2019-017583
香料を含むマイクロカプセルの複数集団を含有する組成物
- 審判番号
- 2019-017583
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2017-567397外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2019年12月25日
- 審決日
- 2021年09月29日
- 公報発行日
- 2022年03月25日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 分類
- P18 .537-WZ (C11D) / P18 .56 -WZ (C11D) / P18 .575-WZ (C11D)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法36条6項2号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第6項第2号、特許法第17条の2第6項、特許法第36条第2項、特許法第17条の2第1項第3号、特許法第17条の2第5項第2号
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 9項目
第1 手続の経緯
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本願は、2016年6月30日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2015年6月30日 (US)米国)を国際出願日とする出願であって、平成31年2月19日付けで拒絶理由が通知され、その指定期間内の令和元年5月10日に意見書及び手続補正書が提出され、同年9月9日付けで拒絶査定がなされ(謄本送達は同月13日)、これに対して、同年12月25日に拒絶査定不服の審判が請求されると同時に手続補正書が提出され、令和2年8月11日付けで当審により拒絶理由の通知がされ、その指定期間内(延長1月)の同年11月24日に意見書及び手続補正書が提出され、令和3年1月13日付けで当審により拒絶理由(最後)の通知がされ、その指定期間内(延長3月)の同年7月15日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。
第2 令和3年7月15日付け手続補正についての補正の却下の決定
[補正却下の決定の結論]
令和3年7月15日付け手続補正を却下する。
[理由]
1.本件補正の内容
特許法第17条の2第1項第3号に該当する手続補正である、令和3年7月15日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲についてするものであって、そのうち請求項1についての補正は以下のとおりである。
(1)本件補正前の請求項1(すなわち、令和2年11月24日付け手続補正書の請求項1)
「 【請求項1】組成物を含む消費者製品であって、前記組成物が、補助剤材料と、マイクロカプセルの第1集団であって、分配変性剤及び第1香油を第1重量比で含み、第1平均体積加重粒径を有するマイクロカプセルを含む第1集団と、続きを表示(全11行)マイクロカプセルの第2集団であって、分配変性剤及び第2香油を第2重量比で含み、第2平均体積加重粒径を有するマイクロカプセルを含む第2集団と、を含み、前記分配変性剤が、ミリスチン酸イソプロピルであり、前記第1平均体積加重粒径及び前記第2平均体積加重粒径が、2マイクロメートル~80マイクロメートルであり、かつ、前記第1平均体積加重粒径と前記第2平均体積加重粒径とは異なり、前記第1平均体積加重粒径及び前記第2平均体積加重粒径は、「Accusizer 780A」(Particle Sizing Systems (Santa Barbara CA)製)により計測された値であり、前記第1香油および前記第2香料が、3,6-ノナジエン-1-オール、アリルカプロエート、ヘプタン酸アリル、βγヘキセノール、シス3ヘキセニルアセテート、シス-6-ノネン-1-オールFCC、シクロガルバネート、サイマール、ジヒドロミルセノール、ジメチルベンジルカルビニルブチレート、エチル2メチルペンタノエート、アセト酢酸エチル、カプロン酸エチルFCC、エチルマルトール、エチルエナンテート、エチル-2-メチルブチレート、フロルヒドラル、ヘキサメチルインダノピラン、γデカラクトン、ヘキシルアセテート、イオノンβ、ジャスモラクトン、リファローム(Liffarome)、リグストラール又はトリプラール、リナロール、メロナール、ネクタリル、パラヒドロキシフェニルブタノン、ピノアセトアルデヒド、プレニルアセテート、テサロン(Thesaron)、ウンデカラクトン、ウンデカベルトール(undecavertol)、ヴェルドックス、ベルデュラルBエクストラ、ガルバスコーン(Galbascone)、パチョリ(Patchouli)30、メロナール、左旋性トリサンドール、オクチルアルデヒド、ビオリフ、フルクタレート、βナフトールメチルエーテル、ユーカリプトール、酢酸イソボルニル、エチル-2-メチルブチラート、テルピネオレン、イオノンβ、4-第3級ブチルシクロヘキシルアセテート、デシルアルデヒド、リグストラール又はトリプラール、テトラヒドロムゴール(Tetra Hydro Muguol)、ヴェルドックス、フロールアセテート、6-ノナジエン-1-オール、およびこれらの組み合わせからなる群から選ばれた成分からなり、前記補助剤材料が、漂白活性化剤、界面活性剤、ビルダー、キレート剤、移染防止剤、分散剤、酵素及び酵素安定剤、触媒金属錯体、ポリマー系分散剤、粘土及び汚れ除去ないし再付着防止剤、増白剤、泡抑制剤、染料、追加の香料及び香料送達システム、構造弾性化剤、布地柔軟剤、担体、ヒドロトロープ、加工助剤、構造化剤、抗凝集剤、コーティング剤、ホルムアルデヒドスカベンジャー、顔料、布地柔軟化活性物質、水、安定剤、シリコーン、布地色調剤、付着助剤、ポリビニルアルコール、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、組成物からなる消費者製品であって、前記消費者製品が、汎用洗浄剤;ヘビーデューティ洗浄剤;きめの細かい布地用液体洗剤;手洗い用食器洗剤;ライトデューティー食器洗剤;食器洗い機用洗剤、液体洗浄及び殺菌剤;布地コンディショニング製品;清浄補助剤;基材付き製品;スプレー及びミストからなる群から選択される、消費者製品。」
(2)本件補正後の請求項1(すなわち、令和3年7月15日付け手続補正書の請求項1)
「 【請求項1】組成物を含む消費者製品であって、前記組成物が、補助剤材料と、マイクロカプセルの第1集団であって、分配変性剤及び第1香油を第1重量比で含み、第1平均体積加重粒径を有するマイクロカプセルを含む第1集団と、続きを表示(全13行)マイクロカプセルの第2集団であって、分配変性剤及び第2香油を第2重量比で含み、第2平均体積加重粒径を有するマイクロカプセルを含む第2集団と、を含み、前記分配変性剤が、ミリスチン酸イソプロピルであり、前記第1平均体積加重粒径及び前記第2平均体積加重粒径が、2マイクロメートル~80マイクロメートルであり、かつ、前記第1平均体積加重粒径と前記第2平均体積加重粒径とは異なり、前記第1平均体積加重粒径及び前記第2平均体積加重粒径は、「Accusizer 780A」(Particle Sizing Systems (Santa Barbara CA)製)により計測された値であり、前記マイクロカプセルの第1集団および前記マイクロカプセルの第2集団は、本明細書で説明する破壊強度試験法に従って測定したときに、0.1MPa~15.0MPaの体積加重破壊強度(VWFS)を有し、前記マイクロカプセルの第1集団の体積加重破壊強度(VWFS)と前記マイクロカプセルの第2集団の体積加重破壊強度(VWFS)とは異なり、前記第1香油および前記第2香油が、3,6-ノナジエン-1-オール、アリルカプロエート、ヘプタン酸アリル、βγヘキセノール、シス3ヘキセニルアセテート、シス-6-ノネン-1-オールFCC、シクロガルバネート、サイマール、ジヒドロミルセノール、ジメチルベンジルカルビニルブチレート、エチル2メチルペンタノエート、アセト酢酸エチル、カプロン酸エチルFCC、エチルマルトール、エチルエナンテート、エチル-2-メチルブチレート、フロルヒドラル、ヘキサメチルインダノピラン、γデカラクトン、ヘキシルアセテート、イオノンβ、ジャスモラクトン、リファローム(Liffarome)、リグストラール又はトリプラール、リナロール、メロナール、ネクタリル、パラヒドロキシフェニルブタノン、ピノアセトアルデヒド、プレニルアセテート、テサロン(Thesaron)、ウンデカラクトン、ウンデカベルトール(undecavertol)、ヴェルドックス、ベルデュラルBエクストラ、ガルバスコーン(Galbascone)、パチョリ(Patchouli)30、メロナール、左旋性トリサンドール、オクチルアルデヒド、ビオリフ、フルクタレート、βナフトールメチルエーテル、ユーカリプトール、酢酸イソボルニル、エチル-2-メチルブチラート、テルピネオレン、イオノンβ、4-第3級ブチルシクロヘキシルアセテート、デシルアルデヒド、リグストラール又はトリプラール、テトラヒドロムゴール(Tetra Hydro Muguol)、ヴェルドックス、フロールアセテート、6-ノナジエン-1-オール、およびこれらの組み合わせからなる群から選ばれた成分からなり、前記補助剤材料が、漂白活性化剤、界面活性剤、ビルダー、キレート剤、移染防止剤、分散剤、酵素及び酵素安定剤、触媒金属錯体、ポリマー系分散剤、粘土及び汚れ除去ないし再付着防止剤、増白剤、泡抑制剤、染料、追加の香料及び香料送達システム、構造弾性化剤、布地柔軟剤、担体、ヒドロトロープ、加工助剤、構造化剤、抗凝集剤、コーティング剤、ホルムアルデヒドスカベンジャー、顔料、布地柔軟化活性物質、水、安定剤、シリコーン、布地色調剤、付着助剤、ポリビニルアルコール、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、組成物からなる消費者製品であって、前記消費者製品が、汎用洗浄剤;ヘビーデューティ洗浄剤;きめの細かい布地用液体洗剤;手洗い用食器洗剤;ライトデューティー食器洗剤;食器洗い機用洗剤、液体洗浄及び殺菌剤;布地コンディショニング製品;清浄補助剤;基材付き製品;スプレー及びミストからなる群から選択される、消費者製品。」(以下、「本件補正発明」ともいう。)
(3)本件補正の前後の両請求項を対比すると、本件補正は、補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「マイクロカプセルの第1集団および前記マイクロカプセルの第2集団」なる事項について、「前記マイクロカプセルの第1集団および前記マイクロカプセルの第2集団は、本明細書で説明する破壊強度試験法に従って測定したときに、0.1MPa~15.0MPaの体積加重破壊強度(VWFS)を有し、
前記マイクロカプセルの第1集団の体積加重破壊強度(VWFS)と前記マイクロカプセル
の第2集団の体積加重破壊強度(VWFS)とは異なり」に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものといえる。
そして、本件補正前の請求項1に係る発明と本件補正発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一であるから、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号にいう特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものといえる。
そこで、上記本件補正発明が、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(すなわち、いわゆる独立特許要件を満たすか)について、明確性(特許法第36条第2項)の観点から、以下検討する。
2.独立特許要件の検討
(1)明確性要件(特許法第36条第2項)について
一般に「法36条6項2号は,特許請求の範囲の記載に関し,特許を受けようとする発明が明確でなければならない旨規定する。同号がこのように規定した趣旨は,仮に,特許請求の範囲に記載された発明が明確でない場合には,特許の付与された発明の技術的範囲が不明確となり,第三者に不測の不利益を及ぼすことがあり得るので,そのような不都合な結果を防止することにある。そして,特許を受けようとする発明が明確であるか否かは,特許請求の範囲の記載だけではなく,願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し,また,当業者の出願当時における技術的常識を基礎として,特許請求の範囲の記載が,第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきことはいうまでもない。」とされている〔知財高裁、平成21年(行ケ)第10434号判決(平成22年8月31日判決言渡)参照。〕。
(2)判断
ア(ア)まず、本件補正発明において、「マイクロカプセルの第1集団であって、分配変性剤及び第1香油を第1重量比で含み、第1平均体積加重粒径を有するマイクロカプセルを含むマイクロカプセルの第1集団」と「マイクロカプセルの第2集団であって、分配変性剤及び第2香油を第2重量比で含み、第2平均体積加重粒径を有するマイクロカプセルを含むマイクロカプセルの第2集団」とが、明確に判別できるかどうかについて検討する。
(イ)本件補正発明においては、第1集団のマイクロカプセルと第2集団のマイクロカプセルについて、その壁(シェル)の成分に差異がないものを含み(請求項1の記載からは、その成分に差異がないものを排除していない。また、本件明細書の記載においても、たとえば、本件明細書の【0217】の「表7」(【表12】)の試料番号「3」は、実施例5及び6に従った10μm及び45μm香料カプセルが用いられているが、実施例5及び6に従った香料カプセル壁(シェル)は、【0145】~【0149】(実施例5)、【0150】~【0154】(実施例6)の記載によれば、いずれも同一の「油溶液B」及び「油溶液D」から得られており、その壁(シェル)の成分に差異がないものといえるものである。したがって、第1集団のマイクロカプセルと第2集団のマイクロカプセルについて、その壁(シェル)の成分に差異がないものが含まれることは明らかである。)、しかも、そのシェルの内部に含まれる第1香油及び第2香油が同一のものである場合を含む(請求項5)ので、そのような場合について検討する。
「第1集団」と「第2集団」とが、それぞれ独立した別の集団として存在する場合は、「第1集団」と「第2集団」のそれぞれに含まれるマイクロカプセルが、どちらの集団のものかは明らかであり、「第1集団」のマイクロカプセルと「第2集団」のマイクロカプセルとは、明確に、区別される。
しかしながら、本件補正発明に係る組成物においては、上記「第1集団」と上記「第2集団」とを、同時に含むものである。
そうすると「第1集団」の「第1平均体積加重粒径」及び「第2集団」の「第2平均体積加重粒径」が異なり、「第1集団」の「体積加重破壊強度(VWFS)」と「第2集団」の「体積加重破壊強度(VWFS)」が異なるとしても、いずれも平均値についての規定であるから、マイクロカプセルの壁(シェル)の成分には差異がなく、第1香油及び第2香油が同一のものであるものについて、本件補正発明に係る組成物には、「第1集団」の個々のマイクロカプセルと「第2集団」の個々のマイクロカプセルの中に、「粒径」及び「体積加重破壊強度(VWFS)」が、同一のものがあるものも含まれることは明らかである。
すなわち、それぞれ独立した別の集団としては区別されていた「第1集団」と「第2集団」について、本件補正発明には、もはや、それらが区別することができなくなったものが含まれるといえる。
(ウ)また、仮にマイクロカプセルの成分に差異があり、第1香油及び第2香油が異なるものであっても、本件補正発明においては、どのようなマイクロカプセルを「第1集団」と「第2集団」に帰属されるかは規定されていないから、香油成分の違いやマイクロカプセル成分により、「第1集団」と「第2集団」とが区別できるとは限らず、やはり「第1集団」と「第2集団」とは区別することができない。
(エ)以上のとおり、本件補正発明においては、「第1集団」と「第2集団」とが、本来、別の集団とし存在していたとしても、区別されなくなるものが含まれる。
イ(ア)そうすると、本件補正発明において、同一の組成物に対して、本件補正発明に含まれるように「第1集団」及び「第2集団」を選択し、さらに、本件補正発明に含まれないように別の「第1集団」及び「第2集団」を選択することも可能であり、本件補正発明は一義的に定めることができない。
(イ)例えば、平均粒径及び体積加重破壊強度について仮の値を定めて説明すると(以下に示す値は例示であり、技術的な意味を有するものではない。)、マイクロカプセル集団A(平均粒径:2マイクロメートル、体積加重破壊強度(VWFS):4.0MPa)、B(平均粒径:11マイクロメートル、体積加重破壊強度(VWFS):11.0MPa)、C(平均粒径:1マイクロメートル、体積加重破壊強度(VWFS):4.0MPa)及びD(平均粒径:10マイクロメートル、体積加重破壊強度(VWFS):10.0MPa)を含む場合(ただし、各集団のマイクロカプセルの個数は同一とする)、1)「第1集団」をA及びB、「第2集団」をC及びDと選択すると、「第1集団」は、平均粒径:6.5マイクロメートル、体積加重破壊強度(VWFS):7.5MPa、「第2集団」は、平均粒径:5.5マイクロメートル、体積加重破壊強度(VWFS):7.0MPaとなり、本件補正発明の平均粒径及び体積加重破壊強度についての規定を満たすが、一方で、2)「第1’集団」をA及びD、「第2’集団」をB及びDと選択すると、「第1’集団」は、平均粒径:6.0マイクロメートル、体積加重破壊強度(VWFS):7.0MPa、「第2’集団」は、平均粒径:6.0マイクロメートル、体積加重破壊強度(VWFS):7.5MPaとなり、本件補正発明の平均粒径についての規定を満たさなくなる。そうすると、同一の組成物について、本件補正発明に含まれるものと、本件補正発明に含まれないものとが生じることになる。
(ウ)また、例えば、マイクロカプセル組成物(粒径及び破壊強度(VWFS)が標準分布している)の多数のマイクロカプセルを無作為に「第1集団」及び「第2集団」の2つに振り分ければ、統計的に「第1集団」と「第2集団」の平均粒径及び体積加重破壊強度(VWFS)は同じになるから、本件補正発明の発明特定事項を満たさないことになる。
一方、マイクロカプセル組成物の多数のマイクロカプセルは粒径分布及び破壊強度(VWFS)分布を持っていることは技術常識であるから、そのうち、恣意的に、平均粒径及び体積加重破壊強度(VWFS)の大きいものを「第1集団」、平均粒径及び体積加重破壊強度(VWFS)の小さいものを「第2集団」のように選択した場合、本件補正発明の発明特定事項を満たすものとなり、同一の組成物について、本件補正発明に含まれるものと、本件補正発明に含まれないものとが生じることになる。
(エ)さらに、本件補正発明においては、マイクロカプセルについては、第1集団と第2集団とを含むことが規定されているところ、さらに別の第3の集団のマイクロカプセル等を含むことは排除されていない。
そして、一定の粒径分布及び破壊強度(VWFS)分布を有するマイクロカプセル集団の中から、本件補正発明で規定されるように第1集団と第2集団を選択し、残りを第3の集団とみなすことも、また、本件補正発明に含まれないように第1’集団と第2’集団を選択し、残りを第3’の集団とみなすことも、いずれも可能であることは明らかである。
ウ 以上のことから、同一の組成物について、本件補正発明に含まれるものと、本件補正発明に含まれないものとが生じる本件補正発明は、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるといわざるを得ない。
(3)審判請求人の主張
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ア 請求人は、令和3年7月15日提出の意見書において、「(a)発明概念が明細書中に明確に記載されているか否かの問題と、(b)たとえば、マイクロカプセル粒子が分布の裾において混合状態にあるイ号組成物をどのようにして分析しその内容を同定し得るか、あるいはそれがクレームの技術的範囲に含まれるか否かの問題は別個の問題であり、前者の(a)の問題につきましては、請求項記載の本願発明は、請求項1において明確に定義され、しかも明細書の記載内容からも明確かつ容易に理解することができるところ、記載要件のひとつである明確性要件を十分具備するものと思料いたします。
なお、本願発明の上記ご指摘に関して付言させていただきますと、本願発明に係るマイクロカプセルの「第1集団」および「第2集団」は、本願明細書に記載の方法にしたがって製造することができますが、その際に、例えばそれぞれの粒子群に異なる色の着色剤を付与したりマーカー等の識別手段を付与することによって「第1集団」および「第2集団」はそれぞれ容易に識別することが技術的には可能であります。また、各粒子集団のマイクロカプセルの壁材成分の組成を分析することによっても識別は可能であるものと思料いたします。このような分析手段を用いれば、当該分析対象物がたとえイ号組成物であったとしても、粒子の数が有限である以上、識別することは原理的に可能であります。
したがいまして、請求項記載の本願発明は、法定の明確性要件を十分具備しているものと思料いたします。」と主張している。
イ しかし、上記(2)で検討したとおり、(a)の問題についても、本件補正発明は、請求項1において明確に定義されておらず、明確性要件を具備するものとはいえない。
ウ また、それぞれの粒子群に異なる色の着色剤を付与したりマーカー等の識別手段を付与することによって「第1集団」及び「第2集団」はそれぞれ容易に識別することが技術的には可能である点については、本件補正発明において着色剤を付与したりマーカー等の識別手段を付与することは特定されていないので、本件補正発明の特定事項に基づく主張ではなく、上述したように、本件補正発明においては、「第1集団」及び「第2集団」が区別できないものが含まれる。
エ さらに、各粒子集団のマイクロカプセルの壁材成分の組成を分析することによっても識別は可能である点については、本件補正発明において、上述したようにマイクロカプセルの壁材成分が同じものは除外されていない(本件補正後の請求項18においては、「シェル材料が異なる」点が特定されているが、本件補正発明においては第1集団と第2集団のシェル材料(壁材成分)についての特定はない。)から、本件補正発明の特定事項に基づく主張ではない。
よって、請求人の主張は採用できない。
(4)小括
したがって、本件補正発明は不明確であるから、この出願は、特許法第36条第6項第2号の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである
3.むすび
以上のとおりであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法126条第7項の規定に違反するから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
第3 本願発明について
1.本願発明
上記第2のとおり、本件補正は却下されたので、本願発明は、令和2年11月24日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1~18に記載された事項により特定されるとおりのものであって、その請求項1は次のとおりである。
「 【請求項1】組成物を含む消費者製品であって、前記組成物が、補助剤材料と、マイクロカプセルの第1集団であって、分配変性剤及び第1香油を第1重量比で含み、第1平均体積加重粒径を有するマイクロカプセルを含む第1集団と、続きを表示(全11行)マイクロカプセルの第2集団であって、分配変性剤及び第2香油を第2重量比で含み、第2平均体積加重粒径を有するマイクロカプセルを含む第2集団と、を含み、前記分配変性剤が、ミリスチン酸イソプロピルであり、前記第1平均体積加重粒径及び前記第2平均体積加重粒径が、2マイクロメートル~80マイクロメートルであり、かつ、前記第1平均体積加重粒径と前記第2平均体積加重粒径とは異なり、前記第1平均体積加重粒径及び前記第2平均体積加重粒径は、「Accusizer 780A」(Particle Sizing Systems (Santa Barbara CA)製)により計測された値であり、前記第1香油および前記第2香料が、3,6-ノナジエン-1-オール、アリルカプロエート、ヘプタン酸アリル、βγヘキセノール、シス3ヘキセニルアセテート、シス-6-ノネン-1-オールFCC、シクロガルバネート、サイマール、ジヒドロミルセノール、ジメチルベンジルカルビニルブチレート、エチル2メチルペンタノエート、アセト酢酸エチル、カプロン酸エチルFCC、エチルマルトール、エチルエナンテート、エチル-2-メチルブチレート、フロルヒドラル、ヘキサメチルインダノピラン、γデカラクトン、ヘキシルアセテート、イオノンβ、ジャスモラクトン、リファローム(Liffarome)、リグストラール又はトリプラール、リナロール、メロナール、ネクタリル、パラヒドロキシフェニルブタノン、ピノアセトアルデヒド、プレニルアセテート、テサロン(Thesaron)、ウンデカラクトン、ウンデカベルトール(undecavertol)、ヴェルドックス、ベルデュラルBエクストラ、ガルバスコーン(Galbascone)、パチョリ(Patchouli)30、メロナール、左旋性トリサンドール、オクチルアルデヒド、ビオリフ、フルクタレート、βナフトールメチルエーテル、ユーカリプトール、酢酸イソボルニル、エチル-2-メチルブチラート、テルピネオレン、イオノンβ、4-第3級ブチルシクロヘキシルアセテート、デシルアルデヒド、リグストラール又はトリプラール、テトラヒドロムゴール(Tetra Hydro Muguol)、ヴェルドックス、フロールアセテート、6-ノナジエン-1-オール、およびこれらの組み合わせからなる群から選ばれた成分からなり、前記補助剤材料が、漂白活性化剤、界面活性剤、ビルダー、キレート剤、移染防止剤、分散剤、酵素及び酵素安定剤、触媒金属錯体、ポリマー系分散剤、粘土及び汚れ除去ないし再付着防止剤、増白剤、泡抑制剤、染料、追加の香料及び香料送達システム、構造弾性化剤、布地柔軟剤、担体、ヒドロトロープ、加工助剤、構造化剤、抗凝集剤、コーティング剤、ホルムアルデヒドスカベンジャー、顔料、布地柔軟化活性物質、水、安定剤、シリコーン、布地色調剤、付着助剤、ポリビニルアルコール、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、組成物からなる消費者製品であって、前記消費者製品が、汎用洗浄剤;ヘビーデューティ洗浄剤;きめの細かい布地用液体洗剤;手洗い用食器洗剤;ライトデューティー食器洗剤;食器洗い機用洗剤、液体洗浄及び殺菌剤;布地コンディショニング製品;清浄補助剤;基材付き製品;スプレー及びミストからなる群から選択される、消費者製品。」(以下、「本願発明」という。)
2.令和3年1月13日付けの拒絶理由
令和3年1月13日付けの拒絶理由は、「令和3年1月13日付けの拒絶理由通知書に記載した理由1(3)」であり、要するに、この出願は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない、というものであり、具体的には、次のとおりのものである。
「本願発明における『マイクロカプセルの第1集団であって、分配変性剤及び第1香油を第1重量比で含み、第1平均体積加重粒径を有するマイクロカプセルを含む第1集団』と、『マイクロカプセルの第2集団であって、分配変性剤及び第2香油を第2重量比で含み、第2平均体積加重粒径を有するマイクロカプセルを含む第2集団』とにおいて、マイクロカプセルの成分に差異がなく、第1香油及び第2香油が同一のものである場合、『第1集団』と『第2集団』とを同時に含む本願発明の組成物においては、『第1集団』と『第2集団』とを区別することができない。そうすると、同一種類のマイクロカプセルからなるマイクロカプセル組成物におけるマイクロカプセルの集団から、『第1集団』として、本願発明の『第1集団』に含まれないように選択し、『第2集団』として、本願発明の『第2集団』に含まれるように選択することも可能であり、『第1集団』として、本願発明の『第1集団』に含まれるように選択し、『第2集団』として、本願発明の『第2集団』に含まれるように選択することも可能であり、本願発明は一義的に定めることができないことから、本願発明は明確とはいえない。」
3.判断
本願発明は、本件補正発明で規定された平均体積加重粒径と同様な平均体積加重粒径を有する「第1集団」及び「第2集団」を含み、「第1集団」及び「第2集団」には、本件補正発明の「体積加重破壊強度(VWFS)」についての規定がないものであるところ、本願発明は本件補正発明を包含するものであり、第2.2で示したように、「第1集団」及び「第2集団」のそれぞれの「平均体積加重粒径」が異なるとしても、同一の組成物に対して、「第1集団」及び「第2集団」の選択の仕方によっては、本願発明に含まれるものと本願発明に含まれないものとが存在することは明らかであるから、本願発明は不明確であるといわざるを得ない。
したがって、請求項1の記載は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
第4 むすび
以上のとおり、この出願は、特許請求の範囲の請求項1の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2019-017583