特許異議申立
2017-700189
携帯電子機器部品用ポリアミド樹脂組成物及び当該ポリアミド樹脂組成物を含む携帯電子機器部品
- 審判番号
- 2017-700189
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2011-270619
- 登録番号
- 特許第5979861号(P5979861)
- 請求日
- 2017年02月27日
- 審決日
- 2017年10月13日
- 公報発行日
- 2018年01月26日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】旭化成株式会社
- 【権利者代理人】稲葉 良幸
- 【権利者代理人】内藤 和彦
- 【権利者代理人】秋山 祐子
- 【権利者代理人】大貫 敏史
- 【権利者代理人】江口 昭彦
- 【異議申立人】東レ 株式会社
- 審判長/審判官
- 審判長 小柳 健悟
- 審判官 渕野 留香
- 審判官 小野寺 務
- 分類
- P1651.113-YAA(C08L) / P1651.121-YAA(C08L) / P1651.536-YAA(C08L) / P1651.537-YAA(C08L) / P1651.851-YAA(C08L) / P1651.853-YAA(C08L) / P1651.857-YAA(C08L)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第4項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第4項第1号、特許法第29条第1項第3号、特許法第120条の5第5項、特許法第126条第5項、特許法第126条第6項、特許法第126条第4項、特許法第29条第1項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第5979861号発明「携帯電子機器部品用ポリアミド樹脂組成物及び当該ポリアミド樹脂組成物を含む携帯電子機器部品」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第5979861号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1、〔2~6〕について訂正することを認める。
特許第5979861号の請求項2ないし6に係る特許を維持する。
特許第5979861号の請求項1に係る特許についての申立を却下する。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
特許第5979861号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし6に係る特許についての出願は、平成23年12月9日に特許出願され、平成28年8月5日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許について、特許異議申立人東レ株式会社(以下、「申立人」という。)により平成29年2月27日(受理日、同年2月28日)に特許異議申立書(以下、「申立書」という。)が提出され、当審において同年5月22日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である同年7月24日に意見書の提出及び訂正の請求(以下、「本件訂正の請求」という。)があった。
なお、申立人に対する訂正請求があった旨の通知(特許法第120条の5第5項)に対しては、申立人からの応答はなかった。
第2 訂正の適否についての判断
1.本件訂正の内容
本件訂正における請求の趣旨は、本件特許の明細書及び特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付した明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1ないし6について訂正することを求める、というものである。
(1)訂正事項1
請求項1を削除する。
(2)訂正事項2
請求項2における
「前記式(1)で示される(Y)が、0.05≦(Y)≦0.8である請求項1に記載の携帯電子機器部品用ポリアミド樹脂組成物。」を、
「(A):(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、
(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、を、含むポリアミドであって、
当該(A)ポリアミドが、
(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、からなるポリアミド、または、
(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、εカプロラクタムからなる単位と、からなるポリアミドであり、
当該ポリアミド中における全カルボン酸成分中のイソフタル酸成分比率(x)が、0.05≦(x)≦0.5であり、
かつ、下記式(1)で示される(Y)が、0.05≦(Y)≦0.8であるポリアミドを100質量部と、
(Y)=[(EG)-(x)]/[1-(x)] ・・・(1)
(前記式(1)中、(EG)は、(A)ポリアミド中に含有されている全カルボキシル末端基中のイソフタル酸末端基比率を示し、下記式(2)で示される。
(EG)=イソフタル酸末端基量/全カルボキシル末端基量 ・・・(2))
(B):ガラス繊維及び/又は(C):前記(B)以外の無機充填材を1~300質量部と、
を、含有する携帯電子機器部品用ポリアミド樹脂組成物(但し、(b-1)カルボキシル基、エポキシ基、アミノ基およびアミド基よりなる群から選ばれた少なくとも一種以上の官能基を有する変性ビニル系共重合樹脂、および/または(b-2)酸変性したポリフェニレンエーテル樹脂を含むものを除く。)。」に訂正する。
(3)訂正事項3
請求項3における
「前記(B)ガラス繊維は、数平均繊維径が6μm以上20μm以下である、請求項1又は2に記載の携帯電子機器部品用ポリアミド樹脂組成物。」を、
「(A):(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、
(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、を、含むポリアミドであって、
当該(A)ポリアミドが、
(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、からなるポリアミドであり、
当該ポリアミド中における全カルボン酸成分中のイソフタル酸成分比率(x)が、0.05≦(x)≦0.5であり、
かつ、下記式(1)で示される(Y)が、0.05≦(Y)≦0.8であるポリアミドを
100質量部と、
(Y)=[(EG)-(x)]/[1-(x)] ・・・(1)
(前記式(1)中、(EG)は、(A)ポリアミド中に含有されている全カルボキシル末端基中のイソフタル酸末端基比率を示し、下記式(2)で示される。
(EG)=イソフタル酸末端基量/全カルボキシル末端基量 ・・・(2))
(B):ガラス繊維及び/又は(C):前記(B)以外の無機充填材を1~300質量部と、
を、含有し、
前記(B)ガラス繊維は、数平均繊維径が6μm以上20μm以下である、携帯電子機器部品用ポリアミド樹脂組成物(但し、(b-1)カルボキシル基、エポキシ基、アミノ基およびアミド基よりなる群から選ばれた少なくとも一種以上の官能基を有する変性ビニル系共重合樹脂、および/または(b-2)酸変性したポリフェニレンエーテル樹脂を含むものを除く。)。」に訂正する
(4)訂正事項4
請求項4における
「前記(C):前記(B)以外の無機充填材が、タルク、マイカ、カオリン、シリカ、ワラストナイト、アルミフレーク及びアルミ粉からなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の携帯電子機器部品用ポリアミド樹脂組成物。」を、
「前記(C):前記(B)以外の無機充填材が、タルク、マイカ、カオリン、シリカ、ワラストナイト、アルミフレーク及びアルミ粉からなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項2又は3に記載の携帯電子機器部品用ポリアミド樹脂組成物。」に訂正する。
(5)訂正事項5
請求項5における
「前記(A)ポリアミドが、
(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、からなるポリアミド、または、
(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、εカプロラクタムからなる単位と、からなるポリアミドであり、
前記(A)ポリアミド、前記(B)ガラス繊維、及び前記(C):前記(B)以外の無機充填材の合計100質量部に対する(A)ポリアミドの割合が40~67質量部である、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の携帯電子機器部品用ポリアミド樹脂組成物。」を、
「前記(A)ポリアミドが、
(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、からなるポリアミド、または、
(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、εカプロラクタムからなる単位と、からなるポリアミドであり、
前記(A)ポリアミド、前記(B)ガラス繊維、及び前記(C):前記(B)以外の無機充填材の合計100質量部に対する(A)ポリアミドの割合が40~67質量部である、請求項2乃至4のいずれか一項に記載の携帯電子機器部品用ポリアミド樹脂組成物。」に訂正する。
(6)訂正事項6
請求項6における
「請求項1乃至5のいずれか一項に記載の携帯電子機器部品用ポリアミド樹脂組成物を含む携帯電子機器部品。」を、
「請求項2乃至5のいずれか一項に記載の携帯電子機器部品用ポリアミド樹脂組成物を含む携帯電子機器部品。」に訂正する。
(7)訂正事項7
明細書の段落【0013】における
「〔1〕
(A):(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、
(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、を、含むポリアミドであって、
当該(A)ポリアミドが、
(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、からなるポリアミド、または、
(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、εカプロラクタムからなる単位と、からなるポリアミドであり、
当該ポリアミド中における全カルボン酸成分中のイソフタル酸成分比率(x)が、0.05≦(x)≦0.5であり、
かつ、下記式(1)で示される(Y)が、-0.3≦(Y)≦0.8である(A)ポリアミドを100質量部と、
(Y)=[(EG)-(x)]/[1-(x)] ・・・(1)
(前記式(1)中、(EG)は、(A)ポリアミド中に含有されている全カルボキシル末端基中のイソフタル酸末端基比率を示し、下記式(2)で示される。
(EG)=イソフタル酸末端基量/全カルボキシル末端基量 ・・・(2))
(B):ガラス繊維及び/又は(C):前記(B)以外の無機充填材を1~300質量部と、
を、含有する携帯電子機器部品用ポリアミド樹脂組成物(但し、(b-1)カルボキシル基、エポキシ基、アミノ基およびアミド基よりなる群から選ばれた少なくとも一種以上の官能基を有する変性ビニル系共重合樹脂、および/または(b-2)酸変性したポリフェニレンエーテル樹脂を含むものを除く。)。
〔2〕
前記式(1)で示される(Y)が、0.05≦(Y)≦0.8である、前記〔1〕記
載の携帯電子機器部品用ポリアミド樹脂組成物。
〔3〕
前記(B)ガラス繊維は、数平均繊維径が6μm以上20μm以下である、前記〔1〕又は〔2〕に記載の携帯電子機器部品用ポリアミド樹脂組成物。
〔4〕
前記(C):前記(B)以外の無機充填材が、タルク、マイカ、カオリン、シリカ、ワラストナイト、アルミフレーク及びアルミ粉からなる群より選ばれる少なくとも1種である、前記〔1〕乃至〔3〕のいずれか一に記載の携帯電子機器部品用ポリアミド樹脂組成物。
〔5〕
前記(A)ポリアミドが、
(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、からなるポリアミド、または、
(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、εカプロラクタムからなる単位と、からなるポリアミドであり、
前記(A)ポリアミド、前記(B)ガラス繊維、及び前記(C):前記(B)以外の無機充填材の合計100質量部に対する(A)ポリアミドの割合が40~67質量部である、前記〔1〕乃至〔4〕のいずれか一に記載の携帯電子機器部品用ポリアミド樹脂組成物。
〔6〕
前記〔1〕乃至〔5〕のいずれか一に記載の携帯電子機器部品用ポリアミド樹脂組成物を含む携帯電子機器部品。」を、
「〔1〕(削除)
〔2〕
(A):(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、
(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、を、含むポリアミドであって、
当該(A)ポリアミドが、
(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、からなるポリアミド、または、
(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、εカプロラクタムからなる単位と、からなるポリアミドであり、
当該ポリアミド中における全カルボン酸成分中のイソフタル酸成分比率(x)が、0.05≦(x)≦0.5であり、
かつ、下記式(1)で示される(Y)が、0.05≦(Y)≦0.8であるポリアミドを100質量部と、
(Y)=[(EG)-(x)]/[1-(x)] ・・・(1)
(前記式(1)中、(EG)は、(A)ポリアミド中に含有されている全カルボキシル末端基中のイソフタル酸末端基比率を示し、下記式(2)で示される。
(EG)=イソフタル酸末端基量/全カルボキシル末端基量 ・・・(2))
(B):ガラス繊維及び/又は(C):前記(B)以外の無機充填材を1~300質量部と、
を、含有する携帯電子機器部品用ポリアミド樹脂組成物(但し、(b-1)カルボキシル基、エポキシ基、アミノ基およびアミド基よりなる群から選ばれた少なくとも一種以上の官能基を有する変性ビニル系共重合樹脂、および/または(b-2)酸変性したポリフェニレンエーテル樹脂を含むものを除く。)。
〔3〕
(A):(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、
(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、を、含むポリアミドであって、
当該(A)ポリアミドが、
(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、からなるポリアミドであり、
当該ポリアミド中における全カルボン酸成分中のイソフタル酸成分比率(x)が、0.05≦(x)≦0.5であり、
かつ、下記式(1)で示される(Y)が、0.05≦(Y)≦0.8であるポリアミドを100質量部と、
(Y)=[(EG)-(x)]/[1-(x)] ・・・ (1)
(前記式(1)中、(EG)は、(A)ポリアミド中に含有されている全カルボキシル末端基中のイソフタル酸末端基比率を示し、下記式(2)で示される。
(EG)=イソフタル酸末端基量/全カルボキシル末端基量 ・・・(2))
(B):ガラス繊維及び/又は(C):前記(B)以外の無機充填材を1~300質量部と、
を、含有し、
前記(B)ガラス繊維は、数平均繊維径が6μm以上20μm以下である、携帯電子機器部品用ポリアミド樹脂組成物(但し、(b-1)カルボキシル基、エポキシ基、アミノ基およびアミド基よりなる群から選ばれた少なくとも一種以上の官能基を有する変性ビニル系共重合樹脂、および/または(b-2)酸変性したポリフェニレンエーテル樹脂を含むものを除く。)。
〔4〕
前記(C):前記(B)以外の無機充填材が、タルク、マイカ、カオリン、シリカ、ワラストナイト、アルミフレーク及びアルミ粉からなる群より選ばれる少なくとも1種である、前記〔2〕又は〔3〕に記載の携帯電子機器部品用ポリアミド樹脂組成物。
〔5〕
前記(A)ポリアミドが、
(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、からなるポリアミド、または、
(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、εカプロラクタムからなる単位と、からなるポリアミドであり、
前記(A)ポリアミド、前記(B)ガラス繊維、及び前記(C):前記(B)以外の無機充填材の合計100質量部に対する(A)ポリアミドの割合が40~67質量部である、前記〔2〕乃至〔4〕のいずれか一に記載の携帯電子機器部品用ポリアミド樹脂組成物。
〔6〕
前記〔2〕乃至〔5〕のいずれか一に記載の携帯電子機器部品用ポリアミド樹脂組成物を含む携帯電子機器部品。」に訂正する。
2.訂正の目的の適否、新規事項の有無、一群の請求項及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)一群の請求項について
訂正前の請求項1ないし6は、請求項2ないし6が、訂正の請求の対象である請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する関係にあるから、訂正前において一群の請求項に該当するものである。
したがって、訂正事項1ないし6についての訂正の請求は、特許法第120条の5第4項に規定する「一群の請求項」ごとにされたものである。
(2)訂正事項1についての訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
ア 訂正の目的について
訂正事項1は、請求項1を削除するものであるから、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 新規事項の有無
訂正事項1は、請求項1を削除するものであるから、訂正事項1は、願書に最初に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正であって、新規事項を追加するものではない。
よって、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項1は、請求項1を削除するものであるから、訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
(3)訂正事項2についての訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
ア 訂正の目的について
訂正事項2は、訂正前の請求項1を引用する請求項2について、引用関係を解消して独立形式に改めるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する請求項間の引用関係の解消を目的とするものである。
訂正後の請求項2を引用する訂正後の請求項4ないし6についての訂正も同様である。
イ 新規事項の有無
訂正事項2は、訂正前の請求項2を独立形式に改めるための訂正であって、何ら実質的な内容の変更を伴うものではないから、訂正事項2による訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正であって、新規事項を追加するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。
訂正後の請求項2を引用する訂正後の請求項4ないし6についての訂正も同様である。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項2は、訂正前の請求項2を独立形式に改めるための訂正であって、何ら実質的な内容の変更を伴うものではないから、訂正事項2による訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
訂正後の請求項2を引用する訂正後の請求項4ないし6についての訂正も同様である。
(4)訂正事項3についての訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
ア 訂正の目的について
訂正事項3は、
(i)請求項1又は2を引用する訂正前の請求項3を請求項2を引用するものに限定するとともに、引用関係を解消して独立形式に改め、
(ii)訂正前の請求項2に係る発明の発明特定事項である「(A)」の「ポリアミド」(ただし、訂正前請求項2は引用形式であるためそこには直接の記載はなく、引用元である請求項1に記載されている。)である、
「(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、からなるポリアミド、または、
(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、εカプロラクタムからなる単位と、からなるポリアミド」を、
「(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、からなるポリアミド」
に限定するものである。
そして、(i)は、特許請求の範囲の減縮及び請求項間の引用関係の解消を目的とするものであり、(ii)は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する請求項間の引用関係の解消、及び、同第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正後の請求項3を引用する訂正後の請求項4ないし6についての訂正も同様である。
イ 新規事項の有無
訂正後の「(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、からなるポリアミド」は、訂正前の「(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、からなるポリアミド、または、
(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、εカプロラクタムからなる単位と、からなるポリアミド」を前者のみに限定するものであるから、訂正事項3による訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正であって、新規事項を追加するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。
訂正後の請求項3を引用する訂正後の請求項4ないし6についての訂正も同様である。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項3は、(A)のポリアミドの種類を限定するものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
訂正後の請求項3を引用する訂正後の請求項4ないし6についての訂正も同様である。
(5)訂正事項4~6についての訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
ア 訂正の目的について
訂正事項4~6は、訂正事項1に係る訂正に伴って、従属項である請求項が引用する項番号の整合を図るために訂正するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである
訂正後の請求項4を引用する訂正後の請求項5及び6、訂正後の請求項5を引用する訂正後の請求6についての訂正も同様である。
イ 新規事項の有無
訂正事項4~6は、明瞭でない記載の釈明をするものであるから、新規事項の追加に該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合する。
訂正後の請求項4を引用する訂正後の請求項5及び6、訂正後の請求項5を引用する訂正後の請求6についての訂正も同様である。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項4~6は、明瞭でない記載の釈明をするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合する。
訂正後の請求項4を引用する訂正後の請求項5及び6、訂正後の請求項5を引用する訂正後の請求6についての訂正も同様である。
(6)訂正事項7についての訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
ア 訂正の目的について
訂正事項7は、上記訂正事項1~6に係る訂正に伴い訂正される特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るための訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 新規事項の有無
訂正事項7は、上記訂正事項1~6に係る訂正に伴い訂正される特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るための訂正であって、訂正事項1~6が、それぞれ、願書に最初に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正であって、新規事項を追加するものではないことは(1)~(5)で述べた通りであるから、訂正事項7は、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項7は、上記訂正事項1~6に係る訂正に伴い訂正される特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るための訂正であって、訂正事項1~6は、新規事項を追加するものではないから、訂正事項7は、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。
エ 願書に添付した明細書に訂正と関係する請求項についての説明
訂正事項7は、特許請求の範囲に記載した全ての請求項に関係しており、本件訂正では、実質的に全ての請求項について訂正を請求している。
したがって、訂正事項7は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第4項に適合するものである。
(7)まとめ
以上のとおり、本件訂正請求は、特許法第120条の5第4項に規定される一群の請求項ごとにされたものであるし、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであって、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第4項ないし第6項に適合するものであるから、本件訂正を認める。
第3 訂正後の本件発明
本件特許の請求項1ない6に係る発明(それぞれ、「本件発明1」ないし「本件発明6」といい、まとめて「本件発明」ともいう。)は、本件訂正の請求により訂正された特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
削除
【請求項2】
(A):(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、
(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、を、含むポリアミドであって、
当該(A)ポリアミドが、
(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、からなるポリアミド、または、
(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、εカプロラクタムからなる単位と、からなるポリアミドであり、
当該ポリアミド中における全カルボン酸成分中のイソフタル酸成分比率(x)が、0.05≦(x)≦0.5であり、
かつ、下記式(1)で示される(Y)が、0.05≦(Y)≦0.8であるポリアミドを100質量部と、
(Y)=[(EG)-(x)]/[1-(x)] ・・・ (1)
(前記式(1)中、(EG)は、(A)ポリアミド中に含有されている全カルボキシル末端基中のイソフタル酸末端基比率を示し、下記式(2)で示される。
(EG)=イソフタル酸末端基量/全カルボキシル末端基量 ・・・(2))
(B):ガラス繊維及び/又は(C):前記(B)以外の無機充填材を1~300質量部と、
を、含有する携帯電子機器部品用ポリアミド樹脂組成物(但し、(b-1)カルボキシル基、エポキシ基、アミノ基およびアミド基よりなる群から選ばれた少なくとも一種以上の官能基を有する変性ビニル系共重合樹脂、および/または(b-2)酸変性したポリフェニレンエーテル樹脂を含むものを除く。)。
【請求項3】
(A):(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、
(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、を、含むポリアミドであって、
当該(A)ポリアミドが、
(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、からなるポリアミドであり、
当該ポリアミド中における全カルボン酸成分中のイソフタル酸成分比率(x)が、0.05≦(x)≦0.5であり、
かつ、下記式(1)で示される(Y)が、0.05≦(Y)≦0.8であるポリアミドを
100質量部と、
(Y)=[(EG)-(x)]/[1-(x)] ・・・(1)
(前記式(1)中、(EG)は、(A)ポリアミド中に含有されている全カルボキシル末端基中のイソフタル酸末端基比率を示し、下記式(2)で示される。
(EG)=イソフタル酸末端基量/全カルボキシル末端基量 ・・・(2))
(B):ガラス繊維及び/又は(C):前記(B)以外の無機充填材を1~300質量部と、
を、含有し、
前記(B)ガラス繊維は、数平均繊維径が6μm以上20μm以下である、携帯電子機器部品用ポリアミド樹脂組成物(但し、(b-1)カルボキシル基、エポキシ基、アミノ基およびアミド基よりなる群から選ばれた少なくとも一種以上の官能基を有する変性ビニル系共重合樹脂、および/または(b-2)酸変性したポリフェニレンエーテル樹脂を含むものを除く。)。
【請求項4】
前記(C):前記(B)以外の無機充填材が、タルク、マイカ、カオリン、シリカ、ワラストナイト、アルミフレーク及びアルミ粉からなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項2又は3に記載の携帯電子機器部品用ポリアミド樹脂組成物。
【請求項5】
前記(A)ポリアミドが、
(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、からなるポリアミド、または、
(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、εカプロラクタムからなる単位と、からなるポリアミドであり、
前記(A)ポリアミド、前記(B)ガラス繊維、及び前記(C):前記(B)以外の無充填材の合計100質量部に対する(A)ポリアミドの割合が40~67質量部である、請求項2乃至4のいずれか一項に記載の携帯電子機器部品用ポリアミド樹脂組成物。
【請求項6】
請求項2乃至5のいずれか一項に記載の携帯電子機器部品用ポリアミド樹脂組成物を含む携帯電子機器部品。」
以下、「(A):(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、を、含むポリアミドであって、当該(A)ポリアミドが、(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、からなるポリアミド、または、(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、εカプロラクタムからなる単位と、からなるポリアミド」を、「(A)のポリアミド」ともいう。
また、「ポリアミド中における全カルボン酸成分中のイソフタル酸成分比率(x)が、0.05≦(x)≦0.5」を、「(x)の条件」とも、「下記式(1)で示される(Y)が、0.05≦(Y)≦0.8」(合議体注;式(1)は省略する。)を「式(Y)の条件」ともいう。
第4 取消理由の概要
当審において平成29年5月22日付けの取消理由通知書で通知した取消理由の概要は次のとおりである。
1.本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備であるから、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
2.本件特許は、発明の詳細な説明の記載について下記の点で、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
3.(1)本件特許の請求項1、3~6に係る発明は、甲第1号証に記載された発明、及び、甲第3並びに第7号証に示される本件特許出願時の周知技術に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(当業者)が容易に発明をすることができたものであるし、
(2)本件特許の請求項1、3~6に係る発明は、甲第3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるし、
(3)本件特許の請求項1、4~6に係る発明は、甲第5号証に記載された発明、及び、甲第3並びに第7号証に示される本件特許出願時の周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるし、本件特許の請求項3に係る発明は、甲第5号証に記載された発明、甲第3並びに第7号証に示される本件特許出願時の周知技術、及び、甲第1、第8~11号証に示される本件特許出願時の周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
よって、本件特許の請求項1、3~6に係る発明は、いずれも、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1、3~6に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
甲第1号証:特開2007-182071号公報
甲第2号証:申立人従業員高村元が平成29年2月14日付けで作成した「実験報告書」
甲第3号証:特開2010-37372号公報
甲第4号証:申立人従業員高村元が平成29年2月14日付けで作成した「実験報告書」
甲第5号証:特開2008-111064号公報
甲第6号証:申立人従業員高村元が平成29年2月14日付けで作成した「実験報告書」
甲第7号証:東京マーケティング本部 第3事業部 調査・編集 「2008年エンプラ市場の展望とグローバル戦略」(株)富士経済(2008年5月23日発行)、第77~82頁
甲第8号証:特開2010-16151号公報
甲第9号証:特開2007-50630号公報
甲第10号証:特開2009-298144号公報
甲第11号証:特開2008-106265
(以下、それぞれ「甲1」~「甲11」という。)
第5 当審の判断
第5-1 取消理由1(特許法第36条第6項第1号)について
(1)本件発明が解決しようとする課題について
本件訂正後の特許明細書(以下、「本件特許明細書」という。)の発明の詳細な説明の【0007】~【0011】によれば、本件発明2~5が解決しようとする課題は、「過酷な成形条件下において成形した場合においても、成形品の表面外観の安定性が良好で、耐衝撃特性に優れ、かつ塗装した成形品表面の光沢性が優れた(色目変化が少ない)携帯電子機器部品を与えるポリアミド樹脂組成物を提供すること」であると認められるし、本件特許発明6が解決しようとする課題は、「過酷な成形条件下において成形した場合においても、成形品の表面外観の安定性が良好で、耐衝撃特性に優れ、かつ塗装した成形品表面の光沢性が優れた(色目変化が少ない)、ポリアミド樹脂組成物を含む携帯電子機器部品を提供すること」であると認められる。(以下、「本件発明2~6が解決しようとする課題」をまとめて、「本件発明の課題」ともいう。)
(2)取消理由1の概略
訂正前の本件発明1ないし6に対して通知された取消理由1は、具体的には、概略以下のとおりである。
本件特許明細書の発明の詳細な説明からは、当業者は、本件発明1ないし5の「携帯電子機器部品用ポリアミド樹脂組成物」、あるいは、本件発明6の該ポリアミド樹脂組成物を含む「携帯電子機器部品」におけるポリアミドが、「式(Y)の条件」が-0.3≦(Y)<0.05の範囲の場合についてまで、過酷な成形条件下において成形した場合においても、成形品の表面外観の安定性が良好で、耐衝撃特性に優れ、かつ塗装した成形品表面の光沢性が優れた(色目変化が少ない)携帯電子機器部品を与えることができることは理解できない。
本件特許明細書の【0020】には、「(Y)は、全カルボキシル末端基において、イソフタル酸末端基がどれだけ選択的に存在しているかを表す指標」であることは記載されるが、そのことから、「式(Y)の条件」が-0.3≦(Y)<0.05の範囲にあるポリアミドが、訂正前の本件発明の課題を解決できることを当業者に認識できるとはいえないし、その点が、本件特許の出願時の技術常識であるともいえない。
してみると、「式(Y)の条件」として、-0.3≦(Y)<0.05の範囲を包含する訂正前の本件発明1、3ないし6は、本件特許明細書の発明の詳細な説明において、上記本件発明の課題を解決できることを当業者が認識できる範囲を超えて、特許を請求するものである。
(3)取消理由1についての判断
訂正後の本件発明2ないし6においては、携帯電子機器部品用ポリアミド樹脂組成物を構成するポリアミドが、「式(Y)の条件」が「0.05≦(Y)≦0.8」であることが特定されている。
そして、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、(Y)が「全カルボキシル末端基において、イソフタル酸末端基がどれだけ選択的に存在しているかを表す指標」であることが記載されており(【0020】)、また、携帯電子機器部品の製造に使用されるポリアミド樹脂組成物を構成するポリアミドが、「(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、からなるポリアミド」(実施例1~15)または「(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、εカプロラクタムからなる単位と、からなるポリアミド」(実施例16)であって、かつ、(Y)が0.15~0.57の範囲内のものが、過酷な成形条件下において成形した場合においても、成形品の表面外観の安定性が良好で、耐衝撃特性に優れ、かつ塗装した成形品表面の光沢性が優れた(色目変化が少ない)携帯電子機器部品を与えることができることが具体的に示されている。
そうすると、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載から、当業者は、0.05≦(Y)≦0.8の範囲にあるポリアミドが、本件発明の課題を解決できることを認識できるといえる。
よって、本件発明2ないし6は、本件特許明細書の発明の詳細な説明において、本件発明の課題が解決されると当業者が認識できる範囲内のものであるといえ、本件発明2ないし6は、発明の詳細な説明に記載したものといえる。
(4)小括
以上のとおりであるから、本件発明1ないし6に係る本件特許について、取消理由1によって取り消すことはできない。
第5-2 取消理由2(特許法第36条第4項第1号)について
(1)取消理由2の概略
訂正前の本件発明1ないし6に対して通知された取消理由2は、具体的には、概略以下のとおりである。
本件特許明細書の発明の詳細な説明には、「(EG)=イソフタル酸末端基量/全カルボキシル末端基量」で定義される(EG)の値の具体的な調整方法については記載されていないし、その調整方法が、本件特許出願時、当業者に技術常識として知られていたともいえない。
そうすると、発明の詳細な説明の記載からは、当業者は、(EG)の値に基づいて「(Y)=[(EG)-(x)]/[1-(x)]」((x)はポリアミド中における全カルボン酸成分中のイソフタル酸成分比率)の式により算出されるものとして定義される(Y)の値の調整方法について、理解できないし、それが本件特許出願時の技術常識として知られていたともいえない。
そうすると、本件発明1ないし6に特定されるポリアミドのうち実施例で具体的に製造された特定のポリアミド以外のものについては、どのようにすれば本件発明1ないし6で特定される、「-0.3≦(Y)≦0.8」を満たすポリアミドを製造できるのかを、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載から当業者が理解できるとはいえない。
よって、発明の詳細な説明は、本件発明1ないし6を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されていない。
(2)取消理由2についての判断
訂正後の本件発明2ないし6では、「(A)ポリアミド」が、「(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、からなるポリアミド、または、(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、εカプロラクタムからなる単位と、からなるポリアミド」(本件発明2及びこれを引用する本件発明4ないし6)、「(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、からなるポリアミド」(本件発明3及びこれを引用する本件発明4ないし6)に訂正されたところ、
本件発明2ないし6では、この特定の組成からなる「(A)ポリアミド」であって、かつ、
「下記式(1)で示される(Y)が、0.05≦(Y)≦0.8である(A)ポリアミド
(Y)=[(EG)-(x)]/[1-(x)] ・・・(1)
(前記式(1)中、(EG)は、(A)ポリアミド中に含有されている全カルボキシル末端基中のイソフタル酸末端基比率を示し、下記式(2)で示される。
(EG)=イソフタル酸末端基量/全カルボキシル末端基量 ・・・(2))」
であるポリアミドが発明特定事項となっている。
(なお、(1)の式中の(x)は、「ポリアミド中における全カルボン酸成分中のイソフタル酸成分比率」と定義されている。)
そこで、本件特許の出願時の技術常識を参酌して、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載から、当業者が、本件発明2ないし6で特定される上記特定の組成からなる「(A)ポリアミド」であって「0.05≦(Y)≦0.8」の範囲を満たすもの全体について製造でき、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は、当業者が本件発明2ないし6を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものであるといえるかについて検討する。
本件特許明細書の発明の詳細な説明には、以下の記載がある。(下線は、当審で付した。)
「【0020】
前記式(1)において、(Y)は、全カルボキシル末端基において、イソフタル酸末端基がどれだけ選択的に存在しているかを表す指標である(以下、「ブロック化比率(Y)」とも表記する。)。
【0021】
(A)ポリアミド中における、全カルボン酸成分中のイソフタル酸成分比率(x)と、(A)ポリアミド中に含有されている全カルボキシル末端基中のイソフタル酸末端基比率(EG)には相関性があり、すなわちブロック化比率(Y)は、ポリアミド66/6I中の6I鎖単位が理論値(x=EG)に対して、どれだけブロック化に移行、すなわちどれだけポリアミド中の6I鎖単位の比率が高くなっており、イソフタル酸末端基比率が高くなっているかを示す指標でもある。
【0022】
従って、前記式(1)の分母[1-(x)]は、(A)ポリアミド中における全カルボン酸成分中のイソフタル酸末端基以外の末端基比率であり、前記式(1)の分子[(EG)-(x)]は、理論上のイソフタル酸末端基比率(=イソフタル酸成分比率)との差分イソフタル酸末端基比率、すなわち実際のイソフタル酸末端基比率と理論上のイソフタル酸末端基比率との差分となるため、前記式(1)により、ブロック化比率の指標である(Y)を求めることができる。・・・
【0023】
本実施形態に用いるポリアミド樹脂組成物を構成する(A)ポリアミドにおいて、前記ブロック化比率(Y)は-0.3≦(Y)≦0.8であり、好ましくは0.05≦(Y)≦0.8であり、より好ましくは0.05≦(Y)≦0.7であり、さらに好ましくは0.1≦(Y)≦0.6の範囲である。
イソフタル酸成分比率(x)を上記範囲内とし、かつ前記(Y)の範囲を-0.3≦(Y)≦0.8とすることにより、本実施形態に用いるポリアミド樹脂組成物は、過酷な成形条件下における成形品の表面外観の安定性、耐衝撃特性が優れ、塗装した成形品の表面の光沢性が優れた(色目変化が少ない)ものとなる。」
「【0038】
((A)ポリアミドの製造方法)
・・・
ポリアミドの製造方法としては、例えば、アジピン酸、イソフタル酸、ヘキサメチレンジアミン、及び必要に応じてその他の成分の混合物の水溶液、又は水の懸濁液を加熱し、溶融状態を維持したまま重合させる方法(熱溶融重合法);熱溶融重合法で得られたポリアミドを融点以下の温度で固体状態を維持したまま重合度を上昇させる方法(熱溶融重合・固相重合法);アジピン酸、イソフタル酸、ヘキサメチレンジアミン、及び必要に応じてその他の成分の混合物の水溶液、又は水の懸濁液を加熱し、析出したプレポリマーをさらにニーダー等の押出機で再び溶融させて重合度を上昇させる方法(プレポリマー・押出重合法);アジピン酸、イソフタル酸、ヘキサメチレンジアミン、及び必要に応じてその他の成分の混合物、固体塩又は重縮合物を、固体状態を維持したまま重合(固相重合法)させる方法等が挙げられる。
全カルボン酸成分中のイソフタル酸成分比率(x)を上記数値範囲内に制御するための方法としては、原料の仕込み量の調整、重合条件の調整が有効である。
上記式(1)におけるブロック化比率の指標となる(Y)を上記数値範囲内に制御するためには、イソフタル酸成分のブロック化を制御することが必要である。具体的には、重合系内で、溶融状態を維持しながら、圧力を適宜調整し、重合温度を好ましくは100℃以上、より好ましくは120℃以上、さらに好ましくは170℃以上としながら、均一混合下において重縮合反応を進め、最終重合内部温度が好ましくは250℃以上、より好ましくは260℃以上になるような条件下で重合させる熱溶融重合法を用いることにより制御することができる。
【0039】
重合形態としては、特に限定されず・・・。
また、重合装置も特に限定されず・・・。
【0040】
上述したように、(Y)が-0.3≦(Y)≦0.8の範囲となるようにするには、熱溶融重合法によりポリアミドを作製することが好ましく、バッチ式の熱溶融重合法によりポリアミドを作製することがより好ましい。
バッチ式の熱溶融重合法の一例について以下に説明する。
重合温度条件については特に限定されないが、好ましくは100℃以上、より好ましくは120℃以上、さらに好ましくは170℃以上である。
例えば、アジピン酸、イソフタル酸、及びヘキサメチレンジアミンとの混合物、固体塩又は水溶液を110~200℃の温度下で攪拌し、約60~90%まで水蒸気を徐々に抜いて加熱濃縮する。
その後、内部圧力を約1.5~5.0MPa(ゲージ圧)になるまで加熱を続ける。
その後、水及び/又はガス成分を除きながら、圧力を約1.5~5.0MPa(ゲージ圧)に保ち、内部温度が好ましくは240℃以上、より好ましくは245℃以上に達した時点で、水及び/又はガス成分を除きながら圧力を徐々に抜き、最終内部温度が好ましくは250℃以上、より好ましくは260℃以上になるように、常圧で又は減圧して重縮合を行う熱溶融重合法を用いることができる。
さらには、アジピン酸、イソフタル酸、及びヘキサメチレンジアミンとの混合物、固体塩又は重縮合物を融点以下の温度で熱重縮合させる固相重合法等も用いることができる。これらの方法は必要に応じて組み合わせてもよい。
・・・
【0042】
本実施形態のポリアミド樹脂組成物を構成する(A)ポリアミド(ポリアミド共重合体を含む、以下同じ。)の製造においては、所定の触媒を用いることが好ましい。
触媒としては、ポリアミドに用いられる公知のものであれば特に限定されず・・・」
また、本件特許明細書には、具体例として、【0070】~【0086】に、製造例1~17としてポリアミド(A1)~(A17)の製造例が記載され、【0089】~【0097】に、実施例1~16、比較例1~9、それらの結果を示す以下の表1及び表2が記載され、【0098】に、実施例1~16のポリアミド樹脂組成物成形品は、比較例の成形品とは異なり、優れた外観安定性、衝撃特性、塗装面の光沢性を有することが確認された旨の記載がある。
「表1
」
「表2
」
これらの本件特許明細書の記載によれば、「0.05≦(Y)≦0.8」を満たす「(A)のポリアミド」に関し、本件特許明細書の【0022】に、「式(1)の分母[1-(x)]は、(A)ポリアミド中における全カルボン酸成分中のイソフタル酸末端基以外の末端基比率であり、上記式(1)の分子[(EG)-(x)]は、理論上のイソフタル酸末端基比率(=イソフタル酸成分比率)との差分イソフタル酸末端基比率、すなわち実際のイソフタル酸末端基比率(EG)と理論上のイソフタル酸末端基比率(x)との差分となるため、上記式(1)によりブロック化比率の指標である(Y)を求めることができる」と記載されているから、「(Y)」は、「(x)」と、「(EG)」が決まれば、一義的に定まる値であると言える。
そして、「(x)」については、【0038】に、「全カルボン酸成分中のイソフタル酸成分比率(x)を上記数値範囲内に制御するための方法としては、原料の仕込み量の調整、重合条件の調整が有効である。」と記載されているし、本件特許明細書の表1の実施例1~4等からもその点が読み取れるから、本件特許明細書の記載からは、カルボン酸成分原料中のイソフタル酸成分の仕込み量を高めることで、全カルボン酸成分中のイソフタル酸成分比率(x)を高めた(A)のポリアミドを製造できることが理解できる。
ここで、明細書の【0020】には、「(Y)は、全カルボキシル末端基において、イソフタル酸末端基がどれだけ選択的に存在しているかを表す指標(以下、「ブロック化比率(Y)」とも表記する。)」であると記載されており、また、【0038】~【0042】には、「(Y)の制御方法」に関し、「(Y)を上記数値範囲内に制御するためには、イソフタル酸成分のブロック化を制御することが必要」(【0038】)であり、より具体的には、重合系内で、アジピン酸、イソフタル酸、及びヘキサメチレンジアミンとの混合物、固体塩又は水溶液を110~200℃の温度下で攪拌し、約60~90%まで水蒸気を徐々に抜いて加熱濃縮し、その後、内部圧力を約1.5~5.0MPa(ゲージ圧)になるまで加熱を続け、その後、水及び/又はガス成分を除きながら、圧力を約1.5~5.0MPa(ゲージ圧)に保ち、内部温度が好ましくは240℃以上に達した時点で、水及び/又はガス成分を除きながら圧力を徐々に抜き、最終内部温度が好ましくは250℃以上になるように、常圧で又は減圧して重縮合を行う熱溶融重合法を用いることにより製造できる旨の記載がされている(【0040】;以下、【0040】に記載の製造方法を「段落0040の製造方法」という。)。
そして、本件特許明細書には、具体的な実験例として、「(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、からなるポリアミド、または、(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、εカプロラクタムからなる単位と、からなるポリアミド」であって、上記「段落0041の製造方法」に合致する製造例1~9の重合方法によって、(Y)の値が、0.15~0.57の範囲のポリアミドA1~A9が得られたことが具体的に記載されており(実施例1~16)、一方、「段落0041の製造方法」に合致しない製造例12~14の重合方法によって得られたポリアミドA12~14では、本件発明の(Y)の範囲を満たさないことが確認されている(比較例4~6)。
また、(Y)の値を算出するための(EG)は、「イソフタル酸末端基量/全カルボキシル末端基量」であり、ポリアミド共重合体の末端の調整により変化する値であるといえるところ、ポリアミド共重合体の末端調整のための方法として、末端調整剤の存在下でモノマーを重合させることは周知慣用技術である(例えば、特開2006-124669号公報(特許権者の意見書に添付された参考文献1)の【0035】、【0037】、【0039】、特開2002-194210号公報(同参考文献2)の【0022】、特開平11-92657号公報(同参考文献3)の【0009】、【0010】、特開平3-76755号公報(同参考文献4)の3頁右下欄9~15行、特開2011-219635号公報(同参考文献5)の【0019】、【0020】)し、その際、末端調整剤としてアジピン酸を用いることも周知慣用技術といえる(例えば、参考文献1の【0039】、参考文献3の【0010】、参考文献5の【0020】)。
そして、参考文献2の【0022】の「末端調整剤として…二塩基酸を用いるとアミノ末端基が減少するとともにカルボキシル末端基が増大する。」との記載から、末端調整剤として、ジカルボン酸を用いるとアミノ末端基が減少するとともにカルボキシル末端基が増大することが、本件特許の出願時の技術常識と理解でき、これに加え、本件特許明細書の【表1】から、過剰にアジピン酸を添加して重合した製造例1のポリアミド(A1)(実施例3)と過剰のアジピン酸を添加せずに重合した製造例5のポリアミド(A5)(実施例12)との対比や、過剰にアジピン酸を添加して重合した製造例2のポリアミド(A2)(実施例4)と過剰のアジピン酸を添加せずに重合した製造例6のポリアミド(A6)(実施例13)との対比から、アジピン酸を過剰に用いると、(x)の値が同じ場合であっても、(EG)を減少させ、(Y)の値を減少させることが可能であることが理解できる。
そうすると、末端調整剤としてアジピン酸を用いることが周知慣用技術であるとの本件特許出願時の技術常識に照らせば、「段落0040の製造方法」についての説明の記載、及び、過剰のアジピン酸の添加条件を変化させて得られた、(Y)の値が、0.15~0.57の範囲のポリアミドA1~A9の具体的な製造例の記載をあわせみた当業者であれば、「0.05≦(Y)≦0.8」を満たす、上記特定の組成からなる(A)のポリアミドを、過度の試行錯誤を伴わずに製造できるといえる。
よって、本件特許の出願時の技術常識を参酌して、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載から、当業者は、本件発明2ないし6で特定される上記特定の組成からなる「(A)ポリアミド」であって、「0.05≦(Y)≦0.8」の範囲を満たすものについて過度の試行錯誤を伴わずに製造できるといえる。
よって、本件特許明細書の発明の詳細な説明は、当業者が本件発明2ないし6を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものといえる。
(3)小括
以上のとおりであるから、本件発明1ないし6に係る本件特許について、取消理由2によって取り消すことはできない。
第5-3 取消理由3(特許法第29条第2項)について
第5-3-1 甲1に記載された発明に基づく特許法第29条第1項
1.甲1の記載等
(1)甲1の記載
甲1には、以下の記載がある。なお、下線は、合議体が付した。
「【請求項2】
アンモニア、ヒドラジン、及び水溶性アミン化合物から選択される1種以上の水溶液に浸漬する工程を経て電子顕微鏡観察で数平均内径10~80nmの凹部で表面が覆われたアルミニウム合金部品と、 前記アルミニウム合金部品の前記表面に射出成形で固着され、脂肪族ポリアミド樹脂と芳香族ポリアミド樹脂が単純混合されたもの、及び/又は、前記脂肪族ポリアミド樹脂と前記芳香族ポリアミド樹脂が分子的に結合されたものが主な樹脂分組成である熱可塑性合成樹脂組成物部品と
からなる金属樹脂複合体。
・・・
【請求項9】
請求項1~8から選択される1項に記載の金属樹脂複合体において、
前記熱可塑性合成樹脂組成物が、樹脂分組成100質量部に対して充填材1~200質量部が含まれていることを特徴とする金属樹脂複合体。
【請求項10】
請求項9に記載の金属樹脂複合体において、
前記充填材が、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、シリカ、タルク、粘土、及びガラス粉から選ばれる1種以上の充填材であることを特徴とする金属樹脂複合体。」
「【0001】
本発明は、電子機器の筐体、家電機器の筐体、構造用部品、機械部品等に用いられるアルミニウム合金と高強度樹脂の複合体とその製造方法に関する。更に詳しくは、各種機械加工で作られた軽金属合金形状物と熱可塑性合成樹脂を一体化した構造物に関し、各種電子機器、家電製品、医療機器、車両用構造部品、車両搭載用品、建築資材の部品、その他の構造用部品、外装用部品等に用いられる軽金属合金と樹脂の複合体とその製造方法に関する。」
「【0072】
この充填剤としては繊維状充填剤、粒状充填剤、板状充填剤等の充填剤を挙げることができ、該繊維状充填剤としては、例えばガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維等が挙げられ、ガラス繊維の具体的な例示としては、平均繊維径が6~14μmのチョップドストランド等が挙げられる。また、該板状、粒状充填剤としては、例えば炭酸カルシウム、マイカ、ガラスフレーク、ガラスバルーン、炭酸マグネシウム、シリカ、タルク、粘土、炭素繊維やアラミド繊維の粉砕物等が挙げられる。」
「【0079】
以下、本発明の実施例を実験例に代えて詳記する。実施例で使用した共重合ポリアミド(ブロックポリマー)の製造法と粘度数の測定方法は以下のとおりである。
〔参考例1 共重合ポリアミド(ブロックポリマー)の製造方法〕
それぞれの共重合ポリアミドの原料となるジアミンと酸の等モル塩などの原料をそれぞれの質量比で反応器に投入し、投入した樹脂分全量と同量の純水を加え、重合缶内をN2で置換した後、攪拌しながら加熱を開始し、缶内圧力を最大20kg/cm2に調整しながら最終到達温度を270℃とし反応させた。水浴中に吐出したポリマーをストランドカッターでペレタイズした。得られたペレットは95℃熱水中で20時間処理し、未反応モノマーや低重合物を抽出除去した。抽出後のペレットは80℃で50時間以上乾燥した。
〔参考例2 粘度数の測定方法〕
ISO307標準方法に従って96%硫酸での粘度数測定を行った。」(段落【0079】)
「【0080】
[実施例1]
市販の1.6mm厚のA5052アルミニウム合金板を購入した。・・・18mm×45mmの長方形片多数に切断した。このアルミ合金片の端部に直径2mmφの穴をプレス機で開けた。・・・脱脂材水溶液に5分浸漬し、水洗した。続いて別の槽に1%濃度の塩酸水溶液を用意し・・・浸漬し水洗した。
【0081】
続いて別の槽に1%苛性ソーダ水溶液を用意し・・・浸漬し水洗した。続いて別の槽に1%塩酸水溶液を用意し、・・・浸漬し推薦した。続いて3.5%量の一水和ヒドラジン水溶液・・・中に先ほどの合金片を1分間浸漬し、水洗し・・・乾燥した。・・・翌日、電子顕微鏡「S-4800(日本国東京都、株式会社日立製作所製)」で、10万倍率で観察したところ20~40nm径、数平均内径で25nmの凹部で表面全面が覆われていることを確認した。
【0082】
一方、アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからナイロン66成分として77質量%、イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとから6Iナイロン成分として17質量%、ナイロン6成分として6質量%から成るブロックポリマーを参考例1の方法で合成した。得られた合成樹脂の参考例2記載の方法で測定した粘度数は85ml/gであり、溶融粘度は、フローテスター「CFT-500(日本国京都府、株式会社島津製作所製)にての温度270℃、荷重98.1N(10kgf)の条件下にて380ポイズであった。二軸押出機「TEM-35B(東芝機械株式会社製)」にて、ガラス繊維「RES03-TP91(日本板硝子株式会社製)」をサイドフィーダーから添加量が50質量%となるように供給しながら、シリンダー温度280℃で溶融混練してペレット化したポリアミド系樹脂組成物を得た。
【0083】
アルミニウム合金片を保管して2日後、合金片を取り出し、油分等が付着せぬよう手袋で摘まんで射出成形金型にインサートした。射出成形金型の構造図を図1に示したが、図内で1はアルミニウム合金片、2は可動側型板、3は固定側型板、4は樹脂が射出されるキャビティー部、5はピンポイントゲート、6は接合面を示した。射出接合が為されると図2で示す一体化物が得られる。図2で1はアルミニウム合金片(1.6mm×45.0mm×18.0mm)、4は樹脂部(3mm×50mm×10mm)、5はピンポイントゲート、6は接合面(5mm×10mm)である。接合面の面積は0.5cm2であった。金型を閉め、ガラス繊維50%含有の前記ナイロン系樹脂組成物を射出し、図2で示す一体化品を得た。」
(2)甲1-1発明及び甲1-2発明
上記(1)の、特に、実施例1(【0080】~【0083】)の記載によれば、甲1には、次の2つの発明が記載されていると認められる。
<甲1-1発明>
「アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからナイロン66成分として77質量%、イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとから6Iナイロン成分として17質量%、ナイロン6成分として6質量%からなる、ISO307標準方法に従った96%硫酸での粘度数が85ml/gで、フローテスター「CFT-500(株式会社島津製作所製)」にての温度270℃、荷重98.1N(10kgf)の条件下での溶融粘度が380ポイズのブロックポリマーである共重合ポリアミドと、添加量が50質量%のガラス繊維「RES03-TP91(日本板硝子株式会社製)」とからなる部品用ポリアミド系樹脂組成物。」
<甲1-2発明>
「アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからナイロン66成分として77質量%、イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとから6Iナイロン成分として17質量%、ナイロン6成分として6質量%からなる、ISO307標準方法に従った96%硫酸での粘度数が85ml/gで、フローテスター「CFT-500(株式会社島津製作所製)」にての温度270℃、荷重98.1N(10kgf)の条件下での溶融粘度が380ポイズのブロックポリマーである共重合ポリアミドと、添加量が50質量%のガラス繊維「RES03-TP91(日本板硝子株式会社製)」とからなるポリアミド系樹脂組成物からの部品。」
なお、甲1-1発明及び甲1-2発明において、「CFT-500(株式会社島津製作所製)」とあるのは、原文では、後ろのカギ括弧はないが、明らかに記載漏れであるので、合議体が加入した。
2.対比及び判断
(1)本件発明2
ア 対比
本件発明2と甲1-1発明を対比する。
甲1-1発明における「アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからナイロン66成分として77質量%、イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとから6Iナイロン成分として17質量%、ナイロン6成分として6質量%からなる、ISO307標準方法に従った96%硫酸での粘度数が85ml/gで、フローテスター「CFT-500(株式会社島津製作所製)」にての温度270℃、荷重98.1N(10kgf)の条件下での溶融粘度が380ポイズのブロックポリマーである共重合ポリアミド」は、本件発明2における「(A):(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、 (b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、を、含むポリアミド」であって、「当該(A)ポリアミドが、 (a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、からなるポリアミド、または、 (a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、εカプロラクタムからなる単位と、からなるポリアミド」が、「(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、εカプロラクタムからなる単位と、からなるポリアミド」である場合に相当する。
甲1-1発明における「ガラス繊維「RES03-TP91(日本板硝子株式会社製)」は、本件発明2の「無機充填材」に相当する。
そして、甲1-1発明のポリアミド系樹脂組成物は、本件発明2において「除く」とされている、「(b-1)カルボキシル基、エポキシ基、アミノ基およびアミド基よりなる群から選ばれた少なくとも一種以上の官能基を有する変性ビニル系共重合樹脂、および/または(b-2)酸変性したポリフェニレンエーテル樹脂」は含まれていない。
したがって、本件発明2と甲1-1発明は、
「(A):(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、
(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、を、含むポリアミドであって、
当該(A)ポリアミドが、
(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、からなるポリアミド、または、
(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、εカプロラクタムからなる単位と、からなるポリアミドと、
無機充填材と、
を、含有する部品用ポリアミド樹脂組成物(但し、(b-1)カルボキシル基、エポキシ基、アミノ基およびアミド基よりなる群から選ばれた少なくとも一種以上の官能基を有する変性ビニル系共重合樹脂、および/または(b-2)酸変性したポリフェニレンエーテル樹脂を含むものを除く。)」
で一致し、
以下の点で相違している。
<相違点1>
(A)のポリアミドについて、本件発明2では、「ポリアミド中における全カルボン酸成分中のイソフタル酸成分比率(x)が、0.05≦(x)≦0.5であり、
かつ、下記式(1)で示される(Y)が、0.05≦(Y)≦0.8である(A)ポリアミドと、
(Y)=[(EG)-(x)]/[1-(x)] ・・・(1)
(前記式(1)中、(EG)は、(A)ポリアミド中に含有されている全カルボキシル末端基中のイソフタル酸末端基比率を示し、下記式(2)で示される。
(EG)=イソフタル酸末端基量/全カルボキシル末端基量 ・・・(2))」を満たすものであることが特定されている(つまり、第3で記載した「(x)の条件」及び「式(Y)条件」を満たすものであることが特定されている)のに対して、甲1-1発明では、かかる特定はなされておらず、(A)のポリアミドが、「(x)の条件」及び「式(Y)条件」を満たすものであるかは不明である点。
<相違点2>
本件発明2においては、無機充填材が「(B):ガラス繊維及び/又は(C):前記(B)以外の無機充填材」と特定され、また、その配合量について、(A)のポリアミド「100質量部」に対して、無機充填材「1~300質量部」と特定されているのに対し、甲1-1発明では、無機充填材が「ガラス繊維「RES03-TP91(日本板硝子株式会社製)」であり、その添加量について、「50質量%」と特定されている点。
<相違点3>
ポリアミド樹脂組成物の用途に関し、本件発明2では、「携帯電子機器部品用」と特定されているのに対し、甲1-1発明では、単に「部品用」と特定されるのみであり、「携帯電子機器」用の「部品」であることの特定はされていない点。
イ 判断
相違点1について検討する。
申立人従業員高村元が平成29年2月14日付けで作成した甲2である「実験報告書」の表2によれば、甲1-1発明のポリアミド樹脂組成物に含まれる共重合ポリアミドが、(x)及び(Y)の数値が0.18及び-0.2であることは明らかであるが、これは本件発明2における「(x)の条件」及び「式(Y)の条件」を満たしていない。
また、甲1に記載された発明が解決しようとする課題は、甲1の特許請求の範囲の記載及び【0007】の記載からみて、「アルミニウム合金と主成分がポリアミド樹脂の熱可塑性合成樹脂組成物との接合強度を強くした、アルミ合金と樹脂の複合体及びその製造方法を提供すること」、及び、「アルミニウム合金と主成分がポリアミド樹脂の熱可塑性合成樹脂組成物との接合するときに生産性が高い、アルミ合金と樹脂の複合体及びその製造方法を提供すること」であるが、甲1には、当該課題との関係において、ポリアミド樹脂を、「(x)の条件」及び「式(Y)の条件」を備えたものとすることについては記載されていないし、「(x)の条件」及び「式(Y)の条件」において特定される(x)や(Y)の値、(Y)の値の算出のために使用される(EG)の値自体についての記載もない。
そうすると、甲1の記載からは、甲1-1発明において、部品用ポリアミド系樹脂組成物を構成するポリアミドを、「(x)の条件」及び「式(Y)の条件」を備えたものとすることは、動機付けられない。
一方、本件特許明細書の表1及び2の実施例及び比較例の記載によれば、本件発明2のように、ポリアミドとして、「(x)の条件」及び「式(Y)の条件」を備えた部品用ポリアミド系樹脂組成物とすることで、この範囲外のポリアミドを使用する場合に比べて、本件特許明細書の【0067】で定義されるハイサイクル成形(低温金型を外観安定性使用した高温成形)の外観安定性(これは、外観安定性=(20~30ショットISO試験片のグロス平均値)-(90~100ショットISO試験片のグロス平均値)で表される。)が優れたものとなることが理解でき、この点の効果は、甲1には記載も示唆もなく、甲1の記載からは当業者が予期し得ない効果である。
そうすると、甲1-1発明から、相違点1に係る構成を備えた本件発明2とすることが当業者にとって容易であるとはいえない。
以上のとおりであるから、相違点2及び3について検討するまでもなく、本件発明2について、甲1-1発明から当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
なお、相違点1に係る本件発明2の構成を備えたポリアミドとする点については、取消理由通知において、相違点3に関する周知技術として指摘した甲3及び甲7にも記載も示唆もされていない。
(2)本件発明3
(1)アにおける検討を踏まえて本件発明3と甲1-1発明とを対比すると、両者は、
「(A):(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、
(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、を、含むポリアミドと、
無機充填材と、
を、含有する部品用ポリアミド樹脂組成物(但し、(b-1)カルボキシル基、エポキシ基、アミノ基およびアミド基よりなる群から選ばれた少なくとも一種以上の官能基を有する変性ビニル系共重合樹脂、および/または(b-2)酸変性したポリフェニレンエーテル樹脂を含むものを除く。)」
で一致し、
(1)で記載した相違点1~3に加え、以下の相違点4及び5で相違している。
<相違点4>
「(A):(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、を、含むポリアミド」が、本件発明3では、「(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、からなる」ポリアミドであるのに対して、甲1-1発明では、「アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからナイロン66成分として77質量%、イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとから6Iナイロン成分として17質量%、ナイロン6成分として6質量%からなる」ものである点。
<相違点5>
「(B)ガラス繊維」について、本件発明3では「数平均繊維径が6μm以上20μm以下」と特定されているのに対し、甲1-1発明では、ガラス繊維である「RES03-TP91(日本板硝子株式会社製)」の数平均繊維径が不明である点。
そして、(1)イで検討したとおり、甲1-1発明から、相違点1に係る構成を備えたものとすることは当業者にとって容易であるとはいえない。
そうすると、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明3について、甲1-1発明から当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
なお、甲8~10には、甲1-1発明の「RES03-TP91(日本板硝子株式会社製)」の平均繊維径が9μmであることが記載されているのみで、相違点1に係る本件発明2の構成を備えたポリアミドとする点については記載も示唆もされていない。
(4)本件発明4及び5
本件発明4及び5は、本件発明2及び3を直接的又は間接的に引用するものであって、本件発明2及び3における相違点1にかかる構成(「(x)の条件」及び「式(Y)の条件」)をその発明特定事項として備えるものである。
そうすると、本件発明4及び5は、本件発明2及び3と同様に判断され、本件発明4及び5は、甲3、7に示される本件特許出願時の周知技術を考慮しても、甲1-1発明から当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(5)本件発明6
(1)アでの対比を踏まえて本件発明6と甲1-2発明を対比すると、両者は、
「下記のポリアミド樹脂組成物を含む部品。
(A):(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、
(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、を、含むポリアミドであって、
当該(A)ポリアミドが、
(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、からなるポリアミド、または、
(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、εカプロラクタムからなる単位と、からなるポリアミドと、
(B):ガラス繊維及び/又は(C):前記(B)以外の無機充填材と、
を、含有する部品用ポリアミド樹脂組成物(但し、(b-1)カルボキシル基、エポキシ基、アミノ基およびアミド基よりなる群から選ばれた少なくとも一種以上の官能基を有する変性ビニル系共重合樹脂、および/または(b-2)酸変性したポリフェニレンエーテル樹脂を含むものを除く。)」
で一致し、
(1)で記載した相違点1、2及び次の相違点6で相違する。
<相違点6>
ポリアミド樹脂組成物を含む部品が、本件発明6では、「携帯電子機器部品」と特定されているのに対し、甲1-2発明では、単に「部品」と特定されるのみであり、「携帯電子機器」用の「部品」であるとの特定はされていない点。
そして、相違点1については、(1)イで記載したと同様の理由によって、甲1-1発明を相違点1に係る構成を備えたものとすることは当業者にとって容易であるとはいえない。
そうすると、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明6について、甲1-1発明から当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
3.小括
以上のとおり、本件発明2ないし6について、甲1に記載された発明、及び、甲3、7に示される本件特許出願時の周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。
第5-3-2 甲3に記載された発明に基づく特許法第29条第2項
1.甲3の記載等
(1)甲3の記載
甲3には、以下の記載がある。なお、下線は、合議体が付した。
「【請求項1】
(A)ポリアミド樹脂100重量部に対して、(B)ホスフィン酸塩および/またはジホスフィン酸塩7~25重量部、(C)メラミンとリン酸から形成される付加物7~25重量部、(D)ホウ酸亜鉛0.8~5.5重量部、(E)無機充填剤15~250重量部、(F)重量平均粒径が5μm以下のタルク0.02~1重量部を配合してなることを特徴とするポリアミド樹脂組成物。
・・・
【請求項3】
(a-1)半芳香族共重合ポリアミド樹脂が、(a1-1)ヘキサメチレンアジパミド単位65~90重量%、(a1-2)ヘキサメチレンイソフタラミド単位5~30重量%および(a1-3)カプロアミド単位1~14重量%の合計100重量%からなり、(a1-2)/(a1-3)の共重合重量比1以上を同時に満たす3元共重合体(ポリアミド66/6I/6)であることを特徴とする請求項2記載のポリアミド樹脂組成物。
・・・
【請求項5】
(E)無機充填剤がガラス繊維、炭素繊維、およびワラステナイトから選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする請求項1から4のいずれか記載のポリアミド樹脂組成物。
・・・
【請求項8】
請求項1から7いずれか記載のポリアミド樹脂組成物を、射出成形、押出成形、ブロー成形の内から選ばれる少なくとも1種の方法で成形してなる成形品。
【請求項9】
成形品が、筐体、外装部品または補強部品であることを特徴とする請求項8記載の成形品。
【請求項10】
成形品が、携帯電話筐体、または電機電子機器筐体であることを特徴とする請求項9記載の成形品。」
「【0004】
本発明は、ノンハロゲン系難燃剤を用いた難燃性ポリアミド樹脂組成物、ならびに、優れた製品外観と高剛性を両立し、かつ優れた成形性を同時に満足し、製品の薄型化に好適なポリアミド樹脂組成物を提供することを目的とする。」
「【0007】
・・・本発明の樹脂組成物を用いた成形品は、携帯電話、PHS、液晶テレビ、プラズマディスプレー、PDA、小型テレビ、ラジオ、ノートパソコン、パソコン、マウス、プリンター、スキャナー、メモリ機器、パソコン周辺機器、ビデオデッキ、DVDデッキ、CDデッキ、MDデッキ、DATデッキ、アンプ、カセットデッキ、ポータブルCDプレーヤー、ポータブルMDプレーヤー、カメラ、デジタルカメラ、双眼鏡、顕微鏡、望遠鏡、時計、・・・などの外装部品に特に優れるものである。」
「【0036】
参考例1 半芳香族共重合ポリアミド樹脂の製造
実施例、ならびに比較例で用いた共重合ポリアミド樹脂は以下の方法で重合した。(a-1)ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸の当モル塩、(a-2)ヘキサメチレンジアミンとイソフタル酸の当モル塩、および(a-3)ε-カプロラクタムをそれぞれ表に記載の重量比で投入し、投入した全量と同量の純水を加え、重合缶内をN2で置換した後、攪拌しながら加熱を開始し、缶内圧力を最大20kg/cm2に調整しながら最終到達温度を270℃とし反応させた。水浴中に吐出したポリマーをストランドカッターでペレタイズした。
・・・
【0040】
参考例5 成形品の作成
実施例、ならびに比較例で使用した曲げ弾性率の試験用成形品は次の方法で作成した。ISO1874-2に従い、日精樹脂工業(株)製の射出成形機PS60により、シリンダ温度300℃、金型表面温度100℃、スクリュー回転数150rpm、平行部流速200mm/秒、射出/冷却=20/10秒の条件でISO Type-B規格の試験片を成形した。
【0041】
難燃性測定用の試験片は、同条件、射出/冷却=10/10秒の条件で、12.7×127×1.0(mm)の試験片を射出成形した。
【0042】
離型性測定用の試験片は、同条件、射出/冷却=10/10秒の条件で、図*の試験片を射出成形した。
【0043】
[実施例1]
参考例1に示した重合方法で製造されたヘキサメチレンアジパミド単位(PA66)、ヘキサメチレンイソフタラミド単位(PA6I)、カプロアミド単位(PA6)から成り、重量比がそれぞれ76、16、8重量%である(a-1)半芳香族共重合ポリアミド樹脂を32.5重量部、参考例3に示した重合方法で製造された(a-2)ポリアミド6樹脂を67.5重量部、(B)ホスフィン酸塩[クラリアントジャパン(株)製:商品名 EXOLIT OP1230]を17.5重量部、(C)メラミンとリン酸から生成される付加物[チバ・スペシャルティー・ケミカルズ(株)製:商品名 melapur200/70]を17.5重量部、(D)ホウ酸亜鉛[ボラックス社製:商品名 Firebreak500]を2.5重量部、(E)ガラス繊維[日本板硝子(株)製:商品名 TP-67]を113重量部、(F)重量平均粒径が2.3μmであるタルク[竹原化学工業(株)製:商品名 タルクMST]を0.08重量部を2軸押出機(東芝機械社製:TEM58)を用いてシリンダ設定温度290℃、スクリュ回転数200rpmの条件下で、(a-1)、(a-2)、(B)、(C)、(D)、(F)をトップフィード(基込めフィード)、(E)をサイドフィードし、溶融混錬した後、ストランド状のガットを成形し、冷却バスで冷却後、カッターで造粒しペレットを得た。得られたペレットを参考例5に示した方法により成形し、前記の測定方法によって諸特性を調べた。その結果を表に示す。
・・・
【0045】
[実施例14、15]
参考例1に示した重合方法で製造されたヘキサメチレンアジパミド単位(PA66)、ヘキサメチレンイソフタラミド単位(PA6I)、カプロアミド単位(PA6)から成り、重量比がそれぞれ表に示す重量%であること以外は実施例1と同様にしてペレット、成形品を得て諸特性を調べた。その結果を表に示す。」
「【0053】
【表1】
【0054】
【表2】
【0055】
【表3】
」
(2)甲3-1~甲3-2発明
上記(1)の記載、特に、実施例1、14及び15(【0043】及び【0045】)、表1(【0053】)及び表3(【0055】))によれば、甲3には、特許請求の範囲の記載を参酌するに、次の発明が記載されていると認められる。
<甲3-1発明>
ヘキサメチレンアジパミド単位(PA66)、ヘキサメチレンイソフタラミド単位(PA6I)、カプロアミド単位(PA6)から成り、それぞれの単位の重量比が、76、16、8重量%(実施例1組成)、81、15、4重量%(実施例14組成)及び71、17、12重量%(実施例15組成)のいずれかである、半芳香族共重合ポリアミド樹脂を32.5重量部、(a-2)ポリアミド6樹脂を67.5重量部、(B)ホスフィン酸塩[クラリアントジャパン(株)製:商品名 EXOLIT OP1230]を17.5重量部、(C)メラミンとリン酸から生成される付加物[チバ・スペシャルティー・ケミカルズ(株)製:商品名 melapur200/70]を17.5重量部、(D)ホウ酸亜鉛[ボラックス社製:商品名 Firebreak500]を2.5重量部、無機充填剤である(E)ガラス繊維[日本板硝子(株)製:商品名 TP-67]を113重量部、(F)重量平均粒径が2.3μmであるタルク[竹原化学工業(株)製:商品名 タルクMST]を0.08重量部を含むポリアミド系樹脂組成物。
<甲3-2発明>
ヘキサメチレンアジパミド単位(PA66)、ヘキサメチレンイソフタラミド単位(PA6I)、カプロアミド単位(PA6)から成り、それぞれの単位の重量比が、76、16、8重量%(実施例1組成)、81、15、4重量%(実施例14組成)及び71、17、12重量%(実施例15組成)のいずれかである、(a-1)半芳香族共重合ポリアミド樹脂を32.5重量部、(a-2)ポリアミド6樹脂を67.5重量部、(B)ホスフィン酸塩[クラリアントジャパン(株)製:商品名 EXOLIT OP1230]を17.5重量部、(C)メラミンとリン酸から生成される付加物[チバ・スペシャルティー・ケミカルズ(株)製:商品名 melapur200/70]を17.5重量部、(D)ホウ酸亜鉛[ボラックス社製:商品名 Firebreak500]を2.5重量部、無機充填剤である(E)ガラス繊維[日本板硝子(株)製:商品名 TP-67]を113重量部、(F)重量平均粒径が2.3μmであるタルク[竹原化学工業(株)製:商品名 タルクMST]を0.08重量部を含むポリアミド系樹脂組成物からの成形品。
2.対比及び判断
(1)本件発明2
ア 対比
本件発明2と甲3-1発明を対比する。
甲3-1発明における「ヘキサメチレンアジパミド単位(PA66)、ヘキサメチレンイソフタラミド単位(PA6I)、カプロアミド単位(PA6)から成り、それぞれの単位の重量比が、76、16、8重量%(実施例1組成)、81、15、4重量%(実施例14組成)及び71、17、12重量%(実施例15組成)のいずれかである、半芳香族共重合ポリアミド樹脂」は、本件発明2における「(A):(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、 (b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、を、含むポリアミド」であって、「当該(A)ポリアミドが、 (a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、からなるポリアミド、または、 (a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、εカプロラクタムからなる単位と、からなるポリアミド」が、「(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、εカプロラクタムからなる単位と、からなるポリアミド」である場合に相当する。
甲3-1発明における「無機充填剤である(E)ガラス繊維[日本板硝子(株)製:商品名 TP-67]」及び「(F)重量平均粒径が2.3μmであるタルク[竹原化学工業(株)製:商品名 タルクMST]」は、本件発明2の「無機充填材」に相当する。
そして、甲3-1発明のポリアミド系樹脂組成物には、本件発明2において「除く」とされている、「(b-1)カルボキシル基、エポキシ基、アミノ基およびアミド基よりなる群から選ばれた少なくとも一種以上の官能基を有する変性ビニル系共重合樹脂、および/または(b-2)酸変性したポリフェニレンエーテル樹脂」は含まれていない。
したがって、本件発明2と甲3-1発明は、
「(A):(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、
(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、を、含むポリアミドであって、
当該(A)ポリアミドが、
(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、からなるポリアミド、または、
(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、εカプロラクタムからなる単位と、からなるポリアミドと、
無機充填材と、
を、含有する部品用ポリアミド樹脂組成物(但し、(b-1)カルボキシル基、エポキシ基、アミノ基およびアミド基よりなる群から選ばれた少なくとも一種以上の官能基を有する変性ビニル系共重合樹脂、および/または(b-2)酸変性したポリフェニレンエーテル樹脂を含むものを除く。)」
で一致し、
以下の点で相違している。
<相違点1>
(A)のポリアミドについて、本件発明2では、「ポリアミド中における全カルボン酸成分中のイソフタル酸成分比率(x)が、0.05≦(x)≦0.5であり、
かつ、下記式(1)で示される(Y)が、0.05≦(Y)≦0.8である(A)ポリアミドと、
(Y)=[(EG)-(x)]/[1-(x)] ・・・(1)
(前記式(1)中、(EG)は、(A)ポリアミド中に含有されている全カルボキシル末端基中のイソフタル酸末端基比率を示し、下記式(2)で示される。
(EG)=イソフタル酸末端基量/全カルボキシル末端基量 ・・・(2))」を満たすものであることが特定されている(つまり、第3で記載した「(x)の条件」及び「式(Y)条件」を満たすものであることが特定されている)のに対して、甲3-1発明では、かかる特定はなされておらず、(A)のポリアミドが、「(x)の条件」及び「式(Y)条件」を満たすものであるかは不明である点。
<相違点2>
本件発明2においては、無機充填材が「(B):ガラス繊維及び/又は(C):前記(B)以外の無機充填材」と特定され、また、その配合量について、(A)のポリアミド「100質量部」に対して、無機充填材「1~300質量部」と特定されているのに対し、甲3-1発明では、(A)のポリアミドに相当する「半芳香族共重合ポリアミド樹脂32.5重量部」に対し、無機充填材に相当する「(E)ガラス繊維[日本板硝子(株)製:商品名 TP-67]を113重量部、(F)重量平均粒径が2.3μmであるタルク[竹原化学工業(株)製:商品名 タルクMST]を0.08重量部」と特定されている点。
<相違点3>
ポリアミド樹脂組成物の用途に関し、本件発明2では、「携帯電子機器部品用」と特定されているのに対し、甲3-1発明では、かかる特定はされていない点。
イ 判断
相違点1について検討する。
申立人従業員高村元が平成29年2月14日付けで作成した甲4である「実験報告書」の表Cによれば、甲3-1発明に含まれる実施例1組成、実施例14組成及び実施例15組成の半芳香族共重合ポリアミド樹脂では、(x)及び(Y)の数値が、実施例1組成では0.16及び-0.18、実施例14組成では0.15及び-0.16、実施例15組成では0.18及び-0.21であることは明らかであるが、これらは、本件発明2における「(x)の条件」及び「式(Y)の条件」を満たしていない。
また、甲3に記載された発明が解決しようとする課題は、甲3の特許請求の範囲の記載及び【0004】の記載からみて、「ノンハロゲン系難燃剤を用いた難燃性ポリアミド樹脂組成物であって、優れた製品外観と高剛性を両立し、かつ優れた成形性を同時に満足し、製品の薄型化に好適なポリアミド樹脂組成物を提供すること」であるが、甲3には、当該課題との関係において、ポリアミド樹脂を、「(x)の条件」及び「式(Y)の条件」を備えたものとすることについては記載されていないし、「(x)の条件」及び「式(Y)の条件」において特定される(x)や(Y)の値、(Y)の値の算出のために使用される(EG)の値自体についての記載もない。
そうすると、甲3の記載からは、甲3-1発明において、ポリアミド系樹脂組成物を構成するポリアミドを、「(x)の条件」及び「式(Y)の条件」を備えたものとすることは、動機付けられない。
一方、本件特許明細書の表1及び2の実施例及び比較例の記載によれば、本件発明2のように、ポリアミドとして、「(x)の条件」及び「式(Y)の条件」を備えたポリアミド系樹脂組成物とすることで、この範囲外のポリアミドを使用する場合に比べて、本件特許明細書の【0067】で定義されるハイサイクル成形(低温金型を外観安定性使用した高温成形)の外観安定性(これは、外観安定性=(20~30ショットISO試験片のグロス平均値)-(90~100ショットISO試験片のグロス平均値)で表される。)が優れたものとなることが理解でき、この点の効果は、甲3には記載も示唆もなく、甲3の記載からは当業者が予期し得ない効果である。
そうすると、甲3-1発明から、相違点1に係る構成を備えた本件発明2とすることが当業者にとって容易であるとはいえない。
以上のとおりであるから、相違点2及び3について検討するまでもなく、本件発明2について、甲3-1発明から当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(2)本件発明3
(1)アにおける検討を踏まえて本件発明3と甲3-1発明とを対比すると、両者は、
「(A):(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、
(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、を、含むポリアミドと、
無機充填材と、
を、含有する部品用ポリアミド樹脂組成物(但し、(b-1)カルボキシル基、エポキシ基、アミノ基およびアミド基よりなる群から選ばれた少なくとも一種以上の官能基を有する変性ビニル系共重合樹脂、および/または(b-2)酸変性したポリフェニレンエーテル樹脂を含むものを除く。)」
で一致し、
(1)で記載した相違点1~3及び以下の相違点4及び5で相違している。
<相違点4>
「(A):(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、を、含むポリアミド」が、本件発明3では、「(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、からなる」ポリアミドであるのに対して、甲3-1発明では、「ヘキサメチレンアジパミド単位(PA66)、ヘキサメチレンイソフタラミド単位(PA6I)、カプロアミド単位(PA6)から成り、それぞれの単位の重量比が、76、16、8重量%(実施例1組成)、81、15、4重量%(実施例14組成)及び71、17、12重量%(実施例15組成)のいずれかである」点。
<相違点5>
「(B)ガラス繊維」について、本件発明3では「数平均繊維径が6μm以上20μm以下」と特定されているのに対し、甲3-1発明では、ガラス繊維である「日本板硝子(株)製:商品名 TP-67」の数平均繊維径が不明である点。
そこで、相違点について検討すると、(1)イで記載したとおり、甲3-1発明のポリアミドを、相違点1に係る構成を備えたものとすることは当業者にとって容易であるとはいえない。
そうすると、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明3について、甲3-1発明から当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(4)本件発明4及び5
本件発明4及び5は、本件発明2及び3を直接的又は間接的に引用するものであって、本件発明2及び3における相違点1に係る構成(「(x)の条件」及び「式(Y)の条件」)をその発明特定事項として備えるものである。
そうすると、本件発明4及び5は、本件発明2及び3と同様に判断され、本件発明4及び5は、甲3-1発明から当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(5)本件発明6
本件発明6の「携帯電子機器部品」は成形品であるから、(1)で指摘した点を踏まえて本件発明6と甲3-2発明を対比すると、両者は、
「下記のポリアミド樹脂組成物を含む成形品。
(A):(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、
(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、を、含むポリアミドであって、
当該(A)ポリアミドが、
(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、からなるポリアミド、または、
(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、εカプロラクタムからなる単位と、からなるポリアミドと、
(B):ガラス繊維及び/又は(C):前記(B)以外の無機充填材と、
を、含有する部品用ポリアミド樹脂組成物(但し、(b-1)カルボキシル基、エポキシ基、アミノ基およびアミド基よりなる群から選ばれた少なくとも一種以上の官能基を有する変性ビニル系共重合樹脂、および/または(b-2)酸変性したポリフェニレンエーテル樹脂を含むものを除く。)」
で一致し、
(1)で記載した相違点1、2及び次の相違点6で相違する。
<相違点6>
ポリアミド樹脂組成物を含む成形品が、本件発明6では、「携帯電子機器部品」と特定されているのに対し、甲3-2発明では、かかる特定はされていない点。
そして、相違点1については、(1)イで記載したと同様の理由によって、甲3-2発明のポリアミドを相違点1に係る構成を備えたものとすることは当業者にとって容易であるとはいえない。
そうすると、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明6について、甲3-2発明から当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
3.小括
以上のとおり、本件発明2ないし6について、甲3に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。
第5-3-3 甲5に記載された発明に基づく特許法第29条第2項
1.甲5の記載等
(1)甲5の記載
甲5には、以下の記載がある。
「【請求項1】
(a-1)ヘキサメチレンアジパミド単位65~90重量%、(a-2)ヘキサメチレンイソフタラミド単位5~30重量%および(a-3)カプロアミド単位1~14重量%の合計100重量%からなり、(a-2)/(a-3)の共重合重量比1以上を同時に満たす(A-1)3元共重合ポリアミド樹脂を含むポリアミド樹脂(A)100重量部に対して、(B)難燃剤20~250重量部(C)アンチモン化合物8~90重量部(D)無機充填剤15~300重量部配合してなることを特徴とするポリアミド樹脂組成物。
【請求項2】
ポリアミド樹脂(A)が、前記(A-1)3元共重合ポリアミド樹脂20~80重量%と(A-2)脂肪族ポリアミド樹脂80~20重量%を配合してなるポリアミド樹脂(A)である請求項1記載のポリアミド樹脂組成物。
・・・
【請求項5】
(D)無機充填剤がガラス繊維、炭素繊維、およびワラステナイトから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1から4のいずれか記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか記載のポリアミド樹脂組成物を射出成形、押出成形、およびブロー成形から選ばれるいずれかの方法で成形してなる成形品。」
「【0008】
本発明の樹脂組成物は、特定共重合比率の3元共重合ポリアミド樹脂に難燃剤、アンチモン化合物、無機充填剤を配合することで非常に優れた剛性と難燃性を同時に実現するポリアミド樹脂組成物であり、本発明の樹脂組成物を用いた成形品は高い剛性、耐衝撃性を有することから、ブレーカー、スイッチ、プラグ、リレー、ターミナル等の電気電子部品および自動車用部品、建材関係部品など、耐圧用筐体部品に特に優れるものである。」
「【0020】
本発明に用いる(D)無機充填剤としては、特に限定されるものではないが、繊維状、ウィスカー状等の無機充填剤を用いることが、強化剤としての特性上好ましい。具体的には、無機充填剤としてガラス繊維、・・・金属繊維、・・・アルミナ繊維、シリカ繊維・・・ワラステナイトなどの繊維状、ウィスカー状および、ガラスビーズ・・・タルク・・・などの球状充填材が挙げられる。」
「【0031】
参考例1 共重合ポリアミドの製造
実施例、ならびに比較例で用いた共重合ポリアミド樹脂は以下の方法で重合した。ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸の当モル塩、ヘキサメチレンジアミンとイソフタル酸の当モル塩、およびεカプロラクタムをそれぞれ表に記載の重量比で投入し、投入した全量と同量の純水を加え、重合缶内をN2で置換した後、攪拌しながら加熱を開始し、缶内圧力を最大20kg/cm2に調整しながら最終到達温度を270℃とし反応させた。水浴中に吐出したポリマーをストランドカッターでペレタイズした。得られたペレットは95℃熱水中で20時間処理し、未反応モノマーや低重合物を抽出除去した。抽出後のペレットは80℃で50時間以上乾燥し、相対粘度2.0の3元共重合ポリアミド樹脂を得た。なお、相対粘度は、上記に示すとおり、JIS―K6810に従い測定した。
・・・
【0035】
参考例5 成形品の作成
実施例、ならびに比較例で使用した引張強さ、曲げ弾性率の試験用成形品は次の方法で作成した。ISO1874-2に従い、日精樹脂工業(株)製の射出成形機PS60により、シリンダ温度280℃、金型表面温度80℃、スクリュー回転数150rpm、平行部流速200mm/秒、射出/冷却=20/20秒の条件でISO Type-A規格の試験片を成形した。」
「【0037】
[実施例1]
参考例1に示した重合方法で製造されたヘキサメチレンアジパミド単位(PA66)、ヘキサメチレンイソフタラミド単位(PA6I)、カプロアミド単位(PA6)から成り、重量比がそれぞれ81、15、4重量%である(A-1)3元共重合ポリアミド樹脂:100重量部、(B)臭素化ポリスチレン[アルべマール日本社製サイテックスHP7010G]:42重量部、(C)三酸化アンチモン[日本精鉱(株)製PATOX-MK]:17重量部、ガラス繊維[日本板硝子(株)製:商品名T-289]:159重量部を2軸押出機(東芝機械社製:TEM58)を用いてシリンダ設定温度270℃、スクリュ回転数200rpmの条件下で(A-1)、(B)、(C)をトップフィード(基込めフィード)、(D)をサイドフィードし、溶融混錬した後、ストランド状のガットを成形し、冷却バスで冷却後、カッターで造粒しペレットを得た。得られたペレットを参考例5に示した方法により成形し、前記の測定方法によって諸特性を調べた。その結果を表に示す。
【0038】
[実施例2、3]
(A-1)3元共重合ポリアミド樹脂が、表に示す共重合重量比である以外は実施例1と同様にしてペレット、成形品を得て諸特性を調べた。その結果を表に示す。」
「【0050】
【表1】
」
(2)甲5-1~甲5-2発明
上記(1)の、特に、実施例1~3(【0037】及び【0038】)及び表1(【0050】)によれば、甲5には、特許請求の範囲の記載も参酌するに、次の発明が記載されていると認められる。
<甲5-1発明>
ヘキサメチレンアジパミド単位(PA66)、ヘキサメチレンイソフタラミド単位(PA6I)、カプロアミド単位(PA6)から成り、それぞれの単位の重量比が、81、15、4重量%(実施例1組成)、76、16、8重量%(実施例2組成)及び71、17、12重量%(実施例3組成)のいずれかである、(A-1)相対粘度2.0の3元共重合ポリアミド樹脂:100重量部、(B)臭素化ポリスチレン[アルべマール日本社製サイテックスHP7010G]:42重量部、(C)三酸化アンチモン[日本精鉱(株)製PATOX-MK]:17重量部、(D)無機充填剤であるガラス繊維[日本板硝子(株)製:商品名T-289]:159重量部からなるポリアミド系樹脂組成物。
<甲5-2発明>
ヘキサメチレンアジパミド単位(PA66)、ヘキサメチレンイソフタラミド単位(PA6I)、カプロアミド単位(PA6)から成り、それぞれの単位の重量比が、81、15、4重量%(実施例1組成)、76、16、8重量%(実施例2組成)及び71、17、12重量%(実施例3組成)のいずれかである、(A-1)相対粘度2.0の3元共重合ポリアミド樹脂:100重量部、(B)臭素化ポリスチレン[アルべマール日本社製サイテックスHP7010G]:42重量部、(C)三酸化アンチモン[日本精鉱(株)製PATOX-MK]:17重量部、(D)無機充填剤であるガラス繊維[日本板硝子(株)製:商品名T-289]:159重量部からなるポリアミド系樹脂組成物からの成形品。
2.対比及び判断
以下において、「甲5-1発明」と、「甲5-2発明」を併せて、「甲5発明」ともいう。
(1)本件発明2
ア 対比
本件発明2と甲5-1発明を対比する。
甲5-1発明における「ヘキサメチレンアジパミド単位(PA66)、ヘキサメチレンイソフタラミド単位(PA6I)、カプロアミド単位(PA6)から成り、それぞれの単位の重量比が、81、15、4重量%(実施例1組成)、76、16、8重量%(実施例2組成)及び71、17、12重量%(実施例3組成)のいずれかである、(A-1)相対粘度2.0の3元共重合ポリアミド樹脂」は、本件発明1における「(A):(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、 (b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、を、含むポリアミド」であって、「当該(A)ポリアミドが、 (a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、からなるポリアミド、または、 (a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、εカプロラクタムからなる単位と、からなるポリアミド」が、「(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、εカプロラクタムからなる単位と、からなるポリアミド」である場合に相当する。
甲5-1発明における「(D)無機充填剤であるガラス繊維[日本板硝子(株)製:商品名T-289]」は、本件発明2の「無機充填材」に相当する。
そして、甲5-1発明のポリアミド系樹脂組成物は、本件発明2において「除く」とされている、「(b-1)カルボキシル基、エポキシ基、アミノ基およびアミド基よりなる群から選ばれた少なくとも一種以上の官能基を有する変性ビニル系共重合樹脂、および/または(b-2)酸変性したポリフェニレンエーテル樹脂」は含まれていない。
したがって、本件発明2と甲5-1発明は、
「(A):(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、
(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、を、含むポリアミドであって、
当該(A)ポリアミドが、
(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、からなるポリアミド、または、
(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、εカプロラクタムからなる単位と、からなるポリアミドと、
(B):ガラス繊維及び/又は(C):前記(B)以外の無機充填材と、
を、含有するポリアミド樹脂組成物(但し、(b-1)カルボキシル基、エポキシ基、アミノ基およびアミド基よりなる群から選ばれた少なくとも一種以上の官能基を有する変性ビニル系共重合樹脂、および/または(b-2)酸変性したポリフェニレンエーテル樹脂を含むものを除く。)」
で一致し、
以下の点で相違している。
<相違点1>
(A)のポリアミドについて、本件発明2では、「ポリアミド中における全カルボン酸成分中のイソフタル酸成分比率(x)が、0.05≦(x)≦0.5であり、
かつ、下記式(1)で示される(Y)が、0.05≦(Y)≦0.8である(A)ポリアミドと、
(Y)=[(EG)-(x)]/[1-(x)] ・・・(1)
(前記式(1)中、(EG)は、(A)ポリアミド中に含有されている全カルボキシル末端基中のイソフタル酸末端基比率を示し、下記式(2)で示される。
(EG)=イソフタル酸末端基量/全カルボキシル末端基量 ・・・(2))」を満たすものであることが特定されている(つまり、第3で記載した「(x)の条件」及び「式(Y)条件」を満たすものであることが特定されている)のに対して、甲5-1発明では、かかる特定はなされておらず、(A)のポリアミドが、「(x)の条件」及び「式(Y)条件」を満たすものであるかは不明である点。
<相違点2>
本件発明2においては、無機充填材が「(B):ガラス繊維及び/又は(C):前記(B)以外の無機充填材」と特定され、また、その配合量について、((A)ポリアミドを100質量部とした場合に、)無機充填材「1~300質量部」と特定されているのに対し、甲5-1発明では、無機充填材が「(D)無機充填剤であるガラス繊維[日本板硝子(株)製:商品名T-289]:159重量部」であり、その配合量は、「(A)のポリアミド」に相当する「(A-1)相対粘度2.0の3元共重合ポリアミド樹脂」100重量部に対し、)「159重量部」と特定されている点。
<相違点3>
ポリアミド樹脂組成物の用途に関し、本件発明2では、「携帯電子機器部品用」と特定されているのに対し、甲5-1発明では、かかる特定はされていない点。
イ 判断
(ア)相違点1について
申立人従業員高村元が平成29年2月14日付けで作成した甲6である「実験報告書」の表Bによれば、甲5-1発明のポリアミド樹脂組成物に含まれる実施例1組成、実施例2組成及び実施例3組成の3元共重合ポリアミド樹脂は、(x)及び(Y)の数値が、実施例1組成では0.15及び-0.16、実施例2組成では0.16及び-0.18、実施例3組成では0.18及び-0.21であることは明らかであり、これらは本件発明2における「(x)の条件」及び「式(Y)の条件」を満たしていない。
そうすると、上記相違点1は実質的には相違点ではない。
また、甲5に記載された発明が解決しようとする課題は、甲5の特許請求の範囲の記載及び【0005】の記載からみて、「優れた難燃性、剛性、耐衝撃性を同時に満足できるポリアミド樹脂組成物、および耐圧力用筐体を提供すること」であるが、甲5には、当該課題との関係において、ポリアミド樹脂を、「(x)の条件」及び「式(Y)の条件」を備えたものとすることについては記載されていないし、「(x)の条件」及び「式(Y)の条件」において特定される(x)や(Y)の値、(Y)の値の算出のために使用される(EG)の値自体についての記載もない。
そうすると、甲5の記載からは、甲5-1発明において、ポリアミド系樹脂組成物を構成するポリアミドを、「(x)の条件」及び「式(Y)の条件」を備えたものとすることは、動機付けられない。
一方、本件特許明細書の表1及び2の実施例及び比較例の記載によれは、本件発明2のように、ポリアミドとして、「(x)の条件」及び「式(Y)の条件」を備えたポリアミド系樹脂組成物とすることで、この範囲外のポリアミドを使用する場合に比べて、本件特許明細書の【0067】で定義されるハイサイクル成形(低温金型を外観安定性使用した高温成形)の外観安定性(これは、外観安定性=(20~30ショットISO試験片のグロス平均値)-(90~100ショットISO試験片のグロス平均値)で表される。)が優れたものとなることが理解でき、この点の効果は、甲5には記載も示唆もなく、甲5の記載からは当業者が予期し得ない効果である。
そうすると、甲5-1発明から、相違点1に係る構成を備えた本件発明2とすることが当業者にとって容易であるとはいえない。
以上のとおりであるから、相違点2及び3について検討するまでもなく、本件発明2について、甲5-1発明から当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
なお、相違点1に係る本件発明2の構成を備えたポリアミドとする点については、取消理由通知において、相違点3に関する周知技術として指摘した甲3及び甲7にも記載も示唆もされていない。
(2)本件発明3
(1)アにおける検討を踏まえて本件発明3と甲5-1発明とを対比すると、両者は、
「(A):(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、
(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、を、含むポリアミドと、
(B):ガラス繊維及び/又は(C):前記(B)以外の無機充填材と、
を、含有するポリアミド樹脂組成物(但し、(b-1)カルボキシル基、エポキシ基、アミノ基およびアミド基よりなる群から選ばれた少なくとも一種以上の官能基を有する変性ビニル系共重合樹脂、および/または(b-2)酸変性したポリフェニレンエーテル樹脂を含むものを除く。)」
で一致し、
(1)で記載した相違点1~3及び以下の相違点4及び5で相違している。
<相違点4>
「(A):(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、を、含むポリアミド」が、本件発明3では、「(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、からなる」ポリアミドであるのに対して、甲5-1発明では、「ヘキサメチレンアジパミド単位(PA66)、ヘキサメチレンイソフタラミド単位(PA6I)、カプロアミド単位(PA6)から成り、それぞれの単位の重量比が、81、15、4重量%(実施例1組成)、76、16、8重量%(実施例2組成)及び71、17、12重量%(実施例3組成)のいずれかである」点。
<相違点5>
「(B)ガラス繊維」について、本件発明3では「数平均繊維径が6μm以上20μm以下」と特定されているのに対し、甲5-1発明では、ガラス繊維である「[日本板硝子(株)製:商品名T-289]」の数平均繊維径が不明である点。
そこで、相違点について検討すると、(1)イで記載したと同様の理由によって、甲5-1発明から、相違点1に係る構成を備えた本件発明3とすることは当業者にとって容易であるとはいえない。
そうすると、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明3について、甲5-1発明から当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(4)本件発明4及び5
本件発明4及び5は、本件発明2及びを直接的又は間接的に引用するものであって、本件発明2及び3における相違点1に係る構成(「(x)の条件」及び「式(Y)の条件」)をその発明特定事項として備えるものである。
そうすると、本件発明4及び5は、本件発明2又は3と同様に判断され、本件発明4及び5は、甲5-1発明から当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(5)本件発明6
本件発明6の「携帯電子機器部品」は成形品であるから、(1)で指摘した点を踏まえて本件発明6と甲5-2発明を対比すると、両者は、
「下記のポリアミド樹脂組成物を含む成形品。
(A):(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、
(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、を、含むポリアミドであって、
当該(A)ポリアミドが、
(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、からなるポリアミド、または、
(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、εカプロラクタムからなる単位と、からなるポリアミドと、
(B):ガラス繊維及び/又は(C):前記(B)以外の無機充填材と、
を、含有する部品用ポリアミド樹脂組成物(但し、(b-1)カルボキシル基、エポキシ基、アミノ基およびアミド基よりなる群から選ばれた少なくとも一種以上の官能基を有する変性ビニル系共重合樹脂、および/または(b-2)酸変性したポリフェニレンエーテル樹脂を含むものを除く。)」
で一致し、
(1)で記載した相違点1、2及び次の相違点6で相違する。
<相違点6>
ポリアミド樹脂組成物を含む成形品が、本件発明6では、「携帯電子機器部品」と特定されているのに対し、甲5-2発明では、かかる特定はされていない点。
そして、相違点1については、(1)イで記載したと同様の理由によって、甲5-2発明を相違点1に係る構成を備えたものとすることは当業者にとって容易であるとはいえない。
そうすると、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明6について、甲5-2発明から当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
なお、相違点1に係る本件発明6の構成を備えたポリアミドとする点については、取消理由通知において、相違点6に関する周知技術として指摘した甲3及び甲7にも記載も示唆もされていない。
3.小括
以上のとおり、本件発明2ないし6について、甲5に記載された発明、及び、甲3、7に示される本件特許出願時の周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。
第5-3-4 取消理由3についてのむすび
第5-3-1~第5-3-3で説示したとおり、本件発明2ないし6に係る本件特許は、取消理由3によっては取り消すことはできない。
第6 取消理由通知で採用しなかった特許異議申立理由について
(1)本件訂正前の請求項1ないし6に係る発明についての特許法第29条第1項第3号について
申立人は、申立書において、本件訂正前の請求項1ないし6に係る発明(それぞれ、本件発明1ないし6に対応するが、請求項1については、本件訂正により削除された。)について、甲2、4及び6のそれぞれの実験報告書を参照すれば、甲1、3及び5それぞれに記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に基づく取消理由が存在すると主張する。
しかしながら、第5-3-1~第5-3-3で述べたとおり、本件発明2ないし6と、甲1、3及び5それぞれに記載された発明とには、相違点があるから、本件発明2ないし6は、甲1、3及び5それぞれに記載された発明であるとはいえない。
よって、申立人の主張は採用できない。
(2)特許法第36条第6項第2号について
申立人は、申立書において、本件訂正前の請求項1ないし6に係る発明(本件発明1ないし6に対応する。)について本件特許明細書の実施例において認められる(Y)の範囲は、0.15~0.57であるから、実施例を参酌しても、何故(Y)を-0.3≦(Y)≦0.8と定めたのか、その理由が不明であり、技術的意味が理解できないから、本件特許請求の範囲の記載は明確ではないと主張する。
そこで検討すると、訂正後の本件発明2ないし6は、(Y)が0.05≦(Y)≦0.8であるところ、本件特許明細書の【0019】及び【0065】には、(Y)の定義及びその測定法が明確に記載されているし、(Y)の範囲を0.05≦(Y)≦0.8とする点の技術的意味についても、本件特許明細書の【0019】~【0023】)に明確に記載されている。
よって、本件発明2ないし6は明確であるといえ、申立人の主張は採用できない。
第7 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び申立書に記載された特許異議申立理由によっては、本件発明2ないし6に係る特許を取り消すことができない。
また、他に本件発明2ないし6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
さらに、本件発明1に係る特許は、訂正により削除されたため、本件発明1に対して、申立人がした特許異議の申し立てについては、対象となる請求項が存在しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2017-700189