2019-700595
金型冷却装置
- 審判番号
- 2019-700595
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2017-143210外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2019年07月29日
- 審決日
- 2020年09月16日
- 公報発行日
- 2021年02月26日
- 結論
- 請求成立(取消)
- 分類
- P1651.121-ZDA(B22D)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
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結論
理由
目次 ▾ 24項目
第1 手続の経緯
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特許第6466524号(以下「本件特許」という。)の請求項1及び2に係る特許についての出願は,平成29年7月25日に出願され,平成31年1月18日にその特許権の設定登録がされ,平成31年2月6日に特許掲載公報が発行された。
そして,本件特許異議の申立ての主な経緯は,次のとおりである。
いう。)による請求項1及び2に係る特許に 対する特許異議の申立て
者」という。)による意見書及び訂正請求書
の提出
「決定の予告」という。)
なお,特許権者は,令和2年3月24日付けの決定の予告で指定した期間内に意見書を提出しなかった。
第2 訂正の適否
1.訂正の内容
令和元年11月28日提出の訂正請求書によってされた訂正の請求(以下「本件訂正請求」という。)による訂正事項は,以下のとおりである。なお,下線は特許権者が付したものである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項2に,
「請求項1に記載の金型冷却装置において,前記逆止弁が,前記冷却水用マニホールド又は前記エア用マニホールドの下流側に配置されることを特徴とする金型冷却装置。」
と記載されているのを,
「金型に冷却水又は空気を導入するための複数の分岐管を有するマニホールド部と,前記マニホールド部に冷却水を供給する冷却水供給部と,前記マニホールド部に空気を供給するエア供給部と,を備える金型冷却装置において,前記マニホールド部は,冷却水を導入するための冷却水用マニホールドと,空気を導入するためのエア用マニホールドと,前記複数の分岐管に設置される逆止弁と,を備え,前記冷却水用マニホールドと前記エア用マニホールドと前記逆止弁とがユニット化されており,前記逆止弁が,前記冷却水用マニホールド又は前記エア用マニホールドの下流側に配置されており,さらに,前記冷却水供給部と前記エア供給部は電磁弁を備えており,当該電磁弁は前記冷却水用マニホールドと前記エア用マニホールドの上流側に配置されていることを特徴とする金型冷却装置。」
に訂正する。
(2)訂正事項2
願書に添付した明細書の段落【0010】に,
「さらに,本発明に係る金型冷却装置(100)は,前記逆止弁(17a,17b)が,前記冷却水用マニホールド(9)又は前記エア用マニホールド(14)の下流側に配置されることとすることができる。」と記載されているのを,
「本発明に係る金型冷却装置(100)は,金型(10)に冷却水又は空気を導入するための複数の分岐管(9b,14b)を有するマニホールド部(20)と,前記マニホールド部(20)に冷却水を供給する冷却水供給部(30)と,前記マニホールド部(20)に空気を供給するエア供給部(40)と,を備えるものであって,前記マニホールド部(20)は,冷却水を導入するための冷却水用マニホールド(9)と,空気を導入するためのエア用マニホールド(14)と,前記複数の分岐管(9b,14b)に設置される逆止弁(17a,17b)と,を備え,前記冷却水用マニホールド(9)と前記エア用マニホールド(14)と前記逆止弁(17a,17b)とがユニット化されており,前記逆止弁(17a,17b)が,前記冷却水用マニホールド(9)又は前記エア用マニホールド(14)の下流側に配置されており,さらに,前記冷却水供給部(30)と前記エア供給部(40)は電磁弁(8,13)を備えており,当該電磁弁(8,13)は前記冷却水用マニホールド(9)と前記エア用マニホールド(14)の上流側に配置されていることを特徴とする。」に訂正する。
明細書に係る訂正である訂正事項2は,請求項2について請求されたものである。
2.訂正の目的の適否
(1)訂正事項1
訂正事項1は,訂正前の請求項2の記載が請求項1の記載を引用するものであったのを,請求項1の記載を引用しないものとし,さらに,「前記冷却水供給部と前記エア供給部は電磁弁を備えており,当該電磁弁は前記冷却水用マニホールドと前記エア用マニホールドの上流側に配置されていること」という事項を付加するものであるから,その目的は,特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」及び同条同項ただし書4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」に該当する。
(2)訂正事項2
訂正事項2は,訂正事項1により請求項2の記載が訂正されることに整合するように,明細書において請求項2に対応する段落【0010】の記載を訂正するものであるから,その目的は,特許法120条の5第2項ただし書3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」に該当する。
3.新規事項の有無,特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1
訂正事項1のうち,「前記冷却水供給部と前記エア供給部は電磁弁を備えており,当該電磁弁は前記冷却水用マニホールドと前記エア用マニホールドの上流側に配置されていること」という事項は,願書に添付した明細書の段落【0026】及び【0027】並びに図面の図1に記載されている。
また,訂正事項1のうち,請求項2の記載が請求項1の記載を引用するものであったのを,請求項1の記載を引用しないものとすることに伴って付加された事項が,願書に添付した特許請求の範囲の請求項1に記載されていることは明らかである。
したがって,訂正事項1に係る訂正は,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものである。
また,訂正事項1に係る訂正が,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものでないことは明らかである。
(2)訂正事項2
上記(1)と同様の理由により,訂正事項2に係る訂正は,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり,さらに,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではない。
4.小括
したがって,本件訂正請求による訂正は,特許法120条の5第2項ただし書1号,3号及び4号に掲げる事項を目的とするものであり,かつ,同条9項で準用する同法126条5項及び6項の規定に適合する。
よって,明細書及び特許請求の範囲を,訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項2について訂正することを認める。
第3 本件特許発明
本件訂正請求により訂正された特許請求の範囲の請求項1及び2に係る発明は,訂正特許請求の範囲に記載された以下のとおりである(以下,各請求項に係る発明を「本件発明1」などという。)。
「【請求項1】金型に冷却水又は空気を導入するための複数の分岐管を有するマニホールド部と,前記マニホールド部に冷却水を供給する冷却水供給部と,前記マニホールド部に空気を供給するエア供給部と,を備える金型冷却装置において,前記マニホールド部は,冷却水を導入するための冷却水用マニホールドと,空気を導入するためのエア用マニホールドと,前記複数の分岐管に設置される逆止弁と,を備え,前記冷却水用マニホールドと前記エア用マニホールドと前記逆止弁とがユニット化されていることを特徴とする金型冷却装置。【請求項2】金型に冷却水又は空気を導入するための複数の分岐管を有するマニホールド部と,前記マニホールド部に冷却水を供給する冷却水供給部と,前記マニホールド部に空気を供給するエア供給部と,を備える金型冷却装置において,前記マニホールド部は,冷却水を導入するための冷却水用マニホールドと,空気を導入するためのエア用マニホールドと,前記複数の分岐管に設置される逆止弁と,を備え,前記冷却水用マニホールドと前記エア用マニホールドと前記逆止弁とがユニット化されており,前記逆止弁が,前記冷却水用マニホールド又は前記エア用マニホールドの下流側に配置されており,さらに,前記冷却水供給部と前記エア供給部は電磁弁を備えており,当該電磁弁は前記冷却水用マニホールドと前記エア用マニホールドの上流側に配置されていることを特徴とする金型冷却装置。」
第4 決定の予告の概要及び証拠方法
本件訂正請求による訂正前の請求項1に係る特許に対して,当審が令和2年3月24日付けで特許権者に通知した決定の予告の要旨は,次のとおりである。
請求項1に係る発明は,甲第1号証に記載された発明に,甲第3号証に記載された技術的事項を適用することにより,当業者が容易に発明をすることができたものである。
よって,請求項1に係る特許は,特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり,取り消されるべきものである。
また,決定の予告において引用した証拠方法は,次のとおりである。
(以下,各甲号証を「甲1」などという。)
第5 決定の予告についての当審の判断
1.本件発明1
本件発明1は,上記第3の請求項1に示したとおりである。
2.甲1の記載事項及び甲1発明
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(1)甲1の記載事項
決定の予告において引用した甲1には,以下の事項が記載されている。
「【0012】図1は,本実施形態に係る金型冷却装置の全体構成を示す図である。本実施形態に係る金型冷却装置10は,水に所定の圧力を加えて生成した冷却水を圧送する冷却水圧送部20と,空気に所定の圧力を加えて生成した水抜き用のエアーを圧送するエアー圧送部40と,これら冷却水圧送部20およびエアー圧送部40から圧送されてくる冷却水およびエアーを金型80に対して供給する複数組みの冷却水・エアー供給系統部60と,から構成されている。」
「【0018】そして,上述した冷却水圧送部20によって高圧水として生成された冷却水は,複数組みの冷却水・エアー供給系統部60が接続する高圧水タンク51へと送られる。また,エアー圧送部40によって水抜き用として生成されたエアーは,複数組みの冷却水・エアー供給系統部60が接続するエアータンク52へと送られる。【0019】本実施形態の冷却水・エアー供給系統部60は,冷却水圧送部20によって生成された高圧水が圧送され,この高圧水が水圧を維持したまま貯水された高圧水タンク51と,冷却対象となる金型80とを接続して,冷却水圧送部20から圧送される冷却水を金型80に対して供給する冷却水供給系統部61を有しており,また,エアー圧送部40によって生成されたエアーが圧送され,このエアーが空気圧を維持したまま貯められたエアータンク52と,金型80とを接続して,エアー圧送部40から圧送される水抜き用のエアーを金型80に対して供給するエアー供給系統部71と,を有して構成されている。【0020】冷却水供給系統部61は,上流側,すなわち高圧水タンク51の接続部の近傍に電磁弁62を有しており,この電磁弁62の開閉動作を実施することで,冷却水圧送部20で生成され,高圧水タンク51に貯水された高圧水を金型80に対して供給したり,供給を停止したりすることができるようになっている。また,冷却水供給系統部61の下流側には,逆止弁63が設置されており,高圧水又はエアーが金型80側から高圧水タンク51の方向に逆流することを防止している。【0021】一方,エアー供給系統部71についても,上流側,すなわちエアータンク52の接続部の近傍に電磁弁72を有しており,この電磁弁62の開閉動作を実施することで,エアー圧送部40で生成され,エアータンク52に貯められた水抜き用のエアーを金型80に対して流通させたり,流通を停止させたりすることができるようになっている。また,エアー供給系統部71の下流側には,逆止弁73が設置されており,エアー又は高圧水が金型80側からエアータンク52の方向に逆流することを防止している。【0022】さらに,上述した冷却水供給系統部61とエアー供給系統部71とは,金型80との接続個所の上流であって,それぞれの逆止弁63,73が設けられた下流側で合流して,同一系統の経路として形成されている。すなわち,本実施形態の冷却水供給系統部61とエアー供給系統部71とは,同一系統として金型80と接続する冷却水・エアー供給系統部60として構成されている。またさらに,この同一系統として金型80と接続する冷却水・エアー供給系統部60は,複数組み配置されており,金型80における複数の冷却対象に対して様々な条件での冷却水の供給が可能となっている。」
図1
「」
(2)甲1発明
上記(1)の記載事項を総合すると,甲1には次の発明が記載されているということができる。
「金型80に冷却水又は水抜き用のエアーを供給するための複数の冷却水供給系統部61及びエアー供給系統部71を有する冷却水・エアー供給系統部60と,前記冷却水・エアー供給系統部60に冷却水を供給する冷却水圧送部20と,前記冷却水・エアー供給系統部60に水抜き用のエアーを供給するエアー圧送部40と,を備える金型冷却装置10において,前記冷却水・エアー供給系統部60は,冷却水が水圧を維持したまま貯水される高圧水タンク51と,水抜き用のエアーが空気圧を維持したまま貯められるエアータンク52と,前記高圧水タンク51及び前記エアータンク52の下流側に配置され,前記複数の冷却水供給系統部61及びエアー供給系統部71に設けられる逆止弁63,73と,を備えている金型冷却装置10。」(以下「甲1発明」という。)
3.甲3の記載事項及び甲3記載の技術的事項
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(1)甲3の記載事項
決定の予告において引用した甲3には,以下の事項が記載されている。
「而して,純水製造装置(al)と高圧水供給装置(a2)とを接続配備する温度管理装置(A)の冷却水供給配管系(2)の冷却水供給口カプラ-(12)は,第4図に示す高圧水供給電磁弁(13)とエアー供給電磁弁(14)とを接続具備するマニホールドユニット(15)の高圧水入口カプラー(16)に接続され,前記高圧水供給電磁弁(13)のON動作によりマニホールドユニット(15)の高圧水出口カプラー(17)から金型(B)の冷却穴(1)に挿入設置された冷却パイプ(C)の冷却水兼エアー供給口(18)に亘り接続された供給路(19)を通して,シリカ,カルシア等の含有硬度が0.1mg/l以下の条件に純水化処理され且つ蒸気膜を打ち破る7kgf/cm2以上に圧力設定された高圧の冷却水を冷却パイプ(C)の循環往路に送り込み,ダイカストマシンの鋳造サイクルに連繋させて冷却穴(1)内に一定時間供給するものである。」(3ページ右下欄下から5行ないし4ページ左上欄13行)
「而して,残留冷却水除去装置(a3)を接続配備する温度管理装置(A)のエアー供給配管系(21)のエアー供給口カプラ-(23)は,マニホールドユニット(15)のエアー入口カプラー(24)に接続され,該マニホールドユニット(15)のエアー供給電磁弁(14)のON動作により高圧エアーを冷却パイプ(C)の冷却水兼エアー供給口(18)に接続された供給路(19)を通して該冷却パイプ(C)の循環往路に送り込み,該循環往路より冷却穴(1)内に一定時間供給して該冷却穴(1)内に残る冷却水を高圧エアーの流入圧力によって冷却パイプ(C)の循環復路に押し出しつつこの復路を通して冷却穴(1)外に速やかに押し出し排出するものである。」(4ページ右上欄下から7行ないし左下欄7行)
第4図
「」
(2)甲3記載の技術的事項1
ア.第4図には,高圧水入口カプラー(16)が示され,この下流に接続する配管を高圧水用の配管ということができる。
イ.第4図には,エアー入口カプラー(24)が示され,この下流に接続する配管をエアー用の配管ということができる。
ウ.第4図には,高圧水用の配管とエアー用の配管に,それぞれ逆止弁を配置することが示され,各逆止弁を高圧水用の逆止弁及びエアー用の逆止弁ということができる。
エ.第4図には,高圧水用の逆止弁及びエアー用の逆止弁の下流に,高圧水用の配管とエアー用の配管の合流部が示され,この合流部を合流配管ということができる。
オ.第4図には,合流配管の下流に,配管が5つに分岐する部分が示され,この部分を分岐部ということができる。
カ.第4図には,分岐部の下流の5つの配管が高圧水出口カプラー(17)に接続することが示され,この5つの配管を出口配管ということができる。
キ.上記(1)に示す甲3の記載事項及び上記ア.ないしカ.の技術的事項を総合すると,甲3には以下の技術的事項が記載されているということができる。
「金型の温度を管理する装置において,高圧水用の配管,エアー用の配管,高圧水用の逆止弁,エアー用の逆止弁,合流配管,分岐部及び複数の出口配管を,マニホールドユニット(15)として構成すること。」(以下「甲3記載の技術的事項1」という。)
4.本件発明1と甲1発明の対比
本件発明1と甲1発明を対比すると,甲1発明の「金型80」が本件発明1の「金型」に相当することは明らかであり,以下同様に,「水抜き用のエアー」が「空気」に,「供給する」が「導入する」に,「複数の冷却水供給系統部61及びエアー供給系統部71」が「複数の分岐管」に,「冷却水圧送部20」が「冷却水供給部」に,「エアー圧送部40」が「エア供給部」に,「金型冷却装置10」が「金型冷却装置」に,「前記複数の冷却水供給系統部61及びエアー供給系統部71に設けられる逆止弁63,73」が「前記複数の分岐管に設置される逆止弁」に相当する。
また,甲1発明の「冷却水が水圧を維持したまま貯水される高圧水タンク51」は,複数の冷却水供給系統部61が接続されているから,本件発明1の「冷却水を導入するための冷却水用マニホールド」に相当し,同様に,甲1発明の「水抜き用のエアーが空気圧を維持したまま貯められるエアータンク52」は,複数のエアー供給系統部71が接続されているから,本件発明1の「空気を導入するためのエア用マニホールド」に相当する。
そして,甲1発明の「冷却水・エアー供給系統部60」は,冷却水用マニホールドに相当する高圧水タンク51と,エア用マニホールドに相当するエアータンク52を備えているから,本件発明1の「マニホールド部」に相当する。
以上から,本件発明1と甲1発明は,以下の点で一致及び相違する。
<一致点A1>
「金型に冷却水又は空気を導入するための複数の分岐管を有するマニホールド部と,前記マニホールド部に冷却水を供給する冷却水供給部と,前記マニホールド部に空気を供給するエア供給部と,を備える金型冷却装置において,前記マニホールド部は,冷却水を導入するための冷却水用マニホールドと,空気を導入するためのエア用マニホールドと,前記複数の分岐管に設置される逆止弁と,を備えている金型冷却装置。」である点。
<相違点A11>
本件発明1は,「前記冷却水用マニホールドと前記エア用マニホールドと前記逆止弁とがユニット化されている」のに対して,甲1発明は,冷却水用マニホールドに相当する「高圧水タンク51」と,エア用マニホールドに相当する「エアータンク52」と,逆止弁に相当する「逆止弁63,73」とが,ユニット化されているかどうか不明な点。
5.相違点A11の判断
甲3記載の技術的事項1は,上記3.(2)に示すとおりであり,「分岐部」がマニホールドであるといえるから,甲3には,マニホールドと逆止弁をユニット化することが示されているといえる。
また,「ユニット」は,「システムに使う単位部分」(株式会社岩波書店広辞苑第六版)を意味するから,甲3記載の技術的事項に接した当業者は,マニホールドと逆止弁をユニット化することにより,金型の温度を管理する装置というシステムにおいて,マニホールドと逆止弁を単位部分として一体的に扱うことができると理解する。
そして,甲1発明と甲3記載の技術的事項1は,金型を冷却水で冷却し,必要に応じて,エアーで冷却水を排出する装置に関する技術として共通する上に,その冷却水やエアーを分配するためのマニホールドと逆止弁を有する構成としても共通するから,甲1発明に甲3記載の技術的事項1を適用する動機があるといえる。
したがって,甲1発明に甲3記載の技術的事項1を適用して,冷却水用マニホールドとエア用マニホールドと逆止弁とをユニット化するように構成することは,当業者が容易に想到できた事項である。
6.特許権者の意見書について
令和元年11月28日の意見書において,特許権者は,本件発明1のマニホールド9,14は,冷却水や空気が満たされる「プール部」のような機能を有しているのに対して,甲3には「プール部」の記載がないから,本件発明1は,甲1発明及び甲3記載の技術的事項1に基づいて当業者が容易に発明できたものでない旨を主張している。
しかし,一般に,「マニホールド」は,「内燃エンジンの吸排気を分岐させたり一つにまとめたりするパイプ。多分岐管。」(株式会社岩波書店広辞苑第六版)を意味すると解され,多分岐管が必ずしも「プール部」を含むものとは解されないことは明らかである。また,「マニホールド」が一般的な用語として,その意味が明らかである以上,特許明細書の記載を参酌して,本件発明1の「マニホールド」が「プール部」の機能を有していると解する余地はない。
したがって,意見書における特許権者の上記の主張は採用できない。
なお,上記本件発明1についての判断と同趣旨の決定の予告に対して,特許権者が意見書を提出しなかったことは,上記第1のとおりである。
7.小括
以上のとおり,本件発明1は,甲1発明及び甲3記載の技術的事項1に基づいて当業者が容易に発明できたものであるから,本件特許の請求項1に係る特許は特許法29条2項の規定に違反してされたものであり,取り消されるべきものである。
第6 決定の予告において採用しなかった特許異議申立理由についての当審の判断
1.特許異議申立理由の概要及び申立人が提出した証拠
特許異議申立理由の概要,及び申立人が提出した証拠は,以下のとおりである(以下,各特許異議申立理由を「申立理由1」などという。)。
(1)申立理由1(本件発明1の進歩性)
本件発明1は,甲1に記載された発明及び甲3に記載された技術的事項に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるから,本件発明1に係る特許は特許法29条2項の規定に違反してされたものであり,取り消されるべきものである。(特許異議申立書5ないし11ページ)
(2)申立理由2(本件発明1の進歩性)
本件発明1は,甲1に記載された発明,並びに甲第2号証(以下「甲2」という。)に記載された技術的事項及び甲3に記載された技術的事項に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるから,本件発明1に係る特許は特許法29条2項の規定に違反してされたものであり,取り消されるべきものである。(特許異議申立書11及び12ページ)
(3)申立理由3(本件発明2の進歩性)
本件発明2は,甲1に記載された発明及び甲3に記載された技術的事項に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるから,本件発明2に係る特許は特許法29条2項の規定に違反してされたものであり,取り消されるべきものである。(特許異議申立書12ページ)
(4)申立理由4(本件発明2の進歩性)
本件発明2は,甲1に記載された発明,並びに甲2に記載された技術的事項及び甲3に記載された技術的事項に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるから,本件発明2に係る特許は特許法29条2項の規定に違反してされたものであり,取り消されるべきものである。(特許異議申立書12ページ)
(5)申立理由5(本件発明1の進歩性)
本件発明1は,甲2に記載された発明,並びに甲1に記載された技術的事項及び甲3に記載された技術的事項に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるから,本件発明1に係る特許は特許法29条2項の規定に違反してされたものであり,取り消されるべきものである。(特許異議申立書12及び13ページ)
(6)申立理由6(本件発明2の進歩性)
本件発明2は,甲2に記載された発明,並びに甲1に記載された技術的事項及び甲3に記載された技術的事項に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるから,本件発明2に係る特許は特許法29条2項の規定に違反してされたものであり,取り消されるべきものである。(特許異議申立書13及び14ページ)
(7)申立理由7(本件発明1の進歩性)
本件発明1は,甲3に記載された発明及び甲1に記載された技術的事項に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるから,本件発明1に係る特許は特許法29条2項の規定に違反してされたものであり,取り消されるべきものである。(特許異議申立書14及び15ページ)
(8)申立理由8(本件発明2の進歩性)
本件発明2は,甲3に記載された発明及び甲1に記載された技術的事項に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるから,本件発明2に係る特許は特許法29条2項の規定に違反してされたものであり,取り消されるべきものである。(特許異議申立書15ページ)
(9)申立人が提出した証拠
2.決定の予告において採用しなかった特許異議申立理由
特許異議申立理由の概要は,上記1.に示すとおりであるところ,申立理由1は,決定の予告と同趣旨のものである。
また,上記第5の7.に示すとおり,本件発明1に係る特許は取り消されるべきものであるから,申立理由2,5及び7については検討するまでもない。
したがって,以下では,申立理由3,4,6及び8について,順次検討する。
3.申立理由3(本件発明2の進歩性)について
(1)本件発明2
本件発明2は,上記第3の請求項2に記載したとおりである。
(2)甲1記載の技術的事項及び甲1の第2発明
ア.甲1記載の技術的事項
甲1の記載事項は,上記第5の2.(1)に示すとおりであるところ,図1には,冷却水供給系統部61の電磁弁62が高圧水タンク51の下流側に備えられ,エアー供給系統部71の電磁弁72がエアータンク52の下流側に備えられている,という技術的事項が示されている。
イ.甲1の第2発明
甲1の記載事項及び上記の技術的事項を総合すると,甲1には次の発明が記載されているということができる。
「金型80に冷却水又は水抜き用のエアーを供給するための複数の冷却水供給系統部61及びエアー供給系統部71を有する冷却水・エアー供給系統部60と,前記冷却水・エアー供給系統部60に冷却水を供給する冷却水圧送部20と,前記冷却水・エアー供給系統部60に水抜き用のエアーを供給するエアー圧送部40と,を備える金型冷却装置10において,前記冷却水・エアー供給系統部60は,冷却水が水圧を維持したまま貯水される高圧水タンク51と,水抜き用のエアーが空気圧を維持したまま貯められるエアータンク52と,前記高圧水タンク51及び前記エアータンク52の下流側に配置され,前記複数の冷却水供給系統部61及びエアー供給系統部71に設けられる逆止弁63,73と,を備え,さらに,前記冷却水供給系統部61及びエアー供給系統部71は電磁弁62,72を備えており,当該電磁弁62,72は前記高圧水タンク51と前記エアータンク52の下流側に配置されている金型冷却装置10。」(以下「甲1の第2発明」という。)
(3)本件発明2と甲1の第2発明の対比
本件発明2と甲1の第2発明を対比すると,上記第5の4.において,甲1発明の各構成が本件発明1の各構成に相当したことと同様に,甲1の第2発明の各構成は本件発明2の各構成に相当する。
それに加えて,甲1の第2発明の「前記高圧水タンク51及び前記エアータンク52の下流側に配置され,前記複数の冷却水供給系統部61及びエアー供給系統部71に設けられる逆止弁63,73」は,本件発明2の「前記逆止弁が,前記冷却水用マニホールド又は前記エア用マニホールドの下流側に配置」されることに相当し,同様に,「さらに,前記冷却水供給系統部61及びエアー供給系統部71は電磁弁62,72を備」えることは,「さらに,前記冷却水供給部と前記エア供給部は電磁弁を備」えることに相当する。
したがって,本件発明2と甲1の第2発明は,以下の点で一致及び相違する。
<一致点A2>
「金型に冷却水又は空気を導入するための複数の分岐管を有するマニホールド部と,前記マニホールド部に冷却水を供給する冷却水供給部と,前記マニホールド部に空気を供給するエア供給部と,を備える金型冷却装置において,前記マニホールド部は,冷却水を導入するための冷却水用マニホールドと,空気を導入するためのエア用マニホールドと,前記複数の分岐管に設置される逆止弁と,を備え,前記逆止弁が,前記冷却水用マニホールド又は前記エア用マニホールドの下流側に配置されており,さらに,前記冷却水供給部と前記エア供給部は電磁弁を備える金型冷却装置。」である点。
<相違点A21>
本件発明2は,「前記冷却水用マニホールドと前記エア用マニホールドと前記逆止弁とがユニット化されている」のに対して,甲1の第2発明は,冷却水用マニホールドに相当する「高圧水タンク51」と,エア用マニホールドに相当する「エアータンク52」と,逆止弁に相当する「逆止弁63,73」とが,ユニット化されているかどうか不明な点。
<相違点A22>
電磁弁が,本件発明2では「前記冷却水用マニホールドと前記エア用マニホールドの上流側に配置」されているのに対して,甲1の第2発明では「前記高圧水タンク51と前記エアータンク52の下流側に配置」されている点。
(4)相違点の判断
ア.相違点A21の判断
相違点A21は,上記第5の5.に示す相違点A11と同じ相違点であるから,その判断は,上記第5の5.に説示するとおりであり,甲1の第2発明に甲3記載の技術的事項1を適用して,冷却水用マニホールドとエア用マニホールドと逆止弁とをユニット化するように構成することは,当業者が容易に想到できた事項である。
イ.相違点A22の判断
(ア)甲1には,発明が解決しようとする課題として,従来の金型冷却装置において,複数の冷却回路のうちのいずれかの回路の水抜きが完了した後もエアーパージを続けていると,水抜きが終了した回路では冷却水が全て排出されてエアーに抵抗が無くなるので,エアー供給源から供給されるエアー全体の圧力が急激に低下し,そのため,水抜きが遅い回路では,エアーの圧力低下によって,十分な水抜きができないことが示されている(【0004】)。
(イ)甲1には,この課題を解決するために,冷却水・エアー供給系統部を構成するエアー供給系統部のそれぞれに,水抜き用のエアーの流量又は圧力を検出するためのセンサーと,水抜き用のエアーの流通を許容又は停止する電磁弁と,前記センサーからの検出信号を受けて電磁弁の開閉動作を制御する制御部とを設置し(【0007】),制御部は,センサーから受信した検出信号が所定の条件を満足したときに,電磁弁を閉動作させることで,エアー供給系統部に流通する水抜き用のエアーの流通を停止可能とすること(【0008】)が示されている。
(ウ)甲1の第2発明の電磁弁は,上記相違点A22に示すとおり,「前記高圧水タンク51と前記エアータンク52の下流側に配置」されているが,電磁弁をそのように配置する理由は,上記(イ)のように,個別のエアー供給系統部ごとに水抜き用のエアーの流通を停止することにより,上記(ア)に示すような,水抜きが終了した回路からエアーが排出され,エアー全体の圧力が急激に低下して,十分な水抜きができなくなるという課題を解決するためであるといえる。なお,このような電磁弁を水タンクとエアータンクの下流側に配置することの機能については,甲1の【0029】,【0032】の記載からも理解できるところである。
(エ)そして,仮に,甲1の第2発明において,本件発明2のように,電磁弁を「前記冷却水用マニホールドと前記エア用マニホールドの上流側に配置」すれば,個別のエアー供給系統部ごとに水抜き用のエアーの流通を停止することができず,そのため,上記(ア)に示す課題を解決できないことは明らかである。
(オ)そうすると,甲1の記載に接した当業者は,甲1の第2発明において,上記相違点A22に係る本件発明2の構成を採用しようと試みることはない,すなわち,このような改変をする動機は生じないし,むしろ,その機能を損なうものであって阻害要因を有するから,甲3に記載された技術的事項を検討するまでもなく,上記相違点A22に係る構成は,甲1の第2発明及び甲3に記載された技術的事項に基づいて,当業者が容易に想到できたものとはいえない。
(5)小括
したがって,本件発明2は,甲1の第2発明及び甲3に記載された技術的事項に基づいて,当業者が容易に発明できたものとはいえないから,申立理由3によって,本件発明2に係る特許を取り消すことはできない。
4.申立理由4(本件発明2の進歩性)について
申立理由4は,申立理由3と同様に,本件発明2に対して,甲1の第2発明を主たる発明として容易想到であることをいうものであるから,本件発明2と甲1の第2発明は,上記相違点A22を有し,上記3.(4)イ.に説示する理由と同様の理由により,甲2に記載された技術的事項及び甲3に記載された技術的事項を検討するまでもなく,本件発明2は,甲1の第2発明並びに甲2に記載された技術的事項及び甲3に記載された技術的事項に基づいて,当業者が容易に発明できたものとはいえない。
したがって,申立理由4によって,本件発明2に係る特許を取り消すことはできない。
5.申立理由6(本件発明2の進歩性)について
(1)本件発明2
本件発明2は,上記第3の請求項2に記載したとおりである。
(2)甲2の記載事項及び甲2発明
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ア.甲2の記載事項
甲2には,以下の事項が記載されている。
「【0013】本発明の金型冷却装置の具体的な構成について,各図面に基づいて説明する。図1は,金型冷却装置の全体図であり,本装置は,水を供給する水供給源およびエアを供給するエア供給源に接続して使用するものである。水供給源には水用カプラ21が接続してあり,その下流には不純物を除去するためのストレーナ22を介して水用マニホールド23が接続してある。一方,エア供給源にはエア用カプラ31が接続してあり,その下流にはエア用マニホールド33が接続してある。水用マニホールド23からは三本の水供給管2が延びており,エア用マニホールド33からは三本のエア供給管3が延びているが,各水供給管同士,各エア供給管同士は互いに同等のものなので,以下においては特に断らない限り,それぞれの中の一本のみについて言及する。水供給管2には,水用ソレノイド弁24が接続してあり,エア供給管3には,エア用ソレノイド弁34が接続してある。そして,水供給管2とエア供給管3とは,各ソレノイド弁24,34の下流側に接続した合流部4において合流している。合流部4の下流側には給水管5が接続してある。給水管5の下流側には金型Aに設けた冷却部1が接続してあり,冷却部1に水やエアを供給する。冷却部1の詳細は後述する。そして,給水管5の途中一部が,断面積の大きな貯留管6としてある。貯留管6の断面積は,その上流側の給水管5の断面積の2.5倍~4倍とすることが望ましく,本実施例においては,上流側の給水管5の内径を5mm,貯留管6の内径を8mmとした(貯留管6の断面積は給水管5の断面積の2.56倍となる)。冷却部1には,水やエアを排出するための排水管7が接続してあり,さらにこの排水管7の途中に圧力計8が取り付けてある。なお,水用マニホールド23には給水圧力計25および給水温度計26が接続してあり,エア用マニホールド33には,エア圧力計35が接続してある。また,水用マニホールド23およびエア用マニホールド33から貯留管6上流側の給水管5までは筐体41の中に納めてあり,圧力計8,給水圧力計25,給水温度計26およびエア圧力計35は筐体41の側面に取り付けてある。」
図1
「」
イ.甲2記載の技術的事項
図1には,筐体41の内部に,水用マニホールド23及びエア用マニホールド33を収納する,という技術的事項が示されている。
ウ.甲2発明
上記ア.の記載事項及び上記イ.の技術的事項を総合すると,甲2には次の発明が記載されているということができる。
「金型Aに設けた冷却部1に水を供給する三本の水供給管2を有する水用マニホールド23と,金型Aに設けた冷却部1にエアを供給する三本のエア供給管3を有するエア用マニホールド33と,前記水用マニホールド23に水を供給する水供給源と,前記エア用マニホールド33にエアを供給するエア供給源と,を備える金型冷却装置において,水を導入するための水用マニホールド23と,エアを導入するためのエア用マニホールド33と,を備え,前記水用マニホールド23と前記エア用マニホールド33とが筐体41に収納されており,さらに,前記水供給管2に設置される水用ソレノイド弁24と,前記エア供給管3に設置されるエア用ソレノイド弁34を備えており,当該水用ソレノイド弁24は前記水用マニホールド23の下流側に配置され,当該エア用ソレノイド弁34は前記エア用マニホールド33の下流側に配置され,各ソレノイド弁の下流には合流部4を有する金型冷却装置。」(以下「甲2発明」という。)
(3)本件発明2と甲2発明の対比
本件発明2と甲2発明を対比すると,甲2発明の「金型Aに設けた冷却部1」が本件発明2の「金型」に相当することは明らかであり,以下同様に,「水を供給する三本の水供給管2」及び「エアを供給する三本のエア供給管3」が「冷却水又は空気を導入するための複数の分岐管」に,「水を導入するための水用マニホールド23」が「冷却水を導入するための冷却水用マニホールド」に,「エアを導入するためのエア用マニホールド33」が「空気を導入するためのエア用マニホールド」に,「水用ソレノイド弁24」及び「エア用ソレノイド弁34」が「電磁弁」に相当する。
また,甲2発明の「水用マニホールド23」及び「エア用マニホールド33」を合わせて,「マニホールド部」ということができるから,甲2発明において「水を導入するための水用マニホールド23と,エアを導入するためのエア用マニホールド33と,を備え」ることと,本件発明2において「前記マニホールド部は,冷却水を導入するための冷却水用マニホールドと,空気を導入するためのエア用マニホールドと,前記複数の分岐管に設置される逆止弁と,を備え」ることを対比すると,「前記マニホールド部は,冷却水を導入するための冷却水用マニホールドと,空気を導入するためのエア用マニホールドと,を備え」る点で一致する。
また,甲2発明の「前記水用マニホールド23に水を供給する水供給源」は本件発明2の「前記マニホールド部に冷却水を供給する冷却水供給部」に相当し,同様に「前記エア用マニホールド33にエアを供給するエア供給源」は「前記マニホールド部に空気を供給するエア供給部」に相当する。
また,甲2発明において「前記水用マニホールド23と前記エア用マニホールド33とが筐体41に収納」されていることと,本件発明2において「前記冷却水用マニホールドと前記エア用マニホールドと前記逆止弁とがユニット化」されていることを対比すると,「前記冷却水用マニホールドと前記エア用マニホールドとがユニット化」されている点で一致する。
以上から,本件発明2と甲2発明は,以下の点で一致及び相違する。
<一致点B>
「金型に冷却水又は空気を導入するための複数の分岐管を有するマニホールド部と,前記マニホールド部に冷却水を供給する冷却水供給部と,前記マニホールド部に空気を供給するエア供給部と,を備える金型冷却装置において,前記マニホールド部は,冷却水を導入するための冷却水用マニホールドと,空気を導入するためのエア用マニホールドと,を備え,前記冷却水用マニホールドと前記エア用マニホールドとがユニット化されており,さらに,電磁弁を備えている金型冷却装置。」
<相違点B1>
本件発明2は,「前記複数の分岐管に設置される逆止弁」を備え,「前記逆止弁が,前記冷却水用マニホールド又は前記エア用マニホールドの下流側に配置」されており,「ユニット」は逆止弁を含むのに対して,甲2発明は,分岐管に相当する「水供給管2」及び「エア供給管3」に逆止弁が備えられておらず,ユニットに相当する「筐体41」は逆止弁を含んでいない点。
<相違点B2>
本件発明2の「電磁弁」は,「前記冷却水供給部と前記エア供給部」に備えられ,「当該電磁弁は前記冷却水用マニホールドと前記エア用マニホールドの上流側に配置」されているのに対して,甲2発明の「水用ソレノイド弁24」及び「エア用ソレノイド弁34」は,分岐管に相当する「水供給管2」及び「エア供給管3」に配置され,「当該水用ソレノイド弁24は前記水用マニホールド23の下流側に配置」され,「当該エア用ソレノイド弁34は前記エア用マニホールド33の下流側に配置」されている点。
(4)相違点B1の判断
ア.本件発明2の逆止弁は,冷却水又は空気が逆流することを防ぐためのものである(本件の願書に添付した明細書の【0021】)ところ,この逆止弁を,冷却水用マニホールド又はエア用マニホールドの下流側の複数の分岐管に設置することにより,例えば,分岐管から金型に冷却水を供給する際には,冷却水がエア用マニホールドに逆流することを防止し,金型の冷却水をエアで排出するように,分岐管にエアを供給する際には,エアが冷却水用マニホールドに逆流することを防止するように機能するといえる。
イ.これに対して,甲2発明は,逆止弁を有しておらず,水用マニホールド23の下流側の水供給管2に水用ソレノイド弁24を配置し,エア用マニホールド33の下流側のエア供給管3にエア用ソレノイド弁34を配置しており,これらのソレノイド弁は,金型の冷却の際に,水用ソレノイド弁24が0.7秒開いて冷却水を貯留管6に貯留し,その後,エア用ソレノイド弁34が14.5秒開いて,水及びエアの混合流体で金型を冷却するように機能する(甲2の【0016】)。
ウ.そうすると,甲2発明の水用ソレノイド弁24とエア用ソレノイド弁34のいずれか一方が開く際には,いずれか他方は閉じているから,冷却水がエア用マニホールド33に逆流することや,エアが水用マニホールド23に逆流することは,そもそも発生しない。したがって,甲2の記載に接した当業者が,甲2発明の水用マニホールド23の下流側の水供給管2や,エア用マニホールド33の下流側のエア供給管3に,各ソレノイド弁に加えて逆止弁を設けようと想到する動機が全くない。
エ.また,甲2には,発明が解決しようとする課題として,従来は,金型への冷却水の圧送を止めた後に,高圧エアを送っていたために,冷却水が高圧で噴出されて,金型が冷えすぎるという問題があることや,設定温度付近での金型の温度を微調整することが困難であるという問題が示されている(甲2の【0002】)。そして,貯留管に水を貯留した後にエアを供給するというように,水とエアを交互に供給することで水とエアの混合流体を生成して,金型の温度を適切に制御することで,上記の問題点が解決されると解されるところ,そのように水とエアを交互に供給するためには,甲2発明の水用ソレノイド弁24とエア用ソレノイド弁34は必須の構成というほかなく,甲2の記載に接した当業者が,これらのソレノイド弁に替えて逆止弁を設けようと想到することもない。
オ.したがって,甲1や甲3の記載を検討するまでもなく,上記相違点B1に係る構成は,甲2発明,並びに甲1に記載された技術的事項及び甲3に記載された技術的事項に基づいて,当業者が容易に想到できたものとはいえない。
(5)相違点B2の判断
上記(4)エ.に説示するとおり,甲2の記載に接した当業者は,甲2発明の水用ソレノイド弁24とエア用ソレノイド弁34は,水とエアの混合流体を生成させるために必須の構成であると理解するところ,仮に,これらを水用マニホールド23やエア用マニホールド33の上流に設ければ,個別の貯留管ごとに水とエアを交互に供給することで,水とエアの混合流体を生成することができないから,金型の温度を微調整することができず,甲2に示されている課題を解決できないことは明らかである。そうすると,このような改変をする動機は生じないし,むしろ阻害要因を有するものといえる。
したがって,甲1や甲3の記載を検討するまでもなく,上記相違点B2に係る構成は,甲2発明,並びに甲1に記載された技術的事項及び甲3に記載された技術的事項に基づいて,当業者が容易に想到できたものとはいえない。
(6)小括
以上のとおり,本件発明2は,甲2発明,並びに甲1に記載された技術的事項及び甲3に記載された技術的事項に基づいて,当業者が容易に発明できたものとはいえないから,申立理由6によって,本件発明2に係る特許を取り消すことはできない。
6.申立理由8(本件発明2の進歩性)について
(1)本件発明2
本件発明2は,上記第3の請求項2に記載したとおりである。
(2)甲3の記載事項及び甲3発明
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ア.甲3の記載事項
甲3の記載事項は,上記第5の3.(1)に記載したとおりである。
イ.甲3記載の技術的事項
(ア)甲3記載の技術的事項1は,上記第5の3.(2)キ.に記載したとおりであるところ,「マニホールドユニット(15)として構成すること」は,「ユニット化すること」として認識することができる。
(イ)甲3の第4図には,高圧水用の配管に高圧水供給電磁弁(13)を配置し,エアー用の配管にエアー供給電磁弁(14)を配置し,それらの電磁弁は分岐部よりも上流に配置されている,という技術的事項が示されている。
ウ.甲3発明
上記ア.の記載事項及び上記イ.の技術的事項を総合すると,甲3には以下の発明が記載されているということができる。
「金型(B)の冷却穴(1)に冷却水又は高圧エアーを導入するための5つの出口配管を有するマニホールドユニット(15)と,前記マニホールドユニット(15)に冷却水を供給する高圧水用の配管と前記マニホールドユニット(15)に高圧エアーを供給するエアー用の配管と,を備える金型の温度を管理する装置において,前記マニホールドユニット(15)は,冷却水又は高圧エアーを導入するための分岐部と,前記高圧水用の配管に配置される高圧水用の逆止弁と,前記エアー用の配管に配置されるエアー用の逆止弁と,を備え,前記分岐部と前記高圧水用の逆止弁と前記エアー用の逆止弁とがユニット化されており,前記高圧水用の逆止弁及び前記エアー用の逆止弁が,前記分岐部の上流側に配置されており,さらに,前記高圧水用の配管と前記エアー用の配管は電磁弁(13,14)を備えており,当該電磁弁は前記分岐部の上流側に配置されている金型の温度を管理する装置。」
(3)本件発明2と甲3発明の対比
本件発明2と甲3発明を対比すると,甲3発明の「金型(B)の冷却穴(1)」が本件発明2の「金型」に相当することは明らかであり,以下同様に,「冷却水又は高圧エアーを導入する」が「冷却水又は空気を導入する」に,「5つの出口配管」が「複数の分岐管」に,「マニホールドユニット(15)」が「マニホールド部」に,「高圧水用の配管」が「冷却水供給部」に,「エアー用の配管」が「エア供給部」に,「金型の温度を管理する装置」が「金型冷却装置」に,「前記高圧水用の配管と前記エアー用の配管は電磁弁(13,14)を備」えることが「前記冷却水供給部と前記エア供給部は電磁弁を備」えることに相当する。
また,甲3発明の「冷却水又は高圧エアーを導入するための分岐部」と,本件発明2の「冷却水を導入するための冷却水用マニホールドと,空気を導入するためのエア用マニホールド」を対比すると,「マニホールド」という点で一致する。
また,甲3発明の「前記高圧水用の配管に配置される高圧水用の逆止弁と,前記エアー用の配管に配置されるエアー用の逆止弁」と,本件発明2の「前記複数の分岐管に設置される逆止弁」を対比すると,「逆止弁」という点で一致する。
以上から,本件発明2と甲3発明は,以下の点で一致及び相違する。
<一致点C>
「金型に冷却水又は空気を導入するための複数の分岐管を有するマニホールド部と,前記マニホールド部に冷却水を供給する冷却水供給部と,前記マニホールド部に空気を供給するエア供給部と,を備える金型冷却装置において,前記マニホールド部は,マニホールドと,逆止弁と,を備え,前記マニホールドと前記逆止弁とがユニット化されており,さらに,前記冷却水供給部と前記エア供給部は電磁弁を備えており,当該電磁弁は前記マニホールドの上流側に配置されている金型冷却装置。」
<相違点C1>
マニホールドが,本件発明2では「冷却水を導入するための冷却水用マニホールド」及び「空気を導入するためのエア用マニホールド」であるのに対して,甲3発明では「冷却水又は高圧エアーを導入するための分岐部」であり,当該分岐部は,冷却水と高圧エアーとで共通のものとなっている点。
<相違点C2>
逆止弁が,本件発明2では「前記複数の分岐管に設置」されるものであり,「前記冷却水用マニホールド又は前記エア用マニホールドの下流側に配置」されているのに対して,甲3発明では「前記高圧水用の配管に配置」されるもの及び「前記エアー用の配管に配置」されるものであり,「前記分岐部の上流側に配置」されている点。
(4)相違点C1の判断
ア.甲3には,従来の背景技術及びその問題点として,主に次の2つが示されている(甲3の1ページ右下欄7行ないし2ページ右上欄13行)。
・冷却水に含まれるシリカ等の不純物が,冷却パイプや金型の冷却穴に付着し,熱交換率を減少させること。
・金型の冷却穴の内周面には蒸気膜が生じ,冷却水の接触を妨げているが,従来の冷却水の圧力では,蒸気膜を破壊できないこと。
そして,甲3には,上記の問題点を解決するために,純水製造装置により冷却水を純水化処理することや,高圧水供給装置により冷却水を高圧で送り込むことが示されている(甲3の2ページ左下欄4ないし16行)が,甲3発明の「冷却水又は高圧エアーを導入するための分岐部」により,何らかの技術的な問題が生じることや,その問題の解決手段については,何も記載がなく,示唆もされていない。
イ.また,甲1には,冷却水を導入する冷却水用マニホールドと空気を導入するエア用マニホールドとを別々に備えるという,上記相違点C1に係る構成が開示されている(上記第5の2.(2))が,甲1には,甲3発明の分岐部のように,冷却水と空気とで共通のマニホールド(分岐部)とすることにより,技術的な問題が生じていたことや,上記相違点C1に係る構成により,その問題が解決されるというような,冷却水と空気とで別々のマニホールドとすることの技術的意義について,記載も示唆もない。
したがって,甲1の記載に接した当業者は,上記相違点C1に係る構成について,マニホールドを冷却水と空気の共通のものとすることによる技術的な問題を解決する手段として認識することはない。
ウ.さらに,マニホールドを冷却水と空気の共通のものとすることの技術的な問題や,上記相違点C1に係る構成によりその問題が解決されることが,当業者にとって自明であるといえるに足る証拠はない。
エ.したがって,甲3や甲1には,冷却水と空気とで共通のマニホールド(分岐部)とすることにより,何らかの技術的な問題が生じることや,上記相違点C1に係る構成によりその問題が解決されることについて,記載も示唆もなく,当該技術的な問題や,上記相違点C1に係る構成によりその問題が解決されることは自明でもないから,甲3発明に甲1に開示された上記相違点C1に係る構成を適用する動機が全くない。
そうすると,甲3発明に,あえて相違点C1に係る構成を採用する理由は見当たらないから,上記相違点C1に係る構成は,甲3発明及び甲1記載の技術的事項に基づいて,当業者が容易に想到できたものとはいえない。
(5)小括
以上のとおりであるから,相違点C2について検討するまでもなく,本件発明2は,甲3発明及び甲1記載の技術的事項に基づいて,当業者が容易に発明できたものとはいえないから,申立理由8によって,本件発明2に係る特許を取り消すことはできない。
第7 むすび
以上のとおり,本件特許の請求項1に係る特許は,特許法29条2項の規定に違反してされたものであり,取り消されるべきものである。
そして,本件特許の請求項2に係る特許は,決定の予告に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては,取り消すことができない。
また,他に請求項2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり決定する。
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2019-700595