特許異議申立
2024-701212
機械式駐車設備
- 審判番号
- 2024-701212
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2021-201590
- 登録番号
- 7503042
- 請求日
- 2024年12月19日
- 審決日
- 2025年04月21日
- 公報発行日
- 2025年05月30日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】新明和工業株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人有古特許事務所
- 【異議申立人】笹原 豊生
- 審判長/審判官
- 審判長 渋谷 知子
- 審判官 澤田 真治
- 審判官 太田 恒明
- 分類
- P1651.121-Y (E04H) / P1651.537-Y (E04H)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第113条第4号、特許法第29条第2項、特許法第113条第2号、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第6項第1号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7503042号発明「機械式駐車設備」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7503042号の請求項1~9に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7503042号(以下「本件特許」という。)は、令和2年3月13日に出願された特願2020-43773号の一部を令和3年12月13日に新たな特許出願として出願され(特願2021-201590号)、令和6年6月11日にその特許権の設定登録がされ、令和6年6月19日に特許掲載公報が発行された。
その後、本件特許の請求項1~9に係る特許に対して、令和6年12月19日に特許異議申立人笹原 豊生(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされた。
第2 本件発明
本件特許の請求項1~9に係る発明(以下「本件発明1」等という。また、本件発明1~本件発明9をまとめて、「本件発明」ということがある。)は、特許請求の範囲の請求項1~9に記載された、次の事項により特定されるとおりのものである。なお、本件発明における符号A等は分説のため当審で付与した。分説された本件発明の発明特定事項を、符号に基づき以下「発明特定事項A」等という。
「 【請求項1】
A 機械式駐車設備であって、
B 利用者が車両に乗降する乗降部と、
C 前記乗降部の出入口を開閉する扉と、
D 前記乗降部内に存在する検出対象物を検出するセンサと、
E 前記扉の開閉動作を制御する設備制御装置と、を備え、
F 前記設備制御装置は、
前記センサの検出値に基づき、前記扉の閉動作を開始するか否かを判定する第1判定部と、
G 前記センサの検出値に対して論理チェックを行うことで、前記センサが故障しているか否かを自動的に判定する故障判定部と、
H 前記利用者の操作に基づき、前記扉の閉動作を開始するか否かを判定する第2判定部と、
I 前記扉の閉動作を開始するか否かを前記第1判定部により判定する第1判定モードにおいて、前記センサが故障していると前記故障判定部により判定したとき、前記利用者の操作によらず自動的に、前記扉の閉動作を開始するか否かを前記第2判定部により判定する第2判定モードに切り替える判定切り替え部と、を有し、
J 前記扉の閉動作を開始すると前記第1判定部により判定したとき、前記利用者の操作によらず自動的に前記扉の閉動作を実行する、機械式駐車設備。
【請求項2】
K 前記出入口を前記検出対象物が通過したか否かを検出する出入口センサをさらに備え、
L 前記故障判定部は、前記論理チェックとして少なくとも、前記センサおよび前記出入口センサの検出値に基づき、前記センサが故障しているか否かを判定することを含む、請求項1に記載の機械式駐車設備。
【請求項3】
M 前記論理チェックは、前記出入口センサで前記検出対象物が前記乗降部内に進入したことが検出されたにもかかわらず、前記センサで前記検出対象物が検出されていない場合に、前記センサが故障していると判定することを含む、請求項2に記載の機械式駐車設備。
【請求項4】
N 前記判定切り替え部は、人の操作によっても、前記第1判定モードと前記第2判定モードとを切り替え可能である、請求項1ないし3のいずれかに記載の機械式駐車設備。
【請求項5】
O 前記乗降部内の全エリアは、第1エリアと前記第1エリア以外の第2エリアとに分けられ、前記乗降部内には、前記第2エリアへの前記検出対象物の侵入を防止する侵入防止部が設けられ、前記第2エリアは、前記侵入防止部が設けられているときだけでなく前記侵入防止部を除いたときにも前記センサで前記検出対象物を検出できない第3エリアを含み、前記センサは、前記第1エリア内に存在する前記検出対象物を検出する、請求項1ないし4のいずれかに記載の機械式駐車設備。
【請求項6】
P 前記乗降部内に前記センサの検出対象ではない非検出対象物をさらに備え、
Q 前記第3エリアは、前記非検出対象物に妨げられることにより、前記センサで前記検出対象物を検出できないエリアを含み、
R 前記侵入防止部は、前記非検出対象物の全周を覆うことなく少なくとも前記非検出対象物の一部が前記第1エリアに面して露出するように設けられる、請求項5に記載の機械式駐車設備。
【請求項7】
S 前記非検出対象物は、前記第1判定部により前記扉の閉動作を開始すると判定した後に、前記設備制御装置により動作を制御される昇降器および前記昇降器と一体的に昇降する部材を含む、請求項6に記載の機械式駐車設備。
【請求項8】
T 前記侵入防止部の少なくとも一部は、前記第1判定部により前記扉の閉動作を開始すると判定する前に、前記昇降器の動作を妨げる位置にあり、前記第1判定部により前記扉の閉動作を開始すると判定した後に、前記昇降器の動作を妨げない位置まで移動する、請求項7に記載の機械式駐車設備。
【請求項9】
U 前記センサは、測域センサおよび光電センサのうちの少なくともいずれかを含む、請求項1ないし8のいずれかに記載の機械式駐車設備。」
第3 特許異議申立理由の概要
申立人による異議申立理由の概要は、次のとおりである。
1 進歩性欠如
本件発明1~7、9は、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証に記載された技術的事項(甲第2号証~甲第4号証に記載された周知技術)、甲第5号証に記載された技術的事項、甲第6号証~甲第8号証に記載された周知技術、甲第9号証に記載された技術的事項、甲第10号証に記載された周知技術、並びに、甲第1号証、甲第2号証及び甲第11号証に記載された周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1~7、9に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
2 明確性要件違反
請求項6、7に係る発明は、著しく不明確であり、請求項6を直接的又は間接的に引用する請求項8~9に係る発明も同様であるから、本件発明6~9に係る特許は、特許法第36条第6項第2号の規定に違反してされたものであり、特許法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
3 サポート要件違反
請求項7~8に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものではなく、請求項7~8を引用する請求項9に係る発明も同様であるから、本件発明7~9に係る特許は、特許法第36条第6項第1号の規定に違反してされたものであり、特許法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
第4 証拠
1 証拠一覧
申立人により、特許異議申立書とともに提出された証拠は、次のとおりである。
甲第1号証:特開2005-330685号公報
甲第2号証:特開平8-93255号公報
甲第3号証:特開2018-80457号公報
甲第4号証:特開2016-102346号公報
甲第5号証:特開平8-151879号公報
甲第6号証:特許第3532706号公報
甲第7号証:特許第5116974号公報
甲第8号証:特許第5174486号公報
甲第9号証:特許第6504998号公報
甲第10号証:特開2017-125357号公報
甲第11号証:特許第5192267号公報
(以下「甲1」~「甲11」という。)
2 各証拠について
(1)甲1
ア 記載事項
甲1には、次の事項が記載されている。なお、下線は当審で付した(以下同じ。)。
(ア)記載事項1-1
「【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、駐車装置の少なくとも出庫口の扉を閉じる場合には、出庫エリア内に人や動物などが取り残されていないかを確認する必要があり、従来、入出庫口に光電式などのセンサを設け、例えば1回目のセンサの作動で人などが入出庫エリアに入ったことを検知したとすれば、もう一度センサが作動することで、入った人などが入出庫エリアから出たと判断することが行われているが、必ずしも十分に人や動物などを検出できないという問題がある。
【0008】
また、移動体を検出するパッシングセンサを設置して入出庫エリア内を監視することも行われているが、人や動物などが移動しないと検出することができないという問題がある。
【0009】
さらに、いずれの場合にもセンサによる検知領域に死角ができやすく、確実に入出庫エリアが無人状態であることを検出できないという問題もある。
【0010】
この発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたもので、出庫エリア内に残された人や動物などの存在を機械的に確実に検知して、出庫口の扉を自動的に閉鎖することができる駐車装置の自動扉閉鎖装置を提供しようとするものである。」
(イ)記載事項1-2
「【0024】
この箱型循環方式の機械式駐車装置1では、図3に示すように、地上部分に入庫エリアと出庫エリアを兼用する入出庫エリア2が設けられ、入出庫エリア2の入出庫口3には、図示しない開閉駆動装置によって手動によらず開閉することができる自動式の扉4が設置してある。
【0025】
そして、地下部分には、上下2層にパレット5を格納する複数の駐車スペース6が設けられ、両端部に配置されたリフト装置7で、上下2層間の昇降と入出庫エリア2への昇降が行われるとともに、横送り装置8で各層内での水平移動が行われる箱型循環方式となっている。
【0026】
このような駐車装置1の入出庫エリア2に設置される自動扉閉鎖装置10は、図1および図2に示すように、出庫後の入出庫エリア2内の人や動物などが取り残されていない状態(この状態を動物なども含めて無人状態という。)を確認して自動的に扉4を閉鎖する装置であり、無人状態を検知する検知手段としてのエリアセンサ11を構成する例えば多軸光電式センサ12と、このエリアセンサ11の検知結果に基づき無人状態が検知された場合に、扉4を閉じる制御信号を扉4の開閉駆動装置の扉制御装置13に出力する制御手段としての制御装置14とを備えている。
……
【0031】
このようなエリアセンサ11を構成する多軸光電式センサ12、12’の受光器12b、12b’からの検知信号が制御装置14に入力されるとともに、この制御装置14から扉制御装置13に扉の閉鎖信号を出力するようになっている。」
(ウ)記載事項1-3
「【0032】
次に、このように構成した駐車装置の自動扉閉鎖装置10の動作について、図4に示すフロー図にしたがって説明する。
【0033】
この駐車装置1で車の出庫を行う場合には、例えばドライバーによって、まず、出庫操作が行われる(ステップ1、2参照)。
【0034】
これにより、駐車装置1が運転され、入出庫エリア2にパレット5ごと車両が移送され、こののち、入出庫口3の扉4が、ドライバーの押し釦操作などで開かれる(ステップ3参照)。
【0035】
次に、ドライバーが入出庫エリア2に入室する(ステップ4)と、ドライバーによって多軸光電式センサ12、12’のいずれかの受光器12b、12b’が遮光されることになり、この検知信号により制御装置14内の検知回路であるAK回路がONにされる(ステップ5)。
【0036】
そして、ドライバーが入出庫エリア2内の車に乗って出庫する(ステップ6)と、入出庫エリア2内に車がなく、ドライバーがいない無人状態となるので、多軸光電式センサ12、12’の全てが遮光されることがなく、制御装置14内の検知回路であるAK回路をOFFとする(ステップ7)。
【0037】
こうして出庫が完了すると、制御装置14からの制御信号で、エリアセンサ11である多軸光電式センサ12、12’の全てに投光指令を出力し、入出庫エリア2内が人や動物などが取り残されていない無人状態であることを検知する(ステップ8)。
【0038】
こののち、扉4を閉めることを知らせるため、アナウンスを開始し(ステップ9)、制御装置14でエリアセンサ11による無人状態の検知結果を確認する(ステップ10)。
【0039】
制御装置14で無人状態を検知し、10秒が経過した後、制御装置14から扉制御装置13に扉閉鎖信号が出力され、扉4が閉鎖するようにし、閉鎖状態を確認する(ステップ11、12)。
【0040】
一方、エリアセンサ11による無人状態の検知ができない場合には、いずれかの受光器12b,12b’で受光できない遮光されるセンサがあることになり(ステップ13)、この全てのエリアセンサ11を動作させた状態で制御装置14のAK回路がOFFになる無人状態を確認するまで待つ(ステップ14)。
【0041】
無人状態が確認できれば、ステップ10に戻り、10秒後に扉4を閉鎖するように指令が出力され、扉4が閉鎖される。
【0042】
制御装置13への扉閉鎖信号が出力されて扉4を閉鎖中に、いずれかのエリアセンサ11で遮光が起こり、無人状態でないことが検知される(ステップ15)と、扉4の反転指令が出力される(ステップ16)。
【0043】
そして、再び無人状態が確認できれば、ステップ10に戻り、10秒後に扉4を閉鎖するように指令が出力され、扉4が閉鎖される。
【0044】
なお、自動閉鎖が開始されて、途中で無人状態でないことが、3回繰り返し、検出される場合には、扉4の異常と判断する(ステップ17)。
【0045】
このようにして、出庫エリア2内が人や動物等が全くいない無人状態であることをエリアセンサ11で確認することができ、ドライバーが出庫後、車から降りて操作することなく、自動で扉4を閉鎖することができる。
【0046】
このエリアセンサ11による無人状態の検知を、出庫エリアの床面と平行に多数の光電式センサを設け、しかも床面からの高さを遮蔽物のないできるだけ低い高さとしているので、死角のない状態で人や動物などを完全に検知することができる。」
(エ)記載事項1-4
「【図1】
[図:0001422470000001.jpg]
」
(オ)記載事項1-5
「【図3】
[図:0001422470000002.jpg]
」
(カ)記載事項1-6
「【図4】
[図:0001422470000003.jpg]
」
イ 甲1発明
以上のことから、甲1には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。なお、甲号証の番号、及び、発明特定事項A等に概ね対応させたa等を含む符号を付与した(以下同じ。)。また、引用箇所の段落番号等を併記した。
「1a
機械式駐車装置1であって(【0024】)、
1bアcdefjア
地上部分に入庫エリアと出庫エリアを兼用する入出庫エリア2が設けられ、入出庫エリア2の入出庫口3には、開閉駆動装置によって手動によらず開閉することができる自動式の扉4が設置してあり(「【0024】)、
そして、地下部分には、上下2層にパレット5を格納する複数の駐車スペース6が設けられ、両端部に配置されたリフト装置7で、上下2層間の昇降と入出庫エリア2への昇降が行われるとともに、横送り装置8で各層内での水平移動が行われる箱型循環方式となっており(【0025】)、
このような駐車装置1の入出庫エリア2に設置される自動扉閉鎖装置10は、出庫後の入出庫エリア2内の人や動物などが取り残されていない状態(この状態を動物なども含めて無人状態という。)を確認して自動的に扉4を閉鎖する装置であり、無人状態を検知する検知手段としてのエリアセンサ11を構成する例えば多軸光電式センサ12と、このエリアセンサ11の検知結果に基づき無人状態が検知された場合に、扉4を閉じる制御信号を扉4の開閉駆動装置の扉制御装置13に出力する制御手段としての制御装置14とを備えており(【0026】)、
エリアセンサ11を構成する多軸光電式センサ12、12’の受光器12b、12b’からの検知信号が制御装置14に入力されるとともに、この制御装置14から扉制御装置13に扉の閉鎖信号を出力するようになっており(【0031】)、
1bイ
車の出庫を行う場合には、例えばドライバーによって、まず、出庫操作が行われ(【0033】)、
これにより、駐車装置1が運転され、入出庫エリア2にパレット5ごと車両が移送され、こののち、入出庫口3の扉4が、ドライバーの押し釦操作などで開かれ(【0034】)、
次に、ドライバーが入出庫エリア2に入室し(【0035】)、
そして、ドライバーが入出庫エリア2内の車に乗って出庫し(【0036】)、
こうして出庫が完了すると、制御装置14からの制御信号で、エリアセンサ11である多軸光電式センサ12、12’の全てに投光指令を出力し、入出庫エリア2内が人や動物などが取り残されていない無人状態であることを検知し(【0037】)、
制御装置14でエリアセンサ11による無人状態の検知結果を確認し(【0038】)、
制御装置14で無人状態を検知し、10秒が経過した後、制御装置14から扉制御装置13に扉閉鎖信号が出力され、扉4が閉鎖するようにし、閉鎖状態を確認し(【0039】)、
一方、エリアセンサ11による無人状態の検知ができない場合には、いずれかの受光器12b,12b’で受光できない遮光されるセンサがあることになり、この全てのエリアセンサ11を動作させた状態で制御装置14のAK回路がOFFになる無人状態を確認するまで待ち(【0040】)、
無人状態が確認できれば、10秒後に扉4を閉鎖するように指令が出力され、扉4が閉鎖され(【0041】)、
制御装置13への扉閉鎖信号が出力されて扉4を閉鎖中に、いずれかのエリアセンサ11で遮光が起こり、無人状態でないことが検知されると、扉4の反転指令が出力され(【0042】)、
そして、再び無人状態が確認できれば、10秒後に扉4を閉鎖するように指令が出力され、扉4が閉鎖され(【0043】)、
なお、自動閉鎖が開始されて、途中で無人状態でないことが、3回繰り返し、検出される場合には、扉4の異常と判断し(【0044】)、
このようにして、出庫エリア2内が人や動物等が全くいない無人状態であることをエリアセンサ11で確認することができ、ドライバーが出庫後、車から降りて操作することなく、自動で扉4を閉鎖することができる(【0045】)、
1jイ
機械式駐車装置1(【0024】)。」
(2)甲2
申立人は、甲2に次の技術的事項(以下「甲2技術的事項」という。)が記載されていると主張する。
「2g
センサの検出値に対して論理チェックを行うことで、センサが故障しているか否かを自動的に判定する点。」
「2k
車両入退室110内の入出庫口にごく近い位置には、車両入退室チェック光電管11が設けられ、車両入退室110内に出入りする利用者や車両を検知する点。」
「2lm
車両入退室チェック光電管11で検出対象物(車両)が乗降室部内に侵入したことが検出されたにもかかわらず、人検知装置で検出対象物(人)が検出されていない場合(車両の入出庫回数と利用者の入退室回数の合理性に基づき)に、人検知センサが故障していると判定する点。」
(3)甲3
申立人は、甲3に次の技術的事項が記載されていると主張する。
「3g
センサの検出値に対して論理チェックを行うことで、センサが故障しているか否かを自動的に判定する点。」
(4)甲4
申立人は、甲4に次の技術的事項が記載されていると主張する。
「4g
センサの検出値とカメラの検出結果に対して論理チェックを行うことで、センサが故障しているか否かを自動的に判定する点。」
(5)甲5
ア 記載事項
甲5には、次の事項が記載されている。
(ア)記載事項5-1
「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ビル、倉庫、工場等の出入り口に建付けられる建築用電動シャッターにおける開閉制御装置に関するものである。
【0002】
【従来技術及び発明が解決しようとする課題】一般に、この種建築用電動シャッターのなかには、通過物が近接したことを検知する通過物検知センサの検知に基づいてシャッターカーテンを開放し、あるいはシャッターカーテン最下端の座板に設けた障害物検知センサの検知に基づいて緊急停止するようにしたものがある。ところでこのものでは、これら検知センサが故障等して常時検知状態になると、最早、シャッターカーテンの開閉制御ができないことになる。
【0003】そこで、特開平3-132583号公報に示されるごとく、障害物検知センサが故障等のため障害物検知状態のままになったとき、これを解除して開閉作動ができるようにしたものを提唱し、センサ故障時における緊急的な開閉作動ができることになった。ところがこの解除スイッチは、不用意に解除状態に切換えられることがないよう対処する必要があり、そのため、人目につかないところ、例えばシャッターケース内や制御盤等に設けていた。この結果、センサ故障時に、いちいちシャッターケースを開けたりして解除スイッチの切換えをしなければならないため面倒であるうえ、解除状態のまま放置すると、障害物検知センサが折角ありながら障害物検知がなされない状態で開閉作動がなされてしまうという問題がある。」
(イ)記載事項5-2
「【0006】
【実施例】次に、本発明の一実施例を図面に基づいて説明する。図面において、1は建築用シャッターのシャッターカーテンであって、該シャッターカーテン1は、開閉制御部2からの制御指令に基づく開閉機3の開閉作動によって開閉作動をするようになっていること等は何れも従来通りである。尚、図中、4はガイドレール、5はシャッターケースである。
【0007】前記開閉制御部2には、遠隔制御室6からの自動的な開閉操作信号が入力するよう接続されると共に、さらに、開口部に設けた手動操作用開放スイッチPBU、閉鎖スイッチPBD、停止スイッチPBS、シャッターカーテン1最下端部の座板に設けた障害物検知スイッチSFT(当該スイッチとしては、座板スイッチが一般に用いられる)、シャッターカーテン1上下限検知をする上下限検知スイッチLSU、LSD、シャッターカーテン1の減速位置の検知をする減速位置検知スイッチ7、通過物の検知をする通過物検知スイッチ8(当該スイッチとしては、光電スイッチ、遠赤外線を用いた近接センサ(スイッチ)等が一般に用いられる)、自動操作モード-手動操作モードを切換えるべく例えば開閉制御部2に設けられるモード切換えスイッチ9、押し操作をすることでON状態となり、押し操作を解除することで自動的にOFF状態となる自動復帰型の補助スイッチ10等の各種検知スイッチが接続されている。ここで、補助スイッチ10は、後述するように非常的にシャッターカーテン1の開閉作動をするためスイッチ操作し続ける必要があるため、管理者がシャッターカーテン1の開閉作動を監視しながら操作できる位置に配設することが好ましく、本実施例では、手動操作用開放スイッチPBU、閉鎖スイッチPBD、停止スイッチPBSが設けられる近傍に施錠装置(図示せず)スイッチボックス10a内に収容されている。そして開閉制御部2は、これらスイッチ類あるいは遠隔制御室6から入力した制御信号に基づいて開閉制御指令を開閉機3に出力することになるが、つぎに、この開閉制御部2における制御手順について、図3、4に示すフローチャート図に基づいて説明する。
【0008】開閉制御部2は、メインスイッチ(図示せず)の投入によりシステムスタートし、初期設定されるが、この状態で、モード切換えスイッチ9が、手動-自動の何れのモード状態になっているかの判断がなされ、自動制御モードに切換えられていると判断された場合に、シャッターカーテン1の開閉制御は自動制御されることになるが、その詳細については省略する。因みに本実施例では、この自動制御モードに切換えられている場合、後述するような障害物検知の解除を行うことができないように設定されている。
【0009】一方、モード切換えスイッチ9が手動制御モードに切換えられている場合に、まず障害物検知スイッチSFTおよび通過物検知センサ8の何れかが検知状態であるか否かの判断がなされ、何れも検知状態ではないと判断された場合には、手動操作用開閉スイッチPBU、PBD、PBSの各操作に基づいて対応する通常の開閉制御がなされることになるが、この開閉制御の詳細については省略する。これに対し、障害物検知スイッチSFTあるいは通過物検知スイッチ8の何れか一方が検知状態であると判断された場合には、前記補助スイッチ10の入力操作と、手動操作用の開放または閉鎖スイッチPBU、PBDの何れかのスイッチ操作との両操作がなされたか否かが判断され、該両操作がなされたと判断された場合にのみ、障害物検知スイッチSFTあるいは通過物検知スイッチ8からの検知信号の入力を無視して前記対応する開閉制御がなされ、何れか一方が操作されたのみでは開閉制御がなされないように設定されている。そしてさらにこのものでは、補助スイッチ10の入力が途中でなくなるか、上下限検知スイッチLSU、LSDが検知されると、シャッターカーテン1の停止がなされるように設定されている。……」
(ウ)記載事項5-3
「【0010】叙述の如く構成された本発明の実施例において、シャッターカーテン1は、自動制御モードとしておけば、通過物検知スイッチ8の検知や予め設定される開閉タイマ時間に基づき開閉制御部2からの制御指令に基づく開閉機3の駆動によって自動的に開閉作動することになるが、このものにおいて、障害物検知スイッチSFTあるいは通過物検知スイッチ8の少なくとも一方等が故障して検知状態のままとなったとき、モード切換えスイッチ9を手動制御モードに切換えた状態にし、そして、補助スイッチ10を押し続けると共に何れか一方の手動操作用の開放、閉鎖スイッチPBU、PBDを操作すると、開閉制御部2は、障害物検知スイッチSFTあるいは通過物検知スイッチ8からの検知信号を無視して、シャッターカーテン1の対応する開閉作動を行うことができる。従って、障害物検知スイッチSFTあるいは通過物検知スイッチ8が故障等して障害物や通過物が無いにも拘らずこれらが検知状態となった場合に、必要においてシャッターカーテン1の手動による開閉作動をすることができ、故障等している障害物検知スイッチSFTあるいは通過物検知スイッチ8を無理に非検知状態にしたりして応急的な開閉作動をする必要が無い。
【0011】この様に、本発明が実施されたものにおいては、障害物検知スイッチSFTあるいは通過物検知スイッチ8が故障等して検知状態のままになったとき、応急的な開閉制御をスイッチ操作によって行うことができるが、この場合に、手動操作用の開放、閉鎖スイッチPBU、PBDの操作だけでなく、補助スイッチ10のスイッチ操作が必要であるが、この補助スイッチ10は、スイッチ操作を止めると元状態になる自動復帰型であるため、前記応急的な開閉制御は、必ずオペレータによる補助スイッチ10の押し操作が必要になって、オペレータが部所を離れた状態でシャッターカーテン1が開閉作動するようなことがなく、安全性が損なわれることが無いうえ、故障したスイッチの交換が促される。」
(エ)記載事項5-4
「【図2】
[図:0001422470000004.jpg]
」
(オ)記載事項5-5
「【図3】
[図:0001422470000005.jpg]
」
イ 甲5記載の技術事項
以上のことから、甲5には、次の技術事項(以下「甲5記載の技術事項」という。)が記載されている。なお、引用箇所の段落番号等を併記した。
「5cdefhij
シャッターカーテン1は、開閉制御部2からの制御指令に基づく開閉機3の開閉作動によって開閉作動をするようになっており(【0006】)、
前記開閉制御部2には、開口部に設けた手動操作用開放スイッチPBU、閉鎖スイッチPBD、停止スイッチPBS、シャッターカーテン1最下端部の座板に設けた障害物検知スイッチSFT、シャッターカーテン1上下限検知をする上下限検知スイッチLSU、LSD、シャッターカーテン1の減速位置の検知をする減速位置検知スイッチ7、通過物の検知をする通過物検知スイッチ8、自動操作モード-手動操作モードを切換えるべく例えば開閉制御部2に設けられるモード切換えスイッチ9、押し操作をすることでON状態となり、押し操作を解除することで自動的にOFF状態となる自動復帰型の補助スイッチ10等の各種検知スイッチが接続されており、ここで、補助スイッチ10は、非常的にシャッターカーテン1の開閉作動をするためスイッチ操作し続ける必要があるため、管理者がシャッターカーテン1の開閉作動を監視しながら操作できる位置に配設し、そして開閉制御部2は、スイッチ類あるいは遠隔制御室6から入力した制御信号に基づいて開閉制御指令を開閉機3に出力することになり(【0007】)、
開閉制御部2は、メインスイッチの投入によりシステムスタートし、初期設定されるが、この状態で、モード切換えスイッチ9が、手動-自動の何れのモード状態になっているかの判断がなされ、自動制御モードに切換えられていると判断された場合に、シャッターカーテン1の開閉制御は自動制御されることになり(【0008】)、
一方、モード切換えスイッチ9が手動制御モードに切換えられている場合に、まず障害物検知スイッチSFTおよび通過物検知センサ8の何れかが検知状態であるか否かの判断がなされ、何れも検知状態ではないと判断された場合には、手動操作用開閉スイッチPBU、PBD、PBSの各操作に基づいて対応する通常の開閉制御がなされることになるが、これに対し、障害物検知スイッチSFTあるいは通過物検知スイッチ8の何れか一方が検知状態であると判断された場合には、前記補助スイッチ10の入力操作と、手動操作用の開放または閉鎖スイッチPBU、PBDの何れかのスイッチ操作との両操作がなされたか否かが判断され、該両操作がなされたと判断された場合にのみ、障害物検知スイッチSFTあるいは通過物検知スイッチ8からの検知信号の入力を無視して前記対応する開閉制御がなされ、何れか一方が操作されたのみでは開閉制御がなされないように設定されており(【0009】)、
シャッターカーテン1は、自動制御モードとしておけば、通過物検知スイッチ8の検知や予め設定される開閉タイマ時間に基づき開閉制御部2からの制御指令に基づく開閉機3の駆動によって自動的に開閉作動することになるが、このものにおいて、障害物検知スイッチSFTあるいは通過物検知スイッチ8の少なくとも一方等が故障して検知状態のままとなったとき、モード切換えスイッチ9を手動制御モードに切換えた状態にし、そして、補助スイッチ10を押し続けると共に何れか一方の手動操作用の開放、閉鎖スイッチPBU、PBDを操作すると、開閉制御部2は、障害物検知スイッチSFTあるいは通過物検知スイッチ8からの検知信号を無視して、シャッターカーテン1の対応する開閉作動を行うことができ(【0010】)、
障害物検知スイッチSFTあるいは通過物検知スイッチ8が故障等して検知状態のままになったとき、応急的な開閉制御をスイッチ操作によって行うことができるが、この場合に、手動操作用の開放、閉鎖スイッチPBU、PBDの操作だけでなく、補助スイッチ10のスイッチ操作が必要であるが、この補助スイッチ10は、スイッチ操作を止めると元状態になる自動復帰型であるため、前記応急的な開閉制御は、必ずオペレータによる補助スイッチ10の押し操作が必要になって、オペレータが部所を離れた状態でシャッターカーテン1が開閉作動するようなことがない(【0011】)、
ビル、倉庫、工場等の出入り口に建付けられる建築用電動シャッターにおける開閉制御装置(【0001】)。」
(6)甲6
申立人は、甲6に次の技術的事項が記載されていると主張する。
「6n
切替スイッチ25を備え、エンコーダ15が故障したときに、操作者が切替スイッチ25によって制御モードを手動制御モードに切り替える点。」
(7)甲7
申立人は、甲7に次の技術的事項が記載されていると主張する。
「7n
運転モード切換スイッチ82を備え、操作者が運転モードを手動で切り替えることができる点。」
(8)甲8
申立人は、甲8に次の技術的事項が記載されていると主張する。
「8n
「運転モード」スイッチ56を備え、操作者が運転モードを手動で切り替えることができる点。」
(9)甲9
申立人は、甲9に次の技術的事項が記載されていると主張する。
「9o
乗降室2は、第1エリアと第1エリア以外の第2エリアとに分けられ、乗降室2には、第2エリアへの人の侵入を防止する隔壁15が設けられ、第2エリアは、隔壁15が設けられているときだけでなく、隔壁15を除いたときにもレーザ人体検出器14で人を検出できない第3エリア(避圧開放部8や配管7の陰)を含み、レーザ人体検出器14は、第1エリア内に存在する人を検出する点。」
「9p
乗降室2内に、レーザ人体検出器14の検出対象ではない非検出対象物(避圧開放部8や配管7)を備える点。」
「9q
第3エリアは、非検出対象物(避圧開放部8や配管7)に妨げられることにより、レーザ人体検出器14で人を検出できないエリア(避圧開放部8や配管7の陰)を含んでいる点。」
(10)甲10
申立人は、甲10に次の技術的事項が記載されていると主張する。
「10r
人の侵入を妨げるために設けられた柵体15a、15bは、網目状とされており、その内部の一部が露出するように構成されている点。」
(11)甲11
申立人は、甲11に次の技術的事項が記載されていると主張する。
「11s
パレット本体3上に設けられ、パレット本体3と一体的に昇降する棚体8を備える点。」
第5 進歩性欠如について
1 本件発明1と甲1発明との対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
(1)発明特定事項Aについて
甲1発明の「機械式駐車装置1」は、本件発明1の「機械式駐車設備」に相当する。
よって、甲1発明は、発明特定事項Aに相当する構成を有する。
(2)発明特定事項Bについて
甲1発明の「ドライバー」、「車」、「入出庫エリア2」は、それぞれ、本件発明1の「利用者」、「車両」、「乗降部」に相当する。
よって、甲1発明は、発明特定事項Bに相当する構成を有する。
(3)発明特定事項Cについて
甲1発明の「入出庫エリア2の入出庫口3」、「入出庫エリア2の入出庫口3に」「設置してあ」る「開閉駆動装置によって手動によらず開閉することができる自動式の扉4」は、それぞれ、本件発明1の「前記乗降部の出入口」、「前記乗降部の出入口を開閉する扉」に相当する。
よって、甲1発明は、発明特定事項Cに相当する構成を有する。
(4)発明特定事項Dについて
甲1発明の「駐車装置1の入出庫エリア2に設置される自動扉閉鎖装置10」が「備えて」いる「無人状態を検知する検知手段としてのエリアセンサ11を構成する例えば多軸光電式センサ12」は、本件発明1の「前記乗降部内に存在する検出対象物を検出するセンサ」に相当する。
よって、甲1発明は、発明特定事項Dに相当する構成を有する。
(5)発明特定事項Eについて
甲1発明の「エリアセンサ11の検知結果に基づき無人状態が検知された場合に、扉4を閉じる制御信号を扉4の開閉駆動装置の扉制御装置13に出力する制御手段としての制御装置14」は、本件発明1の「前記扉の開閉動作を制御する設備制御装置」に相当する。
よって、甲1発明は、発明特定事項Eに相当する構成を有する。
(6)発明特定事項Fについて
甲1発明では、「エリアセンサ11を構成する多軸光電式センサ12、12’の受光器12b、12b’からの検知信号が制御装置14に入力されるとともに、この制御装置14から扉制御装置13に扉の閉鎖信号を出力するようになって」いるから、甲1発明の「制御装置14」は、本件発明1の「設備制御装置」と同様に、「前記センサの検出値に基づき、前記扉の閉動作を開始するか否かを判定する第1判定部」を有するといえる。
よって、甲1発明は、発明特定事項Fに相当する構成を有する。
(7)発明特定事項Jについて
甲1発明では、「制御装置14」「を備えて」いる「自動扉閉鎖装置10」は「出庫後の入出庫エリア2内の人や動物などが取り残されていない状態(この状態を動物なども含めて無人状態という。)を確認して自動的に扉4を閉鎖する装置」であるから、甲1発明は、本件発明1のように、「前記扉の閉動作を開始すると前記第1判定部により判定したとき、前記利用者の操作によらず自動的に前記扉の閉動作を実行する」といえる。
また、甲1発明の「機械式駐車装置1」は、本件発明1の「機械式駐車設備」に相当する。
よって、甲1発明は、発明特定事項Jに相当する構成を有する。
(8)一致点・相違点
上記(1)~(7)からみて、本件発明1と甲1発明とは、
「A 機械式駐車設備であって、
B 利用者が車両に乗降する乗降部と、
C 前記乗降部の出入口を開閉する扉と、
D 前記乗降部内に存在する検出対象物を検出するセンサと、
E 前記扉の開閉動作を制御する設備制御装置と、を備え、
F 前記設備制御装置は、
前記センサの検出値に基づき、前記扉の閉動作を開始するか否かを判定する第1判定部を有し、
J 前記扉の閉動作を開始すると前記第1判定部により判定したとき、前記利用者の操作によらず自動的に前記扉の閉動作を実行する、機械式駐車設備。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点1(発明特定事項G)>
本件発明1は、「前記センサの検出値に対して論理チェックを行うことで、前記センサが故障しているか否かを自動的に判定する故障判定部」を有するのに対し、
甲1発明では、そのように構成されていない点。
<相違点2(発明特定事項H、I)>
本件発明1は、「前記利用者の操作に基づき、前記扉の閉動作を開始するか否かを判定する第2判定部」と、「前記扉の閉動作を開始するか否かを前記第1判定部により判定する第1判定モードにおいて、前記センサが故障していると前記故障判定部により判定したとき、前記利用者の操作によらず自動的に、前記扉の閉動作を開始するか否かを前記第2判定部により判定する第2判定モードに切り替える判定切り替え部」とを有するのに対し、
甲1発明では、そのように構成されていない点。
2 本件発明1についての判断
(1)相違点2について
事案に鑑み、相違点2から検討する。
ア 当審の判断
甲5記載の技術事項は、「障害物検知スイッチSFTあるいは通過物検知スイッチ8が故障等して検知状態のままになったとき、応急的な開閉制御をスイッチ操作によって行うことができるが、」「前記応急的な開閉制御は、必ずオペレータによる補助スイッチ10の押し操作が必要にな」るものである。
してみると、甲5記載の技術事項において「障害物検知スイッチSFTあるいは通過物検知スイッチ8の少なくとも一方等が故障して検知状態のままとなったとき、モード切換えスイッチ9を手動制御モードに切換えた状態にし、そして、補助スイッチ10を押し続ける」のは「オペレータ」であって、甲5記載の技術事項は、本件発明1のように、「利用者の操作によらず自動的に」「自動開閉制御」と「手動開閉制御」とを切り替えることができないから、甲1発明に甲5記載の技術事項を適用したとしても、相違点2に係る本件発明1の構成とすることはできない。また、申立人が提出したその余の証拠をみても、相違点2に係る本件発明1の構成は記載も示唆もされていない。
イ 申立人の主張について
申立人は、相違点2に対して以下のことを主張する(特許異議申立書第18頁第22行~第26行)。
「甲5には、利用者の操作に基づき、扉の閉動作を開始するか否かを判定する手動モードを備え(上記構成h)、センサが故障していると判定したときに、利用者の操作に基づいて扉の閉動作を開始する手動モードに、利用者の操作によらず自動的に切り替えることが開示されている(上記構成i)。甲5におけるこれらの構成は、相違点2に係る構成に相当する。」
しかしながら、上記アで述べたように、甲5記載の技術事項は、本件発明1のように、「利用者の操作によらず自動的に」「自動開閉制御」と「手動開閉制御」とを切り替えることができない。
よって、申立人の主張は採用できない。
(2)小括
以上のとおり、相違点2に係る本件発明1の構成をなすことは、当業者が容易になし得たことであるとはいえないから、その他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明、甲2技術的事項(甲2~甲4に記載された周知技術)、及び、甲5記載の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
3 本件発明2~7、9についての判断
以上のとおり、本件発明1は当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件発明1を直接的又は間接的に引用する本件発明2~7、9も当業者が容易に発明をすることができたものではない。
第6 明確性要件違反について
1 申立ての具体的理由
申立人は、明確性要件違反の具体的理由として以下のことを主張する(特許異議申立書第25頁第13行~第26頁第12行)。
「請求項6には、「前記侵入防止部は、前記非検出対象物の全周を覆うことなく少なくとも前記非検出対象物の一部が前記第1エリアに面して露出するように設けられる」と記載されている。しかしながら、「少なくとも前記非検出対象物の一部が前記第1エリアに面して露出するように設けられる」とは、どのように侵入防止部が設けられるのか不明確である。
また、請求項6を引用する請求項7には、「前記非検出対象物は、前記第1判定部により前記扉の閉動作を開始すると判定した後に、前記設備制御装置により動作を制御される昇降器および前記昇降器と一体的に昇降する部材を含む」と記載されている。しかしながら、昇降器及びこの昇降器と一体的に昇降する部材において、これら非検出対象物のどの一部がどのようにして第1エリアに面して露出するように、侵入防止部が設けられているのか、まったく記載されていないから、侵入防止部の構成を理解することができない。
更に、これらの非検出対象物は、昇降するものであるところ、侵入防止部が非検出対象物と一緒に昇降するものであるのか、それとも昇降部内に固定されている部材なのかも不明である。
更に、「前記非検出対象物の全周を覆うことなく少なくとも前記非検出対象物の一部が前記第1エリアに面して露出するように」侵入防止部が設けられる技術的意義も本願明細書には全く記載されていない。
上述の通り、請求項6における「前記侵入防止部は、前記非検出対象物の全周を覆うことなく少なくとも前記非検出対象物の一部が前記第1エリアに面して露出するように設けられ」との記載は、請求項7において非検出対象物として記載されている「昇降器および前記昇降器と一体的に昇降する部材」との関係において、どのように設けられるものなのかが不明確であり、更に、その技術的意義(すなわち、非検出対象物の全周を覆うことなく少なくとも前記非検出対象物の一部が前記第1エリアに面して露出するように設けられることの技術的意義)も不明である。
したがって、請求項6、7に係る発明は、著しく不明確であり、その発明を全く理解することができない。請求項6を引用する請求項8~9についても同様である。」
2 判断基準
特許を受けようとする発明が明確であるかは、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきである。
3 当審の判断
請求項6には、「前記侵入防止部は、前記非検出対象物の全周を覆うことなく少なくとも前記非検出対象物の一部が前記第1エリアに面して露出するように設けられる」と記載されている。
そうすると、「前記侵入防止部」は「前記非検出対象物の全周を覆うこと」がないように「設けられる」ものであると解される。そして、「前記侵入防止部」を「前記非検出対象物の全周を覆うこと」がないように「設け」ると「少なくとも前記非検出対象物の一部が」「前記侵入防止部」から「露出する」ことは明らかであるところ、その際に、「少なくとも前記非検出対象物の一部が」「前記第1エリアに面して露出するように」「前記侵入防止部」が「設けられる」と解される。
したがって、申立人の「「少なくとも前記非検出対象物の一部が前記第1エリアに面して露出するように設けられる」とは、どのように侵入防止部が設けられるのか不明確である」という主張は採用できない。
また、請求項7によれば、「前記非検出対象物」が「前記設備制御装置により動作を制御される昇降器」及び「前記昇降器と一体的に昇降する部材」を「含む」と解される。しかしながら、請求項7が引用する請求項6では、「少なくとも前記非検出対象物の一部」が「前記第1エリアに面して露出する」ように「侵入防止部」を「設け」ることは特定されているものの、「前記非検出対象物」の全てが「前記第1エリアに面して露出する」ように「侵入防止部」を「設け」ることは特定されていない。そうすると、「昇降器」及び「前記昇降器と一体的に昇降する部材」が「前記第1エリアに面して露出する」ように「侵入防止部」を「設け」ることは、特定されていない。
したがって、申立人の「昇降器及びこの昇降器と一体的に昇降する部材において、これら非検出対象物のどの一部がどのようにして第1エリアに面して露出するように、侵入防止部が設けられているのか、まったく記載されていないから、侵入防止部の構成を理解することができない」という主張は採用できない。
また、請求項7によれば、「前記設備制御装置により動作を制御される昇降器」及び「前記昇降器と一体的に昇降する部材」は、「前記非検出対象物」に「含」まれると解される。しかしながら、請求項7の記載では、「前記非検出対象物」に「含」まれるものが、「前記設備制御装置により動作を制御される昇降器」及び「前記昇降器と一体的に昇降する部材」のみであるとは解されない。
したがって、申立人が主張する「これらの非検出対象物は、昇降するものであるところ、侵入防止部が非検出対象物と一緒に昇降するものであるのか、それとも昇降部内に固定されている部材なのかも不明である」ことは採用できない。
また、請求項6には、「前記侵入防止部」が「前記非検出対象物の全周を覆うことなく少なくとも前記非検出対象物の一部が前記第1エリアに面して露出するように設けられる」ことが特定されているが、この特定事項により、特許請求の範囲の記載は第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるということはできない。そうすると、本件特許明細書に「前記非検出対象物の全周を覆うことなく少なくとも前記非検出対象物の一部が前記第1エリアに面して露出するように」侵入防止部が設けられる技術的意義が明示的に記載されていないとしても、上記2の明確性要件の判断基準に照らせば、特許を受けようとする発明が明確でないということはできない。
したがって、申立人が主張するように「「前記非検出対象物の全周を覆うことなく少なくとも前記非検出対象物の一部が前記第1エリアに面して露出するように」侵入防止部が設けられる技術的意義も本願明細書には全く記載されていない」としても、特許請求の範囲の記載は第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるということはできないから、申立人が主張する「本件発明6が明確でない」ことは採用できない。
以上のとおりであるから、申立人が主張する「請求項6における「前記侵入防止部は、前記非検出対象物の全周を覆うことなく少なくとも前記非検出対象物の一部が前記第1エリアに面して露出するように設けられ」との記載は、請求項7において非検出対象物として記載されている「昇降器および前記昇降器と一体的に昇降する部材」との関係において、どのように設けられるものなのかが不明確であり、更に、その技術的意義(すなわち、非検出対象物の全周を覆うことなく少なくとも前記非検出対象物の一部が前記第1エリアに面して露出するように設けられることの技術的意義)も不明である」ことは採用できないし、申立人が主張する「請求項6、7に係る発明は、著しく不明確であり、その発明を全く理解することができない」ことも採用できない。
第7 サポート要件違反について
1 申立ての具体的理由
申立人は、サポート要件違反の具体的理由として以下のことを主張する(特許異議申立書第26頁第14行~第27行)。
「本件特許明細書には、「ワイヤロープ70近傍の昇降器66上に検出対象物の侵入が可能なスペースが存在している。乗降部20内に固定される侵入防止部は、昇降器66の昇降によって干渉しない第1昇降路16の外側に設けられるため、前記検出対象物の侵入が可能なスペースへの侵入を防止できない。・・・ワイヤロープ70の外側のスペースに検出対象物が侵入することを防止している。」(【0094】~【0095】)という課題を解決するために、「昇降器66の四隅にあるワイヤロープ70を覆うように昇降器66に侵入防止部47a~47eを備え、乗降部20にパネル46e~46hを備えている。侵入防止部47a~47eは、パネル46a~46hと組み合わさることで、ワイヤロープ70の外側のスペースに検出対象物が侵入することを防止している。」ことが発明として記載されている。
しかしながら、請求項7~8には、「一体的に昇降する部材」が、ここに記載されるような「侵入防止部47a~47e」のようなものとして記載されておらず、上記発明の内容が反映されていない。したがって、請求項7~8及びこれらを引用する請求項9に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものではない。」
2 判断基準
特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲内のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも、当業者が出願時の技術常識に照らし、当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
3 当審の判断
(1)明細書の記載について
請求項7には、「前記非検出対象物は、前記第1判定部により前記扉の閉動作を開始すると判定した後に、前記設備制御装置により動作を制御される昇降器および前記昇降器と一体的に昇降する部材を含む」(発明特定事項S)と記載されている。
これに対して、本件特許明細書の【0015】には、「ピット18内には、車両Vが搭載された状態のパレット62(非検出対象物)を持ち上げて水平面内で90°旋回可能なパレット旋回装置64が設けられる。また、第1昇降路16内には、パレット62を昇降するための昇降器66(同前)が設けられる。」と記載されている。
したがって、本件特許明細書には、発明特定事項Sが記載されている。
また、請求項8には、「前記侵入防止部の少なくとも一部は、前記第1判定部により前記扉の閉動作を開始すると判定する前に、前記昇降器の動作を妨げる位置にあり、前記第1判定部により前記扉の閉動作を開始すると判定した後に、前記昇降器の動作を妨げない位置まで移動する」(発明特定事項T)と記載されている。
これに対して、本件特許明細書の【0023】には、「エリアA2は、パネル40a~40d(侵入防止部)によって検出対象物の侵入が防止されたエリアである。」と記載され、また、本件特許明細書の【0102】には、「また、例えば、パネル40a~40dの少なくとも一部は、第1判定部102が機械式駐車設備10の動作を開始すると判定する前に、昇降器66の動作を妨げる位置にあり、第1判定部102が機械式駐車設備10の動作を開始すると判定した後に、昇降器66の動作を妨げない位置まで移動するように構成されてもよい。」と記載されている。
したがって、本件特許明細書には、発明特定事項Tが記載されている。
以上のことから、請求項7~8及びこれらを引用する請求項9に係る発明は、発明の詳細な説明に記載された発明である。
(2)課題について
本件特許明細書の【0006】の記載によれば、本件発明が解決しようとする課題は、「利便性を向上させつつ、誤作動を防止することが可能な、機械式駐車設備を提供すること」であると認められる。
そして、上記本件発明の課題の解決手段に関し、本件発明では、「前記扉の閉動作を開始するか否かを前記第1判定部により判定する第1判定モードにおいて、前記センサが故障していると前記故障判定部により判定したとき、前記利用者の操作によらず自動的に、前記扉の閉動作を開始するか否かを前記第2判定部により判定する第2判定モードに切り替える判定切り替え部」(発明特定事項I)を有することが特定されている。
一方、本件特許明細書には、本件発明に関し、【0066】に「測域センサ30a~30c及び光電センサ32a~32dのうちの少なくともいずれか一つが故障した場合などに、判定切り替え部106によって自動的に第1判定モードから第2判定モードに切り替えられてもよい」と記載され、また、【0078】に「設備制御装置100が、第1判定部102に加えて第2判定部104及び判定切り替え部106を備えるので、利用者Pによる操作に基づき機械式駐車設備10の動作を開始するか否かを判定することが可能となる。これにより、例えば、測域センサ30a~30c及び光電センサ32a~32dのうちの少なくともいずれか一つが故障している場合などに、測域センサ30a~30c及び光電センサ32a~32dによる検出値に依らず、利用者Pによる安全確認に基づき車両Vの出庫を行うことが可能となる。」と記載されている。
そして、これら本件特許明細書の記載によれば、当業者は、本件発明により、本件発明の課題を解決できることを理解できる。
したがって、請求項7~8及びこれらを引用する請求項9に係る発明は、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲内のものである。
(3)申立人の具体的理由について
申立人は、【0094】~【0095】に記載された「第5変形例」に基づいて、本件特許における発明が解決しようとする課題や課題解決手段を解釈している。しかしながら、「第5変形例」は原出願の発明における実施形態の変形例の1つにすぎないから、「第5変形例」に基づいて本件特許における発明が解決しようとする課題や課題解決手段を解釈すべきであるとまではいえない。そして、上記(2)のとおり、請求項7~8及びこれらを引用する請求項9に係る発明は、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲内のものである。
(4)小括
以上のとおりであるから、本件発明7~9についてサポート要件の違反はない。
第8 むすび
以上のとおりであるから、本件特許の請求項1~9に係る特許は、特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては取り消すことができない。
また、他に本件特許の請求項1~9に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2024-701212