特許異議申立
2025-700149
屋台
- 審判番号
- 2025-700149
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2024-035920
- 登録番号
- 7527699
- 請求日
- 2025年02月04日
- 審決日
- 2025年06月26日
- 公報発行日
- 2025年08月29日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】岩田 正恵
- 【権利者代理人】岩堀 邦男
- 【異議申立人】鎌松 亮
- 【異議申立人代理人】山本 龍郎
- 【異議申立人代理人】中西 康裕
- 【異議申立人代理人】山本 彰司
- 審判長/審判官
- 審判長 居島 一仁
- 審判官 立澤 正樹
- 審判官 藤脇 沙絵
- 分類
- P1651.121-Y (E04H)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第113条第2号、特許法第29条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7527699号発明「屋台」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7527699号の請求項1~7に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7527699号の請求項1~7に係る特許についての出願は、令和6年3月8日に出願され、同年7月26日にその特許権の設定登録がされ、同年8月5日に特許掲載公報が発行された。
その後、令和7年2月4日に、特許異議申立人 鎌松 亮(以下、「申立人」という。)より特許異議申立書(以下、「申立書」という。)が提出され、請求項1~7に係る特許に対して、特許異議の申立てがされた。
第2 本件特許発明
本件特許の請求項1~7に係る発明(以下、それぞれを「本件特許発明1」等といい、請求項1~7に係る発明をまとめて「本件特許発明」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1~7に記載された事項に特定される次のものである。
【請求項1】
長尺の大幅角柱と、該大幅角柱と同等長さの小幅角柱とからなり,前記大幅角柱と前記小幅角柱とが断面L字状をなすように幅方向に沿う面を重ね合わせられると共に前記大幅角柱と前記小幅角柱とのそれぞれの長手方向の中間箇所が枢支連結されて枢支部とされ、前記大幅角柱と前記小幅角柱とが一直線の状態から交差状で90度以下の60度乃至70度の角度θを有してX字状に構成され、該X字状の状態にて、前記大幅角柱と前記小幅角柱とが前記枢支部付近にそれぞれ設けられた固定孔相互に固定具が挿入されて固定され、前記X字状に固定された縦置きX柱体が前記小幅角柱を内側にして対向して所定間隔をおいて2つ備えられ、両該縦置きX柱体の下端側寄りの両前記小幅角柱間には前記小幅角柱の厚さ方向に沿う所定面にスカート部が固定され、前記両該縦置きX柱体の上端間に天幕が張られ、且つ両前記縦置きX柱体の前記枢支部位置より下側位置に天板体が取付けられてなることを特徴とした屋台。
【請求項2】
請求項1に記載の屋台において、前記縦置きX柱体を所定のX字状に拡開された状態で且つ前記大幅角柱の前記固定孔と前記小幅角柱の前記固定孔とが前記枢支部からの距離が一致するようにそれぞれ形成され、両該固定孔に貫通する軸状の前記固定具が挿入されて前記縦置きX柱体はX字状に固定されてなることを特徴とした屋台。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の屋台において、前記縦置きX柱体の前記大幅角柱と小幅角柱とは、断面視で幅方向に沿う長辺と厚さ方向に沿う短辺とをそれぞれ有しており、前記大幅角柱と前記小幅角柱の両短辺は同等寸法とし、前記大幅角柱の長辺は、前記小幅角柱の長辺よりも大きく2倍前後相当の寸法に設定されてなることを特徴とした屋台。
【請求項4】
請求項3に記載の屋台において、前記固定孔は前記枢支部箇所よりも下方となるように設定されてなることを特徴とした屋台。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の屋台において、前記スカート板の前記小幅角柱への取付はネジ軸部に手回し自在のツマミ部を設けた取付ネジ材としてなることを特徴とした屋台。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の屋台において、両前記縦置きX柱体の後方側上端箇所には後方垂れ幕が備えられてなることを特徴とした屋台。
【請求項7】
請求項1又は2に記載の屋台において、前記枢支部には枢支連結具が備わり、該枢支連結具は頭部が扁平状の低頭ボルトが使用されてなることを特徴とした屋台。
第3 証拠方法及び特許異議申立理由の概要
1 証拠方法
申立人が提示する証拠は、以下のとおりである。
甲第1号証:
note architects一級建築士事務所による投稿記事
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000001.000132396.html
(PR TIMES社のウェブサイトに掲載された2024年1月12日付のニュースリリース)
甲第2号証:
Amazon.co.jpの商品通信販売のウェブサイト
https://www.amazon.co.jp/%E3%83%91%E3%82%BD%E3%82%B3%E3%83%B3%E3%83%87%E3%82%B9%E3%82%AF-%E5%B9%85125cm-%E3%83%AF%E3%83%BC%E3%82%AF%E3%83%87%E3%82%B9%E3%82%AF-%E3%82%AA%E3%83%95%E3%82%A3%E3%82%B9%E3%83%87%E3%82%B9%E3%82%AF-PD008-OAK/dp/B07BZJJN95
甲第3号証:
友澤木工株式会社のウェブサイト
http://tca.tomozawa-cajon.boy.jp/?eid=3034
(以下、甲第1号証を「甲1」等とよぶ。)
2 特許異議申立理由の概要
申立人が申立書において主張する申立理由の概要は、申立の全趣旨からみて次のとおりである。
本件特許発明1~7は、本件出願より前に公開された甲第1号証記載の発明、並びに甲第2号証記載の発明又は甲第3号証記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。
したがって、本件特許発明1~7に係る特許は、同法113条2号に該当し、取り消されるべきものである。
第4 当審の判断
1 甲号証について
(1)甲第1号証
ア 甲第1号証の公知日
甲第1号証の投稿記事には、掲載日として、本件特許発明の出願前である「2024年1月12日」の日付けが記載されており、甲第1号証の投稿記事が電気通信回線を通じて公衆に使用可能となった日が、本件特許発明の出願日である令和6年3月8日より以前であると認められる。
イ 甲第1号証の記載
特許異議申立人が甲第1号証として提出した「note architects一級建築士事務所による投稿記事」には、次の事項が記載されている。
(ア)
「
[図:0001425778000001.jpg]
」
なお、手書きによる赤文字等は特許異議申立人が記載したものである。以下同様。
(イ)
「
[図:0001425778000002.jpg]
」
(ウ)
「
[図:0001425778000003.jpg]
」
(エ)
「
[図:0001425778000004.jpg]
」
(オ)
「
[図:0001425778000005.jpg]
」
ウ 甲第1号証の記載から看取される事項、及び、認定される事項
(ア)看取事項1
上記イ(ウ)~イ(オ)を踏まえると、上記イ(ア)、イ(イ)から、以下の事項が看取される。
・2組の前脚と後脚とが重ね合わされること
・2組の前脚と後脚とが脚固定用ボルトによりX字状に固定され、X字状部を構成すること
・2本のX字状部を対向して配置し、脚固定用ボルトより下側に、看板固定用ボルトにより、2本の前脚に看板が固定され、2本の前脚及び後脚のそれぞれの上端部に屋根の棒が固定されていること
・脚固定用ボルトより下側で、看板固定用ボルトより上側に、テーブル固定用丸棒により、2本の前脚及び後脚にテーブルが固定されていること
(イ)看取事項2
上記イ(オ)から、以下の事項が看取される。
・2本の前脚は、長さが244cm、断面が4.5cm×3.6cmであり、2本の後脚は、長さが244cm、断面が4.5cm×3.6cmであること
・2本の棒の間に帆布を備えた屋根が形成されること
・幅130又は155cm、長さ31cmの看板であること
(ウ)認定事項1
上記イ(ア)及びウ(イ)を踏まえ、イ(エ)の左図に基づくと、X字状に形成された前脚と後脚の脚固定用ボルトにより固定された箇所が中央の高さにあり、上部、下部のそれぞれに平面視で、底面140cm、高さ96cm(全体の高さ192cmの半分)の二等辺三角形が看取される。
そうしてみると、当該二等辺三角形から、計算により次の事項が認定される。
・X字状に構成された前脚と後脚のなす角度が、約72°であること
エ 甲1発明
上記イ、及び、ウから、甲1には、次の発明が記載されていると認められる(以下、「甲1発明」という。)。
<甲1発明>
2本の前脚は、長さが244cm、断面が4.5cm×3.6cmであり、2本の後脚は、長さが244cm、断面が4.5cm×3.6cmであり(看取事項2参照)、
2組の前脚と後脚とが重ね合わされ(看取事項1参照)、
2組の前脚と後脚とが脚固定用ボルトによりX字状に固定され、X字状部を構成し(看取事項1参照)、
2本のX字状部を対向して配置し、脚固定用ボルトより下側に、看板固定用ボルトにより、2本の前脚に看板が固定され、2本の前脚及び後脚のそれぞれの上端部に屋根の棒が固定され(看取事項1参照)、
幅130又は155cm、長さ31cmの看板であり(看取事項2参照)、
X字状に構成された前脚と後脚のなす角度が、約72°であり(認定事項1参照)、
2本の棒の間に帆布を備えた屋根が形成され(看取事項2参照)、
脚固定用ボルトより下側で、看板固定用ボルトより上側に、テーブル固定用丸棒により、2本の前脚及び後脚にテーブルが固定されている(看取事項1参照)、
屋台。」
(2)甲第2号証
ア 甲第2号証の公知日
甲第2号証のAmazon.co.jpの商品通信販売のウェブサイトには、当該商品の取り扱い開始日として、「2017/11/7」との記載があり、甲第2号証のAmazon.co.jpの商品通信販売のウェブサイトの商品が電気通信回線を通じて公衆に使用可能となった日が、本件特許発明の出願日である令和6年3月8日より以前であると認められる。
イ 甲第2証の記載
特許異議申立人が甲第2号証として提出した「Amazon.co.jpの商品通信販売のウェブサイト」には、次の事項が記載されている。
(ア)
「
[図:0001425778000006.jpg]
」
(イ)看取事項
上記(ア)から、次の事項が看取される。
・幅の異なる2枚の板状部材を2ヶ所の固定部によりX字状に固定してX字状部を構成し、2本のX字状部を対向して配置し、上方に板状の天板を渡すように配置したパソコンデスク。
ウ 甲2記載の技術的事項
上記イの記載事項及び看取事項から、甲2には次の技術的事項が記載されていると認められる(以下、「甲2記載の技術的事項」という。)。
<甲2記載の技術的事項>
幅の異なる2枚の板状部材を2ヶ所の固定部によりX字状に固定してX字状部を構成し、2本のX字状部を対向して配置し、上方に板状の天板を渡すように配置したパソコンデスク。
(3)甲第3号証
ア 甲第3号証の公知日
甲第3号証の友澤木工株式会社のウェブサイトには、「テイクアウト販売用組み立て式屋台!」と題した情報の掲載日として、「2021.05.27」との記載があり、甲第3号証の友澤木工株式会社のウェブサイトの「テイクアウト販売用組み立て式屋台!」と題した情報が電気通信回線を通じて公衆に使用可能となった日が、本件特許発明の出願日である令和6年3月8日より以前であると認められる。
イ 甲第3証の記載
特許異議申立人が甲第3号証として提出した友澤木工株式会社のウェブサイトには、次の事項が記載されている。
(ア)
「
[図:0001425778000007.jpg]
」
(イ)
「
[図:0001425778000008.jpg]
」
(イ)看取事項
上記(ア)及び(イ)から、次の事項が看取される。
・X字状に形成された脚の上端部に屋根が形成され、該屋根は後ろ側まで延びている組み立て式屋台。
ウ 甲3記載の技術的事項
上記イの記載事項及び看取事項から、甲3には次の技術的事項が記載されていると認められる(以下、「甲3記載の技術的事項」という。)。
<甲3記載の技術的事項>
X字状に形成された脚の上端部に屋根が形成され、該屋根は後ろ側まで延びている組み立て式屋台。
2 本件特許発明1について
(1)本件特許発明1と甲1発明との対比
本件特許発明1と甲1発明とを対比する。
ア 甲1発明の「前脚」及び「後脚」は、ともに「断面が4.5cm×3.6cm」であり、「長さが244cm」であることから、ともに角柱であり長尺であると認められ、本件特許発明1の「長尺の大幅角柱と、該大幅角柱と同等の長さの小幅角柱」と、「長尺」の「角柱」と、該「角柱」と「同等の長さ」の「角柱」とからなる点で共通する。
イ 甲1発明において、「前脚と後脚」とが「X字状に固定され」ることは、本件特許発明1の「前記」「角柱と前記」「角柱とが一直線の状態から交差上で」「X字状に構成」されることに相当する。
ウ 上記イを踏まえると、甲1発明において、「前脚と後脚とが脚固定用ボルトによりX字状に固定され」ることは、本件特許発明1の「前記」「角柱と前記」「角柱とのそれぞれの長手方向中間箇所が枢支連結されて枢支部と」されることと、重なり合った角柱が長手方向中間箇所で連結されていることで共通する。
エ 上記イ、ウを踏まえると、甲1発明の「2本のX字状部を対向して配置」され、「前脚と後脚とが脚固定用ボルトによりX字状に固定され」た「X字状部」は、本件特許発明1の「対向して所定間隔をおいて2つ備えられ」た「縦置きX柱体」に相当する。
オ 甲1発明の「脚固定用ボルトより下側に、看板固定用ボルトにより、2本の前脚」に「固定され」た「看板」は、本件特許発明1の「スカート部」に相当する。
そうしてみると、上記オを踏まえ、甲1発明の「2本のX字状部を対向して配置し、脚固定用ボルトより下側に、看板固定用ボルトにより、2本の前脚に看板が固定され」ていることは、本件特許発明1の「両該縦置きX柱体の下端側寄りの両前記」「角柱間」には「角柱の厚さ方向に沿う所定面にスカート部が形成」されていることに相当する。
カ 甲1発明の「2本の前脚及び後脚のそれぞれの上端部に屋根の棒が固定され」、「2本の棒の間に帆布を備えた屋根」が形成されることは、本件特許発明1において、「前記両該縦置きX柱体の上端間に天幕が張られ」ることに相当する。
キ 甲1発明の「テーブル」は、本件特許発明1の「天板体」に相当し、また、甲1発明において、「脚固定用ボルトより下側で、看板固定用ボルトより上側に、テーブル固定用丸棒により、2本の前脚及び後脚にテーブルが固定されている」ことは、本件特許発明1において、「両前記縦置きX柱体の前記枢支部位置より下側に天板体が取り付けられてなること」と、前脚と後脚とがX字状に固定され、X字状部の中間位置より下側に天板体が取り付けられていることで共通する。
ク 上記ア~キを踏まえると、本件特許発明1と甲1発明とは、次の一致点で一致し、相違点1~7の点で相違する。
<一致点>
「長尺の角柱と、該角柱と同等長さの角柱とからなり,前記角柱と前記角柱とのそれぞれの長手方向の中間箇所が連結され、X字状に構成され、前記X字状の縦置きX柱体が対向して所定間隔をおいて2つ備えられ、両該縦置きX柱体の下端側寄りの両前記角柱間には前記角柱の厚さ方向に沿う所定面にスカート部が固定され、前記両該縦置きX柱体の上端間に天幕が張られ、且つ両前記縦置きX柱体の前記枢支部位置より下側位置に天板体が取付けられてなる屋台。」
<相違点1>
本件特許発明1では、「長尺の大幅角柱と、該大幅角柱と同等長さの小幅角柱」とからなるのに対して、甲1発明では、前脚と後脚が、それぞれ同じ長さで角柱であり、断面形状も同じである点。
<相違点2>
本件特許発明1では、「前記大幅角柱と前記小幅角柱とが断面L字状をなすように幅方向に沿う面を重ね合わせられる」とされているのに対して、甲1発明では、「2組の前脚と後脚とが重ね合わされ」ているが、断面L字状をなしていない点。
<相違点3>
本件特許発明1では、「前記大幅角柱と前記小幅角柱とのそれぞれの長手方向の中間箇所が枢支連結されて枢支部とされ」るが、甲1発明では、「前脚と後脚とが脚固定用ボルトによりX字状に固定され」るが、枢支連結されて枢支部を備えていない点。
<相違点4>
本件特許発明1では、「前記大幅角柱と前記小幅角柱とが一直線の状態から交差状で90度以下の60度乃至70度の角度θを有してX字状に構成され」ているのに対して、甲1発明では、「X字状に構成された前脚及び後脚のなす角度が、約72°であ」る点。
<相違点5>
本件特許発明1では、「該X字状の状態にて、前記大幅角柱と前記小幅角柱とが前記枢支部付近にそれぞれ設けられた固定孔相互に固定具が挿入されて固定され」ているが、甲1発明では、そのような構成を備えていない点。
<相違点6>
本件特許発明1では、「縦置きX柱体が前記小幅角柱を内側にして」設けられているが、甲1発明では、そのような構成ではない点。
<相違点7>
本件特許発明1では、「枢支部位置より下側位置に天板体が取付けられてなる」のに対して、甲1発明では、「前脚と後脚とが脚固定用ボルトによりX字状に固定され」た「X字状部」の「脚固定用ボルトより下側」で「テーブル」が設けられている点。
(2)相違点についての判断
事案に鑑みて、相違点1、2、5について最初に検討する。
ア 相違点1、2、5について
甲2記載の技術的事項では、「幅の異なる2枚の板状部材を2ヶ所の固定部によりX字状に固定してX字状部を構成」していることが記載されている。すなわち、2ヶ所の固定部により固定することは、パソコンデスクとして使用する際の耐荷重を考慮して、2ヶ所で固定されることを指すと考えられ、その固定の際、まず1ヶ所で固定し、その状態から他の1ヶ所で固定することを考えたとしても、最初に固定された1ヶ所を中心に幅の異なる2枚の板状部材が回動可能となるが、他のもう1ヶ所でさらに固定することにより、最初に固定された1ヶ所を中心に幅の異なる2枚の板状部材が互いに回動することは生じ得ない。結果、最初に固定された1ヶ所は、最終的には固定され、回動できなくなるのであるから、異なる2枚の板状部材が枢支連結される箇所であるとは認められない。
それに対して、本件特許発明1では、段落【0058】に「さらに、大幅角柱1の固定孔12の位置と、小幅角柱2の固定孔22の位置とは、大幅角柱1と小幅角柱2とが枢支部Pを回動中心としてX字状に拡開したときに、大幅角柱1と小幅角柱2とが交わり重合状態となる範囲内であることが必要である。つまり、大幅角柱1と小幅角柱2とがX字状となったときに、固定孔12と固定孔22とが一致して重なる状態になることが必要である〔図4 (C),(D),(E)参照〕。大幅角柱1の固定孔12と、小幅角柱2の固定孔22との位置が一致して軸状の固定具4を固定孔12と固定孔22に挿入できるときが適正な屋台の主柱として使用できるX字状となるときである。」と記載されており、さらに図4も参酌すると、本件特許発明1は、幅の異なる「大幅角柱」と「小幅角柱」とを「断面L字状をなすように幅方向に沿う面を重ね合わせられる」ことにより、「前記大幅角柱と前記小幅角柱とのそれぞれの長手方向の中間箇所が枢支連結されて枢支部とされ」、かつ、「該X字状の状態にて、前記大幅角柱と前記小幅角柱とが前記枢支部付近にそれぞれ設けられた固定孔相互に固定具が挿入されて固定され」ていると理解され、これらは「X字状」を構成する各「角柱」の幅が異なることにより実現する構成であると認められる。
そうしてみると、本件特許発明1と甲2記載の技術的事項では、異なる幅の部材を固定するものである点で一致するが、本件特許発明1では、1箇所が枢支され、もう1箇所が固定されるものであると認められ、2箇所で固定される甲2記載の技術的事項とは異なるものである。
そして、仮に甲1発明に対して、甲2記載の技術的事項を適用したとしても、前脚と後脚とが脚固定用ボルトにより固定される箇所とは別に2箇所の接合される箇所を設けることが想定されるが、甲1発明において、前脚と後脚とをX字状に重ねた部分に複数の固定用のボルト等を配置する余裕がないことが考えられる。さらに、甲1発明の前脚及び後脚の断面形状を、甲2記載の技術的事項のように、幅を異ならせること、及び、固定される箇所とは別に2箇所の接合される箇所を設けた状態から接合される箇所を2箇所から1箇所に変更することについて、それぞれその動機付けは甲1発明、及び、甲2記載の技術的事項のいずれにおいても存在しない。
また、甲3記載の技術的事項においても、1箇所が枢支され、もう1箇所が固定されるものについての記載も示唆もない。
そうしてみると、甲1発明、甲2記載の技術的事項及び甲3記載の技術的事項のいずれにおいても、相違点5に係る本件特許発明1の構成を備えておらず、また、それらの発明及び記載された技術的事項から、相違点1、2、5に係る本件特許発明1の構成を当業者が容易に想到し得るものであるともいえないから、甲1発明において、上記相違点1、2、5に係る本件特許発明1の構成とすることは、甲2記載の技術的事項、甲3記載の技術的事項を考慮しても、当業者が容易に想到し得たものではない。
イ 申立人の主張
申立人は、特許異議申立書において、「甲第2号証の「作業台」において、「大幅角柱」と「小幅角柱」との連結部に本件特許発明に見られる「枢支部」及び「固定具」が存在するか否かについて詳述すると、甲第2号証の「作業台」においては、X字状に重ね合わされた大幅角柱と小幅角柱とが、2本の固定具で固定されている。1本目の固定具で両角柱を結合させた状態では、1本目の固定具を中心として両角柱が回動可能である。そして、2本目の固定具で両角柱を結合させることで、両角柱はX字状に固定されることになる。したがって、1本目の固定具が本件特許発明の「枢支部」となり、2本目の固定具が本件特許発明の「固定具」となる。これにより、甲第2号証の「作業台」は、「枢支部」及び「固定具」を備えているといえる。」と主張している。
しかし、上記アでも判断したが、甲2記載の技術的事項における交差部の2箇所は、いずれも「枢支」された箇所ではないことも踏まえ、申立人の主張を考慮しても、上記アの判断を変更すべき事情はない。
ウ 小括
以上のとおりであるから、本件特許発明1は、甲1記載発明において、上記相違点1、2、5に係る本件特許発明1の構成とすることは、甲2記載の技術的事項、及び、甲3記載の技術的事項を考慮しても、当業者が容易に想到し得たものではない。
よって、本件特許発明1に係る特許は、甲1を主たる証拠として、甲2、3に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできないので、特許法第113条第2号に該当せず、特許異議申立理由によって、取り消されるべきものではない。
3 本件特許発明2~7について
本件特許発明2~7は、本件特許発明1の構成を全て有し、さらに限定を付加したものであるところ、上記2において対比・判断したとおり、本件特許発明1は、甲1発明及びその他の証拠に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
よって、本件特許発明2~7も、甲1発明及びその他の証拠に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
したがって、本件特許発明2~7に係る特許は、甲1を主たる証拠として、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできないので、特許法第113条第2号に該当せず、特許異議申立理由によって、取り消されるべきものではない。
第5 むすび
以上のとおりであるから、本件特許発明1~7に係る特許は、特許異議申立書に記載された特許異議申立理由及び証拠によっては取り消すことができない。
また、他に本件特許発明1~7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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