2019-700575
ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体及びその製造方法
- 審判番号
- 2019-700575
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2015-508914外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2019年07月23日
- 審決日
- 2020年03月27日
- 公報発行日
- 2020年06月26日
- 結論
- 訂正認容
- 分類
- P1651.113-YAA(C08G) / P1651.121-YAA(C08G) / P1651.536-YAA(C08G) / P1651.537-YAA(C08G)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第120条の5第2項、特許法第113条第2号、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
結論
理由
目次 ▾ 14項目
第1 手続の経緯
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特許第6457384号(請求項の数18。以下、「本件特許」という。)は、平成26年9月22日(優先権主張:平成25年12月10日)を国際出願日とする特許出願(特願2015-508914号)に係るものであって、平成30年12月28日に設定登録されたものである(特許掲載公報の発行日は、平成31年1月23日である。)。
その後、令和1年7月23日に、本件特許の全請求項(請求項1~18)に係る特許に対して、特許異議申立人である林法子(以下、「申立人」という。)により、特許異議の申立てがされた。
その後の手続の経緯は以下のとおりである。
令和 1年10月24日付け 取消理由通知書(特許権者に対して)
令和 1年12月27日 意見書、訂正請求書(特許権者)
令和 2年 1月23日付け 通知書(訂正請求があった旨の通知)
令和 2年 2月26日 意見書(申立人)
第2 訂正の請求について
1 訂正の内容
令和1年12月27日付けの訂正請求書による訂正(以下、「本件訂正」という。)の請求は、本件明細書及び特許請求の範囲を上記訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~18について訂正することを求めるものであり、その内容は、以下のとおりである。下線は、訂正箇所を示す。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に、「(2)前記微分分子量分布曲線において、4.0≦log(M)≦4.5の範囲でdw/dlog(M)値を積分した値が、log(M)の全範囲でdw/dlog(M)値を積分した値に対して6%以上40%以下である」とあるのを、
「(2)前記微分分子量分布曲線において、4.0≦log(M)≦4.5の範囲でdw/dlog(M)値を積分した値が、log(M)の全範囲でdw/dlog(M)値を積分した値に対して6%以上40%以下(但し、8.5±0.3%を除く)である」に訂正する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項9に、「(2)前記微分分子量分布曲線において、4.0≦log(M)≦4.5の範囲でdw/dlog(M)値を積分した値が、log(M)の全範囲でdw/dlog(M)値を積分した値に対して6%以上40%以下である」とあるのを、
「(2)前記微分分子量分布曲線において、4.0≦log(M)≦4.5の範囲でdw/dlog(M)値を積分した値が、log(M)の全範囲でdw/dlog(M)値を積分した値に対して6%以上40%以下(但し、8.5±0.3%を除く)である」に訂正する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項12に、「(2)前記微分分子量分布曲線において、4.0≦log(M)≦4.5の範囲でdw/dlog(M)値を積分した値が、log(M)の全範囲でdw/dlog(M)値を積分した値に対して6%以上40%以下である」とあるのを、
「(2)前記微分分子量分布曲線において、4.0≦log(M)≦4.5の範囲でdw/dlog(M)値を積分した値が、log(M)の全範囲でdw/dlog(M)値を積分した値に対して6%以上40%以下(但し、8.5±0.3%を除く)である」に訂正する。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項14に、「(2)前記微分分子量分布曲線において、4.0≦log(M)≦4.5の範囲でdw/dlog(M)値を積分した値が、log(M)の全範囲でdw/dlog(M)値を積分した値に対して6%以上40%以下である」とあるのを、
「(2)前記微分分子量分布曲線において、4.0≦log(M)≦4.5の範囲でdw/dlog(M)値を積分した値が、log(M)の全範囲でdw/dlog(M)値を積分した値に対して6%以上40%以下(但し、8.5±0.3%を除く)である」に訂正する。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項15に、「(2)前記微分分子量分布曲線において、4.0≦log(M)≦4.5の範囲でdw/dlog(M)値を積分した値が、log(M)の全範囲でdw/dlog(M)値を積分した値に対して6%以上40%以下である」とあるのを、
「(2)前記微分分子量分布曲線において、4.0≦log(M)≦4.5の範囲でdw/dlog(M)値を積分した値が、log(M)の全範囲でdw/dlog(M)値を積分した値に対して6%以上40%以下(但し、8.5±0.3%を除く)である」に訂正する。
(6)訂正事項6
明細書の段落【0005】において、「1.下記一般式(I)で表される繰り返し単位からなるポリカーボネートブロック(A)及び下記一般式(II)で表される繰り返し単位を含むポリオルガノシロキサンブロック(B)を含むポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体であって、
前記ポリオルガノシロキサンブロック(B)のポリスチレンを換算基準としたゲル浸透クロマトグラフ法による測定から得られる、横軸が分子量Mの対数値log(M)であり、縦軸が濃度分率wを分子量の対数値log(M)で微分したdw/dlog(M)である微分分子量分布曲線において、
(1)dw/dlog(M)の値が3.4≦log(M)≦4.0の範囲で最大となり、
(2)前記微分分子量分布曲線において、4.0≦log(M)≦4.5の範囲でdw/dlog(M)値を積分した値が、log(M)の全範囲でdw/dlog(M)値を積分した値に対して6%~40%である、ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体。
【化1】
[式中、R1及びR2はそれぞれ独立に、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基又は炭素数1~6のアルコキシ基、Xは、単結合、炭素数1~8のアルキレン基、炭素数2~8のアルキリデン基、炭素数5~15のシクロアルキレン基、炭素数5~15のシクロアルキリデン基、フルオレンジイル基、炭素数7~15のアリールアルキレン基、炭素数7~15のアリールアルキリデン基、-S-、-SO-、-SO2-、-O-又は-CO-、R3及びR4はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基又は炭素数6~12のアリール基を示し、a及びbは、それぞれ独立に0~4の整数を示す。]」とあるのを、
「1.下記一般式(I)で表される繰り返し単位からなるポリカーボネートブロック(A)及び下記一般式(II)で表される繰り返し単位を含むポリオルガノシロキサンブロック(B)を含むポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体であって、前記ポリオルガノシロキサンブロック(B)のポリスチレンを換算基準としたゲル浸透クロマトグラフ法による測定から得られる、横軸が分子量Mの対数値log(M)であり、縦軸が濃度分率wを分子量の対数値log(M)で微分したdw/dlog(M)である微分分子量分布曲線において、(1)dw/dlog(M)の値が3.4≦log(M)≦4.0の範囲で最大となり、(2)前記微分分子量分布曲線において、4.0≦log(M)≦4.5の範囲でdw/dlog(M)値を積分した値が、log(M)の全範囲でdw/dlog(M)値を積分した値に対して6%~40%(但し、8.5±0.3%を除く)である、ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体。【化1】[式中、R1及びR2はそれぞれ独立に、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基又は炭素数1~6のアルコキシ基、Xは、単結合、炭素数1~8のアルキレン基、炭素数2~8のアルキリデン基、炭素数5~15のシクロアルキレン基、炭素数5~15のシクロアルキリデン基、フルオレンジイル基、炭素数7~15のアリールアルキレン基、炭素数7~15のアリールアルキリデン基、-S-、-SO-、-SO2-、-O-又は-CO-、R3及びR4はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基又は炭素数6~12のアリール基を示し、a及びbは、それぞれ独立に0~4の整数を示す。]」に訂正する。
(7)訂正事項7
明細書の段落【0005】において、「9.1~7のいずれかに記載のポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体の製造方法であって、下記一般式(ii)または(iii)
【化2】
[式(ii)及び(iii)中、R3~R6はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基又は炭素数6~12のアリール基を示す。YおよびY’はそれぞれ独立に単結合、又は-C(=O)-、脂肪族若しくは芳香族を含む有機残基であって、SiとO又はSiとZに結合している有機残基を示す。nは、平均繰り返し数である。mは0又は1を示し、Zはそれぞれ独立に、ハロゲン、-R7OH、-R7COOH、-R7NH2、-R7NHR8、-COOH又は-SHを示し、R7は直鎖、分岐鎖若しくは環状アルキレン基、アリール置換アルキレン基、環上にアルコキシ基を有してもよいアリール置換アルキレン基、置換されていてもよいアリーレン基又はアリーレンアルキル置換アリール基を示し、R8はアルキル基、アルケニル基、アリール基又はアラルキル基を示し、Z’はそれぞれ独立に、-R7O-、-R7COO-、-R7NH-、-COO-又は-S-を示し、R7は直鎖、分岐鎖若しくは環状アルキレン基、アリール置換アルキレン基、環上にアルコキシ基を有してもよいアリール置換アルキレン基、置換されていてもよいアリーレン基又はアリーレンアルキル置換アリール基を示す。βは、ジイソシアネート化合物由来の2価の基又はジカルボン酸由来の2価の基を示す。]
で表されるポリオルガノシロキサンを原料として用い、ここで該原料ポリオルガノシロキサンは、下記(1)及び(2)を満たすものであるポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体の製造方法。
前記ポリオルガノシロキサンのポリスチレンを換算基準としたゲル浸透クロマトグラフ法による測定から得られる、横軸が分子量Mの対数値log(M)であり、縦軸が濃度分率wを分子量の対数値log(M)で微分したdw/dlog(M)である微分分子量分布曲線において、
(1)dw/dlog(M)の値が、3.4≦log(M)≦4.0の範囲で最大となり、
(2)前記微分分子量分布曲線において、4.0≦log(M)≦4.5の範囲でdw/dlog(M)値を積分した値が、log(M)の全範囲でdw/dlog(M)値を積分した値に対して6%以上40%以下である。」とあるのを、
「9.1~7のいずれかに記載のポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体の製造方法であって、下記一般式(ii)または(iii)【化2】[式(ii)及び(iii)中、R3~R6はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基又は炭素数6~12のアリール基を示す。YおよびY’はそれぞれ独立に単結合、又は-C(=O)-、脂肪族若しくは芳香族を含む有機残基であって、SiとO又はSiとZに結合している有機残基を示す。nは、平均繰り返し数である。mは0又は1を示し、Zはそれぞれ独立に、ハロゲン、-R7OH、-R7COOH、-R7NH2、-R7NHR8、-COOH又は-SHを示し、R7は直鎖、分岐鎖若しくは環状アルキレン基、アリール置換アルキレン基、環上にアルコキシ基を有してもよいアリール置換アルキレン基、置換されていてもよいアリーレン基又はアリーレンアルキル置換アリール基を示し、R8はアルキル基、アルケニル基、アリール基又はアラルキル基を示し、Z’はそれぞれ独立に、-R7O-、-R7COO-、-R7NH-、-COO-又は-S-を示し、R7は直鎖、分岐鎖若しくは環状アルキレン基、アリール置換アルキレン基、環上にアルコキシ基を有してもよいアリール置換アルキレン基、置換されていてもよいアリーレン基又はアリーレンアルキル置換アリール基を示す。βは、ジイソシアネート化合物由来の2価の基又はジカルボン酸由来の2価の基を示す。]で表されるポリオルガノシロキサンを原料として用い、ここで該原料ポリオルガノシロキサンは、下記(1)及び(2)を満たすものであるポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体の製造方法。前記ポリオルガノシロキサンのポリスチレンを換算基準としたゲル浸透クロマトグラフ法による測定から得られる、横軸が分子量Mの対数値log(M)であり、縦軸が濃度分率wを分子量の対数値log(M)で微分したdw/dlog(M)である微分分子量分布曲線において、(1)dw/dlog(M)の値が、3.4≦log(M)≦4.0の範囲で最大となり、(2)前記微分分子量分布曲線において、4.0≦log(M)≦4.5の範囲でdw/dlog(M)値を積分した値が、log(M)の全範囲でdw/dlog(M)値を積分した値に対して6%以上40%以下(但し、8.5±0.3%を除く)である。」に訂正する。
(8)訂正事項8
明細書の段落【0005】において、「12.下記一般式(ii)または(iii)で表され、下記(1)及び(2)を満たすものであるポリオルガノシロキサン。
【化3】
[式(ii)及び(iii)中、R3~R6はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基又は炭素数6~12のアリール基を示す。YおよびY’はそれぞれ独立に、単結合、又は-C(=O)-、脂肪族若しくは芳香族を含む有機残基であって、SiとO又はSiとZに結合している有機残基を示す。nは、平均繰り返し数である。mは0又は1を示し、Zはそれぞれ独立に、ハロゲン、-R7OH、-R7COOH、-R7NH2、-R7NHR8、-COOH又は-SHを示し、R7は直鎖、分岐鎖若しくは環状アルキレン基、アリール置換アルキレン基、環上にアルコキシ基を有してもよいアリール置換アルキレン基、置換されていてもよいアリーレン基又はアリーレンアルキル置換アリール基を示し、R8はアルキル基、アルケニル基、アリール基又はアラルキル基を示し、Z’はそれぞれ独立に、-R7O-、-R7COO-、-R7NH-、-COO-又は-S-を示し、R7は直鎖、分岐鎖若しくは環状アルキレン基、アリール置換アルキレン基、環上にアルコキシ基を有してもよいアリール置換アルキレン基、置換されていてもよいアリーレン基又はアリーレンアルキル置換アリール基を示す。βは、ジイソシアネート化合物由来の2価の基又はジカルボン酸由来の2価の基を示す。]
前記ポリオルガノシロキサンのポリスチレンを換算基準としたゲル浸透クロマトグラフ法による測定から得られる、横軸が分子量Mの対数値log(M)であり、縦軸が濃度分率wを分子量の対数値log(M)で微分したdw/dlog(M)である微分分子量分布曲線において、
(1)dw/dlog(M)の値が、3.4≦log(M)≦4.0の範囲で最大となる。
(2)前記微分分子量分布曲線において、4.0≦log(M)≦4.5の範囲でdw/dlog(M)値を積分した値が、log(M)の全範囲でdw/dlog(M)値を積分した値に対して6%以上40%以下である。」とあるのを、
「12.下記一般式(ii)または(iii)で表され、下記(1)及び(2)を満たすものであるポリオルガノシロキサン。【化3】[式(ii)及び(iii)中、R3~R6はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基又は炭素数6~12のアリール基を示す。YおよびY’はそれぞれ独立に、単結合、又は-C(=O)-、脂肪族若しくは芳香族を含む有機残基であって、SiとO又はSiとZに結合している有機残基を示す。nは、平均繰り返し数である。mは0又は1を示し、Zはそれぞれ独立に、ハロゲン、-R7OH、-R7COOH、-R7NH2、-R7NHR8、-COOH又は-SHを示し、R7は直鎖、分岐鎖若しくは環状アルキレン基、アリール置換アルキレン基、環上にアルコキシ基を有してもよいアリール置換アルキレン基、置換されていてもよいアリーレン基又はアリーレンアルキル置換アリール基を示し、R8はアルキル基、アルケニル基、アリール基又はアラルキル基を示し、Z’はそれぞれ独立に、-R7O-、-R7COO-、-R7NH-、-COO-又は-S-を示し、R7は直鎖、分岐鎖若しくは環状アルキレン基、アリール置換アルキレン基、環上にアルコキシ基を有してもよいアリール置換アルキレン基、置換されていてもよいアリーレン基又はアリーレンアルキル置換アリール基を示す。βは、ジイソシアネート化合物由来の2価の基又はジカルボン酸由来の2価の基を示す。]前記ポリオルガノシロキサンのポリスチレンを換算基準としたゲル浸透クロマトグラフ法による測定から得られる、横軸が分子量Mの対数値log(M)であり、縦軸が濃度分率wを分子量の対数値log(M)で微分したdw/dlog(M)である微分分子量分布曲線において、(1)dw/dlog(M)の値が、3.4≦log(M)≦4.0の範囲で最大となる。(2)前記微分分子量分布曲線において、4.0≦log(M)≦4.5の範囲でdw/dlog(M)値を積分した値が、log(M)の全範囲でdw/dlog(M)値を積分した値に対して6%以上40%以下(但し、8.5±0.3%を除く)である。」に訂正する。
(9)訂正事項9
明細書の段落【0021】において、「<ポリオルガノシロキサン>
本発明のポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体を構成する一般式(II)で表される繰り返し単位を含むポリオルガノシロキサンブロック(B)は、上記ポリオルガノシロキサンブロック(B)のポリスチレンを換算基準としたゲル浸透クロマトグラフ法による測定から得られる、横軸が分子量Mの対数値log(M)であり、縦軸が濃度分率wを分子量の対数値log(M)で微分したdw/dlog(M)である微分分子量分布曲線において、
(1)dw/dlog(M)の値が、3.4≦log(M)≦4.0の範囲で最大となり、
(2)前記微分分子量分布曲線において、4.0≦log(M)≦4.5の範囲でdw/dlog(M)値を積分した値が、log(M)の全範囲でdw/dlog(M)値を積分した値に対して6%以上40%以下である
ことを特徴とする。」とあるのを、
「<ポリオルガノシロキサン>本発明のポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体を構成する一般式(II)で表される繰り返し単位を含むポリオルガノシロキサンブロック(B)は、上記ポリオルガノシロキサンブロック(B)のポリスチレンを換算基準としたゲル浸透クロマトグラフ法による測定から得られる、横軸が分子量Mの対数値log(M)であり、縦軸が濃度分率wを分子量の対数値log(M)で微分したdw/dlog(M)である微分分子量分布曲線において、(1)dw/dlog(M)の値が、3.4≦log(M)≦4.0の範囲で最大となり、(2)前記微分分子量分布曲線において、4.0≦log(M)≦4.5の範囲でdw/dlog(M)値を積分した値が、log(M)の全範囲でdw/dlog(M)値を積分した値に対して6%以上40%以下(但し、8.5±0.3%を除く)であることを特徴とする。」に訂正する。
(10)訂正事項10
明細書の段落【0032】において、「本発明においては、(2)前記微分分子量分布曲線において、4.0≦log(M)≦4.5の範囲でdw/dlog(M)値を積分した値が、log(M)の全範囲でdw/dlog(M)値を積分した値に対して6%~40%であり、好ましくは6.5%~30%である。上記割合が6%未満であると、低温耐衝撃性に劣る結果となり、40%を超えると透明性が低下する傾向にある。ここで、4.0≦log(M)≦4.5の範囲でdw/dlog(M)値を積分した値の、log(M)の全範囲でdw/dlog(M)値を積分した値に対する割合は、PDMSの分子量分布において、log(M)が4.0~4.5である成分がPDMS全体に対して存在する割合を示すものである。」とあるのを、
「本発明においては、(2)前記微分分子量分布曲線において、4.0≦log(M)≦4.5の範囲でdw/dlog(M)値を積分した値が、log(M)の全範囲でdw/dlog(M)値を積分した値に対して6%~40%であり、好ましくは6.5%~30%である(但し、8.5±0.3%を除く)。上記割合が6%未満であると、低温耐衝撃性に劣る結果となり、40%を超えると透明性が低下する傾向にある。ここで、4.0≦log(M)≦4.5の範囲でdw/dlog(M)値を積分した値の、log(M)の全範囲でdw/dlog(M)値を積分した値に対する割合は、PDMSの分子量分布において、log(M)が4.0~4.5である成分がPDMS全体に対して存在する割合を示すものである。」に訂正する。
(11)訂正事項11
明細書の段落【0046】において、「ポリオルガノシロキサンとしては、上述した通り、ポリスチレンを換算基準としたGPC法による測定結果から得られる微分分子量分布曲線において、縦軸をdw/dlog(M)、横軸をlog(M)(wは濃度分率、Mは分子量である)としたとき、(1)dw/dlog(M)の値が、3.4≦log(M)≦4.0の範囲で最大となり、(2)上記微分分子量分布曲線において、4.0≦log(M)≦4.5の範囲でdw/dlog(M)値を積分した値が、log(M)の全範囲でdw/dlog(M)値を積分した値に対して6%~40%である、式(ii)または(iii)で表されるポリオルガノシロキサンを用いる。」とあるのを、
「ポリオルガノシロキサンとしては、上述した通り、ポリスチレンを換算基準としたGPC法による測定結果から得られる微分分子量分布曲線において、縦軸をdw/dlog(M)、横軸をlog(M)(wは濃度分率、Mは分子量である)としたとき、(1)dw/dlog(M)の値が、3.4≦log(M)≦4.0の範囲で最大となり、(2)上記微分分子量分布曲線において、4.0≦log(M)≦4.5の範囲でdw/dlog(M)値を積分した値が、log(M)の全範囲でdw/dlog(M)値を積分した値に対して6%~40%(但し、8.5±0.3%を除く)である、式(ii)または(iii)で表されるポリオルガノシロキサンを用いる。」に訂正する。
(12)一群の請求項について
ア 訂正事項1に係る訂正前の請求項1について、請求項2~11、16~18はそれぞれ請求項1を直接的又は間接的に引用するものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。
したがって、訂正前の請求項1~11、16~18に対応する訂正後の請求項1~11、16~18は,一群の請求項である。
よって、本件訂正は、一群の請求項ごとに請求がなされたものである。
イ 訂正事項3に係る訂正前の請求項12について、請求項13は請求項12を直接的に引用するものであって、訂正事項3によって記載が訂正される請求項12に連動して訂正されるものである。
したがって、訂正前の請求項12、13に対応する訂正後の請求項12、13は、一群の請求項である。
よって、本件訂正は、一群の請求項ごとに請求がなされたものである。
(13)明細書の訂正に係る請求項について
ア 明細書に係る訂正事項6及び7は、請求項1~11、16~18について請求されたものである。
よって、本件訂正は、明細書の訂正に係る請求項を含む一群の請求項の全てについて行われたものである。
イ 明細書に係る訂正事項8、9、10は、請求項12、13について請求されたものである。
よって、本件訂正は、明細書の訂正に係る請求項を含む一群の請求項の全てについて行われたものである。
ウ 明細書に係る訂正事項11は、請求項14について請求されたものである。
よって、本件訂正は、明細書の訂正に係る請求項を含む請求項の全てについて行われたものである。
エ よって、明細書に係る訂正は、一群の請求項〔1-11、16-18〕、〔12、13〕、14について行われたものである。
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1について
訂正事項1は、訂正前の請求項1に記載されたポリオルガノシロキサンブロック(B)のポリスチレンを換算基準としたゲル浸透クロマトグラフ法による測定から得られる、横軸が分子量Mの対数値log(M)であり、縦軸が濃度分率wを分子量の対数値log(M)で微分したdw/dlog(M)である微分分子量分布曲線において、「(2)前記微分分子量分布曲線において、4.0≦log(M)≦4.5の範囲でdw/dlog(M)値を積分した値が、log(M)の全範囲でdw/dlog(M)値を積分した値に対して6%以上40%以下」の範囲から、「8.5±0.3%」を除くものである。してみると、この訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであると認められる。
そして、訂正事項1は、訂正前の請求項1に記載されたポリオルガノシロキサンブロック(B)のポリスチレンを換算基準としたゲル浸透クロマトグラフ法による測定から得られる、横軸が分子量Mの対数値log(M)であり、縦軸が濃度分率wを分子量の対数値log(M)で微分したdw/dlog(M)である微分分子量分布曲線において、「(2)前記微分分子量分布曲線において、4.0≦log(M)≦4.5の範囲でdw/dlog(M)値を積分した値が、log(M)の全範囲でdw/dlog(M)値を積分した値に対して6%以上40%以下」の範囲から、その範囲の一部として「8.5±0.3%」を除くことを特定するものであり、新たな技術的事項を導入するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。
(2)訂正事項2について
訂正事項2は、訂正前の請求項9に記載された原料ポリオルガノシロキサンのポリスチレンを換算基準としたゲル浸透クロマトグラフ法による測定から得られる、横軸が分子量Mの対数値log(M)であり、縦軸が濃度分率wを分子量の対数値log(M)で微分したdw/dlog(M)である微分分子量分布曲線において、「(2)前記微分分子量分布曲線において、4.0≦log(M)≦4.5の範囲でdw/dlog(M)値を積分した値が、log(M)の全範囲でdw/dlog(M)値を積分した値に対して6%以上40%以下」の範囲から、「8.5±0.3%」を除くものである。してみると、この訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであると認められる。
そして、訂正事項2は、訂正前の請求項9に記載された原料ポリオルガノシロキサンののポリスチレンを換算基準としたゲル浸透クロマトグラフ法による測定から得られる、横軸が分子量Mの対数値log(M)であり、縦軸が濃度分率wを分子量の対数値log(M)で微分したdw/dlog(M)である微分分子量分布曲線において、「(2)前記微分分子量分布曲線において、4.0≦log(M)≦4.5の範囲でdw/dlog(M)値を積分した値が、log(M)の全範囲でdw/dlog(M)値を積分した値に対して6%以上40%以下」の範囲から、その範囲の一部として「8.5±0.3%」を除くことを特定するものであり、新たな技術的事項を導入するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。
(3)訂正事項3について
訂正事項3は、訂正前の請求項12に記載されたポリオルガノシロキサンのポリスチレンを換算基準としたゲル浸透クロマトグラフ法による測定から得られる、横軸が分子量Mの対数値log(M)であり、縦軸が濃度分率wを分子量の対数値log(M)で微分したdw/dlog(M)である微分分子量分布曲線において、「(2)前記微分分子量分布曲線において、4.0≦log(M)≦4.5の範囲でdw/dlog(M)値を積分した値が、log(M)の全範囲でdw/dlog(M)値を積分した値に対して6%以上40%以下」の範囲から、「8.5±0.3%」を除くものである。してみると、この訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであると認められる。
そして、訂正事項3は、訂正前の請求項12に記載されたポリオルガノシロキサンののポリスチレンを換算基準としたゲル浸透クロマトグラフ法による測定から得られる、横軸が分子量Mの対数値log(M)であり、縦軸が濃度分率wを分子量の対数値log(M)で微分したdw/dlog(M)である微分分子量分布曲線において、「(2)前記微分分子量分布曲線において、4.0≦log(M)≦4.5の範囲でdw/dlog(M)値を積分した値が、log(M)の全範囲でdw/dlog(M)値を積分した値に対して6%以上40%以下」の範囲から、その範囲の一部として「8.5±0.3%」を除くことを特定するものであり、新たな技術的事項を導入するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。
(4)訂正事項4について
訂正事項4は、訂正前の請求項14に記載された原料ポリオルガノシロキサンのポリスチレンを換算基準としたゲル浸透クロマトグラフ法による測定から得られる、横軸が分子量Mの対数値log(M)であり、縦軸が濃度分率wを分子量の対数値log(M)で微分したdw/dlog(M)である微分分子量分布曲線において、「(2)前記微分分子量分布曲線において、4.0≦log(M)≦4.5の範囲でdw/dlog(M)値を積分した値が、log(M)の全範囲でdw/dlog(M)値を積分した値に対して6%以上40%以下」の範囲から、「8.5±0.3%」を除くものである。してみると、この訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであると認められる。
そして、訂正事項4は、訂正前の請求項14に記載された原料ポリオルガノシロキサンののポリスチレンを換算基準としたゲル浸透クロマトグラフ法による測定から得られる、横軸が分子量Mの対数値log(M)であり、縦軸が濃度分率wを分子量の対数値log(M)で微分したdw/dlog(M)である微分分子量分布曲線において、「(2)前記微分分子量分布曲線において、4.0≦log(M)≦4.5の範囲でdw/dlog(M)値を積分した値が、log(M)の全範囲でdw/dlog(M)値を積分した値に対して6%以上40%以下」の範囲から、その範囲の一部として「8.5±0.3%」を除くことを特定するものであり、新たな技術的事項を導入するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。
(5)訂正事項5について
訂正事項5は、訂正前の請求項15に記載された原料ポリオルガノシロキサンのポリスチレンを換算基準としたゲル浸透クロマトグラフ法による測定から得られる、横軸が分子量Mの対数値log(M)であり、縦軸が濃度分率wを分子量の対数値log(M)で微分したdw/dlog(M)である微分分子量分布曲線において、「(2)前記微分分子量分布曲線において、4.0≦log(M)≦4.5の範囲でdw/dlog(M)値を積分した値が、log(M)の全範囲でdw/dlog(M)値を積分した値に対して6%以上40%以下」の範囲から、「8.5±0.3%」を除くものである。してみると、この訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであると認められる。
そして、訂正事項5は、訂正前の請求項15に記載された原料ポリオルガノシロキサンののポリスチレンを換算基準としたゲル浸透クロマトグラフ法による測定から得られる、横軸が分子量Mの対数値log(M)であり、縦軸が濃度分率wを分子量の対数値log(M)で微分したdw/dlog(M)である微分分子量分布曲線において、「(2)前記微分分子量分布曲線において、4.0≦log(M)≦4.5の範囲でdw/dlog(M)値を積分した値が、log(M)の全範囲でdw/dlog(M)値を積分した値に対して6%以上40%以下」の範囲から、その範囲の一部として「8.5±0.3%」を除くことを特定するものであり、新たな技術的事項を導入するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。
(6)訂正事項6~11について
訂正事項6~11は、訂正事項1~5において請求項1、9、12、14及び15を訂正したことに伴い、明細書の段落【0005】、【0021】、【0032】、【0046】を訂正するものである。してみると、この訂正は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであると認められる。
そして、訂正事項6~11は、訂正事項1~5における請求項1、9、12、14、15の訂正に伴い、明細書の該当段落の記載を訂正したものであり、新たな技術的事項を導入するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。
3 小括
以上のとおりであるから、本件訂正は特許法第120条の5第2項ただし書1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項ないし第6項の規定に適合するので、本件訂正を認める。
第3 本件訂正後の請求項1~18に係る発明
上記第2で述べたように、本件訂正は認められるので、本件訂正により訂正された請求項1~18に係る発明(以下「本件訂正発明1」等という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~18に記載された以下の事項によって特定されるとおりのものである(以下、本件訂正後の明細書を「本件明細書」という。)
「【請求項1】下記一般式(I)で表される繰り返し単位からなるポリカーボネートブロック(A)及び下記一般式(II)で表される繰り返し単位を含むポリオルガノシロキサンブロック(B)を含むポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体であって、前記ポリオルガノシロキサンブロック(B)のポリスチレンを換算基準としたゲル浸透クロマトグラフ法による測定から得られる、横軸が分子量Mの対数値log(M)であり、縦軸が濃度分率wを分子量の対数値log(M)で微分したdw/dlog(M)である微分分子量分布曲線において、(1)dw/dlog(M)の値が、3.4≦log(M)≦4.0の範囲で最大となり、続きを表示(全69行)(2)前記微分分子量分布曲線において、4.0≦log(M)≦4.5の範囲でdw/dlog(M)値を積分した値が、log(M)の全範囲でdw/dlog(M)値を積分した値に対して6%以上40%以下(但し、8.5±0.3%を除く)である、ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体。【化1】[式中、R1及びR2はそれぞれ独立に、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基又は炭素数1~6のアルコキシ基を示す。Xは、単結合、炭素数1~8のアルキレン基、炭素数2~8のアルキリデン基、炭素数5~15のシクロアルキレン基、炭素数5~15のシクロアルキリデン基、フルオレンジイル基、炭素数7~15のアリールアルキレン基、炭素数7~15のアリールアルキリデン基、-S-、-SO-、-SO2-、-O-又は-CO-を示す。R3及びR4はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基又は炭素数6~12のアリール基を示す。a及びbは、それぞれ独立に0~4の整数を示す。]【請求項2】前記ポリオルガノシロキサンブロック(B)の平均鎖長が20~85である、請求項1に記載のポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体。【請求項3】前記ポリオルガノシロキサンブロック(B)の含有量が、ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体の0.5質量%~20.0質量%である、請求項1または2に記載のポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体。【請求項4】粘度平均分子量が12000~40000である、請求項1~3のいずれかに記載のポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体。【請求項5】前記一般式(I)おけるaおよびbが0であり、Xが単結合または炭素数1~8のアルキレン基である、請求項1~4のいずれかに記載のポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体。【請求項6】前記一般式(I)におけるaおよびbが0であり、Xが炭素数3のアルキレン基である、請求項1~5のいずれかに記載のポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体。【請求項7】前記一般式(II)におけるR3およびR4がメチル基である、請求項1~6のいずれかに記載のポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体。【請求項8】請求項1~7のいずれかに記載のポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体を成形してなる成形体。【請求項9】請求項1~7のいずれかに記載のポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体の製造方法であって、下記一般式(ii)または(iii)【化2】[式(ii)及び(iii)中、R3~R6はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基又は炭素数6~12のアリール基を示す。YおよびY’はそれぞれ独立に、単結合、又は-C(=O)-、脂肪族若しくは芳香族を含む有機残基であって、SiとO又はSiとZに結合している有機残基を示す。nは、平均繰り返し数である。mは0又は1を示し、Zはそれぞれ独立に、ハロゲン、-R7OH、-R7COOH、-R7NH2、-R7NHR8、-COOH又は-SHを示し、R7は直鎖、分岐鎖若しくは環状アルキレン基、アリール置換アルキレン基、環上にアルコキシ基を有してもよいアリール置換アルキレン基、置換されていてもよいアリーレン基又はアリーレンアルキル置換アリール基を示し、R8はアルキル基、アルケニル基、アリール基又はアラルキル基を示し、Z’はそれぞれ独立に、-R7O-、-R7COO-、-R7NH-、-COO-又は-S-を示し、R7は直鎖、分岐鎖若しくは環状アルキレン基、アリール置換アルキレン基、環上にアルコキシ基を有してもよいアリール置換アルキレン基、置換されていてもよいアリーレン基又はアリーレンアルキル置換アリール基を示す。βは、ジイソシアネート化合物由来の2価の基又はジカルボン酸由来の2価の基を示す。]で表されるポリオルガノシロキサンを原料として用い、ここで該原料ポリオルガノシロキサンは、下記(1)及び(2)を満たすものであるポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体の製造方法。前記ポリオルガノシロキサンのポリスチレンを換算基準としたゲル浸透クロマトグラフ法による測定から得られる、横軸が分子量Mの対数値log(M)であり、縦軸が濃度分率wを分子量の対数値log(M)で微分したdw/dlog(M)である微分分子量分布曲線において、(1)dw/dlog(M)の値が、3.4≦log(M)≦4.0の範囲で最大となり、(2)前記微分分子量分布曲線において、4.0≦log(M)≦4.5の範囲でdw/dlog(M)値を積分した値が、log(M)の全範囲でdw/dlog(M)値を積分した値に対して6%以上40%以下(但し、8.5±0.3%を除く)である。【請求項10】前記一般式(ii)または(iii)における平均鎖長nが20~85である、請求項9に記載のポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体の製造方法。【請求項11】前記一般式(ii)または(iii)におけるR3およびR4がメチル基である、請求項9または10に記載のポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体の製造方法。【請求項12】下記一般式(ii)または(iii)で表され、下記(1)及び(2)を満たすものであるポリオルガノシロキサン。【化3】[式(ii)及び(iii)中、R3~R6はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基又は炭素数6~12のアリール基を示す。YおよびY’はそれぞれ独立に、単結合、又は-C(=O)-、脂肪族若しくは芳香族を含む有機残基であって、SiとO又はSiとZに結合している有機残基を示す。nは、平均繰り返し数である。mは0又は1を示し、Zはそれぞれ独立に、ハロゲン、-R7OH、-R7COOH、-R7NH2、-R7NHR8、-COOH又は-SHを示し、R7は直鎖、分岐鎖若しくは環状アルキレン基、アリール置換アルキレン基、環上にアルコキシ基を有してもよいアリール置換アルキレン基、置換されていてもよいアリーレン基又はアリーレンアルキル置換アリール基を示し、R8はアルキル基、アルケニル基、アリール基又はアラルキル基を示し、Z’はそれぞれ独立に、-R7O-、-R7COO-、-R7NH-、-COO-又は-S-を示し、R7は直鎖、分岐鎖若しくは環状アルキレン基、アリール置換アルキレン基、環上にアルコキシ基を有してもよいアリール置換アルキレン基、置換されていてもよいアリーレン基又はアリーレンアルキル置換アリール基を示す。βは、ジイソシアネート化合物由来の2価の基又はジカルボン酸由来の2価の基を示す。]前記ポリオルガノシロキサンのポリスチレンを換算基準としたゲル浸透クロマトグラフ法による測定から得られる、横軸が分子量Mの対数値log(M)であり、縦軸が濃度分率wを分子量の対数値log(M)で微分したdw/dlog(M)である微分分子量分布曲線において、(1)dw/dlog(M)の値が、3.4≦log(M)≦4.0の範囲で最大となり、(2)前記微分分子量分布曲線において、4.0≦log(M)≦4.5の範囲でdw/dlog(M)値を積分した値が、log(M)の全範囲でdw/dlog(M)値を積分した値に対して6%以上40%以下(但し、8.5±0.3%を除く)である。【請求項13】前記一般式(ii)または(iii)における平均鎖長nが20~85である、請求項12に記載のポリオルガノシロキサン。【請求項14】下記一般式(I)で表される繰り返し単位からなるポリカーボネートブロック(A)及び下記一般式(II)で表される繰り返し単位を含むポリオルガノシロキサンブロック(B)を含むポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体であって、前記共重合体の原料として下記一般式(ii)または(iii)で表されるポリオルガノシロキサンを用い、ここで該原料ポリオルガノシロキサンは、下記(1)及び(2)を満たすものであるポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体:前記ポリオルガノシロキサンのポリスチレンを換算基準としたゲル浸透クロマトグラフ法による測定から得られる、横軸が分子量Mの対数値log(M)であり、縦軸が濃度分率wを分子量の対数値log(M)で微分したdw/dlog(M)である微分分子量分布曲線において、(1)dw/dlog(M)の値が、3.4≦log(M)≦4.0の範囲で最大となり、(2)前記微分分子量分布曲線において、4.0≦log(M)≦4.5の範囲でdw/dlog(M)値を積分した値が、log(M)の全範囲でdw/dlog(M)値を積分した値に対して6%以上40%以下(但し、8.5±0.3%を除く)である。【化4】[式中、R1及びR2はそれぞれ独立に、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基又は炭素数1~6のアルコキシ基を示す。Xは、単結合、炭素数1~8のアルキレン基、炭素数2~8のアルキリデン基、炭素数5~15のシクロアルキレン基、炭素数5~15のシクロアルキリデン基、フルオレンジイル基、炭素数7~15のアリールアルキレン基、炭素数7~15のアリールアルキリデン基、-S-、-SO-、-SO2-、-O-又は-CO-を示す。R3及びR4はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基又は炭素数6~12のアリール基を示す。a及びbは、それぞれ独立に0~4の整数を示す。]【化5】[式(ii)及び(iii)中、R3~R6はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基又は炭素数6~12のアリール基を示す。YおよびY’はそれぞれ独立に、単結合、又は-C(=O)-、脂肪族若しくは芳香族を含む有機残基であって、SiとO又はSiとZに結合している有機残基を示す。nは、平均繰り返し数である。mは0又は1を示し、Zはそれぞれ独立に、ハロゲン、-R7OH、-R7COOH、-R7NH2、-R7NHR8、-COOH又は-SHを示し、R7は直鎖、分岐鎖若しくは環状アルキレン基、アリール置換アルキレン基、環上にアルコキシ基を有してもよいアリール置換アルキレン基、置換されていてもよいアリーレン基又はアリーレンアルキル置換アリール基を示し、R8はアルキル基、アルケニル基、アリール基又はアラルキル基を示し、Z’はそれぞれ独立に、-R7O-、-R7COO-、-R7NH-、-COO-又は-S-を示し、R7は直鎖、分岐鎖若しくは環状アルキレン基、アリール置換アルキレン基、環上にアルコキシ基を有してもよいアリール置換アルキレン基、置換されていてもよいアリーレン基又はアリーレンアルキル置換アリール基を示す。βは、ジイソシアネート化合物由来の2価の基又はジカルボン酸由来の2価の基を示す。]【請求項15】下記一般式(I)で表される繰り返し単位からなるポリカーボネートブロック(A)及び下記一般式(II)で表される繰り返し単位を含むポリオルガノシロキサンブロック(B)を含むポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体の製造方法であって、下記一般式(ii)または(iii)で表されるポリオルガノシロキサンを原料として用い、ここで該原料ポリオルガノシロキサンは、下記(1)及び(2)を満たすものであるポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体の製造方法:前記ポリオルガノシロキサンのポリスチレンを換算基準としたゲル浸透クロマトグラフ法による測定から得られる、横軸が分子量Mの対数値log(M)であり、縦軸が濃度分率wを分子量の対数値log(M)で微分したdw/dlog(M)である微分分子量分布曲線において、(1)dw/dlog(M)の値が、3.4≦log(M)≦4.0の範囲で最大となり、(2)前記微分分子量分布曲線において、4.0≦log(M)≦4.5の範囲でdw/dlog(M)値を積分した値が、log(M)の全範囲でdw/dlog(M)値を積分した値に対して6%以上40%以下(但し、8.5±0.3%を除く)である。【化6】[式中、R1及びR2はそれぞれ独立に、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基又は炭素数1~6のアルコキシ基を示す。Xは、単結合、炭素数1~8のアルキレン基、炭素数2~8のアルキリデン基、炭素数5~15のシクロアルキレン基、炭素数5~15のシクロアルキリデン基、フルオレンジイル基、炭素数7~15のアリールアルキレン基、炭素数7~15のアリールアルキリデン基、-S-、-SO-、-SO2-、-O-又は-CO-を示す。R3及びR4はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基又は炭素数6~12のアリール基を示す。a及びbは、それぞれ独立に0~4の整数を示す。]【化7】[式(ii)及び(iii)中、R3~R6はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基又は炭素数6~12のアリール基を示す。YおよびY’はそれぞれ独立に、単結合、又は-C(=O)-、脂肪族若しくは芳香族を含む有機残基であって、SiとO又はSiとZに結合している有機残基を示す。nは、平均繰り返し数である。mは0又は1を示し、Zはそれぞれ独立に、ハロゲン、-R7OH、-R7COOH、-R7NH2、-R7NHR8、-COOH又は-SHを示し、R7は直鎖、分岐鎖若しくは環状アルキレン基、アリール置換アルキレン基、環上にアルコキシ基を有してもよいアリール置換アルキレン基、置換されていてもよいアリーレン基又はアリーレンアルキル置換アリール基を示し、R8はアルキル基、アルケニル基、アリール基又はアラルキル基を示し、Z’はそれぞれ独立に、-R7O-、-R7COO-、-R7NH-、-COO-又は-S-を示し、R7は直鎖、分岐鎖若しくは環状アルキレン基、アリール置換アルキレン基、環上にアルコキシ基を有してもよいアリール置換アルキレン基、置換されていてもよいアリーレン基又はアリーレンアルキル置換アリール基を示す。βは、ジイソシアネート化合物由来の2価の基又はジカルボン酸由来の2価の基を示す。]【請求項16】ISO13468に基づいて測定した、厚み3mm試験片の全光線透過率が80.20以上である、請求項1~7のいずれかに記載のポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体。【請求項17】ISO14782に基づいて測定した、厚み3mm試験片のヘーズ値が6.2以下である、請求項1~7のいずれかに記載のポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体。【請求項18】ASTM規格D-256に準拠して、-40℃において測定した厚み3mm試験片のノッチ付きアイゾット衝撃強度が46KJ/m2以上である、請求項1~7のいずれかに記載のポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体。」
第4 特許異議の申立ての理由及び取消理由の概要
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1 特許異議の申立書に記載した特許異議の申立の理由
本件特許の請求項1~18に係る特許は、下記(1)~(6)のとおり、特許法第113条第2号、及び同法第113条第4号に該当する。証拠方法として、下記(7)の甲第1号証、甲第2号証(以下、単に「甲1」等という。)を提出する。
(1)申立理由1(新規性)
本件訂正前の請求項1~18に係る発明は、甲1に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1~18に係る特許は、同法第29条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(2)申立理由2(進歩性)
本件訂正前の請求項1~18に係る発明は、甲1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1~18に係る特許は、同法第29条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(3)証拠方法
申立人が提出した証拠方法は、以下のとおりである。
2 取消理由通知書に記載した取消理由
取消理由1(新規性)本件特許の下記の請求項に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであるから、その発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
記
1 取消理由1(新規性)について
・請求項1~6、8、11~13、15
・引用文献等 甲1、甲2
第5 当審の判断
以下に述べるように、取消理由通知書に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議の申立ての理由によっては、本件訂正発明1~18に係る特許を取り消すことはできない。
以下、詳述する。
1 取消理由通知書に記載した取消理由
(1)取消理由1(新規性)について
以下、詳述する。なお、事案に鑑み、まず本件訂正発明12、13から審理を行い、次に本件訂正発明9~11、15、14、1~8、16~18の順に審理を行う。
ア 甲1に記載された事項及び記載された発明
(ア)甲1に記載された事項
(ア-1)「【0001】
本発明は、透明性、耐候性、耐熱老化性、水垢付着防止性に優れ、さらに高度な靭性を備えた樹脂組成物およびその成形品に関する。さらに詳しくは、特定の凝集構造を形成する良好な透明性を有するポリカーボネート-ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂を含有する樹脂組成物及び成形品に関する。」
(イ-1)「【0050】
(式[3]のポリジオルガノシロキサンブロック)
ポリジオルガノシロキサンブロックは、下記式[3]で表される。
【化6】
【0051】
上記式[3]において、R3、R4、R5、R6、R7およびR8は夫々独立に、水素原子、炭素数1~12のアルキル基または炭素数6~12の置換若しくは無置換のアリール基である。
炭素数1~12のアルキル基として、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、へプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基等が挙げられる。好ましくは炭素原子数1~6のアルキル基である。炭素数6~12の置換若しくは無置換のアリール基として、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。置換基としてメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基などの炭素数1~12のアルキル基が挙げられる。R3、R4、R5、R6、R7、R8がメチル基であることが好ましい。
【0052】
R9およびR10は夫々独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数1~10のアルコキシ基である。
ハロゲン原子として、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等が挙げられる。炭素原子数1~10のアルキル基として、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、へプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基等が挙げられる。好ましくは炭素原子数1~6のアルキル基である。炭素原子数1~10のアルコキシ基として、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペントキシ基、ヘキソキシ基、へプトキシ基、オクトキシ基、等が挙げられる。好ましくは炭素原子数1~6のアルキルコキシ基である。
【0053】
pは自然数であり、qは0または自然数であり、p+qは30~70の自然数である。pは好ましくは5~70、より好ましくは30~60である。qは好ましくは0~65、より好ましくは0~50である。p+qは好ましくは30~60、より好ましくは35~55、特に好ましくは35~50である。
【0054】
Xは、炭素数2~8の二価脂肪族基である。二価脂肪族基として、炭素数2~8のアルキレン基が挙げられる。アルキレン基としてエチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基等が挙げられる。
【0055】
式[3]で表されるポリジオルガノシロキサンブロックが(2-アリルフェノール)末端ポリジオルガノシロキサン、もしくは(2-メトキシ-4-アリルフェノール)末端ポリジオルガノシロキサンより誘導されたブロックであることが好ましい。即ち、式[3]においてXがトリメチレン基でR9およびR10が水素原子であるか、もしくはXがトリメチレン基でR9およびR10がメトキシ基であることが好ましい。
【0056】
式[3]で表されるポリジオルガノシロキサンブロックの含有量は、共重合樹脂の全重量を基準にして、好ましくは0.1~50重量%、より好ましくは0.5~30重量%、さらに好ましくは1.0~20重量%である。
【0057】
共重合樹脂の粘度平均分子量は、好ましくは5.0×103~5.0×104、より好ましくは1.0×104~4.0×104、更に好ましくは1.5×104~3.5×104、特に好ましくは1.7×104~2.5×104である。共重合樹脂の粘度平均分子量が5.0×103未満では、多くの分野において実用上の機械的強度が得られにくく、5.0×104を超えると、溶融粘度が高く、概して高い成形加工温度を必要とするため、樹脂の熱劣化などの不具合を生じやすい。」
(ウ-1)「【0075】
工程(i)では、水に不溶性の有機溶媒とアルカリ水溶液との混合液中において、二価フェノール(I)と、ホスゲンや二価フェノール(I)のクロロホルメート等のクロロホルメート形成性化合物との反応により、二価フェノール(I)のカーボネートオリゴマーであって末端クロロホーメート基を有するオリゴマーを含有する溶液を調製する。
カーボネートオリゴマーの重合度は、好ましくは1.0~10.0、より好ましくは2.0~8.0、さらに好ましくは1.5~4.0である。」
(エ-1)「【0132】
本発明の共重合樹脂組成物は、前記の如く製造されたペレットを射出成形して各種製品を製造することができる。更にペレットを経由することなく、押出機で溶融混練された樹脂を直接シート、フィルム、異型押出成形品、ダイレクトブロー成形品、および射出成形品にすることも可能である。
・・・
【0136】
更に本発明の共重合樹脂組成物からなる成形品には、各種の表面処理を行うことが可能である。ここでいう表面処理とは、蒸着(物理蒸着、化学蒸着など)、メッキ(電気メッキ、無電解メッキ、溶融メッキなど)、塗装、コーティング、印刷などの樹脂成形品の表層上に新たな層を形成させるものであり、通常のポリカーボネート樹脂に用いられる方法が適用できる。表面処理としては、具体的には、ハードコート、撥水・撥油コート、紫外線吸収コート、赤外線吸収コート、並びにメタライジング(蒸着など)などの各種の表面処理が例示される。」
・・・
【0138】
(1)粘度平均分子量(Mv)
次式にて算出される比粘度(ηSP)を20℃で塩化メチレン100mlに共重合樹脂組成物0.7gを溶解した溶液からオストワルド粘度計を用いて求め、
比粘度(ηSP)=(t-t0)/t0
[t0は塩化メチレンの落下秒数、tは試料溶液の落下秒数]
求められた比粘度(ηSP)から次の数式により粘度平均分子量(Mv)を算出する。
ηSP/c=[η]+0.45×[η]2c
(但し[η]は極限粘度)
[η]=1.23×10-4 Mv0.83
c=0.7
【0139】
(2)ポリジオルガノシロキサン成分含有量
日本電子株式会社製JNM-AL400を用い、共重合樹脂組成物の1H-NMRスペクトルを測定し、二価フェノール(I)由来のピークの積分比とヒドロキシアリール末端ポリジオルガノシロキサン(II)由来のピークの積分比を比較することにより算出した。
【0140】
(3)全光線透過率およびヘイズ
共重合樹脂、及びポリカーボネート樹脂をベント式二軸押出機(テクノベル(株)製,KZW15-25MG)によって、温度260℃で紫外線吸収剤及びリン系安定剤を添加混錬し、ペレット化した。得られたペレットを120℃で5時間熱風乾燥した後、射出成形機(日本製鋼所(株)製,JSW J-75EIII)を用いて、成形温度280℃、金型温度80℃、成形サイクル50秒にて幅50mm、長さ90mm、厚みがゲート側から3.0mm(長さ20mm)、2.0mm(長さ45mm)、1.0mm(長さ25mm)であり、算術平均粗さ(Ra)が0.03μmである3段型プレートを成形した。
かかる3段型プレートの厚み2.0mm部における全光線透過率とヘイズを日本電飾工業(株)製 Haze Meter NDH 2000を用い、ASTM D1003に準拠し測定した。
・・・
【0145】
(8)耐熱老化性試験
(3)で作成したペレットを120℃で5時間熱風乾燥した後、射出成形機(日本製鋼所(株)製、JSW J-75EIII)を用いて、成形温度280℃、金型温度80℃、成形サイクル50秒にて長さ80mm、幅10mm、厚み4mmの試験片を成形した。かかる試験片にISO179に準拠してノッチを施し、ノッチ面を露光面としてサンシャイン・ウェザー・メーター(スガ試験機(株)製:WEL-SUN-HCH-B)を使用しブラックパネル温度63℃、湿度50%、18分間水噴霧と102分間噴霧無しの計120分サイクルで360時間処理した後、ISO179に準拠してノッチ付シャルピー衝撃強度を測定した。試験片10本で測定を行い、その平均値を表1に記載した。」
(オ-1)「【0146】
(9)耐水垢付着性試験
(7)で処理した3段型プレート表面に付着した水垢の程度を目視にて判定した。
○:水垢付着なし、もしくは軽度
×:水垢付着が激しい
(A)芳香族ポリカーボネート樹脂
(B)ポリカーボネート-ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂
【0147】
製造例1(B-1)
(工程(i))
温度計、撹拌機、還流冷却器付き反応器にイオン交換水21592部、48.5%水酸化ナトリウム水溶液3675部を入れ、式[4]で表される二価フェノール(I)として2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)3897部(17.07モル)、およびハイドロサルファイト7.6部を溶解した後、塩化メチレン14565部(二価フェノール(I)1モルに対して10モル)を加え、撹拌下22~30℃でホスゲン1900部を60分要して吹き込んだ。
【0148】
(工程(ii))
48.5%水酸化ナトリウム水溶液1131部、p-tert-ブチルフェノール108部を塩化メチレン800部に溶解した溶液を加え、攪拌しながら式[5]で表される二価フェノール(II)として下記構造のポリジオルガノシロキサン化合物(信越化学工業(株)製 X-22-1821)430部(0.1405モル)を塩化メチレン1600部に溶解した溶液を、二価フェノール(II)が二価フェノール(I)の量1モルあたり0.0004モル/minとなる速度で加えて乳化状態とした後、再度激しく撹拌した。かかる攪拌下、反応液が26℃の状態でトリエチルアミン4.3部を加えて温度26~31℃において1時間撹拌を続けて反応を終了した。(式[7])
【化10】
【0149】
(分離、精製)
反応終了後、有機相を分離し、塩化メチレンで希釈して水洗した後、塩酸酸性にして水洗し、水相の導電率がイオン交換水と殆ど同じになったところで温水を張ったニーダーに投入して、攪拌しながら塩化メチレンを蒸発し、ポリカーボネート-ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂のパウダーを得た。
得られた共重合樹脂の粘度平均分子量、ポリジオルガノシロキサン成分含有量、ならびに共重合樹脂組成物成形品の全光線透過率、ヘイズ、ポリジオルガノシロキサンドメインの平均サイズ、ポリジオルガノシロキサンドメインサイズの規格化分散を測定した。小角エックス線散乱プロファイル(a)、粒径分布(b)を図1に示す。滞留試験によるヘイズの変化(Δヘイズ)を測定した。測定結果を表1に示す。
【0150】
製造例2(B-2)
式[5]で表される二価フェノール(II)(信越化学工業(株)製 X-22-1821)215部用いた以外は、実施例1と同様にした。工程(i)における平均オリゴマー重合度は1.88であった。測定結果を表1に併記する。
【0151】
製造例3(B-3)
式[5]で表される二価フェノール(II)(信越化学工業(株)製 X-22-1822E)215部用いた以外は、実施例1と同様にした。(式[8])
測定結果を表1に併記する。
【0152】
【化11】
【0153】
製造例4(B-4)
式[5]で表される二価フェノール(II)として、下記構造のポリジオルガノシロキサン化合物(信越化学工業(株)製 X-22-1875)を215部用いた以外は、実施例1と同様にした。(式[9])
測定結果を表1に併記する。
【0154】
【化12】
」
(カ-1)「【0155】
実施例1~5、比較例1~8(樹脂組成物)
表1記載の各成分を各配合量で配合し、ブレンダーにて混合した後、ベント式二軸押出機(テクノベル(株)製,KZW15-25MG)によって溶融混錬してペレットを得た。押出条件は、吐出量2.5kg/h、スクリュー回転数250rpmであり、押出温度は第1供給口からダイス部分まで260℃とした。得られたペレットを使用して評価した
結果を表1に示す。
【0156】
表1中に記号で表記した各成分の内容は以下の通りである。
(A成分)
(B成分)
(C成分)
(C)ベンゾトリアゾール型紫外線吸収剤
(D成分)リン系安定剤
【0157】
【表1】
」
(イ)甲1に記載された発明
甲1の摘記(オ-1)には、製造例1(B-1)で使用する原料の二価フェノール(II)として、
が記載されている。
また、甲1の摘記(オ-1)には、ポリカーボネート-ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂の製造例として、製造例1(B-1)及び製造例2(B-2)が記載されている。
したがって、摘記(オ-1)から、甲1には、製造例(B-1)、製造例2(B-2)、製造例1(B-1)で製造されたPC-PS共重合体(B-1)、製造例2(B-2)で製造されたPC-PS共重合体(B-2)について、次の発明が記載されているといえる。
(ア)ポリジオルガノシロキサン
「下記構造のポリジオルガノシロキサン化合物(信越化学工業(株)製 X-22-1821)」(以下「甲1発明1」、「X-22-1821」という。)
(イ)PC-PS共重合体の製造方法
a 「以下の工程のポリカーボネート-ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂の製造方法であって、(工程(i))温度計、撹拌機、還流冷却器付き反応器にイオン交換水21592部、48.5%水酸化ナトリウム水溶液3675部を入れ、式[4]で表される二価フェノール(I)として2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)3897部(17.07モル)、およびハイドロサルファイト7.6部を溶解した後、塩化メチレン14565部(二価フェノール(I)1モルに対して10モル)を加え、撹拌下22~30℃でホスゲン1900部を60分要して吹き込んだ。(工程(ii))48.5%水酸化ナトリウム水溶液1131部、p-tert-ブチルフェノール108部を塩化メチレン800部に溶解した溶液を加え、攪拌しながら式[5]で表される二価フェノール(II)として下記構造のポリジオルガノシロキサン化合物(信越化学工業(株)製 X-22-1821)430部(0.1405モル)を塩化メチレン1600部に溶解した溶液を、二価フェノール(II)が二価フェノール(I)の量1モルあたり0.0004モル/minとなる速度で加えて乳化状態とした後、再度激しく撹拌した。かかる攪拌下、反応液が26℃の状態でトリエチルアミン4.3部を加えて温度26~31℃において1時間撹拌を続けて反応を終了した。(式[7])【化10】(分離、精製)反応終了後、有機相を分離し、塩化メチレンで希釈して水洗した後、塩酸酸性にして水洗し、水相の導電率がイオン交換水と殆ど同じになったところで温水を張ったニーダーに投入して、攪拌しながら塩化メチレンを蒸発し、ポリカーボネート-ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂のパウダーを得る、ポリカーボネート-ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂の粘度平均分子量が20,100、ポリジオルガノシロキサン重合度が37、ポリジオルガノシロキサン含有量が8.4重量%である、製造方法。」(以下、「甲1発明2」という。)
b 製造例2は製造例1(原文では実施例1と記載されているが、「製造例1」の誤記であることは明らかである。)を引用して記載されているが、書き下すと以下の発明が記載されていると認められる。
「以下の工程のポリカーボネート-ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂の製造方法であって、(工程(i))温度計、撹拌機、還流冷却器付き反応器にイオン交換水21592部、48.5%水酸化ナトリウム水溶液3675部を入れ、式[4]で表される二価フェノール(I)として2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)3897部(17.07モル)、およびハイドロサルファイト7.6部を溶解した後、塩化メチレン14565部(二価フェノール(I)1モルに対して10モル)を加え、撹拌下22~30℃でホスゲン1900部を60分要して吹き込んだ。(工程(ii))48.5%水酸化ナトリウム水溶液1131部、p-tert-ブチルフェノール108部を塩化メチレン800部に溶解した溶液を加え、攪拌しながら式[5]で表される二価フェノール(II)として下記構造のポリジオルガノシロキサン化合物(信越化学工業(株)製 X-22-1821)215部を塩化メチレン1600部に溶解した溶液を、二価フェノール(II)が二価フェノール(I)の量1モルあたり0.0004モル/minとなる速度で加えて乳化状態とした後、再度激しく撹拌した。かかる攪拌下、反応液が26℃の状態でトリエチルアミン4.3部を加えて温度26~31℃において1時間撹拌を続けて反応を終了した。(式[7])【化10】(分離、精製)反応終了後、有機相を分離し、塩化メチレンで希釈して水洗した後、塩酸酸性にして水洗し、水相の導電率がイオン交換水と殆ど同じになったところで温水を張ったニーダーに投入して、攪拌しながら塩化メチレンを蒸発し、ポリカーボネート-ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂のパウダーを得る、ポリカーボネート-ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂の粘度平均分子量が19,400、ポリジオルガノシロキサン重合度が37、ポリジオルガノシロキサン含有量が4.2重量%である、製造方法。」(以下、「甲1発明3」という。)
イ 甲2に記載された事項
(ア-2)
「・さらに追試を行うことにより、上記差異を確認しました。拒絶理由においてご指摘を受けた引例3の製造例1で用いられているポリオルガノシロキサン原料:X-22-1821についてポリスチレンを換算基準としたゲル浸透クロマトグラフ法による測定を行い、本願と同様の縦軸・横軸を有する微分分子量分布曲線を以下のように得ました。なお、再現性確認のため、2回の実験を行っています。【図1】・グラフからわかる通り、横軸log(M)が2.5≦log(M)≦3.1の範囲の立ち上がりがブロードになっており、「横軸が分子量Mの対数値log(M)であり、縦軸が濃度分率wを分子量の対数値log(M)で微分したdw/dlog(M)である微分分子量分布曲線において、2.5≦log(M)≦3.1の範囲でdw/dlog(M)値を積分した値」が表に記載の通り14.9%となり、本願クレーム範囲外となることを確認いたしました。」(第3頁1行~下から2行)
ウ 対比・判断
(ア)本件訂正発明12について
a 対比
本件訂正発明12と甲1発明1とを対比する。
甲1発明1の「下記構造のポリジオルガノシロキサン化合物(信越化学工業(株)製 X-22-1821)
」は、
本件訂正発明12の「下記一般式(ii)で表されるポリオルガノシロキサン
」 において、
「m」が「0」、「n」(平均繰り返し数)が「38」、「R3~R6」がメチル基であることから「炭素数1のアルキル基」、「Y」は「脂肪族を含む有機残基であって、SiとZに結合している有機残基」、「Z」は「-R7OH」であって「R7は置換されていてもよいアリーレン基」であるものに相当する。
そうすると、本件訂正発明12と甲1発明1は、
「下記一般式(ii)または(iii)で表されるポリオルガノシロキサン。【化3】[式(ii)及び(iii)中、R3~R6はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基又は炭素数6~12のアリール基を示す。YおよびY’はそれぞれ独立に、単結合、又は-C(=O)-、脂肪族若しくは芳香族を含む有機残基であって、SiとO又はSiとZに結合している有機残基を示す。nは、平均繰り返し数である。mは0又は1を示し、Zはそれぞれ独立に、ハロゲン、-R7OH、-R7COOH、-R7NH2、-R7NHR8、-COOH又は-SHを示し、R7は直鎖、分岐鎖若しくは環状アルキレン基、アリール置換アルキレン基、環上にアルコキシ基を有してもよいアリール置換アルキレン基、置換されていてもよいアリーレン基又はアリーレンアルキル置換アリール基を示し、R8はアルキル基、アルケニル基、アリール基又はアラルキル基を示し、Z’はそれぞれ独立に、-R7O-、-R7COO-、-R7NH-、-COO-又は-S-を示し、R7は直鎖、分岐鎖若しくは環状アルキレン基、アリール置換アルキレン基、環上にアルコキシ基を有してもよいアリール置換アルキレン基、置換されていてもよいアリーレン基又はアリーレンアルキル置換アリール基を示す。βは、ジイソシアネート化合物由来の2価の基又はジカルボン酸由来の2価の基を示す。]」の点で一致する。
そして、本件訂正発明12と甲1発明1は、以下の点で相違する。
<相違点1>
本件訂正発明12では、「ポリオルガノシロキサンのポリスチレンを換算基準としたゲル浸透クロマトグラフ法による測定から得られる、横軸が分子量Mの対数値log(M)であり、縦軸が濃度分率wを分子量の対数値log(M)で微分したdw/dlog(M)である微分分子量分布曲線において、
(1)dw/dlog(M)の値が、3.4≦log(M)≦4.0の範囲で最大となり、
(2)前記微分分子量分布曲線において、4.0≦log(M)≦4.5の範囲でdw/dlog(M)値を積分した値が、log(M)の全範囲でdw/dlog(M)値を積分した値に対して6%以上40%以下(但し、8.5±0.3%を除く)である。」との特定があるのに対し、甲1発明1ではこの特定がない点。
b 判断
上記相違点1について検討する。
甲2は、特願2014-73411号の審査において、本件の特許権者である出光興産株式会社が平成30年3月5日に提出した意見書である。甲2には、本件特許権者である出光興産株式会社が、甲1発明1(甲2における「引例3の製造例1」に対応する。)のポリジオルガノシロキサンである「X-22-1821」の分子量分布曲線について、ポリスチレン換算基準としたゲル浸透クロマトグラフ法による測定を行い、dw/dlogMを縦軸、logMを横軸とする微分分子量曲線【図1】を得て、次のように示している。(摘記(ア-2))
【図1】
そうすると、上記【図1】の「X-22-1821」の「dw/dlog(M)の最大となるdlog(M)」は、表中の記載から「3.6」であると認められるから、「X-22-1821」は、本件訂正発明12の「3.4≦log(M)≦4.0の範囲で最大」の要件を満たす。
これに対して、特許異議申立書には、【図1】に示された、「X-22-1821」の微分分子量分布曲線に基づき、次の「<解析手法>」により4.0≦log(M)≦4.5の範囲でdw/dlog(M)値を積分した値が、log(M)の全範囲でdw/dlog(M)値を積分した値に対する割合(%)を求めたところ、「8.5%」となることが記載されており、この解析手法は適切であるから、「X-22-1821」は、「(2)前記微分分子量分布曲線において、4.0≦log(M)≦4.5の範囲でdw/dlog(M)値を積分した値」が、「log(M)の全範囲でdw/dlog(M)値を積分した値に対して」、「8.5%」であると認められる。
「<解析手法>1)上記【図1】の微分分子量分布曲線をA4用紙に拡大(300%)して印刷した。2)はさみを用いて、上記の印刷物から、微分分子量分布曲線の全範囲のスペクトル部分(「log(M)の全範囲でdw/dlog(M)値を積分した値」に対応)を切り出し、その紙片の重量を電子天秤を用いて計量した。3)上記2)で用いた紙片から、微分分子量分布曲線の4.0≦log(M)≦4.5の範囲スペクトル部分(「4.0≦log(M)≦4.5の範囲でdw/dlog(M)値を積分した値」に対応)を切り出し、その紙片の重量を電子天秤を用いて計量した。4)上記2)の紙片の重量は「0.1872g」であり、上記3)の紙片の重量は「0.0160g」であることから、X-22-1821の微分分子量分布曲線において、4.0≦log(M)≦4.5の範囲でdw/dlog(M)値を積分した値は、log(M)の全範囲でdw/dlog(M)値を積分した値に対して「8.5%」[0.0160(g)÷0.1872(g)×100]であるといえる。」
そうすると、甲1発明1の「ポリオルガノシロキサンのポリスチレンを換算基準としたゲル浸透クロマトグラフ法による測定から得られる、横軸が分子量Mの対数値log(M)であり、縦軸が濃度分率wを分子量の対数値log(M)で微分したdw/dlog(M)である微分分子量分布曲線」における「(2)前記微分分子量分布曲線において、4.0≦log(M)≦4.5の範囲でdw/dlog(M)値を積分した値」は、「log(M)の全範囲でdw/dlog(M)値を積分した値に対して」、「8.5%」であるから、本件訂正発明12における「6%以上40%以下(但し、8.5±0.3%を除く)」とその値の範囲が重複するものとはいえない。
以上によれば、相違点1は実質的な相違点である。
したがって、本件訂正発明12は、甲1に記載された発明であるとはいえない。
c 小括
よって、本件訂正発明12は、甲1に記載された発明であるとはいえない。
(イ)本件訂正発明13について
本件訂正発明13は、本件訂正発明12を直接引用するものであるが、上記(ア)で述べたとおり、本件訂正発明12が甲1に記載された発明であるとはいえない以上、本件訂正発明13においても同様に、甲1に記載された発明であるとはいえない。
(ウ)本件訂正発明9について
a 甲1発明2との対比
本件訂正発明9は「請求項1~7のいずれかに記載のポリカーボネート-ポリシロキサン共重合体の製造方法」であるから、これらをふまえて本件訂正発明1を引用する本件訂正発明9と甲1発明2を対比する。
甲1発明2は、ポリカーボネート-ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂の製造方法であって、製造例1(B-1)の工程(i)にて、「式[4]で表される二価フェノール(I)」である「2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)」とホスゲンを用いて反応させており、該反応は、甲1発明2の摘記イ(【0075】)の「水に不溶性の有機溶媒とアルカリ水溶液との混合液中において、二価フェノール(I)と、ホスゲンや二価フェノール(I)のクロロホルメート等のクロロホルメート形成性化合物との反応により、二価フェノール(I)のカーボネートオリゴマーであって末端クロロホーメート基を有するオリゴマーを含有する溶液を調製する」との記載からみて、「2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)」単位に由来する繰り返し単位を有する末端クロロホーメート基含有ポリカーボネートオリゴマーが得られたものと解される。その後、工程(ii)において、工程(i)の溶液に「下記構造のポリジオルガノシロキサン化合物(信越化学工業(株)製 X-22-1821)
」
を反応させ、ポリカーボネート-ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂を得ていると解される。
そうすると、甲1発明2の工程(i)にて得られた「2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)」単位に由来する繰り返し単位を有する末端クロロホーメート基含有ポリカーボネートオリゴマーは、ビスフェノールAに由来する繰り返し単位、即ちブロックを有するものであるから、該ビスフェノールAに由来するブロックは、本件訂正発明9が引用する本件訂正発明1の「下記一般式(I)で表される繰り返し単位からなるポリカーボネートブロック(A)
」において、「X」が「炭素数3のアルキレン基」、「a」及び「b」が共に「0」であり、「R1」及び「R2」が存在しない単位を有するブロックに相当する。
そして、甲1発明2の「式[5]で表される二価フェノール(II)」である「下記構造のポリジオルガノシロキサン化合物(信越化学工業(株)製 X-22-1821)」は、
の構造式を有するものであって、該X-22-1821の()pで表される繰り返し単位、即ちブロックは、本件訂正発明9の「下記一般式(II)で表される繰り返し単位を含むポリオルガノシロキサンブロック(B)
」のR3、R4がそれぞれ「炭素数1のアルキル基」を有する原料であって、かつ、上記ア(ア)の対比と同様に、「下記一般式(ii)で表されるポリオルガノシロキサン」 において、「m」が「0」、「n」(平均繰り返し数)が「38」、「R3~R6」がメチル基であることから「炭素数1のアルキル基」、「Y」は「脂肪族を含む有機残基であって、SiとZに結合している有機残基」、「Z」は「-R7OH」であって「R7は置換されていてもよいアリーレン基」に相当する。
その他の点については、上記(ア)で本件訂正発明12と甲1発明1との対比について述べたとおりである。
そうすると、本件訂正発明9と甲1発明2は、
「請求項1~7のいずれかに記載のポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体の製造方法であって、下記一般式(ii)または(iii)【化2】[式(ii)及び(iii)中、R3~R6はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基又は炭素数6~12のアリール基を示す。YおよびY’はそれぞれ独立に、単結合、又は-C(=O)-、脂肪族若しくは芳香族を含む有機残基であって、SiとO又はSiとZに結合している有機残基を示す。nは、平均繰り返し数である。mは0又は1を示し、Zはそれぞれ独立に、ハロゲン、-R7OH、-R7COOH、-R7NH2、-R7NHR8、-COOH又は-SHを示し、R7は直鎖、分岐鎖若しくは環状アルキレン基、アリール置換アルキレン基、環上にアルコキシ基を有してもよいアリール置換アルキレン基、置換されていてもよいアリーレン基又はアリーレンアルキル置換アリール基を示し、R8はアルキル基、アルケニル基、アリール基又はアラルキル基を示し、Z’はそれぞれ独立に、-R7O-、-R7COO-、-R7NH-、-COO-又は-S-を示し、R7は直鎖、分岐鎖若しくは環状アルキレン基、アリール置換アルキレン基、環上にアルコキシ基を有してもよいアリール置換アルキレン基、置換されていてもよいアリーレン基又はアリーレンアルキル置換アリール基を示す。βは、ジイソシアネート化合物由来の2価の基又はジカルボン酸由来の2価の基を示す。]表されるポリオルガノシロキサンを原料として用いる、ポリカーボネート-ポリシロキサン共重合体の製造方法。」で一致する。
そして、本件訂正発明9と甲1発明2は、以下の点で相違する。
<相違点1’>
本件訂正発明9では、「ポリオルガノシロキサンのポリスチレンを換算基準としたゲル浸透クロマトグラフ法による測定から得られる、横軸が分子量Mの対数値log(M)であり、縦軸が濃度分率wを分子量の対数値log(M)で微分したdw/dlog(M)である微分分子量分布曲線において、
(1)dw/dlog(M)の値が、3.4≦log(M)≦4.0の範囲で最大となり、
(2)前記微分分子量分布曲線において、4.0≦log(M)≦4.5の範囲でdw/dlog(M)値を積分した値が、log(M)の全範囲でdw/dlog(M)値を積分した値に対して6%以上40%以下(但し、8.5±0.3%を除く)である。」との特定があるのに対し、甲1発明2ではこの特定がない点。
b 甲1発明2の判断
上記相違点1’について検討する。
相違点1’については、上記(ア)aの相違点1と同じであって、その判断についても同様である。
以上によれば、相違点1’は実質的な相違点である。
したがって、本件訂正発明9は、甲1に記載された発明であるとはいえない。
c 甲1発明3との対比と判断
甲1発明3は、甲1発明2と対比すると、式[5]で表される二価フェノール(II)(信越化学工業(株)製 X-22-1821)の使用量を430部から215部とした発明であるから、本件訂正発明9と甲1発明3とを対比・判断すると、上記a、bで対比・判断した甲1発明2と同様である。
したがって、本件訂正発明9は、甲1に記載された発明であるとはいえない。
d 小括
よって、本件訂正発明9は、甲1に記載された発明であるとはいえない。
(エ)本件訂正発明10、11、15について
本件訂正発明10、11は、本件訂正発明9を直接または間接的に引用するものであるが、上記(ウ)で述べたとおり、本件訂正発明9が甲1に記載された発明であるとはいえない以上、本件訂正発明10、11においても同様に、甲1に記載された発明であるとはいえない。
そして、本件訂正発明15は、本件訂正発明1を引用する本件訂正発明12と同様の特定事項に係る発明である。してみると、本件訂正発明15は、本件訂正発明12と同様に、甲1に記載された発明であるとはいえない。
したがって、本件訂正発明10、11、15は、甲1に記載された発明であるとはいえない。
(オ)本件訂正発明14について
a 甲1発明2との対比
本件訂正発明14は、「下記一般式(I)で表される繰り返し単位からなるポリカーボネートブロック(A)及び下記一般式(II)で表される繰り返し単位を含むポリオルガノシロキサンブロック(B)を含むポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体であって、前記共重合体の原料として下記一般式(ii)または(iii)で表されるポリオルガノシロキサンを用い、ここで該原料ポリオルガノシロキサンは、下記(1)及び(2)を満たすものであるポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体 。
」であり、原料ポリオルガノシロキサンは、「下記(1)及び(2)(省略)を満たすものであるポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体」と特定されている。
一方、甲1発明2は、ポリカーボネート-ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂の製造方法であって、製造例1(B-1)の工程(i)にて、「式[4]で表される二価フェノール(I)」である「2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)」とホスゲンを用いて反応させており、該反応は、甲1発明2の摘記イ(【0075】)の「水に不溶性の有機溶媒とアルカリ水溶液との混合液中において、二価フェノール(I)と、ホスゲンや二価フェノール(I)のクロロホルメート等のクロロホルメート形成性化合物との反応により、二価フェノール(I)のカーボネートオリゴマーであって末端クロロホーメート基を有するオリゴマーを含有する溶液を調製する」との記載からみて、「2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)」単位に由来する繰り返し単位を有する末端クロロホーメート基含有ポリカーボネートオリゴマーが得られたものと解される。その後、工程(ii)において、工程(i)の溶液に「下記構造のポリジオルガノシロキサン化合物(信越化学工業(株)製 X-22-1821)
」
を加えて反応させ、ポリカーボネート-ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂を得るものである。
以下では、甲1発明2の工程(i)にて得られたポリカーボネート-ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂の化学構造を本件訂正発明14と対比しながら検討する。
甲1発明2の工程(i)にて得られた「2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)」単位に由来する繰り返し単位を有する末端クロロホーメート基含有ポリカーボネートオリゴマーは、ビスフェノールAに由来する繰り返し単位、即ちブロックを有するものであるから、該ビスフェノールAに由来するブロックは、本件訂正発明14が引用する本件訂正発明1の「下記一般式(I)で表される繰り返し単位からなるポリカーボネートブロック(A)
」において、「X」が「炭素数3のアルキレン基」、「a」及び「b」が共に「0」であり、「R1」及び「R2」が存在しない単位を有するブロックに相当する。
そして、甲1発明2の「式[5]で表される二価フェノール(II)」である「下記構造のポリジオルガノシロキサン化合物(信越化学工業(株)製 X-22-1821)」は、
の構造式を有するものであって、該X-22-1821の()pで表される繰り返し単位、即ちブロックは、本件訂正発明14の「下記一般式(II)で表される繰り返し単位を含むポリオルガノシロキサンブロック(B)
」の「R3」、「R4」がそれぞれ「炭素数1のアルキル基」を有する原料であって、かつ、上記ア(ア)の対比と同様に、「下記一般式(ii)で表されるポリオルガノシロキサン」 において、「m」が「0」、「n」(平均繰り返し数)が「38」、「R3~R6」がメチル基であることから「炭素数1のアルキル基」、「Y」は「脂肪族を含む有機残基であって、SiとZに結合している有機残基」、「Z」は「-R7OH」であって「R7は置換されていてもよいアリーレン基」に相当する。
その他の点については、上記(ア)で本件訂正発明12と甲1発明1との対比について述べたとおりである。
そうすると、本件訂正発明14と甲1発明2は、
「下記一般式(I)で表される繰り返し単位からなるポリカーボネートブロック(A)及び下記一般式(II)で表される繰り返し単位を含むポリオルガノシロキサンブロック(B)を含むポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体であって、前記共重合体の原料として下記一般式(ii)または(iii)で表されるポリオルガノシロキサンを用い、ここで該原料ポリオルガノシロキサンは、下記(1)及び(2)を満たすものであるポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体:【化4】[式中、R1及びR2はそれぞれ独立に、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基又は炭素数1~6のアルコキシ基を示す。Xは、単結合、炭素数1~8のアルキレン基、炭素数2~8のアルキリデン基、炭素数5~15のシクロアルキレン基、炭素数5~15のシクロアルキリデン基、フルオレンジイル基、炭素数7~15のアリールアルキレン基、炭素数7~15のアリールアルキリデン基、-S-、-SO-、-SO2-、-O-又は-CO-を示す。R3及びR4はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基又は炭素数6~12のアリール基を示す。a及びbは、それぞれ独立に0~4の整数を示す。]【化5】[式(ii)及び(iii)中、R3~R6はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基又は炭素数6~12のアリール基を示す。YおよびY’はそれぞれ独立に、単結合、又は-C(=O)-、脂肪族若しくは芳香族を含む有機残基であって、SiとO又はSiとZに結合している有機残基を示す。nは、平均繰り返し数である。mは0又は1を示し、Zはそれぞれ独立に、ハロゲン、-R7OH、-R7COOH、-R7NH2、-R7NHR8、-COOH又は-SHを示し、R7は直鎖、分岐鎖若しくは環状アルキレン基、アリール置換アルキレン基、環上にアルコキシ基を有してもよいアリール置換アルキレン基、置換されていてもよいアリーレン基又はアリーレンアルキル置換アリール基を示し、R8はアルキル基、アルケニル基、アリール基又はアラルキル基を示し、Z’はそれぞれ独立に、-R7O-、-R7COO-、-R7NH-、-COO-又は-S-を示し、R7は直鎖、分岐鎖若しくは環状アルキレン基、アリール置換アルキレン基、環上にアルコキシ基を有してもよいアリール置換アルキレン基、置換されていてもよいアリーレン基又はアリーレンアルキル置換アリール基を示す。βは、ジイソシアネート化合物由来の2価の基又はジカルボン酸由来の2価の基を示す。]」で一致する。
そして、本件訂正発明14と甲1発明2は、以下の点で相違する。
<相違点1’’>
本件訂正発明14では、「ポリオルガノシロキサンのポリスチレンを換算基準としたゲル浸透クロマトグラフ法による測定から得られる、横軸が分子量Mの対数値log(M)であり、縦軸が濃度分率wを分子量の対数値log(M)で微分したdw/dlog(M)である微分分子量分布曲線において、
(1)dw/dlog(M)の値が、3.4≦log(M)≦4.0の範囲で最大となり、
(2)前記微分分子量分布曲線において、4.0≦log(M)≦4.5の範囲でdw/dlog(M)値を積分した値が、log(M)の全範囲でdw/dlog(M)値を積分した値に対して6%以上40%以下(但し、8.5±0.3%を除く)である。」との特定があるのに対し、甲1発明2ではこの特定がない点。
<相違点2>
本件訂正発明14は「ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体」の発明であるのに対し、 甲1発明2は「ポリカーボネート-ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂の製造方法」である点。
b 甲1発明2の判断
上記相違点1’’について検討する。
相違点1’’については、上記(ア)aの相違点1と同じである。
以上によれば、相違点1’’は実質的な相違点である。
したがって、相違点2について検討するまでもなく、本件訂正発明14は、甲1に記載された発明であるとはいえない。
c 甲1発明3との対比と判断
甲1発明3は、甲1発明2と対比すると、式[5]で表される二価フェノール(II)(信越化学工業(株)製 X-22-1821)の使用量を430部から215部とした発明であるから、本件訂正発明14と甲1発明3とを対比・判断すると、上記a、bで対比・判断した甲1発明2と同様であり、本件訂正発明14は、甲1に記載された発明であるとはいえない。
d 小括
よって、本件訂正発明14は、甲1に記載された発明であるとはいえない。
(カ)本件訂正発明1について
a 甲1発明2との対比
本件訂正発明1は、「下記一般式(I)で表される繰り返し単位からなるポリカーボネートブロック(A)及び下記一般式(II)で表される繰り返し単位を含むポリオルガノシロキサンブロック(B)を含むポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体であって、前記ポリオルガノシロキサンブロック(B)は、(1)、(2)(省略)を満たすポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体。
」である。
一方、甲1発明2は、ポリカーボネート-ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂の製造方法であって、製造例1(B-1)の工程(i)にて、「式[4]で表される二価フェノール(I)」である「2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)」とホスゲンを用いて反応させており、該反応は、甲1発明2の摘記イ(【0075】)の「水に不溶性の有機溶媒とアルカリ水溶液との混合液中において、二価フェノール(I)と、ホスゲンや二価フェノール(I)のクロロホルメート等のクロロホルメート形成性化合物との反応により、二価フェノール(I)のカーボネートオリゴマーであって末端クロロホーメート基を有するオリゴマーを含有する溶液を調製する」との記載からみて、「2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)」単位に由来する繰り返し単位を有する末端クロロホーメート基含有ポリカーボネートオリゴマーが得られたものと解される。その後、工程(ii)において、工程(i)の溶液に「下記構造のポリジオルガノシロキサン化合物(信越化学工業(株)製 X-22-1821)
」
を反応させ、ポリカーボネート-ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂を得るものである。
以下では、甲1発明2で得られたポリカーボネート-ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂の化学構造を本件訂正発明1と対比しながら検討する。
甲1発明2の工程(i)にて得られた「2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)」単位に由来する繰り返し単位を有する末端クロロホーメート基含有ポリカーボネートオリゴマーは、ビスフェノールAに由来する繰り返し単位、即ちブロックを有するものであるから、該ビスフェノールAに由来するブロックは、本件訂正発明1の「下記一般式(I)で表される繰り返し単位からなるポリカーボネートブロック(A)
」において、「X」が「炭素数3のアルキレン基」、「a」及び「b」が共に「0」であり、「R1」及び「R2」が存在しない単位を有するブロックに相当する。
そして、甲1発明2の「式[5]で表される二価フェノール(II)」である「下記構造のポリジオルガノシロキサン化合物(信越化学工業(株)製 X-22-1821)」は、
の構造式を有するものであって、該X-22-1821の()pで表される繰り返し単位、即ちブロックは、本件訂正発明1の「下記一般式(II)で表される繰り返し単位を含むポリオルガノシロキサンブロック(B)
」の「R3」、「R4 」がそれぞれ「炭素数1のアルキル基」を有する原料であって、かつ、上記(ア)aの対比と同様に、「下記一般式(ii)で表されるポリオルガノシロキサン」 において、「m」が「0」、「n」(平均繰り返し数)が「38」、「R3~R6」がメチル基であることから「炭素数1のアルキル基」、「Y」は「脂肪族を含む有機残基であって、SiとZに結合している有機残基」、「Z」は「-R7OH」であって「R7は置換されていてもよいアリーレン基」に相当する。
その他の点については、上記(ア)で本件訂正発明12と甲1発明1との対比について述べたとおりである。
そうすると、本件訂正発明1と甲1発明2は、
「下記一般式(I)で表される繰り返し単位からなるポリカーボネートブロック(A)及び下記一般式(II)で表される繰り返し単位を含むポリオルガノシロキサンブロック(B)を含むポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体であって、【化4】[式中、R1及びR2はそれぞれ独立に、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基又は炭素数1~6のアルコキシ基を示す。Xは、単結合、炭素数1~8のアルキレン基、炭素数2~8のアルキリデン基、炭素数5~15のシクロアルキレン基、炭素数5~15のシクロアルキリデン基、フルオレンジイル基、炭素数7~15のアリールアルキレン基、炭素数7~15のアリールアルキリデン基、-S-、-SO-、-SO2-、-O-又は-CO-を示す。R3及びR4はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基又は炭素数6~12のアリール基を示す。a及びbは、それぞれ独立に0~4の整数を示す。]【化5】[式(ii)及び(iii)中、R3~R6はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基又は炭素数6~12のアリール基を示す。YおよびY’はそれぞれ独立に、単結合、又は-C(=O)-、脂肪族若しくは芳香族を含む有機残基であって、SiとO又はSiとZに結合している有機残基を示す。nは、平均繰り返し数である。mは0又は1を示し、Zはそれぞれ独立に、ハロゲン、-R7OH、-R7COOH、-R7NH2、-R7NHR8、-COOH又は-SHを示し、R7は直鎖、分岐鎖若しくは環状アルキレン基、アリール置換アルキレン基、環上にアルコキシ基を有してもよいアリール置換アルキレン基、置換されていてもよいアリーレン基又はアリーレンアルキル置換アリール基を示し、R8はアルキル基、アルケニル基、アリール基又はアラルキル基を示し、Z’はそれぞれ独立に、-R7O-、-R7COO-、-R7NH-、-COO-又は-S-を示し、R7は直鎖、分岐鎖若しくは環状アルキレン基、アリール置換アルキレン基、環上にアルコキシ基を有してもよいアリール置換アルキレン基、置換されていてもよいアリーレン基又はアリーレンアルキル置換アリール基を示す。βは、ジイソシアネート化合物由来の2価の基又はジカルボン酸由来の2価の基を示す。]」で一致する。
そして、本件訂正発明1と甲1発明2は、以下の点で相違する。
<相違点1’’’>
本件訂正発明1では、「ポリオルガノシロキサンブロックのポリスチレンを換算基準としたゲル浸透クロマトグラフ法による測定から得られる、横軸が分子量Mの対数値log(M)であり、縦軸が濃度分率wを分子量の対数値log(M)で微分したdw/dlog(M)である微分分子量分布曲線において、
(1)dw/dlog(M)の値が、3.4≦log(M)≦4.0の範囲で最大となり、
(2)前記微分分子量分布曲線において、4.0≦log(M)≦4.5の範囲でdw/dlog(M)値を積分した値が、log(M)の全範囲でdw/dlog(M)値を積分した値に対して6%以上40%以下(但し、8.5±0.3%を除く)である。」との特定があるのに対し、甲1発明2ではこの特定がない点。
<相違点2’>
本件訂正発明1は「ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体」の発明であるのに対し、 甲1発明2は「ポリカーボネート-ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂の製造方法」である点。
b 甲1発明2の判断
上記相違点1’’’について検討する。
相違点1’’’については、甲1発明2の「ポリオルガノシロキサンブロック」の性質は、原料である「ポリオルガノシロキサン」とほぼ同等と解されることからすると、上記(ア)aの相違点1と同じであって、その判断についても同様である。
以上によれば、相違点1’’’は実質的な相違点である。
したがって、相違点2’について検討するまでもなく、本件訂正発明1は、甲1に記載された発明であるとはいえない。
c 甲1発明3との対比と判断
甲1発明3は、甲1発明2と対比すると、式[5]で表される二価フェノール(II)(信越化学工業(株)製 X-22-1821)の使用量を430部から215部とした発明であるから、本件訂正発明1と甲1発明3とを対比・判断すると、上記a、bで対比・判断した甲1発明2と同様であり、本件訂正発明1は、甲1に記載された発明であるとはいえない。
d 小括
よって、本件訂正発明1は、甲1に記載された発明であるとはいえない。
(キ)本件訂正発明2~8、16~18について
本件訂正発明2~8、16~18は、本件訂正発明1を直接または間接的に引用するものであるが、上記(カ)で述べたとおり、本件訂正発明1が甲1に記載された発明であるとはいえない以上、本件訂正発明2~8、16~18においても同様に、甲1に記載された発明であるとはいえない。
(ク)まとめ
よって、取消理由1(新規性)については理由がなく、本件訂正発明1~18に係る特許は、特許法第113号第2号に該当せず、取り消すべきものではない。
2 取消理由で採用しなかった申立理由
(1)申立理由2(進歩性)について
以下、詳述する。なお、事案に鑑み、まず本件訂正発明12、13から審理を行い、次に本件訂正発明9~11、15、14、1~8、16~18の順に審理を行う。
ア 甲1に記載された事項及び記載された発明
(ア)甲1に記載された事項
甲1の記載については、上記第5の1(1)ア(ア)に示したとおりである。
(イ)甲1に記載された発明
甲1に記載された発明については、上記第5の1(1)ア(イ)に示したとおりである。
イ 甲2に記載された事項
甲2の記載については、上記第5の1(1)イに示したとおりである。
ウ 対比・判断
(ア)本件訂正発明12について
a 対比
本件訂正発明12と甲1発明1とを対比する。
一致点及び相違点については、上記第5の1(1)ウ(ア)aで述べたのと同様であり、相違点として相違点1が挙げられる。
b 判断
次に、相違点1の容易想到性について検討する。
甲1には、ポリカーボネート-ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂のポリジオルガノシロキサンブロックが式[3]で表されるものであって、
好ましいポリジオルガノシロキサンブロックとして(2-アリルフェノール)末端ジオルガノシロキサン、もしくは(2-メトキシ4-アリルフェノール)末端ポリジオルガノシロキサンより誘導されたブロックであることが好ましいことが記載されている(【0050】~【0057】)。
甲1の実施例には、ポリカーボネート-ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂の製造例として製造例1(B-1)~製造例4(B-4)が記載されており、該ポリカーボネート-ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂の原料であるポリジオルガノシロキサン化合物として「信越化学工業社(株)製 X-22-1821」(製造例1(B-1)、製造例2(B-2))、「信越化学工業社(株)製 X-22-1822E」(製造例3(B-3))、「信越化学工業社(株)製 X-22-1875」(製造例4(B-4))を用いた例が記載されている。
そして、甲1の実施例のうち、製造例1(B-1)、製造例2(B-2)の「X-22-1821」は、甲1発明1であって、本件訂正発明12の「一般式(ii)(式省略)で表されるシロキサン」に化学構造上は相当することは前に述べたとおり(第5の1(1)ウ)であり、「X-22-1821」の「ポリオルガノシロキサンのポリスチレンを換算基準としたゲル浸透クロマトグラフ法による測定から得られる、横軸が分子量Mの対数値log(M)であり、縦軸が濃度分率wを分子量の対数値log(M)で微分したdw/dlog(M)である微分分子量分布曲線」における「(2)前記微分分子量分布曲線において、4.0≦log(M)≦4.5の範囲でdw/dlog(M)値を積分した値」は、甲2の記載から算出すると「log(M)の全範囲でdw/dlog(M)値を積分した値に対して」「8.5%」(第5の1(1)ウ、甲2)である。
しかしながら、甲1には、ポリカーボネート-ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂を製造する際に用いる原料のポリジオルガノシロキサン化合物として、「ポリオルガノシロキサンのポリスチレンを換算基準としたゲル浸透クロマトグラフ法による測定から得られる、横軸が分子量Mの対数値log(M)であり、縦軸が濃度分率wを分子量の対数値log(M)で微分したdw/dlog(M)である微分分子量分布曲線」における「(2)前記微分分子量分布曲線において、4.0≦log(M)≦4.5の範囲でdw/dlog(M)値を積分した値」が、「log(M)の全範囲でdw/dlog(M)値を積分した値に対して6%以上40%以下(但し、8.5±0.3%を除く)」であることについては、明記していない。
そして、甲1の実施例で用いたポリジオルガノシロキサン化合物である「信越化学工業社(株)製 X-22-1821」(製造例1(B-1)、製造例2(B-2))以外である「信越化学工業社(株)製 X-22-1822E」(製造例3(B-3))、「信越化学工業社(株)製 X-22-1875」(製造例4(B-4))の、「ポリオルガノシロキサンのポリスチレンを換算基準としたゲル浸透クロマトグラフ法による測定から得られる、横軸が分子量Mの対数値log(M)であり、縦軸が濃度分率wを分子量の対数値log(M)で微分したdw/dlog(M)である微分分子量分布曲線」における「(2)前記微分分子量分布曲線において、4.0≦log(M)≦4.5の範囲でdw/dlog(M)値を積分した値」が、「log(M)の全範囲でdw/dlog(M)値を積分した値に対して6%以上40%以下(但し、8.5±0.3%を除く)」であることについても、明らかではない。
また、甲2には、「X-22-1821」の「ポリオルガノシロキサンのポリスチレンを換算基準としたゲル浸透クロマトグラフ法による測定から得られる、横軸が分子量Mの対数値log(M)であり、縦軸が濃度分率wを分子量の対数値log(M)で微分したdw/dlog(M)である微分分子量分布曲線」における「(1)dw/dlog(M)の値」が3.6であり、「(2)前記微分分子量分布曲線において、2.5≦log(M)≦3.1の範囲でdw/dlog(M)値を積分した値」が「14.9%」であることが記載されている。
しかしながら、甲2においては、(2)前記微分分子量分布曲線において、「2.5≦log(M)≦3.1の範囲でdw/dlog(M)値を積分した値」を算出するものであって、甲1発明1の「4.0≦log(M)≦4.5の範囲でdw/dlog(M)値を積分した値」を算出するものではない。
してみると、甲1発明1において、たとえ甲2の記載を参照しても、ポリジオルガノシロキサン化合物として、「ポリオルガノシロキサンのポリスチレンを換算基準としたゲル浸透クロマトグラフ法による測定から得られる、横軸が分子量Mの対数値log(M)であり、縦軸が濃度分率wを分子量の対数値log(M)で微分したdw/dlog(M)である微分分子量分布曲線」における「(2)前記微分分子量分布曲線において、4.0≦log(M)≦4.5の範囲でdw/dlog(M)値を積分した値」が、「log(M)の全範囲でdw/dlog(M)値を積分した値に対して6%以上40%以下(但し、8.5±0.3%を除く)」であるように調節したものを当業者が用いる動機付けがあるとはいえない。
したがって、本件訂正発明12は、甲1及び甲2の記載に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
c 小括
以上のとおり、本件訂正発明12は、甲1及び甲2の記載に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(イ)本件訂正発明13について
本件訂正発明13は、本件訂正発明12を直接引用するものであるが、上記(ア)で述べたとおり、本件訂正発明12が甲1及び甲2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない以上、本件訂正発明13においても同様に、甲1及び甲2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(ウ)本件訂正発明9について
a 甲1発明2との対比
本件訂正発明9と甲1発明2とを対比する。
一致点及び相違点については、上記第5の1(1)ウ(ウ)aで述べたのと同様であり、相違点として相違点1’が挙げられる。
b 判断
次に、相違点1の容易想到性について検討する。
相違点1’については、上記(ア)aの相違点1と同じであって、その判断についても同様である。
したがって、本件訂正発明9は、甲1及び甲2の記載に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
c 甲1発明3との対比と判断
甲1発明3は、甲1発明2と対比すると、式[5]で表される二価フェノール(II)(信越化学工業(株)製 X-22-1821)の使用量を430部から215部とした発明であるから、本件訂正発明9と甲1発明3とを対比・判断すると、上記(ア)、(イ)で対比・判断した甲1発明2と同様である。
したがって、本件訂正発明9は、甲1及び甲2の記載に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
d 小括
以上のとおり、本件訂正発明9は、甲1及び甲2の記載に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(エ)本件訂正発明10、11、15について
本件訂正発明10、11は、本件訂正発明9を直接または間接的に引用するものであるが、上記(ウ)で述べたとおり、本件訂正発明9が甲1及び甲2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない以上、本件訂正発明10、11においても同様に、甲1及び甲2に基いて当業者が容易に発明できたものとはいえない。
そして、本件訂正発明15は、本件訂正発明1を引用する本件訂正発明12と同様の特定事項に係る発明である。してみると、本件訂正発明15は、本件訂正発明12と同様に、甲1及び甲2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
したがって、本件訂正発明10、11、15は、甲1及び甲2の記載に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(オ)本件訂正発明14について
a 甲1発明2との対比
本件訂正発明14と甲1発明2とを対比する。
一致点及び相違点については、上記第5の1(1)ウ(オ)aで述べたのと同様であり、相違点として相違点1’ ’、相違点2が挙げられる。
b 判断
次に、相違点1’ ’の容易想到性について検討する。
相違点1’ ’については、上記ア(ア)の相違点1と同じであって、その判断についても同様である。
したがって、相違点2について検討するまでもなく、本件訂正発明14は、甲1及び甲2の記載に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
c 甲1発明3との対比と判断
甲1発明3は、甲1発明2と対比すると、式[5]で表される二価フェノール(II)(信越化学工業(株)製 X-22-1821)の使用量を430部から215部とした発明であるから、本件訂正発明14と甲1発明3とを対比・判断すると、上記a、bで対比・判断した甲1発明2と同様である。
したがって、本件訂正発明14は、甲1及び甲2の記載に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
d 小括
以上のとおり、本件訂正発明14は、甲1及び甲2の記載に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(カ)本件訂正発明1について
a 甲1発明2との対比
本件訂正発明1と甲1発明2とを対比する。
一致点及び相違点については、上記第5の1(1)ウ(カ)aで述べたのと同様であり、相違点として相違点1’’’、相違点2’が挙げられる。
b 判断
次に、相違点1’’’の容易想到性について検討する。
相違点1’’’については、上記(ア)aの相違点1と同じであって、その判断についても同様である。
したがって、相違点2’について検討するまでもなく、本件訂正発明1は、甲1及び甲2の記載に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
c 甲1発明3との対比と判断
甲1発明3は、甲1発明2と対比すると、式[5]で表される二価フェノール(II)(信越化学工業(株)製 X-22-1821)の使用量を430部から215部とした発明であるから、本件訂正発明1と甲1発明3とを対比・判断すると、上記a、bで対比・判断した甲1発明2と同様である。
したがって、本件訂正発明1は、甲1及び甲2の記載に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
d 小括
以上のとおり、本件訂正発明1は、甲1及び甲2の記載に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(キ)本件訂正発明2~8、16~18について
本件訂正発明2~8、16~18は、本件訂正発明1を直接または間接的に引用するものであるが、上記(カ)で述べたとおり、本件訂正発明1が甲1及び甲2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない以上、本件訂正発明2~8、16~18においても同様に、甲1及び甲2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(ク)まとめ
よって、申立理由2(進歩性)については理由がなく、本件訂正発明1~18に係る特許は、特許法第113号第2号に該当せず、取り消すべきものではない。
3 令和2年2月26日提出の意見書における申立人の主張について
(1)申立人の主張
申立人は令和2年2月26日付けで提出した意見書において、訂正請求に付随して生じた理由としてサポート要件及び実施可能要件を主張する。
申立人のするこれらの主張は、時機に遅れた新たな主張であるから直接採用することはできないが、念のため以下に検討をしておく。
ア サポート要件
申立人は、本件訂正により、本件明細書に記載された実施例8及び9は、本件訂正発明の具体例でなくなったので、本件訂正発明はサポートされていない旨を主張する。
しかしながら、本件明細書に記載された実施例1~7、10~15は、本件訂正発明の具体例であるといえ、本件明細書の他の記載や技術常識を勘案すれば、本件訂正発明はサポートされているということができる。
イ 実施可能要件
申立人は、本件訂正により、「6%以上40%以下(但し、8.5±0.3%を除く)」という2つに分断された積分比率範囲は、過度の試行錯誤を要する旨を主張する。
しかしながら、上記したとおり、本件明細書に記載された実施例1~7、10~15は、分断された積分比率範囲を満足する具体例であるといえ、本件明細書の他の記載や技術常識を勘案すれば、過度の試行錯誤を要せず、当業者が作ることができるといえる。
ウ まとめ
よって、申立人のするこれらの主張は、いずれも採用できない。
第6 むすび
以上のとおり、取消理由通知書に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議の申立ての理由によっては、本件特許の請求項1~18に係る特許を取り消すことができない。
また、他に本件特許の請求項1~18に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2019-700575