特許異議申立
2017-700188
長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレット及び成形品
- 審判番号
- 2017-700188
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2011-268966
- 登録番号
- 特許第5979860号(P5979860)
- 請求日
- 2017年02月27日
- 審決日
- 2017年09月29日
- 公報発行日
- 2017年12月28日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】旭化成株式会社
- 【権利者代理人】稲葉 良幸
- 【権利者代理人】内藤 和彦
- 【権利者代理人】秋山 祐子
- 【権利者代理人】大貫 敏史
- 【権利者代理人】江口 昭彦
- 【異議申立人】東レ 株式会社
- 審判長/審判官
- 審判長 小柳 健悟
- 審判官 渕野 留香
- 審判官 藤原 浩子
- 分類
- P1651.113-YAA(C08L) / P1651.121-YAA(C08L) / P1651.536-YAA(C08L) / P1651.537-YAA(C08L) / P1651.851-YAA(C08L) / P1651.853-YAA(C08L) / P1651.857-YAA(C08L)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第120条の5第4項、特許法第29条第2項、特許法第126条第5項、特許法第126条第6項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第4項第1号、特許法第120条の5第5項、特許法第126条第4項、特許法第36条第6項第2号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第5979860号発明「長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレット及び成形品」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第5979860号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1、〔2~5〕、6、7、8について訂正することを認める。
特許第5979860号の請求項2ないし8に係る特許を維持する。
特許第5979860号の請求項1に係る特許についての申立を却下する。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
特許第5979860号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし8に係る特許についての出願は、平成23年12月8日に特許出願され、平成28年8月5日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許について、特許異議申立人東レ株式会社(以下、「申立人」という。)により平成29年2月27日(受理日、同年2月28日)に特許異議申立書(以下、「申立書」という。)が提出され、当審において同年5月22日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である同年7月24日に意見書の提出及び訂正の請求(以下、「本件訂正の請求」という。)があった。
なお、申立人に対する訂正請求があった旨の通知(特許法第120条の5第5項)に対しては、申立人からの応答はなかった。
第2 訂正の適否についての判断
1.本件訂正の内容
本件訂正における請求の趣旨は、本件特許の明細書及び特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付した明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1ないし8について訂正することを求める、というものである。
(1)訂正事項1
請求項1を削除する。
(2)訂正事項2
請求項2における
「前記式(1)で示される(Y)が、0.05≦(Y)≦0.8である、請求項1に記載の長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレット。」を、
「(A):(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、
(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、
を、含むポリアミドであって、
当該(A)ポリアミドが、
(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、からなるポリアミド、または、
(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、εカプロラクタムからなる単位と、からなるポリアミドであり、
当該ポリアミド中における全カルボン酸成分中のイソフタル酸成分比率(x)が、0.05≦(x)≦0.5であり、
かつ、下記式(1)で示される(Y)が、0.05≦(Y)≦0.8である(A)ポリアミド100質量部と、
(Y)=[(EG)-(x)]/[1-(x)] ・・・(1)
(前記式(1)中、(EG)は、(A)ポリアミド中に含有されている全カルボキシル末端基中のイソフタル酸末端基比率を示し、下記式(2)で示される。
(EG)=イソフタル酸末端基量/全カルボキシル末端基量 ・・・(2))
(B):長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレット中における重量平均繊維長が当該長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットの長さと実質上同一である(B)繊維状強化材100~250質量部と、
を、含有する長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレット。」に訂正する。
(3)訂正事項3
請求項3における
「前記全カルボン酸成分中のイソフタル酸成分比率(x)、前記イソフタル酸末端基量、及び前記全カルボキシル末端基量が、核磁気共鳴法(NMR)により求めた値である、請求項1又は2に記載の長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレット。」を、
「(A):(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、からなるポリアミドであって、
当該ポリアミド中における全カルボン酸成分中のイソフタル酸成分比率(x)が、0.05≦(x)≦0.5であり、
かつ、下記式(1)で示される(Y)が、0.05≦(Y)≦0.8である(A)ポリアミド100質量部と、
(Y)=[(EG)-(x)]/[1-(x)] ・・・(1)
(前記式(1)中、(EG)は、(A)ポリアミド中に含有されている全カルボキシル末端基中のイソフタル酸末端基比率を示し、下記式(2)で示される。
(EG)=イソフタル酸末端基量/全カルボキシル末端基量 ・・・(2))
(B):長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレット中における重量平均繊維長が当該長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットの長さと実質上同一である(B)繊維状強化材100~250質量部と、
を、含有し、
前記全カルボン酸成分中のイソフタル酸成分比率(x)、前記イソフタル酸末端基量、及び前記全カルボキシル末端基量が、核磁気共鳴法(NMR)により求めた値である、長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレット。」に訂正する
(4)訂正事項4
請求項4における
「前記(B)繊維状強化材が5~20μmの平均繊維径を有するガラス繊維である、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレット。」を、
「前記(B)繊維状強化材が5~20μmの平均繊維径を有するガラス繊維である、請求項2又は3に記載の長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレット」に訂正する。
(5)訂正事項5
請求項5における
「ペレット長が5~30mmである、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレット。」を、
「ペレット長が5~30mmである、請求項2乃至4のいずれか一項に記載の長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレット。」に訂正する。
(6)訂正事項6
請求項6における
「請求項1乃至5のいずれかに一項に記載の長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットの製造方法であって、
アジピン酸、イソフタル酸、及びヘキサメチレンジアミンを重合する際に、重合系内の内部温度が240℃以上になるまで内部圧力を1.5~5.0MPaに保った後、加熱を続けた状態で、圧力を徐々に抜き、最終内部温度が250℃以上になるように、常圧下又は減圧下で重縮合してポリアミドを得る工程と、
連続した強化用繊維を引きながら得られたポリアミドを含浸する工程と、
を、含む、長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットの製造方法。」を、
「(A):(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、からなるポリアミド、または、
(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、εカプロラクタムからなる単位と、からなるポリアミドであり、
当該ポリアミド中における全カルボン酸成分中のイソフタル酸成分比率(x)が、0.05≦(x)≦0.5であり、
かつ、下記式(1)で示される(Y)が、0.05≦(Y)≦0.8である(A)ポリアミド100質量部と、
(Y)=[(EG)-(x)]/[1-(x)] ・・・(1)
(前記式(1)中、(EG)は、(A)ポリアミド中に含有されている全カルボキシル末端基中のイソフタル酸末端基比率を示し、下記式(2)で示される。
(EG)=イソフタル酸末端基量/全カルボキシル末端基量 ・・・(2))
(B):長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレット中における重量平均繊維長が当該長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットの長さと実質上同一である(B)繊維状強化材100~250質量部と、
を、含有する長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットの製造方法であって、
アジピン酸、イソフタル酸、及びヘキサメチレンジアミンを重合する際に、重合系内の内部温度が240℃以上になるまで内部圧力を1.5~5.0MPaに保った後、加熱を続けた状態で、圧力を徐々に抜き、最終内部温度が250℃以上になるように、常圧下又は減圧下で重縮合してポリアミドを得る工程と、
連続した強化用繊維を引きながら得られたポリアミドを含浸する工程と、
を、含む、長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットの製造方法。」に訂正する。
(7)訂正事項7
請求項7における
「(A):(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、
(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、
を、含むポリアミド100質量部と、
(B)繊維状強化材100~250質量部と、
を、含有する長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットを用いて成形を行う際に、
前記(A)ポリアミド中における全カルボン酸成分中のイソフタル酸成分比率(x)が、0.05≦(x)≦0.5であり、
かつ、下記式(1)で示される(Y)が、-0.3≦(Y)≦0.8であり、
(Y)=[(EG)-(x)]/[1-(x)]・・・(1)
(前記式(1)中、(EG)は、(A)ポリアミド中に含有されている全カルボキシル末端基中のイソフタル酸末端基比率を示し、下記式(2)で示される。
(EG)=イソフタル酸末端基量/全カルボキシル末端基量・・・(2))
前記長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレット中における前記(B)繊維状強化材の重量平均繊維長が当該ペレットの長さと実質上同一である、長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットを使用することにより、
成形品の外観安定性を向上させる方法。」を、
「(A):(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、
(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、
を、含むポリアミドであって、
当該(A)ポリアミドが、
(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、からなるポリアミド、または、
(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、εカプロラクタムからなる単位と、からなるポリアミド100質量部と、
(B)繊維状強化材100~250質量部と、
を、含有する長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットを用いて成形を行う際に、
前記(A)ポリアミド中における全カルボン酸成分中のイソフタル酸成分比率(x)が、0.05≦(x)≦0.5であり、
かつ、下記式(1)で示される(Y)が、0.05≦(Y)≦0.8であり、
(Y)=[(EG)-(x)]/[1-(x)]・・・(1)
(前記式(1)中、(EG)は、(A)ポリアミド中に含有されている全カルボキシル末端基中のイソフタル酸末端基比率を示し、下記式(2)で示される。
(EG)=イソフタル酸末端基量/全カルボキシル末端基量・・・(2))
前記長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレット中における前記(B)繊維状強化材の重量平均繊維長が当該ペレットの長さと実質上同一である、長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットを使用することにより、成形品の外観安定性を向上させる方法。」に訂正する。
(8)訂正事項8
請求項8における
「(A):(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、
(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、
を、含むポリアミドであって、
当該ポリアミド中における全カルボン酸成分中のイソフタル酸成分比率(x)が、0.05≦(x)≦0.5であり、
かつ、下記式(1)で示される(Y)が、-0.3≦(Y)≦0.8である(A)ポリアミド100質量部と、
(Y)=[(EG)-(x)]/[1-(x)] ・・・ (1)
(前記式(1)中、(EG)は、(A)ポリアミド中に含有されている全カルボキシル末端基中のイソフタル酸末端基比率を示し、下記式(2)で示される。
(EG)=イソフタル酸末端基量/全カルボキシル末端基量 ・・・(2))
(B)繊維状強化材100~250質量部と、を含み、
前記(B)繊維状強化材が1mm以上の重量平均繊維長で分散してなる成形品。」を、
「(A):(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、
(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、
を、含むポリアミドであって、
当該(A)ポリアミドが、
(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、からなるポリアミド、または、
(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、εカプロラクタムからなる単位と、からなり、 当該ポリアミド中における全カルボン酸成分中のイソフタル酸成分比率(x)が、0.05≦(x)≦0.5であり、
かつ、下記式(1)で示される(Y)が、0.05≦(Y)≦0.8である(A)ポリアミド100質量部と、
(Y)=[(EG)-(x)]/[1-(x)] ・・・(1)
(前記式(1)中、(EG)は、(A)ポリアミド中に含有されている全カルボキシル末端基中のイソフタル酸末端基比率を示し、下記式(2)で示される。
(EG)=イソフタル酸末端基量/全カルボキシル末端基量 ・・・(2))
(B)繊維状強化材100~250質量部と、を含み、
前記(B)繊維状強化材が1mm以上の重量平均繊維長で分散してなる成形品。」に訂正する。
(9)訂正事項9
明細書の段落【0014】における
「〔1〕
(A):(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、
(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、
を、含むポリアミドであって、
当該ポリアミド中における全カルボン酸成分中のイソフタル酸成分比率(x)が、0.05≦(x)≦0.5であり、
かつ、下記式(1)で示される(Y)が、-0.3≦(Y)≦0.8である(A)ポリアミド100質量部と、
(Y)=[(EG)-(x)]/[1-(x)] ・・・(1)
(前記式(1)中、(EG)は、(A)ポリアミド中に含有されている全カルボキシル末端基中のイソフタル酸末端基比率を示し、下記式(2)で示される。
(EG)=イソフタル酸末端基量/全カルボキシル末端基量 ・・・(2))
(B):長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレット中における重量平均繊維長が当該長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットの長さと実質上同一である(B)繊維状強化材100~250質量部と、
を、含有する長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレット。
〔2〕
前記式(1)で示される(Y)が、0.05≦(Y)≦0.8である、前記〔1〕に記載の長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレット。
〔3〕
前記全カルボン酸成分中のイソフタル酸成分比率(x)、前記イソフタル酸末端基量、及び前記全カルボキシル末端基量が、核磁気共鳴法(NMR)により求めた値である、前記〔1〕又は〔2〕に記載の長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレット。
〔4〕
前記(B)繊維状強化材が5~20μmの平均繊維径を有するガラス繊維である、前記〔1〕乃至〔3〕のいずれか一に記載の長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレット。
〔5〕
ペレット長が5~30mmである、前記〔1〕乃至〔4〕のいずれか一に記載の長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレット。
〔6〕
前記〔1〕乃至〔5〕のいずれかに一に記載の長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットの製造方法であって、
アジピン酸、イソフタル酸、及びヘキサメチレンジアミンを重合する際に、重合系内の内部温度が240℃以上になるまで内部圧力を1.5~5.0MPaに保った後、加熱を続けた状態で、圧力を徐々に抜き、最終内部温度が250℃以上になるように、常圧下又は減圧下で重縮合してポリアミドを得る工程と、
連続した強化用繊維を引きながら得られたポリアミドを含浸する工程と、
を、含む、長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットの製造方法。
〔7〕
(A):(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、
(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、
を、含むポリアミド100質量部と、
(B)繊維状強化材100~250質量部と、
を、含有する長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットを用いて成形を行う際に、
前記(A)ポリアミド中における全カルボン酸成分中のイソフタル酸成分比率(x)が、0.05≦(x)≦0.5であり、
かつ、下記式(1)で示される(Y)が、-0.3≦(Y)≦0.8であり、
(Y)=[(EG)-(x)]/[1-(x)]・・・(1)
(前記式(1)中、(EG)は、(A)ポリアミド中に含有されている全カルボキシル末端基中のイソフタル酸末端基比率を示し、下記式(2)で示される。
(EG)=イソフタル酸末端基量/全カルボキシル末端基量・・・(2))
前記長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレット中における前記(B)繊維状強化材の重量平均繊維長が当該ペレットの長さと実質上同一である、長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットを使用することにより、
成形品の外観安定性を向上させる方法。
〔8〕
(A):(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、
(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、
を、含むポリアミドであって、
当該ポリアミド中における全カルボン酸成分中のイソフタル酸成分比率(x)が、0.05≦(x)≦0.5であり、
かつ、下記式(1)で示される(Y)が、-0.3≦(Y)≦0.8である(A)ポリアミド100質量部と、(Y)=[(EG)-(x)]/[1-(x)] ・・・(1)(前記式(1)中、(EG)は、(A)ポリアミド中に含有されている全カルボキシル末端基中のイソフタル酸末端基比率を示し、下記式(2)で示される。
(EG)=イソフタル酸末端基量/全カルボキシル末端基量 ・・・(2))
(B)繊維状強化材100~250質量部と、を含み、
前記(B)繊維状強化材が1mm以上の重量平均繊維長で分散してなる成形品。」を、
「〔1〕(削除)
〔2〕
(A):(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、
(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、
を、含むポリアミドであって、
当該(A)ポリアミドが、
(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、からなるポリアミド、または、
(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、εカプロラクタムからなる単位と、からなるポリアミドであり、
当該ポリアミド中における全カルボン酸成分中のイソフタル酸成分比率(x)が、0.05≦(x)≦0.5であり、
かつ、下記式(1)で示される(Y)が、0.05≦(Y)≦0.8である(A)ポリアミド100質量部と、
(Y)=[(EG)-(x)]/[1-(x)] ・・・(1)
(前記式(1)中、(EG)は、(A)ポリアミド中に含有されている全カルボキシル末端基中のイソフタル酸末端基比率を示し、下記式(2)で示される。
(EG)=イソフタル酸末端基量/全カルボキシル末端基量 ・・・(2))
(B):長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレット中における重量平均繊維長が当該長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットの長さと実質上同一である(B)繊維状強化材100~250質量部と、
を、含有する長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレット。
〔3〕
(A):(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、からなるポリアミドであって、
当該ポリアミド中における全カルボン酸成分中のイソフタル酸成分比率(x)が、0.05≦(x)≦0.5であり、
かつ、下記式(1)で示される(Y)が、0.05≦(Y)≦0.8である(A)ポリアミド100質量部と、
(Y)=[(EG)-(x)]/[1-(x)] ・・・(1)
(前記式(1)中、(EG)は、(A)ポリアミド中に含有されている全カルボキシル末端基中のイソフタル酸末端基比率を示し、下記式(2)で示される。
(EG)=イソフタル酸末端基量/全カルボキシル末端基量 ・・・(2))
(B):長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレット中における重量平均繊維長が当該長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットの長さと実質上同一である(B)繊維状強化材100~250質量部と、
を、含有し、
前記全カルボン酸成分中のイソフタル酸成分比率(x)、前記イソフタル酸末端基量、及び前記全カルボキシル末端基量が、核磁気共鳴法(NMR)により求めた値である、長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレット。
〔4〕
前記(B)繊維状強化材が5~20μmの平均繊維径を有するガラス繊維である、前記〔2〕又は〔3〕に記載の長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレット。
〔5〕
ペレット長が5~30mmである、前記[2〕乃至〔4〕のいずれか一に記載の長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレット。
〔6〕
(A):(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、からなるポリアミド、または、
(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、εカプロラクタムからなる単位と、からなるポリアミドであり、
当該ポリアミド中における全カルボン酸成分中のイソフタル酸成分比率(x)が、0.05≦(x)≦0.5であり、
かつ、下記式(1)で示される(Y)が、0.05≦(Y)≦0.8である(A)ポリアミド100質量部と、
(Y)=[(EG)-(x)]/[1-(x)] ・・・(1)
(前記式(1)中、(EG)は、(A)ポリアミド中に含有されている全カルボキシル末端基中のイソフタル酸末端基比率を示し、下記式(2)で示される。
(EG)=イソフタル酸末端基量/全カルボキシル末端基量 ・・・(2))
(B):長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレット中における重量平均繊維長が当該長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットの長さと実質上同一である(B)繊維状強化材100~250質量部と、
を、含有する長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットの製造方法であって、
アジピン酸、イソフタル酸、及びヘキサメチレンジアミンを重合する際に、重合系内の内部温度が240℃以上になるまで内部圧力を1.5~5.0MPaに保った後、加熱を続けた状態で、圧力を徐々に抜き、最終内部温度が250℃以上になるように、常圧下又は減圧下で重縮合してポリアミドを得る工程と、
連続した強化用繊維を引きながら得られたポリアミドを含浸する工程と、
を、含む、長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットの製造方法。
〔7〕
(A):(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、
(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、
を、含むポリアミドであって、
当該(A)ポリアミドが、
(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、からなるポリアミド、または、
(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、εカプロラクタムからなる単位と、からなるポリアミド100質量部と、
(B)繊維状強化材100~250質量部と、
を、含有する長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットを用いて成形を行う際に、
前記(A)ポリアミド中における全カルボン酸成分中のイソフタル酸成分比率(x)が、0.05≦(x)≦0.5であり、
かつ、下記式(1)で示される(Y)が、0.05≦(Y)≦0.8であり、
(Y)=[(EG)-(x)]/[1-(x)]・・・(1)
(前記式(1)中、(EG)は、(A)ポリアミド中に含有されている全カルボキシル末端基中のイソフタル酸末端基比率を示し、下記式(2)で示される。
(EG)=イソフタル酸末端基量/全カルボキシル末端基量・・・(2))
前記長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレット中における前記(B)繊維状強化材の重量平均繊維長が当該ペレットの長さと実質上同一である、長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットを使用することにより、成形品の外観安定性を向上させる方法。
〔8〕
(A):(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、
(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、
を、含むポリアミドであって、
当該(A)ポリアミドが、
(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、からなるポリアミド、または、
(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、εカプロラクタムからなる単位と、からなり、 当該ポリアミド中における全カルボン酸成分中のイソフタル酸成分比率(x)が、0.05≦(x)≦0.5であり、
かつ、下記式(1)で示される(Y)が、0.05≦(Y)≦0.8である(A)ポリアミド100質量部と、
(Y)=[(EG)-(x)]/[1-(x)] ・・・(1)
(前記式(1)中、(EG)は、(A)ポリアミド中に含有されている全カルボキシル末端基中のイソフタル酸末端基比率を示し、下記式(2)で示される。
(EG)=イソフタル酸末端基量/全カルボキシル末端基量 ・・・(2))
(B)繊維状強化材100~250質量部と、を含み、
前記(B)繊維状強化材が1mm以上の重量平均繊維長で分散してなる成形品。」に訂正する。
2.訂正の目的の適否、新規事項の有無、一群の請求項及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)一群の請求項について
訂正前の請求項1ないし6は、請求項2ないし6が、訂正の請求の対象である請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する関係にあるから、訂正前において一群の請求項に該当するものである。
したがって、訂正事項1ないし6についての訂正の請求は、特許法第120条の5第4項に規定する「一群の請求項」ごとにされたものである。
(2)訂正事項1についての訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
ア 訂正の目的について
訂正事項1は、請求項1を削除するものであるから、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 新規事項の有無
訂正事項1は、請求項1を削除するものであるから、訂正事項1は、願書に最初に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正であって、新規事項を追加するものではない。
よって、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項1は、請求項1を削除するものであるから、訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
(3)訂正事項2についての訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
ア 訂正の目的について
訂正事項2は、
(i)請求項1を引用する請求項2について、引用関係を解消して独立形式に改めると共に、
(ii)訂正前の請求項2に係る発明の発明特定事項である「(A)」の「ポリアミド」(ただし、訂正前請求項2は引用形式であるためそこには直接の記載はなく、引用元である請求項1に記載されている。)である、
「(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、を、含むポリアミド」を、
「(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、からなるポリアミド、または、
(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、εカプロラクタムからなる単位と、からなるポリアミド」
に限定するものである。
そして、(i)は、請求項間の引用関係の解消を目的とするものであり、(ii)は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する請求項間の引用関係の解消、及び、同第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正後の請求項2を引用する訂正後の請求項4及び5についての訂正も同様である。
イ 新規事項の有無
訂正後の「(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、からなるポリアミド」及び「(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、εカプロラクタムからなる単位と、からなるポリアミド」は、訂正前の「(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、を、含むポリアミド」に包含されるものである。
また、本件特許明細書の【0025】には、「本実施形態の長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットを構成する(A)ポリアミドには、本実施形態の目的を損なわない範囲で、・・・ラクタム等を共重合成分として用いることができる。」、【0033】には、「前記ラクタムとしては、例えば、・・・カプロラクタム・・・等が挙げられる。」と記載され、実施例1~8及び10~11には、「(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、からなるポリアミド」に相当する製造例1~8のポリアミドを使用したペレットの製造例が、実施例9には、「(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、εカプロラクタムからなる単位と、からなるポリアミド」に相当する製造例9のポリアミドを使用したペレットの製造例が記載されている。
よって、訂正事項1による訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正であって、新規事項を追加するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。
訂正後の請求項2を引用する訂正後の請求項4及び5についての訂正も同様である。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項2は、(A)のポリアミドの種類を明細書に記載されていたものに限定するものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
訂正後の請求項2を引用する訂正後の請求項4及び5についての訂正も同様である。
(4)訂正事項3についての訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
ア 訂正の目的について
訂正事項3は、
(i)請求項1又は2を引用する訂正前の請求項3を請求項2を引用するものに限定するとともに、引用関係を解消して独立形式に改め、
(ii)訂正前の請求項2に係る発明の発明特定事項である「(A)」の「ポリアミド」(ただし、訂正前請求項2は引用形式であるためそこには直接の記載はなく、引用元である請求項1に記載されている。)である、
「(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、を、含むポリアミド」を、
「(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、からなるポリアミド」
に限定するものである。
そして、(i)は、特許請求の範囲の減縮及び請求項間の引用関係の解消を目的とするものであり、(ii)は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する請求項間の引用関係の解消、及び、同第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正後の請求項3を引用する訂正後の請求項4及び5についての訂正も同様である。
イ 新規事項の有無
訂正後の「(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、からなるポリアミド」は、訂正前の「(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、を、含むポリアミド」に包含されるものであるし、本件特許明細書の実施例1~8及び10~11には、「(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、からなるポリアミド」に相当する製造例1~8のポリアミドを使用したペレットの製造例が記載されている。
よって、訂正事項3による訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正であって、新規事項を追加するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。
訂正後の請求項3を引用する訂正後の請求項4及び5についての訂正も同様である。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項3は、(A)のポリアミドの種類を明細書に記載されていたものに限定するものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
訂正後の請求項3を引用する訂正後の請求項4及び5についての訂正も同様である。
(5)訂正事項4についての訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
ア 訂正の目的について
訂正事項4は、訂正事項1に係る訂正に伴って、従属項である請求項が引用する項番号の整合を図るために訂正するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
訂正後の請求項4を引用する訂正後の請求項5についての訂正も同様である。
イ 新規事項の有無
訂正事項4は、明瞭でない記載の釈明をするものであるから、新規事項の追加に該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合する。
訂正後の請求項4を引用する訂正後の請求項5についての訂正も同様である。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項4は、明瞭でない記載の釈明をするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合する。
訂正後の請求項4を引用する訂正後の請求項5についての訂正も同様である。
(6)訂正事項5についての訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
ア 訂正の目的について
訂正事項5は、訂正事項1に係る訂正に伴って、従属項である請求項が引用する項番号の整合を図るために訂正するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 新規事項の有無
訂正事項5は、明瞭でない記載の釈明をするものであるから、新規事項の追加に該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合する。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項5は、明瞭でない記載の釈明をするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合する。
(7)訂正事項6についての訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
ア 訂正の目的について
訂正事項6は、
(i)請求項1ないし5を引用する訂正前の請求項6を請求項2を引用するものに限定するとともに、引用関係を解消して独立形式に改め、
(ii)訂正前の請求項2に係る発明の発明特定事項である「(A)」の「ポリアミド」(ただし、訂正前請求項2は引用形式であるためそこには直接の記載はなく、引用元である請求項1に記載されている。)である、
「(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、を、含むポリアミド」を、
「(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、からなるポリアミド、または、
(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、εカプロラクタムからなる単位と、からなるポリアミド」
に限定するものである。
そして、(i)は、特許請求の範囲の減縮及び請求項間の引用関係の解消を目的とするものであり、(ii)は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、訂正事項6は、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する請求項間の引用関係の解消、及び、同第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 新規事項の有無
訂正事項6による訂正は、(3)イで記載したとおりの理由によって、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正であって、新規事項を追加するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項6は、(A)のポリアミドの種類を明細書に記載されていたものに限定するものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
(8)訂正事項7についての訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
ア 訂正の目的について
訂正事項7は、
(i)訂正前の請求項7の発明特定事項である「(A)」の「ポリアミド」について、
「(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、を、含むポリアミド」と特定されていたのを、
「(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、からなるポリアミド、または、
(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、εカプロラクタムからなる単位と、からなるポリアミド」
に限定し、更に、
(ii)式(1)で示される(Y)について、「-0.3≦(Y)≦0.8」と特定されていたのを、
「0.05≦(Y)≦0.8」の範囲に限定するものである。
そして、(i)及び(ii)は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、訂正事項7は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 新規事項の有無
訂正事項7の(Y)の値の訂正に関し、本件特許の願書に添付した明細書(本件特許明細書)の【0024】には、「本実施形態の長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットを構成する(A)ポリアミドにおいて、前記ブロック化比率(Y)は、・・・好ましくは0.05≦(Y)≦0.8・・・の範囲である。」と記載されている。
また、(A)のポリアミドの種類についての訂正に関し、本件特許明細書の【0025】には、「本実施形態の長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットを構成する(A)ポリアミドには、本実施形態の目的を損なわない範囲で、・・・ラクタム等を共重合成分として用いることができる。」、【0033】には、「前記ラクタムとしては、例えば、・・・カプロラクタム・・・等が挙げられる。」と記載され、実施例1~8及び10~11には、「(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、からなるポリアミド」に相当する製造例1~8のポリアミドを使用したペレットの製造例が、実施例9には、「(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、εカプロラクタムからなる単位と、からなるポリアミド」に相当する製造例9のポリアミドを使用したペレットの製造例が記載されている。
よって、訂正事項7による訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正であり、新規事項を追加するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項7は、(A)のポリアミドの種類を明細書に記載されていたものに限定し、(Y)の値をより狭い範囲に限定するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
(9)訂正事項8についての訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
ア 訂正の目的について
訂正事項8は、
(i)訂正前の請求項8の発明特定事項である「(A)」の「ポリアミド」について、
「(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、を、含むポリアミド」と特定されていたのを、
「(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、からなるポリアミド、または、
(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、εカプロラクタムからなる単位と、からなるポリアミド」
に限定し、更に、
(ii)式(1)で示される(Y)について、「-0.3≦(Y)≦0.8」と特定されていたのを、
「0.05≦(Y)≦0.8」の範囲に限定するものである。
そして、(i)及び(ii)は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、訂正事項8による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 新規事項の有無
訂正事項8による訂正は、(8)イで記載したとおりの理由によって、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正であって、新規事項を追加するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項8は、(A)のポリアミドの種類を明細書に記載されていたものに限定し、(Y)の値をより狭い範囲に限定するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
(10)訂正事項9についての訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
ア 訂正の目的について
訂正事項9は、上記訂正事項1~8に係る訂正に伴い訂正される特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るための訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 新規事項の有無
訂正事項9は、上記訂正事項1~8に係る訂正に伴い訂正される特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るための訂正であって、訂正事項1ないし8が、それぞれ、願書に最初に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正であって、新規事項を追加するものではないことは(1)~(9)で述べた通りであるから、訂正事項9は、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項9は、上記訂正事項1~7に係る訂正に伴い訂正される特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るための訂正であって、訂正事項1~8は、新規事項を追加するものではないから、訂正事項9は、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。
エ 願書に添付した明細書に訂正と関係する請求項についての説明
訂正事項9は、特許請求の範囲に記載した全ての請求項に関係しており、本件訂正では、実質的に全ての請求項について訂正を請求している。
したがって、訂正事項9は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第4項に適合するものである。
(11)まとめ
以上のとおり、本件訂正請求は、特許法第120条の5第4項に規定される一群の請求項ごとにされたものであるし、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであって、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第4項ないし第6項に適合するものであるから、本件訂正を認める。
なお、特許権者は、本件訂正請求において、訂正前の請求項2、3及び6について、独立形式とする訂正(訂正事項2、3及び6)を、請求項4及び5について、請求項1との間の引用関係を解消する訂正(訂正事項4及び5)を請求するとともに、本訂正請求において「引用関係の解消の求め」を要求している。そして、本件訂正は認められるので、訂正後の請求項2及び3とこれらに従属する請求項4及び5のみが、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項を構成することになる。
第3 訂正後の本件発明
本件特許の請求項1ないし8に係る発明(それぞれ、「本件発明1」ないし「本件発明8」といい、まとめて「本件発明」ともいう。)は、本件訂正の請求により訂正された特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
削除
【請求項2】
(A):(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、
(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、
を、含むポリアミドであって、
当該(A)ポリアミドが、
(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、からなるポリアミド、または、
(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、εカプロラクタムからなる単位と、からなるポリアミドであり、
当該ポリアミド中における全カルボン酸成分中のイソフタル酸成分比率(x)が、0.05≦(x)≦0.5であり、
かつ、下記式(1)で示される(Y)が、0.05≦(Y)≦0.8である(A)ポリアミド100質量部と、
(Y)=[(EG)-(x)]/[1-(x)] ・・・ (1)
(前記式(1)中、(EG)は、(A)ポリアミド中に含有されている全カルボキシル末端基中のイソフタル酸末端基比率を示し、下記式(2)で示される。
(EG)=イソフタル酸末端基量/全カルボキシル末端基量 ・・・(2))
(B):長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレット中における重量平均繊維長が当該長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットの長さと実質上同一である(B)繊維状強化材100~250質量部と、
を、含有する長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレット。
【請求項3】
(A):(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、からなるポリアミドであって、
当該ポリアミド中における全カルボン酸成分中のイソフタル酸成分比率(x)が、0.05≦(x)≦0.5であり、
かつ、下記式(1)で示される(Y)が、0.05≦(Y)≦0.8である(A)ポリアミド100質量部と、
(Y)=[(EG)-(x)]/[1-(x)] ・・・(1)
(前記式(1)中、(EG)は、(A)ポリアミド中に含有されている全カルボキシル末端基中のイソフタル酸末端基比率を示し、下記式(2)で示される。
(EG)=イソフタル酸末端基量/全カルボキシル末端基量 ・・・(2))
(B):長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレット中における重量平均繊維長が当該長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットの長さと実質上同一である(B)繊維状強化材100~250質量部と、
を、含有し、
前記全カルボン酸成分中のイソフタル酸成分比率(x)、前記イソフタル酸末端基量、及び前記全カルボキシル末端基量が、核磁気共鳴法(NMR)により求めた値である、長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレット。
【請求項4】
前記(B)繊維状強化材が5~20μmの平均繊維径を有するガラス繊維である、請求項2又は3に記載の長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレット。
【請求項5】
ペレット長が5~30mmである、請求項2乃至4のいずれか一項に記載の長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレット。
【請求項6】
(A):(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、からなるポリアミド、または、
(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、εカプロラクタムからなる単位と、からなるポリアミドであり、
当該ポリアミド中における全カルボン酸成分中のイソフタル酸成分比率(x)が、0.05≦(x)≦0.5であり、
かつ、下記式(1)で示される(Y)が、0.05≦(Y)≦0.8である(A)ポリアミド100質量部と、
(Y)=[(EG)-(x)]/[1-(x)] ・・・(1)
(前記式(1)中、(EG)は、(A)ポリアミド中に含有されている全カルボキシル末端基中のイソフタル酸末端基比率を示し、下記式(2)で示される。
(EG)=イソフタル酸末端基量/全カルボキシル末端基量 ・・・(2))
(B):長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレット中における重量平均繊維長が当該長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットの長さと実質上同一である(B)繊維状強化材100~250質量部と、
を、含有する長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットの製造方法であって、
アジピン酸、イソフタル酸、及びヘキサメチレンジアミンを重合する際に、重合系内の内部温度が240℃以上になるまで内部圧力を1.5~5.0MPaに保った後、加熱を続けた状態で、圧力を徐々に抜き、最終内部温度が250℃以上になるように、常圧下又は減圧下で重縮合してポリアミドを得る工程と、
連続した強化用繊維を引きながら得られたポリアミドを含浸する工程と、
を、含む、長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットの製造方法。
【請求項7】
(A):(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、
(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、
を、含むポリアミドであって、
当該(A)ポリアミドが、
(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、からなるポリアミド、または、
(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、εカプロラクタムからなる単位と、からなるポリアミド100質量部と、
(B)繊維状強化材100~250質量部と、
を、含有する長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットを用いて成形を行う際に、
前記(A)ポリアミド中における全カルボン酸成分中のイソフタル酸成分比率(x)が、0.05≦(x)≦0.5であり、
かつ、下記式(1)で示される(Y)が、0.05≦(Y)≦0.8であり、
(Y)=[(EG)-(x)]/[1-(x)]・・・(1)
(前記式(1)中、(EG)は、(A)ポリアミド中に含有されている全カルボキシル末端基中のイソフタル酸末端基比率を示し、下記式(2)で示される。
(EG)=イソフタル酸末端基量/全カルボキシル末端基量・・・(2))
前記長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレット中における前記(B)繊維状強化材の重量平均繊維長が当該ペレットの長さと実質上同一である、長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットを使用することにより、成形品の外観安定性を向上させる方法。
【請求項8】
(A):(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、
(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、
を、含むポリアミドであって、
当該(A)ポリアミドが、
(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、からなるポリアミド、または、
(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、εカプロラクタムからなる単位と、からなり、 当該ポリアミド中における全カルボン酸成分中のイソフタル酸成分比率(x)が、0.05≦(x)≦0.5であり、
かつ、下記式(1)で示される(Y)が、0.05≦(Y)≦0.8である(A)ポリアミド100質量部と、
(Y)=[(EG)-(x)]/[1-(x)] ・・・(1)
(前記式(1)中、(EG)は、(A)ポリアミド中に含有されている全カルボキシル末端基中のイソフタル酸末端基比率を示し、下記式(2)で示される。
(EG)=イソフタル酸末端基量/全カルボキシル末端基量 ・・・(2))
(B)繊維状強化材100~250質量部と、を含み、
前記(B)繊維状強化材が1mm以上の重量平均繊維長で分散してなる成形品。」
以下、「(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、を、含むポリアミド」を、「(A)のポリアミド」と、
「ポリアミド中における全カルボン酸成分中のイソフタル酸成分比率(x)が、0.05≦(x)≦0.5」を、「(x)の条件」と、
「下記式(1)で示される(Y)が、0.05≦(Y)≦0.8」(合議体注;式(1)は省略する。)を「式(Y)の条件」と、
「長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレット中における重量平均繊維長が当該長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットの長さと実質上同一である(B)繊維状強化材」を、「(B)の繊維状強化材」ともいう。
第4 取消理由の概要
当審において平成29年5月22日付けの取消理由通知書で通知した取消理由の概要は次のとおりである。
1.本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備であるから、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
2.本件特許は、発明の詳細な説明の記載について下記の点で、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
3.本件特許の請求項1、3~5に係る発明は、甲第1号証に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(当業者)が容易に発明をすることができたものであるし、本件特許の請求項6に係る発明は、甲第1号証に記載された発明に基づいて、或いは、甲第1号証に記載された発明に甲3或いは甲7に示される周知技術を組み合わせることにより、当業者が容易に発明をすることができたものであるし、本件特許の請求項8に係る発明は、甲第1号証に記載された発明に基づいて、或いは、甲第1号証に記載された発明及び甲第4号証に示される周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、いずれも、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1、3~8に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
甲第1号証:特開2002-234999号公報
甲第2号証:申立人従業員高村元が平成29年2月16日付けで作成した「実験報告書」
甲第3号証:福本修編、「ポリアミド樹脂ハンドブック」、初版、日刊工業新聞社、昭和63年1月30日発行、第142~143頁
甲第4号証:平井利昌監修「エンジニアリングプラスチック」(株)プラスチックス・エージ(1990年6月10日第3版発行)、第272頁
甲第5号証:特開2005-325191号公報
甲第6号証:社団法人日本分析化学会 高分子分析研究懇談会編「新版 高分子分析ハンドブック」(株)紀伊國屋書店(1995年1月12日初版第1刷発行)、222頁
甲第7号証:フィラー研究会編「複合材料とフィラー」(株)シーエムシー出版(2004年4月27日 普及版第1刷発行)、第127~128頁
(以下、それぞれ「甲1」~「甲7」という。いずれも申立人が提示した甲各号証である。)
第5 当審の判断
第5-1 取消理由1(特許法第36条第6項第1号)について
(1)本件発明が解決しようとする課題について
本件訂正後の特許明細書(以下、「本件特許明細書」という。)の発明の詳細な説明の【0010】~【0012】によれば、本件発明2~6が解決しようとする課題は、「過酷な成形条件下において成形した場合においても、成形品の表面外観の安定性が良好で、耐衝撃特性に優れた成形品を与える長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットを提供すること」であり、本件発明7が解決しようとする課題は、「過酷な成形条件下において成形した場合においても、長繊維強化ポリアミド樹脂成形品の外観安定性を向上させる方法を提供すること」であり、本件発明8が解決しようとする課題は、「過酷な成形条件下において成形した場合においても、成形品の表面外観の安定性が良好で、耐衝撃特性に優れた長繊維強化ポリアミド樹脂成形品を提供すること」であると認められる。(以下、本件発明2ないし8が解決しようとする課題をまとめて、「本件発明の課題」ともいう。)
(2)取消理由1の概略
訂正前の本件発明1~8に対して通知された取消理由1は、具体的には、概略以下のとおりである。
本件特許明細書の発明の詳細な説明からは、当業者は、長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットを構成するポリアミドが、「式(Y)の条件」が-0.3≦(Y)<0.05の範囲の場合についてまで、過酷な成形条件下における成形品表面外観の安定性及び耐衝撃特性に優れた成形品を得ることができることは理解できない。
本件特許明細書の【0021】には、「(Y)は、全カルボキシル末端基において、イソフタル酸末端基がどれだけ選択的に存在しているかを表す指標」であることは記載されるが、そのことから、「式(Y)の条件」が-0.3≦(Y)<0.05の範囲にあるポリアミドが、訂正前の本件発明の課題を解決できることを当業者に認識できるとはいえないし、その点が、本件特許の出願時の技術常識であるともいえない。してみると、「式(Y)の条件」として、-0.3≦(Y)<0.05の範囲を包含する訂正前の本件発明1、3ないし8は、本件特許明細書の発明の詳細な説明において、上記本件発明の課題を解決できることを当業者が認識できる範囲を超えて、特許を請求するものである。
また、本件特許明細書の発明の詳細な説明からは、当業者は、長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットを構成するポリアミドが、「(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、からなるポリアミド」であるか「(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、εカプロラクタムからなる単位と、からなるポリアミド」以外である場合についてまでは、過酷な成形条件下における成形品表面外観の安定性及び耐衝撃特性に優れた成形品を得ることができることは理解できない。
本件特許明細書の【0025】には、「本実施形態の目的(合議体注;これは、本件特許明細書の【0012】に記載されるとおり、「過酷な成形条件下において成形した場合においても、成形品の表面外観の安定性が良好で、耐衝撃特性に優れた長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレット及び成形品を提供すること」と認める。)を損なわない範囲で、アジピン酸、イソフタル酸以外の種々のジカルボン酸成分や、ヘキサメチレンジアミン以外の種々のジアミン、さらには、アミノ酸、ラクタム等の種々の共重合成分をその構成成分として用いることができる。」との一般的な記載がされている。
しかしながら、ポリアミドの構成成分の違いにより、得られるポリアミドの融点や固化温度、結晶性といった物性が変化することは本件特許出願時の技術常識であり、物性が変化すれば、当然、成形品の表面外観安定性や耐衝撃性等の機械的強度も異なってくるから、このような記載からは、共重合成分やその共重合割合についての特定がなく、任意の共重合成分が任意の割合で共重合されていてもよいポリアミドであり、かつ、過酷な成形条件下において成形した場合においても成形品の表面外観の安定性が良好で、耐衝撃特性に優れた成形品を与えることができる長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレット及び成形品を提供することが可能なものを、当業者は理解することができない。
してみると、ポリアミドが、「(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、からなるポリアミド」であるか「(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、εカプロラクタムからなる単位と、からなるポリアミド」以外である場合を包含する訂正前の本件発明1ないし8は、本件特許明細書の発明の詳細な説明において、上記本件特許発明の課題を解決できることを当業者が認識できる範囲を超えて、特許を請求するものである。
(3)取消理由1についての判断
訂正により、本件発明2ないし8においては、長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットを構成するポリアミドが、「式(Y)の条件」が「0.05≦(Y)≦0.8」であることが特定され、また、長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットを構成するポリアミドが、「(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、からなるポリアミド、または、(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、εカプロラクタムからなる単位と、からなるポリアミド」(本件発明2、6及び7)、あるいは、「(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、からなるポリアミド」(本件発明3ないし5及び8)と特定された。
そして、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、(Y)が「全カルボキシル末端基において、イソフタル酸末端基がどれだけ選択的に存在しているかを表す指標」であることが記載されており(【0021】)、また、成形品の製造に使用される長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットを構成するポリアミドが、「(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、からなるポリアミド」(実施例1~8、10及び11)または「(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、εカプロラクタムからなる単位と、からなるポリアミド」(実施例9)であって、かつ、(Y)が0.15~0.57の範囲内のものが、過酷な成形条件下において成形した場合においても、成形品の表面外観の安定性が良好で、耐衝撃特性に優れた成形品を与えることができることが具体的に示されている。
そうすると、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載から、当業者は、0.05≦(Y)≦0.8の範囲にあるポリアミドが、本件発明の課題を解決できることを認識できるといえる。
よって、本件発明2ないし8は、本件特許明細書の発明の詳細な説明において、本件特許発明の課題が解決されると当業者が認識できる範囲内のものであるといえ、本件発明2ないし8は、発明の詳細な説明に記載したものといえる。
第5-2 取消理由2(特許法第36条第4項第1号)について
(1)取消理由2の概略
訂正前の本件発明1ないし8に対して通知された取消理由2は、具体的には、概略以下のとおりである。
本件特許明細書の発明の詳細な説明には、「(EG)=イソフタル酸末端基量/全カルボキシル末端基量」で定義される(EG)の値の具体的な調整方法については記載されていないし、その調整方法が、本件特許出願時、当業者に技術常識として知られていたともいえない。
そうすると、発明の詳細な説明の記載からは、当業者は、(EG)の値に基づいて「(Y)=[(EG)-(x)]/[1-(x)]」((x)はポリアミド中における全カルボン酸成分中のイソフタル酸成分比率)の式により算出されるものとして定義される(Y)の値の調整方法について、当業者は理解できないし、それが本件特許出願時の技術常識として知られていたともいえない。
そうすると、本件発明1ないし8に特定されるポリアミドのうち実施例で具体的に製造された特定のポリアミド以外のものについては、どのようにすれば本件発明1~8で特定される、「-0.3≦(Y)≦0.8」を満たすポリアミドを製造できるのかを、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載から当業者が理解できるとはいえない。
よって、発明の詳細な説明は、本件発明1~8を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されていない。
(2)取消理由1についての判断
訂正により、本件発明2ないし8の「(A)ポリアミド」は、「(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、からなるポリアミド、または、(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、εカプロラクタムからなる単位と、からなるポリアミド」(本件発明2、6及び7)、「(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる
単位と、からなるポリアミド」(本件発明3ないし5及び8)に訂正されたところ、
本件発明2ないし8では、この特定の組成からなる「(A)ポリアミド」であって、かつ、
「下記式(1)で示される(Y)が、0.05≦(Y)≦0.8である(A)ポリアミド
(Y)=[(EG)-(x)]/[1-(x)] ・・・(1)
(前記式(1)中、(EG)は、(A)ポリアミド中に含有されている全カルボキシル末端基中のイソフタル酸末端基比率を示し、下記式(2)で示される。
(EG)=イソフタル酸末端基量/全カルボキシル末端基量 ・・・(2))」
であるポリアミドが発明特定事項となっている。
(なお、(1)の式中の(x)は、「ポリアミド中における全カルボン酸成分中のイソフタル酸成分比率」と定義されている。)
そこで、本件特許の出願時の技術常識を参酌して、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載から、当業者が、本件発明2ないし8で特定される上記特定の組成からなる「(A)ポリアミド」であって「0.05≦(Y)≦0.8」の範囲を満たすもの全体について製造でき、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は、当業者が本件発明2ないし8を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものであるといえるかについて検討する。
本件特許明細書の発明の詳細な説明には、以下の記載がある。(下線は、当審で付した。)
「【0021】
前記式(1)において、(Y)は、全カルボキシル末端基において、イソフタル酸末端基がどれだけ選択的に存在しているかを表す指標である(以下、「ブロック化比率(Y)」とも表記する。)。
【0022】
(A)ポリアミド中における全カルボン酸成分中のイソフタル酸成分比率(x)と、(A)ポリアミド中に含有されている全カルボキシル末端基中のイソフタル酸末端基比率(EG)には相関性があり、すなわちブロック化比率(Y)は、ポリアミド66/6I中の6I鎖単位が理論値(x=EG)に対して、どれだけブロック化に移行、すなわちどれだけポリアミド中の6I鎖単位の比率が高くなっており、イソフタル酸末端基比率が高くなっているかを示す指標でもある。
【0023】
従って、上記式(1)の分母[1-(x)]は、(A)ポリアミド中における全カルボン酸成分中のイソフタル酸末端基以外の末端基比率であり、上記式(1)の分子[(EG)-(x)]は、理論上のイソフタル酸末端基比率(=イソフタル酸成分比率)との差分イソフタル酸末端基比率、すなわち実際のイソフタル酸末端基比率と理論上のイソフタル酸末端基比率との差分となるため、上記式(1)によりブロック化比率の指標である(Y)を求めることができる。・・・
【0024】
本実施形態の長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットを構成する(A)ポリアミドにおいて、前記ブロック化比率(Y)は、-0.3≦(Y)≦0.8であり、好ましくは0.05≦(Y)≦0.8、より好ましくは0.05≦(Y)≦0.7、さらに好ましくは0.1≦(Y)≦0.6の範囲である。
イソフタル酸成分比率(x)を上記範囲内とし、かつ前記(Y)の範囲を-0.3≦(Y)≦0.8とすることにより、過酷な成形条件下における成形品表面外観の安定性、耐衝撃特性が優れたものとなる。」
「【0039】
((A)ポリアミドの製造方法)
・・・(A)ポリアミドの製造方法としては、例えば、アジピン酸、イソフタル酸、ヘキサメチレンジアミン、及び必要に応じてその他の成分の混合物の水溶液、又は水の懸濁液を加熱し、溶融状態を維持したまま重合させる方法(熱溶融重合法);熱溶融重合法で得られたポリアミドを融点以下の温度で固体状態を維持したまま重合度を上昇させる方法(熱溶融重合・固相重合法);アジピン酸、イソフタル酸、ヘキサメチレンジアミン、及び必要に応じてその他の成分の混合物の水溶液、又は水の懸濁液を加熱し、析出したプレポリマーをさらにニーダー等の押出機で再び溶融させて重合度を上昇させる方法(プレポリマー・押出重合法);アジピン酸、イソフタル酸、ヘキサメチレンジアミン、及び必要に応じてその他の成分の混合物、固体塩又は重縮合物を、固体状態を維持したまま重合(固相重合法)させる方法等が挙げられる。
全カルボン酸成分中のイソフタル酸成分比率(x)を上記数値範囲内に制御するための方法としては、原料の仕込み量の調整、重合条件の調整が有効である。
上記式(1)におけるブロック化比率の指標となる(Y)を上記数値範囲内に制御するためには、イソフタル酸成分のブロック化を制御することが必要である。具体的には、重合系内で、溶融状態を維持しながら、圧力を適宜調整し、重合温度を好ましくは100℃以上、より好ましくは120℃以上、さらに好ましくは170℃以上としながら、均一混合下において重縮合反応を進め、最終重合内部温度が好ましくは250℃以上、より好ましくは260℃以上になるような条件下で重合させる熱溶融重合法を用いることにより制御することができる。
【0040】
重合形態としては、特に限定されず・・・。
また、重合装置も特に限定されず・・・。
【0041】
上述したように、(Y)が-0.3≦(Y)≦0.8の範囲となるようにするには、熱溶融重合法によりポリアミドを作製することが好ましく、バッチ式の熱溶融重合法によりポリアミドを作製することがより好ましい。
バッチ式の熱溶融重合法の一例について以下に説明する。
重合温度条件については特に限定されないが、好ましくは100℃以上、より好ましくは120℃以上、さらに好ましくは170℃以上である。
例えば、アジピン酸、イソフタル酸、及びヘキサメチレンジアミンとの混合物、固体塩又は水溶液を110~200℃の温度下で攪拌し、約60~90%まで水蒸気を徐々に抜いて加熱濃縮する。
その後、内部圧力を約1.5~5.0MPa(ゲージ圧)になるまで加熱を続ける。
その後、水及び/又はガス成分を除きながら、圧力を約1.5~5.0MPa(ゲージ圧)に保ち、内部温度が好ましくは240℃以上、より好ましくは245℃以上に達した時点で、水及び/又はガス成分を除きながら圧力を徐々に抜き、最終内部温度が好ましくは250℃以上、より好ましくは260℃以上になるように、常圧で又は減圧して重縮合を行う熱溶融重合法を用いることができる。
さらには、アジピン酸、イソフタル酸、及びヘキサメチレンジアミンとの混合物、固体塩又は重縮合物を融点以下の温度で熱重縮合させる固相重合法等も用いることができる。これらの方法は必要に応じて組み合わせてもよい。
【0042】
ニーダー等の押出型反応機を用いる場合・・・
【0043】
本実施形態の長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットを構成する(A)ポリアミド(ポリアミド共重合体を含む、以下同じ。)の製造においては、所定の触媒を用いることが好ましい。
触媒としては、ポリアミドに用いられる公知のものであれば特に限定されず・・・」
また、【0117】の表1の実施例1~11には、ポリアミドが、「(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、からなるポリアミド」(実施例1~8、10及び11)であるか、「(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、εカプロラクタムからなる単位と、からなるポリアミド」(実施例9)のいずれかである「(A)のポリアミド」についての結果として、以下の記載がある。
「
」
これらの本件特許明細書の記載によれば、「0.05≦(Y)≦0.8」を満たす「(A)のポリアミド」に関し、本件特許明細書の【0023】に、「式(1)の分母[1-(x)]は、(A)ポリアミド中における全カルボン酸成分中のイソフタル酸末端基以外の末端基比率であり、上記式(1)の分子[(EG)-(x)]は、理論上のイソフタル酸末端基比率(=イソフタル酸成分比率)との差分イソフタル酸末端基比率、すなわち実際のイソフタル酸末端基比率と理論上のイソフタル酸末端基比率との差分となるため、上記式(1)によりブロック化比率の指標である(Y)を求めることができる」と記載されているから、「(Y)」は、「(x)」と、「(EG)」が決まれば、一義的に定まる値であると言える。
そして、「(x)」については、【0039】に、「全カルボン酸成分中のイソフタル酸成分比率(x)を上記数値範囲内に制御するための方法としては、原料の仕込み量の調整、重合条件の調整が有効である。」と記載されているし、本件特許明細書の表1の実施例1~4等からもその点が読み取れるから、本件特許明細書の記載からは、カルボン酸成分原料中のイソフタル酸成分の仕込み量を高めることで、全カルボン酸成分中のイソフタル酸成分比率(x)を高めた(A)のポリアミドを製造できることが理解できる。
ここで、明細書の【0021】には、「(Y)は、全カルボキシル末端基において、イソフタル酸末端基がどれだけ選択的に存在しているかを表す指標(以下、「ブロック化比率(Y)」とも表記する。)」であると記載されており、また、【0039】~【0043】には、「(Y)の制御方法」に関し、「(Y)を上記数値範囲内に制御するためには、イソフタル酸成分のブロック化を制御することが必要」(【0039】)であり、より具体的には、重合系内で、アジピン酸、イソフタル酸、及びヘキサメチレンジアミンとの混合物、固体塩又は水溶液を110~200℃の温度下で攪拌し、約60~90%まで水蒸気を徐々に抜いて加熱濃縮し、その後、内部圧力を約1.5~5.0MPa(ゲージ圧)になるまで加熱を続け、その後、水及び/又はガス成分を除きながら、圧力を約1.5~5.0MPa(ゲージ圧)に保ち、内部温度が好ましくは240℃以上に達した時点で、水及び/又はガス成分を除きながら圧力を徐々に抜き、最終内部温度が好ましくは250℃以上になるように、常圧で又は減圧して重縮合を行う熱溶融重合法を用いることにより製造できる旨の記載がされている(【0041】;以下、【0041】に記載の製造方法を「段落0041の製造方法」という。)。
そして、本件特許明細書には、具体的な実験例として、特定の組成からなる「(A)ポリアミド」であって、上記「段落0041の製造方法」に合致する製造例1~9の重合方法によって、(Y)の値が、0.15~0.57の範囲のポリアミドA1~A9が得られたことが具体的に記載されており(実施例1~11)、一方、「段落0041の製造方法」に合致しない製造例12~14の重合方法によって得られたポリアミドA12~14では、本件発明の(Y)の範囲を満たさないことが確認されている(比較例3~5)。
また、(Y)の値を算出するための(EG)は、「イソフタル酸末端基量/全カルボキシル末端基量」であり、ポリアミド共重合体の末端の調整により変化する値であるといえるところ、ポリアミド共重合体の末端調整のための方法として、末端調整剤の存在下でモノマーを重合させることは周知慣用技術である(例えば、特開2006-124669号公報(特許権者の意見書に添付された参考文献1)の【0035】、【0037】、【0039】、特開2002-194210号公報(同参考文献2)の【0022】、特開平11-92657号公報(同参考文献3)の【0009】、【0010】、特開平3-76755号公報(同参考文献4)の3頁右下欄9~15行、特開2011-219635号公報(同参考文献5)の【0019】、【0020】)し、その際、末端調整剤としてアジピン酸を用いることも周知慣用技術といえる(例えば、参考文献1の【0039】、参考文献3の【0010】、参考文献5の【0020】)。
そして、参考文献2の【0022】の「末端調整剤として…二塩基酸を用いるとアミノ末端基が減少するとともにカルボキシル末端基が増大する。」との記載から、末端調整剤として、ジカルボン酸を用いるとアミノ末端基が減少するとともにカルボキシル末端基が増大することが、本件特許の出願時の技術常識と理解でき、これに加え、本件特許明細書の【表1】から、過剰にアジピン酸を添加して重合した製造例1のポリアミド(A1)(実施例1)と過剰のアジピン酸を添加せずに重合した製造例5のポリアミド(A5)(実施例5)との対比や、過剰にアジピン酸を添加して重合した製造例3のポリアミド(A3)(実施例3)と過剰のアジピン酸を添加せずに重合した製造例6のポリアミド(A6)(実施例6)との対比から、アジピン酸を過剰に用いると、(x)の値が同じ場合であっても、(EG)を減少させ、(Y)の値を減少させることが可能であることが理解できる。
そうすると、末端調整剤としてアジピン酸を用いることが周知慣用技術であるとの本件特許出願時の技術常識に照らせば、「段落0041の製造方法」についての説明の記載、及び、過剰のアジピン酸の添加条件を変化させて得られた、(Y)の値が、0.15~0.57の範囲のポリアミドA1~A9の具体的な製造例の記載をあわせみた当業者は、「0.05≦(Y)≦0.8」を満たす、上記特定の組成からなる(A)のポリアミドを、過度の試行錯誤を伴わずに製造できるといえる。
よって、本件特許の出願時の技術常識を参酌して、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載から、当業者は、本件発明2ないし8で特定される上記特定の組成からなる「(A)ポリアミド」であって、「0.05≦(Y)≦0.8」の範囲を満たすものについて過度の試行錯誤を伴わずに製造できるといえる。
(4)小括
以上のとおりであるから、本件特許明細書の発明の詳細な説明は、当業者が本件発明2ないし8を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものといえる。
第5-3 取消理由3(特許法第29条第2項)について
1.取消理由3の概要
訂正前の本件発明1ないし8に対して通知された取消理由3は、具体的には、概略以下のとおりである。
訂正前の本件発明1、3ないし5は、甲1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるし、訂正前の本件発明6は、甲1に記載された発明に基づいて、あるいは、甲1に記載された発明に甲3あるいは甲7に示される周知技術を組み合わせることにより、当業者が容易に発明をすることができたものであるし、訂正前の本件発明8は、甲に記載された発明に基づいて、あるいは、甲1に記載された発明及び甲4に示される周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
1.甲1の記載等
(1)甲1の記載
甲1には、以下の記載がある。なお、下線は、合議体が付した。
「【請求項1】 少なくとも次の成分(A)、(B)から構成される柱状の成形材料であって、成分(B)が軸心方向にほぼ平行に配列し、かつ成分(B)の長さが成形材料の長さと実質的に同じであることを特徴とする成形材料。
成分(A):少なくとも、
(a1)ヘキサメチレンジアミンアジパミド単位が60~90重量%、
(a2)ヘキサメチレンイソフタルアミド単位が1~30重量%、及び
(a3)カプロアミド単位が0~10重量%、
からなるポリアミド樹脂30~95重量%
成分(B):強化繊維束5~70重量%
・・・
【請求項7】 長さが1~50mmの範囲内である請求項1~6のいずれかに記載の成形材料。
【請求項8】 成形材料の形態が、長繊維ペレットである請求項1~7のいずれかに記載の成形材料。
・・・
【請求項14】 請求項1~13のいずれかに記載の成形材料を成形してなる成形品。
【請求項15】 少なくとも次の第1、第2工程からなる請求項1~13のいずれかに記載の成形材料の製造方法。
第1工程:成分(A)を溶融させた後、その中に少なくとも連続した成分(B)を通過せしめ、連続したストランドを得るストランド化工程
第2工程:連続したストランドを冷却した後、切断して柱状の成形材料を得る切断工程
【請求項16】 第1工程の前に、次の予備工程を有する請求項15に記載の成形材料の製造方法。
予備工程:成分(C)を溶融させた後、成分(B)中に含浸させる含浸工程
・・・」
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、長繊維で強化された熱可塑性樹脂からなる成形材料に関する。さらに詳しくは、成形性を損なうことなく、成形品とした場合に機械特性(特に弾性率、衝撃強度)、吸湿時の機械特性、寸法安定性、表面外観に優れた成形材料およびその製造方法、ならびにこれから得られる成形品に関するものである。
「【0019】
また、強化繊維の平均繊維径は、得られる成形品の機械特性と表面外観の観点から、1~20μmの範囲であることが好ましく、2~12μmの範囲であることがより好ましく、3~10μmの範囲であることが更に好ましい。」
「【0061】
【実施例】以下に実施例および比較例を示す・・・
[成分(A)の特性評価方法]
(1)相対粘度(98%硫酸法)ηr
ポリマー1gを98%硫酸100mlに溶解し、オストワルド粘度計を用いて25℃にて測定した。
[熱可塑性樹脂組成物の特性評価方法]
・・・
(4)表面外観
上記で成形した・・・薄肉平板成形品の表面を目視観察し、強化繊維の分散性不良欠陥(浮き、膨れ)の数を測定した。
・・・
【0065】 ・・・
成分(A)ポリアミド樹脂
本発明に用いた成分(A)は以下の通り調製した。また得られた各種の成分(A)の相対粘度(98%硫酸法)ηrについて、表1に記載した。
【0066】
【表1】
【0067】A-1: ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸の当モル塩、ヘキサメチレンジアミンとイソフタル酸の当モル塩およびε-カプロラクタムをそれぞれ表1に記載の重量比で投入し、投入した全原料と同量の純水を加え、重合缶内を充分に窒素置換した後、撹拌しながら加温を開始した。缶内圧力は最大20kg/cm2に調節しながら最終到達温度は270℃とした。水浴中に吐出したポリマーをストランドカッターでペレタイズした。
【0068】A-2、3: 表1に示す共重合比率に従い、上記A-1と全く同様の方法で調整した。
【0069】A-4:ポリアミド6ホモポリマー
東レ(株)製 ナイロン樹脂 (ηr=2.35)
A-5: 上記A-1と全く同様の方法で、ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸の当モル塩を重合し、ポリアミド66ホモポリマーを得た。
成分(B)強化繊維束
B-1:東レ(株)製トレカ T700SC-12K
成分(C)フェノール系重合体
・・・
成分(D)導電性付与剤
・・・
成分(E)難燃剤
・・・
(実施例1~5、比較例1~2)あらかじめ、成分(A)、及び必要に応じ、成分(C)、(D)、(E)の一部または全量を2軸押出機にてそれぞれコンパウンドしマスターペレットとした。2軸押出機は、日本製鋼所(株)製TEX30α型2軸押出機を使用し、成分(A)の樹脂成分をメインフィーダーより供給し、その他成分をサイドフィーダーから供給した。シリンダー及びダイス温度:260~290℃、スクリュー回転数:250rpmに設定した。また必要に応じ、ベント部を設けた。
【0070】長繊維ペレットの製造は以下に示す方法で行った。
【0071】成分(B)の連続した繊維束を200℃に加熱しながら開繊させ、十分溶融させた成分(C)の一部または全量をギアポンプにて計量し、コーターを用いて成分(B)の連続繊維に塗布した。さらに、その繊維束を、180℃に加熱された一直線上に上下交互に配置された10個のロール(φ50mm)間に通過させ、成分(C)を成分(B)に十分含浸させた。
【0072】続いて、成分(A)、及びまたは得られたマスターペレットの一部または全量を単軸押出機にて、その先端に取り付けたクロスヘッドダイ中に十分混練された状態で押し出すと同時に、上記操作を経た成分(B)の連続糸も上記クロスヘッドダイ中に連続的に供給することによって、溶融した成分(A)及びまたはマスターペレットの成分を成分(B)の繊維表面に被覆した。
【0073】上記記載の方法により得られたストランドを、冷却後、カッターにて7mmの長さに切断して芯鞘構造の柱状ペレットを得た。さらに、筐体成形用の樹脂ペレットとしての組成及び添加量が表2記載の通りとなるよう、得られたペレットに成分(A)及びまたはマスターペレットをブレンドし成形材料とした。
【0074】上記の長繊維ペレットの製造は連続してオンラインで行った。
【0075】得られた成形材料を80℃、5時間以上真空下で乾燥させた後、樹脂組成物の特性評価に供した。
【0076】得られた成形材料を、日本製鋼所(株)製J150EII-P型射出成形機を用いて、各試験片用の金型を用いて成形を行った。条件はいずれもシリンダー温度:280℃、金型温度:70℃、冷却時間30秒、射出速度70%とした。成形後、真空下で80℃、12時間の乾燥を行い、かつデシケーター中で室温、3時間保管した乾燥状態の試験片について評価を行った。以上の実施例1~5、比較例1~2の組成および評価結果を、表2にまとめた。
【0077】
【表2】
【0078】表2の実施例及び比較例より以下のことが明らかである。
【0079】実施例1~5は全て、優れた成形性と高い曲げ弾性率(d)及びアイゾット衝撃強度を兼ね備えていることがわかる。
【0080】実施例1~3と、比較例1、2との対比より、本発明の成形材料からなる成形品が曲げ弾性率(w)、表面外観及び寸法安定性に優れていることが明らかである。」
(2)甲1-1~甲1-3発明
甲1の【0001】の記載によれば、甲1は、長繊維で強化された熱可塑性樹脂からなる成形材料及びその製造方法、成形品に関するものである。
甲1の【0066】、【0067】及び【0070】~【0073】の記載によれば、長繊維ポリアミド樹脂組成物ペレットに関し、甲1には、表1のA-1或いはA-3の欄に記載の組成からなるポリアミド原料からの、所定の相対粘度(98%硫酸法)ηrを有するポリアミド成分(A-1)或いは(A-3)(【0066】)と、強化繊維束である東レ(株)製トレカ T700SC-12K(【0068】)とを含むペレットが記載されている。
そうすると、甲1には、次の2つの長繊維ポリアミド樹脂組成物ペレットの発明が記載されていると認められる。
<甲1-1(A1)発明>
「少なくとも次の成分(A-1)、(B)から構成される柱状の長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレット。
成分(A-1):相対粘度(98%硫酸法)ηr2.30の共重合ポリアミド樹脂であって、
(a1)ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸の当モル塩76重量%、
(a2)ヘキサメチレンジアミンとイソフタル酸の当モル塩16重量%、及び
(a3)ε-カプロラクタム8重量%、
からなるポリアミド原料からのポリアミド樹脂、
成分(B):強化繊維束である東レ(株)製トレカ T700SC-12K」
<甲1-1(A3)発明;>
「少なくとも次の成分(A-3)、(B)から構成される柱状の長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレット。
成分(A-3):相対粘度(98%硫酸法)ηr2.35の共重合ポリアミド樹脂であって、
(a1’)ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸の当モル塩90重量%、
(a2’)ヘキサメチレンジアミンとイソフタル酸の当モル塩10重量%
からなるポリアミド原料からのポリアミド樹脂、
成分(B):強化繊維束である東レ(株)製トレカ T700SC-12K」
また、甲1には、長繊維ポリアミド樹脂組成物ペレットの製造方法に関し、【0066】の表1のA-1又はA-3の欄に記載の組成からなるポリアミド原料から【0067】に記載のポリアミドの製造工程により、成分(A-1)或いは(A-3)のポリアミド樹脂を製造し、次いで、【0070】~【0073】に記載の長繊維ペレットの製造工程に従い、上記ポリアミド樹脂と、強化繊維束である東レ(株)製トレカ T700SC-12Kとを含む、長繊維ポリアミド樹脂組成物ペレットを製造したことが記載されている。
そうすると、甲1には、次の2つの長繊維ポリアミド樹脂組成物ペレットの製造方法の発明が記載されていると認められる。
<甲1-2(A1)発明>
「甲1-1(A1)発明の柱状の長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットの製造方法であって、
(A1)原料から、以下のポリアミドの製造工程により、成分(A-1)のポリアミド樹脂を製造する工程、
成分(B)である東レ(株)製トレカ T700SC-12Kの連続した繊維束を開繊させ、十分溶融させた成分(C)であるフェノール系重合体を塗布、含浸させる予備工程、
成分(A)をクロスヘッドダイ中に押し出すと同時に、上記予備工程を経た成分(B)の連続糸も上記クロスヘッドダイ中に連続的に供給することによって、溶融した成分(A-1)を成分(B)の繊維表面に被覆してストランドを得る工程、
得られたストランドを、冷却後、7mmの長さに切断して柱状ペレットを得る工程、
により、
柱状の長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットを製造する方法。
ポリアミドの製造工程:
重合缶内にポリアミド原料を投入し、投入した全原料と同量の純水を加え、重合缶内を充分に窒素置換した後、撹拌しながら加温を開始した。缶内圧力は最大20kg/cm2に調節しながら最終到達温度は270℃とした。水浴中に吐出したポリマーをストランドカッターでペレタイズした。」
<甲1-2(A3)発明>
「甲1-1(A3)発明の柱状の長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットの製造方法であって、
(A1)原料から、以下のポリアミドの製造工程により、成分(A-3)のポリアミド樹脂を製造する工程、
成分(B)である東レ(株)製トレカ T700SC-12Kの連続した繊維束を開繊させ、十分溶融させた成分(C)であるフェノール系重合体を塗布、含浸させる予備工程、
成分(A)をクロスヘッドダイ中に押し出すと同時に、上記予備工程を経た成分(B)の連続糸も上記クロスヘッドダイ中に連続的に供給することによって、溶融した成分(A-3)を成分(B)の繊維表面に被覆してストランドを得る工程、
得られたストランドを、冷却後、7mmの長さに切断して柱状ペレットを得る工程、
により、
柱状の長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットを製造する方法。
ポリアミドの製造工程:
重合缶内にポリアミド原料を投入し、投入した全原料と同量の純水を加え、重合缶内を充分に窒素置換した後、撹拌しながら加温を開始した。缶内圧力は最大20kg/cm2に調節しながら最終到達温度は270℃とした。水浴中に吐出したポリマーをストランドカッターでペレタイズした。」
さらに、甲1の表2に、実施例1として、成分(A)のポリアミド樹脂として(A-1)を77重量%、及び、成分(B)の強化繊維として、炭素繊維である(B-1)を20重量%含む成形品が、また、実施例3として、成分(A)のポリアミド樹脂として(A-3)を77重量%、及び、成分(B)の強化繊維として、炭素繊維である(B-1)を20重量%含む成形品が記載され、表2によれば、該成形品は、【0061】の「(4)表面外観」の評価の記載に従い、成形品の表面を目視観察し、強化繊維の分散性不良欠陥の数を測定して評価したところ、表面外観が○○(特に優れる)或いは○(優れる)との評価であった。
そして、甲1-1(A1)発明或いは甲1-1(A3)発明の認定において指摘した甲1の記載を踏まえれば、甲1には、次の成形品の発明が記載されていると認められる。
<甲1-3(A1)発明>
「少なくとも次の成分(A-1)、(B)
成分(A-1):相対粘度(98%硫酸法)ηr2.30の共重合ポリアミド樹脂であって、
(a1)ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸の当モル塩76重量%、
(a2)ヘキサメチレンジアミンとイソフタル酸の当モル塩16重量%、及び
(a3)ε-カプロラクタム8重量%、
からなるポリアミド原料からのポリアミド樹脂 77重量%と、
成分(B):強化繊維である東レ(株)製トレカ T700SC-12K 20重量%と、
を、含み、成分(B)が成形品中に分散してなるポリアミド樹脂成形品。 」
<甲1-3(A3)発明>
「少なくとも次の成分(A-3)、(B)
成分(A-3):相対粘度(98%硫酸法)ηr2.30の共重合ポリアミド樹脂であって、
(a1)ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸の当モル塩76重量%、
(a2)ヘキサメチレンジアミンとイソフタル酸の当モル塩16重量%、及び
(a3)ε-カプロラクタム8重量%、
からなるポリアミド原料からのポリアミド樹脂 77重量%と、
成分(B):強化繊維である東レ(株)製トレカ T700SC-12K 20重量%と、
を、含み、成分(B)が成形品中に分散してなるポリアミド樹脂成形品。」
2.対比及び判断
以下において、「甲1-1(A1)発明」と「甲1-1(A3)発明」をあわせて「甲1-1発明」と、「甲1-2(A1)発明」と「甲1-2(A3)発明」をあわせて「甲1-2発明」と、「甲1-3(A1)発明」と「甲1-3(A3)発明」をあわせて「甲1-3発明」という。
また、「甲1-2発明」における、「ポリアミドの製造工程:重合缶内にポリアミド原料を投入し、投入した全原料と同量の純水を加え、重合缶内を充分に窒素置換した後、撹拌しながら加温を開始した。缶内圧力は最大20kg/cm2に調節しながら最終到達温度は270℃とした。水浴中に吐出したポリマーをストランドカッターでペレタイズした。」は、以下、単に、「ポリアミドの製造工程:」とのみ記載し、以降の記載を省略する場合がある。
(1)本件発明2
ア 対比
本件発明2と甲1-1発明を対比する。
甲1-1(A1)発明における
「成分(A-1):相対粘度(98%硫酸法)ηr2.30の共重合ポリアミド樹脂であって、
(a1)ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸の当モル塩76重量%、
(a2)ヘキサメチレンジアミンとイソフタル酸の当モル塩16重量%、及び
(a3)ε-カプロラクタム8重量%、
からなるポリアミド原料からのポリアミド樹脂」は、
そのポリアミド原料組成からみて、本件発明2における「(A):(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、を、含むポリアミド」であって、「当該(A)ポリアミドが、・・・(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、εカプロラクタムからなる単位と、からなるポリアミド」である場合に相当するし、
甲1-1(A3)発明における
「成分(A-3):相対粘度(98%硫酸法)ηr2.35の共重合ポリアミド樹脂であって、
(a1’)ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸の当モル塩90重量%、
(a2’)ヘキサメチレンジアミンとイソフタル酸の当モル塩10重量%
からなるポリアミド原料からのポリアミド樹脂」は、
そのポリアミド原料組成からみて、本件発明2における「(A):(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、を、含むポリアミド」であって、「当該(A)ポリアミドが、(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、からなるポリアミド」である場合に相当する。
また、甲1-1発明における「成分(B):強化繊維束である東レ(株)製トレカ T700SC-12K」は、本件発明2における「(B)繊維状強化材」に相当する。
したがって、本件発明2と甲1-1発明は、
「(A):(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、
(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、
を、含むポリアミドであって、
当該(A)ポリアミドが、
(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、からなるポリアミド、または、
(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、εカプロラクタムからなる単位と、からなるポリアミドと、
(B)繊維状強化材と、
を、含有する長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレット。」
で一致し、
以下の点で相違している。
<相違点1>
(B)繊維状強化材について、本件発明2では、「長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレット中における重量平均繊維長が当該長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットの長さと実質上同一である」と特定されているのに対して、甲1-1発明では、かかる特定はなされていない点。
<相違点2>
(A)のポリアミドについて、本件発明2では、「ポリアミド中における全カルボン酸成分中のイソフタル酸成分比率(x)が、0.05≦(x)≦0.5であり、
かつ、下記式(1)で示される(Y)が、0.05≦(Y)≦0.8である(A)ポリアミドと、
(Y)=[(EG)-(x)]/[1-(x)] ・・・(1)
(前記式(1)中、(EG)は、(A)ポリアミド中に含有されている全カルボキシル末端基中のイソフタル酸末端基比率を示し、下記式(2)で示される。
(EG)=イソフタル酸末端基量/全カルボキシル末端基量 ・・・(2))」を満たすものであることが特定されている(つまり、第3で記載した「(x)の条件」及び「式(Y)条件」を満たすものであることが特定されている)のに対して、甲1-1発明では、かかる特定はなされておらず、(A)のポリアミドが、「(x)の条件」及び「式(Y)条件」を満たすものであるかは不明である点。
<相違点3>
長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットに含まれる(A)のポリアミドと(B)繊維状強化材の配合割合について、本件発明2では、(A)のポリアミドが「100質量部」、(B)繊維状強化材が、「100~250質量部」と特定されているのに対し、甲1-1発明では、配合割合が不明である点。
イ 判断
(ア)相違点1について
甲1の請求項8には、請求項1を引用しない形式で記載すると、
「少なくとも次の成分(A)、(B)から構成される柱状の長繊維ペレットである成形材料であって、成分(B)が軸心方向にほぼ平行に配列し、かつ成分(B)の長さが成形材料の長さと実質的に同じである長繊維ペレット。
成分(A):少なくとも、
(a1)ヘキサメチレンジアミンアジパミド単位が60~90重量%、
(a2)ヘキサメチレンイソフタルアミド単位が1~30重量%、及び
(a3)カプロアミド単位が0~10重量%、
からなるポリアミド樹脂30~95重量%
成分(B):強化繊維束5~70重量%」
が記載されているところ、甲1-1発明のペレットは、甲1の請求項8に特定される長繊維ペレットの具体的な態様の発明に相当するものである。
そして、請求項8では、長繊維ペレットに含まれる成分(B)について、「軸心方向にほぼ平行に配列し、かつ成分(B)の長さが成形材料の長さと実質的に同じである長繊維ペレット」と特定されているのであるから、請求項8に係る発明の長繊維ペレットの発明を具体化したものに相当する甲1-1発明の長繊維ペレットにおける成分(B)も、「軸心方向にほぼ平行に配列し、かつ成分(B)の長さが成形材料の長さと実質的に同じ」となっているものと認められる。
そうすると、相違点1は、実質的には相違点ではないし、仮に相違点であるとしても、甲1-1発明の長繊維ペレットに含まれる成分(B)を、相違点1に係る本件発明2の構成を備えたものとすることは、当業者が容易になし得ることである。
(イ)相違点2について
甲2である申立人従業員高村元が平成29年2月16日付けで作成した「実験報告書」の表Cによれば、甲1-1発明の柱状の長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットに含まれる共重合ポリアミド樹脂(A-1)に、(x)及び(Y)の数値が0.16及び-0.18であるものが、また、共重合ポリアミド樹脂(A-3)に、(x)及び(Y)の数値が0.09及び-0.09であるものが、それぞれ包含されていることは明らかであるが、これらは本件発明2における「(x)の条件」及び「式(Y)の条件」を満たしていない。
また、甲1に記載された発明が解決しようとする課題は、甲1の特許請求の範囲の記載及び【0007】の記載からみて、「成形する際の成形性を損なうことなく、成形品とした場合の機械特性(特に弾性率、衝撃強度)、吸湿時の機械特性、寸法安定性、表面外観に優れたポリアミド樹脂成形材料を提供すること」及び「機械特性(特に弾性率、衝撃強度)、吸湿時の機械特性、寸法安定性、表面外観に優れたポリアミド樹脂成成形品を提供すること」であると認められるところ、甲1には、当該課題の解決のために、ポリアミドを、「(x)の条件」及び「式(Y)の条件」を備えたものとすることについては記載されていないし、(Y)の値の算出のために使用される(EG)の値の算出についての記載もない。
そうすると、甲1の記載からは、甲1-1発明において、長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットを構成するポリアミドを、「(x)の条件」及び「式(Y)の条件」を備えたものとすることは、動機付けられない。
一方、本件特許明細書の表1及び2の実施例及び比較例の記載によれば、本件発明2のように、ポリアミドとして、「(x)の条件」及び「式(Y)の条件」を備えた長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットとすることで、この範囲外のポリアミドを使用する場合に比べて、本件特許明細書の【0074】で定義されるハイサイクル成形(低温金型を外観安定性使用した高温成形)の外観安定性(これは、外観安定性=(20~30ショットISO試験片のグロス平均値)-(90~100ショットISO試験片のグロス平均値)で表される。)が優れたものとなることが理解でき、この点の効果は、甲1には記載も示唆もなく、甲1の記載からは当業者が予期し得ない効果である。
そうすると、甲1-1発明から、相違点2に係る構成を備えた本件発明2とすることが当業者にとって容易であるとはいえない。
(ウ)相違点3について
(ア)で記載した甲1の請求項8には、長繊維(強化ポリアミド樹脂組成物)ペレット中の成分(A)及び(B)の配合割合は、成分(A)(ポリアミド樹脂)30~95重量%に対し、成分(B)(強化繊維束)5~70重量%とされており、これを、ポリアミド樹脂100質量部として換算すると、強化繊維束の配合量は「5~233質量部」(下限:100/95×5=5.2、上限:100/30×70=233)となることから、甲1-1発明における成分(A)と成分(B)の配合量について、甲1には、成分(A)100質量部に対し、成分(B)を5~233質量部とすることが記載されているといえ、甲1に記載される上記の範囲内で、適宜成分(A)と成分(B)の配合量を調整し、本件発明2で特定される配合量のペレットとすることは、当業者が容易になし得ることである。
(エ)本件発明2についての容易性について
上記のとおり、甲1-1発明のポリアミドを、相違点1及び3に係る本件発明2の構成を備えたものとすることについては当業者が容易になし得たことといえるが、相違点2に係る本件発明2の構成を備えたポリアミドとすることが当業者によって容易になし得たことであるとはいえない以上、他の相違点を備えたものとすることが容易であったとしても、本件発明2について、甲1-1発明から当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
ウ まとめ
以上のとおり、本件発明2は、甲1に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(2)本件発明3ないし5について
本件発明3は、本件発明2における「(x)の条件」及び「式(Y)の条件」をその発明特定事項として備えるものであるし、また、本件発明4及び5は、本件発明2(又は3)を直接的又は間接的に引用するものであって、本件発明2(又は3)における「(x)の条件」及び「式(Y)の条件」をその発明特定事項として備えるものである。
そうすると、本件発明3ないし5は、甲1-1発明と、少なくとも、(1)アで記載した相違点2の点で相違している。
そして、相違点2についての判断は、(1)イで記載したとおりであって、本件発明3ないし5は甲1-1発明から当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(3)本件発明6
ア 対比
本件発明6の長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットの製造方法においては、製造される対象となる「長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレット」についての特定は、本件発明2の「長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレット」と実質的に同じであるから、製造されるペレットの特定に関しては、本件発明6と甲1-2発明との一致点は、(1)アで記載したと同様であり、相違点は、(1)アで記載したと同様の相違点1~3である。
また、本件発明6における、長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットの具体的な「製造工程」についての特定に関しては、甲1-2発明の予備工程や切断工程といった他の工程を含んでいてもよいものと認められるし、本件発明6で特定されている「ポリアミドを含浸する工程」と甲1-2発明で特定されている「ストランドを得る工程」は、いずれも、「ポリアミドで処理する工程」といえる。
そして、本件発明6と甲1-2発明とを、ペレットについての発明特定事項及びその製造工程についての発明特定事項の両者を含めて対比すると、両発明は、
「(A):(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、からなるポリアミド、または、
(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、εカプロラクタムからなる単位と、からなるポリアミドと、
(B)繊維状強化材と、
を、含有する長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットの製造方法であって、
アジピン酸、イソフタル酸、及びヘキサメチレンジアミンを重縮合してポリアミドを得る工程と、
連続した強化用繊維をポリアミドで処理する工程とを含む、
長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットの製造方法を含浸する工程。」
で一致し、
(1)アで記載した相違点1~3及び下記の相違点4及び5で相違する。
<相違点4>
ポリアミドを得る工程について、本件発明6では、「アジピン酸、イソフタル酸、及びヘキサメチレンジアミンを重合する際に、重合系内の内部温度が240℃以上になるまで内部圧力を1.5~5.0MPaに保った後、加熱を続けた状態で、圧力を徐々に抜き、最終内部温度が250℃以上になるように、常圧下又は減圧下で重縮合」すると特定されているのに対し、甲1-2発明では、「重合缶内にポリアミド原料を投入し、投入した全原料と同量の純水を加え、重合缶内を充分に窒素置換した後、撹拌しながら加温を開始した。缶内圧力は最大20kg/cm2に調節しながら最終到達温度は270℃とした。」と特定されている点。
<相違点5>
連続した強化用繊維をポリアミドで処理する工程について、本件発明6では、「連続した強化用繊維を引きながらポリアミドを含浸する」と特定されているのに対し、甲1-2発明では、「成分(A)をクロスヘッドダイ中に押し出すと同時に、上記予備工程を経た成分(B)の連続糸も上記クロスヘッドダイ中に連続的に供給することによって、溶融した成分(A-1)を成分(B)の繊維表面に被覆してストランドを得る」と特定されている点。
イ 判断
本件発明6は、少なくとも、相違点2で、甲1-2発明と相違しているところ、(1)アで相違点2についての判断で説示したと同様の理由によって、甲1-2発明におけるポリアミドを、「(x)の条件」及び「式(Y)の条件」を備えたものとすることは当業者によって容易になし得たこととはいえない。
してみると、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明6について、甲1-2発明から当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
なお、「(x)の条件」及び「式(Y)の条件」を備えたポリアミドとする点については、取消理由通知において、相違点4及び5に関する周知技術として指摘した甲3及び甲7にも記載も示唆もされていない。
ウ まとめ
以上のとおり、本件発明6は、甲1に記載された発明から、あるいは、甲1に記載された発明、及び、甲3或いは甲7に示される周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(4)本件発明8
ア 対比
本件発明8は、本件発明2と、「(A)のポリアミド」であって、「(x)の条件」と「式(Y)の条件」を満足するもの100質量部と、「(B)繊維状強化材」を「100~250質量部」とを含む点を、発明特定事項とする点で共通している。
そうすると、(1)アで説示した点を踏まえれば、本件発明8と甲1-3発明とは、
「(A):(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、
(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、
を、含むポリアミドであって、
当該(A)ポリアミドが、
(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、からなるポリアミド、または、
(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、εカプロラクタムからなる単位と、からなるポリアミドと、
(B)繊維状強化材と、
を、含み、
繊維状強化材が分散してなる成形品。」
で一致し、
(1)アで記載した相違点2及び下記の相違点6、7で相違する。
<相違点6>
成形品に分散している(B)繊維状強化材について、本件発明8では、「1mm以上の重量平均繊維長」であると特定されているのに対し、甲1-3発明では、かかる特定がなく、成形品中の強化繊維の重量平均繊維長が不明である点。
<相違点7>
成形品に含まれる(A)のポリアミドと(B)繊維状強化材の配合割合について、本件発明20では、(A)のポリアミドが「100質量部」、(B)繊維状強化材が、「100~250質量部」と特定されているのに対し、甲1-3発明では、(A)のポリアミドが「77重量%」で、(B)繊維状強化材が、「100~250質量部」と特定されている点。
イ 判断
本件発明8は、少なくとも、相違点2で、甲1-3発明と相違しているところ、(1)アで相違点2についての判断で説示したと同様の理由によって、甲1-3発明におけるポリアミドを、「(x)の条件」及び「式(Y)の条件」を備えたものとすることは当業者が容易になし得たとはいえない。
そうすると、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明6について、甲1-3発明から当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
なお、「(x)の条件」及び「式(Y)の条件」を備えたポリアミドとする点については、取消理由通知において、相違点6に関する周知技術として指摘した甲4にも記載も示唆もされていない。
ウ まとめ
以上のとおり、本件発明8は、甲1に記載された発明から、或いは、甲1に記載された発明、及び、甲4に示される周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
3.小括
以上のとおり、本件発明2、3ないし5は、甲1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないし、本件発明6は、甲1に記載された発明に基づいて、あるいは、甲1に記載された発明に甲3あるいは甲7に示される周知技術を組み合わせることにより、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないし、本件発明8は、甲1に記載された発明に基づいて、あるいは、甲1に記載された発明及び甲4に示される周知技術に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるとはいえない。
よって、本件発明2、3ないし6及び8について、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものということはできず、本件の請求項2、3ないし6及び8に係る特許について、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものとすることはできない。
第6 取消理由通知で採用しなかった特許異議申立理由について
(1)本件訂正前の請求項1ないし6に係る発明についての特許法第29条第1項第3号について
申立人は、申立書において、本件訂正前の請求項1ないし6に係る発明(それぞれ、本件発明1ないし6に対応するが、請求項1については、本件訂正により削除された。)について、甲2の実験報告書を参照すれば、甲1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当するとと主張する。
しかしながら、第5(1)~(4)で述べたとおり、本件発明2ないし6と甲1に記載された発明とは、相違点を有しているから、本件発明2ないし6は、甲1に記載された発明であるとはいえない。
よって、申立人の主張は採用できない。
(2)本件訂正前の請求項7に係る発明についての特許法第29条第1項第3号及び同条第2項について
申立人は、申立書において、本件訂正前の請求項7に係る発明(本件発明7に対応する。)について、甲2の実験報告書を参照すれば、甲1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当すると主張するし、甲1に記載された発明から、当業者が容易に発明することができたものであると主張する。
そこで、検討すると、甲1には、甲1-1発明の長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットを使用して、表面外観の優れた成形品を製造する方法の発明(以下、「甲1-4発明」という。)が記載されている。
一方、本件発明7は、「(A)のポリアミド」100質量部と、「(B)繊維状強化材」を「100~250質量部」とを含む長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットを用いて成形を行う際に、「(x)の条件」、「式(Y)の条件」及び「長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレット中における前記(B)繊維状強化材の重量平均繊維長が当該ペレットの長さと実質上同一である」との条件を満たす長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットを使用することにより、成形品の外観安定性を向上させる方法の発明であって、本件発明7は、本件発明2と、少なくとも、「(A)のポリアミド」であって、「(x)の条件」と「式(Y)の条件」を満足するものを発明特定事項とする点で共通している。
そして、第5(1)アで相違点2として説示したと同様の理由によって、本件発明7は、甲1-4発明と、少なくとも、「(x)の条件」及び「式(Y)の条件」をその発明特定事項として備えるものである点で、甲1-4発明と相違しているのであるから、本件発明7は甲1に記載された発明であるとはいえない。
そして、(1)イで記載したと同様の理由によって、この相違点2に係る構成を備えたポリアミドとすることが当等業者によって容易になし得たともいえないから、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明7について、甲1-4発明から当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
したがって、申立人の主張は採用できない。
(3)特許法第36条第6項第2号について
申立人は、申立書において、本件訂正前の請求項1ないし8に係る発明(本件発明1ないし8に対応する。)について本件特許明細書の実施例において認められる(Y)の範囲は、0.15~0.57であるから、実施例を参酌しても、何故(Y)を-0.3≦(Y)≦0.8と定めたのか、その理由が不明であり、技術的意味が理解できないから、本件特許請求の範囲の記載は明確ではないと主張する。
そこで検討すると、訂正後の本件発明2ないし8は、(Y)が0.05≦(Y)≦0.8であるところ、本件特許明細書の【0020】及び【0072】には、(Y)の定義及びその測定法が明確に記載されているし、(Y)の範囲を0.05≦(Y)≦0.8とする点の技術的意味についても、本件特許明細書の【0019】~【0024】)に明確に記載されている。
よって、本件発明2ないし8は明確であり、申立人の主張は採用できない。
第7 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び申立書に記載された特許異議申立理由によっては、本件発明2ないし8に係る特許を取り消すことができない。
また、他に本件発明2ないし8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
さらに、本件発明1に係る特許は、訂正により削除されたため、本件発明1に対して、申立人がした特許異議の申し立てについては、対象となる請求項が存在しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2017-700188