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特許異議申立

2019-700385

複合粒子、その製造方法及び樹脂組成物

審判番号
2019-700385
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2014-097660
登録番号
特許第6421448号(P6421448)
請求日
2019年05月14日
審決日
2021年04月20日
公報発行日
2021年08月27日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】DIC株式会社
  • 【権利者代理人】小川 眞治
  • 【権利者代理人】岩本 明洋
  • 【権利者代理人】大野 孝幸
  • 【異議申立人】山内 生平
審判長/審判官
  • 審判長 蔵野 雅昭
  • 審判官 木村 敏康
  • 審判官 天野 斉
分類
P1651.121-YAA(C08L) / P1651.537-YAA(C08L) / P1651.851-YAA(C08L) / P1651.853-YAA(C08L)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法120条の8第1項特許法135条
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の8第1項
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特許第6421448号発明「複合粒子、その製造方法及び樹脂組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

【結 論】 特許第6421448号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~8〕について訂正することを認める。 特許第6421448号の請求項1、3~4及び7~8に係る特許を維持する。 特許第6421448号の請求項2及び5~6に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯 特許第6421448号(以下「本件特許」ともいう。)の請求項1~8に係る特許についての出願は、 平成26年5月9日に特願2014-97660号として特許出願され、平成30年10月26日に特許権の設定登録がされ、同年11月14日に特許掲載公報が発行され、その請求項1~8に係る発明の特許に対し、令和元年5月14日に山内生平(以下「特許異議申立人」という。)により、特許異議の申立てがされたものである。 特許異議の申立て後の手続の経緯は次のとおりである。 令和元年 7月30日付け 取消理由通知 同年 9月30日   意見書・訂正請求書(特許権者) 同年10月 9日付け 手続補正指令書(方式) 同年11月15日   手続補正書 同年11月29日付け 訂正請求があった旨の通知 令和2年 2月 4日付け 訂正拒絶理由通知 同年 3月25日付け 取消理由通知(決定の予告) 同年 5月13日   面接 同年 5月22日   意見書・訂正請求書(特許権者) 同年 7月22日付け 手続補正指令書(方式) 同年 8月27日   手続補正書 同年 9月15日付け 訂正請求があった旨の通知 同年11月10日付け 訂正拒絶理由通知 同年12月11日付け 意見書・手続補正書(特許権者) なお、特許異議申立人は、令和元年11月29日付け及び令和2年9月15日付けの訂正請求があった旨の通知に対して、指定した期間内に何ら応答していない。 また、特許権者は、令和2年2月4日付けの訂正拒絶理由通知に対して、指定期間内に何ら応答していない。 さらに、令和元年9月30日付けの訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。 第2 訂正の適否 1.訂正の内容 令和2年8月27日付け及び同年12月11日付けの手続補正により補正された同年5月22日付けの訂正請求による訂正(以下「本件訂正」という。)の「請求の趣旨」は『特許第6421448号の明細書、特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~8について訂正することを求める。』というものであり、その内容は、以下の訂正事項1~9からなるものである(なお、訂正箇所に下線を付す。)。 (1)訂正事項1 訂正前の請求項1の「板状粒子または棒状粒子である熱伝導性フィラーと、無機粒子とを混合し、メカノケミカル処理を行って複合粒子を得る工程を有することを特徴とする、熱伝導性複合粒子の製造方法であって、板状粒子または棒状粒子の平均アスペクト比が10以上であり、無機粒子の平均アスペクト比が2以下である、熱伝導性複合粒子の製造方法。」との記載を、 訂正後の請求項1の「板状粒子である酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、二酸化珪素、二酸化チタン、マイカ、チタン酸カリウム、酸化鉄、タルク、窒化ホウ素、窒化珪素、窒化アルミニウム、炭化珪素、銅、アルミニウム、及び炭酸マグネシウムからなる群から選ばれる1種以上または 棒状粒子である炭化珪素、黒鉛、窒化珪素、アルミナ、チタン酸カリウム、ウォラスナイト、ホウ酸アルミニウム、及び酸化亜鉛からなる群から選ばれる1種以上 である熱伝導性フィラーと、無機粒子であるアルミナとを混合し、メカノケミカル処理を行って複合粒子を得る工程を有することを特徴とする、熱伝導性複合粒子の製造方法であって、 板状粒子または棒状粒子の平均アスペクト比が10以上であり、 板状粒子が長軸方向での平均粒子径が10~30μmであり、 棒状粒子が繊維径が平均0.1~10μmかつ短繊維長が平均10~50μmであり、 無機粒子の平均アスペクト比が2以下かつ粒径が20~50μmである、熱伝導性複合粒子の製造方法。」との記載に訂正する。 (請求項1を引用する請求項2~8も同様に訂正する。) (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項2を削除する。 (3)訂正事項3 訂正前の請求項3の「請求項1または2に記載」との記載部分を、 訂正後の請求項3の「請求項1記載」との記載に訂正する。 (4)訂正事項4 訂正前の請求項4の「請求項1~3のいずれかに記載」との記載部分を、 訂正後の請求項4の「請求項1又は3に記載」との記載に訂正する。 (5)訂正事項5 特許請求の範囲の請求項5を削除する。 (6)訂正事項6 特許請求の範囲の請求項6を削除する。 (7)訂正事項7 訂正前の請求項7の「請求項1~6のいずれかに記載」との記載部分を、 訂正後の請求項4の「請求項1、3、4のいずれかに記載」との記載に訂正する。 (8)訂正事項8 明細書の段落0011の「得られること見出し」との記載部分を、訂正後の「得られることを見出し」との記載に訂正する。 (9)訂正事項9 明細書の段落0040の「樹脂組成物1にたいし」との記載部分を、訂正後の 「樹脂組成物1に対し」との記載に訂正する。 2.訂正の適否 (1)訂正事項1について ア.訂正の目的 訂正事項1は、訂正前の請求項1の「板状粒子」を「酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、二酸化珪素、二酸化チタン、マイカ、チタン酸カリウム、酸化鉄、タルク、窒化ホウ素、窒化珪素、窒化アルミニウム、炭化珪素、銅、アルミニウム、及び炭酸マグネシウムからなる群から選ばれる1種以上」のものに限定するとともに「板状粒子が長軸方向での平均粒子径が10~30μm」であるものに限定し、 訂正前の請求項1の「棒状粒子」を「炭化珪素、黒鉛、窒化珪素、アルミナ、チタン酸カリウム、ウォラスナイト、ホウ酸アルミニウム、及び酸化亜鉛からなる群から選ばれる1種以上」のものに限定するとともに「棒状粒子が繊維径が平均0.1~10μmかつ短繊維長が平均10~50μm」であるのものに限定し、 訂正前の「無機粒子」を「アルミナ」に限定するとともに「粒径が20~50μm」であるものに限定するものであるから、 特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。 イ.拡張又は変更の存否 訂正事項1は、上記ア.に示したように「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。 ウ.新規事項の有無 本件特許明細書の段落0019には「板状粒子は、…例えば酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、二酸化珪素、二酸化チタン、マイカ、チタン酸カリウム、酸化鉄、タルク等の炭化物粒子、窒化ホウ素、窒化珪素、窒化アルミニウム等の窒化物粒子、炭化珪素等の炭化物粒子、銅、アルミニウム等の金属粒子、炭酸マグネシウムが挙げられる」との記載があり、同段落0018には「板状粒子の大きさは、長軸方向での平均粒子径が…好ましくは10~30μmである」との記載があり、 同段落0021には「棒状粒子は、…例えば炭化珪素、黒鉛、窒化珪素等の無機非酸化物系針状単結晶体無機物粉体、及びアルミナ、チタン酸カリウム、ウォラスナイト、ホウ酸アルミニウム、酸化亜鉛等の無機酸化物系針状単結晶体無機物粉体等が挙げられる」との記載があり、同段落0020には「棒状粒子としては、例えば、繊維径が平均0.1~10μmで短繊維長が…好ましくは平均10~50μm」との記載があり、 同段落0013には「無機粒子としては、…アルミナ、…などが挙げられ」との記載があり、同段落0015には「無機粒子の粒径は、…さらに好ましくは20~50μmである」との記載があるので、 訂正事項1は、本件特許明細書に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。 (2)訂正事項2及び5~6について ア.訂正の目的 訂正事項2及び5~6は、訂正前の請求項2及び5~6をそれぞれ削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。 イ.拡張又は変更の存否 訂正事項2及び5~6は、訂正前の請求項2及び5~6をそれぞれ削除するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。 ウ.新規事項の有無 訂正事項2及び5~6は、訂正前の請求項2及び5~6をそれぞれ削除するものであるから、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。 (3)訂正事項3~4及び7について ア.訂正の目的 訂正事項3~4は、訂正前の請求項3~4が引用する請求項の選択肢から請求項2を引用する場合のものを削除するものであり、訂正事項7は、訂正前の請求項7が引用する請求項の選択肢から請求項2及び5~6を引用する場合のものを削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。 イ.拡張又は変更の存否 訂正事項3~4及び7は、上記ア.に示したように「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。 ウ.新規事項の有無 訂正事項3~4及び7は、上記ア.に示したように引用する請求項の選択肢を削除するだけのものであるから、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。 (4)訂正事項8及び9について ア.訂正の目的 訂正事項8は、本件特許明細書の段落0011の「得られること見出し」との記載部分を「得られることを見出し」との記載に訂正するものであり、訂正事項9は、本件特許明細書の段落0040の「樹脂組成物1にたいし」との記載部分を「樹脂組成物1に対し」との記載に訂正するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものに該当する。 イ.拡張又は変更の存否 訂正事項8及び9は、本件特許の「明細書」における「明瞭でない記載」を訂正するものであって、当該訂正によって本件特許の「特許請求の範囲」に記載された発明特定事項の定義や意味などが変更されるものでものないので、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。 ウ.新規事項の有無 訂正事項8及び9は、上記ア.に示したよう「明瞭でない記載の釈明」を目的としたものであって、当該「釈明」は「記載の不明瞭さを正してその記載本来の意味内容を明らかにする」だけのものであるから、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。 (5)一群の請求項等について 訂正事項1~7に係る訂正前の請求項1~8について、その請求項2~8は請求項1を直接又は間接的に引用するものであるから、訂正前の請求項1~8に対応する訂正後の請求項1~8は特許法第120条の5第4項に規定される一群の請求項である。 したがって、訂正事項1~7による本件訂正は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項に対してなされたものである。 さらに、訂正事項8及び9による明細書の訂正は、請求項1~8からなる一群の請求項の全てと関係するから、訂正事項8及び9は、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第4項に適合するものである。 3.まとめ 以上総括するに、訂正事項1~9による本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び、同条第9項において準用する同法第126条第4項から第6項までの規定に適合するので、訂正後の請求項〔1~8〕について訂正を認める。 第3 本件発明 上記のとおり本件訂正は容認し得るものであるから、本件訂正により訂正された請求項1~8に係る発明(以下「本1発明」~「本8発明」ともいう。)は、その特許請求の範囲の請求項1~8に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 「【請求項1】板状粒子である酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、二酸化珪素、二酸化チタン、マイカ、チタン酸カリウム、酸化鉄、タルク、窒化ホウ素、窒化珪素、窒化アルミニウム、炭化珪素、銅、アルミニウム、及び炭酸マグネシウムからなる群から選ばれる1種以上または 棒状粒子である炭化珪素、黒鉛、窒化珪素、アルミナ、チタン酸カリウム、ウォラスナイト、ホウ酸アルミニウム、及び酸化亜鉛からなる群から選ばれる1種以上 である熱伝導性フィラーと、無機粒子であるアルミナとを混合し、メカノケミカル処理を行って複合粒子を得る工程を有することを特徴とする、熱伝導性複合粒子の製造方法であって、 板状粒子または棒状粒子の平均アスペクト比が10以上であり、 板状粒子が長軸方向での平均粒子径が10~30μmであり、 棒状粒子が繊維径が平均0.1~10μmかつ短繊維長が平均10~50μmであり、 無機粒子の平均アスペクト比が2以下かつ粒径が20~50μmである、熱伝導性複合粒子の製造方法。 【請求項2】 削除 【請求項3】板状粒子が窒化ホウ素である、請求項1記載の熱伝導性複合粒子の製造方法。 【請求項4】棒状粒子が窒化ケイ素である、請求項1又は3に記載の熱伝導性複合粒子の製造方法。 【請求項5】 削除 【請求項6】 削除 【請求項7】請求項1、3、4のいずれかに記載の製造方法で得られた熱伝導性複合粒子と、樹脂とを配合する工程を特徴とする、樹脂組成物の製造方法。 【請求項8】請求項7に記載の製造方法で得られた樹脂組成物を成形する工程を有する、樹脂成形体の製造方法。」 第4 取消理由通知の概要 令和2年3月25日付けの取消理由通知(決定の予告)で通知された取消理由の概要は、次の理由1~3からなるものである。 〔理由1〕本件特許の請求項1~8に係る発明は、本件出願日前に日本国内又は外国において頒布された以下の刊行物1~5に記載された発明に基いて、本件出願日前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 刊行物1:特開2013-80789号公報(甲第1号証) 刊行物2:国際公開第2013/039103号(甲第2号証) 刊行物3:特開2007-254637号公報(甲第3号証) 刊行物4:特開2013-103375号公報 刊行物5:特開2014-55257号公報 よって、本件特許の請求項1~8に係る発明に係る特許は、同法第29条の規定に違反してなされたものであり、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。 〔理由2〕本件特許の特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に適合するものではない。 無機粒子等の平均粒子径の範囲(取消理由通知(決定の予告)の2.(2)参照) 無機粒子の範囲(取消理由通知(決定の予告)の2.(3)参照) よって、本件特許の請求項1~8に係る発明に係る特許は、同法第36条第6項の規定を満たさない特許出願に対してなされたものであり、同法第113条第4号の規定により取り消されるべきものである。 〔理由3〕本件特許の特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に適合するものではない。 請求項5及びその従属項の記載(取消理由通知(決定の予告)の3.(1)参照) 請求項6及びその従属項の記載(取消理由通知(決定の予告)の3.(2)参照) その他の点(取消理由通知(決定の予告)の3.(3)参照) よって、本件特許の請求項1~8に係る発明に係る特許は、同法第36条第6項の規定を満たさない特許出願に対してなされたものであり、同法第113条第4号の規定により取り消されるべきものである。 第5 当審の判断 1.理由1(進歩性)について (1)引用刊行物の記載事項 ア.上記刊行物1(特開2013-80789号公報)には、次の記載がある。 摘記1a:請求項1 「【請求項1】重合性不飽和基を有する水添共役ジエン-芳香族ビニル共重合体及び重合性不飽和基を有するウレタン液状オリゴマーから選ばれる少なくとも1種と、(メタ)アクリレートモノマーと、重合開始剤とを含有する硬化性組成物からなるシート基体中に、 基体粒子の表面の少なくとも一部が該基体粒子よりも粒子径の小さい微粒子で被覆された複合粒子である熱伝導性粒子が、配向された状態で含有された、伝熱シート。」 摘記1b:段落0001及び0007 「【0001】本発明は、伝熱シートに関し、更に詳しくは、電子機器における電子部品または照明装置における光源から生じる熱を放熱するために用いることのできる伝熱シートに関する。… 【0007】電子機器の高密度化および薄型化に伴って、電子部品から発生する熱の影響がこれまで以上に深刻なものとなっており、しかも電子機器の高性能化および小型化が発熱量の増加をもたらしていることから、電子部品の熱をより高い効率で伝熱することのできる伝熱シートが求められている。」 摘記1c:段落0079~0081 「【0079】[熱伝導性粒子] 前記熱伝導性粒子は、基体粒子の表面の少なくとも一部が、該基体粒子よりも粒子径の小さい微粒子で被覆された複合粒子である。 【0080】前記微粒子は、前記基体粒子よりも小径のものである。具体的には、前記基体粒子の粒子径と前記微粒子の粒子径の比(基体粒子/微粒子)が、30~500であることが好ましく、50~300であることがより好ましい。上記範囲であると、前記基体粒子および他の前記微粒子との接触面積が大きくなり、粒子間における熱伝導がスムーズに行われ、伝熱シートの熱伝導性が良好である。 ここに「粒子径」とは、平均粒子径を表し、レーザー散乱回折法粒度分布測定装置等により測定することができる。 【0081】前記基体粒子の平均粒子径は、具体的には、10μm~500μmであることが好ましく、より好ましくは20μm~200μm、更に好ましくは20μm~150μmである。一方、前記微粒子の平均粒子径は、0.1μm~10μmであることが好ましい。 前記基体粒子及び前記微粒子の形状は、真球状でもよく、扁平に変形した球状でもよい。」 摘記1d:段落0085、0088及び0090 「【0085】前記基体粒子を構成する強磁性体粒子としては、例えば、ニッケル、鉄、コバルトなどの磁性金属よりなる粒子、化学式:MO・Fe2O3〔Mは、Mn、Fe、Ni、Cu、Mg、Znなどより選択される金属〕で表されるフェライトなどの金属酸化物などの強磁性体材料よりなる粒子が挙げられる。 前記微粒子を構成する絶縁性を有する高熱伝導性材料としては、セラミック材料及びダイアモンドから選ばれる少なくとも1種の材料が好ましい。セラミック材料としては、例えば、窒化アルミニウム、窒化硼素(ボロンナイトライド)、窒化ケイ素、酸化ベリリウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、炭化ケイ素などが挙げられる。… 【0088】前記複合粒子としては、前記基体粒子が磁性金属でなくてもよく、例えば前記基体粒子が炭化ケイ素からなる粒子(SiC粒子)であり、前記微粒子がアルミニウムからなる微粒子(Al微粒子)のような構成でもよい。… 【0090】前記複合粒子を製造する方法としては、機械的な力によって粒子の複合化を行うメカノケミカル法を用いることができる。具体的には、基体粒子および微粒子とされる粒子を用意し、これらの粒子を、製造すべき複合粒子に応じた所定の混合比(質量比)で混合し、その後、ハイブリダイザー装置を用い、必要に応じて予備混合処理(OM処理(精密混合処理))を行った後、複合化処理(カプセル化処理)を施す手法が好適に用いられる。複合化処理(カプセル化処理)は、基体粒子および微粒子の材質、粒子径およびそれらの混合比(質量比)などに応じた適宜の条件によって行われ、例えば回転数13000rpm、処理時間5分間である。 このような手法によって得られる複合粒子は、物理的吸着によって基体粒子表面に微粒子が付着されてなるものである。」 摘記1e:段落0104~0106 「【0104】〔複合粒子(1)~(5)の調製〕 平均粒子径50μmのスチールビーズ(ニッチュー製、#300)と、下記の各種セラミックス粒子を用意した。 -セラミックス粒子- ・炭化ケイ素(SiC):平均粒子径0.6μm、信濃電気製錬製、SER-A06 ・アルミナ:平均粒子径0.32μm、昭和電工製、WA#30000 ・窒化ケイ素(SiN):平均粒子径2.4μm、電気化学工業製、SN-9FWS ・窒化硼素(BN):平均粒子径0.7μm、電気化学工業製、SP3-7 ・窒化アルミニウム(AlN):平均粒子径1μm、トクヤマ製 【0105】スチールビーズと、セラミックス粒子のいずれか1種とを、質量比(スチールビーズ:セラミックス粒子)が100:6となるように混合した。次いで、スチールビーズとセラミックス粒子との混合系に対して、ハイブリダイザー装置を用い、回転数13,000rpmの条件で5分間かけて複合化処理(カプセル化処理)を施すことにより、スチールビーズからなる基体粒子の表面がセラミックス粒子からなる微粒子により被覆された複合粒子(1)~(5)を得た。 【0106】【表1】 」 摘記1f:段落0109及び0112~0115 「【0109】…以上のようにして、アクリロイル基含有水添スチレン-ブタジエン共重合体(以下「H-SBR(1)」という。)を得た。… 【0112】<実施例1>…樹脂製容器に、H-SBR(1)を40g、イソミリスチルアクリレート(共栄社化学製、ライトアクリレートIM-A、硬化物のガラス転移温度(Tg)-56℃)を40g、光重合開始剤(BASF社製、Irugacure1173)を2g、及び複合粒子(1)を135g仕込み、ペースト状のシート成形材料を得た。 【0113】得られたシート成形材料を、厚さ100μmのPET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂製のシートの間に挟み、これによってPET樹脂製シートの間にシート成形材料層を形成することにより、PET樹脂シート、シート成形材料層およびPET樹脂シートがこの順に積層されてなる積層体を得た。 【0114】得られた積層体に対して、その厚さ方向に0.38テスラの永久磁石2つで両面から磁場を作用させつつ室温にて1分間保持し、片面の永久磁石をはずした後すぐに当該片面に紫外線を9000mJ/cm2照射し、光硬化処理を行った。次いで、もう一方の面から永久磁石をはずし、積層体の両面からPET樹脂シートを剥がした。こうして、図1のような構造を有する、実施例1に係る厚さ1mmの伝熱シートを製造した。 【0115】<実施例2~5>…実施例1において、複合粒子(1)を複合粒子(2)~(5)のいずれか1種に代えたこと以外は実施例1と同様にして、実施例2~5に係る厚さ1mmの伝熱シートを製造した。」 イ.上記刊行物2(国際公開第2013/039103号)には、次の記載がある。 摘記2a:請求項1、2及び6 「[請求項1]熱伝導性フィラーの表面に粒状、角状、繊維状、平板状からなる形状の少なくとも1種の形状を持つベーマイト、又は酸化亜鉛が結合又は付着して構成される無機フィラー複合体。 [請求項2]熱伝導性フィラーが、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、酸化マグネシウム、ガラスビーズ、アルミナ、又は黒鉛である請求項1に記載の無機フィラー複合体。… [請求項6]平板状ベーマイトまたは酸化亜鉛の直径が0.05~50μm、アスペクト比が10以上である請求項1~3のいずれかに記載の無機フィラー複合体。」 摘記2b:段落0003 「[0003]…最近の電子機器においては、高性能化、小型化及び軽量化に伴い、各種の電子部品で発生する熱を効果的に外部へ放散させる熱対策が非常に重要な課題になっており、その構成材料である樹脂成形材料の放熱性改良を求める声が大きくなってきている。」 摘記2c:段落0021及び0032 「[0021]このような基材の組成は特に制限されず、炭素系材料(…)、ガラス質材料(…)、金属酸化物(例えば、シリカ、アルミナ、酸化亜鉛、酸化チタン)、鉱物系材料(…)、金属窒化物(例えば、窒化ケイ素、窒化アルミニウム)、金属炭化物(…)等が挙げられる。… [0032]平板状ベーマイトまたは酸化亜鉛の形状としては直径が0.05~50μm、アスペクト比が10以上であることが好ましい。直径が0.05μm未満、アスペクト比10未満では熱伝導性向上効果が少なく、直径が50μmを超えると得られる樹脂組成物の強度が著しく低下するため好ましくない。」 摘記2d:段落0051及び0053 「[0051](合成例2)…品名PCTP30 平均粒径30μm(サンゴバン社製)… [0053](合成例5)…窒化ホウ素…(電気化学製工業製 SGPS)」 ウ.上記刊行物3(特開2007-254637号公報)には、次の記載がある。 摘記3a:段落0001~0002 「【0001】本発明は、熱伝導性フィラー、それを用いた熱伝導性樹脂複合材、並びに熱伝導性フィラーの製造方法に関する。… 【0002】従来から、各種の電気・電子・電装部品、自動車部品等の多種多様な用途に樹脂材料が用いられている。しかしながら、樹脂材料は熱伝導率が小さいため、樹脂材料を用いた部品が蓄熱し易いといった問題があり、熱伝導性及び放熱特性に優れた樹脂材料が求められている。」 摘記3b:段落0032~0035 「【0032】本発明の第一及び第二の熱伝導性フィラーは、前述の基材に加えて、前記基材の表面に直接結合している微細酸化亜鉛を備えている。… 【0033】このような微細酸化亜鉛としては、…(c3)平均アスペクト比が1~50(特に好ましくは5~20)を満たすものであることがより好ましい。 【0034】…前記微細酸化亜鉛の平均アスペクト比が上記下限未満では熱伝導性フィラーの熱伝導が不十分となり、得られる樹脂複合材の熱伝導性を十分に向上させることができない傾向にあり、他方、上記上限を超えると熱伝導性樹脂複合材の溶融粘度を増加させたり、混練時に破断する微細酸化亜鉛の量が増加する傾向にある。 【0035】本発明にかかる微細酸化亜鉛の形状は、上記条件を満たすものであればよく特に限定されないが、繊維状、針状、棒状、筒状、角柱状、粒子状等の形状のものが好ましい。」 摘記3c:段落0068~0069及び0071 「【0068】(実施例2) 基材となるガラス繊維Aの裁断品(0.747g)に代えて球状シリカ(2.25g)を用いた以外は実施例1と同様にして熱伝導性フィラーを得た。… 【0069】また、実施例2で得られた熱伝導性フィラーを走査型電子顕微鏡にて観察したところ、得られた熱伝導性フィラーにおいては基材の表面にロッド状の微細酸化亜鉛が高密度で直接結合していることが確認された。また、得られた電子顕微鏡写真に基づいて微細酸化亜鉛の平均直径、平均長さを求め、得られた結果を表1に示す。… 【0071】【表1】 」 エ.上記刊行物4(特開2013-103375号公報)には、次の記載がある。 摘記4a:段落0045~0048 「【0045】…熱伝導性無機フィラーとしては、…絶縁性が好ましい。 【0046】…これらの絶縁性無機フィラーは、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの絶縁性無機フィラーのうち、絶縁性及び熱伝導性に優れる点から、窒化ホウ素や窒化アルミニウムなどの窒素化合物が好ましく、窒化ホウ素が特に好ましい。… 【0047】熱伝導性無機フィラーの形状は、球状、楕円体状、多角体形(多角錘状、正方体状、直方体状など)、棒状、繊維状、不定形状などであってもよいが、厚み方向の熱伝導性を向上できる点から、板状(鱗片状又は扁平状)が好ましい。… 【0048】…さらに、板状である場合、前記板面の平均径と厚みとのアスペクト比(板面の平均径/厚み)は、例えば、2以上、好ましくは2~50、さらに好ましくは3~30(特に5~20)程度であってもよい。」 摘記4b:段落0110、0115及び0119 「【0110】実施例3…窒化ホウ素(電気化学工業(株)製「SGP」、平均粒径18μm、アスペクト比10.07)54.9重量部及び窒化ホウ素(DP3-7))23.5重量部を使用 【0115】比較例3…窒化ホウ素の代わりに球状アルミナ(電気化学工業株製「DAW-7」、平均粒径9μm)を使用… 【0119】本発明の熱伝導性フィルムは、熱伝導性を要求される各種用途に利用でき、例えば、画像表示装置、コンピュータ、照明機器、電池などの電気・電子部品(放熱板、半導体素子、熱電変換素子、光電変換素子、電磁波吸収放熱材、基盤、セパレータなど)に利用でき、厚み方向と面方向とで異方性の熱伝導性を有するため、電気自動車やハイブリッド自動車(HEV)など、種々の分野で利用される組電池(例えば、リチウムイオン電池など)の単電池セル間に介在させる放熱フィルムとして特に有用である。」 オ.上記刊行物5(特開2014-55257号公報)には、次の記載がある。 摘記5a:段落0013~0014 「【0013】…本発明で使用する無機粒子(A)として、公知慣用の金属系ファイラー、無機化合物フィラー等が使用される。具体的には、例えば、銀、銅、アルミニウム、鉄等の金属系フィラー、アルミナ、マグネシア、ベリリア、シリカ、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、炭化ケイ素、炭化ホウ素、炭化チタン等の無機系フィラー、ステアタイト、エンステタイト、ウレイマイト、ディオブサイド、コーディエライト、フォルステライト、ジルコン、ムライト、ペタライト、スポジュメン、ワラストナイト、アノーサイト、アルバイト等の複合酸化物などが挙げられる。… 【0014】電子機器等の用途で放熱性が必要とされる場合には、電気絶縁性が求められる事が多く、これらのフィラーの内、体積固有抵抗の高いアルミナ、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、ベリリア、シリカ、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、コーディエライト、フォルステライト、ジルコン、ムライトから選択される少なくとも1種の熱伝導性フィラーの使用が好ましい。」 摘記5b:段落0033及び0039 「【0033】…実施例1…熱伝導フィラーのDAW-05(電気化学工業株式会社製球状アルミナ、平均粒子径5ミクロン)… 【0039】…実施例6…熱伝導フィラーのPCTP30(サンゴバン製窒化ホウ素)」 (2)刊行物1に記載された発明 刊行物1の請求項1(摘記1a)の「基体粒子の表面の少なくとも一部が該基体粒子よりも粒子径の小さい微粒子で被覆された複合粒子である熱伝導性粒子」との記載について、 同段落0090(摘記1d)に「前記複合粒子を製造する方法としては、機械的な力によって粒子の複合化を行うメカノケミカル法を用いることができる。具体的には、基体粒子および微粒子とされる粒子を用意し、これらの粒子を、製造すべき複合粒子に応じた所定の混合比(質量比)で混合し、その後、ハイブリダイザー装置を用い、…複合化処理(カプセル化処理)を施す手法が好適に用いられる。」との説明が記載されており、 同段落0104~0106(摘記1e)に「平均粒子径50μmのスチールビーズ(ニッチュー製、#300)と、下記の各種セラミックス粒子を用意した。…窒化硼素(BN):平均粒子径0.7μm、電気化学工業製、SP3-7…スチールビーズと、セラミックス粒子のいずれか1種とを、質量比(スチールビーズ:セラミックス粒子)が100:6となるように混合した。次いで、スチールビーズとセラミックス粒子との混合系に対して、ハイブリダイザー装置を用い、回転数13,000rpmの条件で5分間かけて複合化処理(カプセル化処理)を施すことにより、スチールビーズからなる基体粒子の表面がセラミックス粒子からなる微粒子により被覆された複合粒子(1)~(5)を得た。…表1…複合粒子(4)…スチールビーズ…窒化硼素(BN)」と説明されていることからみて、刊行物1には、 『基体粒子(平均粒子径50μmのスチールビーズ)およびセラミックス粒子からなる微粒子(平均粒子径0.7μmの窒化硼素)を混合し、機械的な力によって粒子の複合化を行うメカノケミカル法を用いる、基体粒子の表面がセラミックス粒子からなる微粒子により被覆された複合粒子である熱伝導性粒子を製造する方法。』についての発明(以下「刊1発明」という。)が記載されているといえる。 (3)対比 本1発明と刊1発明とを対比する。 刊1発明の「基体粒子(平均粒子径50μmのスチールビーズ)」は、摘記5aの「無機粒子(A)として…鉄等の金属系フィラー」との記載をも参酌するに、本1発明の「無機粒子であるアルミナ」に対して「無機粒子」という点で共通するとともに、本1発明の「粒径が20~50μm」の粒径範囲を満足する。 刊1発明の「セラミックス粒子からなる微粒子(平均粒子径0.7μmの窒化硼素)」は、刊行物1の段落0085(摘記1d)の「微粒子を構成する…高熱伝導性材料としては…窒化硼素(ボロンナイトライド)…などが挙げられる。」との記載、摘記4aの「熱伝導性無機フィラー…熱伝導性に優れる点から…窒化ホウ素が特に好ましい」との記載、及び摘記5bの「熱伝導フィラー…窒化ホウ素」との記載をも参酌するに、刊1発明の「窒化硼素」からなる「セラミックス粒子」が「粒子」である「熱伝導性」の「フィラー」に該当することが明らかであって、本件特許明細書の段落0019の「熱伝導性フィラー…窒化ホウ素」との記載にある「熱伝導性フィラー」に一致する材料でもあることから、本1発明の「板状粒子…または棒状粒子である熱伝導性フィラー」に対して「粒子である熱伝導性フィラー」という点で共通する。 刊1発明の「を混合し、機械的な力によって粒子の複合化を行うメカノケミカル法を用い…複合粒子である熱伝導性粒子を製造する方法」は、本1発明の「を混合し、メカノケミカル処理を行って複合粒子を得る工程を有する…熱伝導性複合粒子の製造方法」に相当する。 してみると、本1発明と刊1発明は、両者とも『粒子である熱伝導性フィラーと、無機粒子とを混合し、メカノケミカル処理を行って複合粒子を得る工程を有する、熱伝導性複合粒子の製造方法であって、無機粒子の粒径が20~50μmである、熱伝導性複合粒子の製造方法。』という点において一致し、次の(α)~(δ)の点において相違する。 (α)無機粒子の材質が、本1発明は「アルミナ」であるのに対して、刊1発明は「スチール」である点 (β)粒子である熱伝導性フィラーの形状と材質が、本1発明は「板状粒子である酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、二酸化珪素、二酸化チタン、マイカ、チタン酸カリウム、酸化鉄、タルク、窒化ホウ素、窒化珪素、窒化アルミニウム、炭化珪素、銅、アルミニウム、及び炭酸マグネシウムからなる群から選ばれる1種以上または棒状粒子である炭化珪素、黒鉛、窒化珪素、アルミナ、チタン酸カリウム、ウォラスナイト、ホウ酸アルミニウム、及び酸化亜鉛からなる群から選ばれる1種以上」であって「板状」と「棒状」の形状に応じて材質が特定され、板状粒子の場合には「長軸方向での平均粒子径が10~30μm」であるものに特定され、棒状粒子の場合には「繊維径が平均0.1~10μmかつ短繊維長が平均10~50μm」であるものに特定されているのに対して、刊1発明は「セラミックス粒子からなる微粒子(平均粒子径0.7μmの窒化硼素)」の「形状」が不明であり、仮に「棒状」である場合には材質も異なる点 (γ)粒子である熱伝導性フィラーの「平均アスペクト比」が、本1発明は「10以上」に特定されているのに対して、刊1発明は「セラミックス粒子からなる微粒子(平均粒子径0.7μmの窒化硼素)」の「平均アスペクト比」が不明な点 (δ)無機粒子の「平均アスペクト比」が、本1発明は「2以下」に特定されているのに対して、刊1発明は「基体粒子(平均粒子径50μmのスチールビーズ)」の「平均アスペクト比」が不明な点 (4)判断 ア.相違点(α)について 刊行物1の段落0106(摘記1e)には「複合粒子(2)」として、平均粒子径が50μmのスチールビーズを基体粒子とし、平均粒子径が0.32μmのアルミナを微粒子として用いた具体例が記載されている。 しかしながら、本1発明の「無機粒子であるアルミナ」は「粒径が20~50μm」の大きさであることを特徴とするものであるのに対して、刊行物1に記載の「平均粒子径が0.32μmのアルミナ」は、その粒子径が非常に小さい「微粒子」サイズのものであるから、本1発明の「アルミナ」と刊行物1に記載の「アルミナ」が軌を一にする設計思想にあるとはいえないので、刊行物1の「アルミナ」についての記載が、本1発明の技術思想について示唆するものであるとはいえない。 また、刊行物1に記載の「アルミナ」は、刊1発明の「セラミックス粒子からなる微粒子(平均粒子径0.7μmの窒化硼素)」という小さいサイズの「微粒子」の「窒化硼素」の材質を代替し得るものとして記載されているものであって、刊1発明の「基体粒子(平均粒子径50μmのスチールビーズ)」という大きいサイズの基体粒子の材質を代替し得るものとして記載されていないので、刊1発明の「スチール」という材質を、刊行物1に記載の「アルミナ」に置き換える動機付けがあるとはいえない。 さらに、刊行物2の請求項2(摘記2a)には「熱伝導性フィラーが、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、酸化マグネシウム、ガラスビーズ、アルミナ、又は黒鉛である請求項1に記載の無機フィラー複合体。」との記載があり、 刊行物3の段落0021(摘記2c)には「基材の組成は…アルミナ、…窒化アルミニウム…等が挙げられる。」との記載があり、 刊行物4の段落0115(摘記4b)には「窒化ホウ素の代わりに球状アルミナ(電気化学工業株製「DAW-7」、平均粒径9μm)を使用」との記載があり、 刊行物5の段落0014(摘記5a)には「無機粒子が、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、ベリリア、シリカ、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、コーディエライト、フォルステライト、ジルコン、ムライトから選択される…熱伝導性フィラーの使用が好ましい」との記載があるところ、 刊行物2~5に記載の「アルミナ」は「窒化ホウ素」等を代替し得る材質のものとして記載されているにすぎないので、刊行物2~5の記載によっては、刊1発明の基体粒子としての「スチール」という材質を、刊行物1に記載の「アルミナ」に置き換える動機付けがあるとはいえない。 そして、本1発明は、上記(α)に係る構成を具備することで、本件特許明細書の実施例で確認されたとおりの格別顕著な作用効果を奏するものである。 したがって、刊1発明に、刊行物1~5に記載の技術事項を組み合わせ、さらに本件特許の出願当時の技術常識をどのように組み合わせたとしても、本1発明を当業者が容易に想到することができたとはいえない。 イ.本1発明の進歩性のまとめ 以上総括するに、上記(α)の相違点に係る構成を導き出すことが、当業者にとって容易想到であるとは認められないから、上記(β)~(δ)の相違点について検討するまでもなく、本1発明に係る特許が、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものとはいえない。 (5)本3~本4及び本7~本8発明について 本3~本4及び本7~本8発明は、本1発明を引用し、さらに限定したものであるから、本1発明の進歩性が上記のとおり否定できない以上、本3~本4及び本7~本8発明が、刊行物1~5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえず、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものに該当するとはいえない。 2.理由2(サポート要件)について (1)無機粒子等の平均粒子径の範囲 上記第4の〔理由2〕の「2.(3)」の記載不備の具体的な内容は『本件特許の請求項1及びその従属項の記載は、当該「無機粒子」の平均粒子径を「20~50μm」の範囲に特定し、同時に当該「板状粒子」の長軸方向での平均粒子径を「10~30μm」の範囲に特定し、当該「棒状粒子」の「繊維径」と「短繊維長」を特定の範囲に特定していないので、本1~本8発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるとは認められず、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるとも認められない。』というものである。 これに対して、訂正後の請求項1の記載は、無機粒子の粒径が「20~50μm」の範囲に特定され、板状粒子の長軸方向での平均粒子径が「10~30μm」の範囲に特定され、棒状粒子の繊維径が「平均0.1~10μm」に、短繊維長が「平均10~50μm」に特定されている。 してみると、上記「2.(3)」に指摘した記載不備について、本件特許の請求項1及びその従属項の記載は、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載されたものではないとはいえないから、特許法第36条第6項第1号に適合するものではないとはいえない。 (2)無機粒子の範囲 上記第4の〔理由2〕の「2.(4)」の記載不備の具体的な内容は『本件特許の請求項1及びその従属項の記載は、当該「無機粒子」が「アルミナ」である場合のものに特定されていないので、本1~本8発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるとは認められず、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるとも認められない。』というものである。 これに対して、訂正後の請求項1の記載は、無機粒子が「アルミナ」に特定されている。 してみると、上記「2.(4)」に指摘した記載不備について、本件特許の請求項1及びその従属項の記載は、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載されたものではないとはいえないから、特許法第36条第6項第1号に適合するものではないとはいえない。 3.理由3(明確性要件)について 上記第4の〔理由3〕の「3.(1)」の記載不備の具体的な内容は『請求項5を請求項5が引用しているという点において不明確である。』というものであり、同「3.(2)」の記載不備の具体的な内容は『請求項6を請求項6が引用しているという点において不明確である。』というものであるところ、本件訂正により請求項5及び6は削除されている。 また、同「3.(3)」の記載不備の具体的な内容は『本件特許明細書の段落0011の「得られること見出し」との記載や、同段落0040の「得られた樹脂組成物1にたいし」等の記載は日本語として不明確であり、同段落0045の「実施例2~7」との記載、及び同段落0048の表1の「実施例3」との記載は、実施例3の具体例が本件特許の請求項1に記載された「無機粒子の平均アスペクト比が2以下」という発明特定事項を充足しない(例えば「参考例3」との記載に訂正されていない)ので、不明確である。』というものであるところ、本件訂正により、本件特許明細書の段落0011及び0040の不明確な記載が訂正され、同段落0045及び0048の記載において本1発明の発明特定事項を充足しないものが実施例として記載されている点については「第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確である」とまではいえない。 したがって、本件特許の特許請求の範囲の記載は、特許を受けようとする発明が明確ではないとはいえないから、特許法第36条第6項第2号に適合するものではないとはいえない。 4.取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について 特許異議申立人が主張する「特許法第29条第2項(同法第113条第2号)」の申立の理由は「本件特許発明1~8は、甲1発明及び甲2発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるか、甲1発明及び甲3発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。」というものであって、この理由は、上記第4の〔理由1〕において採用されており、 特許異議申立人が主張する「特許法第特許法第36条第6項第2号(同法113条第4号)」の申立の理由は「請求項5に従属する本件特許発明5は、不明確」であり、「請求項6に従属する本件特許発明6は、不明確」であり、「本件特許発明5及び6を引用する本件特許発明7、並びに、本件特許発明7に従属する本件特許発明8も不明確」であるというものであって、この理由は、上記第4の〔理由3〕において採用されているから、 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立の理由に該当しない。 第6 むすび 以上総括するに、取消理由通知に記載した取消理由並びに特許異議申立人が申し立てた理由及び証拠によっては、本1、本3~本4及び本7~本8発明に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本1、本3~本4及び本7~本8発明に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 さらに、訂正前の請求項2及び5~6は削除されているので、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により、請求項2及び5~6に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 よって、結論のとおり決定する。

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2019-700385

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    共通の審決分類: 121・C08L、537・C08L、851・C08L、853・C08L
  • 2017-700083異議申立 / 2017-08-23 / 訂正認容ポリアミド樹脂組成物及び成形品
    共通の審決分類: 121・C08L、537・C08L、851・C08L、853・C08L

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