審決検索MVP
← 検索一覧に戻る
特許異議申立

2019-700432

断熱材及びその製造方法

審判番号
2019-700432
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2013-187354外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2019年05月28日
審決日
2020年05月01日
公報発行日
2020年09月25日
結論
請求成立(取消)
当事者
審判長/審判官
分類
P1651.113-ZDA(F16L) / P1651.121-ZDA(F16L) / P1651.536-ZDA(F16L) / P1651.537-ZDA(F16L)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第4項第1号、特許法第29条第1項、特許法第36条第6項第2号、特許法第29条第1項第3号、特許法第113条第2号、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の8第1項
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特許第6431252号発明「断熱材及びその製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

【結 論】 特許第6431252号の明細書、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~8〕について訂正することを認める。 特許第6431252号の請求項1~3及び5に係る特許を取り消す。 特許第6431252号の請求項7に係る特許を維持する。 特許第6431252号の請求項4、6及び8に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯 特許第6431252号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~8に係る特許についての出願は、平成25年9月10日(優先権主張平成24年9月28日)の出願であって、平成30年11月9日にその特許権の設定登録がされ、平成30年11月28日に特許掲載公報が発行され、これに対して令和元年5月28日に特許異議申立人である河井 清悦(以下、「申立人」という。)により、本件特許の請求項1~8に係る特許について特許異議の申立てがされたものである。 そして、その後の手続は以下のとおりである。 ・令和元年7月26日付けで取消理由通知 ・令和元年9月27日に特許権者による意見書及び訂正請求書の提出 ・令和元年11月6日に申立人による意見書の提出 ・令和元年11月29日付けで取消理由通知(決定の予告) ・令和2年1月29日に特許権者による意見書及び訂正請求書の提出 ・令和2年3月5日に申立人による意見書の提出 なお、令和2年1月29日に訂正請求がなされたため、特許法第120条の5第7項の規定により、令和元年9月27日の訂正請求は取り下げられたものとみなす。 第2 訂正の適否 1 訂正の内容 令和2年1月29日に提出された訂正請求書による訂正の請求は、本件特許の明細書、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~8について訂正すること(以下、「本件訂正」という。)を求めるものであって、その内容は以下の訂正事項1~11のとおりである。なお、下線は、特許権者が訂正箇所を示すために付したものである。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に「非晶質耐火原料としてフュームドシリカ又はフュームドアルミナを20質量%以上90質量%以下含む断熱材。」と記載されているのを、「非晶質耐火原料としてBET比表面積が50m2/g以上であるフュームドシリカ又はフュームドアルミナを30質量%以上90質量%以下含むとともに、ジルコン、炭化珪素、チタニアのいずれか1種又は2種以上を10質量%以上含有し、0.1耐力時におけるセカント弾性係数が8N/mm2以上である断熱材。」(請求項1の記載を引用する請求項2-3,5,7も同様に訂正する。)。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項4を削除する。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項5に「アルカリ金属元素及びアルカリ土類金属を含有しない請求項1から4のいずれかに記載の断熱材。」と記載されているのを、「アルカリ金属元素及びアルカリ土類金属を含有しない請求項1から3のいずれかに記載の断熱材。」に訂正する(請求項5の記載を引用する請求項7も同様に訂正する。)。 (4)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項6を削除する。 (5)訂正事項5 特許請求の範囲の請求項7に「請求項1から6のいずれかに記載の断熱材を製造する断熱材の製造方法において、」と記載されているのを、「請求項1から3及び5のいずれかに記載の断熱材を製造する断熱材の製造方法において、」に訂正する。 (6)訂正事項6 特許請求の範囲の請求項7に「非晶質耐火原料としてフュームドシリカ又はフュームドアルミナを20質量%以上90質量%以下含む断熱材用原料から成る成形体」と記載されているのを、「非晶質耐火原料としてBET比表面積が50m2/g以上であるフュームドシリカ又はフュームドアルミナを30質量%以上90質量%以下含むとともに、ジルコン、炭化珪素、チタニアのいずれか1種又は2種以上を10質量%以上含有する断熱材用原料から成る成形体」に訂正する。 (7)訂正事項7 特許請求の範囲の請求項7に「焼成後の収縮率が7~40%になる焼成条件で焼成する」と記載されているのを、「焼成後の収縮率が7~40%になるように1000℃以上の焼成条件で焼成する」に訂正する。 (8)訂正事項8 特許請求の範囲の請求項8を削除する。 (9)訂正事項9 明細書の段落【0035】の【表1】に「実施例8」、「実施例12」と記載されているのを、それぞれ「参考例8」、「参考例12」に訂正する。 (10)訂正事項10 明細書の段落【0038】に「実施例8~11は、非晶質耐火原料である乾式フュームドシリカのBET比表面積を変化させたものである。いずれもの実施例も、気孔体積が27vol%以上、熱伝導率が0.1W/mK以下、加熱後収縮率が4%以下という本発明の要件は満たしているが、BET比表面積が20g/m2の実施例8は、セカント弾性係数が8N/mm2未満となった。実施例9の結果と併せて考慮すると、非晶質耐火原料のBET比表面積は50g/m2以上が好ましいと言える。」と記載されているのを、「参考例8及び実施例9~11は、非晶質耐火原料である乾式フュームドシリカのBET比表面積を変化させたものである。いずれも、気孔体積が27vol%以上、熱伝導率が0.1W/mK以下、加熱後収縮率が4%以下という本発明の要件は満たしているが、BET比表面積が20g/m2の参考例8は、セカント弾性係数が8N/mm2未満となった。実施例9の結果と併せて考慮すると、非晶質耐火原料のBET比表面積は50g/m2以上が好ましいと言える。」に訂正する。 (11)訂正事項11 明細書の段落【0039】に「実施例12~15は、非晶質耐火原料である乾式フュームドシリカの含有量を変化させたものである。いずれもの実施例も、気孔体積が27vol%以上、熱伝導率が0.1W/mK以下、加熱後収縮率が4%以下という本発明の要件は満たしているが、乾式フュームドシリカの含有量が20質量%の実施例12は、セカント弾性係数が8N/mm2未満となった。実施例13の結果と併せて考慮すると、非晶質耐火原料の含有量は30質量%以上が好ましいと言える。」と記載されているのを、「参考例12及び実施例13~15は、非晶質耐火原料である乾式フュームドシリカの含有量を変化させたものである。いずれも、気孔体積が27vol%以上、熱伝導率が0.1W/mK以下、加熱後収縮率が4%以下という本発明の要件は満たしているが、乾式フュームドシリカの含有量が20質量%の参考例12は、セカント弾性係数が8N/mm2未満となった。実施例13の結果と併せて考慮すると、非晶質耐火原料の含有量は30質量%以上が好ましいと言える。」に訂正する。 2 訂正の目的の適否、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1)訂正事項1について ア 訂正の目的について 訂正事項1は、訂正前の請求項1に記載された非晶質耐火原料として含む「フュームドシリカ又はフュームドアルミナ」について、「BET比表面積が50m2/g以上である」こと及び「30質量%以上90質量%以下含む」ことを限定し、また、「断熱材」について、「ジルコン、炭化珪素、チタニアのいずれか1種又は2種以上を10質量%以上含有」すること及び「0.1耐力時におけるセカント弾性係数が8N/mm2以上である」ことを限定するものであるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「特許明細書等」という。)に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項1は、明細書の段落【0019】における「気孔径100nm以下の気孔体積27vol%以上を確保し、熱伝導率0.1W/mK以下を達成し、かつ0.1耐力時におけるセカント係数8N/mm2以上を確保するには、断熱材の原料中の非晶質耐火原料のBET比表面積は50m2/g以上とし、その含有量は30質量%以上とすることが好ましい。」との記載、段落【0020】における「非晶質耐火原料の材質は特段の制約はなく、設計する最高使用温度に応じて選定、あるいは適宜組み合わせて使用すれば良いが、典型的にはシリカ質又はアルミナ質のフュームド原料(フュームドシリカ又はフュームドアルミナ)を使用できる。・・・いずれの非晶質耐火原料も、上記の理由からBET比表面積は50m2/g以上であることが好ましい。」との記載、段落【0021】における「通常、高温用として使用する場合は、赤外線不透過材としてジルコン(ZrSiO4)、炭化珪素(SiC)、チタニア(TiO2)等を併用することができる。これらの赤外線不透過材は、断熱材の原料全体(断熱材)に占める割合で合計10質量%以上使用すると効果が得られる。」との記載及び段落【0015】における「また、本発明の断熱材は、0.1耐力時におけるセカント弾性係数は8N/mm2以上であることが好ましい。」との記載に基づくものであるから、特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。 ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 訂正事項1は、上記ア及びイの検討も考慮すると、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。 (2)訂正事項2について ア 訂正の目的について 訂正事項2は、特許請求の範囲の請求項4を削除するというものである。 したがって、訂正事項2は、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 イ 特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること 上記アに記載したとおり、訂正事項2は、特許請求の範囲の請求項4を削除するというものであるから、特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。 ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 上記アに記載したとおり、訂正事項2は、特許請求の範囲の請求項4を削除するというものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。 (3)訂正事項3について ア 訂正の目的について 訂正事項3は、訂正前の請求項5の記載が請求項4を含む複数の先行する請求項を引用する記載であったものを、請求項4の記載を引用しないものとして、引用する請求項の選択肢を削除する訂正であるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 イ 特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項3は、引用する請求項の選択肢を削除する訂正であるから、特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものである。 ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 訂正事項3は、引用する請求項の選択肢を削除する訂正であるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。 (4)訂正事項4について ア 訂正の目的について 訂正事項4は、特許請求の範囲の請求項6を削除するというものである。 したがって、訂正事項4は、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 イ 特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること 上記アに記載したとおり、訂正事項4は、特許請求の範囲の請求項6を削除するというものであるから、特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。 ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 上記アに記載したとおり、訂正事項4は、特許請求の範囲の請求項6を削除するというものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。 (5)訂正事項5について ア 訂正の目的について 訂正事項5は、訂正前の請求項7の記載が請求項4及び6を含む複数の先行する請求項を引用する記載であったものを、請求項4及び6の記載を引用しないものとして、引用する請求項の選択肢を削除する訂正であるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 イ 特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項5は、引用する請求項の選択肢を削除する訂正であるから、特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものである。 ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 訂正事項5は、引用する請求項の選択肢を削除する訂正であるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。 (6)訂正事項6について ア 訂正の目的について 訂正事項6は、訂正前の請求項7に記載された断熱材用原料が非晶質耐火原料として含む「フュームドシリカ又はフュームドアルミナ」について、「BET比表面積が50m2/g以上である」こと及び「30質量%以上90質量%以下含む」ことを限定し、また、「断熱材用原料から成る成形体」について、「ジルコン、炭化珪素、チタニアのいずれか1種又は2種以上を10質量%以上含有する」することを限定するものであるから「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 イ 特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項6は、明細書の段落【0019】における「気孔径100nm以下の気孔体積27vol%以上を確保し、熱伝導率0.1W/mK以下を達成し、かつ0.1耐力時におけるセカント係数8N/mm2以上を確保するには、断熱材の原料中の非晶質耐火原料のBET比表面積は50m2/g以上とし、その含有量は30質量%以上とすることが好ましい。」との記載、段落【0020】における「非晶質耐火原料の材質は特段の制約はなく、設計する最高使用温度に応じて選定、あるいは適宜組み合わせて使用すれば良いが、典型的にはシリカ質又はアルミナ質のフュームド原料(フュームドシリカ又はフュームドアルミナ)を使用できる。・・・いずれの非晶質耐火原料も、上記の理由からBET比表面積は50m2/g以上であることが好ましい。」との記載、段落【0021】における「通常、高温用として使用する場合は、赤外線不透過材としてジルコン(ZrSiO4)、炭化珪素(SiC)、チタニア(TiO2)等を併用することができる。これらの赤外線不透過材は、断熱材の原料全体(断熱材)に占める割合で合計10質量%以上使用すると効果が得られる。」との記載に基づくものであるから、特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。 ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 訂正事項6は、上記ア及びイの検討も考慮すると、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。 (7)訂正事項7について ア 訂正の目的について 訂正事項7は、訂正前の請求項7に記載された「焼成条件」について、「1000℃以上」であることを限定するものであるから「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 イ 特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項7は、明細書の段落【0035】における表1の各実施例に、焼成条件が1000℃及びそれ以上のものが記載されていることに基づくものであるから、特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。 ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 訂正事項7は、上記ア及びイの検討も考慮すると、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。 (8)訂正事項8について ア 訂正の目的について 訂正事項8は、特許請求の範囲の請求項8を削除するというものである。 したがって、訂正事項8は、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 イ 特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること 上記アに記載したとおり、訂正事項8は、特許請求の範囲の請求項8を削除するというものであるから、特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。 ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 上記アに記載したとおり、訂正事項8は、特許請求の範囲の請求項8を削除するというものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。 (9)訂正事項9~11について ア 訂正の目的について 訂正事項9~11は、訂正事項1及び6により本件特許の請求項1~3、5及び7に係る発明の技術的範囲から外れることになった明細書の発明の詳細な説明に記載の「実施例8」及び「実施例12」を、それぞれ「参考例8」及び「参考例12」とするものであり、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るだけのものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 イ 特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること 上記アに記載したとおり、訂正事項9~11は、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るものであるから、特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。 ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 訂正事項9~11は、上記ア及びイの検討も考慮すると、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。 3 一群の請求項について 訂正前の請求項1~8は、請求項2~8が、請求項1を引用する関係にあり、訂正される請求項1に連動して訂正されるから、訂正前において一群の請求項に該当するものである。 したがって、本件訂正の請求は、一群の請求項ごとにされたものである。 4 小括 以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 よって、結論のとおり本件訂正を認める。 第3 訂正後の本件発明 本件特許の請求項1~3、5及び7に係る発明(以下、それぞれ「本件訂正発明1」などという。)は、それぞれ本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1~3、5及び7に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。 「【請求項1】 気孔径100nm以下の気孔体積が27vol%以上、600℃における熱伝導率が0.1W/mK以下、1000℃3時間加熱後の収縮率が4%以下であり、非晶質耐火原料としてBET比表面積が50m2/g以上であるフュームドシリカ又はフュームドアルミナを30質量%以上90質量%以下含むとともに、ジルコン、炭化珪素、チタニアのいずれか1種又は2種以上を10質量%以上含有し、0.1耐力時におけるセカント弾性係数が8N/mm2以上である断熱材。 【請求項2】 気孔径100nm以下の気孔体積が53vol%以上である請求項1に記載の断熱材。 【請求項3】 1000℃3時間加熱後の収縮率が2%以下である請求項1又は2に記載の断熱材。 【請求項4】(削除) 【請求項5】 アルカリ金属元素及びアルカリ土類金属を含有しない請求項1から3のいずれかに記載の断熱材。 【請求項6】(削除) 【請求項7】 請求項1から3及び5のいずれかに記載の断熱材を製造する断熱材の製造方法において、非晶質耐火原料としてBET比表面積が50m2/g以上であるフュームドシリカ又はフュームドアルミナを30質量%以上90質量%以下含むとともに、ジルコン、炭化珪素、チタニアのいずれか1種又は2種以上を10質量%以上含有する断熱材用原料から成る成形体を、焼成後の収縮率が7~40%になるように1000℃以上の焼成条件で焼成することを特徴とする断熱材の製造方法。 【請求項8】(削除)」 第4 特許異議申立理由の概要及び証拠方法 特許異議申立書における特許異議申立理由の概要及び証拠方法は以下のとおりである。 1 特許異議申立理由の概要 (1)理由1:特許法第29条第1項第3号(同法第113条第2号)について 本件特許の請求項1~8に係る発明は、甲第1号証に記載の発明(甲第3号証の実験成績証明書の内容も参酌)と同一である。 (2)理由2:特許法第29条第2項(同法第113条第2号)について 本件特許の請求項1~8に係る発明は、甲第1号証に記載の発明及び甲第2号証に記載された周知の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (3)理由3:特許法第36条第4項第1号(同法第113条第4号)について 本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載には不備があり、本件特許の請求項1~8に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 (4)理由4:特許法第36条第6項第1号(同法第113条第4号)について 本件特許の請求項1~8に記載された発明は、発明の詳細な説明に記載したものではなく、本件特許の請求項1~8に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 (5)理由5:特許法第36条第6項第2号(同法第113条第4号)について 本件特許の請求項1~8の記載は、特許を受けようとする発明が明確ではなく、本件特許の請求項1~8に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 2 証拠方法 ・甲第1号証:特許第4860005号公報(以下、「甲1」という。) ・甲第2号証:国際公開第2012/090566号(以下、「甲2」という。) ・甲第3号証:申立人が作成した実験成績証明書(甲1の実施例V(#250)、実施例VIII(#250)及び実施例VIII(#450)の3つの断熱材について、気孔径100nm以下の気孔体積を測定した結果について)、実験者及び実験場所:一般財団法人ファインセラミックスセンター、令和元年5月24日(以下、「甲3」という。) 第5 取消理由(決定の予告)の概要 当審において、令和元年11月29日付けで通知した取消理由(決定の予告)の概要は以下のとおりである。 1 理由1(新規性) 本件特許の請求項1、3及び5に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1に記載された発明(甲3の実験成績証明書の内容も参酌)であり、特許法第29条第1項第3号に掲げる発明に該当し、特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1、3及び5に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 2 理由2(進歩性) 本件特許の請求項1~5、7及び8に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1に記載された発明(甲3の実験成績証明書の内容も参酌)及び甲2に記載された事項に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許の請求項1~5、7及び8に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 3 理由3(明確性) 本件特許の請求項1~5、7及び8の記載は、特許を受けようとする発明が明確ではないから、本件特許の請求項1~5、7及び8に係る特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。 第6 当審の判断 1 取消理由(決定の予告)の理由1(新規性)及び理由2(進歩性)について 令和元年11月29日付けで通知した取消理由(決定の予告)の理由1及び理由2について、以下に検討する。 1-1 甲1~3について (1)甲1について ア 甲1の記載 本件特許の優先日前に頒布された刊行物である甲1には、次の記載がある。なお、下線は当審で付したものである(甲2についても同様)。 (ア)「【0001】 本発明は、断熱材及びその製造方法に関し、特に、断熱材の強度の向上に関する。 ・・・ 【0006】 本発明は、上記課題に鑑みて為されたものであって、優れた断熱性と強度とを兼ね備えた断熱材及びその製造方法を提供することをその目的の一つとする。 【課題を解決するための手段】 【0007】 上記課題を解決するための本発明の一実施形態に係る断熱材は、平均粒径50nm以下の金属酸化物微粒子と補強繊維とを含み、前記金属酸化物微粒子間に、前記金属酸化物微粒子の一部が溶出して形成された架橋構造を有することを特徴とする。本発明によれば、優れた断熱性と強度とを兼ね備えた断熱材を提供することができる。」 (イ)「【0019】 まず、本実施形態に係る断熱材の製造方法(以下、「本方法」という。)について説明する。図1は、本方法の一例に含まれる主な工程を示す説明図である。図1に示すように、本方法は、平均粒径50nm以下の金属酸化物微粒子と補強繊維とを含む乾式加圧成形体を、温度100℃以上の加圧された水蒸気飽和雰囲気で養生する養生工程S1と、養生された当該乾式加圧成形体を乾燥する乾燥工程S2と、を含む。 【0020】 養生工程S1において養生される乾式加圧成形体は、金属酸化物微粒子と補強繊維とを含む断熱材原料から作製される。金属酸化物微粒子は、平均粒径が50nm以下のものであれば特に限られず、任意の1種を単独で又は2種以上を任意に組み合わせて使用することができる。 【0021】 金属酸化物微粒子を構成する金属酸化物としては、温度100℃以上の加圧された水蒸気飽和雰囲気中で当該微粒子から溶出するもの(水に溶解するもの)であれば特に限られず、例えば、シリカ及び/又はアルミナを好ましく使用することができ、シリカを特に好ましく使用することができる。 【0022】 すなわち、金属酸化物微粒子は、シリカ微粒子及び/又はアルミナ微粒子を含むことが好ましく、シリカ微粒子を含むことが特に好ましい。金属酸化物微粒子がシリカ微粒子を含む場合、本方法により製造される断熱材の強度を特に効果的に高めることができる。金属酸化物微粒子がシリカ微粒子を含む場合、当該金属酸化物微粒子は、さらにアルミナ微粒子を含むこととしてもよい。金属酸化物微粒子がアルミナ微粒子を含む場合、本方法により製造される断熱材の耐熱性をも効果的に高めることができる。 【0023】 シリカ微粒子及び/又はアルミナ微粒子としては、気相法で製造されたもの又は湿式法で製造されたものの一方又は両方を使用することができ、気相法で製造されたものを好ましく使用することができる。 【0024】 すなわち、シリカ微粒子及び/又はアルミナ微粒子としては、気相法で製造された乾式シリカ微粒子(無水シリカ微粒子)及び/又は乾式アルミナ微粒子(無水アルミナ微粒子)を使用することができ、湿式法で製造された湿式シリカ微粒子及び/又は湿式アルミナ微粒子を使用することもでき、中でも当該乾式シリカ微粒子及び/又は乾式アルミナ微粒子を好ましく使用することができる。 【0025】 より具体的に、例えば、気相法で製造されたフュームドシリカ微粒子及び/又はフュームドアルミナ微粒子を好ましく使用することができ、中でも親水性フュームドシリカ微粒子及び/又は親水性フュームドアルミナ微粒子を好ましく使用することができる。シリカ微粒子のシリカ(SiO2)含有量及びアルミナ微粒子のアルミナ(Al2O3)含有量は、例えば、それぞれ95重量%以上であることが好ましい。 【0026】 金属酸化物微粒子の平均粒径(より具体的には、金属酸化物微粒子の一次粒子の平均粒径)は、50nm以下であれば特に限られず、例えば、2nm以上、50nm以下とすることができ、2nm以上、30nm以下とすることもできる。 【0027】 金属酸化物微粒子のBET法による比表面積は、例えば、50m2/g以上であることが好ましい。より具体的に、この比表面積は、例えば、50m2/g以上、400m2/g以下であることが好ましく、100m2/g以上、400m2/g以下であることがより好ましい。」 (ウ)「【0042】 乾式加圧成形体は、さらに他の成分を含むこととしてもよい。すなわち、乾式加圧成形体は、例えば、輻射散乱材を含むこととしてもよい。輻射散乱材は、輻射による伝熱を低減することのできるものであれば特に限られず、任意の1種を単独で又は2種以上を任意に組み合わせて使用することができる。具体的に、輻射散乱材としては、例えば、炭化珪素、ジルコニア、珪酸ジルコニウム及びチタニアからなる群より選択される1種以上を使用することができる。 【0043】 輻射散乱材の平均粒径は、例えば、1μm以上、50μm以下であることが好ましく、1μm以上、20μm以下であることがより好ましい。輻射散乱材としては、遠赤外線反射性のものを好ましく使用することができ、例えば、1μm以上の波長の光に対する比屈折率が1.25以上であるものが好ましい。 【0044】 輻射散乱材を使用する場合、乾式加圧成形体は、例えば、50~93質量%の金属酸化物微粒子と、2~20質量%の補強繊維と、5~40質量%の輻射散乱材とを含むことができ、65~80質量%の金属酸化物微粒子と、5~18質量%の補強繊維と、15~30質量%の輻射散乱材とを含むこととしてもよい。 【0045】 なお、上述した乾式加圧成形体における金属酸化物微粒子の含有量は、当該金属酸化物微粒子が複数種類の金属酸化物微粒子(例えば、シリカ微粒子及びアルミナ微粒子)を含む場合、当該複数種類の金属酸化物微粒子の合計含有量(例えば、シリカ微粒子の含有量とアルミナ微粒子の含有量との合計)である。」 (エ)「【0062】 こうして、本方法により製造される断熱材は、図2Bに示すように、架橋構造Bで連結された多数の一次粒子Mによって形成された孔構造Sbを有することとなる。この孔構造Sbは、一次粒子Mの一部が溶出することにより形成された結果、あたかも当該一次粒子Mが融着して形成されたような多孔構造として観察される(例えば、透過型電子顕微鏡観察)。 【0063】 また、孔構造Sbには、図2Bに示すように、架橋構造Bで連結された一次粒子Mによって囲まれた孔Pが形成されている。孔構造Sbに形成された孔Pの径は、例えば、10~200nmである。断熱材は、このような孔構造Sbを有することにより、優れた断熱性を発揮する。」 (オ)「【0085】 また、本断熱材がアルミナ微粒子を含む場合(特に、本断熱材がシリカ微粒子及びアルミナ微粒子を含む場合)、本断熱材は、優れた強度に加えて、優れた耐熱性をも備える。 【0086】 すなわち、この場合、本断熱材は、例えば、その1000℃における加熱線収縮率が3%以下とすることができる。また、本断熱材は、1150℃における加熱線収縮率が15%以下とすることもできる。 ・・・ 【0095】 また、本断熱材は、従来のように密度を高めることなく十分な強度を達成しているため、固体伝熱の増加による断熱性能の低下を効果的に回避することができており、その結果、優れた断熱性能を備えている。 【0096】 すなわち、本断熱材は、例えば、600℃における熱伝導率が0.08W/(m・K)以下である断熱材とすることができる。さらに、本断熱材の600℃における熱伝導率は、例えば、好ましくは0.05W/(m・K)以下であり、より好ましくは0.04W/(m・K)以下である。 ・・・ 【0101】 そして、本断熱材は、上述のとおり、金属酸化物微粒子の使用によって、その内部に、空気分子の平均自由行程よりも小さい(径がナノメートルオーダーの)孔が形成された孔構造を有する。その結果、本断熱材は、低温域から高温域までの幅広い温度範囲で優れた断熱性能を発揮することができる。」 (カ)「【0103】 次に、本実施形態に係る具体的な実施例について説明する。 【実施例1】 【0104】 [断熱材の製造] 一次粒子の平均粒径が約13nmの無水シリカ微粒子(親水性フュームドシリカ微粒子)と、平均繊維径11μm、平均繊維長6mmのEガラス繊維とを含み、結合剤を含まない乾式加圧成形体を作製した。 【0105】 すなわち、95質量%のシリカ微粒子及び5質量%のEガラス繊維を含む断熱材原料を混合装置に投入し、乾式混合した。そして、得られた乾式混合粉体から、乾式プレス成形により、寸法150mm×100mm×厚さ25mmの板状の乾式加圧成形体を作製した。 【0106】 具体的に、まず、乾式混合粉体を、所定の脱気機構が付属した成形型に適量充填した。そして、所望の嵩密度が得られるように、乾式プレス成形を行った。すなわち、乾式プレス成形においては、乾式加圧成形体の嵩密度が250kg/m3となるようにプレス圧を調節した。成形後は、乾式加圧成形体を速やかに成形型から取り出した。 【0107】 次に、乾式加圧成形体を市販のオートクレーブ内に入れた。そして、オートクレーブの加熱を開始し、2時間かけて室温から170℃まで温度を上昇させた。さらに、オートクレーブ内において、乾式加圧成形体を温度170℃の加圧された水蒸気飽和雰囲気で所定時間(0.5時間、1時間、2時間、3時間、6時間又は9時間)保持することにより、当該乾式加圧成形体の養生を行った。その後、養生された乾式加圧成形体をオートクレーブから取り出し、105℃で乾燥した。 【0108】 こうして、95質量%のシリカ微粒子と5質量%のEガラス繊維とを含み、温度170℃の加圧された水蒸気飽和雰囲気で養生された断熱材を得た。また、同様に、乾式加圧成形体を160℃で2時間保持した以外は同様の条件で養生した断熱材、及び乾式加圧成形体を180℃で2時間保持した以外は同様の条件で養生した断熱材も得た。」 (キ)「【0119】 [熱伝導率の評価] 各断熱材の600℃における熱伝導率を周期加熱法にて測定した。すなわち、断熱材から切り出した試験体内に温度波を伝播させ、その伝播時間から熱拡散率を測定した。そして、この熱拡散率と、別途測定した比熱及び密度と、から熱伝導率を算出した。なお、温度波としては、温度振幅が約4℃、周期が約1時間である温度の波を使用した。また、試験体内の2つの地点を温度波が通過するのに要する時間を伝播時間とした。なお、乾式加圧成形体についても同様に熱伝導率を測定した。その結果、各断熱材及び乾式加圧成形体の600℃における熱伝導率は、いずれも0.03~0.05W/(m・K)であり、優れた断熱性を有していた。」 (ク)「【実施例5】 【0142】 図10に示すような様々な11種類の断熱材を準備し、その特性を評価した。図10には、各断熱材に含まれる金属酸化物微粒子、補強繊維及び輻射散乱材の含有量(質量%)、常態での圧縮強度(MPa)、上述の実施例4と同様に測定された浸水後の圧縮強度(MPa)、1000℃における加熱線収縮率(%)、1150℃における加熱線収縮率(%)、及び600℃、800℃、1000℃における熱伝導率(W/(m・K))を示している。 【0143】 なお、図10の「金属酸化物微粒子(質量%)」欄で括弧内に記載されている数値は、使用された金属酸化物微粒子の合計量に対するシリカ微粒子の含有量及びアルミナ微粒子の含有量のそれぞれの割合(%)を示している。また、図10において、「#250」、「#350」及び「#450」は、それぞれ嵩密度「250kg/m3」、「350kg/m3」及び「450kg/m3」を示す。また、図10において「-」が示されている特性は評価が行われなかったことを示す。 【0144】 [断熱材の製造] 実施例IVとして、金属酸化物微粒子としてシリカ微粒子のみを含む断熱材を製造した。具体的に、まず、上述の実施例1と同様、75質量%のシリカ微粒子、5質量%のS2ガラス繊維及び20質量%の炭化珪素を含み、結合剤を含まない板状の乾式加圧成形体を作製した。次いで、上述の実施例1と同様、この乾式加圧成形体に、温度170℃の加圧された水蒸気飽和雰囲気で4時間保持するA/C養生を施すことにより、実施例IVに係る断熱材を製造した。 【0145】 また、実施例V~XIとして、金属酸化物微粒子としてシリカ微粒子及びアルミナ微粒子を含む断熱材を製造した。具体的に、まず、上述の実施例1と同様、合計で75質量%のシリカ微粒子及びアルミナ微粒子、5質量%のS2ガラス繊維又はアルミナ繊維、及び20質量%の炭化珪素又は珪酸ジルコニウムを含み、結合剤を含まない板状の乾式加圧成形体を作製した。次いで、上述の実施例1と同様、この乾式加圧成形体に、温度170℃の加圧された水蒸気飽和雰囲気で4時間保持するA/C養生を施すことにより、実施例V~XIに係る断熱材を製造した。 【0146】 なお、アルミナ微粒子としては、一次粒子の平均粒径が約13nmの無水アルミナ微粒子(親水性フュームドアルミナ微粒子)を使用した。アルミナ繊維としては、平均繊維径7μm、平均繊維長6mmのアルミナ繊維(Al2O3が72%、SiO2が28%)を使用した。珪酸ジルコニウムとしては、平均粒径1.0μmの珪酸ジルコニウム(ZrSiO4)を使用した。 ・・・ 【0150】 [圧縮強度の評価] 準備された断熱材の圧縮強度を、常態の圧縮強度として、上述の実施例1と同様に評価した。また、上述の実施例4と同様に、浸水後の圧縮強度を評価した。 【0151】 図10に示すように実施例IV~XIに係る断熱材は、いずれも優れた強度を示した。すなわち、例えば、嵩密度が450kg/m3の場合(#450)、比較例IV~VIに係る断熱材の圧縮強度(常態)は、0.34MPa以下であったのに対して、実施例IV~XIに係る断熱材のそれは、0.6MPa以上であった。 【0152】 また、比較例V,VIに係る断熱材は、浸水によって崩壊し、浸水後の圧縮強度を測定することができなかった。これに対し、実施例IV,VIII,X,XIに係る断熱材は、浸水前(常態)と比べると浸水後の圧縮強度は低下したものの、浸水後も崩壊することなく、所定の圧縮強度を維持した。 ・・・ 【0154】 [加熱線収縮率の評価] 各断熱材から、長さ150mm、幅30mm、厚さ15mmの板状の試験体を作製した。この試験体を、電気炉中、1000℃又は1150℃で24時間加熱し、加熱後の当該試験体の長さを測定した。そして、次の式により、加熱線収縮率を算出した:加熱線収縮率(%)={(X-Y)/X}×100。なお、この式において、Xは加熱前の長さ(mm)であり、Yは加熱後の長さ(mm)である。 【0155】 図10に示すように、いずれの断熱材も、1000℃における加熱線収縮率は5%以下であり、優れた耐熱性を示した。特に、実施例V~XIに係る断熱材は、1000℃における加熱線収縮率が1.5%以下であった。 【0156】 なお、アルミナ微粒子の含有量が増加するにつれて、加熱線収縮率は低下する傾向があった。また、アルミナ微粒子を含まない実施例IVに係る断熱材も、嵩密度が450kg/m3の場合には、1000℃における加熱線収縮率が3%以下であった。 【0157】 実施例V~XIに係る断熱材の1150℃における加熱線収縮率は、いずれも25%以下であり、特に、嵩密度が450kg/m3の場合には、15%以下であった。また、シリカ微粒子の含有量が37.5質量%を超えると、1150℃における加熱線収縮率は、10%以下であった。さらに、嵩密度が350kg/m3又は450kg/m3の場合には、アルミナ微粒子の含有量が56質量%を超えると、1150℃における加熱線収縮率は、3%以下であった。 【0158】 [熱伝導率の評価] 各断熱材の600℃、800℃又は1000℃における熱伝導率(W/(m・K))を周期加熱法にて測定した。すなわち、各断熱材から切り出した所定サイズの試験体内に温度波を伝播させ、その伝播時間から熱拡散率を測定した。そして、この熱拡散率と、別途測定した比熱及び密度と、から熱伝導率を算出した。なお、温度波としては、温度振幅が約4℃、周期が約1時間である温度の波を使用した。また、試験体内の2つの地点を温度波が通過するのに要する時間を伝播時間とした。 【0159】 図10に示すように、いずれの断熱材も優れた断熱性(低い熱伝導率)を示した。すなわち、いずれの断熱材も、600℃における熱伝導率は、0.045(W/m・K)以下であった。また、いずれの断熱材も、800℃における熱伝導率は、0.050(W/m・K)以下であった。また、いずれの断熱材も、1000℃における熱伝導率は、0.085(W/m・K)以下であった。 【0160】 このように、シリカ微粒子を含む断熱材は、優れた断熱性と優れた強度とを兼ね備えることが確認された。また、シリカ微粒子に加えてアルミナ微粒子をも含む断熱材は、優れた断熱性及び優れた強度に加えて、さらに優れた耐熱性をも備えることが確認された。」 (ケ)「【図10】 」 イ 上記アの記載から分かること (ア)上記ア(オ)(特に段落【0101】の記載)によれば、断熱材は、内部に、空気分子の平均自由行程よりも小さい(径がナノメートルオーダーの)孔が形成された孔構造を有することが分かる。 (イ)上記ア(イ)、(カ)、(ク)及び(ケ)(特に、段落【0022】~【0025】、【0027】、【0104】、【0142】~【0146】、【0154】~【0156】、【0158】及び【0159】並びに図10の記載)によれば、実施例VIIIの嵩密度が450kg/m3の断熱材は、600℃における熱伝導率が0.041W/(m・K)、1000℃で24時間加熱後の加熱線収縮率が0.11%であり、親水性フュームドシリカ微粒子を19.00質量%と、親水性フュームドアルミナ微粒子を56.00質量%と、アルミナ繊維5.00質量%と、炭化珪素20.00質量%とを含むことが分かる。 ウ 甲1発明1 上記ア及びイを総合して整理すると、甲1には、次の事項からなる発明(以下「甲1発明1」という。)が記載されていると認める。 「内部に、空気分子の平均自由行程よりも小さい(径がナノメートルオーダーの)孔が形成された孔構造を有し、600℃における熱伝導率が0.041W/(m・K)、1000℃で24時間加熱後の加熱線収縮率が0.11%であり、親水性フュームドシリカ微粒子を19.00質量%と、親水性フュームドアルミナ微粒子を56.00質量%と、アルミナ繊維5.00質量%と、炭化珪素20.00質量%とを含む嵩密度が450kg/m3の断熱材。」 エ 甲1発明2 上記ア及びイを総合して整理すると、甲1には、次の事項からなる発明(以下「甲1発明2」という。)が記載されていると認める。 「甲1発明1の断熱材を製造する断熱材の製造方法において、親水性フュームドシリカ微粒子を19.00質量%と、親水性フュームドアルミナ微粒子を56.00質量%と、アルミナ繊維5.00質量%と、炭化珪素20.00質量%とを含む断熱材原料から成る乾式加圧成形体に、2時間かけて室温から170℃まで温度を上昇させ、温度170℃の加圧された水蒸気飽和雰囲気で4時間保持するA/C養生を施す断熱材の製造方法。」 (2)甲2について ア 甲2の記載 本件特許の優先日前に頒布された甲2には、次の記載がある。 (ア)「本発明は、断熱材及び断熱材の製造方法に関する。 背景技術 室温での空気分子の平均自由行程は約100nmである。したがって、直径100nm以下の空隙を有する多孔質体内では、空気による対流や伝導による伝熱が抑制されるため、このような多孔質体は優れた断熱作用を示す。」([0001]~[0002]) (イ)「本発明者は、上記課題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、シリカ及び/又はアルミナを含む断熱材であって、特定の粒子径の小粒子を含み、特定の圧縮強度を示すものは、荷重が大きい用途においても高い断熱性を示すことを発見し、本発明を完成するに至った。」([0013]) (ウ)「[1]断熱材 [1-1]シリカ、アルミナ 本実施形態の断熱材は、シリカ及び/又はアルミナの複数の小粒子を含む。後述する「小粒子」のサイズを満たさない成分がシリカ及び/又はアルミナを含有しても良く、断熱材中のシリカ及び/又はアルミナの含有率(小粒子と、小粒子以外の成分におけるシリカ及び/又はアルミナの質量を、断熱材の質量に対する比で表したもの)が50質量%以上であると、固体伝導による伝熱が小さいため好ましい。以下、「小粒子」と「小粒子」のサイズを満たさないシリカ及び/又はアルミナの粒子を合わせて「シリカ粒子」、「アルミナ粒子」と称呼する。 シリカ粒子及び/又はアルミナ粒子の含有率が粉体の75質量%以上であると、粉体同士の付着力が増して、粉体の飛散が少なくなるためより好ましい。なお、本明細書中シリカ粒子とは、組成式SiO 2 で表される成分からなる粒子の他、SiO 2を含む材料を指し、SiO 2 に加えて金属成分等、他の無機化合物を含有する粒子を包含する。シリカ粒子は、純粋な二酸化ケイ素に加えて、Si及び種々の他元素との塩や複合酸化物を含有してもよいし、水酸化物のような含水酸化物を含有してもよいし、シラノール基を有していてもよい。本明細書中、アルミナ粒子とは、組成式Al2 O 3 で表される成分のみからなる粒子の他、Al 2 O 3 を含む材料を広く包含する概念であり、Al 2 O 3 に加えて金属成分等、他の無機化合物を含有する粒子を包含する。アルミナ粒子は、純粋な酸化アルミニウムに加えて、Al及び種々の他元素との塩や複合酸化物を含有してもよいし、水酸化物のような含水酸化物を含有していてもよい。シリカ粒子及び/又はアルミナ粒子中のアルミナは、結晶質であっても、非晶質であっても、それらの混合体であってもよいが、非晶質であると断熱材中の固体伝導による伝熱が小さく、断熱性能が高いため、好ましい。」([0037]~[0038]) (エ)「[1-3]赤外線不透明化粒子 断熱材は、赤外線不透明化粒子を含有することが、高い温度での断熱性能を要する場合は、好ましい。赤外線不透明化粒子とは、赤外線を反射、散乱又は吸収する材料からなる粒子を指す。断熱材に赤外線不透明化粒子が混合されていると、輻射による伝熱が抑制されるため、特に200℃以上の高い温度領域での断熱性能が高い。 赤外線不透明化粒子の例として、酸化ジルコニウム、ケイ酸ジルコニウム、二酸化チタン、鉄チタン酸化物、酸化鉄、酸化銅、炭化ケイ素、金鉱石、二酸化クロム、二酸化マンガン、グラファイトなどの炭素質物質、炭素繊維、スピネル顔料、アルミニウムの粒子、ステンレス鋼の粒子、青銅の粒子、銅/亜鉛合金の粒子、銅/クロム合金の粒子を挙げることができる。従来、赤外線不透明物質として知られる上記の金属粒子又は非金属粒子を、単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。 赤外線不透明化粒子としては、特に、酸化ジルコニウム、ケイ酸ジルコニウム、二酸化チタン又は炭化ケイ素が好ましい。赤外線不透明化粒子の組成はFE-SEM EDXにより求められる。 赤外線不透明化粒子の平均粒子径は、200℃以上での断熱性能の観点で0.5μm以上が好ましく、固体伝導の抑制による200℃未満での断熱性能の観点で30μm以下であることが好ましい。なお、赤外線不透明化粒子の平均粒子径は、シリカ粒子やアルミナ粒子と同じ方法により求められる。無機繊維やシリカ粒子、アルミナ粒子のサイズにもよるが、シリカ粒子及び/又はアルミナ粒子が5nm~100μmの場合、シリカ粒子及び/又はアルミナ粒子との混合の容易さの観点で赤外線不透明化粒子の平均粒子径は、0.5μm以上10μm以下であることがより好ましく、0.5μm以上5μm以下であることがさらに好ましい。 断熱材中の赤外線不透明化粒子の含有率は、0.1質量%以上39.5質量%以下であることが好ましい。赤外線不透明化粒子の含有率が39.5質量%より大きいと、固体伝導による伝熱が大きいため、200℃未満での断熱性能が低い傾向がある。200℃以上での断熱性能を向上させるためには、赤外線不透明化粒子の含有率は、0.5質量%以上35質量%以下がより好ましく、1質量%以上30質量%以下がさらに好ましい。また、断熱材中の赤外線不透明化粒子の含有率が上記範囲であると、断熱材全体の体積を基準として0体積%超5体積%以下にしやすい傾向がある。発明者らの検討によると、赤外線不透明化粒子の赤外線反射、散乱又は吸収効率は、断熱材中に含まれる赤外線不透明化粒子の体積割合に依存する傾向があり、断熱材中の赤外線不透明化粒子の含有率は、断熱材全体の体積を基準として0体積%超5体積%以下であることが好ましい。赤外線不透明化粒子の含有率が5体積%より大きいと、固体伝導による伝熱が大きいため、200℃未満での断熱性能が低い傾向がある。200℃以上での断熱性能を向上させるためには、赤外線不透明化粒子の含有率は、0.02体積%以上5質量%以下がより好ましく、0.03体積%以上4体積%以下がさらに好ましい。赤外線不透明化粒子を含有する断熱材は、熱収縮が小さい傾向があり、例えば突発的に過剰な熱にさらされた場合に、形状が変化したり断熱材が崩壊したりするのを遅らせる効果がある。また、赤外線不透明化粒子を含有する断熱材は断熱材からの粉落ちが少ない傾向があり、製造ラインにおいて断熱材を運搬するベルトコンベヤーが汚れにくい、断熱材を持ったときに手が汚れにくい等、断熱材が接触した箇所が汚れにくい効果がある。断熱材からの粉落ちが少ないと、例えば外被材として樹脂フィルムを使用し、断熱材を真空パックする場合、樹脂フィルムのシール面に粉が付着しにくく、作業性に優れるという利点もある。」([0071]~[0075]) (オ)「[1-8]積算細孔容積の割合 本実施形態の断熱材は、細孔径が0.05μm以上0.5μm以下である細孔の積算細孔容積Vの割合Rが、細孔径が0.003μm以上150μm以下である細孔の積算細孔容積V0.003 に対して70%以上であることが好ましい。Rがこの範囲であると、断熱材の圧縮強度が大きくなる傾向がある他、水(液体)で濡れた際に粉状に崩壊しにくい傾向がある。Rは、(V/V0.003 )×100と表してもよい。Rが大きいほど細孔分布が狭く、細孔径が0.05μm以上0.5μm以下の範囲で揃っていることを意味する。細孔径がより均一であることで断熱材の構造が画一化し、優れた圧縮強度が発現されると推定される。Rが70%未満である断熱材の細孔分布としては、断熱材に(1)細孔径が0.05μm未満の細孔が多数存在する場合、(2)細孔径が0.5μm超の細孔が多数存在する場合、(3)細孔径が0.05μm未満と0.5μm超の細孔がそれぞれ存在し、0.05μm以上0.5μm以下の細孔が少ない場合が想定される。(1)の場合、断熱材が水(液体)で濡れた際に粉体状に崩壊しやすい傾向があり、(2)の場合、断熱性能が低い傾向があり、(3)の場合はそれぞれの細孔径の割合に応じて(1)、(2)の傾向が現れる。この理由は定かではないが、(1)の場合、水に濡れると毛管現象によって収縮力が生じ、空隙を形成している粒子が移動する等して断熱材に歪みが生じ、粉体状に崩壊しやすくなると推定される。(2)の場合、細孔径が空気分子の平均自由行程である約100nmよりも大であるため、空気による対流や伝導による伝熱が抑制され難く、断熱性能が低下すると推定される。Rは、断熱材の全細孔容積に対して75%以上がより好ましく、80%以上がさらに好ましい。なお、Rの上限は100%である。」([0087]) (カ)「公知のシリカの製法には以下のものがある。 <湿式法で合成されるシリカ> ケイ酸ナトリウムを原料に酸性で作られるゲル法シリカ。 ケイ酸ナトリウムを原料にアルカリ性で作られる沈降法シリカ。 アルコキシシランの加水分解・縮合で合成されるシリカ。 <乾式法で合成されるシリカ> ケイ素の塩化物を燃焼して作られるヒュームドシリカ。 ・・・ 公知のアルミナの製法には以下のものがある。 ・・・ ヒュームドアルミナ。」([0097]~[0099]) (キ)「[2-5]加熱処理方法 加圧成形中又は加圧成形後の断熱材を、断熱材の耐熱性が十分である温度や時間の条件の範囲内で、加熱乾燥し、断熱材の吸着水を除去した後実用に供すると、熱伝導率が低くなるため好ましい。さらに、加熱処理を施してもよい。 成形は、加圧成形のみでもよいが、加圧成形したものを加熱処理するのが好ましい。加熱処理は、加圧成型中に施してもよい。断熱材の原料である粉体を加圧成形したものに加熱処理を施すと、圧縮強度が向上し、荷重が大きい用途において特に好適に使用することができる。加熱処理の生産性を向上させる観点から、断熱材にはアルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素、Ge、P、Feが含まれることが好ましく、特に大粒子に含まれることが好ましい。 寸法安定性の観点から、加熱処理温度は、その断熱材の使用最高温度より高温が好ましい。断熱材の用途により様々であるが、具体的には400℃以上1400℃以下が好ましく、より好ましくは500℃以上1300℃以下、更に好ましくは600℃以上1200℃以下である。 圧縮率0~5%における最大荷重を0.7MPa以上とするために、断熱材は上述のように金属酸化物ゾルを含むことが可能である。断熱材が金属酸化物ゾルを含む場合は、より低い加熱処理温度で断熱材が硬化しやすい傾向があることから、具体的には200℃以上1400℃以下が好ましく、より好ましくは300℃以上1300℃以下、更に好ましくは400℃以上1200℃以下である。 断熱材の加熱処理の雰囲気は、空気中(又は大気中)、酸化性雰囲気中(酸素、オゾン、窒素酸化物、二酸化炭素、過酸化水素、次亜塩素酸、無機・有機過酸化物等)、及び不活性ガス雰囲気中(ヘリウム、アルゴン、窒素等)が挙げられる。雰囲気中に水蒸気を添加してもよい。加熱処理時間は、加熱処理温度及び断熱材の量に応じて適宜選択すればよい。加熱処理は、上記断熱材を使用する箇所に設置した後に施してもよいし、設置や施工前の断熱材に予め施してもよい。」([0120]~[0124]) (ク)「耐熱容器は特に限定されないが、例えば鉄鋼業の溶鉄容器、取鍋、タンディッシュ、トピードカー、ガラス製造用容器、溶解窯、ボイラ、鉄板ダクト、蒸気タンク、エンジンが挙げられる。本明細書中、「耐熱容器」は内部に収容可能な形状であればよく、サイズや可動性は限定されず、一般的に「炉」と称呼されるものも包含する概念である。従って、製鉄プラントで使用される鉄鋼用加熱炉、非鉄金属製造で使用される金属用熱処理炉、アルミ溶解炉、アルミ保持炉蓋、ガラス製造などの各種工業炉、カーボン焼成炉、ナフサ分解炉、陶磁器焼成炉、半導体の熱処理炉、ゴミ焼却炉、改質炉、窯炉、焼成炉、加熱炉、キルン等の各種炉の他、各種の塔又は槽、並びに熱交換器やタービンを構成する容器状のものも耐熱容器に含まれる。本実施形態の断熱材は、耐圧性に優れるため、特に圧力がかかる箇所において好適に使用できる。」([0141]) (ケ)「[実施例2] 平均粒子径が12nmのシリカ粉体(小粒子)15質量%と、平均粒子径が10μmのシリカ粉体(大粒子)85質量%をハンマーミルで均一に混合したシリカ粉体を得た。このシリカ粉体1980gを使用して実施例1と同様に加圧成型を行い成形体を得た後、1000℃で10時間加熱処理を施し、実施例2の断熱材を得た。」([0158]) (コ)「[実施例4] 平均粒子径が14nmのシリカ粉体(小粒子)50質量%と、平均粒子径が80nmのシリカ粉体(大粒子)50質量%をハンマーミルで均一に混合したシリカ粉体を得た。このシリカ粉体558gを使用して実施例1と同様に加圧成型を行い成形体を得た後、1000℃で5時間加熱処理を施し、実施例4の断熱材を得た。」([0160]) (サ)「[実施例7] 平均粒子径が14nmのシリカ粉体(小粒子)20質量%と、平均粒子径が200nmのアルミナ粉体(大粒子)80質量%をハンマーミルで均一に混合した粉体を得た。この粉体1296gを使用して実施例1と同様に加圧成型を行い成形体を得た後、1100℃で5時間加熱処理を施し、実施例7の断熱材を得た。」([0163]) (シ)「[実施例9] 平均粒子径が14nmのシリカ粉体(小粒子)25質量%と、平均粒子径が80nmのシリカ粉体(大粒子)75質量%をハンマーミルで均一に混合したシリカ粉体を得た。この粉体792gを使用して実施例1と同様に加圧成型を行い成形体を得た後、1100℃で3時間加熱処理を施し、実施例9の断熱材を得た。」([0165]) (ス)「[実施例11] 平均粒子径が7nmのアルミナ粉体(小粒子)15質量%と、平均粒子径が80nmのシリカ粉体(大粒子)85質量%をハンマーミルで均一に混合した粉体を得た。この粉体972gを使用して実施例1と同様に加圧成型を行い成形体を得た後、1100℃で5時間加熱処理を施し、実施例11の断熱材を得た。」([0167]) (セ)「[実施例13] 平均粒子径が7.5nmのシリカ粉体(小粒子)20質量%と、平均粒子径が10μmのシリカ粉体(大粒子)80質量%をハンマーミルで均一に混合した粉体を得た。この粉体1260gを使用して実施例1と同様に加圧成型を行い成形体を得た後、1000℃で10時間加熱処理を施し、実施例13の断熱材を得た。」([0169]) (ソ)「[実施例16] 平均粒子径が14nmのシリカ粉体(小粒子)21質量%と、平均粒子径が80nmのシリカ粉体(大粒子)63質量%をハンマーミルで均一に混合した後、平均粒子径が1μmの、赤外線不透明化粒子であるケイ酸ジルコニウム15質量%を添加して引き続き均一に混合し、さらに平均繊維径が11μm、平均繊維長が6.4mm、耐熱温度が1050℃のグラスファイバー1質量%を添加して高速せん断ミキサーで混合し、粉体を得た。この粉体864gを使用して実施例1と同様に加圧成型を行い成形体を得た後、1000℃で5時間加熱処理を施し、実施例16の断熱材を得た。」([0172]) (タ)「[実施例18] 平均粒子径が14nmのシリカ粉体(小粒子)19質量%と、平均粒子径が80nmのシリカ粉体(大粒子)57質量%をハンマーミルで均一に混合した後、平均粒子径が1μmの、赤外線不透明化粒子であるケイ酸ジルコニウム14質量%を添加して引き続き均一に混合し、さらに平均繊維径が11μm、平均繊維長が6.4mm、耐熱温度が1050℃のグラスファイバー10質量%を添加して高速せん断ミキサーで混合し、粉体を得た。この粉体972gを使用して実施例1と同様に加圧成型を行い成形体を得た後、1000℃で24時間加熱処理を施し、実施例18の断熱材を得た。」([0174]) (3)甲3について ア 甲3の記載 甲3には、次の記載がある。なお、○付き数字は、「○数字」に改めた。 ・「実験成績証明書 ・・・ 1.実験日: 令和1年5月23日 2.実験場所:一般財団法人ファインセラミックスセンター ・・・ 3.実験者: 一般財団法人ファインセラミックスセンター ・・・ 4.実験の目的 甲第1号証の実施例V(#250)、実施例VIII(#250)及び実施例VIII (#450)の3つの断熱材について、気孔径100nm以下の気孔体積を測定することを目的とした。 5.実験内容及び実験結果 資料に記載の測定条件に従って、細孔分布測定(水銀ポロシメーター)の測定を行った(JIS R 1655:2003準拠)。 Cumulative Pore Volume(累積細孔体積)の数値に基づいて、気孔径100nm以下の気孔体積を算出した。結果は、以下のとおりである。 ・・・ ○3実施例VIII(#450) Pore Diameter=0.0955μm(95.5nm)で累積細孔体積=0.8663 mL/g Pore Diameter=0.0030μm( 30nm)で累精細孔体積=1.7553 mL/g ∴気孔径100nm以下の気孔体積=(1.7553-0.8663)/1.7553×100=50.6vol%」 1-2 本件訂正発明の検討 (1)本件訂正発明1について ア 対比 本件訂正発明1と甲1発明1とを対比する。 ・後者の「600℃における熱伝導率が0.041W/(m・K)」は、前者の「600℃における熱伝導率が0.1W/mK以下」に相当し、同様に、「親水性フュームドシリカ微粒子」は「フュームドシリカ」に、「親水性フュームドアルミナ微粒子」は「フュームドアルミナ」に、「嵩密度が450kg/m3の断熱材」は「断熱材」に、それぞれ相当する。 ・後者の「内部に、空気分子の平均自由行程よりも小さい(径がナノメートルオーダーの)孔が形成された孔構造を有」することは、室温での空気分子の平均自由行程は約100nmであること(甲2の[0002])を考慮すると、気孔径約100nmより小さい孔が形成されているものといえるから、前者の「気孔径100nm以下の気孔体積が27vol%以上」に、「気孔径100nm以下の気孔」を有するという限りにおいて一致する。 ・前者の「1000℃3時間加熱後の収縮率」について、本件特許の明細書には「(1)加熱後収縮率 幅40×長さ40×厚さ20mmの試験片を電気炉に設置し、1000℃で3時間加熱する。加熱前後の幅と長さを測定し、幅と長さから平均した残存線変化率(JIS R2613)を求め、これを加熱後収縮率とする。」(段落【0030】)と記載されている。 一方、後者の「1000℃で24時間加熱後の加熱線収縮率」について、甲1には「[加熱線収縮率の評価] 各断熱材から、長さ150mm、幅30mm、厚さ15mmの板状の試験体を作製した。この試験体を、電気炉中、1000℃又は1150℃で24時間加熱し、加熱後の当該試験体の長さを測定した。そして、次の式により、加熱線収縮率を算出した:加熱線収縮率(%)={(X-Y)/X}×100。なお、この式において、Xは加熱前の長さ(mm)であり、Yは加熱後の長さ(mm)である。」(段落【0154】)と記載されている。 これら記載によると、前者の「収縮率」は加熱前後の幅と長さを測定し、幅と長さから平均した残存線変化率(JIS R2613)を求めているのに対して、後者の「加熱線収縮率」は、加熱前後の長さを測定し、長さの変化率を求めている点で、厳密に同じパラメータとはいえないものの、幅と長さの平均から求めた変化率と長さだけから求めた変化率とに大差があるとは考えられない。 そして、加熱時間が増すにつれて断熱材の成形体はより収縮することも考慮すれば、後者の「1000℃で24時間加熱後の加熱線収縮率が0.11%」であることは、1000℃で3時間加熱後の時点では加熱線収縮率が0.11%より小さいことから、前者の「1000℃3時間加熱後の収縮率が4%以下」であることに相当する。 ・後者の「親水性フュームドシリカ微粒子を19.00質量%と、親水性フュームドアルミナ微粒子を56.00質量%」を含むことは、前者の「非晶質耐火原料としてBET比表面積が50m2/g以上であるフュームドシリカ又はフュームドアルミナを30質量%以上90質量%以下含む」ことに、「耐火原料としてフュームドシリカ又はフュームドアルミナを30質量%以上90質量%以下含む」という限りにおいて一致する。 ・後者の「炭化珪素20.00質量%」を含むことは、前者の「ジルコン、炭化珪素、チタニアのいずれか1種又は2種以上を10質量%以上含有する」ことに相当する。 そうすると、両者の間には次の一致点及び相違点が認められる。 [一致点] 「気孔径100nm以下の気孔を有し、600℃における熱伝導率が0.1W/mK以下、1000℃3時間加熱後の収縮率が4%以下であり、耐火原料としてフュームドシリカ又はフュームドアルミナを30質量%以上90質量%以下含むとともに、ジルコン、炭化珪素、チタニアのいずれか1種又は2種以上を10質量%以上含有する断熱材。」 [相違点] [相違点1-1] 本件訂正発明1は、「気孔径100nm以下の気孔体積が27vol%以上」であるのに対して、甲1発明1は、気孔径100nm以下の気孔を有するものの、その気孔体積について特定されていない点(以下、「相違点1-1」という。)。 [相違点1-2] 本件訂正発明1は、「BET比表面積が50m2/g以上であるフュームドシリカ又はフュームドアルミナ」を「非晶質」耐火原料として含むのに対して、甲1発明1は、「親水性フュームドシリカ微粒子」及び「親水性フュームドアルミナ微粒子」が「非晶質」と特定されておらず、それらのBET比表面積も特定されていない点(以下、「相違点1-2」という。)。 [相違点1-3] 本件訂正発明1は、「0.1耐力時におけるセカント弾性係数が8N/mm2以上である」のに対して、甲1発明1は、0.1耐力時におけるセカント弾性係数について特定されていない点(以下、「相違点1-3」という。)。 イ 判断 上記相違点について検討する。 (ア)相違点1-1について 甲3によると、甲1に記載された実施例VIII(#450)に係る甲1発明1において、気孔径100nm以下の気孔体積は50.6vol%であって、27vol%以上といえるから、相違点1-1は実質的な相違点ではない。 ここで、令和元年9月27日に提出された意見書において、特許権者は、「しかし、以下に述べるとおり、甲3の実験結果には信憑性がなく証拠として採用できるものではないと思料します。 ・・・甲3には、断熱材の原料の粒径や製造条件に関する情報は一切記載されていません。・・・甲3の実験に用いた3つの断熱材が『甲第1号証の実施例V(#250)、実施例VIII(#250)及び実施例VIII(#450)』であるどうかは不明です。 ・・・甲3の実験に用いた3つの断熱材は『甲第1号証の実施例V(#250)、実施例VIII(#250)及び実施例VIII(#450)』とは異なるものである蓋然性が高いといえます。 さらに、ファインセラミックスの水銀圧入法による成形体気孔径分布試験方法に関するJIS規格(JISR1655)では、試料の前処理について以下のように規定されています。 6.2 試料の前処理 ・・・要するに、付着した異物が測定結果に影響を及ぼすおそれがある場合は前処理を行うとなっています。 これに対して甲3の実験では『試料の前処理:無』となっています(甲3の第3頁目参照)。 ・・・甲3の実験ではJISR1655の規定どおりの試験が行われておらず、その実験結果自体にも信憑性がないといえます。 以上のとおり、甲3の実験結果には信憑性がなく証拠として採用できるものではないと思料します。すなわち、甲3の実験結果を証拠として新規性を否定する取消理由はその前提を欠くものであると思料します。 以上より、訂正後本件発明1は新規性を有すると思料します。 ・・・よって訂正後本件発明1は進歩性も有すると思料します。」(3ページ18行~6ページ9行。「・・・」は記載の省略を意味する。)と主張する。 しかしながら、甲3に甲1の実施例V(#250)、実施例VIII(#250)及び実施例VIII (#450)の3つの断熱材について実験したとあるから、断熱材の原料の粒子径や製造条件は、甲1の段落【0104】及び【0105】の記載内容に従ったものと認められる。また、試料の前処理についても、JIS規格では、有機成形助剤が測定結果に影響を及ぼす恐れがある場合は、前処理として脱脂を行う旨が規定されているところ(特許権者の意見書5ページ)、各試料は有機成形助剤である結合剤を含まないから(段落【0104】)、「前処理:無」とされているのであって、この点はJISの規格に適合している。そして、甲3にはJIS R 1655に準拠した旨が記載されているのであるから、甲3の試験はJISの規定どおりに試験したものと認められる。 ちなみに、本件特許明細書においても、気孔径100nm以下の気孔体積を求めるのに、試料の前処理に関する記載はなく、どのような測定条件で測定を行ったのか記載がなく、また、いかなる規格に準拠して測定を行ったのか、さらに、100nm以下の気孔体積をいかなる計算式で算出したのかについても何ら記載されていないのであるから、甲3の測定方法が不適切であるとする根拠はない。 したがって、甲3の実験結果には信憑性がなく証拠として採用できるものではないとした特許権者の上記主張は採用することができない。 次に、仮に相違点1-1が実質的な相違点であるとして、以下に検討する。 甲2の[0002]には、多孔質体において、空隙の直径を空気分子の平均自由行程約100nm以下にすることにより、多孔質体内では、空気による対流や伝導による伝熱が抑制されるため、優れた断熱作用を示すことが記載されており、また、甲2の[0087]には、断熱材において、細孔径が0.5μm超の細孔が多数存在する場合、細孔径が空気分子の平均自由行程である約100nmよりも大であるため、空気による対流や伝導による伝熱が抑制され難く、断熱性能が低下することが記載されている。 一方、甲1発明1においても、優れた断熱性を備えることを課題とするものである(甲1の段落【0006】)。 そうすると、甲1発明1において、優れた断熱性能を得るべく、上記甲2に記載された事項に基づき、気孔径100nm以下の孔の割合を大きくし、具体的にはその気孔体積を27vol%以上とし、相違点1-1に係る本件訂正発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。 (イ)相違点1-2について 甲1発明1における「親水性フュームドシリカ微粒子」や「親水性フュームドアルミナ微粒子」は、一般的に、非晶質といえる。 また、甲1には、「金属酸化物微粒子のBET法による比表面積は、例えば、50m2/g以上であることが好ましい。」(段落【0027】)と記載されているから、甲1発明1においても、親水性フュームドシリカ微粒子及び親水性フュームドアルミナ微粒子は、BET比表面積が50m2/g以上であるといえる。 そうすると、相違点1-2は実質的な相違点ではない。 仮に、相違点1-2が実質的な相違点であるとして、以下に検討する。 甲2の[0038]には、断熱材の原料であるシリカ粒子及び/又はアルミナ粒子について、非晶質であると断熱材中の固体伝導による伝熱が小さく、断熱性能が高いことが記載されている。 一方、甲1発明1においても、優れた断熱性を備えることを課題とするものである(甲1の段落【0006】)から、甲2に記載された事項を適用し、「親水性フュームドシリカ微粒子」及び「親水性フュームドアルミナ微粒子」を非晶質のものとすることは、当業者にとって格別困難ではない。 また、甲1には、「金属酸化物微粒子のBET法による比表面積は、例えば、50m2/g以上であることが好ましい。」(段落【0027】)と記載されているから、甲1発明1において、親水性フュームドシリカ微粒子及び親水性フュームドアルミナ微粒子を、BET比表面積が50m2/g以上とすることは、当業者が適宜なし得たことである。 そうすると、甲1発明1において、相違点1-2に係る本件訂正発明1の構成とすることは、甲2に記載された事項に基づき、当業者が容易に想到し得たことである。 (ウ)相違点1-3について 本件訂正発明1において、「0.1耐力時におけるセカント弾性係数が8N/mm2以上である」ことについては、本件特許の明細書の段落【0003】に「微多孔性断熱材は通常、シリカ質あるいはアルミナ質のフュームド原料と、炭化珪素、チタニア、ジルコン等の赤外線不透過材と、ガラス繊維、シリカ繊維等の補強繊維で構成され、これを乾式成形したものである。したがって、結合材がないため強度が低く座屈しやすいという欠点があった。強度が低いと外力、熱応力に耐えられない問題、加工性に乏しい問題、金具締結工法の場合は断熱材が座屈するのでナットが陥没したり、使用時にナットが緩んだ場合、熱リークが発生し、断熱性が低下する問題があった。」と記載され、段落【0015】に「また、本発明の断熱材は、0.1耐力時におけるセカント弾性係数は8N/mm2以上であることが好ましい。この値を下回ると座屈が起こり、金具締結作業に支障を来す場合がある。」と記載されているから、断熱材が強度が低く座屈しやすいという欠点を解決するとの観点から特定された事項であると認められる。 しかしながら、本件特許の明細書には、段落【0035】における表1の各実施例、参考例及び比較例を参酌しても、0.1耐力時におけるセカント弾性係数が8N/mm2を下回ると座屈が起こり、8N/mm2以上であると座屈が起こらないことの根拠は何ら示されていないから、「8N/mm2」には臨界的意義を認めることができない。 よって、本件訂正発明1が0.1耐力時におけるセカント弾性係数を特定した点は、所望の強度が得られた材料について単に適宜の点におけるセカント弾性係数を決定したにすぎず、単に断熱材の強度を所定以上にしたこと以上に格別な技術的意義を認めることができない。 そして、応力と歪みの関係が非線形の材料について、所定の点での応力を歪みで割った値(直線の傾き)で定義したセカント弾性係数(割線弾性係数)は、材料の性質を表すパラメータとして、本件特許の優先日前に周知の事項である。 そうすると、甲1発明1においても、優れた強度を備えることを課題とするものである(甲1の段落【0006】)から、0.1耐力時におけるセカント弾性係数を8N/mm2以上とし、相違点1-3に係る本件訂正発明1の構成とすることは、所望の強度を備える断熱材について、周知のパラメータの値を決定することにより、当業者が適宜なし得ることである。 (エ)特許権者の主張について 特許権者は、令和2年1月29日に提出された意見書において、「しかし、『0.1耐力時におけるセカント弾性係数が8N/mm2以上』との構成要件は、単に優れた強度を備えるために特定されたものではなく、『座屈』の問題を解消するために特定されたものです。・・・このように、0.1耐力時におけるセカント弾性係数が8N/mm2以上である場合に座屈が起こることを防止でき、8N/mm2には臨界的意義があるといえます。・・・以上のとおり、『0.1耐力時におけるセカント弾性係数』をパラメータとして、これを8N/mm2以上に限定することで、『座屈』の問題を解消することができることは、本発明者らが鋭意検討した結果得られた新たな技術的知見です。これに対して、甲1においては上述のとおり優れた強度を備えるという一般的な課題が示されているのみで、『座屈』の問題を解消できるか否かの判断基準として『0.1耐力時におけるセカント弾性係数』をパラメータとすること、そしてこれを8N/mm2以上に限定することで、『座屈』の問題を解消することができることは、一切記載も示唆もありません。 以上より、0.1耐力時におけるセカント弾性係数を8N/mm2以上とすることは、当業者が適宜なし得ることではなく、訂正後本件発明1は新規性及び進歩性を有します。」(3ページ下から6行~7ページ13行)と主張する。 しかしながら、上記(ウ)で述べたとおり、「0.1耐力時におけるセカント弾性係数が8N/mm2以上」とすることで座屈の問題を解消できるという臨界的意義を認めることはできないから、特許権者の上記主張は採用することができない。 (オ)まとめ そして、本件訂正発明1は、全体としてみても、甲1発明1及び周知の事項から、又は、甲1発明1、甲2に記載された事項及び周知の事項から予測される以上の格別な効果を奏するものではない。 したがって、本件訂正発明1は、甲1発明1及び周知の事項に基いて、又は、甲1発明1、甲2に記載された事項及び周知の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。 (2)本件訂正発明2について ア 対比 本件訂正発明2と甲1発明1とを、上記(1)アの対比を踏まえて対比すると、両者は相違点1-2及び1-3に加えて、次の点で相違する。 [相違点2-1] 本件訂正発明2は、「気孔径100nm以下の気孔体積が53vol%以上である」のに対して、甲1発明1は、気孔径100nm以下の気孔を有するものの、その気孔体積について特定されていない点(以下、「相違点2-1」という。)。 イ 判断 上記(1)イ(ア)と同様の理由により、甲1発明1において、気孔径100nm以下の気孔体積を53vol%以上とし、相違点2-1に係る本件訂正発明2の構成とすることは、甲2に記載された事項に基づき、当業者が容易に想到し得たことである。 そして、上記(1)イの判断を踏まえると、本件訂正発明2は、甲1発明1、甲2に記載された事項及び周知の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。 (3)本件訂正発明3について 本件訂正発明3と甲1発明1とを、上記(1)アの対比を踏まえて対比すると、後者の「1000℃で24時間加熱後の加熱線収縮率が0.11%」であることは、前者の「1000℃3時間加熱後の収縮率が2%以下である」ことに相当する。 そして、両者は相違点1-1~1-3で相違するところ、上記(1)イの判断を踏まえると、本件訂正発明3は、甲1発明1及び周知の事項に基いて、又は、甲1発明1、甲2に記載された事項及び周知の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。 (4)本件訂正発明4について 本件訂正により請求項4は削除されたため、本件訂正後の請求項4に係る発明は存在しない。 (5)本件訂正発明5について 甲1発明1は、親水性フュームドシリカ微粒子を19.00質量%と、親水性フュームドアルミナ微粒子を56.00質量%と、アルミナ繊維5.00質量%と、炭化珪素20.00質量%とを含むものであって、アルカリ金属元素及びアルカリ土類金属を含有しない。 そして、本件訂正発明5と甲1発明1とを、上記(1)アの対比を踏まえて対比すると、両者は相違点1-1~1-3で相違するところ、上記(1)イの判断を踏まえると、本件訂正発明5は、甲1発明1及び周知の事項に基いて、又は、甲1発明1、甲2に記載された事項及び周知の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。 (6)本件訂正後の請求項6に係る発明について 本件訂正により請求項6は削除されたため、本件訂正後の請求項6に係る発明は存在しない。 (7)本件訂正発明7について ア 対比 本件訂正発明7と甲1発明2とを、上記(1)アの対比を踏まえて対比する。 後者の「断熱材原料」は、前者の「断熱材用原料」に相当し、同様に、「乾式加圧成形体」は「成形体」に相当する。 そうすると、後者の「親水性フュームドシリカ微粒子を19.00質量%と、親水性フュームドアルミナ微粒子を56.00質量%と、アルミナ繊維5.00質量%と、炭化珪素20.00質量%とを含む断熱材原料から成る乾式加圧成形体」は、前者の「非晶質耐火原料としてBET比表面積が50m2/g以上であるフュームドシリカ又はフュームドアルミナを30質量%以上90質量%以下含むとともに、ジルコン、炭化珪素、チタニアのいずれか1種又は2種以上を10質量%以上含有する断熱材用原料から成る成形体」に、「耐火原料としてフュームドシリカ又はフュームドアルミナを30質量%以上90質量%以下含むとともに、ジルコン、炭化珪素、チタニアのいずれか1種又は2種以上を10質量%以上含有する断熱材用原料から成る成形体」という限りにおいて一致する。 また、後者の「断熱材原料から成る乾式加圧成形体に、2時間かけて室温から170℃まで温度を上昇させ、温度170℃の加圧された水蒸気飽和雰囲気で4時間保持するA/C養生を施す」ことは、前者の「断熱材用原料から成る成形体を、焼成後の収縮率が7~40%になるように1000℃以上の焼成条件で焼成する」ことに、「断熱材用原料から成る成形体を、所定の焼成条件で焼成する」という限りにおいて一致する。 そして、両者は次の点で一致し、相違点1-1~1-3で相違するとともに、さらに次の点で相違する。 [一致点] 「気孔径100nm以下の気孔を有し、600℃における熱伝導率が0.1W/mK以下、1000℃3時間加熱後の収縮率が4%以下であり、耐火原料としてフュームドシリカ又はフュームドアルミナを30質量%以上90質量%以下含むとともに、ジルコン、炭化珪素、チタニアのいずれか1種又は2種以上を10質量%以上含有する断熱材を製造する断熱材の製造方法において、耐火原料としてフュームドシリカ又はフュームドアルミナを30質量%以上90質量%以下含むとともに、ジルコン、炭化珪素、チタニアのいずれか1種又は2種以上を10質量%以上含有する断熱材用原料から成る成形体を、所定の焼成条件で焼成する断熱材の製造方法。」 [相違点7-1] 「断熱材用原料から成る成形体を、所定の焼成条件で焼成する」ことに関し、本件訂正発明7は、「断熱材用原料から成る成形体を、焼成後の収縮率が7~40%になるように1000℃以上の焼成条件で焼成する」ものであるのに対して、甲1発明2は、「断熱材原料から成る乾式加圧成形体に、2時間かけて室温から170℃まで温度を上昇させ、温度170℃の加圧された水蒸気飽和雰囲気で4時間保持するA/C養生を施す」ものである点(以下、「相違点7-1」という。)。 イ 判断 (ア)相違点7-1について 上記相違点7-1について検討する。 甲2の[0120]~[0124]、[0158]、[0160]、[0163]、[0165]、[0167]、[0169]、[0172]及び[0174]には、シリカ及び/又はアルミナの複数の小粒子を含む断熱材を得るのに、1000℃以上で加熱処理を施すことが記載されており、また、加熱処理を施すことにより、圧縮強度が向上し、荷重が大きい用途において特に好適に使用することができることが記載され([0121])、さらに、寸法安定性の観点から、加熱処理温度は、その断熱材の使用最高温度より高温が好ましいことが記載されている([0122])。 しかしながら、甲1発明2は、1000℃で24時間加熱後の加熱線収縮率(収縮率)が0.11%である特性を有する甲1発明1の断熱材の製造方法であって、1000℃で24時間加熱後の加熱線収縮率(収縮率)が0.11%であることにより、優れた耐熱性を有し(甲1の段落【0155】)、また、圧縮強度(状態)が0.82MPaという優れた強度が得られ(甲1の段落【0151】及び図10の実施例VIII)、さらに、熱伝導率が0.055W/m・Kという優れた断熱性が得られる(甲1の段落【0159】及び図10の実施例VIII)ものであり、甲2に記載された事項が圧縮強度を向上させるものであるとしても、すでに優れた強度、耐熱性及び断熱性を有する甲1発明1の断熱材が得られる甲1発明2に対して、甲2に記載された事項を適用することは、十分な強度の向上が望めず、むしろ、製造条件が変化することにより、耐熱性や断熱性を損なう恐れもあることから、その動機付けはないものというべきである。 仮に、甲1発明2に甲2に記載された事項を適用したとすると、それにより得られる断熱材は、甲1発明1の断熱材とは構造が異なったものとなり、それに伴い加熱後収縮率を含め強度、耐熱性及び断熱性も異なるものとなり得るから、甲1発明2は、甲1発明1の断熱材の製造方法とはいえないものとなってしまう。 そうすると、本件訂正発明7の相違点7-1に係る構成は、甲1発明2、甲2に記載された事項及び上記(1)イ(ウ)に示した周知の事項からは、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。 (イ)相違点1-1~1-3について 相違点1-1~1-3については、上記(1)イ(ア)~(ウ)と同様である。 (ウ)まとめ そして、本件訂正発明7は、上記相違点7-1に係る構成を含むことにより、「本発明の断熱材の製造方法によれば、上記本発明の断熱材を安定的に製造でき、断熱材の強度も確保できる。」(段落【0023】)という所期の効果を奏するものである。 したがって、本件訂正発明7は、甲1発明2であるとはいえず、また、甲1発明2及び周知の事項に基いて、又は、甲1発明2、甲2に記載された事項及び周知の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないから、特許法第29条第1項又は第2項の規定により特許を受けることができないものとすることはできない。 (8)本件訂正発明8について 本件訂正により請求項8は削除されたため、本件訂正後の請求項8に係る発明は存在しない。 (9)小活 以上のとおり、本件訂正発明1~3及び5は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本件特許の請求項1~3及び5に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 また、本件訂正発明7は、特許法第29条第1項又は第2項の規定により特許を受けることができないものではなく、本件特許の請求項7に係る特許は、特許法第29条第1項又は第2項の規定に違反してされたものではない。 2 請求項7に対する取消理由(決定の予告)の理由3(明確性)について (1)理由3(明確性)の内容 請求項7に対し令和元年11月29日付けで通知した取消理由(決定の予告)の理由3の内容は、概略以下のとおりである。 請求項7は、請求項1の、「気孔径100nm以下の気孔体積が27vol%以上」、請求項2の、「気孔径100nm以下の気孔体積が53vol%以上」との発明特定事項を含むところ、気孔体積は、前処理の有無、測定条件(測定温度や測定圧力、測定範囲、測定点の間隔など)や準拠する規格に応じてその値が変化することから、これら測定条件や準拠する規格を特定していない本件特許の請求項7に係る発明において、気孔径100nm以下の気孔体積を特定することができず、本件特許の請求項7に係る発明は不明確である。 なお、本件特許の明細書には、他のパラメータはJISに準拠した旨を記載しているのに、気孔体積についてはJISに準拠した旨の記載はないから、JISに準拠しているとは認められない。仮にJISに準拠するとしても、前処理条件は不明である。 (2)申立人の主張 申立人は、令和2年3月5日に提出された意見書において、「気孔体積は、前処理の有無、測定条件(測定温度や測定圧力、測定範囲、測定点の間隔など)や準拠する規格に応じてその値が変化することから、これら測定条件や準拠する規格を特定していない本件特許の請求項1及び2に係る発明において、気孔径100nm以下の気孔体積を特定することができず、訂正後の請求項1,2に係る発明は不明確である。 なお、本件明細書には、他のパラメータについては、JISに準拠した旨を記載しているのにもかかわらず、気孔体積についてはJISに準拠した旨の記載はないから、JISに準拠しているとは認められないし、仮にJISに準拠するとしても、前処理条件は依然として不明である。」(4ページ26~33行)と主張し、付言として「有機成形助剤のみならず、吸着異物の存在もあるため、有機成形助剤を含まないからと言って、前処理を行っていない場合に、一義的にJIS規格に適合するとは言うことは妥当ではない。」(5ページ10~12行)と主張する。 (3)検討 そこで検討すると、本件訂正発明7において、気孔体積の測定条件や準拠する規格は特定されていないところ、本件特許の明細書には「(2)気孔体積 試験片は8mmの立方体である。水銀圧入式ポロシメーターで細孔分布を測定し、細孔径と累計気孔量の関係から100nm以下の気孔体積を求める。」(段落【0031】)と記載されている。 そして、水銀圧入式ポロシメーターで細孔分布を測定することにより気孔体積を求める規格としてJIS R 1655が本件特許の優先日前に存在していた(例えば、特許第5208458号公報の段落【0010】を参照。)のであるから、本件訂正発明7がJIS R 1655の規格に基づいて気孔体積を求めたものであると解するのが自然である。 その際、前処理は有機成形助剤等の気孔体積の計測に影響がある場合に、必要に応じて施されるものであって、前処理条件の記載がないからといって、気孔体積の計測ができないものではない。 そうすると、本件特許の請求項7の記載は、特許を受けようとする発明が明確であるといえるから、本件特許の請求項7に係る特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たす特許出願に対してされたものである。 3 取消理由(決定の予告)において採用しなかった請求項7に対する特許異議申立理由について (1)特許法第36条第4項第1号(実施可能要件)の申立理由について ア 第1の理由について (ア)第1の理由の内容(異議申立書31~32ページ) 本件特許の請求項7に係る発明のように、赤外線不透過材を含まない場合にも、得られる断熱材が、赤外線不透過材を含む場合と同様の熱伝導率、収縮率、耐熱性、機械的強度などの特性を示すことを合理的に推測することは困難である。 また、赤外線不透過材の種類と含有量のみが特定され、粒子径が特定されていない場合にも、得られる断熱材が、赤外線不透過材を含む場合と同様の熱伝導率、収縮率、耐熱性、機械的強度などの特性を示すことを合理的に推測することは困難である。 したがって、本件特許の発明の詳細な説明は、本件特許の請求項7に係る発明について、当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されたものではない。 (イ)検討 本件訂正発明7においては、「ジルコン、炭化珪素、チタニアのいずれか1種又は2種以上を10質量%以上含有する断熱材用原料から成る成形体」を焼成するものであり、赤外線不透過材を含むものである。 また、甲2には、赤外線不透過材の粒子径が、断熱性能に影響することが記載されており(段落0074)、粒子径が、熱伝導率、収縮率、耐熱性、機械的強度などの特性に影響を及ぼすとしても、粒子径については適宜に選択することにより、熱伝導率、収縮率、耐熱性、機械的強度などの特性を所定の範囲に調節し得るものと認められる。 したがって、申立人による第1の理由によっては、本件特許の発明の詳細な説明が、本件訂正発明7について、当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されたものではないとすることはできない。 イ 第2の理由について (ア)第2の理由の内容(異議申立書32~34ページ) 本件特許の請求項7に係る発明のように、非晶質耐火原料であるフュームドシリカ又はフュームドアルミナの含有量以外の粒子径や特性などが何ら特定されていない場合にも、得られる断熱材が、同様の熱伝導率、収縮率、耐熱性、機械的強度などの特性を示すことを合理的に推測することは困難である。 また、非晶質耐火原料であるフュームドシリカ又はフュームドアルミナの「BET比表面積の下限値のみ」が特定され、その他の特性などが特定されていない場合にも、得られる断熱材が、同様の熱伝導率、収縮率、耐熱性、機械的強度などの特性を示すことを合理的に推測することは困難である。 したがって、本件特許の発明の詳細な説明は、本件特許の請求項7に係る発明について、当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されたものではない。 (イ)検討 本件訂正発明7においては、非晶質耐火原料である「フュームドシリカ又はフュームドアルミナ」について、「BET比表面積が50m2/g以上である」こと及び「30質量%以上90質量%以下含む」ことを特定するものである。 これに対して、「フュームドシリカ又はフュームドアルミナ」について、「BET比表面積が50m2/g以上である」こと及び「30質量%以上90質量%以下含む」こと以外に、粒子径やその他の特性が、熱伝導率、収縮率、耐熱性、機械的強度などの特性に影響を及ぼすとしても、粒子径やその他の特性については適宜に選択することにより、熱伝導率、収縮率、耐熱性、機械的強度などの特性を所定の範囲に調節し得るものと認められる。 したがって、申立人による第2の理由によっては、本件特許の発明の詳細な説明が、本件訂正発明7について、当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されたものではないとすることはできない。 ウ まとめ 上記ア及びイによれば、本件特許の発明の詳細な説明は、本件訂正発明7について、当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されたものであるから、本件特許の請求項7に係る特許は、発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たす特許出願に対してされたものである。 (2)特許法第36条第6項第1号(サポート要件)の申立理由について ア 申立理由(サポート要件)の内容 申立人の主張する特許法第36条第6項第1号(サポート要件)の申立理由について、第1の理由(異議申立書34~35ページ)及び第2の理由(異議申立書35~36ページ)を要約すると、以下のとおりである。 本件特許の明細書の実施例(実施例1~20)及び比較例(比較例1~3)の断熱材は全て、チタニア、炭化ケイ素、ジルコンから選択される赤外線不透過材を10~30重量%含むものであり、赤外線不透過材を含まない場合にも耐熱性を発揮することを示すデータは何ら示されていない。 そのため、本件特許の請求項7に係る発明のように、赤外線不透過材を含まない場合にも、得られる断熱材が、赤外線不透過材を含む場合と同様の熱伝導率、収縮率、耐熱性、機械的強度などの特性を示すことを合理的に推測することは困難であり、本件特許の明細書の実施例に基づいて、赤外線不透過材を含まない場合にまで拡張ないし一般化できるとはいえない。 また、赤外線不透過材(赤外線不透明化粒子)の含有率と粒子径が断熱材の物性等に影響を及ぼすことが、甲2の段落0071~0075に記載されており、赤外線不透過材の種類と含有量のみが特定され、粒子径が特定されていない場合にも、本件特許の発明の課題を解決できると当業者が認識できる程度に具体例又は実施例が記載されていない。 そのため、赤外線不透過材の種類と含有量のみが特定され、粒子径が特定されていない場合にも、得られる断熱材が、赤外線不透過材を含む場合と同様の熱伝導率、収縮率、耐熱性、機械的強度などの特性を示すことを合理的に推測することは困難であり、本件特許の明細書の実施例に基づいて、赤外線不透過材を含まない場合にまで拡張ないし一般化できるとはいえない。 したがって、本件特許の請求項7に係る発明は、発明の詳細な説明において裏付けられた範囲を超える発明を含むものであるから、発明の詳細な説明に記載された発明を記載したものとはいえない。 イ 検討 本件訂正発明7においては、「ジルコン、炭化珪素、チタニアのいずれか1種又は2種以上を10質量%以上含有する断熱材用原料から成る成形体」を焼成するものであり、赤外線不透過材を含むものである。 また、甲2には、赤外線不透過材の粒子径が、断熱性能に影響することが記載されており(段落0074)、赤外線不透過材の種類と含有量以外に、粒子径が、熱伝導率、収縮率、耐熱性、機械的強度などの特性に影響を及ぼすとしても、粒子径については適宜に選択することにより、熱伝導率、収縮率、耐熱性、機械的強度などの特性を所定の範囲に調節し得るものと認められ、粒子径の特定がされていなくても発明の課題は解決し得るものといえる。 したがって、申立人による申立理由(サポート要件)によっては、本件訂正発明7が、発明の詳細な説明において発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えているとはいえない。 ウ まとめ 上記イによれば、本件特許の特許請求の範囲は、本件訂正発明7が、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えるものではないから、本件特許の請求項7に係る特許は、発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たす特許出願に対してされたものである。 第6 むすび 以上のとおり、本件特許の請求項1~3及び5に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、本件特許の請求項1~3及び5に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 また、本件特許の請求項7に係る特許は、特許法第29条第1項及び第2項の規定に違反してされたものではないとともに、特許法第36条第4項第1号に規定する要件及び特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たさない特許出願に対してされたものではないから、特許法第113条第2号及び第4号には該当せず、取消理由通知書(決定の予告)に記載した取消理由又は特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、取り消すことができない。 また、他に本件特許の請求項7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 さらに、本件特許の請求項4、6及び8に係る特許に対する特許異議の申立てについては、本件特許の請求項4、6及び8が本件訂正により削除されたことにより、申立ての対象が存在しないものとなったため、不適法な特許異議の申立てであって、その補正をすることができないものであるから、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下すべきものである。 よって、結論のとおり決定する。

審決本文(J-PlatPat)

J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。

J-PlatPat 審決検索を開く
2019-700432

番号・当事者・条文・審決分類・商標の称呼が一致(または近い)審決を機械的に集めた候補です。判断内容は各審決の本文でご確認ください。

同じ当事者の審決36件(河井 清悦、黒崎播磨株式会社)
  • 2025-700188異議申立 / 2025-09-26 / 訂正認容熱伝達抑制シート及びその製造方法、並びに組電池
    同じ当事者: 河井 清悦
  • 2024-700650異議申立 / 2025-02-12 / 維持耐火性モルタル、コークス炉の築炉方法及び耐火性モルタルの選定方法
    同じ当事者: 黒崎播磨株式会社
  • 2023-700238異議申立 / 2024-09-03 / 請求成立(取消)保護膜形成用組成物
    同じ当事者: 河井 清悦
  • 2023-700239異議申立 / 2024-09-03 / 請求成立(取消)保護膜形成用組成物
    同じ当事者: 河井 清悦
  • 2022-700331異議申立 / 2023-07-04 / 訂正認容薬液、薬液の製造方法、基板の処理方法
    同じ当事者: 河井 清悦
同じ根拠条文の審決10,793件(特許法113条2号、特許法113条4号、特許法120条の8第1項 ほか)
  • 2024-700918異議申立 / 2025-06-16 / 訂正認容集塵水の処理方法
    共通の条文: 特許法113条2号、特許法113条4号、特許法120条の8第1項、特許法135条 ほか4件
  • 2023-700314異議申立 / 2024-12-04 / 訂正認容アルミニウムでコーティングされた一次粒子を含むリチウムチタン複合酸化物及びその製…
    共通の条文: 特許法113条2号、特許法113条4号、特許法120条の8第1項、特許法135条 ほか4件
  • 2023-700095異議申立 / 2024-06-25 / 訂正認容吸水性樹脂粒子、これを用いた吸収体及び吸収性物品、並びに吸水性樹脂粒子の製造方法
    共通の条文: 特許法113条2号、特許法113条4号、特許法120条の8第1項、特許法135条 ほか4件
  • 2023-700018異議申立 / 2024-02-19 / 訂正認容蒸着マスク中間体、蒸着マスク、および、蒸着マスクの製造方法
    共通の条文: 特許法113条2号、特許法113条4号、特許法120条の8第1項、特許法135条 ほか4件
  • 2022-700700異議申立 / 2023-06-15 / 訂正認容C/Cコンポジット及びその製造方法、並びに熱処理用治具及びその製造方法
    共通の条文: 特許法113条2号、特許法113条4号、特許法120条の8第1項、特許法135条 ほか4件
同じ論点・分野の審決(審決分類)224件(113・F16L、121・F16L、536・F16L ほか)
  • 2023-700750異議申立 / 2025-11-26 / 訂正認容バリア層を有する接着剤移送ホース及び使用方法
    共通の審決分類: 113・F16L、121・F16L、536・F16L、537・F16L
  • 2025-700188異議申立 / 2025-09-26 / 訂正認容熱伝達抑制シート及びその製造方法、並びに組電池
    共通の審決分類: 113・F16L、121・F16L、536・F16L、537・F16L
  • 2022-701135異議申立 / 2024-03-19 / 訂正認容熱伝達抑制シート及び組電池
    共通の審決分類: 113・F16L、121・F16L、536・F16L、537・F16L
  • 2021-700518異議申立 / 2022-01-19 / 訂正認容樹脂管、樹脂管の製造方法、及び配管構造
    共通の審決分類: 113・F16L、121・F16L、536・F16L、537・F16L
  • 2020-700720異議申立 / 2022-01-12 / 訂正認容多層管
    共通の審決分類: 113・F16L、121・F16L、536・F16L、537・F16L

メモ・タグ(非公開)

あなただけに表示されます。審決本文の公開範囲は変わりません。

メモとタグは Pro の機能です。ログイン/Proでメモを保存