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特許異議申立

2019-700410

多孔質炭素、及びそれを用いた有機ハロゲン化合物除去装置

審判番号
2019-700410
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2015-213673外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2019年05月21日
審決日
2020年09月28日
公報発行日
2020年12月25日
結論
訂正認容
当事者
審判長/審判官
分類
P1651.537-YAA(C01B) / P1651.536-YAA(C01B) / P1651.113-YAA(C01B) / P1651.121-YAA(C01B) / P1651.851-YAA(C01B)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第36条第4項第1号、特許法第29条第1項第3号、特許法第36条第6項第2号、特許法第29条第1項、特許法第120条の5第9項、特許法第126条第7項、特許法第120条の5第2項、特許法第36条第6項第1号
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特許第6426583号発明「多孔質炭素、及びそれを用いた有機ハロゲン化合物除去装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

【結 論】
特許第6426583号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~12〕について訂正することを認める。
特許第6426583号の請求項1ないし5、8ないし12に係る特許を維持する。
特許第6426583号の請求項6、7に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。

理由

目次 ▾ 14項目
【理 由】

第1.手続の経緯

本件特許第6426583号の請求項1~12に係る発明についての出願は、平成27年10月30日の出願であって、平成30年11月2日にその特許権の設定登録がされ、平成30年11月21日に特許掲載公報が発行された。その特許についての特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。

令和 1年 5月21日付け:特許異議申立人 平居博美(以下、「特許異議申立人」という。)による請求項1~12に係る特許に対する特許異議の申立て
令和 1年 7月25日付け:取消理由通知書
令和 1年 9月24日付け:特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
令和 1年10月30日付け:特許異議申立人による意見書の提出
令和 2年 1月17日付け:審尋(特許権者に対して)
令和 2年 3月10日付け:特許権者による回答書の提出
令和 2年 3月26日付け:特許異議申立人による上申書の提出
令和 2年 5月12日付け:審尋(特許異議申立人に対して)

(なお、上記令和2年5月12日付けの審尋に対し、特許異議申立人は応答しなかった。)

第2.訂正請求について

1.訂正の内容

(1)訂正事項

令和 1年 9月24日付け訂正請求書における訂正請求(以下、「本件訂正請求」といい、この請求に係る訂正を「本件訂正」という。)は、次の訂正事項1~5からなる(下線部は訂正箇所)。

訂正事項1

請求項1において、「多孔質炭素であって、前記多孔質炭素の原材料がイネ科タケ類由来の材料からなり、」を追加する。

訂正事項2

請求項1において、「一次粒子の粒子径が0.425(mm)以下」を、「一次粒子の粒子径が0.05(mm)以上0.425(mm)以下」に訂正する。

訂正事項3

特許請求の範囲の請求項6を削除する。

訂正事項4

特許請求の範囲の請求項7を削除する。

訂正事項5

請求項8における「請求項1~7のいずれか1項」との記載を、「請求項1~5のいずれか1項」に訂正する。

(2)一群の請求項について

訂正前の請求項1の記載を請求項2~12が引用する関係にあるから、訂正前の請求項1~12は一群の請求項である。

したがって、請求項1に係る訂正事項1、2を含む本件訂正請求は、この一群の請求項について請求をしたものと認められる。

2.訂正要件の判断

(1)訂正事項1、2について

本訂正事項は、請求項1に記載された「多孔質炭素」の発明において、多孔質炭素の原材料が「イネ科タケ類由来の材料」からなる点を特定するとともに、多孔質炭素における一次粒子の粒子径の下限を「0.05(mm)以上」と特定するものであるから特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

そして、多孔質炭素の原材料が「イネ科タケ類由来の材料」からなる点については、本件特許請求の範囲の請求項6及び本件特許明細書の【0010】に、多孔質炭素における一次粒子の粒子径の上記下限値については、本件特許明細書の【0023】における表2-1の実施例3及び【0024】の表2-2の実施例6に、それぞれ記載されていたから、いずれも願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものである。

また、本訂正事項は、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、本訂正事項により、訂正前の特許請求の範囲には含まれないとされていた発明が訂正後の特許請求の範囲に含まれることとなるという事情は認められないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(2)訂正事項3、4について

本訂正事項は、いずれも請求項を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(3)訂正事項5について

本訂正事項は、選択的引用請求項の一部を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(4)独立特許要件について

特許異議申立ては、全ての請求項1~12についてされているので、一群の請求項1~12に係る訂正事項1~5に関して、特許法120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。

3.まとめ

以上のとおり、本件訂正請求は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1~12〕について訂正することを認める。

第3.本件発明について

本件特許の請求項1~5、8~12に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」~「本件発明5」、「本件発明8」~「本件発明12」といい、併せて「本件発明」という。)は、訂正特許請求の範囲に記載された次の事項により特定されるとおりのものと認められる(下線部は訂正箇所)。

「【請求項1】
多孔質炭素であって、
前記多孔質炭素の原材料がイネ科タケ類由来の材料からなり、
メソ孔容積が0.07(cm3/g)以上で、細孔径0.4nm~0.6nmの最大微分容積値が1.6以上であり、且つ、一次粒子の粒子径が0.05(mm)以上0.425(mm)以下であることを特徴とする多孔質炭素。
続きを表示(全26行)
【請求項2】
前記多孔質炭素の窒素BET法による比表面積が10(m2/g)以上である請求項1に記載の多孔質炭素。
【請求項3】
前記多孔質炭素の全細孔容積が0.5(cm3/g)以上である請求項1から2のいずれかに記載の多孔質炭素。
【請求項4】
前記多孔質炭素のマイクロ孔容積が0.5(cm3/g)以上である請求項1から3のいずれかに記載の多孔質炭素。
【請求項5】
前記多孔質炭素の一次粒子の粒子径が0.1(mm)以下である請求項1から4のいずれかに記載の多孔質炭素。
【請求項6】
(削除)
【請求項7】
(削除)
【請求項8】
請求項1から5のいずれかに記載の多孔質炭素からなるフィルターを有することを特徴とする、有機ハロゲン化合物除去装置。
【請求項9】
有機ハロゲン化合物が濃度0.06mg/Lで含有された水に対し、通液倍率1,000倍で有機ハロゲン化合物を除去した場合、有機ハロゲン化合物の除去率が90%以上である請求項8に記載の有機ハロゲン化合物除去装置。
【請求項10】
有機ハロゲン化合物が濃度0.06mg/Lで含有された水に対し、通液倍率3,000倍での有機ハロゲン化合物を除去した場合、有機ハロゲン化合物の除去率が65%以上である請求項8から9のいずれかに記載の有機ハロゲン化合物除去装置。
【請求項11】
有機ハロゲン化合物が濃度0.06mg/Lで含有された水に対し、通液倍率6,000倍での有機ハロゲン化合物を除去した場合、有機ハロゲン化合物の除去率が50%以上である請求項8から10のいずれかに記載の有機ハロゲン化合物除去装置。
【請求項12】
前記有機ハロゲン化合物がクロロホルムである請求項9から11のいずれかに記載の有機ハロゲン化合物除去装置。」

第4.取消理由について

1.令和 1年 7月25日付け取消理由について

(1)取消理由の概要

訂正前の請求項1~12に係る特許に対して、令和 1年 7月25日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は次のとおりである。

理由1(明確性)及び理由2(実施可能要件)

訂正前の請求項1における「最大微分容積値」について、「最大微分容積値」とは一般的に用いられている技術用語とは認められない上、本件特許明細書【0009】には、「<特定の測定方法> 前記多孔質炭素の特性は、例えば、以下の装置を使用して測定することができる。マイクロメリテックスジャパン合同会社製の3FLEXを使用して、窒素吸着等温線を測定し、・・・またDFT法によりマイクロ孔領域の細孔分布を求め、細孔径0.4nm~0.6nmの最大微分容積値を算出することができる。[具体的な測定方法] 炭化処理及び賦活処理をした多孔質炭素を30mg用意し、相対圧(P/P0)0.0000001から0.995の範囲を測定する条件に設定した3FLEXを使用して、比表面積、全細孔容積、メソ孔容積、マイクロ孔容積、マイクロ孔領域の細孔分布を測定することができる。」と記載されているものの、「最大微分容積値」の具体的な算出方法について何ら説明がされていないから、これがいかなる技術的事項を意味し、どのようにしてこの値を求めるのか、当該記載からでは不明である。

また、本件特許明細書【0009】の記載からして、請求項1の「細孔径0.4nm~0.6nmの最大微分容積値」を算出するためには、「DFT法」によってマイクロ孔領域の細孔分布を求めることが必要であるが、甲第5号証には、3FLEXを用いた解析方法について、「対話型式の解析ソフトウェアにより、正確に比表面積、細孔分布と細孔容積を簡単に解析できます。また、ユーザーがグラフ上から直接範囲を指定することで、BET、t-プロット、ラングミュア及びDFTの解析が可能です。MicroActive解析ソフトの等温線分析は細孔径分布を計算するために多くのNLDFTモデルを提供します。」(第5頁下から10行~4行目)と記載されており、また、第7頁には「デュアルDFTモデル」により細孔径分布を解析することについて記載されており、さらに、甲第7号証には、「9.5 非局所密度はん(汎)関数理論(NLDFT)によるミクロ細孔分布の解析・・・細孔径分析にDFTを応用するこの最初の試みでは,いわゆる局所バージョンのDFTが使われた。それは,細孔フィリングの巨視的,熱力学的記述に関して顕著な改良をもたらしているが,狭いミクロ細孔に対しては不正確である。正確さにおける顕著な改良がNLDFTを用いて得られた。・・・そして,NLDFT法に基づいた細孔径評価法は,ミクロ細孔及びメソ細孔の全領域に適用可能となる。」(第15頁第16行~36行)と記載されており、甲第7号証の記載から、本件特許出願前の2010年時点において、いわゆる局所バージョンのDFTが狭いミクロ細孔に対しては不正確であって、その改良型であるNLDFT法によってミクロ細孔及びメソ細孔の全領域における細孔径分布の解析を行うこと、局所バージョンのDFT法とNLDFT法は異なる解析方法であることが当業界において認識されていたと認められ、また、甲第5号証によれば、「デュアルDFTモデル」も知られていることから、本件特許明細書に接した当業者にとって、【0009】における「DFT法」との記載は、局所バージョンのDFT法、その改良型であるNLDFT法やデュアルDFTモデルのいずれを意味しているとも解され、多義的なものである。

また、「DFT法」の測定条件について、甲第7号証には、「9.5.3 細孔径解析への応用-NLDFT のカーネル及び積分吸着式 実験で得た吸着等温線から細孔径分布を計算するときにこの理論を適用するためには,理論モデル等温線を統計力学的手法によって計算しなければならない。・・・カーネルと呼ぶこのような等温線のセットは,与えられた吸着系に対する理論的な参照等温線とみなすことができ,対応する系に対し測定した吸着等温線からの細孔径分布の計算に使用することができる。仮定した幾何学的細孔モデル,ガス-ガス間とガス-固体間との相互作用パラメータの値,及びモデルで用いた仮定などの幾つかの因子が,カーネルの数値に影響することを理解することが重要である。・・・固体-液体間ポテンシャルのパラメータは,特性が明確であり,かつ,非多孔性(無孔性)の吸着材の標準吸着等温線にフィットするように決定する。」、「10 試験結果報告 次に示すように,測定条件及び計算に用いた定数のまとめを個々の結果に対して提供することが望ましい。

・・・

e)測定方法及び使用装置

f)試料の前処理

g)脱ガス条件:温度及び真空排気圧力

・・・

k)NLDFT法を用いた際のカーネルの記載(例えば,吸着質ガス/吸着材の組合せ,仮定した細孔径形状,吸着/脱着等温線など)」(第18頁)と記載されており、一般的に(3FLEXによらず)吸着等温線から細孔径分布を計算するためには、カーネルと呼ぶ理論モデル等温線が必要であり、試験結果を報告する際には、そのカーネルについての情報を第三者に提供する必要があることが、本件特許出願時における技術常識といえるが、本件特許明細書の【0009】においては、カーネルについての情報を含む測定条件についても明示されているとはいえないとともに、3FLEXに備えられた機能を使用して細孔径分布の測定を行うとした場合について検討するに、甲第10号証には、マイクロメリティックス機器株式会社が提供する製品で使用されるNLDFTモデルの一覧表が記載されているが、2011年1月6日時点で、吸着質ガスとして窒素を使用するNLDFTモデルは複数存在している(“INTERNET ARCHIVE WAYBACK MACHINE”において2011年3月24日付けの同ホームページの記録で内容を確認済。)ことから、本件特許明細書の【0009】において、吸着質ガスが窒素であることが特定されているところ、仮にNLDFTモデルであったとしても、そのうちのいずれのモデルを使用して測定を行うのかが特定できない。

また、本件特許明細書【0009】には、3FLEXを使用して各種特定を測定するために、いかなるソフトウェアのどのバージョンを使用するかについては記載されていないが、甲第11号証には、マイクロメリティックス機器株式会社製品のNLDFTモデルを使用して細孔径分布を測定するプログラムである「SAIEUS」のバージョンが、2014年4月2日時点で3.0であったことが記載され、甲第12号証には、1993年時点の同社のDFTバージョン1.00において、DFTの将来のリリースでは、新しい理論上の改良点が組み込まれる可能性があるため、同じデータに適用した場合、最初のバージョンとまったく同じ答えが得られることは保証されないことが記載されている(Future releases of DFT may incorporate new theoretical refinements and will, therefore, not be guaranteed to produce precisely the same answers as this, the first version, when applied to the same data.)(第16行~第18行)ことから、製造した多孔質炭素の特性を3FLEXによって測定した場合、使用されたソフトウェアのバージョンによって測定値が変わるから、本件発明に係る製造した多孔質炭素の特性が定まらない。

以上より、訂正前の請求項1に係る発明は明確でなく、また、当業者は、製造した多孔質炭素が「細孔径0.4nm~0.6nmの最大微分容積値」なる特性を有するか否かを確認するための具体的手段を認識できないため、訂正前の請求項1に係る発明を実施することができない。

よって、訂正前の請求項1及び請求項1を引用する請求項2~12に係る特許は、特許法第36条第6項第2号及び特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

理由3(新規性)及び理由4(進歩性)

訂正前の請求項1~6に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するものであり、訂正前の請求項8~12に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第1項又は第2項の規定に違反してされたものである。

また、訂正前の請求項1~7に係る発明は、甲第2号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するものであり、訂正前の請求項8~12に係る発明は、甲第2号証に記載された発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第1項又は第2項の規定に違反してされたものである。

(各甲号証一覧)

甲第1号証:国際公開第2014/129410号
甲第2号証:孟宗竹からの活性炭の製造,鹿児島県工業技術センター研究報告No.1,1987年,第29~32頁
甲第3号証:公益財団法人水道技術研究センターホームページ「日本と先進国の水道水質基準等一覧表」(http://www.jwrc-net.or.jp/chousa-kenkyuu/comparison/abroad04_03.pdf),2017年11月30日
甲第4号証:有限会社綜合ホームページ(http://sumi-umabe.com/takesumi.shtml),[2019年5月9日検索]
甲第5号証:島津サイエンス東日本株式会社ホームページ(https://www.sse-shimadzu.co.jp/files/mic/gus/3FLEX_final.pdf),2014年9月30日
甲第6号証:島津サイエンス西日本株式会社ホームページ(https://www.ssw-shimadzu.co.jp/news/2013/20140225.html),2014年9月30日
甲第7号証:JIS Z 8831-3:2010,日本規格協会,2010年4月20日
甲第8号証:特表2011-515522号公報
甲第9号証:特開2012-211043号公報
甲第10号証:マイクロメリティックス機器株式会社ホームページ(https://www.micromeritics.com/Library/DFT-NLDFT-Density-Functional-Theory/NLDFT-DFT-Models.aspx),[2019年4月25日検索]
甲第11号証:マイクロメリティックス機器株式会社ホームページ(http://www.nldft.com),2014年4月2日

甲第12号証:マイクロメリティックス機器株式会社ホームページ(https://www.micromeritics.com/Library/DFT-NLDFT-Density-Functional-Theory/Foreword-for-DFT-Version-100-April-1993.aspx),1993年4月15日

甲第13号証:マイクロトラック・ベル株式会社ホームページ(https://www.microtrac-bel.com/tech/bel/entry22.html),[2019年4月25日検索]
甲第14号証:JIS K 1474:2014,日本規格協会,2014年2月20日

(2)取消理由に対する判断

ア 理由1(明確性)及び理由2(実施可能要件)について

(ア)令和 1年 9月24日付けの意見書における特許権者の主張

前記(1)の取消理由に対し、特許権者は、令和 1年 9月24日付けで意見書を提出し、以下の主張をしている。なお、「・・・」は、記載の省略を表す(以下同様)。

「イ 最大微分容積値の測定について
請求項1に記載の最大微分容積値は、本件特許明細書の段落〔0009〕に記載の方法により測定されたものです。即ち、マイクロメリテックスジャパン合同会社製の3FLEXを使用して、窒素吸着等温線を測定し、DFT法によりマイクロ孔領域の細孔分布を求め、細孔径0.4nm~0.6nmの最大微分容積値を算出しています。
この算出方法において、発明者らは、特段特別な操作を行っておらず、出願当時、マイクロメリテックスジャパン合同会社製の3FLEXを使用する通常の操作により測定を行っています。
・・・
続きを表示(全17行)
測定資料として、多孔質炭素を30mg用意します(本件特許明細書の段落〔0009〕ご参照)。
測定装置として、マイクロメリテックスジャパン合同会社製の3FLEXを使用しました(本件特許明細書の段落〔0009〕ご参照)。本件特許明細書の実施例で使用した測定装置における解析ソフトは、「3Flex Version3.01」です(以下の図1ご参照)。以下の図1は、測定装置の解析ソフトを起動中に、項目「ヘルプ」を用いて当該解析ソフトのバージョン情報を表示させた際のパソコンの画面をコピーしたものです。
測定に際しては、相対圧(P/P0)0.0000001から0.995の範囲を想定する条件に設定します(本件特許明細書の段落〔0009〕ご参照)。その際の解析ソフトにおける設定は、以下の図2-1、及び図2-2のようになります。なお、図2-1画面中の上下スクロールを下げると、図2-2画面になります。
窒素吸着等温線を測定し、DFT法によりマイクロ孔領域の細孔分布を求め、細孔径0.4nm~0.6nmの最大微分容積値を算出する際には、測定装置のソフトにおける「レポートオプション」画面において、「DFT細孔径」の項目にチェックを入れます(以下の図3ご参照)。
そうしますと、測定結果として、以下の図4-1のような画面が表示されます。
ここで、図4-1の右上の欄を拡大しますと、以下の図4-2のようになります。
すなわち、本件特許明細書では、DFT法のモデルとして、「2D-NLDFT, N2-Carbon Finite Pores, As=6」を用いています。なお、上記図4-2における「モデル(M)」欄の設定が、DFT法の測定条件に相当します。
また、図4-1の左上のグラフを拡大しますと、以下の図4-3のようになります。
上記グラフにおいて、横軸は、細孔幅(nm)であり、縦軸(第2軸:右側)は、細孔容積(cm3/g・nm)を表します。そして、本件特許明細書における「細孔径0.4nm~0.6nmにおける最大微分容積値」とは、上記グラフにおいて、細孔幅(nm)0.4nm~0.6nmにおける細孔容積(cm3/g・nm)の極大値を意味します。上記グラフにおいて、その極大値は細孔幅0.53nm付近に見られ、その値は1.76(cm3/g・nm)です。そして、このデータは、本件特許明細書の実施例3のデータです。
ウ まとめ
上記イで述べた通り、本件特許明細書において、請求項1に記載の最大微分容積値は、本件特許明細書の段落〔0009〕に記載の方法により測定されたものであって、特段特別な操作を行っておらず、出願当時のマイクロメリテックスジャパン合同会社製の3FLEXを使用する通常の操作により、測定が行われています。
したがって、請求項1に係る発明は明確であり、また、当業者は、請求項1に係る発明を実施することができます。
請求項1を引用する請求項2~5及び8~12についても同様です。」

(イ)令和 2年 3月10日付けの回答書における特許権者の主張

令和 2年 1月17日付けの審尋に対し、特許権者は、令和 2年 3月10日付けで回答書を提出し、以下の主張をしている。

「ア 「1.請求項1に記載の「最大微分容積値」の測定に関する点」の「(1)特定の装置(マイクロメリテックスジャパン合同会社製の3FLEX)以外の装置を使用した場合について」について
本願明細書における「最大微分容積値」は、本願明細書の段落〔0009〕において、マイクロメリテックスジャパン合同会社製の3FLEX以外の装置が記載されてなく、同社製の3FLEXのみが記載されていることからも明らかなとおり、同社製の3FLEXという特定の測定装置を用いて測定することができるものであります。本願明細書の〔0009〕における「例えば」の一語により、審判官殿によるご指摘を受けたものと考えますが、同段落のみならず本件明細書の全体をみても、本願明細書における「最大微分容積値」の測定装置は、前記3FLEXのほかには何ら記載されてなく、本件明細書の全体を通してみれば、前記3FLEXでることは理解できるものと考えます。
イ 「(2)「DFT法」の意味及び測定条件について」について
乙第1号証:マイクロメリテックスジャパン合同会社製の3FLEXの取扱説明書のF章「F.DFTモデル」には、DFTモデルとして、以下のモデルと、各モデルに適した「基質」・「カテゴリー」とが記載されています。
続きを表示(全13行)
・・・
「N2-カーボンの限定された細孔、As=6、2D-NLDFT、Ar-カーボンの限定された細孔、As=6、2D-NLDFT」
・・・
本願発明では、多孔質炭素について測定することから、「基質」としてカーボン、「カテゴリー」として細孔を示すモデルから選択することになります。
上記「N2-カーボンの限定された細孔、As=6、2D-NLDFT、Ar-カーボンの限定された細孔、As=6、2D-NLDFT」については、『このモデルは特に、マイクロポアを持つカーボン材料のために役立ちます。レポートされる細孔径範囲は3.5~250Åです。』との記載があります。
上記細孔径範囲は、本願発明で測定しようとする細孔径範囲を含み、「Ar」よりも「N2」の方が一般的であり入手もし易く、また、DFT解析を行う上でモデルの適合性をモデル計算値と実測値の標準偏差で評価する機能があり、「As.4」、「As.6」、「As.12」の中で、上記細孔径範囲にある活性炭は「As.6」が最も適合性が良い(具体的な適合の標準偏差はAs.6=3.25、As.4=3.76、As.12=3.26)ことから、当業者は、本願発明の多孔質炭素の特性の測定としては、「N2-カーボンの限定された細孔、As=6、2D-NLDFT、Ar-カーボンの限定された細孔、As=6、2D-NLDFT」を選択することが適していると理解します。
ウ 「(3)「付属ソフトウェアのバージョン」について」について
ソフトウェアが付属された測定装置を用いて測定を行う場合、付属ソフトウェアは、測定当時において最新バージョンのものを用いることが当業者においては一般的であります。
本件では、測定当時(2015年4月)において、付属ソフトウェアの最新バージョンは、「3Flex Version 3.01」でありましたので、付属ソフトウェアとして「3Flex Version 3.01」を用いることが当業者の技術常識であるといえます。よって、「特段特別な操作を行っていない」場合の測定条件は一意に定まるといえます。」

(ウ)当審の判断

(a)「最大微分容積値」の具体的な算出方法について

1)本件特許明細書【0007】には、「・・・本発明の多孔質炭素は、細孔(ポア)を多く有している。細孔は、メソ孔、マイクロ孔、マクロ孔に分類される。ここで、メソ孔は孔径が2nm~50nmの細孔をいい、マイクロ孔は孔径が2nmよりも小さい細孔をいい、マクロ孔は孔径が50nmよりも大きい細孔をいう。・・・マイクロ孔は、低分子量物質の吸着には有効であるが、特に通液倍率が大きいときには、吸着性能が低下する傾向がある。一方、メソ孔容積が大きいと低分子量物質を効率良く吸着可能であり、かつ通液倍率がある程度大きくても吸着性能力が低下しにくい。さらに、細孔径0.4nm~0.6nmの最大微分容積値が1.6以上であると、特に低分子量物質を効率良く吸着可能となる。そこで、上記特性を有する多孔質炭素は、有機ハロゲン化合物等の低分子量化合物の吸着性能に優れ、通液倍率が大きい場合でも吸着性能が低下せず、いずれの効果も満足することができる。」と記載されており、本記載から、当業者は、本発明の多孔質炭素が、メソ孔の容積を大きくしつつ、細孔径0.4nm~0.6nm、すなわち低分子量物質の吸着に有効なマイクロ孔の容積も一定程度確保することにより、有機ハロゲン化合物等の低分子量化合物の吸着性能に優れ、通液倍率が大きい場合でも吸着性能が低下せず、いずれの効果も満足することができることを理解することができる。

2)上記1)より、「最大微分容積値」とは一般的に用いられている技術用語とは認められないものの、当業者は、本件特許明細書において「最大微分容積値」とは、細孔径0.4nm~0.6nmである細孔の容積に関する用語であることを理解することができる。

3)「最大微分容積値」の具体的な算出方法について、本件特許明細書【0009】には、「<特定の測定方法> 前記多孔質炭素の特性は、例えば、以下の装置を使用して測定することができる。マイクロメリテックスジャパン合同会社製の3FLEXを使用して、窒素吸着等温線を測定し、・・・またDFT法によりマイクロ孔領域の細孔分布を求め、細孔径0.4nm~0.6nmの最大微分容積値を算出することができる。[具体的な測定方法] 炭化処理及び賦活処理をした多孔質炭素を30mg用意し、相対圧(P/P0)0.0000001から0.995の範囲を測定する条件に設定した3FLEXを使用して、比表面積、全細孔容積、メソ孔容積、マイクロ孔容積、マイクロ孔領域の細孔分布を測定することができる。」と記載されているところ、前記(ア)の主張によれば、マイクロメリテックスジャパン合同会社製の3FLEXにおいて、本件特許明細書【0009】に記載されるように、相対圧(P/P0)を0.0000001から0.995の範囲を測定する条件に設定すること、窒素吸着等温線を測定し、DFT法によりマイクロ孔領域の細孔分布を求めること、は、特段特別な操作を行うことなく、いずれも通常の操作により実施可能であると認められる。

4)さらに、上記2)のとおり、当業者は、本件特許明細書において「最大微分容積値」とは、細孔径0.4nm~0.6nmである細孔の容積に関する用語であることを理解することができるところ、前記(ア)の主張によれば、当業者は、上記3)のとおり通常の操作を行った結果表示されるマイクロ孔領域の細孔分布を見れば、本件特許明細書の実施例における「最大微分容積値」の値も参酌することにより、本件特許明細書における「最大微分容積値」が、細孔径0.4nm~0.6nmである細孔における容積の極大値であることを理解することができるといえる。

5)よって、本件特許明細書には、「最大微分容積値」の具体的な算出方法について記載されているといえる。

(b)本件特許明細書における「DFT法」との記載について

1)前記(ア)の主張によれば、特許権者は、DFT法のモデルとして、「2D-NLDFT, N2-Carbon Finite Pores, As=6」を用いたと主張している。

2)この点に関し、前記(イ)の主張によれば、マイクロメリテックスジャパン合同会社製の3FLEXの取扱説明書のF章「F.DFTモデル」には、DFTモデルとして、各モデルに適した「基質」・「カテゴリー」が記載され、同取扱説明書のF-10~F-11には、「N2-カーボンの限定された細孔、As=6、2D-NLDFT」及び「Ar-カーボンの限定された細孔、As=6、2D-NLDFT」とのモデルについて、「基質」が「カーボン」、「カテゴリー」が「細孔」、さらに「このモデルは特に、マイクロポアを持つカーボン材料のために役立ちます。レポートされる細孔径範囲は3.5~250Åです。」との記載が認められる。

3)本件発明の「最大微分容積値」は細孔径0.4nm~0.6nmの細孔に関するものであるところ、上記「3.5~250Å」との細孔径範囲は、細孔径0.4nm~0.6nmを包含するものである。

4)また、本件特許明細書の【0009】において、吸着質ガスが窒素であることが特定されており、さらに、前記(イ)の「「Ar」よりも「N2」の方が一般的であり入手もし易く」との主張は、一般的にも是認できる技術常識といえる。

5)よって、本件特許明細書の【0009】に記載の「マイクロメリテックスジャパン合同会社製の3FLEX」を、特段特別な操作を行うことなく、通常の操作により使用すれば、当業者は、DFTモデルとして、「N2-カーボンの限定された細孔、As=6、2D-NLDFT」を選択するものと認められ、これは、上記1)とも符合するといえる。

6)よって、本件特許明細書には「DFT法」の詳細について明記はないが、本件特許明細書【0009】に記載の「マイクロメリテックスジャパン合同会社製の3FLEX」を通常の操作により使用すれば、「DFT法」は「2D-NLDFT, N2-Carbon Finite Pores, As=6」に一意に定まるものといえる。

(c)「DFT法」の測定条件について

上記第4.1.(2)ア(ウ)(a)及び(b)において検討したとおり、本件特許明細書には、「最大微分容積値」の具体的な算出方法について記載されているといえ、また、本件特許明細書に記載の「DFT法」は、「マイクロメリテックスジャパン合同会社製の3FLEX」を通常の操作により使用すれば「2D-NLDFT, N2-Carbon Finite Pores, As=6」に一意に定まるものといえることから、本件特許明細書において、カーネルについての情報を含む測定条件について明示されていなくとも、本件発明が不明確であるとも、本件発明が実施できないともいえない。

(d)仮にNLDFTモデルであったとしても、そのうちのいずれのモデルを使用して測定を行うのかが特定できない点について

上記第4.1.(2)ア(ウ)(a)及び(b)において検討したとおり、本件特許明細書には、「最大微分容積値」の具体的な算出方法について記載されているといえ、また、本件特許明細書に記載の「DFT法」は、「マイクロメリテックスジャパン合同会社製の3FLEX」を通常の操作により使用すれば「2D-NLDFT, N2-Carbon Finite Pores, As=6」に一意に定まるものといえることから、仮にNLDFTモデルであったとしても、そのうちのいずれのモデルを使用して測定を行うのかが特定できないとの点は、理由がない。

(e)解析ソフトウェアのバージョンについて

1)前記(ア)、(イ)によれば、特許権者は、本件特許明細書の実施例で使用した測定装置における解析ソフトは、「3Flex Version3.01」であり、これは、測定当時(2015年4月)において最新バージョンであったものと主張している。

2)この点に関し、「マイクロメリテックスジャパン合同会社製の3FLEX」に限らず、測定装置を特段特別な操作を行うことなく、通常の操作により使用する場合、測定装置の解析ソフトウェアとして最新バージョンの解析ソフトウェアを使用することは、一般的にも是認できる技術常識といえる。

3)また、使用された解析ソフトウェアのバージョンによって測定値が変わるのであれば、本件発明に係る製造した多孔質炭素の特性が定まらないこととなるが、この点に関し、令和 2年 5月12日付けの審尋において、特許異議申立人に対し、解析ソフトウェアのバージョンによっては「最大微分容積値」に有意な差が生じ得るといえることを具体的な根拠とともに説明することを求めたが、これに対して、特許異議申立人からの回答はなかった。

4)よって、当業者は測定当時の最新バージョンは理解でき、また、解析ソフトウェアのバージョンによって「最大微分容積値」に有意な差が生じ得るともいえないことから、本件特許明細書において、解析ソフトウェアのバージョンが明示されていなくとも、本件発明が不明確であるとも、本件発明が実施できないともいえない。

(エ)小括

したがって、前記(ア)、(イ)の主張によって、理由1(明確性)及び理由2(実施可能要件)は解消した。

(オ)特許異議申立人の主張について

特許異議申立人は、令和 1年10月30日付け意見書において、令和 1年 9月24日付け意見書において特許権者が補足事項として提出した図は、「明細書及び図面」に記載された事項ではなく、またそれが「出願時の技術常識」である根拠もないと主張する。

しかし、令和 1年 9月24日付け意見書において特許権者が補足事項として提出した図は、本件特許明細書の【0009】に記載の「マイクロメリテックスジャパン合同会社製の3FLEX」を、特段特別な操作を行うことなく、通常の操作により使用する際の態様を示すものであり、本件特許明細書の【0009】に記載の「マイクロメリテックスジャパン合同会社製の3FLEX」に係る出願時の技術常識であるといえる。

また、特許異議申立人は、令和 1年10月30日付け意見書において、「明細書及び図面」に記載された「DFT法」の記載から「2D-NLDFT法」及び「AR=6」を選択することは不可能又は「明細書及び図面」に記載されていないし、「出願時の技術常識」であった根拠もない旨主張するが、この点については、上記第4.1.(2)ア(ウ)(b)において検討したとおり、本件特許明細書に記載の「DFT法」は、「マイクロメリテックスジャパン合同会社製の3FLEX」を通常の操作により使用すれば「2D-NLDFT, N2-Carbon Finite Pores, As=6」に一意に定まるものといえる。

また、特許異議申立人は、令和 2年 3月16日付け上申書において、さらに以下の甲第15~17号証を示した上で、「測定当時において最新バージョンのものを用いることが当業者においては一般的である」との主張は根拠がない旨主張する。

甲第15号証:株式会社 ユー・イー・エスホームページ(http://www.cocowork.com/index.html)、原本、本件特許異議申立人、印刷日2020年3月24日
甲第16号証:株式会社 ユー・イー・エスホームページ、MicroActiveを使用した測定結果、2015年6月16日(http://www.cocowork.com/data/kd-ga-m/bet_kdgam.pdf)、原本、本件特許異議申立人、印刷日2020年3月24日
甲第17号証:株式会社 ユー・イー・エスホームページ、MicroActiveを使用した測定結果、2015年6月22日(http://www.cocowork.com/data/kd-pwsp/bet_kdpwsp.pdf)、原本、本件特許異議申立人、印刷日2020年3月24日

この主張について検討すると、甲第16号証、甲第17号証より、「株式会社ユー・イー・エス」が、本件発明の測定当時とされる「2015年4月」よりも後日である「2015年6月16日」及び「2015年6月22日」における活性炭の物性測定において、「Version 3.01」よりも古い「Version 2.01」を使用していたといえるとしても、測定当時において最新バージョンのものを用いていない一例であって、測定当時において最新バージョンのものを用いていない例が一般的であることを示すものではないから、これをもって、「測定当時において最新バージョンのものを用いることが当業者においては一般的である」との主張は根拠がないとまではいえない。

また、特許異議申立人は、令和 2年 3月16日付け上申書において、測定時に複数のソフトウェアのバージョンが存在する場合、ソフトウェアのバージョンを明記することが当業者の技術常識である旨、また、特許権者は測定当時を「2015年4月」と特定するが、明細書には測定時の記載は一切ない旨主張するが、「マイクロメリテックスジャパン合同会社製の3FLEX」に限らず、測定装置を特段特別な操作を行うことなく、通常の操作により使用する場合、測定装置の解析ソフトウェアとして最新バージョンの解析ソフトウェアを使用することは、一般的にも是認できる技術常識といえ、ソフトウェアのバージョンについて明記がない場合は、測定装置の解析ソフトウェアとして測定当時の最新バージョンの解析ソフトウェアが使用されていると解するのが妥当であり、上記第4.1.(2)ア(ウ)(e)3)、4)において検討したとおり、解析ソフトウェアのバージョンによって「最大微分容積値」に有意な差が生じ得るともいえないことから、測定当時が、特許権者が主張するとおり「2015年4月」であるか否かの如何によらず、本件発明が不明確であるとも、本件発明が実施できないともいえない。

よって、これらの主張には理由がない。

イ 理由3(新規性)及び理由4(進歩性)について

(ア)本件発明について

本件発明は、「第3.本件発明について」のとおりのものである。

(イ)甲第1号証に記載された発明との対比・判断

1)甲第1号証の記載事項

甲第1号証には、以下の事項が記載されている。

(1-1)「[0103]比較例1および2

フィリピン共和国ミンダナオ島産のココナッツやし殻を550℃で8時間炭化した後、平均粒径20~80μmに粉砕した粉砕品1000g、塩化カルシウム(試薬特級:和光純薬製)25gを水57gに溶解したカルシウム水溶液、軟化点110℃のハードピッチ250g、クレオソート80g、リグニン(日本製紙ケミカル製、サンエキスM)15gおよび水73gを、練合機に入れて25分混合した後、孔径4mmの押出し造粒機から押出し、5℃/分の割合で650℃まで昇温し、その後30分保持してやし殻炭化品を得た。この炭化品について、表1に示す条件で水蒸気賦活を行った。得られた賦活品を洗浄せずに、活性炭を得た。」

(1-2)「

」(第20頁[表1])

(1-3)「

」(第21頁[表2])

上記(1-1)と、(1-2)及び(1-3)の比較例1、2に着目すると甲第1号証には以下の発明(甲1発明)が記載されている。

「ココナッツやし殻を550℃で8時間炭化した後、平均粒径20~80μmに粉砕した粉砕品1000gと、塩化カルシウム(試薬特級:和光純薬製)25gを水57gに溶解したカルシウム水溶液、軟化点110℃のハードピッチ250g、クレオソート80g、リグニン(日本製紙ケミカル製、サンエキスM)15gおよび水73gを、練合機に入れて25分混合した後、孔径4mmの押出し造粒機から押出し、5℃/分の割合で650℃まで昇温し、その後30分保持して得たやし殻炭化品を、900℃で180分間水蒸気賦活して得た、比表面積が1362m2/g、細孔容積が0.828ml/g、メソ孔容積が0.45ml/gである活性炭、または、前記やし殻炭化品を900℃で210分間水蒸気賦活して得た、比表面積が1859m2/g、細孔容積が1.159ml/g、メソ孔容積が0.72ml/gである活性炭」

2)甲1発明との対比・判断

本件発明1と甲1発明とを対比する。

甲1発明における、「活性炭」及び「メソ孔容積が0.45ml/gまたは0.72ml/g」(「ml/g」は「cm3/g」に相当。)であることは、本件発明1における「多孔質炭素」及び「メソ孔容積が0.07(cm3/g)以上」であることにそれぞれ相当し、甲1発明に係る活性炭が「平均粒径20~80μmに粉砕した」ココナッツやし殻の炭化物を原料としていることは、本件発明1における「多孔質炭素」の「一次粒子の粒子径が」「0.425(mm)以下」であることに相当する。

したがって、両者は、

「多孔質炭素であって、メソ孔容積が0.07(cm3/g)以上で、且つ、一次粒子の粒子径が0.425(mm)以下であることを特徴とする多孔質炭素。」

である点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点1)

本件発明1は、「多孔質炭素の原材料がイネ科タケ類由来の材料からなり」と特定するのに対して、甲1発明は、多孔質炭素の原材料として「ココナッツやし殻」と特定する点

(相違点2)

本件発明1は、「一次粒子の粒子径」の下限を「0.05(mm)以上」と特定するのに対して、甲1発明は、平均粒径が「20~80μm」である点

(相違点3)

本件発明1は、「細孔径0.4nm~0.6nmの最大微分容積値が1.6以上」と特定するのに対して、甲1発明は、「細孔径0.4nm~0.6nmの最大微分容積値が1.6以上」という特性を有しているかは明らかではない点

したがって、本件発明1は甲1発明でない。

また、本件発明2~5、8~12は、本件発明1の上記相違点に係る発明特定事項を少なくとも有するものであることから、本件発明1と同じ理由により、甲1発明ではない。

さらに、相違点1について検討する。

甲第1号証には、多孔質炭素の原材料について、「当該粒状活性炭の原料は、一般的に用いられる活性炭の原料であって、不純物が少ない原料であれば、特に限定されない。例えば、やし殻(具体例:パームヤシ殻、ココナッツヤシ殻など)、天然繊維(具体例;麻、綿など)、合成繊維(具体例;レーヨン、ポリエステルなど)、合成樹脂(具体例;ポリアクリロニトリル、フェノール樹脂、ポリ塩化ビニリデン、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール)などが挙げられる。これらの中でも、やし殻が好ましい。」([0038])([0067]にも同様の記載)と記載され、さらに、いずれの実施例においても「ココナッツやし殻」が用いられたことが記載されている。

また、甲第1号証には、炭化処理や賦活処理の条件が用いる原料により異なることが記載されている([0039]、[0041]等)。

すると、甲第1号証において、多孔質炭素の原材料として、「イネ科タケ類由来の材料」を用いることを示唆する記載はなく、また、好ましいとされるやし殻に代えて、「イネ科タケ類由来の材料」を用いる動機付けも認められないことから、甲1発明において、多孔質炭素の原材料として「イネ科タケ類由来の材料」を用い、甲1発明を相違点1に係る構成を備えたものとすることは、当業者が容易に想到できたものではない。

また、相違点3について検討する。

甲1発明と本件発明1とはメソ孔容積と一次粒子の粒子径が一部重複し、水蒸気賦活時の温度が900℃である点において一致し、かつ、賦活時間についても、甲1発明は180分と210分であって、本件発明の3時間と同程度(本件特許明細書【0022】【表1】実施例3、4参照。)であるものの、相違点1についての上記検討のとおり、甲1発明と本件発明1は多孔質炭素の原材料が異なるものであり、さらに、甲第1号証には、炭化処理や賦活処理の条件が用いる原料により異なることが記載されている([0039]、[0041]等)から、仮に、甲1発明において、多孔質炭素の原材料として「イネ科タケ類由来の材料」を用いることに想到できたとしても、その際の炭化処理や賦活処理の条件を本件発明と同様とすることを示唆する記載はなく、また、そのようにする動機付けも認められないから、甲1発明も「細孔径0.4nm~0.6nmの最大微分容積値が1.6以上」という特性を有していると推認できる技術的根拠はない。

以上のとおりであるから、相違点2について検討するまでもなく、本件発明1は、当業者であっても、甲第1号証に記載された発明に基づいて容易に発明できたものではない。

また、本件発明2~5、8~12は、本件発明1の上記相違点に係る発明特定事項を少なくとも有するものであることから、本件発明1と同じ理由により、当業者であっても、甲第1号証に記載された発明に基づいて容易に発明できたものではない。

(ウ)甲第2号証に記載された発明との対比・判断

1)甲第2号証の記載事項

甲第2号証には、以下の事項が記載されている。

(1-1)「2.1 原料竹炭材

炭材は土窯で製造された孟宗竹炭を用いた。その性状を表1に,またその灰分組成を表2に示す。試料はジョークラッシャーを用いて粉砕したのち,4~28meshの篩別破砕状炭を用いた。」(第29頁左欄下から5行目~最下行)

(1-2)「2.2 賦活

破砕状炭200gを図1に示した内容積1lの回分式回転炉により水蒸気賦活を行った。」(第29頁右欄下から7行目~5行目)

(1-3)「2.3 炭材及び活性炭の試験,分析方法

活性炭の性能試験はJIS K1474により行った。」(第30頁左欄3行目~5行目)

(1-4)「

」(第30頁左欄 表3)

(1-5)「

」(第31頁右欄 図6)

2)甲第14号証の記載事項

甲第14号証には、以下の事項が記載されている。

(2-1)「3.1

粒状試料

粒度表示が150μm以上の試料のことをいう。」(第2頁下から8行目~6行目)

(2-2)「7 試験方法

7.1 吸着性能

・・・

b)試料調製方法 粉末試料の場合は、そのままの状態で115±5℃に調節した恒温乾燥機中で3時間乾燥した後、デシケーター{乾燥剤としてシリカゲルを使用(以下,特に記載のない場合には同じ。)}中で放冷する。粒状試料の場合は,試料をJIS Z 8801-1に規定する網ふるい45μm(ふるいの枠の寸法:ふるい面から上の内径75mm)を90%以上通過するまで粉砕し,上記の方法で乾燥する。

注記 粒状試料を粉砕する場合は,粉砕器の摩耗などによる試料汚染に注意する。試料汚染が生じた場合,吸着性能試験などに影響を与えることがあり,汚染を確認する方法として強熱残分分析,蛍光X線分析などによる試料の粉砕前後の変化がある。」(第3頁下から11行目~第4頁7行目)

以上より、甲第14号証には、粒度表示が150μm以上である粒状試料の性能試験にあたっては、試料をJIS Z 8801-1に規定する網ふるい45μmを90%以上通過するまで粉砕することが記載されている。

3)甲2発明

以上より、前記(1-1)~(1-5)と(1-4)のNo.7に着目すると、甲第2号証には、以下の事項が記載されている。

「粉砕した孟宗竹炭を4~28meshで篩別した破砕状炭を900℃で1時間水蒸気賦活処理して製造した活性炭であって、性能試験をJIS K1474により行った結果、比表面積が約750m2/gである活性炭」

ここで、甲第2号証に記載された4~28meshで篩別した破砕状炭とは、目開き4.75~0.59mmの篩で篩別したものであるから、破砕状炭の粒度は0.59mm以上であって、前記(2-1)を勘案すれば、甲第2号証に記載された破砕状炭は「粒状試料」に相当する。

そうすると、前記(2-2)で摘示した、粒状試料である活性炭の性能試験をJIS K1474によって行う際にあたって、試料をJIS Z 8801-1に規定する網ふるい45μmを90%以上通過するまで粉砕するという技術的事項を勘案すると、甲2号証には以下の発明(甲2発明)が記載されている。

「粉砕した孟宗竹炭を4~28meshで篩別した破砕状炭を900℃で1時間水蒸気賦活処理して製造した比表面積が750m2/gの活性炭であって、性能試験をJIS K1474により行うため、JIS Z 8801-1に規定する網ふるい45μmを90%以上通過するまで粉砕した活性炭。」

4)甲2発明との対比・判断

本件発明1と甲2発明とを対比する。

甲2発明の原材料は孟宗竹であり、本件発明1の「イネ科タケ類由来の材料」に相当する。

また、甲2発明における「活性炭」は、「JIS Z 8801-1に規定する網ふるい45μmを90%以上通過するまで破砕」しており、その粒径の45μm(0.045mm)は、本件発明1で規定される「一次粒子の粒子径」である「0.425(mm)以下」の10分の1程度であるため、破砕後の活性炭が種々の形状を有するとしても、本件発明1でいう「多孔質炭素」の「一次粒子の粒子径が0.425(mm)以下」である蓋然性が高い。

さらに、甲2発明においては、本件発明1の「メソ孔容積」や「細孔径0.4nm~0.6nmの最大微分容積値」という特性を有しているかは明らかではないが、甲2発明の活性炭は原料が孟宗竹であることに加え、一次粒子の粒子径や水蒸気賦活の条件が900℃、1時間である点において一致している(本件特許明細書【0022】【表1】実施例2、5、6参照。)ことを勘案すると、甲2発明も本件発明1と同様の「メソ孔容積」や「細孔径0.4nm~0.6nmの最大微分容積値が1.6以上」という特性を有している蓋然性が高い。

したがって、両者は、

「多孔質炭素であって、前記多孔質炭素の原材料がイネ科タケ類由来の材料からなり、メソ孔容積が0.07(cm3/g)以上で、細孔径0.4nm~0.6nmの最大微分容積値が1.6以上であり、且つ、一次粒子の粒子径が0.425(mm)以下であることを特徴とする多孔質炭素。」

である点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点4)

本件発明1は、「一次粒子の粒子径」の下限を「0.05(mm)以上」と特定するのに対して、甲2発明は、「JIS Z 8801-1に規定する網ふるい45μmを90%以上通過するまで破砕」したものである点

相違点4について検討する。

甲2発明における「JIS K1474」に係る甲第14号証の第14頁~第15頁には、以下の事項が記載されている。

「
・・・
・・・
」

以上より、甲第14号証には、粒度の測定には、ふるい上、及び受け皿に残った資料を使用することが記載されているといえる。

甲2発明の粒度は、「網ふるい45μmを90%以上通過するまで粉砕した活性炭」であることから、「網ふるい45μm」を通過した90%以上の活性炭、及び「網ふるい45μm」上に残った10%未満の活性炭の合計であるといえる。

ここで、「網ふるい45μm」上に残った10%未満の活性炭について検討すると、ふるい分級の場合、活性炭の粒径をb、ふるいの目開きをaとすれば、目開きaのふるい目を通過できる活性炭の粒径bは、b<aの場合であると認められる。

すると、「網ふるい45μm」上に残った10%未満の活性炭は、粒径が45μm超のものであるとはいえるが、「網ふるい45μm」上に残った10%未満の活性炭に、「一次粒子の粒子径が0.05(mm)以上0.425(mm)以下」を満足する活性炭が存在するとまでは、必ずしもいえない。

したがって、相違点4は、実質的な相違点であり、本件発明1は甲2発明でない。

また、本件発明2~5、8~12は、本件発明1の上記相違点に係る発明特定事項を少なくとも有するものであることから、本件発明1と同じ理由により、甲2発明ではない。

さらに、甲第2号証において、「一次粒子の粒子径」の下限を「0.05(mm)以上」と特定することを示唆する記載はなく、また、そのようにする動機付けも認められないことから、甲2発明において、「一次粒子の粒子径」の下限を「0.05(mm)以上」と特定し、甲2発明を相違点4に係る構成を備えたものとすることは、当業者が容易に想到できたものではない。

以上のとおりであるから、本件発明1は、当業者であっても、甲第2号証に記載された発明に基づいて容易に発明できたものではない。

また、本件発明2~5、8~12は、本件発明1の上記相違点に係る発明特定事項を少なくとも有するものであることから、本件発明1と同じ理由により、当業者であっても、甲第2号証に記載された発明に基づいて容易に発明できたものではない。

(エ)小括

したがって、本件訂正により、理由3(新規性)及び理由4(進歩性)は解消した。

(オ)特許異議申立人の主張について

特許異議申立人は、令和 1年10月30日付け意見書において、甲2発明には「一次粒子の粒子径が0.05(mm)以上0.425(mm)以下」を満足する活性炭が開示されている旨主張するが、上記(ウ)で検討したとおり、当該主張には、理由がない。

また、特許異議申立人は、令和 1年10月30日付け意見書において、JIS K1474は様々な粒度の活性炭を対象としているが、その理由は用途に応じて様々な粒度の活性炭が製造されるからであり、当業者が用途に応じて活性炭の粒度を調整することは当然であり、甲2発明の活性炭の粒度を調整する動機付けがあり、当業者が甲2発明の活性炭の粒度を調整することに技術的に困難な事情はないから、当業者が甲2発明の活性炭の粒子径を本件発明1の範囲内に調整することは設計事項である旨主張するが、上記(ウ)で検討したとおり、甲第2号証において、「一次粒子の粒子径」の下限を「0.05(mm)以上」と特定することを示唆する記載はなく、また、そのようにする動機付けも認められず、仮に甲2発明において活性炭の粒度を調整する動機付けがあったとしても、「0.05(mm)」という特定値とする動機付けはないから、当該主張には、理由がない。

第5.取消理由通知で採用しなかった特許異議申立理由について

1.特許異議申立書における特許法第36条第4項第1号及び同条第6項第1号の理由の概要

取消理由通知で採用しなかった特許異議申立書における特許法第36条第4項第1号及び同条第6項第1号の理由は、要するに、以下のとおりである。

(i)本件訂正前の請求項1に係る発明における「多孔質炭素」について、本件特許明細書には、「多孔質炭素」として植物以外に由来する材料、例えば石炭、石油、合成樹脂などを使用した多孔質炭素、その製造方法、および植物以外に由来する多孔質炭素が所望の効果を奏することは開示も示唆もされていないから、本件訂正前の請求項1に係る発明の全体まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない。

(ii)本件訂正前の請求項6に係る発明における「多孔質炭素の原料が植物由来の材料からなる」について、本件特許明細書には、どのようにすればヤシ殻活性炭で本件発明の効果が得られるのか開示されておらず、実施例に記載されている竹や籾殻以外の植物由来の材料については一切開示がないから、本件訂正前の請求項6に係る発明の全体まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない。なお、籾殻については「酸又はアルカリ処理し」と記載されているが、実施例において択一的な記載がされているため不明確であり、製造できない。

2.当審の判断

上記1.の(i)及び(ii)の理由についてまとめて判断する。

本件訂正により、本件発明1は「多孔質炭素」について「多孔質炭素の原材料がイネ科タケ類由来の材料からなり」と特定するものとなった。よって、上記1.の(i)は理由がない。

また、本件訂正により、特許請求の範囲の請求項6は削除された。よって、上記1.の(ii)は理由がない。また本件訂正により、なお書きについても、理由がない。

3.小括

したがって、特許異議申立理由は、いずれも理由がない。

第6.むすび

以上のとおり、請求項1~5、8~12に係る特許は、特許法第36条第6項第2号及び同条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものではなく、また特許法第29条第1項第3号及び同条第2項の規定に違反してされたものではなく、さらに特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものでもない。

したがって、請求項1~5、8~12に係る特許は、取消理由通知書に記載した取消理由又は特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、取り消すことはできない。また、他に請求項1~5、8~12に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。

そして、請求項6、7は、訂正により削除されたため、同請求項に係る特許に対する特許異議の申立てについては、対象となる請求項が存在しない。

よって、結論のとおり決定する。

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2019-700410

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