特許異議申立
2019-700444
スロットマシン
- 審判番号
- 2019-700444
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2016-181962外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2019年05月31日
- 審決日
- 2019年12月02日
- 公報発行日
- 2020年03月27日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】株式会社三共
- 【権利者代理人】特許業務法人深見特許事務所
- 【異議申立人】日本電動式遊技機特許株式会社
- 【異議申立人代理人】特許業務法人 武和国際特許事務所
- 分類
- P1651.121-YAA(A63F) / P1651.55 -YAA(A63F) / P1651.841-YAA(A63F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第3項、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項第1号、特許法第126条第5項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第6433956号発明「スロットマシン」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第6433956号の明細書、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1について、訂正することを認める。
特許第6433956号の請求項1に係る特許を維持する。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
特許第6433956号の請求項1に係る特許(以下「本件特許」という。)についての出願は、平成23年8月2日に出願した特願2011-169396号の一部を平成28年9月16日に新たな特許出願(特願2016-181962号)としたものであり、その後の手続の概要は、以下のとおりである。
平成30年11月16日:特許権の設定登録
平成30年12月 5日:特許掲載公報発行
令和 1年 5月31日:特許異議の申立て(特許異議申立人日本電動式遊技機特許株式会社)
令和 1年 8月 6日:取消理由通知書
令和 1年10月 7日:訂正請求書及び意見書
令和 1年10月10日:通知書(訂正請求があった旨の通知)
令和 1年11月14日:意見書(特許異議申立人)
第2 本件訂正請求について
令和1年10月7日付け訂正請求書によりなされた訂正請求(以下「本件訂正請求」といい、本件訂正請求によりなされた訂正を「本件訂正」という。)は、本件特許の明細書、特許請求の範囲について、以下のとおり訂正することを求めるものである。
1 訂正請求の内容
本件訂正請求は、本件特許の明細書、特許請求の範囲について、以下のとおり訂正することを求めるものである。
(1)訂正事項1
特許権者は、本件特許の請求項1に、「付与条件の成立に伴って、遊技者にとって有利な有利状態に制御する権利である特典を付与する特典付与手段とを備え、」と記載した後に、
「前記特定状態は、味方キャラクタと敵キャラクタとがバトルを展開するバトル演出が実行される状態であり、
前記特定状態においては、当該特定状態におけるゲームの結果が第1結果となったことに応じて前記味方キャラクタが前記敵キャラクタから攻撃を受け、当該特定状態におけるゲームの結果が当該第1結果とは異なる第2結果となったことに応じて前記味方キャラクタが前記敵キャラクタに攻撃をするものであり、」(下線は、合議体が付した。以下同様。)を加える訂正を請求する。
(2)訂正事項2
特許権者は、本件特許の請求項1に、「前記終了条件は、前記特定状態におけるゲームの結果が第1結果となったことに応じて成立可能な特定条件が少なくとも2回以上成立することにより成立し、」とあったものを、
「前記終了条件は、前記特定状態におけるゲームの結果に応じて前記味方キャラクタが前記敵キャラクタから複数回数の攻撃を受けることにより成立し、」と訂正することを請求する。
(3)訂正事項3
特許権者は、本件特許の請求項1に、「前記付与条件は、前記特定状態におけるゲームの結果が前記第1結果と異なる第2結果となったことに応じて成立可能であって、」とあったものを、
「前記付与条件は、前記特定状態におけるゲームの結果に応じて前記味方キャラクタが前記敵キャラクタに攻撃をすることにより成立し、」と訂正することを請求する。
(4)訂正事項4
特許権者は、本件特許の請求項1に、
「前記特典付与手段は、
前記特定状態中に前記付与条件が成立したときに当該特定状態において前記特定条件が成立していたときは、前記特定条件が成立していなかったときの方が前記有利状態に制御される期間の期待値が高くなるように特典を付与し、
前記特定状態中に前記付与条件が成立したときに当該特定状態において前記特定条件が成立していたときは、前記有利状態に制御される期間が所定期間以上となるように特典を付与し、
前記特定状態中に前記付与条件が成立したときに当該特定状態において前記特定条件が成立していないときは、前記有利状態に制御される期間が前記所定期間より長い特定期間以上となるように特典を付与する、スロットマシン。」とあったものを、
「前記特典付与手段は、
前記特定状態中に前記付与条件が成立したときに、当該特定状態において前記味方キャラクタが前記敵キャラクタから攻撃を受けていたときよりも、当該特定状態において当該味方キャラクタが当該敵キャラクタから攻撃を受けていなかったときの方が前記有利状態に制御される期間の期待値が高くなるように特典を付与し、
前記特定状態中に前記付与条件が成立したときに、当該特定状態において前記味方キャラクタが前記敵キャラクタから攻撃を受けていたときは、前記有利状態に制御される期間が所定期間以上となるように特典を付与し、
前記特定状態中に前記付与条件が成立したときに、当該特定状態において前記味方キャラクタが前記敵キャラクタから攻撃を受けていなかったときは、前記有利状態に制御される期間が前記所定期間より長い特定期間以上となるように特典を付与し、
前記特定状態中に前記付与条件が成立したときに、当該特定状態において前記味方キャラクタが前記敵キャラクタから攻撃を受けていた場合、当該敵キャラクタの攻撃回数が特別回数を超えていたときよりも、当該攻撃回数が当該特別回数以下であるときの方が前記有利状態に制御される期間の期間の期待値が高くなるように特典を付与する、スロットマシン。」と訂正することを請求する。
(5)訂正事項5
特許権者は、本件特許の明細書の段落【0009】において、
「各々が識別可能な複数種類の識別情報を変動表示可能な可変表示部を備え、
前記可変表示部を変動表示した後、前記可変表示部の変動表示を停止することで表示結果を導出し、該表示結果に応じて入賞が発生可能なスロットマシンにおいて、
開始条件が成立してから終了条件が成立するまでの複数回のゲームに亘って特定状態に制御可能な特定状態制御手段と、
付与条件の成立に伴って、遊技者にとって有利な有利状態に制御する権利である特典を付与する特典付与手段とを備え、
前記終了条件は、前記特定状態におけるゲームの結果が第1結果となったことに応じて成立可能な特定条件が少なくとも2回以上成立することにより成立し、
前記付与条件は、前記特定状態におけるゲームの結果が前記第1結果と異なる第2結果となったことに応じて成立可能であって、
前記特典付与手段は、
前記特定状態中に前記付与条件が成立したときに当該特定状態において前記特定条件が成立していたときは、前記特定条件が成立していなかったときの方が前記有利状態に制御される期間の期待値が高くなるように特典を付与し、
前記特定状態中に前記付与条件が成立したときに当該特定状態において前記特定条件が成立していたときは、前記有利状態に制御される期間が所定期間以上となるように特典を付与し、
前記特定状態中に前記付与条件が成立したときに当該特定状態において前記特定条件が成立していないときは、前記有利状態に制御される期間が前記所定期間より長い特定期間以上となるように特典を付与する。
なお、スロットマシンは、以下の構成を備えるものであってもよい。
(1) 遊技用価値を用いて1ゲームに対して所定数の賭数を設定することによりゲームが開始可能となるとともに、各々が識別可能な複数種類の識別情報を変動表示可能な可変表示装置に表示結果が導出されることにより1ゲームが終了し、該可変表示装置に導出された表示結果に応じて入賞が発生可能とされたスロットマシン(スロットマシン1)であって、
開始条件が成立(バトル演出当選)してから終了条件が成立(味方ポイントが「0」)するまで特定状態(バトル演出)に制御する特定状態制御手段(図11のS07、図12)と、
遊技者にとって有利な特典(ナビストックなど)を付与する特典付与手段(図12のS17、S19)とを備え、
前記特定状態において特定条件(敵方キャラクタからの攻撃)が少なくとも2回以上成立することにより、前記終了条件は成立し(図16)、
前記特典付与手段は、前記特定状態において前記終了条件が成立するまでに付与条件が成立した場合(図12のS15でYES)、当該付与条件が成立したときに当該特定状態において前記特定条件が成立していた特定成立回数が、所定回数(「0」)を超えているときよりも当該所定回数以下であるときの方が高い割合で、遊技者にとっての有利度合いが高くなるように、特典を付与する(図17(a)および(b)のテーブル参照、図12のS17におけるナビストック数決定よりもS19におけるナビストック数決定の方が有利度合いが高い)。」とあったものを、
「各々が識別可能な複数種類の識別情報を変動表示可能な可変表示部を備え、
前記可変表示部を変動表示した後、前記可変表示部の変動表示を停止することで表示結果を導出し、該表示結果に応じて入賞が発生可能なスロットマシンにおいて、
開始条件が成立してから終了条件が成立するまでの複数回のゲームに亘って特定状態に制御可能な特定状態制御手段と、
付与条件の成立に伴って、遊技者にとって有利な有利状態に制御する権利である特典を付与する特典付与手段とを備え、
前記特定状態は、味方キャラクタと敵キャラクタとがバトルを展開するバトル演出が実行される状態であり、
前記特定状態においては、当該特定状態におけるゲームの結果が第1結果となったことに応じて前記味方キャラクタが前記敵キャラクタから攻撃を受け、当該特定状態におけるゲームの結果が当該第1結果とは異なる第2結果となったことに応じて前記味方キャラクタが前記敵キャラクタに攻撃をするものであり、
前記終了条件は、前記特定状態におけるゲームの結果に応じて前記味方キャラクタが前記敵キャラクタから複数回数の攻撃を受けることにより成立し、
前記付与条件は、前記特定状態におけるゲームの結果に応じて前記味方キャラクタが前記敵キャラクタに攻撃をすることにより成立し、
前記特典付与手段は、
前記特定状態中に前記付与条件が成立したときに、当該特定状態において前記味方キャラクタが前記敵キャラクタから攻撃を受けていたときよりも、当該特定状態において当該味方キャラクタが当該敵キャラクタから攻撃を受けていなかったときの方が前記有利状態に制御される期間の期待値が高くなるように特典を付与し、
前記特定状態中に前記付与条件が成立したときに、当該特定状態において前記味方キャラクタが前記敵キャラクタから攻撃を受けていたときは、前記有利状態に制御される期間が所定期間以上となるように特典を付与し、
前記特定状態中に前記付与条件が成立したときに、当該特定状態において前記味方キャラクタが前記敵キャラクタから攻撃を受けていなかったときは、前記有利状態に制御される期間が前記所定期間より長い特定期間以上となるように特典を付与し、
前記特定状態中に前記付与条件が成立したときに、当該特定状態において前記味方キャラクタが前記敵キャラクタから攻撃を受けていた場合、当該敵キャラクタの攻撃回数が特別回数を超えていたときよりも、当該攻撃回数が当該特別回数以下であるときの方が前記有利状態に制御される期間の期間の期待値が高くなるように特典を付与する。
なお、スロットマシンは、以下の構成を備えるものであってもよい。
(1) 遊技用価値を用いて1ゲームに対して所定数の賭数を設定することによりゲームが開始可能となるとともに、各々が識別可能な複数種類の識別情報を変動表示可能な可変表示装置に表示結果が導出されることにより1ゲームが終了し、該可変表示装置に導出された表示結果に応じて入賞が発生可能とされたスロットマシン(スロットマシン1)であって、
開始条件が成立(バトル演出当選)してから終了条件が成立(味方ポイントが「0」)するまで特定状態(バトル演出)に制御する特定状態制御手段(図11のS07、図12)と、
遊技者にとって有利な特典(ナビストックなど)を付与する特典付与手段(図12のS17、S19)とを備え、
前記特定状態において特定条件(敵方キャラクタからの攻撃)が少なくとも2回以上成立することにより、前記終了条件は成立し(図16)、
前記特典付与手段は、前記特定状態において前記終了条件が成立するまでに付与条件が成立した場合(図12のS15でYES)、当該付与条件が成立したときに当該特定状態において前記特定条件が成立していた特定成立回数が、所定回数(「0」)を超えているときよりも当該所定回数以下であるときの方が高い割合で、遊技者にとっての有利度合いが高くなるように、特典を付与する(図17(a)および(b)のテーブル参照、図12のS17におけるナビストック数決定よりもS19におけるナビストック数決定の方が有利度合いが高い)。」と訂正することを請求する。
2 訂正の適否
(1)訂正事項1
訂正事項1は、本件特許の明細書【0009】、【0246】、【0247】、【0275】及び【0277】の記載に基づいて、訂正前の請求項1の「特定状態」が、「味方キャラクタと敵キャラクタとがバトルを展開するバトル演出が実行される状態」であること、「当該特定状態におけるゲームの結果が第1結果となったことに応じて前記味方キャラクタが前記敵キャラクタから攻撃を受け、当該特定状態におけるゲームの結果が当該第1結果とは異なる第2結果となったことに応じて前記味方キャラクタが前記敵キャラクタに攻撃をするものであ」ることに限定するものである。
(2)訂正事項2
訂正事項2は、本件特許の明細書【0009】、【0247】、【0270】、【0288】、【0289】、【0291】、【0301】及び【0302】の記載に基づいて、訂正前の請求項1の「前記終了条件」が、「前記特定状態におけるゲームの結果が第1結果となったことに応じて成立可能な特定条件が少なくとも2回以上成立することにより成立」するものから、「前記特定状態におけるゲームの結果に応じて前記味方キャラクタが前記敵キャラクタから複数回数の攻撃を受けることにより成立」することに限定するものである。
(3)訂正事項3
訂正事項3は、本件特許の明細書【0247】、【0270】、【0279】ないし【0282】、【0291】ないし【0294】、【0297】及び【0333】の記載に基づいて、訂正前の請求項1の「前記付与条件」が、「前記特定状態におけるゲームの結果が前記第1結果と異なる第2結果となったことに応じて成立可能」であるものから、「前記特定状態におけるゲームの結果に応じて前記味方キャラクタが前記敵キャラクタに攻撃をすることにより成立」することに限定するものである。
(4)訂正事項4
訂正事項4は、本件特許の明細書【0016】、【0018】、【0292】ないし【0298】、【0333】、【0334】、【0342】、【0343】及び【0348】の記載に基づいて、訂正前の請求項1の「前記特典付与手段」が、「前記特定状態中に前記付与条件が成立したときに当該特定状態において前記特定条件が成立していたときは、前記特定条件が成立していなかったときの方が前記有利状態に制御される期間の期待値が高くなるように特典を付与し、前記特定状態中に前記付与条件が成立したときに当該特定状態において前記特定条件が成立していたときは、前記有利状態に制御される期間が所定期間以上となるように特典を付与し、前記特定状態中に前記付与条件が成立したときに当該特定状態において前記特定条件が成立していないときは、前記有利状態に制御される期間が前記所定期間より長い特定期間以上となるように特典を付与する」ものから、「前記特定状態中に前記付与条件が成立したときに、当該特定状態において前記味方キャラクタが前記敵キャラクタから攻撃を受けていたときよりも、当該特定状態において当該味方キャラクタが当該敵キャラクタから攻撃を受けていなかったときの方が前記有利状態に制御される期間の期待値が高くなるように特典を付与し、前記特定状態中に前記付与条件が成立したときに、当該特定状態において前記味方キャラクタが前記敵キャラクタから攻撃を受けていたときは、前記有利状態に制御される期間が所定期間以上となるように特典を付与し、前記特定状態中に前記付与条件が成立したときに、当該特定状態において前記味方キャラクタが前記敵キャラクタから攻撃を受けていなかったときは、前記有利状態に制御される期間が前記所定期間より長い特定期間以上となるように特典を付与し、前記特定状態中に前記付与条件が成立したときに、当該特定状態において前記味方キャラクタが前記敵キャラクタから攻撃を受けていた場合、当該敵キャラクタの攻撃回数が特別回数を超えていたときよりも、当該攻撃回数が当該特別回数以下であるときの方が前記有利状態に制御される期間の期間の期待値が高くなるように特典を付与する」ことに限定するものである。
特に請求項1に「前記特定状態中に前記付与条件が成立したときに、当該特定状態において前記味方キャラクタが前記敵キャラクタから攻撃を受けていた場合、当該敵キャラクタの攻撃回数が特別回数を超えていたときよりも、当該攻撃回数が当該特別回数以下であるときの方が前記有利状態に制御される期間の期間の期待値が高くなるように特典を付与する」(以下「特別回数に関する特定事項」という。)を追加する訂正については、本件特許の明細書の段落【0343】に、「前述した実施の形態においては、遊技者にとっての有利度合いを異ならせる境目となる回数として、敵方キャラクタからの攻撃回数が「0」である例について説明したが、これに限らず、敵方キャラクタからの攻撃回数が「1」など、予め定められた回数であればよい。また、遊技者にとって有利度合いを異ならせる境目となる回数として、所定回数だけに限らず、所定回数を超える予め定められた特別回数を設けてもよい。たとえば、所定回数として「0」が定められており、特別回数として「2」が定められている場合において、敵方キャラクタから攻撃を受けてしまった場合においても、敵方キャラクタからの攻撃回数が特別回数として定められた「2」を超えているときよりも、「2」以下であるときの方が高い割合で、遊技者にとっての有利度合いが高くなるように、特典としてのナビストックを付与するようにしてもよい。これにより、敵方キャラクタから攻撃を受けてしまった後においても、敵方キャラクタからの攻撃回数が特別回数以下で味方キャラクタが勝利することに対する期待感を遊技者に抱かせることができる。その結果、敵方キャラクタから攻撃を受けた後においても、有利度合いが高くなるように特典としてのナビストックが付与されることに対する期待感を持続させることができる。」と記載されている。当該記載からみて、有利度合いを異ならせる境目となる回数として、例えば「0」(所定回数)に加えて、さらに、例えば「2」(特別回数)を設定することが読み取れる。
してみると、訂正事項4における上記「特別回数に関する特定事項」は、本件特許の明細書又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものである。
(5)訂正事項5
訂正事項5は、訂正事項1ないし4に係る訂正により、本件特許の明細書の段落【0009】の記載が特許請求の範囲の請求項1の記載と整合が取れなくなったことを是正するものであるから、当該訂正事項5は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
(6)上記(1)ないし(5)のとおりであるから、請求項1に係る訂正は、特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とし、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。
(7)小括
上記(1)ないし(6)のとおり、本件訂正請求による訂正事項1ないし5は、特許法第120条の5第2項第1号及び第3号に掲げる事項を目的とし、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項1について訂正を認める。
第3 本件発明
上記第2のとおり、訂正後の請求項1について本件訂正が認められるから、請求項1に係る特許は本件訂正請求により訂正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項によりそれぞれ特定される次のとおりのものである(以下、本件特許の請求項1に係る発明を「本件発明」という。)。
「A 各々が識別可能な複数種類の識別情報を変動表示可能な可変表示部を備え、
B 前記可変表示部を変動表示した後、前記可変表示部の変動表示を停止することで表示結果を導出し、該表示結果に応じて入賞が発生可能なスロットマシンにおいて、
C 開始条件が成立してから終了条件が成立するまでの複数回のゲームに亘って特定状態に制御可能な特定状態制御手段と、
D 付与条件の成立に伴って、遊技者にとって有利な有利状態に制御する権利である特典を付与する特典付与手段とを備え、
E 前記特定状態は、味方キャラクタと敵キャラクタとがバトルを展開するバトル演出が実行される状態であり、
F 前記特定状態においては、当該特定状態におけるゲームの結果が第1結果となったことに応じて前記味方キャラクタが前記敵キャラクタから攻撃を受け、当該特定状態におけるゲームの結果が当該第1結果とは異なる第2結果となったことに応じて前記味方キャラクタが前記敵キャラクタに攻撃をするものであり、
G 前記終了条件は、前記特定状態におけるゲームの結果に応じて前記味方キャラクタが前記敵キャラクタから複数回数の攻撃を受けることにより成立し、
H 前記付与条件は、前記特定状態におけるゲームの結果に応じて前記味方キャラクタが前記敵キャラクタに攻撃をすることにより成立し、
I 前記特典付与手段は、
前記特定状態中に前記付与条件が成立したときに、当該特定状態において前記味方キャラクタが前記敵キャラクタから攻撃を受けていたときよりも、当該特定状態において当該味方キャラクタが当該敵キャラクタから攻撃を受けていなかったときの方が前記有利状態に制御される期間の期待値が高くなるように特典を付与し、
J 前記特定状態中に前記付与条件が成立したときに、当該特定状態において前記味方キャラクタが前記敵キャラクタから攻撃を受けていたときは、前記有利状態に制御される期間が所定期間以上となるように特典を付与し、
K 前記特定状態中に前記付与条件が成立したときに、当該特定状態において前記味方キャラクタが前記敵キャラクタから攻撃を受けていなかったときは、前記有利状態に制御される期間が前記所定期間より長い特定期間以上となるように特典を付与し、
L 前記特定状態中に前記付与条件が成立したときに、当該特定状態において前記味方キャラクタが前記敵キャラクタから攻撃を受けていた場合、当該敵キャラクタの攻撃回数が特別回数を超えていたときよりも、当該攻撃回数が当該特別回数以下であるときの方が前記有利状態に制御される期間の期間の期待値が高くなるように特典を付与する、
M スロットマシン。」
第4 特許異議の申立てについて
1 特許異議の申立ての概要
(1)理由1:本件訂正前の請求項1に発明(以下「訂正前発明」という。)は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1及び2号証に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
記
甲第1号証:特開2003-210673号公報
甲第2号証:田窪千津子編集、「パチスロ攻略マガジンドラゴン2010年3月号」、第9巻第3号通巻119号、株式会社双葉社、2010年1月21日、第96頁ないし第103頁
なお、特許異議申立人が提出した甲号証を以下「甲1」等という。
(2)理由2:平成30年8月24日(注:申立書では「8月2日」(申立書48頁16行)又は「8月4日」(申立書49頁14行)となっているが「8月24日」の誤記である。)提出の手続補正書でした補正は、下記の点で願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「当初明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、本件特許は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
記
平成30年8月24日提出の手続補正書でした補正により、訂正前発明における「前記特典付与手段は、前記特定状態中に前記付与条件が成立したときに当該特定状態において前記特定条件が成立していたときは、前記特定条件が成立していなかったときの方が前記有利状態に制御される期間の期待値が高くなるように特典を付与し、」との構成は、当初明細書等の段落【0298】の「・・・完全勝利時のときの方が、ノーマル勝利時のときよりも、より多くのナビストック数を獲得できる可能性が高いため、遊技者にとって有利度合いが高いといえる。」に対応するものの、当初明細書等に記載されている技術以外のものを含む構成となっている。
そうすると、平成30年8月24日提出の手続補正書でした補正は、本件特許の当初明細書等に記載された事項の範囲を超えているものと認められ、新たな技術的事項を導入するものである。
2 令和1年8月6日付け取消理由通知の概要
訂正前発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった上記甲1及び2に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
記
甲1に記載された発明におけるバトル演出で勝利した際に、モンスターの強弱ではなく、主人公がモンスターからの攻撃を受けたか否かで、BR(特典)の獲得できる回数の軽重を決定するようにして訂正前発明のようになすことは、甲2記載事項における甲賀が10人のまま勝てば「追想の刻」ゲーム数を30G以上獲得するものであるという構成に接した当業者であれば容易に想到し得たものである。
第5 当合議体の判断
1 取消理由通知に記載した取消理由について
(1)甲1
特許異議申立人が提出した甲1であり、本件特許の出願前に頒布され又は電気通信回線を通じて利用可能となり、上記取消理由通知で引用された特開2003-210673号公報には、次の事項が記載されている。
ア 「【0020】
【発明の実施の形態】図1は、本発明の遊技機の一実施例である停止ボタン付スロットマシン、いわゆるパチスロ遊技機の外観図である。パチスロ遊技機1は、合板製の箱形キャビネット2に全面ドア3を開閉自在に取り付けている。全面ドア3の上部にはボーナス遊技が発生した場合やエラーが発生した場合などにそれぞれ異なった表示形態で発光点滅する遊技状態表示ランプ4と、遊技中の効果音やエラー音などを出力するスピーカー5L、5Rと、各入賞役の払出枚数や簡単な遊技説明が表記された配当表6が設けられている。全面ドア3の中央部には略垂直面のパネル表示部7が設けられており、中央部には縦長矩形の表示窓が3カ所(左表示窓8L、中表示窓8C、右表示窓8R)が設けられ、キャビネット内のリール(左リール9L、中リール9C、右リール9R)を視認可能となっている。これらのリール3L、3C、3Rは外周面に複数の図柄が配置されて回転自在となっており、表示窓8L、8C、8Rと共に変動表示手段を構成している。」
イ 「【0046】リール9L、9C、9Rが回転を開始して一定の時間が経過して定速回転状態となると、停止ボタン27L、27C、27Rの操作が有効化される。遊技者が停止操作を行うと、リール停止信号回路118を介してリール停止信号がCPU103に入力され、停止位置の選択などのソフト的な処理が行われた後、モータ駆動回路111を介してステッピングモータ112L、112C、112Rに停止パルスが供給され、リール9L、9C、9Rが停止制御される。
・・・略・・・
【0048】リール9L、9C、9Rが全て停止した場合入賞検索を行う。入賞検索は、まず、ROM104に記憶されている図柄テーブルと、RAM105に記憶されている図柄停止位置を照合して、表示窓8L、8C、8Rに停止している今回のゲームの停止態様がどのような状態かを把握する。図柄テーブルとは、リール9L、9C、9Rの外周面に描かれた図柄列と対応して構成され、基準位置からの図柄の順番を表すコードナンバーと、コードナンバーに対応して設けられた図柄コードを対応させたもので、ソフト的なリール帯の役割を果たす。次に、それぞれの有効ラインL1、L2A、L2B、L3A、L3Bについて、その停止態様とROM104に記憶されている入賞図柄組み合わせテーブルを照合して入賞の有無を判定する。入賞図柄組み合わせテーブルとは、入賞図柄の組み合わせと入賞した際の配当コイン枚数などが対応づけられたもので、遊技状態によって有効になる入賞図柄組み合わせや配当枚数を異ならせる場合など、この入賞図柄を切り替えて処理を行う。」
ウ 「【0069】遊技補助期間は、一般遊技中に行われる所定の判定処理で一定の条件を満たすことで発生する。具体的には、ある入賞役が発生した場合、その入賞役に対して設定された価値としてのポイントが予め定めた上限値(10ポイント)より減算され、所定期間内にその減算結果が0ポイントとなったとき補助期間の発生となる。一例としては、一般遊技中に液晶表示装置14の表示画面上に表示される演出として、主人公のキャラクタと敵のキャラクタが戦う様子を表示する演出(以下「バトル演出」という)が表示され、そのバトル演出に主人公キャラクタが勝利した場合、ソフトウェアの処理としては、後述する「バトル判定処理」において、モンスターのHP(ヒットポイント:体力)が0と判定されたときに補助期間の発生が決定される。バトル演出処理中において入賞が成立したとき、その入賞役に定められた攻撃ポイント(登場するモンスターによってその減算割合が異なる)がモンスターのHP初期値10ポイントから減算され、当該HPが0となったとき、補助期間の発生が決定されるのである。詳細は後述する。」
エ 「【0075】図9は登場するモンスターの種別を表したもので、本実施例では、「ミカポム」、「クロッカ」、「ヒーゴ」の3種類が登場し、後述する「バトル継続回数」として、いずれのモンスターも7回に設定されている。モンスターに勝利することで得られる遊技補助期間であるバトルラッシュ(以下「BR」と略記する)の継続ゲーム回数はモンスター毎に異なった設定となっていて、強いモンスター(勝利しづらいモンスター)に勝利すれば、それだけ与えられるBRゲーム回数も多くなっている
・・・略・・・
【0079】また下方にはダメージゲージ308L、308Rが表示される。これは、バトル演出中に、モンスター306の残りHPをモンスター体力ゲージ308Lで、主人公303の残りHPを主人公体力ゲージ308Rで表すもので、戦闘開始画面では両者ともにHP10が設定されており、ゲーム回数が進み戦闘が展開されていくに従って、互いにダメージを負ってゆく。負ったダメージ量によってモンスター体力ゲージであれば左側から右側に、主人公体力ゲージであれば右側から左側に消滅してゆき、いずれかのキャラクタのHPが0になったとき、バトル演出は終了する。モンスター306に与えるダメージ量は、入賞した入賞役の種類によって決定される。ただし、同一の入賞役であってもモンスター306の種類によってダメージ量が異なる。
・・・略・・・
【0081】図11(b)では、主人公303がモンスター306に対し攻撃している様子を示している。このような表示がなされるのは、1ゲームの結果として入賞が発生した場合である。逆に、ゲーム結果がハズレだった場合、主人公303がモンスターより攻撃を受ける。尚、入賞種別により主人公303の攻撃パターンが変化し、例えば図12に示すように、チェリーが入賞した場合、主人公303はモンスター306に対し炎を発射する「火炎攻撃」を行い、「リプレイ」が入賞した場合、主人公303はモンスター306に対し氷を発射する「冷凍攻撃」を行い、「スイカ」が入賞した場合、主人公303は地震を引き起こしモンスター306を攻撃する「地震攻撃」を行い、「ベル」に入賞した場合、主人公303はモンスター306に対し稲妻を落とす「稲妻攻撃」を行い、SBに入賞した場合、主人公303は天空から光の輪を光臨させ、モンスター306のHPを奪う「閃光攻撃」を行う。またモンスター306には、その種別により「属性」が定められており、例えば、ミカポムは火属性であり冷凍攻撃に弱く、リプレイ(冷凍攻撃)が一度でも入賞すれば10ポイントのダメージが与えられ、一撃で倒すことが可能となる。逆に、チェリー(火炎攻撃)が入賞しても、1ポイントしかダメージを与えることができない。同様にクロッカは水属性なのでチェリー入賞(火炎攻撃)で大ダメージを与えられるが、リプレイ(冷凍攻撃)では少しのダメージしか与えることができない。ヒーゴは地属性なのでこれといった弱点はなく、倒すことが困難である。SB(閃光攻撃)はすべてのモンスターに大ダメージを与えることができ、一撃で倒すことが可能である。
【0082】図11(c)ではモンスター体力ゲージ308Lが0になって、主人公が勝利したことを表している。このようにバトル演出期間内において主人公303がモンスター306を倒すことができたときは、その後遊技補助期間であるBRが発生する。尚、BRが継続されるゲーム数(以下、「BR継続回数」という)は前述したようにミカポムは30ゲーム、クロッカは60ゲーム、ヒーゴは120ゲームである。」
オ 「【0139】図32はスタート時の演出制御処理を示すフローチャートである。初めに、サブCPU203は、バトル発生抽選処理を行う(ST500)。バトル発生抽選処理は、1ゲーム毎にバトル演出を発生させるか否かの抽選を行うものである。詳細は後述する。続いてBR実行処理を行う(ST550)。BR実行処理は、BR中に停止順序報知を行うものである。詳細は後述する。
【0140】図33はバトル発生抽選処理を示すフローチャートである。まずサブCPU203は、サブRAM205に記憶されているバトル発生フラグをチェックし、現在バトル中であるか否かの判別を行い(ST501)、“YES”のときはそのままスタート時の演出制御処理に復帰する。“NO”のときは、選択用乱数値とサブROM204に記憶されているバトル発生テーブル(図10)とを照合し、バトルを発生させるか否かの抽選を行う(ST502)。そしてその抽選結果がハズレであれば、スタート時の演出制御処理に復帰し、当選であればST504に移る(ST503)。ST504では、サブRAM205に記憶されている受信フラグを参照し、今回のゲームにおいてボーナス入賞役に内部当選したか否かを判別する(ST504)。本実施例では、バトル演出及びBRのいずれとも、ボーナス入賞役が内部当選した場合、その処理を中断するように構成している。よってST504の判別が“YES”のときは、仮にバトル演に発生抽選に当選した場合でも処理を中断して、スタート時の演出制御処理に復帰する。ST504の判別が“NO”のときは、バトル発生処理を継続し、サブRAM205に記憶されているバトル発生フラグをオン、モンスター種別フラグをセットし(ST505)、モンスター種別に従って、サブRAM205のBR継続回数カウンタにBR継続回数をセットし(ST506)、バトルの発生演出を行って(ST507)、スタート時の演出制御処理に復帰する。
・・・略・・・
【0144】ST706からはバトルの勝敗を判定する処理を行う。まず、サブRAM205に記憶されているモンスターHPカウンタを参照し、0以下か否かを判別する(ST706)、この判別が“NO”のときはST711に移り、判別が“YES”のとき、すなわちモンスター306を倒したときはBR突入条件を満足したことになるので、サブRAM205に記憶されているBRフラグ、及びBR突入演出フラグをオンする(ST707)。次にそれぞれのモンスター306の種別に応じてサブRAM205のBR継続回数カウンタに継続回数をセットする(ST708)。BR継続回数は、図9のモンスター種別表にある通り、「ミカポム」であれば30ゲーム、「クロッカ」であれば60ゲーム、「ヒーゴ」であれば120ゲームである。次に、サブCPU203は、獲得した経験値により職業のレベルが変化する「レベルチェンジ処理」を行い(ST709)、バトル発生フラグをオフにして(ST712)、バトル成功演出フラグに基づいて成功演出を行い(ST713)、1遊技終了時の遊技制御処理に復帰する。」
カ 上記アないしオから、甲1には、実施例として、次の発明が記載されているものと認められる。
「a1 外周面に複数の図柄が配置されて回転自在となっており、表示窓8L、8C、8Rと共に変動表示手段を構成する、リール9L、9C、9R(【0020】)を備え、
b1 リール9L、9C、9Rが回転を開始して一定の時間が経過して定速回転状態となり、遊技者が停止操作を行うと停止制御され(【0046】)、表示窓8L、8C、8Rに停止しているリール9L、9C、9Rの停止態様と入賞図柄組み合わせテーブルを照合して入賞の有無を判定する(【0048】)、スロットマシン(【0020】)であって、
c1、e1 バトル発生抽選処理を行い、当選であれば、バトル演出を発生させ(【0140】)、ゲーム回数が進み、主人公303及びモンスター306の何れかのキャラクタのHP(ヒットポイント:体力)10が0になったときにバトル演出を終了させ(【0069】、【0079】)、
d1 バトル演出に主人公303が勝利してモンスター306のHPが0と判定されたときに遊技補助期間であるバトルラッシュ(BR)の発生を決定する(【0069】、【0075】)、
サブCPU203(【0139】)を備え、
f1、g1 ダメージ量は、入賞した入賞役の種類によって決定され(【0079】)、1ゲームのゲーム結果がハズレだった場合、主人公303がモンスター306より攻撃を受け(【0081】)、
h1 1ゲームの結果として入賞が発生した場合、主人公303がモンスター306に対し攻撃し(【0081】)、バトル演出期間内において主人公303がモンスター306を倒すことができたときは、その後BRが発生(【0082】)し、
i1、j1、k1 BRの継続ゲーム回数はモンスター毎に異なった設定となっていて、強いモンスター(勝利しづらいモンスター)に勝利すれば、それだけ与えられるBRゲーム回数も多くなっているものであり(【0075】)、該BRゲーム回数は、モンスターが、「ミカポム」であれば30ゲーム、「クロッカ」であれば60ゲーム、「ヒーゴ」であれば120ゲームである(【0082】、【0144】)、
m1 スロットマシン(【0020】)。」(以下、「甲1発明」という。なお、記号a1ないしm1については、本件発明のAないしMに対応するように合議体が付し、引用箇所を併記した。)。
(2)甲2
特許異議申立人が提出した甲2であり、本件特許の出願前に頒布され、上記取消理由通知で引用された刊行物である「田窪千津子編集、「パチスロ攻略マガジンドラゴン2010年3月号」、第9巻第3号通巻119号、株式会社双葉社、2010年1月21日、第96頁ないし第103頁」には、次の事項が記載されている。
ア 「
」(99頁右上欄)
イ 「
」(99頁右下欄)
ウ 「
」(102頁左上欄)
エ 「
」(102頁右中欄)
オ 上記アないしエからみて、甲2には、以下の事項が記載されているものと認められる。
「c2、d2 「追想の刻」及び「争忍の刻」の2種のステージからなるART「バジリスクタイム」において、「追想の刻」で獲得ゲーム数を全て消化した後、「争忍の刻」に移行し、該「争忍の刻」は、味方である甲賀が敵である伊賀に勝利して「追想の刻」へ再度移行するか又は所定ゲーム数を消化するまで継続し(99頁右下欄、102頁左上欄)、
i2 「争忍の刻」で、甲賀が10人登場し、この10人のまま勝てば、ARTゲーム数・モード昇格抽選が優遇され(102頁左上欄)、
j2 甲賀が勝てば、「追想の刻」ゲーム数を10G以上獲得し(102頁右中欄の表)、
k2 甲賀が10人のまま勝てば、「追想の刻」ゲーム数を30G以上獲得する(102頁左上欄、同頁右中欄の表)、
m2 「バジリスク甲賀忍法帖」と称されるパチスロ機(99頁右上欄の画像)。」(以下「甲2の記載事項」という。なお、記号c2等については、本件発明のC等に対応するように合議体が付し、引用箇所を併記した。)
(3)甲3
特許異議申立人が令和1年11月14日付け意見書の添付書類として提出した甲3であり、本件特許の出願前に頒布され又は電気通信回線を通じて利用可能となった特開2008-200353号公報には、次の事項が記載されている。
ア 「【0028】
そして、本願発明に係るスロットマシンは、プレイヤがベットしたベット額に応じて遊技価値を消費して行う通常ゲームと、遊技価値を消費することなく行うフリーゲームの2種類のゲームに加えて、フリーゲーム中にフリーゲームと異なるサブゲームを行うことを特徴とする。また、サブゲームのゲーム結果に応じてプレイヤに利益を付与することを特徴とする。ここで、プレイヤに付与する利益としては、例えば、(1)通常ゲームからフリーゲームへと切り替わる確率を上昇させること、(2)現在実行するフリーゲームのゲーム回数を増加させること、(3)現在実行するフリーゲームの終了後に連続してフリーゲームを実行すること等がある。
【0029】
例えば、図1には本願発明を3列のリール5~7を備えたスロットマシンに適用した例を示す。スロットマシンにおいて通常ゲームが開始されると、各リール5~7が回転を開始し、シンボル列のスクロール表示が行われる。そして、所定時間が経過すると左から順にリール5~7が回転を停止し、各シンボル表示領域に対して最大9個のシンボルが表示される。ここで、ペイラインLに沿って「CHANCE」のシンボルが3つ揃って停止すると、通常ゲームからフリーゲームへとゲームモードが切り替わる。
そして、フリーゲーム中において、再び図1(1)に示すようにペイラインLに沿って「CHANCE」のシンボルが3つ揃って停止すると、図1(2)に示すようにフリーゲーム中にサブゲームが開始される。尚、サブゲームは複数種類あり、サブゲームが開始される前に実行されるサブゲームが毎回選択されるが、図1ではシャッフルされる複数枚のカードから当たりのカードを引き当てるサブゲームが選択された場合を説明する。
サブゲームではメイン液晶パネル11Bに対して「当たりカード」と「ハズレカード」を含む複数枚のカードが表示され、カードのシャッフルが行われる。そして、図1(3)に示すようにサブゲーム中に計3回、プレイヤの勝利条件である「当たりカード」を引いた場合には、図1(4)に示すように、フリーゲームが終了した後に通常ゲームからフリーゲームへと切り替わる確率を通常より上昇させた特別遊技状態に基づく通常ゲームが開始される。尚、その際の特別遊技状態に基づく通常ゲームが実行される期間は、サブゲームにおいて「当たりカード」を3回引く条件を満たすまでに要したカードを引く回数によって変化し、3回で条件を満たした場合には20ゲーム、4回で条件を満たした場合には10ゲーム、5回で条件を満たした場合には5ゲームとなる。一方、サブゲーム中に計3回、プレイヤの敗北条件である「ハズレカード」を引いた場合には、フリーゲームを終了した後に特別遊技状態が開始されることなく、一般遊技状態に基づいた通常ゲームが行われる。」
イ 「【0069】
以下には、特にサブゲームとして「シャッフルカードゲーム」が選択された場合を例に挙げて説明する。図11乃至図13はサブゲームとして「シャッフルカードゲーム」が選択された場合にメイン液晶パネル11Bに表示されるゲーム画面を示した図である。「シャッフルカードゲーム」が行われると、先ず、3枚のカード94~96がメイン液晶パネル11Bのシンボル表示部15~17の下方に対して表示される。3枚のカード94~96の内、一枚は『WIN』の文字が描かれた「当たりカード」であり、その他の2枚は何も描かれていない「ハズレカード」である。3枚のカード94~96は種別が判断できないように裏返しになった後にシャッフルされ、その後に、図11に示すように整列して配置される。そして、プレイヤは配置された3枚のカード94~96の内から一枚のカードをタッチパネル18により選択する。その結果、図11に示すように『WIN』の文字が描かれた「当たりカード」を引き当てた場合にはプレイヤの勝利となる。一方、何も描かれていない「ハズレカード」を引き当てた場合にはプレイヤの敗北となる。その際、勝敗表示部97には、プレイヤの勝利条件を満たした回数と敗北条件を満たした回数がそれぞれ表示される。
そして、プレイヤの勝利条件を3回満たした場合には、サブゲームを終了するとともに継続して残りのゲーム回数分のフリーゲームが実行される。更に、フリーゲームが終了すると、フリーゲーム開始条件が成立する確率が上昇した特別遊技状態に基づく通常ゲームが所定ゲーム回数分実行される。尚、その際の特別遊技状態に基づく通常ゲームのゲーム回数は、サブゲームのゲーム結果に基づいて決定される。例えば、「シャッフルカードゲーム」ではフリーゲームの回数はプレイヤの勝利条件を3回満たすまでに要したカードを引く回数によって変化し、3回で条件を満たした場合には20ゲーム、4回で条件を満たした場合には10ゲーム、5回で条件を満たした場合には5ゲームとなる。一方、プレイヤの敗北条件を3回満たした場合には、フリーゲーム終了後に一般遊技状態に基づく通常ゲームが実行される。」
ウ 上記ア及びイからみて、甲3には、以下の事項が記載されているものと認められる。
「b3 プレイヤがベットしたベット額に応じて遊技価値を消費して行う通常ゲームと、遊技価値を消費することなく行うフリーゲームの2種類のゲームに加えて、フリーゲーム中にフリーゲームと異なるサブゲームを行うスロットマシンにおいて(【0028】)、
i3、j3、k3、l3 サブゲーム中に計3回、プレイヤの勝利条件である「当たりカード」を引いた場合には、フリーゲームが終了した後に通常ゲームからフリーゲームへと切り替わる確率を通常より上昇させた特別遊技状態に基づく通常ゲームが開始され、
その際の特別遊技状態に基づく通常ゲームが実行される期間は、サブゲームにおいて「当たりカード」を3回引く条件を満たすまでに要したカードを引く回数によって変化し、3回で条件を満たした場合には20ゲーム、4回で条件を満たした場合には10ゲーム、5回で条件を満たした場合には5ゲームとなり、
一方、サブゲーム中に計3回、プレイヤの敗北条件である「ハズレカード」を引いた場合には、フリーゲームを終了した後に特別遊技状態が開始されることなく、一般遊技状態に基づいた通常ゲームが行われる(【0029】)、
m3 スロットマシン(【0028】)。」(以下「甲3の記載事項」という。なお、記号b3等については、本件発明のB等に対応するように合議体が付し、引用箇所を併記した。)
(4)対比
ア 本件発明と甲1発明とを対比する。なお、以下の見出し(a)ないし(m)は、本願補正発明のAないしMに対応させている。
(a)甲1発明の「複数の図柄」及び「変動表示手段」は、それぞれ本件発明の「複数種類の識別情報」及び「変動表示可能な可変表示部」に相当する。そして、甲1発明は、外周面に複数の図柄が配置されて回転自在となっているリール9L、9C、9Rと、表示窓8L、8C、8Rとで変動表示手段を構成しているのであるから、本件発明の「A 各々が識別可能な複数種類の識別情報を変動表示可能な可変表示部を備え、」に相当する構成を備える。
(b)(m)甲1発明の「表示窓8L、8C、8Rに停止しているリール9L、9C、9Rの停止態様と入賞図柄組み合わせテーブルを照合して入賞の有無を判定する、スロットマシン」は、本件発明の「B 前記可変表示部を変動表示した後、前記可変表示部の変動表示を停止することで表示結果を導出し、該表示結果に応じて入賞が発生可能なスロットマシン」に相当する。
(c)甲1発明の「バトル発生抽選処理を行い、当選」、「キャラクタのHP(ヒットポイント:体力)10が0になったとき」及び「バトル演出」は、それぞれ本件発明の「開始条件が成立」、「終了条件が成立」及び「特定状態」に相当する。そして、甲1発明は、バトル発生抽選処理を行い、当選(開始条件)であれば、バトル演出(特定状態)を発生させ、ゲーム回数が進み、主人公303及びモンスター306の何れかのキャラクタのHP10が0になったときにバトル演出(特定状態)を終了させるのであるから、本件発明の「C 開始条件が成立してから終了条件が成立するまでの複数回のゲームに亘って特定状態に制御可能な特定状態制御手段」に相当する構成を備える。
(d)甲1発明の「バトル演出に主人公303が勝利してモンスター306のHPが0と判定されたとき」及び「遊技補助期間であるバトルラッシュ(BR)」は、本件発明の「付与条件の成立」及び「遊技者にとって有利な有利状態に制御する権利である特典」に相当する。そして、甲1発明は、バトル演出に主人公303が勝利してモンスター306のHPが0と判定されたとき(付与条件の成立)に、遊技補助期間であるバトルラッシュ(BR)(特典)の発生を決定するのであるから、本件発明の「D 付与条件の成立に伴って、遊技者にとって有利な有利状態に制御する権利である特典を付与する特典付与手段」に相当する構成を備える。
(e)甲1発明の「主人公303」及び「モンスター306」は、それぞれ本件発明の「味方キャラクタ」及び「敵キャラクタ」に相当する。そして、上記(c)、(d)から明らかなとおり、甲1発明は、主人公303(味方キャラクタ)とモンスター306(敵キャラクタ)とがバトルを展開するものであるから、バトル演出が本件発明の「E 前記特定状態は、味方キャラクタと敵キャラクタとがバトルを展開するバトル演出が実行される状態であり、」に相当する構成を備える。
(f)甲1発明のf1、g1の「1ゲームのゲーム結果がハズレだった場合」、h1の「1ゲームの結果として入賞が発生した場合」は、それぞれ本件発明の「第1結果」、「第2結果」に相当する。そして、甲1発明は、1ゲームのゲーム結果がハズレだった場合(第1結果)、主人公303(味方キャラクタ)がモンスター306(敵キャラクタ)より攻撃を受け、1ゲームの結果として入賞が発生した場合(第2結果)、主人公303(味方キャラクタ)がモンスター306(敵キャラクタ)に対し攻撃するものであるから、本件発明の「F 前記特定状態においては、当該特定状態におけるゲームの結果が第1結果となったことに応じて前記味方キャラクタが前記敵キャラクタから攻撃を受け、当該特定状態におけるゲームの結果が当該第1結果とは異なる第2結果となったことに応じて前記味方キャラクタが前記敵キャラクタに攻撃をするものであり、」に相当する構成を備える。
(g)甲1発明のf1、g1における「主人公303がモンスター306より攻撃を受け」ることは、本件発明の「前記味方キャラクタが前記敵キャラクタから攻撃を受け」ることに相当し、モンスター306(敵キャラクタ)より攻撃を受けることにより主人公(味方キャラクタ)が敗北して(終了条件)バトル演出が終了するものである。そうすると、甲1発明の「g1 ダメージ量は、入賞した入賞役の種類によって決定され、ゲーム結果がハズレだった場合、主人公303がモンスター306より攻撃を受け、」と、本件発明の「G 前記終了条件は、前記特定状態におけるゲームの結果に応じて前記味方キャラクタが前記敵キャラクタから複数回数の攻撃を受けることにより成立し、」とは、「G’前記終了条件は、前記特定状態におけるゲームの結果に応じて前記味方キャラクタが前記敵キャラクタから攻撃を受けることにより成立し、」で共通する。
(h)甲1発明のh1は、主人公303(味方キャラクタ)がモンスター306(敵キャラクタ)に対し攻撃し、バトル演出期間内において主人公303がモンスター306を倒すことができたときは、その後BRが発生するものであるから、甲1発明は、本件発明の「H 前記付与条件は、前記特定状態におけるゲームの結果に応じて前記味方キャラクタが前記敵キャラクタに攻撃をすることにより成立し、」に相当する構成を備える。
(i)(j)(k)(l)甲1発明のi1、j1、k1は、倒したモンスターが「ミカポム」又は「クロッカ」(所定態様)のときにそれぞれ30又は60ゲームのBRゲームを獲得し、倒したモンスターが「ヒーゴ」であるとき、すなわち、「ミカポム」又は「クロッカ」(所定態様)でないときに、30又は60ゲームより長い期間である120ゲームのBRゲームを獲得するから、甲1発明のi1、j1、k1と、本件発明のI、J、Kとは、「I’、J’、K’ 前記特典付与手段は、所定の条件において前記有利状態に制御される期間の期待値が高くなるように特典を付与し、前記特定状態中に前記付与条件が成立したときに、前記有利状態に制御される期間が所定期間以上となるように特典を付与し、前記特定状態中に前記付与条件が成立したときに、当該特定状態において当該特定状態において前記所定の条件のときは、前記有利状態に制御される期間が前記所定期間より長い特定期間以上となるように特典を付与し」ている点で共通するといえる。
イ 上記アからみて、本件発明と甲1発明とは、
「A 各々が識別可能な複数種類の識別情報を変動表示可能な可変表示部を備え、
B 前記可変表示部を変動表示した後、前記可変表示部の変動表示を停止することで表示結果を導出し、該表示結果に応じて入賞が発生可能なスロットマシンにおいて、
C 開始条件が成立してから終了条件が成立するまでの複数回のゲームに亘って特定状態に制御可能な特定状態制御手段と、
D 付与条件の成立に伴って、遊技者にとって有利な有利状態に制御する権利である特典を付与する特典付与手段とを備え、
E 前記特定状態は、味方キャラクタと敵キャラクタとがバトルを展開するバトル演出が実行される状態であり、
F 前記特定状態においては、当該特定状態におけるゲームの結果が第1結果となったことに応じて前記味方キャラクタが前記敵キャラクタから攻撃を受け、当該特定状態におけるゲームの結果が当該第1結果とは異なる第2結果となったことに応じて前記味方キャラクタが前記敵キャラクタに攻撃をするものであり、
G’前記終了条件は、前記特定状態におけるゲームの結果に応じて前記味方キャラクタが前記敵キャラクタから攻撃を受けることにより成立し、
H 前記付与条件は、前記特定状態におけるゲームの結果に応じて前記味方キャラクタが前記敵キャラクタに攻撃をすることにより成立し、
I’、J’、K’ 前記特典付与手段は、
所定の条件において前記有利状態に制御される期間の期待値が高くなるように特典を付与し、
前記特定状態中に前記付与条件が成立したときに、前記有利状態に制御される期間が所定期間以上となるように特典を付与し、
前記特定状態中に前記付与条件が成立したときに、当該特定状態において前記所定の条件のときは、前記有利状態に制御される期間が前記所定期間より長い特定期間以上となるように特典を付与している、
M スロットマシン。」である点で一致し、次の点で相違する。
・相違点1(特定事項G)
「前記終了条件」は、
本件発明では、「前記特定状態におけるゲームの結果に応じて前記味方キャラクタが前記敵キャラクタから複数回数の攻撃を受けることにより成立」するのに対し、
甲1発明では、そのような特定はない点。
・相違点2(特定事項IないしL)
「所定の条件において前記有利状態に制御される期間の期待値が高くなるように特典を付与し、前記特定状態中に前記付与条件が成立したときに、前記有利状態に制御される期間が所定期間以上となるように特典を付与し、前記特定状態中に前記付与条件が成立したときに、当該特定状態において当該特定状態において前記所定の条件のときは、前記有利状態に制御される期間が前記所定期間より長い特定期間以上となるように特典を付与し」ている「特典付与手段」は、
本件発明では、「前記特定状態中に前記付与条件が成立したときに、当該特定状態において前記味方キャラクタが前記敵キャラクタから攻撃を受けていたときよりも、当該特定状態において当該味方キャラクタが当該敵キャラクタから攻撃を受けていなかったときの方が前記有利状態に制御される期間の期待値が高くなるように特典を付与し、前記特定状態中に前記付与条件が成立したときに、当該特定状態において前記味方キャラクタが前記敵キャラクタから攻撃を受けていたときは、前記有利状態に制御される期間が所定期間以上となるように特典を付与し、前記特定状態中に前記付与条件が成立したときに、当該特定状態において当該特定状態において前記味方キャラクタが前記敵キャラクタから攻撃を受けていなかったときは、前記有利状態に制御される期間が前記所定期間より長い特定期間以上となるように特典を付与し、前記特定状態中に前記付与条件が成立したときに、当該特定状態において前記味方キャラクタが前記敵キャラクタから攻撃を受けていた場合、当該敵キャラクタの攻撃回数が特別回数を超えていたときよりも、当該攻撃回数が当該特別回数以下であるときの方が前記有利状態に制御される期間の期間の期待値が高くなるように特典を付与する」のに対し、
甲1発明では、強いモンスターに勝利すれば、他のモンスターに勝利するより、与えられるBRゲーム回数(特典)も多くしているものの、本件発明のような特定はされていない点。
(5)判断
事案に鑑み、上記相違点2について検討する。
ア 上記甲2の記載事項(上記(2)オ)及び上記甲3の記載事項(上記(3)ウ)からみて、両者の共通点は、スロットマシンの演出において、特定状態のゲーム結果に応じて有利期間に長短を設定する点であり、当該共通点が周知技術といえるかもしれない。
イ しかしながら、仮に前記共通点が周知技術だとしても、甲1発明は、BRの継続ゲーム回数がモンスター毎に異なった設定となっていて、強いモンスター(勝利しづらいモンスター)に勝利すれば、それだけ与えられるBRゲーム回数も多くなっているものであるから、既に前記周知技術を備えるものである。そうすると、既に周知技術を備える甲1発明に、さらに同じ周知技術を重畳的に適用することになるとともに、そもそも、当該周知技術は、上記相違点2に係る本件発明の構成、特に上記「特別回数に関する特定事項」(上記第2の2(4))を備えないものであるから、当業者が前記周知技術を考慮したとしても、甲1発明において、上記相違点2に係る本件発明の構成に想到しない。
ウ 次に、上記甲2の記載事項(上記(2)オ)又は上記甲3の記載事項(上記(3)ウ)を甲1発明に適用して上記相違点2に係る本件発明に想到し得るかどうかを検討する。
エ まず、甲2の記載事項は、そもそも本件発明の「特別回数に関する特定事項」を備えていないものであるから、甲2の記載事項を甲1発明に適用しても上記相違点2に係る本件発明に想到しないことは明らかである。
オ そして、甲3の記載事項は、スロットマシンにおけるサブゲームにおいて、「当たりカード」を3回引く条件を満たすまでに要したカードを引く回数によって特別遊技状態に基づく通常ゲーム回数が変化し、3回で条件を満たした場合には20ゲーム、4回で条件を満たした場合には10ゲーム、5回で条件を満たした場合には5ゲームとなり、一方、サブゲーム中に計3回、プレイヤの敗北条件である「ハズレカード」を引いた場合には、フリーゲームを終了した後に特別遊技状態が開始されることなく、一般遊技状態に基づいた通常ゲームが行われるものであるから、一見して、本件発明の「特別回数に関する特定事項」に類似する構成を備え、甲1発明と甲3の記載事項とは、特定状態のゲーム結果に応じて有利期間に長短を設定するスロットマシンである点で共通するものであるから、甲3の記載事項を甲1発明に適用できるようにもみえる。
しかしながら、具体的には、甲1発明は特定状態がバトル演出であり、甲3の記載事項は特定状態がカードゲームであるから、甲3の記載事項を甲1発明のバトル演出に、そのまま適用することはできず、甲1発明に甲3の記載事項を適用することには阻害要因があるというべきである。
仮に、有利期間の長短に軽重を設定するものに関し、甲3の記載事項の「カードを引く回数」により設定する構成を、甲1発明に適用したとしても、本件発明のように、敵キャラクタからの攻撃回数の多寡に応じて、有利期間の長短に軽重を設定する構成に到るものではない。
カ また、甲1発明に甲2の記載事項を適用した上で、さらに甲3の記載事項を重畳的に適用することを検討したとしても、甲3の記載事項のバトル演出への適用に関する上記阻害要因を解消できるわけではないから、甲1発明において、上記相違点2に係る本件発明の特定事項のようになすことは、当業者が甲2の記載事項及び甲3の記載事項に基いて容易になし得たものではない。
キ よって、甲1発明において、上記相違点2に係る本件発明の特定事項となすことは当業者が容易になし得たものではない。
ク 以上のとおりであるから、相違点1に係る本件発明の構成の容易想到性について検討するまでもなく、本件発明は、甲1発明、甲2の記載事項、甲3の記載事項及び周知技術に基いて当業者が容易に発明することができたものであるとはいえない。
(6)小括
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由によって請求項1に係る特許を取り消すことはできない。
2 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由(新規事項追加;特許法第17条の2第3項)について
(1)特許異議申立人は、上記第4の1(2)のとおり、特許異議申立書で、平成30年8月24日提出の手続補正書でした補正により、訂正前発明における「前記特典付与手段は、前記特定状態中に前記付与条件が成立したときに当該特定状態において前記特定条件が成立していたときは、前記特定条件が成立していなかったときの方が前記有利状態に制御される期間の期待値が高くなるように特典を付与し、」との構成は、当初明細書等の段落【0298】の「・・・完全勝利時のときの方が、ノーマル勝利時のときよりも、より多くのナビストック数を獲得できる可能性が高いため、遊技者にとって有利度合いが高いといえる。」に対応するものの、当初明細書等に記載されている技術以外のものを含む構成となっていると主張している。
(2)当初明細書等には「【0016】 (2)(1)のスロットマシンにおいて、前記所定回数は0回であり、 前記特典付与手段は、前記付与条件が成立したときに前記特定状態において前記特定条件が成立していたときよりも前記特定条件が成立していなかったときの方が高い割合で、遊技者にとっての有利度合いが高くなるように、特典を付与する(図12のS16、S17、S19)。」と記載されており、特に「遊技者にとっての有利度合いが高くなるように、特典を付与する」の記載から、訂正前発明の「前記有利状態に制御される期間の期待値が高くなるように特典を付与し、」との技術的事項を導くことができる。
よって、平成30年8月24日提出の手続補正書でした補正は、当初明細書等に記載された範囲内でなされたものであり、新たな技術的事項を導入するものではない。
なお、本件訂正により、訂正前発明における「前記特典付与手段は、前記特定状態中に前記付与条件が成立したときに当該特定状態において前記特定条件が成立していたときは、前記特定条件が成立していなかったときの方が前記有利状態に制御される期間の期待値が高くなるように特典を付与し、」との構成は、「前記特典付与手段は、前記特定状態中に前記付与条件が成立したときに、当該特定状態において前記味方キャラクタが前記敵キャラクタから攻撃を受けていたときよりも、当該特定状態において当該味方キャラクタが当該敵キャラクタから攻撃を受けていなかったときの方が前記有利状態に制御される期間の期待値が高くなるように特典を付与し、」と限定された。
(3)小括
以上のとおりであるから、特許異議申立理由によって請求項1に係る特許を取り消すことはできない。
3 令和1年11月14日付け意見書における特許異議申立人の主張について
(1)特許異議申立人は、令和1年11月14日付け意見書(以下単に「意見書」という。)において、概略、以下のとおり主張している。
ア 訂正要件違反(意見書3頁10行ないし6頁14行)
(ア)本件発明において、
「I 前記特典付与手段は、
前記特定状態中に前記付与条件が成立したときに、当該特定状態において前記味方キャラクタが前記敵キャラクタから攻撃を受けていたときよりも、当該特定状態において当該味方キャラクタが当該敵キャラクタから攻撃を受けていなかったときの方が前記有利状態に制御される期間の期待値が高くなるように特典を付与し、」と、
「L 前記特定状態中に前記付与条件が成立したときに、当該特定状態において前記味方キャラクタが前記敵キャラクタから攻撃を受けていた場合、当該敵キャラクタの攻撃回数が特別回数を超えていたときよりも、当該攻撃回数が当該特別回数以下であるときの方が前記有利状態に制御される期間の期間の期待値が高くなるように特典を付与する、」と、
を同時に備える構成は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件特許明細書等」という。)に記載されていない。
よって、本件訂正は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内でしたものでなく、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に違反するから、本件訂正は認められない。
(イ)仮に、構成Lを新たに加えることが新規事項ではなかったとしても、例えば特別回数が「1」の場合において、敵キャラクタからの攻撃回数が1回の場合、攻撃回数が0回の場合より有利度合いが低く設定されるが、敵キャラクタからの攻撃回数が2回以上の場合、相互に有利度合いが同じに設定され、有利度合いをどのように設定すべきか不明であり、構成Iと構成Lとを組み合わせることは困難である。
(ウ)また、仮に構成Iと構成Lとを組み合わせることが技術的に可能である場合であっても、本件発明は、以下のaないしcのように、全体として技術的に整合が取れていない事項を含み、当該事項は、本件特許明細書等に記載されていない。
a 本件発明は、「G 前記終了条件は、前記特定状態におけるゲームの結果に応じて前記味方キャラクタが前記敵キャラクタから複数回数の攻撃を受けることにより成立し」との記載のように、終了条件に関して、特定状態が、敵キャラクタから複数回数の攻撃を受けることにより終了する、とあるのみで、その他に終了条件の記載がないから、味方キャラクタが敵キャラクタから攻撃を受けずに有利状態に制御するタイミングでは、特定状態が終了しておらず、矛盾した事項を含む。
b 本件発明は、上記構成Gの終了条件を規定する複数回数と、上記構成Lの特別回数と、の関係の限定がないため、特別回数として、複数回数を超えた回数が設定されることがあり得、構成Lが文章として成立しえない状態も含む。
c 本件発明の上記構成Lにおいて、「特別回数」については何ら限定がないから「0」回も含むものと理解でき、「特別回数」が「0」回の場合、「攻撃回数が特別回数(「0」回)を超えていたときよりも」、「有利状態に制御される期間の期待値が高くなるよう特定を付与」する状況が不明となる。
イ 進歩性の欠如(意見書6頁15行ないし7頁下から10行)
本件発明の構成IないしLに関して、特定状態のゲーム結果に応じて有利度合いに軽重を付したり、有利期間に長短を設定したりすることは甲2及び甲3に記載されているように周知慣用技術であるから、本件発明は、甲1、甲2及び甲3に記載の技術的事項を基にして当業者が容易に想到し得たものである。
よって、本件発明は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、本件特許は、同法第114条第2項の規定により取り消されるべきものである。
(2)上記(1)について検討する。
ア 訂正要件違反について
上記(1)ア(ア)については、上記第2の2(4)で検討したように、本件特許の明細書又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものである。
上記(1)ア(イ)及び(ウ)のように、特許異議申立人は、構成同士の組み合わせ困難性や技術的整合性について縷々主張するが、新たな技術的事項を導入するか否かについて直接述べているとは認められないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に違反するかどうかについての主張として採用することができない。
なお、本件発明は、構成Lにおける「前記特定状態中に前記付与条件が成立したときに、当該特定状態において前記味方キャラクタが前記敵キャラクタから攻撃を受けていた場合」、要するに、攻撃回数が1回以上であることを前提として、攻撃回数が「特別回数」を超えているか否かを言及しているのであるから、「特別回数」が2回以上の所定回数であることは自明である。そうすると、上記(1)ア(イ)、(ウ)b及びcのように、特別回数を「0回」又は「1回」と解することはできない。
また、上記(1)イ(ウ)aのように、本件発明の構成Gの「終了条件」については、特定状態が、敵キャラクタから複数回数の攻撃を受けることにより終了することしか限定がないものの、他の終了条件について排除するものではないから、味方キャラクタが敵キャラクタから攻撃を受けずに有利状態に制御するタイミングで、特定状態が終了することがあり得ないとまではいえない。
イ 進歩性の欠如について
上記第5の1(5)で検討したように、特定状態のゲーム結果に応じて有利度合いに軽重を付したり、有利期間に長短を設定したりすることが甲2及び甲3に記載されているように周知技術であったとしても、そもそも、当該周知技術は、上記「特別回数に関する特定事項」(上記第2の2(4))を備えないものであるから、当業者が前記周知技術を考慮したとしても、甲1発明において、上記「特別回数に関する特定事項」に係る本件発明の構成に想到しない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立ての理由及び証拠によっては、請求項1に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2019-700444