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特許異議申立

2019-700039

積層セラミックコンデンサ内部電極用ペースト、及び積層セラミックコンデンサ

審判番号
2019-700039
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2014-155407
登録番号
特許第6361356号(P6361356)
請求日
2019年01月22日
審決日
2020年01月07日
公報発行日
2020年04月24日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】住友金属鉱山株式会社
  • 【権利者代理人】伊東 忠重
  • 【異議申立人】藤井 正剛
  • 【異議申立人代理人】永田 元昭
  • 【異議申立人代理人】大田 英司
  • 【異議申立人代理人】西村 弘
  • 【異議申立人代理人】北村 吉章
  • 【異議申立人代理人】永田 良昭
審判長/審判官
  • 審判長 井上 信一
  • 審判官 山田 正文
  • 審判官 國分 直樹
分類
P1651.113-YAA(H01G) / P1651.121-YAA(H01G) / P1651.537-YAA(H01G)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第1項、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第120条の5第7項
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特許第6361356号発明「積層セラミックコンデンサ内部電極用ペースト、及び積層セラミックコンデンサ」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

【結 論】 特許第6361356号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-4〕について訂正することを認める。 特許第6361356号の請求項1ないし4に係る特許を維持する。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯 特許第6361356号の請求項1-4に係る発明についての出願は、平成26年7月30日に出願され、平成30年7月6日にその特許権が設定登録され、平成30年7月25日に特許掲載公報が発行された。その特許についての本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。 平成31年 1月22日  :特許異議申立人藤井正剛により請求項1-4に係る特許に対する特許異議の申立て 平成31年 4月11日付け:取消理由通知 令和 1年 6月12日  :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出 令和 1年 7月23日  :特許異議申立人藤井正剛による意見書の提出 令和 1年 8月30日付け:取消理由通知(決定の予告) 令和 1年10月10日  :特許権者との面接 令和 1年11月 5日  :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出 令和 1年12月13日  :特許異議申立人藤井正剛による意見書の提出 なお、令和1年11月5日に訂正の請求がなされたので、特許法第120条の5第7項の規定により、令和1年6月12日になされた訂正の請求は取り下げられたものとみなす。 第2 訂正の適否 1 訂正の内容 令和1年11月5日付けの訂正請求の趣旨は、特許第6361356号の明細書、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正明細書、訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1-4について訂正することを求めるものであり、その訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は次のとおりである(下線は、訂正箇所を示す。)。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に「・・・前記有機溶剤中の前記第1の有機溶剤の割合が、20wt%より多く80wt%未満であり、・・・膜状に成形後、120℃で乾燥した厚さ30μmの乾燥膜中の前記第1の有機溶剤、及び前記第2の有機溶剤の含有量が1wt%以下であり、」と記載されているのを、「・・・前記有機溶剤中の前記第1の有機溶剤の割合が、20wt%より多く60wt%未満であり、・・・ポリエチレンテレフタレート製のフィルム上に膜状に形成後、120℃で10分間乾燥した厚さ30μmの乾燥膜中の前記第1の有機溶剤、及び前記第2の有機溶剤の含有率が1wt%以下であり、」に訂正する。 請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2、3、4も同様に訂正する。 (2)訂正事項2 願書に添付した明細書の段落【0014】に 「 上記課題を解決するため本発明の一態様によれば、 ニッケル粉末と、 ポリビニルブチラールと、 エチルセルロースと、 有機溶剤とを含有しており、 前記有機溶剤は、第1の有機溶剤と、第2の有機溶剤と、を含み、 前記有機溶剤中の前記第1の有機溶剤の割合が、20wt%より多く80wt%未満であり、 前記第1の有機溶剤は、ターピネオール、および/またはイソボルニルアセテートであり、 前記第2の有機溶剤は、飽和脂肪族系炭化水素溶剤、および/またはエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートであり、 膜状に成形後、120℃で乾燥した厚さ30μmの乾燥膜中の前記第1の有機溶剤、及び前記第2の有機溶剤の含有率が1wt%以下であり、かつ、 調製直後の粘度を初期粘度、調製後5000秒経過時の粘度を経時粘度とした場合に、式(1)により算出される粘度変化率が15%以内である積層セラミックコンデンサ内部電極用ペーストを提供する。 粘度変化率(%)=100×[(経時粘度)-(初期粘度)]/(初期粘度)・・・式(1)」 と記載されているのを、 「 上記課題を解決するため本発明の一態様によれば、 ニッケル粉末と、 ポリビニルブチラールと、 エチルセルロースと、 有機溶剤とを含有しており、 前記有機溶剤は、第1の有機溶剤と、第2の有機溶剤と、を含み、 前記有機溶剤中の前記第1の有機溶剤の割合が、20wt%より多く60wt%未満であり、 前記第1の有機溶剤は、ターピネオール、および/またはイソボルニルアセテートであり、 前記第2の有機溶剤は、飽和脂肪族系炭化水素溶剤、および/またはエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートであり、 ポリエチレンテレフタレート製のフィルム上に膜状に成形後、120℃で10分間乾燥した厚さ30μmの乾燥膜中の前記第1の有機溶剤、及び前記第2の有機溶剤の含有率が1wt%以下であり、かつ、 調製直後の粘度を初期粘度、調製後5000秒経過時の粘度を経時粘度とした場合に、式(1)により算出される粘度変化率が15%以内である積層セラミックコンデンサ内部電極用ペーストを提供する。 粘度変化率(%)=100×[(経時粘度)-(初期粘度)]/(初期粘度)・・・式(1)」 に訂正する。 なお、本件訂正請求は、一群の請求項〔1-4〕に対して請求されたものであり、明細書に係る訂正は、一群の請求項〔1-4〕について請求されたものである。 2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1)訂正事項1について ア 訂正の目的 訂正事項1は、訂正前の請求項1に記載されていた「前記有機溶剤中の前記第1の有機溶剤の割合が、20wt%より多く80wt%未満であり」を「前記有機溶剤中の前記第1の有機溶剤の割合が、20wt%より多く60wt%未満であり」と限定し、また、訂正前の請求項1に記載されていた「膜状に成形後、120℃で乾燥した」を「ポリエチレンテレフタレート製のフィルム上に膜状に形成後、120℃で10分間乾燥した」と限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正である。 イ 新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張又は変更の存否 明細書の段落【0045】には、「特に第1の有機溶剤の割合は30wt%以上60wt%未満であることがより好ましく」とあり、「第1の有機溶剤」の割合の上限を「60wt%未満」とすることが記載されている。 また、明細書の段落【0104】には、「PET(ポリエチレンテレフタレート)製のフィルム上にアプリケーターを用いて、各実施例、比較例で調製した内部電極用ペーストを膜状に成形した後、120℃で10分間乾燥させ厚み約30μmの乾燥膜を得た。」とあり、「内部電極用ペースト」を「ポリエチレンテレフタレート製のフィルム上に」「膜状に形成した後、120℃で10分間乾燥」させることが記載されている。 よって、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 (2)訂正事項2について ア 訂正の目的、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張又は変更の有無について 訂正事項2は、上記訂正事項1に係る訂正に伴い特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るため、訂正前の明細書の段落【0014】に記載されていた「前記有機溶剤中の前記第1の有機溶剤の割合が、20wt%より多く80wt%未満であり」を「前記有機溶剤中の前記第1の有機溶剤の割合が、20wt%より多く60wt%未満であり」とし、また、「膜状に成形後、120℃で乾燥した」を「ポリエチレンテレフタレート製のフィルム上に膜状に形成後、120℃で10分間乾燥した」とするものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 3 小括 以上とおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 よって、明細書、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書、訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-4〕について訂正することを認める。 第3 本件発明 上記第2のとおり本件訂正は容認されるので、本件特許の請求項1-4に係る発明(以下、「本件発明1-4」という。)は、その訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1-4に記載された次の事項により特定されるものである。 「【請求項1】 ニッケル粉末と、 ポリビニルブチラールと、 エチルセルロースと、 有機溶剤とを含有しており、 前記有機溶剤は、第1の有機溶剤と、第2の有機溶剤と、を含み、 前記有機溶剤中の前記第1の有機溶剤の割合が、20wt%より多く60wt%未満であり、 前記第1の有機溶剤は、ターピネオール、および/またはイソボルニルアセテートであり、 前記第2の有機溶剤は、飽和脂肪族系炭化水素溶剤、および/またはエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートであり、 ポリエチレンテレフタレート製のフィルム上に膜状に成形後、120℃で10分間乾燥した厚さ30μmの乾燥膜中の前記第1の有機溶剤、及び前記第2の有機溶剤の含有率が1wt%以下であり、かつ、 調製直後の粘度を初期粘度、調製後5000秒経過時の粘度を経時粘度とした場合に、式(1)により算出される粘度変化率が15%以内である積層セラミックコンデンサ内部電極用ペースト。 粘度変化率(%)=100×[(経時粘度)-(初期粘度)]/(初期粘度)・・・式(1) 【請求項2】 前記ニッケル粉末の含有量を100質量部とした場合に、前記ポリビニルブチラール、及び前記エチルセルロースの含有量の合計が1質量部以上7質量部以下である請求項1に記載の積層セラミックコンデンサ内部電極用ペースト。 【請求項3】 前記ニッケル粉末を30wt%以上70wt%以下含有する請求項1または2に記載の積層セラミックコンデンサ内部電極用ペースト。 【請求項4】 請求項1乃至3のいずれか一項に記載の積層セラミックコンデンサ内部電極用ペーストを用いて形成した内部電極を含む積層セラミックコンデンサ。」 第4 取消理由通知に記載した取消理由について 1 取消理由の概要 当審が平成31年4月11日付けの取消理由通知において特許権者に通知した取消理由の要旨、及び、当審が令和1年8月30日付けの取消理由通知(決定の予告)において特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。 (1)平成31年4月11日付けの取消理由通知 ア 下記の請求項に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、下記の請求項に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。 イ 下記の請求項に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、下記の請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。 ウ 請求項1-4に係る特許は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 ・理由アについて ・請求項1、4 ・引用文献等1 ・理由イについて ・請求項2-4 ・引用文献等1 〈引用文献等一覧〉 1.特開2010-287763号公報(特許異議申立人提出の甲第1号証) (2)令和1年8月30日付けの取消理由通知(決定の予告) ア 下記の請求項に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、下記の請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。 ・理由アについて ・請求項1-4 ・引用文献等1 〈引用文献等一覧〉 1.特開2010-287763号公報(特許異議申立人提出の甲第1号証) 2.特開2012-174797号公報(周知例を示す文献) 3.特開昭62-92419号公報(周知例を示す文献) 4.特開平8-315636号公報(周知例を示す文献) 5.特開2013-16803号公報(周知例を示す文献) 2 引用文献の記載事項、引用発明、周知技術 (1)引用文献1 ア 取消理由において引用した引用文献1には、図面とともに以下の事項が記載されている(なお、下線は当審で付与した。)。 「【0012】 本発明は、セラミックグリーンシートと導電ペースト及び段差吸収セラミックペーストとを交互に積層し加熱圧着して得られた積層体を脱脂、焼成する積層セラミックコンデンサの製造方法であって、セラミック粉末、ポリビニルアセタール樹脂(A)及び有機溶剤(D)を含有するセラミックスラリー組成物を塗工した後、乾燥することにより、セラミックグリーンシートを作製する工程1、及び、上記セラミックグリーンシートに、導電粉末、ポリビニルアセタール樹脂(B)及び有機溶剤(E)を含有する導電ペースト、並びに、セラミック粉末、ポリビニルアセタール樹脂(C)及び有機溶剤(F)を含有する段差吸収セラミックペーストを塗工する工程2を有し、上記ポリビニルアセタール樹脂(A)は水酸基量が28モル%以上、上記ポリビニルアセタール樹脂(B)及びポリビニルアセタール樹脂(C)は水酸基量が24モル%以下であり、かつ、ポリビニルアセタール樹脂(B)及びポリビニルアセタール樹脂(C)の水酸基量が、下記式(1)の関係を満たし、かつ、上記有機溶剤(E)及び有機溶剤(F)は、ジヒドロターピニルアセテート、ターピニルアセテート、酢酸-2-エチルヘキシル、イソボルニルアセテート、4-(1’-アセトキシ-1’-メチルエチル)シクロヘキサノールアセテート、ジヒドロターピニルプロピオネート、イソボルニルプロピオネートからなる群より選択される少なくとも1種の有機溶剤を含有する積層セラミックコンデンサの製造方法である。」 「【0023】 以下、上記ポリビニルアセタール樹脂(A)~(C)の水酸基量以外の性質について説明する。なお、上記ポリビニルアセタール樹脂(A)~(C)を特に区別する必要がない場合は、単に「ポリビニルアセタール樹脂」とする。」 「【0034】 本発明の効果を損なわない範囲で、上記ポリビニルアセタール樹脂と、アクリル系樹脂、セルロース系樹脂等との混合樹脂をバインダー樹脂として用いてもよい。上記混合樹脂とする場合、例えば、ポリビニルブチラール樹脂との混合樹脂では、バインダー樹脂全体に占める上記ポリビニルアセタール樹脂の含有量の好ましい下限は10重量%である。10重量%未満であると、充分な接着性が得られないことがある。より好ましい下限は、30%である。」 「【0036】 上記導電粉末としては充分な導電性を示すものであれば特に限定されず、例えば、ニッケル、パラジウム、白金、金、銀、銅、これらの合金等からなる粉末が挙げられる。 なお、上記導電ペーストにおいては、上記導電粉末単独で用いてもよく、上記導電粉末とセラミック粉末を混合して使用してもよい。」 「【0041】 上記ポリビニルアセタール樹脂(B)及びポリビニルアセタール樹脂(C)の水酸基量が上記式(3)の関係を満たす場合、上記有機溶剤(E)としては、脂肪族炭化水素、芳香族系炭化水素、ナフテン系炭化水素からなる群より選択される少なくとも1種の有機溶剤と、ジヒドロターピニルアセテート、ターピニルアセテート、酢酸-2-エチルヘキシル、イソボルニルアセテート、4-(1’-アセトキシ-1’-メチルエチル)シクロヘキサノールアセテート、ジヒドロターピニルプロピオネート及びイソボルニルプロピオネートからなる群より選択される少なくとも1種の有機溶剤を含有するものを用いることが好ましい。 また、上記有機溶剤(F)としては、ジヒドロターピニルアセテート、ターピニルアセテート、酢酸-2-エチルヘキシル、イソボルニルアセテート、4-(1’-アセトキシ-1’-メチルエチル)シクロヘキサノールアセテート、ジヒドロターピニルプロピオネート、イソボルニルプロピオネートからなる群より選択される少なくとも1種の有機溶剤を用いることが好ましい。 【0042】 上記脂肪族炭化水素としては、例えば、ヘキサン、n-ヘプタン、イソペンタン、n-オクタン、n-ノナン、n-デカン等のほか、ノルマルパラフィン、イソパラフィン等のパラフィンが挙げられる。 【0043】 上記芳香族系炭化水素としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、メチルベンジルキシレン、1,4-ジメチル-2-(1-フェニルエチル)ベンゼン、アルキルベンゼン等が挙げられる。なお、上記アルキルベンゼンとしては、アルキル(C10-13)ベンゼン、アルキル(C14-30)ベンゼンが好ましい。 【0044】 上記ナフテン系炭化水素としては、例えば、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、1,1-ジメチルシクロペンタン、1,3-ジメチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、1,2,4-トリメチルシクロヘキサン等が挙げられる。 【0045】 上記有機溶剤(E)又は有機溶剤(F)において、脂肪族炭化水素、芳香族系炭化水素、ナフテン系炭化水素からなる群より選択される少なくとも1種の有機溶剤と、ジヒドロターピニルアセテート、ターピニルアセテート、酢酸-2-エチルヘキシル、イソボルニルアセテート、4-(1’-アセトキシ-1’-メチルエチル)シクロヘキサノールアセテート、ジヒドロターピニルプロピオネート及びイソボルニルプロピオネートからなる群より選択される少なくとも1種の有機溶剤とを含有するものを用いる場合、脂肪族炭化水素、芳香族系炭化水素、ナフテン系炭化水素からなる群より選択される少なくとも1種の有機溶剤の含有量は、5~40重量%であることが好ましい。上記含有量が5重量%未満であると、導電ペースト又は段差吸収ペーストに使用するポリビニルアセタール樹脂のうち、水酸基量の多い方のペースト乾燥膜に対してシートアタックを起こすことがあり、40重量%を超えると、ポリビニルアセタール樹脂を溶解しなくなってしまい、ペースト化することができないことがある。」 「【0053】 (導電ペーストの作製) 導電粉末としてニッケル粉(JFEミネラル社製、NFP-201S)100重量部、バインダー樹脂として変性ポリビニルブチラール(重合度1700、エチレン含有量5モル%、ケン化度98モル%、水酸基量22.8モル%)7重量部、有機溶剤としてジヒドロターピニルアセテート70重量部を添加し、三本ロールで混練することにより導電ペーストを得た。」 「【0058】 (比較例8) 実施例1の(導電ペーストの作製)において、変性ポリビニルブチラール(重合度1700、エチレン含有量5モル%、ケン化度98モル%、水酸基量22.8モル%)に代えて、エチルセルロース(ダウケミカル社製、STD-40)を用いた以外は実施例1と同様にして、電極層及び段差吸収層を形成したセラミックグリーンシート及び積層セラミック焼結体を得た。」 イ 引用発明 以上の記載から、引用文献1には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。 「積層セラミックコンデンサの製造方法に用いられる、導電粉末、ポリビニルアセタール樹脂(B)及び有機溶剤(E)を含有する導電ペーストであり、 上記ポリビニルアセタール樹脂と、セルロース系樹脂との混合樹脂をバインダー樹脂として用い、上記混合樹脂とする場合、例えば、ポリビニルブチラール樹脂との混合樹脂とし、 上記導電粉末としてはニッケル粉末が挙げられ、 上記有機溶剤(E)としては、脂肪族炭化水素、芳香族系炭化水素、ナフテン系炭化水素からなる群より選択される少なくとも1種の有機溶剤と、イソボルニルアセテートを含有するものを用い、 上記脂肪族炭化水素としては、イソパラフィンが挙げられ、 上記ナフテン系炭化水素としては、シクロヘキサンが挙げられ、 上記有機溶剤(E)において、脂肪族炭化水素、芳香族系炭化水素、ナフテン系炭化水素からなる群より選択される少なくとも1種の有機溶剤と、イソボルニルアセテートとを含有するものを用いる場合、脂肪族炭化水素、芳香族系炭化水素、ナフテン系炭化水素からなる群より選択される少なくとも1種の有機溶剤の含有量は、5~40重量%である 導電ペースト。」 (2)引用文献2 取消理由(決定の予告)において引用した引用文献2には、図面とともに以下の事項が記載されている。 「【0001】 本発明は、積層セラミックコンデンサ内部電極用導電性ペーストに関し、より詳しくは、グラビア印刷用導電性ペーストに関するものである。」 「【0007】 内部電極用ペーストは、導電成分としての卑金属粉末、焼結調整剤としての誘電体セラミック粉末、有機バインダーとしての樹脂とそれを溶解する溶剤、さらに分散剤からなる添加剤から構成され、スリーロールミルによって混練し、混合分散することにより製造される。言い換えると、内部電極用ペーストは、有機バインダーとなる樹脂を有機溶剤に溶解して得られた有機ビヒクル中に金属粉末を分散させ、粘度を有機溶剤によって調整したものである。 【0008】 有機ビヒクル中の有機溶剤としては、一般にターピネオールがよく用いられている。また有機バインダーとしては、エチルセルロース、ニトロセルロース等のセルロース系樹脂やブチルメタクリレート、メチルメタクリレート等のアクリル系樹脂が使用されている。」 「【0027】 2.有機樹脂(B) 本発明において、有機樹脂はエチルセルロース(EC)とポリビニルブチラール(PVB)の混合系であることが好ましい。」 (3)引用文献3 取消理由(決定の予告)において引用した引用文献3には、図面とともに以下の事項が記載されている。 「本発明は積層タイプのセラミックコンデンサに内部電極として使用される電極材料に関するものである。」(第1頁左下欄第14-16行) 「以下に本発明の実施例について説明する。一般的に電極材料は導電材料であるところの金属粉末およびペースト化するための有機ビヒクルより構成される。まず有機糊材としてポリビニルブチラール30重量部、エチルセルロース10重量部をケロシン200重量部、テルピネオール220重量部の混合溶剤に加えてよく攪拌し溶解する。これに金属粉末を有機ビヒクルによく分散させる分散剤としてソルビタントリオレートを20重量部、可塑剤としてプチルベンジルフタレート20重量部を加えてさらに混合し有機ビヒクルとする。」(第2頁右下欄第18行-第3頁左上欄第8行) (4)引用文献4 取消理由(決定の予告)において引用した引用文献4には、図面とともに以下の事項が記載されている。 「【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、基板上への厚膜印刷に使用する印刷用ペーストに関し、特に、ファインパターン印刷に最適な厚膜印刷用ペーストに関するものである。 【0002】 【従来の技術】近年、電子回路部品の一層の小型化が求められており、それを実現するために、基板の上に厚膜印刷で回路および機能素子を構成する方法が一般的に知られている。ここで、厚膜印刷に使用される印刷用ペーストは、一種類の有機バインダー、例えばエチルセルロースを比較的沸点の高い有機溶剤、例えばテルピネオールに溶解させて作成した有機ビヒクル中に粉末を三本ロールミル等で均一に混練することで作製されている。」 「【0006】一種類の有機バインダーでは、粘度は容易にコントロールできるが、粘度とずり速度の両方を適格にコントロールすることが困難であるのを複数の有機バインダーを用いることにより両方を適格にコントロールすることができるからである。ここで、有機バインダーとしては、エチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラールなどが挙げられ、これらを2種類以上組み合わせて用いる。有機溶剤としては、テルピネオール、ブチルカルビトール、ブチルカルビトールアセテートなどが使用できる。このうち、複数の有機バインダーとしてはエチルセルロースとポリビニルブチラールとを組み合わせたものが最も好ましく、また、有機溶剤がブチルカルビトールアセテートを用いることが最も好ましい。その理由は、ブチルカルビトールアセテートを有機溶剤として用いたときにゲル化するポリビニルブチラールをゲル化しないエチルセルロースで希釈することになるから、低ずり速度での粘度を上げることができ、したがって、粘度とずり速度の適格なコントロールができるからである。 【0007】また、粉末としては、BaTiO3やPZT等の誘電体粉末や酸化ルテニウム等の導体粉末などが挙げられる。」 (5)引用文献5 取消理由(決定の予告)において引用した引用文献5には、図面とともに以下の事項が記載されている。 「【0007】 本発明の目的は、内部ストレスを減少させてクラックの発生を抑制することができる積層セラミック電子部品の内部電極用導電性ペースト及びこれを含む積層セラミック電子部品を提供することにある。 【課題を解決するための手段】 【0008】 本発明の一実施形態である積層セラミック電子部品の内部電極用導電性ペーストは、導電性金属粉末100重量部と、有機バインダー0.6から2.4重量部と、を含むことができる。 【0009】 上記有機バインダーは、ポリビニルブチラールであることができる。 【0010】 上記ポリビニルブチラールの分散後の分子量は、170000以下であることができる。 【0011】 3.0重量部以下のセルロース系樹脂をさらに含むことができる。 【0012】 上記セルロース系樹脂は、エチルセルロースであることができる。」 「【0084】 表2に、エチルセルロースをさらに添加する場合、エチルセルロースの含量によるクラックの発生有無を評価した結果を示した。平均粒子サイズが300nmのニッケル100重量部に対してポリビニルブタジエン及びエチルセルロースを添加して導電性ペーストを製造し、製造された導電性ペーストで内部電極を形成した積層セラミックキャパシタを製作した。これに対し、印刷性、電気的特性、クラックの発生有無に関して評価した結果を示した。」 (6)周知技術 引用文献2-5に記載(上記(2)-(5)の摘記事項参照。)されるように、「ポリビニルブチラールとエチルセルロースとの混合樹脂を有機バインダとして用いる」ことは、本件特許の出願日前において周知技術である。 3 当審の判断 (1)特許法第29条第1項及び第2項について ア 本件発明1について (ア)対比 本件発明1と引用発明とを対比する。 a 引用発明は「導電粉末としてはニッケル粉末が挙げられ」るものであるから、引用発明の「導電粉末」は、本件発明1の「ニッケル粉末」に相当する。 b 引用発明の「ポリビニルアセタール樹脂」は、「例えば、ポリビニルブチラール樹脂」であるから、本件発明1の「ポリビニルブチラール」に相当する。 c 引用発明の「セルロール系樹脂」と本件発明1の「エチルセルロース」とは、「セルロース系樹脂」である点で共通する。ただし、本件発明1は「エチルセルロース」であるのに対し、引用発明はエチルセルロースと特定されていない点で相違する。 d 引用発明の「上記有機溶剤(E)としては、」「イソボルニルアセテートを含有するものを用い」ることは、本件発明1の「前記第1の有機溶剤は、イソボルニルアセテート」であることに相当する。 また、引用発明の「上記有機溶剤(E)としては、脂肪族炭化水素、芳香族系炭化水素、ナフテン系炭化水素からなる群より選択される少なくとも1種の有機溶剤」「を含有するものを用い」、「上記脂肪族炭化水素としては、イソパラフィンが挙げられ、上記ナフテン系炭化水素としては、シクロヘキサンが挙げられ」ることは、本件発明1の「前記第2の有機溶剤は、飽和脂肪族系炭化水素溶剤」であることに相当する。 そして、引用発明の「上記有機溶剤(E)としては、脂肪族炭化水素、芳香族系炭化水素、ナフテン系炭化水素からなる群より選択される少なくとも1種の有機溶剤と、イソボルニルアセテートを含有するものを用い」ることは、本件発明1の「前記有機溶剤は、第1の有機溶剤と、第2の有機溶剤とを、含」むことに相当する。 e 引用発明の「有機溶剤(E)において、脂肪族炭化水素、芳香族系炭化水素、ナフテン系炭化水素からなる群より選択される少なくとも1種の有機溶剤と、イソボルニルアセテートとを含有するものを用いる場合、脂肪族炭化水素、芳香族系炭化水素、ナフテン系炭化水素からなる群より選択される少なくとも1種の有機溶剤の含有量は、5~40重量%である」ことは、有機溶剤(E)中のイソボルニルアセテートの含有量が60~95重量%であることを表している。 してみれば、本件発明1の「前記有機溶剤中の前記第1の有機溶剤の割合が、20wt%より多く60wt%未満」であるのに対し、引用発明は有機溶剤(E)中のイソボルニルアセテート(本件発明1の「第1の有機溶剤」に相当)の含有量は60~95重量%である点で相違する。 f 本件発明1は「膜状に成形後、120℃で乾燥した厚さ30μmの乾燥膜中の前記第1の有機溶剤、及び前記第2の有機溶剤の含有率が1wt%以下であり、かつ、 調製直後の粘度を初期粘度、調製後5000秒経過時の粘度を経時粘度とした場合に、式(1)により算出される粘度変化率が15%以内である 粘度変化率(%)=100×[(経時粘度)-(初期粘度)]/(初期粘度)・・・式(1)」のに対して、引用発明はその旨特定されていない点で相違する。 すると、本件発明1と引用発明とは、次の一致点及び相違点を有する。 〈一致点〉 「ニッケル粉末と、 ポリビニルブチラールと、 セルロース系樹脂と、 有機溶剤とを含有しており、 前記有機溶剤は、第1の有機溶剤と、第2の有機溶剤と、を含み、 前記第1の有機溶剤は、イソボルニルアセテートであり、 前記第2の有機溶剤は、飽和脂肪族系炭化水素溶剤である積層セラミックコンデンサ内部電極用ペースト。」 〈相違点1〉 セルロース系樹脂が、本件発明1では「エチルセルロール」であるのに対し、引用発明はエチルセルロールと特定されていない点。 〈相違点2〉 本件発明1は、「前記有機溶剤中の前記第1の有機溶剤の割合が、20wt%より多く60wt%未満」であるのに対し、引用発明は、有機溶剤(E)中のイソボルニルアセテート(第1の有機溶剤)の含有量は60~95重量%である点。 〈相違点3〉 本件発明1は、「ポリエチレンテレフタレート製のフィルム上に膜状に成形後、120℃で10分間乾燥した厚さ30μmの乾燥膜中の前記第1の有機溶剤、及び前記第2の有機溶剤の含有率が1wt%以下であり、かつ、 調製直後の粘度を初期粘度、調製後5000秒経過時の粘度を経時粘度とした場合に、式(1)により算出される粘度変化率が15%以内である 粘度変化率(%)=100×[(経時粘度)-(初期粘度)]/(初期粘度)・・・式(1)」のに対して、引用発明は、そのような特定がなされていない点。 (イ)判断 a 特許法第29条第1項について 本件発明1は、引用発明と相違点1ないし相違点3で相違するから、本件発明1は、引用文献1に記載された発明ではない。 よって、本件発明1は、特許法第29条第1項第3号に該当しないから、本件発明1に係る特許は、特許法第29条第1項に違反してされたものとはいえない。 b 特許法第29条第2項について 事案に鑑み、相違点2について検討する。 引用文献1-5にはいずれにも、イソボルニルアセテート(第1の有機溶剤)の割合を20wt%より多く60wt%未満とすることは記載も示唆もされていない。 また、引用文献1の段落【0045】には有機溶剤(E)に関して「上記有機溶剤(E)・・・において、脂肪族炭化水素、芳香族系炭化水素、ナフテン系炭化水素からなる群より選択される少なくとも1種の有機溶剤と、・・・イソボルニルアセテート・・・とを含有するものを用いる場合、脂肪族炭化水素、芳香族系炭化水素、ナフテン系炭化水素からなる群より選択される少なくとも1種の有機溶剤の含有量は、5~40重量%であることが好ましい。上記含有量が5重量%未満であると、導電ペースト又は段差吸収ペーストに使用するポリビニルアセタール樹脂のうち、水酸基量の多い方のペースト乾燥膜に対してシートアタックを起こすことがあり、40重量%を超えると、ポリビニルアセタール樹脂を溶解しなくなってしまい、ペースト化することができないことがある。」と記載されており、有機溶剤(E)として、脂肪族炭化水素、芳香族系炭化水素、ナフテン系炭化水素からなる群より選択される少なくとも1種の有機溶剤と、イソボルニルアセテートを含有するものを用いる場合、脂肪族炭化水素、芳香族系炭化水素、ナフテン系炭化水素からなる群より選択される少なくとも1種の有機溶剤の含有量が40重量%を超える範囲とすることについて阻害要因を有している。 そして、前記「脂肪族炭化水素、芳香族系炭化水素、ナフテン系炭化水素からなる群より選択される少なくとも1種の有機溶剤」の含有量が40重量%を超える範囲とすることは、有機溶剤(E)中のイソボルニルアセテートの含有量を60重量%未満とすることを表しているから、引用発明の有機溶剤(E)として、脂肪族炭化水素、芳香族系炭化水素、ナフテン系炭化水素からなる群より選択される少なくとも1種の有機溶剤と、イソボルニルアセテートとを含有するものを用いる場合、有機溶剤(E)中のイソボルニルアセテートの含有量を60重量%未満とすることについて阻害要因を有しているといえる。 したがって、相違点2に係る本件発明1の構成は、引用発明に基づいて、当業者が容易になし得たこととはいえない。 よって、本件発明1は、相違点1,3について検討するまでもなく、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではなく、本件発明1に係る特許は、特許法第29条第2項に違反してされたものとはいえない。 (ウ)特許異議申立人の主張について 特許異議申立人藤井正剛(以下、「特許異議申立人」という。)は、令和1年12月13日付けの意見書において、本件発明1について、概略、次のように主張をしている。 引用文献1の[0045]の記載は、有機溶剤(E)中のイソボルニルアセテートの含有量が60重量%未満の場合に目的物である導電性ペーストが製造できないことが記載されているとはいえない。(第3頁第5-12行) 本件特許権者は、「脂肪族炭化水素、芳香族系炭化水素、ナフテン系炭化水素からなる群より選択される少なくとも1種の有機溶剤」の含有量が40重量%を超えた場合の作用効果を、有機溶剤(E)中のイソボルニルアセテートの含有量が60重量%未満である場合の作用効果に置き換えているが、そのことを裏付ける記載は引用文献1には存在しない。(第3頁第13-17行) 前提条件として、「脂肪族炭化水素、芳香族系炭化水素、ナフテン系炭化水素からなる群より選択される少なくとも1種の有機溶剤」の含有率(wt%)とイソボルニルアセテートの含有率(wt%)との合計が有機溶剤(E)の含有率100wt%になる必要がある。(第3頁第24-28行) このことを本件発明1に当てはめれば、「第1の有機溶剤」の含有率(wt%)と「第2の有機溶剤」の含有率(wt%)との合計が「有機溶剤」の含有率100wt%になることが必要である。(第4頁第1-5行) しかし、請求項1に記載される「有機溶剤」は、「第1の有機溶剤」と、「第2の有機溶剤」と、を含む、としか規定されていない。(第4頁第6-7行) 「前記有機溶剤中の前記第1の有機溶剤の割合が、20wt%より多く60wt%未満」であって、かつ、「前記有機溶剤中の前記第2の有機溶剤の割合が40wt%を超えない」場合を包含するから、本件発明1は、取消理由を解消していない。(第4頁第18-22行) 上記主張について検討する。 上記「(イ)判断」に示したように、そもそも引用文献1-5にはいずれにも、イソボルニルアセテート(第1の有機溶剤)の割合を20wt%より多く60wt%未満とすることは記載も示唆もされておらず、相違点2に係る本件発明1の構成は、引用文献1-5に記載された発明に基づいて、当業者が容易になし得たこととはいえない。 また、引用文献1の実施例は、表2,表3に示されるように、脂肪族炭化水素、芳香族系炭化水素、ナフテン系炭化水素からなる群より選択される少なくとも1種の有機溶剤とイソボルニルアセテートとを含有する有機溶剤(E)として、「脂肪族炭化水素、芳香族系炭化水素、ナフテン系炭化水素からなる群より選択される少なくとも1種の有機溶剤」の含有率(wt%)と「イソボルニルアセテート」の含有率(wt%)との合計が100wt%となるものが記載されているのみである。 してみれば、引用文献1は、有機溶剤(E)として、「脂肪族炭化水素、芳香族系炭化水素、ナフテン系炭化水素からなる群より選択される少なくとも1種の有機溶剤」の含有率(wt%)と「イソボルニルアセテート」の含有率(wt%)との合計が100wt%となるものを想定したものであり、「脂肪族炭化水素、芳香族系炭化水素、ナフテン系炭化水素からなる群より選択される少なくとも1種の有機溶剤」の含有量が40重量%を超えた場合の作用効果を、「イソボルニルアセテート」の含有量が60重量%未満である場合の作用効果に置き換え得るものである。 したがって、引用文献1は、機溶剤(E)として、脂肪族炭化水素、芳香族系炭化水素、ナフテン系炭化水素からなる群より選択される少なくとも1種の有機溶剤と、イソボルニルアセテートとを含有するものを用いる場合、有機溶剤(E)中のイソボルニルアセテートの含有量を60重量%未満とすることについて阻害要因を有しているといえる。 よって、相違点2に係る本件発明1の構成は、引用発明に基づいて、当業者が容易になし得たこととはいえない。 以上のことより、上記主張を採用することはできない。 イ 本件発明2-4について 本件発明1を引用する本件発明2-4も本件発明1と同様に、特許法第29条第1項第3号に該当しないから、本件発明2-4に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものとはいえず、また、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものとはいえない。 (2)特許法第36条第6項第1号について 平成31年4月11日付けの取消理由通知では、乾燥時間やいかなる材料上に膜を形成するかが特定されていない請求項1に係る発明の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化し得るものとは認められない旨の通知をしたが、本件訂正により、本件発明1は「ポリエチレンテレフタレート製のフィルム上に膜状に成形後、120℃で10分間乾燥した」ものとなった。 したがって、本件発明1に係る特許は、特許法第36条第6項第1号の規定に違反してされたものとはいえない。 また、本件発明1を引用する本件発明2-4に係る特許も本件発明1と同様に、特許法第36条第6項第1号の規定に違反してされたものとはいえない。 第5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について 特許異議申立人は、特許異議申立書において、訂正前の特許請求の範囲に関し、請求項1の「調整直後の粘度を初期粘度、調整後5000秒経過時の粘度を経時粘度とした場合に、式(1)により算出される粘度変化率が15%以内である」との記載は、調整後のペーストをどのような状態で5000秒間置いておくのか全く不明であり、本件明細書段落【0050】、【0103】に記載された5000秒経過後の粘度測定手段が反映されておらず、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えて特許が請求されるものである旨を主張する。 しかしながら、特段の規定がなされていない場合、一般に測定値は通常の環境下で測定したものと解するのが自然であるから、本件発明1の「調整後5000秒経過時の粘度」は、内部電極用ペーストを通常の使用環境下に5000秒置いた場合の粘度であると当業者は解するものである。 そして、本件明細書段落【0037】に「このため、乾燥性の良い有機溶剤のみを使用すると、内部電極パターンを印刷している間に、内部電極用ペースト内の有機溶剤が失われ、内部電極用ペーストの粘度が増加し、内部電極パターンの印刷が困難になる恐れがある。」と記載されるように、本件発明は通常の製造時における粘度の増加を課題とするものであることが本件明細書に記載されている。 してみれば、本件発明1は発明の詳細な説明に記載した範囲を超えたものとはいえない。 したがって、本件発明1に係る特許は、特許法第36条第6項第1号の規定に違反してされたものとはいえない。 また、本件発明1を引用する本件発明2-4に係る特許も本件発明1に係る特許と同様に、特許法第36条第6項第1号の規定に違反してされたものとはいえない。 第6 むすび 以上のとおり、本件発明1-4に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由又は特許異議申立書に記載した異議申立理由によっては取り消すことはできない。さらに、他に本件発明1-4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論とのとおり決定する。

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2019-700039

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