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特許拒絶査定不服審判

2019-017800

デュアルアクティブ接続を使用したハンドオーバ

審判番号
2019-017800
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2017-531664外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2019年12月27日
審決日
2021年03月23日
公報発行日
2021年10月29日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-WZ (H04W)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特願2017-531664「デュアルアクティブ接続を使用したハンドオーバ」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 6月23日国際公開、WO2016/095584、平成30年 2月 1日国内公表、特表2018-503303〕について、次のとおり審決する。

結論

【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。

理由

目次 ▾ 8項目
【理 由】

第1 手続の経緯

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本願は、2015年(平成27年)9月28日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理 2014年12月17日 中国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。

平成29年 6月20日   手続補正書の提出

平成30年 9月13日   手続補正書の提出

平成31年 4月19日付け 拒絶理由通知書

令和 元年 8月 2日   意見書、手続補正書の提出

令和 元年 8月29日付け 拒絶査定

令和 元年12月27日   拒絶査定不服審判の請求、手続補正書の提

出

令和 2年 1月29日   手続補正書(方式)の提出

令和 2年 4月14日   上申書の提出

令和 2年 7月 7日   上申書の提出

令和 2年 9月23日付け 拒絶理由通知書(当審)

令和 2年12月22日   意見書、手続補正書の提出

第2 本願発明について

本願の請求項1ないし12に係る発明は、令和2年12月22日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし12に記載された事項により特定されるところ、その請求項3に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりのものと認める。

「   【請求項1】
デュアルアクティブハンドオーバを円滑にするためにユーザ機器デバイス上で動作可能な方法であって、
第1のネットワークを介した通信サービスのための第1の接続を第1のアクセスノードと確立するステップと、
第2のアクセスノードに対するハンドオーバが発生するという指示を取得するステップと、
続きを表示(全13行)
前記第1の接続が確立された状態にとどまると同時に、前記第1のネットワークまたは第2のネットワークを介した通信サービスのための第2の接続を第2のアクセスノードと確立するステップと、
ハンドオーバ中に前記第1の接続と前記第2の接続の両方を介してパケットを受信するステップと、
前記ハンドオーバ中に前記受信されたパケットを並べ替えるステップと、
前記ハンドオーバ中に受信された重複パケットを削除するステップであって、
パケット識別子が、前記第1の接続を介して受信されたパケットと、前記第2の接続を介して受信されたパケットとを比較するために使用される、ステップと、
前記第1の接続を終了するステップと
を含む、方法。
【請求項3】
前記ハンドオーバが発生するという指示を前記取得するステップが、前記ハンドオーバを開始するために前記ユーザ機器デバイスによって自律的判定を行うステップを含む、請求項1に記載の方法。」

第3 拒絶の理由

令和2年9月23日付けで当審が通知した拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)の概要は、

「この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。」というものであり、特許請求の範囲の請求項3に対して引用例15が引用されている。

引用例15:特開2004-228754号公報

第4 引用発明及び周知事項について

1.引用例15について

当審拒絶理由で引用された特開2004-228754号公報(以下、「引用例15」という。)には、次の記載がある。(下線は当審が付与。)

(1)「【0027】
図6は本発明による移動通信システムにおけるネットワークの構成を示す図であり、10は移動端末(MN)、30は移動端末10を収容して位置管理を行うホームエージェント(HA)装置、50は移動端末10と通信を行う通信装置(CN)、71、72は移動端末10と無線交信を行うアクセスルータ(AR)である。500はホームエージェント装置30、通信装置50、アクセスルータ71、72を接続するローカルネットワークあるいはインターネットである。
【0028】
本発明の主旨は、移動端末10がアクセスルータ71、72間を移動する際に、移動先のアクセスルータ72配下で使用するケアオブアドレス(nCoA)を事前に取得し、Mobile IP手順によるところのバインディングアップデートメッセージを用いてホームエージェント装置30に通知し、ホームエージェント装置30は、移動端末10への転送パケットを複製して、既に登録されているアクセスルータ71配下で使用するケアオブアドレス(oCoA)と移動先のケアオブアドレス(nCoA)の双方に送出することにより、高速なハンドオーバを実現するものである。移動端末10は、移動元と移動先でほぼ同じタイミングで同一パケットを受信可能となるため、アクセスルータ71が移動端末10宛のパケットをバッファリングしてハンドオーバ完了後に移動先のアクセスルータ72に転送する場合に比べて、ハンドオーバ処理の高速化とハンドオーバ後に受信するパケットのリアルタイム性を確保することができる。」
(2)「【0058】
以下、移動端末10の構成および基本的な動作について説明する。
(略)
【0059】
なお、図3において、ネットワークと接続するL1/2処理部11、16は二つまでしか図示していないが、さらに多くのL1/2処理部を具備する構成であってもよく、本発明はその具備する数を制限するものではない。」
(3)「【0065】
次に、移動端末10のハンドオーバ時の動作について、移動端末10が実施する本発明に関するハンドオーバ時の処理手順を示す図14を用いて説明する。
【0066】
ハンドオーバ制御部18は、ハンドオーバの発生を下位レイヤからの情報をもとに検出すると(S11)、移動先サブネットで取得するケアオブアドレス(nCoA)を先行的に取得する処理をMobile IP処理部14、L3処理部12、L1/2処理部11を介して実施する(S12)。ケアオブアドレスの先行取得は、IETF等で検討されているFast Handovers for Mobile IPv6などで規定される手順を用いることによって実施可能である。
【0067】
ハンドオーバ制御部18は、取得したnCoAをホームエージェント装置30や通信装置50に通知するため、バインディングアップデートメッセージを生成送信するようMobile IP処理部14を動作させる。nCoA通知用のバインディングアップデートメッセージは、モビリティヘッダ200、バインディングアップデート210、代理ケアオブアドレスモビリティオプション220及びホームアドレス宛先オプション230から構成される。Mobile IP処理部14は、IP基本ヘッダのソースアドレスを移動元のケアオブアドレス(oCoA)、ホームアドレス宛先オプション230のホームアドレスフィールド233にホームアドレス(HoA)、代理ケアオブアドレスモビリティオプション220の代理ケアオブアドレスフィールド223に移動先のケアオブアドレスとしてnCoAを記載し、バインディングアップデート210の複製配信要求フラグ211を有効に設定し、Mobile IP処理部14からL3処理部12、L 1/2処理部11を通じてアクセスネットワークに送出される(S13)。バインディングアップデートメッセージの応答要求フラグを有効にした場合は、バインディングアックをホームエージェント装置30や通信装置50から受信する(S14)。
【0068】
また、ハンドオーバ制御部18は、移動先ネットワークへのハンドオーバ完了後(S15)、ホームエージェント装置30や通信装置50による移動元のケアオブアドレスへの複製配信を停止させるため、先に複製配信要求フラグ211を有効にしたバインディングアップデートメッセージを送信したすべてのホームエージェント装置30および通信装置50に、先に説明したように以下のいずれかの構成をとるバインディングアップデートメッセージを送信(S16)する。」
(4)「【0077】
次に、移動端末10のデータ受信時の動作について、移動端末10が実施する本発明に関するデータ受信時の処理手順を示す図17を用いて説明する。
【0078】
本発明による移動端末10のデータ受信処理は、ホームエージェント装置30や通信装置50から受信したデータパケットに含まれ、本パケットが複製されたものであることを示す複製フラグや、パケットのシーケンス番号が記載された複製情報をもとにパケットの重複受信を回避することに特徴がある。
続きを表示(全11行)
(略)
【0082】
移動端末10は、上記複製情報に含まれるパケットシーケンスを図22に示すようなパケットシーケンスキャッシュ600によって管理する。パケットシーケンスキャッシュ600では、ホームアドレスごとに受信済みパケットのシーケンスを管理する。図22では、シーケンス番号12、14、15、18が既に受信されており、以後これらのシーケンス番号12より小さいシーケンス番号が記載された複製情報を持つパケット受信した際には、それらのパケットは破棄される。
【0083】
移動端末10の起動時に、ハンドオーバ制御部18は、パケットシーケンスキャッシュ600を初期化する(S21)。移動端末10のL3処理部12は、データパケットを受信すると(S22)、Mobile IP処理部14を経由してハンドオーバ制御部18に転送する。ハンドオーバ制御部18は、複製情報が付加されているかを検出し(S23)、複製情報が付加されていない場合は、データパケットをMobile IP処理部14に戻して通常の受信処理を開始する(S25)。複製情報が付加されている場合は、ハンドオーバ制御部18がパケットシーケンスキャシュを参照して、同一シーケンス番号の有無を確認する(S24)。同一シーケンスが検出されなかった場合は(S26)、受信パケットの複製情報からシーケンス番号を抽出してパケットシーケンスキャッシュに記載し(S28)、Mobile IP処理部14に転送して通常の受信処理を開始する。同一シーケンス番号が検出された場合は、既に受信されたデータパケットの複製であるとして、該パケットを破棄する。
【0084】
以上のように、本発明の移動端末10は、ハンドオーバ発生に際して先行取得した移動先のケアオブアドレスをホームエージェント装置30や通信装置50に通知することにより、以後移動先にも同一パケットフローを生成させることができ、ハンドオーバ後ただちにパケットを受信し、さらには同一パケットの重複受信を回避することができる。また、ハンドオーバ完了後に移動元へのパケットフローを停止させることができる。」
(5)「
【図6】
」
(6)「
【図14】
」
(7)「
【図17】
」

上記記載及び当業者における技術常識からみて、以下の技術的事項が記載されている。

a.上記(1)の段落27の「500はホームエージェント装置30、・・・アクセスルータ71、72を接続するローカルネットワーク」との記載及び上記(5)の図6から、ホームエージェント装置30とアクセスルータ71、72はローカルネットワークに接続されている。

また、上記(1)の段落27に「71、72は移動端末10と無線交信を行うアクセスルータ(AR)である。」と記載されていることから、移動端末10とアクセスルータ71、72は無線交信している。

そして、上記(1)の段落28に「移動端末10がアクセスルータ71、72間を移動する際に、・・・ホームエージェント装置30は、移動端末10への転送パケットを複製して、既に登録されているアクセスルータ71配下で使用するケアオブアドレス(oCoA)と移動先のケアオブアドレス(nCoA)の双方に送出することにより、高速なハンドオーバを実現するものである。移動端末10は、移動元と移動先でほぼ同じタイミングで同一パケットを受信可能となる」と記載されているので、移動端末10がアクセスルータ71、72間を移動するハンドオーバの際に、ホームエージェント装置30は、既に登録されているアクセスルータ71配下で使用するケアオブアドレス(oCoA)にパケットを送出することにより、移動端末10は、移動元アクセスルータ71配下でパケットを受信しているといえ、また、ホームエージェント装置30は、移動先のケアオブアドレス(nCoA)にパケットを送出することにより、移動端末10は、移動先アクセスルータ72配下でパケットを受信しているといえる。よって、移動端末10がアクセスルータ71、72間を移動するハンドオーバの際に、移動端末10は、移動元アクセスルータ71配下と移動先アクセスルータ72配下からほぼ同じタイミングで同一パケットを受信しているといえる。

以上のことから、引用例15には、ローカルネットワークにホームエージェント装置30とアクセスルータ71、72が接続され、移動端末10はアクセスルータ71、72と無線交信し、移動端末10がアクセスルータ71、72間を移動するハンドオーバの際に、移動端末10は移動元アクセスルータ71配下と移動先アクセスルータ72配下からほぼ同じタイミングで同一パケットを受信することが記載されているといえる。

そして、上記(3)の段落65に「移動端末10のハンドオーバ時の動作について、移動端末10が実施する本発明に関するハンドオーバ時の処理手順を示す」、及び、上記(4)の段落77に「移動端末10のデータ受信時の動作について、移動端末10が実施する本発明に関するデータ受信時の処理手順を示す」と記載されていることから、引用例15には、移動端末の動作方法が記載されているといえる。

よって、引用例15には、ローカルネットワークにホームエージェント装置30とアクセスルータ71、72が接続され、移動端末10はアクセスルータ71、72と無線交信し、移動端末10がアクセスルータ71、72間を移動するハンドオーバの際に、移動端末10は移動元アクセスルータ71配下と移動先アクセスルータ72配下からほぼ同じタイミングで同一パケットを受信するための移動端末の動作方法が記載されているといえる。

b.上記(2)の段落58に「移動端末10の構成および基本的な動作について説明する。」と記載され、及び、段落59に「ネットワークと接続するL1/2処理部11、16」と記載されていることから、移動端末10は通信するためにはL1/L2接続を行っているといえる。

そして、上記(1)の段落28に「移動端末10がアクセスルータ71、72間を移動する際に、・・・ホームエージェント装置30は、移動端末10への転送パケットを複製して、既に登録されているアクセスルータ71配下で使用するケアオブアドレス(oCoA)と移動先のケアオブアドレス(nCoA)の双方に送出する」と記載され、ホームエージェント装置30には、アクセスルータ71配下で使用するケアオブアドレス(oCoA)は既に登録されていることから、移動端末10がアクセスルータ71、72間を移動するハンドオーバの前に、移動端末10は、ホームエージェント装置30からの受信のために、移動元アクセスルータ71配下の通信のL1/L2接続を既に確立しているといえる。

c.上記(3)の段落65に「移動端末10のハンドオーバ時の動作について・・・説明する」と記載されているので、上記(3)の段落65ないし68の記載は、移動端末10のハンドオーバ時の動作についての記載である。そして、同段落66に「ハンドオーバの発生を・・・検出すると(S11)」と記載されていることから、移動端末10は移動先アクセスルータ72へのハンドオーバの発生を検出しているといえる。

d.上記(1)の段落28の「移動先のアクセスルータ72配下で使用するケアオブアドレス(nCoA)を事前に取得し、・・・バインディングアップデートメッセージを用いてホームエージェント装置30に通知し、ホームエージェント装置30は、移動端末10への転送パケットを複製して、既に登録されているアクセスルータ71配下で使用するケアオブアドレス(oCoA)と移動先のケアオブアドレス(nCoA)の双方に送出する」、及び、上記(2)の段落67の「取得したnCoAをホームエージェント装置30・・・に通知するため、バインディングアップデートメッセージを生成送信するよう・・・nCoA通知用のバインディングアップデートメッセージは、・・・アクセスネットワークに送出される(S13)。」との記載によれば、ホームエージェント装置30が既に登録されている移動元アクセスルータ71配下と移動先アクセスルータ72配下の双方でパケットを送出できるように、移動端末10がホームエージェント装置30にバインディングアップデートメッセージを送出するといえる。

e.上記(1)の段落28に「移動端末10がアクセスルータ71、72間を移動する際に、・・・移動端末10は、移動元と移動先でほぼ同じタイミングで同一パケットを受信可能となる」と記載されていることから、移動端末10は、ハンドオーバ中に、移動元アクセスルータ71配下と移動先アクセスルータ72配下の双方で同一パケットを受信しているといえる。

f.上記(4)の段落78に「移動端末10のデータ受信処理は、・・・パケットのシーケンス番号が記載された複製情報をもとにパケットの重複受信を回避する」、及び、上記(4)の段落83に「データパケットを受信すると(S22)、・・・同一シーケンス番号の有無を確認する(S24)。同一シーケンスが検出されなかった場合は(S26)、受信パケットの複製情報からシーケンス番号を抽出してパケットシーケンスキャッシュに記載し(S28)・・・同一シーケンス番号が検出された場合は、既に受信されたデータパケットの複製であるとして、該パケットを破棄する。」と記載されており、上記eで検討したとおり、移動元アクセスルータ71配下と移動先アクセスルータ72配下の双方で同一パケットを受信するのはハンドオーバ中であることから、移動端末10は、ハンドオーバ中にパケットのシーケンス番号をもとにパケットの重複受信を回避し、同一シーケンス番号が検出された場合は、既に受信されたデータパケットの複製であるとして、該パケットを破棄しているといえる。

また、上記(4)の段落83に「データパケットを受信すると(S22)、・・・同一シーケンス番号の有無を確認する(S24)。同一シーケンスが検出されなかった場合は(S26)、受信パケットの複製情報からシーケンス番号を抽出してパケットシーケンスキャッシュに記載し(S28)・・・同一シーケンス番号が検出された場合は、既に受信されたデータパケットの複製であるとして、該パケットを破棄する。」と記載されているので、シーケンス番号は既に受信したパケットと後から受信したパケットとを比較するために使用されているといえる。

よって、移動端末10は、ハンドオーバ中にパケットのシーケンス番号をもとにパケットの重複受信を回避し、同一シーケンス番号が検出された場合は、既に受信されたデータパケットの複製であるとして、該パケットを破棄し、シーケンス番号は既に受信したパケットと後から受信したパケットとを比較するために使用されるといえる。

g.上記(3)の段落65に「移動端末10のハンドオーバ時の動作について・・・説明する」と記載されているので、上記(3)の段落65ないし68の記載は、移動端末10のハンドオーバ時の動作についての記載である。そして、同段落68に「移動先ネットワークへのハンドオーバ完了後(S15)、ホームエージェント装置30・・・による移動元のケアオブアドレスへの複製配信を停止させるため、・・・ホームエージェント装置30・・・に、・・・バインディングアップデートメッセージを送信(S16)する。」と記載されていることから、移動端末10は、移動先ネットワークへのハンドオーバ完了後にホームエージェント装置30による複製配信を停止させるといえる。

以上を総合すると、引用例15には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「 ローカルネットワークにホームエージェント装置30とアクセスルータ71、72が接続され、移動端末10はアクセスルータ71、72と無線交信し、移動端末10がアクセスルータ71、72間を移動するハンドオーバの際に、移動端末10は移動元アクセスルータ71配下と移動先アクセスルータ72配下からほぼ同じタイミングで同一パケットを受信するための移動端末の動作方法であって、
移動端末10がアクセスルータ71、72間を移動するハンドオーバの前に、移動端末10は、ホームエージェント装置30からの受信のために、移動元アクセスルータ71配下の通信のL1/L2接続を既に確立し、
移動端末10は移動先アクセスルータ72へのハンドオーバの発生を検出し、
ホームエージェント装置30が既に登録されている移動元アクセスルータ71配下と移動先アクセスルータ72配下の双方でパケットを送出できるように、移動端末10がホームエージェント装置30にバインディングアップデートメッセージを送出し、
移動端末10は、ハンドオーバ中に、移動元アクセスルータ71配下と移動先アクセスルータ72配下の双方で同一パケットを受信し、
移動端末10は、ハンドオーバ中にパケットのシーケンス番号をもとにパケットの重複受信を回避し、同一シーケンス番号が検出された場合は、既に受信されたデータパケットの複製であるとして、該パケットを破棄し、シーケンス番号は既に受信したパケットと後から受信したパケットとを比較するために使用され、
移動端末10は、移動先ネットワークへのハンドオーバ完了後にホームエージェント装置30による複製配信を停止させる、
を含む、方法。」

2.周知事項について

(1)当審拒絶理由で引用された特開2003-111134号公報には、図面とともに次の記載がある。(下線は当審が付与)

「【0058】リアルタイム受信を要しない場合には、移動元の基地局14及び移動先の基地局16からそれぞれ送信された異なるパケットが個別に受信され(ステップS126)、復調、ベースバンド処理が行われ、抽出された受信パケットの順序が並び替えられる(ステップS126)。パケットの並び替えは、例えばパケットにシーケンス番号を付与することにより実現することができる。なお、順序制御されたパケットは、データインターフェースに転送される。そして、移動先の基地局16からの受信電力が所定の値以上になった場合(ステップS128)、移動元の基地局14又は移動先の基地局16にハンドオーバーの終了が指示される(ステップS130)。」

(2)特開2005-110294号公報には、図面とともに次の記載がある。(下線と当審が付与)

「【0020】
受信端末11において、送受信部110は、モデム、LAN等の、送信端末10より送信されたデータパケットを受信する手段である。データ受信部111は、送受信部110からデータパケットを受け取り、必要ならパケットをシーケンス番号順に並べ替え、必要ならパケットをほどき、必要なら復号化し、モニタ、スピーカ、ファイル、共有メモリといった出力にデータを渡す手段である。再送要求制御部112は、データパケットのロスを観測し、ロスしたパケットに対して再送要求を行う。また、送信端末10から再送要求禁止通知パケットを受信した場合には、再送要求を行わないように制御する手段でもある。端末制御部113は、これら各部を制御する手段である。」

上記(1)及び(2)によれば、次の技術的事項(以下、「周知事項」という。)は周知であると認められる。

「パケットをシーケンス番号をもとに並び替える。」

第5 対比及び判断

本願発明と引用発明とを対比する。

1.引用発明の「移動端末10」は、本願発明の「ユーザ機器デバイス」に相当する。

また、引用発明では「移動端末10がアクセスルータ71、72間を移動するハンドオーバの際に、移動端末10は移動元アクセスルータ71配下と移動先アクセスルータ72配下からほぼ同じタイミングで同一パケットを受信する」ことから、移動端末10は、ハンドオーバの際に、ほぼ同じタイミングで、移動元アクセスルータ71配下で通信するとともに、移動先アクセスルータ72配下で通信している。よって、移動端末10は移動元アクセスルータ71配下と移動先アクセスルータ72配下の両方で通信している状態でハンドオーバしているといえることから、本願発明と同様に、引用発明は「デュアルアクティブハンドオーバ」を行っているといえる。

そして、引用発明では、このようなデュアルアクティブハンドオーバが円滑に行われていることは明らかであるから、引用発明の移動端末の動作方法はデュアルアクティブハンドオーバを円滑にするために行っている方法といえる。

以上のことから、引用発明の「移動端末10がアクセスルータ71、72間を移動するハンドオーバの際に、移動端末10は移動元アクセスルータ71と移動先アクセスルータ72から同一パケットを受信するための移動端末の動作方法」は、本願発明と同様に、「デュアルアクティブハンドオーバを円滑にするためにユーザ機器デバイス上で動作可能な方法」といえる。

2.引用発明の移動元アクセスルータ71配下の通信のL1/L2接続は、本願発明と同様、「第1の接続」といえ、引用発明のローカルネットワークは本願発明の「第1のネットワーク」に含まれる。そして、引用発明では「ローカルネットワークにホームエージェント装置30とアクセスルータ71、72が接続され」ていることから、ホームエージェント装置30と移動元アクセスルータ71はローカルネットワークに接続されている。よって、引用発明のローカルネットワークに接続されているホームエージェント装置30からの受信は、ホームエージェント装置30及び移動元アクセスルータ71が接続されているローカルネットワークを介した通信サービスであるから、本願発明の「第1のネットワークを介した通信サービス」に含まれる。したがって、引用発明の「移動端末10は、ホームエージェント装置30からの受信のために、移動元アクセスルータ71配下の通信のL1/L2接続を既に確立」するとは、本願発明と同様に、「第1のネットワークを介した通信サービスのための第1の接続を確立する」といえる。

よって、本願発明の「第1のネットワークを介した通信サービスのための第1の接続を第1のアクセスノードと確立するステップ」と、引用発明の「ローカルネットワークにホームエージェント装置30とアクセスルータ71、72が接続され」及び「移動端末10は、ホームエージェント装置30からの受信のために、移動元アクセスルータ71配下の通信のL1/L2接続を既に確立」することは、「第1のネットワークを介した通信サービスのための第1の接続を確立するステップ」の点で共通する。

3.本願請求項1を引用する本願請求項3に「前記ハンドオーバが発生するという指示を前記取得するステップが、前記ハンドオーバを開始するために前記ユーザ機器デバイスによって自律的判定を行うステップを含む」と記載されていることから、本願請求項1に記載された「ハンドオーバが発生するという指示を前記取得するステップ」には「ハンドオーバを開始するためにユーザ機器デバイスによって自律的判定を行うステップ」が含まれている。

一方、引用発明の「移動端末10は移動先アクセスルータ72へのハンドオーバの発生を検出」することは、移動端末10がハンドオーバが発生するという状態を取得していることであるから、ハンドオーバを開始するために移動端末10によって、本願発明と同様に、「自律的判定」を行っているといえる。

よって、引用発明の「移動端末10は移動先アクセスルータ72へのハンドオーバの発生を検出」することは、本願発明の「前記ハンドオーバを開始するために前記ユーザ機器デバイスによって自律的判定を行うステップ」に含まれる。

そして、本願発明において「前記ハンドオーバが発生するという指示を前記取得するステップが、前記ハンドオーバを開始するために前記ユーザ機器デバイスによって自律的判定を行うステップを含む」ことから、引用発明の「移動端末10は移動先アクセスルータ72へのハンドオーバの発生を検出」することは、本願発明の「ハンドオーバが発生するという指示を取得するステップ」にも含まれる。

したがって、引用発明の「移動端末10は移動先アクセスルータ72へのハンドオーバの発生を検出」することは、本願発明の「前記ハンドオーバが発生するという指示を前記取得するステップが、前記ハンドオーバを開始するために前記ユーザ機器デバイスによって自律的判定を行うステップを含む」に含まれ、「ハンドオーバが発生するという指示を取得するステップ」に含まれる。

4.引用発明の「ホームエージェント装置30が既に登録されている移動元アクセスルータ71配下と移動先アクセスルータ72配下の双方でパケットを送出できるように、移動端末10がホームエージェント装置30にバインディングアップデートメッセージを送出」することは、移動端末10がバインディングアップデートメッセージを送出することに伴って、移動端末10とホームエージェント装置30の間の通信が移動元アクセスルータ71配下とともに移動先アクセスルータ72配下で行われていることになるから、移動端末10は、既に登録されている移動元アクセスルータ71配下の通信の接続が確立された状態にとどまると同時に、移動先アクセスルータ72配下の通信の接続を確立するといえる。ここで、移動元アクセスルータ71配下の通信の接続が確立された状態とは、上記「2.」で説示したとおり、移動元アクセスルータ71配下の通信のL1/L2接続である第1の接続が確立された状態であるであるから、引用発明の既に登録されている移動元アクセスルータ71配下の通信の接続が確立された状態にとどまると同時にとは、本願発明と同様に、「第1の接続が確立された状態にとどまると同時に」といえる。また、移動先アクセスルータ72配下の通信の接続は、本願発明と同様に、「第2の接続」といえることから、移動先アクセスルータ72配下の通信の接続を確立することは、第2の接続を確立することといえる。

そして、引用発明における移動先アクセスルータ72はローカルネットワークに接続されており、上記「2」で説示したとおり、引用発明のローカルネットワークは本願発明の「第1のネットワーク」に含まれ、移動先アクセスルータ72配下の移動端末10とホームエージェント装置30の間の通信も本願発明の「第1のネットワークを介した通信サービス」に含まれることから、移動先アクセスルータ72配下の通信の接続を確立することは、本願発明と同様に、移動端末10は「第1のネットワークを介した通信サービスのための第2の接続を確立する」ことといえる。

更に、「第1のネットワーク」は「第1のネットワークまたは第2のネットワーク」に含まれることから、本願発明の「前記第1の接続が確立された状態にとどまると同時に、前記第1のネットワークまたは第2のネットワークを介した通信サービスのための第2の接続を第2のアクセスノードと確立するステップ」と、引用発明の「ホームエージェント装置30が既に登録されているアクセスルータ71配下と移動先アクセスルータ72配下の双方でパケットを送出できるように、移動端末10がホームエージェント装置30にバインディングアップデートメッセージを送出」することとは、「前記第1の接続が確立された状態にとどまると同時に、前記第1のネットワークまたは第2のネットワークを介した通信サービスのための第2の接続を確立するステップ」の点で共通する。

5.上記「2.」及び「4.」で説示したとおり、移動元アクセスルータ71配下の通信のL1/L2接続は、本願発明と同様、「第1の接続」といえ、移動先アクセスルータ72配下の通信の接続は、本願発明と同様に、「第2の接続」といえることから、本願発明の「ハンドオーバ中に前記第1の接続と前記第2の接続の両方を介してパケットを受信するステップ」と、引用発明の「ハンドオーバ中に、移動元アクセスルータ71配下と移動先アクセスルータ72配下の双方で同一パケットを受信」することとは、「ハンドオーバ中に前記第1の接続と前記第2の接続の両方を介してパケットを受信するステップ」の点で共通する。

6.引用発明では「移動端末10は、ハンドオーバ中にパケットのシーケンス番号をもとにパケットの重複受信を回避し、同一シーケンス番号が検出された場合は、既に受信されたデータパケットの複製であるとして、該パケットを破棄」していることから、本願発明と同様に、「ハンドオーバ中に受信された重複パケットを削除」しているといえる。

また、引用発明では「シーケンス番号は既に受信したパケットと後から受信したパケットとを比較するために使用され」、既に受信したパケットと後から受信したパケットとはアクセスルータ71配下で受信されたパケットと移動先アクセスルータ72配下で受信されたパケットのことであるから、シーケンス番号はアクセスルータ71配下で受信したパケットと移動先のアクセスルータ72配下で受信したパケットとを比較するために使用されているといえる。つまり、シーケンス番号は、本願発明と同様に、「第1の接続を介して受信されたパケットと第2の接続を介して受信されたパケットとを比較するために使用」されているといえる。

そして、引用発明のシーケンス番号は、パケットの識別子の1つといえることから、本願発明の「パケット識別子」に含まれる。

よって、本願発明の「前記ハンドオーバ中に受信された重複パケットを削除するステップであって、パケット識別子が、前記第1の接続を介して受信されたパケットと、前記第2の接続を介して受信されたパケットとを比較するために使用される、ステップ」と、引用発明の「移動端末10はハンドオーバ中にパケットのシーケンス番号をもとにパケットの重複受信を回避し、同一シーケンス番号が検出された場合は、既に受信されたデータパケットの複製であるとして、該パケットを破棄し、シーケンス番号は既に受信したパケットと後から受信したパケットとを比較するために使用され」ることとは、「前記ハンドオーバ中に受信された重複パケットを削除するステップであって、パケット識別子が、前記第1の接続を介して受信されたパケットと、前記第2の接続を介して受信されたパケットとを比較するために使用される、ステップ」の点で共通する。

7.引用発明は移動元アクセスルータ71から移動先アクセスルータ72へのハンドオーバであるから、引用発明の「移動先ネットワークへのハンドオーバ完了後に複製配信を停止させる」とは移動端末10と移動元アクセスルータ71配下の接続を終了して通信を終了することであることは明らかである。そして、上記「2.」で説示したとおり、移動元アクセスルータ71配下の通信のL1/L2接続は、本願発明と同様、「第1の接続」といえることから、引用発明の移動端末10と移動元アクセスルータ71配下の接続を終了することは、本願発明と同様に、「第1の接続を終了する」といえる。

よって、本願発明の「前記第1の接続を終了するステップ」と、引用発明の「移動先ネットワークへのハンドオーバ完了後に複製配信を停止させる」こととは、「前記第1の接続を終了するステップ」の点で共通する。

以上のことから、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。

(一致点)

「 デュアルアクティブハンドオーバを円滑にするためにユーザ機器デバイス上で動作可能な方法であって、
第1のネットワークを介した通信サービスのための第1の接続を確立するステップと、
ハンドオーバが発生するという指示を取得するステップと、
前記第1の接続が確立された状態にとどまると同時に、前記第1のネットワークまたは第2のネットワークを介した通信サービスのための第2の接続を確立するステップと、
ハンドオーバ中に前記第1の接続と前記第2の接続の両方を介してパケットを受信するステップと、
前記ハンドオーバ中に受信された重複パケットを削除するステップであって、パケット識別子が、前記第1の接続を介して受信されたパケットと、前記第2の接続を介して受信されたパケットとを比較するために使用される、ステップと、
前記第1の接続を終了するステップと
を含む、
前記ハンドオーバが発生するという指示を前記取得するステップが、前記ハンドオーバを開始するために前記ユーザ機器デバイスによって自律的判定を行うステップを含む、
方法。」

(相違点)

1.本願発明では、第1の接続及び第2の接続について、「第1の接続を第1のアクセスノードと確立」及び「第2の接続を第2のアクセスノードと確立」し、ハンドオーバについては第2のアクセスノードに対して発生するのに対し、引用発明では、第1の接続については移動元アクセスルータ71配下の通信のL1/L2接続であり、第2の接続については具体的に特定されておらず、ハンドオーバについては移動先アクセスルータ72へのハンドオーバが発生するが、当該発明特定事項は特定されていない点。

2.本願発明では、「前記ハンドオーバ中に前記受信されたパケットを並べ替えるステップ」を有するのに対し、引用発明ではハンドオーバ中に「パケットのシーケンス番号をもとにパケットの重複受信を回避」しているが、並べ替えることは特定されていない点。

以下、相違点について検討する。

(相違点1について)

引用発明では、移動端末10は無線交信する際にL1/L2接続を行うことから、アクセスルータ側にもL1/L2接続を行うアクセスノードがあることは明らかである。よって、引用発明では、移動元アクセスルータ71配下の通信において、及び、ハンドオーバ先の移動先アクセスルータ72配下の通信においてもL1/L2接続を行うアクセスノードであることは明らかである。

また、引用発明の移動端末は移動元アクセスルータ71配下の通信のL1/L2接続を確立していることから、同様にハンドオーバ先の移動先アクセスルータ72配下の通信においてもL1/L2接続が必要である。

よって、引用発明の移動元アクセスルータ71配下の通信のL1/L2接続の確立先を移動元アクセスルータ71側のアクセスノードとし、ハンドオーバ先を移動先アクセスルータ72側のアクセスノードとし、移動先アクセスルータ72配下の通信のL1/L2接続の確立先を移動先アクセスルータ72側のアクセスノードとすることは、引用発明において行われているといえるし、また当業者が容易に想到しうる。

(相違点2について)

まず、上記「第4 引用発明及び周知事項について」の「2.周知事項について」で認定したように「パケットをシーケンス番号をもとに並び替える。」ことは周知事項である。

よって、引用発明において、周知事項に基づいて、ハンドオーバ中にパケットのシーケンス番号をもとに並べ替えることは当業者が容易に想到しうる。

したがって、本願発明は引用発明及び周知事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

ここで、令和2年12月22日の意見書において、審判請求人は、「引用文献15の開示によって、「パケット識別子が、前記第1の接続を介して受信されたパケットと、前記第2の接続を介して受信されたパケットとを比較するために使用される」ことを示唆することはできません。」と主張している。

しかしながら、「第5 対比及び判断」の「6.」で検討したように、引用発明では「シーケンス番号は既に受信したパケットと後から受信したパケットとを比較するために使用され」、既に受信したパケットと後から受信したパケットとはアクセスルータ71配下で受信したパケットと移動先のアクセスルータ72配下で受信したパケットのことであるから、シーケンス番号はアクセスルータ71配下で受信したパケットと移動先のアクセスルータ72配下で受信したパケットとを比較するために使用されているといえる。つまり、引用発明では、シーケンス番号は第1の接続を介して受信されたパケットと第2の接続を介して受信されたパケットとを比較するために使用されているといえる。

よって、引用文献15の開示によって、「パケット識別子が、前記第1の接続を介して受信されたパケットと、前記第2の接続を介して受信されたパケットとを比較するために使用される」ことが示唆されており、上記主張は認められない。

第6 むすび

以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用例15に記載された発明及び周知事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

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2019-017800

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