特許異議申立
2023-700238
保護膜形成用組成物
- 審判番号
- 2023-700238
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2018-199196
- 登録番号
- 7161370
- 請求日
- 2023年03月01日
- 審決日
- 2024年09月03日
- 公報発行日
- 2025年01月31日
- 結論
- 請求成立(取消)
- 当事者
- 【権利者】日本酢ビ・ポバール株式会社
- 【権利者代理人】岩谷 龍
- 【権利者代理人】勝又 政徳
- 【異議申立人】河井 清悦
- 審判長/審判官
- 審判長 門前 浩一
- 審判官 瀬下 浩一
- 審判官 村守 宏文
- 分類
- P1651.121-ZAA(C09D)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第4項、特許法第126条第6項、特許法第126条第5項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7161370号発明「保護膜形成用組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7161370号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-13〕について訂正することを認める。
特許第7161370号の請求項1-13に係る特許を取り消す。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本件特許に係る出願は、平成30年10月23日の出願であって、令和4年10月18日に特許権の設定登録(請求項の数13)がされ、同年同月26日に特許掲載公報が発行され、その後、その請求項1~13に係る特許に対し、令和5年3月1日に異議申立人 河井 清悦(以下、「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものであり、当審は、同年9月5日付けで取消理由を通知し、特許権者は、その指定期間内である同年11月6日に意見書の提出及び訂正の請求を行い、特許権者から訂正請求があったことを、同年12月11日付けで異議申立人に通知し、特許異議申立人は、令和6年1月11日に意見書を提出し、当審は、同年3月26日付けで取消理由を通知し、特許権者は、その指定期間内である同年5月27日に意見書の提出及び訂正の請求(以下「本件訂正請求」といい、その請求の内容を「本件訂正」という。)を行い、特許権者から訂正請求があったことを、同年6月4日付けで異議申立人に通知し、特許異議申立人は、同年6月24日に意見書を提出したものである。
なお、本件訂正請求がされたことにより、令和5年11月6日にされた訂正の請求は取り下げたものとみなされる。
第2 本件訂正についての判断
1 本件訂正の内容
本件訂正は、以下の訂正事項1~4からなる。訂正箇所に下線を付した。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に、
「水溶性高分子、レーザー光吸収剤及び溶媒を含み、溶媒が、水とプロピレングリコール誘導体を質量比9:1~0:10で含み、ポリエチルオキサゾリン及びポリビニルピロリドンのいずれも含まない、保護膜形成用組成物。」と記載されているのを、
「水溶性高分子、レーザー光吸収剤及び溶媒を含み、溶媒が、水とプロピレングリコール誘導体を質量比9:1~0:10で含み、ポリエチルオキサゾリン及びポリビニルピロリドンのいずれも含まない、保護膜形成用組成物であり、
水溶性高分子が、ポリビニルアルコール系樹脂を含む、組成物(ただし、溶媒が、水 と有機溶媒とからなり、有機溶媒に対する水の重量比(水/有機溶媒)が3~17である溶媒である場合を除く)。」
に訂正する。(請求項1の記載を引用する請求項4~13も同様に訂正する。)
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に、
「水溶性高分子が、ポリビニルアルコール系樹脂及びポリビニルピロリドン系樹脂から選択される少なくとも1種を含む、請求項1に記載の組成物。」と記載されているのを、
「水溶性高分子、レーザー光吸収剤及び溶媒を含み、溶媒が、水とプロピレングリコール誘導体を質量比9:1~0:10で含み、ポリエチルオキサゾリン及びポリビニルピロリドンのいずれも含まない、保護膜形成用組成物であり、
水溶性高分子が、ポリビニルアルコール系樹脂を含み、
保護膜の厚みが0.01~1.5μmである、組成物(ただし、溶媒が、水と有機溶媒とからなり、有機溶媒に対する水の重量比(水/有機溶媒)が3~17である溶媒である場合を除く)。」
に訂正し、請求項2を独立形式に訂正する。(請求項2の記載を引用する請求項4~13も同様に訂正する。)
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3に、
「レーザー光吸収剤が、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤及びフェルラ酸から選択された少なくとも1種を含む請求項1又は2に記載の組成物。」と記載されているのを、
「水溶性高分子、レーザー光吸収剤及び溶媒を含み、溶媒が、水とプロピレングリコール誘導体を質量比9:1~0:10で含み、ポリエチルオキサゾリン及びポリビニルピロリドンのいずれも含まない、保護膜形成用組成物であり、
水溶性高分子が、ポリビニルアルコール系樹脂を含み、
レーザー光吸収剤が、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤及びフェルラ酸から選択された少なくとも1種を含み、
保護膜の厚みが0.01~1.5μmである、組成物(ただし、溶媒が、水と有機溶媒とからなり、有機溶媒に対する水の重量比(水/有機溶媒)が3~17である溶媒である場合を除く)。」
に訂正し、請求項3を独立形式に訂正する。(請求項3の記載を引用する請求項4~13も同様に訂正する。)
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4に、
「プロピレングリコール誘導体が、プロピレングリコールモノアルキルエーテルを含む請求項1~3のいずれかに記載の組成物。」と記載されているのを、
「溶媒が、水とプロピレングリコール誘導体を質量比68:32~0:10で含み、
プロピレングリコール誘導体が、プロピレングリコールモノアルキルエーテルを含む請求項1~3のいずれかに記載の組成物。」に訂正する。
2 訂正要件についての判断
(1)訂正事項1
ア 訂正の目的について
訂正前の請求項1に係る発明では、「水溶性高分子が、ポリビニルアルコール系樹脂を含」むこと、「溶媒が、水と有機溶媒とからなり、有機溶媒に対する水の重量比(水/有機溶媒)が3~17である溶媒である場合を除く」ことが規定されていない。
これに対して、訂正後の請求項1に係る発明は、これらで特定するものであるから、当該訂正事項は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるといえる。
イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
上記アの理由から明らかなように、訂正事項1は、水溶性高分子及び保護膜形成用組成物を特定するものであり、何らカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものであるといえる。
ウ 新規事項の有無
訂正事項1は、訂正前の請求項2の記載「水溶性高分子が、ポリビニルアルコール系樹脂及びポリビニルピロリドン系樹脂から選択される少なくとも1種を含む」等に基づいて導き出される構成である。
また、訂正事項1は、令和6年3月26日(起案日)付の取消理由通知において指摘された甲第1号証の請求項1に記載された発明(溶媒)を除外するものであり、何ら新たな技術的事項を導入しない。
したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものであるといえる。
(2)訂正事項2
ア 訂正の目的について
訂正前の請求項2に係る発明では、「水溶性高分子が、ポリビニルアルコール系樹脂を含む」こと、「保護膜の厚みが0.01~1.5μmである」こと、「溶媒が、水と有機溶媒とからなり、有機溶媒に対する水の重量比(水/有機溶媒)が3~17である溶媒である場合を除く」ことが規定されていない。
なお、訂正前の請求項2は、訂正前の請求項1を引用するものであり、訂正前の請求項1で規定された「水溶性高分子、レーザー光吸収剤及び溶媒を含み、溶媒が、水とプロピレングリコール誘導体を質量比9:1~0:10で含み、ポリエチルオキサゾリン及びポリビニルピロリドンのいずれも含まない、保護膜形成用組成物」であることの規定は、訂正前の請求項1に係る発明と同じである。
これに対して、訂正後の請求項2に係る発明は、これらで特定されたものであるから、当該訂正事項は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮及び第4号に規定する他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものであるといえる。
イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
上記アの理由から明らかなように、訂正事項2は、水溶性高分子、保護膜及び保護膜形成用組成物を特定するものであり、何らカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものであるといえる。
ウ 新規事項の有無
訂正事項2は、訂正前の請求項2の記載「水溶性高分子が、ポリビニルアルコール系樹脂及びポリビニルピロリドン系樹脂から選択される少なくとも1種を含む」(願書に添付した明細書の【0075】及び【0084】)等に基づいて導き出される構成である。
また、訂正事項2は、令和6年3月26日(起案日)付の取消理由通知において指摘された甲第1号証の請求項1に記載された発明(溶媒)を除外するものであり、何ら新たな技術的事項を導入しない。
したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものであるといえる。
(3)訂正事項3
ア 訂正の目的について
訂正前の請求項3に係る発明では、「水溶性高分子が、ポリビニルアルコール系樹脂を含」むこと、「保護膜の厚みが0.01~1.5μmである」こと、「溶媒が、水と有機溶媒とからなり、有機溶媒に対する水の重量比(水/有機溶媒)が3~17である溶媒である場合を除く」ことが規定されていない。
なお、訂正前の請求項3は、訂正前の請求項1を引用するものであり、訂正前の請求項 1で規定された「水溶性高分子、レーザー光吸収剤及び溶媒を含み、溶媒が、水とプロピレングリコール誘導体を質量比9:1~0:10で含み、ポリエチルオキサゾリン及びポリビニルピロリドンのいずれも含まない、保護膜形成用組成物」であることの規定は、訂正前の請求項1に係る発明と同じである。
これに対して、訂正後の請求項3に係る発明は、これらで特定するものであるから、当該訂正事項は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮及び第4号に規定する他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものであるといえる。
イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
上記アの理由から明らかなように、訂正事項3は、水溶性高分子、保護膜及び保護膜形成用組成物を特定するものであり、何らカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものであるといえる。
ウ 新規事項の有無
訂正事項3は、請求項2、願書に添付した明細書の【0075】及び【0084】等に基づいて導き出される構成である。
また、訂正事項3は、令和6年3月26日(起案日)付の取消理由通知において指摘された甲第1号証の請求項1に記載された発明(溶媒)を除外するものであり、何ら新たな技術的事項を導入しない。
したがって、訂正事項3は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものであるといえる。
(4)訂正事項4
ア 訂正の目的について
訂正前の請求項4に係る発明では、「溶媒が、水とプロピレングリコール誘導体を質量比 68:32~0:10で含」むことが規定されていない。
これに対して、訂正後の請求項4に係る発明は、これで特定するものであるから、当該訂正事項は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるといえる。
イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
上記アの理由から明らかなように、訂正事項4は、溶媒を特定するものであり、何らカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものであるといえる。
ウ 新規事項の有無
訂正事項4は、請求項1、願書に添付した明細書の【0061】及び表1の記載事項(実施例3における質量比「68:32」)等に基づいて導き出される構成である。
したがって、訂正事項4は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものであるといえる。
(5)独立特許要件
本件においては、訂正前のすべての請求項について特許異議の申立てがされているので、特許法120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
(6)一群の請求項について
訂正事項1に係る訂正前の請求項1、4、5、8~13について、請求項4は請求項1~3を、請求項5は請求項4を、請求項8~12は請求項1~その前に記載されたいずれかの請求項を、請求項13は請求項1~11を、それぞれ、引用しているものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。
したがって、訂正前の請求項1、4、5、8~13に対応する訂正後の請求項1、4、5、8~13は、特許法120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
また、訂正事項2に係る訂正前の請求項2、4~13について、請求項4は請求項1~3を、請求項5は請求項4を、請求項6は請求項2~5を、請求項7は請求項2~6を、請求項8~12は請求項1~その前に記載されたいずれかの請求項を、請求項13は請求項1~11を、それぞれ、引用しているものであって、訂正事項2によって記載が訂正される請求項2に連動して訂正されるものである。
したがって、訂正前の請求項2、4~13に対応する訂正後の請求項2、4~13は、特許法120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
さらに、訂正事項3に係る訂正前の請求項3~13について、請求項4は請求項1~3を、請求項5は請求項4を、請求項6は請求項2~5を、請求項7は請求項2~6を、請求項8~12は請求項1~その前に記載されたいずれかの請求項を、請求項13は請求項1~11を、それぞれ、引用しているものであって、訂正事項3によって記載が訂正される請求項3に連動して訂正されるものである。
そして、上記複数の一群の請求項は、特許法施行規則45条の4に規則される関係を有するものであるから、組み合わされて一群の請求項を構成するものである。
したがって、訂正前の請求項3~13に対応する訂正後の請求項3~13は、特許法120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
以上から、訂正前の請求項1~13に対応する訂正後の請求項1~13は、特許法120条の5第4項に規定する一群の請求項であり、本件訂正は、一群の請求項である訂正前の請求項1~13についてされたものであるから、特許法120条の5第4項の規定に適合する。
3 小括
以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するから、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-13〕について訂正することを認める。
第3 本件特許発明
上記第2で述べたとおり、本件訂正は認められるので、本件特許の請求項1~13に係る発明は、令和5年11月6日付けの訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~13に記載された事項により特定される次のとおりのもの(以下「本件特許発明1」~「本件特許発明13」、まとめて「本件特許発明」ともいう。)である。
「【請求項1】
水溶性高分子、レーザー光吸収剤及び溶媒を含み、溶媒が、水とプロピレングリコール誘導体を質量比9:1~0:10で含み、ポリエチルオキサゾリン及びポリビニルピロリドンのいずれも含まない、保護膜形成用組成物であり、
水溶性高分子が、ポリビニルアルコール系樹脂を含む、組成物(ただし、溶媒が、水 と有機溶媒とからなり、有機溶媒に対する水の重量比(水/有機溶媒)が3~17である溶媒である場合を除く)。
【請求項2】
水溶性高分子、レーザー光吸収剤及び溶媒を含み、溶媒が、水とプロピレングリコール誘導体を質量比9:1~0:10で含み、ポリエチルオキサゾリン及びポリビニルピロリドンのいずれも含まない、保護膜形成用組成物であり、
水溶性高分子が、ポリビニルアルコール系樹脂を含み、
保護膜の厚みが0.01~1.5μmである、組成物(ただし、溶媒が、水と有機溶媒とからなり、有機溶媒に対する水の重量比(水/有機溶媒)が3~17である溶媒である場合を除く)。
【請求項3】
水溶性高分子、レーザー光吸収剤及び溶媒を含み、溶媒が、水とプロピレングリコール誘導体を質量比9:1~0:10で含み、ポリエチルオキサゾリン及びポリビニルピロリドンのいずれも含まない、保護膜形成用組成物であり、
水溶性高分子が、ポリビニルアルコール系樹脂を含み、
レーザー光吸収剤が、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤及びフェルラ酸から選択された少なくとも1種を含み、
保護膜の厚みが0.01~1.5μmである、組成物(ただし、溶媒が、水と有機溶媒とからなり、有機溶媒に対する水の重量比(水/有機溶媒)が3~17である溶媒である場合を除く)。
【請求項4】
溶媒が、水とプロピレングリコール誘導体を質量比68:32~0:10で含み、プロピレングリコール誘導体が、プロピレングリコールモノアルキルエーテルを含む
請求項1~3のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
プロピレングリコールモノアルキルエーテルが、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル及びプロピレングリコールモノブチルエーテルから選択される少なくとも 1種を含む請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
ポリビニルアルコール系樹脂のケン化度が60モル%以上96モル%未満である請求項2~5のいずれかに記載の組成物。
【請求項7】
ポリビニルアルコール系樹脂の平均重合度が100~4000である請求項2~6のいずれかに記載の組成物。
【請求項8】
水溶性高分子におけるナトリウムの含有量が300ppm以下である請求項1~7のいずれかに記載の組成物。
【請求項9】
水溶性高分子におけるナトリウムの含有量が1ppm以下である請求項1~8のいずれかに記載の組成物。
【請求項10】
半導体加工用である請求項1~9のいずれかに記載の組成物。
【請求項11】
半導体レーザー加工用である請求項1~10のいずれかに記載の組成物。
【請求項12】
請求項1~11のいずれかに記載の組成物の製造方法であって、各成分の混合液をイオン交換処理する工程を含む製造方法。
【請求項13】
請求項1~11のいずれかに記載の組成物の製造方法であって、各成分の混合液を孔径1μm以下のフィルターで濾過する工程を含む製造方法。」
第4 取消理由通知に記載した取消理由について
令和5年9月5日付けで通知した取消理由及び令和6年3月26日付けで通知した取消理由の概要は、次の理由である。
理由(進歩性)本件特許の請求項1~13に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
記
甲第1号証:中国特許出願公開第104744987号明細書
甲第2号証:特開2006-140311号公報
甲第4号証の1:特開2017-98299号公報
甲第4号証の2:特開2017-98298号公報
第5 前記第4における理由(進歩性)について
1 甲号証について
前記第4 理由の甲第1号証、甲第2号証、甲第4号証の1及び甲第4号証の2
2 甲号証の記載について
(1)甲第1号証(以下、「甲1」という。)
摘記事項の後に当審による仮訳を示す。
1a「
[図:0001418191000001.jpg]
」
1.保護層形成用溶液であって、
水溶性樹脂と、
水溶性レーザー吸収剤と、
溶剤とを含み、
溶剤が水と有機溶剤とからなり、有機溶剤に対する水の重量比が3~17であることを特徴とする溶液。
2.水と有機溶媒の重量比が3~10である、請求項1に記載の溶液。
3.有機溶媒が、イソプロパノール、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロパンジオールモノメチルエーテル、ブチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、プロピレントリオールカーボネートおよびビニルカーボネートから選ばれる少なくとも1つを含む請求項1記載の溶液。
4.水溶性樹脂が、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、5個以上のオキシエチレン繰り返し単位を有するポリエチレングリコール、ポリオキシエチレン、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリアクリル酸、ポリビニルアルコール-ポリアクリル酸ブロックポリマー、ポリビニルアルコール-ポリアクリル酸エステルブロックポリマーまたはポリグリセロールからなる請求項1記載の溶液。
1b「
[図:0001418191000002.jpg]
・・・
[図:0001418191000003.jpg]
[図:0001418191000004.jpg]
[図:0001418191000005.jpg]
」
[0003]しかし、ダイシングチャンネルに沿ってレーザー光を照射すると、レーザー光が例えばシリコン基板に吸収され、基板が溶融または熱分解してシリコン蒸気が発生し、凝縮して半導体チップ表面に堆積しやすくなり、品質が低下することがある。
発明の内容
[0004]本発明の目的は、レーザーによって加工されるウエハ上に保護層を形成し、レーザー光が保護層を通してウエハの表面に導かれるようにし、レーザー加工によって派生する凝縮したシリコン蒸気や他の破片が半導体チップの表面に堆積して品質劣化をもたらすのを効果的に防止する解決策を提供することである。
[0005]上記目的のために、本発明は、保護層を形成するための解決策を提案する。この溶液は、水溶性樹脂、水溶性レーザー吸収剤、および溶剤から構成されています。溶 媒は、水と有機溶媒からなり、水と有機溶媒の重量比は3~17である。
・・・
[0033] 一実施形態において、水溶性樹脂、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン(PVP)、5個以上のオキシエチレン繰り返し単位を有するポリエチレングリコール、ポリオキシエチレン、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリアクリル酸、ポリビニルアルコール-ポリアクリル酸ブロックポリマー、ポリビニルアルコール-ポリアクリル酸エステルブロックポリマーまたはポリグリセロールであってよい水溶性樹脂は、上述したように、単一の材料からなるものであってもよいし、2種以上の組み合わせであってもよい。ただし、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば水などの溶媒に溶解し、塗布、乾燥して保護層を形成できる材料であればよい。
[0034] 一実施形態では、半導体ウエハ表面100a上に形成された保護層14は、レーザー加工後に水で洗浄することができる。保護層14の水に対する洗浄性を考慮すると、水溶性樹脂としては、極性基としてエーテル結合または水酸基を1つだけ有する樹脂、例えば前述したポリビニルアルコールやポリエチレングリコール水溶性樹脂を挙げることができる。極性基、例えばカルボキシル基や3級アミンを有する水溶性樹脂は、半導体ウエハ表面100aに強固に固定される傾向があり、水洗後も半導体ウエハ表面100aに残存する場合がある。一方、極性基としてエーテル結合や水酸基を1つだけ持つ樹脂は、比較的接着力が弱く、水洗後に半導体ウエハ表面に残留するのを効果的に回避することができる。一実施形態において、水溶性樹脂の重合度又は分子量は、低いことが好ましい。ただし、重合度や分子量の高い水溶性樹脂は、水によって半導体ウエハ表面から洗い流されにくいが、可塑剤を使用することでこれを回避することができる。可塑剤については後述する。
1c「
[図:0001418191000006.jpg]
」
[0038]一実施形態において、水溶性紫外線吸収剤は、例えば、4、4’-ジカルボキシベンゾフェノン、ベンゾフェノン-4-カルボン酸、2-カルボキシアントラキノン、1,2-ナフタレンジカルボン酸、1,8-ナフタレンジカルボン酸、2,3-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、2,7-ナフタレンジカルボン酸、それらのナトリウム、カリウム、アンモニウム及び4級アンモニウム塩、2,6-アントラキノンジスルホン酸ナトリウム塩、2,7-アントラキノンジスルホン酸ナトリウム塩及びフェルラ酸などである。
1d「
[図:0001418191000007.jpg]
・・・
[図:0001418191000008.jpg]
」
[0041]保護層14用の溶液の調製に用いる溶媒は、水と有機溶媒の混合物の形態であってもよい。
[0042]有機溶媒の例としては、エタノール、エステル、アルキレングリコール、アルキレングリコールモノアルキルエーテル、アルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテートなどが挙げられる。さらに、有機溶媒の例としては、イソプロピルアルコール、エタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、アルキルカーボネートが挙げられる。これらの有機溶媒は、ブチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、グリセリンカーボネート、ビニルカーボネートなどのアルキルカーボネートを単独または併用して使用することができる。これらの有機溶媒は単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。本実施形態において、アルキレングリコールモノアルキルエーテルは、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテルである。
[0043]一実施形態において、保護層14用の溶液の調製に使用される溶媒は、水と有機溶媒の重量比(水/有機溶媒)が3~17である溶媒である。水分量が多すぎると(例:水/有機溶剤>17)、保存性が悪くなり、均一にコーティングできなくなる。水分量が少なすぎる場合(つまり水/有機溶媒<3)、製造工程にコストがかかりすぎて経済的に成り立たなくなる。別の実施形態では、保護層14の調製用溶液に用いられる溶媒は、水と有機溶媒の重量比が3~10である溶媒であってもよい。さらなる実施形態において、保護層14の調製のための溶液に用いられる溶媒は、水と有機溶媒との重量比が3~7である溶媒であってよい。
[0044]本発明の実施形態において、保護層14の調製用溶液に用いられる溶媒は、水とプロピレングリコールモノメチルエーテルとの重量比(H2O/PGME)が3~17である溶媒である。水分量が多すぎると(例:H2O/PGME>17)、塗料の保持力が弱くなり、均一に塗布できなくなる。水分量が低すぎると(つまりH2O/PGME<3)、製造工程にコストがかかりすぎて不経済になる。本発明の別の実施形態では、保護層14の調製に用いられる溶媒は、水とプロピレングリコールモノメチルエーテルとの重量比(H2O/PGME)が3~10である溶媒である。本発明のさらなる実施形態では、保護層14の溶液の調製に用いられる溶媒は、水とプロピレングリコールモノメチルエーテルとの重量比(H2O/PGME)が3~7である溶媒である。
・・・
[0050]加工する半導体ウエハ表面100aに前記溶液を塗布した後、塗布した溶液を乾燥させて保護層14を形成する。半導体ウエハ100は、格子状のカットチャンネル13で分割された複数の半導体チップ12を含み、保護層14を介してレーザー光を照射して溝を形成している。保護層14の厚さは、例えば、0.1~5μmである。加工対象の半導体ウエハの表面100aには、通常、多数の凹凸があり、カットチャンネル13はこれらの凹凸に形成されている。このように、保護層14の厚さが小さいと、これらの突起上の保護層14の厚さが非常に小さくなり、保護層14にゴミが入り込んで半導体チップ12の表面に堆積する可能性が高くなる。一方、保護層14の厚みが大きいと、特にメリットはなく、レーザー加工後に保設層14を水洗する手間がかかる。
1e「
[図:0001418191000009.jpg]
[図:0001418191000010.jpg]
・・・
[図:0001418191000011.jpg]
[図:0001418191000012.jpg]
[図:0001418191000013.jpg]
[図:0001418191000014.jpg]
」
[0076] <実施例>
[0077] 本実施例1では、水溶性樹脂がポリビニルピロリドン(PVP)、水溶性レーザー吸収剤がトランスフェルラ酸、溶媒が水およびプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)であることを示す。
[0078] まず、下記の表一に従って、成分の所望の重量比を選択する。ウエハダイシング用保護層14形成用溶液は、上記成分を混合し、攪拌機を備えたミキサーに加え、室温、500rpmで1時間攪拌することにより調製される。
[0079] 実施例1において、成分の重量%は表一に示す通りである。
[0080]
[図:0001418191000015.jpg]
[0081] 表一
[0082] 残りの実施形態は上記と同様であり、以下の表二に示すように、水とプロピレングリコールモノメチルエーテルの重量比が異なるだけである。
・・・
[0085] また、半導体ウエハ表面100aに溶液を塗布し、乾燥させた後に、保護層1の厚みを測定する。保護層2の厚みは、この溶液を1ヶ月間放置した後、半導体ウエハ表面100aに塗布し、乾燥させた後に測定する。保護層2の厚みに値がない場合は、保護層1の厚みとほぼ同じ値であることを意味する。
[0086]
[図:0001418191000016.jpg]
[0088] 保護層厚み1の結果を参照すると、水とプロピレングリコールモノメチルエーテルの重量比が高すぎる(すなわち、H2O/PGME>17)場合に形成される保護層14は、厚みが不一となる問題があることがわかる。保護層2の厚みの結果を参照すると、水とプロピレングリコールモノメチルエーテルとの重量比が高すぎる場合(すなわち、H2O/PGME>17)にも、保護層14の厚みが大きく変化することがわかる。また、水とプロピレングリコールモノメチルエーテルの重量比が91(すなわちH2O/PGME=91)の場合、溶液を置いた翌日に固形物が析出し、溶液の成分が均ーに混合されていないことがわかった。この場合、水とプロピレングリコールモノメチルエーテルの重量比は17.4(すなわちH2O/PGME=17.4)であり,溶液調製後の測定では均質(2.041)だったが、1ヵ月後に再塗布すると視覚的に不均ーとなった。
[0089] 一方、水とプロピレングリコールモノメチルエーテルの重量比(H2O/PGME)が3~17の溶媒(すなわち、本発明の実施例で定義した範囲)で形成した保護層14は、厚み分布が均一であるばかりか、1ヶ月後に塗布して形成した保護層14の厚みが、その1ヶ月前に塗布した保護層14の厚みと大きく異なっていないことが確認された。
[0090] 本発明のこの実施形態では、保護層14の調製用溶液に用いられる溶媒は、水とプロピレングリコールモノメチルエーテルとの重量比(H2O/PGME)が3~17である溶媒である。水分量が多すぎると(つまりH2O/PGME>17)、保存が容易でなく、コーティングが均ーにならない。水分量が少なすぎると(つまりH2O/PGME<3)、製造工程にコストがかかりすぎて経済的に成り立たなくなる。
[0091] 次に、水とプロピレングリコールモノメチルエーテルとの重量比(H2O/PGME)が3~17の範囲にある表二の溶液により保護層14を形成した半導体ウエハ100を、上記のレーザー加工の仕様を満たすレーザー加工機に取り付けた。その後、保護層14を純水で洗浄除去し、レーザースキャンの周囲を観察したところ、ゴミの付着がないことが確認された。
[0092] 以上のように、本発明の解決手段は、レーザー加工されるウエハ上に保護層を形成し、レーザー光が保護層を介してウエハの表面に照射されるようにし、レーザー加工で発生する凝縮したシリコン蒸気やその他のゴミが半導体チップの表面に堆積して品質が低下するのを効果的に防止するものである。同時に、本発明の溶液をより長期間保存することができる。」
(2)甲第2号証(以下、「甲2」という。)
2a「【請求項1】
水溶性樹脂と、水溶性染料、水溶性色素及び水溶性紫外線吸収剤からなる群より選択された少なくとも1種の水溶性のレーザー光吸収剤とが溶解した溶液からなることを特徴とするレーザーダイシング用保護膜剤。」
2b「【0001】
本発明は、半導体ウエーハ等のウエーハの所定の領域にレーザー光線を照射して所定の加工を施すレーザーダイシングに用いる保護膜剤及び該保護膜剤を用いてのレーザーダイシングによる加工方法に関する。」
2c「【0018】
前記水溶性樹脂は、保護膜の基材となるものであり、水等の溶剤に溶解させて塗布・乾燥して膜を形成し得るものであれば、特に制限されず、例えばポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、エチレンオキシ繰り返し単位が5以上のポリエチレングリコール、ポリエチレンオキサイド、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリアクリル酸、ポリビニルアルコールポリアクリル酸ブロック共重合体、ポリビニルアルコールポリアクリル酸エステルブロック共重合体、ポリグリセリン等を例示することができ、これらは、1種単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。」
2d「【0023】
また、水溶性紫外線吸収剤としては、例えば4,4’-ジカルボキシベンゾフェノン、ベンゾフェノン-4-カルボン酸、2-カルボキシアントラキノン、1,2-ナフタリンジカルボン酸、1,8-ナフタリンジカルボン酸、2,3-ナフタリンジカルボン酸、2,6-ナフタリンジカルボン酸、2,7-ナフタリンジカルボン酸等及びこれらのソーダ塩、カリウム塩、アンモニウム塩、第4級アンモニウム塩等、2,6-アントラキノンジスルホン酸ソーダ、2,7-アントラキノンジスルホン酸ソーダ、フェルラ酸などを挙げることができ、中でもフェルラ酸が好適である。」
2e「【0031】
また、本発明の保護膜剤である溶液の調製に用いる溶剤としては、上記水溶性樹脂及び水溶性のレーザー光吸収剤が溶解する溶剤であればよく、例えば、水、アルコール、エステル、アルキレングリコール、アルキレングリコールモノアルキルエーテル、アルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテートなどを用いることができる。中でも、水、アルキレングリコールモノアルキルエーテルなどが好ましく、アルキレングリコールモノアルキルエーテルとしては、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)が好ましい。尚、作業環境上、最も好ましいものは、水もしくは水を含有する混合溶剤である。
【0032】
上述した本発明の保護膜剤は、ウエーハ加工面、例えば格子状のストリートにより区画された複数の半導体チップが形成されているウエーハの加工面に塗布され、乾燥することにより保護膜を形成するものであり、この保護膜を介してストリートにレーザー光を照射しての溝の形成(レーザーダイシング)に適用される。このような保護膜の厚み(保護膜剤の乾燥厚み)は、通常、ストリート上で0.1乃至5μm程度とするのがよい。即ち、このようなウエーハの加工面は、多数の凹凸を有しており、この凹部にストリートが形成されている。従って、上記厚みがあまり薄いと、凸部の保護膜厚みがかなり薄くなってしまい、保護膜中にデブリが侵入してチップ表面に付着してしまうおそれがあり、必要以上に厚く形成しても、加工後の水洗に時間がかかるなどの不都合を生じるのみで、格別の利点がないからである。」
2f「【0064】
(実施例1)
下記組成の保護膜剤を調製した。
水溶性樹脂; 20g
ケン化度88%、重合度300のポリビニルアルコール
水溶性レーザー光吸収剤; 0.2g
フェルラ酸
水; 80g
固形分のg吸光係数k=1.56×10-1
【0065】
上記の保護膜剤をスピンナーにてシリコンウエーハに塗布し、乾燥して、ストリート上での厚みが0.5~1.5μmの保護膜を形成した。次いで、この保護膜が形成されたシリコンウエーハを、上記仕様のレーザー加工機に装着して、レーザー加工を行った後、純水にて保護膜を洗い流して、レーザースキャニング周辺を観察したところ、エッジ部の盛り上がりは観察されたものの、周辺へのデブリの付着はなく使用出来るレベルであった。また、加工巾は、塗布膜厚みの影響を受けることなく、レーザースポット径と同等であった。」
(3)甲第4号証の1(以下、「甲4の1」という。)
41a「【請求項1】
紫外線吸収基を有するポリビニルアルコール系樹脂(A)で構成された、半導体レーザーダイシング用保護剤。
・・・
【請求項9】
請求項1~8のいずれかに記載の半導体レーザーダイシング用保護剤を含む組成物。
・・・
【請求項17】
請求項9~16のいずれかに記載の組成物をイオン交換処理により脱イオン処理する工程を含む、半導体の製造方法。
【請求項18】
請求項9~16のいずれかに記載の組成物を孔径1μm以下のフィルターで濾過する工程を含む、半導体の製造方法。」
41b「【0020】
PVA系樹脂(A)の平均重合度は、特に限定されないが、スピンコート法などに適した粘度に調整できる等の観点から、好ましくは100~4000、より好ましくは200~2000、さらに好ましくは300~1000である。尚、本発明において、PVA系樹脂の平均重合度は、JIS K 6726で規定されているPVAの平均重合度測定方法により求めることができる。
また、PVA系樹脂(A)としては、PVA系樹脂(A)の範疇に属する異なる2種以上のPVA系樹脂(A)を使用してもよく、PVA系樹脂(A1)及びPVA系樹脂(A2)を含む場合、PVA系樹脂(A1)の平均重合度とPVA系樹脂(A2)の平均重合度は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。特に、半導体へのスピンコートに適した粘度に調整しやすくなる等の観点から、PVA系樹脂(A1)の平均重合度は、PVA系樹脂(A2)の平均重合度と100以上(例えば、100~1000)異なることが好ましい。例えば、低平均重合度(例えば、平均重合度が100~500)のPVA系樹脂(A1)[例えば、R1が1,3-アルカジエニル基である上記式(1)の単位を有するPVA系樹脂(A1)、R1が1,3,6-アルカトリエニル基である上記式(1)の単位を有するPVA系樹脂(A1)等]を使用する場合、PVA系樹脂(A2)の平均重合度が、PVA系樹脂(A1)の平均重合度と比較して100以上(例えば、100~1000)大きいことが好ましい。
【0021】
PVA系樹脂(A)のケン化度は、特に限定されないが、水洗によって保護膜を除去しやすくなる等の観点から、好ましくは60モル%以上(例えば、60~100モル%)、より好ましくは65~95モル%、さらに好ましくは70~90モル%である。尚、本発明において、PVA系樹脂のケン化度は、JIS K 6726で規定されているPVAのケン化度測定方法により求めることができる。
また、PVA系樹脂(A)が、PVA系樹脂(A1)及びPVA系樹脂(A2)を含む場合、PVA系樹脂(A1)のケン化度とPVA系樹脂(A2)のケン化度は、同じであってもよいし、異なっていてもよいが、PVA系樹脂(A1)及びPVA系樹脂(A2)間の相溶性等の観点から、両者のケン化度の差ができるだけ小さい方がよく、PVA系樹脂(A1)のケン化度が、PVA系樹脂(A2)のケン化度の±3モル%以内(例えば±0.1~3モル%以内)であることが好ましい。」
41c「【0041】
本発明の組成物において、金属不純物(例えば、Na、K、Fe、Cu等)の含有量は、好ましくは50ppb以下、より好ましくは30ppb以下である。金属不純物量は、例えば、ICP-MS(誘導結合プラズマ質量分析法)等を用いた公知の方法により測定することができる。」
41d「【0045】
本発明の保護剤又は組成物は、その製造工程において、もしくは該保護剤又は組成物を半導体ウェーハ上に塗布する前に、イオン交換処理を行ってもよい。イオン交換処理方法は、特に限定されないが、例えば、本発明の保護剤又は組成物を、イオン交換樹脂等を充填したカラムに通液することにより行うことができる。半導体ウェーハ上に塗布する前にイオン交換処理を行うことにより、保護剤又は組成物中の金属不純物を除去することができ、組成物中の金属不純物含有量を前記の範囲内にすることができる。
【0046】
また、本発明の保護剤又は組成物は、その製造工程において、もしくは該保護剤又は組成物を半導体ウェーハ上に塗布する前に、濾過してもよい。濾過方法は、特に限定されず、フィルター等を用いて濾過することができる。フィルターとしては、例えば、孔径1μm以下のもの等を使用することができる。」
(4)甲第4号証の2(以下、「甲4の2」という。)
42a「【請求項1】
炭素-炭素2重結合を、ポリビニルアルコール系樹脂1分子あたりに少なくとも2つ以上有するポリビニルアルコール系樹脂(A)で構成された、半導体レーザーダイシング用保護剤。
・・・
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載の半導体レーザーダイシング用保護剤を含む組成物。
・・・
【請求項13】
請求項5~12のいずれかに記載の組成物をイオン交換処理により脱イオン処理する工程を含む、半導体の製造方法。
【請求項14】
請求項5~12のいずれかに記載の組成物を孔径1μm以下のフィルターで濾過する工程を含む、半導体の製造方法。」
42b「【0014】
PVA系樹脂(A)の平均重合度は、特に限定されないが、スピンコート法などに適した粘度に調整できる等の観点から、好ましくは100~4000、より好ましくは200~2000、さらに好ましくは300~1000である。尚、本発明において、PVA系樹脂の平均重合度は、JIS K 6726で規定されているPVAの平均重合度測定方法により求めることができる。
また、PVA系樹脂(A)としては、PVA系樹脂(A)の範疇に属する異なる2種以上のPVA系樹脂(A)を使用してもよく、PVA系樹脂(A1)及びPVA系樹脂(A2)を含む場合、PVA系樹脂(A1)の平均重合度とPVA系樹脂(A2)の平均重合度は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。特に、半導体へのスピンコートに適した粘度に調整しやすくなる等の観点から、PVA系樹脂(A1)の平均重合度は、PVA系樹脂(A2)の平均重合度と100以上(例えば、100~1000)異なることが好ましい。例えば、低平均重合度(例えば、平均重合度が100~500)のPVA系樹脂(A1)[例えば、カルボニル基に対してα,β位及びγ,δ位の位置に炭素-炭素2重結合を有するPVA系樹脂(A1)、カルボニル基に対してα,β位、γ,δ位及びε,ζ位の位置に炭素-炭素2重結合を有するPVA系樹脂(A1)等]を使用する場合、PVA系樹脂(A2)の平均重合度が、PVA系樹脂(A1)の平均重合度と比較して100以上(例えば、100~1000)大きいことが好ましい。
【0015】
PVA系樹脂(A)の(平均)ケン化度は、特に限定されないが、水洗によって保護膜を除去しやすくなる等の観点から、好ましくは60モル%以上(例えば、60~100モル%)、より好ましくは65~95モル%、さらに好ましくは70~90モル%である。尚、本発明において、PVA系樹脂のケン化度は、JIS K 6726で規定されているPVAのケン化度測定方法により求めることができる。
また、PVA系樹脂(A)が、PVA系樹脂(A1)及びPVA系樹脂(A2)を含む場合、PVA系樹脂(A1)のケン化度とPVA系樹脂(A2)のケン化度は、同じであってもよいし、異なっていてもよいが、PVA系樹脂(A1)及びPVA系樹脂(A2)間の相溶性等の観点から、両者のケン化度の差ができるだけ小さい方がよく、PVA系樹脂(A1)のケン化度が、PVA系樹脂(A2)のケン化度の±3モル%以内(例えば±0.1~3モル%以内)であることが好ましい。」
42c「【0038】
本発明の組成物において、金属不純物(例えば、Na、K、Fe、Cu等)の含有量は、好ましくは50ppb以下、より好ましくは30ppb以下である。金属不純物量は、例えば、ICP-MS(誘導結合プラズマ質量分析法)等を用いた公知の方法により測定することができる。」
42d「【0042】
本発明の保護剤又は組成物は、その製造工程において、もしくは該保護剤又は組成物を半導体ウェーハ上に塗布する前に、イオン交換処理を行ってもよい。イオン交換処理方法は、特に限定されないが、例えば、本発明の保護剤又は組成物を、イオン交換樹脂等を充填したカラムに通液することにより行うことができる。
【0043】
また、本発明の保護剤又は組成物は、その製造工程において、もしくは該保護剤又は組成物を半導体ウェーハ上に塗布する前に、濾過してもよい。濾過方法は、特に限定されず、フィルター等を用いて濾過することができる。フィルターとしては、例えば、孔径1μm以下のもの等を使用することができる。」
3 甲1号証に記載された発明
(1)甲1発明1
甲1には実施例1の保護層形成用溶液として「水溶性レーザー吸収剤としてトランスフェルラ酸0.3重量%、溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテル14.1重量%及び水78.4重量%、水溶性樹脂としてポリビニルピロリドン7.2重量%からなり、水/プロピレングリコールモノメチルエーテルの重量比5.57であり、厚みが2.03μmの保護層を形成するウエハダイシング用保護層14形成用溶液。」の発明が記載されているといえる(摘記1e参照)。
(2)甲1発明2
甲1には実施例1の保護層形成用溶液の調製方法として「水溶性レーザー吸収剤としてトランスフェルラ酸0.3重量%、溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテル14.1重量%及び水78.4重量%、水溶性樹脂としてポリビニルピロリドン7.2重量%を混合し、攪拌機を備えたミキサーに加え、室温、500rpmで1時間攪拌する、水溶性レーザー吸収剤としてトランスフェルラ酸0.3重量%、溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテル14.1重量%及び水78.4重量%、水溶性樹脂としてポリビニルピロリドン7.2重量%からなり、水/プロピレングリコールモノメチルエーテルの重量比5.57であり、厚みが2.03μmの保護層を形成するウエハダイシング用保護層14形成用溶液の調製方法。」の発明が記載されているといえる(摘記1e参照)。
4 対比・判断
(1)本件特許発明1
ア 甲1発明1との対比
甲1発明1の「水溶性レーザー吸収剤としてトランスフェルラ酸」は本件特許発明1の「レーザー光吸収剤」に相当する。また、甲1発明1の「水溶性樹脂としてポリビニルピロリドン」が水溶性高分子である点は技術常識である。
甲1発明1の「プロピレングリコールモノメチルエーテル」は本件特許発明1の「プロピレングリコール誘導体」に相当するから、甲1発明1の「溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテル14.1重量%及び水78.4重量%」は、水とプロピレングリコールモノメチルエーテルの質量比は1.41:7.84であり、本件特許発明1の「溶媒が、水とプロピレングリコール誘導体を質量比9:1~0:10で含み」に相当する。
甲1発明1の「ウエハダイシング用保護層14形成用溶液」は、ポリエチルオキサゾリンを含まないから、本件特許発明1の「ポリエチルオキサゾリン」及び「含まない、保護膜形成用組成物」に相当する。
そうすると、本件特許発明1と甲1発明1は、「水溶性高分子、レーザー光吸収剤及び溶媒を含み、溶媒が、水とプロピレングリコール誘導体を質量比9:1~0:10で含み、ポリエチルオキサゾリンを含まない、保護膜形成用組成物。」である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点1-1>
保護膜形成用組成物が、本件特許発明1はポリビニルピロリドンを含まないのに対し、甲1発明1はポリビニルピロリドンを含む点。
<相違点1-2>
水溶性高分子が、本件特許発明1はポリビニルアルコール系樹脂を含むのに対し、甲1発明1はポリビニルアルコール系樹脂を含まない点。
<相違点1-3>
保護膜形成用組成物が、本件特許発明1は、「溶媒が、水と有機溶媒とからなり、有機溶媒に対する水の重量比(水/有機溶媒)が3~17である溶媒である場合を除く」と特定されているのに対し、甲1発明1はそのような特定がない点。
イ 相違点についての検討
<相違点1-1>及び<相違点1-2>について
甲1にはウエハダイシング用保護層14形成用溶液の水溶性樹脂としてポリビニルピロリドンと並んで、ポリビニルアルコール等の化合物が記載されており、さらに、保護層14の水に対する洗浄性を考慮すると、水溶性樹脂としては、極性基としてエーテル結合または水酸基を1つだけ有する樹脂、例えば前述したポリビニルアルコールやポリエチレングリコール水溶性樹脂が挙げられることが記載されているから(摘記1a、1b参照)、甲1発明1のウエハダイシング用保護層14形成用溶液の水溶性樹脂として、ポリビニルピロリドンに代えて、ポリビニルアルコール等を採用し、ポリビニルピロリドンを含まないものとすることは、当業者が容易に想到し得ることである。
<相違点1-3>について
甲1には、甲1発明1のウエハダイシング用保護層14形成用溶液において、水分量が少なすぎる場合(つまり水/有機溶媒<3)、製造工程にコストがかかりすぎて経済的に成り立たなくなると記載されているにすぎず(摘記1d、1e参照)、水分量を少なくすることに技術的な阻害要因があるとはいえないから、溶媒が、水と有機溶媒とからなり、有機溶媒に対する水の重量比(水/有機溶媒)が3未満とすることは、当業者が容易に想到し得ることである。
ウ 本件特許発明1の効果について
甲1には、保護層14の溶液の調製に使用される溶媒について、水分量が多すぎると保存性が悪くなり、均一にコーティングできなくなり([0043])、厚みが不均一となる問題があること([0088])が記載されると共に、保護層14に対する洗浄性を考慮すると、水溶性樹脂としてはポリビニルアルコールやポリエチレングリコール水溶性樹脂が挙げられることが記載されている([0034])が記載されている。
したがって、塗布性や加工性に優れ、水洗により保護膜とデブリを除去できるとの本件特許明細書の特定の組成物についての実施例の記載をもって、本件特許発明1の効果の程度が、本件特許発明1の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものとはいえない。
エ 特許権者の主張及び当審の判断について
特許権者は、令和6年5月27日提出の意見書において、甲1の課題解決には、「水/有機溶媒が3~17」であることが前提になるものと認識できるにとどまらず、水/有機溶媒が3未満や17超の場合には、さらに、不利な点が生じると認識できるから、甲1において「水/有機溶媒が3~17」とならない範囲で溶媒を使用することは、より一層、阻害・敬遠されるべき事情があると言え、さらには甲2のような技術常識に触れた当業者であれば、水溶性高分子(水溶性樹脂)の中でも、ポリビニルアルコールとポリビニルピロリドンとでは必ずしも同様の傾向を示すものであるとは直ちに認識できないはずで、より一層、甲1発明(特に、有機溶媒の中でもプロピレングリコール誘導体を選択し、水と当該プロピレングリコール誘導体を特定の割合で使用した甲1発明)において、ポリビニルピロリドンに代えて、ポリビニルアルコールを使用することは、決して容易に想到しえたものではなく、本件特許発明1は、発明の効果に鑑みても、甲1発明(さらには甲2等のその他の証拠)に基づいて容易に想到しえないと主張する。
しかし、甲2の記載からは、水溶性高分子(水溶性樹脂)の中でも、ポリビニルアルコールとポリビニルピロリドンとでは必ずしも同様の傾向を示すものであるとは直ちに認識できないとしても、前記イ<相違点1-1>及び<相違点1-2>で検討したとおり、甲1においては水溶性樹脂としてポリビニルアルコールはポリビニルピロリドンと同様に使用するものとして記載されているといえるから、本件特許発明1は甲1発明1から当業者が容易に想到し得るものであるといえ、効果についても前記ウで検討したとおりであるから、特許権者の前記主張は採用できない。
オ 小括
したがって、本件特許発明1は、甲1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。
(2)本件特許発明2
ア 甲1発明1との対比
甲1発明1の「水溶性レーザー吸収剤としてトランスフェルラ酸」及び「水溶性樹脂としてポリビニルピロリドン」は、それぞれ、本件特許発明2の「レーザー光吸収剤」及び「水溶性高分子」に相当する。
甲1発明1の「プロピレングリコールモノメチルエーテル」は本件特許発明2の「プロピレングリコール誘導体」に相当するから、甲1発明1の「溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテル14.1重量%及び水78.4重量%」は、水とプロピレングリコールモノメチルエーテルの質量比は1.41:7.84であり、本件特許発明2の「溶媒が、水とプロピレングリコール誘導体を質量比9:1~0:10で含み」に相当する。
甲1発明1の「ウエハダイシング用保護層14形成用溶液」は、ポリエチルオキサゾリンを含まないから、本件特許発明2の「ポリエチルオキサゾリン」及び「も含まない、保護膜形成用組成物」に相当する。
そうすると、本件特許発明2と甲1発明1は、「水溶性高分子、レーザー光吸収剤及び溶媒を含み、溶媒が、水とプロピレングリコール誘導体を質量比9:1~0:10で含み、ポリエチルオキサゾリンを含まない、保護膜形成用組成物。」である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点1-4>
保護膜形成用組成物が、本件特許発明2はポリビニルピロリドンを含まないのに対し、甲1発明1は水溶性樹脂としてポリビニルピロリドンを含む点。
<相違点1-5>
水溶性高分子が、本件特許発明2はポリビニルアルコール系樹脂を含むのに対し、甲1発明1はポリビニルアルコール系樹脂を含まない点。
<相違点1-6>
本件特許発明3は保護膜の厚みが0.01~1.5μmであるのに対し、甲1発明1は保護膜の厚みが2.03μmである点。
<相違点1-7>
保護膜形成用組成物が、本件特許発明2は、溶媒が、水と有機溶媒とからなり、有機溶媒に対する水の重量比(水/有機溶媒)が3~17である溶媒である場合を除くと特定されているのに対し、甲1発明1はそのような特定がない点。
イ 相違点についての検討
<相違点1-4>及び<相違点1-5>について
<相違点1-4>及び<相違点1-5>は、前記(1)アの<相違点1-1>及び<相違点1-2>と同じであり、前記(1)イの<相違点1-1>及び<相違点1-2>についてで検討したとおり、甲1発明1のウエハダイシング用保護層14形成用溶液において、水溶性樹脂として、ポリビニルピロリドンに代えて、ポリビニルアルコール等を採用し、ポリビニルピロリドンを含まないものとすることは、当業者が容易に想到し得ることである。
<相違点1-6>について
甲1には、甲1発明1のウエハダイシング用保護層14形成用溶液が形成する保護層の厚さは0.1~5μmであること、厚みが大きいと、特にメリットはなく、レーザー加工後に保護層を水洗する手間がかかることが、記載されているから(摘記1d参照)、甲1発明1のウエハダイシング用保護層14形成用溶液において、形成する保護層の厚さを0.1~5μmの範囲で小さくし、0.1~1.5μmを選択し、0.01~1.5μmを充足するよう構成することは、当業者が容易に想到し得ることである。
<相違点1-7>について
<相違点1-7>は、前記(1)アの<相違点1-3>と同じであり、前記(1)イの<相違点1-3>についてで検討したとおり、甲1発明1のウエハダイシング用保護層14形成用溶液において、溶媒が、水と有機溶媒とからなり、有機溶媒に対する水の重量比(水/有機溶媒)が3未満として、有機溶媒に対する水の重量比(水/有機溶媒)が3~17である溶媒である場合を除くものとすることは、当業者が容易に想到し得ることである。
ウ 本件特許発明2の効果について
前記(1)ウで検討したことに加え、保護膜の厚みが0.01~1.5μmである本件特許発明2のものが、保護膜の厚みが0.01~1.5μmでないものと比較して優れた効果を奏することは示されておらず、本件特許発明2が予測し得ない顕著な効果を奏するとはいえない。
エ 特許権者の主張及び当審の判断について
特許権者は、令和6年5月27日提出の意見書において、甲1の[0050]の「保護層14の厚さが小さいと、これらの突起上の保護層14の厚さが非常に小さくなり、保護層14にゴミが入り込んで半導体チップ12の表面に堆積する可能性が高くなる。」との記載に基づいて、厚みを「0.01~1.5μm」となるまで小さく(厚みを概ね0.75倍以下にする)する動機は非常に乏しいと言え、本件特許発明2もまた(より一層)、発明の効果に鑑みても、甲1発明(さらには甲2等のその他の証拠)に基づいて容易に想到しえず、進歩性を有すると主張する。
しかし、前記イで検討したとおり、保護膜の厚みを0.01~1.5μmを充足するよう構成することは、当業者が容易に想到し得ることであるし、効果についても前記ウで検討したとおりであるから、特許権者の前記主張は採用できない。
オ 小括
したがって、本件特許発明2は、甲1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。
(3)本件特許発明3
ア 甲1発明1との対比
甲1発明1の「水溶性レーザー吸収剤としてトランスフェルラ酸」は、本件特許発明3の「レーザー光吸収剤」及び「レーザー光吸収剤が、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤及びフェルラ酸から選択された少なくとも1種を含み」に相当する。
甲1発明1の「水溶性樹脂としてポリビニルピロリドン」は本件特許発明3の「水溶性高分子」に相当する。
甲1発明1の「プロピレングリコールモノメチルエーテル」は本件特許発明3の「プロピレングリコール誘導体」に相当するから、甲1発明1の「溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテル14.1重量%及び水78.4重量%」は、水とプロピレングリコールモノメチルエーテルの質量比は1.41:7.84であり、本件特許発明3の「溶媒が、水とプロピレングリコール誘導体を質量比9:1~0:10で含み」に相当する。
甲1発明1の「ウエハダイシング用保護層14形成用溶液」は、ポリエチルオキサゾリンを含まないから、本件特許発明3の「ポリエチルオキサゾリン」を「含まない、保護膜形成用組成物」に相当する。
そうすると、本件特許発明3と甲1発明1は、「水溶性高分子、レーザー光吸収剤及び溶媒を含み、溶媒が、水とプロピレングリコール誘導体を質量比9:1~0:10で含み、ポリエチルオキサゾリンを含まない、保護膜形成用組成物であり、
レーザー光吸収剤が、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤及びフェルラ酸から選択された少なくとも1種を含む、組成物。」である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点1-8>
保護膜形成用組成物が、本件特許発明3はポリビニルピロリドンを含まないのに対し、甲1発明1は水溶性樹脂としてポリビニルピロリドンを含む点。
<相違点1-9>
水溶性高分子が、本件特許発明3はポリビニルアルコール系樹脂を含むのに対し、甲1発明1はポリビニルアルコール系樹脂を含まない点。
<相違点1-10>
本件特許発明3は保護膜の厚みが0.01~1.5μmであるのに対し、甲1発明1は保護膜の厚みが2.03μmである点。
<相違点1-11>
保護膜形成用組成物が、本件特許発明3は、ただし、溶媒が、水と有機溶媒とからなり、有機溶媒に対する水の重量比(水/有機溶媒)が3~17である溶媒である場合を除くと特定されているのに対し、甲1発明1はそのような特定がない点。
イ 相違点についての検討
<相違点1-8>及び<相違点1-9>について
<相違点1-8>及び<相違点1-9>は、前記(1)ア<相違点1-1>及び<相違点1-2>と同じであり、前記(1)イ<相違点1-1>及び<相違点1-2>についてで検討したとおり、当業者が容易に想到し得ることである。
<相違点1-10>について
<相違点1-10>は、前記(2)ア<相違点1-6>と同じであり、前記(2)イ<相違点1-6>についてで検討したとおり、当業者が容易に想到し得ることである。
<相違点1-11>について
<相違点1-11>は、前記(1)ア<相違点1-3>と同じであり、前記(1)イ<相違点1-3>についてで検討したとおり、当業者が容易に想到し得ることである。
ウ 本件特許発明3の効果について
前記(1)ウ及び(2)ウで検討したのと同じ理由により、本件特許発明3は甲1発明1と比較して顕著な効果を奏するとはいえない。
エ 特許権者の主張及び当審の判断について
特許権者は前記(2)エと同様の主張をするが、前記(2)エのとおり、その主張は採用できない。
オ 小括
したがって、本件特許発明3は、甲1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。
(4)本件特許発明4、5
本件特許発明4は、本件特許発明1~3において「溶媒が、水とプロピレングリコール誘導体を質量比68:32~0:10で含み」と特定するものであり、本件特許発明5は、本件特許発明4において「プロピレングリコールモノアルキルエーテルが、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル及びプロピレングリコールモノブチルエーテルから選択される少なくとも1種を含む」と特定するものであるが、甲1発明1のウエハダイシング用保護層14形成用溶液は溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテル及び水を含むものであり、前記(1)イで検討したとおり、有機溶媒に対する水の重量比(水/有機溶媒)が3未満となるように水とプロピレングリコールモノメチルエーテルを一例として質量比68:32とすることは、当業者が容易に想到し得ることである。
したがって、本件特許発明4、5は、甲1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。
(5)本件特許発明6、7
本件特許発明6は、本件特許発明2~5において「ポリビニルアルコール系樹脂のケン化度が60モル%以上96モル%未満である」と特定し、本件特許発明7は、本件特許発明2~6において「ポリビニルアルコール系樹脂の平均重合度が100~4000である」と特定するものであるが、甲2にはレーザーダイシング保護膜において水溶性樹脂としてケン化度88%及び重合度300のポリビニルアルコールが使用されており(摘記2a、2f参照)、甲4の1及び甲4の2には、半導体レーザーダイシング用保護剤においてPVA系樹脂の平均重合度は100~4000、ケン化度は60~100モル%であることが、好ましいことが、記載されているから(摘記41a、41b、42a、42c参照)、甲1発明1のウエハダイシング用保護層14形成用溶液において、水溶性樹脂として、ポリビニルピロリドンに代えて、甲2に記載のケン化度88%及び重合度300のポリビニルアルコールや甲4の1及び甲4の2に記載の平均重合度は100~4000、ケン化度は60~100モル%のポリビニルアルコールを採用し、ポリビニルアルコール系樹脂のケン化度が60モル%以上96モル%未満であるものとすること、ポリビニルアルコール系樹脂の平均重合度が100~4000であるものとすることは、当業者が容易に想到し得ることである。
したがって、本件特許発明6、7は、甲1に記載された発明、並びに、甲2、甲4の1及び甲4の2に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。
(6)本件特許発明8、9
本件特許発明8は、本件特許発明1~7において「水溶性高分子におけるナトリウムの含有量が300ppm以下である」と特定し、本件特許発明9は本件特許発明1~8において「水溶性高分子におけるナトリウムの含有量が1ppm以下である」と特定するものであるが、甲4の1及び甲4の2には、半導体レーザーダイシング用保護剤においてナトリウム等の金属不純物の含有量は50ppb以下、すなわち、0.05ppm以下であることが好ましいことが、記載されているから(摘記41a、41c、42a、42c参照)、甲1発明1のウエハダイシング用保護層14形成用溶液において、含まれるナトリウムの含有量を少なくするために、水溶性樹脂のナトリウム含有量を、例えば、1ppm以下とし、水溶性高分子におけるナトリウムの含有量が1ppm以下であるものとすることは、当業者が容易に想到し得ることである。
したがって、本件特許発明8、9は、甲1に記載された発明、並びに、甲2、甲4の1及び甲4の2に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。
(7)本件特許発明10、11
本件特許発明10は、本件特許発明1~9において「半導体加工用である」と特定し、本件特許発明11は、本件特許発明1~10において「半導体レーザー加工用である」と特定するものであるが、甲1発明1のウエハダイシング用保護層14形成用溶液はレーザー吸収剤を含んでいるから、半導体レーザー加工用であり、この点は、甲1発明1との対比において、新たな相違点とはならない。
したがって、本件特許発明10、11は、甲1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。
(8)本件特許発明12、13
甲1発明2との対比
本件特許発明12は、本件特許発明1~11の組成物の製造方法であって、各成分の混合液をイオン交換処理する工程を含む製造方法であり、本件特許発明13は、本件特許発明1~11の組成物の製造方法であって、各成分の混合液を孔径1μm以下のフィルターで濾過する工程を含む製造方法であり、前記(1)~(7)で検討したとおり、本件特許発明1~11は当業者が容易に想到し得るものであるところ、甲1には甲1発明2のようなウエハダイシング用保護層14形成用溶液の調製方法が記載されており、甲4の1及び甲4の2は半導体レーザーダイシング用保護剤を含む組成物をイオン交換処理により脱イオン処理することが記載されており(摘記41a、41d、42a、42d)、甲4の1及び甲4の2は半導体レーザーダイシング用保護剤を含む組成物を孔径1μm以下のフィルターで濾過する工程を含む製造方法ことが記載されているから(摘記41a、41d、42a、42d)、本件特許発明1~11の組成物を製造するにあたり、甲1発明2のウエハダイシング用保護層14形成用溶液の調製方法を採用し、甲4の1及び甲4の2に記載されるように、各成分の混合液をイオン交換処理する工程を含むものとすること、各成分の混合液を孔径1μm以下のフィルターで濾過する工程を含むとすることは、当業者が容易に想到し得ることである。
第6 むすび
以上のとおりであるから、本件特許発明1~13は、甲第1号証に記載された発明、並びに、甲第2号証、甲第4号証の1及び甲第4号証の2に記載された事項に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであって、本件特許発明1~13に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2023-700238