特許拒絶査定不服審判
2017-015379
アルカリ性洗剤の金属保護を強化するためのアミノカルボキシレートの使用
- 審判番号
- 2017-015379
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2016-527223外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2017年10月17日
- 審決日
- 2019年09月30日
- 公報発行日
- 2020年04月24日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 分類
- P18 .537-WZ (C11D) / P18 .113-WZ (C11D) / P18 .121-WZ (C11D) / P18 .575-WZ (C11D)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条1項3号特許法29条2項特許法36条6項1号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第2項、特許法第17条の2第6項、特許法第29条第1項第3号、特許法第17条の2第5項第2号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2016-527223「アルカリ性洗剤の金属保護を強化するためのアミノカルボキシレートの使用」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 5月 7日国際公開、WO2015/065800、平成28年12月 8日国内公表、特表2016-538380〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
1.手続の経緯
本願は、2014年(平成26年)10月23日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2013年10月29日(US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成29年 7月11日付け:拒絶理由の通知
同年 8月23日 :意見書、手続補正書の提出
同年 9月12日付け:拒絶査定
同年10月17日 :審判請求書、手続補正書の提出
同年11月28日付け:前置報告
平成30年 9月12日付け:拒絶理由の通知
同年12月25日 :意見書、手続補正書の提出
平成31年 4月19日付け:拒絶理由(最後)の通知
令和 元年 8月 7日 :意見書、手続補正書の提出
以下、平成30年9月12日付けで当審が通知した拒絶理由を「当審拒絶理由」、平成31年4月19日付けで当審が通知した拒絶理由を「最後の拒絶理由」ということがある。
2.令和元年8月7日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の結論]
令和元年8月7日にされた手続補正を却下する。
[理由]
(1)手続補正の内容
令和元年8月7日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲の全文を補正するものである。すなわち、下記アのとおりの補正前の特許請求の範囲(平成30年12月25日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1~12)を、下記イのとおりの補正後の特許請求の範囲の請求項1~11に補正するものである。
ア 補正前の特許請求の範囲(平成30年12月25日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1~12)
「[請求項1]
1.0質量%~90質量%の炭酸塩アルカリ源と;
1質量%~7.5質量%の、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとの組合せを含む一つ又は複数の非イオン性界面活性剤と;
シリケート、及びアミノカルボキシレートを含む金属保護成分と;
マレイン酸コポリマー、アクリル酸ポリマー、及びこれらの混合物からなる群から選択される、0.1質量%~15質量%の腐食防止剤と;
シトラート又はクエン酸である、1質量%~10質量%のキレート剤と、
を含む、固体アルカリ性洗剤組成物であって、
前記シリケートの量は30質量%~80質量%であり、前記アミノカルボキシレートの量は1.0質量%~3.5質量%であり、
それぞれの成分の量は、それらの合計が100質量%を超えないように選択される、
固体アルカリ性洗剤組成物。
[請求項2]
前記炭酸塩アルカリ源が炭酸ナトリウムである、請求項1に記載の組成物。
[請求項3]
前記固体アルカリ性洗剤組成物が圧縮固体である、請求項1に記載の組成物。
[請求項4]
前記固体アルカリ性洗剤組成物が押出固体である、請求項1に記載の組成物。
[請求項5]
前記固体アルカリ性洗剤組成物がキャスト固体である、請求項1に記載の組成物。
[請求項6]
1.0質量%~90質量%の炭酸塩アルカリ源と;
1質量%~7.5質量%の、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとの組合せを含む一つ又は複数の非イオン性界面活性剤と;
30質量%~80質量%のシリケートと;
1.0質量%~3.5質量%のアミノカルボキシレートと;
0.1質量%~15質量%の腐食防止剤と;
1質量%~10質量%のキレート剤と;
4質量%~10質量%の水と
を含み、
前記腐食防止剤は、マレイン酸コポリマー、アクリル酸ポリマー、及びこれらの混合物からなる群から選択され、
前記キレート剤は、シトラート又はクエン酸であり、
それぞれの成分の量は、それらの合計が100質量%を超えないように選択される、
固体アルカリ性洗剤組成物。
[請求項7]
前記固体アルカリ性洗剤組成物が、キャスト固体、圧縮固体、又は押出固体からなる群から選択される固体である、請求項6に記載の組成物。
[請求項8]
硬水からの炭酸マグネシウムの蓄積を防止するとともに物品を洗浄する方法であって、前記方法は、
洗剤組成物を物品面に適用することと、
その後前記物品をすすぐことと
を含み、
前記洗剤組成物は:
1.0質量%~90質量%の炭酸塩アルカリ源と;
1質量%~7.5質量%の、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとの組合せを含む一つ又は複数の非イオン性界面活性剤と;
1.0質量%~3.5質量%のアミノカルボキシレートと;
30質量%~80質量%のシリケートと;
マレイン酸コポリマー、アクリル酸ポリマー、及びこれらの混合物からなる群から選択される、0.1質量%~15質量%の腐食防止剤と;
シトラート又はクエン酸である、1質量%~10質量%のキレート剤と、
を含み、
それぞれの成分の量は、それらの合計が100質量%を超えないように選択される、
方法。
[請求項9]
前記物品がアルカリ反応性金属の表面を含む、請求項8に記載の方法。
[請求項10]
前記アルカリ反応性金属がアルミニウムを含む、請求項9に記載の方法。
[請求項11]
前記洗剤組成物の使用溶液が物品洗浄機内で生成される、請求項8に記載の方法。
[請求項12]
前記洗剤組成物の使用溶液を生成する工程であって、洗剤使用溶液のpHが9~12.5である工程をさらに含む、請求項8に記載の方法。」
イ 補正後の特許請求の範囲(本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1~11)
「[請求項1]
1.0質量%~90質量%の炭酸塩アルカリ源と;
1質量%~7.5質量%の、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとの組合せを含む一つ又は複数の非イオン性界面活性剤と;
シリケート、及びアミノカルボキシレートを含む金属保護成分と;
マレイン酸コポリマー、アクリル酸ポリマー、及びこれらの混合物からなる群から選択される、0.1質量%~15質量%の腐食防止剤と;
シトラート又はクエン酸である、1質量%~10質量%のキレート剤と、
を含む、固体アルカリ性洗剤組成物であって、
前記シリケートの量は30質量%~80質量%であり、前記アミノカルボキシレートの量は1.0質量%~3.5質量%であり、
それぞれの成分の量は、それらの合計が100質量%を超えないように選択され、
前記固体アルカリ性洗剤組成物は、キャスト固体、圧縮固体及び押出固体からなる群から選択される固体である、固体アルカリ性洗剤組成物。
[請求項2]
前記炭酸塩アルカリ源が炭酸ナトリウムである、請求項1に記載の組成物。
[請求項3]
前記固体アルカリ性洗剤組成物が圧縮固体である、請求項1に記載の組成物。
[請求項4]
前記固体アルカリ性洗剤組成物が押出固体である、請求項1に記載の組成物。
[請求項5]
前記固体アルカリ性洗剤組成物がキャスト固体である、請求項1に記載の組成物。
[請求項6]
1.0質量%~90質量%の炭酸塩アルカリ源と;
1質量%~7.5質量%の、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとの組合せを含む一つ又は複数の非イオン性界面活性剤と;
30質量%~80質量%のシリケートと;
1.0質量%~3.5質量%のアミノカルボキシレートと;
0.1質量%~15質量%の腐食防止剤と;
1質量%~10質量%のキレート剤と;
4質量%~10質量%の水と
を含み、
前記腐食防止剤は、マレイン酸コポリマー、アクリル酸ポリマー、及びこれらの混合物からなる群から選択され、
前記キレート剤は、シトラート又はクエン酸であり、
それぞれの成分の量は、それらの合計が100質量%を超えないように選択される、
固体アルカリ性洗剤組成物。
[請求項7]
前記固体アルカリ性洗剤組成物が、キャスト固体、圧縮固体、又は押出固体からなる群から選択される固体である、請求項6に記載の組成物。
[請求項8]
硬水からの炭酸マグネシウムの蓄積を防止するとともに物品を洗浄する方法であって、
前記方法は、
洗剤組成物を物品面に適用することと、
その後前記物品をすすぐことと
を含み、
前記洗剤組成物は:
1.0質量%~90質量%の炭酸塩アルカリ源と;
1質量%~7.5質量%の、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとの組合せを含む一つ又は複数の非イオン性界面活性剤と;
1.0質量%~3.5質量%のアミノカルボキシレートと;
30質量%~80質量%のシリケートと;
マレイン酸コポリマー、アクリル酸ポリマー、及びこれらの混合物からなる群から選択される、0.1質量%~15質量%の腐食防止剤と;
シトラート又はクエン酸である、1質量%~10質量%のキレート剤と、
を含み、
それぞれの成分の量は、それらの合計が100質量%を超えないように選択され、
前記物品がアルカリ反応性金属の表面を含む、方法。
[請求項9]
前記アルカリ反応性金属がアルミニウムを含む、請求項8に記載の方法。
[請求項10]
前記洗剤組成物の使用溶液が物品洗浄機内で生成される、請求項8に記載の方法。
[請求項11]
前記洗剤組成物の使用溶液を生成する工程であって、洗剤使用溶液のpHが9~12.5である工程をさらに含む、請求項8に記載の方法。」
(2)補正の目的について
本件補正のうち、上記請求項1についての補正は、補正前の請求項1に記載されていた発明特定事項である「固体アルカリ性洗剤組成物」について、補正前の請求項3~5及び本願明細書の[0084]の記載に基づいて、「前記固体アルカリ性洗剤組成物は、キャスト固体、圧縮固体及び押出固体からなる群から選択される固体である」という発明特定事項を付加することにより、その範囲を減縮するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そこで、本件補正による補正後の請求項1に記載された発明(以下、「補正後発明」という。)が、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について検討する。
(3)独立特許要件について
(3A)特許法第36条第6項第1号(サポート要件)について
ア 補正後発明の課題について
本願明細書の[0002]~[0004]における背景技術の記載、及び[0005]~[0006]における「発明が解決しようとする課題」の記載を参酌すると、補正後発明の解決しようとする課題は、「金属保護を改善し、微粒子の沈殿を低減し、及び有効な洗浄力を維持したアルカリ性洗剤組成物を開発すること」及び「金属表面の著しい腐食を引き起こすことなく、pH約9~約12.5のアルカリ性洗剤を使用する方法を提供すること」にあるものと認められる。
イ 補正後発明の課題解決手段について
本願明細書の[0003]には、「様々な腐食防止剤が知られており、水性アルカリ性溶液と接触する表面の腐食を妨げるために用いられてきた」こと、「公知の腐食防止剤」の一つである「シリケート、例えばケイ酸ナトリウム」は、低pHで「水溶液から沈殿し始め、したがって、より低いpHを有する水性洗浄液溶液中に使用した場合・・・表面の腐食を妨げる効果を大きく低減」するとともに「乾燥させると、多くの場合、視認でき、それ自身除去するのが非常に困難なフィルム又はスポットが形成される」ことが記載されているところ、[0035]には、「アミノカルボキシレートは、驚くべきことに、アルカリ性洗剤に暴露された金属の腐食を低減し、総溶解固形分を低減することができる。」と記載され、[0041]には、「本発明は、金属を保護するシリケートを含むこともできる。出願人は、本発明によるアミノカルボキシレートを用いて、この従来の物品洗浄組成物の成分を低減することができ、又は完全に除去することさえできることを見いだした。」と記載されているから、これらの記載からは、アミノカルボキシレートを含有する補正後発明の洗剤組成物により、「金属保護を改善」し、さらに「従来の物品洗浄組成物」の「シリケート」成分を低減することにより「微粒子の沈殿を低減」するという課題を解決することができる旨が説明されているように見受けられる。
しかし、「アミノカルボキシレート」が上記のような効果を発揮するに至る作用機序については理論的に説明されていないし、「アミノカルボキシレート」が上記のような効果を発揮することが、本願の出願時において周知の技術的事項であったとも認められないから、補正後発明が実際に上記課題を解決し得るものであるというためには、具体的な実験によって裏付けられる必要がある。
ウ 本願明細書の実施例の記載について
本願明細書の[0103]~[0121]に記載された「実施例」では、どのような成分からなる洗剤組成物を用いて実験が行われたのかが明らかでないから、補正後発明に相当する成分からなる洗剤組成物が、他の処方に基づく洗剤組成物に比べて実際に有利な効果を奏するものであることを確認することができない。具体的には、本願明細書の[0111]には、「Ecolab社から商業的に入手可能な、アミノカルボキシレートを有しないアルカリ性物品洗浄洗剤Apex Metalを含む本発明による組成物」、「本発明のアミノカルボキシレートを有する組成物」、「他の金属保護成分であるVersaflx Siを有する組成物」及び「Acumer 5000を有する組成物」を作製したことが記載されているが、作製されたとされるいずれの組成物も、配合された具体的な化合物名及び配合割合が記載されていないから、補正後発明の要件を満たす洗剤組成物であるのか明らかでない。
また、[0111]には、「各例において、金属保護シリケートの一部を異なる金属保護成分で置換した」ことも記載されているが、シリケートのどの程度の割合を、具体的にどのような化合物をどのような割合で加えることによって置換し、最終的にどのような成分組成を有する洗剤組成物としたのか理解できないし、置換後の洗剤組成物が補正後発明の要件を満たす洗剤組成物であるのかも明らかでない。
さらに、本願明細書の[0119]及び[0121]には、実験結果が表にまとめられているが、当該表の処方の説明欄を参照しても、配合された具体的な化合物名及び配合割合は記載されていないから、補正後発明の要件を満たす洗剤組成物についての実験が行われたのか明らかでないし、適切な比較実験が行われたのかも理解することができない。
そうすると、補正後発明の洗剤組成物が、実際に上記課題を解決し得るような好ましい効果を発揮するものであることを、本願明細書に記載された実験データに基づいて確認することはできない。
エ 請求人の主張について
(ア)本願明細書の[0111]に記載された商品及び実施例の組成について
(ア-1)平成30年12月25日に提出した意見書について
請求人は、平成30年12月25日に提出した意見書において、「実施例の例1では、まず、添加された重要成分の商標名等の情報が提供されています(例えば、界面活性剤、コポリマー等、段落0105~0110)。他の成分の全ては、商業的に入手可能なエコラボ社製のアルカリ性物品洗浄洗剤である『Apex Metal』処方を使用して調製されました。」と主張している。
しかし、本願明細書には、[0111]に記載された「Ecolab社から商業的に入手可能な・・・Apex Metal」、「他の金属保護成分であるVersaflx(当審注:Versaflexの誤記と認められる。)Si」及び「Acumer 5000」の具体的な配合成分及び配合量比は記載されていない。
また、本願明細書の[0107]には、「Acumer 5000は、Dow社から商業的に入手可能なケイ酸マグネシウムポリマーである」と記載され、[0108]には、「Versaflex Siは、Akzo Nobel社から商業的に入手可能なアクリルコポリマーである」と記載されているが、「ケイ酸マグネシウムポリマー」は一般的に用いられている物質名ではなく、その化学構造を理解することが困難であり、「アクリルコポリマー」も、具体的なモノマー成分を特定することが困難であるから、上記の記載を参酌しても技術的に意味のある比較実験が行われたのかを理解することは困難である。
(ア-2)令和元年8月7日に提出した意見書について
さらに、請求人は、令和元年8月7日に提出した意見書に、「添付書類1:Material Safety Data Sheet APEX METAL PROTECTION 1」及び「添付書類2:Acumer 5000 製品パンフレット 1」を添付し、「『Apex Metal』は、試験された様々な組成物のベースとされた組成です。MSDSに記載されているように、『Apex Metal』は、以下の組成を有します。
」として、上記Ecolab社製のアルカリ洗浄剤である「Apex Metal」の組成を提示した上で、「アミノカルボキシレート、「Acumer 5000」(金属保護剤ポリマー)、又は「Versaflex Si」(金属保護剤ポリマー)のいずれかを、ケイ酸ナトリウムの一部と置換し、それらの腐食抑制効果に対する寄与を試験しました。したがって、当業者は、本願発明の実施例を参照して、商業的に入手可能なシリケート金属保護成分を使用した例と、シリケートの腐食保護効果を更に増加させるアミノカルボキシレートを使用した例との違いを比較していることを理解します。」と主張している。
しかし、上記添付資料1の表1には、「Apex Metal」の「ケイ酸ナトリウム」の濃度が「5~20(質量%)」であることが記載されているから、仮に、請求人が説明するように、「Apex Metal」を「試験された様々な組成物のベース」として用い、「アミノカルボキシレート、『Acumer 5000』(金属保護剤ポリマー)、又は『Versaflex Si』(金属保護剤ポリマー)のいずれかを、ケイ酸ナトリウムの一部と置換」したのであれば、試験された組成物は、いずれもその「ケイ酸ナトリウム」の濃度が必ず「5~20(質量%)」よりも低くなるから、「30質量%~80質量%のシリケート」を含むものとされている補正後発明の具体例には当たらないことが明らかである。
さらに、上記添付資料2を参照しても、上記「Acumer 5000」に含まれるポリマーの具体的な化学構造は記載されていないから、本願明細書の[0107]に「Acumer 5000は、Dow社から商業的に入手可能なケイ酸マグネシウムポリマー」と記載されているものが、具体的にどのような繰り返し単位からなる「金属保護剤ポリマー」なのか依然として理解できず、このため、試験された組成物が、「マレイン酸コポリマー、アクリル酸ポリマー、及びこれらの混合物からなる群から選択される、0.1質量%~15質量%の腐食防止剤」を含むものとされている補正後発明の具体例に当たると理解することはできない。
加えて、請求人は、依然として上記「Versaflex Si」に含まれる具体的な成分を明らかにしていないから、本願明細書の[0108]に「Versaflex Siは、Akzo Nobel社から商業的に入手可能なアクリルコポリマー」と記載されているものが、具体的にどのような繰り返し単位からなる「金属保護剤ポリマー」なのか依然として理解できず、このため、試験された組成物が、「マレイン酸コポリマー、アクリル酸ポリマー、及びこれらの混合物からなる群から選択される、0.1質量%~15質量%の腐食防止剤」を含むものとされている補正後発明の具体例に当たると理解することはできない。
(ア-3)本願明細書の[0111]に記載された商品及び実施例の組成についてのまとめ
よって、請求人の主張を参酌しても、依然として本願明細書に記載された実施例で試験された組成物の具体的な配合組成を理解することはできず、また、それらのシリケートの濃度を参酌すると、本願明細書に記載された「実施例」で試験された組成物は、いずれも補正後発明の実施例には当たらないといえる。
(イ)本願明細書の[0102]の[表1]について
請求人は、平成30年12月25日に提出した意見書において、「評価した組成物、及びそれぞれの成分の『最も好ましい』量は、明細書段落0101、『本発明のサンプル処方』という見出しの下に記載されています。」、「段落0101及び0102に関する情報は、請求項のアミノカルボキシレートの最も好ましい範囲を示しています。その結果、本発明の処方が実施例において評価された処方と同じであったことは明らかです。」と主張している。
しかし、[0102]の[表1]には、「好ましい範囲」、「より好ましい」及び「最も好ましい」の三通りの処方が記載されており、[0111]に記載された実施例において、いずれの処方が採用されたのかは理解できない。
また、仮に請求人が主張する「最も好ましい」量が用いられたとしても、各成分の配合量比は幅をもった数値範囲で記載されており、さらに成分欄には「アルカリ」、「アミノカルボシキシレート」等のカテゴリー別の名称しか記載されておらず、具体的な化合物名までは記載されていないから、[0111]に記載された試験において実際に採用された「本発明のアミノカルボキシレートを有する組成物」の具体的な配合成分及び配合量比を理解することはできない。
さらに、上記「最も好ましい」量を参照すると、「シリケート」成分は「15-30」質量%配合されるものとされているところ、補正後発明においては「シリケートの量は30質量%~80質量%」であることが特定されているから、補正後発明と「30質量%」の1点で重複する可能性があるにすぎない。
加えて、請求人が令和元年8月7日に提出した意見書及び添付資料1、2を参酌すると、上記(3A)エ(ア-2)「令和元年8月7日に提出した意見書について」に記載したとおり、[0111]において試験された組成物は、いずれもその「ケイ酸ナトリウム」の濃度が必ず「5~20(質量%)」よりも低くなると理解することができるから、仮に、請求人の主張するとおり、[0102]の[表1]に記載された「最も好ましい」量が[0111]に記載された試験において採用されていたとしても、そのシリケートの濃度からみて、評価された処方は補正後発明の処方とは重複しないことが明らかである。
そうすると、[0102]の[表1]の記載を参酌しても、[0111]に記載された試験が、補正後発明の作用効果を適切に評価することができるものであったとはいえず、補正後発明が上記課題を解決し得るものであることが、本願明細書により裏付けられているとはいえない。
(ウ)本願明細書の[0119]の[表2]及び[0121]の[表3]について
請求人は、平成30年12月25日に提出した意見書において、「すなわち、ベース処方は、段落0101及び0102に示すような『Apex Metal』処方であり、効果は、アミノカルボキシレート、金属保護成分、及びアクリルポリマーの各々から生じます(明細書段落0105~0111)。」、「本発明の処方が実施例において評価された処方と同じであったことは明らかです。」と主張している。
しかし、上記(3A)エ(ア)「本願明細書の[0111]に記載された商品及び実施例の組成について」及び同(イ)「本願明細書の[0102]の[表1]について」に記載したとおり、[0111]において試験された組成物は、いずれもその「ケイ酸ナトリウム」の濃度が必ず「5~20(質量%)」よりも低くなるから、「30質量%~80質量%のシリケート」を含むものとされている補正後発明の具体例には当たらないことが明らかであり、そうすると、対応する[0119]の[表2]に記載された「実験1」~「実験5」の各実験結果に基づいて、補正後発明の効果を理解することはできない。
また、仮に、試験された組成物よりもシリケートの濃度を高くした組成物の性質について、出願時の技術常識を参酌して検討すると、相対的にアルカリ源の濃度が低くなることから、上記補正後発明の課題の一つである「有効な洗浄力を維持」することが困難になると考えられ、また、アルカリ源の濃度が低くなりpHが低くなることと、シリケートの濃度が高くなることの両方から、シリケートが沈殿しやすくなり、上記補正後発明の課題の一つである「微粒子の沈殿を低減」することが困難となると考えられる。
そうすると、本願明細書の記載及び本願出願時の技術常識を参酌しても、シリケートの配合割合が「30質量%~80質量%」である補正後発明が、上記課題を解決することができるものとは認められない。
[0121]の[表3]についても同様である。
よって、請求人の主張は、いずれも採用することができない。
オ 特許法第36条第6項第1号(サポート要件)についてのまとめ
以上のとおり、本願出願時における技術常識を参酌しても、本願明細書の一般記載及び実験データの記載に基づいて、補正後発明の洗剤組成物が上記課題を解決し得るものであることを当業者が理解することはできないから、補正後発明は、発明の詳細な説明に実質的に記載されたものとすることができず、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
(3B)特許法第29条第2項(進歩性)について
ア 引用文献及びその記載事項
<引用文献等一覧>
1.特表平6-505286号公報
2.特開2006-296470号公報
3.特表2010-508052号公報
4.特開2006-8790号公報
5.特開2000-210243号公報
6.National Silicates,“BRITESIL(登録商標)H20 Hydrous Sodium Silicate”,製品安全データシート,(米国),National Silicates,2012.04.04,p.1-5<URL:https://www.pqcorp.com/docts/default-source/msds/pq-corporation/sodium-silicate-solids/britesil/britesil_h20_hdrous_sodium_silicate_msds2012.pdf>
(i)引用文献1に記載された事項
引用文献1には、以下の事項が記載されている。
(1-1)「特許請求の範囲
1.(a)水を30~70重量%、および、キラントと有機分散剤との合計を30重量%またはそれ以上含んで成る流動性プレミックスであって、該キラント:該有機分散剤の乾燥基準重量比が3:1~1:300である、キラント/有機分散剤水性混合物から成る流動性プレミックスを調製する工程;
(b)一段または二段以上の混合/乾燥工程中に、工程(a)の流動性プレミックスと固形状水溶性非リン系塩類とを、流動性プレミックス:固形状水溶性非リン系塩類の重量比1:30~1:4において互いに接触させて粒状凝集物を形成後、遊離水分が8重量%またはそれ以下になるまで該凝集物を乾燥する工程;および
(c)工程(b)の粒状凝集物と、乾燥重量基準で全組成物の3重量%またはそれ以上の漂白活性塩類から成る固形粒状混合物とを混合する一段または二段以上の混合工程;
から成ることを特徴とする、実質的に無機リン酸塩ビルダー類を含有しない、自動食器洗い用粒状洗剤の製造法。
2.キラントが、エチレンジアミン四酢酸、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミン五酢酸、ヒドロキシエチレンジアミン三酢酸、トリエチレンテトラミン六酢酸、ヒドロキシエチリジンジホスホン酸、ニトリロ三酢酸、N、N′-(1-オキソ-1、2-エタンジイル)-ビス(アスパラギン酸)、およびエチレンジアミンジコハク酸から成る群から選択されるものであり、分散剤が、ポリカルボン酸ナトリウムから成る群から選択されるものである、請求項1に記載の製造法。
3.キラント/分散剤混合物のpHが7~8.5である、請求項2に記載の製法。
4.工程(b)における該非リン系塩がクエン酸ナトリウム、炭酸ナトリウムおよび硫酸ナトリウムの混合物であり、かつ遊離水分が5重量%またはそれ以下になるまで乾燥が継続される、請求項3に記載の製造法。」(特許請求の範囲の請求項1~4)
(1-2)「最近の自動食器洗い機用組成物では、主たる無機ビルダー成分であるリン酸塩類はクエン酸塩類で置換されていることが多い。クエン酸類は粒状で簡便に入手でき、また組成物中に乾燥状態で簡単に添加できる。しかし、非リン酸塩系組成物において極めて有用な、有機分散剤等の洗浄補助成分の取り扱いには困難が伴い、このため殆どの市販品は粘調な水性溶液の形態をなしている。当然のことながら、クエン酸および/または有機分散剤の添加およびリン酸塩または類似無機塩類の排除に伴う結果として、離散し、さらさらした自由流動性の粒子を、複合成分から従来のアクリレート法を採用して形成させることは、従来より一層困難になっている。
また、塩素漂白に置換できる酸素漂白系を導入した自動食器洗い機用組成物の提供が望まれている。例えば、塩素漂白は銀食器を黒化する傾向がある等の欠点がある。・・・
したがって本発明の目的は、酸素漂白系(例えば、キラントおよび過ホウ酸類)および有機分散剤から成る非リン酸塩系の自動食器洗い用粒状組成物の新規で改良された製法を提供するることにある。本発明の他の目的は、安定で流動性の粒状食器洗い機用組成物の提供にある。」(第2頁右下欄末行~第3頁右上欄4行)
(1-3)「酸素漂白系--本発明の粒状自動食器洗い用洗剤中には酸素漂白系が含有される。かかる漂白系は少なくとも2成分、すなわち漂白活性塩とキラントから成る。この二成分は以下に詳しく記載する分散剤および非リン系塩類の存在下で特に有効に機能し、食器類から飲食物の落ち難い汚れを取り除く。以上の必須成分以外に、この酸素漂白系中には必要に応じて漂白活性化剤または過酸を含有し、過酸としては特に水溶解性の高いタイプのものが用いられる。」(第5頁左上欄10~18行)
(1-4)「キラント--本発明の自動食器洗い用完全処方粒状洗剤組成物中のキラントの使用量は、漂白安定化目的に必要とされる最低量(例えば約0.05%~0.1%)から例えば約0.5%またはそれ以上の高い濃度領域に亙って使用できる。この高濃度は本発明による製法の達成に最適な濃度であるばかりでなく、自動食器洗い用洗剤の機能拡張(例えば食器類から飲食物よごれの除去、遷移金属酸化物被膜の除去等)に対しても極めて有効な濃度である。典型的濃度は約0.05~約2%またはそれ以上、好ましくは約0.15~約1%、さらに好ましくは約0.19~約0.8%(自動食器洗い用最終組成物の重量基準)である。
本発明に好適なキラントとしてはエチレンジアミン四酢酸(EDTA)、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、ヒドロキシエチレンジアミン三酢酸(HEDTA)、トリエチレンテトラアミン六酢酸(TTHA)、ヒドロキシエチリジンジホスホン酸(EHDP)、ニトリロ三酢酸(NTA)、N、N’-(1-オキソ-1、2-エタンジイル)-ビス(アスパラギン酸)(OEDBA)、およびエチレンジアミンジコハク酸(EDDS)の、カリウムおよびナトリウム塩類が挙げられる。」(第5頁右上欄5行~左下欄3行)
(1-5)「好ましいキラント類中にはDTPA、EHDP、EDDSおよびOEDBAが包含され、特に好ましくはナトリウム塩型のものである。
本発明で使用するキラントは、本発明組成物の別個成分として後述するビルダー塩類とは区別されるべきである。例えば、キラント類は専ら有機化合物であり、N、P、O配位位置またはこれらの混合位置を通じて金属類と結合しうるが、ビルダー塩類は有機または無機化合物であり、有機である場合には一般にO配位位置を通じて金属と結合する。その上、このキラント類はカルシウムおよびマグネシウムよりも一層強力に遷移金属と結合する。すなわち、カルシウム/マグネシウム結合定数に対する遷移金属結合恒数の比が著しく高い。」(第5頁右下欄19行~第6頁左上欄7行)
(1-6)「有機分散剤--有機分散剤の使用量は少なくとも約0.5%、通常約1~約12%またはそれ以上、最も好ましくは約1~約4%(最終組成物に対する重量基準)である。このような有機分散剤は水溶性ナトリウムポリカルボキシレート類が好ましい。(ここで云う“ポリカルボキシレート”分散剤は一般にカルボキシレート基の真の重合数、例えば8またはそれ以上を含有しカルボキシレ-トビルダ-類とは区別され、一分子当り4程度の低い数のカルボキシレ-ト基を有するビルダ-の場合には、時には“ポリカルボキリレート”と業界では呼称している)。この有機分散剤はカルシウムおよびマグネシウム“ハードネス”、例えば炭酸塩類を分散または懸濁しうる能力を有することで知られている。例えばCa/Mg炭酸塩類の結晶抑制はこれら材料の他の有用な機能である。かかる有機分散剤の好ましい例中には、ポリアクリレートまたはアクリレート含有コポリマーが包含される。刊行物“Polymeric dispersing Agents,SOKALAN”-(BASF Aktiengesellschaft.D-6700 Ludwigshaven,Germany)には本発明に使用できる有用な有機分散剤が記載されている。分子量約4500のナトリウムポリカーボネート(商標名“ACUSOL 445N”、Rohm & Haas社製造)、またはアクリレート/マレエートコポリマー(商標名“SOKALAN”、BASF社製)は好ましい分散剤である。これらのポリアニオン性材料は通常各種溶液、しばしば約30~50%濃度分散液として市販されている。」(第6頁左上欄末行~左下欄1行)
(1-7)「水溶性非リン系塩類--工程(b)では、工程(a)からのミックスを水溶性非リン系塩類と混合・接触させる。かかる塩類は温和なアルカリ性材料であり、いずれにしても純粋な水酸化ナトリウムまたはメタケイ酸ナトリウム等の高アルカリ材料ではない。但し少量の高アルカリ材料は他の塩類と併用する限り使用できる。有用な塩類の例中には、例えば硫酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、およびこれらの混合物が包含される。温和なアルカリ性塩混合物として有用なものは、クエン酸ナトリウム・2水和物、炭酸ナトリウムおよび硫酸ナトリウムの重量比で約1:1:3および1:3:10から成るものが挙げられる。例えば表面積を増加させたり、粒子形を一層好ましくする目的には、塩類の物理的修飾が有効なことは、凝集化技術の分野では公知である。
水溶性非リン系塩として有用な他の材料例中には、各種の非リン系ビルダー塩類が包含される。有機ビルダーとして有用な炭酸塩類の例中にはクエン酸塩、イタコン酸塩、2、2’-オキソジコハク酸塩、酒石酸塩等が包含される。クエン酸ナトリウムが特に好ましく、クエン酸ジナトリウム・2水和物が挙げられる。有用な無機ビルダー塩類としては、炭酸塩ビルダーが挙げられる。無水炭酸ナトリウムが特に好ましく、このものは沈殿性ビルダーとして機能するが、例えば完全処方の自動食器洗い用組成物中の約5~30%の量で使用する場合には、食器類上に硬質フィルムまたはスケールが生成するのを阻止するための上記有機分散剤の協調作用に基ずいて、自由に使用できる。」(第7頁右上欄1行~左下欄4行)
(1-8)「ケイ酸塩ビルダーは有用であるが、工程(c)で添加するのがよく、このものは工程(b)で添加する水溶性非リン系塩類中には包含させないのが一般的である。特に好適なケイ酸塩類の例中には、SiO2:Na2Oモル比が約2:1~約2.4:1の固形状、水溶性の水和型ケイ酸塩類が挙げられる。特に好ましいケイ酸塩類としてPQ Corp.から市販される商品名『BRITESIL』H20およびH24がある。ケイ酸塩類は当然ながらビルダーとしてよりも寧ろ腐食防止剤と見做すこともできる。かかる機能的多様性は本発明の製法を何等変更させるものではない。」(第7頁左下欄4~14行)
(1-9)「界面活性剤--本発明の組成物は良好な安定性、例えば漂白抵抗性を有する低発泡性または脱気泡性界面活性剤を最終組成物の重量基準で約0.1~約10%、好ましくは約0.5~約3%含有する。非イオン性界面活性剤、特に35℃またはそれ以下、好ましくは25℃またはそれ以下で固形状のものが好ましい。好ましい本発明の実施態様では、この非イオン性界面活性剤は、炭素数約16~約20でアルコール1モル当平均約12モルのエチレンオキサイドが縮合した直鎖脂肪族アルコール類から誘導された非イオン性界面活性剤のように、低い曇点を有するものである。このエトキシレート非イオン性界面活性剤のエトキシレート分布は平均に対して比較的狭いものが好ましい。エトキシレート非イオン性界面活性剤は約15重量%(界面活性剤基準)までの量のプロピレンオキサイドを含有してもよい。
『PLURONIC』、『PLURAFAC』および『TETRONIC』(商品名)としてBASF-Wyandotte社から市販されるブロックポリマー界面活性剤化合物も本発明中での使用に好適である。」(第7頁左下欄22行~右下欄16行)
(1-10)「実施例III
第3表に示す最終組成を有する自動食器洗い用組成物を次の工程に従って調製した:
第3表 最終製品組成(重量%)
クエン酸Na・2水和物 14.92
(無水物基準)
無水炭酸Na 14.82
(無水物基準)
硫酸Na(無水物基準) 32.92
Naポリアクリレート(無水物基準)
2.94
DTPA ペンタNa塩 0.51
(無水物基準)
非イオン性界面活性剤/MSAP 2.57
香料 0.12
BRITESIL H20、
PQ Corp.製(市販品) 16.67
過ホウ酸Na・1水和物 9.84
(水和補正なし)
TERMAMYL 60T 1.50
ESPERASE 6.0T 1.00
水 2.19
合計 100.00
pH、1%水溶液: 10.7
密度(g/cm3): 0.9」(第8頁右下欄1行~末行)
(1-11)「ここでは任意成分としての非イオン性界面活性剤(気泡抑制剤として3.2%のモノステアリルホスフェート“MSAP”を含有する、エトキシレートモノヒドロキシアルコールとポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレンブロックポリマーの混合物)を第4表に示す量で使用した。」(第9頁左上欄15~20行)
(1-12)「次の実施例は以上のように調製した粒状自動食器洗い用組成物の性能を説明する目的のものであり、本発明がこれにより制約されること意味するものではない。
全量約20~約150gの上記組成物を供給者の指示処方に従って標準食器洗い機デイスペンサー置き場に入れ、指示書に従って操作した。負荷および汚染源の種類に応じて使用量を増減した。
実施例VII-XIでは、次の成分と量を用いた。
クエン酸塩=クエン酸ジナトリウム塩;無水物基準%
炭酸塩=無水炭酸ナトリウム
水和ケイ酸塩=2:1 SiO2:Na2O、
BRITESIL H20,PQ Corp.(市販品)
メタケイ酸塩=メタケイ酸塩Na・5水和物
混合界面活性剤=実施例IIIの非界面活性剤
他の非イオン性界面活性剤=SYNPERONIC LF/RA43,PLULAFACまたは対応する非イオン性界面活性剤(BASF社製)
ポリアクリレート分散剤=ナトリウムポリアクリレート、平均分子量4500、無水物基準
有機分散剤=アクリレート/マレエート共重合体Na塩、商品名 SOKALAN CP-5,BASF社製、無水物基準
DEQUEST 2060=ジエチレントリアミン-ペンタ(メチレンホスホン酸)Naの塩、Monsanto Corp.社製、無水物基準
DTPA=ジエチレントリアミン五酢酸、Na塩、無水物基準
TERMAMYL 60T=Novo社製酵素粒
ESPERASE 6.0T=Novo社製酵素粒
硫酸塩=硫酸ナトリウム
香料=任意;レモンおよび花香
TAED=テトラ-アセチルエチレンアミン
SAVINASE 6.0T=Novo社製酵素粒」(第9頁右下欄下から3行~第10頁右上欄5行)
(1-13)「実施例 XII-XIII
成分 最終組成%
XII XIII
クエン酸塩 5.00 10.00
炭酸塩 15.00 23.38
水和ケイ酸塩 18.52 37.04
メタケイ酸塩 -- --
混合界面活性剤 3.0 5.0
他の非イオン性
界面活性剤 -- --
ポリアクリレート
分散剤 2.0 4.0
有機分散剤 -- --
DEQUEST 2060 -- --
DTPA 0.7 1.4
過ホウ酸Na・
1水和物 9.84 13.12
TAED -- --
TERMAMYL 60T 1.0 2.0
ESPERASE 6.0T -- --
硫酸塩 42.58 --
香料 0.17 0.17
SAVINASE 6.0T 1.0 2.0
水 ---残余100%まで---
以上の実施例では過ホウ酸ナトリウム・1水和物は対応量の過炭酸ナトリウムで置換しても目的の組成物が得られる。」(第10頁左下欄9行~右下欄末行)
(ii)引用文献2に記載された事項
引用文献2には、以下の事項が記載されている。
(2-1)「[特許請求の範囲]
[請求項1]
(A)アルカリ剤40~80重量%、(B)有機ホスホン酸塩0.5~10重量%、(C)低泡性ノニオン界面活性剤0.5~5重量%を含有し、(A)が(A1)M2O/SiO2=1/1~1/3(重量比)である珪酸アルカリ金属塩(Mはアルカリ金属)及び(A2)炭酸アルカリ金属塩を含み、(A1)/(A2)=1/0.2~1/2(重量比)であり、(A)/(B)=4~100(重量比)である洗浄剤組成物から調製された洗浄液により、食器類を10秒~3分で洗浄する、食器類の洗浄方法。
[請求項2]
食器類の洗浄を自動食器洗浄機を用いて行う請求項1記載の食器類の洗浄方法。
・・・
[請求項6]
前記洗浄剤組成物が、更に、(D)高分子カルボン酸又はその塩を含有する請求項1~5の何れか1項記載の食器類の洗浄方法。
[請求項7]
(B)有機ホスホン酸塩が、アミノ基を有する請求項1~6の何れか1項記載の食器類の洗浄方法。
[請求項8]
(C)低泡性ノニオン界面活性剤が、一般式(1)で表される請求項1~7の何れか1項記載の食器類の洗浄方法。
HO-(PO)x-(EO)y-(PO)z-H (1)
〔式中、EOはオキシエチレン基、POはオキシプロピレン基を示し、x及びzはプロピレンオキシドの平均付加モル数を示し、何れも0を超える数であり、x+zは10~50の数であり、yはエチレンオキシドの平均付加モル数を示し、2~50の数である。〕
[請求項9]
(D)高分子カルボン酸又はその塩が、重量平均分子量2,000~15,000のポリアクリル酸又はその塩及び重量平均分子量5,000~80,000のアクリル酸-マレイン酸コポリマー又はその塩から選ばれる1種以上である請求項6~8の何れか1項記載の食器類の洗浄方法。
[請求項10]
(A)アルカリ剤40~80重量%、(B)有機ホスホン酸塩0.5~10重量%、(C)低泡性ノニオン界面活性剤0.5~5重量%を含有し、(A)が(A1)M2O/SiO2=1/1~1/3(重量比)である珪酸アルカリ金属塩(Mはアルカリ金属)及び(A2)炭酸アルカリ金属塩を含み、(A1)/(A2)=1/0.2~1/2(重量比)であり、(A)/(B)=4~100(重量比)である食器用洗浄剤組成物。」
(2-2)「[0009]
したがって、本発明は、短い洗浄時間でも洗浄力に優れ、アルミニウムやアルマイト材質等の軽金属の腐食を防止し、長期間使用での洗浄機内部や周辺、食器類に付着するスケールの防止効果が優れた、食器類の洗浄方法を提供することを目的とする。」
(2-3)「[0014]
<(A)成分>
(A)成分は、(A1)M2O/SiO2=1/1~1/3(重量比)である珪酸アルカリ金属塩〔以下、(A1)成分という〕と、(A2)炭酸アルカリ金属塩〔以下、(A2)成分という〕とを、(A1)/(A2)=1/0.2~1/2(重量比)で含む。以下に、これら(A)、(A)成分について説明する。
[0015]
<(A1)成分>
(A1)成分の珪酸アルカリ金属塩は、M2O・n(SiO2)(式中、Mはナトリウム、カリウムで、nはSiO2のモル数である。)で表される。具体的には、メタ珪酸ナトリウム、メタ珪酸カリウム、1号珪酸ナトリウム、1号珪酸カリウム、2号珪酸ナトリウム、2号珪酸カリウムが挙げられ、中でもメタ珪酸ナトリウム、メタ珪酸カリウム、1号珪酸ナトリウム、1号珪酸カリウムが好ましい。また、オルソ珪酸アルカリ金属塩は、M2O/SiO2モル比が2/1であるため、M2O/SiO2モル比が1/2である1号珪酸アルカリ金属塩と同モル量比以下にブレンドして用いることができる。
[0016]
(A1)成分のM2O/SiO2モル比は1/1~1/3であり、1/1~1/2が好ましい。M2Oが多いとアルミニウムを腐食し、SiO2が多いと珪酸スケールが発生し、アルカリ強度の低下による洗浄性の低下がある。
[0017]
<(A2)成分>
(A2)成分の炭酸アルカリ金属塩はアルカリ強度の補強に有効で、加えて製品形態が固体や粉末状である場合には増量剤として有効である。ここでの炭酸アルカリ金属塩は、このような目的で任意に配合したもので、製品の保管やハンドリングの際に、空気中等の炭酸ガスを吸収して生じる炭酸アルカリ金属塩、所謂キャリーオーバー成分である炭酸アルカリ金属塩は含まれない。
[0018]
具体的には炭酸ナトリウム、炭酸カリウムが有効で、限定はされないが製品形態によってそれぞれ好適に用いられる。液体状製品の形態をとる場合は、溶解度の高い炭酸カリウムが好適で、固体や粉体状製品の形態をとる場合には、粉末あるいは顆粒状の炭酸ナトリウムが好適に用いられる。
[0019]
(A)成分は短時間での洗浄効果を向上させるための非常に重要な役割を担っており、本発明に用いられる洗浄剤組成物中に40~80重量%で配合されるが、好ましくは45~75重量%で、より好ましくは45~70重量%で、50~70重量%が最も好ましい。(A)成分の配合量が40重量%以上であれば10秒~3分の短時間での洗浄条件に於いて十分な洗浄効果を発揮できる。また、80重量%以下であれば短時間での洗浄効果が良好で、スケール防止効果も十分となる。
[0020]
また、スケール防止効果の面からは、(A1)珪酸アルカリ金属塩と(A2)炭酸アルカリ金属塩の重量比が重要で、(A1)/(A2)が1/0.2~1/2、好ましくは1/0.5~1/1.5である。(A1)成分が少ないと珪酸スケールの発生を低減でき、(A2)が少ないと炭酸スケールの発生を低減できる。」
(2-4)「[0025]
<(C)成分>
(C)成分の低泡性ノニオン界面活性剤とは、十分な水溶性又は水分散性を示し、機械洗浄に用いた場合も過剰な泡を生成しないものをいう。具体的には、下記一般式(1)~(6)から選ばれる一種以上が好ましい。中でも一般式(1)~(3)の化合物が好ましく、一般式(1)の化合物が最も好ましい。
[0026]
HO-(PO)x-(EO)y-(PO)z-H (1)
HO-(EO)a-(PO)b-(EO)c-H (2)
〔式中、EOはオキシエチレン基、POはオキシプロピレン基を示し、x、y、z、a、b、cの何れも0を超える数であり、x、z及びbはプロピレンオキシドの平均付加モル数を示し、x+z≦60、好ましくは10~50、b≦60、好ましくは10~50の数であり、y及びa、cはエチレンオキシドの平均付加モル数を示し、y≦150、好ましくは2~50、a+c≦150、好ましくは2~50の数である。〕
R1-O(EO)n-R2 (3)
〔式中、R1は炭素数1~24の直鎖又は分岐鎖のアルキル基を示し、EOはオキシエチレン基を示し、nはエチレンオキシドの平均付加モル数を示す8~30の数、R2は炭素数1~18の直鎖又は分岐鎖のアルキル基を示す。〕
R3-O-(EO)x-(PO)y-(EO)z-R4 (4)
〔式中、R3、R4は同一又は異なって、炭素数1~24の直鎖又は分岐鎖のアルキル基あるいは炭素数3~12のシクロアルキル基を示し(但しR4は水素原子も含む)、EOはオキシエチレン基、POはオキシプロピレン基を示す。x及びzはエチレンオキシドの平均付加モル数を示すそれぞれ1以上、好ましくは2~10の数、yはプロピレンオキシドの平均付加モル数を示す1~4の数である。(EO)x、(PO)y、(EO)zはこの順にブロック結合している。〕
R5-O-(EO)x-(PO)y-R6 (5)
R5-O-(EO)x-(BO)z-R6 (6)
〔式中、R5、R6は同一又は異なって、炭素数1~24の直鎖又は分岐鎖のアルキル基あるいは炭素数3~12のシクロアルキル基を示し(但しR6は水素原子も含む)、EOはオキシエチレン基、POはオキシプロピレン基、BOはオキシブチレン基を示す。x、y及びzはエチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシドの平均付加モル数を示すそれぞれ1~20の数である。〕
[0027]
(C)成分は、油性汚れの洗浄性と製品外観の面から、本発明に用いられる洗浄剤組成物中に0.5~5重量%、好ましくは0.5~3重量%、更に好ましくは0.5~2重量%配合される。」
(2-5)「[0028]
<(D)成分>
本発明に用いられる洗浄剤組成物には、高分子カルボン酸又はその塩〔以下、(D)成分という〕を併用することでさらにスケール防止効果を高めることができる。
[0029]
(D)成分としては、ポリアクリル酸又はその塩、ポリマレイン酸又はその塩、及びアクリル酸-マレイン酸コポリマー又はその塩から選ばれる1種又は2種以上が好ましい。これらは一部又は全部が塩となっていてもよく、塩としてはナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩が好ましい。」
(2-6)「[0035]
<任意成分>
本発明に用いられる洗浄剤組成物には、任意成分として、キレート剤〔以下、(E)成分という〕、次亜塩素酸塩や塩素化イソシアヌル酸塩などの有効塩素放出成分、脂肪酸やリン酸エステル類、シリコーン系消泡剤等の消泡剤、酵素、色素や染料、香料等の食器洗浄剤に一般的に配合される成分を含んでもよい。また、液体型の製品形態をとる場合は、可溶化剤としてカプリル酸ナトリウム等の中鎖脂肪酸アルカリ金属塩やプロピレンクリゴール等のグリコール系溶剤を併用すると透明安定な製品外観が得られる。(E)成分のキレート剤は、(B)成分、(D)成分以外のキレート剤であり、具体的には、クエン酸塩に代表されるヒドロキシカルボン酸塩、ニトリロトリカルボン酸(NTA)塩、エチレンジアミンテトラカルボン酸(EDTA)塩等のアミノカルボン酸塩、トリポリリン酸塩等の縮合リン酸塩等が挙げられる。中でも好ましくはクエン酸塩、NTA塩、EDTA塩、トリポリリン酸塩である。塩はナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩が好ましい。」
(2-7)「[0036]
洗浄剤組成物は、液体型または、固体若しくは粉末型の形態をとり、液体型の場合はバランス量の水が配合される。固体若しくは粉末型の場合は、増量剤として硫酸アルカリ金属塩、炭酸水素アルカリ金属塩などを含んでもよい。」
(2-8)「[0037]
〔洗浄方法〕
本発明では、洗浄剤組成物から調製された洗浄液により、食器類を10秒~3分で洗浄するが、洗浄は自動食器洗浄機を用いて行うことが好ましい。通常、業務用の自動食器洗浄機は、構成要素として、洗浄を行うための洗浄ノズル(通常スプレー型又はシャワー型)、洗浄液タンク、ポンプ、及び熱源等と、すすぎを行うためのノズル、すすぎ水タンク、ポンプ及び熱源等と、洗浄液やすすぎ水が飛び散るのを防ぐボックス、食器類を設置する設置部等を備え、洗浄液タンクにある洗浄液をポンプにより移送して、洗浄ノズルから食器類に噴射するという機構、更に、すすぎ水タンクにあるすすぎ水をポンプにより移送して、ノズルから洗浄後の食器類に噴射するという機構により、食器類を自動的、連続的に洗浄するものである。
[0038]
自動食器洗浄機による洗浄では、本発明に係る洗浄剤組成物は供給装置によって自動食器洗浄機内部に一定量任意に移送され、適正な洗浄剤濃度が維持される。洗浄剤の製品形態が液体である場合は、専用のチューブを洗浄剤が充填されたプラスティック等の容器の中に直接差し込み吸い上げられて供給される。洗浄剤の形態が固体や粉末状である場合は、専用ホッパーに洗浄剤が充填されたプラスティック等の容器ごと決められた方向にセットしたり、或いはパウチ容器等に充填された洗浄剤を専用ホッパーに移しかえて、水や温水をスプレーやシャワーなどで洗浄剤に噴き付け、洗浄剤濃厚液を作製し洗浄機内部へと供給される。」
(2-9)「[0050]
なお、本発明に用いられる洗浄剤組成物から調製された洗浄液のpHは25℃において11~13、更に11~12であることが好ましく、洗浄液のpHは洗浄時の温度においても上記範囲であることが好ましい。」
(2-10)「[実施例]
[0051]
<試験例>
表1、2に示す洗浄剤組成物について以下の評価を行った。これらの洗浄剤組成物は、表1、2に示す(A)~(E)成分に硫酸ナトリウムを加えて100重量%とした後、均一になるまで混合して製造されたものである。(A)~(B)成分は含水品であるため、有効分は水を除いたものとして計算できる。
[0052]
(1)アルミニウム腐食試験(非腐食性の評価)
アルミニウム材質のテストピース(日本テストパネル社製、A1050P、20mm×50mm×1mm)を予め中性洗剤で洗浄しアセトン処理して乾燥させたもの使用する。水道水で表1、2に示す洗浄剤組成物を0.1重量%に希釈した洗浄剤希釈液を50mL容プラスティック容器に50g収容する。
[0053]
テストピースの全体が洗浄剤希釈液と接触するよう浸漬させてキャップし、室温にて24時間保存する。24時間後テストピースを取り出し、イオン交換水にてすすいだ後乾燥させて、テストピース表面の状態を目視観察し、以下の判定基準で非腐食性を評価した。
[0054]
判定基準
○;変化を認めず
△;白く変色した部分が認められる
×;茶若しくは黒く変色した部分が認められる
[0055]
(2)スケール付着試験(スケール防止性の評価)
ステンレス材質のテストピース(日本テストパネル社製、JIS G4305、15×40×1mm)及びスライドグラス(松浪ガラス工業社製、26mm×76mm×1mm)を予め中性洗剤で洗浄しアセトン処理して乾燥させたもの使用する。水道水で表1、2に示す洗浄剤組成物を0.1重量%に希釈した洗浄剤希釈液を100mL容プラスティック容器に100g収容する。
[0056]
テストピースの全体が洗浄剤希釈液と接触するよう浸漬させて、600度(ドイツ硬度換算)に調整したCa/Mg硬水を2mL添加してキャップし、60℃乾燥機にて24時間保存する。24時間後テストピースを取り出し、イオン交換水にてすすいだ後乾燥させて、テストピース表面の状態を目視観察する。併せて、0.1mgまで秤量可能な天秤で、浸漬前と浸漬(乾燥)後のテストピースの重量を測定し、差分にてスケール付着量を求める。テストピース表面の状態、及びスケール付着量から、以下の判定基準でスケール防止性を評価した。なお、Ca/Mg硬水は、塩化カルシウム(無水)9.5gと塩化マグネシウム(6水和物)4.34gをイオン交換水1Lに溶かし600度としたものである。
[0057]
判定基準
○;スケール付着を認めない(スケール付着量:0.0mg)
△;微量のスケール付着を認める(スケール付着量:0.1~0.5mg)
×;明らかにスケール付着を認める(スケール付着量:0.5mg超)
[0058]
(3)洗浄力評価
水道水で表1、2に示す洗浄剤組成物を0.1重量%に希釈した洗浄剤希釈液のpH(25℃)及びアルカリ度を測定して以下の判定基準により洗浄力を評価した。なお、アルカリ度は、NaOH換算の濃度(ppm)として評価したものであり、洗浄剤希釈液100gをビーカーに計量し、フェノールフタレイン(1%エタノール溶液)指示薬を数滴添加して赤色にしてから、0.1N塩酸にて赤色が消滅するまで滴定し、滴定量から次式にて算出した。
アルカリ度(NaOHppm)=滴定量(mL)×〔0.4/100(g)〕×10000
[0059]
判定基準
◎;pHが12超、且つNaOH濃度が350ppm超
○;pHが11以上12以下、且つNaOH濃度が220ppm以上350ppm以下
△;pHが11以上12以下、且つNaOH濃度が220ppm未満
×;pHが11未満、且つNaOH濃度が220ppm未満」
(2-11)「[0060]
[表1]
」
(2-12)「[0062]
(注)表中の成分は以下のものである。
*1:品名粉末珪酸ソーダ1号、日本化学工業(株)、Na2O/SiO2=1/2、22.5重量%含水品
*2:品名ドライメタケイソー5aq、広栄化学工業(株)、Na2O/SiO2=1/1、42.5重量%含水品
*3:品名ネオーオルソ80粒、広栄化学工業(株)、Na2O/SiO2=2/1、20重量%含水品
*4:品名DEQUEST2006、ソルーシア・ジャパン(株)、アミノトリ(メチレンホスホン酸)5ナトリウム塩、有効分40重量%
*5:品名DEQUEST2016、ソルーシア・ジャパン(株)、1-ヒドロキシエタン-1,1-ジホスホン酸4ナトリウム塩、有効分30重量%
*6:品名プルロニックPE6100、BASF・ジャパン(株)、エチレンオキシド・プロピレンオキシド・エチレンオキシドコポリマー、重量平均分子量2000、エチレンオキシドモル分率10%
*7:品名プルロニックRPE2520、BASF・ジャパン(株)、プロピレンオキシド・エチレンオキシド・プロピレンオキシドコポリマー、重量平均分子量3100、エチレンオキシドモル分率20%
*8:品名ソカランCP5、BASF・ジャパン(株)、アクリル酸-マレイン酸コポリマーナトリウム塩、アクリル酸/マレイン酸=7/3(モル比)、重量平均分子量70000
*9:品名アクアリックDL-100、(株)日本触媒、アクリル酸ポリマーナトリウム塩、重量平均分子量3500」
(iii)引用文献3に記載された事項
引用文献3には、以下の事項が記載されている。
(3-1)「[請求項1]
洗浄用機器内に対して取り外し可能に挿入可能な、多数回投入方式の洗剤供給装置であって、
洗浄用組成物からなる複数の投入素材を、その内部に受け入れることの可能なカートリッジと、
食器洗浄機における主洗浄サイクルにおいて水/洗浄液を収集するために適した、前記装置の蓋エリア内に形成された収集エリアと、
前記収集エリアからの水あるいは洗浄液の方向を、選択的に、前記装置の内装部品に向ける方向づけ手段と、
を備え、
前記収集エリアが、前記複数の投入素材のうちの単一の投入素材の標準的な溶解を洗浄プログラム中に達成するために十分な水/洗浄液を、洗浄用機器の主洗浄サイクルにおいて収集するために適している、装置。
・・・
[請求項4]
食器洗浄機内の食器洗浄機ワイヤーラック上における、任意の都合のよい場所に配置することが可能である、請求項1、2または3に記載の装置。」
(3-2)「[0024]
前記投入素材は固体の洗浄用組成物からなり、それ自体は、この材料が、使用時に洗い流されるまで、例えば前記したようなスリーブ内において、保持されるならば、微粒子状(例えば、粉末状あるいは粒状)の材料からなることも可能である。しかしながら、これらの投入素材は、流動性を有しないという意味で、固体の洗浄用組成物からなることが好ましい。好ましくは、これらは密着した塊からなる。これは、好ましくは、例えば射出成形、押し出し成形、キャスティング成形あるいは圧縮加工などの、成形あるいは造形プロセスによって形成される。」
(3-3)「[0054]
図1に示した投入素材のラックは、図3に示すように、細長いブリスターポケット2からなる、平らなプラスチックのトレイとして製造されており、これは、熱成形されたプラスチックのトレイを有している。各ブリスターポケット2における開口端は、その全周にわたって、エンドレスフランジ4によって形成されている(これについては、図2において見ることが可能である)。洗浄用組成物6からなる固体のロッドあるいはスティック(この実施形態では、自動食器洗浄機における洗浄のために使用されるように意図されている)は、ブリスターポケット内に導入されている。これについては、異なる方法によって実施することも可能である。例えば、一実施形態では、洗浄用組成物を、前記ポケット内に注入あるいは投入することも可能である。しかしながら、この実施形態では、ロッドあるいはスティックが、射出成形あるいは押し出し成形によってあらかじめ形成され、その後適度な長さに切り出されポケット内に導入される。」
(3-4)「[0064]
使用時には、投入素材のラックは、図1および図5aにも示されているそのネスト化形状で供給される詰め替え品である。このネスト化形状では、それは、図5bに示されているホルダー内に挿入される。このホルダーは、ハブのような軸方向の突起物40を有する、円筒形のタブ型容器である。この突起物40は、このタブ型容器における軸方向の長さのほぼ全体にわたって、その土台から上向きに延びている。4つのフィン42が、この突起物40から外側に突き出ており、これらは、90°の間隔をおいて設けられている。これらのフィンは、ホルダーの半径方向の距離において10分の4ほど延びている。
[0065]
このホルダーは、垂下するハンドル44を備えている。
[0066]
このホルダーの底壁は、大きな開口部(図示せず)となっている。
[0067]
このホルダーは、図5cに示す蓋を有している。この蓋は、水/洗浄液収集エリアを規定している。このエリアは、この蓋の上部の表面積におけるほぼ全域にわたって延びている(言い換えると、この円筒形の装置における、断面積のほぼ全域にわたっている)。また、この蓋は、ふるいまたは網48によって取り囲まれている中央指標装置46を備えている。このふるい48は、細かい粒子が取り除かれた水をホルダー内に注入することを可能とするものである。中央指標装置は、押しボタン50、およびその周囲にダイアル54を備えている。このダイアル54は、洗浄用組成物のロッドあるいはスティックの番号と等しい番号を伝えるものである。食器洗浄機が使用されるたびに、ユーザは、このボタンを押し、制御ダイアルの番号を1つ進める。これにより、次の洗浄用のロッドあるいはスティックを使用することが可能となる。これは、開口部を備えたディスクを、蓋内において、1つの位置分だけ回転させることによって実行される。これにより、ホルダー内に注入されている水が、その開口部を有する方向づけ手段によって、次のロッドあるいはスティックと一直線となるように、その向きを変えられる。この水は、蓋内の開口部の位置に調整されている開口部12を介して、適切なブリスターに注入される。この水は、前記ロッドあるいはスティックの上にあるスペース10を満たすことが可能である。ロッドあるいはスティックは、この水によって浸され、溶解および/または分解し、底部の開口部を介してブリスターから出てゆく。」
(3-5)「[図1][図2][図3]
」
(3-6)「[図5A][図5B]「[図5C]
」
(iv)引用文献6に記載された事項
引用文献6には、以下の事項が記載されている。
(6-1)「
」(第1頁 1.及び2.の項)
(当審仮訳:「1.製品及び会社情報
製品名: BRITESIL(R)(当審注:丸で囲まれたR)H20 水和ケイ酸ナトリウム
製品の説明: 重量比2.0の水和ケイ酸ナトリウム粉末
製品の用途: 洗剤
製造者: PQ Corporation
・・・
2.組成及び成分情報
化学名及び一般名 CAS Registry 番号 Wt.% ・・・
ケイ酸,ナトリウム塩; 1344-09-8 ~82.5% ・・・
ケイ酸ナトリウム
水 7732-18-5 ~17.5% ・・・」)
(6-2)「
」(第3頁 9.の項)
(当審仮訳:「9.物理的及び化学的性質
・・・
pH: 約12.4」)
イ 引用文献1に記載された発明
引用文献1には、「酸素漂白系・・・および有機分散剤から成る非リン酸塩系の自動食器洗い用粒状組成物」の製造方法及び当該製法により製造される「粒状食器洗い機用組成物」が記載されており(摘記1-2、1-1)、上記酸素漂白系は「少なくとも2成分、すなわち漂白活性塩とキラントから成る」ものであり、「分散剤及び非リン系塩類の存在下で特に有効に機能し、食器類から飲食物の落ち難い汚れを取り除く」こと(摘記1-3)、上記キラントとしては、「ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)・・・等が挙げられ」、「好ましいキラント類中にはDTPA・・・が包含され、特に好ましくはナトリウム塩型のものであ」り、「N、P、O配位位置またはこれらの混合位置を通じて金属類と結合しうる」ものであること(摘記1-4~1-5)、上記有機分散剤は「水溶性ナトリウムポリカルボキシレート類が好まし」く、「カルシウムおよびマグネシウム“ハードネス”、例えば炭酸塩類を分散または懸濁しうる能力を有することで知られている。例えばCa/Mg炭酸塩類の結晶抑制はこれら材料の他の有用な機能である」こと、「かかる有機分散剤の好ましい例中には、ポリアクリレートまたはアクリレート含有コポリマーが包含され」、「ナトリウムポリカーボネート・・・またはアクリレート/マレエートコポリマーは好ましい分散剤である」こと(摘記1-6)、上記非リン系塩類は「各種の非リン系ビルダー塩類が包含され・・・有機ビルダーとして・・・クエン酸ナトリウムが特に好ましく、クエン酸ジナトリウム・2水和物が挙げられ・・・無機ビルダー塩類としては・・・無水炭酸ナトリウムが特に好まし」いこと(摘記1-7)、「ケイ酸塩ビルダーは有用」であり、「特に好適なケイ酸塩類の例中には、SiO2:Na2Oモル比が約2:1~約2.4:1の固形状、水溶性の水和型ケイ酸塩類が挙げられ・・・ケイ酸塩類は当然ながらビルダーとしてよりも寧ろ腐食防止剤と見做すこともできる」こと(摘記1-8)、及び「組成物は良好な安定性、例えば漂白抵抗性を有する低発泡性または脱気泡性界面活性剤を・・・含有」し、「非イオン性界面活性剤・・・が好まし」く、「炭素数約16~約20でアルコール1モル当平均約12モルのエチレンオキサイドが縮合した直鎖脂肪族アルコール類から誘導された非イオン性界面活性剤・・・プロピレンオキサイドを含有してもよい・・・ブロックポリマー界面活性剤化合物も本発明中での使用に好適である」こと(摘記1-9)が記載されている。
また、摘記1-12には、「実施例VII-XIでは、次の成分と量を用いた」と記載され、同じ成分が摘記1-13の「実施例XIII」においても用いられたと解されるところ、当該「実施例XIII」は、クエン酸塩(=クエン酸ジナトリウム塩;無水物基準%)10.00重量%、炭酸塩(=無水炭酸ナトリウム)23.38重量%、水和ケイ酸塩(=2:1 SiO2:Na2O、BRITESIL H20,PQ Corp.(市販品))37.04重量%、混合界面活性剤(=実施例IIIの非界面活性剤(当審注:「非界面活性剤」は「非イオン性界面活性剤」の誤記と解される。))5.0重量%、ポリアクリレート分散剤(=ナトリウムポリアクリレート、平均分子量4500、無水物基準)4.0重量%、DTPA(=ジエチレントリアミン五酢酸、Na塩、無水物基準)1.4重量%、過ホウ酸Na・1水和物13.12重量%、TERMAMYL 60T(=Novo社製酵素粒)2.0重量%、香料(=任意;レモンおよび花香)0.17重量%、SAVINASE 6.0T(=Novo社製酵素粒)2.0重量%、及び水を残余100重量%まで含有する組成物であることが記載されており、上記「混合界面活性剤(=実施例IIIの非(イオン性)界面活性剤)」については、摘記1-10及び摘記1-11を参照すると、「エトキシレートモノヒドロキシアルコールとポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレンブロックポリマーの混合物」であることがわかる。
ここで、上記「残余」の水以外の成分の含有量を合計すると98.11重量%になるから、「残余」の水の量は1.89重量%であり、また、上記過ホウ酸Na・1水和物(NaBO3・1H2O、分子量81.8+18.0)13.12重量%は、過ホウ酸Na10.75重量%と結晶水2.37重量%とからなるものであり、さらに、上記「水和ケイ酸塩(=2:1 SiO2:Na2O、BRITESIL H20,PQ Corp.(市販品))は、BRITESIL(登録商標)H20の製品安全データシート(引用文献6、摘記6-1)を参照すると、水を17.5重量%の割合で含むものであるから、上記水和ケイ酸塩37.04重量%は、ケイ酸ナトリウム30.56重量%と水6.48重量%とからなるものであり、まとめると、水は合計で10.74重量%である。
そうすると、引用文献1には、実施例XIIIに基づいて以下の発明が記載されているものと認められる。
「クエン酸ジナトリウム塩(無水物基準%)10.00重量%、無水炭酸ナトリウム23.38重量%、ケイ酸ナトリウム30.56重量%、混合界面活性剤(=エトキシレートモノヒドロキシアルコールとポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレンブロックポリマーの混合物)5.0重量%、ポリアクリレート分散剤(=ナトリウムポリアクリレート、平均分子量4500、無水物基準)4.0重量%、DTPA(=ジエチレントリアミン五酢酸、Na塩、無水物基準)1.4重量%、過ホウ酸Na10.75重量%、TERMAMYL 60T(=Novo社製酵素粒)2.0重量%、香料0.17重量%、SAVINASE 6.0T(=Novo社製酵素粒)2.0重量%、及び水10.74重量%を含有する粒状自動食器洗い機用洗剤組成物。」(以下、「引用発明1」という。)
ウ 進歩性の判断
(ア)補正後発明と引用発明1との対比
補正後発明と引用発明1とを対比すると、後者における「無水炭酸ナトリウム」、「混合界面活性剤(=エトキシレートモノヒドロキシアルコールとポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレンブロックポリマーの混合物)」、「ケイ酸ナトリウム」、「DTPA(=ジエチレントリアミン五酢酸、Na塩)」、「ポリアクリレート分散剤(=ナトリウムポリアクリレート、平均分子量4500)」及び「クエン酸ジナトリウム塩」は、それぞれ前者における「炭酸塩アルカリ源」、「エチレンオキシドとプロピレンオキシドとの組合せを含む一つ又は複数の非イオン性界面活性剤」、「シリケート」、「アミノカルボキシレート」、「アクリル酸ポリマー」及び「シトラート」に相当し、後者における上記各成分の配合割合「23.38重量%」、「5.0重量%」、「30.56重量%」、「1.4重量%」、「4.0重量%」及び「10.00重量%」は、それぞれ前者における「1.0質量%~90質量%」、「1質量%~7.5質量%」、「30質量%~80質量%」、「1.0質量%~3.5質量%」、「0.1質量%~15質量%」及び「1質量%~10質量%」の要件を満たしている。また、後者における各成分の量は、合計が100重量%を超えないように選択されることは明らかであり、さらに、後者における「粒状」及び「洗剤組成物」は、前者における「固体」及び「洗剤組成物」に相当する。
そうすると、両者は、
「23.38質量%の炭酸塩アルカリ源と;
5.0質量%の、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとの組合せを含む一つ又は複数の非イオン性界面活性剤と;
シリケートと、アミノカルボキシレートと;
4.0質量%のアクリル酸ポリマーと;
10.00質量%のシトラートと、
を含む、固体洗剤組成物であって、
前記シリケートの量は30.56質量%であり、前記アミノカルボキシレートの量は1.4質量%であり、
それぞれの成分の量は、それらの合計が100質量%を超えないように選択される、
固体洗剤組成物。」の点で一致し、
相違点1:補正後発明においては、「シリケート、及びアミノカルボキシレートを含む」成分を「金属保護成分」とまとめて称しているのに対し、引用発明1においてはそのようにまとめて称していない点
相違点2:補正後発明においては、「マレイン酸コポリマー、アクリル酸ポリマー、及びこれらの混合物からなる群から選択される」成分を「腐食防止剤」と称しているのに対し、引用発明1においてはそのように称していない点
相違点3:補正後発明においては、「シトラート又はクエン酸」成分を「キレート剤」と称しているのに対し、引用発明1においてはそのように称していない点
相違点4:補正後発明は「アルカリ性」であるのに対し、引用発明1はそのようなことが明らかでない点
相違点5:固体アルカリ性洗剤組成物が、補正後発明においては「キャスト固体、圧縮固体及び押出固体からなる群から選択される固体」であるのに対し、引用発明1は「粒状」である点
で相違する。そこで、上記相違点について検討する。
(イ)相違点1について
引用発明1に配合されている個別の具体的な化合物及びその配合割合は補正後発明における個別の配合成分及び配合割合とすべて一致していることから、引用発明1は自ずから補正後発明と同じ効果を奏するといえるものであり、一部の成分をひとまとまりにして「金属保護成分」と称しているか否かによって、実質的な配合成分が相違することにはならない。
よって、相違点1は実質的な相違点ではない。
なお、引用文献1には、「ケイ酸塩類は・・・腐食防止剤と見做すこともできる」と記載されているから(摘記1-8)、引用発明1における「ケイ酸ナトリウム」は、補正後発明における「金属保護成分」に相当するものである。
(ウ)相違点2について
引用発明1に配合されている個別の具体的な化合物及びその配合割合は補正後発明における個別の配合成分及び配合割合とすべて一致していることから、引用発明1は自ずから補正後発明と同じ効果を奏するといえるものであり、一部の成分(アクリル酸ポリマー等)を「腐食防止剤」と称しているか否かによって、実質的な配合成分が相違することにはならない。
また、本願明細書の[0061]には、「腐食防止剤」について、「一般に、腐食防止剤成分は、一旦少なくとも8.0のpHにさらされると、カルシウムをゆるく保持し、(これをアルカリ源として使用したときに)あらゆる炭酸カルシウムの沈殿を低減すると考えられる」と記載されているから、アルカリ源である「カルシウムをゆるく保持」することにより「腐食防止」の効果を発揮するものと解することができるところ、引用文献1には、「有機分散剤は水溶性ナトリウムポリカルボキシレート類が好ましい・・・この有機分散剤はカルシウムおよびマグネシウム“ハードネス”、例えば炭酸塩類を分散または懸濁しうる能力を有することで知られている」と記載されているから(摘記1-6)、引用文献1には、引用発明1における「アクリル酸ポリマー」が、補正後発明における「腐食防止剤」に相当する機能を有することが実質的に記載されているといえる。
よって、相違点2は実質的な相違点ではない。
(エ)相違点3について
引用発明1に配合されている個別の具体的な化合物及びその配合割合は補正後発明における個別の配合成分及び配合割合とすべて一致していることから、引用発明1は自ずから補正後発明と同じ効果を奏するといえるものであり、一部の成分(シトラート等)を「キレート剤」と称しているか否かによって、実質的な配合成分が相違することにはならない。
また、引用発明1の「クエン酸ジナトリウム塩」は、一分子中に一つのヒドロキシル基と三つのカルボキシル基を有するヒドロキシカルボン酸の塩であり、「キレート剤」として機能することが周知(もし必要であれば、引用文献2の摘記2-6を参照。)の化合物である。
よって、相違点3は実質的な相違点ではない。
(オ)相違点4について
引用発明1は、二番目に多い成分としてアルカリ源である「無水炭酸ナトリウム」を23.38重量%含有する。また、引用発明1に最多成分として配合されている「ケイ酸ナトリウム」は、「水和ケイ酸塩(=2:1 SiO2:Na2O、BRITESIL H20,PQ Corp.(市販品))に由来するものであるところ、BRITESIL(登録商標)H20の製品安全データシート(引用文献6、摘記6-2)を参照すると、そのpHは「約12.4」であるからアルカリ性の成分である。さらに、引用発明1に配合されている他の成分は、中性乃至中和されており、かつ上記の二成分に比べて配合割合は少ないものである。
そうすると、これらを合わせた引用発明1の組成物はアルカリ性であると解される。
よって、相違点4は実質的な相違点ではない。
(カ)相違点5について
例えば引用文献3(摘記3-2)に記載されているように、自動食器洗浄機のための固体洗浄用組成物の具体的な形態としては、「粉末あるいは粒状」と並び、「押し出し成形、キャスティング成形あるいは圧縮加工などの、成形あるいは造型プロセスによって形成される」形態も周知であるから、引用発明1の自動食器洗い機用洗剤組成物を周知の「キャスト固体」、「圧縮固体」又は「押出固体」の形態にすることにより上記相違点5に相当する構成に至ることは、当業者が容易に想到し得たことである。
(キ)引用発明1の効果について
引用文献1の摘記1-2には、引用発明1の課題に関連して、「塩素漂白に置換できる酸素漂白系を導入した自動食器洗い機用組成物の提供が望まれている。例えば、塩素漂白は銀食器を黒化する傾向がある等の欠点がある。・・・したがって本発明の目的は、酸素漂白系・・・および有機分散剤から成る非リン酸塩系の自動食器洗い用粒状組成物・・・の提供にある。」と記載されているから、引用発明1は、銀食器(「アルカリ反応性金属の表面を含む」物品に相当する。)を洗浄することができる自動食器洗い用組成物を提供するという課題を解決したものと解される。
また、上記(3B)ウ(イ)「相違点1について」に記載したとおり、引用発明1における「ケイ酸ナトリウム」は「金属保護成分」に相当するものであり(摘記1-8)、上記(3B)ウ(ウ)「相違点2について」に記載したとおり、引用発明1における「アクリル酸ポリマー」は「腐食防止剤」に相当する機能を有するものであり(摘記1-6)、上記(3B)ウ(エ)「相違点3について」に記載したとおり、引用発明1における「クエン酸ジナトリウム塩」は「キレート剤」として機能することが周知の化合物である。
(ク)補正後発明の効果について
上記(3A)「特許法第36条第6項第1号(サポート要件)について」に記載したとおり、補正後発明の解決しようとする課題は、「金属保護を改善し、微粒子の沈殿を低減し、及び有効な洗浄力を維持したアルカリ性洗剤組成物を開発すること」及び「金属表面の著しい腐食を引き起こすことなく、pH約9~約12.5のアルカリ性洗剤を使用する方法を提供すること」にあるものと認められるが、本願出願時における技術常識を参酌しても、本願明細書の一般記載及び実験データの記載に基づいて、補正後発明の洗剤組成物が上記発明の課題を解決し得るものであることを当業者が理解することはできない。
また、上記相違点5に係る洗剤組成物の形態の特定により、補正後発明が格別顕著な効果を奏するものとも認められない。
そうすると、補正後発明の効果は、上記(3B)ウ(キ)「引用発明1の効果について」に記載した効果から予測し得る範囲のものであり、格別顕著なものとは認められない。
エ 特許法第29条第2項(進歩性)についてのまとめ
よって、補正後発明は、引用発明1並びに引用文献1~3及び6に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
(3C)独立特許要件についてのまとめ
以上のとおり、補正後発明は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしておらず、また、同法第29条第2項の規定により、特許出願の際、独立して特許を受けることができないものである。
(4)本件補正についてのまとめ
よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合しないものであるから、他の補正事項について検討するまでもなく、同法159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
3.本願発明について
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1~12に係る発明は、上記2.(1)ア「補正前の特許請求の範囲(平成30年12月25日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1~12)」に記載された事項により特定されるとおりのものと認められ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)を再掲すると、以下のとおりである。
「[請求項1]
1.0質量%~90質量%の炭酸塩アルカリ源と;
1質量%~7.5質量%の、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとの組合せを含む一つ又は複数の非イオン性界面活性剤と;
シリケート、及びアミノカルボキシレートを含む金属保護成分と;
マレイン酸コポリマー、アクリル酸ポリマー、及びこれらの混合物からなる群から選択される、0.1質量%~15質量%の腐食防止剤と;
シトラート又はクエン酸である、1質量%~10質量%のキレート剤と、
を含む、固体アルカリ性洗剤組成物であって、
前記シリケートの量は30質量%~80質量%であり、前記アミノカルボキシレートの量は1.0質量%~3.5質量%であり、
それぞれの成分の量は、それらの合計が100質量%を超えないように選択される、
固体アルカリ性洗剤組成物。」
4.最後の拒絶理由の概要
平成31年4月19日付けで当審が通知した「最後の拒絶理由」は、概略、以下の理由I~理由IIIの拒絶理由を含むものである。
理由I(サポート要件)
本願出願時における技術常識を参酌しても、本願明細書の一般記載及び実験データの記載に基づいて、本願発明の洗剤組成物が、発明の課題([0005]~[0006])を解決し得るものであることを当業者が理解することはできない。
よって、本願発明は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
理由II(新規性)
本願発明は、その出願前に日本国内または外国において頒布された下記引用文献1に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
理由III(進歩性、引用文献1を主引例とする場合)
本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された下記引用文献1~6に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
5.当審の判断
(1)理由I(サポート要件)について
本願発明は、補正後発明の発明特定事項のうち、「前記固体アルカリ性洗剤組成物は、キャスト固体、圧縮固体及び押出固体からなる群から選択される固体である」という発明特定事項を含まない点以外は、補正後発明と同じ発明特定事項により特定されるものであり、シリケート等の具体的な含有成分及び量比は、補正後発明と同様に特定されるものである。
そうすると、本願発明についても、上記2.(3)「独立特許要件について」の(3A)「特許法第36条第6項第1号(サポート要件)について」に記載したとおりのことがいえる。
よって、他の請求項について検討するまでもなく、最後の拒絶理由において通知した理由I(サポート要件)の拒絶理由は、依然として解消していない。
(2)理由II(新規性)について
本願発明は、補正後発明の発明特定事項のうち、「前記固体アルカリ性洗剤組成物は、キャスト固体、圧縮固体及び押出固体からなる群から選択される固体である」という発明特定事項を含まない点以外は、補正後発明と同じ発明特定事項により特定されるものであり、シリケート等の具体的な含有成分及び量比は、補正後発明と同様に特定されるものである。
そこで、本願発明と引用発明1とを対比すると、両者は、上記2.(3)「独立特許要件について」の(3B)ウ(ア)「補正後発明と引用発明1との対比」に記載した点で一致し、上記相違点1~4で一応相違するものと認められる。
そして、上記相違点1~4については、上記(3B)ウ(イ)「相違点1について」~同(オ)「相違点4について」に記載したとおり、いずれも実質的な相違点とは認められない。
そうすると、本願発明は、引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
よって、他の請求項について検討するまでもなく、最後の拒絶理由において通知した理由II(新規性)の拒絶理由は、依然として解消していない。
(3)理由III(進歩性)について
引用文献1には、引用発明1(実施例XIII)で用いられた各成分と同等の機能を有する他の化合物の選択肢が記載され、また、各成分の好ましい配合割合の範囲についても記載されているから(摘記1-3~摘記1-9等)、引用文献1に記載された範囲内で、かつ引用発明1の効果が損なわれない範囲内で、引用発明1における具体的な配合成分を置き換えること及び配合割合を変更することは当業者が適宜になし得ることである。具体的には、以下のとおりである。
ア 炭酸塩アルカリ源について
引用発明1は、「無水炭酸ナトリウム23.38重量%」を含有するものであるが、引用文献1には、「有用な無機ビルダー塩類としては、炭酸塩ビルダーが挙げられる。無水炭酸ナトリウムが好ましく、このものは沈殿性ビルダーとして機能するが、例えば完全処方の自動食器洗い用組成物中の約5~30%の量で使用する場合には、食器類上に硬質フイルムまたはスケールが生成するのを阻止するための上記有機分散の協調作用に基ずいて、自由に使用できる。」と記載されているから(摘記1-7)、引用発明1における「無水炭酸ナトリウム23.38重量%」に代えて無水炭酸ナトリウム以外の「炭酸塩ビルダー」を用いること、及び/又は配合割合を「5~30%」の範囲で変更することにより、本願発明の「1.0質量%~90質量%の炭酸塩アルカリ源」と重複する構成に至ることは、当業者が容易に想到し得たことである。
イ 非イオン性界面活性剤について
引用発明1は、「混合界面活性剤(=エトキシレートモノヒドロキシアルコールとポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレンブロックポリマーの混合物)5.0重量%」を含有するものであるが、引用文献1には、「良好な安定性、例えば漂白抵抗性を有する低発泡性または脱気泡性界面活性剤を最終組成物の重量基準で約0.1~約10%、好ましくは約0.5~約3%含有する。・・・エトキシレート非イオン性界面活性剤は約15重量%(界面活性剤基準)までの量のプロピレンオキサイドを含有してもよい。「PLURONIC」・・・(商品名)としてBASF-Wyandotte社から市販されるブロックポリマー界面活性剤化合物も本発明中での使用に好適である。」と記載されているから(摘記1-9)、引用発明1における「混合界面活性剤・・・5.0重量%」に代えて市販の「ブロックポリマー界面活性剤」(例えば、引用文献2の摘記2-12に記載された商品名「プルロニック」として市販されているエチレンオキシド・プロピレンオキシド・エチレンオキシドコポリマー等。)を用いること、及び/又は配合割合を「約0.1~約10%」の範囲で変更することにより、本願発明の「1質量%~7.5質量%の、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとの組合せを含む一つ又は複数の非イオン性界面活性性」と重複する構成に至ることは、当業者が容易に想到し得たことである。
ウ シリケートについて
引用発明1は、「ケイ酸ナトリウム30.56重量%」を含有するものであるが、引用文献1には、「ケイ酸塩ビルダーは有用である・・・特に好適なケイ酸塩類の例中には、SiO2:Na2Oモル比が約2:1~約2.4:1の固形状、水溶性の水和型ケイ酸塩類が挙げられる。」と記載されているから(摘記1-8)、引用発明1における「ケイ酸ナトリウム30.56重量%」に代えて、「SiO2:Na2Oモル比が約2:1~約2.4:1の・・・水和型ケイ酸塩類」からなるケイ酸塩ビルダーを用いること、及び/又はケイ酸塩ビルダーとしての機能を失わない範囲で配合割合を多少変更することにより、本願発明の「シリケートの量は30質量%~80質量%」と重複する構成に至ることは、当業者が容易に想到し得たことである。
エ アミノカルボキシレートについて
引用発明1は、「DTPA(=ジエチレントリアミン五酢酸、Na塩、無水物基準)1.4重量%」を含有するものであるが、引用文献1には、「キラントの使用量は、漂白安定化目的に必要とされる最低量(例えば約0.05%~0.1%)から例えば約0.5%またはそれ以上の高い濃度領域に亙って使用できる。・・・典型的濃度は約0.05~約2%またはそれ以上、好ましくは約0.15~約1%、さらに好ましくは約0.19~約0.8%(自動食器洗い用最終組成物の重量基準)である。
本発明に好適なキラントとしてはエチレンジアミン四酢酸(EDTA)、・・・ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、ヒドロキシエチレンジアミン三酢酸(HEDTA)、トリエチレンテトラアミン六酢酸(TTHA)、・・・エチレンジアミンジコハク酸(EDDS)の、カリウムおよびナトリウム塩類が挙げられる。」と記載されているから(摘記1-4)、引用発明1における「DTPA(=ジエチレントリアミン五酢酸、Na塩、無水物基準)1.4重量%」に代えて、例示されている他のアミノカルボキシレートに相当する「キラント」を用いること、及び/又は配合割合を「約0.05~約2%またはそれ以上」の範囲で変更することにより、本願発明の「アミノカルボキシレートの量は1.0質量%~3.5質量%」と重複する構成に至ることは、当業者が容易に想到し得たことである。
オ マレイン酸コポリマー、アクリル酸ポリマーについて
引用発明1は、「ポリアクリレート分散剤(=ナトリウムポリアクリレート、平均分子量4500、無水物基準)4.0重量%」を含有するものであるが、引用文献1には、「有機分散剤の使用量は少なくとも約0.5%、通常約1~約12%またはそれ以上、最も好ましくは約1~約4%(最終組成物に対する重量基準)である。このような有機分散剤は水溶性ナトリウムポリカルボキシレート類が好ましい。・・・かかる有機分散剤の好ましい例中には、ポリアクリレートまたはアクリレート含有コポリマーが包含される。・・・分子量約4500のナトリウムポリカーボネート・・・またはアクリレート/マレエートコポリマー・・・は好ましい分散剤である。これらのポリアニオン性材料は通常各種溶液、しばしば約30~50%濃度分散液として市販されている。」と記載されているから(摘記1-6)、引用発明1における「ポリアクリレート分散剤(=ナトリウムポリアクリレート、平均分子量4500、無水物基準)4.0重量%」に代えて「アクリレート/マレエートコポリマー」等の市販の「有機分散剤」を用いること、及び/又は配合割合を「少なくとも約0.5%、通常約1~約12%またはそれ以上」の範囲で変更することにより、本願発明の「マレイン酸コポリマー、アクリル酸ポリマー、及びこれらの混合物からなる群から選択される、0.1質量%~15質量%の腐食防止剤」と重複する構成に至ることは、当業者が容易に想到し得たことである。
カ 本願発明の効果について
上記2.(3B)ウ(キ)「引用発明1の効果について」及び同(ク)「補正後発明の効果について」における検討を踏まえると、本願発明の効果は引用発明1の効果から予測し得る範囲のものであり、格別顕著なものとは認められない。
キ 理由III(進歩性)についてのまとめ
そうすると、本願発明は、引用発明1並びに引用文献1、2及び6に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、他の請求項について検討するまでもなく、最後の拒絶理由において通知した理由III(進歩性)の拒絶理由は、依然として解消していない。
6.むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしておらず、また、同法第29条第1項第3号に該当し、さらに、同法第29条第2項に規定する要件を満たしていない。そうすると、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2017-015379