特許拒絶査定不服審判
2019-014829
トナー、及び画像形成方法
- 審判番号
- 2019-014829
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2015-156580外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2019年11月06日
- 審決日
- 2020年08月25日
- 公報発行日
- 2020年12月25日
- 結論
- 請求不成立
- 分類
- P18 .113-Z (G03G) / P18 .121-Z (G03G) / P18 .575-Z (G03G)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第17条の2第6項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第29条第2項、特許法第29条第1項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2015-156580「トナー、及び画像形成方法」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 3月22日出願公開、特開2016- 38591〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、平成27年8月7日(先の出願に基づく優先権主張 平成26年8月7日)の出願であって、令和元年5月15日付けで拒絶理由が通知され、同年7月18日に意見書の提出とともに手続補正がなされ、同年7月31日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という。)がされ、これに対し、同年11月6日に、拒絶査定不服審判の請求と同時に手続補正(以下、「本件補正」という。)がなされたものである。
その後、令和元年12月18日に、審判請求書の請求の理由を補正する手続補正がなされ、令和2年7月13日に上申書が提出された。
第2 本件補正の補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
令和元年11月6日付けの手続補正を却下する。
[理由]
1 補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲の補正を含み、令和元年7月18日付けの手続補正後の特許請求の範囲の
「 【請求項1】
結着樹脂と着色剤とを含有するトナー粒子、および微粒子Aを有するトナーであって、
該トナー粒子は、平均円形度が0.970以上であり、
該微粒子Aは、一次粒子の数平均粒径(D1)が80nm以上400nm以下であり、
ESCAで測定される該微粒子Aによる該トナー粒子表面の被覆率が5%以上40%以下であり、
該トナーは、該微粒子Aの固着率が30質量%以上90質量%以下であり、
該トナー粒子の表面の0.5πμm2の領域に存在する該微粒子Aの個数の変動係数が0.1以上0.5以下であり、
該微粒子Aは、有機無機複合微粒子であり、
該有機無機複合微粒子は、
(1)ビニル系樹脂粒子に無機微粒子Bが埋め込まれた構造を有し、
(2)表面において、該無機微粒子Bが露出しており、該無機微粒子Bに由来する凸部が存在している、
ことを特徴とするトナー。」を、
「 【請求項1】
結着樹脂と着色剤とを含有するトナー粒子、および微粒子Aを有するトナーであって、
該トナー粒子は、平均円形度が0.970以上であり、
該微粒子Aは、一次粒子の数平均粒径(D1)が80nm以上400nm以下であり、
ESCAで測定される該微粒子Aによる該トナー粒子表面の被覆率が5%以上40%以下であり、
該トナーは、該微粒子Aの固着率が30質量%以上90質量%以下であり、
該トナー粒子の表面の0.5πμm2の領域に存在する該微粒子Aの個数の変動係数が0.1以上0.5以下であり、
該微粒子Aは、有機無機複合微粒子であり、
該有機無機複合微粒子は、
(1)ビニル系樹脂粒子に無機微粒子Bが埋め込まれた構造を有し、
(2)表面において、該無機微粒子Bが露出しており、該無機微粒子Bに由来する凸部が存在しており、
(3)該無機微粒子Bがシリカ粒子である、
ことを特徴とするトナー。」(下線部は補正箇所を示す。)
と補正することを含むものである。
2 補正の目的
本件補正は、本件補正前の請求項1に係る発明の発明特定事項である「無機微粒子B」を、「シリカ粒子」に限定する補正事項を含んでいる。また、本件補正の前後において、産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一であるといえる。
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「本件補正発明」という。)が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。
3 引用文献の記載事項及び引用文献に記載された発明
(1)引用文献3の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用文献3として引用され、先の出願前の平成17年6月2日に頒布された刊行物である特開2005-140952号公報(以下、「引用文献3」という。)には、以下の記載事項がある。なお、合議体が発明の認定等に用いた箇所に下線を付した。
ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は、トナー及びトナー製造方法に関し、特に高耐久性のトナー及びトナー製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、複写機、プリンタ、ファクシミリ等の画像形成技術の発達は著しく、その中で最も多く用いられているのは、電子写真方式に代表される静電荷像による画像形成方式に属するものである。その理由は、この画像形成方法が高画質画像を高速で形成できること、モノクロだけでなくカラー画像形成も可能なこと、長期の使用に耐えうる耐久性、安定性を有していことによるものである。
(中略)
【0005】
トナーに十分な帯電性能を付与する技術として、外添剤を添加する技術がある。このような外添剤を添加する技術は、短時間でトナーの帯電立ち上がりを実現するだけでなく、トナーの転写性やクリーニング性能を高める機能に加え、感光体や中間転写体に発生しがちなフィルミング物を研磨し、清浄に保つことで良好なトナー画像を長期にわたり出力させるという効果を有していた(例えば、特許文献1参照。)。
(中略)
【0007】
トナーに外添剤を添加する技術として、例えば、0.1~5.0μmの有機粒子(以下、樹脂粒子とも云う)の表面に、体積平均一次粒子径が5~100nmの無機粒子を固着させてなる複合粒子を外添剤とするトナーの技術が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2002-62681号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来の外添剤を添加したトナーでは、とりわけ、長期にわたる使用に耐えるものでないことが判明してきた。例えば、前述の特許文献1に開示されたトナーは、例えば、100万枚を越えるプリントの様な長期使用に供すると、キャリア表面へのスペントが顕著になり、十分な摩擦停電が行われにくくなる傾向を有していた。長期使用に伴って、トナー飛散や非画像部のかぶり発生といった現像剤寿命に起因する問題も有していた。このように長期使用に耐え得る十分な耐久性を有していなかった。
【0009】
また、小型化、及び高速で画像形成に対応した装置では、現像ユニット内での攪拌時に発生する衝撃を長期にわたり受け続けるので、上記問題がより顕著に表れていた。
【0010】
このように、長期使用、ならびに小型化、高速に対応した画像形成装置において、100万枚以上のプリントに代表される長期使用や、現像剤ユニット内で大きな衝撃力が発生する画像形成装置に、安定して使用可能な高耐久性を有するトナー及び現像剤を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の課題は下記構成を採ることにより達成される。
(請求項1)
表面もしくは表面近傍に無機粒子を存在させた複合架橋粒子を含有することを特徴とするトナー。
(請求項2)
前記トナーは、体積平均粒子径が2~8μmであり、且つ、円形度の平均値が0.951~0.988であることを特徴とする請求項1に記載のトナー。
(請求項3)
前記複合架橋粒子は、水系媒体中で無機粒子の存在下で、重合性単量体を重合又は縮合反応により得られるものであることを特徴とする請求項1又は2に記載のトナー。
(請求項4)
前記無機粒子は、コロイダルシリカ、酸化チタン、酸化アルミニウムのいずれかであることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載のトナー。
(請求項5)
前記複合架橋粒子は、無機粒子の存在下で、重合性単量体を重合又は縮合反応により形成された後、疎水化処理して得られるものであることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載のトナー。
(請求項6)
前記複合架橋粒子は、水溶性成分を0.05~746ppm含み、該水溶性成分中にアルデヒド類を138ppm未満含むことを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載のトナー。
(請求項7)
前記トナーは、体積平均粒子径が2~8μm、円形度の平均値が0.951~0.988であり、該トナーに含有される複合架橋粒子は、水系媒体中で無機粒子の存在下で重合性単量体を重合又は縮合反応によって形成され、該複合架橋粒子の表面もしくは表面近傍に含有し、138ppm未満のアルデヒド類を含有する水溶性成分を0.05~746ppm含有することを特徴とする請求項1に記載のトナー。
(中略)
【発明の効果】
【0012】
本発明のトナー及びトナー製造方法は、表面もしくは表面近傍に無機粒子を存在させた複合架橋粒子を外添剤としてトナーに含有させることにより、大量のプリントを行っても複合架橋粒子の変形、扁平化が発生せず、結果として現像剤の寿命を長く延ばし、放置しても帯電量のリークが少なく、感光体表面にトナーフィルミング及び感光層(以下、被覆層とも云う)のキズや減耗が無く、且つトナーの転写率が良好な優れた効果が得られる。」
イ 「【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明のトナーは、表面もしくは表面近傍に無機粒子を存在させてなる複合架橋粒子を外添剤として含有することを特徴とする。
【0014】
従来技術として前述した複合粒子について検討したところ、有機粒子(以下、樹脂粒子とも云う)の表面に、体積平均一次粒子径が5~100nmの無機粒子を固着させた複合粒子は、有機粒子と金属酸化物に代表される無機粒子を、機械的な衝撃力を付与する表面処理装置や、粉砕機で処理することにより、有機粒子表面に金属酸化物に代表される無機粒子を固着させて複合化を進めたものであった。即ち、固着の原理は、表面処理装置によって機械的な衝撃力を付与することにより無機粒子が有機粒子表面に微少な変形を与え一部が埋設されるように固着されるものであった。
【0015】
したがって、ここで用いられる有機粒子は、機械的な衝撃力によって無機粒子を埋没させるため有機粒子が幾分か変形する性質を持たなければならない。この特性が、とりわけ今後も開発が進められている「小型・軽量・高速」の画像形成装置の中で、攪拌による衝撃力を長期にわたり受けることにより複合粒子が扁平化等の変形を起こし、現像剤の寿命を短くする原因になっていたのである。
【0016】
本発明に係る複合架橋粒子は、樹脂粒子の原料となる重合性単量体液滴を無機粒子分散安定剤として介在させつつ重合又は縮合することにより、複合架橋粒子を形成させ、機械的な衝撃を与えることなく無機粒子を樹脂粒子表面に結合させるので、無機粒子と母体となる有機粒子の接着力が強固である。しかも、樹脂粒子の架橋度を必要なだけ上げることで、複合架橋粒子の変形、扁平化を防ぐことができる。
【0017】
ここで、上記構成に使用される用語について説明する。
〈表面、表面近傍〉
本発明で云う「表面」とは、透過型電子顕微鏡、又は電界効果型走査電子顕微鏡で観察される複合架橋粒子の表面に存在する状態を云い、「表面近傍」とは、複合架橋粒子の表面から粒子の中心(重心)に向かい粒子半径の20%より表面に存在する状態をいう。
〈体積平均粒子径、円形度の平均値〉
本発明で云う「体積平均粒子径」は、粒子の体積平均径のことで、レーザー回折式粒度分布測定装置「HELOS」(日本電子社製)により求めることができる。
【0018】
本発明で云う「円形度」は、粒子径1μm以上のトナー粒子2000個以上を測定したとき、下記式(1)より求まる値である。
【0019】
式(1)
円形度=(円相当の周囲長)/(トナー粒子投影像の周囲長)
=2π×(粒子の投影面積/π)1/2/(トナー粒子投影像の周囲長)
ここで、円相当とは、トナー粒子投影像と同じ面積を有する円のことであり、円相当径とは、該円相当の直径のことである。
【0020】
なお、上記円形度の測定は、「FPIA-2000」(シスメック社製)を用いて測定することができる。この時、円相当径は下記式(2)で定義される。
【0021】
式(2)
円相当径=2×(粒子の投影面積/π)1/2
〈水溶性成分〉
本発明で云う「水溶性成分」とは、複合架橋粒子に含まれる水溶性成分のことである。
【0022】
複合架橋粒子に含まれる水溶性成分の量は、複合架橋粒子を水250ml中で煮沸し、冷却後濾過して得られる濾液100mlを蒸発乾固し、残量を秤量することにより測定することができる。本発明で用いる複合架橋粒子に含まれる水溶性成分の量は、上記残量を元の複合架橋粒子に対する質量%で表したものである。ただし、アルデヒド類は、上記の濾液100mlに塩酸ヒドロキシアミンを加え、析出した塩酸をアルカリ標準液で滴定して求めた値である。
【0023】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0024】
本発明では、きわめて高い現像剤寿命と高品位の画像を得るため、湿式で製造されるいわゆるケミカルトナー(重合トナーともよばれる)が好ましく用いられる。このトナーはトナー粒子自身が従来の粉砕法と比較して比較的高い水分量を有する。そのため、複合架橋粒子に含まれる水溶性成分の量が、トナーの帯電性に大きく影響する。
【0025】
複合架橋粒子に含まれる水溶性成分の量は、0.05~746ppmであることが好ましい。複合架橋粒子に含まれる水溶性成分の量は、製造時に使用する水溶性成分の量を制限すること、得られた粒子を繰り返し水洗浄を行うことで、制御することができる。
(中略)
【0029】
本発明で用いる無機粒子としては、コロイダルシリカ、酸化チタン、酸化アルミニウム、アンチモン酸亜鉛、酸化スズ、及びこれらの混合物等を挙げることができるがこれらに限定されるものではない。
【0030】
上記のコロイダルシリカとは、主に水を主成分とする液体中にコロイド状に分散された珪酸或いは珪酸酸化物(珪酸塩、珪酸エステルを含む)からなる無定形シリカ微粒子である。
【0031】
上記の酸化チタンは、疎水化処理を行い、疎水化率を上げるために、アナターセ型酸化チタン、或いはアモルファス酸化チタンが好ましく用いられる。
(中略)
【0034】
次に、複合架橋粒子の製造方法について説明する。
【0035】
本発明で用いる複合架橋粒子は、水系媒体中で無機粒子の存在下で、母体樹脂となる重合性単量体液滴を重合又は縮合反応のいずれかにより、或いは、前記方法で得られたものを疎水化剤(例えば、シランカップリング剤、シリコーンオイル等)で処理して作製することができる。
【0036】
複合架橋粒子の製造は、母体樹脂としてスチレン系樹脂を用いる方法、メラミン樹脂を用いる方法等を挙げることができるがこれらに限定されるものではない。
【0037】
〈スチレン系複合架橋粒子〉
スチレン系樹脂を用いた複合架橋粒子は、下記の製造方法により得ることができる。
【0038】
スチレン系単量体又はスチレン系単量体と架橋剤となる多官能性単量体、他の共重合性単量体との単量体混合物、該単量体又は単量体混合物に可溶な重合開始剤、界面活性剤及び分散剤としても機能する無機粒子を、水性媒体中に加えて体積平均粒子径が0.3~4.0μmの単量体の1次懸濁液を作り、該1次懸濁液を加圧下、ノズルから噴出させて2次懸濁液を作り、該2次懸濁液を重合させて体積平均粒子径0.05~1.5μmの複合架橋粒子を製造することができる。
【0039】
単量体としては、スチレン系単量体又はスチレン系単量体と他の共重合性単量体とを混合し単量体混合物を使用する。ここで、スチレン系単量体は、単量体全量に対して50質量%以上であることが好ましい。
【0040】
スチレン系単量体としては、例えば、スチレン、p-メチルスチレン等が挙げられる。他の共重合性単量体としては、例えば、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル等のアクリル酸エステル系単量体;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル等のメタクリル酸エステル系単量体;メチルビニルエーテル等のアルキルビニルエーテル、酢酸ビニル、酪酸ビニル等のビニルエステル系単量体;N-メチルアクリルアミド、N-エチルアクリルアミド等のN-アルキル置換アクリルアミド;アクリロニトリル、メタアクリロニトリル等のニトリル系単量体;ジビニルベンゼン、エチレングリコール(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等の多官能性単量体等が挙げられる。
【0041】
これらの単量体は必要に応じて、単独又は2種類以上を混合して用いることができる。また、この単量体中に分散あるいは溶解可能な染料及び顔料等の添加物を添加することも可能である。なお、上記単量体において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートを意味する。
【0042】
架橋剤としては、ジビニルベンゼン、ジアクリル酸エステルなど共有結合性の架橋剤が好ましく用いられる。
【0043】
重合時の単量体と水性媒体との比率(質量比)は、1/10~1/2の範囲であることが好ましい。
【0044】
ここで、水性媒体としては、水、水と水溶性有機化合物(例えば、低級アルコール)との混合物が挙げられる。
【0045】
重合開始剤は、上記単量体に可溶な一般に用いられる油溶性重合触媒であれば特に限定されることなく使用でき、例えば、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、t-ブチルペルオキシオクトエート等の過酸化物系触媒、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソバレロニトリル等のアゾ系触媒が使用できる。
【0046】
上記単量体にこれら重合開始剤を溶解し、無機粒子と両性界面活性剤又は必要に応じて添加される分散安定補助剤等を含む水性媒体に添加した後、1次懸濁液が作製される。
【0047】
分散安定剤としても機能する無機粒子としては、体積平均一次粒子径が6~32nm、好ましくは体積平均一次粒子径が7~17nmのコロイダルシリカ、酸化アルミニウム、酸価ジルコニウム、アンチモン酸亜鉛、酸化チタン、及びそれらの混合物が好ましく用いられる。
【0048】
前記1次懸濁液は、剪断力によって単量体を分散させる機構の装置を用いて作製することができる。具体的には、通常の撹拌装置あるいはホモミキサー、クレアミックス等の高速回転式撹拌装置を使用し、この装置を所定の撹拌速度で所定時間撹拌し1次懸濁液を作製することができる。
【0049】
1次懸濁液では、単量体を体積平均粒子径0.3~4.0μmの液滴とすることが好ましい。
【0050】
本発明に係る製造方法では、体積平均粒子径0.3~4.0μmの液滴とした1次懸濁液を、加圧噴射することにより体積平均粒子径0.05~1.5μmの液滴を含む2次懸濁液を得ることが好ましい。加圧噴射するために使用される装置としては、例えば、ノズルから懸濁液を噴射するタイプのプロセッサーを接続した装置、懸濁液を加圧下で液同士あるいは液を所定の平面に衝突させるタイプの装置を使用することができる。具体的な装置としては、ナノマイザー、ハーモナイザー、マイクロフルイダイザー、アルティマイザー等を挙げることができるがこれらに限定されるものではない。
【0051】
このようにして得られた2次懸濁液を重合すると複合架橋粒子が形成させる。このとき、2次懸濁液は既に重合開始剤を含んでいるので、例えばこの懸濁液を加熱するだけで重合を開始させることができる。加熱条件は、重合開始剤、単量体の種類に応じて適する温度と時間に設定するが、通常は40~100℃、0.5~10時間の範囲が好ましく、50~90℃、1~8時間の範囲がより好ましい。2次懸濁液を重合させると、単量体は2次懸濁液中の体積平均粒子径そのままで重合体となるので、大きさのよく揃った重合体粒子(複合架橋粒子)が得られる。
【0052】
重合後、濾過、遠心分離等により重合体粒子(複合架橋粒子)を水性媒体から分離し、水又は溶剤で洗浄後、乾燥して粉体として使用することが好ましい。
【0053】
なお、体積平均粒子径は、電気抵抗式の粒度分布測定装置であるコールターマルチサイザー「SD-2000」(シスメックス株式会社製)を用いて測定することができる。
【0054】
〈メラミン系複合架橋粒子〉
メラミン系樹脂を用いた複合架橋粒子は、下記工程の製造方法により得ることができる。
【0055】
工程(a):水性媒体中、5~70nmの平均粒子径を有するコロイダルシリカの懸濁下で、メラミン化合物とアルデヒド化合物を塩基性条件下で反応させて、水に可溶なメラミン系樹脂の初期縮合物の水溶液を生成させる工程、及び
工程(b):工程(a)で得られた水溶液に酸触媒を加えて、球状複合メラミン樹脂粒子を析出させる工程、を含む、球状複合硬化メラミン樹脂粒子の製造方法である。
【0056】
上記方法で得られる球状複合硬化メラミン樹脂粒子は、コロイダルシリカが粒子表面付近に偏在した球状硬化メラミン樹脂粒子であることと、その平均粒子径が0.05~100μmであることを特徴とする。
【0057】
本発明で用いる複合架橋粒子の製造において、コロイダルシリカの作用機構は明らかではないが、おそらくメラミン系樹脂中のアミノ基とコロイダルシリカ粒子表面に存在するシラノール基が水素結合的に作用するために、メラミン系硬化樹脂粒子の析出時にコロイダルシリカが界面活性剤としての役割を果たしていると考えられる。
【0058】
本発明で得られるコロイダルシリカが粒子表面付近に偏在した複合架橋粒子とは、一次粒子が球状で独立しており、空孔は有しておらず、コロイダルシリカが粒子最表面もしくは、最表面から約0.2μmの深さ内の粒子表面付近に存在しているものである。コロイダルシリカは粒子表面付近のメラミン系硬化樹脂内に埋め込まれていたり、粒子表面上に固着した状態で存在するが、通常最表面成分はメラミン系硬化樹脂である。このような形態は、複合架橋粒子のスライス片を、電子顕微鏡を用いた撮影写真などによって容易に観察することができる。
【0059】
更に、工程(c):
工程(c):工程(b)で得られた複合架橋粒子と、該複合架橋粒子の平均粒子径に対して1/5以下の平均粒子径を有する無機粒子とを、直接又は水性媒体中で混合して、無機粒子で該複合架橋粒子の表面を被覆する工程、を含む複合架橋粒子の製造方法でもある。
【0060】
無機粒子で表面被覆させたとは、無機粒子が複合架橋粒子の表面上に固着していることを意味する。
【0061】
まず工程(a)について具体的に説明する。工程(a)で使用されるメラミン化合物としては、メラミン、メラミンのアミノ基の水素をアルキル基、アルケニル基、フェニル基で置換した置換メラミン化合物[米国特許第5,998,573号明細書(対応日本特許:特開平9-143238号公報)に記載されている。]、そしてメラミンのアミノ基の水素をヒドロキシアルキル基、ヒドロキシアルキル(オキサアルキル)n基、アミノアルキル基で置換した置換メラミン化合物[米国特許第5,322,915号明細書(対応日本特許:特開平5-202157号公報)に記載されている。]などが使用できる。この中では安価なメラミンが最も好ましい。
【0062】
また、メラミン化合物とメラミン化合物の一部を尿素、チオ尿素、エチレン尿素などの尿素類、ベンゾグアナミン、アセトグアナミンなどのグアナミン類、フェノール、クレゾール、アルキルフェノール、レゾルシン、ハイドロキノン、ピロガロールなどのフェノール類、アニリンで置き換えて混合物として使用することもできる。
【0063】
アルデヒド化合物としては、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド、フルフラールなどが挙げられるが、安価でメラミン化合物との反応性が良いホルムアルデヒドやパラホルムアルデヒドが好ましい。アルデヒド化合物はメラミン化合物1モルに対して有効アルデヒド基当たり1.1~6.0モル、特に1.2~4.0モルをとなるアルデヒド化合物を使用することが好ましい。
【0064】
工程(a)で使用する媒体としては水が最も好ましい。また水の一部を、水に可溶する有機溶媒に置き換えた混合溶液も使用でき、この場合メラミン樹脂の初期縮合物を溶解することが可能な有機溶媒を選択すると良い。好ましい有機溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、プロパノールなどのアルコール類、ジオキサン、テトラヒドロフラン、1,2-ジメトキシエタンなどのエーテル類、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルオキシドなどの極性溶媒が挙げられる。
【0065】
好ましい分散安定剤は、スチレン系と同様である。すなわち無機粒子としては、体積平均一次粒子径が6~32nm、好ましくは体積平均一次粒子径が7~17nmのコロイダルシリカ、酸化アルミニウム、酸価ジルコニウム、アンチモン酸亜鉛、酸化チタン、及びそれらの混合物が好ましく用いられる。
【0066】
次にトナー、トナー母体、トナー粒子分散液について説明する。
【0067】
本発明のトナーは、トナー母体に複合架橋粒子を混合して得られたものである。前記トナー母体は、トナー粒子分散液を固液分離し、乾燥して得られたものである。
【0068】
本発明に用いるトナー母体の体積平均粒子径は2~8μmであり、且つ、円形度の平均値は0.951~0.988であることが好ましい。
【0069】
尚、トナーとトナー母体の体積平均粒子径と円形度の平均値は、トナー母体に複合架橋粒子を混合しても複合架橋粒子の粒子径が小さいので影響を受けず同一である。
【0070】
トナーの体積平均粒子径と円形度の平均値が、この範囲にあることで、画像の解像度が高く、高い転写率が得られるとともに、キャリアなど摩擦帯電部材にトナーが融着、すなわちスペントすることがなく、きわめて高い現像剤寿命が得られる。
【0071】
上記トナー母体は、上記粒子径と円形度の平均値が得られれば特に限定されず、懸濁重合法、乳化会合法、溶解懸濁法等のいずれの方法で作製したトナー粒子分散液からでも製造できるが、粒度分布がシャープで、画像が優れ、高い現像剤寿命が得られる乳化会合法で製造したトものが好ましい。
【0072】
以下、乳化会合法によるトナー粒子分散液の製造方法について説明する。
【0073】
乳化重合によるトナー粒子分散液の製造方法は、水系媒体中でトナー粒子を形成させる方法で、例えば特開2002-351142号公報等に開示されている。
【0074】
また、特開平5-265252号公報、特開平6-329947号公報、特開平9-15904号公報に開示される樹脂粒子を水系媒体中で塩析/融着させてトナー粒子分散液を製造する方法を挙げることができる。
【0075】
具体的には、水中で樹脂粒子を乳化剤を用いて分散させた後、臨界凝集濃度以上の凝集剤を加えて塩析させると同時に、形成された重合体自体のガラス転移温度以上で加熱融着させて融着粒子を形成しつつ徐々に粒子径を成長させ、目的の粒子径となったところで水を多量に加えて粒子径成長を停止し、さらに加熱、攪拌しながら粒子表面を平滑にして形状を制御し、トナー粒子分散液調製するものである。なお、ここにおいて凝集剤と同時にアルコールなど水に対して無限溶解する溶媒を加えてもよい。
【0076】
水系媒体としては、例えば、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、2-メチル-2-ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、またはこれらを混合したものを挙げることができるが特に限定されるものではない。トナーの製造にはこれらの中から適したものを選ぶことができる。
【0077】
有機溶媒としては、トルエン、キシレン、またはこれらを混合したものを挙げることができるが特に限定されるものではない。
【0078】
トナーの製造方法としては、乾式でトナー母体と複合架橋粒子の粉体を混合する方法、湿式でトナー粒子分散液と複合架橋粒子の分散液を混合する方法が挙げられる。
【0079】
乾式でトナーを製造する方法は、トナー粒子分散液から得られたトナー母体と複合架橋粒子を乾燥して得られた粉体を、乾式で混合して作製する方法である。
【0080】
湿式でトナーを製造する方法は、トナー粒子分散液と複合架橋粒子の分散液を、湿式で混合した後固液分離し、得られた固形分を乾燥してトナーを作製する方法である。
【0081】
乾式法と湿式法では、製造コスト、環境負荷低減の観点から乾式法が好ましい。」
ウ 「【実施例】
【0088】
以下に、実施例を挙げて具体的に説明するが、本発明の実施態様はこれらに限定されるものではない。
【0089】
《複合架橋粒子の作製》
〈複合架橋粒子1の作製〉
アゾビス-N,N-ジメチルバレロニトリル1gを、スチレン60g、メタクリル酸メチル34g及びジビニルベンゼン10gの混合液に溶解し、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.5g、体積平均一次粒子径16nmのコロイダルシリカ15g(固形分相当)及び体積平均一次粒子径13nmの酸化アルミニウム分散液2g(固形分相当)を含む水500gに加え、「クレアミックス」(エムテクニック社製)を用いて回転数8000rpmで15分攪拌し、液滴の体積平均粒子径が1.5μm程度の「1次懸濁液1」を調製した。
【0090】
次いで、「ナノマイザーLA-33」(ナノマイザー社製)に「衝突型プロセッサー(LD-500)」を接続して、「1次懸濁液1」を70MPaの圧力下で1回通しを行い、「2次懸濁液1」を作製した。
【0091】
この「2次懸濁液1」を撹拌機及び温度計を備えた重合器に入れ、緩やかな撹拌条件下で50℃で8時間懸濁重合させて「複合架橋粒子1の分散液」を得た。
【0092】
「複合架橋粒子1の分散液」を、pHを4.0に調整した後、n-ヘキシルトリメトキシシラン5gを添加し、4時間攪拌保持した後、2Nの水酸化ナトリウム水溶液を加えてpHを6.5に調整し、更に2時間攪拌保持した後、固液分離し、水洗浄を行い「複合架橋粒子1のケーキ」を作製した。「複合架橋粒子1のケーキ」を、減圧乾燥した後、エアジェット方式による微粉砕機で凝集物を解砕して「複合架橋粒子1」を作製した。
【0093】
得られた「複合架橋粒子1」の体積平均粒子径は233nm、水溶性成分の量は97ppmであり、アルデヒドは検出されなかった。この「複合架橋粒子1」をそのままの状態で走査型電子顕微鏡(SEM)で観察、及びスライス片の状態で透過型電子顕微鏡-エネルギ-分散型X線分析(TEM-EDX)で観察したところ、該粒子の形状は球状で、且つシリカ微粒子が該粒子表面付近に偏在していることが確認された。
【0094】
〈複合架橋粒子2の作製〉
スチレン90g及びジビニルベンゼン10gからなる混合液に、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル0.5gを溶解し、重合性単量体成分とした。これとは別に、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.2gを水500gに溶解した水溶液に、体積平均一次粒子径7nmのコロイダルシリカ15g(固形分相当)及び体積平均一次粒子径20nmのアナターゼ型酸化チタン分散液2g(固液分相当)を加え、この水溶液に上記の重合性単量体成分を混合し、「クレアミックス」(エムテクニック社製)を用いて回転数8000rpmで15分間攪拌してO/Wエマルションを得た。得られたO/Wエマルション中の液滴径は約0.4μmであった。
【0095】
このエマルションを攪拌機及び温度計を備えた容量1Lの反応容器内に入れ、窒素気流中で攪拌しながら80℃で重合を行い「複合架橋粒子2の分散液」を得た。この実施例におけるエマルション調製時のドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液の濃度は0.2質量%であり、重合反応系におけるドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムの濃度は0.04質量%であった。
【0096】
「複合架橋粒子2の分散液」の液温を40℃まで冷却し、pHを4.0に調整した後、n-ヘキシルトリメトキシシラン5gを添加し、4時間攪拌保持した後、2Nの水酸化ナトリウム水溶液を加えてpHを6.5に調整し、更に2時間攪拌保持した後、固液分離し、水洗浄を行い「複合架橋粒子2のケーキ」を作製した。「複合架橋粒子2のケーキ」を、減圧乾燥した後、エアジェット方式による微粉砕機で凝集物を解砕され「複合架橋粒子2」を作製した。
【0097】
得られた「複合架橋粒子2」の体積平均粒子径は143μm、水溶性成分の量は721ppmであり、アルデヒドは検出されなかった。この「複合架橋粒子2」をそのままの状態で走査型電子顕微鏡(SEM)で観察、及びスライス片の状態で透過型電子顕微鏡-エネルギ-分散型X線分析(TEM-EDX)で観察したところ、該粒子の形状は球状で、且つシリカ微粒子が該粒子表面付近に偏在していることが確認された。
【0098】
〈複合架橋粒子3の作製〉
撹拌機、還流コンデンサー及び温度計を装備した2Lの反応フラスコに、メラミン50.0g、37%アセトアルデヒド96.5g、体積平均一次粒子径8nmのコロイダルシリカ24.7g(固形分相当)、体積平均一次粒子径10nmのアンチモン酸亜鉛2.0g(固形分相当)、水720gを仕込み、25%アンモニア水を加えてpHを8.5に調整して混合液を作製した。この混合液を撹拌しながら昇温し、温度を80℃に保ち、30分反応させてメラミン樹脂の初期縮合物の水溶液を調製した。この時点でのメラミン樹脂の分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC法)(ポリスチレン換算)にて測定したところ280であった。
【0099】
次に温度を70℃を維持したまま、得られた初期縮合物の水溶液にドデシルベンゼンスルホン酸の10質量%水溶液を添加してpHを7.0に調整した。その約20分後に反応系内が白濁して硬化メラミン樹脂粒子が析出した。その後、温度を90℃まで昇温して24時間硬化反応を続けて「複合架橋粒子3の分散液」を得た。
【0100】
「複合架橋粒子3の分散液」の液温を40℃まで冷却後、pHを4.0に調整した後、n-ヘキシルトリメトキシシラン5gを添加し、4時間攪拌保持した後、2Nの水酸化ナトリウム水溶液を加えてpHを6.5に調整し、更に2時間攪拌保持した後、固液分離し、水洗浄を行い「複合架橋粒子3のケーキ」を作製した。「複合架橋粒子3のケーキ」を、はじめ水蒸気を吹き込んだ後、減圧乾燥した後、エアジェット方式による微粉砕機で凝集物を解砕され「複合架橋粒子3」を作製した。
【0101】
得られた「複合架橋粒子3」の体積平均粒子径は210μm、水溶性成分の量は670ppm、アルデヒドは70検出された。この「複合架橋粒子3」をそのままの状態で走査型電子顕微鏡(SEM)で観察、及びスライス片の状態で透過型電子顕微鏡-エネルギ-分散型X線分析(TEM-EDX)で観察したところ、該粒子の形状は球状で、且つシリカ微粒子が該粒子表面付近に偏在していることが確認された。
【0102】
〈複合架橋粒子4の作製〉
実施例3において、硬化メラミン樹脂粒子が析出した後、温度を90℃まで上昇して3時間硬化反応を続け「複合架橋粒子4の分散液」を得た。また、減圧乾燥を常圧乾燥に変更して「複合架橋粒子4」を作製した。
【0103】
得られた「複合架橋粒子4」の体積平均粒子径は230μm、水溶性成分の量は746ppmであり、アルデヒドの量は136ppmであった。
【0104】
この「複合架橋粒子4」をそのままの状態で走査型電子顕微鏡(SEM)で観察、及びスライス片の状態で透過型電子顕微鏡-エネルギ-分散型X線分析(TEM-EDX)で観察したところ、該粒子の形状は球状で、且つシリカ微粒子が該粒子表面付近に偏在していることが確認された。
【0105】
〈複合粒子1の作製〉
体積平均粒子径1.0μmの非架橋構造のスチレン/アクリル有機粒子(電気抵抗6.6×1013Ω・cm)100gに、体積一次粒子径15nmの表面をテトラオクチルチタネートで処理した疎水性酸化チタンを40g添加し、タービュラミキサにて混合した。
【0106】
次で、粉砕機を改造した「ハイブリダイザ」(奈良機械製作所社製)にて周速100m/secの条件で3分間処理して有機粒子表面に酸化チタンが固着された「複合粒子1」を作製した。
【0107】
得られた「複合1粒子1」の体積平均粒子径1.0μmで、水溶性成分の量が566ppmであり、ホルムアルデヒドは検出されなかった。
【0108】
《トナー母体の製造》
〈トナー粒子分散液1の作製(乳化会合法の例)〉
(ラテックス(1HML)の調製)
(1)核粒子の調製(第一段重合)
攪拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入装置を取り付けた5000mlのセパラブルフラスコにアニオン系界面活性剤
式(101)
C10H21(OCH2CH2)2OSO3Na
7.08gをイオン交換水3010gに溶解させた界面活性剤溶液(水系媒体)を仕込み、窒素気流下230rpmの攪拌速度で攪拌しながら、フラスコ内の温度を80℃に昇温させた。
【0109】
この界面活性剤溶液に、重合開始剤(過硫酸カリウム:KPS)9.2gをイオン交換水200gに溶解させた開始剤溶液を添加し、温度を75℃とした後、スチレン70.1g、n-ブチルアクリレート19.9g、メタクリル酸10.9gからなる単量体混合液を1時間かけて滴下し、この系を75℃にて2時間にわたり加熱、攪拌することにより重合(第一段重合)を行い、ラテックス(高分子量樹脂からなる樹脂粒子の分散液)を調製した。これを「ラテックス(1H)」とする。
(2)中間層の形成(第二段重合)
攪拌装置を取り付けたフラスコ内において、スチレン105.6g、n-ブチルアクリレート30.0g、メタクリル酸6.2g、n-オクチル-3-メルカプトプロピオン酸エステル5.6gからなる単量体混合液に離型剤として、下記式で表される化合物(以下、「例示化合物(19)」と云う。)98.0gを添加し、90℃に加温し溶解させて単量体溶液を調製した。
【0110】
例示化合物(19)
CH3(CH2)20COOCH2C(CH2OCO(CH2)20CH3)3
一方、アニオン系界面活性剤(上記式(101))1.6gをイオン交換水2700mlに溶解させた界面活性剤溶液を98℃に加熱し、この界面活性剤溶液に、核粒子の分散液である前記「ラテックス(1H)」を固形分換算で28g添加した後、循環経路を有する機械式分散機「クレアミックス(CLEARMIX)」(エム・テクニック株式会社製)により、前記例示化合物(19)の単量体溶液を8時間混合分散させて284nmの分散粒子径を有する乳化粒子(油滴)を含む分散液(乳化液)を調製した。
【0111】
次いで、この分散液(乳化液)に、重合開始剤(KPS)5.1gをイオン交換水240mlに溶解させた開始剤溶液とイオン交換水750mlとを添加し、この系を98℃にて12時間にわたり加熱攪拌することにより重合(第二段重合)を行い、ラテックス(高分子量樹脂からなる樹脂粒子の表面が中間分子量樹脂により被覆された構造の複合架橋粒子の分散液)を得た。これを「ラテックス(1HM)」とする。
【0112】
前記「ラテックス(1HM)」を乾燥し、走査型電子顕微鏡で観察したところ、ラテックスに取り囲まれなかった例示化合物(19)を主成分とする粒子(400~1000nm)が観察された。
(3)外層の形成(第三段重合)
上記の様にして得られた「ラテックス(1HM)」に、重合開始剤(KPS)7.4gをイオン交換水200mlに溶解させた開始剤溶液を添加し、80℃の温度条件下に、スチレン300g、n-ブチルアクリレート95g、メタクリル酸15.3g、n-オクチル-3-メルカプトプロピオン酸エステル10.4gからなる単量体混合液を1時間かけて滴下した。滴下終了後、2時間にわたり加熱攪拌することにより重合(第三段重合)を行った後、28℃まで冷却しラテックス(高分子量樹脂からなる中心部と、中間分子量樹脂からなる中間層と、低分子量樹脂からなる外層とを有し、前記中間層に例示化合物(19)が含有されている複合架橋粒子の分散液)を得た。このラテックスを「ラテックス(1HML)」とする。
【0113】
この「ラテックス(1HML)」を構成する複合架橋粒子は、138,000、80,000及び13,000にピーク分子量(質量)を有するものであり、また、この複合架橋粒子の体積平均粒子径は122nmであった。
(トナー粒子分散液の作製)
アニオン系界面活性剤(ドデシル硫酸ナトリウム)59.0gをイオン交換水1600mlに攪拌溶解し、この溶液を攪拌しながら、「C.I.ピグメントブルー15:3」420.0g徐々に添加し、次いで「クレアミックス」(エム・テクニック株式会社製)を用いて分散処理することにより、「着色剤粒子の分散液」を調製した。
【0114】
「ラテックス(1HML)」420.7g(固形分換算)と、イオン交換水900gと、「着色剤粒子の分散液」166gとを、温度センサー、冷却管、窒素導入装置、攪拌装置を取り付けた反応容器(四つ口フラスコ)に入れ攪拌した。容器内の温度を30℃に調整した後、この溶液に5mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を加えてpHを8に調整した。
【0115】
次いで、塩化マグネシウム・6水和物12.1gをイオン交換水1000mlに溶解した水溶液を、攪拌下、30℃にて10分間かけて添加した。3分間放置した後に昇温を開始し、この系を6~60分間かけて90℃まで昇温し、会合粒子の生成を行った。その状態で、「コールターカウンター TA-II」(コルターカウンター株式会社製)にて会合粒子の粒子径を測定し、体積平均粒子径が6.4μmになった時点で、塩化ナトリウム80.4gをイオン交換水1000mlに溶解した水溶液を添加して粒子成長を停止させ、更に熟成処理として液温度98℃にて2時間加熱攪拌することにより、粒子の融着を完結させた。
【0116】
その後、30℃まで冷却し、塩酸を添加してpHを4.5に調整し、「トナー粒子分散液1」を作製した。
【0117】
上記で作製した「トナー粒子分散液1」を、フィルターが装着された回転円筒型脱水機「MARKIII 型式番号60×40」(松本機械株式会社製)で固液分離してトナーケーキを形成した。該トナーケーキは回転円筒型脱水機内で水洗浄し、ついで機内に挿入されたスクレーパーによりトナーケーキを掻き落し、機内から排出して容器に保管した。その後、トナーケーキを「フラッシュジェットドライヤー」(セイシン企業株式会社製)に少しずつ供給し、トナー粒子の水分量が0.5質量%となるまで乾燥してトナー母体「トナー粒子A」を作製した。
【0118】
尚、「トナー粒子A」の体積平均粒子径は6μmであり、且つ、円形度の平均値は0.970であった。
《トナーの作製》
〈トナー1~4、6、7の作製〉
この「トナー粒子A」100質量部に、それぞれ「複合架橋粒子1~4」、「複合粒子1」1.0質量部と、サイクリックシラザン処理したヒュームドシリカ(体積平均一次粒子径16nm)0.6質量部を添加し、「ヘンシェルミキサー」(三井三池化工株式会社製)で混合後、45μmの目開きのシーブを用いて粗大粒子を除去し「トナー1~4、6」を作製し、「実施例1~4」及び「比較例1」とした。
【0119】
ヘンシェルミキサーでの混合は、攪拌羽周速を40m/sec、トナー温度が35~37℃になるよう冷却しながら25分間行った。
(中略)
【0121】
〈トナー5の作製〉
「複合架橋粒子3の分散液」にn-ヘキシルトリメトキシシラン5gを添加し、4時間撹拌保持後、2N水酸化ナトリウム水溶液を加えてpHを6.5に調整し、更に2時間撹拌保持して得られた液5.0質量部(固形分1.0質量部)を、「トナー粒子分散液1」(固形分100質量部相当)に混合して、トナー粒子表面にn-ヘキシルトリメトキシシランにより疎水化された複合架橋粒子3を付着させた。この液を固液分離し、乾燥して疎水化した「複合架橋粒子3」を含有する「トナー5」を作製し、「実施例5」とした。
【0122】
なお、水溶性成分の量、及びアルデヒドの量は、トナーと複合架橋粒子との分離法がなく測定不可であった。
【0123】
表1に、トナーを作製するのに用いたトナー母体、複合架橋粒子の種類等を示す。
【0124】
【表1】
(中略)
【0126】
《評価》
〈実写評価〉
上記で作製したトナーについて下記の評価項目について評価を行った。なお、現像剤は各トナーに対応したものを使用した。
【0127】
評価機としては、電子写真方式を採用した市販の複合機「Sitios7085」(コニカミノルタビジネステクノロジーズ社製)を用いた。感光体は上記「感光体P1」をセットし、プリント条件は、下記のように設定した。
【0128】
(プリント条件)
帯電条件
帯電器;スコロトロン帯電器、初期帯電電位を-750V
露光条件
露光部電位を-50Vにする露光量に設定、画像面積率は5%
現像条件
DCバイアス;-550V
最大露光部のトナー付着量;0.4mg/cm2
なお、転写極はコロトロンコロナ帯電方式を用いた。また、定着装置としては、芯金として鉄を使用し、表面を厚さ25μmのPFA(テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)で被覆された表面粗さRaが0.8μmの加圧ローラを用いた。ニップ幅は3.8mmであり、線速は550mm/secである。定着の温度は加熱ローラの表面温度で制御し、175℃の設定温度とした。
【0129】
プリントは、上記複合機に上記「トナー1~7」と「現像剤1~7」を順にセットし、常温常湿(25℃、55%RH)の条件下で連続500万枚行った。
【0130】
〈現像剤寿命〉
プリントされた画像の画質を、目視で評価し使用の可否を判断した。
【0131】
(評価基準)
◎:500万枚プリントまで画質が劣化せず、寿命は非常に長く良好
○:200~400万枚プリントで画質が劣化したが、寿命は長く良好
△:100~200万枚プリント未満で画質が劣化し、寿命はやや短い
×:100万枚プリント未満で画質が劣化し、寿命は短く問題。
【0132】
〈複合架橋粒子の変形と融着〉
250万枚プリント後のキャリア表面を顕微鏡を用い1万倍に拡大して観察し、キャリア表面に付着している複合架橋粒子の変形と、キャリア表面へ複合架橋粒子の融着の程度を評価した。なお、帯電量は、吸引式帯電量測定器で測定した値である。
【0133】
(評価基準)
◎:複合架橋粒子に変形、キャリアに融着した複合架橋粒子の存在が認められない
○:複合架橋粒子に変形が認められず、キャリアに融着した複合架橋粒子が10μm四方のエリアに2~10個存在するが、帯電阻害は発生せず、実用上問題ない
×:複合架橋粒子に変形が認められ、キャリアに融着した複合架橋粒子が10μm四方のエリアに30個以上存在し、帯電量が初期に比較し10μC/g以上低下し、トナー飛散、かぶりが発生した。
【0134】
〈高温高湿での帯電量リーク〉
現像剤を、高温高湿(30℃,85%RH)に放置した前と24時間放置した後の現像剤の帯電量を吸引式帯電量測定器で測定した。現像剤放置前に測定した帯電量に対し高温高湿に放置後に測定した帯電量との差を帯電量リークとして評価した。
【0135】
(評価基準)
◎:帯電量リークが3.0μC/g未満であり良好
○:帯電量リークが3.0~4.5μC/gでありほぼ良好
△:帯電量リークが4.5~6.0μC/gであり辛うじて実用可能
×:帯電量リークが6.0μC/gより大きく不良。
【0136】
〈感光体表面のトナーフィルミング及び被覆層の減耗量〉
500万枚プリントした後、感光体表面のトナーフィルミング、感光体被覆層の減耗量(削れて薄くなった量)を評価した。
【0137】
トナーフィルミングが有ると、画像かぶりの原因となりやすく、又、感光体の被覆層がトナーにより研磨され薄くなると感度異常の原因となりやすく好ましくない。
【0138】
尚、トナーフィルミングは、感光体表面を顕微鏡で観察しフィルミングの程度を評価した。減耗量は、感光体の被覆層の膜厚を膜厚測定機「EDDY560C」(HELMUT FISCHER GMBTE CO社製)を用い、プリント前と500万枚プリント後の膜厚差から求めた。
【0139】
(評価基準)
◎:トナーフィルミングが全く存在しない。且つ、被覆層の減耗量が3μm未満であり優秀
○:トナーフィルミングが全く存在しない。且つ、被覆層の減耗量が6μm未満であり良好
△:トナーフィルミングが少し観察されるが、プリント画像にかぶりは発生しない。被覆層の減耗量が10μm未満であり実用可能。
【0140】
×:トナーフィルミングが観察され、プリント画像にかぶりが発生。被覆層の減耗量が10μm以上あり、感度低下によるかぶりが発生。500万枚プリントの途中で感光体交換が必要。
【0141】
〈転写率〉
転写率の評価には、複合機のトナーリサイクル機構をはずし、転写残トナーを回収しできるように改造した複合機を用いておこなった。転写率は、画素率5%(A4版)の文字画像のトナー付着量を1プリント当たり20.00mgに設定したときの転写残トナーの量を求め、その値から算出して求めた。転写残トナーは、少ないほど転写率が高くなり、現像剤の劣化がおさえられ、且つ高濃度の画像が得られるので好ましい。
【0142】
◎:転写率は、99.7%以上で優秀
○:転写率は、99.0~99.6%であり良好
△:転写率は、95.1~98.9%であり実用可能
×:転写率は、95.0%以下で不良
表2に現像剤寿命、複合架橋粒子の変形と融着、高温高湿での帯電量リーク、感光体表面のトナーフィルミング及び被覆層の減耗量、転写率の評価結果を示す。
【0143】
【表2】
【0144】
表2に示すように、本発明の複合架橋粒子を用いて作製したトナーである「実施例1~5」は「比較例1、2」と比較して優れた効果を有する。」
(2)引用文献3に記載された発明
上記記載事項ウに基づけば、引用文献3には、実施例1として、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「 アゾビス-N,N-ジメチルバレロニトリル1gを、スチレン60g、メタクリル酸メチル34g及びジビニルベンゼン10gの混合液に溶解し、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.5g、体積平均一次粒子径16nmのコロイダルシリカ15g及び体積平均一次粒子径13nmの酸化アルミニウム分散液2gを含む水500gに加え、液滴の体積平均粒子径が1.5μm程度の1次懸濁液1を調製し、次いで、2次懸濁液1を作製し、緩やかな撹拌条件下で50℃で8時間懸濁重合させて複合架橋粒子1の分散液を得て、pHを4.0に調整した後、n-ヘキシルトリメトキシシラン5gを添加し、4時間攪拌保持した後、2Nの水酸化ナトリウム水溶液を加えてpHを6.5に調整し、更に2時間攪拌保持した後、固液分離し、水洗浄を行い複合架橋粒子1のケーキを作製し、減圧乾燥した後、エアジェット方式による微粉砕機で凝集物を解砕して、体積平均粒子径が233nm、該粒子の形状は球状で、且つシリカ微粒子が該粒子表面付近に偏在している、複合架橋粒子1を作製し、
アニオン系界面活性剤(ドデシル硫酸ナトリウム)59.0gをイオン交換水1600mlに攪拌溶解し、この溶液を攪拌しながら、C.I.ピグメントブルー15:3を420.0g徐々に添加し、次いで分散処理することにより、着色剤粒子の分散液を調製し、
ラテックス(1HML)420.7gと、イオン交換水900gと、着色剤粒子の分散液166gとを、攪拌し、容器内の温度を30℃に調整した後、この溶液に5mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を加えてpHを8に調整し、次いで、塩化マグネシウム・6水和物12.1gをイオン交換水1000mlに溶解した水溶液を、攪拌下、30℃にて10分間かけて添加し、3分間放置した後に昇温を開始し、この系を6~60分間かけて90℃まで昇温し、会合粒子の生成を行い、体積平均粒子径が6.4μmになった時点で、塩化ナトリウム80.4gをイオン交換水1000mlに溶解した水溶液を添加して粒子成長を停止させ、更に熟成処理として液温度98℃にて2時間加熱攪拌することにより、粒子の融着を完結させ、その後、30℃まで冷却し、塩酸を添加してpHを4.5に調整し、トナー粒子分散液1を作製し、固液分離してトナーケーキを形成し、水洗浄し、その後、トナーケーキをトナー粒子の水分量が0.5質量%となるまで乾燥して、体積平均粒子径が6μmであり、且つ、円形度の平均値は0.970であったトナー母体であるトナー粒子Aを作製し、
このトナー粒子A100質量部に、複合架橋粒子1を1.0質量部と、サイクリックシラザン処理したヒュームドシリカ(体積平均一次粒子径16nm)0.6質量部を添加し、攪拌羽周速を40m/sec、トナー温度が35~37℃になるよう冷却しながら25分間ヘンシェルミキサーで混合後、45μmの目開きのシーブを用いて粗大粒子を除去し、作製したトナー1。」
4 対比
本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「本件補正発明」という。)と引用発明とを対比する。
(1)トナー粒子
引用発明の「トナー粒子A」は、「体積平均粒子径が6μmであり、且つ、円形度の平均値は0.970であったトナー母体」である。そうすると、引用発明の「トナー粒子A」は、技術的にみて、本件補正発明の「トナー粒子」に相当する。そして、引用発明の「トナー粒子A」は、本件補正発明の「該トナー粒子は、平均円形度が0.970以上」とする要件を満たしている。
また、引用発明の「トナー粒子A」は、「ラテックス(1HML)420.7gと、イオン交換水900gと、着色剤粒子の分散液166gとを、攪拌」し、「会合粒子の生成」を行うことにより作製されたものである。ここで、引用発明の「ラテックス」及び「着色剤」は、それぞれ、本件補正発明の「結着樹脂」及び「着色剤」に相当する。そうすると、引用発明の「トナー粒子A」は、本件補正発明の「結着樹脂と着色剤とを含有する」という要件を満たしている。
(2)微粒子A
引用発明の「複合架橋粒子1」は、「アゾビス-N,N-ジメチルバレロニトリル1gを、スチレン60g、メタクリル酸メチル34g及びジビニルベンゼン10gの混合液に溶解し、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.5g、体積平均一次粒子径16nmのコロイダルシリカ15g及び体積平均一次粒子径13nmの酸化アルミニウム分散液2gを含む水500gに加え」て、「懸濁重合」させて作製されたものであり、「体積平均粒子径が233nm、該粒子の形状は球状で、且つシリカ微粒子が該粒子表面付近に偏在している」ものである。そうすると、引用発明の「複合架橋粒子1」は、本件補正発明の「微粒子A」に相当する。また、引用発明の「複合架橋粒子1」は、その材料及び作製工程からみて、本件補正発明の「有機無機複合微粒子」であって、「(1)ビニル系樹脂粒子に無機微粒子Bが埋め込まれた構造」を有し、「(3)該無機微粒子Bがシリカ粒子である」とする要件を満たしている。
(3)トナー
引用発明の「トナー1」は、「トナー粒子A100質量部に、複合架橋粒子1を1.0質量部と、サイクリックシラザン処理したヒュームドシリカ(体積平均一次粒子径16nm)0.6質量部を添加し、攪拌羽周速を40m/sec、トナー温度が35~37℃になるよう冷却しながら25分間ヘンシェルミキサーで混合後、45μmの目開きのシーブを用いて粗大粒子を除去し、作製した」ものである。そうすると、引用発明の「トナー1」は、本件補正発明の「トナー」に相当する。また、引用発明の「トナー1」は、本件補正発明の「結着樹脂と着色剤とを含有するトナー粒子、および微粒子Aを有する」という要件を満たしている。
(4)一致点及び相違点
以上より、本件補正発明と引用発明とは、
「結着樹脂と着色剤とを含有するトナー粒子、および微粒子Aを有するトナーであって、
該トナー粒子は、平均円形度が0.970以上であり、
該微粒子Aは、有機無機複合微粒子であり、
該有機無機複合微粒子は、
(1)ビニル系樹脂粒子に無機微粒子Bが埋め込まれた構造を有し、
(3)該無機微粒子Bがシリカ粒子である、
トナー。」である点で一致し、以下の点で一応相違する。
[相違点1]微粒子Aが、本件補正発明は、「一次粒子の数平均粒径(D1)が80nm以上400nm以下」であり、「(2)表面において、該無機微粒子Bが露出しており、該無機微粒子Bに由来する凸部が存在」するのに対し、引用発明は、「体積平均粒子径が233nm」であるものの一次粒子の数平均粒径が明らかでなく、表面においてシリカ微粒子が露出しシリカ微粒子に由来する凸部が存在するかが明らかでない点。
[相違点2]トナーが、本件補正発明は、「ESCAで測定される該微粒子Aによる該トナー粒子表面の被覆率が5%以上40%以下」であり、「該微粒子Aの固着率が30質量%以上90質量%以下」であり、「該トナー粒子の表面の0.5πμm2の領域に存在する該微粒子Aの個数の変動係数が0.1以上0.5以下」であるのに対し、引用発明は、被覆率、固着率、トナー粒子Aの表面の0.5πμm2の領域に存在する複合架橋粒子1の個数の変動係数が明らかでない点。
5 判断
(1)[相違点1]について
ア 一次粒子の数平均粒径
引用発明の「複合架橋粒子1」は、その作製工程からみて、「ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム」によるミセルを調整し、懸濁重合させることにより得られたものである。そうすると、技術的にみて、引用発明の「複合架橋粒子1」は、粒径がそろったものが得られていると考えられるから、「体積平均粒子径」と「数平均粒径」とが大きく異なるとは考えがたい。
したがって、引用発明の「複合架橋粒子1」は、一次粒子の「数平均粒径」も「体積平均粒子径」と同程度であると考えられるから、本件補正発明における「一次粒子の数平均粒径(D1)が80nm以上400nm以下」であるとする要件を満たしている蓋然性が高い。
イ 無機微粒子に由来する凸部
引用文献3の記載事項イにおける「上記単量体にこれら重合開始剤を溶解し、無機粒子と両性界面活性剤又は必要に応じて添加される分散安定補助剤等を含む水性媒体に添加した後、1次懸濁液が作製される。」(段落【0046】)及び「分散安定剤としても機能する無機粒子としては、体積平均一次粒子径が6~32nm、好ましくは体積平均一次粒子径が7~17nmのコロイダルシリカ、酸化アルミニウム、酸価ジルコニウム、アンチモン酸亜鉛、酸化チタン、及びそれらの混合物が好ましく用いられる。」(段落【0047】)の記載に基づけば、「体積平均一次粒子径16nmのコロイダルシリカ」及び「体積平均一次粒子径13nmの酸化アルミニウム」は、水性媒体中で分散安定剤として機能するものである。そうすると、水性媒体中に分散する、「スチレン」等の「混合液」の液滴において、親水性表面を有する「コロイダルシリカ」は、その一部を水性溶媒中に露出させた状態で分散安定剤として機能するものと考えられる。そして、その懸濁液を「緩やかな撹拌条件下で50℃で8時間懸濁重合させて」得られる「複合架橋粒子1」は、その表面において、「コロイダルシリカ」の一部が露出していると考えられる。そして、一部が露出している以上、「複合架橋粒子1」の表面に、「コロイダルシリカ」に由来する凸部が存在するといえる。
したがって、引用発明の「複合架橋粒子1」は、本件補正発明における「(2)表面において、該無機微粒子Bが露出しており、該無機微粒子Bに由来する凸部が存在」するという要件を満たしている蓋然性が高い。
ウ 凸部を形成することの容易性
仮に、引用発明の「複合架橋粒子1」が、本件補正発明における「(2)表面において、該無機微粒子Bが露出しており、該無機微粒子Bに由来する凸部が存在」するという要件を満たしていないとしても、引用文献3の記載事項アには、「本発明のトナー及びトナー製造方法は、表面もしくは表面近傍に無機粒子を存在させた複合架橋粒子を外添剤としてトナーに含有させることにより、大量のプリントを行っても複合架橋粒子の変形、扁平化が発生せず、結果として現像剤の寿命を長く延ばし、放置しても帯電量のリークが少なく、感光体表面にトナーフィルミング及び感光層(以下、被覆層とも云う)のキズや減耗が無く、且つトナーの転写率が良好な優れた効果が得られる。」(段落【0012】)と記載されている。そして、引用文献3の記載事項イにおける「本発明で云う「表面」とは、透過型電子顕微鏡、又は電界効果型走査電子顕微鏡で観察される複合架橋粒子の表面に存在する状態を云い、「表面近傍」とは、複合架橋粒子の表面から粒子の中心(重心)に向かい粒子半径の20%より表面に存在する状態をいう。」(段落【0017】)との記載に基づけば、引用発明は、透過型電子顕微鏡、又は電界効果型走査電子顕微鏡で観察される複合架橋粒子の表面にも、無機粒子が存在する状態とすることにより、課題を解決するものといえる。そして、引用文献3の記載事項イの段落【0059】及び【0060】には、メラミン系複合架橋粒子についての記載であるものの、得られた複合架橋粒子に対し、「更に、工程(c)」として「工程(b)で得られた複合架橋粒子と、該複合架橋粒子の平均粒子径に対して1/5以下の平均粒子径を有する無機粒子とを、直接又は水性媒体中で混合して、無機粒子で該複合架橋粒子の表面を被覆する」こと、及び、「無機粒子で表面被覆させたとは、無機粒子が複合架橋粒子の表面上に固着していること」であるとの記載がある。これらの記載に基づけば、課題解決のために、引用発明の「複合架橋粒子1」の表面上に、無機粒子を固着させ、無機微粒子が露出しているとともに、無機微粒子に由来する凸部が存在するように構成することは、当業者が容易になし得たことである。
エ 小括
以上のとおりであるから、上記[相違点1]は、実質的な相違点ではない。仮に、上記[相違点1]が実質的な相違点であったとしても、引用文献3の記載に基づいて当業者が容易になし得たことである。
(2)[相違点2]について
ア 引用文献3の記載事項ウの表2に基づけば、引用発明は、「500万枚プリントした後、感光体表面のトナーフィルミング、感光体被覆層の減耗量(削れて薄くなった量)」の評価が、「◎:トナーフィルミングが全く存在しない。且つ、被覆層の減耗量が3μm未満であり優秀」というものである。そうすると、引用発明は、感光体表面にトナーが残存しないものであるから、クリーニング性も良好であるといえる。
一方、本願の明細書には、「本発明者らは、円形度の高いトナーであっても、一次粒子の数平均粒径(D1)が80nm以上400nm以下である微粒子(微粒子A)を、以下の3つの条件を満足するように、トナー粒子表面に存在させた場合には、トナーがクリーニングブレードをすり抜けにくくなることを見出した。3つの条件は以下のとおりである。
(1)微粒子Aによるトナー粒子表面の被覆率が5%以上40%以下である。
(2)微粒子Aの固着率が30質量%以上90質量%以下である。
(3)トナー粒子の表面に存在する該微粒子Aの個数の変動係数が0.1以上0.5以下である。」(段落【0017】)と記載されている。そうすると、引用発明も円形度が高いトナーであるにも関わらずクリーニング性も良好であるから、上記3つの条件を満たしていると考えられる。
したがって、引用発明のトナー1も、本件補正発明の「ESCAで測定される該微粒子Aによる該トナー粒子表面の被覆率が5%以上40%以下」であり、「該微粒子Aの固着率が30質量%以上90質量%以下」であり、「該トナー粒子の表面の0.5πμm2の領域に存在する該微粒子Aの個数の変動係数が0.1以上0.5以下」であるとする要件を満たしている蓋然性が高い。
イ また、引用発明は、「トナー粒子A100質量部に、複合架橋粒子1を1.0質量部」を添加し、「攪拌羽周速を40m/sec、トナー温度が35~37℃になるよう冷却しながら25分間ヘンシェルミキサーで混合」して作製されたものである。トナー粒子A及び複合架橋粒子1の分量及びヘンシェルミキサーの混合条件からみても、引用発明が、本件補正発明の「ESCAで測定される該微粒子Aによる該トナー粒子表面の被覆率が5%以上40%以下」であり、「該微粒子Aの固着率が30質量%以上90質量%以下」であり、「該トナー粒子の表面の0.5πμm2の領域に存在する該微粒子Aの個数の変動係数が0.1以上0.5以下」であるとする要件を満たしている蓋然性が高いといえる。
ウ 仮に、引用発明が、被覆率、固着率、及び、トナー粒子Aの表面の0.5πμm2の領域に存在する複合架橋粒子1の個数の変動係数において、本件補正発明の要件を満たしていないとしても、引用文献3の記載事項アの段落【0010】の記載に基づけば、引用発明は「安定して使用可能な高耐久性を有するトナー」を提供することを目的とするものである。そして、適切なトナーの帯電性を備えるとともにクリーニング性能を高めるように、外添剤の被覆率を最適化するとともに均一に被覆するようにし、その固着率を高耐久性を具備するように十分な値とすることは、当業者が適宜なし得ることである。
したがって、引用発明において、被覆率、固着率、及び、トナー粒子Aの表面の0.5πμm2の領域に存在する複合架橋粒子1の個数の変動係数が、相違点2に係る要件を満たすように調整することは、当業者が適宜なし得たことである。
エ 小括
以上のとおりであるから、上記[相違点2]も、実質的な相違点ではない。仮に、上記[相違点2]が実質的な相違点であったとしても、引用文献3の記載に基づいて当業者が容易になし得たことである。
(3)効果について
仮に、上記[相違点1]又は[相違点2]が実質的な相違点であったとしても、引用発明は、引用文献3の表2に記載されているように、転写性に優れるとともにトナーフィルミングが全く存在しないものであるから、クリーニング性にも優れたものである。
したがって、本件補正発明の効果は、引用文献3の記載から当業者が予測し得た範囲のものである。
6 請求人の主張
(1)請求人は、審判請求書の請求の理由において、「引用文献3に記載の複合架橋粒子1および2は、シリカ微粒子が当該複合架橋粒子の表面付近に偏在している粒子であります(引用文献3の[0093]および[0097])。引用文献3の[0017]および[0058]の記載を参照すると、表面付近(「表面近傍」と同義と思われます。)とは、粒子の表面から粒子の中心に向かい粒子半径の20%までの領域(約0.2μm)を意味することが明らかでありますから、当該複合架橋粒子中の当該シリカ微粒子は、当該複合架橋粒子の内部に埋没していると考えるのが妥当であり、当該複合架橋粒子の表面において、当該シリカ微粒子は露出しておらず、当該シリカ微粒子に由来する凸部は存在していないものと考えられます。このことは、特に当該シリカ微粒子に由来する凸部は存在していないことは、複合架橋粒子1および2の形状が球状である旨の記載(引用文献3の[0093]および[0097])からも明らかであります。」、「引用文献3の[0093]、[0097]、[0101]および[0104]の記載によると、複合架橋粒子をそのままの状態で走査型電子顕微鏡で観察することで当該複合架橋粒子が“球状”であることを確認する一方、当該複合架橋粒子のスライス片の状態で透過型電子顕微鏡-エネルギー分散型X線分析での観察によってシリカ微粒子が当該複合架橋粒子“表面付近に偏在”していることを確認しております。」、「すなわち、この観察結果および確認方法からも、引用文献3の当該複合架橋粒子中の当該シリカ微粒子は、当該複合架橋粒子の内部に埋没していることを前提とするものであり、シリカ微粒子の一部が露出してシリカ微粒子由来の凸部を形成させる意図も知見も無いものと考えられます。」と主張している。
しかしながら、引用文献3では、段落【0017】において定義されているように、複合架橋粒子の表面から粒子の中心(重心)に向かい粒子半径の20%より表面に存在する状態を「表面近傍」と称しており、「表面付近」と区別して用いている。また、引用文献3の記載事項イには、「本発明で得られるコロイダルシリカが粒子表面付近に偏在した複合架橋粒子とは、一次粒子が球状で独立しており、空孔は有しておらず、コロイダルシリカが粒子最表面もしくは、最表面から約0.2μmの深さ内の粒子表面付近に存在しているものである。」(段落【0058】)と記載されている。当該記載に基づけば、引用発明における「該粒子の形状は球状で、且つシリカ微粒子が該粒子表面付近に偏在している」とは、一次粒子が球状で独立しており、コロイダルシリカが粒子最表面もしくは、最表面から約0.2μmの深さ内の粒子表面付近に存在しているものをいうものと理解できる。また、引用文献3の段落【0101】には「この「複合架橋粒子3」をそのままの状態で走査型電子顕微鏡(SEM)で観察、及びスライス片の状態で透過型電子顕微鏡-エネルギ-分散型X線分析(TEM-EDX)で観察したところ、該粒子の形状は球状で、且つシリカ微粒子が該粒子表面付近に偏在していることが確認された。」と記載されており、段落【0104】にも同様の記載がなされている。しかしながら、当該記載からは、「走査型電子顕微鏡(SEM)で観察」することによって、もっぱら「当該複合架橋粒子が“球状”であることを確認」していると解することはできない。すなわち、引用文献3の「本発明で云う「表面」とは、透過型電子顕微鏡、又は電界効果型走査電子顕微鏡で観察される複合架橋粒子の表面に存在する状態を云い、」(段落【0017】)との記載に基づけば、段落【0101】及び段落【0104】における「走査型電子顕微鏡(SEM)で観察」は、粒子形状のみならず、「複合架橋粒子の表面に存在する状態」を観察していると理解できる。
したがって、請求人の上記主張は根拠を欠いており、採用することができない。
(2)請求人は、審判請求書の請求の理由において、「引用文献3は、もっぱら長期耐久での複合架橋粒子の変形抑制を意図しており、そのためか複合架橋粒子を得る手法としては、有機粒子表面に機械的な衝撃力を付与して無機粒子を固着させる手法を除外しております(引用文献3の[0014]~[0016])。また、引用文献3の実施例には、各種条件下でのクリーニング性に係わる評価もありません。」、「よって、引用文献3には、引用文献3の[表3]に記載の複合架橋粒子1および2を本願発明に係る有機無機複合微粒子に変更する動機付けを当業者に与えるような記載はありません。」と主張している。
しかしながら、引用発明は、引用文献3の記載事項イに記載されるように、「本発明に係る複合架橋粒子は、樹脂粒子の原料となる重合性単量体液滴を無機粒子分散安定剤として介在させつつ重合又は縮合することにより、複合架橋粒子を形成させ、機械的な衝撃を与えることなく無機粒子を樹脂粒子表面に結合させる」(段落【0016】)ものであって、ここでいう「表面」とは、「透過型電子顕微鏡、又は電界効果型走査電子顕微鏡で観察される複合架橋粒子の表面に存在する状態」(段落【0017】)であると理解できる。また、引用文献3の記載事項イにおける「本発明で得られるコロイダルシリカが粒子表面付近に偏在した複合架橋粒子とは、一次粒子が球状で独立しており、空孔は有しておらず、コロイダルシリカが粒子最表面もしくは、最表面から約0.2μmの深さ内の粒子表面付近に存在しているものである。」(段落【0058】)や、「無機粒子で表面被覆させたとは、無機粒子が複合架橋粒子の表面上に固着していることを意味する。」(段落【0060】)との記載を参酌すれば、引用発明の複合架橋粒子1は、コロイダルシリカを表面に露出させることは十分に想定されているといえる。
したがって、請求人の上記主張を採用することはできない。
(3)請求人は、審判請求書の請求の理由において、「引用文献3に記載の複合架橋粒子の表面において、無機粒子が露出しているかどうかを確認するための実験(確認実験)を行いました。」、「得られたO/Wエマルション中の液滴径は約0.1~0.2μmであった。」、「しかしながら、上記重合の反応を2~3時間行ったところで、固形物の大部分が融合しているのが観察され、エアジェット方式による微粉砕機で凝集物の解砕を試みたが、解砕は困難であった。」、「複合架橋粒子2の作製および無機粒子の露出有無の確認を試みましたが、粒子状のもの自体が作製されず、無機粒子の露出有無以前の問題でありました。」、「すなわち、引用文献3に本願発明に係る有機無機複合微粒子が記載されているとは到底いえません。」と主張している。また、令和2年7月13日付けの上申書においても、「確認実験の結果、重合反応開始2~3時間後に凝集物が生じました。生じた凝集物を洗浄し、乾燥させた後に解砕を試みましたが、解砕は困難であり、粒子状のものが作製されませんでした。」、「したがいまして、上記手続補正書においても述べたとおり、引用文献3に本願発明に係る有機無機複合微粒子が記載されているとはいえないものと思料いたします。」と述べている。
しかしながら、引用文献3の記載事項ウには、「アゾビス-N,N-ジメチルバレロニトリル1g」(重合開始剤)を、「スチレン60g、メタクリル酸メチル34g及びジビニルベンゼン10gの混合液」(単量体混合物)に溶解し、「ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.5g」(界面活性剤)、「体積平均一次粒子径16nmのコロイダルシリカ15g(固形分相当)及び体積平均一次粒子径13nmの酸化アルミニウム分散液2g(固形分相当)」(分散剤としても機能する無機粒子)を含む水500gに加え、攪拌することで、液滴の体積平均粒子径が1.5μm程度の「1次懸濁液1」を調製し、次いで、「ナノマイザーLA-33」(ナノマイザー社製)に「衝突型プロセッサー(LD-500)」を接続して、「1次懸濁液1」を70MPaの圧力下で1回通しを行い、「2次懸濁液1」を作製したと記載されている。そして、重合開始剤を、単量体混合物に溶解し、界面活性剤、分散剤を含む水に加えて攪拌及び「衝突型プロセッサー(LD-500)」を通すことで、所定の粒径の液滴が水媒体中に分散した「懸濁液」が得られることについて、技術的にみて何ら不自然な点はない。そして、そのような「懸濁液」の液滴中で重合反応を行うことにより微粒子を得ることは慣用技術であり、引用文献3では「複合架橋粒子1」の粒子の形状も確認されている。一方、請求人の行ったとする「確認実験」は、「O/Wエマルション」が得られたと記載しながらも、「大部分が融合している」固形物が得られたとしており、技術的にみて「O/Wエマルション」が得られていたとは考えがたい。そして、請求人の行った「確認実験」は、界面活性剤の種類や懸濁液とする条件を変えているにもかかわらず、懸濁液とするための濃度比の調整を行っていない。そうすると、このような「確認実験」によって「粒子状のもの」が作製されなかったとしても、引用文献3の当該記載事項について、「引用文献3に本願発明に係る有機無機複合微粒子が記載されているとはいえない」ということはできない。
したがって、請求人の上記主張を採用することはできない。
7 補正却下の決定のむすび
以上のとおり、いずれの相違点も、実質的な相違点ではないから、本件補正発明は、引用文献3に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号の規定により独立して特許を受けることができない。また、上記相違点が実質的な相違点であったとしても、本件補正発明は、引用文献3の記載に基づき当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により独立して特許を受けることができない。
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
第3 本件発明について
1 本件発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1及び請求項2に係る発明は、令和元年7月18日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1及び請求項2に記載された事項により特定されるとおりのものであり、その請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)は、前記第2の1に記載したとおりである。
2 対比・判断
本件発明は、本件補正発明における「無機微粒子B」について、「シリカ粒子」に限定する補正事項を省いたものに相当する。そうすると、本件発明の発明特定事項を全て含み、さらに限定を付したものに相当する本件補正発明が、前記第2の7に記載したとおり、引用文献3に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができないものである、あるいは、引用文献3の記載に基づき当業者が容易に発明できたものであるから、本件発明も同様の理由により、特許法第29条第1項第3号又は同条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
3 むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第1項第3項又は特許法第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、請求項2について言及するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2019-014829