特許拒絶査定不服審判
2025-005653
異種金属部品接合方法
- 審判番号
- 2025-005653
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2020-218982
- 請求日
- 2025年04月14日
- 審決日
- 2026年05月26日
- 公報発行日
- 2026年07月31日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】日東精工株式会社
- 審判長/審判官
- 審判長 鈴木 貴雄
- 審判官 永田 和彦
- 審判官 青木 良憲
- 分類
- P18 .121-WZ (B21K)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第6項第2号、特許法第29条、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2020-218982「異種金属部品接合方法」拒絶査定不服審判事件〔令和 4年 7月 8日出願公開、特開2022-104017〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、令和2年12月28日にされた特許出願であって、その手続の経緯は、概略、以下のとおりである。
令和6年 8月28日付け:拒絶理由通知書
令和6年10月28日 :意見書、手続補正書の提出
令和7年 1月 6日付け:拒絶査定
令和7年 4月14日 :審判請求書、手続補正書の提出
令和8年 2月10日付け:拒絶理由通知書
令和8年 4月15日 :意見書、手続補正書(以下、この手続補正書による手続補正を「本件補正」という。)の提出
第2 本件補正後の特許請求の範囲の請求項1
本件補正によって補正がされた特許請求の範囲の請求項1は、下記1のとおりであって、実質的に、本件補正前の(すなわち、令和7年4月14日提出の手続補正書により補正がされた特許請求の範囲の)請求項1に請求項2(下記2)の記載を組み込むとともに、さらに補正を加えたものであるといえる。なお下線は、本件補正による補正箇所を示すために請求人が付したものである。
1 本件補正後の請求項1
「 【請求項1】
第1金属部材と第2金属部材とを機械的に接合し、第2金属部材にバスバーを接合可能な電池端子の製造方法において、
逆テーパー状の袋穴部を有する第1金属部材の当該袋穴部の開口部を塞ぐようにして第2金属部材の端部を配置し、
第1金属部材は、その外周面を拘束するようにして受け型で保持する一方、第2(当審注:原文は半角。以下同じ。)金属部材は、その外周面は非拘束とし、
この状態で第2金属部材を圧縮する方向に圧力を加えることにより、第2金属部材の端部が塑性変形し第1金属部材の袋穴部へ流動し充填させて第1金属部材と第2金属部材とを機械的に接合するとともに、
前記第2金属部材は、圧縮による塑性変形によって前記第1金属部材の袋穴部に収容された端部を除いて扁平し、その扁平した部分である第2金属部材の外径は、第1金属部材の外径よりも大径に成形されて接合されることを特徴とする電池端子の製造方法。」
2 本件補正前の請求項1及び請求項2
「 【請求項1】
第1金属部材と第2金属部材とを機械的に接合して成る電池端子の製造方法において、
逆テーパー状の袋穴部を有する第1金属部材を受け型で保持し、
第1金属部材の袋穴部が形成された端面よりも大径の端面を有する第2金属部材の当該端面を、第1金属部材の袋穴部を塞ぐようにして配置し、
この状態で第2金属部材を圧縮する方向に圧力を加えることにより、第2金属部材の端部が塑性変形し第1金属部材の袋穴部へ流動し充填させて第1金属部材と第2金属部材とを機械的に接合することを特徴とする電池端子の製造方法。
【請求項2】
第2金属部材は、圧縮による塑性変形に伴い第1金属部材よりも大径に成形されることを特徴とする請求項1に記載の電池端子の製造方法。」
第3 当審が通知した拒絶の理由
本件補正前の請求項1、及び、請求項1を引用する請求項2に対して、令和8年2月10日付け拒絶理由通知書によって当審が通知した拒絶の理由は、概略、次のとおりのものである。
1 理由1(明確性)について
本願は、特許請求の範囲の記載が次の(1)及び(2)の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
(1)本件補正前の請求項1に記載した「第1金属部材の袋穴部が形成された端面よりも大径の端面を有する第2金属部材の当該端面を、第1金属部材の袋穴部を塞ぐようにして配置し、・・・」について、「第1金属部材の袋穴部が形成された端面」がどこの部分を意味するのか不明である。
(2)本件補正前の請求項2に記載した「第2金属部材は、圧縮による塑性変形に伴い第1金属部材よりも大径に成形されること・・・」について、塑性変形した第2金属部材のどの部分が第1金属部材のどの部分よりも大径に形成されるのかが明らかではないため構成が不明確である。
2 理由2(進歩性)について
本件補正前の請求項1及び2に係る発明は、本願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献1に記載された発明及び引用文献2~4に記載された周知技術に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献1:特公昭44-23221号公報
引用文献2:特開2012-138342号公報
引用文献3:国際公開第2018/003175号
引用文献4:特開2016-122604号公報
第4 当審の判断
上記第3の理由1及び2について、以下判断する。
1 理由1(明確性)について
本件補正後の請求項1に関し、上記理由1のうち上記第3の1(2)の点については、依然としてその構成が不明確である。以下詳述する。
(1)本件補正後の請求項1には、上記第2の1のとおり、次のとおり記載される。
「前記第2金属部材は、圧縮による塑性変形によって前記第1金属部材の袋穴部に収容された端部を除いて扁平し、その扁平した部分である第2金属部材の外径は、第1金属部材の外径よりも大径に成形されて接合される」
しかしながら、依然として、「扁平した部分である第2金属部材の外径」が、「第1金属部材の外径」のどの部分と比較して「大径に成形され」ることを特定しようとしているのか、請求項1の記載のみでは明確に理解することができない。
(2)当該用語の意義を解釈するため、発明の詳細な説明を参酌すると、明細書及び図面には、次の内容が記載されている(下線は当審にて付した。以下同様。)。
ア「【0012】
第1金属部材10は、平板状の頭部11と、これに一体成形される軸部12とから構成される。また、頭部11の上面は、有底の袋穴部13を有している。この袋穴部13は、その内周壁が逆テーパー状に成形されており、この逆テーパー部14は、底部に向かうに従って、袋穴部13が拡がる方向に傾斜している。さらに、袋穴部13の開口縁部15は円弧状に成形されている。
【0013】
第2金属部材20は、円柱状を成しており、その端部21は、上記第1金属部材10の袋穴部13の開口面積よりも十分に大きく成形されている。
【0014】
図2は、上記第1金属部材10と第2金属部材20との接合方法を示す図である。受け型1は、段付きの挿入孔1aを有しており、第1金属部材10の頭部11を段付き部に吊下し、挿入孔1aに第1金属部材10の軸部12を遊嵌するようにして、第1金属部材10を挿入孔1aに保持するように構成されている。
【0015】
続いて、第2金属部材20の端部21が上記第1金属部材10の袋穴部13を塞ぐようにして設置される。そして、パンチピン3を下方に前身させて、第2金属部材20のもう一方の端部22側から第2金属部材20を軸方向に圧縮することにより、第2金属部材20の端部21が塑性変形により流動し、第1金属部材10の袋穴部13へ充填される。これとともに、第2金属部材20は圧縮力により扁平する。
【0016】
続けて、図3に示すように、第1金属部材10の袋穴部13に、第2金属部材20の端部21が完全に充填されるまで、かつ第2金属部材20が平板状になるまで圧縮することにより、第1金属部材10と第2金属部材20は接合される。」
イ「図2
[図:0001437045000001.jpg]
」
ウ「図3
[図:0001437045000002.jpg]
」
(3)上記(2)から、発明の詳細な説明には、図2及び3(上記(2)イ及びウ)に示されるように、第2金属部材20は、圧縮力により扁平し、第1金属部材10の袋穴部13に第2金属部材20の端部21が完全に充填されるまで、かつ第2金属部材20が平板状になるまで圧縮され、第1金属部材10と第2金属部材20が接合されることについて、記載される。
また、第1金属部材10は、平板状の頭部11と、これに一体成形される軸部12とから構成され、頭部11の上面は、有底の袋穴部13を有していることも理解される。
しかしながら、発明の詳細な説明においても、「扁平した部分である第2金属部材の外径」が、「第1金属部材の外径」のどの部分(平板状の頭部11、軸部12、有底の袋穴部13、又は、その他の部分)に対して「大径に成形され」るかまでは、明記がない。
(4)そのため、本件補正後の請求項1の記載を詳細に検討する。
「第1金属部材の外径」との記載を文言どおりに解釈すると、「第1金属部材」のうち、径方向に最も大きく張り出して位置する部分の外径と解するのが相当であることから、第1金属部材10を構成する部分のうち、「平板状の頭部11」の「外径」であると解釈され得る。
さらに、当該請求項1には、上記(1)の事項のほか、「第1金属部材は、その外周面を拘束するようにして受け型で保持する」とも記載され、当該「外周面」が「第1金属部材の外径」を画定するともいえる。発明の詳細な説明(段落【0014】、図2)によれば、外周面を拘束するように受け型で保持されるのは、「平板状の頭部11」である(なお「軸部12」は挿入孔1aに遊嵌されるから、外周面が拘束されているとはいえない。)から、「第1金属部材の外径」は「平板状の頭部11」の「外径」であることを間接的に裏付けている、とも解される。
(5)しかしながら、図3(上記(2)ウ)の図示内容から、第2金属部材20が平板状になるまで圧縮された状態においては、第2金属部材20の外径が受け型1の段付きの挿入孔1aの段付き部の内径、すなわち、第1金属部材10の頭部11の外径と等しくなることは看取されるものの、第1金属部材10の頭部11の外径よりも大径に成形されることまでを看取することができない。
(6)なお、令和8年2月10日付け拒絶理由通知書に対し、令和8年4月15日提出の意見書においては、上記理由1(上記第3の1)について、
「4.拒絶理由1について
上記2および3に記載した内容により、明確になったと存じます。」
と記載され、その「3.拒絶理由2について」の欄には、
「・・・また、接合後において、引用発明1は、先端部材4(本願発明1の第1金属部材に相当)と、軟質金属材5との外径が同一であるのに対し、本願発明1は、第2金属部材の外径は、第1金属部材の外径よりも大径である点で相違します。
上記の相違点により、本願発明1によって製造された電池端子は、第2金属部材が頭部、第1金属部材が軸部のような形状となます。(当審注:「なります」の誤記と認める。)・・・」と記載される。
以上の記載から推認すると、請求項1の記載における「第1金属部材の外径」とは、「第1金属部材10の軸部12」の「外径」を意図していた、とも解されるが、本件補正後の請求項1には、「第1金属部材の軸部の外径」(下線は当審にて付した。)とまでの具体的な記載がない(請求項1全体をみても「軸部12」についての記載自体がない。)。
(7)してみると、上記(1)のとおり、請求項1においては、「扁平した部分である第2金属部材の外径」が、「第1金属部材の外径」のどの部分と比較して「大径に成形され」ることを特定しようとしているのか、請求項1の記載、及び、上記(2)ウの図3を参酌しても、「第1金属部材の外径」の指す部位(例えば、頭部か、軸部か、袋穴部か、それ以外か)を明確に特定することができない。
(8)小括
したがって、本願は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしているとはいえない。
2 理由2(進歩性)について
(1)本願発明の認定
上記1のとおり、本件補正後の請求項1における、
「前記第2金属部材は、圧縮による塑性変形によって前記第1金属部材の袋穴部に収容された端部を除いて扁平し、その扁平した部分である第2金属部材の外径は、第1金属部材の外径よりも大径に成形されて接合される」
との記載では、その記載から特定される事項が不明確であるが、発明の詳細な説明(上記1(2)ウの図3)、及び、上記1(6)における意見書の記載から推認して、
「前記第2金属部材は、圧縮による塑性変形によって前記第1金属部材の袋穴部に収容された端部を除いて扁平し、その扁平した部分である第2金属部材の外径は、第1金属部材の軸部の外径よりも大径に成形されて接合される」
の意味と解釈し、その余の点については、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項(上記第2の1)により特定されるとおりのものとして、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)を認定する。
(2)引用文献の記載及び引用発明
ア 引用文献1の記載
引用文献1には、以下の事項が記載されている。
(ア)「本発明はスポット溶接用電極片の加工方法に関するのであるが、この加工法はその発明の要旨を踏襲して他の目的で硬軟異金属片の接続加工にも応用する事ができる。」(第1欄第21~24行)
(イ)「室2内には第1図に示す様に、上面に噛合い結合用の凹所3を設けた硬質材金属(クロム銅合金など)からなる先端部材4を填(当審注:原文は旧字。以下同じ。)め、更にその上からアルミニウム又は軟質銅などの胴部形成用の軟質金属材5を填め、その上から油圧機等により強力に働らくプランジャー7を徐々に作用させ得る様に設けている。凹所3は強圧成形後の結合を完全ならしめる為に例えば稍ダブテール形断面の先拡がりにした臼形孔とする事が望ましい。この様に準備して型枠1内で2金属片を強圧搾するときは、アルミニウム材等からなる胴部形成用材5は型枠内でプランジャー7によって強圧されて室2内でプランジャー7の周りに後方押出加工され、一方その下方の端面部は徐々に先拡がりの凹所3内に強力に押し込まれ、殊にそのプランジャーのストロークの末期に於て強力な作用を受けて該凹所内を緊密に充塞し、両者を噛合わせの状態で完全に結合させ得るものである。」(第2欄第9~26行)
(ウ)「第1~3図
[図:0001437045000003.jpg]
」
イ 引用発明
上記アの記載からみて、引用文献1には、スポット溶接用電極片の加工方法に関する、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「 クロム銅合金などの硬質材金属からなる先端部材4とアルミニウムなどの胴部形成用の軟質金属材5とを噛合わせの状態で結合して成るスポット溶接用電極片の加工方法において、
先拡がりにした凹所3を有する先端部材4の当該凹所3の開口部を塞ぐようにして軟質金属材5の端部を配置し、
先端部材4及び軟質金属材5は、その外周面を拘束するようにして型枠1で保持し、
この状態で軟質金属材5を圧縮する方向に圧力を加えることにより、軟質金属材5の端部が塑性変形し先端部材4の凹所3へ流動し充填させて先端部材4と軟質金属材5とを噛合わせの状態で結合するスポット溶接用電極片の加工方法。」
ウ 引用文献2の記載
引用文献2には、以下の事項が記載されている。
(ア)「【0001】
本発明は、蓄電素子、及び、端子の製造方法に関するものである。」
(イ)「【0006】
本発明は、前記課題を解決するための手段として、
外装体から外部に露出する露出面を有する外部端子と、外装体の内部に配置され、前記外部端子に接続される集電体と、外装体の内部に配置され、前記集電体に接続される発電要素と、を備えた蓄電素子であって、
前記外部端子は、
外部に露出する平面部と、
前記平面部から前記外装体の内部に突出して集電体に接続される軸部と、
を有する構成としたものである。
【0007】
この構成により、外装体の内部に軸部を挿通して集電体と電気接続し、外部に露出する平面部にバスバーを接続することができる。」
(ウ)「【0034】
外部端子14は、負極外部端子28と正極外部端子29とからなり、平板部30と、その下面中央部から下方に向かって延びる軸部31とで構成されている。平板部30の表面(露出面)には、図示しないバスバーが溶接により接続される。」
(エ)「【0041】
なお、本発明は、前記実施形態に記載された構成に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。
例えば、前記負極外部端子28は、図8に示すように、平面視矩形状のアルミニウム製の板状体34と、その下面中央部に形成した平面視円形の凹部34aに、銅製のリベット35の鍔部35aを圧入することにより形成することができる。・・・」
(オ)「図1
[図:0001437045000004.jpg]
」
(カ)「図8
[図:0001437045000005.jpg]
」
エ 引用文献3の記載
引用文献3には、以下の事項が記載されている。
(ア)「[0017](第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態に係る部材の非貫通接合方法(以下、第1接合方法という)を図面に基づき説明する。図2に示すように、1は第1接合方法により製造される複合部品を外部電極端子として使用する用途の一例を示すリチウム電池である。このリチウム電池1は複数枚の電池パック1aを収納する電池缶1bを有し、この電池缶1bの上面には正極側外部電極端子(図示せず)と負極側外部電極端子(以下、負側外部端子という)3とが取付けられている。前記電池パック1aは上端に正、負の各電極端子1a1,1a2を有し、隣接する電池パック1a,1aの一方の負電極端子1a2と他方の電池パック1aの正電極端子1a1間にはバスバー1cが接続され、複数の電池パック1aが直列に接続されている。また、最後列の電池パック1aの負電極端子1a2にもバスバー1cが連接されており、このバスバー1cの端部には前述の負側外部端子3が接続されている。
[0018] 前記負側外部端子3は、図5に示すように銅部材でなる接合部材4と、この接合部材4よりも柔らかいアルミ部材でなる被接合部材5とからなっている。前記接合部材4は、棒状の軸部4aと、外形状が非円形状の一例である歯形状の段部4bと、これに連続しかつこれから突出する突部4cとを有している。前記段部4bは、突部4cの突端近傍に拡広しており、その外周囲で回転方向の摩擦抵抗を確保している。また、前記被接合部材5は前記接合部材4の段部4bおよび突部4cを覆う所定厚さの平板部5bを有するが、図3(a)および(図3(b)に示すように当該成形が行われる前には前述の接合部材4の段部4bおよび突部4cが嵌合可能な穴部5aを有している。前記負側外部端子3は、図4(a)および図4(b)並びに図5に示すように被接合部材5の袋穴5a内に接合部材4の段部4bおよび突部4cが位置するように被接合部材5を接合部材4に被せ、後記受け型6との間で被接合部材5を圧縮することにより被接合部材5と接合部材4を同時に塑性変形させて、接合部材4にアンダーカット部4ccを形成しつつそのアンダーカット部4ccに被接合部材5の余肉を回り込ませて、両部材同士を抜脱不能に接合する非貫通接合構造Sを有している。
[0019] 前述の構造により、接合部材4のアンダーカット部4ccが被接合部材5の余肉の回り込む溝を形成することとなり、被接合部材5の抜け止め効果がもたらされる。また接合部材4のアンダーカット部4ccの背面により被接合部材5の余肉がかしめられる状態となり、これら部材の密着性が向上して大きな軸線方向の強度が得られる。さらに、被接合部材5の余肉が段部4bの歯形状の空隙に回り込むことにより、回転方向の抵抗が大きくなり、大きな回転方向の強度が得られるばかりか、接合個所が穴部5a内で非貫通状態であるので、気密性の高い接合構造が得られる。これにより、当該負側外部端子3は液体が充満されるリチウム電池1の電池缶1bのような密閉される内部に通じる個所で使用されても、液体が漏洩することはない。同時に、リード線等を溶着するスペースを十分に確保でき、しかもその耐食性も確保できる平板部5bを得ることができる。・・・」
(イ)「図3
[図:0001437045000006.jpg]
」
(ウ)「図4
[図:0001437045000007.jpg]
」
(エ)「図5
[図:0001437045000008.jpg]
(当審注:図5中、符号「5a」は、[0019]、図1からみて「5b」の誤記と認める。)」
オ 引用文献4の記載
引用文献4には、以下の事項が記載されている。
(ア)「【0025】
図3から図6を参照すると、負極の外部電極11Bは、板状体(端子本体)14と、リベット(軸状部)15とを備える。本実施形態では、板状体14はアルミニウム又はアルミニウム合金製であり、リベット15は銅又は銅合金製である。」
(イ)「【0038】
負極の外部電極11Bの板状体14にはバスバーが溶接されており、バスバーを介して板状体14に対してリベット15の鍔部17から引き抜ことする外力が作用する。しかし、リベット15の鍔部17は板状体14を貫通する態様で板状体14に圧入されているので、このような外力に対して、十分な板状体14のリベット15からの引抜強度が確保されている。また、鍔部17に設けられた環状溝19には、加締時に板状体14を構成する材料(本実施形態ではアルミニウム又はアルミニウム合金)が環状溝19内に進入している。言い換えれば、鍔部17の環状溝19に板状体14が食い込んでいる。これによっても、板状体14のリベット15からの引抜強度を高めることができる。」
(ウ)「図3
[図:0001437045000009.jpg]
」
(エ)「図4
[図:0001437045000010.jpg]
」
(3)対比
ア 本願発明と引用発明とを対比すると、以下のとおりとなる。
(ア)本願発明と引用発明とを対比すると、後者の「(クロム銅合金などの硬質材金属からなる)先端部材4」は、前者の「第1金属部材」に相当し、以下同様に、「(アルミニウムなどの胴部形成用の)軟質金属材5」は「第2金属部材」に、「噛合わせの状態で結合」は「機械的に接合」に、「先拡がりにした」は「逆テーパー状の」に、「凹所3」は「袋穴部」に、「型枠1」は「受け型」に、それぞれ相当する。
(イ)引用発明の「スポット溶接用電極片の加工方法」と本願発明の「第2金属部材にバスバーを接合可能な電池端子の製造方法」とを対比すると、両者は「製品の製造方法」という点に限り一致する。
イ したがって、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は次のとおりである。
(ア)一致点
「 第1金属部材と第2金属部材とを機械的に接合して成る製品の製造方法において、
逆テーパー状の袋穴部を有する第1金属部材の当該袋穴部の開口部を塞ぐようにして第2金属部材の端部を配置し、
第1金属部材は、その外周面を拘束するようにして受け型で保持し、
この状態で第2金属部材を圧縮する方向に圧力を加えることにより、第2金属部材の端部が塑性変形し第1金属部材の袋穴部へ流動し充填させて第1金属部材と第2金属部材とを機械的に接合する製品の製造方法。」
(イ)相違点
(イ-1)相違点1
製品の製造方法に関し、本願発明は、「第2金属部材にバスバーを接合可能な電池端子の製造方法」であるのに対し、引用発明は、「スポット溶接用電極片の加工方法」である点。
(イ-2)相違点2
受け型での保持に関し、本願発明は、「第2金属部材は、その外周面は非拘束とし」ているのに対し、引用発明は、「軟質金属材5」は、その外周面が拘束されている点。
(イ-3)相違点3
本願発明は、「前記第2金属部材は、圧縮による塑性変形によって前記第1金属部材の袋穴部に収容された端部を除いて扁平し、その扁平した部分である第2金属部材の外径は、第1金属部材の外径よりも大径に成形されて接合される」のに対し、引用発明は、そのような構成を備えていない点。
(4)判断
上記(3)イ(イ)の相違点について、以下判断する。
ア 相違点1について
アルミニウムからなる板状体(本願発明の第2金属部材に相当。)にバスバーを接合可能な電池端子の製造方法であって、銅とアルミニウムのように硬さの異なる2種の金属部材を機械的に接合して成形することは、引用文献2(【0007】、【0041】、図8、上記(2)ウ)、引用文献3([0017]~[0019]、図3~5、上記(2)エ)、引用文献4(【0025】、【0038】、図3~4、上記(2)オ)に記載されているとおり、本願出願前から周知の技術(以下「周知の電池端子の製造」又は「周知技術」という場合がある。)である。
そして、引用発明と当該周知技術とは、硬さの異なる2種の金属部材を機械的に接合して成形する点で、技術分野が関連し、また機能・作用が共通する。また、上記(2)ア(ア)のとおり、引用文献1には「この加工法はその発明の要旨を踏襲して他の目的で硬軟異金属片の接続加工にも応用する事ができる」と記載されていることから、引用発明において、その接続加工の対象として上記周知の電池端子の製造に用いることで、上記相違点1に係る本願発明のように構成することは、当業者にとって容易に想到し得たものである。
イ 相違点2及び3について
引用発明は、スポット溶接用電極片の加工方法であるから、最終的に引用文献1の第3図に一部を断面図として示されるような製品を完成させるために、軟質金属材5は、その外周面が型枠1で拘束されるとともに、圧縮による塑性変形によって先端部材4の凹所3に収容された端部を除いて扁平してはいないが、上記アのとおり、引用発明の加工方法を他の目的で用いる場合には、必ずしも軟質金属材5の外周面を型枠1で拘束する必要はないし、圧縮による塑性変形によって軟質金属材5を扁平にすることも可能である。
そして、バスバーを接合可能な電池端子において、バスバーと接合するために軸部の外径よりも大径に成形された扁平した部分と前記軸部とからなるものは、引用文献2(【0007】、【0041】、図8)、引用文献3([0017]~[0019]、図5)、引用文献4(【0025】、【0038】、図3~4)に記載されているとおり、本願出願前から周知の構成である(以下、上記アの周知技術と併せて「周知技術」という。)。特に引用文献3には、被接合部材5を接合部材4に被せ、受け型6との間で被接合部材5を圧縮して塑性変形させることで、リード線等を溶着するスペースを十分に確保でき、しかもその耐食性も確保できる平板部5bを得ることが開示され、当該平板部5bの外径は、接合部材4の外径よりも大径に成形されているといえる。
そうすると、上記アのとおり、引用発明の加工方法において、その接続加工の対象として、上記周知の電池端子の製造に用いるために、軟質金属材5の外周面を非拘束として、圧縮による塑性変形によって軟質金属材5を先端部材4の外径よりも大径に扁平することで、上記相違点2及び3に係る本願発明の構成とすることは、当業者にとって容易に想到し得たものである。
(5)請求人の主張について
請求人は意見書において、上記(3)イ(イ-2)及び(イ-3)の相違点2及び3を挙げた上で、「上記の相違点により、本願発明1によって製造された電池端子は、第2金属部材が頭部、第1金属部材が軸部のような形状となます。(当審注:「なります」の誤記と認める。)そして、電池セルは、バスバーで接続しモジュール化されるものであり、これには、第2金属部材の頭部表面はバスバーを位置決めしやすく、かつ溶接するため十分な面積が確保されなければなりません。
このような電池分野特有の課題を解決するために、本願発明1は考案されたものであり、引用発明1の属する技術分野、引用発明1の課題ならびに作用効果は、本願発明1のそれとは全く関連性が無いことから、引用発明1に基づいて本願発明1に容易に想到できる動機はありません。引用発明2乃至4についても同様です。」(意見書1ページ下から5行目~2ページ3行目。)旨の主張をするので検討する。
上記(4)イで述べたとおり、第2金属部材が頭部、第1金属部材が軸部のような形状の電池端子において、第2金属部材の頭部表面が、バスバーを溶接するため十分な面積を有する板状に成形されたものは、引用文献2~4に記載されているように周知技術である。そして、引用発明の加工方法を用いて、上記周知の電池端子を製造すると、上記課題は自ずと解決されるものである。
したがって、意見書における請求人の主張は採用できない。
(6)小括
上記(1)~(5)のとおり、本願発明は、引用発明及び引用文献2~4に記載された周知技術に基づいて、当業者であれば容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
第5 むすび
以上のとおり、本願は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
また、本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1に記載された発明(引用発明)及び引用文献2~4に記載された周知技術に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
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2025-005653