特許異議申立
2024-700225
鉄骨部材の耐火被覆構造
- 審判番号
- 2024-700225
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2022-067227
- 登録番号
- 7427709
- 請求日
- 2024年03月08日
- 審決日
- 2024年10月10日
- 公報発行日
- 2024年11月29日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】株式会社竹中工務店
- 【権利者代理人】弁理士法人太陽国際特許事務所
- 【異議申立人】出川 栄一郎
- 審判長/審判官
- 審判長 有家 秀郎
- 審判官 西田 秀彦
- 審判官 立澤 正樹
- 分類
- P1652.121-Y (E04B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7427709号発明「鉄骨部材の耐火被覆構造」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7427709号の請求項1~4に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7427709号の請求項1ないし5に係る特許についての出願は、令和4年4月14日に出願され、令和6年1月26日にその特許権の設定登録がされ、同年2月5日に特許掲載公報が発行された。
その後、同年3月8日に、特許異議申立人出川 栄一郎(以下、「申立人」という。)より特許異議申立書(以下、「申立書」という。)が提出され、請求項1ないし4に係る特許に対して、特許異議の申立てがされた。
第2 本件発明
本件特許の請求項1ないし4に係る発明(以下、各々を「本件発明1」等といい、請求項1ないし4に係る発明をまとめて「本件発明」という。)は、願書に添付された特許請求の範囲の、請求項1ないし4に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
【請求項1】
鉄骨部材と、
前記鉄骨部材の周囲に立てられ、又は前記鉄骨部材に取り付けられる下地材と、
前記鉄骨部材と対向する金属板が内面に取り付けられ、互いに突き当てられて角部を形成する端部が、前記金属板と共に前記下地材にビス留めされる複数の木質耐火被覆材と、
を備え、
前記金属板は、前記木質耐火被覆材における前記端部から外れた一般部にビス留めされる、
鉄骨部材の耐火被覆構造。
【請求項2】
前記木質耐火被覆材の前記端部は、前記角部の外面から前記木質耐火被覆材の厚みの1.5倍の領域内で、前記金属板と共に前記下地材にビス留めされる、
請求項1に記載の鉄骨部材の耐火被覆構造。
【請求項3】
前記木質耐火被覆材の前記端部の密度は、前記木質耐火被覆材の前記一般部の密度よりも高い、
請求項1に記載の鉄骨部材の耐火被覆構造。
【請求項4】
前記木質耐火被覆材の外面に取り付けられ、前記木質耐火被覆材の前記端部よりも密度が高い木質外装材を備える、
請求項1~請求項3の何れか1項に記載の鉄骨部材の耐火被覆構造。
第3 証拠方法及び特許異議申立理由の概要
1 証拠方法
申立人が提示する証拠は、以下のとおりである。なお、以下では甲第1号証等を、「甲1」等という。
甲1:特開2013-11063号公報
甲2:特開2018-145654号公報
甲3:特開2012-62683号公報
甲4:特開2012-26192号公報
甲5:特開2002-180569号公報
甲6:特開2010-18971号公報
甲7:特開2020-118022号公報
甲8:特開2018-3475号公報
甲9:特開2019-78044号公報
2 特許異議申立理由の概要
申立人が申立書において主張する申立理由の概要は、次のとおりである。
(1)甲1を主引用例とした進歩性欠如
本件発明1及び2は、本件出願より前に公開された、甲1~甲7に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、これらの発明に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものであり、
本件発明3は、本件出願より前に公開された、甲1~甲8に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、これらの発明に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものであり、
本件発明4は、本件出願より前に公開された、甲1~甲9に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、これらの発明に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。
したがって、本件発明1ないし4に係る特許は、同法113条2号に該当し、取り消されるべきものである。
(1)甲4を主引用例とした進歩性欠如
本件発明1~4は、本件出願より前に公開された、甲4、甲1、甲8及び甲9に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、これらの発明に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。
したがって、本件発明1ないし4に係る特許は、同法113条2号に該当し、取り消されるべきものである。
第4 当審の判断
1 証拠の記載等
(1)甲1
ア 甲1の記載
甲1には、次の事項が記載されている(下線は、当審において付した。以下、同様。)。
(ア)「【0001】
本発明は、柱、梁等の構造材である鉄骨部材の耐火被覆として木質の部材を用いる木質耐火被覆材に関するものである。」
(イ)「【0025】
図1に示すようにH型鋼2が梁1を構成する場合では、床スラブ5を支持する面以外の三方を耐火被覆材7,…で覆うものとするが、本発明は耐火被覆材7を、集成材によるもので、加熱時間に応じた被覆厚さを確保した木質部材8とした。
【0026】
集成材(しゅうせいざい)とは、断面寸法の小さい木材(ラミナ)を接着剤で再構成して作られる木質材料で、製造工程は、断面寸法の小さい木材(ラミナ)を人工的に乾燥する。ラミナ同士をフィンガージョイントと呼ばれる接合方法で縦方向につなぐ。縦方向に接合されたラミナの広い面に接着剤を塗布する。接着剤が塗布されたラミナを何枚か重ね、圧力を掛けて貼り合せる。」
(ウ)「【0030】
この本発明の耐火被覆材7を形成する集成材による木質部材8には、難燃薬剤等の塗布・注入を行わない無処理集成材を用いた。
・・・
【0033】
そこで、ウェブ10部分の木質部材(集成材)の非加熱面側に熱容量の大きい熱量吸収材11を配置することで、木質部材8(集成材)の温度上昇が抑制されるので、鉄骨の温度上昇も同時に抑制することが可能となる。図中9は下フランジであるが、これには木質部材8(集成材)のみのものを貼り付ける。
【0034】
熱容量の大きい熱量吸収材11としては、コンクリート、モルタル、石材、ガラス、繊維補強セメントなどの無機質材料、鉄筋などの鉄、ステンレスなどの金属材料が利用可能であり、木質部材8(集成材)の断面及び長さに合わせて予め成形したものなどがあるほか、前記と同一断面の中空矩形状断面の鋼管等のパイプ内に前記無機材料、液体金属、水、無機水和塩、消石灰等の蓄熱材料を充填して一体化したものを採用することもできる。
【0035】
このように、木質部材8(集成材)の非加熱面に熱容量の大きい熱吸収材11を配置することで、木質部材8(集成材)の温度上昇が抑制され、木質部材8(集成材)で被覆した鉄骨の温度上昇も同時に抑制することが可能となり、木質部材(集成材)が耐火被覆としての役割を果たす。」
(エ)「【0041】
図2、図3は鉄骨H型鋼2が柱材の場合であり、木質部材8(集成材)で四方を囲むようにしたものである。図2に示すように、木質部材8(集成材)のピースと熱容量の大きい熱量吸収材11を貼り付けた木質部材8(集成材)のピースとの2種を準備し、貼り込みにより取り付けるようにする。
【0042】
図中13は鉄骨H型鋼2のフランジであり、このフランジ13には熱容量の大きい熱量吸収材11を貼り付けていない無処理集成材による木質部材8(集成材)を貼り、ウェブ10の部分の外側には密着せず空洞を存して熱容量の大きい熱量吸収材11を貼り付けた木質部材8(集成材)を貼る。」
(オ)【図2】
「
[図:0001416483000001.jpg]
」
(カ)【図3】
「
[図:0001416483000002.jpg]
」
上記(エ)【0041】の記載をふまえると、上記図2及び図3から、4つの木質部材8が、木質部材8の端部を互いに突き当てて角部を形成し、鉄骨H型鋼2の四方を囲んでいる、鉄骨H型鋼2の周囲に木質部材8を配置した構造が看取できる。
イ 甲1に記載された発明
上記アから甲1には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
<甲1発明>
「柱材である鉄骨H型鋼2と、(【0041】)
木質部材8(集成材)のピースと熱容量の大きい熱量吸収材11を貼り付けた木質部材8(集成材)のピースとの2種を準備し、(【0041】)
鉄骨H型鋼2のフランジ13には、熱容量の大きい熱量吸収材11を貼り付けていない無処理集成材による木質部材8(集成材)を貼り、鉄骨H型鋼2のウェブ10の部分の外側には密着せず空洞を存して熱容量の大きい熱量吸収材11を貼り付けた木質部材8(集成材)を貼り、(【0042】)
4つの木質部材8は、木質部材8の端部を互いに突き当てて角部を形成し、鉄骨H型鋼2の四方を囲んでおり、(上記ア(カ))
熱容量の大きい熱量吸収材11は、鉄骨H型鋼2のウェブ10部分の木質部材8(集成材)の非加熱面側に配置され、(【0033】)
集成材による木質部材8は、耐火被覆材7を形成しており、(【0030】)
熱容量の大きい熱量吸収材11としては、ステンレスなどの金属材料である、(【0034】)
鉄骨H型鋼2の周囲に木質部材8を配置した構造。(上記ア(カ))」
(2)甲2
ア 甲2の記載
甲2には、次の事項が記載されている。
(ア)「【0001】
本発明は、木質荷重支持部の外側に、耐火材層、空気層、及び燃え代木材層を備えた木質耐火部材に関する。」
(イ)「【0011】
<第一実施形態>
第一実施形態の木質耐火部材1は、建物の柱を構成する部材であって、図1(a)に示すように、上部構造(例えば、天井スラブや梁等)11と下部構造(例えば床スラブ等)12との間に立設されている。本実施形態の木質耐火部材1は、図1(b)に示すように、断面視正方形を呈している。なお、木質耐火部材1の断面形状は限定されるものではなく、例えば、矩形状や円形状であってもよい。
木質耐火部材1は、工場において、中央に配設された木質荷重支持部2の周囲に、耐火材層3、空気層4および燃え代木材層5が外側に向って順に積層されてなることを特徴とする。
【0012】
木質荷重支持部2は、いわゆる構造部材であって、図1(a)に示すように、上部構造11と下部構造12との間に立設されている。木質荷重支持部2は、木質耐火部材1に上載あるいは接続された屋根、梁、床等を支持することが可能な断面寸法を有している。なお、耐火材層3、空気層4および燃え代木材層5は、構造部材ではない。本実施形態の木質荷重支持部2は、図1(b)に示すように、断面正方形のスギの集成材により構成されている。なお、木質荷重支持部2を構成する材料は、スギに限定されるものではなく、例えば、ヒノキやカラマツ等であってもよい。また、木質荷重支持部2は、集成材に限定されるものではなく、無垢材であってもよい。また、木質荷重支持部2の断面形状は、正方形に限定されるものではなく、例えば円形や矩形であってもよい。
【0013】
耐火材層3は、木質荷重支持部2の外周面を覆っている。本実施形態の耐火材層3は、板状の耐火被覆材またはシート状の耐火被覆材、或いは発泡性耐火塗料や板状の発泡性耐火被覆材で形成される。板状やシート状の耐火被覆材は、木質荷重支持部2の外周面に、貼付け、または巻き立てることで、所定の層厚さを確保する。板状またはシート状の耐火被覆材とは、表面に着色不織布を備えた耐熱ロックウール材、またはゾノトライト系けい酸カルシウム耐火被覆材である。例えば、耐熱ロックウール材は、ニチアス株式会社製で鋼管に巻き付けるタイプの耐火被覆材マキベエ(登録商標)である。
・・・
【0014】
空気層4は、耐火材層3の外側に形成された密閉空間である。すなわち、空気層4は、耐火材層3と燃え代木材層5との間に形成された断面視枠状の隙間(空間)である。図1(b)に示すように、空気層4の角部には、連結部材6,6,…が配設されている。すなわち、空気層4は、耐火材層3と燃え代木材層5との間にスペーサーとしての連結部材6が介設されていることにより形成されている。
本実施形態の連結部材6は、図1(c)に示すように、断面視L字状に形成されていて、木質耐火部材1の軸方向(高さ方向)に所定の間隔をあけて複数配設されている。なお、連結部材6の形状、配置および数等は限定されるものではなく、適宜決定すればよい。また、連結部材6を構成する材料は限定されるものではなく、例えば、木材、鋼材、石膏ボード、ケイ酸カルシウム等を使用すればよい。連結部材6の一方の面は燃え代木材層5に接着されていて、連結部材6の他方の面は耐火材層3に非固定状態で当接している。なお、連結部材6の燃え代木材層5への接合方法は限定されるものではなく、例えば、木ビス等により固定してもよい。また、連結部材6は、必ずしも燃え代木材層5に固定する必要はない。さらに、連結部材6は、必要に応じて設置すればよい。」
(ウ)【図1】
「
[図:0001416483000003.jpg]
」
イ 甲2に記載された技術事項
上記アから甲2には、次の技術事項(以下、「甲2技術事項」という。)が記載されていると認められる。
<甲2技術事項>
「耐火材層3と燃え代木材層5との間にスペーサーとしての連結部材6が介設されていて、連結部材6の燃え代木材層5への接合方法が、木ビス等によるものであること。」
(3)甲3
ア 甲3の記載
甲3には、次の事項が記載されている。
(ア)「【0001】
本発明は、鉄骨柱の耐火構造に関する。」
(イ)「【0016】
図1の斜視図、及び図1のA-A断面図である図2に示すように、鉄骨柱の耐火構造10は、第1遮蔽部12と、第2遮蔽部14とを有している。第1遮蔽部12は、構造物16を構成する鉄骨柱18の周りを囲む複数のボード部材20により構成され、鉄骨柱18を耐火被覆している。鉄骨柱18は、横断面が略正方形状の鋼管である。
【0017】
ボード部材20は、下張りボード22と、仕上げ材としての役割りを兼ねる上張りボード24とによって構成されている。下張りボード22は、内側(鉄骨柱18側)に配置され、上張りボード24は、下張りボード22の外面に重ねられて外側(部屋空間26側)に配置されている。図2に示すように、下張りボード22は、鉄骨柱18と間隔をあけて配置されている。これにより、鉄骨柱18の周囲を囲むようにして、鉄骨柱18の外面と下張りボード22の内面との間に空間が形成されている。
【0018】
下張りボード22は、強化石膏ボードで形成され、上張りボード24は、石膏ボードで形成されている。石膏ボードは、石膏を主成分とした素材を板状にして特殊な用紙で包んで構成された耐火ボードであり、強化石膏ボードは、石膏にガラス繊維などを加えて耐火性能を強化した耐火ボードである。なお、通常、石膏は多量の結晶水を含んでおり、炎や熱に晒されると、この結晶水が蒸気として空気中に放出される。そして、結晶水の蒸発により熱が吸収されることによって、断熱効果が発揮される。
【0019】
ボード部材20は、略鉛直に配置された支持部材としてのスタッド28に固定されている。スタッド28は、軽鉄製のC形鋼によって構成されており、溝形状の横断面を有する軽鉄製のランナー30を介して、構造物16を構成する上下に配置された床スラブ32、34に上下両端部が固定されて床スラブ32、34に支持されている。」
(ウ)【図1】
「
[図:0001416483000004.jpg]
」
イ 甲3に記載された技術事項
上記アから甲3には、次の技術事項(以下、「甲3技術事項」という。)が記載されていると認められる。
<甲3技術事項>
「鉄骨柱の耐火構造10が有する第1遮蔽部12は、構造物16を構成する鉄骨柱18の周りを囲む複数のボード部材20により構成されていて、鉄骨柱18を耐火被覆しており、
ボード部材20は、下張りボード22と、仕上げ材としての役割りを兼ねる上張りボード24とによって構成されていて、
ボード部材20は、略鉛直に配置された支持部材としてのスタッド28に固定され、スタッド28は、軽鉄製のC形鋼によって構成されており、溝形状の横断面を有する軽鉄製のランナー30を介して、構造物16を構成する上下に配置された床スラブ32、34に上下両端部が固定されて床スラブ32、34に支持されていること。」
(4)甲4
ア 甲4の記載
甲4には、次の事項が記載されている。
(ア)「【0001】
本発明は、鉄骨部材の耐火構造に関する。」
(イ)「【0028】
図1~図3に示すように、構造物10の柱100は、鉄骨柱110がボード部材150で耐火被覆された構成とされている。なお、図1と図2とに示すように、柱100(柱100の壁面を構成するボード部材150で囲まれた部位)の水平断面は略正方形状とされ、この柱100の断面における鉄骨柱110に向かう方向を内側方向とし、鉄骨部柱110から離れる方向を外側方向とする。
また、図1と図3とに示すように鉛直方向を矢印Zで示し、X方向とY方向とは直交し、X方向及びY方向にZ方向が直交する。なお、X方向又はY方向に沿って配置された部材の符号の後に「X」又は「Y」を付して区別する場合がある。また、上側の部材には符号の後に「U」を付し、下側の部材には「L」を付して区別する場合がある。
【0029】
図1と図2とに示すように、本実施形態においては、鉄骨柱110は水平断面が略正方向形の鋼管とされている。図1~図3に示すように、この鉄骨柱110の周りがボード部材150によって囲まれている。なお、鉄骨柱110は、鉛直方向(Z方向)を軸方向として配置されている。
【0030】
ボート部材150は、内側(鉄骨柱110側)に配置された下張りボード152と、下張りボード152の外面に重ねられた仕上げ兼用の上張りボード154と、で構成されている。本実施形態では、下張りボード152は強化石膏ボードで構成され、上張りボード154は石膏ボードで構成されている。つまり、ボード部材150は、仕上げ兼用の耐火被覆材とされている。
【0031】
ここで、石膏ボードは石膏を主成分とした素材を板状にして特殊な用紙で包んで構成された耐火ボードとされ、強化石膏ボードは石膏の芯にガラス繊維などを加えて耐火性能を強化した耐火ボードとされている。なお、通常、石膏は多量の結晶水を含んでおり、炎や熱に晒されると、この結晶水が蒸気として空気中に放出される。そして、結晶水の蒸発によって熱が吸収されることによって、断熱効果が発揮される。
【0032】
図1と図3とに示すように、ボード部材150を構成する内側の下張りボード152及び外側の上張りボード154は、それぞれ鉛直方向(上下方向)に二枚並べられて配置されている。但し、下張りボード152の横目地152Sと上張りボード154の横目地部154Sとは鉛直方向(上下方向)に位置がずれるように配置されている。
【0033】
図1~図3に示すように、下張りボード152と上張りボード154とが面外方向に重ねられ接合されて構成されたボード部材150は、鉄骨柱110の外側に間隔をあけて(別の言い方をすると鉄骨柱110とボード部材150との間に)立てられたスタッド120によって支持されている。
【0034】
図4に示すように、本実施形態では、スタッド120は軽鉄製のC形鋼とされている。スタッド120の水平断面の形状は略長方形とされ、強軸方向Kと弱軸方向Jとを有した断面形状とされている。
【0035】
なお、強軸とは断面二次モーメントが最大になる断面主軸とされ、弱軸とは断面二次モーメントが最小となる断面主軸とされる。また、断面主軸とは、断面の図心を通る直交する二つの軸のうち、その軸に対する断面2次モーメントが最大(強軸)・最小(弱軸)となる組の軸とされる。
【0036】
また、本実施形態では、スタッド120の水平断面形状は略長方形であるので、水平断面における強軸方向Kと長手方向(長方形の長辺に沿った方向)とが一致又は略一致し、弱軸方向Jと短手方向(長方形の短辺に沿った方向)とが一致又は略一致する。
【0037】
図1~図3に示すように、スタッド120は、鉄骨柱110の軸方向、すなわち鉛直方向(Z方向)を長手方向として配置されている。また、スタッド120は軸方向と直交する幅方向に間隔をあけて複数配置されている、言い換えると、本実施形態では、スタッド120は、X方向とY方向とに沿って、間隔をあけて複数配置されている。
【0038】
図3に示すように、スタッド120の上下方向(長手方向)の端部120U,122Lが、構造物10の躯体を構成する上下のスラブ12、14に設けられたランナー130U,130Lに支持されている。よって、スタッド120は、鉄骨柱110に対して独立して支持されている。
【0039】
図1と図3とに示すように、ランナー130U、130Lは、軽鉄製とされ、垂直断面が溝状のレールとされている。また、ランナー130U、130Lはそれぞれ鉄骨柱110の周囲にX方向とY方向とに沿って、スラブ12、14に設けられている。本実施形態では、スタッド120の上下方向(長手方向)の端部120U,120Lは、ランナー130U,130Lを構成するフランジ132に、タップネジやステープル(図示略)で固定されている。
【0040】
図1と図2とに示すように、本実施形態では、ボード部材150に囲まれた柱100の内部における四つの隅部102(後述する)と、各隅部102間(幅方向の中央部)と、にそれぞれスタッド120が立てられている。また、図1に示すように、スタッド120間には、幅方向(水平方向)を長手方向として配置された振れ止め用の横棒140が設けられている。
【0041】
図1~図3に示すように、スタッド120にボード部材150が固定されている。本実施形態では、まず下張りボード152をスタッド120にドリリングタッピンねじ142(図1、図2参照)で固定した後に、下張りボード152に上張りボード154を接着剤とステープル(図示略)で接合した。なお、上張りボード154も、ドリリングタッピンねじ142で下張りボード152を貫通させてスタッド120に固定してもよい。
【0042】
図3に示すように、本実施形態では、ボード部材150の上下の端面150U,150Lとスラブ12、14との間に隙間ができないように、ボード部材150の上下の端面150U,150Lとスラブ12、14との間にロックウール等で構成された耐火シール材144U,144Lが挟まれている(図6(A)も参照)。なお、耐火シール材144U,144Lが挟まれていない構造であってもよい。
【0043】
つぎに、スタッド120の配置ついて説明する。
図2に示すように、各スタッド120は、柱100の壁面を構成する各ボード部材150の面外方向(板厚方向)を強軸方向K(図4(B)を参照)として配置されている。なお、図1に示すように、ランナー130のフランジ132間(溝幅)は、スタッド120の強軸方向Kが収まる幅とされている。
【0044】
図2に示すように、柱100の四つの隅部102は、各ボード部材150の幅方向(X方向及びY方向)の端部150T同士が突き当てられている。」
(ウ)【図1】
「
[図:0001416483000005.jpg]
」
(エ)【図2】
「
[図:0001416483000006.jpg]
」
イ 甲4に記載された発明
上記アから甲4には、次の発明(以下、「甲4発明」という。)が記載されていると認められる。
<甲4発明>
「鉄骨柱110がボード部材150で耐火被覆された構成とされている構造物10の柱100において、(【0028】)
ボード部材150に囲まれた柱100の内部における四つの隅部102と、各隅部102間と、にそれぞれスタッド120が立てられており、(【0040】)
ボード部材150は、鉄骨柱110の外側に間隔をあけて立てられたスタッド120によって支持されており、(【0033】)
ボート部材150は、内側(鉄骨柱110側)に配置された下張りボード152と、下張りボード152の外面に重ねられた仕上げ兼用の上張りボード154と、で構成されており、下張りボード152は強化石膏ボードで構成され、上張りボード154は石膏ボードで構成されており、(【0030】)
下張りボード152をスタッド120にドリリングタッピンねじ142で固定した後に、下張りボード152に上張りボード154を接着剤とステープルで接合し、上張りボード154も、ドリリングタッピンねじ142で下張りボード152を貫通させてスタッド120に固定し、(【0041】)
柱100の四つの隅部102は、各ボード部材150の幅方向の端部150T同士が突き当てられている、(【0044】)
構造物10の柱100。」
(5)甲5
ア 甲5の記載
甲5には、次の事項が記載されている。
(ア)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は鉄骨建築物の鉄骨柱を耐火被覆する鉄骨耐火被覆工法に関する。」
(イ)「【0009】
【課題を解決するための手段】第1の手段として、鉄骨柱10の外面を、スペーサ兼用の耐火ボード取付け用鋼製下地材11、16を介して耐火ボード13で耐火被覆する鉄骨耐火被覆工法において、上記鋼製下地材11、16に耐火ボード17、18を柱側に裏打ちして遮熱性下地材に形成し、該下地材を鉄骨柱10の外面に周方向へ所定の間隔をおいて取り付け、かつその下地材外面に耐火ボード13を取り付けることで、該ボードにより鉄骨柱10を耐火被覆する。
【0010】第2の手段として、第1の手段を有すると共に、上記裏打ち用の耐火ボード17、18として耐火被覆用の耐火ボード13と同一種類のものを用いる。
【0011】第3の手段として、第1又は第2の手段を有すると共に、上記耐火ボード17、18は繊維強化石膏ボードからなる。
【0012】
【発明の実施の形態】まず、本発明のうち公知の部分について簡単に説明する。図1において、10は鋼管柱で、コンクリートを充填した角形鋼管からなる。該鋼管外面の4つのコーナー部にはL形鋼からなる鋼製下地材11を鋼管柱10の上下方向全長にわたって接着剤を介して接着する。
【0013】そして、これら鋼製下地材11を締付け材12で締め付ける。次いで鋼製下地材11の外面に繊維強化石膏ボード13を当ててタッピングねじ14で固定する。その際、鋼管柱10と石膏ボード13との間に間隙15が形成されるようにする。
【0014】本発明では、図2に示すように鋼管柱10の正面、背面、左右両側面の4つの外面の中央部にI形鋼からなる鋼製下地材16を鋼管柱10の上下方向全長にわたって接着剤を介して接着する。次いで、上記と同様に締付け材12でこれらI形鋼からなる鋼製下地材16をL形鋼からなる鋼製下地材11と共に締め付けた後、これらの外面に仕上げ材兼用の繊維強化石膏ボード13を当ててタッピングねじ14で固定する。
【0015】また、本発明では、L形鋼及びI形鋼からなる鋼製下地材11、16として、石膏ボード17、18を柱側に裏打ちしたものを使用する。この裏打ち用の石膏ボード17、18は鋼製下地材11、16の外側に取り付ける繊維強化石膏ボード13と同一種類のものであることが好ましい。」
(ウ)【図1】
「
[図:0001416483000007.jpg]
」
(エ)【図2】
「
[図:0001416483000008.jpg]
」
イ 甲5に記載された技術事項
上記アから甲5には、次の技術事項(以下、「甲5技術事項」という。)が記載されていると認められる。なお、「10」について「鉄骨柱」の記載と「鋼管柱」の記載が混在している点については、「鉄骨柱」の趣旨と解する。
<甲5技術事項>
「鉄骨耐火被覆工法において、
鋼製下地材11、16に耐火ボード17、18を柱側に裏打ちして遮熱性下地材に形成し、該下地材を鉄骨柱10の外面に周方向へ所定の間隔をおいて取り付け、かつその下地材外面に耐火ボード13を取り付けることで、該ボードにより鉄骨柱10を耐火被覆し、
鉄骨柱10は、コンクリートを充填した角形鋼管からなり、該鋼管外面の4つのコーナー部にはL形鋼からなる鋼製下地材11を鉄骨柱10の上下方向全長にわたって接着剤を介して接着し、
次いで鋼製下地材11の外面に繊維強化石膏ボード13を当ててタッピングねじ14で固定すること。」
(6)甲6
ア 甲6の記載
甲6には、次の事項が記載されている。
(ア)「【0001】
本発明は、例えば鉄骨構造の各種建築物や構築物等における鉄骨柱の耐火被覆構造に関する。更に詳しくは、上記のような鉄骨柱の耐火強度や耐火特性等を向上させるために上記鉄骨柱の外周面にALC(軽量気泡コンクリート)パネル等のコンクリート系パネルを被覆した耐火被覆構造に関するものである。」
(イ)「【0014】
本実施形態は、横断面方形で外径寸法が比較的小さい鉄骨柱1に適用したもので、その鉄骨柱1の4つの平面部外面を平板状の平パネル2aで覆い、その隣り合う平パネル2a・2a間に位置する上記鉄骨柱1の4つの角部外面を横断面略L字形のコーナーパネル2bでそれぞれ覆った構成である。上記各平パネル2aとコーナーパネル2bとは、本実施形態および後述する実施形態においては、予め所定の大きさ・形状に形成された既製のALCパネルを用いたもので、上記平パネル2aとコーナーパネル2bの厚さは、ほぼ同一に形成され、本実施形態においては厚さ約50mmに形成されている。また本実施形態および後述する実施形態においては、コーナーパネル2bは既製のものを長さ以外は変更することなく、そのまま使用し、平パネル2aは、鉄骨柱1の高さと外径寸法に応じて、長さおよび幅を適宜裁断して使用するようにしたものである。
【0015】
上記平パネル2aは予め長方形状に形成され、その平パネル2aを、本実施形態においては上下方向が長くなるように縦長に配置すると共に、その縦長に配置した上記パネル2aの横方向の幅を鉄骨柱1の外径寸法に応じて適宜裁断して、鉄骨柱1の4つの平面部外面にそれぞれ配置し、上記鉄骨柱1の周方向に隣り合う平パネル2a・2a間に、上記コーナーパネル2bを配置したものである。なお、上記両パネル2a,2bの上下方向の寸法は鉄骨柱1の高さ寸法に合わせて切断したり、継ぎ足すことによって上記鉄骨柱1の外周面全面を覆った構成である。図中、21は上記各パネル2a,2b内に埋設した鉄筋等の補強材である。
【0016】
上記平パネル2aとコーナーパネル2bとは、隣接する端部を互いに突き合わせて密着させた状態で鉄骨柱1の外周面の所定の位置に位置決め固定するようにしたもので、その固定手段は適宜であるが、本実施形態においては、図1および図2に示すようにC型鋼よりなる下地鋼材3を介して上記両パネル2a,2bを鉄骨柱1の外周面に所定の間隔をおいて取付けたものである。その下地鋼材3は鉄骨柱1の外周面に溶接等で一体的に固着され、その下地鋼材3に上記両パネル2a,2bがタッピングねじ4で取付けられている。」
(ウ)【図1】
「
[図:0001416483000009.jpg]
」
(エ)【図2】(a)
「
[図:0001416483000010.jpg]
」
イ 甲6に記載された技術事項
上記アから甲6には、次の技術事項(以下、「甲6技術事項」という。)が記載されていると認められる。
<甲6技術事項>
「鉄骨柱1の4つの平面部外面を平板状の平パネル2aで覆い、その隣り合う平パネル2a・2a間に位置する上記鉄骨柱1の4つの角部外面を横断面略L字形のコーナーパネル2bでそれぞれ覆った構成において、
上記平パネル2aとコーナーパネル2bとは、隣接する端部を互いに突き合わせて密着させた状態で鉄骨柱1の外周面の所定の位置に位置決め固定するようにしたものであり、その固定手段であるC型鋼よりなる下地鋼材3を介して上記両パネル2a,2bを鉄骨柱1の外周面に所定の間隔をおいて取付けたものであって、その下地鋼材3は鉄骨柱1の外周面に溶接等で一体的に固着され、その下地鋼材3に上記両パネル2a,2bがタッピングねじ4で取付けられていること。」
(7)甲7
ア 甲7の記載
甲7には、次の事項が記載されている。
(ア)「【0001】
本発明は、耐火木材に関する。」
(イ)「【0019】
<耐火木材の構造>
本実施形態に係る耐火木材10は、図1に示すように、木質材からなる角柱状の心材12と、心材12の角部を覆うように取り付けられた複数の熱緩衝材14Aと、心材12の外側面側に取り付けられた耐火材18Aと、を有する。また、耐火木材10は、熱緩衝材14Aに支持され、耐火材18A及び熱緩衝材14Aを覆う仕上げ材20を有する。
【0020】
心材12は、四角柱状であり、樹種としては例えばスギ、ヒノキ等、適宜採用可能である。なお、本発明では、心材の形状は、四角柱状に限定されず、例えば八角柱等、他の多角柱状であってもよい。また、心材の形状としては、角柱の角部が面取りされてもよいし、例えば円柱状等、角柱以外であってもよい。また、心材としては、単材に限定されず、集成材が用いられてもよい。
【0021】
熱緩衝材14Aは、図2に示すように、断面の外縁が矩形状の角形鋼管であり、心材12の四隅のそれぞれにおいて、隣り合う2面の角部を覆うように取り付けられている。具体的には、角部における隣り合う2面のそれぞれに、角形鋼管が1本ずつ、角部同士が略線接触するように配置されている。
【0022】
熱緩衝材14Aの長手方向(図1中の上下方向)の長さは、心材12の長手方向の長さと同じであり、熱緩衝材14Aは、火災時、心材12に加えられる熱を緩衝する。熱緩衝材14Aと心材12とは、例えば接着剤やドリフトピン等によって一体化されている。熱緩衝材14Aの鋼管の内側には空気層が形成され、形成された空気層は、火災時に断熱層として機能する。
【0023】
耐火材18Aは、例えば、熱が加えられ一定の温度を超えると膨張する、発泡性の耐火塗膜である。耐火塗膜の厚みは、火災時、通常時の厚みの5倍以上に膨張し得る。心材12の外側面側には、耐火材18Aを支持する下地材としてのラス網16が取り付けられている。
・・・
【0029】
仕上げ材20は、スギやヒノキ等の一般の木造建築に用いられる木材(一般木材)で作製できる。仕上げ材20は、ビスや釘等、熱伝導率が比較的高い金属製の留付部材22を用いて、熱緩衝材14Aに取り付けられて支持されている。なお、熱緩衝材14Aには、留付部材22を差し込むための下穴を予め開けておけばよい。」
(ウ)【図2】
「
[図:0001416483000011.jpg]
」
イ 甲7に記載された技術事項
上記アから甲7には、次の技術事項(以下、「甲7技術事項」という。)が記載されていると認められる。
<甲7技術事項>
「耐火木材10において、
木質材からなる角柱状の心材12と、心材12の角部を覆うように取り付けられた複数の熱緩衝材14Aと、心材12の外側面側に取り付けられた耐火材18Aと、を有し、耐火木材10は、熱緩衝材14Aに支持され、耐火材18A及び熱緩衝材14Aを覆う仕上げ材20を有し、
仕上げ材20が、ビスや釘等、熱伝導率が比較的高い金属製の留付部材22を用いて、熱緩衝材14Aに取り付けられて支持されていること。」
(8)甲8
ア 甲8の記載
甲8には、次の事項が記載されている。
(ア)「【0001】
本発明は、木質柱と鉄骨造梁の柱梁接合部の耐火構造に関するものである。」
(イ)「【0025】
鉄骨造梁18の上部フランジ18Bの上面には床材24が設けられている。また、上面を除く鉄骨造梁18の周囲には、所定の耐火性能を有する被覆材としての木製板26がアンカーボルト20を囲む態様で横断面視でU字状に設けられている。すなわち、この木製板26は、図2(1)~(3)に示すように、鉄骨造梁18の前面、後面、下面に設けられた平板状の木製板であり、前面および後面の木製板26A、26Bは鉄骨造梁18のフランジ18B、18C間に設置された裏打ち材28の側面に固定されている。下面の木製板26Cは下部フランジ18Cの下面に取り付けられている。
【0026】
図2(3)および(4)に示すように、鉄骨造梁18の端面の周縁18Dは、この木製板26Bを介して木質柱16の燃え代層14と接合している。
【0027】
木製板26の材質は、木質柱16と同等の木材あるいは同じ木材よりも密度の高い木材とするのが好ましい。一般的に密度が高いほど耐火性能上有利だからである。木製板26の厚さは、木質柱16の燃え代層14が完全に焼失する前に、被覆材として用いる木製板26が完全に焼失しないようにするために、木質柱16の燃え代層14の厚さと同等かそれ以上の厚さとするのが好ましい。」
イ 甲8に記載された技術事項
上記アから甲8には、次の技術事項(以下、「甲8技術事項」という。)が記載されていると認められる。
<甲8技術事項>
「鉄骨造梁18の周囲には、所定の耐火性能を有する被覆材としての木製板26が設けられていて、木製板26の材質は、木質柱16と同等の木材あるいは同じ木材よりも密度の高い木材とするのが好ましく、一般的に密度が高いほど耐火性能上有利であること。」
(9)甲9
ア 甲9の記載
甲9には、次の事項が記載されている。
(ア)「【0001】
本発明は、木質荷重支持部の外側に、耐火被覆層と、仕上げ木材層とを備えた木質耐火部材に関する。」
(イ)「【0011】
<第一の実施形態>
第一の実施形態の木質耐火部材1は、建物の柱を構成する部材であって、図1(a)に示すように、断面視正方形を呈している。なお、木質耐火部材1の断面形状は限定されるものではなく、例えば、矩形状や円形状であってもよい。
木質耐火部材1は、木質荷重支持部2と、水分遮断層3と、耐火被覆層4と、仕上げ木材層5とを備えている。
【0012】
木質荷重支持部2は、いわゆる構造部材であって、図1(b)に示すように、木質耐火部材1に上載あるいは接続される建物躯体7(例えば、屋根、梁、床等)を支持することが可能な断面寸法(本実施形態では、600×600mm)を有している。本実施形態の木質荷重支持部2は、断面正方形のカラマツの集成材により構成されている。なお、木質荷重支持部2を構成する材料は、カラマツに限定されるものではなく、例えば、スギ、ヒノキまたはツガ等であってもよい。また、木質荷重支持部2は、集成材に限定されるものではなく、複数の細径木材を組み合わせ、其々を接合して形成してもよい。さらに、木質荷重支持部2の断面寸法および断面形状は限定されるものではなく、木質耐火部材1に作用する応力に応じて適宜決定すればよい。
・・・
【0017】
仕上げ木材層5は、木質耐火部材1の外面を覆うように、耐火被覆層4の外側に周設されている。仕上げ木材層5は構造部材ではない。本実施形態では、耐火被覆層4の外面に形成された凹部に仕上げ木材層5が配設されている。したがって、耐火被覆層4は、木質耐火部材1の端部(柱端部)において外面に露出している。なお、木質耐火部材1の材端部における耐火被覆層4の露出部分は、必要に応じて形成すればよく、必ずしも形成する必要はない。
本実施形態の仕上げ木材層5は、図1(a)に示すように、断面視枠状に配置された4枚の仕上げ板材51からなる。仕上げ板材51の端部同士は当接している仕上げ板材51同士は、必要に応じて接着材やビス等により接合してもよい。本実施形態の仕上げ板材51には、厚さ10mmのスギ板を使用する。なお、仕上げ板材51を構成する材料はスギ板に限定さえるものではない。また、仕上げ木材層5の層厚および仕上げ板材51の板厚は限定されるものではなく、適宜決定すればよいが、耐火被覆層4の発泡を妨害させない厚さρおよび密度d(例えば、ρd≦0.004)に設定するのが望ましい。仕上げ板材51は、連結部材6を介して木質荷重支持部2に支持されている。」
(ウ)【図1】
「
[図:0001416483000012.jpg]
」
イ 甲9に記載された技術事項
上記アから甲9には、次の技術事項(以下、「甲9技術事項」という。)が記載されていると認められる。
<甲9技術事項>
「木質耐火部材1は、木質荷重支持部2と、水分遮断層3と、耐火被覆層4と、仕上げ木材層5とを備えていて、
仕上げ木材層5は、木質耐火部材1の外面を覆うように、耐火被覆層4の外側に周設されていること。」
2 甲1を主引用例とした場合について
(1)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
(ア)甲1発明の「鉄骨H型鋼2」は、本件発明1の「鉄骨部材」に相当する。
(イ)甲1発明において、「木質部材8」は、「耐火被覆材7を形成して」おり、本件発明1の「木質耐火被覆材」に相当する。
また、甲1発明の「鉄骨H型鋼2のフランジ13」に貼る「熱容量の大きい熱量吸収材11を貼り付けていない無処理集成材による木質部材8(集成材)」、及び、「鉄骨H型鋼2のウェブ10の部分の外側には密着せず空洞を存」して貼る「熱容量の大きい熱量吸収材11を貼り付けた木質部材8(集成材)」は、それぞれ、2つ、合計4つ存在している。
そうすると、甲1発明の、2つの「無処理集成材による木質部材8(集成材)」、及び、2つの「熱容量の大きい熱量吸収材11を貼り付けた木質部材8(集成材)」、もしくは「4つの木質部材8」は、本件発明1の「複数の木質耐火被覆材」に相当する。
甲1発明の「4つの木質部材8」において、「木質部材8の端部を互いに突き当てて角部を形成」することは、本件発明1の「複数の木質耐火被覆材」において、「互いに突き当てられて角部を形成する端部」を有することに相当する。
(ウ)甲1発明の「鉄骨H型鋼2の周囲に木質部材8を配置した構造」は、本件発明1の「鉄骨部材の耐火被覆構造」に相当する。
そうすると、本件発明1と甲1発明とは、一致点及び相違点は、次のとおりである。
(一致点)
「鉄骨部材と、
互いに突き当てられて角部を形成する端部を有する複数の木質耐火被覆材と、
を備える、
鉄骨部材の耐火被覆構造。」
(相違点1)
本件発明1は、「前記鉄骨部材の周囲に立てられ、又は前記鉄骨部材に取り付けられる下地材」を備え、
「互いに突き当てられて角部を形成する端部」を有する「複数の木質耐火被覆材」において、「前記鉄骨部材と対向する金属板が内面に取り付けられ、」「互いに突き当てられて角部を形成する端部が、前記金属板と共に前記下地材にビス留めされ」、「前記金属板は、前記木質耐火被覆材における前記端部から外れた一般部にビス留めされる」のに対して、
甲1発明は、「前記鉄骨部材の周囲に立てられ、又は前記鉄骨部材に取り付けられる下地材」を備えておらず、
「互いに突き当てられて角部を形成する端部」を有する「複数の木質耐火被覆材」において、「鉄骨H型鋼2のウェブ10の部分の外側には密着せず空洞を存して熱容量の大きい熱量吸収材11を貼り付け」ていて、「熱容量の大きい熱量吸収材11としては、ステンレスなどの金属材料」であるが、「前記鉄骨部材と対向する金属板が内面に取り付けられ」ておらず、「互いに突き当てられて角部を形成する端部が、前記金属板と共に前記下地材にビス留めされ」ておらず、「前記金属板は、前記木質耐火被覆材における前記端部から外れた一般部にビス留めされ」ていない点。
イ 判断
甲4発明、甲2、3、5~9技術事項のいずれにも、「互いに突き当てられて角部を形成する端部」を有する「複数の木質耐火被覆材」において、「前記鉄骨部材と対向する金属板が内面に取り付けら」たものは記載も示唆もされていない。
したがって、甲1発明に、甲4発明、甲2、3、5~9技術事項を適用しても、相違点1に係る本件発明1の構成のうち「互いに突き当てられて角部を形成する端部」を有する「複数の木質耐火被覆材」において、「前記鉄骨部材と対向する金属板が内面に取り付けら」たものとすることは、容易になし得たことではない。
また、甲1発明の「互いに突き当てられて角部を形成する端部」を有する「複数の木質耐火被覆材」において、「鉄骨H型鋼2のウェブ10の部分の外側には密着せず空洞を存して熱容量の大きい熱量吸収材11を貼り付け」ている「熱容量の大きい熱量吸収材11」は、「ステンレスなどの金属材料」であって「金属板」とは特定されていないところ、仮に、板状のものとすることが適宜なし得るものであり、また、甲2~甲6に示されるとおり、鉄骨部材の周囲に立てられ、又は前記鉄骨部材に取り付けられる下地材が、周知の技術であり、さらに、甲7に示されるとおり、固定手段として「ビス」が周知の技術であるとしても、甲2~甲9のいずれにも、「木質耐火被覆材」の「互いに突き当てられて角部を形成する端部」を、「金属板」と共に、「下地材にビス留め」し、また「金属板」を「前記木質耐火被覆材における前記端部から外れた一般部にビス留め」する構成は何ら記載も示唆もされていない。
そして、本件発明1は、上記構成によって、木質耐火被覆材の一般部が金属板を介して下地材に支持されるとの効果を奏するものである。
よって、甲1発明に、甲2~甲9を適用し、上記「熱容量の大きい熱量吸収材11としては、ステンレスなどの金属材料」を「金属板」としたうえで、「木質耐火被覆材」の「互いに突き当てられて角部を形成する端部」が、当該「金属板」と共に前記「下地材」に「ビス留め」され、さらに当該「金属板」が「木質耐火被覆材における前記端部から外れた一般部にビス留めされる」ように構成することまで容易に想到できたということはできない。
ウ 申立人の主張
申立人は、甲1発明の「ステンレスなどの金属材料」である「熱容量の大きい熱量吸収材11」は、本件発明1の「金属板」に相当する旨主張する。(申立書19頁6~7行)
しかしながら、甲1発明の「ステンレスなどの金属材料」である「熱容量の大きい熱量吸収材11」は、「金属」の材料であるといえるにとどまり、「板状」とは特定されていないから、本件発明1の「金属板」に相当するものではない。また、仮に、甲1発明の「ステンレスなどの金属材料」である「熱容量の大きい熱量吸収材11」を、「金属板」とすることが適宜なし得ることであるとしても、上記イで説明したとおり、甲2~甲9のいずれの文献を適用しても、相違点1に係る本件発明1の構成に想到することができたものではない。
したがって、申立人の主張を採用することはできない。
エ 小括
本件発明1は、甲1発明、甲4発明、及び甲2、3、5~9技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(2)本件発明2~4について
本件発明2~4は、本件発明1の構成を全て有し、さらに構成を付加したものである。
したがって、上記(1)で説明したことと同様に、本件発明1の構成を有する本件発明2~4は、甲1発明、甲4発明、及び甲2、3、5~9技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
2 甲4を主引用例とした場合について
(1)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲4発明とを対比する。
(ア)甲4発明の「鉄骨柱110」は、本件発明1の「鉄骨部材」に、相当する。
甲4発明の「スタッド120」は、「鉄骨柱110の外側に間隔をあけて立てられ」ていることから、本件発明1の「鉄骨部材の周囲に立てられる下地材」に相当する。
(イ)甲4発明の「ボード部材150」は、「鉄骨柱110」を「耐火被覆」するものであって、「ボート部材150」の内側(鉄骨柱110側)には、「強化石膏ボードで構成され」る「下張りボード152」が配置され、「下張りボード152」の外面には、「石膏ボードで構成され」る「仕上げ兼用の上張りボード154」が重ねられて、構成されている。
甲4発明の「鉄骨柱110」に対する上記「下張りボード152」と上記「上張りボード154」の位置関係を考慮すると、素材は異なるものの、甲4発明の「上張りボード154」及び「下張りボード152」は、本件発明1の「木質耐火被覆材」及び「金属板」に、それぞれ対応する。
以上をふまえると、甲4発明の「石膏ボードで構成され」る「上張りボード154」と本件発明1の「木質耐火被覆材」とは、「耐火被覆材」である点で共通し、甲4発明の「強化石膏ボードで構成され」る「下張りボード152」と本件発明1の「金属板」とは、「板」である点で共通する。
甲4発明の「下張りボード152」は、「上張りボード154」の内面に重ねられていることは明らかであり、「鉄骨柱110」と対向していることも明らかである。そうすると、甲4発明の「上張りボード154」において、内面に「下張りボード152」が重ねられていることと、本件発明1の「木質耐火被覆材」において「鉄骨部材と対向する金属板が内面に取り付けられ」ていることとは、「耐火被覆材」において「鉄骨部材と対向する板が内面に取り付けられ」ている点で共通する。
また、甲4発明は、「各ボード部材150」を有していることから、「上張りボード154」が複数存在していることは、明らかである。
そうすると、甲4発明の「各ボード部材150」の「上張りボード154」と、本件発明1の「複数の木質耐火被覆材」とは、「複数の耐火被覆材」である点で共通する。
甲4発明は、「柱100の四つの隅部102は、各ボード部材150の幅方向の端部150T同士が突き当てられている」ことから、「ボード部材150」を構成する「上張りボード154」についても、端部同士が突き当てられているといえる。
そうすると、甲4発明の「石膏ボードで構成され」る「上張りボード154」を構成している「ボード部材150」において、「突き当てられてい」「幅方向の端部150T」と、本件発明1の「木質耐火被覆材」において、「互いに突き当てられて角部を形成する端部」とは、「耐火被覆材」において、「互いに突き当てられて角部を形成する端部」である点で共通する。
甲4発明の「上張りボード154」が、「ドリリングタッピンねじ142で下張りボード152を貫通させてスタッド120に固定」されていることと、本件発明1の「木質耐火被覆材」が、「前記金属板と共に前記下地材にビス留めされる」こととは、「耐火被覆材」が、「前記板と共に前記下地材」に固定される点で共通する。
(ウ)甲4発明は、「下張りボード152に上張りボード154を接着剤とステープルで接合」していることから、「下張りボード152」は、「上張りボード154」に「接着剤とステープルで接合」されているといえる。
そうすると、甲4発明において、「下張りボード152」が、「上張りボード154」に「接着剤とステープルで接合されている」ことと、本件発明1において、「前記金属板は、前記木質耐火被覆材における前記端部から外れた一般部にビス留めされる」こととは、「前記板は、前記耐火被覆材」に固定される点で共通する。
(エ)甲4発明の「鉄骨柱110がボード部材150で耐火被覆された構成」である「柱100」は、本件発明1の「鉄骨部材の耐火被覆構造」に相当する。
そうすると、本件発明1と甲4発明とは、一致点及び相違点は、次のとおりである。
(一致点)
「鉄骨部材と、
前記鉄骨部材の周囲に立てられ、又は前記鉄骨部材に取り付けられる下地材と、
前記鉄骨部材と対向する板が内面に取り付けられ、互いに突き当てられて角部を形成する端部が、前記板と共に前記下地材に固定される複数の耐火被覆材と、
を備え、
前記板は、前記耐火被覆材に固定される、
鉄骨部材の耐火被覆構造。」
(相違点2)
本件発明1は、耐火被覆材が、
「前記鉄骨部材と対向する金属板が内面に取り付けられ、互いに突き当てられて角部を形成する端部が、前記金属板と共に前記下地材にビス留めされる複数の木質耐火被覆材」であり、
「前記金属板は、前記木質耐火被覆材における前記端部から外れた一般部にビス留めされ」るのに対して、
甲4発明は、耐火被覆構造が、
そのように特定されていない点。
イ 判断
上記相違点2について検討する。
甲1発明には、「熱容量の大きい熱量吸収材11」が「鉄骨H型鋼2のウェブ10部分の木質部材8(集成材)の非加熱面側に配置され」ている「木質部材8」が記載されている。
そうすると、甲1発明には、相違点2に係る本件発明1の構成のうち、「鉄骨部材と対向する金属が内面に取り付けられ」る「木質耐火被覆材」の部分が記載されているといえる。
しかしながら、甲1発明の「木質耐火被覆材」の「内面に取り付けられ」る「鉄骨部材と対向する金属」は、板状のものとは特定されていないものであり、そもそも、「木質耐火被覆材」と共に下地材に固定されるものではない。
一方、甲4発明の「強化石膏ボードで構成され」る「下張りボード152」(鉄骨部材と対向する板)は、板状のものであって、「石膏ボードで構成され」る「仕上げ兼用の上張りボード154」(耐火被覆材)と共に「スタッド120」(下地材)に「ドリリングタッピンねじ142」で固定されるものである。
そうすると、甲1発明の「木質耐火被覆材」の「内面に取り付けられ」る「鉄骨部材と対向する金属」の材料と、甲4発明の「強化石膏ボードで構成され」る「下張りボード152」は、材料の態様として異なるもの(板かどうか明らかでないものと板状のもの)であり、また、両者は、隣接する部材の性質、及び、各部材相互の固定状況も異なることから、甲4発明の「強化石膏ボードで構成され」る「下張りボード152」に代えて、甲1発明の「木質耐火被覆材」の「内面に取り付けられ」る「鉄骨部材と対向する金属」の材料を採用する動機付けはないし、また、甲1発明は、上記相違点2に係る本件発明1の構成のうち、「鉄骨部材と対向する金属が内面に取り付けられ」る「木質耐火被覆材」の部分以外の構成を有さないから、甲4発明に甲1発明を適用しても、上記相違点2に係る本件発明1の構成に至るものではない。
したがって、甲4発明において、甲1発明を考慮しても、上記相違点2に係る本件発明1の構成に至ることは、当業者が容易になし得たものとはいえない。
また、甲2、甲3、甲5~甲9は、本件発明1の「木質耐火被覆材」の「内面に取り付けられ」る「前記鉄骨部材と対向する金属板」に相当する構成を有していないので、甲4発明に、甲2、甲3、甲5~甲9の各技術事項を適用しても、相違点2に係る本件発明1の構成とすることはできない。
ウ 小括
本件発明1は、甲4発明、甲1発明、及び甲2、甲3、甲5~甲9技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(2)本件発明2~4について
本件発明2~4は、本件発明1の構成を全て有し、さらに構成を付加したものである。
したがって、上記(1)で説明したことと同様に、本件発明1の構成を有する本件発明2~4は、甲4発明、甲1発明、及び甲2、甲3、甲5~甲9技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
第5 むすび
以上のとおり、本件発明1~4に係る特許は、特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、取り消すことができない。
また、他に本件発明1~4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2024-700225