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特許異議申立

2023-700239

保護膜形成用組成物

審判番号
2023-700239
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2018-199204
登録番号
7161371
請求日
2023年03月01日
審決日
2024年09月03日
公報発行日
2025年01月31日
結論
請求成立(取消)
当事者
  • 【権利者】日本酢ビ・ポバール株式会社
  • 【権利者代理人】岩谷 龍
  • 【権利者代理人】勝又 政徳
  • 【異議申立人】河井 清悦
審判長/審判官
  • 審判長 門前 浩一
  • 審判官 瀬下 浩一
  • 審判官 村守 宏文
分類
P1651.121-ZAA(C09D)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項特許法113条2号
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項、特許法第126条第6項、特許法第126条第5項、特許法第120条の5第4項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第1項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7161371号発明「保護膜形成用組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7161371号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-13〕について訂正することを認める。 特許第7161371号の請求項1-13に係る特許を取り消す。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本件特許に係る出願は、平成30年10月23日の出願であって、令和4年10月18日に特許権の設定登録(請求項の数13)がされ、同年同月26日に特許掲載公報が発行され、その後、その請求項1~13に係る特許に対し、令和5年3月1日に異議申立人 河井 清悦(以下、「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものであり、当審は、同年9月5日付けで取消理由を通知し、特許権者は、その指定期間内である同年11月6日に意見書の提出及び訂正の請求を行い、特許権者から訂正請求があったことを、同年12月11日付けで異議申立人に通知し、特許異議申立人は、令和6年1月11日に意見書を提出し、当審は、同年3月26日付けで取消理由を通知し、特許権者は、その指定期間内である同年5月27日に意見書の提出及び訂正の請求(以下「本件訂正請求」といい、その請求の内容を「本件訂正」という。)を行い、特許権者から訂正請求があったことを、同年6月4日付けで異議申立人に通知し、特許異議申立人は、同年6月24日に意見書を提出したものである。 なお、本件訂正請求がされたことにより、令和5年11月6日にされた訂正の請求は取り下げたものとみなされる。 第2 本件訂正についての判断 1 本件訂正の内容 本件訂正は、以下の訂正事項1~6からなる。訂正箇所に下線を付した。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に、 「ポリビニルピロリドン系樹脂、溶媒及びレーザー光吸収剤を含む、保護膜形成用組成物[ただし、下記(A)、(B)及び(C)を充足する。 (A)レーザー光吸収剤を内包した樹脂カプセルを含まない (B)下式(1)で表される化合物、五炭糖、及び六炭糖からなる群より選択される1以上のメチロール基を有する化合物を含まない 【化1】 [図:0001418192000001.jpg] (式(1)中、Aは、式(2)、又は式(3)で表される2価の基である。式(2)及び式(3)中、*は結合手の末端を表す。式(2)中、R1及びR2は、それぞれ独立に、炭素数1~4のアルキル基、メチロール基、及び水酸基からなる群より選択される基である。) (C)レーザー光吸収剤が、フェルラ酸又はベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤のみからなるとき、下記(C1)又は(C2)を充足する。 (C1)溶媒が、プロピレングリコール誘導体を含む (C2)組成物において、レーザー光吸収剤の割合が1質量%及び2質量%のいずれでもない]。」と記載されているのを、 「ポリビニルピロリドン系樹脂、溶媒及びレーザー光吸収剤を含み、溶媒が、水及び/又はプロピレングリコール誘導体を含む、保護膜形成用組成物[ただし、溶媒が、水と有機溶媒とからなり、有機溶媒に対する水の重量比(水/有機溶媒)が3~17、17.4、22、29.67、45、及び91である溶媒である場合を除き、下記(A)、(B)及び(C)を充足する。 (A)レーザー光吸収剤を内包した樹脂カプセルを含まない (B)下式(1)で表される化合物、五炭糖、及び六炭糖からなる群より選択される1以上のメチロール基を有する化合物を含まない 【化1】 [図:0001418192000002.jpg] (式(1)中、Aは、式(2)、又は式(3)で表される2価の基である。式(2)及び式(3)中、*は結合手の末端を表す。式(2)中、R1及びR2は、それぞれ独立に、炭素数1~4のアルキル基、メチロール基、及び水酸基からなる群より選択される基である。) (C)レーザー光吸収剤が、フェルラ酸又はベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤のみからなるとき、下記(C1)又は(C2)を充足する。 (C1)溶媒が、プロピレングリコール誘導体を含む (C2)組成物において、レーザー光吸収剤の割合が1質量%及び2質量%のいずれでもない]。」 に訂正する。(請求項1の記載を直接又は間接的に引用する請求項2~13も同様に訂正する。) (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項2に、 「ポリビニルピロリドン系樹脂のK値がK30~K90である請求項1に記載の組成物。」と記載されているのを、 「ポリビニルピロリドン系樹脂のK値がK30~K90であり、溶媒が、水のみであるか、又は水とプロピレングリコール誘導体を含む、請求項1に記載の組成物。」 に訂正する。(請求項2の記載を直接又は間接的に引用する請求項3~13も同様に訂正する。) (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項3に、 「ポリビニルピロリドン系樹脂における金属不純物の含有量がl0ppm以下である請求項1又は2に記載の組成物。」と記載されているのを、 「ポリビニルピロリドン系樹脂における金属不純物の含有量が10ppm以下であり、溶媒が、水のみであるか、又は水とプロピレングリコール誘導体を質量比62.8:30.0~1:9で含む、請求項1又は2に記載の組成物。」 に訂正する。(請求項3の記載を直接又は間接的に引用する請求項4~13も同様に訂正する。) (4)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項4に、 「レーザー光吸収剤が、フェルラ酸及びベンゾフェノン系紫外線吸収剤から選択される少なくとも1種を含む請求項1~3のいずれかに記載の組成物。」と記載されているのを、 「レーザー光吸収剤が、フェルラ酸及びベンゾフェノン系紫外線吸収剤から選択される少なくとも1種を含み、保護膜の厚みが0.01~1.5μmである、請求項1~3のいずれかに記載の組成物。」 に訂正する。(請求項4の記載を直接又は間接的に引用する請求項5~13も同様に訂正する。) (5)訂正事項5 特許請求の範囲の請求項6に、 「溶媒が、プロピレングリコール誘導体を含む請求項1~5のいずれかに記載の組成物。」と記載されているのを、 「溶媒が、水とプロピレングリコール誘導体を含む請求項1~5のいずれかに記載の組成物。」 に訂正する。(請求項6の記載を直接又は間接的に引用する請求項7~13も同様に訂正する。) (6)訂正事項6 特許請求の範囲の請求項9に、 「溶媒がプロピレングリコール誘導体を含み、レーザー光吸収剤がフェルラ酸を含む請求項1~8のいずれかに記載の組成物。」と記載されているのを、 「溶媒が水とプロピレングリコール誘導体を含み、レーザー光吸収剤がフェルラ酸を含む請求項1~8のいずれかに記載の組成物。」 に訂正する。(請求項9の記載を引用する請求項10~13も同様に訂正する。) 2 訂正要件についての判断 (1)訂正事項1 ア 訂正の目的について 訂正前の請求項1に係る発明では、「溶媒が、水及び/又はプロピレングリコール誘導体を含む」こと、「溶媒が、水と有機溶媒とからなり、有機溶媒に対する水の重量比(水/有機溶媒)が3~17、17.4、22、29.67、45、及び91である溶媒である場合を除」くことが規定されていない。 これに対して、訂正後の請求項1に係る発明は、これらで特定するものであるから、当該訂正事項は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるといえる。 イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 上記アの理由から明らかなように、訂正事項1は、溶媒及び保護膜形成用組成物を特定するものであり、何らカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものであるといえる。 ウ 新規事項の有無 訂正事項1は、願書に添付した明細書の【0027】【0028】等に基づいて導き出される構成である。 また、訂正事項1は、令和6年3月26日(起案日)付の取消理由通知において指摘された甲第1号証の請求項1及び表2([0087])に記載された発明(溶媒)を除外するものであり、何ら新たな技術的事項を導入しない。 したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものであるといえる。 (2)訂正事項2 ア 訂正の目的について 訂正前の請求項2に係る発明では、「溶媒が、水のみであるか、又は水とプロピレングリコール誘導体を含む」ことが規定されていない。 これに対して、訂正後の請求項2に係る発明は、これで特定するものであるから、当該訂正事項は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるといえる。 イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 上記アの理由から明らかなように、訂正事項2は、溶媒を特定するものであり、何らカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものであるといえる。 ウ 新規事項の有無 訂正事項2は、願書に添付した明細書の【0027】【0028】【0039】等に基づいて導き出される構成である。 したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものであるといえる。 (3)訂正事項3 ア 訂正の目的について 訂正前の請求項3に係る発明では、「溶媒が、水のみであるか、又は水とプロピレングリコール誘導体を質量比62.8:30.0~1:9で含む」ことが規定されていない。 これに対して、訂正後の請求項3に係る発明は、これで特定するものであるから、当該訂正事項は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるといえる。 イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 上記アの理由から明らかなように、訂正事項3は、溶媒を特定するものであり、何らカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものであるといえる。 ウ 新規事項の有無 訂正事項3は、願書に添付した明細書の【0027】【0028】【0039】表1(【0 074】)等に基づいて導き出される構成である。 したがって、訂正事項3は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものであるといえる。 (4)訂正事項4 ア 訂正の目的について 訂正前の請求項4に係る発明では、「保護膜の厚みが0.01~1.5μmである」ことが規定されていない。 これに対して、訂正後の請求項4に係る発明は、これで特定するものであるから、当該訂正事項は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるといえる。 イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 上記アの理由から明らかなように、訂正事項4は、保護膜を特定するものであり、何らカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものであるといえる。 ウ 新規事項の有無 訂正事項4は、願書に添付した明細書の【0055】【0065】等に基づいて導き出される構成である。 したがって、訂正事項4は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものであるといえる。 (5)訂正事項5 ア 訂正の目的について 訂正前の請求項6に係る発明では、「溶媒が、水とプロピレングリコール誘導体を含む」ことが規定されていない。 これに対して、訂正後の請求項6に係る発明は、これで特定するものであるから、当該訂正事項は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるといえる。 イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 上記アの理由から明らかなように、訂正事項5は、溶媒を特定するものであり、何らカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものであるといえる。 ウ 新規事項の有無 訂正事項4は、訂正事項5は、願書に添付した明細書の【0027】【0028】【0039】等に基づいて導き出される構成である。 したがって、訂正事項5は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものであるといえる。 (6)訂正事項6 ア 訂正の目的について 訂正前の請求項9に係る発明では、「溶媒が水とプロピレングリコール誘導体を含む」ことが規定されていない。 これに対して、訂正後の請求項9に係る発明は、これで特定するものであるから、当該訂正事項は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるといえる。 イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 上記アの理由から明らかなように、訂正事項6は、溶媒を特定するものであり、何らカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものであるといえる。 ウ 新規事項の有無 訂正事項6は、願書に添付した明細書の【0027】【0028】【0039】等に基づいて導き出される構成である。 したがって、訂正事項6は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものであるといえる。 (7)独立特許要件 本件においては、訂正前のすべての請求項について特許異議の申立てがされているので、特許法120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。 (8)一群の請求項について 訂正事項1に係る訂正前の請求項1~13について、請求項2は請求項1を、請求項3は請求項1又は2を、請求項4は請求項1~3のいずれかを、請求項5は請求項4を、請求項6は請求項1~5のいずれかを、請求項7は請求項6を、請求項8は請求項7を、請求項9~12は請求項1~その前に記載されたいずれかの請求項を、請求項13は請求項1~11を、それぞれ、引用しているものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。 以上から、訂正前の請求項1~13に対応する訂正後の請求項1~13は、特許法120条の5第4項に規定する一群の請求項であり、本件訂正は、一群の請求項である訂正前の請求項1~13についてされたものであるから、特許法120条の5第4項の規定に適合する。 3 小括 以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するから、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-13〕について訂正することを認める。 第3 本件特許発明 上記第2で述べたとおり、本件訂正は認められるので、本件特許の請求項1~13に係る発明は、令和6年5月27日付けの訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~13に記載された事項により特定される次のとおりのもの(以下「本件特許発明1」~「本件特許発明13」、まとめて「本件特許発明」ともいう。)である。 「【請求項1】 ポリビニルピロリドン系樹脂、溶媒及びレーザー光吸収剤を含み、溶媒が、水及び/又はプロピレングリコール誘導体を含む、保護膜形成用組成物[ただし、溶媒が、水と有機溶媒とからなり、有機溶媒に対する水の重量比(水/有機溶媒)が3~17、17.4、22、29.67、45、及び91である溶媒である場合を除き、下記(A)、(B)及び(C)を充足する。 (A)レーザー光吸収剤を内包した樹脂カプセルを含まない (B)下式(1)で表される化合物、五炭糖、及び六炭糖からなる群より選択される1以上のメチロール基を有する化合物を含まない 【化1】 [図:0001418192000003.jpg] (式(1)中、Aは、式(2)、又は式(3)で表される2価の基である。式(2)及び式(3)中、*は結合手の末端を表す。式(2)中、R1及びR2は、それぞれ独立に、炭素数1~4のアルキル基、メチロール基、及び水酸基からなる群より選択される基である。) (C)レーザー光吸収剤が、フェルラ酸又はベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤のみからなるとき、下記(C1)又は(C2)を充足する。 (C1)溶媒が、プロピレングリコール誘導体を含む (C2)組成物において、レーザー光吸収剤の割合が1質量%及び2質量%のいずれでもない]。 【請求項2】 ポリビニルピロリドン系樹脂のK値がK30~K90であり、溶媒が、水のみであるか、又は水とプロピレングリコール誘導体を含む、請求項1に記載の組成物。 【請求項3】 ポリビニルピロリドン系樹脂における金属不純物の含有量が10ppm以下であり、溶媒が、水のみであるか、又は水とプロピレングリコール誘導体を質量比62.8:30.0~1:9で含む、請求項1又は2に記載の組成物。 【請求項4】 レーザー光吸収剤が、フェルラ酸及びベンゾフェノン系紫外線吸収剤から選択される少なくとも1種を含み、保護膜の厚みが0.01~1.5μmである、請求項1~3のいずれかに記載の組成物。 【請求項5】 ベンゾフェノン系紫外線吸収剤が、ポリヒドロキシベンゾフェノンである請求項4に記載の組成物。 【請求項6】 溶媒が、水とプロピレングリコール誘導体を含む請求項1~5のいずれかに記載の組成物。 【請求項7】 プロピレングリコール誘導体が、プロピレングリコールモノアルキルエーテルを含む請求項6に記載の組成物。 【請求項8】 プロピレングリコールモノアルキルエーテルが、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル及びプロピレングリコールモノブチルエーテルから選択される少なくとも 1種を含む請求項7に記載の組成物。 【請求項9】 溶媒が水とプロピレングリコール誘導体を含み、レーザー光吸収剤がフェルラ酸を含む請求項1~8のいずれかに記載の組成物。 【請求項10】 半導体加工用である請求項1~9のいずれかに記載の組成物。 【請求項11】 半導体レーザー加工用である請求項1~10のいずれかに記載の組成物。 【請求項12】 請求項1~11のいずれかに記載の組成物の製造方法であって、各成分の混合液をイオン交換処理する工程を含む製造方法。 【請求項13】 請求項1~11のいずれかに記載の組成物の製造方法であって、各成分の混合液を孔径1μm以下のフィルターで濾過する工程を含む製造方法。」 第4 取消理由通知に記載した取消理由について 令和5年9月5日付けで通知した取消理由の概要は次の理由1及び2であり、令和6年3月26日付けで通知した取消理由の概要は理由2である。 理由1(新規性)本件特許の請求項1~4、6~11に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当するから、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 理由2(進歩性)本件特許の請求項1~13に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 記 甲第1号証:中国特許出願公開第104744987号明細書 甲第2号証の1:特開2016-66768号公報 甲第2号証の2:特開2013-95844号公報 甲第3号証の1:特開2017-98299号公報 甲第3号証の2:特開2017-98298号公報 第5 前記第4における理由2(進歩性)について 1 甲号証について 前記第4 理由の甲第1号証、甲第2号証の1、甲第2号証の2、甲第3号証の1及び甲第3号証の2 2 甲号証の記載について (1)甲第1号証(以下、「甲1」という。) 摘記事項の後に仮訳を示す。 1a「 [図:0001418192000004.jpg] 」 1.保護層形成用溶液であって、 水溶性樹脂と、 水溶性レーザー吸収剤と、 溶剤とを含み、 溶剤が水と有機溶剤とからなり、有機溶剤に対する水の重量比が3~17であることを特徴とする溶液。 2.水と有機溶媒の重量比が3~10である、請求項1に記載の溶液。 3.有機溶媒が、イソプロパノール、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロパンジオールモノメチルエーテル、ブチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、プロピレントリオールカーボネートおよびビニルカーボネートから選ばれる少なくとも1つを含む請求項1記載の溶液。 4.水溶性樹脂が、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、5個以上のオキシエチレン繰り返し単位を有するポリエチレングリコール、ポリオキシエチレン、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリアクリル酸、ポリビニルアルコール-ポリアクリル酸ブロックポリマー、ポリビニルアルコール-ポリアクリル酸エステルブロックポリマーまたはポリグリセロールからなる請求項1記載の溶液。 1b「 [図:0001418192000005.jpg] ・・・ [図:0001418192000006.jpg] [図:0001418192000007.jpg] [図:0001418192000008.jpg] 」 [0003]しかし、ダイシングチャンネルに沿ってレーザー光を照射すると、レーザー光が例えばシリコン基板に吸収され、基板が溶融または熱分解してシリコン蒸気が発生し、凝縮して半導体チップ表面に堆積しやすくなり、品質が低下することがある。 発明の内容 [0004]本発明の目的は、レーザーによって加工されるウエハ上に保護層を形成し、レーザー光が保護層を通してウエハの表面に導かれるようにし、レーザー加工によって派生する凝縮したシリコン蒸気や他の破片が半導体チップの表面に堆積して品質劣化をもたらすのを効果的に防止する解決策を提供することである。 [0005]上記目的のために、本発明は、保護層を形成するための解決策を提案する。この溶液は、水溶性樹脂、水溶性レーザー吸収剤、および溶剤から構成されています。溶 媒は、水と有機溶媒からなり、水と有機溶媒の重量比は3~17である。 ・・・ [0033] 一実施形態において、水溶性樹脂は、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン(PVP)、5個以上のオキシエチレン繰り返し単位を有するポリエチレングリコール、ポリオキシエチレン、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリアクリル酸、ポリビニルアルコール-ポリアクリル酸ブロックポリマー、ポリビニルアルコール-ポリアクリル酸エステルブロックポリマーまたはポリグリセロールであってよいからなる水溶性樹脂は、上述したように、単一の材料からなるものであってもよいし、2種以上の組み合わせであってもよい。ただし、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば水などの溶媒に溶解し、塗布、乾燥して保護層を形成できる材料であればよい。 [0034] 一実施形態では、半導体ウエハ表面100a上に形成された保護層14は、レーザー加工後に水で洗浄することができる。保護層14の水に対する洗浄性を考慮すると、水溶性樹脂としては、極性基としてエーテル結合または水酸基を1つだけ有する樹脂、例えば前述したポリビニルアルコールやポリエチレングリコール水溶性樹脂を挙げることができる。極性基、例えばカルボキシル基や3級アミンを有する水溶性樹脂は、半導体ウエハ表面100aに強固に固定される傾向があり、水洗後も半導体ウエハ表面100aに残存する場合がある。一方、極性基としてエーテル結合や水酸基を1つだけ持つ樹脂は、比較的接着力が弱く、水洗後に半導体ウエハ表面に残留するのを効果的に回避することができる。一実施形態において、水溶性樹脂の重合度又は分子量は、低いことが好ましい。ただし、重合度や分子量の高い水溶性樹脂は、水によって半導体ウエハ表面から洗い流されにくいが、可塑剤を使用することでこれを回避することができる。可塑剤については後述する。 1c「 [図:0001418192000009.jpg] 」 [0038]一実施形態において、水溶性紫外線吸収剤は、例えば、4、4’-ジカルボキシベンゾフェノン、ベンゾフェノン-4-カルボン酸、2-カルボキシアントラキノン、1,2-ナフタレンジカルボン酸、1,8-ナフタレンジカルボン酸、2,3-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、2,7-ナフタレンジカルボン酸、それらのナトリウム、カリウム、アンモニウム及び4級アンモニウム塩、2,6-アントラキノンジスルホン酸ナトリウム塩、2,7-アントラキノンジスルホン酸ナトリウム塩及びフェルラ酸などである。 1d「 [図:0001418192000010.jpg] ・・・ [図:0001418192000011.jpg] 」 [0041]保護層14用の溶液の調製に用いる溶媒は、水と有機溶媒の混合物の形態であってもよい。 [0042]有機溶媒の例としては、エタノール、エステル、アルキレングリコール、アルキレングリコールモノアルキルエーテル、アルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテートなどが挙げられる。さらに、有機溶媒の例としては、イソプロピルアルコール、エタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、アルキルカーボネートが挙げられる。これらの有機溶媒は、ブチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、グリセリンカーボネート、ビニルカーボネートなどのアルキルカーボネートを単独または併用して使用することができる。これらの有機溶媒は単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。本実施形態において、アルキレングリコールモノアルキルエーテルは、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテルである。 [0043]一実施形態において、保護層14用の溶液の調製に使用される溶媒は、水と有機溶媒の重量比(水/有機溶媒)が3~17である溶媒である。水分量が多すぎると(例:水/有機溶剤>17)、保存性が悪くなり、均一にコーティングできなくなる。水分量が少なすぎる場合(つまり水/有機溶媒<3)、製造工程にコストがかかりすぎて経済的に成り立たなくなる。別の実施形態では、保護層14の調製用溶液に用いられる溶媒は、水と有機溶媒の重量比が3~10である溶媒であってもよい。さらなる実施形態において、保護層14の調製のための溶液に用いられる溶媒は、水と有機溶媒との重量比が3~7である溶媒であってよい。 [0044]本発明の実施形態において、保護層14の調製用溶液に用いられる溶媒は、水とプロピレングリコールモノメチルエーテルとの重量比(H2O/PGME)が3~17である溶媒である。水分量が多すぎると(例:H2O/PGME>17)、塗料の保持力が弱くなり、均一に塗布できなくなる。水分量が低すぎると(つまりH2O/PGME<3)、製造工程にコストがかかりすぎて不経済になる。本発明の別の実施形態では、保護層14の調製に用いられる溶媒は、水とプロピレングリコールモノメチルエーテルとの重量比(H2O/PGME)が3~10である溶媒である。本発明のさらなる実施形態では、保護層14の溶液の調製に用いられる溶媒は、水とプロピレングリコールモノメチルエーテルとの重量比(H2O/PGME)が3~7である溶媒である。 ・・・ [0050]加工する半導体ウエハ表面100aに前記溶液を塗布した後、塗布した溶液を乾燥させて保護層14を形成する。半導体ウエハ100は、格子状のカットチャンネル13で分割された複数の半導体チップ12を含み、保護層14を介してレーザー光を照射して溝を形成している。保護層14の厚さは、例えば、0.1~5μmである。加工対象の半導体ウエハの表面100aには、通常、多数の凹凸があり、カットチャンネル13はこれらの凹凸に形成されている。このように、保護層14の厚さが小さいと、これらの突起上の保護層14の厚さが非常に小さくなり、保護層14にゴミが入り込んで半導体チップ12の表面に堆積する可能性が高くなる。一方、保護層14の厚みが大きいと、特にメリットはなく、レーザー加工後に保設層14を水洗する手間がかかる。 1e「 [図:0001418192000012.jpg] [図:0001418192000013.jpg] ・・・ [図:0001418192000014.jpg] [図:0001418192000015.jpg] [図:0001418192000016.jpg] [図:0001418192000017.jpg] 」 [0076] <実施例> [0077] 本実施例1では、水溶性樹脂がポリビニルピロリドン(PVP)、水溶性レーザー吸収剤がトランスフェルラ酸、溶媒が水およびプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)であることを示す。 [0078] まず、下記の表一に従って、成分の所望の重量比を選択する。ウエハダイシング用保護層14形成用溶液は、上記成分を混合し、攪拌機を備えたミキサーに加え、室温、500rpmで1時間攪拌することにより調製される。 [0079] 実施例1において、成分の重量%は表一に示す通りである。 [0080] [図:0001418192000018.jpg] [0081] 表一 [0082] 残りの実施形態は上記と同様であり、以下の表二に示すように、水とプロピレングリコールモノメチルエーテルの重量比が異なるだけである。 ・・・ [0085] また、半導体ウエハ表面100aに溶液を塗布し、乾燥させた後に、保護層1の厚みを測定する。保護層2の厚みは、この溶液を1ヶ月間放置した後、半導体ウエハ表面100aに塗布し、乾燥させた後に測定する。保護層2の厚みに値がない場合は、保護層1の厚みとほぼ同じ値であることを意味する。 [0086] [図:0001418192000019.jpg] [0088] 保護層厚み1の結果を参照すると、水とプロピレングリコールモノメチルエーテルの重量比が高すぎる(すなわち、H2O/PGME>17)場合に形成される保護層14は、厚みが不一となる問題があることがわかる。保護層2の厚みの結果を参照すると、水とプロピレングリコールモノメチルエーテルとの重量比が高すぎる場合(すなわち、H2O/PGME>17)にも、保護層14の厚みが大きく変化することがわかる。また、水とプロピレングリコールモノメチルエーテルの重量比が91(すなわちH2O/PGME=91)の場合、溶液を置いた翌日に固形物が析出し、溶液の成分が均ーに混合されていないことがわかった。この場合、水とプロピレングリコールモノメチルエーテルの重量比は17.4(すなわちH2O/PGME=17.4)であり,溶液調製後の測定では均質(2.041)だったが、1ヵ月後に再塗布すると視覚的に不均ーとなった。 [0089] 一方、水とプロピレングリコールモノメチルエーテルの重量比(H2O/PGME)が3~17の溶媒(すなわち、本発明の実施例で定義した範囲)で形成した保護層14は、厚み分布が均一であるばかりか、1ヶ月後に塗布して形成した保護層14の厚みが、その1ヶ月前に塗布した保護層14の厚みと大きく異なっていないことが確認された。 [0090] 本発明のこの実施形態では、保護層14の調製用溶液に用いられる溶媒は、水とプロピレングリコールモノメチルエーテルとの重量比(H2O/PGME)が3~17である溶媒である。水分量が多すぎると(つまりH2O/PGME>17)、保存が容易でなく、コーティングが均ーにならない。水分量が少なすぎると(つまりH2O/PGME<3)、製造工程にコストがかかりすぎて経済的に成り立たなくなる。 [0091] 次に、水とプロピレングリコールモノメチルエーテルとの重量比(H2O/PGME)が3~17の範囲にある表二の溶液により保護層14を形成した半導体ウエハ100を、上記のレーザー加工の仕様を満たすレーザー加工機に取り付けた。その後、保護層14を純水で洗浄除去し、レーザースキャンの周囲を観察したところ、ゴミの付着がないことが確認された。 [0092] 以上のように、本発明の解決手段は、レーザー加工されるウエハ上に保護層を形成し、レーザー光が保護層を介してウエハの表面に照射されるようにし、レーザー加工で発生する凝縮したシリコン蒸気やその他のゴミが半導体チップの表面に堆積して品質が低下するのを効果的に防止するものである。同時に、本発明の溶液をより長期間保存することができる。 (2)甲第2号証の1(以下、「甲2の1」という。) 21a「【請求項1】 水溶性樹脂と、レーザー光吸収剤を内包した樹脂カプセルと、水系溶媒とを含有する、保護膜組成物。 ・・・ 【請求項5】 レーザーダイシング用である請求項1~4のいずれか1項に記載の保護膜組成物。」 21b「【0015】 <<レーザー光吸収剤を内包した樹脂カプセル>> 本発明の保護膜組成物は、レーザー光吸収剤を内包した樹脂カプセルを含む。なお、本発明において、「レーザー光吸収剤を内包した樹脂カプセル」とは、樹脂で形成されたカプセル壁の内部に、レーザー光吸収剤が存在している状態を意味する。 樹脂カプセルに内包されるレーザー光吸収剤としては、特に限定はないが、波長250~700nmの範囲に、極大吸収波長を有する化合物が好ましい。極大吸収波長は、300~550nmの範囲に有することがより好ましく、300~400nmの範囲に有することが更に好ましい。 レーザー光吸収剤の例としては、サリチル酸系化合物、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、シアノアクリレート系化合物、トリアジン系化合物等が挙げられる。 サリチル酸系化合物としては、例えば、p-t-ブチルフェニルサリシレート、p-オクチルフェニルサリシレート等が挙げられる。 ベンゾフェノン系化合物としては、例えば、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシ-5-スルホベンゾフェノン、2,2',4,4'-テトラヒドロキシベンゾフェノン、ビス(2-メトキシ-4-ヒドロキシ-5-ベンゾイルフェニル)メタン等が挙げられる。 ベンゾトリアゾール系化合物としては、例えば、2-(2'-ヒドロキシ-5'-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2'-ヒドロキシ-5'-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2'-メチレンビス[4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-6-(2Hベンゾトリアゾール-2-イル)フェノール]等が挙げられる。 シアノアクリレート系化合物としては、例えば、エチル-2-シアノ-3,3'-ジフェニルアクリレート)等が挙げられる。 トリアジン系化合物としては、例えば、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-[(ヘキシル)オキシ]-フェノール等が挙げられる。」 21c「【0030】 以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はその趣旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「%」および「部」は質量基準である。 【0031】 <保護膜組成物の調製> 下記表に示す各成分を混合してた後、10μmのポアサイズを有するポリテトラフルオロエチレン製フィルタを用いてろ過して、保護膜組成物を調製した。 【表1】 [図:0001418192000020.jpg] 【0032】 表1中の略号は以下の通りである。 A-1:ポリビニルアルコール(PXP-05、日本酢ビ・ポバール株(株)製) A-2:ポリビニルピロリドン(ピッツコール K-30、第一工業製薬(株)製) B-1:TINUVIN 99-DW(BASF社製、レーザー光吸収剤を内包する樹脂カプセル(アクリルポリマービーズにレーザー光吸収剤を内包させてカプセル化)、レーザー光吸収剤の含有量= 24 質量%) B-2:TINUVIN 447-DW(BASF社製、レーザー光吸収剤を内包する樹脂カプセル(アクリルポリマービーズにレーザー光吸収剤を内包させてカプセル化)、レーザー光吸収剤の含有量= 20 質量%) B-3:フェルラ酸(水溶性レーザー吸収剤) B-4:TINUVIN 1130(BASF社製、粉末状のレーザー光吸収剤)」 (3)甲第2号証の2(以下、「甲2の2」という。) 22a「【請求項1】 水溶性樹脂と、低分子水溶性化合物と、溶媒とを含み、 前記低分子水溶性化合物が、下式(1)で表される化合物、五炭糖、及び六炭糖からなる群より選択される1以上のメチロール基を有する化合物である、水溶性塗布膜材料。 【化1】 [図:0001418192000021.jpg] (式(1)中、Aは、式(2)、又は式(3)で表される2価の基である。式(2)及び式(3)中、*は結合手の末端を表す。式(2)中、R1及びR2は、それぞれ独立に、炭素数1~4のアルキル基、メチロール基、及び水酸基からなる群より選択される基である。)」 22b「【0073】 <ウエーハレーザー加工用保護膜形成材料> 水溶性塗布膜材料を、半導体製造における、ウエーハのレーザー加工において、ウエーハ表面の保護膜形成に用いる場合、水溶性塗布膜材料に、水溶性着色剤と、水溶性紫外線吸収剤とを添加するのが好ましい。」 22c「【0080】 以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。 【0081】 実施例、及び比較例において、水溶性低分子量化合物としては、下記の化合物を用いた。 WSC1:トリメチロールプロパン(三菱ガス化学株式会社製) WSC2:トリメチロールエタン(三菱ガス化学株式会社製) WSC3:ネオペンチルグリコール(三菱ガス化学株式会社製) WSC4:グルコース(群栄化学株式会社製) WSC5:ソルビトール(群栄化学株式会社製) WSC6:マンニトール(群栄化学株式会社製) WSC7:フルクトース(群栄化学株式会社製) WSC8:2-メチル-2,4-ペンタンジオール(純正化学株式会社製) WSC9:2-ヒドロキシエチルセルロース(ダイセル化学工業株式会社製) WSC10:セロビオース(関東化学株式会社製) WSC11:スクロース(純正化学株式会社製) 【0082】 〔実施例1~7〕 下表1に記載の種類の水溶性低分子量化合物と、PVP(ポリビニルピロリドン、第一工業製薬株式会社製、ピッツコールK-90、分子量約60万)とを、それぞれ表1に記載の濃度となるようにイオン交換水に溶解させて、実施例1~7の水溶性塗布膜材料を調製した。実施例1~7の水溶性塗布膜材料の粘度(cP)を、キャノンフェンスケ粘度計(株式会社離合社製、VMC-252)を用いて測定した。実施例1~7の水溶性塗布膜材料の評価結果を表1に記す。 【0083】 【表1】 [図:0001418192000022.jpg] 」 (4)甲第3号証の1(以下、「甲3の1」という。) 31a「【請求項1】 紫外線吸収基を有するポリビニルアルコール系樹脂(A)で構成された、半導体レーザーダイシング用保護剤。 ・・・ 【請求項9】 請求項1~8のいずれかに記載の半導体レーザーダイシング用保護剤を含む組成物。 ・・・ 【請求項17】 請求項9~16のいずれかに記載の組成物をイオン交換処理により脱イオン処理する工程を含む、半導体の製造方法。 【請求項18】 請求項9~16のいずれかに記載の組成物を孔径1μm以下のフィルターで濾過する工程を含む、半導体の製造方法。」 31b「【0041】 本発明の組成物において、金属不純物(例えば、Na、K、Fe、Cu等)の含有量は、好ましくは50ppb以下、より好ましくは30ppb以下である。金属不純物量は、例えば、ICP-MS(誘導結合プラズマ質量分析法)等を用いた公知の方法により測定することができる。」 31c「【0045】 本発明の保護剤又は組成物は、その製造工程において、もしくは該保護剤又は組成物を半導体ウェーハ上に塗布する前に、イオン交換処理を行ってもよい。イオン交換処理方法は、特に限定されないが、例えば、本発明の保護剤又は組成物を、イオン交換樹脂等を充填したカラムに通液することにより行うことができる。半導体ウェーハ上に塗布する前にイオン交換処理を行うことにより、保護剤又は組成物中の金属不純物を除去することができ、組成物中の金属不純物含有量を前記の範囲内にすることができる。 【0046】 また、本発明の保護剤又は組成物は、その製造工程において、もしくは該保護剤又は組成物を半導体ウェーハ上に塗布する前に、濾過してもよい。濾過方法は、特に限定されず、フィルター等を用いて濾過することができる。フィルターとしては、例えば、孔径1μm以下のもの等を使用することができる。」 (5)甲第3号証の2(以下、「甲3の2」という。) 32a「【請求項1】 炭素-炭素2重結合を、ポリビニルアルコール系樹脂1分子あたりに少なくとも2つ以上有するポリビニルアルコール系樹脂(A)で構成された、半導体レーザーダイシング用保護剤。 ・・・ 【請求項5】 請求項1~4のいずれかに記載の半導体レーザーダイシング用保護剤を含む組成物。 ・・・ 【請求項13】 請求項5~12のいずれかに記載の組成物をイオン交換処理により脱イオン処理する工程を含む、半導体の製造方法。 【請求項14】 請求項5~12のいずれかに記載の組成物を孔径1μm以下のフィルターで濾過する工程を含む、半導体の製造方法。」 32b「【0038】 本発明の組成物において、金属不純物(例えば、Na、K、Fe、Cu等)の含有量は、好ましくは50ppb以下、より好ましくは30ppb以下である。金属不純物量は、例えば、ICP-MS(誘導結合プラズマ質量分析法)等を用いた公知の方法により測定することができる。」 32c「【0042】 本発明の保護剤又は組成物は、その製造工程において、もしくは該保護剤又は組成物を半導体ウェーハ上に塗布する前に、イオン交換処理を行ってもよい。イオン交換処理方法は、特に限定されないが、例えば、本発明の保護剤又は組成物を、イオン交換樹脂等を充填したカラムに通液することにより行うことができる。 【0043】 また、本発明の保護剤又は組成物は、その製造工程において、もしくは該保護剤又は組成物を半導体ウェーハ上に塗布する前に、濾過してもよい。濾過方法は、特に限定されず、フィルター等を用いて濾過することができる。フィルターとしては、例えば、孔径1μm以下のもの等を使用することができる。」 3 甲号証に記載された発明 (1)甲1に記載された発明 ア 甲1発明1 甲1には実施例1の保護層形成用溶液として「水溶性レーザー吸収剤としてトランスフェルラ酸0.3重量%、溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテル14.1重量%及び水78.4重量%、水溶性樹脂としてポリビニルピロリドン7.2重量%からなり、水/プロピレングリコールモノメチルエーテルの重量比5.57であり、厚みが2.03μmの保護層を形成するウエハダイシング用保護層14形成用溶液。」の発明が記載されているといえる(摘記1e参照)。 イ 甲1発明2 甲1には実施例1の保護層形成用溶液の調製方法として「水溶性レーザー吸収剤としてトランスフェルラ酸0.3重量%、溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテル14.1重量%及び水78.4重量%、水溶性樹脂としてポリビニルピロリドン7.2重量%を混合し、攪拌機を備えたミキサーに加え、室温、500rpmで1時間攪拌する、水溶性レーザー吸収剤としてトランスフェルラ酸0.3重量%、溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテル14.1重量%及び水78.4重量%、水溶性樹脂としてポリビニルピロリドン7.2重量%からなり、水/プロピレングリコールモノメチルエーテルの重量比5.57であり、厚みが2.03μmの保護層を形成するウエハダイシング用保護層14形成用溶液の調製方法。」の発明が記載されているといえる(摘記1e参照)。 4 対比・判断 (1)本件特許発明1 ア 甲1発明1との対比 甲1発明1の「水溶性レーザー吸収剤としてトランスフェルラ酸」は本件特許発明1の「レーザー光吸収剤」に相当し、甲1発明1の「溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテル」及び「水」は、本件特許発明1の「溶媒が、水及び/又はプロピレングリコール誘導体を含む」及び「(C1)溶媒が、プロピレングリコール誘導体を含む」に相当し、甲1発明1は、トランスフェルラ酸以外に水溶性レーザー吸収剤を含まず、トランスフェルラ酸は樹脂カプセルに内包されていないから、甲1発明1の「トランスフェルラ酸0.3重量%」及び「溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテル」は、本件特許発明1の「溶媒及びレーザー光吸収剤」、「下記(A)」、「及び(C)を充足する」、「(A)レーザー光吸収剤を内包した樹脂カプセルを含まない」及び「(C)レーザー光吸収剤が、フェルラ酸又はベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤のみからなるとき、下記(C1)又は(C2)を充足する。 (C1)溶媒が、プロピレングリコール誘導体を含む (C2)組成物において、レーザー光吸収剤の割合が1質量%及び2質量%のいずれでもない」に相当する。 甲1発明1の「水溶性樹脂としてポリビニルピロリドン」及び「ウエハダイシング用保護層14形成用溶液」は、それぞれ、本件特許発明1の「ポリビニルピロリドン系樹脂」及び「保護膜形成用組成物」に相当する。 甲1発明1はメチロール基を有する化合物を含まないから、本件特許発明1の「(B)」、「を充足する」及び「(B)下式(1)で表される化合物、五炭糖、及び六炭糖からなる群より選択される1以上のメチロール基を有する化合物を含まない 【化1】 [図:0001418192000023.jpg] (式(1)中、Aは、式(2)、又は式(3)で表される2価の基である。式(2)及び式(3)中、*は結合手の末端を表す。式(2)中、R1及びR2は、それぞれ独立に、炭素数1~4のアルキル基、メチロール基、及び水酸基からなる群より選択される基である。)」を充足する。 そうすると、本件特許発明1と甲1発明1は、「ポリビニルピロリドン系樹脂、溶媒及びレーザー光吸収剤を含み、溶媒が、水及び/又はプロピレングリコール誘導体を含む、保護膜形成用組成物[ただし、下記(A)、(B)及び(C)を充足する。 (A)レーザー光吸収剤を内包した樹脂カプセルを含まない (B)下式(1)で表される化合物、五炭糖、及び六炭糖からなる群より選択される1以上のメチロール基を有する化合物を含まない 【化1】 [図:0001418192000024.jpg] (式(1)中、Aは、式(2)、又は式(3)で表される2価の基である。式(2)及び式(3)中、*は結合手の末端を表す。式(2)中、R1及びR2は、それぞれ独立に、炭素数1~4のアルキル基、メチロール基、及び水酸基からなる群より選択される基である。) (C)レーザー光吸収剤が、フェルラ酸又はベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤のみからなるとき、下記(C1)又は(C2)を充足する。 (C1)溶媒が、プロピレングリコール誘導体を含む (C2)組成物において、レーザー光吸収剤の割合が1質量%及び2質量%のいずれでもない]。」である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点1-1> 保護膜形成用組成物が、本件特許発明1は、溶媒が、水と有機溶媒とからなり、有機溶媒に対する水の重量比(水/有機溶媒)が3~17、17.4、22、29.67、45、及び91である溶媒である場合を除くと特定されているのに対し、甲1発明1はそのような特定がない点。 イ 相違点についての検討 甲1には、甲1発明1のウエハダイシング用保護層14形成用溶液において、水分量が少なすぎる場合(つまり水/有機溶媒<3)、製造工程にコストがかかりすぎて経済的に成り立たなくなると記載されているにすぎず(摘記1d、1e参照)、水分量を少なくすることに技術的な阻害要因があるとはいえないから、溶媒が、水と有機溶媒とからなり、有機溶媒に対する水の重量比(水/有機溶媒)が3未満とすることは、当業者が容易に想到し得ることである。 ウ 本件特許発明1の効果について 甲1には、保護層14の溶液の調製に使用される溶媒について、水分量が多すぎると保存性が悪くなり、均一にコーティングできなくなり([0043])、厚みが不均一となる問題があること([0088])が記載されると共に、保護層14に対する洗浄性を考慮すると、水溶性樹脂としてはポリビニルアルコールやポリエチレングリコール水溶性樹脂が挙げられること([0034])が記載されている。 したがって、塗布性や加工性に優れ、水洗により保護膜とデブリを除去できるとの本件特許明細書の特定の組成物についての実施例の記載をもって、本件特許発明1の効果の程度が、本件特許発明1の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものとはいえない。 エ 特許権者の主張及び当審の判断について 特許権者は、令和6年5月27日提出の意見書において、甲1の課題解決には、「水/有機溶媒が3~17」であることが前提になるものと認識できるにとどまらず、水/有機溶媒が3未満や17超の場合には、さらに、不利な点が生じると認識できるから、甲1において「水/有機溶媒が3~17」とならない範囲で溶媒を使用することは、より一層、阻害・敬遠されるべき事情があると言え、本件特許発明1は、発明の効果に鑑みても、甲1発明(さらには甲2等のその他の証拠)に基づいて容易に想到しえないと主張する。 しかし、前記イ<相違点1-1>で検討したとおり、本件特許発明1は甲1発明1から当業者が容易に想到し得るものであるといえ、効果についても、前記ウで検討したとおりであるから、特許権者の前記主張は採用できない。 オ 小括 したがって、本件特許発明1は、甲1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。 (2)本件特許発明2 本件特許発明2は、本件特許発明1において「ポリビニルピロリドン系樹脂のK値がK30~K90であり、溶媒が、水のみであるか、又は水とプロピレングリコール誘導体を含む」と特定するものであるが、甲1発明1のレーザーダイシング用である保護膜組成物において溶媒はプロピレングリコールと水であるから、「溶媒が、水のみであるか、又は水とプロピレングリコール誘導体を含む」点は、甲1発明1との対比において新たな相違点とはならないし、甲2の1にはレーザーダイシング用である保護膜組成物において水溶性樹脂として含まれるポリビニルピロリドンとしてK値がK30程度であるものが記載されており(摘記21a、21c参照)、甲2の2にはウエーハレーザー加工用保護膜形成材料において低分子水溶性化合物として含まれるポリビニルピロリドンとしてK値がK90程度であるものが記載されているから(摘記22a、22d参照)、甲1発明1のウエハダイシング用保護層14形成用溶液に水溶性樹脂として含まれるポリビニルピロリドンとして、甲1発明1に記載のものに代えて、甲2の1に記載のK値がK30であるもの、あるいは、甲2の2に記載のK値がK90であるものを採用し、「ポリビニルピロリドン系樹脂のK値がK30~K90」であるものとすることは、当業者が容易に想到し得ることである。 (3)本件特許発明3 本件特許発明3は、本件特許発明1において「ポリビニルピロリドン系樹脂における金属不純物の含有量が10ppm以下であり、溶媒が、水のみであるか、又は水とプロピレングリコール誘導体を質量比62.8:30.0~1:9で含む」と特定するものである。 ここで、甲3の1及び甲3の2には、半導体レーザーダイシング用保護剤において金属不純物の含有量は50ppb以下、すなわち、0.05ppm以下であることが好ましいことが、記載されているから(摘記31a、31b、32a、32b参照)、甲1発明1のウエハダイシング用保護層14形成用溶液において、含まれる金属不純物の含有量を少なくするために、水溶性樹脂の金属不純物含有量を、例えば、10ppm以下とし、ポリビニルピロリドン系樹脂における金属不純物の含有量が10ppm以下であるものとすることは、当業者が容易に想到し得ることである。 そして、前記(1)イ<相違点1-1>についてで検討したのと同じ理由により、甲1発明1のウエハダイシング用保護層14形成用溶液において、溶媒が、水と有機溶媒とからなり、有機溶媒に対する水の重量比(水/有機溶媒)が3未満として、溶媒が、水と有機溶媒とからなり、水/有機溶媒)が3未満である、水とプロピレングリコール誘導体を質量比62.8:30.0~1:9で含むものとすることは、当業者が容易に想到し得ることである。 (4)本件特許発明4 本件特許発明4は、本件特許発明1において「レーザー光吸収剤が、フェルラ酸及びベンゾフェノン系紫外線吸収剤から選択される少なくとも1種を含み、保護膜の厚みが0.01~1.5μmである」と特定するものである。 ここで、甲1発明1のウエハダイシング用保護層14形成用溶液は水溶性レーザー吸収剤としてトランスフェルラ酸を含むから、レーザー光吸収剤がフェルラ酸である点は、甲1発明1との対比において、新たな相違点とはならない。 また、甲1にはウエハダイシング用保護層14形成用溶液における水溶性紫外線吸収剤は、フェルラ酸の他、4,4’-2カルボキシベンゾフェノンやベンゾフェノン-4-カルボン酸を含むことが記載されているから(摘記1c参照)、甲1発明1のウエハダイシング用保護層14形成用溶液において、水溶性レーザー吸収剤としてトランスフェルラ酸に代えて、4,4’-2カルボキシベンゾフェノン又はベンゾフェノン-4-カルボン酸を採用し、レーザー光吸収剤がベンゾフェノン系紫外線吸収剤及から選択されたものとすることは、当業者が容易に想到し得ることである。 そして、甲1には、甲1発明1のウエハダイシング用保護層14形成用溶液が形成する保護層の厚さは0.1~5μmであること、厚みが大きいと、特にメリットはなく、レーザー加工後に保護層を水洗する手間がかかることが、記載されているから(摘記1d参照)、甲1発明1のウエハダイシング用保護層14形成用溶液において、形成する保護層の厚さを0.1~5μmの範囲で小さくし、0.1~5μmを選択し、0.01~1.5μmを充足するよう構成することは、当業者が容易に想到し得ることである。 (5)本件特許発明5 本件特許発明5は、本件特許発明4において「ベンゾフェノン系紫外線吸収剤が、ポリヒドロキシベンゾフェノンである」と特定するものであるが、甲2の1にはレーザーダイシング用である保護膜組成物においてレーザー光吸収剤として2,4-ジヒドロキシベンゾフェノンが記載されているから(摘記21a、21b参照)、甲1発明1のウエハダイシング用保護層14形成用溶液において、水溶性レーザー吸収剤としてトランスフェルラ酸に代えて、甲2の1に記載の2,4-ジヒドロキシベンゾフェノンを採用し、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤が、ポリヒドロキシベンゾフェノンであるものとすることは、当業者が容易に想到し得ることである。 したがって、本件特許発明5は、甲1に記載された発明及び甲2の1に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。 (6)本件特許発明6~8 本件特許発明6は、本件特許発明1~5において「溶媒が、水とプロピレングリコール誘導体を含む」と特定し、本件特許発明7は、本件特許発明6において「プロピレングリコール誘導体が、プロピレングリコールモノアルキルエーテルを含む」と特定し、本件特許発明8は、本件特許発明7において「プロピレングリコールモノアルキルエーテルが、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル及びプロピレングリコールモノブチルエーテルから選択される少なくとも1種を含む」と特定するものであるが、甲1発明1のウエハダイシング用保護層14形成用溶液は溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテル及び水を含むものであるから、この点は、甲1発明1との対比において、新たな相違点とはならない。 したがって、本件特許発明6~8は、甲1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。 (7)本件特許発明9 本件特許発明9は、本件特許発明1~8において「溶媒が水とプロピレングリコール誘導体を含み、レーザー光吸収剤がフェルラ酸を含む」と特定するものであるが、甲1発明1のウエハダイシング用保護層14形成用溶液は、溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテル及び水を含み、水溶性レーザー吸収剤としてトランスフェルラ酸を含むものであるから、この点は、甲1発明1との対比において、新たな相違点とはならない。 したがって、本件特許発明9は、甲1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。 (8)本件特許発明10、11 本件特許発明10は、本件特許発明1~9において「半導体加工用である」と特定し、本件特許発明11は、本件特許発明1~10において「半導体レーザー加工用である」と特定するものであるが、甲1発明1のウエハダイシング用保護層14形成用溶液はレーザー吸収剤を含んでいるから、半導体レーザー加工用であり、この点は、甲1発明1との対比において、新たな相違点とはならない。 したがって、本件特許発明10、11は、甲1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。 (9)本件特許発明12、13 ア 甲1発明2との対比 本件特許発明12は、本件特許発明1~11の組成物の製造方法であって、各成分の混合液をイオン交換処理する工程を含む製造方法であり、本件特許発明13は、本件特許発明1~11の組成物の製造方法であって、各成分の混合液を孔径1μm以下のフィルターで濾過する工程を含む製造方法であり、前記(1)~(8)で検討したとおり、本件特許発明1~11は当業者が容易に想到し得るものであるところ、甲1には甲1発明2のようなウエハダイシング用保護層14形成用溶液の調製方法が記載されており、甲3の1及び甲3の2は半導体レーザーダイシング用保護剤を含む組成物をイオン交換処理により脱イオン処理することが記載されており(摘記31a、31c、32a、32c)、甲3の1及び甲3の2は半導体レーザーダイシング用保護剤を含む組成物を孔径1μm以下のフィルターで濾過する工程を含む製造方法ことが記載されているから(摘記31a、31c、32a、32c)、本件特許発明1~11の組成物を製造するにあたり、甲1発明2のウエハダイシング用保護層14形成用溶液の調製方法を採用し、甲3の1及び甲3の2に記載されるように、各成分の混合液をイオン交換処理する工程を含むものとすること、各成分の混合液を孔径1μm以下のフィルターで濾過する工程を含むとすることは、当業者が容易に想到し得ることである。 第6 むすび 以上のとおりであるから、本件特許発明1~13は、甲第1号証に記載された発明、並びに、甲第2号証の1、甲第2号証の2、甲第3号証の1及び甲第3号証の2に記載された事項に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであって、本件特許発明1~13に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 よって、結論のとおり決定する。

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2023-700239

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