とすることは、当業者といえども容易に想到し得たことではない。 したがって、申立人の上記主張を考慮しても、相違点に係る構成を容易に想到しえたものではないとの判断を覆すべき事情はない。 オ 本件訂正発明1についての小括 以上のとおりであるから、申立人の上記主張を考慮しても、本件訂正発明1は、甲第1~5号証及び参考資料1、2記載の発明ないし技術事項から当業者が容易に想到できたものではない。 (2)本件訂正発明2~5について 本件訂正発明2~5は、本件訂正発明1の構成を全て有した上でさらに限定を加えたものである。そして、先に検討したとおり、本件訂正発明1は、甲第1~5号証記載の発明ないし技術事項によっては容易に想到できたものではないから、本件訂正発明2~5も、甲第1~5号証記載の発明ないし技術事項から当業者が容易に想到できたものではない。 第7 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について 1 本件訂正発明6について 上記第2の通り、本件訂正により請求項6は削除された。 その結果、請求項6に係る異議申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、不適法な特許異議の申立てであって、その補正をすることができないものであるから、特許法第120条の8第1項において準用する同法第135条の規定により却下すべきものである。 第8 むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由、及び各証拠によっては、本件訂正発明1~5を取り消すことはできない。 さらに、他に本件訂正発明1~5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 また、本件訂正発明6に係る特許は、上記第2のとおり、訂正により削除された。これにより、申立人による特許異議の申立てについて、請求項6に係る申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下すべきものである。 よって、結論のとおり決定する。

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2019-700657

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