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特許拒絶査定不服審判

2025-002345

グラフトコポリマー及び有益剤を含有する洗濯洗剤組成物

審判番号
2025-002345
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2023-082317外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2025年02月14日
審決日
2026年03月19日
公報発行日
2026年09月25日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-Z (C11D) / P18 .537-Z (C11D) / P18 .575-Z (C11D)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項特許法36条6項1号
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第36条第6項第1号、特許法第29条、特許法第17条の2第5項、特許法第36条、特許法第17条の2第6項、特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2023- 82317「グラフトコポリマー及び有益剤を含有する洗濯洗剤組成物」拒絶査定不服審判事件〔令和 6年 1月23日出願公開、特開2024- 9756〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は、2023年(令和5年)5月18日(パリ条約に基づく優先権主張 外国庁受理 2022年7月11日 (CN)中華人民共和国)を出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。 令和5年 5月23日 :手続補正書の提出 令和6年 5月23日付け:拒絶理由通知 同年 8月27日 :意見書及び手続補正書の提出 同年10月 9日付け:拒絶査定 令和7年 2月14日 :手続補正書及び審判請求書の提出 第2 令和7年 2月14日にされた手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 令和7年 2月14日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1 本件補正について(補正の内容) (1)本件補正後の特許請求の範囲の記載 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された(下線部は、補正箇所である。)。 「【請求項1】 洗濯洗剤組成物であって、 1)組成物の0.01重量%~0.50重量%のグラフトコポリマーであって、 a)1000~20,000ダルトンの数平均分子量を有し、かつエチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、又はこれらの混合物に基づくポリアルキレンオキシド由来の構造単位と、 b)N-ビニルピロリドン由来の構造単位と、 c)1~6個の炭素原子を含む飽和モノカルボン酸由来のビニルエステル及び/又はアクリル酸若しくはメタクリル酸のメチルエステル若しくはエチルエステル由来の構造単位と、を含み、 ビニルイミダゾール由来の構造単位を含まず、 (a):(b)の重量比は、1:0.3~1:1であり、 (a):(c)の重量比は、1.0:0.3~1.0:0.9である、グラフトコポリマーと、 2)前記組成物の0.01重量%~1重量%の香料と、を含み、 前記グラフトコポリマーが、8,000Da~20,000Daの重量平均分子量を有する、洗濯洗剤組成物。」 (2)本件補正前の特許請求の範囲の記載 本件補正前の、令和 6年 8月27日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである 「【請求項1】 洗濯洗剤組成物であって、 1)組成物の0.01重量%~0.50重量%のグラフトコポリマーであって、 a)1000~20,000ダルトンの数平均分子量を有し、かつエチレンオキシド 、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、又はこれらの混合物に基づくポリアルキレン オキシド由来の構造単位と、 b)N-ビニルピロリドン由来の構造単位と、 c)1~6個の炭素原子を含む飽和モノカルボン酸由来のビニルエステル及び/又は アクリル酸若しくはメタクリル酸のメチルエステル若しくはエチルエステル由来の構造単 位と、を含み、 ビニルイミダゾール由来の構造単位を含まず、 (a):(b)の重量比は、1:0.1~1:2であり、 重量基準で(a)の量は、(c)の量よりも大きい、グラフトコポリマーと、 2)前記組成物の0.01重量%~1重量%の香料と、を含み、 前記グラフトコポリマーが、4,000Da~100,000Daの重量平均分子量を有する、洗濯洗剤組成物。」 2 補正の適否 本件補正は、補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である構造単位a)と構造単位b)の重量比、構造単位a)と構造単位c)の重量比、及び前記グラフトコポリマーの重量平均分子量について、上記のとおり限定するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。 (1)本件補正発明 本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。 (2)引用文献1の記載事項 ア 引用文献1 原査定の拒絶の理由で引用された本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、米国特許出願公開第2019/0390142号(以下「引用文献1」という。)は外国語で記載されているため、合議体による訳を記載する。 以下、下線は合議体による。 「[請求項1] グラフトコポリマーと処理補助剤を含む組成物であって、 グラフトコポリマーは、 (a)数平均分子量が約1000から約20000ダルトンであり、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、またはブチレンオキシドに基づくポリアルキレンオキシド、 (b)N-ビニルピロリドン、 (c)炭素数が1~6の飽和モノカルボン酸、及び/又は、アクリル酸又はメタクリル酸のメチル又はエチルエステル、 を含み、 (a):(b)の重量比は、約1:0.1~約1:1であり、 重量基準で、(a)の量は、(c)の量よりも大きく、 グラフト重合における(b)と(c)のモノマーを付加させる順序は重要ではなく、 組成物が布地ケア用である、組成物。」 「[請求項7] 前記請求項1に記載の組成物において、(a):(c)の重量比が、約1:0.1~約1:0.8である、組成物。」 「[請求項11] 前記請求項1に記載の組成物において、組成物の重量に対する重量比で0.1%~15%の前記グラフトコポリマーを含有する、組成物。」 「[請求項12] 前記請求項1に記載の組成物において、処理補助剤が、界面活性剤系、脂肪酸及び又はその塩、酵素、カプセル化された有益剤、汚れ放出ポリマー、色相向上剤(hueing agent)、ビルダー、キレート剤、移染阻害剤、分散剤、酵素安定剤、触媒材料、ブリーチ剤、ブリーチ活性化剤、高分子分散剤、汚れ除去/再付着阻害剤、高分子グリース洗浄剤、両親媒性共重合体、増白剤、抑泡剤、染料、色相向上剤、香料、構造弾性化剤、柔軟剤、担体、フィラー、親水化剤(hydrotropes)、溶媒、抗菌剤及び又は防腐剤、中和剤及び又はpH調整剤、加工酸(processing acid)、レオロジー改質剤及び又は構造化剤、乳白化剤、真珠光沢化剤、顔料、抗腐食剤及び又は抗変色剤、及びこれらの混合物、から選択される、組成物。」 「背景技術 [0002] 布地を洗濯する際には、染料の移動が問題となる。例えば、布地のある場所の染料が洗濯液に分散し、その後、その布地の別の場所や別の布地に付着する。そのような染料の移動(退色しやすい染料)は、特に薄い色や白色の布地の灰色化を引き起こす。」 「発明の詳細な説明 [0012] 本開示は、染料の移動の抑制(染料の制御)に有用な特定のグラフトコポリマーを含布地ケア用組成物と、関連する製造方法に関する。」 「[0023] 本開示の組成物は、布地ケア組成物であってもよい。そのような組成物としては、洗濯前の処理用組成物や洗濯後の処理用組成物や洗濯サイクルのすすぎや洗濯工程で添加されてもよい 」 「グラフトコポリマー [0029] 本開示に関する組成物と方法は、グラフトコポリマーに関連するものである。概して言えば、グラフトコポリマーは、(a)ポリアルキレンオキシドを(b)N-ビニルピロリドン及び(c)ビニルエステルとグラフト重合して得られる。グラフトコポリマーについて以下に詳しく説明する。 [0030] 本開示に関する組成物は、組成物の重量に対し、約0.1%から約50%、約40%、若しくは約25%まで、又は、約0.1%から約15%まで、約0.1%から約10%まで、若しくは約0.2%から約5%までのグラフトコポリマーを含有してもよい。グラフトコポリマーは、洗濯液やすすぎ液等の自動洗濯機の水性処理液中に、約5ppm、約10ppm、約25ppm、又は、約50ppmから、約1500ppm、約1000ppm、約500ppm、又は、約250ppmまでの量で存在する。」 「処理補助剤 [0054] 本開示の組成物は、処理補助剤を含みうる。処理補助剤は、布地や織物などの標的の表面に処理の利益をもたらすのに適している可能性がある。ここでいう処理補助剤は、バッファー、構造化剤、増粘剤、及び/又は、担体のような、処理組成物の化学的又は物理的安定性を促進する試薬を含みうる。 [0055] 処理補助剤は、組成物中に、組成物の意図する用途に適したレベルで存在する。典型的な使用量のレベルは、組成物の重量に対して、蛍光増白剤のような補助剤では0.001%からビルダーの場合の50%までの範囲にわたる。」 「[0057] 処理補助剤は、界面活性剤系、蛍光増白剤、プロテアーゼなどの酵素、色相向上剤、アルコキシル化したポリアルキレンイミンポリマー、両親媒性重合体、従来のDTIポリマー、外部構造化剤系、あるいはこれらの組合せを含みうる。処理補助剤は、カプセル化した香料であって、好ましくはコアを囲むシェルを含むカプセル化した香料であり、好ましくはシェルがアミン化合物及び/又はアクリル酸エステルのポリマーであるカプセル化した有益剤を含みうる。」 「[0145] B1.染料を与える側の布地の詳細 [0146] 染色された布地は、テスト ファブリック社(ペンシルベニア州ウエストピッツトン)から入手してもよい。複数の試験片(7.6cm×11.4cmのサイズ)が、下記の表に従って、ミニウォッシャーに投入された。 [図:0001438882000001.jpg] 」 「[0149] 本明細書中で使用する場合、また、当業者によく知られているように、L*C*h*色空間及びL*a*b*は、Hunter Associates Laboratoryで開発され、国際照明委員会(CIE)で物品の色や色の変化の測定をするために推薦されている3次元色測定モデルである。CIEL*a*b*色空間(CIELAB)には、色空間において、明度を表すL軸(L=0が黒、L=100が白に対応)と、赤から緑に対応するa*軸(a*>0が赤、a*<0が緑に対応)と、黄から青に対応するb*軸(b*>0が黄、b*<0が青に対応)の3つの座標軸がある。L*C*h*色空間は、概ね同じであるが、極座標系の色空間である。L*C*h*色空間の値は、測定装置で実測するか、CIELABの値から計算で求める。用語の定義及び換算式はHunter Associates Laboratory Inc.又はwww.hunterlab.comから入手でき、その全てを参照としてここに組み込む。 [0150] 移動した染料が布地に付着した量は、例えば、布地の処理の前後におけるL*C*h*を分光光度計(例えば、分光光度計CM-3610d、日本国東京のコニカミノルタ製)で測定しその変化量で表すことができ、dE2000の値で報告する。本明細書中で使用する場合、dE2000の値には、L*C*h*色空間における最初のL*C*h*の値と最後のL*C*h*の値との距離に関連するベクトルが含まれており、G. Sharmaらの“The CIE dE2000 Colour Difference Formula: Implementation Notes, Supplementary test Data and Mathematical Observations,” Color Research and Application, Vol 30 (1),2005,p21-30に詳細が記載されている手順で知覚に関する修正が加えられている。試験布地は、測定前に厚さを2倍にするために半分に折りたたまれる。Tシャツの上に縫い付けられている布地の場合は、折りたたまずにTシャツの反対側から測定をする。試験布地毎に2つのL*a*b*の測定値の平均値を用い、試験毎に2つの布地が測定される。 [0151] dE2000の値がより大きいことは、相対的に色の変化がより大きいことに対応し、より多くの染料がその布地に移動してきたことを意味する。」 「合成例1 [0158] 攪拌機と環流冷却器を備えた重合容器に窒素下で720gのPEG(4000g/mol)と60gの酢酸エチルを最初に仕込んだ。混合物を70℃で均一にした。 [0159] 次に、432gの酢酸ビニル(2時間で)、576gの酢酸エチルに溶かした288gのビニルピロリドン(5時間で)、196.6gの酢酸エチルに溶かした30.2gのt-ブチルピバレート(5.5時間で)を計量して添加した。全ての添加の終了後すぐに溶液を70℃で1時間撹拌した。その後、25.0gの酢酸エチルに溶かした3.8gのt-ブチルピバレート(1.5時間で)を計量して添加し、更に、0.5時間撹拌した。 [0160] 揮発性の成分を真空ストリッピングで除去した。その後、676.8gの脱イオン水を加え、水蒸気蒸留を100℃で1時間行った。 [0161] 得られたグラフトポリマーは、K値が20.8であった。最終的に得られた溶液の固形分は48.8%であった。 実施例1 グラフトコポリマーの実施例 [0162] 以下の表、表1は、説明のための、非限定的な本開示のグラフトコポリマーの例である。実施例1A~1Mを参照。加えて、比較のためのポリマーとして、実施例1Nと1Oを示す。 表1 [図:0001438882000002.jpg] 実施例2 液状又はゲル状洗剤 [0163] 表2は、説明のための液状又はゲル状洗剤布地ケア組成物の例であり、各成分を以下に示された配合割合で混合することによって得られる。 表2 [図:0001438882000003.jpg] 」 「実施例4 染料の移動に対するグラフトコポリマーの%レベルの効果 [0168] 染料の移動に対するグラフトコポリマーの含有割合の影響を調べるために、様々な量でグラフトコポリマーを含有する洗剤組成物が用意された。 [0169] 中規模の洗濯量で染料の移動を評価する方法が、1サイクルの洗濯で布地が受け取る染料の量を評価するために用いられ、染料を受け取る側の布地が入っている洗濯槽に染料を与える側の布地の混合物が投入された。染料を与える側の布地の混合物は、リアクティブレッド158、リアクティブブラック5、リアクティブブラウン7、リアクティブブルー225、ディスパースブルー79を含んでいる。 [0170] 試験の前と後の結果を比較してdE2000を計算し、より大きなdE2000はより多くの染料が布地に移動したことに対応する。 表4 [図:0001438882000004.jpg] [0171] 表4の結果は、実施例1Dのグラフトコポリマーの濃度が増加するにつれてdE2000が減少することを示しており、これは色の変化が少なくなり、染料がナイロン/スパンデックスの布地に移行する量も減ることを示している。」 イ 引用文献1に記載された発明 引用文献1の特許請求の範囲には、前記アのとおり、特定構造のグラフトコポリマーと処理補助剤を含む組成物(請求項1)、当該グラフトコポリマーの含有割合が、組成物の重量に対する重量比で0.1%~15%であること(請求項11)、及び、処理補助剤として香料(請求項12)が記載されている。その具体的な態様である実施例4A([0158]~[0163]、[0168]~[0170]の表4])として、洗剤2Aにポリマー1Dを0.70%添加した組成物を布地の洗濯に用いたことが記載されている。前記ポリマー1Dは、数平均分子量が4000ダルトンのポリエチレングリコールにビニルピロリドンと酢酸ビニルを1.00:0.40:0.60の重量比でグラフト重合した、K値が20.1のグラフトコポリマー([0162]の表1])であるところ、0.70%とは、請求項1等の記載から0.70重量%であると認められる。また、前記洗剤2Aは、界面活性剤等の各種の洗浄成分に、水、酵素、香料、カプセル香料、染料、バッファー、中和剤、キレート剤、溶媒、安定剤、及び他の任意の成分を加えた洗剤布地ケア組成物である。 以上によれば、引用文献1には、 「ポリマー1Dを0.70重量%と、界面活性剤、水、酵素、香料、カプセル香料、染料、バッファー、中和剤、キレート剤、溶媒、安定剤、及び他の任意の成分を含む洗剤布地ケア組成物であって、 ポリマー1Dは、数平均分子量が4000ダルトンのポリエチレングリコールにビニルピロリドンと酢酸ビニルを1.00:0.40:0.60の重量比でグラフト重合したグラフトコポリマーである、 洗剤布地ケア組成物。」(以下「引用発明」という。)が記載されている。 (3) 引用発明との対比 本件補正発明と引用発明を対比する。 引用発明の「数平均分子量が4000ダルトンのポリエチレングリコール」、「ビニルピロリドン」、「酢酸ビニル」及び「洗剤布地ケア組成物」は、それぞれ、本件補正発明の「a)1000~20,000ダルトンの数平均分子量を有し、かつエチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、又はこれらの混合物に基づくポリアルキレンオキシド由来の構造単位」、「b)N-ビニルピロリドン由来の構造単位」、「c)1~6個の炭素原子を含む飽和モノカルボン酸由来のビニルエステル及び/又はアクリル酸若しくはメタクリル酸のメチルエステル若しくはエチルエステル由来の構造単位」及び「洗濯洗剤組成物」に相当する。 引用発明1の「ポリマー1D」は、ポリエチレングリコールとビニルピロリドンと酢酸ビニルを1.00:0.40:0.60の重量比でグラフト重合したものであり、合成原料としてビニルイミダゾールを含まないから、本件補正発明の「ビニルイミダゾール由来の構造単位を含まず、(a):(b)の重量比は、1:0.3~1:1であり、(a):(c)の重量比は、1.0:0.3~1.0:0.9である、グラフトコポリマー」に相当する。 以上によれば、本件補正発明と引用発明は、 「 洗濯洗剤組成物であって、 a)1000~20,000ダルトンの数平均分子量を有し、かつエチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、又はこれらの混合物に基づくポリアルキレンオキシド由来の構造単位と、 b)N-ビニルピロリドン由来の構造単位と、 c)1~6個の炭素原子を含む飽和モノカルボン酸由来のビニルエステル及び/又はアクリル酸若しくはメタクリル酸のメチルエステル若しくはエチルエステル由来の構造単位と、を含み、 ビニルイミダゾール由来の構造単位を含まず、 (a):(b)の重量比は、1:0.3~1:1であり、 (a):(c)の重量比は、1.0:0.3~1.0:0.9である、グラフトコポリマーと、 2)香料と、を含む 洗濯洗剤組成物。」 である点で一致し、下記の点(相違点1~3)で相違する。 <相違点1> グラフトコポリマーの含有割合が、本件補正発明は「組成物の0.01重量%~0.50重量%」であるのに対し、引用発明は、0.70重量%である点。 <相違点2> 本件補正発明は「前記組成物の0.01重量%~1重量%の香料」を含むのに対し、引用発明は香料の割合が特定されていない点。 <相違点3> 本件補正発明は「グラフトコポリマーが、8,000Da~20,000Daの重量平均分子量を有する」のに対し、引用発明1のグラフトコポリマーの重量平均分子量は不明な点。 (4)進歩性についての判断 ア 相違点1について 引用文献1には、前記(2)アのとおり、グラフトコポリマーの組成物中の含有量について、[0030]に加え請求項11に0.1%~15%とすることが記載されていることをふまえれば、引用文献1に記載される発明の一態様である引用発明のグラフトコポリマーの含有量を本件補正発明の程度とすることは、当業者が引用文献1の記載に基づいて容易に想到し得るものである。 イ 相違点2について 前記(2)アのとおり、引用文献1の請求項12には、酵素、カプセル化された有益剤、香料等である処理補助剤とグラフトコポリマーを含む組成物が記載され、[0055]には組成物中に蛍光増白剤のような補助剤を0.001%~含ませることが記載されている。洗濯洗剤組成物に香料を組成物の数%程度まで添加することは当該分野における周知技術であることからも、引用発明の洗濯布地ケア組成物が香料を本件補正発明の程度含むものとすることは、当業者が適宜なし得る範囲内の事項である。 ウ 相違点3について 引用発明のポリマー1Dは、各構造単位の重量比からみて、前記(2)アの引用文献1の[0158]に記載される方法において、ビニルピロリドンの重量を288gの半分である144gとして製造されたものと認められる。一方、本願明細書の【0101】~【0106】には、PEGが6000g/mol(引用文献1は4000g/mol)である点において引用文献1の[0158]の記載と異なる方法により製造されたグラフトコポリマーの重量平均分子量が16,800であることが記載されている。 そうしてみると、引用発明のグラフトコポリマーの重量平均分子量は、「8,000Da~20,000Da」である蓋然性が高く、仮に相違するとしても、引用文献1の請求項1及び7に記載される範囲の重量比で各構造単位の比率を調整することにより、上記程度の重量平均分子量のグラフトコポリマーが得られるものと認められる。 エ 効果について 本願明細書には、「本出願における香料は、ニート香料(例えば、香油)、香料カプセル化物(例えば、香料マイクロカプセル)、非カプセル化香料送達系(例えば、プロ香料)、又はこれらの任意の混合物の形態で存在し得る。」(【0059】)と記載され、「いくつかの実施形態において、香料は、以下からなる群から選択される」(【0060】)として、本件補正後の請求項9と同様に、構造式の異なる非常に様々な化合物や油等が記載されている。また、実施例1及び2として、【表3】(表1)の0.75%の香料を含むサンプル1~4及び【表5】(表3)の0.4%の香料を含むサンプル5~8で洗浄された衣類のヘッドスペース中の香料の含有量を測定したと記載されている。そして、その結果(【0110】【0111】【0115】【0116】)として、「グラフトコポリマーを含有する液体洗濯洗剤組成物は、グラフトコポリマーを含まない液体洗濯洗剤組成物と比較して、洗濯後の布地に対する香料のより高い有効性を示す。更に予想外なことに、比較的低いレベル(0.4%及び0.7%)でグラフトコポリマーを含有するサンプル2及びサンプル3は、比較的高いレベル(1.5%)でグラフトコポリマーを含有するサンプル4と比較して、香料の驚くほど高い有効性を示す。更に、最も低いレベルのグラフトコポリマーで優先的により多く発現されるいくつかの香料原料(PRM)が存在し、いくつかの優先的な香料原料の湿潤布地ヘッドスペースを約20%増加させる。」(【0110】)等と記載されている。 しかしながら、サンプル1~8には「香料」と記載されるのみで、具体的にどのような香料(ニート香料か、香料カプセル化物か、非カプセル化香料送達系か、どのような化合物や油か等)が用いられたか不明であると共に、本願明細書には、グラフトコポリマーにより香料の有効性が布地において高められる作用機序等に関する記載もなされていない。 前記(2)アのとおり、引用文献1には、グラフトコポリマーが洗濯槽内の染料が布地に移動することを抑制するという、いわば本願明細書と相反する作用が記載されている([0171]等)ことからも明らかなように、一般に、化合物同士の作用は、両者の物理的及び化学的性質に依存することが技術常識であるところ、本願明細書の記載から、本件補正発明の洗濯洗剤組成物の「グラフトコポリマー」が0.01重量%~0.50重量%存在することにより、組成物中に0.01重量%~1重量%含まれる前記のあらゆる「香料」の布地における有効性を高めることを当業者が理解するとはいえない。前記本願明細書の【0110】の「優先的により多く発現されるいくつかの香料原料(PRM)が存在し」なる記載も、香料原料による有効性の程度の違いを示唆するものといえる。 本件補正発明は、本件補正後の請求項9が請求項1の引用形式で記載されていることからも明らかなように、本件補正後の請求項9に記載される非常に多様の化合物や油、及び、請求項9に記載される以外の多様な化合物や油等を包含する香料を0.01重量%~1重量%含み、かつ、本件補正発明において特定される実施例1及び2に記載される以外の種々のグラフトコポリマーを0.01重量%~0.50重量%含む非常に多様な洗濯洗剤組成物を包含するものであるから、本願明細書の記載をもって、本件補正発明に係る組成物が、洗濯された布地における香料の有効性を高めることを当業者が理解できるとはいえない(仮に、事後的に本願明細書のサンプル1~8で用いられた香料の具体的な組成が明らかになったとしても、そのことをもって、このように広範な組成物に係る本件補正発明により、当業者が予測しえない顕著な効果が奏されたということはできない。)。 以上のとおりであるから、本件補正発明により、本件補正発明の構成から予測しえない顕著な効果が奏されたとはいえない。 オ 請求人の主張について (ア)請求人の主張 請求人は、審判請求書において、引用文献1には、0.7重量%~2.9重量%のグラフトコポリマー、配合量が全く不明な香料及びカプセル化香料等を含む布地ケア組成物の具体例が記載されるだけであり、本願発明は具体的に記載されていないこと(以下「主張1」という。)、並びに、本願明細書の実施例1では、0.4重量%のグラフトコポリマーと0.75重量%の香料とを配合した洗濯洗剤組成物サンプル2は、サンプル3及びサンプル4と比較して、グラフトコポリマーの配合量が少なくなっているにもかかわらず、洗濯後の布地に対する香料のより高い有効性を示しており、実施例2でも、0.25重量%のグラフトコポリマーと0.4重量%の香料とを配合した洗濯洗剤組成物サンプル6は、0.4重量%のグラフトコポリマーと0.4重量%の香料とを配合した洗濯洗剤組成物サンプル7と比較して、洗濯後の布地に対する香料のより高い有効性を示しており、このような効果は、引用文献1に接した当業者が予測できない(以下「主張2」という。)旨主張する。 (イ)主張1についての検討 引用文献1の請求項11等には組成物におけるグラフトコポリマーの重量比を0.1%~15%とすることが記載されていることから、引用文献1に記載された発明の一態様である引用発明のグラフトコポリマーの含有量を本件補正発明の程度とすることは、当業者が容易に想到し得たものであることは、前記アで検討したとおりである。 引用発明を認定した引用文献1の実施例4は、引用文献1の[0146]のとおり、5種類の異なる染料を与える布地を用いるという条件下で染料の移行を確認する試験の結果として、グラフトコポリマー量の増加に伴い、染料の移行が抑制されたことを記載するものであるところ、染料を与える布地が少ない場合にはグラフトコポリマーの量が少なくても機能し得ることは、当業者が理解するものであることをもふまえると、引用発明のグラフトコポリマーの含有量を本件補正発明の程度とすることに阻害要因があったということもできない。 (ウ)主張2についての検討 実施例2において、サンプル6に比べて劣っていると請求人が主張するサンプル7は、本件補正発明に包含される態様である。また、本願明細書の実施例1及び2の「香料」が具体的にいかなるものであるか不明である以上、実施例1及び2を含む本願明細書の記載をもって、本件補正発明により、本件補正発明の構成から予測しえない顕著な効果が奏されたとはいえないことは、前記エで検討したとおりである。 (エ)小括 以上のとおりであるから、請求人の主張をもって、本件補正発明は、引用文献1に記載された発明から当業者が容易に想到し得たものではないということはできない。 カ 小括 したがって、本件補正発明は、引用文献1に記載された発明、並びに、引用文献1に記載の事項及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 (5)サポート要件についての判断 ア 前提 特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件(いわゆる「サポート要件」)に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できるものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。 イ 本願明細書の発明の詳細な説明の記載 「【発明の詳細な説明】 【技術分野】 【0001】 本発明は、グラフトコポリマー及び有益剤を含有する洗濯洗剤組成物に関する。 【背景技術】 【0002】 洗剤製品が進化するにつれて、洗浄に関する消費者のニーズは十分に満たされてきた。しかし、洗濯の分野では、まだ満たされていない消費者の他のニーズがいくつかある。特に、満たされていないニーズとしては、洗浄後の布地に対する追加の利益、例えば、心地よい香り、増白、除菌、悪臭防止、柔軟化、及び虫除けが挙げられる。上記の利益を達成するために、香料、増白剤、染料、防虫剤、シリコーン、ワックス、ビタミン、布地柔軟剤、酵素、及び抗菌剤を含む多くの有益剤を洗濯製品に添加できることが知られている。 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0003】 しかしながら、このような有益剤を添加することによって提供されるこれらの追加的な利益は、しばしば不十分である。したがって、布地に対する有益剤の有効性を改善する技術を有することが望ましい場合がある。 【課題を解決するための手段】 【0004】 洗剤配合物中のグラフトコポリマーと有益剤との組み合わせが、グラフトコポリマーを含まない洗剤配合物と比較して、有益剤の著しく改善された有効性をもたらすことができることは、本発明の驚くべき予想外の発見である。 【0005】 それに応じて、本発明は、一態様において、洗濯洗剤組成物であって、 1)組成物の約0.01重量%~約0.75重量%のグラフトコポリマーであって、 a)1000~20,000ダルトンの数平均分子量を有し、かつエチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、又はこれらの混合物に基づくポリアルキレンオキシドと、 b)N-ビニルピロリドンと、 c)1~6個の炭素原子を含む飽和モノカルボン酸由来のビニルエステル及び/又はアクリル酸若しくはメタクリル酸のメチルエステル若しくはエチルエステルと、を含み、 (a):(b)の重量比は、1:0.1~1:2であり、 重量基準で(a)の量は、(c)の量よりも大きく、かつ 2)組成物の約0.001重量%~約10重量%の、香料、防虫剤、シリコーン、ワックス、潤滑剤、ビタミン、布地柔軟剤、抗菌剤、皮膚治癒剤、及びこれらの混合物からなる群から選択される有益剤と、を含む、洗濯洗剤組成物に関する。 【0006】 本出願による一実施形態では、グラフトポリマーにおいて、a)ポリアルキレンオキシドは、エチレンオキシド単位又はエチレンオキシド単位及びプロピレンオキシド単位を含み、好ましくはエチレンオキシド単位及びプロピレンオキシド単位からなり、c)ビニルエステルは、酢酸ビニルを含み、好ましくは酢酸ビニルからなる。 【0007】 本出願による一実施形態において、ポリアルキレンオキシドは、1000~20,000ダルトンの数平均分子量を有する。 【0008】 本出願による一実施形態では、グラフトポリマーにおいて、(a):(c)の重量比が、1.0:0.1~1.0:0.99、好ましくは、1.0:0.3~1.0:0.9である。 【0009】 本出願による一実施形態では、グラフトポリマーにおいて、成分(c)のグラフトされたモノマーの1.0モル%~60モル%、好ましくは20モル%~60モル%、より好ましくは30モル%~50モル%が加水分解される。 【0010】 本出願による一実施形態では、グラフトポリマーが、4,000Da~100,000Da、好ましくは5,000Da~100,000Da、より好ましくは5,000Da~50,000Da、最も好ましくは8,000Da~20,000Daの重量平均分子量を有する。 【0011】 本出願による一実施形態では、組成物は、 組成物の約0.01重量%~約0.75重量%、好ましくは約0.03重量%~約0.65重量%、より好ましくは約0.05重量%~約0.50重量%、最も好ましくは約0.1重量%~約0.29重量%、例えば、0.1重量%、0.15重量%、0.17重量%、0.20重量%、0.21重量%、0.22重量%、0.23重量%、0.24重量%、0.25重量%、0.26重量%、0.27重量%、0.28重量%、0.29重量%、0.30重量%、0.35重量%、0.40重量%、0.45重量%、0.50重量%、0.55重量%、0.60重量%、0.65重量%、0.70重量%、0.75重量%、又はこれらの間の任意の範囲のグラフトコポリマー、及び/又は 組成物の約0.01重量%~約8重量%、約0.001重量%~約5重量%、好ましくは約0.005重量%~約3重量%、より好ましくは約0.008重量%~約2重量%、最も好ましくは約0.01重量%~約1重量%の有益剤を含む。」 「【0034】 グラフトコポリマーは、(a)1000~20,000ダルトンの数平均分子量を有し、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、又はこれらの混合物に基づくポリアルキレンオキシド、(b)N-ビニルピロリドン、及び(c)1~6個の炭素原子を含有する飽和モノカルボン酸由来のビニルエステル、を含み、(a):(b)の重量比は、1:0.1~1:2、好ましくは1:0.1~1:1、より好ましくは1:0.3~1:1であり、重量基準で(a)の量は(c)の量よりも大きい。」 「【実施例】 【0101】 合成例1:グラフトコポリマーの合成 20:30:50の重量比のPVP/PVAc-g-PEGであり、重量平均分子量16,800ダルトンを有するグラフトポリマーを以下のように調製した。 【0102】 撹拌機及び還流冷却器を備えた重合容器に、最初に、窒素雰囲気下でPEG(6000g/mol)720g及び1,2-プロパンジオール(MPG)60gを投入した。混合物を70℃で均質化した。 【0103】 次に、酢酸ビニル432g(2時間後)、MPG576g中のビニルピロリドン288gを(5時間後)、及びMPG196,6g中のtert-ブチルペルピバレート30.2g(5.5時間後)を計量して投入する。供給物を完全に加えた後、溶液を70℃で1時間撹拌する。その後、MPG25.0g中のtert-ブチルペルピバレート3.8g(1.5時間後)を計量投入し、続いて0.5時間撹拌した。 【0104】 揮発性物質を真空ストリッピングにより除去した。その後、676.8gの脱イオン水を加え、100℃で1時間の水蒸気蒸留を行った。 【0105】 反応混合物の温度を80℃に下げ、160.6gの水酸化ナトリウム水溶液(50%、それぞれ40mol%のVAc)を最大供給速度で添加した。水酸化ナトリウム溶液を完全に添加してから、混合物を80℃で1時間撹拌し、続いて周囲温度に冷却した。 【0106】 得られたグラフトポリマーのK値は24であることを特徴とする。最終溶液の固形分含有量は45%である。 【0107】 実施例1.洗濯洗剤組成物にグラフトコポリマーを添加することによる有益剤の有効性の改善 以下の成分を含有する4つの試料液体洗濯洗剤組成物を調製した。サンプル1はグラフトポリマーを含有しない。サンプル2~4は、異なるレベルでグラフトコポリマーを含有する。 【0108】 【表3】 [図:0001438882000005.jpg] 1.分子量16,800ダルトンの、20:30:50比のPVP/PVAc-g-PEGである合成実施例1に記載のグラフトコポリマー 2.BASF製のポリ(エチレンイミン)エトキシ化ポリマー 3.BASF製のポリ(エチレンイミン)エトキシ化-プロポキシ化ポリマー 【0109】 上述の試験1:香料ヘッドスペース(B法)に従って、布地を処理するためにターゴトメータ法を使用して、これらのサンプルを使用することによって洗浄された衣類のヘッドスペース中の香料の含有量を測定した。このような含量は、洗浄後の布地上での香料発現の有効性を示す。 【0110】 結果を以下の表2に示し、グラフトコポリマーを含有する液体洗濯洗剤組成物は、グラフトコポリマーを含まない液体洗濯洗剤組成物と比較して、洗浄後の布地に対する香料のより高い有効性を示す。更に予想外なことに、比較的低いレベル(0.4%及び0.7%)でグラフトコポリマーを含有するサンプル2及びサンプル3は、比較的高いレベル(1.5%)でグラフトコポリマーを含有するサンプル4と比較して、香料の驚くほど高い有効性を示す。更に、最も低いレベルのグラフトコポリマーで優先的により多く発現されるいくつかの香料原料(PRM)が存在し、いくつかの優先的な香料原料の湿潤布地ヘッドスペースを約20%増加させる。 【0111】 【表4】 [図:0001438882000006.jpg] 【0112】 実施例2:洗濯洗剤組成物にグラフトコポリマーを添加することによる有益剤の有効性の改善 以下の成分を含有する4つの試料液体洗濯洗剤組成物を調製した。サンプル5はポリマーを含有しない。サンプル6及び7は、2つの異なるレベルでグラフトコポリマーを含有する。サンプル8は、別のタイプのポリマー(すなわち、PEIポリマー)を含有する。 【0113】 【表5】 [図:0001438882000007.jpg] 1.分子量16,800ダルトンの、20:30:50比のPVP/PVAc-g-PEGである合成実施例1に記載のグラフトコポリマー 2.BASF製のポリ(エチレンイミン)エトキシ化ポリマー 【0114】 上記の試験1:香料ヘッドスペース(A法)に従って、これらのサンプルを用いて洗濯機で洗浄した衣類のヘッドスペース中の香料の含有量を測定した。このような含量は、洗浄後の布地上での香料発現の有効性を示す。 【0115】 結果を以下の表に示し、グラフトコポリマーを含有する液体洗濯洗剤組成物は、ポリマーを含まないか又はPEIポリマーを含有する液体洗濯洗剤組成物と比較して、洗浄後の布地に対する香料の極めて高い有効性を示す。更に予想外なことに、グラフトコポリマーを非常に低いレベル(0.25%)で含有するサンプル6は、グラフトコポリマーを比較的高いレベル(0.4%)で含有するサンプル7と比較して、香料の更に高い有効性を示す。 【0116】 【表6】 [図:0001438882000008.jpg] 」 ウ 本件補正発明の課題 前記イの【0002】~【0003】等から、本件補正発明は、布地に対する香料等の有益剤の有効性を改善することを解決しようとする課題とするものであると認められる。 エ 検討 本願明細書の発明の詳細な説明には、前記ウの課題において重要な要素である「香料」に関し、「本出願における香料は、ニート香料(例えば、香油)、香料カプセル化物(例えば、香料マイクロカプセル)、非カプセル化香料送達系(例えば、プロ香料)、又はこれらの任意の混合物の形態で存在し得る。」(【0059】)と記載され、「いくつかの実施形態において、香料は、以下からなる群から選択される」(【0060】)として、本件補正後の請求項9と同様に、構造式の異なる非常に様々な化合物や油等が記載されている。また、前記イの【0005】~【0011】及び【0034】等の記載に加え、これらの記載に包含されるグラフトコポリマーの一例である合成例1のグラフトコポリマーについて、実施例1及び実施例2として、【表3】(表1)の0.75%の「香料」を含むサンプル1~4及び【表5】(表3)の0.4%の「香料」を含むサンプル5~8で洗浄された衣類のヘッドスペース中の香料の含有量を測定したと記載されている。そして、その結果(【0110】【0111】【0115】【0116】)として、「グラフトコポリマーを含有する液体洗濯洗剤組成物は、グラフトコポリマーを含まない液体洗濯洗剤組成物と比較して、洗濯後の布地に対する香料のより高い有効性を示す。更に予想外なことに、比較的低いレベル(0.4%及び0.7%)でグラフトコポリマーを含有するサンプル2及びサンプル3は、比較的高いレベル(1.5%)でグラフトコポリマーを含有するサンプル4と比較して、香料の驚くほど高い有効性を示す。更に、最も低いレベルのグラフトコポリマーで優先的により多く発現されるいくつかの香料原料(PRM)が存在し、いくつかの優先的な香料原料の湿潤布地ヘッドスペースを約20%増加させる。」(【0110】)等と記載され、【0004】にも「洗剤配合物中のグラフトコポリマーと有益剤との組み合わせが、グラフトコポリマーを含まない洗剤配合物と比較して、有益剤の著しく改善された有効性をもたらすことができることは、驚くべき予想外の発見である」と記載され、【0115】にも「更に予想外なことに、グラフトコポリマーを非常に低いレベル(0.25%)で含有するサンプル6は、グラフトコポリマーを比較的高いレベル(0.4%)で含有するサンプル7と比較して、香料の更に高い有効性を示す」と記載されている。 しかしながら、実施例1及び2のサンプル1~8には「香料」と記載されるのみであり、具体的にどのような香料(ニート香料か、香料カプセル化物か、非カプセル化香料送達系か、どのような化合物や油か等)が用いられたか不明であると共に、本願明細書の発明の詳細な説明には、香料を含む有益剤がどのようにグラフトコポリマーと作用して布地に有益剤の効果をもたらすかについて、メカニズムや作用機序等に関する記載もなされていない。 前記(2)アのとおり、引用文献1には、グラフトコポリマーが洗濯槽内の染料が布地に移動することを抑制するという、いわば本願明細書と相反する作用が記載されていることからも明らかなように、一般に、化合物同士の作用は、両者の物理的及び化学的性質に依存することが技術常識であるところ、本願明細書の記載から、本件補正発明の洗濯洗剤組成物の「グラフトコポリマー」が0.01重量%~0.50重量%存在することにより、組成物中に0.01重量%~1重量%含まれる前記のあらゆる「香料」の布地における有効性を高めることを当業者が理解するとはいえない。前記本願明細書の【0110】の「優先的により多く発現されるいくつかの香料原料(PRM)が存在し」なる記載も、香料原料による有効性の程度の違いを示唆するものといえ、さらに、【0110】、【0004】及び【0115】の「予想外」との記載も、本件補正発明とその課題の関連性が本願出願時の技術常識から明らかとはいえないことを裏付けるものである。 以上の事情に加え、そもそも、本件補正発明は、本件補正後の請求項9が請求項1の引用形式で記載されていることからも明らかなように、本件補正後の請求項9に記載される非常に多様の化合物や油、及び、請求項9に記載される以外の多様な化合物や油等を包含する香料を0.01重量%~1重量%含み、かつ、本件補正発明において特定される実施例1及び2に記載される以外の種々のグラフトコポリマーを0.01重量%~0.50重量%含む非常に多様な洗濯洗剤組成物を包含するものであるから、本願明細書の発明の詳細な説明の記載をもって、本件補正発明に係る組成物が、洗濯された布地における香料の有効性を高めることを当業者が理解できるとはいえない(仮に、事後的に本願明細書のサンプル1~8で用いられた香料の具体的な組成が明らかになったとしても、そのことをもって、本件補正発明がその全体にわたり前記ウの本件補正発明の課題を解決することを当業者が本願明細書の発明の詳細な説明の記載及び本願出願時の技術常識に基づいて理解したとはいえない。)。 したがって、本願明細書の発明の詳細な説明の記載により、当業者が、本件補正発明が、前記ウの課題を解決できるとは認識できず、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲内のものということもできない。 オ 請求人の主張について 請求人は、審判請求書において、本願明細書の段落【0008】、【0010】、【0011】及び【0034】の記載、並びに、【0101】~【0116】に示された洗濯洗剤組成物の評価結果等を総合的に考慮し、本件補正発明は、本願発明の課題を解決できる程度の効果を奏するであろうと認識できると主張する。 しかしながら、前記エで検討したとおり、【0101】~【0116】の記載をもって、【0008】、【0010】、【0011】及び【0034】で規定される(a):(b)及び(a):(c)の重量比や分子量のグラフトコポリマーを0.01重量%~0.50重量%含み、香料を0.01重量%~1重量%含む組成物であれば、前記ウの課題を解決することが、本願明細書の発明の詳細な説明の記載から明らかとはいえず、当業者が出願時の技術常識に照らして認識できるということもできない。 以上のとおりであるから、請求人の主張をもって、本件補正発明が、サポート要件を満たすとはいえない。 カ 小括 したがって、本件補正発明は、本願明細書の発明の詳細な説明に記載された発明ではなく、本願は、特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていないため、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 3 本件補正についてのむすび 以上のとおりであるから、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。 よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本願発明について 1 本願発明 令和 7年 2月14日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1~19に係る発明は、令和 6年 8月27日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1~19に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。 2 原査定の拒絶の理由 原査定の拒絶の理由は、以下の理由を含むものである。 (1)本願の特許請求の範囲の請求項1~19に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献等一覧 引用文献1:米国特許出願公開2019/0390142号明細書 引用文献2:国際公開第2020/264077号 引用文献3:国際公開第2021/067984号 (2)この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。 本願明細書の発明の詳細な説明の記載により、当業者が、本件補正発明が、前記第2 2(5)ウの課題を解決できるとは認識できず、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲内のものということもできない。 3 引用文献 原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1の記載事項は、前記第2の[理由]2(2)アに記載したとおりである。 4 進歩性について 本願発明は、前記第2の[理由]2(1)で検討したとおり、構造単位a)と構造単位b)の重量比、構造単位a)と構造単位c)の重量比、及びグラフトコポリマーの重量平均分子量として、本件補正発明の重量比及び重量平均分子量を含む広範な態様を包含するものである。 そうすると、本願発明に包含される本件補正発明が、前記第2の[理由2]2(4)に記載したとおり、引用文献1に記載された発明、並びに、引用文献1に記載された事項及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明1も、引用文献1に記載された発明、並びに、引用文献1に記載された事項及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 5 サポート要件について 前記4のとおり、本願発明は、本件補正発明の重量比及び重量平均分子量を含む広範な態様を包含するものであり、本願発明に包含される本件補正発明が、前記第2の[理由2]2(5)に記載したとおり、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できるものでなく、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものでないから、本願発明も、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できるものでなく、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものでもない。 したがって、本願発明は、本願明細書の発明の詳細な説明に記載された発明でない。 第4 結び 以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができず、本願は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。 したがって、本願は拒絶されるべきものである。 よって結論のとおり審決する。

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2025-002345

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    共通の条文: 特許法29条2項、特許法36条6項1号
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